説明

素子プレス機構装置

【課題】コンデンサー、二次電池等の帯状物捲回体製造時の捲回した円筒形状素子を偏平形状にプレス成形する際に、成形対象となる素子が大外径、且つ内径も大きい薄肉厚素子の場合でも、プレスする過程で素子の頂点付近から崩れることがない素子プレス機構装置を提供すること。
【解決手段】巻回した素子の内周部分に素子プレス補助治具6を挿入し、素子をプレスする方向と交差する方向へ該治具6を動作させて、素子内周部分を加圧し押し広げることにより素子形状を矯正しながら扁平形状にプレス成形する素子プレス機構装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンデンサー、二次電池等の帯状物捲回体製造の過程で用いられる捲回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンデンサー、二次電池等の帯状物捲回体は、それぞれロール状に巻き上げられた素子材料(原反)を捲回機に取り付け、捲回巻芯部にて捲回されたものを素子としている。
【0003】
このような捲回装置では、図1に示すように、それぞれロール状に巻き上げられた素子材料1(原反)を、捲回部2まで間欠的且つ断続的に送り出し、図2に示すように、巻心3によって捲回し、素子材料1を捲回素子品種の設定外径により算出された規定の長さに切断し、図3に示すような捲回素子4,4a,4bとしている。捲回部2には巻芯回転用スピンドルを少なくとも1軸以上有し、素子材料1の巻き取り工程と素子材料1を切断し、巻き止めテープの貼付けやヒーターによる熱溶着により、素子材料1の終端部巻き止め処理を行い、捲回素子4,4a,4bを装置より排出する。
【0004】
排出された捲回素子4,4a,4bはエアシリンダ等を動力源とする素子プレス機構部にて、図4に示すように捲回素子の中心方向へ対向する2方向から加圧し、捲回素子4,4a,4bはプレス方向と交差するA,A’方向へ逃げ広がりながら成形されて図5に示すような扁平形状となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の素子プレス機構を用いた捲回素子のプレス成形では、成形対象となる捲回素子が図6に示すような大外径、且つ外径と内径の差が少ない薄肉厚素子5(以下単に捲回素子5と称す)の場合、単純に捲回素子の中心方向へ対向する二方向から加圧した場合、捲回素子5は素子肉厚が薄く弱いため、プレス方向と交差するA、A’方向へ逃げ広がらず、図7に示すようにプレスする過程で素子の頂点付近から崩れるように潰れてしまい、想定した扁平形状にプレスできない問題があった。この傾向は素子形状が扁平形状に近似した形状<楕円形状<円筒形状の順となり、捲回した素子形状が円筒形状になってゆくにつれてより顕著に現れる。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するものであり、捲回素子5が想定通りの偏平形状にプレス成形出来る素子プレス機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、捲回素子5プレス成形する際にプレス方向と交差するA、A’方向へ強制的に逃がし広がらせながらプレス成形することが可能な構成とした。
【発明の効果】
【0008】
この構成によれば、捲回素子5をプレス成形する際に捲回素子5の内周面部分へプレス方向と交差するA、A’方向への動作が可能な素子プレス補助治具6を挿入し、素子内周面部分をA、A’方向へ加圧し逃がし広がらせながらプレス成形することにより、捲回素子5のプレス過程において素子の頂点付近から崩れるように潰れてしまう問題を防止することが可能となる。
【0009】
本発明に係る素子プレス機構によれば、捲回素子5のプレス成形時に素子プレス補助治具6を捲回素子5の内周面部分へ挿入し、プレス方向と交差するA、A’方向へ移動させ、捲回素子5を逃がし広がらせてプレス過程の素子形状を矯正しながらプレス成形することにより、大外径、且つ外径と内径の差が少ない薄肉厚素子のプレス成形時においても、想定通りの扁平形状にプレス成形することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面により具体的に説明する。図8は本発明の実施に係る素子プレス補助治具機構搭載の素子プレス機構装置を示す図である。この素子プレス機構装置は、図9に示すように素子プレス補助治具6が捲回素子5の内周面部分に挿入され、素子プレス動作と同時に駆動源7により捲回素子5をA、A’方向へ加圧し強制的に逃がし広がらせながらプレス成形することにより、大外径、且つ外径と内径の差が少ない薄肉厚素子を想定通りの扁平形状にプレス成形することが可能となる。
【0011】
本発明に係る素子プレス機構装置の動作については、まず、図9に示すように、素子プレス補助治具6が移動機構8により捲回素子5の内周面部分に挿入され通り抜け、素子プレス補助治具受け9に挿入される。次に、素子プレス台10を捲回素子5の中心方向へ動作させ加圧すると同時に、先に挿入された素子プレス補助治具6は駆動源7を用いてプレス方向と交差するA、A’方向へ移動するように加圧される。これにより捲回素子5はプレス成形過程において、素子プレス補助治具6によりA、A’方向に形状を矯正されながら素子プレス機構により偏平形状に成形されることになる。なお、素子プレス補助治具6の駆動源7としてはエアシリンダをその動力源とする構成や、電動アクチュエーター等モーターをその動力源とする構成がある。
【0012】
但し、素子プレス補助治具6を挿入した状態で完全にプレスすると、当然のことながら素子プレス補助治具6は素子プレス台10に捲回素子5と共に挟まれてしまうことになり、捲回素子5から素子プレス補助治具6を引き抜くことが困難になると同時に捲回素子5にもダメージを与える結果となる。
【0013】
そこで、本願素子プレス機構装置では素子プレス台10が2段階動作可能な構造とし、一段目の動作は素子プレス補助治具6を素子プレス台10で捲回素子5と共に挟み込んでしまう直前で一旦停止させ、素子プレス補助治具6をプレス成形途中の捲回素子5の内周面部分から引き抜いた後、二段目の動作で捲回素子5を完全にプレスし図5に示すような扁平形状に成形する構成とした。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 捲回装置の概略図。
【図2】 捲回部巻芯の詳細を示す拡大概略図。
【図3】 巻き上がり素子を示す図。
【図4】 従来の素子プレス機構を示す概略図。
【図5】 プレスにより扁平形状に成形された素子を示す図。
【図6】 大外径、薄肉厚の巻き上がり素子を示す図。
【図7】 従来の素子プレス機構にて大外径、薄肉厚素子をプレスする過程のイメージ図。
【図8】 素子プレス補助機構搭載の素子プレス機構装置を示す概略図。
【図9】 素子プレス補助治具が挿入された状態を示す概略図。
【符号の説明】
【0015】
1 素子材料
2 捲回部
3 巻芯
4 巻き上がり素子
5 薄肉厚素子
6 素子プレス補助治具
7 素子プレス補助治具移動用駆動源
8 素子プレス補助治具移動機構
9 素子プレス補助治具受け
10 素子プレス台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサー、二次電池等の帯状物捲回体製造の過程で用いられる捲回装置に係わり、捲回した素子を加圧して偏平形状(板状)に成形するプレス機構装置において、捲回した素子の内周面部分に素子プレス補助治具を挿入し、素子をプレスする方向と交差する方向へ素子プレス補助治具を動作させて、素子内周面部分を加圧し押し広げることにより素子形状を矯正しながら偏平形状(板状)にプレス成形することを可能とした素子プレス機構装置。
【請求項2】
請求項1の素子プレス機構装置において、素子プレス補助治具を使用し、捲回素子形状を矯正しながらプレス成形することにより、プレス成形した際の捲回素子形状を安定して一定の偏平形状(板状)にプレス成形できることを特徴とした素子プレス機構装置。
【請求項3】
請求項1、2の素子プレス機構装置において、捲回された素子形状が円筒形状や楕円形状、偏平形状に近似した形状により、素子プレス補助治具の形状を円柱形状や楕円形状、扇形状、三角形状、板形状に交換することで種々の捲回素子形状に対応することを可能とした素子プレス機構装置。
【請求項4】
請求項1,2,3の素子プレス機構装置において、素子プレス補助治具を素子のプレスする方向と交差する方向へ加圧動作させる動力源をエアシリンダとした場合、そのエア配管経路中に圧力調整弁を設けることにより、最適な圧力で素子内周面部分を加圧し押し広げ素子形状を矯正できることを可能とした素子プレス機構装置。
【請求項5】
請求項4の素子プレス機構装置において、素子プレス補助治具を素子のプレスする方向と交差する方向へ加圧動作させる動力源を電動アクチュエーター等のモーターとすることで、再現性や繰り返し精度をより向上させることを特徴とする素子プレス機構装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−157676(P2007−157676A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380867(P2005−380867)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000140845)株式会社皆藤製作所 (19)
【Fターム(参考)】