説明

紫外線硬化システム

【課題】紫外線硬化用の無電極ランプを効率よく冷却することができ、ランプの長寿命化、安定化を図ることができる紫外線硬化システムを提供すること。
【解決手段】紫外線照射ユニット113は、無電極ランプ113aと、その光を集光して照射する曲面集光ミラー113bと、このミラーの開口部に設けられたマイクロ波遮断網113cとを備えている。無電極ランプ113a及び曲面集光ミラー113bが配置されたランプハウス113dには、給気ダクト132、給気パイプ131を介して冷却用の空気が送り込まれる。ランプハウス113dに送り込まれた空気は、ノズル113eを通して無電極ランプ113aに吹き付けられ、これを冷却する。無電極ランプ113aを冷却して熱せられた空気は、マイクロ波遮断網113cを通してワークWに沿って流れ、排気部の排気口H2から排気ダクト134を通して外部に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管等の長尺体であるワークに紫外線を照射して、防錆等のために塗布された紫外線硬化塗料を硬化させる紫外線硬化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、石油田開発、ガス田開発等に使用される鋼管、シームレス管には、倉庫での保管、または、工事現場での仮置き、移送の際の発錆を防ぐために、防錆塗料が塗布されている。このような防錆塗料としては、紫外線を照射することにより乾燥硬化する紫外線硬化塗料が広く用いられている。紫外線硬化塗料は、熱硬化塗料と比較して、乾燥スピード、VOC(揮発性有機化合物)対策、作業環境、耐候性の各点において優れており、かつ、外観性状が良好である。
【0003】
紫外線硬化塗料を硬化させる従来の紫外線硬化装置は、例えば特許文献1に開示されている。この文献に開示される紫外線硬化装置は、マイクロ波励起方式の無電極ランプを用いた紫外線照射ユニットをワークの長手方向に沿って4台設置し、ワークの周囲から偏りなく紫外線を照射するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−244955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1には、無電極ランプの冷却方法については、段落0027にランプを強制的に空冷するための図示せぬ空冷機構が設けられていること、ランプ冷却後の空気が排気ダクトから排気されることが記載されているのみで、詳細な構成は不明である。
【0006】
紫外線硬化用のランプの長寿命化、安定化のためにはランプの冷却が必須であるが、特許文献1の記載からは冷却性能の高い冷却ユニットを得ることはできないという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、紫外線硬化用の無電極ランプを効率よく冷却することができ、ランプの長寿命化、安定化を図ることができる冷却ユニットを備えた紫外線硬化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1にかかる紫外線硬化システムは、上記の目的を達成させるため、紫外線硬化塗料が塗布され、長軸線方向に搬送される長尺体であるワークに対して複数の方向から紫外線を照射して紫外線硬化塗料を硬化させる複数の紫外線照射ユニットと、紫外線照射ユニットのランプを冷却する冷却ユニットとを備える紫外線硬化システムにおいて、紫外線照射ユニットに、マグネトロンによりマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、マイクロ波発生手段からのマイクロ波によって発光する棒状の無電極ランプと、無電極ランプの光を集光して照射する曲面集光ミラーと、曲面反射ミラーの開口部に設けられたマイクロ波遮断網とを備えさせ、冷却ユニットに、曲面集光ミラーの曲面部分の一部に形成された給気口を通して無電極ランプに冷却風を送る給気部と、紫外線照射ユニットとはワークを介して反対側に配置された排気口からランプを冷却してマイクロ波遮断網を通りワークに沿って流れる冷却風を排気する排気部とを備えさせたことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、給気口から排気口までの空間が外部空間とはほぼ遮断された閉空間であること、請求項3は、給気部と排気部とに、それぞれ強制的に空気の流れを発生させるブロワが設けられていること、請求項4は、給気口に、冷却風を無電極ランプに吹き付けるノズルが設けられていることをそれぞれ特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、給気部の給気口から供給される冷却風が無電極ランプを冷却し、マイクロ波遮断網を通してワークに沿って流れ、排気部の排気口から排出されるため、無電極ランプを効率よく冷却することができ、しかも、冷却風の乱れにより熱が滞留してランプが過熱することがなく、ランプの長寿命化、安定化を図ることができる。
また、ワークに塗布された紫外線硬化塗料から揮発した有機溶剤成分がランプ側に侵入することがなく、ランプ及びランプハウスの破損、火災等の事故を防止して安全な環境を提供することができる。
さらに、廃熱を含む空気流がワークに沿って通り抜けるため、ワークに塗布された未乾燥、未硬化の紫外線硬化塗料の溶剤成分を飛ばして乾燥させることにより、塗料の硬化を促進するという効果も奏する。
【0011】
請求項2の構成によれば、冷却風の流路の途中から外部の空気が入り込むのを防ぐことができ、ランプを冷却した熱風を効率よく排気することができる。
【0012】
請求項3の構成によれば、給気部、排気部のそれぞれにブロワを設けることにより、冷却風の流量を確実に確保することができる。
【0013】
請求項4の構成によれば、ノズルを設けることにより、無電極ランプに対して少ない流量で大きな冷却効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る紫外線硬化システムの実施の形態を説明する。図1は、実施の形態に係る紫外線硬化システムの全体構成の概略を示す正面図である。
【0015】
実施の形態の紫外線硬化システム100は、石油田開発、ガス田開発等に使用される鋼管、シームレス管等の長尺体であるワークとし、このワークに紫外線を照射することにより、ワークに塗布された防錆用の紫外線硬化塗料を乾燥硬化させるシステムである。このシステムは、紫外線硬化塗料をワークにスプレーして塗布する図示せぬスプレーコーティングシステムに連続する後工程で使用される。
【0016】
図1に示される紫外線硬化システム100は、4本のワークWに対して同時に紫外線を照射できるように4組の照射経路を備えおり、それぞれの組の照射経路に、ワークWの長手方向に直交する面内で互いに直交する4方向から紫外線を照射するように、4つの紫外線照射ユニットが設けられている。各紫外線照射ユニットは、後述するように、マイクロ波励起無電極ランプを備えている。以下の説明では、4組の照射経路を、図1の左側から順に、第1経路R1、第2経路R2、第3経路R3、第4経路R4とする。
【0017】
図2は、図1に示される紫外線硬化システム100を左側から見た側面図であり、第1経路R1のみを示している。また、図3は、図1のシステムから上面照射部110を取り出して示す正面図、図4は同じく下面照射部120を取り出して示す正面図である。ワークWは、図1では、図示せぬ搬送装置により、紙面の裏側から表側に向けて搬送され、図2では矢印で示すように図中左方向に搬送される。
【0018】
図1に示すように、紫外線硬化システム100は、ワークWの上面2方向から紫外線を
照射する上面照射部110と、ワークWの下面2方向から紫外線を照射する下面照射部120と、それぞれの照射部に冷却風を送り無電極ランプを冷却する冷却ユニット130とを備えている。
【0019】
また、図示せぬスプレーコーティングシステムでは、最初にワーク上面に紫外線硬化塗料が塗布され、下面に接触する搬送ローラにより搬送され、次工程で下面に紫外線硬化塗料が塗布され、全面に紫外線硬化塗料が塗布された状態で紫外線硬化システム100に搬入される。ワークWは、図2に示されるように、最初に下面照射部120を通って下面の塗布された塗料が硬化、乾燥され、硬化した下面に接触する搬送ローラ140により図中左側に搬送され、上面照射部110により上面に塗布された未硬化の塗料が硬化、乾燥される。なお、搬送ローラ140は、ワークWを長手方向に搬送する搬送装置の一部を構成している。
【0020】
図1及び図3に示されるように、上面照射部110は、各経路毎に、ワークWが通る円形の開口部111が形成され、屋根型の斜面を上向きに備えたハウジング112と、ワークWの長手方向に離れた位置で屋根型の斜面のそれぞれに取り付けられた2つの紫外線照射ユニット113,114とを備えている。これらの構成は各経路で共通であるため、第1経路R1についてのみ符号を付してある。
【0021】
上面照射部110の8つの紫外線照射ユニット113,114は、給気パイプ131を介して給気ダクト132に接続されている。この給気ダクト132には、給気用ブロワ133が接続され、外気が強制的に給気ダクト132内に送り込まれる。各紫外線照射ユニット113,114には、後述するように冷却風を通すよう構成されており、これらの紫外線照射ユニット113,114を通ってランプを冷却した温風は、ハウジング112に達する。4つの経路のハウジング112は、内部の空間が互いに連続するように接続されており、排気ダクト134に接続されている。排気ダクト134には、排気用ブロワ135が接続されている。
【0022】
一方、図4及び一部は図1にも示されるように、下面照射部120は、各経路毎に、ワークWが通る円形の開口部121が形成され、屋根型の斜面を下向きに備えたハウジング122と、ワークWの長手方向に離れた位置で屋根型の斜面のそれぞれに取り付けられた2つの紫外線照射ユニット123,124とを備えている。これらの構成は各経路で共通であるため、第1経路R1についてのみ符号を付してある。
【0023】
下面照射部120の8つの紫外線照射ユニット123,124は、給気ダクト136に接続されている。この給気ダクト136は、各紫外線照射ユニット123,124に接する屋根型の斜面を備えており、これらの屋根型の斜面に形成された図示せぬ開口を通して各紫外線照射ユニット123,124内と空間的に連続している。給気ダクト136には、給気用ブロワ137が接続され、外気が強制的に給気ダクト136内に送り込まれる。各紫外線照射ユニット123,124は、上記の上面照射部110の紫外線照射ユニット113,114と同様に、冷却風を通すよう構成されており、これらの紫外線照射ユニット123,124を通ってランプを冷却した温風は、ハウジング122に達する。4つの経路のハウジング112は、内部の空間が互いに連続するように接続されており、排気ダクト138に接続されている。排気ダクト138には、排気用ブロワ139が接続されている。
【0024】
上面照射部110の紫外線照射ユニット113,114と、下面照射部120の紫外線照射ユニット123,124とは、いずれも共通の構成であるため、代表して紫外線照射ユニット113の構成について、図5を参照して説明する。
【0025】
紫外線照射ユニット113は、マグネトロンによりマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、マイクロ波発生手段からのマイクロ波によって発光する棒状の無電極ランプ113aと、無電極ランプ113aの光を集光して照射する曲面集光ミラー113bと、曲面反射ミラー113bの開口部に設けられたマイクロ波遮断網113cとを備えている。なお、図5では、紙面幅の関係上、マイクロ波発生手段については図示を省略している。
【0026】
マイクロ波励起無電極ランプは、マイクロ波電流が供給されるアンテナより放射されたマイクロ波の電磁場により、棒状の発光管の内部に封入されたガスを励起させて発光させるものであり、その原理は、例えば特開2001−126504号公報に開示されるように公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0027】
曲面集光ミラー113bの曲面部分の中央部には、給気口H1が形成され、この給気口H1に、冷却風を無電極ランプに吹き付けるノズル113dが設けられている。一方、紫外線照射ユニット113とワークWを介して反対側には、排気口H2が配置されている。
【0028】
無電極ランプ113a及び曲面集光ミラー113bが配置されたランプハウス113eには、図中左側から、給気ダクト132、給気パイプ131を介して冷却用の空気が送り込まれる。ランプハウス113dに送り込まれた空気は、ノズル113dを通して無電極ランプ113aに吹き付けられ、これを冷却する。ノズル113dを設けることにより、無電極ランプ113aに対して少ない流量で大きな冷却効果を得ることができる。
【0029】
無電極ランプ113aを冷却して熱せられた空気は、図5に矢印で示すように、マイクロ波遮断網113cを通してワークWに沿って流れ、排気部の排気口H2から排気ダクト134を通して外部に排出される。なお、この例では、給気パイプ131、給気ダクト132,136、ブロワ133,137、給気口H1が給気部を構成し、排気ダクト134,138、ブロワ135,139、排気口H2が排気部を構成している。
【0030】
上記の構成によれば、給気口H1に設けられたノズル113eから供給される冷却風が無電極ランプ113aを冷却し、熱せられた空気は排気口H2から排出されるため、無電極ランプ113aを効率よく冷却することができ、しかも、冷却風の乱れにより熱が滞留してランプが過熱することがなく、ランプの長寿命化、安定化を図ることができる。
【0031】
また、ワークWに塗布された紫外線硬化塗料から揮発した有機溶剤成分がランプ側に侵入することがなく、無電極ランプ113a及びランプハウス113eの破損、火災等の事故を防止して安全な環境を提供することができる。
【0032】
なお、冷却ユニット130は、無電極ランプ113aの石英ガラス製のランプバルブの表面温度を約700℃に保つように冷却風を供給するため、ワークWの表面を通過する際には高温の空気流となる。この高温の新鮮な空気がワークの表面を通過することにより、紫外線硬化塗料の溶剤揮発成分を飛ばして乾燥させ、ワークW自体の温度も上昇するため、硬化時間が短縮するという効果がある。
【0033】
また、実施の形態の構成によれば、給気口H1から排気口H2までの空間が、ワークWを通すための開口部を除き、外部空間とはほぼ遮断された閉空間であるため、冷却風の流路の途中から外部の空気が入り込むのを防ぐことができ、ランプを冷却した熱風を効率よく排気することができる
【0034】
さらに、給気部、排気部のそれぞれにブロワを設けているため、冷却風の流量を確実に確保することができる。なお、上記の例では、上面照射部110と下面照射部120とで独立したブロワを設けているが、これらを統一して給気用、排気用にそれぞれ1つずつの
ブロワを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る紫外線硬化システムの概略構成を示す正面図である。
【図2】図1の紫外線硬化システムを図中左側から見た側面図である。
【図3】図1の紫外線硬化システムから上面照射部のみを取り出して示した正面図である。
【図4】図1の紫外線硬化システムから下面照射部のみを取り出して示した正面図である。
【図5】図1の紫外線硬化システムに設けられた紫外線照射ユニットの内部構造の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
100 紫外線硬化システム
110 上面照射部
113,114 紫外線照射ユニット
113a 無電極ランプ
113b 曲面集光ミラー
113c マイクロ波遮断網
113e ノズル
120 下面照射部
123,124 紫外線照射ユニット
130 冷却ユニット
H1 給気口
H2 排気口
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化塗料が塗布され、長軸線方向に搬送される長尺体であるワークに対して複数の方向から紫外線を照射して前記紫外線硬化塗料を硬化させる複数の紫外線照射ユニットと、該紫外線照射ユニットのランプを冷却する冷却ユニットとを備える紫外線硬化システムにおいて、
前記紫外線照射ユニットは、
マグネトロンによりマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、
前記マイクロ波発生手段からのマイクロ波によって発光する棒状の無電極ランプと、
前記無電極ランプの光を集光して照射する曲面集光ミラーと、
該曲面反射ミラーの開口部に設けられたマイクロ波遮断網とを備え、
前記冷却ユニットは、
前記曲面集光ミラーの曲面部分の一部に形成された給気口を通して前記無電極ランプに冷却風を送る給気部と、
前記紫外線照射ユニットとは前記ワークを介して反対側に配置された排気口から前記ランプを冷却して前記マイクロ波遮断網を通り前記ワークに沿って流れる冷却風を排気する排気部とを備えることを特徴とする紫外線硬化システム。
【請求項2】
前記給気口から前記排気口までの空間が外部空間とはほぼ遮断された閉空間であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化システム。
【請求項3】
前記給気部と前記排気部とには、それぞれ強制的に空気の流れを発生させるブロワが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線硬化システム。
【請求項4】
前記給気口には、冷却風を前記無電極ランプに吹き付けるノズルが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線硬化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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