説明

組成物、該組成物から得られる共重合体および光学フィルムならびに該光学フィルムの製造方法

【課題】広い波長域で一様の偏光変換が可能な、光学フィルムが得られる、熱可塑性樹脂および組成物を提供する。
【解決手段】式(I)および式(II)のモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなる重合体(1)、式(III)および式(IV)のモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(2)ならびに光重合開始剤(3)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、該組成物から得られる共重合体および光学フィルムならびに該光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正の屈折率異方性を有するモノマーと負の屈折率異方性を有するモノマーとを含む熱可塑性樹脂を延伸して得られた位相差板が開示されている。しかしながら、かかる熱可塑性樹脂としては、具体的には、ホスゲンとビスフェノールとからなるポリカーボネートしか開示されておらず、ホスゲンを用いることから、該ポリカーボネートの工業的な生産は必ずしも容易ではない。さらに該ポリカーボネートに用いられる負の屈折率異方性を有するモノマーとしては、9−フルオレンとフェノールとの脱水縮合物である下記[F]および[G]が開示されているに過ぎない。
【0003】

【0004】
【特許文献1】国際公開第99/06057号パンフレット(特許請求の範囲、[0119]、[0131][表4]、[0137][表5]、[0148][表8])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、広い波長域で一様の偏光変換が可能になる、新しい熱可塑性樹脂からなる光学フィルム、該熱可塑性樹脂を製造するのに好適な組成物を提供し、同時に該熱可塑性樹脂を、ホスゲンを用いることなく製造する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式(I)で表されるモノマーおよび式(II)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなる重合体(1)、式(III)で表されるモノマーおよび式(IV)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(2)ならびに光重合開始剤(3)を含む組成物である。

(式(I)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは5〜20員環の芳香族性を有する基を少なくとも1つ有する原子団を表す。Xは、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基を表す。該ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は炭素数2〜6であり、アルキレンオキシ単位の繰り返し数は2〜6である。該アルキレン基、該アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基または水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基、該アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基のメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。)

(式(II)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)

(式(III)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは5〜20員環の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。該芳香族炭化水素基または芳香族複素環基は、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数5〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基、炭素数2〜4のアシル基、カルボキシル基またはハロゲン原子が結合していてもよい。)

(式(IV)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、RおよびRが連結した炭素数4〜6のアルキレン基であってもよい。該アルキル基および該アルキレン基の水素原子は水酸基に置換されていてもよく、該アルキル基および該アルキレン基に含まれる炭素原子は、ヘテロ原子に置換されていてもよい。)
【0007】
本発明は、式(I)で表されるモノマーが、式(I−1)〜式(I−3)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである上記組成物である。

(式(I−1)〜式(I−3)中、Rは、それぞれ独立に、上記と同じ意味を表す。Xは、それぞれ独立に、炭素数2〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基または水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基のメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。nは、それぞれ独立に、0〜20の整数を表す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはグリシドキシ基を表し、lは、それぞれ独立に、0〜4の整数、kは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。)
【0008】
本発明は、式(II)で表されるモノマーが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである上記組成物である。
【0009】
本発明は、式(III)で表されるモノマーが、N−ビニルカルバゾール、ビニルナフタレンおよびビニルアントラセンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである上記組成物である。
【0010】
本発明は、式(IV)で表されるモノマーが、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドおよびアクリロイルモルフォリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである上記組成物である。
【0011】
本発明は、重合体(1)が、式(I)で表されるモノマーおよび式(II)で表されるモノマーからなる上記組成物である。
【0012】
本発明は、上記組成物を光重合してなる共重合体である。
本発明は、上記共重合体を含む膜を、延伸してなる光学フィルムである。
本発明は、光学フィルムを透過する透過光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、下記式を充足する上記光学フィルムである。
Re(450)<Re(550)<Re(650)
本発明は、上記組成物を成膜化し、さらに延伸する光学フィルムの製造方法である。
本発明は、組成物を含む溶液を平滑な面にキャストして溶媒を留去することによって成膜化する上記光学フィルムの製造方法である。
本発明は、上記組成物の、光学フィルムを製造するための使用である。
本発明は、上記光学フィルムからなる位相差板である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の組成物からなる光学フィルムによれば、広い波長域で一様の偏光変換が可能になる。また本発明の組成物からなる共重合体は、ホスゲンを用いることがなくとも、簡便な方法で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。「光学フィルム」とは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折などを意味する。
本発明の組成物は、式(I)で表されるモノマー(以下「モノマー(I)」という場合がある)および式(II)で表されるモノマー(以下「モノマー(II)」という場合がある)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなる重合体(1)を含有する。
【0015】

【0016】
モノマー(I)におけるRは、水素原子またはメチル基を表す。
モノマー(I)におけるRは5〜20員環の芳香族性を有する基を少なくとも1つ有する原子団を表す。該芳香族性を有する基は、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数5〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基、炭素数2〜4のアシル基、カルボキシル基またはハロゲン原子が結合していてもよい。モノマー(I)におけるXは、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基を表す。該ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は炭素数2〜6であり、アルキレンオキシ単位の繰り返し数は2〜6である。該アルキレン基、該アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基または水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基、該アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基のメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。
該芳香族性を有する基の具体例としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基またはアントラセニル基などの芳香族炭化水素基、ピロール基、フラニル基、ピラジニル基、ピラゾール基、ピリジニル基またはチアゾール基などの芳香族複素環基などが例示される。
【0017】
芳香族性を有する基を少なくとも1つ有する原子団は、複数の芳香族性を有する基が連結基を介して結合されてなる1価の原子団であってもよい。連結基としては、たとえばメチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、エチレン基またはプロピレン基などの炭素数1〜6程度の炭化水素基、単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基あるいは−CO−などが挙げられる。
具体的には、複数の芳香族性を有する基が単結合で結合した例としてはビフェニル基が挙げられ、複数の芳香族性を有する基がイソプロピリデン基で結合した式(V)で表される基などが例示される。

【0018】
芳香族性を有する基には、たとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはオクチル基などの炭素数1〜12のアルキル基、たとえばメトキシ基またはエトキシ基などの炭素数1〜12のアルコキシ基、たとえばフッ素原子、塩素原子または臭素原子などのハロゲン原子、たとえばアセチル基などのような炭素数2〜4のアシル基、水酸基、グリシルオキシ基あるいはカルボキシル基が結合していてもよい。
【0019】
モノマー(I)として、異なる複数のモノマーを併用してもよい。
モノマー(I)としては、特に、式(I−1)〜式(I−3)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。

式(I−1)中、Rは上記と同じ意味を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはグリシドキシ基を表す。kは0〜5の整数を表す。kが2以上の場合、複数のRはそれぞれ異なる種類の基であってもよい。
【0020】

式(I−2)中、R、Rおよびkは上記と同じ意味を表す。Xは、それぞれ独立に、炭素数2〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基または水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基のメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。nは1〜20の整数を表す。lは0〜4の整数を表す。lが2以上の場合、複数のRはそれぞれ異なる種類の基であってもよい。
【0021】

式(I−3)中、R、R、X、n、lおよびkは上記と同じ意味を表す。
【0022】
モノマー(I)の具体例としては、ベンジルアクリレートまたはベンジルメタクリレート(I−1−1)の他、式(I−2−1)または式(I−3−1)で表されるモノマーが例示される。

【0023】
モノマー(I)の製造方法としては、たとえば芳香族性を有する基を与える化合物として、フェノール化合物を用い、該化合物にエチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを反応させて、R−X−OHを得て、さらにアクリル酸またはメタクリル酸などでエステル化する方法、たとえば芳香族性を有する基を与える化合物として、ハロゲン化ベンゼン化合物を用い、該化合物にアルキレンジオールを反応させて、R−X−OHを得て、さらにアクリル酸またはメタクリル酸などでエステル化する方法などが挙げられる。
【0024】
また上記例示されたベンジルアクリレートおよびベンジルメタクリレート(I−1−1)は、和光純薬工業、メルク社またはアルドリッチ社などから市販されており、式(I−2)および式(I−3)で表される化合物は新中村化学工業(株)からNKエステルA−LEN−10[式(I−2−1)で表されるモノマー]およびNKエステルA−CMP−1E[式(I−3−1)で表されるモノマー]の商品名で市販されている。
【0025】
重合体(1)を構成する全ての繰り返し単位100モル%に対し、モノマー(I)に由来する繰り返し単位の含有量としては、後述するモノマー(II)に由来する繰り返し単位が含まれていれば、含有されなくてもよいが、たとえば80〜99モル%、好ましくは85〜98モル%、特に好ましくは90〜97モル%である。モノマー(I)に由来する繰り返し単位の含有量が80〜99モル%であると、光学フィルムが広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましい。
【0026】

【0027】
モノマー(II)におけるRは、水素原子またはメチル基を表す。
モノマー(II)におけるRは、水素原子または炭素数1〜12アルキル基を表す。
【0028】
モノマー(II)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートまたはブチル(メタ)アクリレートなどが例示され、特に(メタ)アクリル酸またはメチル(メタ)アクリレートが好ましい。
モノマー(II)として、異なる複数のモノマーを併用してもよい。
【0029】
重合体(1)を構成する全ての繰り返し単位100モル%に対し、モノマー(II)に由来する繰り返し単位の含有量としては、前述するモノマー(I)に由来する繰り返し単位が含まれていれば、含有されなくてもよいが、たとえば1〜95モル%、好ましくは5〜90モル%、特に好ましくは10〜80モル%である。モノマー(II)に由来する繰り返し単位の含有量が1〜95モル%であると、光学フィルムが広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましい。
【0030】
本発明の組成物に用いられる重合体(1)には、2種以上の複数のモノマーを併用することが好ましい。2種以上のモノマーの組み合わせとしては、特にモノマー(I)とモノマー(II)との組合せが好ましい。重合体(1)が1種のモノマーからなる場合は、モノマー(I)からなることが好ましい。
【0031】
本発明の組成物に用いられる重合体(1)には、モノマー(I)およびモノマー(II)以外にも、モノマー(I)および/またはモノマー(II)と共重合可能なモノマー(以下「共重合可能なモノマー」という場合がある)に由来する繰り返し単位が含有されていてもよい。共重合可能なモノマーとしては、たとえば酢酸ビニル、(無水)マレイン酸、マレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン化合物などが挙げられる。
【0032】
共重合可能なモノマーとして用いられる炭素数3〜20のα−オレフィン化合物としては、たとえばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンまたは1−エイコセンのような炭素数3〜20の直鎖状α−オレフィンや、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンまたは3−メチル−1−ブテンのような炭素数4〜20の分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。
エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィン化合物の中でも、エチレン、炭素数が3または4の直鎖状α−オレフィンであるプロピレンまたは1−ブテンが、得られる共重合体をフィルム状に成形した際の柔軟性に優れることから好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0033】
共重合可能なモノマーは、2種類以上の共重合可能なモノマーを併用してもよい。
本発明の重合体(1)における共重合可能なモノマーに由来する繰り返し単位の含有量としては、たとえば50モル%以下、好ましくは40モル%以下、特に好ましくは30モル%以下である。共重合可能なモノマーが50モル%以下であると、光学フィルムが広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましい。
【0034】
重合体(1)の共重合形式としては、ランダム形式またはブロック形式などが挙げられるが、重合体(1)を構成する繰り返し単位がそれぞれドメインを形成しない程度にブロック形式が少量であると、得られる光学フィルムの透明性が向上することから好ましい。
【0035】
重合体(1)の調製方法としては、たとえばこれらモノマーを10重量%以上、好ましくは20〜40重量%の濃度になるように有機溶剤に調製し、窒素雰囲気下にて、20〜100℃程度、好ましくは40〜90℃程度、特に好ましくは60〜80℃程度に加熱しながら、1〜24時間程度攪拌して、重合体(1)を含有する溶液を得る方法などが挙げられる。また反応を制御するために、用いるモノマーや重合開始剤を重合中に添加したり、有機溶剤に溶解したのち添加したりしてもよい。
また重合体(1)にエチレンまたはプロピレンなどの気体の共重合可能なモノマーを用いる場合には、窒素に代えて、かかる共重合可能なモノマー雰囲気下、好ましくは加圧下で製造すればよい。
【0036】
有機溶剤としては、たとえばトルエンまたはキシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;n−プロピルアルコールまたはイソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン類などが挙げられる。
【0037】
重合体(1)の調製に用いられる重合開始剤としては、たとえば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)または2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などのアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレートまたは(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどの有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素など無機過酸化物等が挙げられる。また熱重合開始剤と還元剤を併用したレドックス系開始剤なども重合開始剤として使用し得る。
【0038】
本発明の組成物は、かくして得られた重合体(1)と、式(III)で表されるモノマー(以下「モノマー(III)」という場合がある)および式(IV)で表されるモノマー(以下「モノマー(IV)」という場合がある)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(2)とを含有する。
【0039】

【0040】
モノマー(III)におけるRは、水素原子またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。
モノマー(III)におけるRは5〜20員環の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。該芳香族炭化水素基または芳香族複素環基は、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数5〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基、炭素数2〜4のアシル基、カルボキシル基またはハロゲン原子が結合していてもよい。
具体例としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基またはアントラセニル基などの芳香族炭化水素基、ピロール基、フラニル基、ピラジニル基、ピラゾール基、ピリジニル基またはチアゾール基などの芳香族複素環基などが例示される。
【0041】
芳香族炭化水素基または芳香族複素環基には、たとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはオクチル基などの炭素数1〜12のアルキル基、たとえばメトキシ基またはエトキシ基などの炭素数1〜12のアルコキシ基、たとえばフッ素原子、塩素原子または臭素原子などのハロゲン原子、たとえばアセチル基などのような炭素数2〜4のアシル基、水酸基、グリシドキシ基あるいはカルボキシル基が結合していてもよい。
【0042】
芳香族炭化水素基または芳香族複素環基は、複数の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が連結基を介して結合されてなる1価の基であってもよい。連結基としては、たとえばメチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、エチレン基またはプロピレン基などの炭素数1〜6程度の炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基あるいは−CO−などが挙げられる。また複数の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が、単結合で結合していてもよい。
具体的には、複数の芳香族炭化水素基が単結合で結合した例としてはビフェニル基が挙げられ、複数の芳香族炭化水素基がイソプロピリデン基で結合した式(V)で表される基などが例示される。

【0043】
モノマー(III)としては、たとえばo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレンまたはp−エチルスチレンなどのアルキルスチレン、たとえばヒドロキシスチレン、t−ブトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンジルアセテート、o−クロロスチレンまたはp−クロロスチレンなどの、ベンゼン環に水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシルオキシ基またはハロゲンなどが結合した置換スチレン、たとえば4−ビニルビフェニルまたは4−ヒドロキシ−4’−ビニルビフェニルなどのビニルビフェニル系化合物、ビニルナフタレンまたはビニルアントラセンなどの縮合環およびビニル基を有する化合物、N−ビニルフタルイミドなどの芳香族炭化水素基、複素環基およびビニル基を有する化合物等が挙げられる。
モノマー(III)として、異なる複数のモノマーを併用してもよい。
芳香族複素環基を有するモノマー(III)としては、N−ビニルカルバゾールまたはN−ビニルインドールなどが挙げられる。
【0044】
モノマー(III)としては、特にN−ビニルカルバゾール、ビニルナフタレンおよびビニルアントラセンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを有することが好ましい。
【0045】
モノマー(III)の含有量は、重合体(1)とモノマー(2)の合計量を100重量%とした場合、たとえば10〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、特に好ましくは25〜80重量%である。モノマー(III)の含有量が10〜90重量%であると、光学フィルムが広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましい。
【0046】

【0047】
モノマー(IV)におけるRは、水素原子またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。
モノマー(IV)におけるRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基またはn−ブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基を表し、RおよびRをブチレン基またはヘキシレン基などで連結した炭素数4〜6のアルキレン基であってもよい。該アルキル基および該アルキレン基の水素原子は水酸基に置換されていてもよい。また該アルキル基および該アルキレン基に含まれる炭素原子は、酸素原子、硫黄原子または窒素原子などのヘテロ原子に置換されていてもよい。
モノマー(IV)として、異なる複数のモノマーを併用してもよい。
【0048】
モノマー(IV)の具体例としては、たとえば(メタ)アクリルアミドのほかに、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドまたはN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド、たとえばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリロイルモルホリン等のN,N−置換(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
モノマー(IV)としては、特にN,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドまたはアクリロイルモルホリンが好ましい。
モノマー(IV)は、市販されているものをそのまま使用すればよい。
【0049】
モノマー(IV)の含有量は、重合体(1)とモノマー(2)の合計量を100重量%とした場合、たとえば10〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、特に好ましくは25〜80重量%である。モノマー(IV)の含有量が10〜90重量%であると、光学フィルムが広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましい。
【0050】
本発明の組成物に含まれる光重合開始剤(3)としては、たとえばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩またはスルホニウム塩等が挙げられ、より具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバスペシャルティケミカルズ社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152またはアデカオプトマーSP−170(以上、全て旭電化)などを挙げることができる。
また光重合開始剤(3)の使用量は、たとえば本発明の組成物を構成するモノマー(2)100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマー(2)を重合させることができる。
【0051】
本発明の組成物には、3官能以上の多官能光重合性化合物が含有されていてもよい。3官能以上の多官能光重合性化合物としては、たとえばペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートまたはジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどが挙げられる。共重合可能なモノマーは、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。3官能以上の多官能光重合性化合物は、1種類でも2種類以上の3官能以上の多官能光重合性化合物を用いてもよい。
【0052】
本発明の組成物には、モノマー(2)の重合を制御し、得られる光学フィルムの安定性を向上させるために、重合禁止剤を含有していてもよい。重合禁止剤としては、たとえばハイドロキノンまたはアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類あるいはβ−ナフトール類等を挙げることができる。
重合禁止剤の使用量は、たとえば組成物を構成するモノマー(2)100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマー(2)を重合させることができる。
【0053】
本発明の組成物には、モノマー(2)の重合を高感度化するために光増感剤を含有していてもよい。光増感剤としては、たとえばキサントンまたはチオキサントン等のキサントン類、アントラセンまたはアルキルエーテルなどの置換基を有するアントラセン類、フェノチアジンあるいはルブレンを挙げることができる。
光増感剤の使用量としては、モノマー(2)100重量部に対して、たとえば0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、高感度化にモノマー(2)を重合させることができる。
【0054】
本発明の組成物には、レベリング剤が含有されていてもよい。レベリング剤としては、たとえばトーレシリコーンDC3PA、同SH7PA、同DC11PA、同SH21PA、同SH28PA、同29SHPA、同SH30PA、ポリエーテル変性シリコンオイルSH8400(トーレシリコーン(株)製)、KP321、KP322、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341(信越シリコーン製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(ジーイー東芝シリコーン(株)製)、フロリナート(商品名)FC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、メガファック(商品名)F142D、同F171、同F172、同F173、同F177、同F183、同R30(大日本インキ化学工業(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(新秋田化成(株)製)、サーフロン(商品名)S381、同S382、同SC101、同SC105(旭硝子(株)製)、E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM−1000、BM−1100(いずれも商品名:BM Chemie社製)、メガファック(商品名)R08、同BL20、同F475、同F477または同F443(大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。
レベリング剤を用いることにより、得られるフィルム(膜)を平滑化することができる。さらに製膜化の製造過程で、組成物の流動性を制御したり、モノマーを重合して得られるフィルムの架橋密度を調整したりすることができる。
レベリング剤の含有量の具体的な数値は、通常、重合体(1)、モノマー(2)、光重合開始剤(3)、必要に応じて含有される共重合可能なモノマーの合計100重量部に対して、0.005重量部〜2.0重量部であり、好ましくは、0.01重量部〜1.5重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマー(2)を重合させることができる。
【0055】
本発明の組成物には、可塑剤が含有されていてもよい。可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルまたはグリコール酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェートまたはトリブチルホスフェートが含まれる。
上記カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルまたはクエン酸エステルが代表的である。上記フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)またはジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。上記クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチルまたはクエン酸アセチルトリブチルが例示される。
【0056】
その他のカルボン酸エステルとしては、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチルまたは種々のトリメリット酸エステルが例示される。
グリコール酸エステルとしては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレートまたはブチルフタリルブチルグリコレートなどが例示される。またトリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ジトリメチロールプロパンテトラプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネート、イノシトールペンタアセテートまたはソルビタンテトラブチレート等も好例として挙げられる。
【0057】
可塑剤としては、特にトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネートまたはソルビトールトリアセテートトリプロピオネート等が好ましく、特にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネートまたはソルビトールトリアセテートトリプロピオネートが好ましい。
【0058】
可塑剤は1種でもよいし2種以上併用してもよい。可塑剤の添加量は、本発明のフィルム特性を大きく損ねない範囲で適宜、選択されればよく、たとえば本発明における組成物の固形分の総量に対して0.1〜30重量%程度である。
可塑剤の具体例は、特開平11−124445号公報記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号公報記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報記載のクエン酸エステル類または特開平11−90946号公報記載の置換フェニルリン酸エステル類として知られている。
【0059】
本発明の共重合体は、通常、組成物を光重合して得ることができる。
組成物は、モノマー(I)およびモノマー(II)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなる重合体(1)、モノマー(III)およびモノマー(IV)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(2)ならびに光重合開始剤(3)を混合し、必要に応じて、3官能以上の多官能光重合性化合物、光増感剤、レベリング剤、可塑剤および有機溶剤を混合することによって調製される。
共重合体を製造する際の有機溶剤の量は、重合体(1)、モノマー(2)の合計濃度を10重量%以上、好ましくは20〜50重量%に調製される量である。
有機溶剤としては、上記重合体(1)の製造方法に用いられた有機溶剤と同様の溶剤が用いられる。
【0060】
本発明の光学フィルムは、通常かくして得られた組成物を成膜化し、得られた膜状物を光重合後に、さらに延伸することによって製造される。組成物の成膜化方法としては、たとえば組成物を平滑な面にキャストして溶剤を留去する溶剤キャスト法、組成物から有機溶剤を除去し、得られた共重合体を溶融押出機などでフィルム状に押出成形する溶融押出法などが挙げられる。特に溶剤キャスト法は組成物をそのまま成膜化できることから好ましい。
【0061】
光重合においては、通常紫外光(UV)によって硬化される。紫外光の発生源としては、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、低圧、高圧、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、太陽光線などが例示される。紫外光の照射強度は、終始一定の強度でも行ってよいし、硬化途中で強度を変化させることにより、硬化後の物性を微調整することもできる。
【0062】
また得られた膜状物を延伸する方法としては、たとえばテンター法による延伸法、ロール間延伸による延伸法などが挙げられる。
延伸は、一軸延伸でも二軸延伸のいずれでもよく、縦延伸でも横延伸のいずれでもよい。特に生産性の観点から、一軸延伸が好ましく、特に一軸の縦延伸または一軸の横延伸が好ましい。
【0063】
光学フィルムを透過する光の波長450nmのレターデーション[Re(450)]と波長550nmのレターデーション[Re(550)]との比([Re(450)]/[Re(550)])は波長分散係数αと定義され、光学フィルムが広い波長域において一様の偏光変換を行うためには、光学フィルムの波長分散係数αが1.00未満である波長分散特性を有することが好ましい。かくして得られた本発明の光学フィルムは、通常、波長分散係数αが1.00未満である。
光学フィルムを透過する光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)は、通常Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を充足するなど、300〜700nm可視領域全般で右上がりの分散を示すことから、広い波長域で一様の偏光変換を行うことができる。
本発明の光学フィルムは、広い波長域において一様の偏光変換が可能であるため、λ/2板またはλ/4板などの位相差板や、視野角向上フィルムなどとして用いられる。また光学フィルムがλ/4板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の円偏光板とすることができ、またλ/2板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の偏光回転素子とすることができる。したがって、各種液晶表示装置、陰極線管(CRT)、タッチパネル、エレクトロルミネセンス(EL)ランプ等における反射防止フィルター、さらには液晶プロジェクターなどに使用することができる。
本発明の位相差板は、このように上記の光学フィルムからなり、広い波長域において一様の偏光変換が可能である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記ない限り、重量%および重量部である。
【0065】
(波長分散特性)
合成した樹脂から溶剤キャスト法によって膜状物を作製した。該膜状物を温調付オートグラフ((株)東洋精機製作所製、ストログラフT)によって延伸し、本発明の光学フィルムを作製した。光学フィルムの膜厚は厚み計(仙台ニコン(株)製)で測定し、450nmから750nmの波長範囲において、波長分散特性を自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて測定した。
【0066】
(光学異方性)
延伸によって重合体主鎖を一軸配向させた際に、その配向方向と屈折率が最大になる方向が異なる(たとえば直交する場合など)光学異方性を有する場合、負の複屈折性を有している。一方、配向方向と屈折率が最大になる方向が一致する、またはほぼ一致する(たとえば配向方向と屈折率が最大になる方向との差が10度以内の場合など)場合、正の複屈折性を有している。屈折率が最大になる方向は自動複屈折計より求められる。
【0067】
(実施例1)
攪拌機、温度計および還流冷却器を備えた反応槽に、式(I−2−1)で表されるモノマー(新中村化学製、商品名 A−LEN−10)[モノマー(I)]242部、メチルメタクリレート[モノマー(II)]60部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート560部を混合し溶解させ、その後、70℃に昇温させた。その後、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.74部を添加し、70℃で7時間攪拌し、重合体(1)を含有するロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。得られた溶液100gに、N−ビニルカルバゾール[モノマー(III)]1部(2)、光重合開始剤(3)(2-Methyl-1-4-(methylthio)pheny-2-morpholino-propan-1-one、イルガキュア907、チバスペシャリティケミカルズ社製)1.0g、メガファック(商品名)F475(大日本インキ化学工業(株)製)0.05gを混合溶解したのち、ポリエチレンテレフタレート製の離型フィルム上に、300μmのギャップのアプリケーターで塗布、100℃で30分乾燥し、UV照射(高圧水銀ランプ:1Pass当たり 200mJ/cm2:365nm)して、本発明の共重合体を膜状物として得た。続いて該膜状物を温度調節オートグラフ延伸機を使用して1.8倍延伸し光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを、450nmから750nmの波長範囲において、自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて波長分散特性を測定した。その光学フィルムは、フィルム厚:58μm、正の複屈折性で、Re(550)=88nm、Re(450)/Re(550)=0.88、Re(500)/Re(550)=0.96、Re(600)/Re(550)=1.04、Re(650)/Re(550)=1.07、Re(750)/Re(550)=1.10の光学特性であった。
【0068】

(実施例2)
N−ビニルカルバゾール[モノマー(III)]1部をN,N−ジエチルアクリルアミド[モノマー(IV)]24部に変更する以外には実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。その光学フィルムは、フィルム厚:52μm、正の複屈折性で、Re(550)=48nm、Re(450)/Re(550)=0.95、Re(500)/Re(550)=0.97、Re(600)/Re(550)=1.03、Re(650)/Re(550)=1.05、Re(750)/Re(550)=1.06の光学特性であった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の組成物からなる光学フィルムによれば、広い波長域で一様の偏光変換が可能になる。また本発明の組成物からなる共重合体は、ホスゲンを用いることがなくとも、簡便な方法で製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるモノマーおよび式(II)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなる重合体(1)、式(III)で表されるモノマーおよび式(IV)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(2)ならびに光重合開始剤(3)を含む組成物。

(式(I)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは5〜20員環の芳香族性を有する基を少なくとも1つ有する原子団を表す。Xは、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基を表す。該ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は炭素数2〜6であり、アルキレンオキシ単位の繰り返し数は2〜6である。該アルキレン基、該アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基または水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基、該アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基のメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。)

(式(II)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)

(式(III)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは5〜20員環の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。該芳香族炭化水素基または芳香族複素環基は、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数5〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基、炭素数2〜4のアシル基、カルボキシル基またはハロゲン原子が結合していてもよい。)

(式(IV)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、RおよびRが連結した炭素数4〜6のアルキレン基であってもよい。該アルキル基および該アルキレン基の水素原子は水酸基に置換されていてもよく、該アルキル基および該アルキレン基に含まれる炭素原子は、ヘテロ原子に置換されていてもよい。)
【請求項2】
式(I)で表されるモノマーが、式(I−1)〜式(I−3)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項1記載の組成物。

(式(I−1)〜式(I−3)中、Rは、それぞれ独立に、上記と同じ意味を表す。Xは、それぞれ独立に、炭素数2〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基または水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基のメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。nは、それぞれ独立に、0〜20の整数を表す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはグリシドキシ基を表し、lは、それぞれ独立に、0〜4の整数、kは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。)
【請求項3】
式(II)で表されるモノマーが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
式(III)で表されるモノマーが、N−ビニルカルバゾール、ビニルナフタレンおよびビニルアントラセンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
式(IV)で表されるモノマーが、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドおよびアクリロイルモルフォリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
重合体(1)が、式(I)で表されるモノマーおよび式(II)で表されるモノマーからなる請求項1〜5のいずれか記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の組成物を光重合してなる共重合体。
【請求項8】
請求項7記載の共重合体を含む膜を、延伸してなる光学フィルム。
【請求項9】
光学フィルムを透過する透過光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、下記式を充足する請求項8記載の光学フィルム。
Re(450)<Re(550)<Re(650)
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか記載の組成物を成膜化し、さらに延伸する光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
組成物を含む溶液を平滑な面にキャストして溶媒を留去することによって成膜化する請求項10記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか記載の組成物の、光学フィルムを製造するための使用。
【請求項13】
請求項8または9記載の光学フィルムからなる位相差板。

【公開番号】特開2009−138069(P2009−138069A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314424(P2007−314424)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】