説明

紡績機及び紡績機における糸の製造を中断する方法

【課題】糸の製造の中断が制御された後に、糸の終端を迅速かつ容易に配置できる方法及び紡績機を提案する。
【解決手段】紡績機は、繊維材3の入口2と繊維材3からつくられた糸5の出口とを有する少なくとも1つの紡績部1と、配送装置6と、引き出す引出装置7と、巻き取り装置8と、少なくとも1つの糸のパラメータを監視する糸監視部9と、を有し、糸の製造は、監視される糸のパラメータについて目標位置から所定の乖離が検出されることにより、及び/又は巻き取り装置8のボビンの交換のために、及び/又は紡績機のスイッチオフの前に、中断され、配送装置6、引出装置7及び巻き取り装置8の送り速度は、糸の製造を中断するために、停止するまで徐々に低下させられ、その低下は、低下が完了した後に、製造された糸5の終端10が、紡績部1の出口4と巻き取り装置8との間に位置するように、設計された制御及び/又は調整装置を有する紡績機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機において糸の製造を中断する方法及び糸の製造のための紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、紡績機において糸の製造を中断する方法に関するものであり、紡績機は、繊維材のための入口と繊維材からつくられた糸のための出口とを有する少なくとも1つの紡績部と、繊維材を紡績部に送る配送装置と、紡績部の外へ糸を引き出す引出装置と、製造された糸を巻き取る巻き取り装置と、少なくとも1つの糸のパラメータを監視する糸監視部(糸の厚さ又は糸の品質に関する他のパラメータ)と、を有し、糸の製造は、監視される糸のパラメータについて目標位置から所定の乖離が検出されることにより、及び/又は巻き取り装置のボビンの交換のために、及び/又は紡績機のスイッチオフの前に、中断される紡績機における糸の製造を中断する方法に関する。
【0003】
本発明は、さらに糸の製造のための紡績機に関するものであり、その紡績機は、繊維材のための入口と繊維材からつくられた糸のための出口とを有する少なくとも1つの紡績部と、繊維材を紡績部に送る配送装置と、紡績部の外へ糸を引き出す引出装置と、製造された糸を巻き取る巻き取り装置と、少なくとも1つの糸のパラメータを監視する糸監視部とを有する。
【0004】
一般的に、たとえば、邪魔な繊維の割り込みによる糸欠陥が検知された場合における紡績プロセスの停止方法としては、たとえばローター又はエアジェット紡績機に関するものが知られている。巻き取り側の糸の終端は、その後回転し続けるボビンによって巻き上げられるが、その間、糸の切断側の終端は、真空吸引によって引き出される。継ぎ合わせによって紡績がその後リスタートされる時、ボビンにおける糸の終端は、実際の紡績方向とは反対方向に向かって、再び紡績部へ、それを送り戻すために、適切な吸引装置のような手段によって、ボビンの表面から引き離されなければならない。糸の終端の位置決めは、しかしながら、典型的に非常に時間を消費するものでありかつ機械の効率を低下させるものであり、特に上質かつ高度な紡績糸では、継ぎ合わせの工程は、紡績工程の継続において、重大な遅延を導きうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従って、糸の製造の中断が制御された後に、糸の終端をより迅速かつ容易に配置することができる方法及び紡績機を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立クレームの特徴によって達成される。
【0007】
本発明に係る方法は、配送装置、引出装置、及び巻き取り装置の送り速度は、糸の製造を中断するために、停止まで徐々に低下させられる。また、その速度の低下は、低下が完了した後に、製造された糸の終端が、紡績部の出口と巻き取り装置との間に位置するように実施されるという、特徴を有している。
【0008】
上述の方法と対比した場合、従来は、ボビンが急に停止することはその慣性によって不可能であるため、製造された糸の終端が、紡績部が停止するまで不可避的にボビンに巻かれる問題があったが、そのような巻き付きは、本発明の方法によって効果的に防止することができる。
【0009】
本発明において稼働される紡績機は、好ましくはエアジェット式又はローター式紡績機である。両方のタイプの紡績機は、配送装置と引出装置の送り速度に関して、特定の状況が維持されなければならないという特徴を有している。前記の速度は、高品質の糸を製造するために、紡績チャンバーの内部の繊維材への所望のねじれを与えることができるように、特定の閾値を超えなければならない。
【0010】
もし示された送り速度が徐々に低下した場合、これにより、好ましくは数秒間の間に、紡績チャンバーに送られる繊維材が少なすぎるか、繊維材の供給に対して紡績チャンバーから糸を引き出す速度が速すぎるか、いずれかの理由により、終局的に、もはや糸の製造を実施しないポイントに到達する。そのようなポイントの時、糸の終端は、最後に製造され、引出装置の残余の送り速度により、巻き取り装置の方向に向かって移動する。
【0011】
本発明によれば、送り速度は、糸の製造が中断される間に、終局的に0に低下されるが、これにより、各々の供給装置が停止した後に、糸の終端は、紡績部の出口と巻き取り装置の間に配置される。紡績チャンバー内の糸の形成は、各々の送り速度を低下させることにより、急激にではなく、このように、徐々に中断される。対応する糸の終端は、このようにして、対応する個々の送り速度に適合する態様により、製造される。糸の製造は、このようにして中断され、糸は、これに続く繊維材から分離する。
【0012】
前記のポイントにおける送り速度は、実際の糸の製造の間に比べて十分に遅いため、巻き取り装置は目標の比率で減速させることが可能であり、確定した終端の状態は、糸の終端が、対応する巻き取り装置におけるボビンの表面ではなく、先述した位置に配置された状態となる。低下した送り速度であっても、製造された糸のボビンへの統一的な巻回を確実にするために、糸をガイドする装置を減速(もしくは中間で停止)させることも有効である。
【0013】
糸の終端は、ボビンの表面から糸の終端を探す予備行程を必要とすることなく、操作者又はロボット装置によって、示された位置において捕捉され、後のつなぎ合わせのために準備され、もしくはつなぎ合わせのための所望の位置に、移動される。同様に、上記は、ローター式紡績機にも適用することができ、糸の製造は、対応する送り速度が特定の閾値を下回った場合に、中断される。
【0014】
配送装置が、2つの配送ローラによって構成されており、及び/又は、引出装置が2つの引出ローラによって構成されることは、さらに有利である。そのようなローラは、これらの回転速度を適切に調整することにより、対応する送り速度における正確な制御を可能にする。回転速度は、従って、本発明による方法においてあらかじめ定められた時間間隔、典型的には、1〜数秒の間で、糸に裂け目を発生することなく、低下される。
【0015】
送り速度の低下が完了した後において、製造された糸が、紡績部の出口から引出装置の間に、配置されることが好ましい。糸の終端がこのような位置に配置されることにより、外部から容易に接近することが可能である。また、糸の終端が、巻き取り装置の領域に入ることを、確実に防止することができる。このようにして、糸の終端が、常にあらかじめ規定された停止位置、好ましくは把持装置の制御装置によって記憶された位置に到達することから、ロボットのような把持装置によって糸の終端を確実に掴むことが可能となる。
【0016】
送り速度は、最初は、紡績部において糸の製造が不可能となる規定のレベルまで低下され、その後、引出装置、又は、好ましくは引出装置及び巻き取り装置は、製造された糸の終端が、紡績部と巻き取り装置の間における決められた位置に配置されるまで、対応する送り速度で運転される。糸の製造の中断によって製造された糸の終端は、残余の送り速度において、外部に輸送されることが確実となる。送り速度は、実際の糸の製造中より低いため、紡績部からの糸の終端部の、紡績部から、紡績部の出口から巻き取り装置までの領域への、その後の動きは、確実に制御することが可能である。
【0017】
送り速度が遷移的に、好ましくは線形に低下することは、さらに有利である。スピードの急激な変化と糸の潜在的な破断を、回避することができる。スピードの線形な減少に加えて、任意の減少が考えられ得ることは、もちろんである。たとえ配送装置及び引出装置の同期した送り速度の低下が、全体として可能であり、時間的に同じポイントでこれらの装置を停止することが可能であったとしても、時間をずらしてそれぞれの送り速度を低下させることには、利点を見いだすことができる。たとえば、引出装置における送り速度の低下より先に、配送装置の送り速度を低下させることは、有利である。また、配送装置を停止した後、引出装置を停止することは、製造された糸の終端を、本発明に係る紡績機の所定の位置に配置することを確実にするために、さらに有利である。このような結果として、配送装置と引出装置の駆動を、別々に作動させることが可能であることは、有利である。
【0018】
送り速度の低下が完了した後に、糸格納部によって糸が固定されることは、有利である。糸格納部は、たとえば必要に応じて(たとえば、狙いの方法で真空源を適用するなど)中空シリンダ内部に真空を形成することができるような真空源に接続された、中空のシリンダを有している。もし、引出装置が巻き取り装置より後に停止された場合、巻き取り装置が停止した後に紡績部から引き出された糸は、中空シリンダに吸引され、これにより決められた位置にとどまる。後の継ぎ合わせによって紡績が再開されるとき、操作者又は対応する作業ロボットは、糸格納部と巻き取り装置の間に配置された糸の一部を掴むことができ、継ぎ合わせを開始することができる。糸格納部の内部に存在する糸の一部は、従って、残りの糸とともに、糸格納部の外へ引き出すことが可能である。しかし、対応する糸の一部は、継ぎ合わせの前に切断され、糸格納部に接続された排出装置によって片付けられる構成も、考えられる。
【0019】
送り速度が低下してから後、糸が、引出装置によって固定されることは、さらに有利である。引出装置が、対応する引出ローラである場合、糸は、対応するローラの間に、確実に把持される。この構成は、単に、引出ローラが、糸の終端がこれらを通過する前に、停止されることを要求するだけである。糸の終端が、手作業により又は自動的に、継ぎ合わせのために補足された場合、解放の前に、引出ローラによって、糸の終端の、紡績方向若しくはこれとは反対への、決められた移送を実施することができ、そののち、把持は解除され、糸の終端は、再び解放される。
【0020】
製造された糸の終端が、糸の製造が中断された後に、ロボットによって補足され、紡績部に送り戻され、継ぎ合わせ工程の間に繊維材に対して接続されることは、有利な態様である。この終端に対して、ロボットは、実際の紡績方向の反対側に向かって、紡績部の出口を通過し、やはりロボットによって実施され得る、実際の継ぎ合わせ工程が行われる領域へ、糸の終端をガイドできるように、たとえば把持装置、及び/又は対応する吸い込み又は吹き出し装置のような、対応する糸操作装置を有している。個々の紡績部が、個別に紡績部に関連して設けられており分離された糸操作装置を有しており、ロボットの使用を必ずしも必要としない構成も、もちろん可能である。製造された糸の終端は、継ぎ合わせ工程において紡績部に供給された繊維材に接続されず、糸の固定された終端を形成するために使用されることも、場合によっては考え得る(糸の終端は、ボビン全体、典型的にはその両端部に配置される)。ボビンの移送の間、対応して配置された糸の終端が、意図せず解放されることをより困難にするために、糸は、配置の前に、いくぶんかの量、ボビン全体から引き出されてもよい。引き出された部分は、元々巻かれていないボビンコアの側面に、何度か巻きつけられ、ボビン表面に引き戻され、その側方に位置する。
【0021】
継ぎ合わせ工程の前に、紡績部の出口と巻き取り装置の間で、糸がロボットによって補足されることは、より有利である。このことは、ロボットが、糸の終端を素早く固定することを可能にし、全体的な糸の送り戻し及びその後の継ぎ合わせ工程が、制御された方法で実施されることを可能にする。糸の終端が、後方から紡績部を通って通過させられ得る場合において、紡績部は、紡績部の中に糸を配置できるように、部分的に取り除くことができるか、又は開けることができるように、デザインされることも考え得る。
【0022】
継ぎ合わせ工程が、紡績部の外、特に配送装置と引き込み部の一対のローラとの間で、実施されることは、有利である。配送装置が停止したのち、紡績に用いられる繊維材は、この領域において、対応する配送ローラによって、又は、エアジェット式の紡績機では、上流に接続された引き込み部の一対のローラによって、典型的には、固定される。繊維材と引き戻された糸の終端の接触が、継ぎ合わせ工程において達成されなければならないため、上述した領域において継ぎ合わせ工程が行われることが、便利である。
【0023】
糸の固定は、ロボットによって補足される前、若しくは補足されている間に、終了することが好ましい。この段階における糸の破断は、これによって防止される。一方で、しかしながら、その固定は、ロボットが糸を補足した後に、終了することも可能である。そのような、時間の並びは、例えば、(真空)糸保管部が、使用された場合に、考えられ得る。もし固定が、対応する引出ローラによって行われる場合は、糸の把持の間若しくはその直後に、カウンターローラのうち一つのローラを、ロボットに上昇させることも、さらに考えられる。一方で、糸の終端を把持した後に、引出ローラを逆に駆動することも可能であり、これにより、糸は積極的に、紡績部の方向に移送される。必要であれば、引出ローラは反対方向にも駆動され、もちろん、製造された糸の終端は、各状況において、意図した位置に移動することができる。
【0024】
供給速度の低下状態において製造された糸の少なくとも一部が、継ぎ合わせ工程の前に除去されることは、特に有利である。一般的に、個々の送り速度の低下中に製造された糸は、明らかに品質が低下する。このような除去のためには、継ぎ合わせの前に、ボビンが供給速度の低下より前に製造された糸のみを含むようになるまで、すでにボビンに巻かれている糸を引き出すように、巻き取り装置を操作することが必要となり得る。上述された糸格納部に、質の低い糸を格納し、継ぎ合わせ工程の前に切断することも可能である。この終端に対して、例えば、分離された切断装置を用いることができる。相対的に太い糸が、本発明による糸の製造の中断の直前に製造されることも、有利になり得る点である。このような糸は、ロボットによって、特に素早く確実に、発見および補足され得る。
【0025】
製造された糸の終端の位置は、センサーのような検知手段によって決定されることが、より好ましい。そのようなセンサーは、例えば、紡績部の出口又は引出装置と巻き取り装置の間に配置することが可能である。また、糸の終端は、光学ビーム又は機械的な手段により、検知されうる。その結果として、センサーにより、発明の意図する糸の製造の中断が、成功していることを決定することが可能となり、センサーは、示された位置に加えて、又はその代わりに、紡績機における予め決められた区域における糸の一般的な存在のような他のパラメータを、決定することができる。
【0026】
送り速度の低下は、センサー若しくはセンサー群によって、制御及び/又は調整部に送信された信号と連動して、実施されることが、より好ましい。例えば、紡績部の出口と引出装置の間に配置されたセンサーによって、糸の終端が検知された場合、引出装置と、必要に応じて、巻き取り装置の送り速度が低下され、これによって、関連する移送装置が停止したあとに、糸の終端が、エアジェット式の紡績機の引出ローラの領域のような、あらかじめ決められた位置に、終端が配置される。上述のようなセンサーを用いることにより、糸の終端は、糸の製造が中断された後に、紡績機における同じ位置に、常に配置されることが確実となり、このことにより、手動若しくは自動で、糸の終端は、確実に補足され、継ぎ合わせ工程へ供給される。
【0027】
送り速度の低下が、特定の状況に最適化できるように、繊維材の物理的及び/又は化学的性質(繊維材の種類、強さ、繊維の長さなど)、及び又は、紡績機の特徴的なパラメータの関数として、実施されることは、特に有利である。紡績機の特徴的なパラメータとしては、回転速度や、配送速度や、使用する引き込み部の対応するパラメータなどが含まれ得る。紡績機における指定された位置や、紡績機周辺の部屋の湿度や温度の値は、考慮される対象に含まれ得る。
【0028】
本発明の紡績機は、つまるところ、先に記載された1又は複数の観点に係る紡績機を操作するために設計された制御及び/又は調整部を有する。それぞれの効果や潜在的な変形例に関する参照は、上述の記載によってなされている。
【0029】
なお、更なる工程や紡績機の特徴は、技術分野における周知の態様から、有利な態様を得る結果として、実装され得る。
【0030】
例えば、糸が壊れた場合(すなわち、制御された方法によって開始されていない紡績工程における中断である)、糸操作装置は、対応する巻き取り装置のボビンにすでに巻かれた糸の終端を把持できるように使用され、糸の終端を、後の継ぎ合わせ工程に送ることができる。糸操作装置は、したがって、対応する紡績部の間を巡回する作業ロボットの一部であっても良く、個々の紡績部に関連して個別に設けられていても良い。
【0031】
糸は、継ぎ合わせ工程の前に、必ずしも、その終端を補足される必要はない。糸の終端区間(好ましくは、引出ローラによって固定される)と巻き取り装置のボビンとの間で、糸を把持することは、考え得る態様である。
【0032】
上述のセンサーに関して(センサーは、糸の終端の位置に加えて、糸の終端若しくは他の糸の区間が、好適に固定されたことを検知できることが好ましい。)、同時に測定された値は、次の工程のための判断材料として使用され得る。例えば、継ぎ合わせ工程への導入は、糸の製造が成功裏に中断され、糸の終端が一致するように固定された場合にのみ、行うことができる。
【0033】
本発明に係る方法若しくは記載された紡績機を最適化する可能性は、糸の製造を中断する方法が「自己教唆」して備えられることにより、達成され得る。例えば、個々のパラメータ(対応する速度の低下量及び開始、配送装置、引出装置及び/又は巻き取り装置の停止時間、継ぎ合わせ工程の特徴的なパラメータなど)は、紡績機の制御及び./又は調整部によって実施される、好ましくは継続的な工程における、対応するセンサーによって供給されるデータの関数として、適用されてもよい。
【0034】
本発明のさらなる利点は、下記の実施態様において記述される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】糸の製造中における、本発明に係る紡績機の一部を表す側面図。
【図2】糸の製造を中断した後における、本発明に係る紡績機の一部を表す側面図。
【図3】糸の製造中における、本発明に係る他の紡績機の一部を表す側面図。
【図4】糸の製造中における、本発明の他の紡績機の部分を表す側面図。
【図5】糸の製造を中断した後における、図4に示す紡績機。
【図6】糸欠陥を除去した後における、図4及び図5に示す紡績機。
【図7】紡績部を通して糸を送り直している際の、図4から図6に示す紡績機。
【図8】糸格納部13。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明に係るエアジェット式紡績機の一部を表す概略図である。例示されたエアジェット式紡績機は、二重の薄片を構成するような、繊維材3を供給される引き込み部16を有する。図示されるエアジェット式紡績機は、さらに、引き込み部16から間を開けて設けられる紡績部1を有しており、紡績部1は、繊維材の入口2及び内部旋回チャンバー14を有している。繊維材3は、配送ローラペア11として実装される配送装置6によって、紡績部1の内部に導入される。なお、配送ローラペア11を含む配送装置6は、引き込み部16の一部を構成していると考えることができる。
【0037】
繊維材3又は、繊維材3に含まれる繊維の少なくとも一部は、所望の糸5を製造するために、旋回チャンバー14の内部で、回転を与えられる。その回転は、スピンドル17の領域における狙いのエアフローにより生じ、エアフローは、旋回チャンバー14の中で接線方向に開口しており図示しないノズルによって、発生される。
【0038】
紡績機は、出口4を通して紡績部1から引き出される糸5のために、引出ローラペア12によって形成される引出装置7と、引出ローラペア12の後工程に接続される巻き取り装置8と、を有している。
【0039】
紡績機は、最後に、糸5における予め決められたパラメータ(糸の厚さ、糸の強さ、又は糸5の品質を代表する他のパラメータ)を監視する糸監視部9を備えている。糸監視部9は、非接触方式で動作することが好ましい。
【0040】
本発明の装置において、図1に示すような引き込み部16を有することは、必須ではない。引出ローラペア12も、絶対に必要なものとは言えない。本発明に係る紡績機は、ローター式紡績機として実装されることも可能であり、その場合における紡績部1は、スピンドル17が示されている場所にローターを有し、これによって、スピンドル17の先端で製造された糸5が、紡績部1から引き出される。
【0041】
本発明に係る糸の製造を中断する方法は、図1と図2の組み合わせによって、表されている。図1は、まず、実際の紡績プロセス中における、繊維材3及びスピンドル17の領域で製造された糸5の、経路を示している。
【0042】
監視されるパラメータもしくはパラメータ群について、狙い値に対する決められた逸脱が生じたことが、糸監視部9(糸監視部9は、異なる位置に配置することも可能である)によって検知された場合、もしくは、ボビンの交換が間近である場合、配送装置6、引出装置7及び巻き取り装置8の送り速度は、徐々に低下される。この速度の低下は、紡績機のスイッチがオフにされる前に、実施される。
【0043】
その速度の低下は、同時でなくてもよく、また、継続的なものでなくても良い。対応する送り速度は、どのような場合であっても低下されるべきであるが、しかしながら、紡績工程が可能なかぎり長く維持されるように、速度を低下することができる。従来技術の状態に関して典型的な糸5の破断は、このような方法で防ぐことができる。送り速度の低下の目標点は、決められた送り速度を下回ることにより、安定した紡績工程が崩れ、特定の時点より後は、もはや繊維材3から糸5が製造されなくなる状態である。その時点において、望ましい糸の製造の中断は、強制的な分離手段を用いることなしに、糸が糸5から解放される場所で起きる。これは、たとえば、供給される繊維材3の量が、その繊維材から糸5を造るために十分でなくなるまで、配送装置6の送り速度が低下されることにより、達成される。また、これは、引出ローラペア12の送り速度を、配送ローラペア11及び/又は巻き取り装置8の送り速度に比べて、より緩やかに(必要であれば、より素早く)低下させることによっても、可能である。
【0044】
糸の製造が中断されると、引出ローラペア12は、配送装置6、引出装置7及び巻き取り装置8が最終に停止した後、糸5の終端10が図2に示す位置に達するまで、短時間の間、さらに作動されるべきである。また、送り速度の低下中に製造された糸5が、巻き取り装置8に巻かれることを防止するために、製造された糸5の一部は、図2のみに示すような糸格納部13(たとえば、真空源に接続され、筒状に形成されている)に保管される(図2において、糸格納部13は、模式的に示されており、正確な寸法では示されていない)。糸格納部13は、破線で2つの糸格納部13a、13bが示されているように、たとえば引出ローラペア12と巻き取り装置8の間や、センサー19と巻き取り装置8との間や、紡績部1とセンサー19との間など、紡績機における様々な位置に、配置することができる。
【0045】
引出装置7又は巻き取り装置8を正確な時点で停止することを可能とするために、図2に示すように、紡績機にセンサー19を装備させることができる。このようなセンサーは、糸5の終端10を検知できるように設計されている。糸5の終端10が最終的にセンサー19に到達すると、引出装置7及び巻き取り装置8は、瞬時に、又はやや時間を置いて、対応する制御及び/又は調整部によって停止され、これにより糸5の終端10は、紡績部1と引出装置7の間か、又は引出装置7と巻き取り装置8の間に、配置される。
【0046】
図1及び図2に示すように、糸の製造を中断したのちに、糸格納部13に加えて、又はこれに代えて、糸は、引出ローラペア12によって、固定可能である。
【0047】
その結果として、継ぎ合わせ工程のために必要とされる糸5の終端10は、紡績部1の出口4と巻き取り装置8のボビン18との間における決められた位置に配置され、これにより、継ぎ合わせ工程は、たとえば巻き取り装置8のボビン18の表面において行うような糸5の終端10のための事前の調査工程(従来技術における典型例である)を経ることなく、開始可能である。
【0048】
継ぎ合わせ工程のために、糸5は、作業ロボットによって、又は紡績部に備えられる糸操作装置によって、又は手作業で、糸5の終端10が配置された対応する位置において、把持され、後の継ぎ合わせ工程のために準備される。この終端に関して、たとえば終端は、実際の紡績方向とは反対方向に、紡績部1に挿入され、紡績部1の入口2と配送装置6との間、又は配送装置6と引き込み部16の隣接ローラペア15の間に、配置することができる。これにより、終端は、繊維材3に当接され、紡績部1の内部に送り返される。そして、紡績工程は、最初から再開される。
【0049】
最後に、図3は、ローター式紡績機として構成された本発明に係る他の紡績機を示している。このようなローター式紡績機では、複数の紡績部1が、通常、機械の長手方向に沿って(これは、図面の面に垂直な方向である)、お互いに近接するように配置されている。繊維材3は、紡績筒20から公知の方法で、それぞれの紡績部1に送られ、紡績部1において個々の繊維に分解され、さらに、この例では紡績ローター21で示すような紡績要素に送られる。紡績ローター21で製造された糸5は、たとえば引出ローラペア12を有する引出装置7によって、紡績部1の外に引き出され、巻き取り装置8によって、ボビン18に巻き取られる。
【0050】
図1及び図2に示すエアジェット式紡績機に関して述べたような糸製造の中断に関する本発明の方法は、図3に示すローター式紡績機でも実施することができる。すなわち、配送装置6、引出装置7及び巻き取り装置8の送り速度は、徐々に低下され、停止され得る。速度低下は、減速が完了した後に、製造された糸5の終端10(図3では図示されていない)が、紡績部1の出口4と巻き取り装置8との間に配置されるように、実施される。
【0051】
製造された糸5の終端10が、糸の製造が中断した後に、紡績部1の出口と引出ローラペア12との間に配置され、その位置で固定されることも、考えられる一態様である。その代わりに、しかしながら、糸の製造は、引出ローラペア12と巻き取り装置8の間に糸が配置されるように、中断されることも可能である。製造された糸5の終端10は、糸操作装置によって把持されることが可能であり、従来技術から理解されるように、後の継ぎ合わせ工程に送られる。糸操作装置は、巡回する作業ロボットの一部であってもよく、それぞれの紡績部1に関連するように個々に設けられていてもよい。
【0052】
もちろん、ローター式紡績機の場合であっても、糸5の中間格納部が、引出ローラペア12と巻き取り装置8との間などに、1つ又は複数設けられても良い。これに関しては、対応する糸格納部13に関する上述及び後述の実施形態を参照する。
【0053】
対応する把持部材又は同等な装置によって、糸5の終端10が捕捉された後、その固着が解放され、それにより糸の終端10は、紡績部1の出口4を通過して実際の紡績方向とは反対方向に、紡績ローター21の領域の内部に戻るように動かされる。これにより、前記終端は、糸の下方から供給された繊維材3に当接されるが、終端と繊維材3の当接は、先述した移動に先立つ任意的な糸の準備の後に行われてもよい。これとは異なり、継ぎ合わせ行程は、出口4と引出ローラ12との間のような、紡績部1の外部で実施されてもよい。
【0054】
本発明に関するさらに有利な改良が、図4から図7の組み合わせによって表される。図1及び図2に示す紡績機とは対照的に、糸格納部13は、紡績部1と引出ローラペア12との間に配置されており、糸5は、紡績工程の間に、即座に蓄積される。図4に示されるように、糸5は、引出ローラペア12によって、紡績部1の出口4からこの領域に、さらにこの領域から糸格納部13の内部に、走っている。糸格納部13(好ましくは真空源に接続されている)によるゼロテンションの中間蓄積にもかかわらず、巻き取り装置8のボビン18に、糸5が制御された方法で巻き取られることを確実にするために、模式的に示されている糸ブレーキ23がさらに備えられても良く、糸ブレーキ23は、対応する糸ガイド24の前方のエリアにおいて、調整可能なテンションの下で、糸5を保持することができる。
【0055】
前記のタイプの糸案内の利点は、本発明に係る糸の製造の中断時にも、糸格納部13の内部において、一種の糸のバッファー(一時格納)が、常に可能であることである。中断に関連するローラの速度低下中における変化は、したがって、単純な方法によって相殺される。
【0056】
図5は、糸の製造が中断した後の状態における、先述の紡績機を示すものである。製造された糸5の終端10は、たとえば、若干の継続した走行により、糸5の終端10が、センサー19と引出ローラペア12とを通過した後に、巻き取り装置8を停止させることにより、糸格納部13の内部に配置される。
【0057】
糸欠陥22が、糸の製造の中断によって発生した場合、そのような欠陥は、図5から図7に示すような切断部25によって除去される。このような終端について、糸欠陥22を有する糸5の終端10は、切断され、糸格納部13を介して吸引される。
【0058】
糸5の一部分は、こののち、同様に逆回転することにより、ボビン18から引き出され、糸5の終端10は、旋回チャンバー14に適用された真空などにより、同様に移送され、後の継ぎ合わせ行程のために、供給され得る。
【0059】
図8は、先に述べた糸格納部13の変形例を示している。図示しない真空源への接続に加えて、あるいはこれに代えて、前記格納部は、中間的な格納のために糸5が巻かれた後に巻き出される、糸キャリア26を有している。糸格納部13は、そのサイズをさほど大きくすることなく、前記方法における糸の量を、かなり大きくすることができる。
【0060】
本発明は、もちろん、実施形態に示す内容に限定されない。また、図面に記載されたような、又は特許請求の範囲及び明細書に記載されたような、あらゆる記載された個々の構成の結合、及び、可能性もしくは合理性が示された対応する結合からの拡張は、本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1… 紡績部
2… 入口
3… 繊維材
4… 出口
5… 糸
6… 配送装置
7… 引出装置
8… 巻き取り装置
9… 糸監視部
10… 終端
11… 配送ローラペア
12… 引出ローラペア
13… 糸格納部
14… 内部旋回チャンバー
15… 隣接ローラペア
16… 引き込み部
17… スピンドル
18… ボビン
19… センサー
20… 紡績筒
21… 紡績ローター
22… 糸欠陥
23… 糸ブレーキ
24… 糸ガイド
25… 切断部
26… 糸キャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績機において糸の製造を中断する方法であって、
紡績機は、繊維材(3)のための入口(2)と繊維材(3)からつくられた糸(5)のための出口(4)とを有する少なくとも1つの紡績部(1)と、繊維材(3)を紡績部(1)に送る配送装置(6)と、紡績部(1)の外へ糸(5)を引き出す引出装置(7)と、製造された糸(5)を巻き取る巻き取り装置(8)と、少なくとも1つの糸のパラメータを監視する糸監視部(9)と、を有し、
糸の製造は、監視される糸のパラメータについて目標位置から所定の乖離が検出されることにより、及び/又は巻き取り装置(8)のボビンの交換のために、及び/又は紡績機のスイッチオフの前に、中断され、
配送装置(6)、引出装置(7)及び巻き取り装置(8)の送り速度は、糸の製造を中断するために、停止するまで徐々に低下させられ、
その低下は、低下が完了した後に、製造された糸(5)の終端(10)が、紡績部(1)の出口(4)と巻き取り装置(8)との間に位置するように、実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法であって、配送装置(6)は、配送ローラペア(11)によって構成されており、及び/又は、引出装置(7)は、引出ローラペア(12)によって構成されていることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された方法であって、製造された糸(5)の終端(10)は、送り速度の低下が完了した後に、紡績部(1)の出口(4)と引出装置(7)との間に配置されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載された方法であって、
送り速度は、まず糸の製造が紡績部(1)においてできなくなる決められたレベルまで低下され、次に、引出装置(7)及び巻き取り装置(8)は、製造された糸(5)の終端が紡績部(1)の出口(4)と巻き取り装置(8)の間の決められた位置に配置されるまで、対応する速度で作動されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の方法であって、送り速度は、線形その他の態様で遷移的に低下されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載された方法であって、糸(5)は、送り速度の低下が完了した後に、糸格納部(13)によって固定されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の方法であって、糸(5)は、送り速度の低下が完了した後に、引出装置(7)によって固定されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の方法であって、製造された糸(5)は、糸の製造が中断した後にロボットによって捕捉され、紡績部(1)に送り返され、継ぎ合わせ工程において、繊維材(3)に接続されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の方法であって、糸(5)は、紡績部(1)の出口(4)と巻き取り装置(8)の間で、ロボットによって捕捉されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載された方法であって、継ぎ合わせ工程は、紡績部(1)の外側であって、配送装置(6)と引き込み部(16)のローラペア(15)との間で実施されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8から請求項10までのいずれかに記載の方法であって、糸(5)の固定は、それがロボットに捕捉される前、もしくは捕捉されている間に、終了することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項8から請求項11までのいずれかに記載の方法であって、継ぎ合わせ工程の前に、送り速度の低下中に製造された糸の少なくとも一部は、除去されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれかに記載の方法であって、製造された糸(5)の終端(10)の位置は、センサ(19)によって決定されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、送り速度の低下は、センサ(19)によって制御及び/又は調整装置に送られた信号に反応して実施されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれかに記載の方法であって、送り速度の低下は、繊維材(3)の物理的及び/又は科学的特徴、及び/又は紡績機の主要なパラメータの関数として、実施されることを特徴とする方法。
【請求項16】
糸を製造する紡績機であって、繊維材(3)のための入口(2)と繊維材(3)からつくられた糸(5)のための出口(4)とを有する少なくとも1つの紡績部(1)と、
繊維材(3)を紡績部(1)に送る配送装置(6)と、
紡績部(1)の外へ糸(5)を引き出す引出装置(7)と、
製造された糸(5)を巻き取る巻き取り装置(8)と、
少なくとも1つの糸のパラメータを監視する糸監視部(9)と、
請求項1から請求項15までの何れかに記載された方法で、紡績機を稼働するように設計された制御及び/又は調整装置と、を有する紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−67935(P2013−67935A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−208195(P2012−208195)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(509120344)ライター インゴルスタドト ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】