細胞画像解析方法
【課題】細胞の検出や認識を精度良く行うことができる細胞画像解析方法を提供すること。
【解決手段】細胞などの画像を解析する細胞画像解析方法において、複数の特徴的な点を抽出し、前記複数の点をグループ化し、前記グループ化された複数の点のうち類似した点に基づいて、細胞中心に対応する点を決定する。ここにおいて、前記グループ化された複数の点から類似した点以外の点を除くことが好ましい。
【解決手段】細胞などの画像を解析する細胞画像解析方法において、複数の特徴的な点を抽出し、前記複数の点をグループ化し、前記グループ化された複数の点のうち類似した点に基づいて、細胞中心に対応する点を決定する。ここにおいて、前記グループ化された複数の点から類似した点以外の点を除くことが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理に関し、特に細胞などの画像において、細胞の中心を検出し、細胞個々の領域を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個々の細胞位置を特定し、各細胞の形状を検出決定する細胞画像処理は、通常細胞の境界を使って行われる。この場合において、細胞の境界は、画像中各点の輝度値をニ値化するなどの方法(例えば、特許文献1参照)、あるいは周波数の高い部分を抽出すること(例えば、特許文献2参照)により検出される。
【0003】
複数の細胞を含む複雑な細胞領域を解析し領域内に含まれる細胞を検出する方法は、Watershedや、その他の方法に見られるように、上記方法で検出された細胞境界を使って行われている。
図11を使って代表的な輪郭解析方法であるWatershedについて簡単に説明する。細胞の輪郭となる画像中の境界は、2値化などの適当な方法により検出されている。この画像中で、いくつかの細胞は重なって、密接して存在している。この場合、2つの細胞の境界も重なっているので複数の細胞を正しく分離しなくてはならない。Watershed法によれば、図11に示すように複数の細胞が重なっている輪郭上で、くびれている部分を個々の細胞の境界として認識し、単一の細胞ごとの検出が可能になる。しかしこの方法では、多くの細胞が密接したものに対しては正しく細胞を分離できないという難点がある。
【特許文献1】特開平6−96192号公報
【特許文献2】特開2001−307066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複雑な形態の細胞の総数を数え上げる観察作業は研究者の目視観察に依存している。そのため、観察結果が研究者間でばらついたり、顕微鏡画像を長時間観察することによる疲労により観察結果が変動したりするという問題があった。なお、複雑な形態的な特徴を有する複数の細胞を個別に識別しそれらの特徴量を自動的に抽出する手段は実現されていない、あるいは、充分な精度を実現しえないというのが現状である。
【0005】
特に、細胞を使った化合物スクリーニングにおいては、細胞の個別識別の結果が化合物の効果と直接の関係を持つと考えられ、解析結果によって結果の解釈が大きく変動することになるので、解析の精度として高いものが要求されるが、細胞同士が密着しているあるいは、細胞試料中にゴミが混ざる、などの特徴により精度が下がるという問題があった。
【0006】
さらに、これら細胞試料の特徴により、細胞の輪郭を正確に把握することが困難である場合が多いが、一方で細胞の画像解析には、輪郭を使って細胞の認識を行うものが多い。また、この問題を克服するため細胞核を染色し、細胞核画像による細胞認識を行う場合もあるが、実験条件によっては核の染色が好ましくない場合もある。
【0007】
上記のように、細胞の画像解析においては、各画像中の個々の細胞を正確に認識し、細胞の特徴量を正しく測定すること、解析の精度を上げることが主な課題となっており、特に、試料中に細胞以外の物質が散在し複数の細胞が重なりあい密に接している細胞試料の画像解析において正確に解析を行うことは困難である。
【0008】
本発明は、細胞の検出や認識を精度良く行うことができる細胞画像解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の局面に係る発明は、細胞などの画像を解析する細胞画像解析方法において、複数の特徴的な点を抽出し、前記複数の点をグループ化し、前記グループ化された複数の点のうち類似した点に基づいて、細胞中心に対応する点を決定することを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、細胞の検出や認識を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明を実施するための基本的な構成を図1を用いて説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図であり、本実施の形態に係る細胞画像解析装置の基本構成として走査型共焦点光学顕微鏡を例示している。
【0012】
光源20として、例えば波長488nmのアルゴンレーザを用いる。光源20から出射されたレーザ光はコリメートレンズ22によりビーム直径が拡大されて、平行光束に変換されてダイクロイックミラー25に導かれる。ダイクロイックミラー25に導かれたレーザ光は、ダイクロイックミラー25で反射されて、XYスキャナ30に入射し、XYスキャナ30でXY軸方向に走査される。XYスキャナ30を通ったレーザ光は、対物レンズ35に入射し、測定対象である溶液状の試料42に集光される。なお、ダイクロイックミラー25は光源20からのレーザ光の波長の光を反射し、光源20からのレーザ光の波長より長い波長の光を透過させる。また、XYスキャナ30としてガルバノミラーが通常用いられる。
【0013】
試料42は、蛍光物質で標識されて、詳細は後述する顕微鏡の試料ステージ40上に載置されたマイクロプレート41上に置かれている。蛍光物質として、例えば、ローダミン・グリーン(RhG)が用いられる。試料42から発せられる蛍光は、対物レンズ35を再び通過し、XYスキャナ30を通ってダイクロイックミラー25を通過し、ミラー50で反射されてレンズ51に到達する。レンズ51で蛍光は集光されて、ピンホール52の開口部でフォーカスされた後に、光検出器55で受光される。光検出器55で受光された蛍光信号は光電流信号に変換され、画像処理部80に入力され、詳細は後述する信号処理、画像解析等の演算が行われて。モニタ上に試料の蛍光画像が抽出される。なお、光検出器55として通常CCD(Charge Coupled Device)カメラが用いられるが、CMOS(Complememtary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を用いても良い。
【0014】
試料42を収容する容器として、例えば底面が透明に施された96穴のマイクロプレート41が用いられる。対物レンズ35の先端とマイクロプレート41の間は、液浸水で満たされている。マイクロプレート41は、試料ステージ40の上に保持される。試料ステージ40には、試料ステージ40が直交する2方向に移動可能なように、2個のステッピングモータ(図示しない)が取り付けられており、それぞれのステッピングモータは試料ステージコントローラ45に接続されている。試料ステージコントローラ45はコンピュータ10に接続されており、試料ステージ40を保持し、コンピュータ10からの指令により、ステッピングモータを駆動することによって試料ステージ40をX方向とY方向に移動させて、試料42面を適切な位置に配置する、
また、対物レンズ35をZ方向に移動させることにより、レーザ光のフォーカス位置をZ軸方向に沿って上下に移動させることができる。
【0015】
なお、蛍光物質については、ローダミン・グリーンに限ることなく、光源の波長を対応させることができれば、例えば、TMR(Tetrame−hylrhodamine)、サイファイヴ(Cy5)、FITC(Fluorescein−isothiocyanate)、TOTO1、Acridine−Orange、Texas−Redなどを用いても良い。
【0016】
光検出器55からの出力は画像処理部80に入力して、種々の画像処理が行われる。画像処理部80は、特徴点抽出部81と、グループ化部82と、除外部821と、細胞中心決定部83と、画像分割部84と、細胞領域解析部85とを備えている。まず、光検出器55からの出力(本明細書においては、特に断らない限り、「撮影画像」が出力されるものとする)に基づいて、特徴点抽出部81は、複数の特徴点を抽出する。「特徴点」は、輝度、明度、色相に基づいて抽出される。特徴点として、その周囲と比較して、例えば、輝度の場合は、極大、極小値を有する点、明度や色相についてはその周囲と異なる点等が抽出される。なお、細胞境界から一定以上の距離を有する点を特徴点としても良い。グループ化部82は、特徴点抽出部81で抽出された点のうち類似するものをグループ化する。除外部821は、グループ化部82で特徴点をグループ化する前に、類似していない特徴点を除外する。なお、この除外部821は、省略しても良い。細胞中心決定部83は、グループ化部82でグループ化された複数の特徴点に基づいて、詳細は後述するように、代表点を求めることにより細胞中心を決定する。画像分割部84は、詳細は後述するように、画像処理部80に入力した複数の画像を分割する。細胞領域解析部85は、細胞領域を解析する。
【0017】
なお、画像処理部80を構成するハードウェアとしては、例えば汎用コンピュータ或いはパーソナルコンピュータ等のようにコンピュータプログラムによって作動する汎用的な処理装置を用いることができる。また、画像処理部80は、コンピュータ10の一部であっても良い。このような場合には、上記のような処理装置に、画像処理部80として機能させるためのコンピュータプログラム、すなわち特徴点抽出部81、グループ化部82(除外部821を含む)、細胞中心決定部83、個々の細胞の画像分割部84、細胞の細胞領域解析部85のそれぞれの機能を実現させるためのプログラムをインストールして細胞画像の処理装置を構成している。
【0018】
上記のように構成された本発明の一実施の形態に係る細胞画像解析装置の動作を説明する。細胞を撮像した画像を解析する目的は、画像上の個々の細胞位置を特定し、各細胞の特徴量を抽出することである。
まず、図2を参照して、細胞解析処理の流れについて、その概要を説明する。
(1)対象とする細胞を培養する(ステップA1)。
(2)次に染色などの適当な前処理を行い可視化の準備を行う(ステップA2)。ステップA2において、前処理とは、適当な方法で培養された細胞に、撮像のための処理を施すことであって、蛍光物質を投与することなどの処理を行うにより細胞の可視化が行われる。
(3)これら細胞試料42を顕微鏡などの光学系に載置して、光検出器55で撮像する(ステップA3)。
(4)光検出器55で撮像した細胞画像をデジタル化してコンピュータ10などの図示しない記憶装置に保存する(ステップA4)。保存された細胞画像は、カラーまたは単色の像である。また、画像は、1000×1000などの上下左右に幅をもったデータとして保存される。画像の上の各点には、位置を表す座標が振り分けられ、各点は、各色の輝度を持つ。なお、座標(x、y)の輝度は230などのように表現されデジタルデータとして保存される。
(5)これら画像をコンピュータ上で処理解析する(ステップA5)。
【0019】
次に、画像解析の概要について、説明する。
画像解析は、これらのデジタルデータをパソコン上のソフト・プログラムなどで適当な処理を行い解析する方法である。特に、細胞を使った画像解析においては、細胞を認識することが目的となる。
細胞の認識は、通常、実験者によって直接行われる。実験の種類によって異なるが、一般的には、顕微鏡画像(あるいは顕微鏡の視野)を観察しその画像中に「細胞が存在するかどうか。」「細胞が存在する場合、細胞の位置はどこにあるか」「画像中に含まれる細胞の数はいくつか」「画像中の細胞の種類はいくつあるか」「特定の種類の細胞はいくつあるか」「各細胞の大きさはどの程度あるか」などを認識し、記録し、実験のためのデータを提供することを目的に細胞認識は行われる。
すなわち、細胞の認識は、(1)画像中、個々の細胞の位置を特定し、(2)細胞の特徴を取得し、(3)取得した特徴により細胞を分類することを目的として行われる。ここにおいて、本発明の一実施態様に係る細胞画像解析は上記の細胞認識をコンピュータ上で自動的に行うことを目的とする。なお、上記方法で取得した個々の細胞の特徴量は、平均化などの統計的な処理を施される。
【0020】
細胞を使った実験は様々な目的の下に行われるが、ここでは特に細胞をベースにした化合物スクリーニングを例にとって、実験の目的及び流れを簡単に説明する。
細胞ベースの化合物スクリーニングは、効果のある薬剤を見つけることを目的とするものであって、適当な化合物などをターゲットにする細胞に投与し、これら化合物が細胞に及ぼす影響を定量化することにより、行われる。
さらに、これらの定量化されたデータは、複数の化合物の場合と比較され、これらいくつかの化合物の中から、細胞に及ぼす影響の大きいもの、効果のあるものを発見することを目的として行われる。
【0021】
図3を参照して、スクリーニングの手順を説明する。
サンプルとなる細胞を培養し(ステップB1)、条件に応じて、いくつかのグループに分類する(ステップB2)。例えば化合物の細胞に及ぼす効果を測定する実験系においては、化合物を加えたものと、そうではない細胞群に分けられる(ステップB2からステップB5)。
【0022】
次に、顕微鏡などの適当な光学系を用いて、これらの分類されたグループごとに撮像する(ステップB6)。この場合、通常各グループについて複数枚の撮像を行う。なお、各画像には適当な数(数十程度)の細胞が含まれている。
【0023】
次に上記方法で撮像し保存された細胞画像を解析する。細胞画像の解析により画像中に存在している細胞の位置、また各細胞の発光量や大きさ突起の有無など特徴量を抽出する。
【0024】
細胞の特徴量は、このグループごと、乃至画像ごとに平均化されあるいは分布を解析され、グループ間の差異を検出し、化合物を導入された・されないなどのグループの条件と比較し検討される(ステップB7)。
【0025】
本発明では、上記の各手順において、撮像後の画像解析や細胞の観察を自動で行うようにしている。
【0026】
複数の化合物を、複数のサンプルで検証することから、スクリーニングにおいては、統計的な処理が必要とされる。
【0027】
よって、細胞の画像解析においては、各画像中の個々の細胞を正確に認識して、細胞の特徴量を正しく測定すること、解析の精度を上げること等が主な課題となる。
【0028】
これに対して、別な目的の実験、例えば特異的な細胞を見つける実験では、全体の精度よりも、特定の細胞を検出できるかどうか、ということが画像解析の主な目的となる。
【0029】
本発明では、細胞の検出や細胞数を数える(認識)処理を精度良く行えるようにし、更には、これらに付随して各細胞の特徴量を解析に充分な程度の精度で実現している。
【0030】
個々の細胞を正しく認識するということは、細胞の中心に代表されるような細胞の位置を特定すること、あるいは各細胞の境界を正しく検出し個々の細胞領域を特定することである。
【0031】
細胞の特徴量とは、細胞の大きさであるとか、あるいは特徴的な形態を持っているか、であるとか、また画像中の個々の細胞の明るさ(輝度)などの、個々の細胞を特徴づけ、結果の解釈に必要とされる量のことである。
【0032】
通常、細胞の相対的な大きさや、突起を持つなどの形態的な特徴を抽出するためには、細胞の境界を正しく検出することが求められる。また、このために、細胞の検出という言葉は主に細胞の境界を求めることと同意義に用いられている場合が多い。
【0033】
実際、既存の細胞画像解析方法は、細胞の境界抽出後の認識に重きを置いているものが多い(とくに輪郭系のもの)。これらの方法は、適当な画像処理の関数を用いることで、細胞の輪郭を抽出し、これらの輪郭に対して解析を行い、細胞の突起位置であるとか、細胞のサイズ、細胞の形態特徴量を抽出するという処理を行っている。
【0034】
細胞解析の対象となる培養細胞の対象は、実験の目的により異なる。例えば、単一の細胞が時間変化によりどのように変化するか、神経細胞の伝達を可視化して解析するなどの実験もある。また病理標本の細胞組織を解析し、ガンなどの病理的な診断を支援するソフトなども開発されている。
上記の例において、単一の細胞の観察を目的とする場合には、適当な処理により細胞は一個一個分離されている。また病理組織の判定の場合は、細胞組織は比較的きれいなパターンを持っている。これらの例では、細胞の境界は抽出しやすく、細胞の輪郭検出自体が問題になることは比較的少ない。また、細胞の数だけが問題になる場合、通常は細胞核を染色してしまうという方法を採る。
【0035】
細胞核同士は、細胞体全体と比較して、重なりあうことが少なく、密度が低く、また、ゴミや細胞の死骸などは核が染色されないため、比較的誤りが少ない。ただしこれらの核染色後に解析を行う方法は、実験全体の余計なステップであることや、様々な実験の制約から行うことができない、あるいは行わないことが望ましい場合がある。
【0036】
これに対して、スクリーニング実験の場合には、細胞の輪郭を抽出すること自体が問題になる場合が多い。スクリーニングの場合、多くの試験を行うほうが実験の効率がよく、実験に余計な処理のステップを加えないようにしている。従って、培養された状態のまま、すなわち、ゴミを含んだり、複数の細胞同士が密着したりしたような状態で、細胞を撮像することを想定した解析を行う必要がある。
【0037】
さらに、化合物スクリーニングにおいては、化合物を生体内と同じ条件の細胞に導入するという目的のため、培養細胞に何らかの物質を投与することは好ましくない。また、培養細胞に酵素を加え密着した細胞を単離するなどの処理は、スクリーニングの結果に影響を与える可能性があるため、なるべく行わないように実験は計画されている場合が多い。更に、細胞の可視化は、適当な蛍光物質を導入したり、染色することで行われるが、これらの処理も、スクリーニング結果への影響を考えて、できるだけ行わないことがある。
【0038】
つまり、スクリーニングにおいては、画像解析を容易にするための処理はなるべく行わず、そのため、細胞が重なったままであったり、細胞の死骸や、培養細胞に入っている異なる種類の細胞を除去せずに実験を行わなくてはならないなどの制限がある。また、観察に最適な細胞の可視化方法を行えない場合がある。
【0039】
このように、スクリーニングの細胞画像処理過程での第1の問題点は、細胞画像が細胞以外のもの、あるいは検出のターゲットとなる細胞以外の種類の細胞を含むことである。
さらに、細胞同士が重なっているもしくは、複数の細胞が密に接しているため細胞間を隔てる境界を正しく認識することができないということが第2の問題である。
【0040】
このように、スクリーニングにおける細胞画像解析においては、画像中に様々な境界要素が複雑な形状に存在し、これらから単一の細胞領域を決定する境界要素を抽出すること自体が困難である。
【0041】
図4は、細胞の境界(細胞輪郭)の抽出が困難な場合の具体的な例である。図4(a)に示すように、複数の細胞が重なっている場合には、輪郭自体が明確なパターンを持っていない、あるいは複数の線要素が重なりあっている場合、境界が途切れ途切れになっていて、一本の線として抽出が困難になる。すなわち、図4(b)が正しい境界であった場合でも、図4(c)や(d)に示すように誤って細胞の境界を認識してしまう恐れがある。
【0042】
従って、本発明の実施態様においては、細胞の輪郭抽出を前提とせず、細胞を認識するようにしている。すなわち、本発明の実施態様に係る解析方法は、画像から注目すべき点をあらかじめ抽出すること、を特徴としている。
【0043】
まず、始めに特徴的な点の抽出のための処理を行う。これらを「抽出点」と呼ぶ。抽出点は、画像上に分布している点であり、抽出点は局所的に特徴的な点のことである。なお、局所的に特徴的な点とは、隣の点あるいは一定距離以内の周囲の点と比較して、輝度が異なるとか、輝度勾配が極大をとるなどの、局所的な領域内である条件の下で最大や最小の値をとる点のことである。
【0044】
抽出点の具体的な検出方法について説明する。
まず、画像中における特徴的な点を抽出する。特徴的な点は、輝度の極小極大値、境界から一定以上の距離をもつもの、色(色相や彩度)が特徴的なものなどである。
細胞の中心などの形態的に注目すべき点は、上記のような特徴を持っている場合が多い。
また抽出点の選択で分かるように、この処理には、輝度勾配の解析や境界抽出などの典型的な画像処理技術を含んでいる。
【0045】
本発明の特徴について、簡単に説明する。本発明に係る技術は、人間の認識方法をモデル化したものである。人間の画像認識方法はいくつもの方法でモデル化可能であると考えられる。細胞の輪郭を抽出する既存によくみられる方法も、輪郭は画像中で「眼につきやすい」ことを利用していると考えることができる。
【0046】
人間の複雑な画像認識を次のようにモデル化する。つまり、画像中で目立ついくつかの点を発見し、これらの周囲を精査する。このような人間の認識方法をモデル化することで、次のような長所が考えられる。
コンピュータソフトは、サンプルによりまた実験条件の変更により、設定を変更することや、間違いを補正することが求められるが、ソフトを使用するユーザーにとってこれら操作が容易になることが予想できる。
【0047】
また、特徴的な点をあらかじめ抽出することで、処理が高速になることも期待できる。
細胞のサンプルは、規格化、つまり画一化されていないものであることを想定としているので、画像中まったく点がない、あるいは、細胞が部分領域に偏っている場合もある。
本発明により、特徴的な点を機械的に抽出することによって、これら必要のない領域は全く検査しないことになるので、処理の高速化、また処理の際のデータ量を減らすことができる。
【0048】
ソフトでの処理には、あらかじめ設定されたパラメタを設定する必要がある。例えば、画像上の輝度に対して、ある値を閾値として設定し、この値を境に各点を0又は1に振り分け、二値化を行うなどである。
【0049】
規格化、画一化されていないサンプルの場合、また、大量に画像の処理を行う系では、これらの閾値では対応できない場合が増えると考えられる。例えば、光源が暗くなったりするなどの撮像条件の違いにより、同じ画像でも複数回撮影した場合、各点の輝度自体が変化する場合などもある。
従って、なるべく設定パラメタは増やさず、また、パラメタの設定は、全ての画像に対して一定ではなく、画像中の他の点と比較するなどの、相対的な設定方法を取ることが望ましい。
本発明の実施態様では、局所的に比較して点を抽出しているので、この条件を満たしている。
【0050】
抽出点から細胞点は次のように検出される。抽出点は取捨選択されて、細胞中心に対応する抽出点だけが最終的に残る。なお、細胞画像を解析する場合、抽出点は、細胞中心以外の細胞上の点や、細胞以外の細胞の死骸などの誤った点を中心として検出している場合もある。
【0051】
次に、同一細胞内の点、近傍領域の点をまとめて集約する。この過程では、一つの細胞、一つの領域に対しては、一つの点を対応させることを目的とする。具体的には、抽出した点の相互位置関係から、同一細胞内の点に分類する。
【0052】
抽出された特徴点は、細胞中心の候補となる点だけでなく、細胞の境界点なども抽出される場合が多い。細胞の中心は、輝度の極小や極大で検出される場合が多く、また、細胞の輪郭や細胞の境界などは、輝度勾配の極大点としても検出される。この場合を例に説明する。
【0053】
図6を参照して特徴的な点の抽出を説明する。この抽出方法は、細胞上の特定の点を抽出することを目的とする。ここで特定の点とは、細胞の中心であるとか細胞の特定の器官の位置に対応した点のことである。
【0054】
細胞の画像は様々であるが、例えば、細胞に特異な蛍光色素を導入することにより、特定のたんぱく質を可視化することができるが、この場合、細胞体の画像の各点の輝度は、その点の光軸方向のたんぱく質の濃度に比例する。つまり、細胞が球状である場合、細胞の中心がもっとも明るくなる。
【0055】
また蛍光色素により検出されるたんぱく質が細胞内の特定の器官に存在しない場合、その器官がある位置では、輝度が減少する。
【0056】
以上のような細胞画像の特性から、輝度の極大値あるいは極小値などの画像上の特異的(特徴的)な点を取得することで、細胞内の特定の位置を決定することが可能となる。図5や図6に示すような点が取得されるが、例えば、図5(a)や図6(a)に示すような細胞における点は、細胞の境界では図6(b)に示すように点が並んでいるようになり、細胞の中心では図6(c)に示すように点のかたまりとして抽出しやすい(図5(b))。このように、細胞の中心に対応する特徴点は密集して検出され、境界に対応する点は線状に抽出される。これらの相互位置関係を分析し、例えば密集した点のみを細胞中心点として選択する。すなわち、点の相互関係により、抽出点を「細胞中心」あるいは「細胞輪郭」のいずれかに分類する。
【0057】
そして、上記の密集した点を一つのグループとみなし(図7(a)(b))、そのグループ内の代表的な点を選択(図7(c))することで、細胞中心に対応する点を見つける。なお、代表的な点(代表点)は、グループ化した複数の点の重心を求めることによって決定しても良い。また、密集した点をグループ化する際に、異なる特徴を有する点を、あらかじめ除外しておくことが好ましい。
具体的な代表点の抽出方法として、例えばクラスタ分析の手法を使う場合もある。クラスタ分析は、例えば二次元上に点が分布している場合、2点間の距離がもっとも短いものをグループ化し、この2点間の中点を新たな点とし2点を候補の点から除くという処理を繰り返し、代表的な点を抽出するという手法である。
【0058】
図8を使ってクラスタ化の方法について説明する。画像上にaからeまでの点が分布しているとする。これらの各点の距離aからb、bからcまでの距離など、各点間の距離を取得する。
これらの距離のうちもっとも距離の短い点の組を選択する。図8(a)において、bとdがもっとも距離が近いので、bとdの中点を新たにb’として画像上に点を新たに付け加え、bとdの点を画像上から消去する(図8(b))。
そして、a、b’、c、eの4つの画像上の点に対して同様の操作を繰り返す(図8(c))。
上記の処理において、例えば、最近点が一定以上を超えた場合処理を中止するという設定にすれば、簡単かつ高速に代表点抽出を行うことができる。
【0059】
上記のように、クラスタ化の流れは以下のようになっている。まず、細胞内に分布している(細胞境界上の点を除いた)点(すなわち、密集した点)を選択する。図5(b)又は図6(c)に示すように、抽出点は各細胞内で密集した点として抽出される。これらをクラスタ化によって近傍の点によりグループを形成させる。さらに、このグループ内で代表的な点を選択する。以上により、抽出された画像上の特徴的な点から、細胞に対応する点を決定することが可能になる。
【0060】
具体的には、次のような処理を行う。
(1)画像中で特徴的な点を抽出する。(2)これらの点を「細胞輪郭」、「細胞内」の2つに分類し、「細胞内」だけを選択する。(3)これらの各点に対して、距離の近い点をまとめて、一つの細胞に対して、一つの点を選ぶように選択する。
【0061】
上記の(3)の流れは、さらに具体的に書くと次のようになる。
【0062】
(3−1)あらかじめ単一細胞の大よその大きさを設定しておく。(3−2)画像上でもっとも近い点の組を検出する。(3−3)この点の組の距離が設定した値より小さい場合、これらの点の組を一まとめにする。例えば中点を代表点として、これらの組の点を消すなどの方法である。(3−4)(3−3)の処理を繰り返し、全ての点の距離が設定した値より大きくなった時点で処理を終わらせる。
【0063】
図9を参照して、上述したクラスタ化の工程(3)をさらに説明する。この工程は、上記の一般的なクラスタ方法(1)〜(3)のうち、(2)の工程において条件を設定し、最短距離の点の組み合わせに対して中点を取るなどの処理を行わないことを特徴としている。この場合において、図9(a)に示すように、中心と境界の特徴点はそれぞれ異なる特徴を有している。
【0064】
まず、処理の前あらかじめ適当な閾値dthを設定しておく。この点は、細胞のおおよその大きさであることが好ましい。クラスタ化を行う際に2点間の距離がこの値を超える場合、一般的なクラスタ方法の(2)の処理は行わないものとする。これにより図中の点は、2点に収束し、さらにこれ以上の処理は行われないので、特徴点は2点として検出される(図9(b))。
【0065】
また、2点間の距離がdth以下の場合において、別な条件について説明する。具体的には、2点間の距離がdth以下であるという条件に加えて、例えば2点を直径とする円を取得し、この円のなかに、細胞の境界が含まれないという条件を課すものとする。
この場合において、図9(c)の場合p1、p2を直径とする円のなかには、いくつかの境界に対応した点が存在するため、これらの2点は別な細胞に含まれる点として認識される。以上の方法により細胞の中心に対応する点の候補を画像から抽出することができる。なお、この場合において、前述したように、細胞中心と、境界とは、特徴が異なる場合があるので、容易に判別ができる。
【0066】
次にこれらの点を囲む領域を抽出する。中心点が未知な場合の通常の方法と比較した場合、境界領域を正しく認識することは比較的容易になる。
【0067】
上記のようにして求めた代表点を使って、個々の細胞領域を決定することは、境界となるべき線のみの情報のみから細胞の領域を決定する既存の方法よりも、容易にかつ高い精度で処理を行うことができる。
【0068】
図4に示したように、細胞が複数個つながっている場合には、単純な境界検出方法では、周りを細胞に囲まれた境界は抽出されないなどの難点がある。本実施態様によれば、これら境界が検出されていない細胞についても大よその形を検出することが可能である。
【0069】
図10を参照して、以上の解析の流れを説明する。
(1)図5、図6などの適当な方法で、画像上の特徴的な点の抽出を行い(ステップC1)、
(2)図7のような方法により、各点を解析し、これにより、細胞体内部点に対応した点を選択するなどの処理を行う。
(3)さらに、図8で説明したようなクラスタ化を行うが、このクラスタ化に際して、
(4)図9で説明したような条件付けを行う。
(5)以上の処理で決定された細胞を代表する点を使って、図10で説明したような方法を使って、各細胞の境界を求める。
【0070】
上記のように、本発明の実施態様によれば、細胞の検出や認識を精度良く行うことができる。
【0071】
本発明の実施態様によれば、細胞画像を解析する際に、複数の特徴的な点を抽出して、これらをグループ化して、細胞中心に対応する点を決定しているので、細胞が複雑に分布している画像中から、細胞の検出・認識を精度良く行うことができる。更に、複数の特徴的な点から類似した点を除くことで、更に細胞の検出・認識を精度を上げることができる。ここで、特徴的な点を検出する際に、輝度の極小極大値、境界から一定以上の距離をもつもの、色が特徴的なものなどを特徴的な点として抽出することにより、画像上の特徴的な点を見落としなく検出することができ、細胞認識の精度があがる。
【0072】
また、取得された点の相互の位置関係から、同一細胞内に含まれる点の組に分類することにより、細胞の中心、各細胞を代表させる点としてもっとも適切な点を選択することができ、細胞検出の精度が向上する。ここで分類された「点の組」は同一細胞内にある点を表しており、この組の中から代表的な点を決定することで、細胞中心に対応する点を見つけることができる。
【0073】
加えて、上記のようにして取得された点に対し、あらかじめ設定された距離以内の周辺の画像を解析することによって、これら点を取り囲む輪郭、細胞境界を検出し、個々の細胞領域を特定することにより、各細胞の輪郭をより正確に把握し決定することができるようになる。
【0074】
上記のように、本実施態様によれば、細胞位置検出などの処理において、画像中特異的な点をあらかじめ検出することで、処理の速度をあげることができる。また、複数の細胞境界が重なっているような場合には、複雑な領域内の細胞の数や位置を特定することは困難であるが、本実施態様により、これら画像領域に対しても有効な解析結果を与えることができる。
【0075】
本発明は、上記各実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。
上記の実施態様では、特に触れなかったが、特徴的な点を抽出するために、画像をいくつかの局所領域に分割することが好ましい。なお、この場合に、分割の大きさは、細胞の大きさよりも多少大きくすることが好ましい。これにより、領域中の点に比べ何らかの特徴を持つ点を抽出することができ、点単独の(周りの点を考慮にいれない)特徴のみならず近傍の点の情報を加味した解析を行うことができ、細胞認識の精度を上げることができる。
さらに、上記各実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0076】
また、例えば各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図。
【図2】細胞解析処理の流れを示すフローチャート。
【図3】スクリーニングの手順を説明するためのフローチャート。
【図4】細胞の境界(細胞輪郭)の抽出が困難な場合の具体的な例を示す図。
【図5】画像上の特異的(特徴的)な点を示す図。
【図6】画像上の特異的(特徴的)な点を示す図。
【図7】特徴点から代表点を決定する流れを示す図。
【図8】クラスタ化の方法について説明するための図。
【図9】クラスタ化の他の方法について説明するための図。
【図10】本発明の実施態様に係る解析の流れを示すフローチャート。
【図11】代表的な輪郭解析方法であるWatershedについて説明するための図。
【符号の説明】
【0078】
10…コンピュータ
20…光源
22…コリメートレンズ
25…ダイクロイックミラー
30…XYスキャナ
35…対物レンズ
40…試料ステージ
41…マイクロプレート
42…試料
45…試料ステージコントローラ
50…ミラー
51…レンズ
52…ピンホール
55…光検出器
80…画像処理部
81…特徴点抽出部
82…グループ化部
83…細胞中心決定部
84…画像分割部
85…細胞領域解析部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理に関し、特に細胞などの画像において、細胞の中心を検出し、細胞個々の領域を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個々の細胞位置を特定し、各細胞の形状を検出決定する細胞画像処理は、通常細胞の境界を使って行われる。この場合において、細胞の境界は、画像中各点の輝度値をニ値化するなどの方法(例えば、特許文献1参照)、あるいは周波数の高い部分を抽出すること(例えば、特許文献2参照)により検出される。
【0003】
複数の細胞を含む複雑な細胞領域を解析し領域内に含まれる細胞を検出する方法は、Watershedや、その他の方法に見られるように、上記方法で検出された細胞境界を使って行われている。
図11を使って代表的な輪郭解析方法であるWatershedについて簡単に説明する。細胞の輪郭となる画像中の境界は、2値化などの適当な方法により検出されている。この画像中で、いくつかの細胞は重なって、密接して存在している。この場合、2つの細胞の境界も重なっているので複数の細胞を正しく分離しなくてはならない。Watershed法によれば、図11に示すように複数の細胞が重なっている輪郭上で、くびれている部分を個々の細胞の境界として認識し、単一の細胞ごとの検出が可能になる。しかしこの方法では、多くの細胞が密接したものに対しては正しく細胞を分離できないという難点がある。
【特許文献1】特開平6−96192号公報
【特許文献2】特開2001−307066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複雑な形態の細胞の総数を数え上げる観察作業は研究者の目視観察に依存している。そのため、観察結果が研究者間でばらついたり、顕微鏡画像を長時間観察することによる疲労により観察結果が変動したりするという問題があった。なお、複雑な形態的な特徴を有する複数の細胞を個別に識別しそれらの特徴量を自動的に抽出する手段は実現されていない、あるいは、充分な精度を実現しえないというのが現状である。
【0005】
特に、細胞を使った化合物スクリーニングにおいては、細胞の個別識別の結果が化合物の効果と直接の関係を持つと考えられ、解析結果によって結果の解釈が大きく変動することになるので、解析の精度として高いものが要求されるが、細胞同士が密着しているあるいは、細胞試料中にゴミが混ざる、などの特徴により精度が下がるという問題があった。
【0006】
さらに、これら細胞試料の特徴により、細胞の輪郭を正確に把握することが困難である場合が多いが、一方で細胞の画像解析には、輪郭を使って細胞の認識を行うものが多い。また、この問題を克服するため細胞核を染色し、細胞核画像による細胞認識を行う場合もあるが、実験条件によっては核の染色が好ましくない場合もある。
【0007】
上記のように、細胞の画像解析においては、各画像中の個々の細胞を正確に認識し、細胞の特徴量を正しく測定すること、解析の精度を上げることが主な課題となっており、特に、試料中に細胞以外の物質が散在し複数の細胞が重なりあい密に接している細胞試料の画像解析において正確に解析を行うことは困難である。
【0008】
本発明は、細胞の検出や認識を精度良く行うことができる細胞画像解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の局面に係る発明は、細胞などの画像を解析する細胞画像解析方法において、複数の特徴的な点を抽出し、前記複数の点をグループ化し、前記グループ化された複数の点のうち類似した点に基づいて、細胞中心に対応する点を決定することを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、細胞の検出や認識を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明を実施するための基本的な構成を図1を用いて説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図であり、本実施の形態に係る細胞画像解析装置の基本構成として走査型共焦点光学顕微鏡を例示している。
【0012】
光源20として、例えば波長488nmのアルゴンレーザを用いる。光源20から出射されたレーザ光はコリメートレンズ22によりビーム直径が拡大されて、平行光束に変換されてダイクロイックミラー25に導かれる。ダイクロイックミラー25に導かれたレーザ光は、ダイクロイックミラー25で反射されて、XYスキャナ30に入射し、XYスキャナ30でXY軸方向に走査される。XYスキャナ30を通ったレーザ光は、対物レンズ35に入射し、測定対象である溶液状の試料42に集光される。なお、ダイクロイックミラー25は光源20からのレーザ光の波長の光を反射し、光源20からのレーザ光の波長より長い波長の光を透過させる。また、XYスキャナ30としてガルバノミラーが通常用いられる。
【0013】
試料42は、蛍光物質で標識されて、詳細は後述する顕微鏡の試料ステージ40上に載置されたマイクロプレート41上に置かれている。蛍光物質として、例えば、ローダミン・グリーン(RhG)が用いられる。試料42から発せられる蛍光は、対物レンズ35を再び通過し、XYスキャナ30を通ってダイクロイックミラー25を通過し、ミラー50で反射されてレンズ51に到達する。レンズ51で蛍光は集光されて、ピンホール52の開口部でフォーカスされた後に、光検出器55で受光される。光検出器55で受光された蛍光信号は光電流信号に変換され、画像処理部80に入力され、詳細は後述する信号処理、画像解析等の演算が行われて。モニタ上に試料の蛍光画像が抽出される。なお、光検出器55として通常CCD(Charge Coupled Device)カメラが用いられるが、CMOS(Complememtary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を用いても良い。
【0014】
試料42を収容する容器として、例えば底面が透明に施された96穴のマイクロプレート41が用いられる。対物レンズ35の先端とマイクロプレート41の間は、液浸水で満たされている。マイクロプレート41は、試料ステージ40の上に保持される。試料ステージ40には、試料ステージ40が直交する2方向に移動可能なように、2個のステッピングモータ(図示しない)が取り付けられており、それぞれのステッピングモータは試料ステージコントローラ45に接続されている。試料ステージコントローラ45はコンピュータ10に接続されており、試料ステージ40を保持し、コンピュータ10からの指令により、ステッピングモータを駆動することによって試料ステージ40をX方向とY方向に移動させて、試料42面を適切な位置に配置する、
また、対物レンズ35をZ方向に移動させることにより、レーザ光のフォーカス位置をZ軸方向に沿って上下に移動させることができる。
【0015】
なお、蛍光物質については、ローダミン・グリーンに限ることなく、光源の波長を対応させることができれば、例えば、TMR(Tetrame−hylrhodamine)、サイファイヴ(Cy5)、FITC(Fluorescein−isothiocyanate)、TOTO1、Acridine−Orange、Texas−Redなどを用いても良い。
【0016】
光検出器55からの出力は画像処理部80に入力して、種々の画像処理が行われる。画像処理部80は、特徴点抽出部81と、グループ化部82と、除外部821と、細胞中心決定部83と、画像分割部84と、細胞領域解析部85とを備えている。まず、光検出器55からの出力(本明細書においては、特に断らない限り、「撮影画像」が出力されるものとする)に基づいて、特徴点抽出部81は、複数の特徴点を抽出する。「特徴点」は、輝度、明度、色相に基づいて抽出される。特徴点として、その周囲と比較して、例えば、輝度の場合は、極大、極小値を有する点、明度や色相についてはその周囲と異なる点等が抽出される。なお、細胞境界から一定以上の距離を有する点を特徴点としても良い。グループ化部82は、特徴点抽出部81で抽出された点のうち類似するものをグループ化する。除外部821は、グループ化部82で特徴点をグループ化する前に、類似していない特徴点を除外する。なお、この除外部821は、省略しても良い。細胞中心決定部83は、グループ化部82でグループ化された複数の特徴点に基づいて、詳細は後述するように、代表点を求めることにより細胞中心を決定する。画像分割部84は、詳細は後述するように、画像処理部80に入力した複数の画像を分割する。細胞領域解析部85は、細胞領域を解析する。
【0017】
なお、画像処理部80を構成するハードウェアとしては、例えば汎用コンピュータ或いはパーソナルコンピュータ等のようにコンピュータプログラムによって作動する汎用的な処理装置を用いることができる。また、画像処理部80は、コンピュータ10の一部であっても良い。このような場合には、上記のような処理装置に、画像処理部80として機能させるためのコンピュータプログラム、すなわち特徴点抽出部81、グループ化部82(除外部821を含む)、細胞中心決定部83、個々の細胞の画像分割部84、細胞の細胞領域解析部85のそれぞれの機能を実現させるためのプログラムをインストールして細胞画像の処理装置を構成している。
【0018】
上記のように構成された本発明の一実施の形態に係る細胞画像解析装置の動作を説明する。細胞を撮像した画像を解析する目的は、画像上の個々の細胞位置を特定し、各細胞の特徴量を抽出することである。
まず、図2を参照して、細胞解析処理の流れについて、その概要を説明する。
(1)対象とする細胞を培養する(ステップA1)。
(2)次に染色などの適当な前処理を行い可視化の準備を行う(ステップA2)。ステップA2において、前処理とは、適当な方法で培養された細胞に、撮像のための処理を施すことであって、蛍光物質を投与することなどの処理を行うにより細胞の可視化が行われる。
(3)これら細胞試料42を顕微鏡などの光学系に載置して、光検出器55で撮像する(ステップA3)。
(4)光検出器55で撮像した細胞画像をデジタル化してコンピュータ10などの図示しない記憶装置に保存する(ステップA4)。保存された細胞画像は、カラーまたは単色の像である。また、画像は、1000×1000などの上下左右に幅をもったデータとして保存される。画像の上の各点には、位置を表す座標が振り分けられ、各点は、各色の輝度を持つ。なお、座標(x、y)の輝度は230などのように表現されデジタルデータとして保存される。
(5)これら画像をコンピュータ上で処理解析する(ステップA5)。
【0019】
次に、画像解析の概要について、説明する。
画像解析は、これらのデジタルデータをパソコン上のソフト・プログラムなどで適当な処理を行い解析する方法である。特に、細胞を使った画像解析においては、細胞を認識することが目的となる。
細胞の認識は、通常、実験者によって直接行われる。実験の種類によって異なるが、一般的には、顕微鏡画像(あるいは顕微鏡の視野)を観察しその画像中に「細胞が存在するかどうか。」「細胞が存在する場合、細胞の位置はどこにあるか」「画像中に含まれる細胞の数はいくつか」「画像中の細胞の種類はいくつあるか」「特定の種類の細胞はいくつあるか」「各細胞の大きさはどの程度あるか」などを認識し、記録し、実験のためのデータを提供することを目的に細胞認識は行われる。
すなわち、細胞の認識は、(1)画像中、個々の細胞の位置を特定し、(2)細胞の特徴を取得し、(3)取得した特徴により細胞を分類することを目的として行われる。ここにおいて、本発明の一実施態様に係る細胞画像解析は上記の細胞認識をコンピュータ上で自動的に行うことを目的とする。なお、上記方法で取得した個々の細胞の特徴量は、平均化などの統計的な処理を施される。
【0020】
細胞を使った実験は様々な目的の下に行われるが、ここでは特に細胞をベースにした化合物スクリーニングを例にとって、実験の目的及び流れを簡単に説明する。
細胞ベースの化合物スクリーニングは、効果のある薬剤を見つけることを目的とするものであって、適当な化合物などをターゲットにする細胞に投与し、これら化合物が細胞に及ぼす影響を定量化することにより、行われる。
さらに、これらの定量化されたデータは、複数の化合物の場合と比較され、これらいくつかの化合物の中から、細胞に及ぼす影響の大きいもの、効果のあるものを発見することを目的として行われる。
【0021】
図3を参照して、スクリーニングの手順を説明する。
サンプルとなる細胞を培養し(ステップB1)、条件に応じて、いくつかのグループに分類する(ステップB2)。例えば化合物の細胞に及ぼす効果を測定する実験系においては、化合物を加えたものと、そうではない細胞群に分けられる(ステップB2からステップB5)。
【0022】
次に、顕微鏡などの適当な光学系を用いて、これらの分類されたグループごとに撮像する(ステップB6)。この場合、通常各グループについて複数枚の撮像を行う。なお、各画像には適当な数(数十程度)の細胞が含まれている。
【0023】
次に上記方法で撮像し保存された細胞画像を解析する。細胞画像の解析により画像中に存在している細胞の位置、また各細胞の発光量や大きさ突起の有無など特徴量を抽出する。
【0024】
細胞の特徴量は、このグループごと、乃至画像ごとに平均化されあるいは分布を解析され、グループ間の差異を検出し、化合物を導入された・されないなどのグループの条件と比較し検討される(ステップB7)。
【0025】
本発明では、上記の各手順において、撮像後の画像解析や細胞の観察を自動で行うようにしている。
【0026】
複数の化合物を、複数のサンプルで検証することから、スクリーニングにおいては、統計的な処理が必要とされる。
【0027】
よって、細胞の画像解析においては、各画像中の個々の細胞を正確に認識して、細胞の特徴量を正しく測定すること、解析の精度を上げること等が主な課題となる。
【0028】
これに対して、別な目的の実験、例えば特異的な細胞を見つける実験では、全体の精度よりも、特定の細胞を検出できるかどうか、ということが画像解析の主な目的となる。
【0029】
本発明では、細胞の検出や細胞数を数える(認識)処理を精度良く行えるようにし、更には、これらに付随して各細胞の特徴量を解析に充分な程度の精度で実現している。
【0030】
個々の細胞を正しく認識するということは、細胞の中心に代表されるような細胞の位置を特定すること、あるいは各細胞の境界を正しく検出し個々の細胞領域を特定することである。
【0031】
細胞の特徴量とは、細胞の大きさであるとか、あるいは特徴的な形態を持っているか、であるとか、また画像中の個々の細胞の明るさ(輝度)などの、個々の細胞を特徴づけ、結果の解釈に必要とされる量のことである。
【0032】
通常、細胞の相対的な大きさや、突起を持つなどの形態的な特徴を抽出するためには、細胞の境界を正しく検出することが求められる。また、このために、細胞の検出という言葉は主に細胞の境界を求めることと同意義に用いられている場合が多い。
【0033】
実際、既存の細胞画像解析方法は、細胞の境界抽出後の認識に重きを置いているものが多い(とくに輪郭系のもの)。これらの方法は、適当な画像処理の関数を用いることで、細胞の輪郭を抽出し、これらの輪郭に対して解析を行い、細胞の突起位置であるとか、細胞のサイズ、細胞の形態特徴量を抽出するという処理を行っている。
【0034】
細胞解析の対象となる培養細胞の対象は、実験の目的により異なる。例えば、単一の細胞が時間変化によりどのように変化するか、神経細胞の伝達を可視化して解析するなどの実験もある。また病理標本の細胞組織を解析し、ガンなどの病理的な診断を支援するソフトなども開発されている。
上記の例において、単一の細胞の観察を目的とする場合には、適当な処理により細胞は一個一個分離されている。また病理組織の判定の場合は、細胞組織は比較的きれいなパターンを持っている。これらの例では、細胞の境界は抽出しやすく、細胞の輪郭検出自体が問題になることは比較的少ない。また、細胞の数だけが問題になる場合、通常は細胞核を染色してしまうという方法を採る。
【0035】
細胞核同士は、細胞体全体と比較して、重なりあうことが少なく、密度が低く、また、ゴミや細胞の死骸などは核が染色されないため、比較的誤りが少ない。ただしこれらの核染色後に解析を行う方法は、実験全体の余計なステップであることや、様々な実験の制約から行うことができない、あるいは行わないことが望ましい場合がある。
【0036】
これに対して、スクリーニング実験の場合には、細胞の輪郭を抽出すること自体が問題になる場合が多い。スクリーニングの場合、多くの試験を行うほうが実験の効率がよく、実験に余計な処理のステップを加えないようにしている。従って、培養された状態のまま、すなわち、ゴミを含んだり、複数の細胞同士が密着したりしたような状態で、細胞を撮像することを想定した解析を行う必要がある。
【0037】
さらに、化合物スクリーニングにおいては、化合物を生体内と同じ条件の細胞に導入するという目的のため、培養細胞に何らかの物質を投与することは好ましくない。また、培養細胞に酵素を加え密着した細胞を単離するなどの処理は、スクリーニングの結果に影響を与える可能性があるため、なるべく行わないように実験は計画されている場合が多い。更に、細胞の可視化は、適当な蛍光物質を導入したり、染色することで行われるが、これらの処理も、スクリーニング結果への影響を考えて、できるだけ行わないことがある。
【0038】
つまり、スクリーニングにおいては、画像解析を容易にするための処理はなるべく行わず、そのため、細胞が重なったままであったり、細胞の死骸や、培養細胞に入っている異なる種類の細胞を除去せずに実験を行わなくてはならないなどの制限がある。また、観察に最適な細胞の可視化方法を行えない場合がある。
【0039】
このように、スクリーニングの細胞画像処理過程での第1の問題点は、細胞画像が細胞以外のもの、あるいは検出のターゲットとなる細胞以外の種類の細胞を含むことである。
さらに、細胞同士が重なっているもしくは、複数の細胞が密に接しているため細胞間を隔てる境界を正しく認識することができないということが第2の問題である。
【0040】
このように、スクリーニングにおける細胞画像解析においては、画像中に様々な境界要素が複雑な形状に存在し、これらから単一の細胞領域を決定する境界要素を抽出すること自体が困難である。
【0041】
図4は、細胞の境界(細胞輪郭)の抽出が困難な場合の具体的な例である。図4(a)に示すように、複数の細胞が重なっている場合には、輪郭自体が明確なパターンを持っていない、あるいは複数の線要素が重なりあっている場合、境界が途切れ途切れになっていて、一本の線として抽出が困難になる。すなわち、図4(b)が正しい境界であった場合でも、図4(c)や(d)に示すように誤って細胞の境界を認識してしまう恐れがある。
【0042】
従って、本発明の実施態様においては、細胞の輪郭抽出を前提とせず、細胞を認識するようにしている。すなわち、本発明の実施態様に係る解析方法は、画像から注目すべき点をあらかじめ抽出すること、を特徴としている。
【0043】
まず、始めに特徴的な点の抽出のための処理を行う。これらを「抽出点」と呼ぶ。抽出点は、画像上に分布している点であり、抽出点は局所的に特徴的な点のことである。なお、局所的に特徴的な点とは、隣の点あるいは一定距離以内の周囲の点と比較して、輝度が異なるとか、輝度勾配が極大をとるなどの、局所的な領域内である条件の下で最大や最小の値をとる点のことである。
【0044】
抽出点の具体的な検出方法について説明する。
まず、画像中における特徴的な点を抽出する。特徴的な点は、輝度の極小極大値、境界から一定以上の距離をもつもの、色(色相や彩度)が特徴的なものなどである。
細胞の中心などの形態的に注目すべき点は、上記のような特徴を持っている場合が多い。
また抽出点の選択で分かるように、この処理には、輝度勾配の解析や境界抽出などの典型的な画像処理技術を含んでいる。
【0045】
本発明の特徴について、簡単に説明する。本発明に係る技術は、人間の認識方法をモデル化したものである。人間の画像認識方法はいくつもの方法でモデル化可能であると考えられる。細胞の輪郭を抽出する既存によくみられる方法も、輪郭は画像中で「眼につきやすい」ことを利用していると考えることができる。
【0046】
人間の複雑な画像認識を次のようにモデル化する。つまり、画像中で目立ついくつかの点を発見し、これらの周囲を精査する。このような人間の認識方法をモデル化することで、次のような長所が考えられる。
コンピュータソフトは、サンプルによりまた実験条件の変更により、設定を変更することや、間違いを補正することが求められるが、ソフトを使用するユーザーにとってこれら操作が容易になることが予想できる。
【0047】
また、特徴的な点をあらかじめ抽出することで、処理が高速になることも期待できる。
細胞のサンプルは、規格化、つまり画一化されていないものであることを想定としているので、画像中まったく点がない、あるいは、細胞が部分領域に偏っている場合もある。
本発明により、特徴的な点を機械的に抽出することによって、これら必要のない領域は全く検査しないことになるので、処理の高速化、また処理の際のデータ量を減らすことができる。
【0048】
ソフトでの処理には、あらかじめ設定されたパラメタを設定する必要がある。例えば、画像上の輝度に対して、ある値を閾値として設定し、この値を境に各点を0又は1に振り分け、二値化を行うなどである。
【0049】
規格化、画一化されていないサンプルの場合、また、大量に画像の処理を行う系では、これらの閾値では対応できない場合が増えると考えられる。例えば、光源が暗くなったりするなどの撮像条件の違いにより、同じ画像でも複数回撮影した場合、各点の輝度自体が変化する場合などもある。
従って、なるべく設定パラメタは増やさず、また、パラメタの設定は、全ての画像に対して一定ではなく、画像中の他の点と比較するなどの、相対的な設定方法を取ることが望ましい。
本発明の実施態様では、局所的に比較して点を抽出しているので、この条件を満たしている。
【0050】
抽出点から細胞点は次のように検出される。抽出点は取捨選択されて、細胞中心に対応する抽出点だけが最終的に残る。なお、細胞画像を解析する場合、抽出点は、細胞中心以外の細胞上の点や、細胞以外の細胞の死骸などの誤った点を中心として検出している場合もある。
【0051】
次に、同一細胞内の点、近傍領域の点をまとめて集約する。この過程では、一つの細胞、一つの領域に対しては、一つの点を対応させることを目的とする。具体的には、抽出した点の相互位置関係から、同一細胞内の点に分類する。
【0052】
抽出された特徴点は、細胞中心の候補となる点だけでなく、細胞の境界点なども抽出される場合が多い。細胞の中心は、輝度の極小や極大で検出される場合が多く、また、細胞の輪郭や細胞の境界などは、輝度勾配の極大点としても検出される。この場合を例に説明する。
【0053】
図6を参照して特徴的な点の抽出を説明する。この抽出方法は、細胞上の特定の点を抽出することを目的とする。ここで特定の点とは、細胞の中心であるとか細胞の特定の器官の位置に対応した点のことである。
【0054】
細胞の画像は様々であるが、例えば、細胞に特異な蛍光色素を導入することにより、特定のたんぱく質を可視化することができるが、この場合、細胞体の画像の各点の輝度は、その点の光軸方向のたんぱく質の濃度に比例する。つまり、細胞が球状である場合、細胞の中心がもっとも明るくなる。
【0055】
また蛍光色素により検出されるたんぱく質が細胞内の特定の器官に存在しない場合、その器官がある位置では、輝度が減少する。
【0056】
以上のような細胞画像の特性から、輝度の極大値あるいは極小値などの画像上の特異的(特徴的)な点を取得することで、細胞内の特定の位置を決定することが可能となる。図5や図6に示すような点が取得されるが、例えば、図5(a)や図6(a)に示すような細胞における点は、細胞の境界では図6(b)に示すように点が並んでいるようになり、細胞の中心では図6(c)に示すように点のかたまりとして抽出しやすい(図5(b))。このように、細胞の中心に対応する特徴点は密集して検出され、境界に対応する点は線状に抽出される。これらの相互位置関係を分析し、例えば密集した点のみを細胞中心点として選択する。すなわち、点の相互関係により、抽出点を「細胞中心」あるいは「細胞輪郭」のいずれかに分類する。
【0057】
そして、上記の密集した点を一つのグループとみなし(図7(a)(b))、そのグループ内の代表的な点を選択(図7(c))することで、細胞中心に対応する点を見つける。なお、代表的な点(代表点)は、グループ化した複数の点の重心を求めることによって決定しても良い。また、密集した点をグループ化する際に、異なる特徴を有する点を、あらかじめ除外しておくことが好ましい。
具体的な代表点の抽出方法として、例えばクラスタ分析の手法を使う場合もある。クラスタ分析は、例えば二次元上に点が分布している場合、2点間の距離がもっとも短いものをグループ化し、この2点間の中点を新たな点とし2点を候補の点から除くという処理を繰り返し、代表的な点を抽出するという手法である。
【0058】
図8を使ってクラスタ化の方法について説明する。画像上にaからeまでの点が分布しているとする。これらの各点の距離aからb、bからcまでの距離など、各点間の距離を取得する。
これらの距離のうちもっとも距離の短い点の組を選択する。図8(a)において、bとdがもっとも距離が近いので、bとdの中点を新たにb’として画像上に点を新たに付け加え、bとdの点を画像上から消去する(図8(b))。
そして、a、b’、c、eの4つの画像上の点に対して同様の操作を繰り返す(図8(c))。
上記の処理において、例えば、最近点が一定以上を超えた場合処理を中止するという設定にすれば、簡単かつ高速に代表点抽出を行うことができる。
【0059】
上記のように、クラスタ化の流れは以下のようになっている。まず、細胞内に分布している(細胞境界上の点を除いた)点(すなわち、密集した点)を選択する。図5(b)又は図6(c)に示すように、抽出点は各細胞内で密集した点として抽出される。これらをクラスタ化によって近傍の点によりグループを形成させる。さらに、このグループ内で代表的な点を選択する。以上により、抽出された画像上の特徴的な点から、細胞に対応する点を決定することが可能になる。
【0060】
具体的には、次のような処理を行う。
(1)画像中で特徴的な点を抽出する。(2)これらの点を「細胞輪郭」、「細胞内」の2つに分類し、「細胞内」だけを選択する。(3)これらの各点に対して、距離の近い点をまとめて、一つの細胞に対して、一つの点を選ぶように選択する。
【0061】
上記の(3)の流れは、さらに具体的に書くと次のようになる。
【0062】
(3−1)あらかじめ単一細胞の大よその大きさを設定しておく。(3−2)画像上でもっとも近い点の組を検出する。(3−3)この点の組の距離が設定した値より小さい場合、これらの点の組を一まとめにする。例えば中点を代表点として、これらの組の点を消すなどの方法である。(3−4)(3−3)の処理を繰り返し、全ての点の距離が設定した値より大きくなった時点で処理を終わらせる。
【0063】
図9を参照して、上述したクラスタ化の工程(3)をさらに説明する。この工程は、上記の一般的なクラスタ方法(1)〜(3)のうち、(2)の工程において条件を設定し、最短距離の点の組み合わせに対して中点を取るなどの処理を行わないことを特徴としている。この場合において、図9(a)に示すように、中心と境界の特徴点はそれぞれ異なる特徴を有している。
【0064】
まず、処理の前あらかじめ適当な閾値dthを設定しておく。この点は、細胞のおおよその大きさであることが好ましい。クラスタ化を行う際に2点間の距離がこの値を超える場合、一般的なクラスタ方法の(2)の処理は行わないものとする。これにより図中の点は、2点に収束し、さらにこれ以上の処理は行われないので、特徴点は2点として検出される(図9(b))。
【0065】
また、2点間の距離がdth以下の場合において、別な条件について説明する。具体的には、2点間の距離がdth以下であるという条件に加えて、例えば2点を直径とする円を取得し、この円のなかに、細胞の境界が含まれないという条件を課すものとする。
この場合において、図9(c)の場合p1、p2を直径とする円のなかには、いくつかの境界に対応した点が存在するため、これらの2点は別な細胞に含まれる点として認識される。以上の方法により細胞の中心に対応する点の候補を画像から抽出することができる。なお、この場合において、前述したように、細胞中心と、境界とは、特徴が異なる場合があるので、容易に判別ができる。
【0066】
次にこれらの点を囲む領域を抽出する。中心点が未知な場合の通常の方法と比較した場合、境界領域を正しく認識することは比較的容易になる。
【0067】
上記のようにして求めた代表点を使って、個々の細胞領域を決定することは、境界となるべき線のみの情報のみから細胞の領域を決定する既存の方法よりも、容易にかつ高い精度で処理を行うことができる。
【0068】
図4に示したように、細胞が複数個つながっている場合には、単純な境界検出方法では、周りを細胞に囲まれた境界は抽出されないなどの難点がある。本実施態様によれば、これら境界が検出されていない細胞についても大よその形を検出することが可能である。
【0069】
図10を参照して、以上の解析の流れを説明する。
(1)図5、図6などの適当な方法で、画像上の特徴的な点の抽出を行い(ステップC1)、
(2)図7のような方法により、各点を解析し、これにより、細胞体内部点に対応した点を選択するなどの処理を行う。
(3)さらに、図8で説明したようなクラスタ化を行うが、このクラスタ化に際して、
(4)図9で説明したような条件付けを行う。
(5)以上の処理で決定された細胞を代表する点を使って、図10で説明したような方法を使って、各細胞の境界を求める。
【0070】
上記のように、本発明の実施態様によれば、細胞の検出や認識を精度良く行うことができる。
【0071】
本発明の実施態様によれば、細胞画像を解析する際に、複数の特徴的な点を抽出して、これらをグループ化して、細胞中心に対応する点を決定しているので、細胞が複雑に分布している画像中から、細胞の検出・認識を精度良く行うことができる。更に、複数の特徴的な点から類似した点を除くことで、更に細胞の検出・認識を精度を上げることができる。ここで、特徴的な点を検出する際に、輝度の極小極大値、境界から一定以上の距離をもつもの、色が特徴的なものなどを特徴的な点として抽出することにより、画像上の特徴的な点を見落としなく検出することができ、細胞認識の精度があがる。
【0072】
また、取得された点の相互の位置関係から、同一細胞内に含まれる点の組に分類することにより、細胞の中心、各細胞を代表させる点としてもっとも適切な点を選択することができ、細胞検出の精度が向上する。ここで分類された「点の組」は同一細胞内にある点を表しており、この組の中から代表的な点を決定することで、細胞中心に対応する点を見つけることができる。
【0073】
加えて、上記のようにして取得された点に対し、あらかじめ設定された距離以内の周辺の画像を解析することによって、これら点を取り囲む輪郭、細胞境界を検出し、個々の細胞領域を特定することにより、各細胞の輪郭をより正確に把握し決定することができるようになる。
【0074】
上記のように、本実施態様によれば、細胞位置検出などの処理において、画像中特異的な点をあらかじめ検出することで、処理の速度をあげることができる。また、複数の細胞境界が重なっているような場合には、複雑な領域内の細胞の数や位置を特定することは困難であるが、本実施態様により、これら画像領域に対しても有効な解析結果を与えることができる。
【0075】
本発明は、上記各実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。
上記の実施態様では、特に触れなかったが、特徴的な点を抽出するために、画像をいくつかの局所領域に分割することが好ましい。なお、この場合に、分割の大きさは、細胞の大きさよりも多少大きくすることが好ましい。これにより、領域中の点に比べ何らかの特徴を持つ点を抽出することができ、点単独の(周りの点を考慮にいれない)特徴のみならず近傍の点の情報を加味した解析を行うことができ、細胞認識の精度を上げることができる。
さらに、上記各実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0076】
また、例えば各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図。
【図2】細胞解析処理の流れを示すフローチャート。
【図3】スクリーニングの手順を説明するためのフローチャート。
【図4】細胞の境界(細胞輪郭)の抽出が困難な場合の具体的な例を示す図。
【図5】画像上の特異的(特徴的)な点を示す図。
【図6】画像上の特異的(特徴的)な点を示す図。
【図7】特徴点から代表点を決定する流れを示す図。
【図8】クラスタ化の方法について説明するための図。
【図9】クラスタ化の他の方法について説明するための図。
【図10】本発明の実施態様に係る解析の流れを示すフローチャート。
【図11】代表的な輪郭解析方法であるWatershedについて説明するための図。
【符号の説明】
【0078】
10…コンピュータ
20…光源
22…コリメートレンズ
25…ダイクロイックミラー
30…XYスキャナ
35…対物レンズ
40…試料ステージ
41…マイクロプレート
42…試料
45…試料ステージコントローラ
50…ミラー
51…レンズ
52…ピンホール
55…光検出器
80…画像処理部
81…特徴点抽出部
82…グループ化部
83…細胞中心決定部
84…画像分割部
85…細胞領域解析部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞などの画像を解析する細胞画像解析方法において、
複数の特徴的な点を抽出し、
前記複数の点をグループ化し、
前記グループ化された複数の点のうち類似した点に基づいて、細胞中心に対応する点を決定することを具備することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞画像解析方法において、前記複数の点をグループ化する前に、前記複数の点から類似した点以外の点を除くことを更に具備することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項3】
請求項1に記載の細胞画像解析方法において、前記複数の点において、異なる特徴を有する点を他のグループ或いは他の組織に係る点として判断し、同一の特徴を有する点のみをグループ化することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項4】
請求項1に記載の細胞画像解析方法において、前記特徴的な点は、輝度が極小値又は極大値である点、境界から一定以上の距離をもつ点、特徴的な色を有する点であることを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項5】
請求項1に記載の細胞画像解析方法において、前記画像を複数の局所領域に分割した後に、特徴的な点を抽出することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の細胞画像解析方法において、抽出された複数の点の相互の位置関係から、同一細胞内に含まれる点の組を抽出し、抽出された前記点の組から代表的な点を求めることにより、細胞中心に対応する点を求めることを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項7】
請求項6に記載の細胞画像解析方法において、前記抽出された点の周辺を解析することによって、細胞領域を特定することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項8】
複数の特徴点を抽出し、
複数の特徴点を相互に比較し、
異なる特徴点を有する細胞を異なる特徴点として抽出することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項9】
請求項1に記載細胞画像解析方法において、細胞中心を、前記複数の点の代表点として求めることを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項10】
請求項6又は請求項9に記載の細胞画像解析方法において、前記代表点は、前記点の組に含まれる各点に対する重心として求められることを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項1】
細胞などの画像を解析する細胞画像解析方法において、
複数の特徴的な点を抽出し、
前記複数の点をグループ化し、
前記グループ化された複数の点のうち類似した点に基づいて、細胞中心に対応する点を決定することを具備することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞画像解析方法において、前記複数の点をグループ化する前に、前記複数の点から類似した点以外の点を除くことを更に具備することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項3】
請求項1に記載の細胞画像解析方法において、前記複数の点において、異なる特徴を有する点を他のグループ或いは他の組織に係る点として判断し、同一の特徴を有する点のみをグループ化することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項4】
請求項1に記載の細胞画像解析方法において、前記特徴的な点は、輝度が極小値又は極大値である点、境界から一定以上の距離をもつ点、特徴的な色を有する点であることを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項5】
請求項1に記載の細胞画像解析方法において、前記画像を複数の局所領域に分割した後に、特徴的な点を抽出することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の細胞画像解析方法において、抽出された複数の点の相互の位置関係から、同一細胞内に含まれる点の組を抽出し、抽出された前記点の組から代表的な点を求めることにより、細胞中心に対応する点を求めることを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項7】
請求項6に記載の細胞画像解析方法において、前記抽出された点の周辺を解析することによって、細胞領域を特定することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項8】
複数の特徴点を抽出し、
複数の特徴点を相互に比較し、
異なる特徴点を有する細胞を異なる特徴点として抽出することを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項9】
請求項1に記載細胞画像解析方法において、細胞中心を、前記複数の点の代表点として求めることを特徴とする細胞画像解析方法。
【請求項10】
請求項6又は請求項9に記載の細胞画像解析方法において、前記代表点は、前記点の組に含まれる各点に対する重心として求められることを特徴とする細胞画像解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−79196(P2006−79196A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259983(P2004−259983)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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