説明

素子基板およびその製造方法

【課題】基板の反りや破損等の製造上の問題を回避しつつ、ヘッドのコンパクト化、記録性能の向上、コストダウンを図る。
【解決手段】素子基板10は、基板11と、基板11を貫通するインク供給口13と、基板11上に設けられ、インク供給口13から流入したインクに吐出エネルギーを供給するエネルギー供給手段16とを有している。素子基板10の製造方法は、基板11上にエネルギー供給手段16を形成する工程と、その後に、基板11を薄化する工程と、その後に、基板11にインク供給口13を形成するインク供給口形成工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の素子基板およびその製造方法に関し、特に電気熱変換素子を用いる方式の素子基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の記録方法は、インク吐出方式の違いから、ピエゾ素子等の電気機械変換素子を用いる方式、レーザー等の電磁波を照射してインクを発熱させ、この発熱による作用でインク滴を吐出させる方式、発熱抵抗体を有する電気熱変換素子によってインク滴を加熱して、インク滴を吐出させる方式などに分類される。電気熱変換素子を用いる方式のインクジェット記録方法は、熱エネルギーの作用を受けたインクが加熱されて気泡が生じ、気泡発生に基づく作用力によって、記録ヘッド部先端のオリフィスに液滴が形成され、その液滴が記録媒体に付着して情報の記録が行われるという原理に基づいている。すなわち、熱エネルギーをインクに作用させて、液滴吐出の原動力を得るという点において、他のインク吐出方式とは異なる特徴を有している(特許文献1参照。)。
【0003】
電気熱変換素子を用いる方式のインクジェット記録方法に適用される液体吐出素子は、一般的に600μm程度の厚さを有している基板上に、インク供給口と、インク供給口に連通するインク液吐出部と、熱エネルギーを発生させる発熱抵抗層と、発熱抵抗層をインクから保護する上部保護層と、発生熱を蓄熱する下部層とを有している。また、インク液吐出部は、液体を吐出するオリフィスと、オリフィスに連通しオリフィスにインク液を供給するとともに、発熱抵抗層で発生した熱エネルギーをインク液に供給する熱作用部を備えた液流路とを有している。
【0004】
ところで、インクジェット記録方法においては、記録画像の品質の向上のために液流路、オリフィス、インク供給口等を高密度、高精度で形成する必要がある。このため、例えば、溶解可能な樹脂層を形成し、その上部に被覆層を形成し、被覆層にオリフィスを形成後、樹脂層を溶解して液流路を形成する方法(特許文献2,3参照。)や、オリフィスを形成後、インク供給口をエッチングで形成する方法(特許文献4参照。)などが開示されている。
【0005】
また、ヘッドの実装領域低減やコンパクト化のため、基板の表面(基板の発熱抵抗体が形成されている面)と裏面(反対側の面)とを貫通電極でつなげる方法(特許文献5、6参照。)も開示されている。
【特許文献1】特開昭54−51837号公報
【特許文献2】特開平5−330066号公報
【特許文献3】特開平6−286149号公報
【特許文献4】特開平9−11479号公報
【特許文献5】特開2002−67328号公報
【特許文献6】特開2000−52549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したとおり、記録画像の品質の向上のためには、インク供給口を高密度、高精度で形成する必要がある。また、ヘッドの実装領域低減やコンパクト化の観点から、基板の表面と裏面とを貫通電極でつなげる構成を取った場合に、そのメリットを十分に発揮するためには、貫通電極を高密度で、すなわち、貫通電極の穴径と配列ピッチの双方を低減して配列する必要がある。しかしながら、これらのインク供給口や貫通電極は厚い基板を貫通することから、従来技術において以下の問題があった。
【0007】
(1)インク供給口は基板のエッチングによって形成されるが、基板が厚いと、インク供給口形成の精度が悪くなる。その理由は、基板が厚くなるほどインク供給口の平面方向、垂直方向の加工精度の確保が困難になるためである。その結果、発熱抵抗体とインク供給口との間の寸法のばらつきが大きくなり、吐出性能のばらつきが増大し、印字性能の悪化につながる。また、インク供給口の貫通厚さが大きいので加工時間が長くなり、製作効率が悪化するとともに、真空装置を長時間使用するためコストアップの可能性があった。
【0008】
(2)貫通電極を高密度で配列するには、貫通電極形成用の貫通穴を高密度で配列しなければならない。貫通穴は、レーザ、ドライエッチング等で形成されるが、基板の厚さが厚くなるほど、貫通穴を高密度に配列することが難しかった。その第1の理由は上記の(1)と同様、貫通穴の加工精度上の制約である。すなわち、基板の厚さが厚くなるほど貫通穴の径や垂直方向の加工精度の確保が困難になり、これによって穴径と配列ピッチが制約される。第2の理由は、貫通穴へのめっきの充填性の制約である。貫通穴にめっきによって金属を充填し貫通電極を形成する際に、同一の穴径で基板が厚くなると、穴径に対する深さが増え、貫通穴が細長の寸法比になるため、めっきの充填が困難となる。このため、厚い基板にめっきをするには穴径を大きくしなければならず、これによって穴径と配列ピッチが制約される。また、(1)と同様、製作効率の悪化やコストアップの可能性もあった。
【0009】
このように、基板が厚いと、インク供給口や貫通電極を高密度、高精度で配列することができず、ヘッドのコンパクト化、記録性能の向上、コストダウンに対する制約となる。しかし、発熱抵抗体や電極の形成時には、真空成膜や拡散等のために各種の高温プロセスを伴うため、基板を薄化すると、これらのプロセス中に基板の温度が上がったときに基板の反りや破損等が生じてしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、基板の反りや破損等の製造上の問題を回避しつつ、ヘッドのコンパクト化、記録性能の向上、コストダウンを図ることのできる液体吐出素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の素子基板の形成方法は、基板と、基板を貫通するインク供給口と、基板上に設けられ、インク供給口から流入したインクに吐出エネルギーを供給するエネルギー供給手段とを有する素子基板の形成方法である。そして、上記の課題を解決するため、基板上にエネルギー供給手段を形成する工程と、その後に、基板を薄化する工程と、その後に、基板にインク供給口を形成するインク供給口形成工程とを有している。
【0012】
本発明によれば、厚い基板上で高温プロセスを伴うエネルギー供給手段の形成をおこなうので、高温による基板の反りや破損を防止できる。また、その後に基板の薄化をおこない、薄い基板上でインク供給口の形成をおこうので、インク供給口を高精度、高効率で形成することができる。なお、貫通電極の形成に対しても同様の方法を適用すれば、貫通電極の高密度、高精度の配列も可能となる。
【0013】
また、本発明の素子基板は、基板と、基板を貫通するインク供給口と、基板上に設けられ、インク供給口から流入したインクに吐出エネルギーを供給するエネルギー供給手段とを有している。そして、本発明の素子基板は、50μm〜300μmの厚さであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、インク供給口を高密度、高精度で配置することができるので、エネルギー供給手段とインク供給口間の寸法のばらつきが減少し、吐出性能が向上する。また、インク供給口の加工時間が低減するので、製造効率の向上や加工コストの低減も可能となる。さらに、貫通電極の高密度、高精度の配列も可能となるので、ヘッドの実装領域低減やコンパクト化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の記録ヘッドカートリッジおよび液体吐出素子の構成を図面を参照して説明する。図1(a)には、記録ヘッドカートリッジを記録媒体の方からみた斜視図を、同図(b)には、図1(a)の1b−1b方向(記録媒体の方)からみた液体吐出素子の模式的平面図を、同図(c)には、同図(b)のX−X方向からみた液体吐出素子の模式的断面図を示す。
【0016】
記録ヘッドカートリッジ100は、インクタンク101と、インクタンク101を保持可能なインクホルダ102と、ベースプレート103と、ベースプレート103によって支持され、インクホルダ102の記録媒体Pと対向する位置に取り付けられた液体吐出素子1その他の部材を有している。インクタンク101は記録ヘッドカートリッジ100に着脱可能に取り付けられてもよいが、記録ヘッドカートリッジ100に固定されていてもよい。ベースプレート103はインクの駆動回路や電気配線部材(図示せず)などを有していてもよい。液体吐出素子1は色別に複数個設けられてもよく、この場合は1つのベースプレート103に複数個の液体吐出素子1が取り付けられる。このベースプレート103と液体吐出素子1との集合体は記録ヘッド104を構成する。液体吐出素子1は、記録媒体Pと対向する対向面2の裏面3からインク(図中の太い白抜矢印)および駆動電流(図中の矢印)の供給を受ける。液体吐出素子1の対向面2には複数の吐出口18が設けられ、駆動電流に応じて液滴が吐出され、記録媒体Pへの記録がおこなわれる。
【0017】
液体吐出素子1は基板11の上に、インク液供給手段であるインク供給口13と、インクへの熱エネルギー供給手段である電極15および発熱抵抗体16とが設けられた素子基板10と、インクの流路14と液滴の吐出手段であるオリフィス20とを形成するオリフィスプレート21とを有している。基板11は例えばシリコンで製作され、その厚さは後述するように、基板11の薄化後の強度や搬送中のハンドリング性、貫通電極12用の貫通穴22(図2〜5参照)およびインク供給口13の穴開け加工精度や加工コストから決定されるが、好ましくは50μmから300μm程度である。
【0018】
基板11には、吐出口18の配列方向に、例えば幅約100μmのスリット状のインク供給口13が延び、インク供給口13から各吐出口18に向けて液流路14が分岐している。インク供給口13は1本のスリットでも複数個のスリットに分割されていてもかまわない。液流路14は、基板11とオリフィスプレート21との間の空間部として形成されている。オリフィスプレート21の発熱抵抗体16と対向する位置にはオリフィス20が設けられており、一端は液流路14と接続し、他端は対向面2で吐出口18を形成している。これによって、インクタンクを出たインクは、インク供給口13を通って液流路14内およびその先のオリフィス20に充填される。オリフィスプレート21は、製造方法にもよるが、レーザでノズルおよび吐出口が形成された樹脂フィルム、または、露光、現像されたエポキシ膜である。
【0019】
基板11の上にはアルミニウムからなるU字型の電極15が設けられ、電極15の両端部は貫通電極12によって液体吐出素子1の裏面3に貫通しており、記録内容に応じた駆動電流を受ける。電極15の一部の、液流路14と平面的に重なる位置には、TaNからなり、平面寸法約30μm四方の発熱抵抗体16が設けられている。発熱抵抗体16は、発熱抵抗体16をインクから保護する上部保護層と、発生熱を蓄熱する下部層(ともに図示せず)との間にはさまれている。発熱抵抗体16は電極15からの駆動電流によって発熱し、上部保護層を介して液流路14内にあるインクを加熱する。この結果、液流路14内にあるインクの一部に気泡が発生し、その作用力によって、オリフィス20内の液滴が記録媒体Pに付着して情報の記録が行われる。
【0020】
次に、以上述べた液体吐出素子の製造方法について説明する。図2には、本発明の第1の実施形態に係る液体吐出素子の製造工程をステップ図で示す。図中各欄の左図は図1(b)と同様の向きからみた液体吐出素子の平面図を、右図は左図のX−X線からみた断面図を示し、後述する図3〜5についても同様である。
【0021】
(ステップ61)まず、625μm厚の基板11上にTaN膜およびAl膜をスパッタ法にて成膜し、フォトリソグラフィー技術を用いて発熱抵抗部16と電極15とを形成する。これらのプロセスは高温下でおこなわれるため、基板11は高温にさらされるが、十分に厚い層厚を有しているので、反りや破損が生じることはない。
【0022】
(ステップ62)次に、バックグラインドで裏面3を切削し、基板11厚さを50〜300μm厚にする。必要に応じ、CMPやスピンエッチャーで破砕層を除去してもよい。薄化後の基板11の厚さは、貫通電極の貫通穴形成コストおよびインク供給口の形成コストや、薄化した後の基板の搬送等のハンドリング性から決定される。次に、貫通電極となる部分にドライエッチングによって、裏面3から内径70μmの貫通穴22を開ける。貫通穴22の形成方法はドライエッチングに限定されず、レーザ光や超音波加工等を用いることも可能である。貫通穴22の側面には、必要に応じて絶縁層(図示せず)を形成してもよい。なお、従来は、基板厚625μmのままでは貫通穴の形成の精度が悪く、その結果加工時間もかかるので、内径100μm程度が限界であったが、基板11を薄化したため内径を縮小することが可能となった。
【0023】
(ステップ63)次に、めっきシード層(図示せず)を成膜し、電解めっきによって貫通穴22に金めっきを充填して貫通電極12を形成する。
【0024】
(ステップ64)次に、インク供給口形成のドライエッチング用マスク材を基板上に塗布し、フォトリソグラフィーでパターニングして、スリット状のインク供給口13をドライエッチングによって形成する。この段階で素子基板が完成する。
【0025】
(ステップ65)最後に、樹脂のフィルムにレーザでオリフィス20を形成したオリフィスプレート21を基板に接着し、液体吐出素子が完成する。
【0026】
以上説明した製造方法によって完成した液体吐出素子は、基板11の貫通穴22を短時間かつ高精度で加工できるので、低コストかつ高密度に貫通電極12が配置され、従来の液体吐出素子に比較して、チップ面積を小さくすることができる。また、インク供給口13の加工精度も向上するので、発熱抵抗部16とインク供給口13との間の寸法精度が向上し、周波数応答性がよくなり吐出性能が向上する。
【0027】
次に、図3を参照して、本発明の第2の実施形態に係る液体吐出素子の製造工程を説明する。本実施形態は、貫通電極の貫通穴とインク供給口のスリットとを同時に形成する点が第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態との差異点を中心に説明する。
【0028】
(ステップ71)ステップ61と同様にして発熱抵抗部16と電極15とを形成する。
【0029】
(ステップ72)ステップ62と同様にして裏面3を切削し、基板11厚さを50〜300μm厚にする。また、ステップ62と同様にして内径70μmの貫通穴22を開ける。さらに、貫通穴22と同時に、ステップ64と同様にして、スリット状のインク供給口13をドライエッチングによって形成する。貫通穴22の側面には、必要に応じて絶縁層(図示せず)を形成してもよい(この際には、インク供給口13をドライフィルム等のフィルムでカバーする。)。このように、インク供給口13と貫通電極用の貫通穴22とが同時にエッチングできるので、製造効率の改善やコストダウンが可能となる。
【0030】
(ステップ73)ステップ63と同様にして貫通穴22に金めっきを充填して貫通電極12を形成する。この段階で素子基板が完成する。
【0031】
(ステップ74)次に、インク供給口形成部をカバーしているフィルムを設けた場合にはそれを除去し、ステップ65と同様にして、オリフィスプレート21を基板11に接着し、液体吐出素子が完成する。
【0032】
本実施形態によれば、インク供給口の形成と貫通電極の貫通穴の形成が同時にできるので、加工コストの大幅な削減をすることが可能となる。
【0033】
次に、図4を参照して、本発明の第3の実施形態に係る液体吐出素子の製造工程を説明する。本実施形態は、オリフィスの高精度化および液流路と発熱抵抗体とのアライメント精度向上のために、オリフィスプレートを積層して形成する工程を有する点が、第1,2の実施形態と異なる。
【0034】
(ステップ81〜83)ステップ61〜63と同様にして、発熱抵抗部16と電極15とを形成し、裏面3を薄化し、貫通穴22を開け、貫通電極12を形成する。
【0035】
(ステップ84)次に、液流路を形成するための型としてポジレジストを15μm厚で塗布し、露光、現像によって、所定のパターン26を形成する。
【0036】
(ステップ85)次に、そして、オリフィスプレート21の材料として感光性のネガ型のエポキシ膜27を30μm厚で塗布し、露光、現像によって、内径25μmのオリフィス20の形成されたオリフィスプレート21を形成する。
【0037】
(ステップ86)次に、その上に保護材として樹脂膜28を塗布する。
【0038】
(ステップ87)次に、ステップ64と同様にして裏面3にインク供給口13のスリットを形成する。
【0039】
(ステップ88)最後にオリフィスプレート21を保護していた樹脂膜28と液流路の型材であるパターン26とを除去し、液体吐出素子が完成する。パターン26の除去は、溶剤を基板11を浸漬したり、スプレーで吹き付けることによっておこなわれる。
【0040】
本実施形態による製造方法によれば、オリフィスが精度よく形成され、液流路の製作精度も良好なので、発熱抵抗体とのアライメント精度も向上する。したがって、今後の小液滴化を図ったインクジェット記録にも十分に対応が可能であり、記録性能の向上につながる。
【0041】
次に、図5を参照して、本発明の第4の実施形態に係る液体吐出素子の製造工程を説明する。本実施形態も第3の実施形態と同様、オリフィスの高精度化および液流路と発熱抵抗体とのアライメント精度アップのために、オリフィスプレートを積層して形成する方法であるが、貫通電極の貫通穴とインク供給口の貫通穴とを同時に形成する点が第3の実施形態と異なる。
【0042】
(ステップ91〜92)ステップ61と同様にして、発熱抵抗部16と電極15とを形成し、ステップ62と同様にして、裏面3を薄化する。
【0043】
(ステップ93〜95)次に、ステップ84〜86と同様にして、所定のパターン26を形成し、オリフィス20の形成されたオリフィスプレート21を形成し、その上に保護材として樹脂膜28を塗布する。
【0044】
(ステップ96)次に、インク供給口形成13および貫通穴22のドライエッチング用マスク材を基板11上に塗布し、フォトリソグラフィーでパターニングして、インク供給口13のスリットおよび貫通穴22をドライエッチングによって同時に形成する。貫通穴22の側面には、必要に応じて絶縁層(図示せず)を形成してもよい(この際には、インク供給口13をドライフィルム等のフィルムでカバーする。)。
【0045】
(ステップ97)ステップ63と同様にして貫通穴22に金めっきを充填して貫通電極12を形成する。
【0046】
(ステップ97)最後に、ステップ88と同様にして、インク供給口13をカバーしているフィルムを設けた場合にはそれを除去し、オリフィスプレート21を保護していた樹脂膜28と液流路14の型材であるパターン26とを除去し、液体吐出素子が完成する。
【0047】
本実施形態によれば、オリフィスの加工精度や、液流路と発熱抵抗体とのアライメント精度の向上を図ることができるだけでなく、インク供給口の形成と貫通電極の貫通穴の形成とが同時にできるので、加工コストの大幅な削減をすることが可能となる。
【0048】
このように、本発明は、厚い基板の状態で高温プロセスを伴う発熱抵抗体および電極の形成をおこない、これによって高温による基板の反りや破損を防止し、次に基板の薄化をおこない、その後に薄い基板の状態でインク供給口および貫通電極形成用の貫通穴の形成をおこない、これによってこれらの穴の形成を高精度、高効率でおこなうことを特徴とするものである。したがって、かかる条件が満たされれば、上述したように貫通電極形成工程とインク供給口形成工程の順番は適宜に定めることができる。また、オリフィス形成工程と、貫通電極/インク供給口形成工程との順番も適宜に定めることができる。
【0049】
本発明の効果は以下の通りである。基板上に発熱抵抗体と電極形成後基板を薄化する工程後に貫通電極およびインク供給口を形成することによって、基板の貫通穴を短時間に高精度で加工できるので、低コストで高密度に貫通電極を配置することができ、インク供給口の精度が向上する。また、発熱抵抗体とインク供給口との間の寸法のばらつきが減少するので吐出性能が向上する。更に、裏面のインク供給口の開口が小さくすることができ、それによって、チップを小さくでき、チップのコストダウンをすることができる。更に、インク供給口および貫通電極穴の形成を同時に行えるので、加工時間が半分になり加工コストの大幅な削減をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の記録ヘッドカートリッジの斜視図、および液体吐出素子の平面図と断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る液体吐出素子の製造方法のフロー図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る液体吐出素子の製造方法のフロー図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る液体吐出素子の製造方法のフロー図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る液体吐出素子の製造方法のフロー図である。
【符号の説明】
【0051】
1 液体吐出素子
10 素子基板
11 基板
12 貫通電極
13 インク供給口
14 液流路
15 電極
16 発熱抵抗体
18 吐出口
20 オリフィス
21 オリフィスプレート
22 貫通穴
26 パターン
27 エポキシ膜
28 樹脂膜
100 記録ヘッドカートリッジ
101 インクタンク
102 インクホルダ
103 ベースプレート
104 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板を貫通するインク供給口と、該基板上に設けられ、該インク供給口から流入したインクに吐出エネルギーを供給するエネルギー供給手段とを有する素子基板の形成方法であって、
前記基板上に前記エネルギー供給手段を形成する工程と、
その後に、前記基板を薄化する工程と、
その後に、前記基板に前記インク供給口を形成するインク供給口形成工程とを有する、素子基板の形成方法。
【請求項2】
前記素子基板は、前記基板を貫通して前記エネルギー供給手段に接続し、前記エネルギー供給手段に駆動電流を供給する貫通電極をさらに有し、
前記インク供給口形成工程は、前記基板に前記インク供給口と前記貫通電極とを形成する貫通部形成工程を有する、請求項1に記載の素子基板の形成方法。
【請求項3】
前記貫通部形成工程は、
前記貫通電極の形成のための貫通穴を形成する工程と、
その後に、前記貫通穴に導電性材料を充填し前記貫通電極を形成する工程と、
その後に、前記インク供給口を形成する工程とを有する、
請求項2に記載の素子基板の形成方法。
【請求項4】
前記貫通部形成工程は、
前記インク供給口と、前記貫通電極の形成のための貫通穴とを同時に形成する工程と、
その後に、前記貫通穴に導電性材料を充填し前記貫通電極を形成する工程とを有する、
請求項2に記載の素子基板の形成方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の素子基板の形成方法によって素子基板を形成する工程と、
前記インク供給口と接続し、前記素子基板の前記エネルギー供給手段が設けられた面上を延びる液流路と、該液流路と接続し前記エネルギー供給手段によって吐出エネルギーを与えられたインクを記録媒体に吐出させるオリフィスとを形成するオリフィスプレートを形成する工程と
を有する、液体吐出素子の形成方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板を貫通するインク供給口と、
前記基板上に設けられ、前記インク供給口から流入したインクに吐出エネルギーを供給するエネルギー供給手段とを有する素子基板において、
前記基板は50μm〜300μmの厚さであることを特徴とする、素子基板。
【請求項7】
前記基板を貫通して前記エネルギー供給手段に接続し、前記エネルギー供給手段に駆動電流を供給する貫通電極を有する、請求項6に記載の素子基板。
【請求項8】
請求項6または7に記載の素子基板と、
前記インク供給口と接続し、前記素子基板の前記エネルギー供給手段が設けられた面上を延びる液流路と、前記液流路と接続し前記エネルギー供給手段によって吐出エネルギーを与えられたインクを記録媒体に吐出させるオリフィスとを形成するオリフィスプレートと
を有する液体吐出素子。
【請求項9】
請求項8に記載の少なくとも1つの液体吐出素子と、
前記液体吐出素子を支持するベースプレートと
を有する記録ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の記録ヘッドと、
前記液体吐出素子に供給するインクを保有するインクタンクと
とを有する記録ヘッドカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−27108(P2006−27108A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210086(P2004−210086)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】