説明

細胞疾患の検出に有用な細胞スペクトルを再構成する方法

本発明の開示の実施形態は、剥離細胞における異常の存在を判断するための改良型方法を提供する。一実施形態では、本発明の開示は、細胞試料のスペクトルマップを作成し、スペクトルマップのバイナリマスクを生成し、各細胞から縁部アーチファクトを除去し、かつその細胞に対応する各ピクセルのスペクトルデータを相互追加して各細胞のスペクトルを再構成することにより、細胞試料の細胞スペクトルを再構成する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府委託研究又は開発
本発明は、NIH(補助金#CA090346)の国立癌研究所により委託されたものであり、従って、米国政府は、本出願のある一定の権利を有する。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、全体が本明細書に引用により組み込まれる2008年5月29日出願の米国特許仮出願出願番号第61/056955号に対する優先権を請求するものである。
【0003】
本発明は、一般的に細胞のスペクトル特性分析及び疾患の診断に関する。より具体的には、本発明の開示は、スペクトルマッピング又は画像化により収集されたデータセットから細胞のスペクトルを再構成する方法に関する。このような再構成されたスペクトルは、基板上に配置された細胞試料内の正常及び異常細胞の分布及び位置を判断し、従って、良性疾患、ウイルス感染、疾患前又は疾患状態を診断するために使用することができる。
【背景技術】
【0004】
多くの疾患は、現在、核及び細胞形態及び染色パターンの試験を伴う古典的な細胞病理学方法を使用して診断されている。典型的には、これは、試料内の10,000個までの細胞の試験及び異常である約10〜約50個の細胞の発見により行われる。この発見は、試料内の細胞の目視顕微鏡検査の主観的な解釈に基づいている。
【0005】
この診断方法の例は、Papanicolaou塗抹標本(Pap塗抹標本)である。Pap塗抹標本を使用して妊娠前細胞及び悪性細胞を検出することによる子宮頸部の疾患の始まりのモニタリングは、子宮頸癌による死亡率を大幅に低減させている。それにも関わらず、Pap塗抹標本を選別する処理は、労働集約的であり、ほぼ50年前にPapanicolaouにより初めて説明されて以来殆ど変わっていない。試験を行うために、患者の頸部の子宮頸管内剥離細胞及び子宮腟部剥離細胞が、最初にブラシ及びへら又は細胞診断ほうきを使用して擦過される。子宮頸部疾患は、多くの場合に、子宮頸部の遷移部、すなわち、子宮頸内膜(腺又は柱状上皮細胞により覆われる)と外頸部(重層扁平上皮細胞により覆われる)との間の境界から始まるので、この領域からの細胞が、剥離手順により採取される。擦過細胞は、次に、スライド上に塗沫されるか又は他の方法で堆積させ、スライドをヘマトキシリン/エオシン(H&E)又は「Pap染色剤」(H&E及びいくつかの他の対比染色剤から成る)で染色され、顕微鏡で検査される。顕微鏡検査は、面倒な処理であり、細胞検査技師は、試料内の多くの場合に少数の異常な細胞を検出するためにスライド内の全ての領域を目視で精細に調べる必要がある。この処理は、干し草の中で針を探すことに例えることができ、殆どの干し草は、あったとしても僅かな針しか含まない。その結果、異常な試料の検出は、細胞検査技師の経験、塗沫調製の品質、及び作業負荷のレベルに依存する。これらの懸念の結果、Pap選別処理を自動化し、かつ他の客観的な代案を開発するその両方の試みが行われている。古典的な細胞診断学における最近の発展は、より良好な細胞堆積物の調製、細胞の塊の排除、及び粘液、赤血球などのような物質の交絡に着目している。
【0006】
他の技術は、細胞学者による目視検査に頼る診断段階の改善に着目している。画像解析システムの自動化は、細胞学者の細胞の目視検査を補助するために導入されている。これらの方法は、細胞母集団から最も「正常な」細胞を排除することによる更に別の人手による検査を必要とする細胞の選択を補助するものである。しかし、これらの技術は、高価であり、労働集約的であり、かつ全ての望ましい細胞診断を補助するというわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許仮出願出願番号第61/056955号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Adams、M.J.著「分析分光学における計量化学」、第2版、王立化学学会、ケンブリッジ、2004年
【非特許文献2】Griffiths及びde Haseth共著「フーリエ変換赤外線分光分析」、Elving、Weinefordner、及びKolthoff(編)、「John Wiley&Sons、」ニューヨーク(1986年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
その結果、診断技術の改善の必要性が存在する。特に、細胞学的細胞データのデータ収集、検査、及び比較のための改良型システム及び方法に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の開示は、1つには、細胞内の異常の存在を古典的な細胞病理学的方法を使用してこのような異常を診断することができるかなり前に判断する改良型方法を提供する。本発明の開示の態様は、細胞試料のスペクトルマップ/スペクトル画像を作り出し、特定の細胞に対応するピクセルを識別し、その細胞に対応するピクセルのスペクトルデータを相互追加してその細胞のスペクトルを再構成し、かつ試料内の他の細胞のスペクトルデータを同様に再構成することによって細胞試料のスペクトルを再構成する方法を提供する。疾患の早期検出の改良型方法は、この根本的な方法を用いている。
【0011】
一態様では、本発明の開示は、細胞のスペクトルを生成する方法を提供する。本方法は、(a)複数のスペクトルピクセルを受け取る段階を含み、スペクトルピクセルの各々は、細胞の一部分に対応し、スペクトルピクセルの各々は、複数の測定値に関連付けられ、測定値の各々は、特定の波数での光の強度に関連付けられ、各スペクトルピクセルに関連付けられた測定値の1つは、選別測定値であり、選別測定値は、波数の帯域内の波数に関連付けられ、(b)複数のスペクトルピクセルの部分集合を識別する段階を更に含み、第1のピクセルは、その部分集合にあり、第1のピクセルの選別測定値は、他のスペクトルピクセルの選別測定値よりも大きいか又はそれに等しく、複数のスペクトルピクセル内の他のピクセルは、それらが第1の基準を満たす場合はその部分集合内にあり、スペクトルピクセルは、そのスペクトルピクセルの選別測定値が第1の閾値よりも大きい場合は第1の基準を満たし、次に、(c)スペクトルを生成する段階を更に含み、スペクトルは、複数の再構成された測定値を有し、再構成された測定値の各々は、特定の波数に対応し、再構成された測定値の各々は、部分集合内の全てのピクセルの特定の波数に関連付けられた測定値の合計に従って形成される。
【0012】
一部の実施形態では、第1の閾値は、第1のピクセルの選別測定値の予め選択された百分率である。ある一定の実施形態では、波数の帯域は、下端及び上端を有し、下端及び上端は、ユーザ選択可能な値である。特定の実施形態では、下端は、1640cm-1であり、上端は、1670cm-1である。
【0013】
一部の実施形態では、各スペクトルピクセルの選別測定値は、そのスペクトルピクセルの関連の測定値のピーク値であり、ピーク値は、ユーザ選択可能な波数に最も近いピークである。特定の実施形態では、ユーザ選択可能な波数は、1650cm-1である。ある一定の実施形態では、複数のスペクトルピクセル内のピクセルは、第1の基準及び第2の基準の両方を満たす場合に限りその部分集合内にあり、ピクセルは、第2のピクセルの選別測定値に関連付けられた波数と第1のピクセルの選別測定値に関連付けられた波数との間の差が第2の閾値よりも小さい場合に第2の基準を満たす。一部の実施形態では、第2の閾値は、ユーザ選択可能な数である。ある一定の実施形態では、ユーザ選択可能な数は、4cm-1である。
【0014】
一部の実施形態では、各スペクトルピクセルに関連付けられた測定値は、光の強度測定値から導出された値を表している。
【0015】
別の態様では、本発明の開示は、試験細胞の生理的状態を分析する方法を提供する。本方法は、上述の態様及び実施形態で上述したように(a)試験細胞のスペクトルを生成する段階、及び次に(b)試験細胞の再構成されたスペクトルが、試験細胞の生理的状態を示す所定の基準を有するか否かを判断する段階を含む。
【0016】
一部の実施形態では、所定の基準は、異常な対照上皮細胞スペクトルから又は正常な対照上皮細胞スペクトルから生成される。
【0017】
ある一定の実施形態では、試験及び対照試料内の上皮細胞は、内皮細胞、中皮細胞、又は尿路上皮細胞である。
【0018】
本発明の開示はまた、試験細胞内の上皮細胞疾患を検出する方法を呈示する。本方法は、以前の態様で上述のように(a)試験細胞のスペクトルを生成する段階、及び次に(b)試験細胞の生成スペクトルが、試験細胞内の疾患の存在を示す所定の基準を有するか否かを判断する段階を含む。
【0019】
一部の実施形態では、所定の基準は、異常な対照上皮細胞スペクトルから生成される。ある一定の実施形態では、試験及び対照試料内の上皮細胞は、内皮細胞、中皮細胞、又は尿路上皮細胞である。上皮細胞疾患は、ある一定の実施形態では、良性疾患、ウイルス性疾患、又は癌とすることができる。
【0020】
更に別の態様では、本発明の開示は、試料内の細胞を分析する方法を提供する。本方法は、(a)複数のスペクトルピクセルを含むスペクトル画像を生成する段階を含み、各スペクトルピクセルは、試料の一部分に対応し、各スペクトルピクセルは、複数の強度測定値に関連付けられ、各強度測定値は、特定の波数での光の強度を表し、各スペクトルピクセルに関連付けられた強度測定値の1つは、アミドI測定値であり、b)スペクトルピクセルの部分集合を識別する段階を更に含み、部分集合の1つのメンバは、最大スペクトルピクセルであり、最大スペクトルピクセルは、細胞に対応するスペクトルピクセルであり、かつその細胞に対応する他のスペクトルピクセルのアミドI測定値よりも大きいか又はそれに等しいアミドI測定値を有し、部分集合の別のメンバは、第1の基準、第2の基準、及び第3の基準を満たす第1のスペクトルピクセルであり、第1の基準は、第1のスペクトルピクセルがその細胞に対応することであり、第2の基準は、第1のスペクトルピクセルのアミドI強度が第1の閾値よりも大きいことであり、第3の基準は、第1のスペクトルピクセルのアミドI測定値に関連付けられた波数と最大のスペクトルピクセルのアミドI測定値に関連付けられた波数との間の差が第2の閾値よりも小さいことであり、(c)再構成された細胞スペクトルを形成する段階を更に含み、再構成された細胞スペクトルは、複数の再構成された強度を有し、再構成された強度の各々は、特定の波数に対応し、再構成された強度の各々は、部分集合内のピクセルの特定の波数で強度測定値の合計に従って形成される。
【0021】
以下の図は、単に例示目的で呈示するものであり、限定する意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の開示の一態様による細胞試料内の異常を判断する例示的な方法の流れ図である。
【図2】本発明の開示の一態様によるピクセルレベルスペクトルデータから細胞スペクトルデータを再構成する例示的な方法の流れ図である。
【図2A】本発明の開示の態様によるピクセルレベルスペクトルデータから細胞スペクトルデータを再構成する代替方法の流れ図である。
【図3】細胞の赤外線スペクトルの観察に使用される計装の概略図である。
【図4A】細胞試料のかつ扁平細胞を含有する小さい区画の視像を示す図である。
【図4B】6.25μm開口で収集された図4Aに示す細胞試料の赤外線スペクトルマップを示す図である。
【図4C】図4Bに示す赤外線スペクトルマップから作り出されたバイナリマップを示す図である。
【図4D】「単一点」手法を通じて収集したスペクトル及び本発明の開示の実施形態による方法から取得したスペクトルの比較を示す図である。
【図4E】分散アーチファクト(底部)により汚染された例示的なピクセルスペクトルの補正されたスペクトル(上部)との比較を示す図である。
【図5】正常な口腔粘膜細胞(三角形)及びヘルぺス単一感染の口腔粘膜細胞(十字形)の「得点プロット」を示す図である。
【図6】「CIN II」/「CIN III」と診断された2つの試料からの子宮頸部細胞の「得点プロット」を示す図である。
【図7】「主成分分析(PCA)」を用いて再構成細胞スペクトルを分析する方法を示す図である。
【図8】一部は異常であり、かつ本明細書で開示する方法によりそうであると検出されるが、細胞の形態に基づいて全て正常である様相を示す細胞の写真を示し、本明細書で開示する方法を使用して再構成した撮影細胞に対する細胞スペクトルも示す図である。
【図9】例示的なデータセットに対する主成分分析の第2及び第3の主成分PC2及びPC3の計算を示す図である。
【図10】再構成された細胞スペクトルを使用する異なる細胞タイプの間の区別を示す図である。
【図11】再構成された細胞スペクトルを使用する異なる細胞タイプ間の区別の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての専門用語及び科学用語は、本明細書が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、以下では適切な方法及び材料を説明する。本明細書で言及する全ての論文、特許出願、特許、及び他の参照文献は、引用により本明細書に全体が組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先されることとする。更に、材料、方法、及び実施例は、例示的であるにすぎず、制限的であることを意図したものではない。
【0024】
細胞内の異常を検出する改良型方法を本明細書で開示する。一例として、開示する方法は、従来の形態学的解析で全く正常に見える細胞内の異常を検出することができる。このような細胞は、無処置に放置された場合、最終的には異常を示す形態上の特性が発現する。開示する検出方法は、このような異常な細胞の遥かに早期の検出を提供し、すなわち、このような形態上の変化が起こる前に、細胞を異常として見出すことができる。開示する方法により行われる異常の検出はまた、従来の形態ベースの方法よりも確実なものである。
【0025】
形態ベースの検出方法に関する1つの問題は、進行性疾患の細胞形態特性の変化が、単に疾患の組成の乱れに対する遅延した反応であることである。すなわち、細胞の形態上の変化は、病因でなく、疾患に対する遅れた反応である。開示する方法は、疾患に対するこれらの遅延反応を検出するのではなく、このような遅延反応が発生する前でさえも細胞の異常を検出することができる。従って、開示する方法は、細胞異常の早期かつ確実な検出を提供する。
【0026】
形態ベースの検出方法に関する別の問題は、一般的に染色された細胞に行わなければならないことである。染色により、形態上の特徴が人間である観察者により簡単に検出可能になる。しかし、染色の存在はまた、それ自体が異常を示す細胞の特性を覆い隠す。開示する方法は、染色されていない細胞に行うことができる。従って、開示する方法は、異常の検出において細胞を直接に表すより多くの情報を使用することができる。
【0027】
本発明では、形態上の変化が検出可能になる前に発生する疾患に関連付けられた生化学的変化をモニタすることにより、疾患に至る可能性がある細胞異常の診断を提供する。これらの生化学的変化は、疾患の発現に後で参加する試料から全ての細胞において検出することができる。この新しい手法は、再現可能な物理的測定値、数学的なアルゴリズム、及び細胞の機構の関連の変化に基づくものである。
【0028】
「スペクトル細胞病理学」と呼ぶ本発明の方法は、細胞試料の疾患に関する選別のための現在利用可能である技術よりも感応性が高くかつより再現可能な技術であり、かつ古典的細胞病理学よりも早期に疾患の進行を検出するのに使用することができる。
【0029】
本発明を通して使用する時に、「スペクトル細胞病理学」(SCP)という用語は、特に断らない限り、個々に複数の細胞の中間赤外線スペクトルデータを取得し、かつ正常から良性疾患、ウイルスが感染した状態、又は前癌状態又は癌状態への遷移中の細胞の組成変化を判断するために得られたスペクトルを分析するためにマイクロ分光計を使用する方法を意味するものとする。
【0030】
用語「試験細胞」は、分析又は観察の対象になる生体内又は体外供給源から試料採取した細胞を指す。
【0031】
用語「異常」は、良性疾患、ウイルス疾患、又は癌をもたらす場合がある疾患を有する細胞を指す。異常な細胞は、「正常な」細胞とは異なるように検出可能であるスペクトルから判断されたスペクトル及び基準を有する。これらの異常な細胞は、形態学的に正常又は非病変に見えるが、疾患を発現させる傾向を有する場合がある。「正常な」細胞は、疾患を持たず、かつ対照細胞として使用することができる。正常な細胞は、疾患を持たないか又は疾患が発現しない被験者から試料採取することができる。
【0032】
用語「剥離細胞」は、自然過程により又は物理的操作により組織表面から擦り落ちたか、除去されたか、分離されたか、又は落ちた細胞を指す。剥離細胞を収集する例示的な方法には、口腔又は膀胱擦過(子宮頸部へら又はブラシを使用)、婦人科診察、及び尿からの濾過などがあるがこれらに限定されない。
【0033】
用語「上皮細胞」は、扁平、柱状、又は立方形である場合がある内皮細胞、中皮細胞、及び尿路上皮細胞を含むがこれらの限定されない器官の内側を覆う全ての細胞を包含する。
【0034】
用語「扁平」、「柱状」、及び「立方形」は、単純又は重層、角化又は非角化、及び/又は繊毛上皮細胞又は非繊毛上皮細胞のタイプを指す。
【0035】
「単純」扁平細胞は、血管、リンパ管、体腔の中皮、及び腎臓の上行の薄い肢の内側を覆うことが見出されている。「重層」扁平細胞は、硬口蓋、舌背、歯肉、食道、直腸、肛門、皮膚、頸部、膣、大陰唇、中咽頭、角膜、及び外尿道口を覆うことが見出されている。
【0036】
「単純」柱状細胞は、顎下腺、付着歯肉、小管、精巣上体、精管、精嚢、喉頭、気管、鼻、膜性尿道、ペニス尿道、胃、小腸と大腸、直腸、胆嚢、管上皮及び小葉上皮、卵管、子宮、子宮内膜、頸部、射精管、尿道球腺、前立腺での管内で見られる。「重層」柱状上皮細胞は、顎下腺付着歯肉、小管精巣上体、精管、精嚢、喉頭、気管、鼻、膜性尿道、及びペニス尿道の管に見られる。
【0037】
「単純」立方形細胞は、甲状腺瀘胞、脳質上衣、卵巣、細管直筋、精巣網、呼吸細気管支、及び腎臓の近位及び遠位尿細管内に見られる。「重層」立方形細胞は、汗腺管内に見られる。
【0038】
細胞の「生理的状態」は、正常、異常に関わらず、その健康状態を指し、かつ細胞疾患に至る可能性がある形態上の異常、生化学的異常、遺伝子異常、又は他の異常を含む異常を発現させるその傾向を指す。
【0039】
「所定の基準」は、正常な細胞又は異常な細胞の特性を示す値である。
【0040】
図1は、細胞学的細胞試料の異常を検出する方法を示している。段階102では、細胞試料を収集してスライド上に堆積させる。細胞試料には、例えば、子宮頸部の遷移部、すなわち、子宮頸内膜(腺又は柱状上皮細胞により覆われる)と外頸部(重層扁平上皮細胞により覆われる)の間の境界から収集された剥離細胞(例えば、子宮頸管内細胞及び子宮腟部細胞)を含むことができる。液体ベースの方法を用いて、細胞の均一に離間したまばらな堆積物を得て、スライド上で細胞試料を堆積させ、細胞残屑及び交絡細胞を排除し、かつ所定の視野内で満足できるレベルの細胞母集団を維持することができる。細胞試料を堆積させる例示的な液体ベースの方法には、細胞遠心分離、ThinPrep(登録商標)方法、及びSurepath(登録商標)方法などがあるがこれらに限定されない。細胞試料を堆積させる例示的なスライドには、赤外線反射顕微鏡スライド(例えば、「low−e」(登録商標)スライド)があるがこれに限定されない。
【0041】
段階104で、スライド上に堆積細胞試料を走査してスペクトルデータを収集する。例えば、細胞試料の赤外線スペクトルデータは、予め設定された開口で赤外線走査装置(例えば、赤外線マイクロ−分光計)を使用して収集することができる。データが収集される領域は、ピクセルに分割され、スペクトルデータは、各ピクセルで収集される。例えば、細胞試料のスペクトルデータは、約6.25μmx6.25μmのピクセルサイズで全ての試料領域から収集することができる。スペクトルデータには、波数値の範囲にわたる強度値を含むことができる。用語「強度」は、吸光率、透過率、及び反射吸光強度(透過反射率)などの測定値を含むその広義の普通の意味に従って本明細書で使用する。段階106で、各ピクセルの細胞試料の収集したスペクトルデータを格納する。段階108で、ピクセルを細胞に関連付けて特定の細胞に対応するピクセルのスペクトルデータを相互追加することによって各細胞のスペクトルを再構成する。段階108を以下で詳細に説明する。段階110で、次に、試料領域での細胞の座標を判断する。段階112で、細胞を少なくとも1つの染色剤で染色する。例示的な染色剤には、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)及び「Pap染色剤」(H&E及び他の対比染色剤の混合物)などがあるがこれらに限定されない。段階114で、段階110で判断した座標で全ての細胞の顕微鏡視像(顕微鏡写真)を取得する。段階116で、全ての細胞の画像を格納する。段階118で、段階114からの走査画像及び段階108から再構成された細胞スペクトルを相関させる。この相関関係段階は、アルゴリズムのトレーニング相において用いられ、一般的に、細胞画像の診断を細胞学者又は細胞技師が解釈することから成る。この診断は、古典的細胞病理学とスペクトル結果間の相関関係を確立するために用いることになる。アルゴリズムでは、データセットが定量化可能な差異を含むか否かを調査する教師なし多変量統計値、又は標準的な細胞病理学又は細胞生物学からスペクトルデータ及び相関関係に基づいて細胞を分類することができる教師あり判別アルゴリズム、又は既知の細胞病理学の細胞でトレーニングされた教師あり方法を使用することができる。
【0042】
図3は、赤外線マイクロスペクトルを測定する例示的な器具を示している。赤外線源(一般的に1300℃と2000℃の間に電気的に加熱された金属又は非金属固体)から出射された光は、赤外線対物レンズにより試料の上へ集束される前に干渉計により変調される。この例においては、赤外線光は、試料を通過すると「low−e」スライドの銀層により反射され、再び試料を通過し、検出されて適切な赤外線検出器により電気信号に変換される。複光路透過/反射により赤外線スペクトルを測定するこの方法は、「透過反射」と呼ばれる。入射光と「透過反射」光との強度の比率は、「光密度」又は「吸光率」の単位に変換され、以下、「吸光率」、「吸収強度」、又は単に「強度」と呼ぶ。
【0043】
図2は、全体的に200で、個々のピクセルで測定されたスペクトルデータから細胞データを再構成する例示的な方法を示している。すなわち、図2は、図1に示す段階108をどのように実施することができるかに対して詳細に示している。段階202で、例えば、各々が約1600個のデータ点又は色点を含む約409,600個のピクセルから成るデータセットを生成するために、約6.25μm×6.25μm(又は、調査すべき細胞のサイズより大幅に小さいあらゆる他のピクセルサイズ)のピクセルサイズで、4mm×4mmの顕微鏡スライド上で細胞試料の赤外線スペクトルデータを全ての試料領域から収集する。代替的に、赤外線のスペクトルデータは、マッピング又は細胞の近くを画像化することによって収集することができ、その場合、細胞の位置は、上述のバイナリマスク以外の手段により先に判断されている。すなわち、各ピクセルは、多くの試料強度測定値を含み、各強度は、特定の波長で測定される。例えば、強度測定は、900〜1800cm-1の波数範囲に対応する11.1〜5.5μmの波長範囲で行うことができ、その場合、波数は、波長の逆数であり、かつ単位長当たりの光波の数を説明するものである。用語「波数」及び「周波数」は、本明細書では互換的に使用する。段階204は、スペクトルオフセットを補正する段階である。段階204で、ピクセル単位であらゆる強度オフセットを除去し、確実に全てのスペクトルが正の強度値を有するように同じピクセルのスペクトル内の各強度値から各ピクセルのスペクトルで最低強度値を減算する。例えば、段階202で、ピクセルPは、測定値セット(I1、I2...IN)を含むことができ、その場合、各測定値INは、特定の波数での強度を表している。IjがこれらのN値で最も低い場合、段階204後、ピクセルPは、値(I1−Ij、I2−Ij,...,IN−Ij)を有する。この正規化段階は、各ピクセルに対して実行される。
【0044】
段階206で、段階204で生成された減算されたスペクトルデータを用いて全てのサンプリング領域のスペクトルマップを作成する。段階206で作成したスペクトルマップ内のピクセルの数は、所定のピクセルサイズで走査した試料領域に基づいている。スペクトルマップは、各ピクセルにグレイスケール値を割り当てることによって作成する。このグレイスケール値は「アミドI」帯域の積分領域に基づくことができ、これは、全てのタンパク質の赤外線スペクトル内の波数ca.(約)1640cm-1と1670cm-1の間で発生する。yピクセルPのアミドI帯域の積分領域は、例えば
【0045】
【数1】

【0046】
として計算することができ、ここで、各Ijは、波数jで測定されたピクセルの強度を表し、約1640cm-1と1670cm-1間の波数で測定された全ての強度は、xからyの範囲にある。アミドI帯域に高い積分強度を有するピクセルには、白色又は淡灰色の色相を割り当てることができ、最低強度を有するピクセルには、黒色又は暗灰色の色相を割り当てることができる。最高と最低の強度値の間に強度を有するピクセルは、白と黒の間にグレイスケール尺度上に線形にマップすることができる。図4Bは、409,600ピクセルの元のデータセットからのデータの部分集合から得られたスペクトルマップのグレイスケールバージョンを示している。スペクトルマップは、グレイスケールとしての代わりにカラー画像として生成することができることが認められるであろう。図4Aは、図4Bのスペクトルマップに対応する視像を示している。グレイスケール値は、例えば、スペクトル領域内のあらゆる帯域の強度、スペクトル領域内の2つの強度点の間の比率、スペクトル領域内の2つの強度点の間の積分領域、又は2つのスペクトル領域間の積分領域の比率に基づくことができる。
【0047】
ピクセルのアミドI強度を判断する方法をここで説明する。図4D及び図4Eに示すように、波数900〜1800cm-1から測定した細胞内のピクセルのスペクトルは、一般的に細胞の様々な成分に対応するピークを含む(すなわち、共有結合した原子及び基の振動励起のために)。約1650のcm-1(アミドI帯域として公知)のピークは、細胞タンパク質内のペプチドメイン鎖のカルボニル伸縮振動から生じるものであり、かつ細胞の存在を示すものである。従って、アミドI強度は、波数1650cm-1に最も近い強度ピークの位置を識別することによって判断される。このピークが起こる波数を本明細書では(vaI)と呼び、そのピークの強度は、IaIと本明細書で呼ぶ。換言すれば、ピクセルが強度測定値(I1、I2...IaI,...,IN)を含む場合、IaIはアミドI強度であり、IaIが測定された波数は、vaIである。
【0048】
段階208で、最小アミドI強度閾値値(IaImin)を設定する。例えば、最小アミドI強度閾値値は、明確なタンパク質振動を持たないあらゆるピクセルを拒否するために0.15吸光率単位に設定することができ、従って、細胞によるものではない。この閾値のための0.15の値は、検出器により受信したビームの強度を試料に入射するビームの強度で割ったものが0.15に等しい状況に対応する。段階210〜224で、閾値(IaImin)を使用することにより、段階206で作成したグレイスケールマップをバイナリマップに変換する。バイナリマップ内の各ピクセルは、段階206で生成されたスペクトルマップ内の1つのピクセルに対応し、バイナリマップ内の各ピクセルを2つの値の一方に設定する。図示のように(図4C)、バイナリマップ内の各ピクセルは、白又は黒に設定されている。段階210で、スペクトルマップからピクセルを選択し、段階212でピクセルスペクトル内のアミドI強度値を識別する。すなわち、スペクトルマップ内の各ピクセルPiが測定値(I1、I2...IN)を有し、測定値I31がそのピクセルのアミドIの波数(vaI)に対応する場合、段階212でIaIを識別する。段階218で、段階212、131で識別したアミドI強度値を段階208で設定した最小アミドI強度閾値値(IaImin)と比較する。段階212で識別したアミドI強度値IaIが段階208で設定した閾値よりも大きいか又はそれに等しい場合、段階220で、バイナリマップ内の対応するピクセルに白色を割り当てる。段階212で識別したアミドI強度値IaIが段階208で設定した閾値よりも小さい場合、段階216で、バイナリマップ内の対応するピクセルに黒色を割り当てる。段階222では、現在のピクセルがスペクトルマップ内の最終ピクセルであるか否かを判断する。現在のピクセルがスペクトルマップ内の最終ピクセルではない場合、段階214で、スペクトルマップ内の次のピクセルを選択する。スペクトルマップ内の全てのピクセルが選択されるまで段階212〜222を繰り返す。
【0049】
現在のピクセルがスペクトルマップ内の最終ピクセルである場合、段階224で、バイナリマップ内の隣接する白色領域を識別し、かつ細胞の細胞又は塊に関連付ける。次に、段階226で、隣接する白色領域の群に基づいてバイナリマップ内の初期細胞数を識別する(すなわち、隣接する白色領域の数を数える)。段階228で各細胞(すなわち、各隣接する白色群)内のピクセルの数を数え、段階230で、各ピクセルの位置座標を格納する。
【0050】
段階232〜244では、細胞の塊及び/又は汚染物質に関連付けられたピクセルを除去することによってバイナリマップを精緻化する。段階232で、各単一の細胞に寄与するピクセルの数の上限及び下限を設定する。例えば、1つの細胞に寄与するピクセルの数の上限及び下限は、バイナリマップから直径約60μmを超える重なり合う扁平細胞に寄与するピクセルを除去するように設定することができる。一例として、90ピクセルという上限値により、バイナリマップにおいて、大きな成熟した扁平細胞に対応するか又は重なり合う細胞の大きな塊に対応する隣接する白色ピクセルが、更に分析されることからが防止される。細胞を定めるピクセルの下限値は、汚染物質に相当するバイナリマップ内の隣接する白色ピクセルが更に分析されることを防止するために約15に設定することができる。例示的な汚染物質には、赤血球(サイズが約6μm又は1つのピクセルの赤色血球)及び壊死細胞の裸核などがあるがこれらに限定されない。
【0051】
段階234で、バイナリマップにおいて識別された細胞からの単一の細胞(すなわち、隣接する白色ピクセルの単一の群)を選択する。段階238で、細胞に関連付けられたピクセルの数を段階232で設定したピクセル上限及び下限と比較する。選択した細胞内のピクセルの数がピクセル上限及び下限内ではない場合、段階236で、選択した細胞を廃棄する。選択された細胞内のピクセルの数がピクセル上限及び下限内である場合、段階240で、選択した細胞をその後の分析に向けて含める。段階242でバイナリマップ内の次の細胞を選択する。段階244で、本方法は、全ての細胞(すなわち、ピクセルの隣接する白色群)が上限及び下限に対して比較済みであるか否かを判断する。全ての細胞がまだ比較されたわけではない場合、段階238で別の細胞を選択して上限及び下限と比較する。段階244で全ての細胞が上限及び下限に対して比較済みである場合、制御は。段階246に向かう。
【0052】
換言すれば、段階234〜244では、このような細胞になるには大き過ぎるか又は小さすぎるバイナリマップ内の隣接する白色ピクセル域の領域を排除する。これらの段階では、事実上、大き過ぎるか又は小さすぎる領域を廃棄することにより、精緻化されたバイナリマップを生成する。段階244から得られたバイナリマップは、試料内のこのような細胞に属するピクセルを示している。
【0053】
図4Cは、図4Aに示す細胞試料画像に対応する図4Bに示すスペクトルマップから作成した例示的なバイナリマップを示している。図4Cに示すバイナリマップにより、6つのこのような細胞(白色ピクセルの隣接する群の1つに対応する各細胞)が識別される。段階246で、段階244からの精緻化したバイナリマップにおいて識別した細胞の数と等しくなるように試料内の細胞の数を更新する。
【0054】
段階248〜262で、バイナリマップにおいて識別した各細胞のスペクトルを個々のピクセルスペクトルから再構成する。段階248で、244段階で生成された精緻化されたバイナリマップにおいて識別した細胞から単一の細胞を選択する。段階250で、最高アミドI強度値(lalmax)を有する細胞内のピクセルを識別する。最高アミドI強度(すなわち、Ialmax値)を有するピクセルは、最高タンパク質濃度を有する細胞の領域、通常は細胞の核に対応する。次に、同じ細胞に関連しており、かつ段階250で選択したピクセルの近くにある白色ピクセルを段階254で識別する。段階254で識別したピクセルは、細胞の核周囲の領域に対応することができる。
【0055】
段階256で、選択したピクセルの2つの基準(その両方を以下で説明)を検査する。ピクセルが両方の基準を満たす場合、選択したピクセルのスペクトルは、Ialmax値を有するピクセルのスペクトルに相互追加される。2つのスペクトルを以下のように相互追加する。ピクセルi(pi)が強度測定値(Ipi1、Ipi2v...IPiN)を含み、ピクセルn(pn)が強度測定値(Ipn1、Ipn2....IpnN)を含む場合、成分単位で強度測定値を合計して(Ipn1+IPi1、Ipn2+Ipi2v,...,IPnN+IPiN)を生成することによってピクセルi及びnからのスペクトルの相互追加を生成する。この相互追加されたスペクトルは、「再構成された」スペクトルである。段階252〜264では、段階256で行った基準値検査を満たす細胞内の全てのピクセルのスペクトルを相互追加することによって細胞のスペクトルを再構成する。また、段階256で、例えば、スペクトル領域内のあらゆる帯域の強度、スペクトル領域内の2つの強度点の間の比率、スペクトル領域内の2つの強度点の間の積分領域、又は2つのスペクトル領域間の積分領域の比率によりピクセルを選択することができる。
【0056】
段階256での2つの基準値検査のうちの第1の検査は、段階254で選択したピクセル内のアミドI強度(すなわち、IaI値)を閾値強度値と比較し、アミドI強度(IaI)が閾値強度値よりも大きいか又はそれに等しいか否かを判断することである。閾値は、IaImax値の所定の百分率(すなわち、最高アミドI強度、すなわち、IaImax値を有していた細胞内のピクセルのIaI値の百分率)(例えば、66パーセント)に設定することができる。ピクセルのIaI値が閾値未満である場合、そのピクセルを廃棄する(すなわち、そのスペクトルは、細胞内の他のピクセルのスペクトルに相互追加されない)。段階256でのこの評価では、全体的に薄く、かつ弱くノイズがあるスペクトルに関連している原形質の外縁に関連付けられたピクセルスペクトルを排除する。
【0057】
ピクセルがアミドI強度基準を満たす場合(すなわち、そのIaI値が閾値よりも大きい)、段階256では、更に、ピクセルが縁部アーチファクトに関連しているか否かを判断する。例示的な縁部アーチファクトには、分散アーチファクト、ピクセルの反射及び/又は吸光成分により引き起こされたアーチファクト、不正確な位相補正により引き起こされるアーチファクトなどがあるがこれらに限定されない。段階256で、ピクセル内のアミドI強度(すなわち、IaI値)に対応する波数(すなわち、vaI値)は、細胞内の最高アミドI強度(すなわち、IaImax値)に対応する波数(すなわち、vaImax値)と比較される。vaI値がvaImax値に等しいない場合、(vaImax−vaI)絶対値に等しいvaImax値からのvaI値のシフト(すなわち、Δ(vaImax−vaI)が判断される。更に、段階256で、Δ(vaImax−vaI)値を閾値アミドI波数シフト値と比較して、Δ(vaImax−vaI)値が閾値波数シフト値未満か又はそれに等しいか否かを判断する。例えば、閾値波数シフト値は、4cm-1に設定することができる。
【0058】
図4Eは、汚染されていないスペクトル(上部)との分散アーチファクト(底部)により汚染された例示的なピクセルスペクトルの比較を示している。図4Eでは、汚染されたスペクトル内のアミドI波数は、約1610cm-1であり、良好なスペクトル内のアミドI波数は、約1650cm-1である。ピクセルのアミドI波数シフト(Δ(vaImax−vaI)値)が閾値波数シフト値未満か又はそれに等しい場合、段階258で、ピクセルのスペクトルを細胞内の他のピクセルのスペクトルに相互追加する。そうでなければ、ピクセルは、廃棄されて他のピクセルに相互追加されない。
【0059】
段階262で、本方法は、細胞内の全てのピクセルが廃棄されたか又はスペクトルが細胞内の他のピクセルのスペクトルに相互追加されたか否かを判断する。そのように廃棄又は相互追加されなかった白色ピクセルが残った場合、制御は、段階256に戻る。そうでなければ、制御は、段階264に進む。
【0060】
同様に、段階264で、本方法は、精緻化されたバイナリマップ(段階244で生成済み)において識別された全ての細胞が、そのスペクトルを再構成されていたか否か(細胞内のピクセルのスペクトルの相互追加により)を判断する。全ての細胞がスペクトルが再構成されていた場合、制御は、段階266に進む。そうでなければ、制御は、段階252に進み、そこで、別の細胞を選択することができ、その細胞のスペクトルを再構成することができる。段階266で、細胞の位置座標と共に各細胞の相互追加されたスペクトルを格納する。一例として、細胞の位置座標は、その細胞の吸光率の中心に対応することができる。細胞スペクトルは、約30〜約70個の個々のピクセルスペクトルを相互追加することによって構成することができる。
【0061】
図4Dは、図4Bに示すバイナリマップにおいて識別された単一の細胞に対応する15個(36個のうちの)の個々のピクセルスペクトルを相互追加することによって構成された例示的な細胞スペクトルを示している。図4Dは、従来の技術を用いて取得した同じ細胞の単一の点細胞スペクトル(黒色に示す)との上述の方法を用いて取得した細胞スペクトル(灰色に示す)の比較も示している。
【0062】
図4Dは、図2に関連して説明した相互追加方法により結果として単一点細胞スペクトル(黒色に示す)と殆ど同一であるスペクトル(灰色に示す)が発生することを示している。すなわち、図2に関連して説明する本方法によって生成される細胞のスペクトルは、従来の技術によって生成されるものと同じ細胞のスペクトルと類似の品質である。図2に関連して説明する方法は、従来の技術と比較して有利であるが、それは、少なくとも各ピクセルのスペクトルが一定の開口で規則正しく試料を採取することができるからである。細胞よりも小さい開口での試料採取により引き起こされるあらゆる所定のピクセル内のSN比の損失は、相互追加方法により回復される。すなわち、相互追加方法により、結果として約4〜8倍のSNRの利得が発生する。SNRのこの利得は、非常に低い有効口径(例えば、6.25μmx6.25μm)でのデータ収集による個々のピクセルスペクトルの信号品質の損失を補うものである。
【0063】
図2Aは、細胞の再構成されたスペクトルを生成する上述の方法200の代案である方法200’を示している。図2Aに示す方法200’は、図2の方法200と類似のものであり、かつ同じ段階の多くを使用するものである。しかし、方法200’では、段階206、208、212、250、254、及び256の代わりに、それぞれ、段階206’、208’、212’、250’、254’及び256’を使用する。段階206’、208’、212’、250’、及び254’内のアスタリスクは、このような段階のスペクトル(例えば、段階206’のA1)が、透過率、吸光率、反射率、導関数、又は干渉写真の形式におけるものとすることができ、かつ以下のもの、すなわち、(a)いずれかの波数で強度を測定する、(b)いずれかの波数で2つの強度値の間の比率を計算する、(c)いずれかの波数で2つの強度値間の積分領域を計算する、又は(d)いずれかの波数で2つの強度値間の積分領域の比率を計算することのいずれかによって生成されることを意味する。段階206’で、段階206に該当したようにアミドI帯域の強度又は積分領域だけに対していずれかの選択した強度にスペクトルマップを基づかせることができる。同様に、段階208’及び212’で、アミドI強度値に対して最小閾値A1をピクセルのいずれかの選択した値と比較することができる。また、250’段階で、いずれかの選択した波数で最大値を有することに基づいてピクセルを選択することができ、アミドIに対応する波数は用いなくてもよい。次に、段階254及び256で、ピクセルは、特定の波数での強度に基づいて保持又は廃棄し、ここでもまた、アミドIに対応する波数は用いなくてもよい。
【0064】
本発明の方法を使用して様々な細胞を検査することができる。このような細胞は、上皮細胞を含む剥離細胞とすることができる。上皮細胞は、扁平上皮細胞(単純又は重層、及び角化又は非角化)、柱状上皮細胞(単純、重層、又は偽重層、及び繊毛又は非繊毛)、及び立方形上皮細胞(単純又は重層、繊毛又は非繊毛)に分類される。これらの上皮細胞は、腸、卵巣、男性胚組織、呼吸器系、角膜、鼻、及び腎臓のような身体を通して様々な器官の内側を覆う。内皮細胞は、喉、胃、血管、リンパ系、及び舌の内側を覆うことを見出すことができるタイプの上皮細胞である。中皮細胞は、体腔の内側を覆うことを見出すことができるタイプの上皮細胞である。尿路上皮細胞は、膀胱の内側を覆うことを見出すことができるタイプの上皮細胞である。これらの細胞タイプは、本明細書で説明する方法により区別されている(表1に要約)。
【0065】
(表1)



【0066】
上述の細胞のいずれかに影響を与える疾患は、本発明の方法を用いて検出可能である。例えば、本方法は、単純ヘルぺス、HPV、及びエプスタインバールウイルスなどであるがこれらに限定数されないウイルス感染と、癌を示す異形成関連及び悪性関連の変化及び増殖、変質形成、及び炎症を含む良性の反応的変化のような疾患前の状態を示す可能性がある細胞の成熟及び区別の変化のような疾患とを検出する。
【0067】
以下の例で説明するように、いくつかの実験により、図2に関連して上述した方法によって生成される再構成されたスペクトルの有用性が確立されている。例えば、再構成されたスペクトルは、細胞の3つの広義のカテゴリ、すなわち、(a)正常な患者から収集された正常な細胞、(b)疾患を有することが公知である患者から収集された形態上正常に見える細胞、及び(c)疾患を有することが公知である患者から収集された形態上異常に見える細胞に対して生成されたものである。従来の形態学的解析では、タイプ(a)と(c)(すなわち、形態上正常に見える細胞と形態上異常に見える細胞)とは区別することができる。しかし、従来の形態学的解析では、タイプ(a)と(b)(すなわち、正常細胞と公知の疾患を有する患者から収集された目視で正常に見える細胞)とは区別されない。しかし、以下で説明するように、タイプ(b)細胞(すなわち、公知の疾患を有する患者から収集された目視で正常に見える細胞)の再構成されたスペクトルは、タイプ(a)細胞(すなわち、正常な細胞)と異なるものであり、かつタイプ(a)細胞(すなわち、正常な細胞)と区別することができる。以下で説明する方法では、容易かつ自動的にタイプ(a)細胞とタイプ(b)細胞が区別され、従って、従来の形態上の技術で可能であるよりも早期かつ確実な診断が可能である。
【0068】
本発明の開示のより完全な理解は、本発明の開示の実施の以下の例示的な実施例を参照することによって得ることができるが、これらの実施例は、本発明の開示を不当に制限することを意図したものではない。
【0069】
実施例
以下の実施例は、本発明の開示の本法を用いた細胞学的試料の分析から取た結果を示している。
【実施例1】
【0070】
口腔粘膜試料のスペクトル分析
この実施例は、本発明の方法を用いて口腔内の単純ヘルぺス発生を有する患者から剥離させた口腔粘膜細胞の細胞診試料の分析を示している。口腔粘膜細胞の細胞診試料は、マサチューセッツ州ボストンの「ニューイングランド医療センター(NEMC)」から取得したものである。これらの試料の赤外線ピクセルレベルのスペクトルデータは、試料領域全体から取得された。次に、図2に関連して上述した技術を使用して、試料採取した領域から試料内の個々の細胞の赤外線スペクトルを再構成した。次に、再構成した細胞スペクトルは、疾患を示すスペクトル差を見つけることができるか否かを検証するために、特に、「主成分分析(PCA)」により、多変量統計値の教師なし方法により分析した。
【0071】
図7は、PCAの原理を示している。図7Aは、8つの細胞の各々に関して再構成されたスペクトルであるスペクトルと類似の8つの模擬スペクトルを示している。図示のように、8つのスペクトルは全く類似ものであるが、同一というわけではない。次に、1組の「基準スペクトル」を図7Aに示す細胞のスペクトルから作成する。図7Bは、3つのこのような基準スペクトルの例を示している。基準スペクトルは、元のデータセットの最大分散を含むように選択する。次に、図7Aに示す細胞スペクトルの各々を基準N個スペクトルの1次結合として再生する。すなわち、各スペクトルSjは、
【0072】
【数2】

【0073】
として表すことができ、ここで、Bnは、第n番目の基準スペクトル(N個の基準スペクトルがある)であり、ajnは、j番目のスペクトルの第n番目の係数である。各スペクトルが基準スペクトルの算術和として表すことができるので、基準スペクトルは、スペクトルの「主成分」と考えることができる。図7Cは、基準スペクトルの線形結合として構成されている再構成したスペクトルを示し、図示のように、図7Cに示す人工的に再構成したスペクトルは、図7Aに示す元のスペクトルに実質的に同一である。係数は、次に、細胞を区別するのに使用することができる。基準スペクトルは、元の再構成したスペクトル(例えば、図7Aに示すような)間の分散を計算し、行列内に分散を配列し、次に、行列内の固有値を解くことによって生成する。基準スペクトルを計算し、次に、主成分に元のスペクトルを分解するこの手法は公知であり、例えば、Adams、M.J.著「分析分光学における計量化学」、第2版、王立化学学会、ケンブリッジ、2004年に説明されている。
【0074】
第1の基準スペクトルは、単に全てのスペクトルの平均値であり、一般的に、細胞を区別する際にはあまり役立たない。また、より高次の基準スペクトルの係数は、小さいか又は無視することができる傾向があり、同じく細胞を区別する際には一般的にあまり役立たない。しかし、第2、第3、及び第4の成分の係数は、異なる特性を有する細胞を区別するのに有用であることが多い。
【0075】
PCAの目的は、多くの変数をデータ内の殆どの分散を説明する少数の簡易変数、つまり主成分(PC)まで低減することである。全てのPCは、直交成分であり、各連続的成分は、変動量の減少を表し、殆どの変動は、最初の少数の成分により明らかである。それによって多次元データを単純に視覚化される2次元又は3次元で表すことができる。この技術は、データの最大変動の方向の新しい1組の軸上に元の変数を変換することによって機能する。図9は、第2及び第3の主成分、PC2及びPC3が例示的なデータセットに対してどのように測定されるかの例を示している。
【0076】
図9を参照すると、第2の主成分(PC2)は、中間値(すなわち、平均値)に関してデータ行列内の変数の最大分散の軸に沿って配向されている。第3の主成分(PC3)は、第2のPCから独立(と直交)しており、データ内の次の最大分散の軸に沿ったベクトルである。先行PCと直交することになりかつ残りの分散の一部を説明する後続PCを計算することができる。PCは、元の変数の線形結合であり、これらは、測定空間内の点を通じて最小自乗法の意味で適合されている。これらの新しい変数は、通常、元の組からの変数の低減をもたらし、多くの場合に物理的又は化学的ファクタと相関付けることができる。
【0077】
図5は、口腔粘膜細胞に関する分析のPCA「得点プロット」を示している。分析したデータセットは、5人の健康なボランティアから採取した細胞の約1000個のスペクトル及び急性口腔単純ヘルぺス病変部がある患者から収集した細胞の約400個のスペクトルから成るものであった。これらの細胞は、殆どの細胞がウイルス感染している可能性がある病変部から直接に採取したものである。赤外線データ収集後に染色したこれらの細胞の目視検査により、これらの細胞は、ウイルス感染していることが確認された。
【0078】
図5では、x軸は、第2の主成分の係数を表し、y軸は、第3の主成分の係数を表している。すなわち、図2に関連して説明した方法に従ってピクセルレベルスペクトルから全ての細胞のスペクトルを再構成し、次に、図7に関連して説明するように、上述のスペクトルの各々をベースベクトルの算術和として表し、次に、各細胞のスペクトルを図5の単一の点としてプロットした。各点の図5上の位置は、その点に対応する再構成されたスペクトルの第2及び第3の基準スペクトルの係数により判断した。図5では、正常な細胞(三角形として図示)は、ウイルス感染細胞(xとして図示)から十分に分離している間隙のないクラスターを形成している。従って、図5は、異なる特性を有する細胞、この場合、正常な細胞をウイルス感染細胞と区別するためにPCAをどのように使用することができるかを示している。スペクトルを分析する方法、PCAは、決して増強診断アルゴリズムでなく、単にスペクトルの群の間に定量化可能な差異があるか否かを確立する手順であることに注意すべきである。従って、この結果は、本発明の実施形態による方法が、ウイルス感染によるスペクトルパターンを区別することができることの概念実証を表している。
【実施例2】
【0079】
子宮頸部試料のスペクトル分析
この実施例は、本発明の方法を使用して軽度/重度扁平上皮内病変(LGSIL/HGSIL)と診断された子宮頸部の試料の分析を示している。子宮頸部の試料は、NEMCから取得したものであり、標準的な病理細胞診断が「CIN II」/「CIN III」であった女性からのものであった(CIN診断は、頸部上皮内新生物の組織診断等級、等級I〜IIIを表す)。これらの試料は、標準固定液中に本発明者に納入された婦人科ブラシを使用して収集した。子宮頚部形成異常は、一般的にサイズが0.5〜数ミリメートルの間の小さい病巣で始まる疾患である。従って、一般的に、子宮頸部領域全体(サイズが数平方センチメートル)の試料採取には、数個の異常な細胞が混在する大多数の正常な細胞が含まれる。これらの細胞内の疾患の程度は、非常に穏やかな異型性SILからより重度のSIL、更には上皮内癌まで変わる場合がある。実施例1の場合と同様に、これらの試料の赤外線ピクセルレベルのスペクトルデータは、試料領域全体から取得された。赤外線スペクトルデータは、図2に関連して説明するように個々のピクセルスペクトルから細胞スペクトルを構成するために本発明の実施形態による方法を使用して処理された。次に、再構成した細胞スペクトルは、疾患を示すスペクトル差を見つけることができるか否かを検証するために、図7に関連して説明するように、特に、主成分分析(PCA)により、多変量統計値の教師なし方法により分析した。
【0080】
図6は、本発明の実施形態による赤外線スペクトル方法により子宮頸癌の早期段階を検出することができることを示している。赤外線分光分析及びPCAによる正常な細胞の分析により、一般的に得点プロット内で球に近い分布を示している。PC2(すなわち、第2の主成分)軸に沿った得点が0.3〜0.8の間の範囲に該当する図6の細胞は、正常な細胞の球に近い分布から外れ、目視検査で、異形成と合致する形態を示している。これらの結果は、子宮頸部の細胞の剥離試料中の異常な細胞の赤外線スペクトルにより区別が可能であることを明らかにしている。更にその上に、これらのデータは、スペクトル診断の定量的スケールを確立することができることを示唆している。
【実施例3】
【0081】
形態に対する再構成したスペクトル
図8は、3つの細胞の写真を示している。パネルAは、正常な細胞の写真を示している。パネルBは、形態に基づいて正常に見えるが、実際はLSIL/HSILを示す細胞スペクトルを有する細胞を示している。パネルCは、形態に基づいて正常に見えるが、実際はHSILを示す細胞スペクトルを有する細胞を示している。
【0082】
図8は、従って、細胞スペクトルを再構成する図2に示す方法の有用性を示している。図8に示す細胞の全ては、形態に基づいて正常に見える。従って、図8に示す細胞の従来の形態学的試験(例えば、PAP試験)は、結果として「正常」という診断になる。しかし、図2に関連して上述した本方法に従って生成した図8に示す細胞の再構成された細胞スペクトルにより、パネルB及びC内の細胞が異常であることが見出される。これらの細胞は、引き続き成長させた場合、最終的には、一般的にLSIL/HSIL及びHSILを示す形態上の特徴を発現させたであろうと考えられる。
【0083】
パネルA〜Cに示す細胞の再構成された細胞スペクトルをそれぞれ図8D〜図8Fに示している。図示のように、正常な細胞及び異常な細胞の再構成されたスペクトルは、同様に見えるが、実際は、正常な細胞を異常な細胞と区別することを可能にする差異を含む。例えば、本明細書で開示する自動主成分分析では、正常な細胞と異常な細胞を区別する。
【実施例4】
【0084】
試料調製
臨床口腔試料は、定期試験及び追跡調査が行われた後、「Tufts医療センター」(米国マサチューセッツ州ボストン)病理部の協力を得て取得したものである。試料(細胞学的ブラシ上)は、SurePath(登録商標)液(米国ノースカロライナ州バーリントン)中に貯蔵された。次に、細胞をブラシなしで攪拌し、残屑を除去するためにフィルタリングし、細胞遠心分離(CytoSpin、Thermo、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて反射基板(「low−e」スライド、「Kevley Technologies」、米国オハイオ州チェスターランド)上に堆積させた。
【0085】
正常な口腔細胞診断学試料は、ローカルIRBの下でノースイースタン大学の健康な研究所ボランティアから収集したものである。口腔の供給源により寄与される特定のスペクトル変化を相関付けるために、正常な口腔細胞のこれらの剥離を口の5つの領域から取得した。試料は、頬、舌、硬口蓋、歯茎、及び口腔底から採取した。試料採取の前に、被験者らは、一般的に口腔から残滓を取り除くために水で口を予めゆすいだ。次に、口腔膜細胞は、Fisherbrand殺菌されたポリエステル綿を使用したこのような領域の30秒間の洗浄により取得された。薬物代謝物実験では、600mgのイブプロフェン摂取の1時間後に、口腔粘膜細胞を同様に収集した。全ての細胞を直ちにSurePath(登録商標)固定液中に固定し、臨床試料に関して上述したように同様にlow−eスライド上に調製した。
【0086】
データ収集
PerkinElmerスポットライト400のFTIR画像化システム(「Perkin Elmer」、米国コネティカット州シェルトン)を使用して4.0×4.0mm2の試料点から、染色されていないスライドは、サイズが6.25×6.25μm2のピクセルを分析するIR光のビームにより調べられた。大気圧水蒸気スペクトル寄与を低減するために、計器光学台、赤外線顕微鏡、及び外部顕微鏡外被ボックスを乾燥空気(−40℃露点)の連続的な流れでパージした。以下のパラメータ、すなわち、4cm-1スペクトル解像度、Norton−Beerアポディゼーション、1レベルのゼロ充填、及び大気背景放射補正なしでデータを取得した。スペクトルベクトル(又はスペクトルピクセル)(各々、2cm-1間隔で4000〜700cm-1の範囲)が得られるように各ピクセルの2枚の相互追加干渉写真をフーリエ変換した。128枚の相互追加干渉写真を使用して16個の検出要素の全ての背景スペクトルを収集した。未加工データセットは、409,600個のスペクトルから成り、かつ各々、約2.54ギガバイトを占有する。干渉写真の形態内の空間データを回収し、次に、スペクトルピクセルを生成するために干渉写真をフーリエ変換する方法は公知であり、例えば、Griffiths及びde Haseth共著「フーリエ変換赤外線分光分析」、Elving、Weinefordner、及びKolthoff(編)、「John Wiley&Sons、」ニューヨーク(1986年)に説明されている。一例として、各干渉写真は、8,000個のデータ点を含むことができ、かつ試料のピクセルサイズの領域に対応することができる。次に、1次元フーリエ変換を各干渉写真に適用してスペクトルピクセルを生成することができ、各々のこのようなスペクトルピクセルは、例えば、1,600個の強度測定値を含み、強度測定値の各々は、特定の波数での強度を表している。
【0087】
本明細書で開示する細胞スペクトルを再構成する方法は、例えば、干渉計なしの他の手段により、かつ例えば単色赤外線レーザ又は調整可能フィルタを調節することにより回収されるスペクトルピクセルデータと共に使用することもできることが認められるであろう。
【0088】
画像処理
次に、図2に関連して先に開示した方法を用いて細胞の再構成された細胞スペクトルを生成した。特に、赤外線マイクロ分光計からの未加工のデータセットをPapMapというソフトウエアにインポートした。このプログラムは、大きなデータ行列に対応するために64ビットMATLAB[「The Mathworks」、米国マサチューセッツ州ナティック]に書き込まれている。PapMapは、各細胞に対して9個と100個の間のピクセルスペクトルとの個々のピクセルスペクトルから、マッピングモードで収集された個々の細胞のスペクトルを再構成する。この再構成は、どのピクセルスペクトルが画像マップの所定の細胞に属するかを検証することによって行う。これは、個々の細胞に属する隣接する領域が識別されるバイナリマスクを製造することによって達成される。このマスクは、アミドI強度の閾値を定めることによって確立される。
【0089】
細胞により占有される各隣接する領域に対して、最大アミドI強度を有するスペクトルから始まる細胞スペクトルを計算する。このスペクトルは、恐らく常に最大タンパク質強度を示す細胞の核からのものである。
【0090】
バイナリマスクによりスペクトルが細胞に関連付けられた状態で、全てのスペクトルは、相互追加され、次に、スペクトル品質を保証するためにいくつかの制約条件を受ける。これらの基準は、分散アーチファクトにより汚染される場合がある細胞の縁部からのスペクトルのような細胞スペクトルを汚染する不良の信号対ノイズを有する非常に弱いスペクトルの相互追加を防止するために課せられる。
【0091】
次に、相互追加された細胞スペクトル、並びに各細胞の座標を更に別のデータ解析に向けてエクスポートする。赤外線データ収集の後、Papanicolaouにより開発された標準的な方法を用いてスライド上の細胞を染色し、かつ細胞学的追跡調査に向けてカバースリップされる。
【0092】
結果及び説明
図2に関連して上述した方法に従って生成した再構成された細胞スペクトルを使用して正確かつ再現可能に様々な漸進的な状態で病変細胞を検出する可能性の例、すなわち、スペクトル細胞病理学つまりSCPを図10に示している。図10では、病変細胞は、スペクトル変化が起点ではなく単に疾患によりだけ引き起こされることを確認するために、口腔粘膜内の類似の起点の対照群と比較している。SCPの感度は、図10Aで見られるように劇的である。ここでは、「反応的変化」と診断された2人の患者、及び扁平細胞がんと診断された1人の患者の口蓋細胞からのスペクトルデータを6人のボランティアの正常な口蓋細胞からのスペクトルデータに照らしてプロットされている。反応的変化ありと診断された2人の患者は、口腔粘膜の扁平細胞がんの病歴も有し、2人の患者の反応診断は、2人の患者の細胞は以前の又は遷移中の悪性からの一部の残留性を有するので延期された反応診断である。3つの医学的な試料からの細胞の殆どは、形態学的に正常に見えるが(図10D)、正常な細胞の生化学(図10A)から逸脱する何らかの組成変化が共有されている。2つの反応性試料の全体は、癌試料の殆どと完全にクラスター化している(図10A)。この結果は、殆どの癌試料の大部分が非癌形態の反応細胞を含有するので予想されたものであり、一方、癌形態の細胞は、試料の少数を形成することが多い(図10E及び図10G)。実際は、妊娠前生検において観察することができるのは、癌形態を示す僅か1〜3個の細胞であり、僅か1〜3つの細胞は、病理診断には十分である。従って、早期癌診断は、1,000個の細胞中の少数の細胞の検出に基づくものであり、検出されない場合は、反応細胞の数にも関わらず、正常の診断と悪性の診断の間の差を意味することになる。
【0093】
SCPの使用により、反応細胞は、初めて、診断のために分析して癌細胞と比較することができる。反応細胞は、診断した癌試料に類似するスペクトルパターンを再現可能に生成し、それによって一部の悪性に関連付けられた変形が推定される。反応細胞は、「悪性関連の変化」(MAC)として公知である現象により、正常な細胞とは別々であるが癌患者からの形態学的に正常な細胞と共にクラスター化し、悪性関連の変化は、現在又は以前の癌腫を有する患者からの正常にみえる細胞の細胞核の差異として定めることができる。SCPの大きな可能性は、前癌状態により開始される組成状態に相関することができるMACを検出する感度にあると考えられる。病理学的スライド上で調製されるか又は調製されない場合もある少数の重度細胞のために生検の解釈を行う必要性はもはや存在しない。代替的に、SCPの感度により、生検全体を通して正確かつ再現可能に行うべき病理学的解釈が可能である。
【0094】
図10Aに描かれた惰円は、病理学の現行の方法により診断することができる癌形態の細胞を強調表示している。図10Eに示す細胞の例であるこれらの少数の細胞は、間隙なくかつ正常な細胞から最も遠くに離れてクラスター化し、正常な生化学から最大の組成変化を示している。SCPの実行により、従来的に、何も疑わずに疾患の経過状態により細胞が識別され、かつ癌形態を有する少数の細胞を正確に検出している。
【0095】
図10Bは、舌癌と診断された患者の2つの試料及び正常な舌細胞の4つの試料のPCAプロットを示している。2つの癌試料のうちの細胞診断学の現行の方法によって癌と診断することができる少数の細胞(赤色の正方形)のみである。これとは対照的に、SCPでは、典型的な舌細胞の正常な組成から大幅に変わる固有の構成変化が見出される(図10B)。試料の殆どは、重度癌細胞(図10G)に共通である形態学的特性がない解離細胞で構成されているが(図10F)、試料全体では、疾患状態(図3B)により引き起こされたスペクトルパターンが発生する。標準的な病理学では診断不可能である癌試料からの細胞を表すアスタリスクには、SCPが検出するのに十分であるスペクトル内で再現可能な一部の生化学的変化がある。ここでもまた、アスタリスクに見られる構成変化は、MACの結果である場合がある。図10Bは、正常な状態から反応又は前癌状態に遷移し、かつ引き続き舌の軽度又は高級の癌腫に進む細胞の検出の成功例を示している。ここでの結果は、口蓋の図10Aの結果に相関するものである。
【0096】
図10Cは、正常から疾患の間の範囲にある状態の試料を表す平均化された2次導関数の正規化されたスペクトルのスタックプロットを示している。アミドI帯域及び燐酸塩帯域において、有意な逆の傾向が存在する(1080cm-1及び1230cm-1でのホスホジエステル基−O−(PO2-−Oの振動は、一般的な生化学命名法に従って「リン酸塩帯域」と呼ばれる)。疾患が進行する時に、リン酸塩帯域が増加し、アミドIは強度が減少する。このアミドI傾向は、細胞が疾患に反応するので一般的なタンパク質の劣化及び異なるタンパク質の発現に関連付けることができる。逆に、燐酸塩吸収帯域強度は、癌細胞は複製速度の増大があるので増大する。更に、疾患が進行する際の新しいタンパク質の形成は、病変細胞のスペクトルにおいて再現可能である1618cm-1でのアミドI帯域の低周波数肩部によって示されている。更に、反応細胞の正規化されたスペクトル及び正常な形態の癌細胞の平均的な2次導関数の正規化されたスペクトルは、実質的には同一であり、全生検法を通して悪性関連の変化を検出するSCPの潜在機能を裏付けている。
【0097】
図10Cに示す再構成された細胞スペクトルは、本明細書において他の図面に示すスペクトルとは若干異なる。具体的には、図10Cに示すスペクトルは、波数に関する強度の2次導関数である(すなわち、d2I/dv2、ここで、Iは、再構成されたスペクトルの強度又は吸光率であり、vは、波数を表す)。
【実施例5】
【0098】
図11は、本明細書で開示する方法によって生成された再構成された細胞スペクトルを異なるタイプの細胞を区別するためにどのように使用することができるかの別の例を示している。図11のパネルAは、尿道の扁平上皮細胞を示している。図11のパネルBは、膀胱の尿路上皮性上皮細胞を示している。図11のパネルCは、パネルAに示す細胞に関する再構成されたスペクトルの波数に関する2次導関数を示している。同様に、図11のパネルDは、パネルBに示す細胞の再構成されたスペクトルの波数に関する2次導関数を示している。パネルEは、パネルA及びBに示すタイプの複数の細胞のPCAによる得点プロットを示しており、尿道細胞の得点は、黒丸として示されており、膀胱細胞の得点は、灰色の星として示されている。図示のように、プロット内の異なるクラスターに関する2タイプの細胞が、パネルEに示されており、尿道細胞は、膀胱細胞と容易に区別可能である。
【0099】
均等物
本発明のスペクトル細胞病理学的方法及びその付随する利点の多くは、以上の説明から理解されると考えられ、上述の形態が単にその例示的な実施形態に過ぎない本発明の精神及び範囲から逸脱することなく又はその主要な利点の全てを犠牲にすることなく様々な変更を行うことができることは明らかであろう。
【符号の説明】
【0100】
102 細胞試料を収集してスライド上に堆積させる段階
104 スペクトルデータを収集する段階
106 スペクトルデータを格納する段階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞のスペクトルを生成する方法であって、
(a)複数のスペクトルピクセルを受け取る段階、
を含み、
前記スペクトルピクセルの各々は、細胞の一部分に対応し、該スペクトルピクセルの各々は、複数の測定値に関連付けられ、該測定値の各々は、特定の波数の光の強度に関連付けられ、各スペクトルピクセルに関連付けられた該測定値の1つは、選別測定値であり、該選別測定値は、波数の帯域内の波数に関連付けられ、
(b)前記複数のスペクトルピクセルの部分集合を識別する段階、
を更に含み、
第1のピクセルが、前記部分集合内にあり、該第1のピクセルの前記選別測定値は、他のスペクトルピクセルの該選別測定値よりも大きいか又はそれに等しく、前記複数のスペクトルピクセルにおける他のピクセルは、それらが第1の基準を満たす場合に該部分集合内にあり、スペクトルピクセルは、そのスペクトルピクセルの選別測定値が第1の閾値よりも大きい場合に該第1の基準を満たし、
(c)スペクトルを生成する段階、
を更に含み、
前記スペクトルは、複数の再構成された測定値を有し、該再構成された測定値の各々は、特定の波数に対応し、該再構成された測定値の各々は、前記部分集合内の全ての前記ピクセルの特定の波数に関連付けられた前記測定値の合計に従って形成される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の閾値は、前記第1のピクセルの選別測定値の予め選択された百分率であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記波数の帯域は、下端及び上端を有し、該上端及び下端は、ユーザ選択可能な値であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記下端は、1640cm-1であり、前記上端は、1670cm-1であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各スペクトルピクセルに対する前記選別測定値は、そのスペクトルピクセルの関連の測定値のピーク値であり、該ピーク値は、ユーザ選択可能な波数に最も近いピークであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザ選択可能な波数は、1650cm-1であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のスペクトルピクセルにおけるピクセルは、それらが前記第1の基準及び第2の基準の両方を満たす場合に限り前記部分集合内にあり、ピクセルは、第2のピクセルの選別測定値に関連付けられた波数と第1のピクセルの選別測定値に関連付けられた波数の間の差が第2の閾値よりも小さい場合に該第2の基準を満たすことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の閾値は、ユーザ選択可能な数であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ユーザ選択可能な数は、4cm-1であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各スペクトルピクセルに関連付けられた前記測定値は、光強度測定値から導出された値を表すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
試験細胞の生理的状態を分析する方法であって、
(a)(i)複数のスペクトルピクセルを受け取る段階、
を含み、
前記スペクトルピクセルの各々は、細胞の一部分に対応し、該スペクトルピクセルの各々は、複数の測定値に関連付けられ、該測定値の各々は、特定の波数の光の強度に関連付けられ、各スペクトルピクセルに関連付けられた該測定値の1つは、選別測定値であり、該選別測定値は、波数の帯域内の波数に関連付けられ、
(ii)前記複数のスペクトルピクセルの部分集合を識別する段階、
を更に含み、
第1のピクセルが、前記部分集合内にあり、該第1のピクセルの前記選別測定値は、他のスペクトルピクセルの該選別測定値よりも大きいか又はそれに等しく、前記複数のスペクトルピクセルにおける他のピクセルは、それらが第1の基準を満たす場合に該部分集合内にあり、スペクトルピクセルは、そのスペクトルピクセルの選別測定値が第1の閾値よりも大きい場合に該第1の基準を満たし、
(iii)スペクトルを生成する段階、
を更に含み、
前記スペクトルは、複数の再構成された測定値を有し、該再構成された測定値の各々は、特定の波数に対応し、該再構成された測定値の各々は、前記部分集合内の全ての前記ピクセルの特定の波数に関連付けられた前記測定値の合計に従って形成される、
試験細胞のスペクトルを生成する段階と、
(b)前記試験細胞の前記再構成されたスペクトルが該試験細胞の生理的状態を示す所定の基準を有するか否かを判断する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記所定の基準は、異常対照上皮細胞スペクトルから又は正常対照上皮細胞スペクトルから生成されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試験及び対照試料内の前記上皮細胞は、内皮細胞、中皮細胞、又は尿路上皮細胞であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
試験細胞内の上皮細胞疾患を検出する方法であって、
(a)(i)複数のスペクトルピクセルを受け取る段階、
を含み、
前記スペクトルピクセルの各々は、細胞の一部分に対応し、該スペクトルピクセルの各々は、複数の測定値に関連付けられ、該測定値の各々は、特定の波数の光の強度に関連付けられ、各スペクトルピクセルに関連付けられた該測定値の1つは、選別測定値であり、該選別測定値は、波数の帯域内の波数に関連付けられ、
(ii)前記複数のスペクトルピクセルの部分集合を識別する段階、
を更に含み、
第1のピクセルが、前記部分集合内にあり、該第1のピクセルの前記選別測定値は、他のスペクトルピクセルの該選別測定値よりも大きいか又はそれに等しく、前記複数のスペクトルピクセルにおける他のピクセルは、それらが第1の基準を満たす場合に該部分集合内にあり、スペクトルピクセルは、そのスペクトルピクセルの選別測定値が第1の閾値よりも大きい場合に該第1の基準を満たし、
(iii)スペクトルを生成する段階、
を更に含み、
前記スペクトルは、複数の再構成された測定値を有し、該再構成された測定値の各々は、特定の波数に対応し、該再構成された測定値の各々は、前記部分集合内の全ての前記ピクセルの特定の波数に関連付けられた前記測定値の合計に従って形成される、
試験細胞のスペクトルを生成する段階と、
(b)前記試験細胞の前記生成されたスペクトルが該試験細胞内の疾患の存在を示す所定の基準を有するか否かを判断する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記所定の基準は、異常対照上皮細胞スペクトルから生成されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記試験及び対照試料内の前記上皮細胞は、内皮細胞、中皮細胞、又は尿路上皮細胞であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記上皮細胞疾患は、良性疾患、ウイルス性疾患、前癌、又は癌であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
試料内の細胞を分析する方法であって、
(a)(i)複数のスペクトルピクセルを受け取る段階、
を含み、
前記スペクトルピクセルの各々は、細胞の一部分に対応し、該スペクトルピクセルの各々は、複数の測定値に関連付けられ、該測定値の各々は、特定の波数の光の強度に関連付けられ、各スペクトルピクセルに関連付けられた該測定値の1つは、選別測定値であり、該選別測定値は、波数の帯域内の波数に関連付けられ、
(ii)前記複数のスペクトルピクセルの部分集合を識別する段階、
を更に含み、
第1のピクセルが、前記部分集合内にあり、該第1のピクセルの前記選別測定値は、他のスペクトルピクセルの該選別測定値よりも大きいか又はそれに等しく、前記複数のスペクトルピクセルにおける他のピクセルは、それらが第1の基準を満たす場合に該部分集合内にあり、スペクトルピクセルは、そのスペクトルピクセルの選別測定値が第1の閾値よりも大きい場合に該第1の基準を満たし、
(iii)スペクトルを生成する段階、
を更に含み、
前記スペクトルは、複数の再構成された測定値を有し、該再構成された測定値の各々は、特定の波数に対応し、該再構成された測定値の各々は、前記部分集合内の全ての前記ピクセルの特定の波数に関連付けられた前記測定値の合計に従って形成される、
試験細胞のスペクトルを生成する段階と、
(b)前記試験細胞の前記生成されたスペクトルが該試験細胞内の疾患の存在を示す所定の基準を有するか否かを判断する段階と、
(c)再構成された細胞スペクトルを形成する段階と、
を含み、
前記再構成された細胞スペクトルは、複数の再構成された強度を有し、該再構成された強度の各々は、特定の波数に対応し、該再構成された強度の各々は、前記部分集合内の前記ピクセルの特定の波数での強度測定値の合計に従って形成される、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2A−1】
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【図2A−2】
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【図2A−3】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−522260(P2011−522260A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511859(P2011−511859)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/045681
【国際公開番号】WO2009/146425
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(509248257)ノースイースタン ユニヴァーシティ (5)
【Fターム(参考)】