説明

細菌汚染防止のための食品処理に有用なバクテリオファージ組成物

【課題】食品の細菌汚染を防止するためのバクテリオファージ組成物、および該組成物を用いた食品における細菌の増殖防止方法を提供する。
【解決手段】ATCC寄託番号209999のB3および、ATCC寄託番号209998の119Uからなる群より選択される少なくとも1種のバクテリオファージ分離株を含んでなる、食品の大腸菌汚染を防止するための精製バクテリオファージ組成物。および、該組成物を食品に噴霧等により接触させる、大腸菌の食品内増殖防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸菌(Escherichia coli)による細菌汚染を防止するための食品処理に有用なバクテリオファージ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
米国疾病管理・予防センター(Centers for Disease Control and Prevention (CDC))の推定によると、毎年3300万人(すなわちアメリカ人のおよそ10人に1人)もの多数の人が食中毒に罹り、約9,000人が死亡している。食中毒は、1両日中に治癒するウイルス性胃腸炎、いわゆる「お腹にくる風邪」と間違えられることが多いので、食中毒に罹患した人の実数はおそらくこれより相当多いはずである[Cerrato,P., “When food is the culprit; food poisoning,” RN, 62(6):52(Jun. 1, 1999)]。国の食糧供給における食物由来病原体の存在は、地域住民の健康に影響を及ぼすのみならず、その国への来訪者や食品輸入国の消費者に病原体を蔓延させる可能性を示す[Buzbyら、”Economic costs and trade impacts of microbial foodborne illness," World Health Stat. Q., 50(1-2):57-66(1997)]。
【0003】
微生物汚染による食中毒を予防することは、食品加工業、監督機関、および消費者にとって重要な関心事である。食品の微生物汚染は、加工設備に入れる前にも、加工環境における二次汚染によっても、発生する。米国農務省食品安全・検査部(Food Safety and Inspection Service (FSIS))は、食物由来病原体の発生および病原体数を減少させるために、新たな危害分析重要管理点(HACCP)要件を制定した。食品加工業者はこうした規制を満たさなくてはならない。このような微生物減少を達成する手段は加工業者の自由裁量に任されているが、FSISは抗菌処理がHACCP計画の重要な構成要素となることを求めている。本発明の処理法は、本発明のバクテリオファージ組成物の製剤を使用するものであり、HACCP要件を満たすために有効である。
【0004】
微生物汚染のない製品を提供するために、家禽肉や獣肉の加工業者は、食品とする予定の家禽肉や獣肉組織を汚染する微生物の除去について重大な困難に直面している。
【0005】
大腸菌
大腸菌はほとんどの温血動物の正常な腸内細菌叢の一部をなすグラム陰性短桿菌である。この生物は大腸においてもっとも一般的な通性嫌気性菌であり、他の有害微生物の定着に抗して保護を与える。しかしながら、腸疾患を引き起こす5種類の別個の大腸菌群が存在する:(1)腸管組織侵入性大腸菌、(2)腸管病原性大腸菌、(3)腸管毒素原性大腸菌、(4)腸管凝集性大腸菌、(5)腸管出血性大腸菌[Pilotら、”Threats from the food we eat; includes related articles; New and Emerging Pathogens, part 3," Medical Laboratory Observer, 28:42(1996年4月)]。
【0006】
1982年に初めて報告された大腸菌O157:H7は、志賀赤痢菌様毒素(ベロ毒素)1および2を産生する腸管出血性大腸菌に属する[Pilotら(1996年4月);および”Medical Experts Urge Radiation of Beef to Kill Deadly Bacteria," The New York Times, 1994年7月14日、A15頁]。
【0007】
腸管内で大腸菌O157:H7によって産生される毒素は、軽い下痢から重症の出血性大腸炎までいかなることも引き起こしうるが、ここにおいて腸管内層の細胞が損傷を受け、それによって下血に至る。全体の16%もの症例において、この感染症はより重篤な状態、すなわち溶血性尿毒症症候群(HUS)へと進行する[Mackenzie, D. L., “When E. coli turns deadly,” RN, 62(7):28(1999年7月1日)]。HUSは、損傷を受けた腸管壁から細菌毒素が血流中に入り、腎臓に血液を供給する細動脈に移行し、続いてそれらの血管を損傷する場合に発生するが、このHUSは溶血性貧血、血小板減少、および急性腎不全を特徴とする。さらに、HUS患者のおよそ10〜50%は、心筋症、肺疾患、心膜液貯留、末期腎臓病、慢性高血圧、高血糖、および脳障害を含めた長期にわたる後遺症が現れる[Mackenzie, D. L. (1999年7月1日)]。
【0008】
大腸菌O157:H7は、米国におけるHUSの主原因であり、また、小児の急性腎不全の主原因でもある。大腸菌O157:H7感染の発生全体は不明であるが、シアトル地区における1994年の発生に基づく推計から、米国では毎年20,000例以上発生し、そのうち250例が死に至ることが示唆される[Mackenzie, D. L. (1999年7月1日);および”Ban the O157:H7 Bomb,” Nutrition Action Healthletter, 22:3(1995年1月/1995年2月)]。幼児、高齢者、および免疫系の弱まった人は、もっとも感染しやすく、さらに合併症を併発しやすい。
【0009】
大腸菌O157感染症の治療法はまったく知られていない[Nutrition Action Healthletter, 22:3(1995年1月/1995年2月)]。抗生物質は感染を阻止するためにはほとんど役に立たない[”Medical Experts Urge Radiation of Beef to Kill Deadly Bacteria,” The New York Times, 1994年7月14日、A15頁;およびCerrato, P. (1999年6月1日)]。
【0010】
大腸菌の上記菌株がこれほど危険である理由の1つは、この菌株が、コレラの原因となる細菌が病気を引き起こす前に菌数10,000,000以上も必要であるのと比較して、非常に小量、すなわち1,000以下の摂取で、病気を発症させることができるためである[Cerrato, P. (1999年6月1日)]。大腸菌O157:H7は69程度に少ない菌数で病気を発症させることができるとの報告がいくつかある[The New York Times, 1994年7月14日、A15頁]。大腸菌で汚染されたサイダー半カップほどで、腹痛、出血性下痢、嘔吐、発熱を引きおこすことがある["Roadside cider may be risky; may be contaminated with E. coli," Environmental Nutrition, 16:8(1990年9月)]。そのような少量の病原菌は通常の食肉検査法では検出不能であり、また、汚染食品の存在は視覚、味覚、臭覚によっても識別不能である[The New York Times, 1994年7月14日、A15頁]。同様に、この病原菌の酸耐性は他の病原菌に比して有利である。食物起因性疾患を防御する胃腸管の最初のラインの一つである胃酸は、大腸菌O157:H7に対してほとんど効果を示さない[Cerrato, P. (1999年6月1日)]。
【0011】
大腸菌O157は恒常的に健康な牛の糞便中に見いだされ、汚染された食物、水、および感染した人または動物との接触によって、人に感染する[Meadら、”Escherichia coli O157:H7,” The Lancet, 352(9135):1207-1212(1998年10月10日)]。感染症の伝染は、主として加熱が不十分な牛挽肉、汚染された飲料水、殺菌されていない牛乳の摂取に関連している。ハンバーガーは食品を介した大腸菌O157:H7感染発生の主要な媒介物である[Koutkiaら、”Enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7,” American Family Physician, 56:853(1997年9月1日)]。
【0012】
屠殺処理中に、感染牛の腸液または糞便が肉の表面にこぼれ落ち、肉を汚染する可能性がある。生肉の表面についた有害細菌は肉挽き加工の間に肉全体に混ぜ込まれることとなり、その場合、調理の加熱を凌いで生き残る可能性が高まる。1つのハンバーガーパティは多数の牛の肉を含む。
【0013】
現在、大腸菌O157:H7はベロ毒素産生性大腸菌血清型のなかで最も多く見られる。様々な情報源が示唆するところでは、この菌はすべての毒素産生性分離株の約60〜90%以上を占め、食物源が関与している場合の発生の大半の原因となっていた[Pilotら、(1996年4月)]。大腸菌O157:H7の分布はおそらく全世界にわたるであろう;症例の大部分は北米およびヨーロッパで報告されている[Pilotら、(1996年4月)]。
【0014】
細菌汚染を排除するための現行の食品処理法
A. 放射線照射
食品の放射線照射は、食品に電離放射線(イオン化エネルギーとも称する)を当てることによる食品の処理法である。この処理に用いられる放射線は、コバルトもしくはセシウムのいずれかの放射性同位体から、または制御された量の高エネルギー電子線、ガンマ線、もしくはX線を生じる装置から発せられる。こうした処理で、食品が放射能を有することはなく、またあり得ない[Greenbergら、”Irradiated Food," American Counsil on Sci. and Health Booklets, 1-28(1996年4月30日)]。
【0015】
食品を処理するために使用される放射線は「電離放射線」と称されるが、これはイオン、すなわち電荷を帯びた粒子、を生じるためである。X線、ガンマ線、および電子加速器によって発生する高エネルギー電子線を含む電離放射線は、可視光線、テレビ波、電波およびマイクロ波といった、他の非電離放射線よりも高いエネルギーを有する[Greenbergら、(1996年4月30日)]。
【0016】
食品の放射線照射は、食品の安全性問題に対する1つの解決法として提案された。食品の放射線照射は、小麦粉中の昆虫防除のために1963年にFDAによってはじめて認可され、ジャガイモの発芽防止のために1964年に再度認可された。後に、香辛料、農産物、および家禽肉に使用するために認可され、1998年12月3日には、病原微生物を制御するために牛肉、羊肉および豚肉について認められた[Klausner, A.,"Food Irradiation: We May Be Zapping Up The Wrong Tree," Environmental Nutrition, 17(12): 1(1994年12月31日)]。
【0017】
食品処理には2つの放射線源が実用的である。第1は、ガンマ線を発する放射性元素--コバルト60またはセシウム137--の入った厳重に密閉された金属容器である。ガンマ線は照射されるべき食品の方に向けられているが、食品それ自体はコバルトにもセシウムにも決して触れることはない。第2のタイプの放射線源は、X線および高エネルギー電子線を発生させる機械装置である。これらの線源はいずれも、照射された食品が放射性となるほどのエネルギーは有していない[Greenbergら、(1996年4月30日)]。
【0018】
放射線照射処理時に、食品はコンベヤーベルトに載せて密閉されたチャンバー内に運ばれ、そこで放射線源から高エネルギー線量の照射を受ける(通常は、放射性コバルトからのガンマ線)。このエネルギーは食品中の分子を破壊し、損傷の原因となる昆虫、カビ、真菌および細菌、ならびに食物起因性疾患を引き起こす病原体を死滅させる[Klausner, A. (1994年12月31日)]。
【0019】
消費者保護団体は、食品への放射線照射が万能の解決策ではないと警告する。事実、照射はそれ自体安全上の危険性をもたらすと彼らは主張する。たとえば、食品照射反対論者は、こうした処理が栄養素(ビタミンA、C、およびビタミンB群の1つであるチアミン)を激減させることを示す研究を引き合いに出す。放射線量が多ければ多いほど、損失も大きくなる。その上、照射された食品はさらに、栄養素が激減する通常の加工処理を受けねばならず、損失が倍加する[Klausner, A. (1994年12月31日)]。
【0020】
食品照射は、いずれも発ガン物質として知られるベンゼンおよびホルムアルデヒドといった残留物質を生成する。また、放射線分解生成物と称されるフリーラジカルおよび化学変化した食品成分を発生させるが、これらの長期的な健康への影響は不明である[Klausner, A. (1994年12月31日)]。こうした食品照射による変化が、ガンの増加につながる可能性があるとの仮説が取り上げられる(同上)。さらに、消費者受容に関する報告は様々である。The Economist に初めて報告された、放射線照射された牛肉の味覚検査は、消費者が「焦げた髪の毛」の味と評したため、無惨にも失敗した[Klausner, A. (1994年12月31日)]。
【0021】
細菌防除法としての放射線照射のもう1つの欠点は、加熱処理と同様に、放射線照射が未包装の食品中に、再蔓延から食品を守る活性物質を何も残さないことである[Greenbergら、(1996年4月30日)]。
【0022】
B. 肉の化学的処理
食肉製品中の微生物を減らすために、いくつかの化学的および物理的方法が提案された。たとえば、塩素もしくは二酸化塩素、オゾン、過酸化水素、乳酸、炭酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、および電気的刺激を利用することである。概して、これらの方法は微生物汚染の低減に関して限定的な効果しか示さなかったが、食肉製品の外見には影響を及ぼすと考えられる。加えて、こうした研究が示すところでは、大腸菌O157:H7のような病原体を死滅させるためには、しばしば容認しがたいほど高レベルの化学薬品を必要とする(同上)。
【0023】
たとえば、参考として本明細書に援用される米国特許第5,366,983号は、有効量の第4アンモニウム陽イオン界面活性剤、たとえばアルキルピリジニウム、特に塩化セチルピリジニウム(CPC)および臭化セチルピリジニウム(CPB)の水溶液を用いた処理によって、食肉製品のサルモネラ菌(Salmonella)汚染を除去または防止する方法を開示している。
【0024】
放射線照射による駆除は、現在では禁止されている燻蒸剤、二臭化エチレン(EDB)のかつての用途を一部代替することができる。こうした代替可能性が、米国における放射線照射への新たな関心の主要な理由の1つであるが、それは、現在EDBの代わりに用いられる化学燻蒸剤が、それを使用しなければならない労働者への危険を高めることを含めて、重大な欠点を抱えているためである[Greenbergら、(1996年4月30日)]。
【0025】
化学的消毒剤の他の欠点は、こうした化学薬品の残留物が必ず食品に残ることである[Greenbergら、(1996年4月30日)]。
【0026】
化学的消毒剤による処理は、耐性菌を生じる可能性もある[”Growing Menace: Antibiotic-Resistant 'Supergerms'," The Int'l. Council for Health Freedom Newsletter, II(3-4):18 (1998年、秋); Freeman, C., “Antimicrobial Resistance: Implications for the Clinician," Critical Care Nursing Q., 20(3):21(1997年、11月)]。
【0027】
C. パルス光
細菌汚染を除去するために食品を処理するさらに別の方法が、パルスパワー励起法(PPET)によって発生する高輝度発光による処理である[MacGregorら、”Light inactivation of food-related pathogenic bacteria using a pulsed power source,” Letters in Applied Microbiology, 27(2):67-70(1998年)]。この方法は、光源において、数メガワット(MW)ものピーク電力を、極めて短い通電時間(約1(mu)s)に放散させることを含んでなる。光源を、従来の持続的な通電操作のもとで達成されるよりも強い電場にさらすと、殺菌作用のある、より短い波長の光が一層多く発生することとなる。
【0028】
パルス光放射は露出表面上の細菌汚染を顕著に減少させることしかできないため、上記方法の有用性は限られる。こうした方法は例えば挽肉ハンバーガーの処理には役に立たない。このことが重要であるのは、最近の研究が、例えばリンゴのような食材の内部に大腸菌が存在する可能性を示しているためであり、これらの食材はパルス光の方法によって処理できないと考えられる[Buchananら、”Contamination of intact apples after immersion in an aqueous environment containing Escherichia coli O157:H7,” J. Food Prot., 62(5):444-50(1999年5月)]。
【非特許文献1】Cerrato,P., “When food is the culprit; food poisoning,” RN, 62(6):52(Jun. 1, 1999)。
【非特許文献2】Buzbyら、”Economic costs and trade impacts of microbial foodborne illness," World Health Stat. Q., 50(1-2):57-66(1997)。
【非特許文献3】Pilotら、”Threats from the food we eat; includes related articles; New and Emerging Pathogens, part 3," Medical Laboratory Observer, 28:42(1996年4月)。
【非特許文献4】”Medical Experts Urge Radiation of Beef to Kill Deadly Bacteria," The New York Times, 1994年7月14日、A15頁。
【非特許文献5】Mackenzie, D. L., “When E. coli turns deadly,” RN, 62(7):28(1999年7月1日)。
【非特許文献6】”Ban the O157:H7 Bomb,” Nutrition Action Healthletter, 22:3(1995年1月/1995年2月)。
【非特許文献7】Nutrition Action Healthletter, 22:3(1995年1月/1995年2月)。
【非特許文献8】"Roadside cider may be risky; may be contaminated with E. coli," Environmental Nutrition, 16:8(1990年9月)。
【非特許文献9】Meadら、”Escherichia coli O157:H7,” The Lancet, 352(9135):1207-1212(1998年10月10日)。
【非特許文献10】Koutkiaら、”Enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7,” American Family Physician, 56:853(1997年9月1日)。
【非特許文献11】Greenbergら、”Irradiated Food," American Counsil on Sci. and Health Booklets, 1-28(1996年4月30日)。
【非特許文献12】Klausner, A.,"Food Irradiation: We May Be Zapping Up The Wrong Tree," Environmental Nutrition, 17(12): 1(1994年12月31日)。
【非特許文献13】”Growing Menace: Antibiotic-Resistant 'Supergerms'," The Int'l. Council for Health Freedom Newsletter, II(3-4):18 (1998年、秋)。
【非特許文献14】Freeman, C., “Antimicrobial Resistance: Implications for the Clinician," Critical Care Nursing Q., 20(3):21(1997年、11月)。
【非特許文献15】MacGregorら、”Light inactivation of food-related pathogenic bacteria using a pulsed power source,” Letters in Applied Microbiology, 27(2):67-70(1998年)。
【非特許文献16】Buchananら、”Contamination of intact apples after immersion in an aqueous environment containing Escherichia coli O157:H7,” J. Food Prot., 62(5):444-50(1999年5月)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
当技術分野においては、大腸菌、特に毒素産生性大腸菌、による細菌汚染を除去するために食品を処理する優れた組成物および方法が必要とされている。本発明はこうした必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、大腸菌、特に毒素産生性大腸菌、による細菌汚染を最小限に抑え、もしくは除去するための食品処理に有用な新規ファージ組成物に関する。このファージ組成物は、適当な担体を用いて製剤化することができる。
【0031】
また、食肉(家禽肉、牛肉、羊肉および豚肉を包含するがこれに限定されない)、ジュース、香辛料および農産物といった食品を処理する方法も本発明に含まれる。
【0032】
前記の一般的説明と以下の詳細な説明はいずれも、例証的かつ説明的なものであって、特許請求の範囲に記載された発明をさらに説明することを意図している。その他の目的、効果、および新たな特徴は、以下の発明の詳細な説明から当業者に容易に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、大腸菌、特に毒素産生性大腸菌、による細菌汚染を最小限に抑え、もしくは除去するための食品処理に有用な新規ファージ組成物に関する。このファージ組成物は、適当な担体を用いて製剤化することができる。
【0034】
バクテリオファージB1およびB3は、宿主として大腸菌O157:H7株を用いて、生下水から分離された。ファージ146Aおよび119Uは尿路感染(UTI)分離株から分離された。ファージB1およびB3は、1998年6月24日に受託番号203000および209999としてAmerican Type Culture Collection (Manassas, VA)に寄託された。ファージ146Aは1997年4月14日に受託番号55950として、また、ファージ119Uは1998年6月24日に受託番号209998として、いずれもAmerican Type Culture Collectionに寄託された。バクテリオファージ組成物は水性または非水性媒質中に存在することができる。
【0035】
本発明は、食品での大腸菌の増殖を防止するために、微生物の増殖を抑制するのに有効な量のバクテリオファージ組成物と食品を接触させることを含んでなる、食品での微生物の増殖を妨げる方法を提供する。ここで上記組成物は、バクテリオファージ分離株B1、B3、119U、146A、もしくはそれらの混合物を含んでなる。食品での微生物の増殖防止は、ヒトや動物において病気を引き起こす、あるいは摂取前に食品の腐敗を引き起こす可能性のある生存微生物が全くない、またはこれを最低数含有する食品を提供することを目的としている。
【0036】
食品での微生物の増殖防止は、以下の機序を包含することを意図するものであるが、それに限定されない:(1)付着している微生物の食品からの除去;(2)食品への微生物の付着の防止;(3)食品に付着した微生物の殺菌もしくは不活性化;ならびに(4)食品には付着していないが、加工処理時に、例えば冷却槽内で、食品に関わる液体中に存在するか、または食品調理に関わる表面、そうした表面(たとえば調理台、まな板およびシンク)上に残存する液体、ならびに食品調理および食品の消毒に使用された道具に存在する微生物の死滅もしくは不活性化。
【0037】
本発明は、食品加工業において重要な用途を有するが、家庭や施設での食品調理についても同様である。本発明のバクテリオファージ組成物は簡単に入手可能であり、本発明の方法を実施するコストは、既存の抗菌処理と比較して高くない。たとえばリン酸三ナトリウムを用いた既存の処理とは異なり、本発明のバクテリオファージ組成物の使用は、食品の外観、色、味、もしくは食感を変化させない。その上、本発明のバクテリオファージ組成物は毒性がない。
【0038】
バクテリオファージ組成物は、食品に存在する大腸菌を殺すために十分な時間、適用される。バクテリオファージ組成物の適用時間は、結果的に食品での大腸菌の増殖を顕著に防止するのに十分な時間とすることが重要である。
【0039】
また本発明は、本発明のバクテリオファージ組成物を食品と接触させる方法を包含する。その方法は、組成物を食品上に噴霧もしくは霧吹きすること、または本発明の1以上のバクテリオファージを含んでなる組成物中に食品を浸すことを包含するが、これに限定されない。
【0040】
本発明は、噴霧、霧吹き、ディッピング(dipping)、ソーキング(soaking)を含めた何らかの直接的な手段によってバクテリオファージ組成物を食品と接触させる、あらゆる方法を包含することを意図するものである。ただし、本発明は、例えば加工、調理、保存、および/または包装の間に食品が接触する道具や食品加工調理表面を本発明のバクテリオファージ組成物で処理するといった、本発明のバクテリオファージ組成物と食品との間接的な手段による接触を包含することも意図する。
【0041】
バクテリオファージ組成物と食品とを接触させるいかなるタイプの方法も、適用時間を短くすることが可能である限り、本発明の方法として有用である。食品の噴霧または霧吹きを提供するキャビネットを利用する方法は、本発明に有用である。食品加工プラントにおける加工ライン上のこうしたキャビネット内で用いる機械類は、食品に関する有効な抗菌効果を達成する一方で、適用時間を最小限にまで短くするように適応させることができる。
【0042】
本発明の方法は、例えば、冷水の入った冷却槽に浸漬されていた冷蔵後の鶏肉を処理する家禽肉加工プラントで役立つ。鶏肉を冷却槽から取り出し、鶏肉において微生物の増殖を顕著に阻止するのに十分な適用時間のあいだ、本発明のバクテリオファージ組成物を用いて処理する。処理された鶏肉は、その後、さらに洗浄やすすぎをすることなく包装される。しかしながら、必要と判断されれば、前記方法は、包装前に最低1回の鶏肉の洗浄ステップを包含してもよい。任意の洗浄ステップは、食品に水を噴霧もしくは霧吹きすること、または水の入った容器もしくは水槽に食品を浸すことを包含する。
【0043】
さらに、本発明の方法は、食品を本発明のバクテリオファージ組成物と接触させる前に、処理前の食品における微生物の存在を判定するための判定ステップを包含してもよい。微生物の存在を迅速に判定するあらゆる従来法を判定ステップとして使用することができるが、これには例えば、PCRおよびイムノアッセイがある。
【0044】
さらに、本発明の方法は、バクテリオファージ組成物と接触した後の食品表面に本発明のバクテリオファージ組成物が存在することを判定するステップを含んでいてもよい。この判定は、接触ステップの直後に、もしくは数回の洗浄ステップの直後に行われる。たとえば、本発明のバクテリオファージ組成物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に適した状態で食品の組織から抽出される。
【0045】
家庭、レストランまたは施設の食品調理はもとより食品加工業は、多数の異なる食品において、および/または、食品やジュースもしくは食品由来の液体が接触する表面において、広範な汚染微生物の増殖を防止するための、より有効な製品および処理法を必要としている。このことは、食品の表面に付着している微生物について特に当てはまる。食品由来の病原微生物によって引き起こされる病気の数が次第に増加しているために、食品加工業は現在、より広範囲の微生物を除去および阻止する、より有効な方法を必要としている。さらに特に食品汚染の結果として重大なヒト疾病を引き起こすことで知られている、例えば大腸菌O157:H7のような毒素産生性大腸菌といった病原微生物に対する、より有効な方法を必要としている。本発明は、少なくとも1つの本発明のバクテリオファージを含んでなる組成物を提供し、また、食品の表面および内部で、さらに食品およびその調理に関わる液体中および表面上でも同様に、微生物の増殖を防止する方法を提供する。このような防止方法は、汚染された食品からの二次汚染を防ぐ;付着している微生物を食品から除去する;微生物の食品への付着を阻止する;および、食品に付着したままの微生物の増殖を防止するうえで重要な目標である。さらに、本発明の方法は、食品加工プラントでの使用に容易に適合させることができる。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明を例証するために示される。しかしながら、本発明はこれらの実施例に記載された特定の条件もしくは詳細事項に限定されないことを理解すべきである。明細書全体を通じて、米国特許を含めた、公に利用できる文書に対するいかなる言及も、すべて、特に参考として含めるものとする。
【0047】
実施例1
この実施例の目的は、新規バクテリオファージB1、B3、および119Uの分離および特徴づけについて説明することである。
【0048】
バクテリオファージB1、B3、および119Uは、宿主として大腸菌O157:H7株を用いて生下水から分離された。これらの株は米国特許第6,121,036号に記載の方法に従って分離された。この特許は特に参考として含めるものとする。
【0049】
その方法は下記のステップを含んでなる。(a)ブドウ球菌、ヘモフィルス属、ヘリコバクター属、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、連鎖球菌、ナイセリア属、クレブシェラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、バクテロイデス属、シュードモナス属、ボレリア属、シトロバクター属、エシェリキア属、サルモネラ属、プロピオニバクテリウム属、トレポネーマ属、赤痢菌、腸球菌、およびレプトスピラ菌からなる群から選択される少なくとも1つの細菌に対するバクテリオファージを含有するサンプルを取得する;(b)該サンプルをリン酸緩衝生理食塩水中に分散させる;(c)細菌を保持するがバクテリオファージは通過させるフィルターを通して、分散サンプルを濾過する;(d)フィルターを通過したバクテリオファージを精製する;(e)少なくとも1つの細菌を含有する培地中でバクテリオファージを増殖させる;(f)約8時間後にプラーク当たり約108〜109バクテリオファージより高い力価を達成するバクテリオファージ調製物を選択し分離することにより、分離されたバクテリオファージを得る;(g)分離されたバクテリオファージを精製する;そして(h)ステップ(g)で精製された分離バクテリオファージをステップ(e)に使用して、ステップ(e)〜(g)を少なくとも5回繰り返すことにより、バクテリオファージ調製物を取得する。
【0050】
ファージ分離株はすべて、純粋培養物を得るために最低3回はプラーク精製を行った。大規模調製は、CsCl平衡密度勾配遠心法を用いて実施した[Gilakjanら、J. Bacteriol., 181: 7221-7(1999)]。
【0051】
バクテリオファージは主に6つの科に分けられるが、そのうちの1つがマイオウイルス科であって、T-偶数ファージとして知られている(米国特許第6,090,541号)。ファージB1およびB3は形態がT-偶数ファージ(すなわち、T2、T4およびT6)に類似しており、このT-偶数ファージには十分に特徴づけられているT4が含まれる。
【0052】
ファージ119Uは、そのゲノム(配列)、宿主域、および毒性において独特である;これはK1株およびK5株抗原の両方のリアーゼ遺伝子を有する;毒性はなく、所期の効果を奏する。ファージ119Uは、44 kbの直鎖状二本鎖DNAゲノムを有し、非常に毒性の強い大腸菌K1株およびK5株に対して極めて有効であるが、これはその配列がK1-およびK5-特異的タンパク質をコードしているためである。図1はファージ119Uのオープンリーディングフレーム(ORF)の説明を示す。ファージ119Uには、溶原性、水平遺伝子伝播、ビルレンス遺伝子(細菌宿主に対する毒性を賦与する)、または毒素遺伝子(細菌宿主に対する毒性を賦与する)の証拠がない。
【0053】
実施例2
この実施例の目的は、バクテリオファージ146Aを分離して、特徴づけることである。
【0054】
ファージ146Aは、尿路感染(UTI)分離株に対して、実施例1に記載の方法を用いて分離された。
【0055】
ファージ146Aは、やはりT-偶数ファージに類似しているが、他のものよりやや小さい頭部構造を有すると思われる[Aebiら、”Comparison of the Structural and Chemical Composition of Giant T-even Phage Heads," J. Supramol. Struct., 5(4):475-495(1977); Russell, R. L., "Comparative Genetics of the T Even Bacteriophages,” Genetics, 78(4):967-988(1978); およびKutterら、"Evolution of Tr-related Phages," Virus Genes, 11(2-3):285-297(1995)]。
【0056】
実施例3
この実施例の目的は、バクテリオファージB1およびB3の特徴をさらに明らかにするために、それらの制限酵素消化物および部分配列を調製することである。
【0057】
制限酵素消化物
フェノール/クロロホルム抽出法によって、CsClストックからB1およびB3のDNA調製物を作製した[Chomczynskiら、Analyt. Biochem., 162:156-159(1987)]。
【0058】
ファージB1およびB3の制限酵素消化を行った。消化したDNAを0.6〜0.7% TAE[トリス-酢酸-エチレンジアミン四酢酸(EDTA)]泳動バッファー、アガロースゲルで、λHinD IIIマーカーとともに泳動した。制限酵素EcoRI、BamHI、HindIII、PstI、XhoIおよびBglIはいずれもB1およびB3 DNAのどちらも切断することができなかった。切断した酵素はDraIおよびVspIの2つのみであった。
【0059】
上記はT-偶数ファージに典型的な結果である;T-偶数ファージのDNAは、シチジンの代わりにD-グルコシルヒドロキシメチルシチジンを含有し、これがほとんどの制限酵素の切断を阻止する。DraIおよびVspIは、その認識配列にG-C塩基対が存在しないために、切断可能となる。B1、B3およびT4のDraIおよびVspI消化物の制限パターンはすべて異なっている。
【0060】
ファージB1およびB3の制限酵素地図を作成したが、得られた地図は他の公表されたDNA制限酵素地図のすべてと比較して、独特であった。
【0061】
部分配列決定
ファージB1の頭部および尾部のDNA配列をそれぞれ図2および図3に示し、ファージB1の尾部のアミノ酸配列を図4に示す。さらに、ファージB3の頭部および尾部のDNA配列をそれぞれ図5および図6に示し、ファージB3の尾部のアミノ酸配列を図7に示す。ファージB1およびB3は、約150,000 bpのゲノムを有すると推定される。
【0062】
実施例4
この実施例の目的は、多数の尿路感染(UTI)大腸菌分離株に対するバクテリオファージB1、B3、146Aおよび119Uの宿主域を決定することである。バクテリオファージ119Uは大腸菌K1株に対して特異的であり、さらにおそらく大腸菌K5株に対しても特異的である。
【0063】
B1、B3、146Aおよび119Uの宿主域
UTI細菌分離株のそれぞれの菌叢上に104 pfuの各ファージをスポットし、そのプレートを37℃で一晩インキュベートした。プラス(+)は完全な透明化を示し、プラス(t)(+(t))は濁りのあるスポットを示す。プラス(p)(+(p))は、小さな個別のプラークのあるスポットを表し、マイナス(-)はファージが細菌分離株にまったく影響を与えなかったことを示す。
【0064】
4種のファージのすべてが、かなり広範な宿主域を示した。4種のファージ調製物の宿主域は、個別には30から60%であり、全体としては84%であった。図8に示すように、それぞれのファージ分離株は、大腸菌分離株の少なくとも40%を溶菌した。さらに、これらのファージは、細菌分離株を溶菌して透明化する能力において重複するので、相互に補完しあう。
【0065】
具体的には、ファージB1およびB3は、61の大腸菌UTI分離株のうち、それぞれ57%および49%を溶菌し、それに加えて大腸菌K12株を溶菌した;さらにファージ146Aおよび119Uは、61の大腸菌UTI分離株のうち、それぞれ31%および30%を溶菌した。図8を参照されたい。
【0066】
T4ファージはUTI分離株をまったく溶菌しなかったが、大腸菌K12株(ATCC寄託番号29425)のみには増殖した(データは記載せず)。
【0067】
実施例5
この実施例の目的は、尿中で増殖した感受性細菌を溶菌するファージの最小量を決定することによって、ファージ119UおよびB3の効力を検討することである。
【0068】
使用した尿は、健康な成人男性から採取し、0.45μMフィルターを通して滅菌した。尿を入れた50mlフラスコに、大腸菌119UのLB一晩培養液100μlを接種した。接種菌液は遠心沈澱して、尿中で洗浄し、残存するLB培地を完全に除去した。102、104および106 pfuのファージ119UもしくはB3を初めに添加したが、1つのフラスコにはファージを加えなかった。培養液は37℃で穏やかに振盪しながらインキュベートした(New Brunswickインキュベーターにおいて、200 rpm)。細菌の増殖をモニターするためにOD 600を測定した。
【0069】
その結果、ファージ119Uは102 pfu程度の少数で培養物を溶菌することが分かった。時間経過に伴う細菌の増殖をファージ濃度と対比して示す、図9(ファージ119U)および10(ファージB3)を参照されたい。ファージの不在下では、細菌の増殖(吸光度に相関する)は劇的に増加するが、ファージの存在下では、細菌の増殖は0付近にまで急速に減少した。
【0070】
実施例6
この実施例の目的は、ファージ119UおよびB1の毒性を調べることである。
【0071】
マウスにファージ119Uを大量に(有効レベルの最大で106倍)注射した後、急性毒性はまったく見られず、一方ファージB1は動物においてまったく毒性を示さなかった。
【0072】
ファージ119UおよびB1の毒性を試験するために、3.4 x 1011 pfu/ml(ファージ119U)および3.2 x 1012 pfu/ml(ファージB1)の各ファージのアリコートが急性毒性試験に備えて用意され、PBSでサンプルを希釈することによって最終力価を1010および106 pfu/mlとした。各ファージの106 pfu/mlストックについてカブトガニ血球抽出物(LAL)によるリムルス試験を行った。ファージB1および119Uのサンプルに関する内毒素レベルは、それぞれ約6 EU/mlおよび<6 EU/mlであると測定された。
【0073】
急性毒性試験は、30匹のCD-1雌マウス(19〜21 g)を用いて実施された。マウスは5匹ずつ6群に分け、以下のように処理した:
グループ 1:注射なし
グループ 2:100μlの滅菌生理食塩水を腹腔内注射する
グループ 3:100μlのファージB1(109 pfu)を腹腔内注射する
グループ 4:100μlのファージB1(105 pfu)を腹腔内注射する
グループ 5:100μlのファージ119U(109 pfu)を腹腔内注射する
グループ 6:100μlのファージ119U(105 pfu)を腹腔内注射する
【0074】
注射後3日にわたって、マウスをモニターした(目視観察、無作為抽出体温)。実験群のすべてのマウスが活発で、しかも健康であり、対照群と同じであるように見えた。このことから、本発明に従って得られたファージには毒性がないことが実証される。
【0075】
実施例7
この実施例の目的は、毒素産生性大腸菌O157を含めた、ヒトおよびブタ大腸菌の33の異なる菌株および15の異なる血清型に対して、ファージB1およびB3の宿主域を決定することである。菌株はリサーチ・コレクションから得られた。
【0076】
104 pfuの各ファージを各細菌分離株の菌叢上にスポットし、そのプレートを37℃で一晩インキュベートした。プラス(+)は完全な透明化を示し、マイナス(-)はファージが細菌分離株に何の影響も与えなかったことを表す。さらにプラス/マイナス(+/-)は、バクテリオファージが大腸菌分離株に対して、部分的に有効であったことを示す。
【0077】
ファージB1およびB3はいずれも、毒素産生性大腸菌O157株に対するものも含めて、広範な宿主域を示した。図11を参照されたい。ファージB1は、33菌株のうち26を溶解する、すなわち、それらに対する活性を有しており(79%)、さらに、大腸菌の15の血清型のうち10を溶解する、すなわち、それらに対する活性を有していた(67%)。ファージB3は、33菌株のうち27を溶解する、すなわち、それらに対する活性を有しており(82%)、さらに、大腸菌の15の血清型のうち11を溶解する、すなわち、それらに対する活性を有していた(73%)。
【0078】
上記の結果は、有毒および無毒の大腸菌株による食品汚染を防止し、もしくは処理するための、本発明のバクテリオファージ組成物の有用性を実証する。
【0079】
本発明の方法および組成物において、本発明の精神または範囲から逸脱することなく様々な改変および変更を行うことができることは当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明は、この発明の改変および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にあるならば、それらを包含することを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】ファージ119Uのオープンリーディングフレーム(ORF)の説明を示す。
【図2】ファージB1の頭部のDNA配列を示す。
【図3】ファージB1の尾部のDNA配列を示す。
【図4】ファージB1の尾部のアミノ酸配列を示す。
【図5】ファージB3の頭部のDNA配列を示す。
【図6】ファージB3の尾部のDNA配列を示す。
【図7】ファージB3の尾部のアミノ酸配列を示す。
【図8】多数の大腸菌分離株に対するバクテリオファージB1、B3、146Aおよび119Uの宿主域を示す。
【図9】ファージ119Uの濃度に対する細菌増殖の経時変化を示す。
【図10】ファージB3の濃度に対する細菌増殖の経時変化を示す。
【図11】毒素産生性大腸菌O157を含めた、ヒトおよびブタ大腸菌の33の異なる菌株、および15の異なる血清型に対するファージB1およびB3の宿主域を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATCC寄託番号209999のB3および、ATCC寄託番号209998の119Uからなる群より選択される少なくとも1種のバクテリオファージ分離株を含んでなる、食品の大腸菌汚染を防止するための精製バクテリオファージ組成物。
【請求項2】
ATCC寄託番号203000のB1およびATCC寄託番号55950の146Aからなる群から選択される少なくとも1つのバクテリオファージ分離株をさらに含んでなる、請求項1に記載のバクテリオファージ組成物。
【請求項3】
O157:H7, O157-VT, O26-VT, O1-VT, O5-VT-EAE, O16-VT-EAE, O26-VT-EAE, O157-STB-LT-F4, O139:K82-VT2-F107, NT-VT2およびNS-VT2からなる群より選択される血清型を有する大腸菌株の食品における増殖を防止する方法であって、該大腸菌株の増殖を抑制するのに有効な量の、ATCC寄託番号209999のB3および、ATCC寄託番号209998の119Uからなる群より選択される少なくとも1種のバクテリオファージ分離株を含んでなるバクテリオファージ組成物と、前記食品を接触させることを含んでなり、その際、前記バクテリオファージ組成物の適用時間は、食品での該大腸菌株の増殖を防止するために少なくとも一瞬間とする、上記方法。
【請求項4】
前記接触が噴霧、霧吹き、ディッピング、もしくはソーキングによる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
バクテリオファージ組成物を除去するために食品を水性媒質と接触させる洗浄ステップをさらに含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
食品が果汁、野菜汁、農産物、鶏肉、牛肉、羊肉および豚肉からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
該大腸菌株が前記の毒素産生性大腸菌O157株である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
バクテリオファージ組成物が、ATCC寄託番号203000のB1およびATCC寄託番号55950の146Aからなる群から選択される少なくとも1つのバクテリオファージ分離株をさらに含んでなる、請求項3に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−86320(P2008−86320A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259294(P2007−259294)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【分割の表示】特願2002−546671(P2002−546671)の分割
【原出願日】平成13年11月15日(2001.11.15)
【出願人】(503181255)ナイモックス ファーマシューティカル コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】