説明

紙葉類識別装置

【課題】
磁気検出を安定的に行い、紙葉類の識別誤りを低減させる。
【解決手段】
紙葉類を一枚ずつ搬送する搬送路を形成すると共に、搬送路を境にして分離され、所定の回転軸を支点にして開閉可能な搬送路上側の本体上フレーム1、及び搬送路下側の本体下フレーム5と、本体下フレーム5に固定され、紙葉類が搬送される間隔を維持する内側の対向する位置に配置された、紙葉類に内在する磁気成分を検出するための少なくとも一対の励磁コイル及び検出コイルを備えた磁気検出ブロック3とを有する。本体上フレーム1と本体下フレーム5が閉じられて搬送路を形成するとき、磁気検出ブロックは本体上フレームに形成された切り欠部のような所定部に収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙葉類識別装置に係り、特に磁気検出器により紙幣に内在する磁気成分を検出して紙幣を識別する紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣の真偽等を識別するために、紙幣類識別装置は、励磁用コイルと検出用コイルを備えた磁気検出器を実装している。磁気検出器は、通常、紙幣の搬送面を境界にして上下に分離した本体フレーム自体に取り付けられたり、搬送面を囲い込むロの字型フレームへの取り付けてられている。また、特開2001−21631号公報(特許文献1)に開示されるように、搬送面を挟み込むコの字型フレームに取り付けられている。コの字型フレーム、ロの字型フレームはいずれも識別装置の本体フレームに固定される。搬送面を保守するために搬送路上下部を片開きにて開く構造がとられる場合、上下のコイルは、上下分離したそれぞれのフレームに取り付けられる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−21631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例のような励磁用コイルと検出用コイルからなる磁気検出器において、そのコイル間の距離変動は、出力の不安定性をもたらすため、その取り付け構造においては、コイル間の距離変動を抑えることが求められる。
【0005】
また、搬送路を保守するために、搬送路上側のフレームと下側のフレームが分離され、搬送路の片側近傍の接合部を支点として開閉可能なフレームの上側に励磁用コイルが、その下側に検出用コイル(またはその逆)が分かれて取り付けられている場合、上下のフレームの組立ばらつきによるコイル間の距離の機体差、取付ガタによる距離の変動が発生する。
【0006】
ロの字型フレームの場合、上下のコイルが1つのフレームに固定されるためコイル間距離の変動は抑えられるが、搬送面を一周囲い込む形となるため磁気検出器として大きくなり、紙葉類識別装置内での取り付け位置の制約が高くなる。
そこでコの字型フレームとすることで、ロの字型に比べて磁気検出器を小型化することはできるが、コの字型フレーム先端のたわみにより、コイル間距離の変動性についてはロの字型に劣るという課題が残る。
【0007】
本発明の目的は、磁気検出を安定的に行い、紙葉類の識別誤りを低減させることができる紙葉類識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、好ましくは、紙葉類の磁気成分を検出することにより紙葉類を識別する紙葉類識別装置において、紙葉類を一枚ずつ搬送する搬送路を形成すると共に、搬送路を境にして分離され、所定の回転軸を支点にして開閉可能な搬送路上側の本体上フレーム、及び搬送路下側の本体下フレームと、
本体下フレームに固定され、紙葉類が搬送される間隔を維持する内側の対向する位置に配置された、紙葉類に内在する磁気成分を検出するための少なくとも一対の励磁コイル及び検出コイルを備えた磁気検出ブロックとを有し、かつ、本体上フレームと本体下フレームが閉じられて搬送路を形成するとき、磁気検出ブロックは本体上フレームに形成された所定部に収容するように構成した紙葉類識別装置である。
【0009】
好ましい例によれば、前記磁気検出ブロックは、その両端が略直角に曲がったコの字型フレームと、コの字型フレームの内側壁の対向する位置に励磁コイル及び検出コイルを備えて構成され、かつコの字型フレームは、搬送面を挟み込むように搬送路の端にて本体下フレームに固定され、本体上フレームと本体下フレームが閉じられて搬送路を形成するとき、コの字型フレームは本体上フレームに形成された所定部に係合するように構成される。
このような構成により、コの字型フレームにて搬送面の保守が可能となり、紙葉類識別装置が振動を受けてもコの字型フレームの上辺下辺は同じようにたわみ、上下コイル間の距離は一定に保たれる。
【0010】
また、好ましくは、コの字型フレームの識別装置本体フレームへの取り付け構造として、コの字型フレームは、縦辺中央にピボットを有し、ピボットを軸として弾性部材にて上下に可動する構造としたものである。このような構成により、紙葉類識別装置が振動した時にコの字型フレームはピボットを軸に振動を打ち消すように上下に動き、コイルの取り付けられたコの字型フレーム先端のたわみを低減させる。
【0011】
また、他の例として、コの字型フレームの可動させる構造として、コの字型フレームは、弾性部材にて上下にスライドするように本体フレームに取り付ける構成とした。これにより、紙葉類識別装置が振動した時にコの字型フレームはスライドレールに沿って振動を打ち消すように上下に動き、コイルの取り付けられたコの字型フレーム先端のたわみを低減させることができる。
【0012】
さらに、好ましくは、励磁コイル及び検出コイルの近傍にそれぞれ搬送面上の検出媒体との距離を検出するセンサを備え、励磁コイル及び検出コイルと検出媒体との検出距離を基に、励磁コイル及び検出コイルに対し、検出磁気出力値の補正を行う補正手段を備える。この補正手段により、コの字型フレーム先端のたわみ、上下移動による、コイルに対する紙葉類搬送位置の変動を検出し、搬送位置の変動による検出磁気出力の変動の影響を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紙葉類識別装置においてコの字型フレームの上下に取り付けられた励磁コイルと検出コイルの間の距離の変動を抑えることができる。このため、磁気検出を安定的に行え、紙葉類の識別誤りを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、紙幣の真贋を鑑別する紙幣識別装置に適用した一実施形態について説明する。
紙幣識別装置は、例えば銀行の金融機関などに設けたATM(Automated Tellers Machines)などに組み入れられ、紙幣の真贋を識別する装置である。
【0015】
図1は、一実施例における紙幣識別装置を示す斜視図である。
本体上フレーム1と本体下フレーム5は搬送路6の後方近傍に設けた回動部を支点として開閉する構成であり、図1は搬送路6を開き見た状態を示している。紙幣4は、搬送路6上を矢印A方向へ搬送される。
搬送路6を開くことにより、紙幣や異物が搬送路6上に残留した場合、それらを容易に除去することができ、またセンサ面の清掃等の保守を容易に行える。本体下フレーム5の左右にコの字型フレーム3a、3bが設けられ、一方、本体上フレーム1にはコの字型フレーム3a、3bが係合する切り欠部2a、2bが設けられている。
【0016】
図2は、本体上フレーム1及び本体下フレーム5を閉じた状態を示す紙幣識別装置の断面図である。図2は紙幣識別装置内にコの字型フレームを取り付け状態を示す。
コの字型フレーム上辺先端付近に励磁コイル7、下辺先端付近に検出コイル8が設けられる。コの字型フレーム3は、コの字の縦辺部16にて本体下フレーム5に固定され、コの字型上辺と下辺は本体上フレーム1、下フレーム5には接しない構造となっている。この構造により、例え紙幣識別装置が振動した時でも、コの字の上辺17と下辺18が同じたわみとなるため、励磁コイル7と検出コイル8の間の距離が変動することが抑えられる。
【0017】
また、コの字型フレーム3の上辺の励磁コイル7の近傍には距離検出センサ9を実装し、このセンサ9によって、搬送される紙幣4までの距離Lを検出する。検出した距離情報と、予め得られている検出コイル8と紙幣4との距離による出力変化特性情報によって、何れの距離の位置を紙幣が通過しても同じレベルの出力信号となるように、検出コイル8にて検出される磁気成分の補正を行う。
【0018】
次に、図3及び図4を参照して、コの字型フレーム3の本体上フレーム1及び本体下フレーム5への取り付け構造について説明する。
図3は、ピボット10によってコの字型フレーム3を本体下フレーム5に取り付けている例である。ピボット10はその点を中心としてコの字型フレーム3が上下に回動する軸である。紙幣識別装置が振動した時に、コの字型フレームはピボット10を軸に振動を打ち消すように上下方向(矢印B)に動く。そのため、コイルの取り付けられたコの字型フレーム先端のたわみを低減させ、コの字型フレームの上下に取り付けられた励磁コイル7と検出コイル8の間の距離の変動を抑えることができる。
【0019】
紙幣識別装置が静止している時には、コの字型フレームを上下方向の略中間の定位置に維持するため、および、振動時には上下に動いた分を元に戻すために、例えばバネ部材のような弾性材12が実装されている。尚、弾性部材とは、例えばバネ部材以外にスポンジ又は弾性ゴムでもよい。
【0020】
図4は、他の例による取り付け構造例である。
この例は、コの字型フレーム3がスライドレール11を有して本体下フレーム5に取り付けられている。コの字型フレーム3はスライドレール10に沿って上下C方向に可動である。もし紙幣識別装置が振動した時には、コの字型フレーム3はスライドレール11に沿って振動を打ち消すように上下C方向に動く。このため、コイルの取り付けられたコの字型フレーム3の先端のたわみを低減させ、コの字型フレーム3の上下に取り付けられた励磁コイル7、検出コイル8の間の距離の変動を抑えることができる。紙幣識別装置が静止している時には、コの字型フレームを上下方向の略中間の定位置に維持するため、および、振動時には上下に動いた分を元に戻すために、例えばバネ部材のような弾性材13a、13bが実装されている。尚、弾性部材はスポンジや弾性ゴムでもよい。
【0021】
図5は、コの字型フレーム3の本体下フレームへの取り付けを側面から見た図である。コの字型フレーム3は、防振材14a、14bを介して本体下フレーム5から突き出たコの字型フレーム取付部19a、19bに挟まれる形で固定される。防振材14a、14bにより紙幣識別装置の振動を打ち消すように動くコの字型フレームの振動を緩やかに減衰させ、振動し続けることを抑える。
【0022】
図6は本体下フレームの搬送路面を上方から見た図である。
搬送路の左右にコの字型フレーム3a、3bを備え、コの字の縦辺部16は防振材14a、14bを介して本体下フレームから突き出たコの字型フレーム取付部19a、19bに挟まれる形で取り付けられている。紙幣4は矢印A方向に搬送される。
コの字型フレーム3と識別部本体フレーム5とはそれぞれ櫛状突起15のように入り組んだ形状で隣接する。コの字型フレーム3はその上辺部と下辺部の間の距離の変動を抑えるために、上下に可動である。そのため、識別部本体フレームとは接触しないように隙間を開けて隣接させる。
【0023】
図7はコの字型フレーム3の下辺部の本体下フレーム5との搬送方向断面図である。即ち図6中のX−X'断面図である。
コの字型フレーム3と本体下フレーム5の交互の櫛状の突起15はそれぞれ逆方向の傾斜を持って入り組み合う構成である。
上述した図6、図7の構成により、紙幣識別装置の振動を吸収する際にコの字型フレーム3が上下に移動しても、コの字型フレーム3と識別部本体フレームの段差部分には常に傾斜が形成されているため、紙幣が段差部分に衝突して発生するジャムを低減することができる。
【0024】
上述したように、本実施例によれば、安定した磁気検出が行え、紙幣識別における識別誤りを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施例における紙幣識別装置を示す斜視図。
【図2】紙幣識別装置内でのコの字型フレームの取付位置関係を示す断面図。
【図3】一実施例によるコの字型フレーム3の本体上下フレームへの取り付け構造を示す断面図。
【図4】他の実施例によるコの字型フレーム3の本体上下フレームへの取り付け構造を示す断面図。
【図5】一実施例におけるコの字型フレーム3の本体下フレームへの取り付け構造を示す側面図。
【図6】一実施例による本体下フレームの搬送路面を示す上面図。
【図7】一実施例による本体下フレーム搬送路の搬送方向断面図。
【符号の説明】
【0026】
1:本体上フレーム 2:切り欠部 3,3a,3b:コの字型フレーム 4:紙幣 5:本体下フレーム 6:搬送路 7:励磁コイル 8:検出コイル 9:距離検出センサ 10:ピボット 11:スライドレール 12,13:弾性材 14a、14b:防振材 15:櫛状突起 16:コの字型フレーム縦辺部 17:コの字型フレーム上辺部 18:コの字型フレーム下辺部 19a、19b:本体下フレームのコの字型フレーム取付部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の磁気成分を検出することにより紙葉類を識別する紙葉類識別装置において、
紙葉類を一枚ずつ搬送する搬送路を形成すると共に、該搬送路を境にして分離され、所定の回転軸を支点にして開閉可能な搬送路上側の本体上フレーム、及び搬送路下側の本体下フレームと、
該本体下フレームに固定され、紙葉類が搬送される間隔を維持する内側の対向する位置に配置された、紙葉類に内在する磁気成分を検出するための少なくとも一対の励磁コイル及び検出コイルを備えた磁気検出ブロックとを有し、
かつ、該本体上フレームと該本体下フレームが閉じられて搬送路を形成するとき、該磁気検出ブロックは該本体上フレームに形成された所定部に収容するように構成することを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記磁気検出ブロックは、その両端が略直角に曲がったコの字型フレームと、該コの字型フレームの内側壁の対向する位置に該励磁コイル及び該検出コイルを備えて構成され、かつ該コの字型フレームは、搬送面を挟み込むように該搬送路の端にて該本体下フレームに固定され、
該本体上フレームと該本体下フレームが閉じられて搬送路を形成するとき、該コの字型フレームは該本体上フレームに形成された所定部に係合するように構成することを特徴とする請求項1の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記コの字型フレームは、縦辺中央にピボットを有し、該ピボットを軸として弾性部材にて上下に可動することを特徴とする請求項2の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記コの字型フレームは、弾性部材にて上下にスライドする構造によって装置本体フレームに取り付けられることを特徴とする請求項2の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記励磁コイル及び検出コイルの近傍にそれぞれ搬送面上の検出媒体との距離を検出するセンサを備え、該励磁コイル及び該検出コイルと紙葉類との検出距離を基に、該励磁コイル及び該検出コイルに対し、検出磁気出力値の補正を行う補正手段を有する請求項1乃至4のいずれかの紙葉類識別装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、バネ部材、又はスポンジ、又は弾性ゴムであることを特徴とする請求項3又は4の紙葉類識別装置。
【請求項7】
前記コの字型フレームは、防振材を介して前記本体下フレームから突き出たコの字型フレーム取付部に挟まれる構造で固定されることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかの紙葉類識別装置。
【請求項8】
前記コの字型フレームと前記本体下フレームとはそれぞれ櫛状突起形状で隣接することを特徴とする請求項2乃至7のいずれかの紙葉類識別装置。
【請求項9】
前記本体上フレームの前記所定部には切り欠部が形成され、該本体上フレームと該本体下フレームが閉じられたとき、該コの字型フレームは該切り欠部に係合するように構成されることを特徴とする請求項2乃至8のいずれかの紙葉類識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−15729(P2008−15729A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185257(P2006−185257)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】