説明

細胞および生体粒子を選別するための方法および装置

光パターン駆動による光誘起誘電泳動(DEP)装置および分離方法であって、粒子または細胞の装置またはDEP反応と対比された形質に基づく選択を行う装置および方法が記載される。本装置の実施様態は、微細流の層流と組み合わせてDEP電場パターンを使用し、生体細胞の損傷なしに1つ以上のDEP電場への粒子の相対的な反応に従って異種混合物からの粒子の反応測定、分離、隔離、および抽出を行う。好適なOET‐DEP装置は、一般的に、1つ以上の光導電部分を有する平面状の液体充填構造を有し、入力部および複数の出力流体チャネルに従って選択された強度のDEP電場の勾配に伴って局所化された仮想電極に入射光を変換する。この光パターンは、動的に生成され、単体の粒子および細胞または粒子/細胞のグループを操作可能な多数の操作構造を実現する。この方法は、特に、既存の人工的な再生処理との併用への適合性に基づく最適な精子候補および胚候補の選択および抽出、並びに欠陥のある配偶子または生存能力のない配偶子の除外に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2009年4月3日に出願された米国仮出願第61/166,616号の優先権を主張する。また、この出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2009年9月17日に出願された米国仮出願第61/276,999号の優先権を主張する。
【0002】
この出願は、その全体が本明細書に参照によって組み込まれる、2009年11月3日に許可された米国特許第7,612,355号に関する。また、この出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2009年7月2日に公開された米国特許出願公報第2009/0170186A1号に関する。さらに、この出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2005年10月27日に公開されたPCT国際公開第WO 2005/100541A2号に関する。
【0003】
[米国連邦政府支援による研究開発に関する記述]
この発明は、米国国立衛生研究所/米国国立研究資源センター、並びにカリフォルニア大学サンフランシスコ校のCTSIにより付与された許可番号UL1 RR024131、および米国国立衛生研究所 K−12 メンズ・リプロダクティブ・ヘルス・リサーチ(MRHR)により付与された許可番号に基づき、米国政府の支援によって成された。米国政府は、本発明に関し一定の権利を有する。
【0004】
コンパクト・ディスク上の提出文書の参照による組み込み適用不可。
【背景技術】
【0005】
1.発明の分野
本発明は、一般的に異種混成物の組成を分別する装置および方法に関し、より具体的には光電子ピンセットおよび光誘起誘電泳動(OET−DEP)による分離方法によって、異なる生理学的状態を有する生体粒子を分離および定量測定する装置および方法に関する。
【0006】
2.関連技術の説明
粒子を損傷せずに単離物から肝細胞、胚、あるいはバクテリアなどの生体粒子を効率的に分離することは、各種診断および処置方法における重要なステップである。
【0007】
異種細胞の集団を選別することが望ましい場合、各種適用例がある。その一例として、細胞生存能力に基づいた成人の肝細胞集団を選別することが挙げられる。人間および/または動物の肝細胞医療、再生支援介入、配偶子の遺伝子選別、細胞「バンキング」への準備(冷温装置などによる細胞貯蔵)に使用するためには、生きたより健康で生存能力のある細胞から死んでいるかまたは生存能力が最も低い肝細胞を除去することが望ましいと言える。
【0008】
もう1つの例は、非運動性で生存能力のない精子から非運動性でも生存能力のある精子を選別することである。生殖能力のない人間の患者または動物の集合においてほとんどすべての精子が生育不能である場合、体外受精処置による使用のため、死亡精子から生存能力のある精子を選別することが望ましい。現在の技術および方法が直面している限界は、「非運動性/生きている精子」のグループと「非運動性/死亡している精子」のクループとに選別されてしまった精子は使用できないことである。その理由は、その選別方法が精子に致命的であるか、または、選別された一方の精子が受精に関して「成功の見込みがある」ことが判明した場合には、もう一方の精子の使用を妨げようとして選別された精子を許容できない遺伝子損傷の危険に晒すからである。
【0009】
さらなる有効な選別法は、染色体の数が異常な配偶子を除外する分別などのための染色体数に基づく細胞の選別、あるいは染色体の構造的な損傷に基づく細胞の選別である。具体例としては、細胞の老化による通常の染色体の損傷あるいは各種細胞処理技法、放射線治療、化学療法、および医原性の組織傷害に伴う後天性の細胞損傷が挙げられる。
【0010】
遺伝子の突然変異に基づく細胞の選別は、染色体の構造が「不変」であるにも拘らず、望ましい。例としては、生物体の病的現象/疾病状態を引き起こす異常蛋白質および/または蛋白質構造をコードする遺伝子突然変異が挙げられる。例をあげると、嚢胞性線維症の原因となる嚢胞性線維症(CF)変位、即ち先天性の肺病、膵臓不全、両性の不妊症に伴う、遺伝子暗号化による嚢胞性線維症の膜内外コンダクタンス・レギュレータ(CFTR)、cAMP活性化による陰イオン・チャネルの変位に伴う共通の遺伝子性疾病などである。CFは、世界中の白色人種に見られる、最も顕著な短命化に繋がる常染色体性の劣性疾病の1つである。
【0011】
細胞内に含まれる染色体の型に基づく細胞の選別も有益である。例えば、性特有の遺伝子障害/疾病の拡散を避けるために子孫の性別の事前選択が望ましい場合、あるいは子孫の性別が男性か女性かを確定することが重要な場合、支援式生殖技術に使用される「性別選別」なる配偶子がある。
【0012】
従って、死亡細胞からの生存細胞の分離、正常細胞からの癌細胞の分離、グラム陰性のバクテリアからのグラム陽性バクテリアの選別は、診断および治療処置に重要と言える。これら適用例では、細胞を効率よく選別して細分化するだけでなく、選別処理の最後に使用するために回収可能にする必要がある。
【0013】
既存の細胞選別法は、労力がかかり、機械力による選別あるいは化学薬品に曝すことによる選別では細胞損傷の危険が生じる。例えば、機械による選別(即ち、フィルタ装置の使用)、血流血球計算による分析、異なる薬品の投与(「細胞生存能力」の分析)を行った場合、物理的あるいは遺伝子的損傷が発生する可能性がある。
【0014】
粒子選別に使用される他の技術とは対照的に、光誘起誘電泳動法(DEP)では、細胞が運動性である必要はない。換言すれば、細胞表面での抗原の提示や情報、可視化を支援する抗体や薬品など外部物質の使用の必要はない。なお、本明細書中の「光誘起誘電泳動」なる文言は、外部の不均一な電場の印加の結果生じた中性粒子の動作を意味する。線形の電気泳動とは異なり、DEPは、実効電荷を有する対象を必要としない。
【0015】
不均一な電場は、粒子内の誘起双極子と相互に作用し、粒子は、高い電場強度(正の誘電泳動)の領域か、低い電場強度(負の誘電泳動)の領域に向かって誘電泳動力を有し得る。換言すれば、DEPの力に引き付けられる粒子としりぞけられる粒子とがある。この現象は、ACまたはDCの電場で認められるが、その理由は、光誘起誘電泳動の力は、電場の極性に依存しないためである。従って、粒子の動作は、電場の極性の結果ではなく、電場の大きさの結果である。
【0016】
以前の装置は、導電性が最小限の溶液と、研究対象の粒子を充填したマイクロチャンバ内に埋め込んだ「固定式電極」によって発生させたDEP電場を使用していた。各電極は別体であって、交流電源に接続されているため、その場でDEP電場を生成していた。この「固定式電極」は、DEPを使用して粒子を「捕捉して」、目視検査したり、どの細胞が電極に向かって移動しているかを検査したりすることが可能な設計となっている。しかし、この「固定式電極」の設計条件は、極めて限られていた。また、固定式電極はコストのかかる微細加工が必要で、装置の操作を害する可能性がある泡や電気分解による生成物を発生させ、強い場の勾配によって損傷する可能性がある。
【0017】
例えば、「研究」対象の細胞のグル―プが小さい場合でさえも、各細胞を手で隔離して固定式のDEP電場に送らねばならない。このような、DEP電場源に各細胞を送ることに依存した場合、非常に労力かかかり、このような手による操作が長引いた場合、研究対象の細胞が損傷する危険が生じる。
【0018】
「固定式電極」の設計のもう1つの限界は、DEPのソースが空間中に固定されているため、動かせないことである。従って、DEP電場に対する各吸引粒子を測定することが非常に難しい。細胞が電極に向かって如何に早く動くかを見るためには、DEP電極から幾分距離を置いて細胞を配置せねばならない。このような測定は、DEP電場が距離に比例して弱まるという事実のもとで成立する。従って、粒子が電極と任意の距離を置くDEP電場は、近いか遠いかという定義は当てはまらない。粒子に対するDEP電場の強度に関しては、電極から離れていることの影響は、数学モデルによって説明できるが、これを説明すると長くなるので、端的に言うと、定誤差および確率的誤差の可能性が発生する。
【0019】
生体細胞は、固有の電場の勾配により、電場において電気的に偏光可能なため、「誘電」対象とも言える。生体細胞は、半透明の細胞膜にわたる電場の勾配を維持する。どの細胞の誘電性も、その生理学的状態、印加された電場の周波数に加えて、組成(例えば、帯電した膜構造、細胞質の中身、オルガネラ、帯電した蛋白質、およびDNA)、形態、表現型に依存することが証明されている。従って、生理学的状態が異なる同一の細胞型は、誘電性に明確な違いを有し(誘電性を定義する後者の要因に関して異なる)、分離のために利用可能である。
【0020】
従って、微細流動細胞の選別チップの設計では、生存能力、細胞の大きさ、細胞膜の二極の規模、および染色体数、染色体損傷の度合い、染色体型(配偶子の性選別)、既知および原因不明の疾病の遺伝子変異など、細胞の染色体の中身の特性によって選択するだけでなく、生存細胞と死亡細胞の異性集団の選別を容易にする必要がある。また、ハイスループットで、2グループに分けるのではなくスペクトル分布として細胞を選別する選別装置への需要もある。またさらに、選別された細胞を回収可能な装置への需要もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国仮出願第61/166,616号
【特許文献2】米国仮出願第61/276,999号
【特許文献3】米国特許第7,612,355号
【特許文献4】米国特許出願公報第2009/0170186A1号
【特許文献5】PCT国際公開第WO 2005/100541A2号
【発明の概要】
【0022】
本発明は、より優れた選別処理能力、より優れた選別特性、および選別された生成物の効果的な回収の需要を満たし、概して先行技術を上回る改良例である。
【0023】
本発明は、光パターン駆動型の光誘起誘電泳動(DEP)を使用した、異性混合物からの粒子および細胞の分離および抽出を行うことに関し、粒子の特性をDEP電場への相対的な反応と関連させるための方法に関する。OET−DEP電場は、一定の光パターンから生成され、どこでも投影可能であるため、場所、光周波数に係る次元および電場強度、並びに強度毎に操作可能な「仮想」微細電極としてOET−DEPを使用することが可能であることが望まれる。投影された光パターンの領域は、必要に応じて変更可能である。より小さいパターンを使用して個々の細胞の分析および選別を行える一方、並列のハイスループット選別のため、顕微鏡可視領域にわたりより大きな光パターンに広げることができる。
【0024】
本発明の一実施様態に従い、光パターン駆動型の光誘起誘電泳動装置および方法は、液体の流れに従って単体の粒子および粒子の集合体を分離および抽出するための光電表面上の電場をパターン化するためのものとして提供され、記載される。最終的な仮想の電極分解能は、光回析の限界値によって決定される。また、誘起されたOET−DEPの力は、電場の二乗の勾配に比例し、仮想の電極の局所面積にかなり限定されるが、これも単体の粒子の操作のためには重要である。コヒーレント光および非コヒーレント光など、広範囲の光源も利用可能で、単一または多段階での粒子操作も容易に実現可能である。
【0025】
一実施様態において、本発明による構造は、2つの表面、即ち側壁に入口および出口を有するチャンバを形成した、上部電極表面と下部電極表面を有する。この2つの表面の間には、対象となる粒子を含有する液体媒体が配置される。上記2つの表面にわたってAC電圧が印加され、また光電表面上には光が輝くとき、仮想の電極が誘起され、固体−液体の界面にある二重層のイオン電荷が、点灯された地点において粒子を捕捉する、印加電場と結合する。点灯された地点は、チャンバにわたって緩衝出力流に移動し、粒子は抽出用の出力流に放出される。
【0026】
もう1つの実施様態において、流体の並行流は、対象となる粒子を吸引する1つ以上のDEP電極にわたって流れる。仮想の電極は、だんだん大きくなる電場強度の順に配置可能である。光パターンは、流体間で移動可能なため、吸引された細胞は出力流へと送り込まれ、吸引されない粒子は、廃棄出力となる。より強力なDEP強度の電場を有する電極に反応する粒子は、連続的あるいはパターン全体が一度に移動する場合、時間がたつにつれ、出力廃液における位置毎に回復可能である。対象となる粒子が非反応性であっても、この実施様態においては第2の流れに移動する反応性の粒子とは分離可能である。
【0027】
他の実施様態では、流体の流れに対して好ましくは一定の角度で徐々に延びる、1つ以上の長尺の光パターン化電極を有する分離用チャンバにおいて遅行する粒子を含有する流体の流れを提供する。ここで言う光パターンは、一連の長方形であってもよく、これによって発生した電場の強度は当該一連の光パターンに沿って増減し得るので、流体の流れにおける粒子に対し、DEP電場の強度は変化する。
【0028】
さらなる実施様態において、強度を高めるべく形成された少なくとも1つのDEP電極を有する分離用チャンバに対する流入チャネルの開口部を提供する。光パターン内で捕捉される際、吸引力が増加すると、細胞は、OET誘電力が微細流体の流れからの正味の力未満になるまで、光パターンに沿って下方向に移動する。この時点で、細胞は、これ以上光パターンに捕捉されることはなく、対応する出力チャネルに流入する。
【0029】
本発明の方法は、既存の人工的な再生処理を伴う使用の適合性に基づき、最適な精子および胚候補を選択および抽出すること、並びに欠陥配偶子または生育不能配偶子を除外すること、あるいは、各種処理に使用される最適の肝細胞を識別することに特に適合する。上述した選別プラットフォーム構成は全て、任意の単体細胞(例えば、人間または動物の精子、卵子、体細胞)あるいは複数細胞の構造(例えば、人または動物の比較的早期段階の胚)を選別するのに使用可能である。
【0030】
DEPに対して「生きている」細胞が示した正の反応の大きさの範囲が顕著であったことが人間の精子のサンプルで認められた。これは、DEPが、絶対的な反応(絶対生存能力−生か死か)に基づくだけでなく、DEPへの相対的な反応(相対生存能力−健康度の指数または生存能力)に基づいて精子の選別が可能であることを示唆している。「質」に関するサンプルの異性については(相対生存能力と定義されたもの)、確認された生存能力な非運動性の精子に関するOET−DEPへの一連の反応が認められたことが示唆された。OET−DEP反応は、「生存能力」を予測するので、OET反応において認められた相対的な違いは、相対生存能力の差を予測し、本質的に「健康度」として定義される。
【0031】
さらにまた、体外受精(IVF)移植のための最適な質の胚の選択は、自然分娩の成功には欠かせない。現時点では、胚は、形態上の発育状態の客観的な評価に基づいて選択される。着床前の胚の体外卵割率は、胚の健康度または生存能力の指数となる。胚のDEP反応は、該胚の発育段階と高い相関関係があることが示されている。従って、形態上区別できない胚の混成群から最適発育状態の胚を選択して抽出することが可能である。
【0032】
胚の年齢(1細胞〜2細胞〜4細胞)として、胚のDEP反応は、正の(吸引性)から負の(反発性)に進展する。この反応における二分法により、ユーザは胚の形態上の状態を正確かつ系統的に評価することができる。従って、この技法により、胚の群から、着床用の最適発育状態の良い早熟の胚を選び出すことができる。(但し、より発育の早い胚は、着床時に最も生存能力が高い可能性があることを前提とする)。
【0033】
従って、形態上同様の粒子の集団から着床に最適な胚を選択するだけでなく、最も健康で、人工受精用に最適な配偶子の細胞を選択することが可能である。これらの方法は非侵襲的であると共に、欠陥のある、損傷あるいは適合性の少ない配偶子を選択的に除外し、最適な配偶子および胚の使用を可能にし、着床の成功に最適な条件を生み出す。
【0034】
本発明の一態様は、生存能力のない細胞から生存能力のある細胞を正確に区別し、および/または選択および物理的抽出のために生存能力のある細胞の集団から最も健康な細胞を識別することができる装置および方法を提供することである。
【0035】
本発明のもう1つの態様は、チャネル、キャビティ、リザーバ、ポンプなど、マイクロ流体デバイスと一体化した選別用チャンバを有するOET−DEP装置である。
【0036】
本発明の更にもう1つの態様は、人工受精技術の成功率を高めるのに最適な、配偶子および胚を選別するための方法を提供することである。
【0037】
本発明の更なる態様は、本明細書の以下の事項により実現される。明細書中、発明の詳細な説明は、本発明の好適な実施様態を全て開示する目的で成され、本発明は、これらに限定されない。
【0038】
本発明は、図示目的のみに作成された以下の図面を参照して、より明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明によるOET−DEP細胞選別用プラットフォームの一実施様態の模式図である。
【図2】図1に示した細胞選別用プラットフォームと共に用いることができるOET−DEPチップの一実施様態の斜視概略図である。
【図3】本発明によるOET−DEPチップの一実施様態の概略断面斜図である。
【図4】活性粒子の捕捉および移動を利用したOET−DEPチップの一実施例の概略上面図である。
【図5】活性粒子の捕捉および移動を利用したOET−DEPチップの別の実施例の概略上面図である。
【図6】ハイスループット分離のためOET−DEPチップの別の第2の実施様態の概略上面図である。
【図7】複数の出力チャネルによるハイスループット分離のためOET−DEPチップの別の第3の実施様態の概略上面図である。
【図8】特定の粒子の除去および隔離のためのマイクロピペットを含むOET−DEPチップの第4の実施様態の概略垂直断面図である。
【図9】DEP反応に基づいて識別された形質を有する粒子の選別方法のフローチャートである。
【図10】本発明による粒子の分離のための別の方法のフローチャートある。
【図11】本発明による粒子の分離のための別の方法のフローチャートある。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図示目的のための、図面をより具体的に参照して、本発明の幾つかの実施様態について図1〜図8に一般的に示される装置、並びに関連する各方法において説明する。本明細書で開示されるような基本概念から逸脱しない限り、各方法は具体的なステップおよび順序について変わる可能性があり、装置は、構造的な詳細について変わる可能性があると理解される。上記方法のステップは、これらのステップが発生する可能性がある順序を例示したものに過ぎない。上記ステップは、請求範囲とされた発明の各目標を実行するべく、望ましい順序で実行されてよい。
【0041】
本発明は、細胞または粒子の異性混合から選択された各形質を有する特定の細胞を選別および抽出するための装置および方法を提供する。このような各形質は、生存能力、特定の目的への適合性、染色体の組成、または識別された欠陥を含んでもよい。
【0042】
先ず、図1〜図3を参照すると、本発明によるOET−DEP細胞選別プラットフォームの一実施例の模式図が示される。図2は、OET−DEP分離チップの一般例としての、図1に示される細胞選別用プラットフォームと共に用いることができるOET−DEP分離用チップの一実施様態の斜視概略図である。図3は、分離用チャンバの一般的な構造として示される、本発明によるOET−DEPチップの一実施様態の概略断面図である。
【0043】
図1に、微細粒子を光学的に選別するためのシステム構成の実施例10を図示する。この例では、レーザ光源12は、光パターンを付与するため、減衰器14と併用してもよい。この光パターンは、ミラーおよび10倍率の対物レンズ18を通じて、チップ20上で指定される点に向けられる。
【0044】
1つのレーザ光源構成が図示されているが、光パターンの光源は、各種光源から成るものと理解されたい。例えば、3mmのサイズのビーム点と、120マイクロワットの光力を生成するファイバ・コリメータを通じて結合される635nmの波長を有する単一モードのファイバをおさげ髪状にしたレーザ・ダイオードが使用可能である。
【0045】
もう1つの実施様態では、円筒形のレンズおよび2次元の走査ミラーと、ダイクロイック・ミラーと、10倍率の対物レンズ18とを通じて光を導いて円形のガウス・ビームを直線状のパターンに成形し、成形されたパターンをチップ20の表面上に集光する。走査ミラーは、レーザ・ビームを方向付けるべくプログラムされ得る。
【0046】
もう1つの実施例では、光パターンの光源は、空間光変調器によって提供される。空間光変調器は、光導電性表面上に投影される任意の画像をパターン化することができ、OET装置上に対応する仮想電極を作成する。複雑で再構成可能な操作パターンは、単純なソフトウェア・プログラミングによってこのように作成される。非干渉性の光源および直接的な画像パターン化技法を用いることにより、OET−DEP選別用プラットフォームの柔軟性および機能性が向上する。例えば、一実施様態では、空間光変調器は、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)、および、非干渉性の光源としての100ワット・ハロゲンランプから成る。代表的なDMDは、個々にアドレス可能なマイクロミラーの1024×768アレイであって、各寸法は、13.68μm×13.68μmである。DMD上に表示される画像は、コンピュータ28により制御される。10倍率の対物レンズ18を使用すれば、各DMDミラーの分解能を約1.4μmまで増加できる。
【0047】
OETチップ20は、好ましくは2次元の移動式チップ20を所定位置まで移動可能な顕微鏡22のステージ上に設置される。ステージ制御機構、粒子(または細胞)の位置合わせのための微細イメージング、微細撮像素子からのデータ収集用のレコーダは、パソコン(PC)28を備えてもよい。ソフトウェア内蔵のコンピュータ28は、関数発生器および微細流ポンプ制御機構からのバイアス電圧など、OET装置20で生成される信号を制御するだけでなく、レーザ出力制御機構や空間変調器経由で光イメージングを制御すべく用いられてよい。
【0048】
顕微鏡に接続されたディジタルカメラ24は、図1に示す実施様態において画像を取り込み、取り込んだ画像をカラーモニタ26上に表示する。これにより、経過時間毎の細胞選別の可視化と、チップ20からの抽出用の特定細胞の選択が行える。
【0049】
選別は、入力出力チャネルおよびアドレス可能なDEP電場によって構成される、図1に示すチップ20の微細流チャンバ32の内部で行われる。図2から判る通り、チャンバ32は、入口流路40および出口流路42に連通される1つ以上のマイクロチャネルと一体化されている。この入口流路により、圧力をかけられた流体源と共に物質が分類される。上記各チャンバは、並列に配置されてもよく、1つのチャンバ32を1つのチップ30上で切り離してスループットを高めることも可能である。各チャンバ32は順番に整列させて、DEP反応度に基づく分離を段階別に行ってもよい。
【0050】
図2のチップ30は、好ましくは、顕微鏡22のXYZモータ駆動ステージにおいて適合するサイズである、長さ34、幅36、高さ38の構造を有する。この光ステージは、好ましくは電動化されるが、一実施様態では手動で調整可能である。この光ステージは、一実施様態では異なる速度および位置で移動し、チップが、図1のレンズ18を通じて当該チップ上に投影される光52に関して移動するようにしてもよい。
【0051】
また上記光ステージは、加熱素子または冷却素子で温度制御して、生きた粒子を選別するのに適した温度条件を付与してもよい。上記光ステージ、光学装置、チップは、密閉状態で、かつ温度、静電気、湿度、pH,相対圧力、酸素濃度などに関して環境的に制御された無菌環境に置かれてよい。
【0052】
流入供給ライン40は、好ましくは、コンピュータおよびコンピュータ28によるソフトウェア制御下にあってもよい1つ以上の外部ポンプ(不図示)に接続され、選別対象の物質と、チップ30に適合した液体媒体を供給してもよい。流出供給ライン42は、真空ラインに接続され、廃液、廃物、または、所望の対象の収集および抽出を容易にするためリザーバなどの容器に選択された対象の除去を援助し得る。
【0053】
図3は、本発明によるOET−DEPチップ30の一般的な構造の例である。OET−DEPチップ30は、ITOガラスの上部平面電極46と、好ましくはITOガラスの製の該上部平面電極とは反対側の下部平面電極48と、液体懸濁液44を収容するダクト形成チャンバ32を含む側壁に囲まれる、好ましくはITOグラス製の光導電層50と、から成る。
【0054】
本実施様態の上部平面電極46は、透明スライドガラスに関してはそれ自体透明なインジウム‐スズ酸化物(ITO)などのコンダクタから成る一方、下部の光導電層50は、好ましくは、プラズマ添加による化学蒸着(PECVD)を介してITOコーティングでスライドガラス48上に蒸着された水素化アモルファス・シリコン(a−Si:H)で形成されるが、他の光活性物質も使用可能である。一実施例では、下部表面は、2.5cm×1.5cm×1mmのスライドガラス48(他の寸法でも使用してもよい)で形成され、その上には、インジウム‐スズ酸化物(ITO)の100〜200nm厚の薄膜と、アモルファス・シリコン(a-Si)の1μm厚の薄膜で被覆されている。また、微細流チャンバの上部表面46は、同様の厚さのインジウム‐スズ酸化物(ITO)薄膜を有するスライドガラスで形成される。このOET微細流チャンバの2つの表面は、100μm厚のスペーサによって分離され、選別対象の細胞、胚、誘電性粒子の液体懸濁液44を収容できるチャンバ32を形成してもよい。
【0055】
ACバイアスは、好ましくはコンピュータおよびソフトウェア制御下の光導電層を有する、上部電極および下部電極にわたって設置される。
【0056】
下部の感光電極48上に光パターン52を投影すると、点灯された領域付近の電場勾配および光誘電力を発生させる電場プロファイルが修正される。上部46または下部48の電極表面の光導電部分の上に光パターンを集め、局所電場を誘発すると、該光パターンに反応して対象細胞などの粒子を光誘電的に吸引または反発するための時間と場所に設定される「仮想の電極」を形成する。これら光パターンの位置とタイミングは、チャンバ32内に閉じ込められた粒子または細胞の位置およびDEP反応を登録したことにより受けたフィードバックに応じて動的に決定可能である。
【0057】
光パターン52は、寸法、形状、および輝度を変えることができ、その結果生じたDEP電場の特性、それに伴うチャンバ内の細胞または粒子によって生じた特徴の変調を可能にする。一部輝度が異なるパターンを生成することもできる。従って、パターン発生器は、選択された形状、位置、および時間において設計されたパターンを提供できる。最適化された電場強度を有する最新の仮想電極も容易にパターン化および再構成でき、流体の流れを援助するかどうかにかかわらず、連続的な粒子操作のための動的な電場分布を生成可能である。
【0058】
また、光誘電力はAC周波数に依存する。このため、印加されたACバイアスの周波数を変えることによって、吸引力から反発力またはその逆に調整できる。OETは光誘起DEPを使用するため、OET力も同様に調整可能である。その結果、OETには2つの動作モードがあり、1つは、正のOETであって、細胞および微粒子が点灯された領域に吸引され、もう1つは、負のOETであって、点灯された領域によって細胞および微粒子が跳ね返される。
【0059】
コンピュータ・ソフトウェアまたはオペレータ・コマンドは、光パターン52を連続的に方向付けるための制御信号を付与でき、チャンバ32内で選択された位置および構造またはチップ30の関連する流体構造を通じて電極に吸引された粒子を移動可能である。投影された光パターン、電場強度、チップ位置をプログラミングすることにより、多段階式の診断プロトコルが、空間および時間における運搬、選別、リサイクル、および分離など、複数の機能を組み合わせて実現可能である。
【0060】
ここで、図4〜図8を参照して、異なる選別要求をもたらすよう細胞選別プラットフォームの幾つかの実施様態を模式的に図示する。図4は、活性粒子の捕捉および移動を利用したOET−DEPチップの一実施様態の概略上面図である。この装置の実施様態60は、光起動式DEP電極に吸引される細胞または粒子の活性選別と、捕捉された細胞を収集するための出口流への方向付けと、を行うべく設計されている。この実施様態では、サンプル・チャンバ64は、図3に見られるような仮想電極を形成する光パターンにさらされるアモルファス・シリコンの層を有する下床62を有する。サンプル・チャンバ64には、選別対象の細胞が充填される。異種細胞の溶液は、入口66を通じてチャンバ内に直接注入されるか、入口66に連通される微細流チャネルから入るようにしてもよい。図4に示す説明図において、溶液は、DEP電場に反発するか無反応の細胞70と、DEP電場に吸引される細胞68と、を有する。光パターン72は、OETに誘起されるDEP強度を利用して対象の細胞を操作すべく生成される。
【0061】
対象の細胞70は、OET光パターンへの吸引反応を有するものとして示されているが、このOET光パターンは、OETへの反発反応を有する細胞、即ち蛍光マーカーなどのラベルの標記など、別の明確な特性を有する細胞を操作すべく構成可能である。
【0062】
対象の細胞70は、サンプル選別チャンバ64から収集出口74、並びに収集ユニット78内で終端するマイクロチャネル76出力の内部に、OET光パターン72によって、個々に並列に誘起される。緩衝溶液は、マイクロチャネル76を通じて低速で流れる(またはパルス化フラッシュすることができる)ので、細胞が収集可能な出力78に対してフラッシュされる。従って、特定の細胞または細胞のグループは分離されて、出力マイクロチャネル76に転送されて収集可能である。
【0063】
充填につれて選別用チャンバ64内で増加する圧力により、未選別の細胞が収集用マイクロチャネル出口74に侵入しないように、出口80は、チャンバが充填されるにつれてチャンバから細胞溶液を排出してよい。この出口80は、過剰サンプル、または、対象細胞70を取り除くことによって時間がたつにつれて集まってくる分離細胞68を回収すべく使用されてもよい。
【0064】
図5は、精子の選別のための1つの分離手法を図示する活性および不活性粒子を使用したOET−DEPチップの別の実施様態の概略上面図である。選別装置90は、生育不能で運動性の精子および生育不能で非運動性の精子96からの、生育可能で非運動性の精子94の活性選別と並行して、非運動性の精子92の不活性選別を行う。
【0065】
図5の実施様態90では、生育可能精子と、生育不能精子との混合物から成る、精子サンプルは、微細加工されたチャネル98を通じて選別装置に流入する。別の入力チャネル100を通じて、第2の緩衝溶液が流れる。サンプル入力チャネル、並びに緩衝入力チャネルの流体は、選別領域で合流するが、この2つの流体は、微細加工された装置内での層流により混合することはない。非運動性の精子は、この2つの流れの間にある界面102をわたって自らの力でサンプル入力流体から緩衝流まで泳ぐ能力はあり、これは分類装置90の受動的な分類機能である。また、非運動性の生育可能精子94は、光誘起誘電泳動(DEP)の力を利用して界面102をわたって緩衝流に導入される。この力は、光パターン104を利用して生成され、仮想電極と、DEP吸引力と、を形成する。非運動性であるが生存能力のある精子94は、(運動性精子と共に)光パターン化された電極によって吸引されて捕捉され、緩衝入力100から緩衝流に導入される。一方、近似DEP力は、微細加工された電極を使用して生成可能である。このDEP力により、非運動性の精子に吸引力が発生し、これら精子を緩衝流に流入させる。このため、緩衝出力チャネル106は、生育可能で運動性の精子と非運動性の精子だけを含むことになる。生育不能で非運動性の精子96は、DEP力によっては吸引されず、サンプル・チャネル流の中に残留し、廃棄出力108に向かう。
【0066】
別の設計では、複数の光パターンが、図5に示す斜め方向のサンプル入力チャネルにわたり、界面102を横切る緩衝流に移動する。各光パターンが、緩衝流領域の範囲内に到達すると、OET光領域全体が消灯するか、光バーのサンプル入力側が点灯状態を維持するかの何れかである一方、緩衝側は消灯し、残留して緩衝流からの流体の流入の力によって除去されることのない細胞を開放する。
【0067】
従って、非運動性であるが生存能力のある精子を選別して、生育可能で運動性の精子と共に受精に利用することができる。この場合、生育不能で運動性の精子と、非運動性の精子は、廃棄出力108へと導かれる。
【0068】
図6は、ハイスループット分離技法と共に用いるOET−DEPチップの別の実施様態の概略上面図である。選別装置110は、OET操作への正の反応に伴う細胞の回収を最大限にすべく設計されている。このサンプルとしては、異なる細胞型の混合物、および/または異なる大きさの正のOET−DEP反応の細胞を含有してもよい。
【0069】
選別装置110は、選別領域114内に拡がる入力マイクロチャネル112を有し、緩衝流は、このチャネルと選別領域を通じて維持される。選別された細胞を再生する出口またはチャネル116と、廃棄用細胞130を受け入れる廃棄口118もある。また、大量の細胞の選別を容易にするため、幾つかの選別構造を合体することも可能である。
【0070】
細胞120のサンプル混合物は、入力マイクロチャネル112に導入される。選別領域114内では、チャネル幅が増加され、その結果、図示される実施様態においてマイクロチャネルが膨張する。この寸法の変化により、増大した直径の領域内の流体の流速は、チャネル幅の増大に伴い減少する。電極を形成する光パターン122は、選別領域114に及び、細胞を吸引し、該細胞を、DEP力を利用して回収用のチャネルの一方に誘導する。DEPに対して最も吸引反応が強い細胞124は、第1の光パターン化電極によって捕捉されて誘導される。しかしながら、吸引反応の弱い細胞126および128は、相対的に速い速度で最初のOET操作パターン122を越えて流れるが、細胞のDEP反応が弱い場合、初期の光パターンによって形成された電極によって下方向に捕捉および移動させるには不十分である。一方、チャネル114がより幅広になって、緩衝流および細胞の流速が減少するので、収集口116に対するチャネルの回収側に向かう吸引力が相対的に弱い状態でも、後続する操作パターン122は任意の細胞126および128を誘導するには十分である。このため、この選別装置を使用すれば、如何なる吸引反応度の細胞でも回収可能である。回収された細胞は、廃棄出力から分離した状態の出力経由で選別用チップから出る。このように、単一の細胞溶液は、2つに分離され、そのうちの1つは、所望の細胞を含有し、もう1つは、廃棄用細胞を含有することになる。また、細胞124,126、および128は、DEP吸引度と、パターン122の経時操作に基づいて装置から抽出可能である。
【0071】
図7は、複数の出力チャネルを有する、ハイスループット選別のためのOET−DEPチップのもう1つの実施様態140の概略上面図である。装置140は、複数の異なる細胞型あるいは異なる相対生存能力の細胞の活性選別を行うべく設計されている。
【0072】
混合されたサンプル142は、連続的な緩衝流も含有する入力マイクロチャネル144に導入される。該サンプル142は、選別装置140を通じてサンプルを流す前に死亡細胞を除去すべく事前にフィルタリングしてもよい。別の実施様態では、異なる型の分離器が順番に結合される。例えば、図6に示す選別装置は、死亡細胞を除去して生存細胞を出力する第1段階の選別器として使用可能で、使用後これら細胞は、図7の選別装置によって選別される。
【0073】
サンプル入力チャネル144は、選別領域146を形成すべく外側に膨張し、多数の異なる出力チャネル148,150、および152に分かれる。幅が変化する、少なくとも1つの光パターン154は、出力チャネル148,150、および152の前の選別領域146に及んでいる。光パターン化された電極154の幅が減少するにつれ、該電極によって生成されたOET吸引によるDEP力も減少する。従って、吸引力が最小の細胞156は、該光パターンに従って下方向に移動することはないが、その代り第1の出力チャネル148で終端する。換言すれば、OET−DEP反応が弱い正の細胞の左から右への軌跡のズレは最少となる。
【0074】
さらにまた、光パターン内に捕捉された場合、吸引力が増加しつつある細胞158および160は、OET−DEP吸引による力が、微細流の流れからの正味の力未満になるまで、該光パターンに従って下方向に移動する。この時点で、上記細胞は、光パターン電極154によってこれ以上捕捉されることはなく、対応する出力チャネル150および152に直接流入する。このように、細胞は、OET−DEP吸引による力に基づいて亜細胞に選別可能である。出力チャネルは、チップ140の外側の所望の容器または溶液に細胞を運搬するため、保管用リザーバまたは可撓性のプラスチック製のチューブに接続可能である。
【0075】
図8は、特定の粒子の除去および隔離のためのマイクロピペットを含む、OET−DEPチップ170の別の実施様態の概略垂直断面図である。該チップ170は、マイクロチャンバ178を形成すべくスペーサ176によって分離された上プレート172と下プレート172と、を含む。この2つのプレート172および174の間の空間の測定値は、好ましくは100〜200マイクロメートルの間とする。該マイクロチャンバは、OET−DEP電場による分離のための最小導電媒体中に懸濁された対象細胞を受け入れる。上プレート172は、好ましくはITOコーティングガラスとする一方、下プレートは、アモルファス・シリコンコーティングによるITOコーティングガラスとし、何れのプレートも光パターンにさらされる場合、OET−DEP電場を付与すべく電気的な接続部を有する。
【0076】
下プレート174は、上プレート172よりもかなり大きく、マイクロチャンバ178内にマイクロピペット180の先端182を配置した状態で収容する。マイクロピペット180の近位端は、チューブ184を通じて吸引部の光源に結合される。収集されたマイクロピペットの先端182の内部に所望の対象を吸引するため、マイクロピペット180には軽い吸引が加えられる。対象がマイクロピペット先端部182の内部にある場合、マイクロピペット180は除去可能で、個々の対象は、反対の手順で簡単にマイクロピペット180から回収可能である。つまり、マイクロピペットには(反対側の端部から先端に向かって)正方向の圧力が加えられる。
【0077】
一方、上側のマイクロチャンバ・プレート172と、下側のマイクロチャンバ・プレート174との間には複数のマイクロピペット先端部が介在可能であるため、1つのマイクロピペット180が、流体の流入および/または新しい対象を供給可能である一方、他の複数のマイクロピペットも、対象を回収すべく使用可能である。さらにまた、マイクロチャンバ内に配置される(任意の)マイクロピケットの内部または外部への吸引は、直接目視下で実行可能なため、選択の幅が増える。
【0078】
チップ170は、好ましくは移動可能なステージ188の上に設置され、チューブは、留め具186を有するステージに任意に取り付けられる。光パターンは、ステージ188を通じて方向付けられ、チップ170上の光パターンの位置は、ステージ188の移動によって決定される。
【0079】
一実施例では、下側のプレート174は、ピペット180の本体の下部にチャネルを有し、マイクロチャンバ178内の先端182の設置または除去に係るせん断力を低減している。
【0080】
この実施様態は、上記装置によって選別された個々の特定の細胞または細胞のグループの識別および回収に特に適していると言える。分析用のOETチップ(「非特定の回収」)から選別された対象の全ての回収は、適用によっては最適状態には及ばない。その理由は、OET選別処理時に実現される選別順序の安全性が確立されているわけではないので注意が必要なためである。ましてや、対象の全てが「非特定」の回収と「混合」しているため、個々の対象のどれが、どのOET分析データの結果と対応しているかをユーザが識別することは不可能である。
【0081】
例えば、図8に示す実施様態により、個々の対象のOET−DEP分析結果の取得、各対象のOET反応の測定および指数化を実施可能である。個々の対象は、(所望の任意の空間順序で)隔離可能であり、OET選別領域内の対象の残りから、OET分析反応に基づいて選択される。
【0082】
上記隔離された個々の対象は、選択後マイクロピペット吸引によって回収可能で、その場合選択された対象は、OET毎にマイクロピペット182に誘導され、マイクロピペット180に引き込まれる。引き込み後、マイクロピペット180は、OETチップから除去可能であり、該対象は、臨床用または調査用の別の容器に移送可能である。例えば、対象が精子細胞の場合、OET分析による精子は、IVF/ICSI(細胞質内への精子注入)の一環として、卵子(卵)内に注入可能である。このやり方は、精子、胚、肝細胞などの診断分析には一定の臨床利点があるが、(生殖医療の分野での)主要な臨床有用性は、対象の分析が可能であるだけでなく、分析後の個々の対象を選択的に回収可能であることに起因している。
【0083】
ここで図9を参照すると、識別可能な形質に従って細胞を分離するための一方法200が、一般的に図示される。この方法の実施例では、対象となる可能性のある細胞または特定の形質を有する他の粒子がブロック202で識別されて隔離される。形質としては、形態上または遺伝子上の欠陥、健康度、生存度、生理学的状態、特定の目的への適合性、内部の導電性、染色体数、染色体の損傷度、染色体型(配偶子の性選別)などの染色体の中身、既知疾病および原因不明の疾病など、対象の識別可能な形質の形質上の遺伝子変異がある。
【0084】
例えば、人間の精子サンプルに関する実験時に死亡精子から生きている精子を選別しようする場合、「生存」精子の中から、DEPに対して「生存」細胞を呈した正の反応の規模の範囲が顕著であることが発見された。これは重要な発見であり、DEPが、絶対反応(絶対生存能力指数)に基づくだけでなく、DEPへの相対反応(相対生存能力指数)に基づいて精子を選別可能であることを示唆した。精子の健康度は、二進数よりはむしろ連続変数であり、DEPは、どの特定精子(あるいは任意の細胞型)が他の生存能力のある細胞よりも多かれ少なかれ比較的健康であるか識別可能であることを示唆している。「相対的な」生存能力に基づいて精子(または他の任意の細胞型)をサブ階層化する機能は、人工的な生殖手順のために、最も健康な精子、卵子、ひいては胚だけを選択するために用いられ得る。
【0085】
胚の年齢(1細胞〜2細胞〜4細胞…)としては、該胚のDEP反応は、正の(吸引性)から負の(反発性)に進展する。この反応における明暗により、胚の形態上の状態の正確かつ系統的な評価が可能である。早期の胚盤胞の胚の比較(胚がヒトIVF内に移行する最も一般的な発育段階)に基づけば、OET−DEP分析が、より発育のよい早熟の胚対象に対する負のDEP反応の大きさに基づいて胚を選択し、未熟な胚に対する正のDEP反応を除外することになるのは明らかである。さらにまた、反応に基づいた、より発育の良い胚は、着床時には最大生存能力を有する傾向があるという前提があるため、反応に基づいて区分不能な胚の群の中から、最も早熟な胚対象を個々に選択可能である。精子に関する過去の所見同様、完全に死亡した胚および部分的に縮退している胚の場合、OET−DEPパターンへの反応は最小となった。従って、形質が識別された細胞の特徴的なDEP反応により、これら対象となる特定の形質と相関関係が起こりうることが判った。
【0086】
ブロック202での分析のために識別されて得られた対象となる1つまたは複数の形質を有する選択後の細胞型は、電場強度および周波数などの一連のDEP電場特性にさらされ、該一連のDEP電場特性に対する、該選択後の細胞型の反応は、ブロック204で測定される。測定値としては、電極に吸引された細胞の速度、または、吸引力、流体の流れの中の電極への相対的な吸引力、およびClausius−Mossotti(CM)の係数の直接測定値がある。
【0087】
任意の細胞の誘電性は、印加された電場の周波数に加え、細胞の生理学的状態、組成、形態、および表現型に依存することが認められている。従って、異なる生理学的状態における同一細胞型または他の異なる形質を有する同一細胞型は、明確に異なる誘電性を有し、ひいては分離に利用可能である。
【0088】
DEP電場への、細胞などの対象の反応は、クラシウスーモソッティ(CM)係数の実数部によって特徴づけられる。これは、周辺の媒体の有効電気極性に対する対象の有効電気極性である。CM係数は、対象および媒体の物性の全てを考慮している。このCM係数の値は、粒子(細胞)および媒体の相対的なアドミッタンスに依存する正のか負の(吸引力または反発力)であり得る。異なる生理学的状態における細胞は、明確に異なる電気特性を有するので、結果的にDEP反応も異なる。
【0089】
ブロック206では、異なるDEP電場の範囲での対象の種類匂い自他DEP反応測定値が、指数化されて記録される。種類別およびDEP反応別の基準ライブラリも組立可能である。指数化されたDEP反応別の相関関係と、細胞型および細胞形質に関する条件も作成可能で、最も強力な吸引反応または反発反応の最適な条件が、ブロック208で決定可能である。
【0090】
ブロック210では、同様の特性を有する他の粒子から、注目している形質を有する対象粒子に対する粒子の異種集団を選別するための選別条件を確定するのに、ブロック208で収集された、指数化された反応および情報が、使用可能である。選別条件が最適であれば、反応指数の範囲以下または以上の反応の大きさを有する細胞の除外が可能になる。他の設定では、反応指数は、DEP電場に対する反応が最も強い場合に形質および分離基準が発生することを示している。
【0091】
精子、胚、肝細胞などの診断分析は確かに利点であるが、生殖医療の分野における主要な臨床有用性は、対象を分析することと、分析された個々の対象を選択的に回収することのどちらも可能であることに起因している。従って、ブロック212では、特定の対象または対象のグループが抽出される。
【0092】
また、分析用のDEPチップ(「非特定の再生」)上に配置される対象の全てまたはほとんどを再生することが望ましいと言えない適用例もあり、これは、DEP選別時に実現された選別順序が保存されず、対象が「非特定」の回収と「混合」しているため、個々の対象のどれが、どのDEP分析データの結果と対応しているかをユーザが識別できないためである。一実施例では、DEP反応による個々の特定の対象の選択および抽出が可能である。
【0093】
このニーズの一例が生殖医療にあり、最も健康な卵子および精子を隔離して安全性が確立された受精手順と共に用いる。この場合、細胞の大集団の精液サンプルが分析され、どのサンプルが最も生育可能であるかを識別する。
【0094】
選択基準を満たす個々の精子が、DEP分離に係るサンプルの範囲内であることが判ると、これら精子だけを回収可能にすることが望ましいため、回収後、オペレータには、OET反応が(各精子について)既知である、隔離された精子が与えられる。
【0095】
オペレータは、選別された精子うち、どれが分析中「最良の」DEP反応を呈し、どれが2番目なのかなどを判っている。OET‐DEPへの精子の反応の相対的な大きさ自体が精子の相対生存能力の指標となる。ここでDEP毎に階層化された、これら精子は、その後回収されて使用することができ、任意の順番で卵母細胞(卵子)を受精し胚となる。受精された胚のうち、どの個人の精子から、どの胚が発生したかが判る。
【0096】
同様に、上記の方法は、安全性が確立された人工的な授精手順で使用される最適な胚の選択に適用可能である。体外受精(IVF)の成功に係る主因の1つは、健康な胚を選択して患者体内に着床させることである。健康な胚の主な指標は、より速く分割して発育する能力である。現在、胚の選択は、観察に基づいて選択する経験豊富な技師によって行われている。本発明は、どの胚の定量測定値が他の胚よりも速く一定の発育段階に達しているか、および着床に成功するための最高の候補であるかが判る方法を提供する。
【0097】
本発明の適用により、現在の低い成功率(移送された胚数当たりの生存能力として定義される率)、病気および死亡の危険性の高さ(母親と胎児への健康上の危険性)、高いIVFの費用は全て、顕著に改善されるであろうし、これは、本発明が、移植前に個々の胚の生存能力を確実に予測することを可能にするからである。これにより、最も健康で最少の胚だけ(理想的には1つだけ)を移植することにより、妊娠率を減らすことなく多生児の誕生率を減らすことが可能となる。
【0098】
最も健康な精子の識別および使用だけでなく、最も健康な胚を実際に移植するように移植前により健康な胚を非侵襲的に区別できれば、8〜25パーセントの範囲の現在のレベルから、好ましくは30〜40パーセント、より好ましくは40〜50パーセント、最適には50〜60パーセントの成功率まで胚の移植成功率を飛躍的に向上できる。
【0099】
また、本発明は、例えば、嚢胞性線維症(または浸透率不全に係わる他の遺伝性の疾病)の人からの配偶子に突然変異が生じているかどうかを判定可能な分析を提供できることもわかるであろう。この方法は、例えば、突然変異に関してそれぞれヘテロ接合である(このため未感染の)夫婦の精子、卵子、または胚をスクリーニングして、IVFまたはIVF/ICSIの間に、突然変異を生じた配偶子、または、突然変異に関してヘテロまたはホモ接合である胚と結合するのを防ぐために用いられ得る。
【0100】
ここで、図10を参照すると、既知の最適なDEP登録された特性を利用し、参照可能なDEP反応を確立した方法の別の実施様態220が示されている。ブロック222では、対象となるサンプル中の粒子または細胞の集団の特性が識別され、該サンプルの集団は、好ましくは最適のDEP電場を使用して、ブロック224で1つ以上の一連のDEP電場強度にさらされる。
【0101】
ブロック226では、DEP電場に対する粒子または細胞の反応値が測定され、ブロック228での最適なDEP電場特性を有する対象の最適なDEP反応値と対比させてもよい。DEP電場に対する細胞の反応値を対比させることで、ブロック230での最適なDEP電場特性を有する対象、並びにブロック232で抽出可能な最適化されたDEP電場に対する対象の反応の強さ、または大きさに従って分離された対象の集団から、注目している形質を有する対象の分離が可能になる。
【0102】
細胞の集団からの特定の形質の選別特性は、この形質でない細胞と比較することにより、または、特性の選別の確立されたライブラリを参照することによって直接決定できるとわかる。図11の実施様態240では、対象となる特性がサンプル中の粒子または細胞の集団についてのブロック242での選別用に識別される。ブロック244では、当該サンプルは、一連のDEP電場強度にさらされる。上記一連のDEP電場強度にさらされた粒子または細胞の反応がブロック246で測定され、対象となる特性は、ブロック248でのDEP反応の測定値と対比される。DEP電場に対する反応の差分により、対象となる反応の特徴化と、DEP反応に基づく集団からの対象の選別が可能になる。該サンプルから、対象化された特性を有する粒子または細胞の選別は、ブロック250で実現可能である。
【0103】
一例として、OET‐DEPは、一般的に「脂肪組織由来の(成人の)肝細胞(ADSC)と言われる脂肪組織由来の間葉細胞の選別に使用された。回結腸の疾病を治療する細胞療法のソースとしてADSCがどのように用いられ得るかを研究する間に、ADSC細胞が常駐している脂肪組織から処理される場合、薬物および機械的な消化器系の処理により、ADSCの15〜20%が死に、生き残ったものも、かなりの部分が損傷したことが認められた。この方法の目標は、「死亡」および損傷したADSC部分から「生存」ADSCを選別可能であるかを判定することであって、取得されたADSC細胞が治療を要する体内に注入される場合、死亡または損傷した細胞ではなく生きている健康なADSCのみが導入されるだろう。
【0104】
トリパン・ブルーとカルセイン染料で染色されたADSCの集団(死亡細胞を青に染色する一方、生存細胞は染色されずに未染色のままである2つの「生存能力」分析)を利用して、トリパン・ブルー染色により青に染色された細胞はOET‐DEPに対して負の反応(反発反応)となる一方、トリパン・ブルー染色されない細胞は、OET‐DEP電場に対して正の反応(吸引反応)となったことが示された。
【0105】
従って、本発明は、対象細胞を分離しかつ抽出し、生存粒子の生命力を損なわない非侵襲的な分離装置および方法を提供する。
【0106】
本発明は、添付の実施例を参照して、より明確に理解されるが、これら実施例は、図示目的で作成されたに過ぎず、如何なる意味においても、本明細書に付随する請求項において定義されるような本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0107】
近交系雑種マウスのモデルと、OET装置とを使用して、二相盲検試験において、先ず、最適化された培養媒体(KSOM+AA)で培養された胚は、発育の変化段階(1細胞、2細胞、4細胞〜16細胞/桑実胚と、早期および後期胞胚段階)で、OET−DEPに対してどう反応したかが判定された。次に、この技法は胚の選択の案内に使用可能であるか評価するため、KSOM+AAで培養された胚からの反応を、最適状態とは言えない媒体(M16)で培養された形態的に同一の胚と比較した。着床前の発育段階全てにおいて、M16での体外培養では、KSOM+AAで培養されたものと区別できない胚の部分集合をもたらしている。しかしながら、M16は、発育段階全てにおいて、KSOM+AAと比べると、体外の胚の発育を最適とは言えない状態で維持することが示されている。このような、上記2つの媒体間の質的な違いは、培養された胚の体外での後期発育段階に進むにつれて拡大する。最終的に、胚用のOETの安全性を評価する事前準備として、OET分析に続いて、胚の生存能力、並びに継続的な体外発育状態が、分析された。
【0108】
胚の分離のための装置および方法を示す。スパッタ処理したインジウム‐スズ酸化物の300nmの層を有する6インチのガラスウェハは、プラズマ添加による化学蒸着(PECVD)(100sccm 10パーセント SiH4:Ar,400 sccm Ar、900ミリトール,摂氏350度、200ワット)により蒸着された水素化アモルファス・シリコン(a‐Si:H)の1μmの層で被覆された。被覆後、他の6インチのITO被覆ガラスウェハに従って、a‐Si:H被覆ITOウェハーは、それぞれ、上下のOET基材を形成するダイシングソーで2x2センチのチップにダイシングされた。ダイシング後、下部のOET基材(a‐Si:H被覆ITO)は、短時間の酸素プラズマ(51.1sccm O2,300ワット、1分)に曝され、2‐[メトキシ(ポリエチレレネオキシ)プロピル]トリメトキシオキシシランの溶液に2時間放置された。放置後、含浸されたチップは、エタノールで洗浄され、空気乾燥させた。この結果、下部基材の表面上にポリエチレングリコール(PEG)の薄い層が生成され、胚の基材表面への粘着力を低減させるのに役立った。該上下の基材上のITOへの電気接続は、導電性の銀エポキシを使用して行われた。
【0109】
全ての実験について、特注の顕微鏡が組み立てられて使用された。実験サンプルは、機械式ステージ駆動部に接続されたXYZマニピュレータ上に設置され、該機械式ステージは、既知の速度で作動可能とした。可視化は、5倍の対物レンズを介して上側から行った。50/50のビーム・スプリッタを通じて結合されたファイバ照明器経由で、明視野のケーラ照明が付与された。操作用に使用された光パターンは、外部コンピュータ作動の市販のプレゼンテーション・ソフトウェアによって制御された、市販のデータ・プロジェクタを使用して形成された。画像は、望遠鏡およびロングパス・ダイクロイックミラーによって基材上で集光された。可視化および画像収集は、外部コンピュータに接続されたCCDカメラを介して行われた。標準の関数発生器を使用して電気バイアスをかけた。
【0110】
対象胚のDEP反応および最小DEP誘発速度は、チップ基材上に矩形の光パターンを投影して測定された。光パターンは、該光パターンの先端が、胚の外端と一致するような様態で位置決めされた。位置決め後、隣接する光パターンによって、胚が移動可能な最高速度を抽出すべく、ステージは、速度を変えて平行移動させた。光パターンが胚付近に到達したときに胚が該光パターンの中心に向かって吸引された場合、正の光誘電(pDEP)反応と定義された。最速のpDEP速度は、胚が光パターンの範囲内に留ることができる位の最大のステージ速度(光パターン)(即ち、光パターンがこれ以上胚を捕捉できない最小速度)として定義された。pDEP速度は、正の数として注釈をつけた。光パターンが胚付近に到達したとき、胚が該光パターンの先端から反発して遠ざかった場合、負の誘電性(nDEP)反応と定義された。最速のnDEP速度は、胚が、光パターン周辺の外側に尚も留まることができる位の最大ステージ(光パターン)速度を見出だすことによって決定された。nDEP速度は、負の数として注釈をつけた。
【0111】
1細胞段階では、合計410の接合子が採取され、KSOM+AAおよびM16媒体において培養されたグループに平等に分けられた。5 IU PMS(IP)の投与によって排卵を引き起こした後、48時間後に5 IU HCG(IP)〜20 C57BL6×DB2 F1が、生後3〜4週間のメスのマウスに投与された。メスのマウスは、生後5か月のオスのC57BI6マウスと交配させた。2‐細胞段階に進めなかった胚、即ち時間評価において見かけ上発育の遅れが24時間未満の胚は、培養皿から除去され、分析から除外された。
【0112】
1細胞、2細胞、4〜16細胞の段階、早期および後期の胞胚段階では、29〜43の胚の群が、それぞれの培養媒体から採取されて低伝導の媒体(EP)において保持され、OET分析を行った。各発育グループで胚群が分析された場合の受精後の時間数の表が作成された。M16培養された胚は、KSOM+AAにおいて培養された胚として、後期の発育段階に相当する段階に到達するのに、培養内の追加時間として6〜12時間を必要とした。
【0113】
その後、最大吸引速度が測定された。胚を含有する溶液の最上部に装置の上部OET‐DEP基材が設置され、該基材は200μmのスペーサによって下部基材から分離された。ここで、胚を含有する装置が、操作ステージ上に設置され、電気バイアスが印加された(20Vppk、100kHz)。印加後、該基材上に矩形の光パターンを投影することにより、DEP反応および最大DEP吸引速度が測定された。光パターンは、該光パターンの先端が、胚の外端と一致するような状態で位置決めされた。位置決め後、隣接する光パターンによって胚が移動可能な最高速度を抽出すべく、ステージは、速度を変えて平行移動させた。光パターンが胚付近に到達したときに胚が該光パターンの中心に向かって吸引された場合、正の光誘電(pDEP)反応と定義された。最速のpDEP速度は、胚が光パターンの範囲内に留まることができる位の最大のステージ速度(光パターン)(即ち、光パターンがこれ以上胚を捕捉できない最小速度)として定義された。pDEP速度は、正の数として注釈をつけた。光パターンが胚付近に到達したとき、胚が該光パターンの先端から反発して遠ざかった場合、負の誘電性(nDEP)反応と定義された。最速のnDEP速度は、胚が、光パターン周辺の外側に尚も留まることができる位の最大ステージ(光パターン)速度を見出すことによって決定された。nDEP速度は、負の数として注釈をつけた。
【0114】
1細胞、2細胞、および4〜16細胞/桑実胚段階で分析されたKSOM+AAおよびM16グループ両者の胚全てが、分析用OET電場に対して正のDEP反応(pDEP)(光パターンへの吸引)を呈した。早期の胞胚のうち、何れかの媒体で培養された大多数の胚は、負のDEP(nDEP)反応(即ち、光パターンからの反発)を呈した。また、何れかの媒体において培養された後期胞胚段階の胚および孵化中の胚の全てが、nDEP反応を呈した。後期胞胚の胚、特に部分的に孵化した胚は、一般的にOET基材に粘着しすぎていたため、OET電場に応じた長距離の移動が可能とは言い難かった。このため、信頼できる最大OET吸引速度は、これらのグループについては計算できず、さらなる分析からは除外された。
【0115】
各段階で収集された速度データからは、幾つかの傾向が明らかとなった。KSOM+AA胚については、平均の最大吸引速度は、「連続した」発育段階それぞれの間で減少が顕著であった(正の反応が少なかった)(p<0.006)。同様にM16胚についても、連続した発育段階それぞれにおいて、平均の最大吸引速度も減少が顕著であった(p<0.0001)。
【0116】
第2に、比較可能なKSOM+AAおよびM16の一対の組み合わせのグループの平均のOET吸引速度における差は顕著であった。1細胞、2細胞、および早期の胞胚段階でのペア群のうち(KSOM+AAまたはM16で成長した、形態的に区別できない胚)、KSOM+AAにおいて培養されたペア群は、M16グループからのものに比べ、OETに対して正の反応がかなり少なく/負の反応が多いという結果を呈した。
【0117】
4〜16細胞の段階の胚を含有するグループは、グループ内での形態上の異種性のため分析から除外された。このグループについての吸引速度は、並行して分析した結果、全ての発育段階に関して減少傾向にあることが認められたが、4〜16細胞の段階についての平均速度は、上記2つのグループに顕著な違いは無かった(p=0.59)。また、KSOM+AAおよびM16において培養され、1‐細胞および2‐細胞の段階で分析されたペア群の間の偏差は、それ程違いは無かった(それぞれp=0.67およびp=0.87)。一方、4〜16細胞/桑実胚および早期の胞胚段階で分析された胚のうち、KSOM+AAにおいて培養されたものは、M16において培養されたペア群に比べて顕著に低い偏差を呈した(それぞれp<0.0012およびp<0.015)。
【0118】
OET分析の直後、胚はわずかに収縮し、かつ小粒になっているのが明らかとなった。この胚の形態に関する影響は、OET分析自体よりもEP媒体に起因すると見られる。EPおよびOETによる胚に関する悪影響の可能性に可逆性あったかどうかをより確かに理解すべく、1細胞、2細胞、8細胞、および早期の胞胚段階で初期のOET分析を行った胚は、OET装置から回収され、KSOM+AA媒体における培養器に戻され、その後24時間毎に写真撮影された。各ペア群の胚の90〜95%は、孵化後の胞胚段階まで正常に発育し続けた。EP媒体への長時間の露出(5〜24時間)の結果、最終的に胚の死に、この長時間の培養後に分析された胚全ての発育速度は、毎秒5μmであった。
【0119】
OET‐DEPは、従来の方法に比べて、強力なDEP操作およびインタロゲーションプラットフォームを提供することがわかる。即ち胚を実時間で移動する能力を付与し、OETプラットフォームによって付与されるDEP力に応じて個々の胚が呈する吸引力(または反発力)の大きさの測定を可能にするのである。胚のDEP反応を測定する以外の能力としては、胚の選別(特定の反応を呈した特定の胚を周辺の群から選択および除去できる)、および、改良された光インタロゲーション(特定の胚を扱うことによって胚の体内の細胞数または特定の胚の体内構造などの特性を判定するのに役立つかもしれない異なる観点から考慮する)などの追加の機能の実行を可能にする。さらにまた、OETは、IVFについての胚の選択を導くよう使用可能であり、その理由は、OET処理は、任意の段階で形態上同様と思われる胚を区別可能であり、それというのもOETへの反応が最も負の胚が、移植に選択すべき最適発育の胚および/または生存能力のある胚となる可能性が高いからである。このやり方は、交配の発育段階、および、発育段階が一致する交配媒体の比較(KSOM+AAおよびM16培養の胚)で支持されている。
【実施例2】
【0120】
生存能力のない精子から生育可能で運動性の精子および非運動性の精子の選別に関し、OET‐DEP装置および方法の機能性の第2の実施例を示す。体外受精との組み合わせによる卵細胞質内精子注入法(ICSI)は、男性側に原因のある不妊性のケースでますます用いられるようになっている。この方法では、単一の精子を卵子(卵)に直接注入することにより受精が実現される。1992年のICSIの導入以来、この方法は、またたく間に認められ、現在では米国の出産の3%の割合を占める。ICSIに関する主な懸念は、精子の選択であって、その理由は、この方法の成否は、卵子を最終的に受精する個々の精子の質にかかっているためである。例えば、生存能力のない精子を選択した場合、受精が成立せず、最終的に生存能力のない胚が生まれる可能性があり、貴重な卵子を無駄にしてしまう結果となる。
【0121】
ICSIのために生存能力のある精子を選択することは、難題である共に、一般的に精子の運動性は、生存能力の指標としての選択基準である。精子の形態は、精子の生存能力の指標としては信頼性が乏しいことが示されている。さらにまた、運動性は、顕著なDNA損傷を否定しない。また、条件の限られた精子、即ち非運動性の精子(精子無力症)を有する患者の場合、精子の運動性に基づく生存能力のある精子の選択は、実質的に不可能である。また、使用前に冷温貯蔵(冷凍)された精子サンプルにおいては、精子の運動性が低下していることが多い。サンプルを解凍すると、以前運動性が顕著であった精子も非運動性となる可能性がある。患者の多くについては、サンプルのかなりの部分が生育可能であるが、生存能力のない精子と、生育可能ではあるが運動性を欠いている精子との区別は難しい。
【0122】
現在の精子の生育可能分析は、主観性、感受性、および、潜在的な毒性によって制限されている。トリパン・ブルー染色による除外実験は、最も標準的な細胞生存能力分析法であるが、その毒性にため、ICSIのためにトリパン・ブルーにさらした精子を今後も使用するかは未知数である。もう1つの染色をベースとした分析、エオシン‐ニグロシン染色は、試験後の精子をその後利用できなくする空気乾燥手順を含んでいる。最終的には、ICSI処理に用いられる精子選択の現在の標準的なアプローチは、運動性があることに基づいており、これがない場合は、精子の形態に基づいている。しかしながら、生存能力のある健康な精子の識別には、精子の運動性および形態が不適当な場合がある。
【0123】
精子の選別のための装置および方法を示す。精子が非運動性である場合であっても、生存能力のある精子と、生存能力のない精子とを区別するためにDEP力使用の実行可能性を検証する実験が行われた。
【0124】
ガラスチップスライド内に埋め込んだ微細流チャンバの内部で精子の選別を行った。該チャンバの下表面は、100nm厚のインジウム‐スズ酸化物層と、1μm厚のアモルファス・シリコン層と、で被覆した2.5cm×1.5cm×1mmのスライドガラスによって形成した。また、微細流チャンバの上表面は、インジウム‐スズ酸化物の膜を有するスライドガラスによって形成した。このOET微細流チャンバの2つの表面は、100μm厚のスペーサによって分離し、選別対象の細胞の流体維持溶液を充填したチャンバを形成した。OET精子選別チップは、OET装置の他の構成要素と連結すべく直立式の顕微鏡の下に設置した。生きている精子の操作は、閉回路のディジタルカメラを使用して可視化した。
【0125】
光誘電力を生ずるOET駆動パターンは、10倍の対物レンズを使用してOETチップの下表面上に集光された10ミリワット、635nmのダイオード・レーザによって付与された。レーザの出力を減衰させ、その結果、OET装置に入射する平方センチ当たり40ミリワットの輝度を発生させた。a‐Si層の下部のガラス基材を通じてレーザが向けられているため、a‐Si層内の光の吸収によって駆動レーザからは精子サンプルがさらにスクリーニングされる。OET装置表面にわたる光パターンの位置に応じて精子が移動した。100キロヘルツで3.2Vrmsで装置を偏向させることにより、電場を生成した。
【0126】
OETを使用して、6人のドナーから精子標本を得て評価した。生存精子を示す、サンプル中の運動性精子の存在により各標本の適正が確認された。非運動性の細胞の生育可能を判定するため、DI水の中に0.4パーセントのトリパン・ブルー染料と、1:1の分量でサンプルを混合し、混合物を3分間室温で培養した。培養後、精子/トリパンの混合物は、アイソトニック溶液を添加することにより約100倍に希釈した。蒸留された精子溶液の伝導性は、全サンプルについて毎秒6.5mSとなるように調整した。20μLの分量のトリパン染料による精子サンプルをPEG被覆のOET装置内にピペットで採取した。15分間、各ドナーから55の異なる精子を評価した。正の制御として、OETを使用して5つの運動性精子を捕捉し、これら生存能力のある精子に関し、正のOET反応が引き起こされたことを確認した。トリパン・ブルー染料を除外した25の非運動性精子のOET誘電速度も評価した。これらの精子は、生きていたが非運動性であった。また、25の死亡精子のOET誘電速度も測定した。ここで言う死亡精子とは、負のOET反応またはOET反応の無かった細胞のことである。これらの精子のほとんどは、トリパン・ブルーで染色した(トリパン・ブルー陽性)が、染色しないものも幾つかあった(トリパン・ブルー陰性)。速度測定は全て、100kHzで9Vppのバイアス印加を用いて行った。
【0127】
別々の6つ対象から合計330精子を個々に分析した。各試料において可視化された運動性の精子の全て(100パーセント)は、トリパン・ブルー陰性であって、分析された精子のOET反応は全て(N=25)、陽性であった。OET反応が正の精子の全て(100パーセント)は、トリパン・ブルー陰性(N=150)であった。トリパン・ブルー陽性の精子は、OET操作パターンに無反応(54パーセント)または反発力の弱い反応(46%)を呈した。わずかのトリパン・ブルー陰性精子(15%)は、OET作動に対し無反応を呈し、これらの精子は死亡精子であることを示唆するものである。
【0128】
生きた非運動性の精子および死亡精子に関する速度測定値も確認した。OET装置における生きた非運動性の精子の平均速度は、毎秒8.0±3.9μmであって、これは6人の別々のドナーからの150以上の細胞に関する平均値を示している。死亡精子の平均速度は、毎秒−1.0±1.2μmであって、この場合、マイナスの値は、OET力が負であることを示している。トリパン・ブルー陽性の死亡精子は、OET反応において幾分の誤差を呈した一方、弱い負のOET(54パーセント)またはOETパターンに無反応(46パーセント)を呈した。しかしながら、正のOET反応を呈したトリパン・ブルー陽性の精子は皆無であった。このため、これらの結果は、亜細胞の分離が明確であることを示した。
【0129】
これらの結果は、OET‐DEPベースの精子選別プラットフォームにより、異種サンプルの範囲において生育不能で運動性の精子および非運動性の精子から個々の生存能力のある精子を区別可能であることを示した。OET‐DEPを使用して生存能力のある精子を識別した現在の結果は、最も標準的な染色除外による精子生存度試験と比較するのが好ましい。これら2つの試験の間には注目に値すべき一致点があり、内部整合性もあった。生体染色除外試験(トリパン陽性)によって「生育不能」であることが示された精子のうち、OETプラットフォームによって「生育可能」であることが示された(即ち偽陽性)ものは1つも無かった。これは、化学薬品の添加も、精子に直接の物理的な接触も無く実現された。
【0130】
従って、OET‐DEPを使用した、精子選別方法およびプラットフォームは、最も標準的な生体染料除外分析より優れているとは言えないまでも匹敵する。さらにまた、提案されたプラットフォームは、ICSIと一体的に使用するために、滅菌マイクロチップ内で個々の細胞操作と隔離を独自に行える。
【0131】
実施例、および該実施例に限定されない他の事柄より、以下のことが示され、かつ認められている。
【0132】
例えば、胚は、DEP反応が負になるほど、形態上の発育状態もよいことが示されている。現在の胚選択の実用性は、最も発育状態のよい胚の選択、即ち体外受精の胚は全て、同時に「生成」されるため、標準時間内に最もよく発育できる胚が最も健康であることを前提とした仮定に基づいている。より具体的には以下に示される通りである。
【0133】
1.胚の成熟度(発育上および形態上)として、これらの胚のDEP反応が、正(早期の発育段階)から負(進行した発育段階)に向かう傾向にあること。
【0134】
2.(現在最も標準的な胚評価基準に基づく)他の点では見分けのつかない胚群のうち、いくつかの胚が他よりもより負の反応が顕著な場合、最も負の反応が顕著な胚を最適発育の胚とすること。
【0135】
3.ある胚が死亡したとき、その胚のDEP反応が、(全ての死んだ単一細胞組織に発生するような)ゆっくりゼロに振れること。死亡した胚の全てのDEP反応が「中性」である一方、DEP反応が実際には不明確で、このとき胚の形態から、この胚が死亡しつつあるか/死亡しているかを示すことが明確であること。単一の細胞組織同様、「死亡」した対象の実際の反応が中性であること。
【0136】
4.明らかに生きている胚のうち、中性反応は、正から負までの連続スペクトルに従った中性の反曲点を表す。「中性」反応に反応するこれら胚の何れか1つは、明らかに「生きた」状態あるが、生きた胚と、死亡している胚とは、形態的に明確な違いがあるため、生きた胚と「死亡」した胚を混同することはありえない。繰返しになるが、明らかに「生きている」胚(「生きた」状態は、従来の形態基準に基づく)については、中性反応は「反曲点」であって、「死亡」を意味するわけではない。これは、明らかに「死亡」とみられる胚についても同様である。要約すると、生きている胚のDEP反応が「中性」の場合、即ち胚のDEP反応が吸引反応でも反発反応でもない場合、実際には独自の方法で反応するが、多く(全てではないが)は驚くことに所定位置で「スピン」する。この場合、胚は所定位置に留まりX‐Y方向に移動できないため、この胚の真のDEP反応は、「ゼロ」になるが、ただし、この胚の形態が明らかに正常であること、並びに(胚の)多くが所定位置でスピンするという事実に基づいている。
【0137】
5.単に各胚に対してDEP分析を行い、最も負の反応の顕著な胚を選択することにより、他の点では見分けのつかない胚群のうち、単一の最適発育の胚の識別および検索が可能である。
【0138】
6.精子の選択については、胚の選択のための同一の方法が用いられ得る。しかしながら、精子については、「最も生存能力のある」(および/または前提として「最適発育の」)精子をDEP電場への最も正の(吸引)反応が顕著な精子としている。実際には、多くの精子のDEP分析反応が評価され、最も正の反応が顕著な精子は、ICSI(卵細胞質内精子注入法)との併用を考慮して隔離される。
【0139】
7.胚については、胚候補を「スクリーニング」し、異常の見られる候補、即ち未熟なものを除外することが可能である。これは主に臨床上の設定では、胚候補の数は、通常15未満であるためである。
【0140】
8.DEPを使用して精子を評価する場合、明らかに「悪性」の精子を考慮対象から除外することが望ましい。一方、精子分析(自動化されている場合、我々のチップを使用)は、百〜数万単位のサンプルで行うため、対象となる精子を個々に「予備スクリーニング」することはありえないかもしれない。精子の「最終選択」をDEP反応に基づいて行う前に、ユーザは、(高い正の反応に基づいた)DEP分析によってグループ内で「最適」と可視評価し、異常形態の精子、および/または、サイズの変化が顕著な精子を除外する限り、問題はない。(サイズの変化が大きい場合、DP分析反応も大きくなると説明できるが、実際には、単一サンプルのほとんどの精子の大きさは非常に似通っている)。
【0141】
9.DEP分析結果が、異なる実践者の間で解釈可能であるためには、上述したDEP分析の全ての特徴だけでなく、DEP反応の測定に使用される特定の技法も標準化することが望ましい。例えば、測定されたDEP反応は、各対象についての少なくとも1つの測定値に基づくべきである一方、例えば、少なくとも2つ(または三つ)のDEP反応測定値が5パーセントを越える違いが無く、繰返しになるが、好ましくは媒体および環境について「標準化された条件」に従うことを他の基準にも課している。換言すると、上述の生育可能分析を含め、全てのDEP分析が、「標準化された」条件にしたって実行されるのが好ましい。全てのDEP分析反応の解釈が最も正確であれば、その分析条件がいつのものかも判り、特定の条件の組み合わせに基づいた基準の反応とも比較可能である。
【0142】
10.精子(または胚)の「染色体異数性」は、ICSIに精子を使用する前(または、例えば、胚を女性の子宮に移植する前)に診断するのが有益である。染色体異数性(染色体全体の数の異常)は、通常、染色体不分離の事象に伴う細菌細胞分裂から生ずる。この結果、特定の染色体についての二染色体または零染色体の精子となる。生殖医療の立場からは、これは重要で、精子による受精の結果、一染色体または三染色体の胚となり、これら胚の多くは、妊娠中に自然流産する(夫婦は妊娠損失を再発させることになる)または、(例えば、ターナー症、ダウン症、クラインフェルター症など)の症候群を伴う。また、(a)再発性の妊娠損失を示し(b)数的異常という染色体異常をもつ乳児を早産する、正常な体細胞核型を有する夫婦における、異数体細胞の異常数に関する精子の評価は、正当性があると見られる。
【0143】
11. 相対的なDEP反応は、染色体異常数の検出に利用可能であると思われる。染色体の数が過多(または過少)の場合、対象となる生物体への誘電性が異なることを証明すると予想する。通常の補体に対し、純粋な染色体の獲得または損失は、結果的として異常な生理学上の細胞/胚となることが多く、その誘電性に悪影響を与える。また、嚢胞性線維症の場合、染色体異常の結果、生理異常、膜イオン・チャネル、膜電流が発生し、それらすべてが、対象正味の誘電性を異常にする。換言すれば、対象の誘電性に刺激を与えるものは、疑いなく対象のDEP反応に悪影響を与える。
【0144】
12. DEP反応の分析は、我々が如何なるサンプルの比較対象に対しても「基準」を有すると仮定すると、大型のサンプル内の肉眼で見ても異常な対象細胞の検出および識別にも有益と思われる。例えば、精子の場合、異なる年齢範囲の男性の精子は、何をもって「正常な」反応とみなすべきかを判定すべく検査される。また、DEP検査の感度および特性を改善するには、やり方を変えて異なる年齢の男性からの精子も評価すべきである。例えば、一定の年齢範囲における健康で/生殖能力のある男性からの精子が1つの基準を表し、生殖能力が既知または被疑の一定の年齢範囲の男性からの精子が患者のサンプルの比較対象としては別の「基準」となる。
【0145】
精子(または胚など)のDEP反応は、年齢、健康状態、染色体の状態(例えば、異数性)、または性別(胚または他の細胞)によっても変わる。また、DEP分析は、DEP反応に基づく胚(または精子)の性別を予測可能であると我々は考えている。この点は、精子については、(常に雄になる)Y染色体の精子が、(常に雌になる)X染色体の精子よりもDNAの中身が幾分少ないという事実によって説明できよう。(Y染色体は、X染色体よりも小さい)。DNAは、電荷の源でもあるため、DEPは、X精子と、Y精子との間の違い、即ち胚の雌雄を認識できる可能性は確実である。また、胚は雄雌問わず発育において一定点で異なる電気特性を呈し、このような違いがDEP反応によって認識できる可能性は確実である。
【0146】
13. DEP反応は、悪性から前癌状態の変化の範囲で、対象細胞における異なる悪性状態(「癌」)を検出できる可能性が非常に高い。悪性の変化は、細胞内の生理活性の異常状態(通常は「過剰活性」)と不変的に関連している。生理作用が活発になると特定の細胞について異なる誘電状態を招くと予想され、この点は、DEPによって識別可能である。対象細胞の特定の集団が通常同種である限り、OET分析に「異常に」反応する部分があった場合、それがどの部分であるかを判定すべく、本明細書に記載される装置の1つを使用した自動分析により多数の細胞をスクリーニングできる。繰返しになるが、個々のサンプルを比較するための有効な「基準」を有することは重要である。
【0147】
14. 我々の胚の選別および選択を行う方法は、体外受精の成功率を好ましくは25〜60パーセントの範囲に、より好ましくは25〜30%、より好ましくは30〜35パーセント、より好ましくは35〜40パーセント、より好ましくは40〜45パーセント、より好ましくは45〜50パーセント、より好ましくは50〜55パーセント、より好ましくは55〜60パーセントの範囲まで高めるものと予想される。
【0148】
従って、本発明の各実施例は、以下の事項を含むが、これらに限定されない。
【0149】
1.光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための装置であって、(a)選別対象の粒子または細胞の集団を含有する液体を保持するために構成された第1の表面および第2の表面を有する流体チャンバと、(b)受けた光を、受けた光付近の局所電場に変換するための第1または第2の表面上の光導電領域と、(c)選別対象の粒子または細胞の集団を含有するサンプル液を受け入れるための入口と、(d)流体チャンバの光導電領域の位置に関して相対距離で離間する複数の出口チャネルと、を備える、装置。
【0150】
2.流体チャンバ内の粒子または細胞は、生存能力の作用として電場に反応し、粒子または細胞は、電場に対する反応の作用として、複数の出口チャネルのうち、特定の出口チャネルを通じて回収可能であって、一粒子または一細胞が回収可能な特定の出口チャネルは、一粒子または一細胞の相対的な生存能力を示す、第1の実施態様による装置。
【0151】
3.粒子または細胞の集団は、胚の集団を有し、電場への負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、第2の実施態様による装置。
【0152】
4.電場への負の反応は、電場への反発を含む、第3の実施態様による装置。
【0153】
5.生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第2または3の実施態様による装置。
【0154】
6.光導電領域に光を供給する光源と、光源から光導電領域に供給される光の出力およびパターンを制御するための光パターンコントローラと、をさらに備える、第1の実施態様による装置。
【0155】
7.粒子または細胞選別を観察するためのイメージングデバイスをさらに備える、第6の実施態様による装置。
【0156】
8.光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための装置であって、(a)選別対象の粒子または細胞の集団を含有する液体を保持するために構成された第1の表面および第2の表面を有する流体チャンバと、(b)受けた光を、受けた光付近の局所電場に変換するための第1または第2の表面上の光導電領域と、(c)マイクロピペットを使用して流体チャンバから1つの粒子または細胞を手動抽出するための抽出口と、を備え、(d)抽出口は、(i)第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、(ii)第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、第2の表面内で傾斜させた円形エッジは、第1の表面内で傾斜させた円形エッジに対向している、装置。
【0157】
9.流体チャンバ内の粒子または細胞は、生存能力の作用として電場に反応する、第8の実施態様による装置。
【0158】
10.粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、電場への負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、第9の実施態様による装置。
【0159】
11.電場への負の反応は、電場への反発を含む、第10の実施態様による装置。
【0160】
12.生存能力は、成熟度、健康度、および、生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第9または10の実施態様による装置。
【0161】
13. 光導電領域に光を供給する光源と、光源から光導電領域に供給される光の出力およびパターンを制御するための光パターンコントローラと、をさらに備える、第8の実施態様による装置。
【0162】
14.粒子または細胞選別を観察するためのイメージングデバイスをさらに備える、第13の実施態様による装置。
【0163】
15.光誘起誘電泳動(DEP)によって胚を選別するための装置であって、(a)胚の集団を含有する液体を流体チャンバ内に保持するために構成された第1の表面および第2の表面を有する流体チャンバと、(b)受けた光を、受けた光付近の局所電場に変換するための第1または第2の表面上の光導電領域と、(c)マイクロピペットを使用して流体チャンバから1つの胚を手動抽出するための抽出口と、を備え、(d)抽出口は、(i)第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、(ii)第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、第2の表面内で傾斜させた円形エッジは、第1の表面内で傾斜させた円形エッジに対向している、装置。
【0164】
16.流体チャンバ内の胚は、生存能力の作用として電場に反応し、電場への負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、第15の実施態様による装置。
【0165】
17.生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第16の実施態様による装置。
【0166】
18.電場への負の反応は、電場への反発を含む、第15の実施態様による装置。
【0167】
19.光導電領域に光を供給する光源と、光源から光導電領域に供給される光の出力およびパターンを制御するための光パターンコントローラと、をさらに備える、第15の実施態様による装置。
【0168】
20.胚選別を観察するためのイメージングデバイスをさらに備える、第19の実施態様による装置。
【0169】
21.光誘起誘電泳動(DEP)によって胚を選別するための装置であって、(a)胚の集団を含有する液体を保持するために構成された第1の表面および第2の表面を有する流体チャンバと、(b)受けた光を、受けた光付近の局所電場に変換するための第1または第2の表面上の光導電領域と、(c)マイクロピペットを使用して流体チャンバから胚を手動抽出するための抽出口と、を備え、(d)抽出口は、(i)第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、(ii)第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、第2の表面内で傾斜させた円形エッジは、第1の表面内で傾斜させた円形エッジに対向し、(e)流体チャンバ内の胚は、生存能力の作用として電場に反応し、(f)電場への負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、装置。
【0170】
22.生存能力として、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第21の実施態様による装置。
【0171】
23.電場への負の反応は、電場への反発を含む、請求項21に記載の装置。
【0172】
24.光導電領域に光を提供する光源と、光源から光導電領域に供給される光の出力およびパターンを制御するための光パターンコントローラと、をさらに備える、第21の実施様態による装置。
【0173】
25.胚選別を観察するためのイメージングデバイスをさらに備える、第24の実施様態による装置。
【0174】
26.光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための方法であって、(a)流体チャンバを設けるステップであって、流体チャンバは、(i)選別対象の粒子または細胞の集団を含有する液体を、流体チャンバ内に保持するための第1の表面および第2の表面と、(ii)受けた光を、受けた光付近の局所電場に変換するための第1または第2の表面上の光導電領域と、(iii)選別対象の粒子または細胞の集団を含有するサンプルを受け入れるための入口と、(iv)流体チャンバの光導電領域の位置に関して相対距離で離間する複数の出口チャネルと、を備える、ステップと、(b)選別対象の粒子または細胞の集団を含有するサンプル液を流体チャンバに導入するステップと、(c)光導電領域の少なくとも一部を光源にさらし、局所電場を誘発するステップと、(d)電場に対する反応の作用として、出口チャネルを通じて粒子または細胞を選別するステップと、を含む方法。
【0175】
27.粒子または細胞は、生存能力の作用として電場に反応し、一粒子または―細胞が回収可能な特定の出口チャネルは、一粒子または一細胞の相対的な生存能力を示す、第26の実施様態による方法。
【0176】
28.粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、電場への負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、第27の実施様態による方法。
【0177】
29.電場への負の反応は、電場への反発を含む、第28の実施例による方法。
【0178】
30.生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第27または28の実施様態による方法。
【0179】
31.光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための方法であって、(a)流体チャンバを設けるステップであって、流体チャンバは、(i)選別対象の粒子または細胞の集団を含有する液体を流体チャンバ内に保持するための第1の表面および第2の表面と、(ii)受けた光を、受けた光付近の局所電場に変換するための第1または第2の表面上の光導電領域と、(iii)マイクロピペットを使用して流体チャンバから粒子または細胞を手動抽出するための抽出口と、(iv)抽出口は、第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、第2の表面内で傾斜させた円形エッジは、第1の表面内で傾斜させた円形エッジに対向している、ステップと、(e)選別対象の粒子または細胞の集団を含有するサンプル液を流体チャンバに導入するステップと、(f)光導電領域の少なくとも一部を光源にさらし、局所電場を誘発するステップと、(g)電場に対する反応の作用として抽出用の粒子または細胞を選択するステップと、(h)選択された粒子または細胞を、抽出口を通じて抽出するステップと、を含む方法。
【0180】
32.粒子または細胞は、生存能力の作用として電場に反応する、第31の実施様態による方法。
【0181】
33.粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、電場への負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、第31の実施様態による方法。
【0182】
34.電場への負の反応は、電場への反発を含む、第33の実施様態による方法。
【0183】
35.生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第32または33の実施様態による方法。
【0184】
36.光誘起誘電泳動(DEP)によって胚を選別するための方法であって、(a)流体チャンバを設けるステップであって、流体チャンバは、(i)胚の集団を含有する液体を流体チャンバ内に保持するための第1の表面および第2の表面と、(ii)受けた光を、受けた光付近の局所電場に変換するための第1または第2の表面上の光導電領域と、(iii)マイクロピペットを使用して流体チャンバから胚を手動抽出するための抽出口と、を備え、(iv)抽出口は、第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、第2の表面内で傾斜させた円形エッジは、第1の表面内で傾斜させた円形エッジに対向している、ステップと、(e)胚の集団を含有するサンプル液を流体チャンバに導入するステップと、(f)光導電領域の少なくとも一部を光源にさらし、局所電場を誘発するステップと、(g)電場に対する反応の作用として抽出用の胚を選択するステップと、(h)選択された胚を、抽出口を通じて抽出するステップと、を含む方法。
【0185】
37.流体チャンバ内の胚は、生存能力の作用として電場に反応し、電場への負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、第36の実施様態による方法。
【0186】
38.生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第37の実施様態による方法。
【0187】
39.電場への負の反応は、電場への反発を含む、第37の実施様態による方法。
【0188】
40.光誘起誘電泳動(DEP)によって胚を選別するための方法であって、(a)流体チャンバを設けるステップであって、流体チャンバは、(i)胚の集団を含有する液体を流体チャンバ内に保持するための第1の表面および第2の表面と、(ii)受けた光を、受けた光付近の局所電場に変換するための第1または第2の表面上の光導電領域と、(iii)マイクロピペットを使用して流体チャンバから胚を手動抽出するための抽出口と、を備え、(iv)抽出口は、第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、第2の表面内で傾斜させた円形エッジは、第1の表面内で傾斜させた円形エッジに対向している、ステップと、(e)胚の集団を含有するサンプル液を流体チャンバに導入するステップと、(f)光導電領域の少なくとも一部を光源にさらし、局所電場を誘発するステップと、(g)電場に対する反応の作用として抽出用の胚を選択するステップであって、(h)流体チャンバ内の胚は、生存能力の作用として電場に反応し、(i)電場への負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、ステップと、(j)選択された胚を、抽出口を通じて抽出するステップと、を含む方法。
【0189】
41.生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第40の実施様態による方法。
【0190】
42.電場への負の反応は、電場への反発を有する、第40の実施例による方法。
【0191】
43.光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための方法であって、(a)サンプル内の粒子または細胞の集団から注目している形質を識別するステップと、(b)サンプルをDEPにさらすステップと、(c)DEPへの粒子または細胞の反応を測定するステップと、(d)反応の測定値を指数化するステップと、(e)指数化した反応の測定値を特定の形質と対比させるステップと、(f)DEPと反応の測定値との対比に基づき、粒子または細胞の集団から所望の形質を有する粒子または細胞を分離するステップと、(g)分離された粒子または細胞を隔離して抽出するステップと、を含む方法。
【0192】
44.粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、注目している形質のうちの一形質が生存能力であって、DEPへの負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、第43の実施様態の方法。
【0193】
45.DEPへの負の反応は、DEPへの反発を含む、第44の実施例による方法。
【0194】
46.生存能力として、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第44の実施様態による方法。
【0195】
47.光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための方法であって、(a)サンプル内の粒子または細胞の集団から対象となる特徴を識別するステップと、(b)サンプルを、一連のDEP電場強度にさらすステップと、(c)DEP電場強度の範囲に対する粒子または細胞の反応を測定するステップと、(d)対象となる特徴を、DEP反応測定値と対比させるステップと、(e)サンプルから対象となる特徴を有する粒子または細胞を抽出するステップと、を含む方法。
【0196】
48.粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、対象となる特徴のうちの一特徴は生存能力であって、DEPへの負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、第47の実施様態の方法。
【0197】
49.DEPへの負の反応は、DEPへの反発を含む、第48の実施例による方法。
【0198】
50.生存能力として、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第48の実施様態による方法。
【0199】
51.光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための方法であって、(a)サンプル内の粒子または細胞の集団から対象となる特徴を識別するステップと、(b)サンプルを、一連のDEP電場強度にさらすステップと、(c)一連のDEP電場強度に対する粒子または細胞の反応を測定するステップと、(d)対象の最適なDEP反応を、最適なDEP電場特性と対比させるステップと、(e)最適なDEP電場特性を有する対象の集団から、注目している形質を有する対象を分離するステップと、(f)最適化されたDEP電場への対象の反応の強度に従い、分離された対象を抽出するステップと、を含む方法。
【0200】
52.粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、対象となる特徴のうちの一特徴は生存能力であって、DEPへの負の反応が大きいほど、胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、第51の実施様態の方法。
【0201】
53.DEPへの負の反応は、DEPへの反発を含む、第52の実施例による方法。
【0202】
54.生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、第52の実施様態による方法。
【0203】
55.胚の集団内の胚を選別するステップと、選別された集団から、体外受精(IVF)用の胚を選択するステップと、を有し、体外受精の成功率は、25〜60%である、方法。
【0204】
56.成功率は、25〜30%である、第55の実施様態による方法。
【0205】
57.成功率は、30〜35%である、第55の実施様態による方法。
【0206】
58.成功率は、35〜40%である、第55の実施様態による方法。
【0207】
59.成功率は、40〜45%である、第55の実施様態による方法。
【0208】
60.成功率は、45〜50%である、第55の実施様態による方法。
【0209】
61.成功率は、50〜55%である、第55の実施様態による方法。
【0210】
62.成功率は、55〜60%である、第55の実施様態による方法。
【0211】
本明細書における記載は、多くの詳細事項を含んでいるが、これら詳細事項は、本発明の範囲を限定すると解釈すべきではなく、この発明の現段階で公的な実施様態の幾つかを図示したものに過ぎない。従って、本発明の範囲は、当業者に自明となる可能性がある他の実施様態を全て包含すると理解される。添付の請求項では、単数形の部材への参照は、「1つおよび1つだけ」という意味ではなく、特に指定のない限り、「1つ以上」と解釈される。通常の能力を有する当業者には周知である、上述した好適な実施様態の部材の構造上、化学上、および機能上な等価物は全て、参照によって本明細書に明示的に組み込まれ、本開示によって包含されることを意図するものとする。また、装置または方法は、本発明によって解決が求められる問題1つ1つおよび全てを提示する必要はなく、目下の請求項によって包含されることを意図するものとする。さらにまた、本開示における部材、構成材、方法手順は、これら部材、構成材、方法手順が請求項に明示的に記載されているかどうかに関係なく、公にすることを意図したものではない。本明細書における請求項の部材は、該部材が「〜のための手段」なる文言を使用して明示的に記載されていない限り、米国特許法第35条、112、第6項の規定に従って解釈されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための装置であって、
(a)選別対象の粒子または細胞の集団を含有する液体を保持するために構成された第1の表面および第2の表面を有する流体チャンバと、
(b)受けた光を、前記受けた光付近の局所電場に変換するための前記第1または第2の表面上の光導電領域と、
(c)選別対象の粒子または細胞の集団を含有するサンプル液を受け入れるための入口と、
(d)前記流体チャンバの前記光導電領域の位置に関して相対距離で離間する複数の出口チャネルと、を備える、装置。
【請求項2】
前記流体チャンバ内の粒子または細胞は、生存能力の作用として前記電場に反応し、
前記粒子または細胞は、前記電場に対する反応の作用として、前記複数の出口チャネルのうち、特定の出口チャネルを通じて回収可能であって、
一粒子または一細胞が回収可能な特定の出口チャネルは、前記一粒子または一細胞の相対的な生存能力を示す、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記粒子または細胞の集団は、胚の集団を有し、
前記電場への負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電場への負の反応は、前記電場への反発を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項2または3に記載の装置。
【請求項6】
前記光導電領域に光を供給する光源と、
前記光源から前記光導電領域に供給される前記光の出力およびパターンを制御するための光パターンコントローラと、をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
粒子または細胞選別を観察するためのイメージングデバイスをさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための装置であって、
(a)選別対象の粒子または細胞の集団を含有する液体を保持するために構成された第1の表面および第2の表面を有する流体チャンバと、
(b)受けた光を、前記受けた光付近の局所電場に変換するための前記第1または第2の表面上の光導電領域と、
(c)マイクロピペットを使用して前記流体チャンバから1つの粒子または細胞を手動抽出するための抽出口と、を備え、
(d)前記抽出口は、
(i)前記第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、
(ii)前記第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、
前記第2の表面内で傾斜させた前記円形エッジは、前記第1の表面内で傾斜させた前記円形エッジに対向している、装置。
【請求項9】
前記流体チャンバ内の粒子または細胞は、生存能力の作用として前記電場に反応する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、
前記電場への負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記電場への負の反応は、前記電場への反発を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記生存能力は、成熟度、健康度、および、生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項9または10に記載の装置。
【請求項13】
前記光導電領域に光を供給する光源と、
前記光源から前記光導電領域に供給される前記光の出力およびパターンを制御するための光パターンコントローラと、をさらに備える、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
粒子または細胞選別を観察するためのイメージングデバイスをさらに備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
光誘起誘電泳動(DEP)によって胚を選別するための装置であって、
(a)胚の集団を含有する液体を保持するために構成された第1の表面および第2の表面を有する流体チャンバと、
(b)受けた光を、前記受けた光付近の局所電場に変換するための前記第1または第2の表面上の光導電領域と、
(c)マイクロピペットを使用して前記流体チャンバから1つの胚を手動抽出するための抽出口と、を備え、
(d)前記抽出口は、
(i)前記第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、
(ii)前記第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、前記第2の表面内で傾斜させた前記円形エッジは、前記第1の表面内で傾斜させた前記円形エッジに対向している、装置。
【請求項16】
前記流体チャンバ内の胚は、生存能力の作用として電場に反応し、
前記電場への負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記電場への負の反応は、前記電場への反発を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記光導電領域に光を供給する光源と、
前記光源から前記光導電領域に供給される前記光の出力およびパターンを制御するための光パターンコントローラと、をさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
胚選別を観察するためのイメージングデバイスをさらに備える、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
光誘起誘電泳動(DEP)によって胚を選別するための装置であって、
(a)胚の集団を含有する液体を保持するために構成された第1の表面および第2の表面を有する流体チャンバと、
(b)受けた光を、前記受けた光付近の局所電場に変換するための前記第1または第2の表面上の光導電領域と、
(c)マイクロピペットを使用して前記流体チャンバから胚を手動抽出するための抽出口と、を備え、
(d)前記抽出口は、
(i)前記第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、
(ii)前記第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、
前記第2の表面内で傾斜させた前記円形エッジは、前記第1の表面内で傾斜させた円形エッジに対向し、
(e)前記流体チャンバ内の胚は、生存能力の作用として前記電場に反応し、
(f)前記電場への負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、装置。
【請求項22】
前記生存能力として、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記電場への負の反応は、前記電場への反発を含む、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記光導電領域に光を提供する光源と、
前記光源から前記光導電領域に供給される前記光の出力およびパターンを制御するための光パターンコントローラと、をさらに備える、請求項21に記載の装置。
【請求項25】
胚選別を観察するためのイメージングデバイスをさらに備える、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための方法であって、
(a)流体チャンバを設けるステップであって、前記流体チャンバは、
(i)選別対象の粒子または細胞の集団を含有する液体を、前記流体チャンバ内に保持するための第1の表面および第2の表面と、
(ii)受けた光を、前記受けた光付近の局所電場に変換するための前記第1または第2の表面上の光導電領域と、
(iii)選別対象の粒子または細胞の集団を含有するサンプルを受け入れるための入口と、
(iv)前記流体チャンバの前記光導電領域の位置に関して相対距離で離間する複数の出口チャネルと、を備える、ステップと、
(b)選別対象の粒子または細胞の集団を含有するサンプル液を前記流体チャンバに導入するステップと、
(c)前記光導電領域の少なくとも一部を光源にさらし、前記局所電場を誘発するステップと、
(d)前記電場に対する反応の作用として、前記出口チャネルを通じて前記粒子または細胞を選別するステップと、を含む方法。
【請求項27】
前記粒子または細胞は、生存能力の作用として前記電場に反応し、
一粒子または―細胞が回収可能な特定の出口チャネルは、前記一粒子または一細胞の相対的な生存能力を示す、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、
前記電場への負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記電場への負の反応は、前記電場への反発を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項31】
光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための方法であって、
(a)流体チャンバを設けるステップであって、前記流体チャンバは、
(i)選別対象の粒子または細胞の集団を含有する液体を前記流体チャンバ内に保持するための第1の表面および第2の表面と、
(ii)受けた光を、前記受けた光付近の局所電場に変換するための前記第1または第2の表面上の光導電領域と、
(iii)マイクロピペットを使用して前記流体チャンバから粒子または細胞を手動抽出するための抽出口と、
(iv)前記抽出口は、前記第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、前記第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、
前記第2の表面内で傾斜させた前記円形エッジは、前記第1の表面内で傾斜させた前記円形エッジに対向している、ステップと、
(e)選別対象の粒子または細胞の集団を含有するサンプル液を前記流体チャンバに導入するステップと、
(f)前記光導電領域の少なくとも一部を光源にさらし、前記局所電場を誘発するステップと、
(g)前記電場に対する反応の作用として抽出用の粒子または細胞を選択するステップと、
(h)選択された前記粒子または細胞を、前記抽出口を通じて抽出するステップと、を含む方法。
【請求項32】
前記粒子または細胞は、生存能力の作用として前記電場に反応する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、
前記電場への負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項36】
光誘起誘電泳動(DEP)によって胚を選別するための方法であって、
(a)流体チャンバを設けるステップであって、前記流体チャンバは、
(i)胚の集団を含有する液体を前記流体チャンバ内に保持するための第1の表面および第2の表面と、
(ii)受けた光を、前記受けた光付近の局所電場に変換するための前記第1または第2の表面上の光導電領域と、
(iii)マイクロピペットを使用して前記流体チャンバから胚を手動抽出するための抽出口と、を備え、
(iv)前記抽出口は、前記第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、前記第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、
前記第2の表面内で傾斜させた前記円形エッジは、前記第1の表面内で傾斜させた前記円形エッジに対向している、ステップと、
(e)胚の集団を含有するサンプル液を前記流体チャンバに導入するステップと、
(f)前記光導電領域の少なくとも一部を光源にさらし、前記局所電場を誘発するステップと、
(g)前記電場に対する反応の作用として抽出用の胚を選択するステップと、
(h)選択された前記胚を、抽出口を通じて抽出するステップと、を含む方法。
【請求項37】
前記流体チャンバ内の胚は、生存能力の作用として前記電場に反応し、
前記電場への負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記電場への負の反応は、前記電場への反発を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
光誘起誘電泳動(DEP)によって胚を選別するための方法であって、
(a)流体チャンバを設けるステップであって、前記流体チャンバは、
(i)胚の集団を含有する液体を前記流体チャンバ内に保持するための第1の表面および第2の表面と、
(ii)受けた光を、前記受けた光付近の局所電場に変換するための前記第1または第2の表面上の光導電領域と、
(iii)マイクロピペットを使用して前記流体チャンバから胚を手動抽出するための抽出口と、を備え、
(iv)前記抽出口は、前記第1の表面内で傾斜させた円形エッジと、前記第2の表面内で傾斜させた円形エッジと、を含み、
前記第2の表面内で傾斜させた前記円形エッジは、前記第1の表面内で傾斜させた前記円形エッジに対向している、ステップと、
(e)胚の集団を含有するサンプル液を前記流体チャンバに導入するステップと、
(f)前記光導電領域の少なくとも一部を光源にさらし、前記局所電場を誘発するステップと、
(g)前記電場に対する反応の作用として抽出用の胚を選択するステップであって、
(h)前記流体チャンバ内の胚は、生存能力の作用として前記電場に反応し、
(i)前記電場への負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、ステップと、
(j)前記選択された胚を、前記抽出口を通じて抽出するステップと、を含む方法。
【請求項41】
前記生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記電場への負の反応は、前記電場への反発を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための方法であって、
(a)サンプル内の粒子または細胞の集団から注目している形質を識別するステップと、
(b)前記サンプルをDEPにさらすステップと、
(c)前記DEPへの前記粒子または細胞の反応を測定するステップと、
(d)前記反応の測定値を指数化するステップと、
(e)指数化した前記反応の測定値を特定の形質と対比させるステップと、
(f)前記DEPと前記反応の測定値との対比に基づき、粒子または細胞の集団から所望の形質を有する粒子または細胞を分離するステップと、
(g)分離された前記粒子または細胞を隔離して抽出するステップと、を含む方法。
【請求項44】
前記粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、前記注目している形質のうちの一形質が生存能力であって、
前記DEPへの負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記DEPへの負の反応は、前記DEPへの反発を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記生存能力として、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための方法であって、
(a)サンプル内の粒子または細胞の集団から対象となる特徴を識別するステップと、
(b)前記サンプルを、一連のDEP電場強度にさらすステップと、
(c)前記DEP電場強度の範囲に対する前記粒子または細胞の反応を測定するステップと、
(d)前記対象となる特徴を、DEP反応測定値と対比させるステップと、
(e)前記サンプルから前記対象となる特徴を有する粒子または細胞を抽出するステップと、を含む方法。
【請求項48】
前記粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、
前記対象となる特徴のうちの一特徴は生存能力であって、
前記DEPへの負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記DEPへの負の反応は、前記DEPへの反発を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記生存能力として、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
光誘起誘電泳動(DEP)によって細胞または粒子を選別するための方法であって、
(a)サンプル内の粒子または細胞の集団から対象となる特徴を識別するステップと、
(b)前記サンプルを、一連のDEP電場強度にさらすステップと、
(c)前記一連のDEP電場強度に対する前記粒子または細胞の反応を測定するステップと、
(d)対象の最適なDEP反応を、最適なDEP電場特性と対比させるステップと、
(e)前記最適なDEP電場特性を有する対象の集団から、注目している形質を有する対象を分離するステップと、
(f)最適化されたDEP電場への対象の反応の強度に従い、分離された前記対象を抽出するステップと、を含む方法。
【請求項52】
前記粒子または細胞の集団は、胚の集団を含み、
前記対象となる特徴のうちの一特徴は生存能力であって、
前記DEPへの負の反応が大きいほど、前記胚の集団内の胚の生存能力が高いことを示している、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記DEPへの負の反応は、前記DEPへの反発を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記生存能力は、成熟度、健康度、および生理学的状態から成る群から選択される特性を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
胚の集団内の胚を選別するステップと、
選別された前記集団から、体外受精(IVF)用の胚を選択するステップと、を有し、
前記体外受精の成功率は、25〜60%である、方法。
【請求項56】
前記成功率は、25〜30%である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記成功率は、30〜35%である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記成功率は、35〜40%である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記成功率は、40〜45%である、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記成功率は、45〜50%である、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
前記成功率は、50〜55%である、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
前記成功率は、55〜60%である、請求項55に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−522518(P2012−522518A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503762(P2012−503762)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/029872
【国際公開番号】WO2010/115167
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511232455)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (1)
【Fターム(参考)】