説明

素子実装用基板

【課題】 実装による接続性を良好な状態に保ちながら、放熱性を改善した素子実装用基板を提供することにある。
【解決手段】 この素子実装用基板10は、基板11と配線パターン12とを有している。配線パターン12は、基板11上に形成された高い熱伝導率を有する下地金属層13と、その上に形成された硬質金属層14と、下地金属層13及び硬質金属層14の上に形成された高い熱伝導率を有する表面金属層15とから構成されている。硬度が高い硬質金属層14は、配線パターン12における素子16に接続するバンプ17又はワイヤー27の実装ポイントPにのみ配置されている。実装ポイントPにのみ硬質金属層14を設けることで、実装ポイントPにおける半田バリアあるいは実装時の超音波の伝わりを良好にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED等の素子を実装する基板に関するものであり、特に、バンプの接続性又はワイヤーのボンディング性を良好な状態で保ちながら、放熱性を向上した素子実装用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の実装用基板としては、図4に示すように、チップ部品5を良好に実装するため、基板1の表面に銅メッキ層2、ニッケルメッキ層3、金メッキ層4が積層されて設けられていた。銅メッキ層2は、基板1の表面に設けられる線路として形成されており、ニッケルメッキ層3と金メッキ層4は、銅メッキ層2上のトランジスタチップ等のチップ部品5を実装する領域全体に形成されていた(例えば、特許文献1、図2参照)。上記従来の実装用基板では、実装領域以外をレジスト膜6で覆うことで、実装領域全体にニッケルメッキ層3と金メッキ層4を形成していた。
【0003】
上記従来の実装用基板におけるチップ部品5は、ニッケルメッキ層3と金メッキ層4が設けられた実装領域内に実装されていた。このため、チップ部品5が発する熱は、金メッキ層4からニッケルメッキ層3に伝わることになるが、ニッケルの熱伝導率が金や銅に比べて非常に低いため、金メッキ層4からニッケルメッキ層3には熱が殆んど伝わらない。しかも、この従来技術では、金メッキ層4を設ける部分が限られて面積が小さくなり、熱の移動をより困難にしていた。このように従来の実装用基板では、放熱性が悪いという問題があった。
【0004】
近年、上記のように実装される素子には、大電流を流すことが多く、例えば、LED素子の場合、照明用として使用するときにより明るく発光させるため、以前よりも大きい電流を流している。このように素子に大電流を流すと、素子の発熱量が増し、効率良く放熱しないと素子の能力低下や損傷を招くことになる。従って、良好な実装を行うと同時に、実装部周辺の放熱性を向上させることが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−213730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を解決し、実装による接続性を良好な状態に保ちながら、放熱性を改善した素子実装用基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の素子実装用基板は、基板と、該基板の素子実装面上に形成された配線パターンとを有し、その配線パターンにおける素子に接続するバンプ又はワイヤーの実装ポイントにのみ硬度が高い硬質金属層を配置したものである。実装ポイントにのみ硬質金属層を設けることで、実装ポイントにおける半田バリアあるいは実装時の超音波の伝わりを良好にしている。
【0008】
配線パターンは、基板の素子実装面上に形成された高い熱伝導率を有する下地金属層と、その上に形成された硬質金属層と、下地金属層及び硬質金属層の上に形成された高い熱伝導率を有する表面金属層とから構成されている。また、この下地金属層及び硬質金属層はそれぞれ銅とニッケルからなり、表面金属層は金又は銀からなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の素子実装用基板では、基板上の配線パターンにおけるバンプ又はワイヤーの実装ポイントにのみ硬度が高いニッケルからなる硬質金属層を設けている。これにより、配線パターンは実装ポイントを除くほぼ全域が熱伝導率の高い銅や金等からなる下地金属層と表面金属層で構成され、この配線パターン上に実装された素子が発する熱を表面金属層から下地金属層へ広く直接伝えて放熱することができる。
【0010】
また、素子に接続するバンプ又はワイヤーの実装ポイントには、硬度が高い硬質金属層を設けているので、柔らかい金あるいは銅等からなる表面金属層と下地金属層に比べて超音波の伝わりが良い。これにより、超音波を用いたボンディングによる実装がし易く、実装による接続性を良好に保つことができる。
【0011】
また、素子のバンプとして金バンプだけでなく半田バンプを用いた場合であっても、硬質金属層が半田バリアとなって、表面金属層や下地金属層としての金や銅が半田に大量に溶け込む金食われや銅食われの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例に係る素子実装用基板を示す断面図である。
【図2】図1に示す素子実装用基板をワイヤーボンディングに対応するように変更した変形例を示す断面図である。
【図3】図2に示す素子実装用基板のワイヤーの実装ポイントを示す拡大断面図である。
【図4】従来の素子実装用基板の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の一実施例に係る素子実装用基板の断面図である。この実施例に係る素子実装用基板10は、基板11と、その基板11上に設けられた配線パターン12とを有している。基板11は、アルミニウム、アルミナ等を主成分とするセラミック、有機材料等からなる。
【0014】
配線パターン12は、基板11上に実装される素子16をマザーボード(図示せず)等に設けられた回路や電源に接続するものであり、素子16を実装する素子実装面11a上に設けられている。この配線パターン12は、下地金属層13と、硬質金属層14と、表面金属層15とから構成されている。
【0015】
下地金属層13は、例えば銅からなり、基板11の素子実装面11a上に形成されている。硬質金属層14は、例えばニッケルからなり、下地金属層13の上で且つ素子16を固着接続するバンプ17が表面金属層15に接触接合される実装ポイントPに形成されている。表面金属層15は、例えば金又は銀からなり、下地金属層13に沿って下地金属層13及び硬質金属層14を覆うように形成されている。
【0016】
実装ポイントPは、バンプ17が配線パターン12に接触接合される地点であり、実装する際に球状、凸状等をなすバンプ17のほぼ直径に相当する。従って、配線パターン12における硬質金属層14は、バンプ17の直径と同じかあるいは直径よりやや大きい円形あるいは矩形をなすように形成される。バンプ17は、金、半田等からなり、10〜100μmの高さ(直径)を有するため、硬質金属層14はこのバンプ17に対応する大きさに形成される。
【0017】
上記素子実装用基板10にLED等の素子16を実装すると、バンプ17が接合される実装ポイントPには、表面金属層15の下に硬質金属層14が配置されている。これにより、実装ポイントPに超音波を印加すると、ニッケルからなる硬質金属層14によって超音波が確実に実装ポイントPに受け止められ、バンプ17が接合される。
【0018】
また、バンプ17として半田バンプを用いた場合、実装時に金又は銀からなる表面金属層15の一部がバンプ17に取り込まれても、硬質金属層14が半田バリアとなって周辺の表面金属層15や銅からなる下地金属層13が取り込まれる金食われあるいは銅食われを防ぐことができる。
【0019】
上記のように基板11の配線パターン12上に素子16が実装されると、その素子16が発する熱は、配線パターン12の表面金属層15からその表面金属層15に広く直接接触している下地金属層13へと直ぐに伝導する。このときに硬質金属層14は、バンプ17の実装ポイントPにのみ形成されているため、表面金属層15から下地金属層13への熱の移動を妨げることがない。
【0020】
本実施例においては、表面金属層15が金(熱伝導率317W/(m・k))、硬質金属層14がニッケル(熱伝導率90.7W/(m・k))、下地金属層13が銅(熱伝導率401W/(m・k))であるため、熱伝導率が低い硬質金属層14があっても、熱伝導率が高い表面金属層15から下地金属層13へ素子16で発生した熱が容易に伝わり、極めて放熱性に優れた構造となる。
【0021】
なお、アルミニウム(熱伝導率237W/(m・k))を主成分とする基板11の場合には、素子16から下地金属層13に移動された熱を更に移動して放熱することが可能であるがアルミナ(熱伝導率20〜30W/(m・k))を主成分とする基板11の場合には、熱の移動が期待できないため、配線パターン12による熱の移動と放熱が極めて重要となる。従って、本実施例の素子実装用基板10のように、配線パターン12による熱の移動が優れているものでは、基板11の材質にかかわらず放熱性を向上させることが可能である。
【0022】
図2は図1に示す素子実装用基板10をワイヤーボンディングに対応するように変更した変形例を示す断面図であり、図3はその拡大断面図である。図2及び図3に示す素子実装用基板20は、基本的な構成、即ち基板11、下地金属層13、硬質金属層14及び表面金属層15の材質及びそれらを設けることに関しては図1に示した素子実装用基板10と同様である。したがって、同様の構成には同一の符号を付すことによって、詳細な説明を省略する。
【0023】
この変形例において、素子実装用基板20における硬質金属層14は、素子26をワイヤーボンディングする金線等からなるワイヤー27を接合する実装ポイントPのみに設けられている。このため、配線パターン12における素子26をダイボンディングする部分は、下地金属層13と表面金属層15だけが積層された構造となっている。
【0024】
この素子実装用基板20における硬質金属層14は、図3に示すように、ワイヤー27がボンディングされる実装ポイントPに対応する大きさ及び形状に形成されている。このワイヤー27は、10〜30μmの線径を有する金線を素子26の電極に接合した後、キャピラリ(図示せず)で延伸すると共にキャピラリ先端で加圧し且つ超音波を印加することで配線パターン12に接合される。このため、ワイヤー27の実装ポイントPは、ワイヤー27が接合するときに潰れて線径よりもわずかに大きくなる。これに対応して、硬質金属層14は、ワイヤー27の線径よりわずかに大きい円形、矩形等に形成され、これにより実装ポイントPをカバーするように設定されている。このように硬質金属層14を形成することで、実装時の超音波の伝導を良くすることができる。
【0025】
また、この素子実装用基板20では、配線パターン12における素子26がダイボンディングされる部分に熱伝導率が低い硬質金属層14がないので、素子26が発する熱を熱伝導率が高い表面金属層15から同じく熱伝導率が高い下地金属層13へ直ぐに伝導させて放熱することができる。
【符号の説明】
【0026】
1,11 基板
2 銅メッキ層
3 ニッケルメッキ層
4 金メッキ層
5 チップ部品
6 レジスト膜
10,20 素子実装用基板
11a 素子実装面
12 配線パターン
13 下地金属層
14 硬質金属層
15 表面金属層
16,26 素子
17 バンプ
27 ワイヤー
P 実装ポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板の素子実装面上に形成された配線パターンとを有し、
前記配線パターンにおける素子に接続するバンプ又はワイヤーの実装ポイントにのみ硬度が高い硬質金属層を配置したことを特徴とする素子実装用基板。
【請求項2】
前記配線パターンは、前記基板の素子実装面上に形成された高い熱伝導率を有する下地金属層と、該下地金属層の上に形成された前記硬質金属層と、前記下地金属層及び前記硬質金属層の上に形成された高い熱伝導率を有する表面金属層と、から構成されている請求項1に記載の素子実装用基板。
【請求項3】
前記下地金属層は銅、前記硬質金属層はニッケル、前記表面金属層は金又は銀からなる請求項2に記載の素子実装用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−4756(P2013−4756A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134692(P2011−134692)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】