説明

紙葉類判別装置

【課題】紙葉類の汚損度を高精度に判定できる紙葉類判別装置を提供する。
【解決手段】紙葉類判別装置は、検査対象となる紙葉類101の表面の画像を検出する画像検知部112と、画像検知部からの検知情報を処理し、紙葉類の汚損度を判別する検知情報処理部と、を備えている。画像検知部は、紙葉類の表面に、異なる2方向から光を照射する複数の光源301、302と、紙葉類の表面からの反射光を受光する受光部310と、を有し、検知情報処理部は、複数の光源を同時に点灯して検出された画像から紙葉類の濃淡汚れを検知し、複数の光源の1つを点灯して検出された画像から紙葉類のしわ、折れを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価証券等の紙葉類の種類、真偽、汚損度等を判別する紙葉類判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙葉類判別装置は、有価証券等の紙葉類の種類、真偽、汚損度を検知するため複数の検知手段を備えている。通常、紙葉類の種類や汚損度合いの判定は、もっとも特徴のある可視画像の認識により行われる。これは、元来、紙葉類は人間が見分けやすいことを前提にデザインされ、色、文字、数字等が描かれているためであり、具体的には、紙葉類判別装置では、イメージセンサ、色判別センサなどが用いられている。
【0003】
人間が紙葉類の汚損度の判定を行う場合、通常2つの方法を用いている。1つは、媒体のしなやかさやコシの強さを検出する方法である。これは媒体が長時間流通している間に、材料である紙の繊維が破断し、あるいは、液体物が付着したりして、紙葉類のコシが無くなることを、指の感覚で検出する方法である。もう1つの方法は、目視により紙葉類の表面の汚れを検出する方法である。経験的には、紙葉類の無印字部分、例えば、有価証券で言えばすかし部分や印刷インクの濃度が比較的薄い部分、の汚れやしわ、折れを観測し汚損度を判定している。
【0004】
紙葉類判別装置においても、上記2つの方法により紙葉類の汚損度を判定する手法が採られている。前者は、被測定媒体が搬送される際に発する音の強弱でコシの強さを判断している。一方後者は、紙葉類の非印刷部分の明るさ、非印刷部分のしわの多さ、非印刷部分の透過率、紙葉類の折り目部分の濃淡特徴、紙葉類周辺の明るさ、紙葉類全体の明るさ、紙葉類全体の濃淡特徴等を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−027035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、画像を用いて紙葉類の汚損度等を判別する紙葉類判別装置においては、印刷の影響のない無印字部の濃淡やしわで汚損の度合いを検知している。そのため、無印字部以外が汚れている紙葉類、あるいは汚れは少ないが官封ではない紙葉類等を正確に判別することが難しい。また、紙葉類判別装置の制御部は、特定領域の明るさや分散値の特徴量を単独で評価しているため、判定の精度が低く、人間の感覚とは異なった結果が得られることが多い。
【0007】
一方、紙葉類のしなやかさやコシの強さを検出する方法では、偶発的に汚れた紙葉類、例えば、コーヒーのしみが付着した紙葉類、洗濯され皺のついた官封券等を正しく判定することができず、いずれも高精度な汚損度判定ができない状況にある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、紙葉類の汚損度を高精度に判定できる紙葉類判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の態様に係る紙葉類判別装置は、検査対象となる紙葉類の表面の画像を検出する画像検知部と、前記画像検知部からの検知情報を処理し、前記紙葉類の汚損度を判別する検知情報処理部と、を備え、前記画像検知部は、前記紙葉類の表面に、異なる2方向から光を照射する複数の光源と、前記紙葉類の表面からの反射光を受光する受光部と、を有し、前記検知情報処理部は、前記複数の光源を同時に点灯して検出された画像から前記紙葉類の濃淡汚れを検知し、前記複数の光源の1つを点灯して検出された画像から前記紙葉類のしわ、折れを検知することを特徴としている。
【0010】
前記検知情報処理部は、前記複数の光源を同時点灯、1つ光源を点灯、複数の光源を同時点灯のパターンを繰り返して前記紙葉類を照明し、点灯パターン毎に前記紙葉類の反射画像を検出する。
【0011】
前記1つの光源と他の光源とは、検出される画像の画素単位で濃淡がより小さい方の光源を選択し、この選択された光源により、前記1つの光源を点灯する点灯パターンを実行する。
【0012】
前記画像検知部は、前記紙葉類の裏面側に設けられ前記紙葉類を透過する透過光を前記紙葉類に照射する透過光源を備え、前記検知情報処理部は、前記複数の光源を同時点灯、1つ光源を点灯、前記透過光源を点灯、複数の光源を同時点灯のパターンを繰り返して前記紙葉類を照明し、点灯パターン毎に前記紙葉類の反射画像および透過画像を検出する。
【0013】
この発明の他の態様に係る紙葉類判別装置は、検査対象となる紙葉類の表面の画像を検出する画像検知部と、前記画像検知部からの検知情報を処理し、前記紙葉類の汚損度を判別する検知情報処理部と、を備え、前記検知情報処理部は、前記紙葉類と同一種類の基準紙葉類について、前記画像検知部により予め画像を検出し、検出された画像を複数の小領域に分割して、各小領域の光強度の平均値および分散値を計算し、平均値が大きく分散値の小さな複数の小領域を汚損度検出領域として選定し、前記検査対象となる紙葉類の表面の画像を前記画像検知部により検出し、前記検出された画像の内、前記選定された汚染度検出領域の汚損度を判別することを特徴としている。
【0014】
前記画像検出部は、前記紙葉類の反射画像を検出する反射画像検出部と、前記紙葉類の透過画像を検出する透過画像検出部と、を有し、前記検知情報処理部は、前記紙葉類の印刷パターンおよび前記紙葉類の外形に合わせて前記小領域を選定する。
前記検知情報処理部は、検出された透過画像の内、画素の総和(積分値)が大きい小領域を汚損度検出領域として選定する。
【0015】
この発明の他の態様に係る紙葉類判別装置は、紙葉類の表面の複数色の画像を色毎に検出する画像検知部と、前記画像検知部からの検知情報を処理し、前記紙葉類の汚損度を判別する検知情報処理部と、を備え、
前記検知情報処理部は、前記紙葉類と同一種類の基準紙葉類および汚損された汚損基準紙葉類のそれぞれについて、前記画像検知部により予め複数色の画像を検出し、検出された各画像の光強度の平均値および分散値を計算し、前記基準紙葉類の2色以上の画像の平均値および分散値を減算、加算、あるいは、2色以上の差分と和の組み合わす演算式により算出し、前記汚損基準紙葉類の2色以上の画像の平均値および分散値を減算、加算、あるいは、2色以上の差分と和の組み合わせの演算式により算出し、それぞれ基準紙葉類の画像と汚損基準紙葉類の画像とで算出値の差が大きい色の演算式を選択し、前記画像検知部により前記検査対象となる紙葉類の複数色の画像を検出し、検出された各画像の光強度の平均値および分散値を計算し、前記紙葉類の2色以上の画像の平均値および分散値を前記選択された演算式により算出し、その算出結果に基づいて前記紙葉類の汚損度を判別することを特徴としている。
【0016】
前記画像検知部は、前記紙葉類の表面の反射画像を検出する反射画像検出部と、前記紙葉類の透過画像を検出する透過画像検出部と、を有し、前記反射画像検出部および透過画像検出部は、波長領域400〜700nmに感度を持つ可視領域の画像センサ、波長400nm以下に感度を持つ近紫外領域の画像センサ、波長700nm以上に感度を持つ近赤外センサのうちの少なくとも1つの画像センサを備えている。
前記波長領域400〜700nmに感度を持つ可視領域の画像センサは、青色領域、緑色領域、赤色領域、全可視領域に感度を持つ画像センサの少なくも1つの画像センサを備えている。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成によれば、紙葉類の汚損度を高精度に判定することが可能な紙葉類判別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る紙葉類判別装置を概略的に示す断面図。
【図2】図2は、上記紙葉類判別装置における検知情報処理部の機能ブロック図。
【図3】図3は、上記紙葉類判別装置の上面反射画像検知部を示す側面図。
【図4】図4は、上面反射画像検知部の照明点灯のパターンを示すタイミングチャート。
【図5】図5は、照射パターンと得られる画像との関係をそれぞれ示す平面図。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る紙葉類判別装置の上面反射画像検知部を示す側面図。
【図7】図7は、上記第2の実施形態に係る上面反射画像検知部の照明点灯のパターンを示すタイミングチャート。
【図8】図8は、照射パターンと得られる画像との関係をそれぞれ示す平面図。
【図9】図9は、第3の実施形態に係る紙葉類判別装置における基準券の印刷パターンを示す図、分割少領域を示す図、紙葉類の汚損度検出領域を示す図。
【図10】図10は、第4の実施形態に係る紙葉類判別装置における判別対象となる紙葉類の印刷パターンを示す図、分割少領域を示す図、紙葉類の汚損度検出領域を示す図。
【図11】図11は、第5の実施形態に係る紙葉類判別装置における判別対象となる紙葉類の印刷パターンを示す図、前記紙葉類の赤外透過画像を示す図、前記紙葉類の折れ目の汚染度検出領域を示す図、前記紙葉類の第2の汚染度検出領域を示す図、前記紙葉類の決定された共通の汚損度検出領域を示す図。
【図12】図12は、第5の実施形態に係る紙葉類判別装置における判別対象となる紙葉類の複数色の画像をそれぞれ示す図。
【図13】図13は、第6の実施形態に係る紙葉類判別装置における色演算式の一覧を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について、詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る紙葉類判別装置100の構成例を概略的に示している。紙葉類判別装置100は、判別媒体となる紙葉類101を例えば水平方向に延びる搬送路102に沿って搬送する搬送機構を備えている。搬送機構は、複数の搬送ローラ103〜110および図示しないガイドを有している。
【0020】
搬送路102上には、紙葉類101の透過画像情報を検知する透過画像検知部111と、紙葉類101の上面の反射画像情報を検知する上面反射画像検知部112と、紙葉類101の下面の反射画像情報を検知する下面反射画像検知部113と、紙葉類101の磁気印刷特性を検知する磁気検知部114と、紙葉類101からのブリーチ発光特徴や蛍光発光特徴を検知する蛍光発光検知部115と、紙葉類101の厚さを検知し、テープや複数枚取りを検知する厚さ検知部116が設置されている。これらの検知部の上方には、これらの検知部111〜116からの検知情報を処理する検知情報処理部117が設置されている。
【0021】
図2は、検知情報処理部117の機能ブロック図である。図2に示すように、透過画像検知部111、上面反射画像検知部112、下面反射画像検知部113、磁気検知部114、蛍光発光検知部115、厚さ検知部116は、演算増幅器等のアナログ処理回路201、202、203、204、205、206を介してマルチプレクサ207に接続されている。
【0022】
透過画像検知部111、上面反射画像検知部112、下面反射画像検知部113は、それぞれ、例えばLEDアレイを発光部とし、フォトダイオードアレイまたはCCDを受光部とする1次元画像読み取りセンサであり、用途に応じて、可視光を出射するLEDアレイ、近紫外光を出射するLEDアレイ、あるいは近赤外光を出射するLEDアレイを用いる。磁気検知部114は、例えば磁気ヘッドのような磁気センサであり、コア材の一次側に直流バイアス電流を印加し、磁性材料が磁気ヘッドを通過したときのフラックスの変化を二次側コイルで検出するセンサとして構成されている。
【0023】
蛍光発光検知部115は、例えば、紫外線発光ランプを有する発光部と、紙葉類101から発せられる励起光を受光するフォトダイオード等の受光部と、を有し、紙葉類101からの励起光をスポット視野で検出するセンサである。厚さ検知部116は、紙葉類101を二本のローラで挟み、片側のローラまたはそれを支持するシャフトの変動量を変位センサ等で電気信号に変換するものである。
【0024】
それぞれのセンサからの検知データは、演算増幅器等のアナログ処理回路(201〜206)を経て信号成分の増幅/加工が行われ、6系統のアナログ信号をアナログマルチプレクサ207にて1系統のアナログ信号に時分割した後、アナログ/デジタル変換回路210で例えば8ビットのデジタルデータに変換される。なお、本実施形態では、アナログ/デジタル変換回路を1回路とするためにアナログマルチプレクサ207でアナログ信号を1系統に時分割したが、システムの組み方やハードウェアの条件により、すべての検知信号をそれぞれ独立してアナログ/デジタル変換する構成としてもよく、この場合でも、紙葉類判別装置の効果になんら影響を与えるものでは無い。
【0025】
デジタル信号に変換された検知データは、続く前処理回路220でそれぞれの検知内容に従った前処理(例えば、空間微分や、平均化等)を施され、データ記憶部230に記憶される。検知情報処理部117は、検知CPU240および制御CPU250を備えている。検知CPU240は、マイクロコンピュータに代表される処理演算部で、データ記憶部230から検知データを順次読み出し、判別媒体である紙葉類101の種類、方向、真偽、汚損度等の判定を行う。
【0026】
制御CPU250は、同様にマイクロコンピュータに代表される処理演算部で、検知CPU240での演算結果を上位の装置、例えば紙葉類判別装置の機構制御部(図示しない)等に通知する。機構制御部は、紙葉類判別装置100で判別された種類、方向、真偽、汚損度情報を基に、図示しない搬送路切替え部の切替えを行い、その紙葉類101が格納されるべき集積庫へ紙葉類を搬送する。
【0027】
図3は、第1の実施形態に係る紙葉類判別装置100の上面反射画像検知部112を示す側面図である。第1の実施形態によれば、上面反射画像検知部112は、それぞれLED、ハロゲン、蛍光灯等からなる2つの光源301、302と、1つの受光部310とを備えている。光源301、302は、紙葉類101の搬送方向に並んで設けられている。光源301、302は、その光軸が紙葉類101の表面上の共通の照射位置と交わるように配置され、また、照射位置に対する垂線Vに対して左右対称に、かつ、それぞれ垂線Vに対して反対方向に角度θ傾斜して設けられている。
【0028】
受光部310は、光源301、302から照射され紙葉類101の表面で反射された光を受光する位置に配設され、光学レンズ304および光電センサ303を有している。光学レンズ304は例えば像を1対1の倍率で結像するロッドレンズアレイあるいは、像を縮小して結像する球面レンズ等である。紙葉類101の表面で反射した検知光は、光学レンズ304で集光され、光電センサ303で受光される。この検知光は、光電センサ303内で電気信号に変換された後、図示しないセンサ信号処理基板で増幅、A/D変換等が施される。
【0029】
光電センサ303は、波長領域400〜700nmに感度を持つ可視領域の画像センサ、400nm以下に感度を持つ近紫外領域の画像センサ、あるいは、700nm以上に感度を持つ近赤外センサのうちの1つ以上のセンサにより構成されている。光電センサ303がCCDやフォトダイオード等の1次元センサの場合、紙葉類101の画像データは1ラインごとに収集、蓄積され、紙葉類101が搬送されることにより次の1ラインデータが同様に収集、蓄積され、結果的に2次元の画像が得られる。
【0030】
なお、第1の実施形態において、下面反射画像検知部113も図3に示す上面反射画像検知部112と同様に構成され、紙葉類101の下側に配設され、紙葉類101の下面に検知光を照射する点のみが相違している。
【0031】
図4は、上面反射画像検知部112の照明点灯のパターンを示している。点灯のタイミングは3パターンあり、パターン1では、光源301を点灯、パターン2では光源302を点灯、パターン3では光源301、光源302の両方を点灯する。この3パターンの点灯を繰り返して紙葉類101を照射し、紙葉類101表面の反射光から画像データを収集する。
【0032】
各点灯パターンで得られる画像データの例を図5に示す。
図5(a)は、光源301を点灯させた状態(パターン1)で検出した紙葉類101の表面からの反射画像を示し、図5(b)は光源302を点灯させた状態(パターン2)で検出した紙葉類101の表面からの反射画像像を示している。いずれの反射画像においても、紙葉類101の中央部の盛り上がった部分(しわ)10の、照明と反対側に影ができている。この影が、光学的には汚れと同様に暗く見えるため、汚損していると判定される場合がある。
【0033】
図5(c)は、光源301、302を同時に点灯させた状態(パターン3)で検出した紙葉類101の表面からの反射画像を示している。しわ10の左右に影は発生しない。一方、紙葉類101の表面の汚損部分12は、いずれのパターンでも周辺に比べ暗く見えるため、汚れと判断できる。
【0034】
このように光源301、302の点灯パターンを変えることで、
パターン1、2では、紙葉類101のしわ10も汚れの一部と考えた場合の汚損度を検知でき、パターン3では、しわ10は汚れではないと考えた場合の紙葉類の汚損度を検知することができる。
【0035】
更に、画像処理も含めて考えると、パターン1、2では、画像データの濃淡変化点を計測することで、しわ10のみを抽出することができる。パターン3では、画像データの明るさを計測することで、汚れの部分12を抽出することができる。
【0036】
また、パターン1、2により得られる画像のうち、画素単位でより暗い方、つまり、濃淡がより小さい方、を採用し、1枚の濃淡パターンを作成することで、しわ、影、汚れをすべて加味した汚損度を検知することができる。
【0037】
上記のように構成された紙葉類判別装置によれば、複数の光源を有する検知部の点灯パターンを変えて画像を取ることにより、紙葉類の画像的特徴を把握し、単一の光学系と処理回路により、濃淡汚れやしわ、折れを高精度に判別することができる。
【0038】
なお、パターン2で光源302を点灯させているが、パターン2を削除してもよい。この場合、パターン1とパターン3でしわ10と汚れ12を検出することができるため、本発明の効果を損なうことはない。
【0039】
次に本発明の第2の実施形態に係る紙葉類判別装置について説明する。
図6は、第2の実施形態に係る紙葉類判別装置の上面反射画像検知部112を示している。上面反射画像検知部112は、透過画像検知部111の透過光源部分を組み合わせて構成されている。第2の実施形態によれば、上面反射画像検知部112は、それぞれLED、ハロゲン、蛍光灯等からなる3つの光源301、302、306と、1つの受光部310とを備えている。光源301、302は、紙葉類101の搬送方向、つまり、長手方向に並んで設けられている。光源301、302は、その光軸が紙葉類101の表面上の共通の照射位置と交わるように紙葉類101の上方に配置され、また、照射位置に対する垂線Vに対して左右対称に、かつ、それぞれ垂線Vに対して反対方向に角度θ傾斜して設けられている。
【0040】
光源306は、紙葉類101の下面側に配置され、その光軸が上記共通の照射位置を通り垂線Vと同軸となるように配設されている。
【0041】
受光部310は、光源301、302から照射され紙葉類101の表面で反射された光を受光する位置、かつ、光源306から照射され紙葉類101を透過する光を受光するに配設され、光学レンズ304および光電センサ303を有している。光学レンズ304は例えば像を1対1の倍率で結像するロッドレンズアレイあるいは、像を縮小して結像する球面レンズ等である。紙葉類101の表面で反射した検知光は、光学レンズ304で集光され、光電センサ303で受光される。この検知光は、光電センサ303内で電気信号に変換された後、図示しないセンサ信号処理基板で増幅、A/D変換等が施される。
【0042】
光源306から出射された光は紙葉類101を透過し、光学レンズ304に至る。光学レンズ304を通った透過光は光電センサ303で受光され、センサ内で光信号を電気信号に変換された後、図示しないセンサ信号処理基板で増幅、A/D変換等が施される。
【0043】
光電センサ303がCCDやフォトダイオード等の1次元センサの場合、紙葉類101の画像データは1ラインごとに収集、蓄積され、紙葉類101が搬送されることにより次の1ラインデータが同様に収集、蓄積され、結果的に2次元の画像が得られる。
【0044】
なお、第2の実施形態において、下面反射画像検知部113も図6に示す上面反射画像検知部112と同様に構成され、紙葉類101の下側に配設され、紙葉類101の下面に検知光を照射する点のみが相違している。
【0045】
図7は、上面反射画像検知部112の照明点灯のパターンを示している。点灯のパターンは4パターンあり、パターン1では、光源301のみを点灯、パターン2では光源302のみを点灯、パターン3では光源301、光源302の両方を点灯する。パターン4では光源306のみを点灯する。この4パターンの点灯を繰り返して画像データを収集する。
【0046】
それぞれの点灯パターンで得られる画像データの例を図8に示す。
【0047】
図8(a)は、光源301を点灯させた状態(パターン1)で検出した紙葉類101の表面からの反射画像を示し、図8(b)は光源302を点灯させた状態(パターン2)で検出した紙葉類101の表面からの反射画像像を示している。いずれの反射画像においても、紙葉類101の中央部の盛り上がった部分(しわ)10の、照明と反対側に影ができている。この影が、光学的には汚れと同様に暗く見えるため、汚損していると判定される場合がある。
【0048】
図8(c)は、光源301、302を同時に点灯させた状態(パターン3)で検出した紙葉類101の表面からの反射画像を示している。しわ10の左右に影は発生しない。一方、紙葉類101の表面の汚損部分12は、いずれのパターン1、2、3でも周辺に比べ暗く見えるため、汚れと判断できる。
【0049】
図8(d)は、光源306を点灯させた状態(パターン4)で検出した紙葉類101からの透過画像を示している。汚損部分12は、反射画像と同様に、周辺に比べて暗く見え、また、透過により新たな汚損部分14が発見されることがある。これは例えば紙葉類101の裏面の汚れである。しわ10については、反射画像に比べてより濃淡のコントラストが強くなるため、検出精度は高くなる。
【0050】
このように光源301、302、306の点灯パターンを変えることで、
パターン1、2では、紙葉類101のしわ10も汚れの一部と考えた場合の汚損度を検知でき、パターン3では、しわ10は汚れではないと考えた場合の紙葉類の汚損度を検知することができる。パターン4では、しわ10および紙葉類101の表裏の汚れの汚損度を検知することができる。
【0051】
更に、画像処理も含めて考えると、パターン1、2では、画像データの濃淡変化点を計測することで、しわ10のみを抽出することができる。パターン3では、画像データの明るさを計測することで、汚れの部分12を抽出することができる。
【0052】
また、パターン1、2により得られる画像のうち、画素単位でより暗いほうを採用し、1枚の濃淡パターンを作成することで、しわ、影、汚れをすべて加味した汚損度を検知することができる。パターン4では、画像データの濃淡変化点を計測することで、しわ10のみを抽出することができ、更に、画像データの明るさを計測することで、紙葉類101の表裏の汚れの部分を抽出することができる。
【0053】
上記のように構成された紙葉類判別装置によれば、複数の光源を有する検知部の点灯パターンを変えて画像を検出することにより、紙葉類の画像的特徴を把握し、単一の検出部と処理回路により、濃淡汚れやしわ、折れを高精度に判別することができる。
【0054】
なお、パターン2で光源302を点灯させているが、パターン2を削除してもよい。この場合、パターン1、3、4でしわ10と汚れ12を検出することができるため、本発明の効果を損なうことはない。また、光源301、302のいずれか一方を省略し、光源301、302の一方と透孔光を照射する光源306とのみを備えた構成としてもよく、この場合でも、光源を交互に、また、同時に点灯させることにより、紙葉類のしわ、影、汚れをすべて加味した汚損度を検知することができる。
【0055】
次に、本発明の第3の実施形態に係る紙葉類判別装置について説明する。
本実施形態に係る紙葉類判別装置は、紙葉類において、汚損度を検知する領域を予め設定し、設定された領域における紙葉類の汚損度を検知し、判別するように構成されている。
【0056】
図9(a)は、判別基準となる紙葉類101の印刷例を示している。左側の白抜きの部分は透かし部20で用紙の色は白紙、その下側に金額を現す算用数字”10”、中央上部はコントラストの高い線画23があり、その下は比較的淡い色でコントラストの弱い背景画像22、右側には人物画24があり、顔部分24aは比較的淡い色でコントラストが弱く、その下の服装部分24bは濃い線で描かれている。また、紙面全体は濃くてコントラストの無い背景色である。このような紙葉類101において、汚損度を判定する領域を下記の手順で抽出する。
【0057】
(1)測定対象となる紙葉類101と同一の官封券、またはそれに準じるきれいな券を準備し、基準券とする。基準券の条件としては用紙に対して印刷がずれていないことである。
(2)図9(b)に示すように、基準券の全面を縦5分割(1〜5)、横14分割(A〜N)の小領域に分割する。分割の基準は基準券の外形寸法を基にする。
(3)基準券の表面に検知光を照射し、その反射光を検出することにより、それぞれの小領域で、反射光強度の平均値、および反射光強度の分散値を計算する。(表1、表2参照)
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
(4)平均値が128レベル以上で、かつ、分散値が128レベル未満の小領域を抽出する(表3、図9(c))。なお、本実施形態では8ビットの計算、あるいは255で正規化しているため、最小値は0、最大値は255である。
(5)上記で抽出された小領域を当該紙葉類の汚損度検出領域とする。ここでは、汚損度検出領域として、コントラストが低く明るい領域を抽出し、例えば、透かし部20、背景画像22、人物画24の顔部分24aにそれぞれ対応する領域A1、A2、A3としている。
【0061】
(6)汚損度を検出する紙葉類101を搬送し、例えば、上面反射画像検知部112により紙葉類上面の反射画像を検出する。そして、検出画像情報から検知情報処理部117により、汚損度検出領域A1、A2、A3における光強度の平均値、および光強度の分散値を計測する。
(7)検知情報処理部117は、計測した平均値、および分散値に従い、紙葉類101の汚損度を評価する。平均値が低いほど、また分散値が高いほど紙葉類101は汚損度が進んでいることを示す。
【0062】
上記の手順で抽出された汚損度検出領域A1、A2、A3の特徴は、コントラストが低く明るい領域であるため、汚れやしみ、券の折れしわ、あるいは劣化による変色等を比較的簡単に計測できることである。
なお、平均値、分散値の計算は、紫外線、青色光(BLUE)、緑色光(GREEN)、赤色光(RED)、赤外光(IR)のうちのいずれか1つ以上を紙葉類101表面に照射し、得られた反射画像に基づいて行う。
【0063】
一例として、紙葉類101が黄色系統の用紙、インクを使用している場合、赤センサと緑センサの出力は高めに出るため、平均値が高く、分散値が低くなる傾向にある。そこで、1)平均値:汚損度検出領域の赤色光の平均値と緑色光の平均値の平均、
2)分散値:汚損度検出領域の赤色光の分散値と緑色光の分散値の平均、
を採用する。
【0064】
どの券種でどの色の画像を使うかは、汚損度検出領域の面積で決定する。つまり、汚損度検出領域の面積が大きいほど、評価できる領域が広いため、汚損度に対する精度が高くなる。
【0065】
小領域の分割数は上述した縦5、横14に限定されたものではなく、また、小領域のサイズもすべて同一に限らず、互いに異なっていてもよい。小領域における光強度、つまり、明るさを平均値として計算したが、これは例えば画素の総和(積分値)のような領域全体の明るさを表す評価値であれば良い。更に、小領域における光強度の変動量を分散値として計算したが、これは微分値(変化値)の平均値、また微分値の総和、またノルム等領域全体のばらつき、分散、コントラストを表わす評価値であれば良い。すなわち、紙葉類の表面画像を小領域に分割し、各小領域の画素の総和(積分値)および画素間の微分値の総和を計算し、積分値が大きく微分値の総和の小さな小領域を汚損度検出領域として採用してもよい。また、紙葉類の表面画像を小領域に分割し、各小領域の明るさを表す評価値、およびばらつき、分散、コントラスを表す評価値を計算し、前者が大きく後者が小さな小領域を汚損度検出領域として採用する構成としてもよい。
【0066】
通常、紙葉類101の表面画像の判定結果は、裏面画像の判定結果よりも優先させて汚損度を判別する。また、紙葉類101の表画像、裏画像に関係なく、汚損度検知領域は平均値の大きな領域と分散値の小さな領域の判定を優先する。
【0067】
以上のように、汚損度を検出する紙葉類に対して、予め検出しやすい複数の検出領域を設定し、その検出領域の汚損度を検知測定することにより、より高い精度で紙葉類の汚損度を判別することができる。
【0068】
次に、本発明の第4の実施形態に係る紙葉類判別装置について説明する。
本実施形態に係る紙葉類判別装置は、紙葉類において、汚損度を検知する領域を印刷パターンに基づいて予め設定し、設定された領域における紙葉類の汚損度を検知し、判別するように構成されている。
【0069】
前述した図9(a)は、判別対象となる紙葉類101の印刷例を示している。左側の白抜きの部分は透かし部20で用紙の色は白紙、その下側に金額を現す算用数字”10”、中央上部はコントラストの高い線画23があり、その下は比較的淡い色でコントラストの弱い背景画像22、右側には人物画24があり、顔部分24aは比較的淡い色でコントラストが弱く、その下の服装部分24bは濃い線で描かれている。また、紙面全体は濃くてコントラストの無い背景色である。
【0070】
一方、図10(a)は、判別対象となる紙葉類101の一例を示している。図9(a)に示す基準となる紙葉類との違いは、用紙に対して印刷パターンが右下方向にずれていることである。このような場合、汚損度検出領域が固定だと、本来は計測するべきではない領域、例えば暗い領域やコントラストが強い領域を評価してしまうことになり、紙葉類101が汚れていないにもかかわらず、汚損度合いが大きいと判別してしまう場合がある。
【0071】
このような用紙に対して印刷パターンがずれている紙葉類101について、汚損度を判定する領域を下記の手順で抽出する。
(1)測定対象となる紙葉類101と同一種類の官封券、またはそれに準じるきれいな券を準備し、基準券とする。基準券の条件としては用紙に対して印刷がずれていないことである。
(2)基準券の全面を縦5分割(1〜5)、横14分割(A〜N)の小領域に分割する。分割の基準は基準券の外形寸法を基にする。
(3)例えば、図6に示した上面反射画像検知部112により基準券の表面に検知光を照射し、その反射画像を検出することにより、それぞれの小領域で、光強度の平均値、および反射光強度の分散値を計算する。(表1、表2参照)
(4)平均値が128レベル以上で、かつ、分散値が128レベル未満の小領域を抽出する(表3、図9(c))。なお、本実施形態では8ビットの計算、あるいは255で正規化しているため、最小値は0、最大値は255である。
(5)上記で抽出された小領域を当該紙葉類の汚損度検出領域とする。ここでは、汚損度検出領域として、コントラストが低く明るい領域を抽出し、例えば、透かし部20、背景画像22、人物画24の顔部分24aにそれぞれ対応する領域A1、A2、A3としている。
【0072】
(6)汚損度を検出する紙葉類101を搬送し、例えば、上面反射画像検知部112により紙葉類上面の反射画像を検出する。
(7)検知情報処理部117は、得られた反射画像に基づき、用紙に対して印刷がずれているかどうかを画像処理の手法により判定する。また、印刷がシフトしている方向、シフト量を算出する(図10(a)参照)。
【0073】
(8)図10(b)および図10(c)に示すように、上記(7)で求めた印刷のシフト量に応じて、汚損度検出領域A1、A2、A3の位置を変更する。用紙に対して印刷パターンが右下方向にずれている場合、各小領域および汚損度検出領域A1、A2、A3も右下方向にずれた位置としている。
(9)検出情報から検知情報処理部117により、変更した汚損度検出領域A1、A2、A3における光強度の平均値、および光強度の分散値を計測する。
(10)検知情報処理部117は、計測した平均値、および分散値に従い、紙葉類101の汚損度を評価する。平均値が低いほど、また分散値が高いほど紙葉類101は汚損度が進んでいることを示す。
【0074】
上記の手順で抽出された汚損度検出領域A1、A2、A3の特徴は、コントラストが低く明るい領域であるため、汚れやしみ、券の折れしわ、あるいは劣化による変色等を比較的簡単に計測できることである。
なお、平均値、分散値の計算は、紫外線、青色光(BLUE)、緑色光(GREEN)、赤色光(RED)、赤外光(IR)のうちのいずれか1つ以上を紙葉類101表面に照射し、得られた反射画像に基づいて行う。
【0075】
一例として、紙葉類101が黄色系統の用紙、インクを使用している場合、赤センサと緑センサの出力は高めに出るため、平均値が高く、分散値が低くなる傾向にある。そこで、1)平均値:汚損度検出領域の赤色光の平均値と緑色光の平均値の平均、
2)分散値:汚損度検出領域の赤色光の分散値と緑色光の分散値の平均、
を採用する。
【0076】
どの券種でどの画像を使うかは、汚損度検出領域の面積で決定する。つまり、汚損度検出領域の面積が大きいほど、評価できる領域が広いため、汚損度に対する精度が高くなる。
【0077】
小領域の分割数は上述した縦5、横14に限定されたものではなく、また、小領域のサイズもすべて同一に限らず、互いに異なっていてもよい。小領域における光強度、つまり、明るさを平均値として計算したが、これは例えば画素の総和(積分値)のような領域全体の明るさを表す評価値であれば良い。更に、小領域における光強度の変動量を分散値として計算したが、これは微分値(変化値)の平均値、また微分値の総和、またノルム等領域全体のばらつき、分散、コントラストを表わす評価値であれば良い。
【0078】
以上のように、汚損度を検出する紙葉類に対して、予め検出しやすい複数の領域を設定し、その領域の汚損度を検知測定することにより、また、紙葉類の印刷パターンがずれている場合、印刷パターンの位置を基準として汚損度検出領域を設定することにより、より高い精度で紙葉類の汚損度を検出することができる。
【0079】
次に、本発明の第5の実施形態に係る紙葉類判別装置について説明する。
本実施形態に係る紙葉類判別装置は、紙葉類において、折れ目部分の汚損度を検知する領域を予め設定し、設定された領域における紙葉類の汚損度を検知し、判別するように構成されている。
【0080】
前述した図9(a)は、判別基準となる紙葉類101の印刷例を示している。左側の白抜きの部分20は透かし領域で用紙の色は白紙、その下側に金額を現す算用数字”10”、中央上部はコントラストの高い線画23があり、その下は比較的淡い色でコントラストの弱い背景画像22、右側には人物画24があり、顔部分24aは比較的淡い色でコントラストが弱く、その下の服装部分24bは濃い線で描かれている。また、紙面全体は濃くてコントラストの無い背景色である。
【0081】
一方、図11(a)は、判別対象となる紙葉類101の可視画像の一例を示している。図9(a)に示す基準となる紙葉類との違いは、用紙に対して印刷パターンが右下方向にずれていることである。図11(b)は、判別対象となる紙葉類101の赤外透過画像の一例を示している。この赤外透過画像は、例えば、図6に示した上面反射画像検知部112の光源306から赤外透過光を紙葉類101の裏面側から照射し、受光部310で透過画像を受光することにより得られる。赤外透過画像と、図11(a)に示す可視画像との相違は、紙葉類101の中央部上方のべたパターン以外は赤外透過では明るい画像であることがわかる。
【0082】
赤外透過画像では、特に、紙葉類101のしわや折れ目が顕著に現れる。そのため、折れ目特徴の検出に赤外透過画像を用いる場合が多い。本実施形態では、紙葉類101の折れ目部分の汚損度に着目する。
【0083】
図11(c)は、折れ目に注目した場合の汚損度検出領域を示している。紙葉類101の長手方向の中央部で2つ折りにした場合に生じる折れ目を検出するための汚損度検出領域30、および、紙葉類101を4つに折った場合に生じる折れ目を検出ための汚損度検出領域31、32を予め設定する。紙葉類101の折れ目は印刷パターンには寄らず、紙葉類101の外形に依存するため、汚損度検出領域は、紙葉類の外形を基準として決定する。
【0084】
図11(d)は、赤外透過の印刷パターンに合わせた検出領域40を示している。この検出領域40は、印刷パターンに依存するため、領域分割は紙葉類101の印刷パターンを基準としている。前述したように、赤外透過画像において、紙葉類101の中央部上方のべたパターン以外は明るい画像となるため、この領域を検出領域40とする。
【0085】
そして、図11(d)に灰色背景部で示すように、図11(c)に示す汚損度検出領域と、図11(d)に示す検出領域40とが重なる部分を、赤外透過画像による汚損度検出領域30a、31a、32aとする。
【0086】
上記紙葉類において、汚損度を判定する領域を下記の手順で抽出する。
【0087】
(1)測定対象となる紙葉類101と同一種類の官封券、またはそれに準じるきれいな券を準備し、基準券とする。基準券の条件としては用紙に対して印刷がずれていないことである。
(2)基準券の全面を縦5分割、横14分割の小領域に分割する。分割の基準は基準券の外形寸法を基にする。
【0088】
(3)基準券の長手方向の寸法に基づき、基準券の端から長手方向長さの1/4、1/2、3/4の位置にかかる領域をそれぞれ抽出し、当該紙葉類の汚損度検出領域31、30、32とする(図11(c)参照)。
【0089】
(4)汚損度を検出する紙葉類101を紙葉類判別装置を通して搬送し、例えば、上面反射画像検知部112により紙葉類上面の反射画像および赤外透過画像を検出する。
(5)検知情報処理部117は、得られた反射画像に基づき、用紙に対して印刷がずれているかどうかを画像処理の手法により判定する。また、印刷がシフトしている方向、シフト量を算出する。
【0090】
(6)上記(5)で求めたシフト量に応じて、紙葉類の検出領域40を求める(図11(d)参照)。
(7)上記(3)と(6)の重なる領域を紙葉類101の汚損度検出領域30a、31a、32aとする(図11(e)参照)。
(8)赤外透過画像の検出情報から検知情報処理部117により、汚損度検出領域30a、31a、32aにおける光強度の平均値、および光強度の分散値を計測する。
【0091】
(9)検知情報処理部117は、計測した平均値、および分散値に従い、紙葉類101の汚損度を評価する。分散値が高いほど紙葉類101は汚損度が進んでいる、すなわち、折れ目が大きい、濃い、ことを示す。
【0092】
小領域の分割数は上述した縦5、横14に限定されたものではなく、また、小領域のサイズもすべて同一に限らず、互いに異なっていてもよい。小領域における光強度、つまり、明るさを平均値として計算したが、これは例えば画素の総和(積分値)のような領域全体の明るさを表す評価値であれば良い。更に、小領域における光強度の変動量を分散値として計算したが、これは微分値(変化値)の平均値、また微分値の総和、またノルム等領域全体のばらつき、分散、コントラストを表わす評価値であれば良い。
【0093】
以上のように、汚損度を検出する紙葉類に対して、予め折り目を検出しやすい複数の検出領域を設定し、その領域の汚損度を検知測定することにより、また、紙葉類の印刷パターンがずれている場合、印刷パターンの位置を基準として汚損度検出領域を設定することにより、より高い精度で紙葉類の汚損度を検出することができる。
【0094】
次に、この発明の第6の実施形態に係る紙葉類判別装置について説明する。
本実施形態によれば、紙葉類判別装置は、判別対象となる紙葉類と同一種類の正券(基準券)と汚損券とのそれぞれについて複数色の画像を取得し、これら画像の光強度データを、減算、加算、乗算、掛算、あるいは、これらの組合せで算出し、基準券の画像と汚損権とのデータの差が最も顕著となる演算式を採用し、この演算式に基づいて、判別対象となる紙葉類の検出画像の汚損度を判別するように構成されている。
【0095】
図12は、判別対象となる紙葉類と同一種類の官封券、またはそれに準じるきれいな券(正券基準券)の紫外(UV)画像、青(B)画像、緑(G)画像、赤(R)画像、および赤外(IR)透過画像の一例を示し、それぞれ各波長領域の濃淡画像を示している。
【0096】
図12(a)に示す正券基準券の紫外画像を代表して説明すると、印刷パターンは、透かし部20、印字部21、中央上部の線画23、中央下部の背景画像22、人物画24の顔部分24a、人物画の服装部分24b、背景部26を有している。それぞれの部分の明るさ、光強度の分散値は、複数色の画像毎に異なる。つまり、前述した表1、表2で示した小領域ごとの平均値および分散値は、複数色の画像毎に異なる値を持つ。
【0097】
各色の画像ごとの演算により、紙葉類の汚損度を判別する手順について以下に説明する。
(1)測定対象となる紙葉類101と同一種類の基準券であって、汚れがなく、印刷ズレのない基準券を準備する。この基準券について、例えば、前述した上面反射画像検知部112および検知情報処理部117により、図12(a)〜図12(e)に示す4色の反射画像、および1つの赤外透過画像を所得する。
【0098】
この際、検知情報処理部117の受光部310において、光電センサ303として波長領域400〜700nmに感度を持つ可視領域の画像センサ、400nm以下に感度を持つ近紫外領域の画像センサ、700nm以上に感度を持つ近赤外センサのうちの1つ以上を用いる。波長領域400〜700nmに感度を持つ可視領域の画像センサは、青色領域、緑色領域、赤色領域、全可視領域のいずれかに感度を持つ画像センサのうち1つ以上のセンサで構成されている。また、反射画像、透過画像の撮像時、レンズ304の前に、紫外線を透過するフィルタ、青色を透過するフィルタ、緑色を透過するフィルタ、赤色を透過するフィルタ、赤外を透過するフィルタを順次配置した状態で、受光部310により受光する。
続いて、検知情報処理部117は、紫外、赤、緑、青、赤外透過画像(図12(a)〜図12(e))の、7つの領域、すなわち、透かし部20、印字部21、中央上部の線画23、中央下部の背景画像22、人物画24の顔部分24a、人物画の服装部分24b、背景部26における光強度の平均値、および光強度の分散値を画像ごとに算出する。
【0099】
(2)測定対象となる紙葉類101と同一種類の券であって、流通により汚損した券で印刷ズレのない基準汚損券を準備する。上記(1)と同様の方法により、基準汚損券について、検知情報処理部117は、紫外、赤、緑、青、赤外透過画像(図12(a)〜図12(e))の、7つの領域、すなわち、透かし部20、印字部21、中央上部の線画23、中央下部の背景画像22、人物画24の顔部分24a、人物画の服装部分24b、背景部26における光強度の平均値、および光強度の分散値を画像ごとに算出する。
【0100】
(3)検知情報処理部117は、図13に示す演算式に従い、基準券の2色以上の画像について平均値および分散値の加算、減算、乗算、除算の組み合わせを計算する。例えば、2色以上の画像について平均値および分散値の減算、例えば|R−G|、|IR−B−G|、2色以上の画像について平均値および分散値の加算、例えばG+B、UV+IR+R、あるいは2色以上の差分と和の組み合わせを計算する。または、2色以上の画像について平均値および分散値の乗算、例えばR*B、IR*R*B、2色以上の画像データの除算、例えばG/B、UV/IR/B、あるいは2色以上の画像データの乗算と除算の組み合わせを計算する。
<演算の一例>
A:UV、B:RED、 式:3A−B ⇒ |3*UV−RED|
||は絶対値を表す。
【0101】
(4)図13の演算式に従い、基準汚損券の2色以上の画像について平均値および分散値の加算、減算、乗算、除算の組み合わせを計算する。
(5)上記(3)、(4)の演算結果から、基準券の各演算結果と標準汚損券の対応する各演算結果との差を、上記7つの領域、すなわち、透かし部20、印字部21、中央上部の線画23、中央下部の背景画像22、人物画24の顔部分24a、人物画の服装部分24b、背景部26ごとに求める。
(6)上記(5)の差が、あるしきい値より大きくなる演算式がある場合、その演算式を選択し、すなわち、基準券と基準汚損券とで差が大きい色または色の演算式を選択し、汚損度判別用の演算式として用いる。
【0102】
(7)汚損度を検出する紙葉類101を紙葉類判別装置を通して搬送し、例えば、上面反射画像検知部112により紙葉類上面の複数色の反射画像および赤外透過画像を検出する。
(8)検知情報処理部117は、上記(6)で選択された演算式に従い、2色以上の画像について平均値および分散値を演算し、紙葉類101の汚損度を判別する。分散値が高いほど紙葉類101は汚損度が進んでいることを示す。
【0103】
以上のように構成された紙葉類判別装置によれば、基準券と基準汚損券とについて複数色の画像を取得し、これらの画像間で差が大きい色または色の演算式を選択し、汚損度判別用の演算式として用いることにより、より高い精度で紙葉類の汚損度を検出することができる。
【0104】
また、上述した各実施形態によれば、予め判別対象となる紙葉類の画像的特徴を把握し、単一の光学系と処理回路により、濃淡汚れやしわ、折れを高精度に検知可能な紙葉類判別装置を提供することができる。
【0105】
なお、第6の実施形態において、第3、第4、第5の実施形態で示したような、画像を小領域に分割して検出する概念を導入しても良い。つまり、紫外、赤、緑、青、赤外画像(a)〜(e)の平均値および分散値を求める際、各画像を例えば、5×14の小領域に分け、小領域毎に計算しても良い。例えば、画像パターンの透かし部20は、小領域のB2、B3、B4、C2、C3、C4、D2、D3、D4に相当する。そして、その小領域ごとに色演算を行い、その結果から汚損度判定に用いる演算式を決定してもよい。
また、図13に示す演算式は、2波長間の1倍、2倍、3倍の加減算であるが、n波長間のm倍までの加減算、乗除算であっても良い。
【0106】
また、第6の実施形態において、検出の基準とする紙葉類は、汚れがなく印刷ズレのない基準券、および流通により汚損した券で印刷ズレのない基準汚損券をそれぞれ1枚としたが、それぞれ複数枚の基準券、基準汚損券に基づいて色演算式を選定するようにしてもよい。
【0107】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。判別対象となる紙葉類は、上述した券に限らず、種々の紙葉類に適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
100…紙葉類判別装置、101…紙葉類、111…透過画像検知部、
112…上面反射画像検知部、113…下面反射画像検知部、
117…検知情報処理部、220…前処理部、230…データ記憶部、
240…検知CPU、301、302、306…光源、303…光電センサ、
310…受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象となる紙葉類の表面の画像を検出する画像検知部と、
前記画像検知部からの検知情報を処理し、前記紙葉類の汚損度を判別する検知情報処理部と、を備え、
前記画像検知部は、前記紙葉類の表面に、異なる2方向から光を照射する複数の光源と、前記紙葉類の表面からの反射光を受光する受光部と、を有し、
前記検知情報処理部は、前記複数の光源を同時に点灯して検出された画像から前記紙葉類の濃淡汚れを検知し、前記複数の光源の1つを点灯して検出された画像から前記紙葉類のしわ、折れを検知する紙葉類判別装置。
【請求項2】
前記複数の光源は、前記紙葉類の表面に垂直な垂線に対して対象に、かつ、同一角度だけ互いに反対方向に傾斜して設けられている請求項1に記載の紙葉類判別装置。
【請求項3】
前記検知情報処理部は、前記複数の光源を同時点灯、1つ光源を点灯、他の1つ光源を点灯、複数の光源を同時点灯のパターンを繰り返して前記紙葉類を照明し、点灯パターン毎に前記紙葉類の反射画像を検出する請求項1に記載の紙葉類判別装置。
【請求項4】
前記画像検知部は、前記紙葉類の裏面側に設けられ前記紙葉類を透過する透過光を前記紙葉類に照射する透過光源を備え、
前記検知情報処理部は、前記複数の光源を同時点灯、1つ光源を点灯、他の1つ光源を点灯、前記透過光源を点灯、複数の光源を同時点灯のパターンを繰り返して前記紙葉類を照明し、点灯パターン毎に前記紙葉類の反射画像および透過画像を検出する請求項1に記載の紙葉類判別装置。
【請求項5】
検査対象となる紙葉類の表面の画像を検出する画像検知部と、
前記画像検知部からの検知情報を処理し、前記紙葉類の汚損度を判別する検知情報処理部と、を備え、
前記検知情報処理部は、前記紙葉類と同一種類の基準紙葉類について、前記画像検知部により予め画像を検出し、検出された画像を複数の小領域に分割して、各小領域の光強度の平均値および分散値を計算し、平均値が大きく分散値の小さな複数の小領域を汚損度検出領域として選定し、前記検査対象となる紙葉類の表面の画像を前記画像検知部により検出し、前記検出された画像の内、前記選定された汚染度検出領域の汚損度を判別する紙葉類判別装置。
【請求項6】
前記検知情報処理部は、各小領域の画素の総和(積分値)および画素間の微分値の総和を計算し、積分値が大きく微分値の総和の小さな小領域を汚損度検出領域として選定する請求項5に記載の紙葉類判別装置。
【請求項7】
前記検知情報処理部は、各小領域の明るさを表す評価値、および明るさのばらつき、分散、コントラスを表す評価値を計算し、前者が大きく後者が小さな小領域を汚損度検出領域として選定する請求項5に記載の紙葉類判別装置。
【請求項8】
前記検知情報処理部は、前記紙葉類の外形に合わせて前記小領域を選定する請求項5に記載の紙葉類判別装置。
【請求項9】
前記検知情報処理部は、紙葉類の印刷パターンに合わせて前記小領域を選定する請求項5に記載の紙葉類判別装置。
【請求項10】
前記検知情報処理部は、前記紙葉類の表裏に依存することなく、前記汚損度検知領域の選定を優先して行う請求項5に記載の紙葉類判別装置。
【請求項11】
紙葉類の表面の複数色の画像を色毎に検出する画像検知部と、
前記画像検知部からの検知情報を処理し、前記紙葉類の汚損度を判別する検知情報処理部と、を備え、
前記検知情報処理部は、前記紙葉類と同一種類の基準紙葉類および汚損された汚損基準紙葉類のそれぞれについて、前記画像検知部により予め複数色の画像を検出し、検出された各画像の光強度の平均値および分散値を計算し、前記基準紙葉類の2色以上の画像の平均値および分散値を減算、加算、あるいは、2色以上の差分と和の組み合わす演算式により算出し、前記汚損基準紙葉類の2色以上の画像の平均値および分散値を減算、加算、あるいは、2色以上の差分と和の組み合わせの演算式により算出し、それぞれ基準紙葉類の画像と汚損基準紙葉類の画像とで算出値の差が大きい色の演算式を選択し、前記画像検知部により前記検査対象となる紙葉類の複数色の画像を検出し、検出された各画像の光強度の平均値および分散値を計算し、前記紙葉類の2色以上の画像の平均値および分散値を前記選択された演算式により算出し、その算出結果に基づいて前記紙葉類の汚損度を判別する紙葉類判別装置。
【請求項12】
前記検知情報処理部は、前記基準紙葉類の2色以上の画像の平均値および分散値を乗算、除算、あるいは、2色以上の乗算と除算の組合せの演算式により算出し、前記汚損基準紙葉類の2色以上の画像の平均値および分散値を乗算、除算、あるいは、2色以上の乗算と除算の組合せの演算式により算出し、それぞれ基準紙葉類の画像と汚損基準紙葉類の画像とで算出値の差が大きい色の演算式を選択する請求項11に記載の紙葉類判別装置。
【請求項13】
前記検知情報処理部は、前記基準紙葉類の2色以上の画像の平均値および分散値を加算、減算、乗算、除算の組み合わせの演算式により算出し、前記汚損基準紙葉類の2色以上の画像の平均値および分散値を加算、減算、乗算、除算の組み合わせの演算式により算出し、それぞれ基準紙葉類の画像と汚損基準紙葉類の画像とで算出値の差が大きい色の演算式を選択する請求項11に記載の紙葉類判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−277252(P2010−277252A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127886(P2009−127886)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】