説明

紫外線硬化型コーティング用組成物およびこれを被覆してなる樹脂被覆品

【課題】シロキサン結合を有する無機系硬化性組成物の特長を損なうことなく、この種の無機系硬化性組成物において解決困難な問題とされていた硬化後のクラック発生の問題がなく、従来にない高いレベルの耐擦傷性を付与することができ、その上保存性にも優れたラジエーション硬化型のコーティング用組成物およびその樹脂被覆品を提供すること。
【解決手段】(A)金属酸化物コロイドゾル、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物、(C)光重合開始剤を必須成分とし、かつ、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物の少なくとも一部が特定の有機官能基を含み、分子量分布が制御されてなることを特徴とする実質的に末端がSiOH型である紫外線硬化型コーティング用組成物、およびこれを被覆してなる樹脂被覆品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線(UV)硬化型のコーティング用として好適なコーティング用樹脂組成物に関し、さらに詳しくは金属酸化物コロイドゾルを利用した、プラスチック、フィルム、軽金属など表面が軟質な基材に優れた耐擦傷性の保護被膜を形成するUV硬化型のコーティング剤として有用なコーティング用組成物およびこれを被覆してなる樹脂被覆品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面保護には現在までに種々のものが使用されている。プラスチック材料は軽量性、加工性などの特徴をいかして多くの用途で用いられているが表面の耐擦傷性に劣る欠点がある。
表面が軟質であるプラスチック、軽金属など特に高いレベルの耐擦傷性を要求される用途ではシロキサン系の熱硬化型ハードコート剤が使用されている。このシロキサン系ハードコート剤については数多くの技術提案がなされてきた。例えば特許文献1には、トリヒドロキシシラン部分縮合物とコロイダルシリカからなるコーティング用組成物が開示されている。しかし、加熱硬化型ハードコーティング剤は、その硬化に関して多大な熱エネルギーを要することから経済的でなく、基材によっては加えられる熱により変形してしまうなどの問題点がある。
【0003】
これらの問題点を解消するためにラジエーション硬化させるタイプのコーティング剤が提案されている。ここで、ラジエーションとは電子線、紫外線などの電離放射線のエネルギーによって硬化することを意味する。なお、本明細書並びに本発明において「紫外線(UV)硬化型」と称する場合には、紫外線(UV)のみならず、電子線を含む広く電離放射線のエネルギーによって硬化し得る性質を意味するものとし、実質的に「ラジエーション硬化型」と同義とする。
【0004】
このようなラジエーション硬化型コーティグ剤としては、シリカ粒子、アクリロキシ官能基シランもしくはその加水分解物、およびアクリレート化合物よりなる組成物として特許文献2が開示されている。しかし、この場合アクリレート化合物は光開始剤により硬化するが、シリカ粒子、シラン部位の光硬化に関しては考慮されておらず、硬度が十分に発現するとは言いがたい。
【0005】
近年、特許文献3に、シリカなどの粒子表面に重合性官能基を導入する試みが開示されているが、このような変性シリカ粒子を作成する場合使用する不飽和二重結合を有する物質中に水酸基などの官能基が必要であり設計の自由度が少なくなるという欠点がある。上述したすべての系にいえることは、硬度、耐擦傷性のみ追い続けるあまり、硬く、脆いものとなってしまい、それ以外の例えば耐クラック性、可撓性、難燃性などの諸特性を付与するゆとりはない。
【0006】
すなわち、これまでに提案されているラジエーション硬化型無機骨格硬化性樹脂組成物においては、硬化性に問題がなく、造膜性や耐衝撃性、種々の外部刺激に対するクラック発生の問題がなく、しかも、経時安定性、耐擦傷性に優れ、かつ有機ポリマーの諸物性をも併有するラジエーション硬化型ハードコーティング剤組成物は、未だに実用化されていない。
【0007】
【特許文献1】特開昭51−2736号公報
【特許文献2】特開昭62−256874号公報
【特許文献3】特開平9−100111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、シロキサン結合を有する無機系硬化性組成物の特長を損なうことなく、この種の無機系硬化性組成物において解決困難な問題とされていた硬化後のクラック発生の問題がなく、従来にない高いレベルの耐擦傷性を付与することができ、その上保存性にも優れたラジエーション硬化型のコーティング用組成物および樹脂被覆品を提供することを目的とする。
【0009】
さらに本発明は、硬化性を阻害することなく、ラジエーションにより瞬時に硬質皮膜を形成せしめ、かつ、無機オルガノシロキサン化合物の硬質物性、含有する無機金属酸化物による導電性、光触媒活性、屈折率制御と有機ポリマーの造膜性、耐クラック性、可撓性、セルフヒーリング性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐炎性などの諸特性を併有する複合皮膜を形成し得るコーティング用組成物およびその樹脂被覆品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、
(A)金属酸化物コロイドゾル、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物、(C)光重合開始剤を必須成分とし、かつ、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物の少なくとも一部が特定の有機官能基を含み、分子量分布が制御されてなることを特徴とする実質的に末端がSiOH型である紫外線硬化型コーティング用組成物が上述問題点を解決するのに有効であることを見出した。
【0011】
本発明における組成について述べる。
(A)のソリッド分は(A)のソリッド分および(B)のソリッド分の合計量に対して5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、最も好ましくは20〜40%であり、同様に、(B)のソリッド分は(A)のソリッド分および(B)のソリッド分の合計量に対して20〜95質量%、好ましくは40〜90質量%、もっとも好ましくは60〜80質量%であるオルガノシロキサン樹脂組成物である。
【0012】
(C)光重合開始剤としては、ラジカル系光重合開始剤およびカチオン系光重合開始剤が挙げられ、これら双方を含むことが好ましく、ラジカル系光重合開始剤0.005〜10質量%およびカチオン系光重合開始剤0.005〜10質量%を含むことがより好ましい。
上述した各成分の添加量、存在量がこれより少な過ぎる場合、目的とする効果を期待することが困難な場合があり、多過ぎる場合は安定性、透明性、耐クラック性など溶液特性、皮膜特性上不利となる懸念がある。
【0013】
また、当該コーティング用組成物の合成条件としては、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物のピーク分子量がポリスチレン換算で1000以下となるように分子量が制御された合成条件で合成されたものが好ましい。当該分子量が大き過ぎると、硬度の発現、特に耐擦傷性が不十分となる懸念がある。
【0014】
また、上記SiOH型オルガノシロキサン樹脂組成物の−SiOH基、もしくは含有する他の官能基と反応する、もしくは水素結合、および/または、π−π共役、配位結合などの化学的相互作用により安定化する官能基、部分を有する有機重合体を当該オルガノシロキサン樹脂組成物反応系に存在させることにより、容易に無機−有機ハイブリッド体を形成することが可能となる。そして、そのようにして得られた硬化皮膜は均質で、実質的に無色透明で、無機シロキサン樹脂組成物の硬度、耐擦傷性、耐熱性、耐候性、耐熱性、耐酸性など諸特性とハイブリッド化して導入される有機成分の諸特性を併有させることが可能となることを見出した。
【0015】
本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物(以下、単に「本発明のコーティング用組成物」という場合がある。)における(A)金属酸化物コロイドゾルとしては、コロイダルシリカが代表的なものとして例示される。これは、直径5〜200nm、好ましくは5〜40nmのシリカ微粒子が水または有機溶媒中にコロイド状に分散されたものである。なかでも酸性水溶液分散型コロイダルシリカが、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物との反応を考慮した場合、容易に化合出来るSiOH表面状態を有しているため最も適している。
【0016】
かかるコロイダルシリカの具体例として、日産化学工業(株)製のスノーテックスO、触媒化成工業(株)製のカタロイドSN、日本化学工業(株)製のシリカドール30Aなどが挙げられる。また、アルカリ性コロイダルシリカに種々の有機酸、無機酸を添加することにより、pHを3〜5のコロイダルシリカ酸性準安定域に安定化させ、その表面をSiOH型としたものも同様に使用できる。
【0017】
有機溶媒分散型としては、具体的に日産化学工業(株)製のMA−ST、IPA−ST、NBA−ST、IBA−ST、EG−ST、XBA−ST、NPC−ST、DMAC−ST、触媒化成工業(株)製のOSCAL1132、OSCAL1232、OSCAL1332、OSCAL1432、OSCAL1532、OSCAL1632、OSCAL1732などが挙げられる。
【0018】
その他の金属酸化物コロイドゾルは、種々の機能性付与、例えば、導電性、光触媒活性、屈折率制御の目的で添加される。具体的には、マグネシウム酸化物、珪素酸化物とマグネシウム酸化物との共酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、インジウム酸化物、ゲルマニウム酸化物、錫酸化物、亜鉛酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、セシウム酸化物、インジウム錫酸化物、および錫アンチモン酸化物のコロイドゾルが単独であるいは混合物として用いることができる。
【0019】
これら金属酸化物コロイドゾルは、金属原子−酸素原子の繰り返しで構成されるが、末端部位においては金属原子と結合しない酸素原子の結合手(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基のような形態)が存在し、オルガノシロキサンのSiOHと反応し得る。また、これらの金属コロイドゾルの粒子径は、0.005μm〜1μmであることが好ましい。
【0020】
本発明のコーティング用組成物において、(B)として用いるアルコキシシラン加水分解縮合物は、下記式(1)のアルコキシシランを加水分解縮合反応させたものであることが好ましい。
1a2bSi(R34-a-b ・・・ (1)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2はアリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基およびシアノ基からなる群より選ばれる1以上の基を含む有機官能基を表し、R3は炭素数1〜10のアルコキシ基、アルケニロキシ基、アシロキシ基またはアルコキシアルコキシ基を表し、a,bはおのおの0,1,2のいずれかの整数であり、a+bは0,1,2のいずれかの整数である。)
【0021】
当該アルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリメトキシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独でも、混合して使用してもよく、あらかじめ部分的に加水分解を施しておいたものを使用してもかまわない。
【0022】
また、後述する種々の有機ポリマーとのハイブリッド化を促進する目的で、目的とする有機ポリマーとの相溶性、反応性、種々の化学的インタラクションを形成する有機化合物を予め反応せしめたものを使用することも可能である。
【0023】
本発明のコーティング用組成物において、上述した(B)アルコキシシラン加水分解縮合物のうちの少なくとも一部が、前記式(1)中のbが1または2であり、かつ、R2が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、エポキシ基およびメルカプト基からなる群より選ばれるいずれかの基を含む特定の有機官能基であることが好ましい。これら官能基は、本発明に必須の「特定の有機官能基」に相当するものであり、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物中のうちの少なくとも一部について、いずれかの箇所に導入されていることが必須であり、上記のようにR2の基として含まれることが好ましい。
【0024】
これらラジカル反応性基(アクリロイル基、ビニル基、スチリル基等)、カチオン反応性基(エポキシ基等)を含むアルコキシシラン加水分解縮合物は、金属酸化物−オルガノシロキサン硬化成分とUVラジカルおよびUVカチオン硬化成分とを共重合せしめる反応性無機−有機架橋剤として作用する。当該特定の有機官能基を含むアルコキシシラン加水分解縮合物成分の存在量としては、全アルコキシシラン加水分解縮合物中、20〜80モル%が好ましく、40〜60モル%がより好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、シロキサン結合を有する無機系硬化性組成物の特長を損なうことなく、この種の無機系硬化性組成物において解決困難な問題とされていた硬化後のクラック発生の問題がなく、従来にない高いレベルの耐擦傷性を付与することができ、その上保存性にも優れたラジエーション硬化型(詳しくは、紫外線硬化型)のコーティング用組成物および樹脂被覆品を提供することができる。
【0026】
また、本発明によれば、硬化性を阻害することなく、紫外線により瞬時に硬質皮膜を形成せしめ、かつ、無機オルガノシロキサン化合物の硬質物性と有機ポリマーの造膜性、耐クラック性、可撓性、セルフヒーリング性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐炎性などの諸特性を併有する複合皮膜を形成し得るコーティング用組成物およびその樹脂被覆品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明のコーティング用組成物について詳細に説明する。
本発明のコーティング用組成物は、(A)金属酸化物コロイドゾル、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物、(C)光重合開始剤を必須成分とし、かつ、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物の少なくとも一部が特定の有機官能基を含み、分子量分布が制御されてなることを特徴とするものである。
【0028】
本発明のコーティング用組成物における(A)金属酸化物コロイドゾルと(B)アルコキシシラン加水分解縮合物との使用割合は、組成物の安定性、得られる硬化膜の透明性、耐摩耗性、耐擦傷性、密着性および耐クラック性の点から設計される。(A)および(B)のソリッド合計量に対して(A)ソリッド分が5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、もっとも好ましくは20〜40%、(B)ソリッド分が20〜95質量%、好ましくは40〜90質量%、もっとも好ましくは60〜80質量%である、実質的に末端がSiOH型オルガノシロキサンの樹脂組成物が適している。
【0029】
末端をSiOH型とすることにより、当該オルガノシロキサン樹脂組成物は被塗物表面に塗布され、カチオン系光重合開始剤により発生する酸により脱水縮合し、シロキサン結合を形成することができる。この時、末端がSiORで残っている場合は、塗布後、この加水分解が律速段階となり、生成するアルコールがラジカル、カチオン光開始剤に影響を与えるため好ましくなく、最悪の場合、硬化不良を引き起こすため適当ではない。
【0030】
また、これまでの研究から、本発明のコーティング用組成物において(B)として用いられるアルコキシシランの加水分解縮合物は前記式(1)に示されるアルコキシシランの加水分解直後の発生期のSiOHが最も活性が高く、硬度、擦傷性が出やすいことが解っている。即ち、(B)成分のアルコキシシラン加水分解縮合物のピーク分子量がポリスチレン換算で1000以下となるように分子量分布が制御された合成条件にて製造されることが、本発明のコーティング用組成物の最も重要な目的となる高硬度、高耐擦傷性、高耐摩耗性の発現につながることを意味する。
【0031】
上述したように、末端がSiOHでそのピーク分子量がポリスチレン換算で1000以下となるように分子量を制御するためには、前記式(1)に示されるアルコキシシランの加水分解条件が重要となる。
即ち、下記式(1)
1a2bSi(R34-a-b ・・・ (1)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2はアリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基およびシアノ基からなる群より選ばれる1以上の基を含む有機官能基を表し、R3は炭素数1〜10のアルコキシ基、アルケニロキシ基、アシロキシ基またはアルコキシアルコキシ基を表し、a,bはおのおの0,1,2のいずれかの整数であり、a+bは0,1,2のいずれかの整数である。)
のアルコキシシランモノマー1モルに対して水の添加量を((4−a−b)+0.2)/2モル〜20モル、好ましくは3モル〜10モル、最も好ましくは3.1モル〜6モルとすることにより達成される。
【0032】
水の添加量が不足する場合、末端がSiOHとなり得ず、アルコキシシリル基が残存してしまい、硬度の面で目的を十分に達成することができない可能性がある。一方、水の添加量が多過ぎる場合、得られた系が不安定化してしまう問題や、塗膜形成時の各種問題(白化、泡、不均質など)が生ずる懸念があるため好ましくない。
上述した水とは、系に添加されるすべての水分に言及される。即ち、添加される水分散金属酸化物コロイドゾル、加水分解触媒、有機ポリマーなどに含まれる水分を含めた総和である。
【0033】
本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物として、上記(A)金属酸化物コロイドゾル、(B)(特定の有機官能基を含む)アルコキシシラン加水分解縮合物および(C)光重合開始剤だけで使用することもできるが、さらに不飽和二重結合を1個以上有する化合物を配合して使用することができる。
【0034】
不飽和二重結合を1個以上有する化合物として具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、
【0035】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル類、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類、
【0036】
また、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアール酸エチレンオキサイド変性ε−カプロラクトン変性トリ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリプロピオネートなどの3官能(メタ)アクリレート類;また、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステルテトラ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシ)ホスフェ−ト、PPZなどの多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
さらに上記したような化合物の他にポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化マレイン酸変性ポリブタジエン等を挙げることができる。
これらアクリレートの添加量としては(A)金属酸化物コロイドゾルのソリッド分に(B)アルコキシシラン加水分解縮合物のソリッド分を加えた無機成分に対して、上記有機成分のソリッド比を無機/有機としたとき、95/5質量比〜5/95質量比、好ましくは70/30質量比〜30/70質量比が好ましい。
【0038】
また、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどアルコール含有多官能アクリレートをγ−イソシアナトプロピルトリメトキシシランなどでシリル化し、本発明における(B)成分として用いることは、前述反応性無機−有機架橋剤として働くためこれも有用である。
【0039】
本発明においては、上記SiOH型オルガノシロキサン樹脂組成物の−SiOH基、もしくは含有する他の官能基と反応する、もしくは水素結合、π−π共役、配位結合などの化学的相互作用により安定化する官能基、部分を有する有機重合体を、反応系中に存在させることができる。
【0040】
上記SiOH型オルガノシロキサン樹脂組成物の−SiOH基と反応する、もしくは水素結合により安定化する官能基、部分を有する有機重合体としては、アクリルシリコーン、アルコキシシリル基変性エポキシ樹脂、アルコキシシリル基変性ウレタン樹脂、アルコキシシリル基変性ポリエステル、アルコキシシリル基変性ポリブタジエン、アルコキシシリル基変性フッ素樹脂など各種シリル化ポリマー、エポキシ樹脂、各種グリシジルエーテル、アクリルポリオール、エポキシポリオールなどポリオール類、ポリウレタン樹脂、ポリアミド(ナイロン)樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリオキサゾリン樹脂、ポリチオール樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが例示される。
【0041】
また、π−π共役や配位結合などの化学的相互作用により安定化する官能基、部分を有する有機重合体としては、ポリスチレン、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、各種アイオノマー樹脂、有機金属含有ポリマーなどが例示される。これら有機重合体はオルガノシロキサン部位と安定化、一体化して樹脂の骨格に取り込まれ、オルガノシロキサンの無機特性に対して有機特性を付与する特性上、合成のはじめの段階で仕込まれるべきである。いわゆる、オルガノシロキサン加水分解重縮合の系中に添加されるin situゾルゲル法が適用される。これら有機重合体の配合量としては(A) 金属酸化物コロイドゾルのソリッド分に(B)アルコキシシラン加水分解縮合物のソリッド分を加えた無機成分に対して、上記有機成分のソリッド比を無機/有機としたとき、95/5質量比〜50/50質量比が好ましい。この範囲を超えて有機重合体配合量が減ると、その添加効果が出にくくなり、また、多くなりすぎると、無機特性、特に耐擦傷性が低下するため好ましくない。
【0042】
本発明のコーティング用組成物には、さらに(C)光重合開始剤が使用される。本発明における(C)光重合開始剤には、ラジカル系光重合開始剤およびカチオン系光重合開始剤が挙げられ、これら双方が併用されることが好ましい。ラジカル系光重合開始剤は、本発明のコーティング用組成物におけるアクリレート部位の硬化に利用され、カチオン系光重合開始剤は末端SiOHの脱水縮合反応を促進させ、かつ、エポキシ部のカチオン重合にも利用される。即ち、本発明においては、無機成分と有機成分が光で開始される2つの別種の反応により一体化して硬化する反応機構によって進行するため、無機の特性と有機の特性を併有する硬化体が得られるのである。
【0043】
使用されるラジカル系光重合開始剤としては、光励起によってラジカル重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルフォスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物などが使用できる。
【0044】
同様に、使用されるカチオン系光重合開始剤としては、下記式2で表される、いわゆるラジエーション感受性芳香族オニウム塩であれば、特に限定されない。
(R3−C64n+MQh- ・・・ (2)
(式中、XはI,PおよびSからなる群より選択されるいずれかの基であり、Mは金属または半金属であり、QはCl、F、BrおよびIからなる群より選択されるいずれかのハロゲンであり、R3は水素または炭素数1〜12の一価炭化水素基であり、hは4〜6の整数であり、nは2または3の整数である。)
上記式中のMQh-が、SbF6-、AsF6-、BF4-あるいはPF6-である化合物が、一般には使用される。
【0045】
本発明のコーティング用組成物に使用されるラジカル系光重合開始剤およびカチオン系光重合開始剤の添加量としては、それぞれ0.005〜10質量%の範囲が好ましい。この範囲を超えて少ない場合は、硬化不良、硬度の不足などの問題が生じる懸念があり、多い場合は、着色の問題が発生する懸念があるため、それぞれ好ましくない。
【0046】
本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物には、目的を損なわない範囲で溶媒が使用されうる。この溶媒としては前記オルガノシロキサン樹脂固形分が安定に溶解することが必要である。そのためには、使用される溶媒はアルコールを含むものであることが望ましい。かかるアルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1プロパノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどが挙げられ、炭素数1〜4の低沸点アルコールが好ましく、溶解性、安定性、及び塗工性の点で2−プロパノールが特に好ましい。
【0047】
これに、アクリレート成分の良溶媒であるメチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;グリコールエーテル類;グリコールエーテルエステル類;芳香族炭化水素類;が推奨される。ただし、溶剤には各種法規制があるためそれを考慮すべきである。
【0048】
かかる溶媒中には水分散型コロイダルシリカ中の水で加水分解反応に関与しない水分、アルコキシシランの加水分解に伴って発生する低級アルコール、有機溶媒分散型のコロイダルシリカを使用した場合にはその分散媒の有機溶媒、有機重合体が配合されれば、それに含まれる溶媒、コーティング用組成物のpH調整のために添加される酸も含まれる。pH調整のために使用される酸としては塩酸、硫酸、燐酸、亜硝酸、硝酸。過塩素酸、スルファミン酸などの無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸が挙げられ、pH調整の容易さの観点から、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸などの有機カルボン酸が好ましい。
【0049】
本発明のコーティング用組成物は、酸、溶剤の含有量を調整することによりpHを3.0〜6.0に調整することが好ましく、4.0〜5.5に調整することがより好ましい。これにより、常温でのコーティング用組成物のゲル化を防止し、保存安定性を増すことができる。
【0050】
なお、本発明のコーティング用組成物には、塗工性および得られる塗膜の平滑性、外観を向上させる目的で公知のレベリング剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。かかる添加剤の配合量としては、既述の(A)〜(C)および溶媒の全成分100質量部に対して0.001〜2質量部の範囲が好ましい。また、本発明の目的を損なわない範囲で紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料、フィラーなどを配合してもかまわない。
【0051】
本発明のコーティング用組成物の基材(被塗物)への塗布は、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法、リバースコートあるいはグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などといったあらゆる塗装、印刷が可能であり、塗装される基材の形状に応じて適宜選択することができる。
【0052】
また、本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物は、塗料、グラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ、インクジェット印刷インキなどのインキバインダー、およびラミネーション接着剤を含む各種接着剤として使用することができる。本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物は、公知の紫外線硬化方法により硬化させることができ、特に紫外線もしくは電子線を用いることが好ましい。
【0053】
紫外線照射装置としては光源として、通常200〜500nmの範囲の光を含む光源、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等を有するものが使用できる。紫外線の積算光量は、用途、膜厚、着色剤の有無、光重合開始剤の種類と量により必要最低積算光量が左右されるため制限はない。
これら紫外線、電子線と赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用は効果的である。
【0054】
また、本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物は、フリーラジカルによるアクリレート成分とカチオンによるシロキサンおよびエポキシ成分の複合架橋により硬化していく。反応速度としては「ラジカル反応>カチオン反応」であり、無機/有機配合量、有機成分、無機成分の選択により硬化性、柔軟性を制御したり、UV照射後に後加工することも可能となる。
【0055】
本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物の厚みは、通常0.1〜20μm、好ましくは2〜10μm、最も好ましくは3〜8μmである。コート層の厚みがかかる範囲内で塗布された場合には、硬化時に発生する応力の為にコート層と基材との密着性が低下したりすることなく、本発明の目的とする十分な硬度、耐擦傷性、耐摩耗性を有するコート層が得られることとなる。
【実施例】
【0056】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これにより本発明が限定されるものでないことは言うまでもない。
以下に実施例を挙げて説明する。
【0057】
<合成例1:シリル化多官能アクリレートの合成>
窒素導入管および温度計を取り付けた300mlの4口フラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学社製、商品名ライトアクリレートPE−3A)149gを秤量して仕込み、102.5gのγ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製、商品名Y−5187)を室温で1hかけて滴下した。これを60℃に昇温し3h反応させた。
FT−IRにより、2200cm-1のイソシアネートの吸収が消え、3300cm-1に−NHの吸収が現れ、1700cm-1以下にウレタンの吸収が出現したことから、ペンタエリスリトールトリアクリレートがシリル化されたことを確認した。
【0058】
[実施例1]
窒素導入管および温度計を取り付けた500mlの4口フラスコに、35.7gのメチルトリメトキシシラン、20.7gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、15gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS510)、19.2gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、115gのライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学社製)、113.8gのイソプロピルアルコール(IPA)を仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
【0059】
別に、スノーテックスO40{日産化学工業社製シリカゾル、NV(固形分濃度)40%}37.5g、1mol/l(1N)酢酸水溶液4.5g、蒸留水22.5gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
【0060】
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させ目的物を得た。得られた溶液は乳白色透明低粘性液体であった。
次いで、合成物を褐色瓶に移し、イルガキュアー184(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を7.7g、サンエイドSI100L(三新化学工業社製)7.7g、MEKを38.5g添加してコーティング液を得た。
【0061】
[実施例2]
窒素導入管および温度計を取り付けた500mlの4口フラスコに、25gのセルナックスCX−Z610M−F2(日産化学工業社製導電性複酸化物ゾル)、35.7gのメチルトリメトキシシラン、35.7gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、19.2gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、115gのライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学社製)、103.8gのIPAを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
【0062】
別に、1mol/l(1N)酢酸水溶液4.5g、蒸留水45.0gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
【0063】
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、2時間反応させ目的物を得た。得られた溶液は乳白色透明低粘性液体であった。
次いで、合成物を褐色瓶に移し、イルガキュアー184(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を7.7g、サンエイドSI100L(三新化学工業社製)7.7g、MEKを38.5g添加してコーティング液を得た。
【0064】
[実施例3]
窒素導入管および温度計を取り付けた500mlの4口フラスコに、35.7gのメチルトリメトキシシラン、35.7gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、19.2gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、115gのライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学社製)、67.3gのライトアクリレートBP−4EA(共栄社化学社製)、113.8gのIPAを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
【0065】
別に、スノーテックスO40(日産化学工業社製シリカゾル、NV40%)18.8g、アルミナゾル520(日産化学工業社製アルミナゾル、NV20%)37.5g、1mol/l(1N)酢酸水溶液4.5g、蒸留水3.7gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
【0066】
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させ目的物を得た。得られた溶液は乳白色透明低粘性液体であった。
次いで、合成物を褐色瓶に移し、イルガキュアー184(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を7.7g、サンエイドSI100L(三新化学工業社製)7.7g、MEKを38.5g添加してコーティング液を得た。
【0067】
[実施例4]
窒素導入管および温度計を取り付けた500mlの4口フラスコに、34.3gのメチルトリメトキシシラン、34.3gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、2.0gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、15gのライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学社製)、220.5gのIPAを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
【0068】
別に、シリカドール33A(日本化学工業社製シリカゾル、NV33%)153g、1mol/l(1N)酢酸水溶液4.3gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
【0069】
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させ目的物を得た。得られた溶液は乳白色透明低粘性液体であった。
次いで、合成物を褐色瓶に移し、イルガキュアー184(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を4.2g、サンエイドSI100L(三新化学工業社製)4.2gを添加してコーティング液を得た。
【0070】
[実施例5]
窒素導入管および温度計を取り付けた500mlの4口フラスコに、27.5のメチルトリメトキシシラン、27.5gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、2.0gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、15gのライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学社製)、30.5gのコンポブリッドAB3073(アトミクス社製アクリルシリコーン樹脂、NV55%、メタノール溶液)、230gのIPAを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
【0071】
別に、シリカドール33A(日本化学工業社製シリカゾル、NV33%)122g、1mol/l(1N)酢酸水溶液3.4gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
【0072】
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させ目的物を得た。得られた溶液は乳白色透明低粘性液体であった。
次いで、合成物を褐色瓶に移し、イルガキュアー184(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を4.2g、サンエイドSI100L(三新化学工業社製)4.2gを添加してコーティング液を得た。
【0073】
[実施例6]
窒素導入管および温度計を取り付けた500mlの4口フラスコに、27.5のメチルトリメトキシシラン、27.5gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、2.0gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、15gのライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学社製)、56.0gのバーノック18−472(大日本インキ化学工業社製ウレタン樹脂、NV=30%)、204.3gのIPAを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
【0074】
別にシリカドール33A(日本化学工業社製シリカゾル、NV33%)122g、1mol/l(1N)酢酸水溶液3.4gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
【0075】
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させ目的物を得た。得られた溶液は乳白色透明低粘性液体であった。
次いで、合成物を褐色瓶に移し、イルガキュアー184(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を4.2g、サンエイドSI100L(三新化学工業社製)4.2gを添加してコーティング液を得た。
【0076】
[比較例1]
実施例1において、スノーテックスO40(日産化学工業社製シリカゾル、NV40%)を加えなかったこと以外は実施例1と同様にして合成したものを比較例1とした。
【0077】
[比較例2]
実施例1において、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS510)および合成例1のシリル化多官能アクリレートを加えなかったこと以外は実施例1と同様にして合成したものを比較例2とした。
【0078】
[比較例3]
実施例4において、サンエイドSI100L(三新化学工業社製)4.2gを加えなかったこと以外は実施例1と同様にして合成したものを比較例3とした。
【0079】
[比較例4]
アトムコンポブリットXSG(アトミクス社製液状無溶剤型シリコーン樹脂、末端SiORタイプ)50gを200gのIPAに溶解し、19.2gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、115gのライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学社製)を添加して均一に混合した。
次いで、これを褐色瓶に移し、イルガキュアー184(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を7.7g、サンエイドSI100L(三新化学工業社製)7.7g、MEKを38.5g添加してコーティング液を得た。
【0080】
[評価塗膜作製方法]
各種塗膜評価用として、ポリカーボネート樹脂板の表面をイソブタノールで脱脂処理し、#20バーコーダーにて均一に塗布し、10分間セッティングの後下記条件でUV硬化させた。
【0081】
(UV硬化条件)
ウシオ電機社製UV照射装置「UVC−5034」、メタルハライドランプ490nm×630mm、80W/cm、高さ120mm、コンベヤー速度4m/分、280mJ/cm2
また、鉛筆硬度の評価用として、基材をボンデライト鋼板にして、上記と同様に塗膜形成したものを作製した。
【0082】
[評価方法]
(1)溶液外観:
得られた実施例1〜6および比較例1〜4のコーティング用組成物の溶液を試験管に満たし目視にて判定した。
【0083】
(2)塗膜外観:
評価用塗膜を目視にて濁り、艶びけ、ブツ、クラックなどの有無を確認した。
【0084】
(3)鉛筆硬度:
JISに従って実施した。当該評価のみ、基材がボンデライト鋼板のものを用いた。
【0085】
(4)耐擦傷性:
#0000スチールウールを用い、500gの荷重で20回擦った後の表面の傷つき状態を観察し、以下の評価基準で評価した。
○・・・全くキズがつかない
△・・・わずかにキズがつく
×・・・はっきりとキズがつく
【0086】
(5)安定性:
密閉容器に封入して、恒温室に3カ月間放置した後の状態を観察し、以下の評価基準で評価した
○・・・全く変化なし
×・・・顕著な増粘〜ゲル化
【0087】
(6)耐クラック性:
ポリカーボネート樹脂板の表面をイソブタノールで脱脂処理し、乾燥膜厚が20μmになるように調整して皮膜を形成させた時の塗膜外観を観察し、以下の評価基準で評価した。
○・・・クラック、割れ、はがれなどなし
×・・・クラック、割れ、はがれ発生
【0088】
(7)可撓性:
(6)の評価試験で得られた塗膜をポリカーボネート基材ごと10回たわませた後の塗膜外観を観察し、以下の評価基準で評価した。
○・・・クラック、割れ、はがれなどなし
×・・・クラック、割れ、はがれ発生
【0089】
[結果]
実施例および比較例のコーティング用組成物のスペック、および上記評価試験の結果を下記表1および表2にまとめる。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
[結果の考察]
以上の結果より、本発明のコーティング用組成物によるコーティング膜が、硬質で耐擦傷性に優れたものであることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)金属酸化物コロイドゾル、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物、(C)光重合開始剤を必須成分とし、かつ、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物の少なくとも一部が特定の有機官能基を含み、分子量分布が制御されてなることを特徴とする実質的に末端がSiOH型である紫外線硬化型コーティング用組成物。
【請求項2】
(B)アルコキシシラン加水分解縮合物のピーク分子量が、ポリスチレン換算で1000以下となるように分子量が制御された合成条件で合成された請求項1に記載の紫外線硬化型コーティング用組成物。
【請求項3】
(B)アルコキシシラン加水分解縮合物が、下記式(1)で表されるアルコキシシラン加水分解縮合物であり、
1a2bSi(R34-a-b ・・・ (1)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2はアリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基およびシアノ基からなる群より選ばれる1以上の基を含む有機官能基を表し、R3は炭素数1〜10のアルコキシ基、アルケニロキシ基、アシロキシ基またはアルコキシアルコキシ基を表し、a,bはおのおの0,1,2のいずれかの整数であり、a+bは0,1,2のいずれかの整数である。)
そのうちの少なくとも一部が、式(1)中のbが1または2であり、かつ、R2が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、エポキシ基およびメルカプト基からなる群より選ばれるいずれかの基を含む特定の有機官能基である請求項1または2に記載の紫外線硬化型コーティング用組成物。
【請求項4】
さらに、単官能および/または多官能アクリレートを含む請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線硬化型コーティング用組成物。
【請求項5】
−SiOH基と反応もしくは水素結合により安定化する官能基を有する有機重合体を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線硬化型コーティング用組成物。
【請求項6】
前記式(1)中のbが1または2であり、かつR2の官能基と、反応する、もしくは水素結合、π−π共役、配位結合などの化学的相互作用により安定化する官能基を有する有機重合体を含有する請求項3〜5のいずれかに記載の紫外線硬化型コーティング用組成物。
【請求項7】
前記光重合開始剤(C)が、ラジカル系光重合開始剤およびカチオン系光重合開始剤の双方を含む請求項1〜6に記載の紫外線硬化型コーティング用組成物。
【請求項8】
形成される硬化皮膜が実質的に無色透明である請求項1〜7に記載の硬化皮膜形成用のコーティング用組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の硬化皮膜形成用のコーティング用組成物が被覆されてなることを特徴とする樹脂被覆品。

【公開番号】特開2007−277332(P2007−277332A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103005(P2006−103005)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000101477)アトミクス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】