説明

紫外線硬化型組成物及び光ディスク

【課題】 高温高湿環境下での膜減りと反り変化を抑制でき、かつ反射率変化の少ない光透過膜を形成できる紫外線硬化型組成物、および高温高湿環境下での膜減りと反り変化を抑制でき、かつ反射率変化の少ない光ディスクを提供する。
【解決手段】
ウレタン又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを含有し、一定粘度に調整された紫外線硬化型組成物において、式(1)をはじめとする特定の重合開始剤を併用することにより、膜減りと反り変化、および反射率変化の少ない架橋構造の硬化被膜を形成できる。


(式(1)中、Rは、分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基を表し、R〜Rは各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R及びRは各々独立して水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも光反射層と光透過層とが形成され、前記光透過層を通して370nm〜430nmの範囲内に発振波長を有する半導体レーザー(以下ブルーレーザーと称す)により記録又は再生を行う光ディスク、および光ディスクの光透過層に適した紫外線硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量の情報記録媒体として、DVDよりも更に短波長のブルーレーザー及び高開口数の光学系を用いる新しい光ディスク構造による高密度記録方式が提案されている。この新しい光ディスクはポリカーボネート等のプラスチックで形成される透明又は不透明の基板上に記録層を形成し、次いで記録層上に約100μmの光透過層を積層してなり、該光透過層を通して記録光や再生光が入射する構造の光ディスクである。この光ディスクの光透過層には、生産性の観点から、紫外線硬化型組成物を使用することがもっぱら研究されている。
【0003】
光ディスクには、長期に渡って安定した記録再生特性を保持するために、光透過層は形状安定性に優れ、一定の光透過率を保持できるものが望まれる。ブルーレーザーにより記録又は再生を行う光ディスクの光透過層に使用する紫外線硬化型組成物としては、例えば、エポキシアクリレートとウレタンアクリレートとを併用し、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを使用した紫外線硬化型組成物が開示されている(特許文献1参照)。当該紫外線硬化型組成物は、耐久性と高光透過率とを有する硬化被膜を与えるものであるが、高温高湿環境下における膜減りの改善とブルーレーザーに対応した光ディスクでの反り変化量改善が望まれていた。
【0004】
また、光ディスク用途に使用される紫外線硬化型組成物として、DVDの貼り合わせ用の接着剤ではあるが、エポキシ(メタ)アクリレートを含有し、重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを使用した紫外線硬化型組成物が開示されている(特許文献2参照)。当該組成物は、DVD用途において高い耐久性を有し、反射率低下を抑制できるものであるが、、DVDよりも短波長のブルーレーザーディスク(以下BDと略記)の光透過層に適用すると、高温高湿環境下において反射率の変化が大きい問題があった。
【0005】
同様に多層DVDの貼り合わせ接着剤用に主として使用される紫外線硬化型組成物として、重合開始剤に、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンを使用した紫外線硬化型組成物が開示されている(特許文献3参照)。当該組成物の硬化被膜を光透過性の中間層とするDVDディスクは、反射膜の変色がなく、PI読み取りエラーの増加や反射率の低下を生じない。しかし、当該組成物を厚さが100μm程度のBDの光透過層に単に適用した場合には、DVDよりも短波長のBDの光透過層に適用すると、高温高湿環境下において反射率の変化が大きい問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−109785号公報
【特許文献2】特開2004−175866号公報
【特許文献3】特開2006−176637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高温高湿環境下での膜減りと反り変化を抑制でき、かつ反射率変化の少ない光透過膜を形成できる紫外線硬化型組成物、および高温高湿環境下での膜減りと反り変化を抑制でき、かつ反射率変化の少ない光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、ウレタン又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを含有し、一定粘度に調整された紫外線硬化型組成物において特定の重合開始剤を併用することにより、膜減りと反り変化、および反射率変化の少ない架橋構造の硬化被膜を形成できる。
【0009】
すなわち本発明は、基板上に、少なくとも光反射層と、紫外線硬化型組成物の硬化物からなる光透過層とが積層され、前記光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の再生を行う光ディスクにおける光透過層に使用する紫外線硬化型組成物であって、ウレタン(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートの少なくとも一種と、式(1)〜(3)で表される重合開始剤の少なくとも一種とを含有し、前記ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートの含有量の和が、前記紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物の30〜80質量%であり、粘度が800〜3000mPa・sである光透過層用紫外線硬化型組成物、および、該紫外線硬化型組成物を光透過層とした光ディスクを提供するものである。
【0010】
【化1】

【0011】
(式(1)中、Rは、分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基を表し、R〜Rは各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R及びRは各々独立して水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式(2)中、R〜R11は各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R12及びR13は各々独立して水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R14〜R16はメチル基を表す。)
【0014】
【化3】

【0015】
(式(3)中、R17〜R19及びR22は各々独立して水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R20及びR21は各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは2〜5を表す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明の光ディスクの光透過層に使用する紫外線硬化型組成物は、高温高湿環境下においても膜減りと反り変化を低く抑えることができ、かつ、反射率低下の少ない硬化被膜を与えることができる。また、該組成物を光透過層として使用した光ディスクは、高温高湿環境下での膜減りと反り変化及び反射率低下が少ないため、高密度に集積された情報を短波長のブルーレーザーで読み取り又は書き込みを好適に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の紫外線硬化型組成物は、式(1)〜(3)で表される重合開始剤の少なくとも一種を含有する。これら重合開始剤を使用することで、好適に膜減りと反り変化、及び反射率の低下を低減できる。
【0018】
【化4】

【0019】
(式(1)中、Rは、分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基を表し、R〜Rは各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R及びRは各々独立して水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0020】
【化5】

【0021】
(式(2)中、R〜R11は各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R12及びR13は各々独立して水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R14〜R16はメチル基を表す。)
【0022】
【化6】

【0023】
(式(3)中、R17〜R19及びR22は各々独立して水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R20及びR21は各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは2〜5を表す。)
【0024】
なかでも、式(1)で表される化合物は、膜減りと反り変化及び反射率変化が少ないため好ましく使用できる。式(1)においては、Rは分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。R〜Rは各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、炭素数が1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。また、R及びRは水素原子であることが好ましい。特に式(1)の化合物としては、下記式(4)で表されるものが特に特に好ましい。式(1)の化合物はチバスペシャルティケミカルズ社からIrgacure127として市販されている。
【0025】

【0026】
また、式(2)、(3)で表される化合物も、膜減りと反り変化及び反射率変化が少ないため好ましく使用できる。これらの例としては、Lamberti社からEsacure KIP150などが挙げられる。またモノマーのトリプロピレングリコールジアクリレートとの混合物であるEsacure KIP75LT、光重合開始剤の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパンとの混合物であるEsacure KIP100F、等も使用することができる。
【0027】
本発明の紫外線硬化型組成物は、紫外線硬化性化合物として、ウレタン(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートの少なくとも一種を含有する。
【0028】
本発明に使用するウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート骨格のウレタン(メタ)アクリレートなどのポリウレタン(メタ)アクリレート或いは、ポリエステル骨格のポリオールに(メタ)アクリル酸をエステル化したポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル骨格のポリオールに(メタ)アクリル酸をエステル化したポリエーテル(メタ)アクリレート等の紫外線硬化性オリゴマーの1種もしくは2種以上を用いる事が出来る。
【0029】
なかでも、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格のウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートとして、大日本インキ化学工業(株)社製FAU−742TP、ポリエステル骨格のウレタンアクリレートとして、コグニスジャパン(株)社製Photomer―6210、Photomer−6892、ダイセルサイテック(株)社製Ebecryl−8405等が好ましい。
【0030】
本発明に使用するエポキシ(メタ)アクリレートを含有していてもよい。エポキシ(メタ)アクリレートは、剛直な構造を有することにより、耐久性等の性能に優れ、好ましい。
【0031】
本発明で使用するエポキシ(メタ)アクリレートとしては、上記特性を有するものであればよく、例えば、下記式(5)で表されるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートを使用できる。
【0032】
【化7】

【0033】
(式中Yは−SO−、−CH−、−CH(CH)−又は−C(CH−を表し、Zは各々独立的に、水素原子又は−CHを表し、nは0又は1以上の整数を表す。)
【0034】
このようなビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートとしては、油化シェルエポキシ社製エピコート802、1001、1004等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びエピコート4001P、4002P、4003P等のビスフェノールF型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応によって得られるエポキシアクリレート等が挙げられる。
【0035】
中でもYが−C(CH−であり、nが0又は1〜6の整数である構造の付加重合体を主構成成分とするビスフェノールA型のエポキシ(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0036】
また、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のエポキシ(メタ)アクリレートも好適に使用できる。
【0037】
本発明で使用するウレタン(メタ)アクリレートのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)としては、1000〜20000であることが好ましく、1500〜10000であることがより好ましい。また、エポキシ(メタ)アクリレートのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)としては、500〜3000であることが好ましく、800〜1500であることがより好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートの構造、分子量を上記の範囲とすることにより、本発明の紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクの耐久性及び耐光性がより優れたものとなる。なお、GPCは東ソー(株)社製 HLC−8020を用い、カラムはGMHxl−GMHxl−G200Hxl−G1000Hxlwを使用した。溶媒はTHFを用い、1.0ml/minの流量でカラム温度が40℃、検出器温度が30℃、分子量は標準ポリスチレン換算で測定を行った。
【0038】
本発明の紫外線硬化型組成物においては、ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートを、紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物中の30〜80質量%含有することにより、粘度が800〜3000mPa・sである紫外線硬化型組成物を得ることができる。当該含有量としては、40〜70質量%であることが好ましく、50〜60質量%であることが特に好ましい。
【0039】
他の紫外線硬化性化合物としては、各種(メタ)アクリレートを使用でき、例えば単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタンアダマンチル(メタ)アクリレート、などを使用できる。
【0040】
中でも、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキエトキシエチルアクリレートが好ましい。特にテトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレートを用いた場合、膜厚変化量が少なく、反り変化量も少なくなるため、好ましい。
【0041】
二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、脂環式の二官能(メタ)アクリレートとして、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、等を使用できる。
【0042】
なかでもトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、等が好ましく、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0043】
また、三官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが、硬化後に高い弾性率を与えることができるので好ましい。
【0044】
また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルエーテルモノマー等の紫外線硬化性化合物も必要に応じて使用できる。
【0045】
本発明における紫外線硬化型組成物中の単官能(メタ)アクリレートの含有量としては、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることが好ましい。二官能(メタ)アクリレートの含有量は3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることが好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート以外の三官能以上の(メタ)アクリレートの含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。
【0046】
本発明の紫外線硬化型組成物は、上記紫外線硬化性化合物を調整し、粘度を800〜3000mPa・s、好ましくは1000〜2000mPa・sとすることで、厚膜の光透過層を形成できる。
【0047】
本発明の紫外線硬化型組成物は、紫外線を照射した後の硬化膜の弾性率が、100〜2000MPa(25℃)となるように調整することが好ましい。中でも200〜1500MPaとなる組成であることがより好ましい。弾性率がこの範囲となる組成であると、硬化時の歪みが緩和され易く、高温高湿環境下に長時間曝されても反りの変化量が少なく、反射率の低下と膜減りの少ない光透過層を形成できる。
【0048】
本発明に使用する紫外線硬化型組成物には、必要に応じて、添加剤として、界面活性剤、レベリング剤、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ホスファイト等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等の光安定剤を使用することもできる。また、増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が使用でき、更に、前記の光重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。
【0049】
[光ディスク]
本発明の光ディスクは、基板上に、少なくとも光反射層と光透過層とが形成され、光透過層を通してレーザー光により記録又は再生を行う光ディスクであって、光透過層が、上記の紫外線硬化型組成物の硬化物からなるものである。本発明の光ディスクは、光透過層として、上記した紫外線硬化型組成物を使用することにより、高温高湿下でも膜減りが生じにくく、光反射率の低下が少ないため、良好に情報の記録・再生を行うことができる。
【0050】
本発明の光ディスクにおける光透過層の厚みは50〜150μmの範囲であり、75〜150μmであることが特に好ましい。光透過層の厚みは、通常、約100μmに設定されるが、厚みは光透過率や信号の読み取り及び記録に大きく影響を及ぼすため、十分な管理が必要である。光透過層は、当該厚さの硬化層単層で形成されていても、複数層が積層されていてもよい。
【0051】
光透過層が100μm厚の層を80℃85%RH240時間の高温高湿環境下に曝露した後の反り変化量が±1.0°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることが特に好ましい。
【0052】
光透過層が100μm厚の層を80℃85%RH240時間の高温高湿環境下に曝露した後の反射率変化量が、4.0%以内であることが好ましく、2.0%以内であることが特に好ましい。
【0053】
光透過層が100μm厚の層を80℃85%RH240時間の高温高湿環境下に曝露した後の膜厚減少量が2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることが特に好ましい。
【0054】
また、光透過層を10日間蛍光灯暴露した際の反射率変化量化が、4.0%以内であることが好ましく、2.0%以内であることが特に好ましい。
【0055】
光透過層は、レーザー光の発振波長が370〜430nmであるブルーレーザーを効率良く透過することが好ましく、100μmの厚さにおいて405nmの光の透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0056】
光反射層としては、レーザー光を反射し、記録・再生が可能な光ディスクを形成できるものであればよく、例えば、金、銅、アルミニウムなどの金属又はその合金、シリコンなどの無機化合物を使用できる。なかでも、405nm近傍の光の反射率が高いことから銀又は銀を主成分とする合金を使用することが好ましい。光反射層の厚さは、10〜60nm程度の厚さとすることが好ましい。
【0057】
基板としては、ディスク形状の円形樹脂基板を使用でき、当該樹脂としてはポリカーボネートを好ましく使用できる。光ディスクが再生専用の場合には、基板上に情報記録を担うピットが光反射層と積層される表面に形成される。
【0058】
また、書込可能な光ディスクの場合には、光反射層と光透過層との間に情報記録層が設けられる。情報記録層としては、情報の記録・再生が可能であればよく、相変化型記録層、光磁気記録層、あるいは有機色素型記録層のいずれであってもよい。
【0059】
情報記録層が相変化型記録層である場合には、当該情報記録層は通常、誘電体層と相変化膜から構成される。誘電体層は、相変化層に発生する熱を緩衝する機能、ディスクの反射率を調整する機能を求められ、ZnSとSiOの混合組成が用いられる。相変化膜は、膜の相変化により非晶状態と結晶状態で反射率差を生じるものであり、Ge−Sb−Te系、Sb−Te系、Ag−In−Sb−Te系合金を用いることができる。
【0060】
本願発明の光ディスクは、情報記録部位が二つ以上形成されていても良い。例えば、再生専用光ディスクの場合には、ピットを有する基板上に、第一の光反射層、第一の光透過層が積層され、当該第一の光透過層上又は他の層を積層し、当該層上に第二の光反射層、第二の光透過層を形成してもよい。この場合には第一の光透過層やこれに積層する他の層上にピットが形成される。また、記録・再生可能な光ディスクの場合は、基板上に、情報記録層、光反射層及び光透過層とが積層された構成を有するものであるが、当該光透過層上に更に、第二の光反射層、第二の情報記録層、第二の光透過層を形成して二層の情報記録層を有する構成、あるいは、同様に層を積層して三層以上の情報記録層を有する構成としてもよい。複数層を積層する場合には、各層の層厚さの和が上記の厚さになるように適宜調整すればよい。
【0061】
また、本発明の光ディスクにおいては、光透過層が最表面の層であってもよいが、更にその表層に表面コート層を設けてもよい。
【0062】
本発明の光ディスクは、100μm厚の光透過層を有する光ディスクを、80℃85%RH240時間の高温高湿環境下に曝露した後の反射率変化量が、4.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることが特に好ましい。
【0063】
本発明の光ディスクは、100μm厚の光透過層を有する光ディスクを、80℃85%RH240時間の高温高湿環境下に曝露した後の反り変化量が±1.0°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることが特に好ましい。
【0064】
光透過層が100μm厚の層を80℃85%RH240時間の高温高湿環境下に曝露した後の
【0065】
本発明の光ディスクは、100μm厚の光透過層を有する光ディスクを、80℃85%RH240時間の高温高湿環境下に曝露した後の膜厚減少量が2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることが特に好ましい。
【0066】
また、光透過層を10日間蛍光灯暴露した際の反射率変化量化が、4.0%以内であることが好ましく、2.0%以内であることが特に好ましい。
【0067】
本発明の光ディスクには、再生専用のディスクと、記録・再生可能なディスクがある。再生専用のディスクは、1枚の円形樹脂基板を射出成形する際に、情報記録層であるピットを設け、次いで該情報記録層上に光反射層を形成し、更に、該光反射層上に紫外線硬化型組成物をスピンコート法等により塗布した後、紫外線照射により硬化させて光透過層を形成することにより製造することができる。また、記録・再生可能なディスクは、1枚の円形樹脂基板上に光反射層を形成し、次いで相変化膜、又は光磁気記録膜等の情報記録層を設け、更に、該光反射層上に紫外線硬化型組成物をスピンコート法等により塗布した後、紫外線照射により硬化させて光透過層を形成することにより製造することができる。
【0068】
光反射層上に塗布した紫外線硬化型組成物を紫外線照射することにより硬化させる場合、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、USP5904795記載の閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【0069】
紫外線を照射する場合、積算光量は0.05〜1J/cmとなるようにコントロールするのが好ましい。積算光量は0.05〜0.8J/cmであることがより好ましく、0.05〜0.6J/cmであることが特に好ましい。本発明の光ディスクに使用する紫外線硬化型組成物は、積算光量が少量であっても、十分に硬化し、光ディスク端面や表面のタックが発生せず、更に光ディスクの反りや歪みが発生しない。
【0070】
[実施態様]
以下、本発明の光ディスクの具体例として、単層型光ディスク及び二層型光ディスクの具体的構成の一例を以下に示す。
【0071】
本発明の光ディスクのうち、単層型光ディスクの好ましい実施態様としては、例えば、図1に示したように、基板1上に、光反射層2と、光透過層3とが積層され、光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う構成が例示できる。図中の凹凸は、記録トラック(グルーブ)を模式的に表したものである。光透過層3は、本発明の紫外線硬化型組成物の硬化物からなる層であり、その厚さは100±10μmの範囲である。基板1の厚さは1.1mm程度、光反射膜は銀等の薄膜である。
【0072】
図2は図1に示した構成の最表層にハードコート層4を設けた構成である。ハードコート層は、高硬度で、耐摩耗性に優れる層であることが好ましい。ハードコート層の厚さは、1〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい
【0073】
単層型光ディスクの好ましい実施態様としては、例えば、図1に示したように、基板1上に、光反射層2と、光透過層3とが積層され、光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う構成が例示できる。図中の凹凸は、記録トラック(グルーブ)を模式的に表したものである。光透過層3は、本発明の紫外線硬化型組成物の硬化物からなる層であり、その厚さは100±10μmの範囲である。基板1の厚さは1.1mm程度、光反射膜は銀等の薄膜である。
【0074】
多層型光ディスクの好ましい実施態様としては、例えば、図3に示したように、基板1上に、光反射層5と、光透過層6とが積層され、さらにその上に、光反射層2と、光透過層3とが積層され、光透過層3側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う二層型光ディスクの構成が例示できる。光透過層3及び光透過層6は、紫外線硬化型組成物の硬化物からなる層であり、少なくともいずれかの層が本発明の紫外線硬化型組成物からなる層である。層の厚さとしては、光透過層3の厚さと光透過層6の厚さの和が100±10μmの範囲である。基板1の厚さは1.1mm程度、光反射膜は銀等の薄膜である。
【0075】
当該構成の二層型光ディスクにおいては、記録トラック(グルーブ)が、光透過層6の表面にも形成されるため、光透過層6は、接着性に優れる紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる層の上に、記録トラックを好適に形成できる紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる層を積層した複層で形成されていてもよい。また当該構成においても最表層にハードコート層が設けられていてもよい。
【0076】
図1に示す光ディスクの製造方法を以下に説明する。
まず、ポリカーボネート樹脂を射出成形することによって、記録トラック(グルーブ)と呼ばれるレーザー光をトラッキングするための案内溝を有する基板1を作製する。次に基板1の記録トラック側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層2を成膜する。この上に本発明の紫外線硬化型組成物を塗布し、ディスクの片面または両面から紫外線を照射して、紫外線硬化型組成物を硬化させ、光透過層3を形成し、図1の光ディスクを作製する。図2の光ディスクの場合には、この上に更にスピンコート等によりハードコート層4を形成する。
【0077】
図3に示す光ディスクの製造方法を以下に説明する。
まず、ポリカーボネート樹脂を射出成形にすることによって、記録トラック(グルーブ)と呼ばれるレーザー光をトラッキングするための案内溝を有する基板1を作製する。次に、基板1の記録トラック側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層6を成膜する。
【0078】
この上に、本発明の紫外線硬化型組成物又は任意の紫外線硬化型組成物の光透過層5を形成するが、その際に型を用いて表面に記録トラック(グルーブ)を転写する。記録トラック(グルーブ)を転写する工程は次の通りである。基板1に形成された光反射層6上に紫外線硬化型組成物を塗布し、その上に記録トラック(グルーブ)を形成するための型と貼り合わせ、この貼り合わせたディスクの片面または両面から紫外線を照射して、紫外線硬化型組成物を硬化させる。その後、型を剥離して、光透過層5の記録トラック(グルーブ)を有する側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層2を成膜し、この上に、紫外線硬化型組成物を塗付した後、紫外線照射により硬化させ、光透過層3を形成することで、図3の光ディスクを作製できる。
【0079】
また、光反射層に相変化型記録層を用いる場合でも上記と同様の方法により光ディスクを作成することができる。
【実施例】
【0080】
次に、合成例及び実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下実施例中の「部」は「質量部」を表す。
【0081】
下記表1〜4に示した組成(質量部)により配合した各組成物を60℃で3時間加熱、溶解して、実施例1〜24及び比較例1〜6の各実施例及び比較例の紫外線硬化型組成物を調製した。得られた組成物について、下記の評価を行った。得られた結果を表1〜4のとおりである。
【0082】
<粘度の測定方法>
紫外線硬化型組成物について、25℃における粘度をB型粘度計((株)東京計器製、BM型)を用い、No.4ローターにて測定した。
【0083】
<弾性率の測定方法>
紫外線硬化型組成物を、ガラス板上に硬化塗膜が100±10μmになるように塗布した後、水銀ランプ(コールドミラー付き、ランプ出力120W/cm)を用い、200mJ/cmで硬化させた。この硬化塗膜の弾性率をティー・エイ・インストルメント(株)社の自動動的粘弾性測定装置で測定し、25℃における動的弾性率E’を弾性率とした。
【0084】
測定条件
(1)サンプルサイズ: 幅6mm、長さ20mm
(2)ひずみ: 0.1%
(3)周波数:3.5Hz
(4)昇温速度: 3℃/min
【0085】
<光ディスクの作成方法>
直径120mm、厚さ1.2mmの光ディスク基板を準備し、銀を主成分とするビスマスとの合金を20〜40nmの膜厚でスパッタした後、該金属反射膜上に、表1の各紫外線硬化型組成物をスピンコーターで膜厚が硬化後に100±10μmになるように塗布し、コールドミラー付き水銀ランプ120W/cmを用いて照射量200mJ/cm(アイグラフィックス社製光量計UVPF−36)の紫外線を照射、硬化して光ディスクを得た。
【0086】
<光ディスクの耐久性(高温高湿曝露試験)及び反り、反射率、膜減りの評価>
得られた光ディスクサンプルについて、エスペック(株)製「PR−2PK」を使用して、80℃85%RH240時間の高温高湿環境下での曝露(耐久試験)を行った。試験前後のサンプルについて、Dr.Schwab社製 Argus Blu を用い、反り、反射率、膜厚の変化量を測定した。半径位置が40mmから45mm位置でのRadial Tiltの平均値から反り変化量を、Reflectivityの平均値から反射率変化量を、Thicknessの平均値から膜厚減少量を測定した。
【0087】
反り、反射率及び膜厚変化量の判定基準は以下のとおりである。
(反り)
◎:試験前後の反りの変化が±0.5°以内
○:試験前後の反りの変化が±1.0°以内
×:試験前後の反りの変化が±1.0°を越える
(反射率)
◎:試験前後の反射率の変化が2.0%以内
○:試験前後の反射率の変化が2.0%から4.0%以内
×:試験前後の反射率の変化が4.0%を越える
(膜厚変化量)
◎:試験前後の膜厚の減少が1.0以内
○:試験前後の膜厚の減少が1.0ミクロンから2.0ミクロン以内
×:試験前後の膜厚の減少が2.0ミクロンを越える
【0088】
<光ディスクの耐光性(蛍光灯曝露試験)>
上記と同様にして得られた光ディスクサンプルについて蛍光灯下における曝露試験を実施した。20Wの蛍光灯(三菱電気製、ネオルミスーパーFL20SSW/18(18ワット))2本を蛍光灯の中心間距離が8cmになるように同一平面上に並列させ、中央の蛍光灯から20cmの位置に光ディスクの光透過層が蛍光灯に対向するように配置して、蛍光灯の曝露試験を行った。
【0089】
240時間の蛍光灯暴露試験前後の反射率の変化量はDr.Schwab社製 Argus Blu を用い、反射率変化量を測定した。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
表中の略記は以下のとおりである。
[ウレタンアクリレート]
UA1: ポリエステル骨格のウレタンアクリレート ダイセルサイテック(株)社製 EBECRYL 8405
UA2: ポリエステル骨格のウレタンアクリレート コグニスジャパン(株)社製 PHOTOMER−6892
UA3: ポリエーテル骨格のウレタンアクリレート 大日本インキ化学工業(株)社製 ユニディックFAU−742TP
UA4: ポリエーテル骨格のウレタンアクリレート 大日本インキ化学工業(株)社製 ユニディックFAU−306
【0095】
[エポキシアクリレート]
EA1: ビスフェノールA型エポキシアクリレート 大日本インキ化学工業(株)社製 ユニディック V−5810
EA2: ビスフェノールA型エポキシアクリレート サートマー(株)社製 CN UVE151
EA3: ビスフェノールA型エポキシアクリレート 大日本インキ化学工業(株)社製 DICLITE UE−8080
EA4: ビスフェノールA型エポキシアクリレート コグニスジャパン(株)社製 PHOTOMER 3016
【0096】
[二官能アクリレート]
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
PM−2:エチレンオキサイド変性リン酸ジメタクリレート PM−2 日本化薬(株)社製
TCDDMDA:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート
HPNDA:ヒドリキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート
【0097】
[単官能アクリレート]
BPA−4EO−DA: 第一工業製薬(株)社製 ニューフロンティア BPE4A
PEA: フェノキシエチルアクリレート
THFA: テトラヒドロフルフリルアクリレート
EOEOEA:エトキシエトキシエチルアクリレート
M−102:東亞合成(株)社製 アロニックスM−102
IBXA:イソボルニルアクリレート
LA: ラウリルアクリレート
V−CAP:N−ビニルカプロラクタム
PGA:第一工業製薬(株)社製 ニューフロンティア PGA
ACMO:アクリロイルモルフォリン
NP−4:第一工業製薬(株)社製 ニューフロンティア NP−4
【0098】
[重合開始剤]
Irg.127:チバスペシャルティケミカルズ(株)社製 IRGACURE 127
KIP75LT:Lamberti社製 ESACURE KIP75LT
Irg.184:チバスペシャルティケミカルズ(株)社製 IRGACURE 184
Darocur1173: チバスペシャルティケミカルズ(株)社製 DAROCUR 1173
Irg.819:チバスペシャルティケミカルズ(株)社製 IRGACURE 819
Irg.651:チバスペシャルティケミカルズ(株)社製 IRGACURE 651
【0099】
表1〜4から明らかなように、実施例1〜24の本願発明の紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクは、高温高湿環境下においても膜減り、反り変化および反射率変化が小さいため、過酷な環境下でも安定して情報の読み取りや書き込みが可能である。一方、本願発明に使用した重合開始剤と異なる重合開始剤を使用した比較例1〜6の光ディスクは、膜減りが大きく、またオリゴマー成分の少ない比較例6の光ディスクは反射率の変化が大きいものであり、信号特性を劣化させるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の単層型光ディスクの一例を示す図である。
【図2】本発明の単層型光ディスクの一例を示す図である。
【図3】本発明の二層型光ディスクの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
1 基板
2 光反射層
3 紫外線硬化型組成物の光透過層
4 ハードコート層
5 光反射層
6 紫外線硬化型組成物の光透過層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも光反射層と、紫外線硬化型組成物の硬化物からなる光透過層とが積層され、前記光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の再生を行う光ディスクにおける光透過層に使用する紫外線硬化型組成物であって、
ウレタン(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートの少なくとも一種と、式(1)〜(3)で表される重合開始剤の少なくとも一種とを含有し、前記ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートの含有量の和が、前記紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物の30〜80質量%であり、粘度が800〜3000mPa・sであることを特徴とする紫外線硬化型組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基を表し、R〜Rは各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R及びRは各々独立して水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【化2】

(式(2)中、R〜R11は各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R12及びR13は各々独立して水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R14〜R16はメチル基を表す。)
【化3】

(式(3)中、R17〜R19及びR22は各々独立して水素原子又は分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R20及びR21は各々独立して分岐鎖を有していても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは2〜5を表す。)
【請求項2】
前記重合開始剤が、下記式(4)で表される請求項1に記載の紫外線硬化型組成物。

【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレートが、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル骨格のウレタン(メタ)アクリレートである請求項1又は2に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項4】
前記エポキシ(メタ)アクリレートが、式(5)

(式中、Yは−SO−、−CH−、−CH(CH)−又は−C(CH−を表し、Zは各々独立的に、水素原子又は−CHを表し、nは0又は1以上の整数を表す。)
で表されるエポキシ(メタ)アクリレートである請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項5】
基板上に、少なくとも光反射層と、紫外線硬化型組成物の硬化物からなる光透過層とが積層され、前記光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の再生を行う光ディスクであって、前記紫外線硬化型組成物が請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線硬化型組成物であることを特徴とする光ディスク。
【請求項6】
前記光透過層の厚さが50〜150μmである請求項5に記載の光ディスク。
【請求項7】
前記光反射層と前記光透過層との間に、情報記録層を有する請求項5又は6に記載の光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−204537(P2008−204537A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39269(P2007−39269)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】