説明

紫外線液体処理装置

【課題】 オゾンガスの漏洩対策に関連する改良。
【解決手段】 被処理液体Pが通される容器1内に、紫外線ランプ5収納する透光性のランプ保護管4が配置される。保護管4の一端が容器1から露出する部分において、該保護管4の一端からその内部にアクセスしうるように、開閉可能なカバー部6が設けられる。カバー部6の所定箇所に漏れ液体排出用のドレーン部8が設けられ、該ドレーン部8において、カバー部6からの漏れ液体排出は許すが、気体の流通は阻止する弁装置10が設けられる。これによって、漏れ液体をドレーン部8から排出することができるが、カバー部6内に漏出したオゾンガスは該ドレーン部8から外部に漏出されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射により被処理液体中の微量有機物の酸化分解あるいは難分解性有機物の分解等の液体処理を行う紫外線液体処理装置に関し、特に、オゾンガスの漏洩対策に関連して改良を施したものに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線照射により被処理液中の有機物を低減する処理を行う紫外線液体処理装置においては、例えば円筒形容器内に紫外線透過性の保護管(石英ガラス管)を配置し、該保護管内に紫外線ランプを収納し、該容器内に被処理液体を通し、紫外線ランプから発される紫外線が保護管を透過して該容器内の被処理液体に照射されるようにしている。この場合の紫外線ランプとして主には185nm波長の紫外線を発する低圧水銀灯が用いられる。この185nm光は紫外線透過性の保護管を通してその管の外側にある被処理液体に照射され、被処理液体中の有機物を低減させる。低圧水銀灯以外にも中庄水銀灯、高圧水銀灯があるが、220nm以下の紫外線を発するランプであれば同様に液体中の有機物を低減することができる。
【0003】
185nm波長の紫外線光は酸素をオゾンに変える働きがあるため、この種の紫外線液体処理装置においては、ランプ周辺の空気中の酸素がオゾンに変化されることになる。オゾンは人間にとって悪臭であり、また、作業環境としては0.1ppm未満を確保することが望まれている。そのため、ランプ周辺で発生したオゾンを紫外線液体処理装置から外に漏洩させないようにする工夫がなされている。この種の紫外線液体処理装置においては、円筒形容器の端部においてランプ保護管の一端が露出するようになっており、この部分でランプ保護管内への紫外線ランプ出し入れ等のメンテナンスが行われる。そのために、円筒形容器の端部には、開閉可能なカバー部が構成されていて、メンテナンス時において該カバー部を開いて必要なメンテナンス作業を行い、非メンテナンス時においては該カバー部を閉じておくようにしている。ランプ周辺で発生したオゾンは保護管内から該カバー部内に漏出するので、オゾンが該カバー部から更に処理装置の外部に漏出することのないように、該カバー部が閉鎖時において気密な密封構造となるようにする工夫がなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円筒形容器の端部に設けられるカバー部は、該容器内の被処理液体の流通路に対して液蜜に構成され、基本的には、容器内の液体が漏洩してこないようになっている。しかし、不測の事態により、容器内の液体がカバー部内に漏洩してくることもありうる。また、そのような不測の事態を考慮した安全対策を講じておくべきである。そのような容器内の液体のカバー部内への漏洩が生じた場合、オゾン対策のためのカバー部の密封構造がかえって仇となり、カバー部内に漏洩した液体が溜まって漏電やランプその他電気・電子制御機器の損傷等の二次被害を招くおそれがある。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、オゾンガスの漏洩対策に関連して改良を施した紫外線液体処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る紫外線液体処理装置は、被処理液体が通される容器と、前記容器内に配置された透光性のランプ保護管であって、該保護管の外側で前記被処理液体に接するものと、前記ランプ保護管内に収納される紫外線ランプと、前記ランプ保護管の一端が前記容器から露出する部分において、該ランプ保護管の一端からその内部にアクセスしうるように設けられる、開閉可能なカバー部と、前記カバー部の所定箇所に設けられた漏れ液体排出用のドレーン部と、前記ドレーン部において、前記カバー部からの漏れ液体排出は許すが、気体の流通は阻止する弁装置とを具備する。これによって、容器内の液体のカバー部内への漏洩が生じた場合、漏れ液体をドレーン部で排出することができるので、カバー部内に漏洩した液体が溜まって漏電やランプその他電気・電子制御機器の損傷等の二次被害を招くおそれがない。また、ドレーン部に設けた弁装置により、カバー部内に漏出したオゾンガスが該ドレーン部から、処理装置の外部に漏出することが阻止され、オゾンガスの漏洩対策も確保することができる。
【0007】
一例として、前記弁装置は、常時は閉鎖していて、前記カバー部からの漏れ液体の圧力によって開放される弁構造を有するものであってよい。別の例として、前記弁装置は、常時は閉鎖していて、前記カバー部に溜まった漏れ液体の浮力によって開放される弁構造を有するものであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明しよう。
図1は、密閉した管路1内に被処理液体Pを通して紫外線処理するタイプの紫外線液体処理装置における本発明の一実施例を示す断面略図である。被処理液体Pを通す管路(以下、便宜上、密閉管という)1は、その両端がシール部2及び3によって液密に密閉されており、液体入口1aから取り入れた被処理液体Pを管内に通し、液体出口1bから排出する。この密閉管1内には、石英ガラス製の透光性のランプ保護管4内に液密に挿入された状態で紫外線ランプ5が配置される。この紫外線ランプ5は、220nm以下、典型的には185nm、の波長の紫外線を発するもので、被処理液体P中の有機物を分解する機能を発揮する。図1では、図示の簡略化のために、内部に紫外線ランプ5を収納した1個のランプ保護管4だけが設けられるように描かれているが、通常は、1個に限らず、図2及び図3に示すように、密閉管1の断面積に応じて複数のランプ保護管4(及びその内部の紫外線ランプ5)が設けられる。
【0009】
密閉管1の両端に設けられたカバー部6及び7は、シール部2,3を介して密閉管1の内部空間とは液密に遮断され、かつ、ランプ保護管4の内部空間とは通じた状態である。すなわち、ランプ保護管4の両端はシール部2,3を通り抜けてカバー部6及び7内の空間に臨んでおり、これにより、紫外線ランプ5は、その交換時において、ランプ保護管4の端部から出し入れできるようになっている。カバー部6及び7は公知の構造により(例えば蓋6a,7aの開閉により)任意に開閉自在であり、勿論、紫外線ランプ5の出し入れ等のメンテナンス作業時には、カバー部6及び7が開放される(蓋6a,7aが開かれる)。
【0010】
カバー部6及び7の下方所定箇所には、漏れ液体排出用のドレーン部8,9が設けられる。上述のように、カバー部6,7は、密閉管1に対して液蜜に構成され、基本的には、管1内の液体Pが漏洩してこないようになっている。しかし、不測の事態により、管1内の液体Pがカバー部6又は7内に漏洩してくることもありうる。また、そのような不測の事態を考慮して、ドレーン部8,9が設けられており、管1内の液体Pのカバー部6又は7内への漏洩が生じた場合、その漏れ液体を該ドレーン部8又は9で自動的に排出することができるようにしている。
【0011】
ドレーン部8及び9においては、カバー部6,7からの漏れ液体の排出は許すが、気体の流通は阻止する弁装置10及び11がそれぞれ設けられている。そのような弁装置10の一例を示すと図2のようである。この図2に示す弁装置10は、常時は符号10aで示すようにドレーン部8の出口8aを閉鎖しているが、カバー部6からの漏れ液体がドレーン部8を落下してその出口8aの方に向かうとき、その圧力(矢印A方向)によって符号10a’で示すように開放される、一種の逆止弁の弁構造を持つものである。185nm波長の紫外線によりランプ保護管4内で発生したオゾンガスがカバー部6,7に漏れ出すが、カバー部6,7は密封構造であるため容易にはそれよりも外部には漏れ出ない。しかし、ドレーン部8及び9を設けたことにより、もし、このドレーン部8及び9が常時開放している構成であるとすると、そこからオゾンガスが漏れ出るので、好ましくない。この点、本発明によれば、図2に示す弁装置10では、閉鎖位置10aの弁は気体の流通は阻止する構造であるので、オゾンガスのドレーン部8からの漏出を防ぐ。すなわち、気体は液体に比べてはるかに軽いので、閉鎖位置10aの弁は気体によっては矢印A方向に動かされないようになっている。
【0012】
図3は、弁装置10の別の弁構造の一例を示すものである。この図3に示す弁装置10は、常時はドレーン部8の出口8aを閉鎖するように配置される浮き玉10bによって構成されている。漏れ液体がドレーン部8の液溜空間8b内にある程度溜まると、浮力によって浮き玉10bを押し上げ、出口8aを開放し、これによって漏れ液体が出口8aから外部に排出される。一方、ドレーン部8の液溜空間8bに漏れ液体が溜まっていない場合は、浮き玉10bは出口8aを閉鎖しているので、オゾンガスがドレーン部8から外部に漏れ出ることが阻止される。
【0013】
なお、図2及び図3は、カバー部6の蓋6aを外した状態で、長手状の紫外線ランプ5の軸線方向に該カバー部6を見た端面略図であり、複数のランプ保護管4及びその中に挿入配置された紫外線ランプ5の一端が示されている。シール部2の壁面に穿けられた孔にランプ保護管4を固定するシールグランド12においては液蜜にシールがなされるが、この部分から不測の液漏れが生じるおそれがありうる。その他、シール部2のいずれかの箇所から不測の液漏れが生じるおそれがある。
【0014】
なお、弁装置10の弁構造は、図2,図3に示したものに限らず、本願発明の目的を達成しうる構造であれば、どのような構造でもよい。
上記実施例では、カバー部6,7は、密閉管1の両端に設けられているが、一端のみに設けるような設計であっても差し支えない。また、カバー部6,7の構成又は構造はどのようなものであってもよい。
更に、被処理液体Pが通される容器は、密閉管1つまり円筒形容器に限らず、どのような構造であってもよい。その場合、カバー部は、該容器内に配置されたランプ保護管4の一端が該容器の壁体から外部に露出する部分において、該ランプ保護管4の一端からその内部にアクセスしうるように設けられる。そして、そのようなカバー部において、本発明に従うドレーン部と弁装置が設けられるようになっていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】被処理液体を管路に通すタイプの紫外線液体処理装置における本発明の一実施例を示す側面断面略図。
【図2】同実施例における弁装置の一例を示すカバー部の端面図。
【図3】同実施例における弁装置の別の例を示すカバー部の端面図。
【符号の説明】
【0016】
1 管路(密閉管)
1a 液体入口
1b 液体出口
2,3 シール部
4 ランプ保護管
5 紫外線ランプ
6,7 カバー部
8,9 ドレーン部
10,11 弁装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液体が通される容器と、
前記容器内に配置された透光性のランプ保護管であって、該保護管の外側で前記被処理液体に接するものと、
前記ランプ保護管内に収納される紫外線ランプと、
前記ランプ保護管の一端が前記容器から露出する部分において、該ランプ保護管の一端からその内部にアクセスしうるように設けられる、開閉可能なカバー部と、
前記カバー部の所定箇所に設けられた漏れ液体排出用のドレーン部と、
前記ドレーン部において、前記カバー部からの漏れ液体排出は許すが、気体の流通は阻止する弁装置と
を具備する紫外線液体処理装置。
【請求項2】
前記弁装置は、常時は閉鎖していて、前記カバー部からの漏れ液体の圧力によって開放される弁構造を有する請求項1に記載の紫外線液体処理装置。
【請求項3】
前記弁装置は、常時は閉鎖していて、前記カバー部に溜まった漏れ液体の浮力によって開放される弁構造を有する請求項1に記載の紫外線液体処理装置。
【請求項4】
前記容器は、密閉型の管路からなり、前記カバー部は、前記管路の一端側に設けられたものである請求項1乃至3のいずれかに記載の紫外線液体処理装置。
【請求項5】
前記容器内に複数の前記ランプ保護管が配置される請求項1乃至4のいずれかに記載の紫外線液体処理装置。
【請求項6】
前記紫外線ランプは、220nm以下の波長の紫外線を発光しうるものである請求項1乃至5のいずれかに記載の紫外線液体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−268497(P2007−268497A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100943(P2006−100943)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(391031155)株式会社日本フォトサイエンス (12)
【Fターム(参考)】