説明

紙用嵩高剤

【課題】 優れた嵩高効果を有する紙用嵩高剤を提供する。
【解決手段】 カチオン性を有する共重合体を必須成分とする紙用嵩高剤によって解決できる。前記カチオン性共重合体が炭素数4〜18のアルキル基を持つ(メタ)アクリレート50〜95モル%とジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩および/またはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの共重合物であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙用嵩高剤および前記紙用嵩高剤を用いた紙、および前記紙用嵩高剤を用いた紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、書籍用紙の市場では、触感がしなやかでかつ書籍の持ち運びに適した軽量紙が望まれている。しかしながら、原料低減のみの軽量化は紙が薄くなる、不透明性が損なわれるなどの紙質の低下が問題になる。そのため、軽量化を実現しながらも紙厚を保ち、紙質を維持するための抄紙原料、抄紙方法、填料あるいは紙用内添薬剤が提案されている。
【0003】
前記目的を達成するための紙用内添薬剤としては、例えば抄紙工程で添加して紙の嵩を向上させる紙用嵩高剤が提案されている。公知の紙用嵩高剤には、非イオン性界面活性剤(例えば特許文献1)、多価アルコールと脂肪酸エステルの化合物(特許文献2)、嵩高サイズ剤(特許文献3)、非イオン性モノマーとアニオンあるいはカチオン性モノマーとを有する共重合体と界面活性剤からなるもの(特許文献4)、天然系カチオン性ポリマーとビニルモノマー由来の粒子を含むもの(特許文献5)、カチオン性エマルション(文献1)などが挙げられる。
【0004】
しかしながら、これらの嵩高剤では、嵩高剤のパルプ繊維への定着性および嵩高効果がまだ満足されていない。今後、地球環境保護の観点からも原料の削減が求められる紙製造において、より効果の高い紙用嵩高剤が求められている。
【特許文献1】特開H11−200283号公報
【特許文献2】特開H11−350380号公報
【特許文献3】特開2002−285494号公報
【特許文献4】特開2005−200807号公報
【特許文献5】特開2005−240228号公報
【非特許文献1】紙パ技術協会年次大会講演要旨集 vol.2004 p.489-500
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、パルプ繊維への定着性に優れ、紙の嵩を向上させる効果を発現する嵩高剤、前記嵩高剤を用いた紙の製造方法、前記製造方法により得られた紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)で表される1種以上の単量体50〜95モル%と一般式(2)および/または(3)で表される1種以上の単量体5〜50モル%を重合して得られるカチオン性共重合体を必須成分として含有することを特徴とする紙用嵩高剤を使用することにより、目的とする軽量で嵩高い紙が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
【化1】

一般式(1)
ここでR1は水素またはメチル基、R2は水素または炭素数1〜3のアルキル基、Qはフェニル基、炭素数7〜18のアリール基、アルキル基、COOR3あるいはCONHR4である。ここでR3、R4は炭素数4〜18のアルキル基を表す。
【0008】
【化2】

一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基あるいはベンジル基であり、R8は水素あるいは炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基あるいはベンジル基であり、R6、R7、R8は異種でも同種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす。Xは陰イオンを表わす。
【0009】
【化3】

一般式(3)
R9は水素又はメチル基、R10、R11は炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基あるいはベンジル基であり、R10、R11は同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす。
【0010】
前記紙用嵩高剤が一般式(2)で表される単量体と一般式(3)で表される単量体のモル比が100/0から30/70である事を特徴とする。
【0011】
前記紙用嵩高剤が一般式(1)で表される単量体が炭素数4〜18のアルキル基を持つ1種以上の(メタ)アクリレートであり一般式(2)で表される単量体が1種以上のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩であり一般式(3)で表される単量体が1種以上のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記紙用嵩高剤を含む紙、および前記紙用嵩高剤をパルプスラリーに添加する紙の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の嵩高剤は、従来の紙用嵩高剤以上の嵩高効果が得られ、より少ない添加量で、嵩高い紙が得られる。
【0014】
本発明の紙用嵩高剤は、一般式(1)で表される1種以上の単量体50〜95モル%と一般式(2)および/または(3)で表される1種以上の単量体5〜50モル%とを重合して得られるカチオン性共重合体を必須成分として含有し、前記一般式(2)で表される1種以上の単量体と前記一般式(2)で表される1種以上の単量体のモル比が100/0から30/70とすることにより水に分散させる事ができる。
【0015】
前記のように本発明の紙用嵩高剤を水分散液とすることにより、共重合体のカチオン性基は分散粒子表面に発現し、パルプスラリー中に添加した際の前記紙用嵩高剤の分散性、およびパルプ繊維への定着性に優れる。さらには、パルプ繊維へ定着した後、本発明のカチオン性共重合体の疎水性部分がパルプ表面を覆い、パルプ表面の疎水性が高まり、パルプ間距離が広がるため、軽量で嵩高い紙が得られると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の紙用嵩高剤は、一般式(1)で表される1種以上の単量体50〜95モル%と一般式(2)および/または(3)で表される1種以上の単量体5〜50モル%を重合して得られるカチオン性共重合体を必須成分として含有することを特徴とする。
【0017】
【化1】

一般式(1)
ここでR1は水素またはメチル基、R2は水素または炭素数1〜3のアルキル基、Qはフェニル基、炭素数7〜18のアリール基、アルキル基、COOR3あるいはCONHR4である。ここでR3、R4は炭素数4〜18のアルキル基を表す。
【0018】
【化2】

一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基あるいはベンジル基であり、R8は水素あるいは炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基あるいはベンジル基であり、R6、R7、R8は異種でも同種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす。Xは陰イオンを表わす。
【0019】
【化3】

一般式(3)
R9は水素又はメチル基、R10、R11は炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基あるいはベンジル基であり、R10、R11は同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす。
【0020】
前記カチオン性共重合体の単量体のモル比は、本発明の紙用嵩高剤の嵩高効果に加えて、パルプスラリー中での分散性やパルプ繊維への定着性が充分に発揮される範囲である。この範囲外で、カチオン性基を有する単量体が少ないと前記紙用嵩高剤のパルプスラリー中での分散やパルプ繊維への定着が不十分であり、疎水性基を有する単量体が少ないと嵩高効果を発揮しない。また前記(1)および(3)の組み合わせ、前記(1)、(2)および(3)の組み合わせ、あるいは前記(1)および(3)の組み合わせたそれぞれの単量体混合物がこの範囲内のとき、その他の共重合可能な単量体が共重合されていても良い。
【0021】
前記一般式(1)で表される単量体は、スチレンやα−メチルスチレンなど芳香環やアルキル基の付加した芳香環を有する単量体や、α−オレフィンなど炭素数6〜20の芳香環あるいは脂肪族ビニル化合物などの疎水性単量体である。また炭素数4〜18のアルキル基を持つアルキル(メタ)アクリレートやアルキル(メタ)アクリルアミドも使用することができる。好ましくは、炭素数4〜18のアルキル基をアルキル(メタ)アクリレートあるいはアルキル(メタ)アクリルアミドである。
【0022】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例は、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどである。アルキル(メタ)アクリルアミドの具体例は、N−ブチルアクリルアミド、N−ヘプチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−ブチルメタアクリルアミド、N−オクチルメタアクリルアミドなどである。
【0023】
前記一般式(2)で表される単量体は、第4級アンモニウム塩あるいは第3級アミンの塩を含有するカチオン性単量体である。具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートの塩などが挙げられる。
【0024】
前記一般式(2)のX-で表される陰イオンは、塩酸、硫酸、酢酸、こはく酸、くえん酸などの酸または、アニオン性基を有する単量体でも良い。すなわち両性高分子を製造する場合は、カルボキシル基あるいはスルホン基を含有する単量体を中和することなしに原料として使用することもできる。
【0025】
前記一般式(3)で表される単量体は、未中和の第3級アミノ基を有する単量体である。好ましくは、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートあるいはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドであり、それらの具体例としては、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0026】
前記単量体と共重合可能な単量体としては、ノニオン性、アニオン性のビニル単量体が挙げられる。例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルスクシイミド、ビニルイミダゾール、アクリル酸、メタアクリル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、エチレングリコールメタクリレートホスフェートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記一般式(2)で表される1種以上の単量体と一般式(3)で表される1種以上の単量体のモル比は、100/0から30/70であることが好ましい。この範囲は、本発明の紙用嵩高剤の分散性とパルプへの定着のために特に好ましい範囲である。一般式(2)で表される単量体のモル比が30モル%以下では、カチオン性が不十分で、パルプへの定着性に劣る。
【0028】
前記一般式(2)で表される単量体と一般式(3)で表される単量体のモル比は、一般式(1)および一般式(3)で表される単量体を重合後、共重合体に含有される第3級アミノ基の30モル%以上を、塩酸、硫酸、酢酸、こはく酸、くえん酸などの酸で中和することにより調整しても良い。
【0029】
前記単量体のうち、特に好ましい組み合わせは、一般式(1)で表される単量体が炭素数4〜18のアルキル基を持つ1種以上の(メタ)アクリレートであり一般式(2)で表される単量体が1種以上のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩であり一般式(3)で表される単量体が1種以上のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートである場合である。
【0030】
前記カチオン性共重合体は前記単量体混合物を調整後、通常の重合法によって行なうことが出来る。重合法としては塊状重合、溶液重合、分散重合などが挙げられる。
【0031】
重合条件は通常、使用する単量体や共重合モル比によって適宜決めていき、温度としては20〜200℃、好ましくは30〜130℃の範囲で行なう。重合開始は油溶性あるいは水溶性ラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤はアゾ系、過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。また、溶液重合の場合は、単量体濃度は20〜90%、好ましくは40〜80%で重合する。その場合の重合溶媒は芳香族や脂肪族炭化水素、アルコール類などである。
【0032】
油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)、4、4−アゾビス(4−メトキシ−2、4ジメチル)バレロニトリルなどがあげられる。
【0033】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。
【0034】
レドックス系の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。
【0035】
前記カチオン性共重合体の使用方法は、塊状重合により重合する場合は、共重合体を重合後あるいは重合中に水に分散させ水分散液とし、パルプスラリー中に添加する。
【0036】
溶液重合により重合する場合は、重合後に重合溶媒を適当な方法で揮散させて得られる共重合体を、前記塊状重合の場合と同様の方法でパルプスラリー中に添加し使用することができる。
【0037】
本発明の紙用嵩高剤を使用することにより、軽量で嵩高い紙を得ることが出来る。さらに、一般式(2)で表される単量体と一般式(3)で表される単量体のモル比を100/0から30/70にすることにより、パルプスラリー中に添加した際のカチオン性油溶性共重合体の分散性、およびパルプ繊維への定着性に優れ、従来の界面活性剤系の嵩高剤に比べ優れた嵩高効果を発揮する。
【0038】
本発明の紙の製造方法においては、前記紙用嵩高剤は抄紙前の製紙原料中に添加される。添加場所は、ミキシングチェスト、種箱、マシンチェストやヘッドボックスや白水タンク等のタンク、またはこれらの設備と接続された配管中(ファンポンプ等)に添加することができる。特に好ましくは、本発明の紙用嵩高剤は前記カチオン性共重合体がパルプスラリー中に均一に分散しパルプ繊維に定着することによって効果を発現するため、添加から抄紙までに充分に混合が行われる場所である。
【0039】
本発明では、必要に応じて、サイズ剤、填料、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力向上剤、ピッチコントロール剤、硫酸アルミニウム、アクリルアミド基を有する化合物、ポリエチレンイミン等の凝結剤等を併用することができる。
【0040】
本発明の紙の製造方法において、紙用嵩高剤はカチオン性共重合体として製紙原料100重量%に対して0.01〜10重量%を添加する。特に好ましくは0.5〜5重量%である。
【0041】
また、本発明の紙の製造方法によって得られる紙は、新聞用紙、書籍用紙、印刷・情報用紙、包装用紙、衛生用紙等の紙、板紙等である。
【0042】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に制約されるものではない。
【実施例1】
【0043】
攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に、ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下DMMと略記)26.76g、アクリル酸2−エチルヘキシル73.24g、3−メルカプト1,2−プロパンジオール5gを仕込み単量体溶液の温度を45〜50℃に保ち、窒素置換を30分行った後、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製V−601)1.0g(対単量体1重量%)を仕込み、重合反応を開始させた。反応開始温度を45±1℃とし、10時間重合させて反応を完結させ共重合体を得た。得られた共重合体を5g秤取り、0.5重量%の塩酸水溶液95gを加えて5重量%のカチオン性共重合体分散液を得た。これを試作品−1とする。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0044】
単量体としてDMM34.44g、アクリル酸n−ブチル65.56gを用いた以外は合成例1と同様の操作で重合反応、分散液の調製を行った。これを試作品−2とする。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0045】
単量体としてDMM17.18g、アクリル酸ステアリル82.82gを用いた以外は合成例1と同様の操作で重合反応、分散液の調製を行った。これを試作品−3とする。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0046】
攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190℃ないし230℃のイソパラフィン47.5gにDMM13.38g、アクリル酸2−エチルヘキシル36.62g、3−メルカプト1,2−プロパンジオール2.5g、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製V−601)0.5g(対単量体2重量%)を仕込み溶解させた。単量体溶液の温度を70〜73℃に保ち、窒素置換を30分行い、重合反応を開始させた。反応温度を71±2℃で5時間重合させ反応を完結させた。さらに、エバポレーションして溶媒を留去させ共重合体を得た。得られた共重合体を5g秤取り、0.5重量%の塩酸水溶液95gを加えて5重量%のカチオン性共重合体分散液を得た。これを試作品−4とする。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0047】
単量体としてDMM46.03g、アクリル酸2−エチルヘキシル53.97gを用いた以外は実施例4と同様の操作で重合反応、分散液の調製を行った。これを試作品−5とする。結果を表1に示す。
【0048】
(比較例1)単量体としてDMM66.5g、アクリル酸2−エチルヘキシル33.5gを用いた以外は合成例1と同様の重合反応を行った。得られた共重合体を5g秤取り、1.0重量%の塩酸水溶液95gを加えて5重量%のカチオン性共重合体分散液を得た。これを比較−1とする。結果を表1に示す。
【0049】
(比較例2)単量体としてDMM2.6g、アクリル酸2−エチルヘキシル97.4gを用いた以外は合成例1と同様の操作で重合反応、分散液の調製を行った。これを比較−2とする。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例3)単量体としてDMM26.76g、アクリル酸2−エチルヘキシル73.24gを用いて合成例1と同様の操作で重合反応を行った、得られた共重合体5gをジオキサン95gに溶解し、5重量%の未中和の溶解液を得た。これを比較−3とする。結果を表1に示す。
【0051】
(表1)

疎水性モノマーAはアクリル酸2−エチルヘキシルであり、Bはアクリル酸ブチルであり、Cはアクリル酸ステアリルである。
【実施例6】
【0052】
0.5質量%のLBKPパルプスラリー(CSF400ml)を、抄紙後のシートの坪量が80g/mになるように量りとり、攪拌下、実施例1の紙用嵩高剤、試作品―1をパルプに対して純分1.0質量%になるように添加した。
【0053】
これを1/16mタッピースタンダードシートマシンにて抄紙し、湿紙を得た。湿紙を3.0kg/mで5分間プレスした後、鏡面ドライヤーを用いて105℃で3分間乾燥した。乾燥した紙を、23℃、50%RHの条件で1日間調湿した後、その坪量(g/m)と厚み(mm)を測定し、坪量/厚みにより、紙の密度を求めた。紙の密度が小さいほど嵩が高く、大きいほど嵩が低い。結果を表2に示す。
【0054】
上記と同様に試作品―2から試作品―5に関しても試験を実施した。結果を表2に示す。
【0055】
(比較例4)合成例1の代わりに、比較1〜3の紙用嵩高剤を使用した以外は実施例1と同様の操作で抄紙、乾燥、紙質測定を行った。また比較1〜3の代わりに、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドの重合体(比較―4とする)を使用した以外は実施例6と同様の操作で抄紙、乾燥、紙質測定を行った。また実施例1の代わりに、POE2モルを付加させたステアリルアルコール(HLB4.9)をジオキサンに5重量%に溶解したもの(比較―5とする)を使用した以外は実施例6と同様の操作で抄紙、乾燥、紙質測定を行った。結果を表2に示す。さらに紙用嵩高剤を添加しない以外は実施例6と同様の操作で抄紙、乾燥、紙質測定を行った。以上の結果を表2に示す。









【0056】
(表2)

【0057】
以上の試験を行なった結果、表2のように試作品―1〜5を用いた実施例6は、嵩高剤を添加しなかった場合と比べ、紙の密度は大幅に低下し、嵩高い紙が得られた。また比較1〜5を用いた場合と比べても、嵩高効果が優れていることは明らかである。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される1種以上の単量体50〜95モル%と一般式(2)および/または(3)で表される1種以上の単量体5〜50モル%を重合して得られるカチオン性共重合体を必須成分として含有することを特徴とする紙用嵩高剤。
【化1】

一般式(1)
ここでR1は水素またはメチル基、R2は水素または炭素数1〜3のアルキル基、Qはフェニル基、炭素数7〜18のアリール基、アルキル基、COOR3あるいはCONHR4である。ここでR3、R4は炭素数4〜18のアルキル基を表す。
【化2】

一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基あるいはベンジル基であり、R8は水素あるいは炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基あるいはベンジル基であり、R6、R7、R8は異種でも同種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす。Xは陰イオンを表わす。
【化3】

一般式(3)
R9は水素又はメチル基、R10、R11は炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基あるいはベンジル基であり、R10、R11は同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす。
【請求項2】
一般式(2)で表される単量体と一般式(3)で表される単量体のモル比が100/0から30/70である事を特徴とする請求項1または2に記載の紙用嵩高剤。
【請求項3】
一般式(1)で表される単量体が炭素数4〜18のアルキル基を持つ1種以上の(メタ)アクリレートであり一般式(2)で表される単量体が1種以上のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩であり一般式(3)で表される単量体が1種以上のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の紙用嵩高剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の紙用嵩高剤を含む紙。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の紙用嵩高剤をパルプスラリーに添加することを特徴とする紙の製造方法。



【公開番号】特開2007−204885(P2007−204885A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26583(P2006−26583)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】