説明

組み込まれた電気部品を備える多層プリント回路基板構造およびそれを製造するための方法

【課題】多層プリント回路基板構造およびそれに関連する製造方法を提供するものであり、比較的に安いコストおよび高い機能的信頼性でもって、1つかまたはそれ以上の電気部品を多層構造の内部に組み込むのを可能にする。
【解決手段】電気絶縁性層7、9及び導電路構造10、11からなる積層スタックと、前記積層スタックの内部に存在し、該積層スタックの表面の広がりのうちの部分領域においてのみ横方向に広がっており、少なくとも1つの受動的又は能動的な電気部品2と、関連の再配線4、5とが取り付けられているインサート1とを備える多層プリント回路基板構造であって、前記インサート1が、該インサートの両面をカバーする2つの全領域に及ぶ電気絶縁性の液体レジン層又はプリプレグ層7、9の間に埋め込まれており、該インサートの前面が、当該構造の圧縮または積層時に液化するレジン材料によってすき間なく囲まれている多層プリント回路基板構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載される多層プリント回路基板構造およびそれに関連する製造方法に関する。ここで、電気部品という用語は、電子部品も含む。
【背景技術】
【0002】
近年、電気絶縁性でありかつ/または導電路構造を備えているいくつかの層からなる積層スタックと該積層スタック内部に少なくとも1つの受動的または能動的な電気部品を備える多層プリント回路基板構造は、コンデンサおよび抵抗器のような受動的電気部品および/または半導体チップのような能動的電気部品をいわゆる多層型のプリント回路基板の内部に組み込むために、重要性が増大している。多層構造は、例えばプリプレグ樹脂材料からなる次々に積み重ねられたいくつかの電気的絶縁層または誘電体層からなる積層スタックを備え、導電路構造を付加された適切な基板を含む電気的導体構造平面を挿入される。積層スタックは、例えば、誘電体プリプレグ層を使用して貼り合わせることによってあるいはプレスすることによって完成し、次々に積み重ねられた層の少なくともいくつかは、積層スタックを形成するためにそれらの層が次々に積み重ねられる前に、片面または両面上に、所望の電気的導体パターンとして構造化された電気的導電層を提供される。このために、エポキシ樹脂が、いわゆる内側プライ、すなわち、積層スタックの内部に配置されかつ導電路構造を備える層のための銅張を備える基板材料として頻繁に使用される。いわゆる外側プライ、すなわち、導電路構造を備える外側層を構造化するために、銅箔が、通常、誘電体プリプレグ層上に配置され、プレス処理によって、プリプレグ層にしっかりと結合される。
【0003】
能動的および/または受動的な電気部品をプリント回路基板にそのような形で組み込むために、1つかまたはそれ以上のさらなる層を付加して積層スタックを完成させる前に、そのような部品を、導電路を備える電気的絶縁ベース層上の導電路のない領域に取り付けることが知られており、そして、全体構造が、お互いに貼り合わせられ、かつ、プレスされる。この場合、そのために、部品を備えるベース層を、全体領域設計である次の誘電体層または電気的部品の領域に窓領域または切り抜き領域を備える次の誘電体層に接合することは一般的なことである。この文脈においては、窓は、関連する層を完全に貫通する開口と解釈され、切り抜きは、関連する層の片面だけにその層の厚さよりも浅い深さに形成された凹部と解釈される。電気部品の端子コンタクトパッドが、ベース層上の導体構造に、または、ヴィアの助けによって積層スタックのその他の平面の導体構造にコンタクト接続され、また、それらのヴィアは、わかりやすいように、この文脈においては、コンタクトパッド上で終端するブラインドホールコンタクトと解釈される。あるいは、電気部品は、ベース層の電気的に接触する領域においてベース層上に取り付けられ、そこの導体構造に電気的に直接に接続される。これらの様々な種類の多層プリント回路基板構造は、例えば、特許出願公報第DE196−27−543A1号、特許公報第EP1−230−680B1号、および、学術論文であるW.Bauer and S.Purger, Integration aktiver und
passiver Bauelemente in die
Leiterplatte − Alles inklusive − “Integration of active and passive components in the printed circuit board − including all − ”,EPP November 2003の第48頁に記載されている。
【0004】
ドイツ特許出願公報第DE31−25−518A1号には、電気部品を外側回路に接続するための薄い配線構造が記載されており、その外側回路は、電気部品を保持するための基板と、基板上に配置されかつ有機材料からなる第1の絶縁層と、第1の絶縁層上に構成されかつ電気部品に接続された配線と、第1の絶縁層上に配置されかつ有機材料からなる第2の絶縁層と、第1の絶縁層上に配置された端子とを備え、その端子は、第2の絶縁層に露出しており、かつ、配線に接続される。使用される基板は、切り抜きを有する金属またはセラミックの基板であり、電気部品が、その切り抜き内に保持される。第1の絶縁層上に構成された配線は、電気部品の上面に提供された端子と接触する。米国特許第3,763,404号を参照して説明される実施形態においては、部品のための配線は、柔軟性のある配線基板の上面に形成され、その配線基板は、配線基板の平面の下に配置された電気部品と接触するための窓領域を備え、換言すれば、配線の端子構造は、窓領域を介して、部品の上面端子パッドに案内される。部品のこの接触は、同時に、部品を配線上に機械的に準備組み立てするために使用され、換言すれば、配線基板、配線、および、部品は、例えば、連続テープバンドプロセスによって事前に組み立てられる。
フォームの始まり
フォームの終わり
【0005】
ドイツ特許第DE690−31−350T2号には、多層セラミック基板を有する電子的多層パッケージが開示されており、その多層セラミック基板は、次々に積み重ねられた多数の絶縁層および信号/基準電圧層からなり、また、それの上面に、次々に配置される1つかまたはそれ以上の半導体チップを保持するための1つかまたはそれ以上の切り抜きを含む。それぞれの切り抜き内に配置されるチップ(1つかまたは複数)は、切り抜きの底部に形成されかつ例えば共晶金合金またはエポキシ材料またはポリイミド材料から形成されたバインダー層上に収容される。切り抜き内に配置されなければならないいくつかのチップの場合、それらのチップは、切り抜き内へ挿入されるチップ構造の一部を形成し、それに加えて、チップの上に、複数の配線/金属の相互接続およびそれらの間に挿入された絶縁プライからなる中間配線平面およびチップ内配線平面を含む。多数の絶縁層およびメタライゼーション層からなる多層薄膜構造が、挿入されたチップ(1つかまたは複数)を備える基板上面に付加され、メタライゼーション層は、ヴィアによって、それぞれのチップの上面端子パッドに、または、チップ構造の中間配線平面およびチップ内配線平面に、電気的に接続される。
【0006】
米国特許第5,401,688号には、導電路構造を備えるいくつかの層からなる積層スタックを備える多層プリント回路基板構造が開示されており、少なくとも1つの半導体チップが、これらの層の中の2つの間に埋め込まれる。積み重ねられた多層プリント回路基板構造の貼り合わせプロセスにおいて、電気的コンタクトが、チップのバンプ端子パッドとそれらに位置合わせされた隣接する層の導体構造との間に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許出願公報第DE196−27−543A1号
【特許文献2】特許公報第EP1−230−680B1号
【特許文献3】ドイツ特許出願公報第DE31−25−518A1号
【特許文献4】米国特許第3,763,404号
【特許文献5】ドイツ特許第DE690−31−350T2号
【特許文献6】米国特許第5,401,688号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】W.Bauer and S.Purger, Integration aktiver undpassiver Bauelemente in dieLeiterplatte − Alles inklusive − “Integration of active and passive components in the printed circuit board − including all − ”,EPP November 2003の第48頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
技術的問題として、本発明は、上述したような種類の多層プリント回路基板構造およびそれに関連する製造方法を提供することに基づくものであり、それらは、比較的に安いコストおよび高い機能的信頼性でもって、1つかまたはそれ以上の電気部品を多層構造の内部に組み込むのを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、請求項1に記載の特徴を有する多層プリント回路基板構造および請求項19に記載の特徴を有する製造方法を提供することによって、この問題を解決する。
【0011】
本発明による多層プリント回路基板構造においては、積層スタックと比較してほんのわずかな表面積しか持たないインサートは、具体的には、2つの被覆プリプレグ層または液体レジン層、すなわち、一方において、プリプレグベース層または液状樹脂ベース層、他方において、プリプレグ被覆プライ層または液状樹脂被覆プライ層によって、また、構造を圧縮または貼り合わせるときに液化してインサートに隣接するプリプレグ層領域または液体レジン層領域となり、それによって、インサートと積層スタックの隣接する領域との間の隙間または間隙に満ちあるいはそれらを満たす樹脂材料によって、横方向の面を含めてすべての面を完全に埋め込まれる。それによって、インサートは、完全にかつ隙間を備えることなく、均質な樹脂環境段差内に埋め込まれることが可能である。
【0012】
当業者にはよく知られているように、構造の圧縮または貼り合わせの後に、積層スタックに使用された液体レジン層またはプリプレグ層は、適切に硬化した電気的絶縁層または誘電体層を形成することは言うまでもないことである。わかりやすいように、これらの層は、以下においても、それらの仕上げられた硬化した状態にあるこの文脈における液体レジン層またはプリプレグ層によって表現される。
【0013】
請求項2に記載される本発明の発展形態においては、インサートを被覆する2つの液体レジン層またはプリプレグ層の中の少なくとも1つは、インサートまたはそのインサート上に取り付けられた1つかまたはそれ以上の部品が空間を得ることのできる、すなわち、それらの高さ方向において少なくとも一部分を保持されることの可能な切り抜きを有する。これは、いくぶん大きな高さを有するインサートまたは部品を保持するのを助け、また、厚さが薄い傷つきやすいインサートまたは部品にとって、プレス処理/貼り合わせ処理中にこれらに加わる機械的圧力を除去するためには、まさに好都合である。
【0014】
請求項3に記載される本発明のさらなる有益な発展形態においては、インサートまたはそのインサート上に取り付けられた少なくとも1つの部品の領域に窓を有する液状樹脂中間層またはプリプレグ中間層が、インサートを被覆する2つの液体レジン層またはプリプレグ層間に提供される。また、本発明のこの変形実施形態は、とりわけ、比較的に高さが高いインサートおよびそのインサート上に取り付けられた電気部品にとって、例えば、その高さが積層スタックに含まれる個々の層の典型的な層の厚さ程度の高さであれば、有益であり、また、圧力に敏感な薄いインサートおよびそのインサート上に取り付けられた電気部品にとっても有益であるかもしれない。中間層は、比較的に高いインサートおよび/またはそのインサート上に取り付けられた電気部品の場合に、被覆液体レジン層または被覆プリプレグ層が、比較的に大きく湾曲するのを防止し、圧力に敏感な薄いインサートおよび/またはそのインサート上に取り付けられた部品の場合に、構造を圧縮しているときに圧力を除去することを保証する。構造の圧縮または貼り合わせ中に液化した隣接する樹脂材料の中へ完全にかつ隙間を備えることなくインサートを埋め込むことが、保証され続け、この場合、前記樹脂材料は、また、中間層から少なくとも部分的に発生することが可能である。
【0015】
請求項4に記載の本発明の発展形態においては、インサートを被覆する2つの液体レジン層またはプリプレグ層、および/または、液状樹脂中間層またはプリプレグ中間層は、多層の様相で形成され、この場合、少なくとも2つの液体レジン部分層またはプリプレグ部分層を含む。場合によっては、ここでは、中間層は、インサートを被覆する2つの液体レジン層またはプリプレグ層の中の一方の液体レジン部分層またはプリプレグ部分層を実現してもよい。多層構造の場合においては、例えば、関連する液体レジン層またはプリプレグ層の側に存在するインサートに面する層プライの中の少なくとも1つが窓を備えるという事実によって、2つの液体レジン層またはプリプレグ層の中の一方における切り抜きが、インサートの領域またはそのインサート上に取り付けられた部品の領域において実現されてもよい。そして、それに続く連続する層プライは、層が積み重ねられる方向において窓によって形成される保持空間を終結する。必要であれば、切り抜きが、随意的に、さらに付加的に、このカバー層プライに提供されてもよい。
【0016】
請求項5に記載の本発明の発展形態においては、導電路構造すなわち内側プライを備え、かつ、インサートまたはそのインサート上に取り付けられた1つかまたはそれ以上の部品の領域に存在する窓を有する少なくとも1つの層が、インサートを被覆する2つの液体レジン層またはプリプレグ層間に配置される。換言すれば、この例としての実施形態においては、インサートおよびそれに関連する部品のための保持空間は、内側プライを貫通して延び、また、その結果として、インサートおよびそのインサート上に取り付けられた比較的に高い高さを有する部品は、積層スタック内に好都合に組み込まれることが可能である。また、この例としての実施形態においては、隣接する液体レジン層領域またはプリプレグ層領域からの樹脂材料内に存在する隙間を備えることなく埋め込むことができ、この場合、隣接する液体レジン層領域またはプリプレグ層領域から流れ込む構造の圧縮または貼り合わせ中に液化した樹脂材料は、また、内側プライとインサートおよびそのインサート上に取り付けられた部品との間に存在するすべての横方向の隙間を完全に満たす。
【0017】
請求項6に記載の発展形態においては、少なくとも1つの電気部品が、インサートの再配線基板の部品取付位置に取り付けられ、さらに、その再配線基板上には、再配線(rewiring)が、提供され、その再配線は、請求項7に記載のさらに洗練化された形態においては、この層の部品装着位置と同じ面に配置される。インサートは、積層スタックの内部に配置され、積層スタックの表面積の部分領域においてだけ横方向に延びる。換言すれば、この場合、電気部品は、積層スタックの内部に組み込まれかつ電気部品のための再配線機能を備える基板を含むインサートの構成要素である。洗練化された有益な形態においては、請求項8に基づいて、関連する再配線を備えるインサートの両面に部品を挿入してもよく、それぞれの場合において、ヴィアが、2つの再配線の電気的な接触を保証する。
【0018】
本発明は、電気部品の再配線基板上への有益な準備組立、および、積層スタック内に取り付ける前に、インサートの電気的な検査、すなわち、とりわけ電気部品およびそれの再配線の電気的な検査を可能にする。これは、インサートが有効な電気部品を備える場合にのみ搭載されること、および、部品を完璧に搭載されかつ適切に動作するインサートだけが多層構造内に挿入されることを保証する。再配線は、積層スタックの部品(1つかまたは複数)と導体構造とを接触させるためのまたは外部への端子構造の粗大化を可能にし、換言すれば、対応するコンタクト領域は、より大きなものであってもよく、および/または、それぞれが部品に直接に存在する端子コンタクトよりも大きな間隔でお互いに配置されてもよい。これは、形成されるべきブラインドホールコンタクトまたはヴィアの位置精度に関する要件を緩和する。再配線は、インサート上に実装されるので、それは、積層スタックの1つかまたはそれ以上の導体平面上に形成されなくてもよく、また、それぞれの電気部品は、そのような導体構造平面上の所定の位置に高い精度で配置されなくてもよく、そして、これは、製造コストを減少させ、かつ、機能的信頼性を増大させる。
【0019】
多層プリント回路基板構造内に組み込まれるインサート上に、具体的には、再配線層のチップ取付面上に再配線を実装することは、多層構造の外側プライ(1つかまたは複数)上の必要空間を減少させることができるというさらなる利点を有する。なぜなら、対応するヴィアを多層構造の表面に案内するだけでよいからである。さらに、外側層のルータ加工は、単純化される。なぜなら、再配線基板上の再配線用パッドの位置を選択することができ、それによって、外側プライへの関連するヴィアを、外側プライのルータ加工に適した位置に配置できるからである。
【0020】
インサートまたはそのインサートの再配線基板は、積層スタックの横方向部分領域上だけに延びるので、例えば、隣接するベース層のプリプレグ材料に対するポリイミドからなる再配線基板の接着力が特に強くない場合でも、層間剥離問題が、回避される。
【0021】
再配線基板は、例えば、インターポーザ機能を備える柔軟性のある薄い層として実現されてもよい。この方法は、熱膨張作用によって発生する小さな機械的応力を維持することに寄与する。このことは、動作中にまたはさらなる処理中に積層スタックにおいて大きな温度変化が発生する場合には特に重要である。
【0022】
請求項9に記載される本発明の有益な発展形態においては、再配線基板は、液晶高分子材料(LCP)またはポリイミド材料、または、セラミック材料のような柔軟性のあるプリント回路基板材料からなり、かつ、取り付けられるべき電気部品(1つかまたは複数)のための部品装着位置を中央領域に有し、関連する導電路を介して部品取付位置に電気的に接続される再配線用パッドを周辺領域に有する。再配線基板上の中央に部品(1つかまたは複数)を配置することは、同様に、熱膨張力を補償することに寄与する。なぜなら、横方向張力および圧縮力は、これによって、ほぼ大部分が相殺されるからである。中央の部品装着位置から周辺の基板領域への再配線は、さらに、部品の端子構造の粗大化をもたらす。なぜなら、コンタクトパッドのために利用できるより多くの空間が、周辺領域に存在するからである。
【0023】
請求項11に記載の本発明の発展形態においては、それぞれのバッファー層部分が、一方におけるインサートと、ベース層またはカバー層としてそれぞれ機能しかつインサートを両面において被覆する2つの液体レジン層またはプリプレグ層の中の少なくとも1つとの間に提供され、このバッファー層部分は、積層スタックの横方向部分領域上だけに延びるが、好ましくは、インサートよりも少なくとも大きく、材料および層厚に関しては、例えば、そのバッファー層部分が、インサートの再配線基板の熱膨張率とベース層またはカバー層の熱膨張率とを調停するように選択されてもよく、および/または、機械的応力を吸収できるように選択されてもよく、および/または、ベース層またはカバー層のインサートに向かい合った表面における導体構造をインサートから電気的に絶縁できるように選択されてもよい。
【0024】
請求項12に記載の本発明の発展形態においては、高さスペーサー構造が、取り付けられた電気部品(1つかまたは複数)の横方向外側の領域における再配線基板上に提供され、その高さスペーサー構造は、積層の方向に電気部品(1つかまたは複数)の高さにまで少なくとも延び、あるいは、その電気部品を越えて延びる。それによって、高さスペーサー構造は、取り付けられた電気部品(1つかまたは複数)から、多層構造の圧縮中に作用する圧力を除去する。
【0025】
請求項13に記載の本発明の発展形態においては、インサートは、さらに、再配線基板の全体領域上に、または、電気部品(1つかまたは複数)の外側領域だけに延びるフィル層および/または平坦化層を含む。このフィル層および/または平坦化層は、必要に応じて、付加された電気部品(1つかまたは複数)とインサートとの比較的に大きな高さの差を補償することができ、あるいは、横方向クリアランスを満たすことができる。とりわけ、高さスペーサー構造が、存在する場合、このフィル層および/または平坦化層は、このスペーサー構造と取り付けられた電気部品(1つかまたは複数)との間のクリアランスを満たすこともできる。
【0026】
この手段の洗練化された形態においては、請求項14に記載のフィル層および/または平坦化層は、熱伝導性の材料からなり、しかも、電気的に絶縁する材料からなる。これは、必要に応じて、電気部品(1つかまたは複数)から熱を放散するのを可能にする。
【0027】
熱伝導性材料からなるフィル層および/または平坦化層を提供する手段の請求項15に記載のさらに洗練化された形態においては、インサートは、フィル層および/または平坦化層上に熱伝導層を、そのフィル層および/または平坦化層と熱的に接触した状態で備える。その結果として、例えば、取り付けられた電気部品(1つかまたは複数)から発生する熱は、フィル層および/または平坦化層およびその上に存在する熱伝導層を介して、効率的に放散または分散されることが可能である。
【0028】
請求項16に記載のさらに洗練化された形態においては、インサートは、カバー層を、フィル層および/または平坦化層上に、または、熱伝導層上に有し、このカバー層は、材料および/またはサイズの点において、横方向および積み重ねられる方向において再配線基板と類似するように選択される。その結果として、インサートは、比較的に対称な層構造を備え、そして、これは、同様に、膨張作用による小さな機械的応力を維持すること、および、曲げ応力を最小限に抑制することに寄与する。
【0029】
請求項17または請求項18に記載のさらに洗練化された形態においては、インサートの熱伝導層、および/または、再配線用パッドの中の少なくとも1つは、1つかまたはそれ以上のヴィアを介して積層スタックの少なくとも1つの構造化されているかまたは領域全体にわたる熱伝導層に熱を伝導するような形で接続され、それによって、熱は、インサートから積層スタック内へ分散され、また、適切であれば、外部へ放散されることが可能である。
【0030】
請求項19に記載の本発明の発展形態においては、インサートを被覆する2つの液体レジン層またはプリプレグ層は、積層の方向において積層スタックのほぼ中間に配置され、それによって、インサートもまた、それに対応して、積層の方向において積層スタックのほぼ中間に存在する。
【0031】
本発明による方法は、本発明による多層プリント回路基板構造を比較的に安いコストで加工するのを可能にし、インサートを樹脂材料内に完全にかつ隙間を備えることなく埋め込むことができる。
【0032】
請求項21に記載の発展させた方法においては、インサートの再配線基板を貫通して案内されるヴィアは、有利には、電気的なヴィア材料が再配線基板の材料と接触するのではなく中間樹脂材料と接触するように形成される。これは、ヴィアの信頼性を向上させることができる。
【0033】
有益な洗練化された形態においては、請求項22に記載の再配線の導電路は、インサートの再配線基板の全体領域に付加された電気的な導電再配線層を構造化する分離溝によって形成される。この方法によって、好ましくは金属である再配線層の領域全体のより大きな部分が、基板上に残り、そして、これは、同様に、熱膨張の問題を軽減することに寄与する。さらに、接着を比較的に容易に促進する物質が、例えば銅からなる再配線層に付加されてもよく、その場合には、全体的組立品内における、とりわけ、隣接するプリプレグカバー層に対するインサートの接着を改善することができる。
【0034】
本発明の好都合な実施形態が、図面に示され、かつ、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】付加されたインサートを備える多層プリント回路基板構造におけるベース層の部分領域の概略平面図であり、そのインサートは、取り付けられた電気部品およびそれに関連する再配線を有する。
【図2】図1のII−IIに沿った断面図である。
【図3−1】図1および図2に示されるように組み込まれたインサートおよびブラインドホールヴィアを備える部分領域における多層プリント回路基板構造の縦方向断面図である。
【図3−2】(a)は、インサート上に取り付けられた電気部品の背面に実施されたアンダーフィリングを備える変形の図3−1に対応する縦方向断面図である。(b)は、部品を両面に搭載されたインサートを備える変形の図3−1に対応する縦方向断面図である。
【図4】さらなる層および連続的なヴィアを備える変形の図3−1に類似する縦方向断面図である。
【図5】部品窓を備えるさらなる液状樹脂中間層またはプリプレグ中間層を備える変形の図4に対応する縦方向断面図である。
【図6】高さスペーサー構造を備える変形インサートの図2に類似する縦方向断面図である。
【図7】図6に示されるような組み込まれたインサートを備える変形の図4に対応する縦方向断面図である。
【図8】熱放散に関して変更されたインサートおよびさらなる液状樹脂中間層およびプリプレグ中間層を備える変形の図7に類似する縦方向断面図である。
【図9】組み込まれたインサートおよびそのインサート上に取り付けられかつ内側プライ窓に突き出た部品を備える部分領域における多層プリント回路基板構造の縦方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1および図2は、例えば、チップの形態を有する能動的電気部品2を多層プリント回路基板構造内に組み込むためのインサート1を示す。インサート1は、再配線基板3を含み、その再配線基板3は、それに付加された再配線を備え、また、再配線用パッド4と、その再配線用パッド4をそれぞれチップ2の1つの端子リード6すなわち端子パッドに電気的に接続するための再配線の導電路5とを備える。再配線基板3は、例えば、25μm〜50μmの厚さを備える、例えば、LCP材料またはポリイミドフィルム材料、または、例えば、100μmの厚さを備えるFR4材料のような、柔軟性のあるプリント回路基板材料からなる。あるいは、一般的なセラミック材料を使用することも可能である。一般的には、熱膨張率が隣接する層の材料に適した材料、および/または、インサート1に加わる機械的応力荷重をできるだけ小さい状態に維持するために機械的応力を吸収することのできる材料からなる再配線基板3を利用することは有益なことである。
【0037】
図1の平面図からわかるように、チップ2は、再配線基板3すなわちインサート1の中央領域に存在する関連する部品取付位置に取り付けられる。あるいは、チップを中心からずれて再配線基板3上に取り付けることも可能であるが、図示されるように、インサートの横方向表面寸法に対して対称的に中央に配置することは、稼働中に機械的応力および/または熱膨張作用による荷重の力を最小限に抑制する点において、一般的には有益である。チップの取り付けは、例えば、図2に示されるようなフリップチップ取付技術のような何らかの望ましい一般的な技術によって実行されてもよく、そして、好ましくは、チップ2と再配置基板との間の隙間にアンダーフィル層材料8を含む。チップ2は、この目的のためにそれ自体がよく知られている接続技術によって、例えば、チップ端子6における関連するボンディング位置によって表現される熱ボンディングによって、固定される。
【0038】
同様に、図1の平面図からわかるように、再配線用パッド4は、再配線基板3上の周辺領域に配置される。中央部品取付位置と比較すれば相当に広い面積を有するこの周辺領域には、より多くの利用可能な空間が存在するので、再配線4および5は、同時に、端子を粗大化する機能を達成し、換言すれば、数がチップ端子リード6に対応する再配線用パッド4は、より大きなコンタクトパッド寸法を備えて配置されてもよく、および/または、お互いに、チップ端子リード6よりも大きな間隔で配置されてもよく、そして、これは、チップ2を再配線用パッド4を介して多層プリント回路基板構造のその他の導電構造および/または部品と接触させるのをさらに容易にし、および/または、それとは逆方向に接触させるのを容易にする。再配線用パッド4は、再配線の導電路5とともに、それ自体がよく知られている方法で形成されてもよい。
【0039】
別の実施形態においては、さらなる1つの能動的または受動的な電気部品またはいくつかの受動的および/または能動的な電気部品が適切に変更されたインサート再配線基板上の1つの関連する部品装着位置にそれぞれ提供されてもよいことは言うまでもないことである。ここで、部品装着位置という用語は、ただ単に、関連する電気部品がそこに配置されることを意味する。これは、部品を事前に別々に組み立て、その後に、それを部品装着位置に配置し、そして、それをそこに固定することによって実行されてもよく、あるいは、部品は、例えば、集積半導体部品構造として、および/または、スクリーン印刷プロセスまたはフォトリソグラフィープロセスによって、直接に部品取付位置において組み立てられてもよい。
【0040】
図1および図2に示される例においては、再配線の導電路5は、再配線基板3上の狭い配線経路からなり、その配線経路は、このために現在使用されているプロセスの中の1つによって形成される。別の実施形態においては、チップ端子パッド6を再配線用パッド4に接続する導電路は、再配線基板3の領域全体に付加された導電層の広い平坦な領域に形成され、そして、分離トレンチプロセスによって、それぞれの分離トレンチによってお互いに分離された表面領域に分割される。分離トレンチの進路は、これらの表面領域のそれぞれがチップ端子パッド6およびそれに関連する再配線用パッド4の中の1つを備えるように選択され、それによって、それの関連する平坦な接続導電路を形成する。この設計の変形は、チップ側に存在する再配線基板3の上面全体が、チップ2の領域および分離トレンチの領域まで、例えば銅からなる再配線層によって被覆されたままであるという利点を有し、その結果として、第1に、再配線基板3の熱膨張作用を弱めることができ、第2に、必要に応じて、多層プリント回路基板構造のその後の層プライの接着力を改善し、かつ、インサート1の領域における層間剥離の可能性を除去するために、接着促進剤を再配線層に塗布することができる。狭い配線経路5または平坦な導電路の構造化は、例えば、現在使用されているフォトリソグラフィーまたはレーザー構造化による方法によって実行される。
【0041】
導電再配線層のために銅のような熱の良導体である材料を選択することは有益なことである。なぜなら、良導体は、稼働中に、付加されたチップ2の領域における過熱を防止するために、熱放散機能および/または熱分散機能をさらに達成するからである。
【0042】
図示されない実施形態においては、再配線層またはそれから形成された再配線4および5の電磁遮蔽が、前記再配線上(または、上方)に、および/または、前記再配線と電気的絶縁層からなる介在物を備える再配線基板3との間に遮蔽層を、例えば、領域全体に、好ましくは、金属接地電位層の形態で提供することによって、実施される。
【0043】
そして、多層プリント回路基板構造内へ組み込むために、上述したように事前に組み立てられたインサート1が、まず最初に、それの再配線基板3の底面をベース層7上の所望の位置にxy方向において正確な座標で取り付けられる。取り付けは、例えば、1つかまたはそれ以上の接着剤ドットまたは平坦な接着剤接続によって、または、再配線基板3自身を加熱し、および/または、前記再配線基板と接触することになるベース層7の領域を加熱することによって、実行されてもよい。ベース層7は、組み立てられるべき多層プリント回路基板構造の電気的絶縁誘電体層の領域全体を実現し、また、プリプレグ樹脂材料または液状樹脂材料からなる。そして、前記加熱は、取り付けられたインサート1の領域におけるプリプレグベース層7の部分的な溶融、接着、および、硬化をもたらし、その結果として、インサート1を固定する。
【0044】
それぞれの用途に応じて、ベース層7は、それぞれの望ましい多層プリント回路基板構造をなすいくつかの層から形成されるべき積層スタックの外側層かまたは内側層であってもよい。内側層である場合、1つかまたはそれ以上のさらなる層プライが、インサート1を避けてベース層7の面上に配置され、ベース層7の上にインサート1を固定されたベース層7が、この1つかまたはそれ以上のさらなる層プライに取り付けられ、あるいは、その代わりに、まず最初に、ベース層7だけが、この1つかまたはそれ以上のさらなる層プライに取り付けられ、そして、インサート1が、その上に固定される。
【0045】
多層プリント回路基板構造のさらなる組立は、全体領域カバー層を、取り付けられたインサート1を備えるベース層7の面に付加することを含み、インサート1が多層プリント回路基板構造の積層スタックの内部においてベース層7と被覆プライ層との間に存在するようにインサート1を被覆することを伴う。被覆プライ層が、多層プリント回路基板構造の外側層プライを形成しない場合、1つかまたはそれ以上のさらなる層プライが、前記被覆プライ層に取り付けられ、そして、積層スタックに提供されるすべての層プライが、次々に積み重ねられた後、積層スタックは、所望の多層プリント回路基板構造を形成するために、一般的な方法によって、層パケットとしてお互いに圧縮または貼り合わせられる。
【0046】
1つかまたはそれ以上の能動的および/または受動的な電気部品を多層プリント回路基板構造の内部に搭載されるそのようなインサートおよびそれらに類似するインサートの新しい組み込み方法のいくつかの具体的な例が、図3〜図9を参照して、以下でより詳細に説明される。この場合、わかりやすいように、また、より良く理解できるように、様々な例としての実施形態における同一の構成要素だけでなく、等価な機能を有する構成要素も、図1〜図9に示されるそれぞれの場合において、同一の符号によって指示される。
【0047】
図3−1は、内側プライを備えることなく2つの外側プライ7および9を備える基本的な2プライプリント回路基板構造を示し、この場合、図1および図2に示される構造から開始し、誘電体ベース層7は、第1の外側プライを形成し、ベース層7および挿入されたインサート1に付加されたカバー層9は、第2の外側プライを形成する。ベース層7およびカバー層9は、その外側に、それぞれ、一般的な種類の電気的導体構造平面10および11すなわち構造化電気的導体平面を備え、そして、好ましくは、プリプレグ樹脂材料からなる。インサート1の再配線基板3、インサート1上に取り付けられたチップ2、および、関連する再配線4および5を備えるインサート1が、隙間または空洞を備えることなく、ベース層7とカバー層9との間においてそれらの樹脂材料内に埋め込まれる。外側へ、チップ2は、再配線4および5およびブラインドホールコンタクト12を介して、カバー層9上に存在する導体平面11の構造的エレメントと接触し、ヴィア12は、それぞれ、再配線用パッド4の中の1つを、誘電体カバー層9を通って、導体平面11の関連する構造的エレメントに接続する。
【0048】
図1および図2に関して上述したように、図3の多層プリント回路基板構造を形成するために、インサート1は、まず最初に、事前に組み立てられ、そして、プリプレグ基板7上の所望の位置に固定される。その後に、プリプレグカバー層9が、インサート1がその上に固定されたプリプレグ基板7に取り付けられる。2つの層7および9の場合、この構造のための開始材料として、例えば、導体構造平面10および11を形成するためにその後に構造化される取り付けられた銅箔を備えるプリプレグ層が、使用されてもよい。
【0049】
その後に、形成された層パケットが、所望の多層プリント回路基板構造を仕上げることを目的として積層スタック全体組立品を形成するために、一般的な方法でお互いに圧縮および貼り合わせられる。インサート1は、それによって、隙間および空洞を備えることなく、絞り圧力のために溶融する樹脂材料内に埋め込まれ、あるいは、プリプレグ基板7とプリプレグ被覆プライ9との間に保持され、そのプリプレグ被覆プライ9は、適切にプレスされる。この例としての実施形態においては、インサート1上に取り付けられた部品2を含むインサート1の高さは、比較的に低いので、より詳細には、隣接する液状樹脂またはプリプレグ層7および9の層厚よりも相当に小さいので、インサートの埋め込みは、被覆液状樹脂またはプリプレグ層7および9の著しい湾曲を発生させることはない。あるいは、インサート1または部品2を保持するための対応する空間を形成するために、ベース層7および/またはカバー層9内に、インサート1またはそのインサート1上に取り付けられる少なくとも部品2の領域に存在する切り抜きを提供することも可能である。外側導体平面10および11の構造化は、例えば、一般的なリソグラフィープロセスまたはレーザー構造化プロセスを用いて、このプレス処理/貼り合わせ処理を使用することによって実行される。
【0050】
図3−2aは、図3−1の例としての実施形態の変形を示し、この場合には、フリップチップ技術を用いて取り付けられたチップ2の背面フィリングまたは底面フィリングが提供され、それらのフィリングは、チップ端子パッド6の上方へ隆起し、かつ、再配線基板3の上方に収容される。アンダーフィル材料8aが、チップ2と再配線基板3またはこの例においては再配線4および5との間の隙間に配置され、そのアンダーフィル材料8aは、アンダーフィル開口8bを介して、下方から案内され、それに対応して、そのアンダーフィル開口8bは、インサート1の中へ案内される。これは、樹脂材料が、構造を圧縮または貼り合わせるときにベース層7内において液化し、そして、アンダーフィル層開口8bを介して上方へ押し出され、そして、チップ2と、そのチップ2の下にある再配線基板3の一部分または再配線4および5との間の隙間を空洞を備えることなく満たすという利点を有する。その他の点においては、図3−2aに示される例としての実施形態は、図3に対応している。とりわけ、アンダーフィリングは、層間剥離作用をもたらすかもしれない空気含有物の形成を防止する。
【0051】
図3−2bは、図3−1の例としての実施形態の変形を示し、この場合には、樹脂材料内に空洞を備えることなくベース層7とカバー層9との間に埋め込まれたインサート1は、部品を両面に搭載される。上面に搭載されたチップ2とは別個に例として示される部品は、具体的には、例えば、底面に取り付けられたさらなるチップ2a、電気的抵抗2b、および、コンデンサ素子2cまたはその他の能動的または受動的な電気的部品である。底面に取り付けられた電気的部品2a、2b、および、2cは、コンタクトパッド4′および再配線の導電路5aを備える背面再配線に結合され、背面再配線4′および5aは、インサート1を貫通して延びるヴィア12aを介して上面再配線4および5に電気的に接続される。その他の点においては、この変形は、同様に、図3−1の例としての実施形態に対応しており、そのために、これに関しては、上述したことが、参照されてもよい。
【0052】
図4は、図3−1のプリント回路基板構造と比較すればさらなる内側プライ12aおよび12bを有する多層プリント回路基板構造の内部にインサート1を組み込むさらなる変形を示す。具体的には、図3−1の場合と同様に、図4に示される例におけるインサート1は、ベース層7とカバー層9との間に埋め込まれるが、ここでは、これらの層は、多層プリント回路基板構造の内側誘電体層を形成する。これらの層を両面に接合するのは、それぞれの面において、事前に組み立てられた半製品プリント回路基板12aおよび12bの形態を有する内側プライであり、また、それぞれの面において、関連する積層スタックを完成させるための2つのさらなるプリプレグ層プライ13a、13b、および、14a、14bである。内側導体構造平面15a〜15dが、2つの半製品プリント回路基板12aおよび12bのそれぞれの両面のそれぞれの面に形成され、隣接するプリプレグ部分層の樹脂材料内に埋め込まれる。2つの外側プリプレグ部分層14aおよび14bは、それぞれ、外側導体構造平面16aおよび16bを外側に備える。例として、外側導体構造平面16aおよび16bを形成するための一般的なアプローチは、銅張誘電体層材料を外側プライ14aおよび14bに使用すること、そして、積層スタックを圧縮した後に、一般的な技術によって外側の領域全体の銅層プライを構造化することである。
【0053】
図4に示される構造を形成するために、ベース層7を含めてベース層7までの下側層プライが、まず最初に、次々に積み重ねられ、そして、インサート1が、ベース層7上に固定される。そして、カバー層9が、取り付けられる。その後に、さらなる層プライが、対応する層パックを形成するために取り付けられ、そして、その層パックは、お互いに貼り合わせられまたは圧縮され、その結果として、インサート1は、プリプレグ基板7とプリプレグ被覆プライ9との間において樹脂配合物内にしっかりと埋め込まれる。
【0054】
圧縮積層スタック全体組立品が形成された後、コンタクトが、一般的な方法で適切なヴィアを案内することによって、様々な導体構造平面15a〜16bとインサート1上のチップ2との間に形成される。例えば、図4の断面図は、2つのヴィア17aおよび17bを示し、これらの2つのヴィア17aおよび17bは、2つの外側導体構造平面16aおよび16bの関連する構造的エレメント間に積層スタック全体を貫通して延び、それと同時に、関連する再配線用パッド4aおよび4bと接触し、その結果として、例えば、電力を供給しあるいは接地する目的のために、チップ2の関連する端子を外部に電気的に接続する。一般的な技術を用いて、ヴィア17aおよび17bは、対応するヴィアホールを案内することによって、かつ、例えばめっきすることによって電気的導電材料をそのヴィアホールに案内することによって形成され、また、必要であれば、同じ処理において、外側導体構造16aおよび16bの厚さを増加させることも可能である。あるいは、また、再配線用パッドを介してチップ2と外部とを接触させることが、再配線用パッドにまで到達するブラインドホールコンタクトを案内することによって、なされてもよい。
【0055】
このように、図4は、ベース層7およびカバー層9、したがって、また、これらの層の間に埋め込まれかつインサート1上に取り付けられたチップ2を有するインサート1が、積み重ねられる方向から見てプリント回路基板積層スタックの中間に配置される実施形態を示す。
【0056】
図5は、図4の例としての実施形態の変更を示し、この場合には、ただ1つの大きな相違点は、さらなる液状樹脂またはプリプレグ中間層29が、積層スタック構造内においてベース層7とカバー層9との間に提供されることである。図示されるように、インサート1上に取り付けられた電気部品2の領域において、この中間層29は、窓領域29aを備え、部品2が、その窓領域29aの中へ突き出る。この構造を圧縮または貼り合わせると、液状樹脂またはプリプレグ中間層29の樹脂材料が、同様に、液化され、そして、隙間を備えることなく、取り付けられた部品2とともにインサート1を完全に取り囲むことに寄与する。窓29aを備える中間層29は、インサート1上に取り付けられるチップ2のための取付空間を確保し、それによって、この場合には、プリプレグ層9がインサート1の領域において大きく曲がることなく、インサートを2つの上側と下側の被覆液体レジン層またはプリプレグ層7および9間に隙間を備えることなく均質に埋め込むのを助ける。さらに、中間層29は、圧縮および/または貼り合わせ中に加わる機械的圧縮荷重をチップ2から除去することを保証し、これは、比較的に薄い、圧力に敏感なチップには、とりわけ有益なことである。
【0057】
中間層29は、また、被覆プライ9および中間層プライ29からなるマルチプライカバー層の層プライを実現してもよいことは言うまでもないことであり、この場合、インサート1に面するこのマルチプライカバー層の面上に存在する少なくとも中間層29は、窓29aをこのマルチプライカバー層内に備える。あるいは、インサート1が、さらなる取付空間を全体的に必要とする場合、窓29aは、必要であれば、インサート1の領域全体に延びてもよい。
【0058】
図6は、インサート1の構成に関する変更または変形を示す。図1〜図4の例から開始して、図5のインサート1は、さらに、取り付けられたチップ2の外側の領域において、かつ、チップ2からある程度の横方向間隔を置いて、再配線基板3および再配線4および5上に構造化された高さスペーサー層18を有する。必要に応じて、高さスペーサー層18は、インサート1をベース層7上に配置する前か後に付加されてもよい。高さスペーサー層18は、再配線基板3または再配線4および5から取り付けられたチップ2の少なくとも上面まで延び、図示されるように、図5の例においては、その上面をいくぶん越えて延びる。高さスペーサー層18は、このように、インサート1がその内部に組み込まれた準備された積層スタックの圧縮中に、チップ2から不均衡な圧縮荷重を除去することができる。例えば、エポキシ樹脂材料が、例えば、スクリーン印刷技術を用いて形成される構造化された高さスペーサー層18の材料として使用されてもよい。随意的に、凹部が、コンタクトパッド4の領域において、高さスペーサー層18に提供されてもよく、その凹部は、ヴィアに関するその後の問題を防止するために、および/または、ヴィア、例えば、銅バレルの耐久性を改善するために、それ自体がよく知られている方法で形成されてもよい。
【0059】
図7は、図6に示される種類のインサートを多層プリント回路基板構造内に組み込むことを示し、その多層プリント回路基板構造は、その他の点においては図4の多層プリント回路基板構造に対応しており、そのために、図4の多層プリント回路基板構造に関する上の説明を参照することができる。カバー層9は、インサートをより容易に保持するための適切な切り抜き9aを備え、その切り抜き9aは、この場合、いくぶんより厚いものである。その代わりに、または、それに加えて、対応する切り抜きをベース層7内に提供することも可能である。
【0060】
図8は、図6に基づいたインサート1をさらなる変形設計構造内に組み込むことを示す。図6に基づいた構造から開始すると、図8の例においては、インサート1は、高さスペーサー層18およびチップ2を越えて延びるフィル層/平坦化層19をさらに含み、それは、領域全体において、かつ、ほぼ平坦な上面を備えてなされ、そのプロセスにおいて、チップ2と構造化された高さスペーサー層18との間の横方向クリアランスを満たす。必要であれば、チップ2の領域から熱を放散または分散できるように、熱伝導性材料をフィル層/平坦化層19に使用することは、有益なことであるかもしれない。
【0061】
インサートカバー層20が、フィル層/平坦化層19の領域全体に付加され、そのインサートカバー層20は、材料および厚さが再配線基板3と同一であり、あるいは、いずれにしても、厚さおよび熱膨張率が再配線基板3とほぼ一致している。したがって、例えば、再配線基板3と同じように、インサートカバー層20は、ポリイミド材料またはセラミック材料から構成されてもよい。インサート1を最上部において終結させ、インサート1を底部において終結させる再配線基板3と対をなすカバー層20のこの設計は、比較的に対称的な層構造をもたらし、そして、これは、多層プリント回路基板構造のさらなる加工およびその後の処理における熱による荷重に関して、また、それによって発生する機械的応力荷重に関して、インサート1の機能的信頼性および頑健性を増大させることができる。
【0062】
図8の例としての実施形態においては、インサート1は、とりわけ熱による荷重に基づく機械的応力を補償することのできる、および/または、バッファー層部分22aの上面に隣接するインサート1の再配線基板3と底面上において接合する電気的導電層との熱膨張率を調停することのできる材料から形成されたバッファー層部分22a上に収容される。例えば、バッファー層部分は、エポキシ樹脂材料から構成されてもよい。この例としての実施形態においては、バッファー層部分22aは、ベース層7上に存在し、そのベース層7は、それの一部分が、導電路構造を両面に備える内側プライ30上に存在する。バッファー層部分22aは、例えば、スクリーン印刷技術を使用することによって形成されてもよく、あるいは、対応する層材料から切り取られ、そして、ベース層7上の関連する位置に取り付けられかつ固定されてもよい。そして、図8の多層プリント回路基板構造の製造中に、インサート1は、上で簡単に説明された構造を備えて、バッファー層部分22a上に固定される。さらにまた、図8の層構造は、ベース層7上に、窓領域23aを備える液状樹脂中間層またはプリプレグ中間層23を含み、その窓領域23a内に、インサート1が、バッファー層部分22aとともに保持される。この例においては、窓23aは、バッファー層部分22aの大きさまで切り取られあるいは機械切削され、そのバッファー層部分22aの横方向寸法は、インサートの横方向寸法に対応し、そして、インサート1に関する横方向の隙間は、その後の圧縮時に、溶融樹脂材料または流動性樹脂材料で満たされる。そして、これは、インサート1を均質に埋め込むのを可能にし、この場合に、そのインサート1は、積層スタック構造において、バッファー層部分22aとともに相当な高さを有し、それとともに、ベース層7a、カバー層9a、および、中間層23からの樹脂材料によって隙間を備えることなく取り囲まれ、インサート1の領域におけるベース層7およびカバー層9の望ましくない湾曲は存在しない。
【0063】
バッファー層部分22aに関して上述したように、熱的および/または機械的な荷重を補償するために、図8に示されるように、インサート1とカバー層9との間に、対応するバッファー層部分22bをインサート1の一部分として提供することは、有益なことであるかもしれない。さらにまた、下部バッファー層部分22aに関して上部バッファー層部分22bを対称的に配置することによって、インサート1およびそれのチップ2に加わる荷重の力を最小限に抑制することにさらに寄与し、したがって、熱膨張率に関して同一であるかまたは類似する実質的に同一の層厚および材料を使用することは、好ましいことである。さらにまた、図6の多層プリント回路基板構造は、全体的に、スタック中間平面を対しておおむね対称である特徴を有し、また、チップ2を備えるインサート1は、積み重ねられる方向から見ると、多層構造の中間領域に存在する。
【0064】
図5の中間層29に類似するように、中間層23はベース層7のマルチプライ実施形態またはカバー層9のマルチプライ実施形態の一部を形成してもよいことは、明白なことである。さらに、この実施形態および図示および説明されるすべてのその他の例としての実施形態において、インサートの両面を被覆するために、および/または、層7および層9の間に存在する中間層すなわちこの例においては中間層23を被覆するために、ベース層またはカバー層の役割をなす同じように図示された液体レジン層またはプリプレグ層すなわちこの例においては層7および層9のそれぞれは、それぞれ、少なくとも2つの液体レジン層プライまたはプリプレグ層プライを備えるマルチプライの形で構成されてもよいことは、明白なことである。
【0065】
下部内側プライまたは下部半製品プリント回路基板30に加えて、図8に基づいた変形は、また、上部内側プライまたは上部半製品プリント回路基板31を有し、導体構造平面21dが、その上面に存在する。それらの半製品回路基板の上方および下方には、それぞれ、さらなるプリプレグプライ24aおよび24bおよび外側誘電体層プライ25aおよび25bが、続く。外側誘電体層プライ25aおよび25bは、それらの外側に、それぞれ、外側導体構造平面26aおよび26bを備え、そのために、それらは、プリプレグ材料および取り付けられた銅箔から構成されてもよい。層パックを圧縮することは、銅箔をプリプレグ材料にしっかりと接続し、それによって形成された銅層は、標準的なプロセスステップにおいて、対応する導体構造平面26aおよび26bとして構造化される。
【0066】
図8の変形の場合においては、改善された熱放散機能を提供するために、さらなる熱放散手段が、提供される。このために、インサート1は、例えば銅から製造された高い熱伝導性の層27を、フィル層/平坦化層19とインサートカバー層20との間に有する。さらに、上部半製品プリント回路基板31の内側導体構造平面は、全体領域熱伝導層28に取り替えられ、その全体領域熱伝導層28は、構造化されていない状態のままであり、また、例えば、単純に、構造化されていない状態のままのこの半製品プリント回路基板9aの銅コーティングであってもよい。
【0067】
図4と図8を比較すればわかるように、非構造化熱伝導層28および中間層23に関する変更、さらには、インサート1の変更された構造および埋め込みを除けば、図8の積層スタックは、その構造が、図4の積層スタックに一致する。それらの図面からさらにわかるように、図8の多層プリント回路基板構造は、必要とされるヴィア、すなわち、例として示される図4の例に対応する2つのヴィア17aおよび17bを案内することによって類似する方法で仕上げられる。
【0068】
図8の例としての実施形態においては、これらのヴィア17aおよび17bは、それらが熱の良導体である例えば銅のような材料から形成されるという点において、熱輸送機能をさらに達成する。重要なことは、関連する再配線用パッド、および、とりわけ、インサート1の熱伝導層27が、ヴィア17aおよび17bを介して、熱を伝導するような形で積層スタックの全体領域熱伝導層28に接続されることであり、それによって、チップ2の領域において発生する熱は、一方において、再配線4および5、他方においては、同様に、フィル層/平坦化層19およびインサート熱伝導層27を介して、ヴィア17aおよび17bへきわめて効率的に導き、そして、これらのヴィア17aおよび17bを介して、全体領域熱伝導層28へ放散し、そして、その全体領域熱伝導層28によって分散させることができる。この熱放散手段は、とりわけ、インサート1の部品から動作中に熱が著しく発生する場合に、埋め込まれたインサート1上に取り付けられたチップ2および残りのインサート部品の機能的信頼性を相当に増大させることができる。接地するためのまたは電力を供給するための一般的なヴィアのような同等の潜在能力を有するヴィアは、それぞれ、熱を伝導するような形で積層スタックの熱伝導層28に接続するのに適していることは言うまでもないことである。
【0069】
インサート熱伝導層27は、例えば、ポリイミドまたはそれに類似するものから事前に組み立てられた形でインサートカバー層20上にすでに存在している例えば銅からなる層であってもよい。この場合、インサートカバー層20は、より大きな面積を有する層材料から熱伝導コーティング27とともに切り取られ、そして、フィル層/平坦化層19上にコーティング27とともに取り付けられてもよい。必要に応じて、これは、インサート1をベース層7の所定の位置に配置する前にまたは配置した後に実行されてもよい。
【0070】
必要であれば、前記再配線基板の材料に接触することなく、例えばポリイミドからなる再配線基板3を貫通してヴィア17aおよび17bを案内することが、提供されてもよい。このために、インサート1をベース層7とカバー層9との間に埋め込む前に、孔が、再配線基板3に形成され、それは、その後のヴィアよりも大きな径を備えてなされる。この積層スタックを圧縮するとき、これらの孔は、隣接する樹脂層プライから流れ込む樹脂材料で満たされる。そして、積層スタックを圧縮した後に積層スタックを貫通して形成されるより小さい径を有するヴィアホールは、樹脂フィリング内部において、再配線基板3の高さ全体に延びてもよく、それによって、絶縁樹脂材料リングが、挿入されたヴィア材料と再配線基板3の材料との間に残る。
【0071】
本発明のさらなる例としての実施形態として、図9は、図5の例の変形を示し、この変形においては、さらに、インサート1を保持することに関するただ1つの大きな相違点である窓領域32aが、内側プライ32内に提供され、その窓領域32a内には、この例においては、比較的に厚い例えば内蔵チップ2、または、または別の理由から、比較的に厚い内蔵電気部品が、取り付けられる。具体的には、この内側プライ32は、インサート1が載置されるベース層7と被覆プライ層9との間に存在するマルチプライ中間層の内部に配置される。中間層は、ここでは、液状樹脂中間層またはプリプレグ中間層29を下部層プライとして含み、内側プライ32を中央層として含み、上部液体レジン層プライまたは上部プリプレグ層プライ29bを含む。下部中間層29の窓29aおよび内側プライ32の窓32aは、一緒になって、取付空間を形成する。上部中間層プライ29bは、チップ2を備えるインサート1が上を樹脂によって被覆されることを保証する。
【0072】
図9の例としての実施形態においては、さらに、チップ2を備えるインサートは、隙間を備えることなく、樹脂材料で取り囲まれた状態ですべての面が埋め込まれ、それは、この場合には、ベース層7、下部中間層プライ29、および、上部中間層プライ29bから始まり、あらゆる隙間を満たし、とりわけ、比較的に厚いチップ2と、下部中間層プライ29および内側プライ32の横方向に隣接する窓端部との間を満たし、それは、樹脂材料がこの構造を圧縮または貼り合わせるときに液化して対応する隙間を満たすという事実によるものである。
【0073】
図示された図9の例においては、窓29aおよび32aによって形成される取付空間は、ただ単にチップ2を取り付ける役割をなす。変形として、インサート1の配線基板3を備える部分を窓領域内に取り付けるために、その必要性があれば、残りのインサート1の横方向寸法、すなわち、より詳細には、チップ2の下に存在する配線基板3を備える層構造の横方向寸法に少なくともほぼ一致する横方向寸法を備える窓を提供することも可能であることは言うまでもないことである。これは、とりわけ、例えば、図8に示される種類のインサートの場合、具体的には、インサート層構造が例えば図9のチップ2のような比較的に厚い取付部品をさらに含む場合のような比較的に高いインサート層構造の場合に、都合の良いことである。
【0074】
図示される例においては、取り付けられた電気部品をほとんどの場合に1つしか有していないインサートだけが、多層プリント回路基板構造の内部に組み込まれたが、別の実施形態においては、本発明は、同様に、インサート上に提供されたいくつかの能動的および/または受動的な電気部品を備える1つのインサートおよび/または1つかまたはそれ以上の電気部品をそれぞれが有するいくつかのインサートが積層スタック内に組み込まれた多層プリント回路基板構造を備えることは言うまでもないことである。いくつかのインサートは、例えば、同一スタック平面に所定の横方向間隔で次々に並べて所定の位置に配置されてもよい。それに加えて、または、それの代わりに、いくつかのインサートは、横方向にずれてまたは横方向にずれることなく、様々なスタック平面において積み重ねられる方向に次々に積み重ねられて所定の位置に配置されてもよい。
【0075】
上述した例としての実施形態は、本発明は1つかまたはそれ以上の受動的および/または能動的な電気部品を再配線基板上にそれぞれが有する1つかまたはそれ以上のインサートを多層プリント回路基板構造の内部にきわめて好都合に組み込むのを可能にすることを明らかにするものであり、そのインサート、および、とりわけ、それの再配線基板は、例えばプリプレグ樹脂材料からなるベースプライと被覆プライとの間において樹脂材料内に完全にかつ隙間を備えることなく埋め込まれる。インサートの構造およびそのインサートの積層スタック内への取り付けは、必要に応じて、高い対称性を備えて実施されてもよく、これは、大きな温度変化に伴う熱膨張作用による大きな機械的応力荷重を防止する。インサートの再配線基板は、プリント回路基板積層スタックの埋め込まれた層プライよりも相当に小さい表面積を有するので、例えばポリイミドからなる連続的な再配線基板を挿入する場合にもしかすると危惧されるような層間剥離問題が、発生することはない。柔軟性のある薄い設計の再配線基板は、さらにまた、インターポーザ作用によって、関係する層材料の異なる熱膨張率に基づいて発生する張力および圧縮力荷重を補償することに寄与するかもしれない。インサートの再配線基板上に部品(1つかまたは複数)を実質的に中央におよび/または対称に配置することは、同様に、横方向張力および圧縮力加重を減少させることに寄与する。
【0076】
本発明によれば、この新しい多層プリント回路基板構造は、比較的に容易に製造することができる。再配線基板およびその上に取り付けられる電気部品(1つかまたは複数)は、積層スタックを圧縮する前に、電気的に検査することができ、そして、これは、故障率を減少させ、かつ、歩留まりを改善する。電気的な機能部品だけが、配線基板上に取り付けられ、機能的に取り付けられたインサートだけが、多層プリント回路基板構造の積層スタック内に存在し、そして、多層プリント回路基板構造とともに圧縮される。さらに、多層プリント回路基板構造の実装密度は、インサートが誘電体ベース層と誘電体カバー層との間に配置された積層スタックの部分領域にだけ再配線をセグメント化して挿入することによって、全体的に増大させることが可能である。多層プリント回路基板構造の内部におけるこの新しい再配線によって、さらに、外側プライに必要とされる空間を減少させることが可能であり、また、外側プライのルータ加工が、簡単化される。なぜなら、対応するヴィアが、再配線用パッドから表面まで案内されることしか必要とされないからであり、また、再配線用パッドの位置は、外側プライへの関連するヴィアが外側プライのルータ加工に最適な位置に配置されるように選択されてもよいからである。
【符号の説明】
【0077】
1 インサート
2 チップ
2a、2b、2c チップ
3 再配線基板
4 再配線用パッド
4′ コンタクトパッド
4a、4b 再配線用パッド
5 再配線の導電路
6 端子リード
7 ベース層
8 アンダーフィル層材料
8a アンダーフィル層材料
8b アンダーフィル層開口
9 カバー層
9a 切り抜き
10、11 導体構造平面
12 ヴィア
12a、12b 内側プライ
13a、13b、14a、14b プリプレグ層プライ
15a〜15d 内側導体構造平面
16a、16b 外側導体構造平面
17a、17b ヴィア
18 高さスペーサー
20 インサートカバー層
21a、21d 導体構造平面
22a、22b バッファー層部分
23 プリプレグ中間層
23a 窓領域
24a、24b プリプレグプライ
25a、25b 外側誘電体層プライ
28 熱伝導層
29 プリプレグ中間層
29a 窓領域
30 下部半製品プリント回路基板
31 上部半製品プリント回路基板
32 内側プライ
32a 窓領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性でありかつ/または導電路構造を備えているいくつかの層(7、9、10、11)からなる積層スタックと、
前記積層スタックの内部に存在し、該積層スタックの表面の広がりのうちの部分領域においてのみ横方向に広がっており、少なくとも1つの受動的または能動的な電気部品(2)と関連の再配線(4、5)とが取り付けられているインサート(1)と
を備える多層プリント回路基板構造であって、
前記インサート(1)が、該インサートの両面をカバーする2つの全領域に及ぶ電気絶縁性の液体レジン層またはプリプレグ層(7、9)の間に埋め込まれており、該インサートの前面が、当該構造の圧縮または積層時に液化するレジン材料によってすき間なく囲まれていることを特徴とする多層プリント回路基板構造。
【請求項2】
前記2つの液体レジン層またはプリプレグ層の少なくとも一方が、前記インサートまたは少なくとも前記インサートに取り付けられた1つの部品の領域に、該インサートまたは該部品が突き出す切り抜き(9a)を有していることをさらに特徴とする請求項1に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項3】
前記2つの液体レジン層またはプリプレグ層の間に、前記インサートまたは少なくとも前記インサートに取り付けられた1つの部品の領域に窓(29a)を有している少なくとも1つの液体レジン中間層またはプリプレグ中間層(29)が設けられていることをさらに特徴とする請求項1または2に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項4】
前記インサートをカバーする前記2つの液体レジン層またはプリプレグ層の少なくとも一方、ならびに/あるいは前記液体レジン中間層またはプリプレグ中間層が、少なくとも2つの液体レジン部分層またはプリプレグ部分層を有する多層の様相で形成されていることをさらに特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項5】
前記インサートをカバーする前記2つの液体レジン層またはプリプレグ層の間に、導電路構造が設けられた少なくとも1つの層(32)が配置され、該層が、前記インサートまたは少なくとも前記インサートに取り付けられた1つの部品の領域に窓(32a)を有していることをさらに特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項6】
それぞれの電気部品(2)が、前記再配線(4、5)が設けられた再配線基板(3)の部品装着位置に取り付けられていることをさらに特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項7】
前記再配線(4、5)が、前記再配線基板(3)の前記部品装着位置と同じ面に設けられていることをさらに特徴とする請求項6に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項8】
1つの再配線および前記インサートに取り付けられた少なくとも1つの受動的または能動的な電気部品(2、2a、2b、2c)が、前記再配線基板の両面の各々に設けられていることをさらに特徴とする請求項6または7に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項9】
前記再配線基板が、フレキシブルプリント回路基板材料から形成され、前記少なくとも1つの電気部品を取り付けるための前記部品装着位置を中央領域に有し、再配線用パッド(4)を周辺領域に有し、前記部品装着位置と前記再配線用パッド(4)との間を延びる再配線の導電路(5)を有していることをさらに特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項10】
フレキシブルプリント回路基板材料が、液晶高分子材料、ポリイミド材料またはセラミック材料である請求項9に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項11】
前記インサートと、該インサートをカバーする前記2つの液体レジン層またはプリプレグ層(7、9)の少なくとも一方との間に、それぞれバッファー層部分(22a、22b)が設けられていることをさらに特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項12】
前記再配線基板(3)において前記少なくとも1つの電気部品(2)の横方向外側の領域に高さスペーサー構造(18)が設けられ、該高さスペーサー構造(18)が、積層の方向において少なくとも前記少なくとも1つの電気部品(2)の高さまで延びていることをさらに特徴とする請求項6〜11のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項13】
前記インサート(1)が、前記再配線基板(3)の全領域にわたって広がり、あるいは前記電気部品(2)の外側の領域だけに広がるフィル層層および/または平坦化層(19)を有していることをさらに特徴とする請求項6〜12のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項14】
前記フィル層層および/または平坦化層(19)が、熱伝導性かつ電気絶縁性の材料からなることをさらに特徴とする請求項13に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項15】
前記インサートが、前記フィル層層および/または平坦化層(19)を覆う熱伝導層(27)を有していることをさらに特徴とする請求項14に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項16】
前記インサート(1)が、前記フィル層層および/または平坦化層(19)を覆い、あるいは前記熱伝導層(27)を覆って、前記再配線基板(3)に材料および/またはサイズに関して類似したカバー層(20)を有していることをさらに特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項17】
前記熱伝導層(27)が、1つ以上のヴィア(17a、17b)によって、前記積層スタックの少なくとも1つの熱伝導性の構造化された層または全領域にわたる層(28)に、熱を伝えることができる様相で接続されていることをさらに特徴とする請求項15または16に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項18】
前記再配線用パッド(4)の少なくとも1つが、1つ以上のヴィア(17a、17b)によって、前記積層スタックの少なくとも1つの熱伝導性の構造化された層または全領域にわたる層(28)に、熱を伝えることができる様相で接続されていることをさらに特徴とする請求項9〜17のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項19】
前記インサート(1)をカバーする前記液体レジン層またはプリプレグ層(7、9)が、積層の方向において前記積層スタックのほぼ中間に配置されていることをさらに特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の多層プリント回路基板構造を製造するための方法であって、
電気部品(2)と関連の再配線(4、5)とを有するインサート(1)を用意するステップと、
積層スタックの作成済みのベース層(7)上に前記インサート(1)を配置し、積層スタックの1つ以上のさらなる層を前記ベース層(7)および前記インサート(1)を覆って配置するステップと、
上述のように作成された構造の全体を一体に積層および/またはプレスするステップと
を含んでおり、
前記ベース層(7)および反対側において前記インサート(1)を覆う層(9)として、液体レジン層またはプリプレグ層がそれぞれ選択され、
レジン材料が、前記構造の積層またはプレスの際に前記インサートに隣接する液体レジン層またはプリプレグ層の領域において液化し、前記インサートの全面をすき間なく囲む方法。
【請求項21】
前記電気部品(2)が、前記インサート(1)の再配線基板(3)に取り付けられており、
前記再配線基板(3)に、前記インサート(1)を前記積層スタックへと導入する前に孔が設けられ、該孔が、後続の積層/プレスのプロセスの際に周囲からのレジン材料で満たされ、
次いで前記レジンで満たされた孔に、該孔よりも小さな直径のヴィア(17a、17b)が、それぞれのヴィアと該ヴィアに隣接する前記再配線基板(3)の縁との間にレジン材料のリングが残るような方法で形成されることをさらに特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
再配線の導電路(5)が、導電性の再配線層が前記再配線基板(3)の全領域へと適用され、次いで該再配線層が、該再配線層の主要な領域部分を残しつつ分離溝を形成することによって平坦な導電路へと分割されることで形成されることをさらに特徴とする請求項20または21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−238874(P2012−238874A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162648(P2012−162648)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2008−518758(P2008−518758)の分割
【原出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(508002874)シュバイツァー エレクトロニク アーゲー (3)
【Fターム(参考)】