説明

組成物

本発明は,2位で置換され,治療活性を有するオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む組成物に関する。より詳細には,本発明は,オメガ−3脂質化合物の官能基(X)から数えて2位で置換されているオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む組成物に関し,ここで,オメガ−3脂質化合物は,一般式(I)の化合物:
【化121】


および式(II)の化合物:
【化122】


[式中,
およびRは,同じまたは異なり,水素原子,ヒドロキシ基,アルキル基,ハロゲン原子,アルコキシ基,アシルオキシ基,アシル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基,アルキルチオ基,アルコキシカルボニル基,カルボキシ基,アルキルスルフィニル基,アルキルスルホニル基,アミノ基,およびアルキルアミノ基から選択され;および
Xは,カルボン酸またはその誘導体,カルボキシレート,無水カルボン酸,ヒドロキシメチル(−CHOH)またはそのプロドラッグ,またはカルボキサミドを表し,
ただし,RおよびRは同時に水素ではない]
の化合物,またはその薬学的に許容しうる複合体,塩,溶媒和物,またはプロドラッグを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を少なくとも含み,治療活性を有する組成物に関する。より詳細には,本発明は,オメガ−3脂質化合物の官能基(X)から数えて2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む組成物に関し,ここで,オメガ−3脂質化合物は,
一般式(I):
【化1】

および式(II):
【化2】

[式中,
およびRは,同じまたは異なり,水素原子,ヒドロキシ基,アルキル基,ハロゲン原子,アルコキシ基,アシルオキシ基,アシル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基,アルキルチオ基,アルコキシカルボニル基,カルボキシ基,アルキルスルフィニル基,アルキルスルホニル基,アミノ基,およびアルキルアミノ基から選択され;
Xは,カルボン酸またはその誘導体,カルボキシレート,無水カルボン酸,ヒドロキシメチル(−CHOH)またはそのプロドラッグ,またはカルボキサミドを表し,
ただし,RおよびRは同時に水素ではない]
の化合物またはその薬学的に許容しうる複合体,塩,溶媒和物,またはプロドラッグである。
【0002】
本発明のプロドラッグの非限定的例としては,ピバロエートエステル,ヘミスクシネートエステルまたはこれらの塩が挙げられる。
【0003】
本発明はまた,式(I)および(II)の化合物の塩を含む組成物に関する。そのような塩は,
【化3】

および
【化4】

[式中,XはCOOであり,
は,Li,Na,K,NH
【化5】

メグルミン,
【化6】

トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン,
【化7】

ジエチルアミン,および
【化8】

アルギニンからなる群より選択される];
または
【化9】

および
【化10】

[式中,X=COOであり,
2+は,Mg2+,Ca2+
【化11】

エチレンジアミン,および
【化12】

ピペラジン
からなる群より選択される]
で表すことができる。
【0004】
別の代表的な塩は,
【化13】

および
【化14】

[式中,XはCOOであり,
n+は,
【化15】

キトサンである]
である。
【0005】
さらに,本発明は,Xがリン脂質の形のカルボン酸である式(I)および(II)の化合物を含む組成物に関する。そのような化合物は,下記の式:
【化16】

および
【化17】

[式中,Zは,
【化18】

【化19】

【化20】

または
【化21】

である]
および
【化22】

および
【化23】

[式中,Zは,
【化24】

【化25】

【化26】

または
【化27】

である]
および
【化28】

および
【化29】

[式中,Zは,
【化30】

【化31】

【化32】

または
【化33】

である]
で表すことができる。
【0006】
Xがトリグリセリド,1−モノグリセリドおよび2−モノグリセリドの形のカルボン酸である式(I)および(II)の化合物もまた本発明に含まれる。これらは,本明細書において,それぞれ次の式で表される:
【化34】

および
【化35】

【化36】

および
【化37】

および
【化38】

および
【化39】

【0007】
本発明はまた,医薬品を製造するための組成物の使用,ならびに本発明にしたがう組成物を用いる治療方法に関する。最後に,本発明はまた,上述の組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0008】
食用ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)は,多様な生理学的プロセスに影響を及ぼし,普通の健康および慢性疾患,例えば,血漿脂質レベル,心臓血管および免疫機能,インスリンの作用および神経発生および視覚機能の制御に影響を与える。PUFA(通常はエステルの形,例えば,グリセリドまたはリン脂質の形)を摂取すると,これらは体内の事実上すべての細胞に分布し,膜組成および機能,エイコサノイド合成,細胞シグナリング,および遺伝子発現の制御に影響を及ぼす。細胞特異的脂質代謝に加え,異なる脂肪酸/脂質の異なる組織への分布ならびに脂肪酸により制御される転写因子の発現における変動は,細胞がPUFA組成の変化にどのようにして応答するかを決定するのに重要な役割を果たしているようである(Benatti,P.et al,J.Am.Coll.Nutr.2004,23,281)。PUFAまたはその代謝産物は,いくつかの核レセプターと相互作用することにより遺伝子転写を調節することが示されている。これらは,ペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR),肝臓核レセプター(HNF−4),肝臓Xレセプター(LXR),および9−シスレチノイン酸レセプター(レチノイン酸Xレセプター,RXR)である。。PUFAによる処理はまた,核内の多くの転写因子,例えば,SREBP,NFkB,c/EBPβ,およびHIF−1αの量を制御することができる。これらの影響は,脂肪酸の転写因子への直接の結合によるものではなく,転写因子の核含有量に影響を与えるメカニズムが関与している。PUFAによる遺伝子転写の制御は,細胞および組織代謝に多大な影響を及ぼし,栄養物と遺伝子との相互作用が肥満,糖尿病,心臓血管疾患,免疫炎症性疾患および癌等の疾病の開始および予防または軽減に関与しているという,信頼できる説明を提供する(Wahle,J.,et al,Proceedings of the Nutrition Society,2003,349)。ω−3ポリ不飽和脂肪酸エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)を豊富に含む魚油は,部分的には血中トリグリセリド濃度を低下させることにより,心臓血管疾患のリスクを低下させることが示されている。この望ましい効果は,主としてSPEBP−1の減少による脂質生成の阻害と肝臓におけるPPAR−αの活性化による脂肪酸の酸化の促進との組み合わせの効果から生ずる。
【0009】
魚油中のオメガ−3ポリ不飽和脂肪酸は,白血球蓄積および白血球媒介性組織傷害により特徴づけられるいくつかの慢性炎症性疾患,例えばアテローム性動脈硬化症,IgAネフロパシー,炎症性腸疾患,慢性関節リウマチ,乾癬等の予後を改善することが報告されている(Mishra,A.,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,2004,1621)。
【0010】
インビボでの安定性が限定されていること,および生物学的特異性を有していないため,PUFAは治療薬として広く使用されるには至っていない。これらの代謝作用を変化または増加させるために,いくつかの研究グループによりオメガ−3ポリ不飽和脂肪酸の化学的修飾が行われている。
【0011】
例えば,EPAEEのα位にメチルまたはエチルを導入することにより,EPAの脂質低下効果が増強された(Vaagenes,1999)。化合物は血漿遊離脂肪酸も低下させたが,EPAEEは効果を有しなかった。
【0012】
L.Larsenにより公表された最近の研究では(Larsen,L.et al,Lipids,2005,40,49),著者らは,EPAおよびDHAのα−メチル誘導体がEPA/DHAと比較して核レセプターPPARαの活性化を増加させ,このことによりL−FABPの発現を増加させることを示している。著者らは,これらのα−メチルPUFAの異化作用の遅れがこれらの増加した効果に寄与することを示唆している。
【0013】
核レセプター(NR)は,例えば,発生,代謝,および生殖等の多様な生物学的プロセスを制御するリガンド活性化転写因子の大きな高度に保存されたファミリーを構成する。これらのレセプターのリガンドは,一般的な疾患,例えば,アテローム性動脈硬化症,糖尿病,肥満,および炎症性疾患の治療に用いることができるであろうと認識されている。そのように,NRは,重要な薬剤標的となってきており,新規なNRリガンドの同定は非常に興味が持たれている主題である。多くの核レセプターの活性は,ホルモン,脂肪酸,胆汁酸,オキシステロール等の代謝産物および生体異物および生体内物等の小さい,親油性のリガンドの結合により制御されている。核レセプターは,モノマー,ホモダイマー,またはRXRヘテロダイマーとしてDNAに結合することができる。
【0014】
転写因子NF−κBは,relファミリーの誘導可能な真核生物転写因子である。これは炎症性サイトカイン,接着分子,熱ショック蛋白質,シクロオキシゲナーゼ,リポオキシゲナーゼ,および酸化還元酵素の発現に関与する初期応答遺伝子の活性化を制御するストレスカスケードの主要な成分である。Zhao,G.ら(Biochemical and Biophysical Research Comm.,2005,909)は,ヒト単球THP−1細胞におけるPUFAの抗炎症性効果は,部分的には,PPAR−γ活性化によるNF−κBの活性化の阻害により媒介されることを示唆する。他の研究者は,PUFAの抗炎症性効果は,NF−κB活性化のPPAR−α依存性阻害により媒介されることを示唆している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
本発明の目的は,治療活性を有する新規組成物を提供することである。この目的は,2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む組成物により達成され,ここで,オメガ−3脂質化合物は,
式(I)の化合物:
【化40】

および式(II)の化合物:
【化41】

[式中,RおよびRは,同じまたは異なり,水素原子,ヒドロキシ基,アルキル基,ハロゲン原子,アルコキシ基,アシルオキシ基,アシル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基,アルキルチオ基,アルコキシカルボニル基,カルボキシ基,アルキルスルフィニル基,アルキルスルホニル基,アミノ基,およびアルキルアミノ基から選択され;
Xは,カルボン酸またはその誘導体,カルボキシレート,無水カルボン酸,ヒドロキシメチル(−CHOH)基またはそのプロドラッグ,またはカルボキサミドを表し;
ただし,RおよびRは同時に水素原子ではない]
を含む。
【0016】
好ましい態様としては,少なくともα−エチルEPAをトリグリセリドの形で,およびα−エチルDHAをトリグリセリドの形で含む組成物が挙げられる。
【0017】
特に,本発明は,2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む組成物に関し,ここで,オメガ−3脂質化合物は,
式(I)の化合物:
【化42】

および式(II)の化合物:
【化43】

[式中,
式(I)の化合物:式(II)の化合物の重量比は1:10から10:1であり;
およびRは,同じまたは異なり,メチル,エチル,プロピル,ジメチル,ジエチル,チオメチル,チオエチル,メトキシ,エトキシ,ヒドロキシ,メチルアミノおよびエチルアミノから選択され;
Xは,カルボン酸またはその誘導体,カルボキシレート,無水カルボン酸,ヒドロキシメチル(−CHOH),またはカルボキサミドを表す]
を含む。
【0018】
さらに,本発明はまた,2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む組成物に関し,ここで,オメガ−3脂質化合物は,
式(I)の化合物:
【化44】

および式(II)の化合物:
【化45】

[式中,
およびRは,同じまたは異なり,メチル,エチル,プロピル,ジメチル,ジエチル,チオメチル,チオエチル,メトキシ,エトキシ,ヒドロキシ,メチルアミノおよびエチルアミノから選択され;
Xはヒドロキシメチル(−CHOH)を表す]
を含む。
【0019】
式(I)および(II)の化合物において,Xは,典型的にはカルボン酸エチルまたはカルボン酸を表す。しかし,Xはまた,リン脂質またはトリ−,ジ−,もしくはモノグリセリドの形のカルボン酸の誘導体であってもよい。
【0020】
本発明にしたがう組成物においては,前記アルキル基は,メチル,エチル,n−プロピル,イソプロピル,n−ブチル,sec−ブチル,n−ヘキシル,およびn−ヘプチルから選択することができ;前記ハロゲン原子は,フッ素,塩素,臭素,およびヨウ素から選択することができ;前記アルコキシ基は,メトキシ,エトキシ,プロポキシ,イソプロポキシ,sec−ブトキシ,フェノキシ,ベンジルオキシ,OCHCF,およびOCHCHOCHから選択することができ;前記アシルオキシ基は,アセトキシ,プロピオノキシ,およびブチルオキシから選択することができ;前記アルケニル基は,アリル,2−ブテニル,および3−ヘキセニルから選択することができ;前記アルキニル基は,プロパルギル,2−ブチニル,および3−ヘキシニルから選択することができ;前記アリール基は,ベンジルおよび置換ベンジル基から選択することができ;前記アルキルチオ基は,メチルチオ,エチルチオ,イソプロピルチオ,およびフェニルチオから選択することができ;前記アルコキシカルボニル基は,メトキシカルボニル,エトキシカルボニル,プロポキシカルボニル,およびブトキシカルボニルから選択することができ;前記アルキルスルフィニル基は,メタンスルフィニル,エタンスルフィニル,およびイソプロパンスルフィニルから選択することができ;前記アルキルスルホニル基は,メタンスルホニル,エタンスルホニル,およびイソプロパンスルホニルから選択することができ;前記アルキルアミノ基は,メチルアミノ,ジメチルアミノ,エチルアミノ,およびジエチルアミノから選択することができ;前記カルボキシレート基は,エチルカルボキシレート,メチルカルボキシレート,n−プロピルカルボキシレート,イソプロピルカルボキシレート,n−ブチルカルボキシレート,sec−ブチルカルボキシレート,およびn−ヘキシルカルボキシレートから選択することができ;前記カルボキサミド基は,1級カルボキサミド,N−メチルカルボキサミド,N,N−ジメチルカルボキサミド,N−エチルカルボキサミド,およびN,N−ジエチルカルボキサミドから選択することができる。
【0021】
本発明の例示的態様においては,RおよびRは,水素原子,ヒドロキシ基,アルキル基,ハロゲン原子,アルコキシ基,アルキルチオ基,アルキルスルフィニル基,アルキルスルホニル基,アミノ基,およびアルキルアミノ基から選択される。
【0022】
本発明の別の態様においては,RおよびRは,水素原子,ヒドロキシ基,C−Cアルキル基,ハロゲン原子,C−Cアルコキシ基,C−Cアルキルチオ基,C−Cアルキルスルフィニル基,C−Cアルキルスルホニル基,アミノ基,およびC−Cアルキルアミノ基から選択される。前記C−Cアルキル基は,メチル,エチル,またはベンジルであることができ;前記ハロゲン原子はフッ素であることができ:前記C−Cアルコキシ基は,メトキシまたはエトキシであることができ;前記C−Cアルキルチオ基は,メチルチオ,エチルチオまたはフェニルチオであることができ;前記C−Cアルキルスルフィニル基はエタンスルフィニルであることができ;前記C−Cアルキルスルホニル基はエタンスルホニルであることができ;前記C−Cアルキルアミノ基は,エチルアミノまたはジエチルアミノであることができ;Xはエチルカルボキシレートまたはカルボキサミド基を表すことができる。
【0023】
本発明の別の態様においては,RおよびRは,水素原子,C−Cアルキル基,およびC−Cアルコキシ基から選択され,Xは,カルボキシレートまたはヒドロキシメチル(−CHOH)を表す。
【0024】
式(I)および(II)のオメガ−3脂質化合物を含む本発明にしたがう組成物の例は,Xがカルボン酸エチルであり,かつ
およびRの一方はメチルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はエチルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はプロピルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はメトキシであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はエトキシであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はプロポキシであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はチオメチルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はチオエチルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はチオプロピルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はエチルアミノであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はジエチルアミノであり,他方は水素原子であり;または
およびRの一方はアミノであり,他方は水素原子であるものである。
【0025】
式(I)および(II)のオメガ−3脂質化合物を含む本発明にしたがう組成物の別の例は,Xがヒドロキシメチルであり,かつ
およびRの一方はメチルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はエチルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はプロピルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はメトキシであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はエトキシであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はプロポキシであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はチオメチルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はチオエチルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はチオプロピルであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はエチルアミノであり,他方は水素原子であり;
およびRの一方はジエチルアミノであり,他方は水素原子であり;または
およびRの一方はアミノであり,他方は水素原子であるものである。
【0026】
本発明の式(I)および式(II)にしたがう化合物において,RおよびRは,同じであっても異なっていてもよい。異なる場合には,式(I)および(II)の化合物は,立体異性体の形で存在することができる。本発明は式(I)および(II)の化合物のすべての光学異性体およびこれらの混合物,例えばラセミ体を包含することが理解される。すなわち,本発明は,RとRとが異なる場合,ラセミ体であるか,または(S)または(R)エナンチオマーのいずれかとしてエナンチオマー的に純粋な式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物を含む。したがって,本発明は,RとRとが異なる場合,ラセミ体であるかまたは(S)または(R)立体異性体としてエナンチオマー的に純粋な式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物を含む。
【0027】
本発明の別の観点は,医薬品として用いるための少なくとも1つの式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物に関する。
【0028】
さらに,本発明は,本発明にしたがうオメガ−3脂質化合物を含む医薬組成物に関する。医薬組成物は,薬学的に許容しうる担体,賦形剤または希釈剤,またはこれらの任意の組み合わせを含んでいてもよく,経口投与用に,例えばカプセルまたはサシェの形で適切に製剤される。式(I)にしたがう化合物の好適な1日投与量は5mgから10gの前記化合物;50mgから1gの前記化合物,または50mgから200mgの前記化合物である。式(II)にしたがう化合物の好適な1日投与量は,5mgから10gの前記化合物;50mgから1gの前記化合物,または50mgから200mgの前記化合物である。組成物の好適な1日投与量は,5mgから10g;50mgから1gの前記化合物;または50mgから200mgである。
【0029】
さらに,本発明は,下記のための医薬品の製造における,本発明にしたがうオメガ−3脂質化合物の使用に関する:
ヒトペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)アイソフォームの少なくとも1つの活性化または調節,ここで,前記ペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)はペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)αおよび/またはγであり;
末梢インスリン耐性および/または糖尿病性疾患の治療および/または予防;
血漿インスリン,血中グルコースおよび/または血清トリグリセリドの低下;
2型糖尿病の治療および/または予防;
トリグリセリドレベル,LDLコレステロールレベル,および/またはVLDLコレステロールレベルの上昇の予防および/または治療;
脂質異常症状態,例えば高トリグリセリド血症(HTG)の予防および/または治療;
ヒトにおける血清HDLレベルの増加;
肥満または体重過多の治療および/または予防;
体重の減少および/または体重増加の予防;
脂肪肝疾患,例えば非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の治療および/または予防;
インスリン耐性,高脂血症および/または肥満または体重過多の治療;および
炎症性疾患または状態の治療および/または予防用の医薬品の製造。
【0030】
本発明はまた,上述の状態を治療および/または予防する方法に関し,この方法は,それを必要とする哺乳動物に,2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を含む薬学的に活性な量の組成物を投与することを含み,ここで,オメガ−3脂質化合物は,
式(I)の化合物:
【化46】

および式(II)の化合物:
【化47】

[式中,RおよびRは上で定義したとおりである]
を含む。
【0031】
さらに,本発明は,2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を含む組成物を製造する方法を包含し,ここで,オメガ−3脂質化合物は,
式(I)の化合物:
【化48】

および式(II)の化合物:
【化49】

[式中,RおよびRは上で定義したとおりである]
を含む。
【0032】
原料物質は,植物,微生物および/または動物起源,例えば,海産物油に由来するものであることができる。好ましくは海産物油またはオキアミ油を用いる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
EPAのα−置換誘導体およびDHAのα−置換誘導体が,PPARファミリーの核レセプターに対してより高い親和性を有することが示されている。これらの誘導体を製造するためには,精製したEPAまたはDHAを出発物質として取得する必要がある。このプロセスは非常に複雑であり,しばしば収率が低い。本発明は,オメガ−3濃縮物から誘導されるα−置換組成物を記載する。オメガ−3ポリ不飽和脂肪酸が豊富な天然の油は,他のポリ不飽和脂肪酸に加えてエイコサペンタエン酸およびドコサペンタエン酸の両方を含むため,α−置換ポリ不飽和脂肪酸誘導体をオメガ−3組成物から直接製造することは非常に有益でありうる。したがって,本発明は,α−位で置換されているそのようなポリ不飽和脂質/脂肪酸組成物および治療におけるその使用に関する。
【0034】
本発明の誘導体は,核レセプターに対する優れたリガンドであることに加えて,α−位における置換のため,天然のPUFAと比べて,α−およびβ−酸化経路によって容易に分解されない。
【0035】
ここ数年のあいだのオメガ−3脂肪酸の分野の研究により,これらの生物学的効果の基礎となるメカニズムが同定された。種々のオメガ−3ポリ不飽和脂肪酸の生理学的活性は,その構造により異なるようである。構造要素,例えば,鎖長および二重結合の数が,その効力に影響を与えるようである。動物実験により,DHAおよびEPAは身体の異なる区画に蓄積し,異なるように代謝されているかもしれないことが示されている。
【0036】
DHAおよびEPAの蓄積および保持の相違は,これらの脂肪酸が保存または輸送される脂質成分に関係しているかもしれない。DHAは主としてリン脂質中に取り込まれ,より少ない部分がトリアシルグリセロールおよびステロールエステル中に蓄積するが,EPAは中性脂質(ステロールエステルおよびトリアシルグリセロール)およびリン脂質の間でより均等に分布する。
【0037】
核レセプターは種々の組織で発現されているため,アゴニスト/調節剤は所望の核レセプターが発現している組織を標的とすることが有益である。EPAおよびDHAから誘導されるPPARアゴニストの混合物は,これらのそれぞれの誘導体単独より広く分布するであろう。したがって,選択される疾患に及ぼす治療効果は増大するはずである。
【0038】
本発明の範囲に含まれる化合物/組成物のアルコールおよび無水物も,このプロドラッグの定義に包含される。プロドラッグは次のように定義される:その薬学的効果を示す前に生物学的変換を起こす任意の化合物。したがって,プロドラッグは,親分子における望ましくない特性を変更または排除するために,過渡的に用いられる特定の非毒性の保護基を含む薬剤であるとみなすことができる。Xがヒドロキシメチルである,本発明の範囲に含まれる化合物は,アルコールのプロドラッグの形,すなわち,アセテート,ヘミスクシネート,ホスホネート,スルホネート,またはピバロエートエステルの形であってもよい。
【0039】
用語および術語
脂肪酸は,一方の末端(α)にカルボキシル(COOH)基を,他方の末端(ω)に(通常は)メチル基を有する直鎖炭化水素である。生理学においては,脂肪酸は,ω末端から最初の二重結合の位置により命名される。ω−3(オメガ−3)との用語は,最初の二重結合が炭素鎖の末端CH(ω)から3番目の炭素−炭素結合として存在することを意味する。化学では,炭素原子の番号付けはα末端から開始する。
【化50】

【0040】
本明細書を通じて,“2−置換”,2位で置換される,および“オメガ−3脂質化合物の官能基(X)から数えて炭素2で置換される”との表現は,炭素鎖の上述の番号付けにしたがって2で示される炭素原子における置換を表す。あるいは,そのような置換は,“アルファ置換”と称してもよい。
【0041】
本明細書を通じて,“オメガ−3脂質化合物”(ω−3ないしn−3と対応)との用語は,上で定義したとおり,炭素鎖のω末端から3番目の炭素−炭素結合に最初の二重結合を有する脂質化合物に関する。
【0042】
本発明の基本的概念は,2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を含む組成物であり,ここで,オメガ−3脂質化合物は,式(I)の化合物:
【化51】

および式(II)の化合物:
【化52】

[式中,RおよびRは,同じまたは異なり,水素原子,ヒドロキシ基,アルキル基,ハロゲン原子,アルコキシ基,アシルオキシ基,アシル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基,アルキルチオ基,アルコキシカルボニル基,カルボキシ基,アルキルスルフィニル基,アルキルスルホニル基,アミノ基,およびアルキルアミノ基から選択され;
Xは,カルボン酸またはその誘導体,カルボキシレート,無水カルボン酸,ヒドロキシメチル(−CHOH)基またはそのプロドラッグ,またはカルボキサミドを表し,
ただし,RおよびRは同時に水素原子ではない]
を含む。
【0043】
得られる化合物は,アルファ置換オメガ−3脂質化合物,すなわち,カルボニル末端から数えて2位の炭素原子で置換されているオメガ−3脂質化合物である。より詳細には,得られる化合物は,アルファ置換ポリ不飽和脂質であり,これはカルボン酸またはその誘導体として,ヒドロキシメチルとして,カルボキシレートとして,無水カルボン酸として,またはカルボキサミドとして存在することができる。
【0044】
本発明にしたがう好ましい組成物は,2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を,組成物の総脂質含量の少なくとも30重量%の濃度で,好ましくは少なくとも50重量%,より好ましくは少なくとも60重量%,さらに好ましくは少なくとも70重量%,最も好ましくは少なくとも80重量%の濃度で含む。
【0045】
本発明の例示的態様においては,式(I)および(II)の化合物は,2位で置換されたすべてのオメガ−3脂質化合物の少なくとも20重量%,より好ましくは少なくとも約40重量%,さらに好ましくは少なくとも約70重量%,最も好ましくは少なくとも約80重量%の濃度で存在する。
【0046】
好ましくは,式(I)の化合物は,組成物中の総脂質含量の約5%から約95重量%,好ましくは約40%から約55重量%の濃度で存在する。
【0047】
好ましくは,式(II)の化合物は,組成物中の総脂質含量の約5%から約95重量%,好ましくは約30%から約60重量%の濃度で存在する。
【0048】
本発明のさらに別の態様においては,組成物中の式(I)の化合物:式(II)の化合物の重量比は,1:99から99:1,より好ましくは10:1から1:10,さらに好ましくは1:5から5:1,最も好ましくは1:3から3:1である。
【0049】
例示的態様においては,組成物中の式(I)の化合物:式(II)の化合物の重量比は,1:2から2:1であり,ここで,およびRの少なくとも一方はエチルであり,Xはエチルカルボキシレートまたはヒドロキシメチルである。
【0050】
本発明は式(I)および(II)のオメガ−3脂質化合物のすべての可能な薬学的に許容しうる複合体,溶媒和物またはプロドラッグを包含することが理解されるべきである。
【0051】
本発明の特定の態様においては,組成物は少なくとも,オメガ−3脂質化合物の官能基から数えて炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物を含み,該オメガ−3脂質化合物は少なくとも以下を含む:
A)
【化53】

エチル(全Z)−2−エチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2−エチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
B)
【化54】

エチル(全Z)−2−メチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2−メチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
C)
【化55】

エチル(全Z)−2,2−ジメチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2,2−ジメチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
D)
【化56】

エチル(全Z)−2,2−ジエチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2,2−ジエチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
E)
【化57】

エチル(全Z)−2−メトキシ−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2−メトキシ−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
F)
【化58】

エチル(全Z)−2−エトキシ−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2−エトキシ−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
G)
【化59】

エチル(全Z)−2−チオエチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2−チオエチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
H)
【化60】

(全Z)−2−エチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2−エチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
I)
【化61】

(全Z)−2−メチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2−メチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
J)
【化62】

(全Z)−2,2−ジメチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2,2−ジメチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
K)
【化63】

(全Z)−2,2−ジエチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2,2−ジエチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
L)
【化64】

(全Z)−2−メトキシ−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2−メトキシ−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
M)
【化65】

(全Z)−2−エトキシ−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2−エトキシ−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
および/または
N)
【化66】

(全Z)−2−チオエチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2−チオエチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール。
【0052】
本発明は式(I)および(II)のオメガ−3脂質化合物のすべての可能な薬学的に許容しうる複合体,溶媒和物またはプロドラッグを包含することが理解されるべきである。
【0053】
本発明の例示的態様は,組成物は2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む組成物を含み,ここで,オメガ−3脂質化合物は,
式(I)の化合物:
【化67】

および式(II)の化合物:
【化68】

[式中,式(I)の化合物:式(II)の化合物の重量比は1:10から10:1であり,
およびRは,同じまたは異なり,メチル,エチル,プロピル,ジメチル,ジエチル,チオメチル,チオエチル,メトキシ,エトキシ,OH,メチルアミノおよびエチルアミノから選択され;
Xは,カルボン酸またはその誘導体,カルボキシレート,ヒドロキシメチル(−CHOH)またはそのプロドラッグ,またはカルボキサミドを表す]
を含む。
【0054】
本発明の別の例示的態様は,2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む組成物を含み,ここで,オメガ−3脂質化合物は,
式(I)の化合物:
【化69】

および式(II)の化合物:
【化70】

[式中,式(I)の化合物:式(II)の化合物の重量比は1:5から5:1であり,
およびRは,メチル,エチル,プロピル,エトキシ,メトキシ,ベンジル,チオメチルおよびチオエチルから選択され;
Xは,エチルカルボキシレートまたはヒドロキシメチル(−CHOH)を表す]
を含む。
【0055】
本発明の別の例示的態様は,2位で置換されたオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む組成物を含み,ここで,オメガ−3脂質化合物は,
式(I)の化合物:
【化71】

および式(II)の化合物:
【化72】

[式中,式(I)および(II)の化合物は,総オメガ−3脂質化合物の少なくとも約60重量%の濃度で存在し,
およびRは,メチル,エチル,プロピル,エトキシ,メトキシ,ベンジル,チオメチルおよびチオエチルから選択され;
Xは,エチルカルボキシレートまたはヒドロキシメチル(−CHOH)を表す]
を含む。
【0056】
Xがカルボン酸である場合,本発明はカルボン酸の塩も含む。カルボキシル基の好適な薬学的に許容しうる塩としては,金属塩,例えば,リチウム,ナトリウムまたはカリウム等のアルカリ金属塩,カルシウムまたはマグネシウム等のアルカリ土類金属塩,およびアンモニウムまたは置換アンモニウム塩が挙げられる。さらに,付加塩としては,置換アンモニウム塩,メグルミン塩,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩,アルギニン塩,ピペラジン塩,およびキトサン塩が挙げられる。
【0057】
"薬学的に活性な量"とは,所望の薬学的および/または治療効果につながる量,すなわち,その意図される目的を達成するのに有効な本発明にしたがうオメガ−3脂質化合物の量に関連する。個々の患者の要求は様々であろうが,有効量の本発明のオメガ−3脂質化合物の最適な範囲の決定は当業者の能力の範囲内である。一般に,本発明の化合物および/または組成物を用いる病気の治療のための投与計画は,様々な因子,例えば,患者のタイプ,年齢,体重,性別,食事,および医学的状態にしたがって選択される。
【0058】
“医薬品”とは,医療または医療外目的で用いるのに適した任意の形で,例えば,医療用製品,医薬製剤または製品,栄養補助食品,食材または食品サプリメントの形での,式(I)および(II)にしたがうオメガ−3脂質化合物の組成物を意味する。
【0059】
“治療”には,ヒトまたは非ヒト哺乳動物に利点を与えることができるあらゆる治療上の用途が含まれる。ヒトおよび動物の治療の両方とも本発明の範囲内である。治療は現存する状態について行ってもよく,予防的であってもよい。
【0060】
式(I)および(II)の化合物を含むオメガ−3組成物は,それ自体で使用してもよいが,一般に式(I)および(II)の化合物(活性成分)が薬学的に許容しうる担体,賦形剤,希釈剤,またはこれらの組み合わせとともに配合されている医薬組成物の形で投与される。
【0061】
治療用途に許容しうる担体または希釈剤は医薬品の技術分野ではよく知られており,意図する投与経路および医薬の実施基準に基づいて選択することができる。例としては,結合剤,潤滑剤,懸濁剤,コーティング剤,可溶化剤,保存剤,湿潤剤,乳濁剤,甘味料,着色料,香味料,着臭剤,バッファー,懸濁剤,安定化剤,および/または塩が挙げられる。
【0062】
本発明にしたがう医薬組成物は,好ましくはヒトまたは動物への経口投与用に製剤する。医薬組成物はまた,活性成分が有効に吸収され利用される任意の別の経路,例えば,静脈内,皮下,筋肉内,鼻腔内,直腸内,膣内または局所への投与用に製剤してもよい。
【0063】
本発明の例示的態様においては,脂質組成物はカプセルの形であり,これは粉体またはバルクでサシェを生成するマイクロカプセルであってもよい。カプセルには風味をつけてもよい。この態様には,カプセルと封入された本発明にしたがう組成物との両方に風味がつけられているカプセルも含まれる。カプセルに風味をつけることにより,これはユーザーにとってより魅力的となる。上述の治療用途のためには,投与される用量は,もちろん,用いられる化合物,投与のモード,望まれる治療,および摘要疾患によって異なる。
【0064】
医薬組成物は,例えば5mgから10g;50mgから1g;または50mgから200gの組成物の1日投与量を与えるよう製剤することができる。1日投与量とは,24時間の間の投与量を意味する。
【0065】
投与される用量は,もちろん,用いられる化合物,投与のモード,所望の治療,および摘要疾患により異なる。典型的には,個々の被検者に最も適した実際の投与量は医師により決定される。任意の特定の患者についての特定の投与量のレベルおよび投与頻度は様々であり,種々の因子,例えば,用いられる特定の化合物の活性,その化合物の代謝安定性および作用時間の長さ,年齢,体重,一般的健康状態,性別,食事,投与のモードおよび時間,排泄速度,薬剤の組み合わせ,特定の状態の重篤度,および進行中の個々の治療法により異なるであろう。本発明のオメガ−3脂質化合物および/または医薬組成物は,1日に1から10回,例えば,1日に1回または2回の投与計画で投与することができる。ヒト患者への経口および非経口投与について,薬剤の1日投与量のレベルは,1回の投与でも分割投与でもよい。
【0066】
本発明にしたがう組成物の例示的態様においては,置換基RおよびRは,メチル,エチル,プロピル,ジメチル,ジエチル,チオメチル,チオエチル,メトキシ,エトキシ,OH,メチルアミノおよびエチルアミノから選択される。
【0067】
別の例示的態様においては,RおよびRは,メチル,エチル,プロピル,エトキシ,チオメチル,チオエチルおよびメトキシから選択される。本発明の別の例示的態様においては,RおよびRは,エチル,プロピルまたはエトキシから選択される。
【0068】
組成物はさらに,アルファ位で置換されている(全Z)−6,9,12,15,18−ヘンエイコサペンタエン酸(HPA),および(全Z)−7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸(DPAn−3),(全Z)−8,11,14,17−エイコサテトラエン酸(ETAn−3),またはこれらの組み合わせの少なくとも1つを含んでいてもよい。さらに,組成物は,(全Z)−4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸(DPAn−6)および/または(全Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸(ARA),またはこれらの誘導体を含んでいてもよい。組成物はまた,少なくともこれらの脂肪酸,またはその組み合わせを,誘導体の形で含んでいてもよい。誘導体は,本発明にしたがう組成物を構成するEPAおよびDHA誘導体と同様に適宜置換されていてもよい。
【0069】
少なくとも1つの式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物は,薬学的活性を有し,特にこれは核レセプター活性を誘発する。すなわち,本発明はまた,医薬品として,および/または治療に用いるための,上で定義される組成物,その薬学的に許容しうる塩,溶媒和物,複合体またはプロドラッグに関する。好ましくは,本発明の新規組成物,またはその薬学的に許容しうる塩,溶媒和物,複合体またはプロドラッグは,下記のために用いられる:
ヒトまたは動物における糖尿病の予防および/または治療;
ヒトまたは動物における体重減少の管理および/または体重増加の防止;
ヒトまたは動物における肥満または体重過多の予防および/または治療;
アミロイドーシス関連疾患の治療および/または予防;
心臓血管疾患の複数のリスク因子の治療または予防;
アテローム性動脈硬化症またはいくつかの動脈に関連する卒中,脳または一過性虚血性発作の予防;および
TBCまたはHIVの治療。
【0070】
糖尿病には2つの主要な型がある。1つはインスリン依存性糖尿病(IDDM)として知られる1型糖尿病であり,もう1つは非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)としても知られる2型糖尿病である。2型糖尿病は,肥満/体重過多および運動不足と関連しており,しばしばゆっくり開始し,通常は成人で開始し,末梢インスリン耐性と称されるインスリン感受性の低下により引き起こされる。これは代償的なインスリン産生増加につながる。本格的な2型糖尿病を発症する前のこの段階は,代謝性症候群と称され,高インスリン血症,インスリン耐性,肥満,グルコース不寛容,高血圧症,異常な血中脂質,過剰凝固障害,脂質異常症および炎症を特徴とし,しばしば,動脈のアテローム性動脈硬化症につながる。その後インスリン産生が停止すると,2型糖尿病が発症する。
【0071】
例示的態様においては,式(I)および式(II)の化合物を含む組成物は,2型糖尿病の治療に用いることができる。前記組成物はまた,代謝性症候群,続発性糖尿病,例えば膵臓,膵臓外/内分泌または薬剤誘発性糖尿病,または脂肪萎縮性糖尿病,筋無緊張糖尿病等の例外的な形の糖尿病,またはインスリンレセプターの混乱に起因する疾病から選択される他のタイプの糖尿病の治療にも用いることができる。本発明はまた,2型糖尿病の治療も含む。好適には,上で定義される本発明にしたがう組成物は,核レセプター,好ましくはPPAR(ペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター)αおよび/またはγを活性化することができる。
【0072】
少なくとも1つの式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物は,肥満の治療および/または予防にも用いることができる。肥満は通常,インスリン耐性の増加と関連しており,肥満者は,心臓血管疾患の発症の主要なリスク因子である2型糖尿病を発症するリスクが高い。肥満は,西洋社会の集団で罹患者の比率が増加している慢性疾患であり,社会的不名誉をともなうのみならず,寿命を短くし,多くの問題,例えば,糖尿病,インスリン耐性および高血圧症をともなう。
【0073】
少なくとも1つの式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物は,アミロイドーシス関連疾患の予防および/または治療にも用いることができる。アミロイドの沈着,好ましくは原線維またはプラークの形成の結果としてのアミロイドの沈着を伴うアミロイドーシス関連状態または疾病としては,アルツハイマー病または認知症,パーキンソン病,筋萎縮性側方硬化症,海綿状脳障害,例えば,クロイツフェルト−ヤーコプ病,嚢胞性線維症,原発性または続発性腎アミロイドーシス,IgAネフロパシー,および動脈,心筋および神経組織のアミロイド沈着が挙げられる。これらの疾病は,散発性であっても遺伝性であってもよく,さらにTBCまたはHIV等の感染に関連するものであってもよく,遺伝性の形ははるかに早期に現れるとしても,しばしば人生の後期にのみ現れる。それぞれの疾病は,特定の蛋白質またはこれらの蛋白質の凝集体を伴い,これらはその疾病にともなう病的状態の直接の原因であると考えられている。アミロイドーシス関連疾病の治療は,急性でも慢性でも行うことができる。
【0074】
本発明にしたがう組成物はまた,アミロイド凝集の低下による治療,いわゆる線維またはプラークの形成につながりうる蛋白質のミスフォールディングの予防,いわゆる線維またはプラークの形成の低下による治療,前駆体蛋白質,例えばAβ−蛋白質(アミロイドβ蛋白質)の産生の減少による治療,および,蛋白質線維,凝集体,またはプラークの形成の阻害または遅延による予防および/または治療に用いることができる。上で定義した式(I)の化合物を投与することによる線維の蓄積または形成の予防もまた本発明に含まれる。1つの態様においては,上で定義される新規組成物,その薬学的に許容しうる塩,溶媒和物,複合体またはプロドラッグは,TBC(結核)またはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の治療に用いられる。
【0075】
さらに,本発明にしたがう組成物は,致命的であるかもしれないさらなる発作のリスクを低下させるために,脳供給動脈のアテローム性動脈硬化症の症状,例えば,卒中または一過性虚血性発作を有する患者に投与することができる。
【0076】
本発明にしたがう組成物は,ヒトにおける血中脂質の上昇の治療にも用いることができる。
【0077】
さらに,上で定義される本発明にしたがう組成物は,心臓血管疾患について知られる複数のリスク因子,例えば,高血圧症,高トリグリセリド血症および高い凝固因子VIIリン脂質複合体活性の治療および予防に有用である。好ましくは,本発明の組成物は,ヒトにおける血中脂質の上昇の治療に用いられる。
【0078】
式(I)および(II)の化合物およびこれらの薬学的に許容しうる塩,溶媒和物,プロドラッグまたは複合体を含む組成物は,それ自体で使用してもよいが,一般に,式(I)および式(II)の化合物(活性成分)が薬学的に許容しうるアジュバント,希釈剤または担体と配合されている医薬組成物の形で投与される。
【0079】
治療用途に許容しうる担体または希釈剤は医薬品の技術分野ではよく知られている。薬学的担体,賦形剤または希釈剤は,意図する投与経路および医薬の実施基準に基づいて選択することができる。医薬組成物は,担体,賦形剤または希釈剤として,あるいはこれに加えて,任意の適当な結合剤,潤滑剤,懸濁剤,コーティング剤,可溶化剤を含んでいてもよい。
【0080】
本発明の範囲に含まれる医薬組成物は,以下の1またはそれ以上を含んでいてもよい:保存剤,可溶化剤,安定化剤,湿潤剤,乳濁剤,甘味料,着色料,香味料,着臭剤,塩(本発明の化合物はそれ自体,薬学的に許容しうる塩の形で提供してもよい),バッファー,コーティング剤,抗酸化剤,懸濁剤,アジュバント,賦形剤および希釈剤。
【0081】
本発明にしたがう医薬組成物は,好ましくはヒトまたは動物への経口投与用に製剤する。医薬組成物はまた,活性成分が有効に吸収され利用される任意の別の経路,例えば,静脈内,皮下,筋肉内,鼻腔内,直腸内,膣内または局所への投与用に製剤してもよい。
【0082】
本発明の例示的態様においては,脂質組成物はカプセルの形であり,これは粉体またはサシェを生成するマイクロカプセルであってもよい。カプセルには風味をつけてもよい。この態様には,カプセルと封入された本発明にしたがう脂肪酸組成物との両方に風味がつけられているカプセルも含まれる。カプセルに風味をつけることにより,これはユーザーにとってより魅力的となる。本明細書に記載される治療用途のためには,投与される用量は,もちろん,用いられる化合物,投与のモード,望まれる治療,および摘要疾患によって異なる。
【0083】
医薬組成物は,10mgから10gの1日投与量を与えるよう製剤することができる。好ましくは,医薬組成物は,50mgから5gの前記組成物の1日投与量を与えるよう製剤することができる。最も好ましくは,医薬組成物は,100mgから1gの前記組成物の1日投与量を与えるよう製剤することができる。1日投与量とは,24時間あたりの投与量を意味する。
【0084】
本発明のある態様においては,組成物は,医薬組成物,栄養補助組成物,または食物組成物である。
【0085】
組成物はさらに,有効量の薬学的に許容しうる抗酸化剤を含んでいてもよい。好ましくは,抗酸化剤はトコフェロールまたはトコフェロール類の混合物,またはアスタキサンチンである。例示的態様においては,組成物はさらに,トコフェロール,またはトコフェロール類の混合物を,組成物の総重量の4mg/gまでの量で含む。好ましくは,組成物は,組成物の総重量に基づいて0.2から0.4mg/gの量のトコフェロールを含む。
【0086】
本発明の別の観点は,医薬品としておよび/または治療において用いるための,上で定義される式(I)および(II)の化合物を含む組成物,またはその薬学的に許容しうる塩,溶媒和物,プロドラッグまたは複合体を提供する。組成物を医薬品として用いる場合,これは治療上または薬学的に活性な量で投与される。
【0087】
例示的態様においては,組成物はヒトまたは動物に経口投与される。
【0088】
本発明はまた,少なくとも1つの式(I)の化合物および少なくとも1つの式(II)の化合物,またはこれらの薬学的に許容しうる塩,溶媒和物,プロドラッグまたは複合体を含む組成物の,体重減少の管理および/または体重増加の防止用の医薬品の製造;肥満または体重過多の治療および/または予防用の医薬品の製造;ヒトまたは動物における糖尿病の予防および/または治療用の医薬品の製造;アミロイドーシス関連疾患の治療および/または予防用の医薬品の製造;心臓血管疾患について知られる複数のリスク因子,例えば,高血圧症,高トリグリセリド血症および高い凝固因子VIIリン脂質複合体活性の治療および予防用の医薬品の製造;TBCまたはHIVの治療用の医薬品の製造;卒中,いくつかの動脈のアテローム性動脈硬化症に関連する脳または一過性虚血性発作の予防用の医薬品の製造;哺乳動物の血中トリグリセリドの低下,および/またはヒト患者における血清中のHDLコレステロールレベルの増加用の医薬品の製造;または"メタボリックシンドローム"と称される多数の代謝性症候群の治療および/または予防用の医薬品の製造のための用途を提供する。これらの態様はすべて,上述の式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物を上述の医薬品の製造において使用することも含む。
【0089】
本発明はまた,体重減少を管理する方法,および体重増加を予防する方法に関し,この方法では,少なくとも上述の式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物をヒトまたは動物に投与する。
【0090】
さらに,本発明は,肥満または体重過多を治療および/または予防する方法に関し,この方法は,少なくとも1つの上で定義した式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物をヒトまたは動物に投与することを含む。
【0091】
本発明の好ましい態様においては,本発明は,糖尿病を予防および/または治療する方法に関し,この方法は,少なくとも1つの上で定義した式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物をヒトまたは動物に投与することを含む。好ましくは,糖尿病は2型糖尿病である。
【0092】
さらに,本発明はまた,本発明にしたがう組成物を製造する方法に関する。好ましくは,前記組成物は,植物,微生物および/または動物起源から製造する。さらに好ましくは,本発明にしたがう組成物は,魚油またはオキアミ油から製造する。
【0093】
方法
本発明にしたがう組成物は,植物,微生物,藻類または海産物起源,またはこれらの組み合わせから得られる他のPUFAに加えて,EPAおよびDHAを含む組成物から製造することができる。本発明にしたがう組成物はまた,α−置換PUFA誘導体を所望の組成物中に混合することにより製造することができる。好ましくは,PUFA組成物は,魚油,オキアミ油,アザラシ油等の海産物起源から得る。
【0094】
本発明にしたがう化合物を製造する方法
(またはR)が水素である式(I)のオメガ−3脂質化合物は,以下のプロセスにしたがって製造することができる(スキーム1)。Rが水素であり,RがC−Cアルキル基,ベンジル,ハロゲン,ベンジル,アルケニル,アルキニルである,一般式(I)で表されるオメガ−3脂質化合物は,長鎖ポリ不飽和エステルを。DMF中で,テトラヒドロフラン,ジエチルエーテル等の溶媒中で,−60から−78℃の温度で,リチウムジイソプロピルアミン,カリウム/ナトリウムヘキサメチルジシラジドまたはKH/NaH等の非求核性強塩基と反応させて,エステルエノラートを形成することにより製造する(プロセス1)。
【0095】
方法I
【化73】

スキーム1:R=アルキル基(メチル,エチル,プロピル)
【0096】
このエステルエノラートを,ヨウ化エチル,塩化ベンジルをはじめとするアルキルハロゲン化物,塩化アセチル,臭化ベンゾイルをはじめとするアシルハロゲン化物等の求電子性試薬と,無水酢酸をはじめとする無水カルボン酸と,またはN−フルオロベンゼンスルホンイミド(NFSI),N−ブロモスクシンイミドまたはヨウ素をはじめとする求電子性ハロゲン化試薬と反応させて,置換された誘導体を形成する(プロセス2)。2−ハロ置換誘導体を,チオール等の求核試薬と反応させて,2−アルキルチオ−誘導体を得ることができる。
【0097】
エステルはさらに,エタノールまたはメタノール等の溶媒中で,水中の水酸化リチウム/ナトリウム/カリウム等を加えて15℃から還流までの温度で加水分解して,カルボン酸誘導体とすることができる。
【0098】
長鎖ポリ不飽和エステルのクライゼン(Claisen)縮合は,エステルを強塩基で処理する間に生ずる(この縮合生成物は,興味深い生物学的活性を有しているかもしれない。すなわち,本発明の1つの態様においては,上述の縮合生成物(中間体),ならびにこの生成物の本発明にしたがう疾病の治療および/または予防における用途が開示される)。
【0099】
さらに,別の態様においては,一般式(I)で表される化合物は,下記のプロセスにしたがって合成される(スキーム2)。
【0100】
方法II:
【化74】

スキーム2:R=アルキル基(メチル,エチル,プロピル)
【0101】
が水素であり,Rがヒドロキシ,アルコキシ基,アシルオキシを表す一般式(I)で表される化合物は,長鎖ポリ不飽和エステルを,テトラヒドロフラン,ジエチルエーテルなどの溶媒中で,−60から−78℃の温度でリチウムジイソプロピルアミンまたはカリウム/ナトリウムヘキサメチルジシラジド等の非求核性強塩基と反応させて,エステルエノラートを得ることにより製造する(プロセス4)。このエステルエノラートを,ジメチルジオキシラン,2−(フェニルスルホニル)−3−フェニルオキサジリジン,亜リン酸トリメチル等の種々の付加物を有する分子酸素,またはNi(II)錯体等の種々の触媒等の酸素源と反応させて,アルファ−ヒドロキシエステルを得る(プロセス5)。THFまたはDMF等の溶媒中で2級アルコールと水素化ナトリウム等の塩基とを反応させることにより,アルコキシドが生成し,これを種々の求電子性試薬,例えば,ヨウ化メチル,ヨウ化エチル等のヨウ化アルキル,臭化ベンジルまたは塩化アセチル等のハロゲン化アシル,臭化ベンゾイルと反応させる(プロセス6)。エタノールまたはメタノール等の溶媒中で,15℃から還流温度までの温度で,水中の水酸化リチウム/ナトリウム/カリウム等の塩基を加えることにより,エステルを加水分解してカルボン酸誘導体とする(プロセス7)。
【0102】
アルファ−ヒドロキシエステルは,本発明にしたがって他の官能基をα位置に導入するのに有用な中間体である。ヒドロキシル官能基は,種々の求核基,例えばアンモニア,アミン,チオール等と反応させる前に,ハロゲン化物またはトシレートに変換することにより活性化することができる。ミツノブ反応も,ヒドロキシル基を他の官能基に変換するのに有用である(Mitsunobu,O,Synthesis,1981,1)。
【0103】
合成例
下記の実施例は,本発明にしたがう組成物の製造を例示する。しかし,これらは本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0104】
これらの例においては,90%のオメガ−3PUFAをエチルエステルとして含有する脂質混合物を出発物質として用いた。混合物は,約85%w/wのエチル(全Z)−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエートおよびエチル(全Z)−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエートを,1.2w/wの比率で含む。簡単のために,この混合物を85/EPA/DHA−EEと称する。他のPUFAエチルエステル混合物も出発物質として用いることができる。
【0105】
α−エチル85/EPA/DHA−EEの製造:
ブチルリチウム(3.9ml,6.3mmol,1.6Minヘキサン)を,N下で0℃で,乾燥THF(10ml)中のジイソプロピルアミン(0.93ml,6.6mmol)の撹拌溶液に滴加した。得られた溶液を0℃で20分間撹拌し,−78℃に冷却し,さらに10分間撹拌した後,乾燥THF(10mL)中の85/EPA/DHA−EE(2.0g,5.7mmol)を10分間かけて滴加した。緑色溶液を−78℃で10分間撹拌した後,ヨウ化エチル(0.69ml,8.6mmol)を加えた。得られた溶液を1時間かけて周囲温度とし,水(40mL)とヘプタン(40mL)とに分配した。水性層をヘプタン(40mL)で抽出し,合わせた有機層を1MHCl(40mL)で洗浄し,乾燥した(NaSO)。減圧下で濃縮し,フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン:EtOAc98:2)により精製して,1.53g(68%)の表題化合物を,エチル(全Z)−2−エチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート[α−エチルEPAEE]およびエチル(全Z)−2−エチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート[α−エチルDHAEE]の混合物として無色油状物として得た。
H−NMR(200MHz,CDCl):δ0.84−0.99(m,7H),1.12−1.28(m,5H),1.40−1.80(m,4H),2.02−2.09(m,3H),2.27(m,1H),2.70−2.90(m,9H),4.13(q,2H),5.28−5.44(m,11H);MS(エレクトロスプレー):381.2[α−エチルEPAEE+Na],407.2[α−エチルDHAEE+Na]
【0106】
α−エチル85/EPA/DHA−EEの還元:
乾燥THF(5mL)中のLAH(0.054g,1.42mmol)の懸濁液を,不活性雰囲気下で0℃とし,乾燥THF(5mL)中のα−エチル85/EPA/DHA−EE(0.50g,1.35mmol)を滴加した。混合物を0℃で30分間撹拌し,10%NHCl(10mL)を加え,セライトの短いパッドを通して濾過した。パッドを水(20mL)およびヘプタン(20mL)で洗浄し,層を分離した。水性相をヘプタン(20mL)で抽出し,合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し,乾燥した(MgSO)。これにより,0.35g(79%)の表題化合物を,α−エチルEPA−OHおよびα−エチルDHA−OHの1.2:1混合物として無色油状物として得た。
H−NMR(200MHz,CDCl):δ0.86−0.99(m,8H),1.32−1.41(m,6H),1.98−2.12(m,4H),2.80−2.90(m,10H),3.51−3.55(m,2H),5.26−5.43(m,12H);13C−NMR(50MHz,CDCl):δ11.03,11.32,14.05,14.21,20.50,22.64,23.23,23.36,24.56,25.48,25.58,28.45,30.36,31.83,41.50,42.53,64.96,65.13,126.96,127.76,127.82,127.97,128.05,128.07,128.09,128.15,128.17,128.22,128.34,128.51,129.03,130.21,131.97;MS(エレクトロスプレー):339.2[α−エチルEPA−OH+Na],365.3[α−エチルDHA−OH+Na]
【0107】
製剤および組成物
EPAおよびDHAの濃度が広範囲にわたり様々である混合脂肪酸組成物を製造するために,海産物油からポリ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸アルキルエステルを分画するプロセスを,別々にまたは組み合わせて実施することができ,商業的に利用可能なサンプルはこれを反映している。EPAおよびDHAの濃度は,出発物質中の濃度および用いた分画プロセス,ならびにプロセス収率によって異なる。
【0108】
短経路蒸留または超臨界液体分画による海産物油からのポリ不飽和脂肪酸の分画により,一般に,EPA+DHAの濃度が50−60重量%の,典型的には30−40%のEPAおよび20−30%のDHAを含む長鎖ポリ不飽和オメガ−3油が得られる。そのような混合脂肪酸組成物の市販品の例は,EPAX5500TGおよびEPAX6000FA(EPAXA.S.),K50EE(Pronova BiocareA.S.),Incromega E3322およびIncromega TG3322(Croda),およびMEG−3 Concentrate 30/20EEおよびMEG−3 Concentrate 40/20TG(Ocean Nutrition Canada)である。少なくともEPAおよびDHAを含むこれらの組成物は,本発明にしたがってそのアルファ位で置換することができ,アルコールまたはエステルの形とすることができる。
【0109】
高純度長鎖ポリ不飽和オメガ−3油,典型的にはEPA+DHA>75%の油を製造するために,特定の分画を実施することができる。そのような混合脂肪酸組成物の市販品の例は,K70EE,K80EE,K85EE,K85TG,およびAGP103(Pronova BiocareA.S.)である。また,これらの組成物は,少なくともEPAおよびDHAを含み,本発明にしたがってそのアルファ位で置換し,アルコールまたはエステルの形とすることができる。
【0110】
さらに,ポリ不飽和脂肪酸またはエチルエステルの分画は,EPAが選択的に富化された長鎖ポリ不飽和オメガ−3油が製造されるように実施することができる。そのような混合脂肪酸組成物の市販品の例は,EPAX4510TGおよびEPAX7010EE(EPAXA.S.),Incromega EPA500TGおよびIncromega E7010SR(Croda),およびMEG−360/03TGおよびMEG−350/20EE(Ocean Nutrition Canada)であり,本発明にしたがってそのアルファ位で置換され,アルコールまたはエステルの形であるこれらの製品もまた本発明に含まれる。
【0111】
さらに,脂肪酸または脂肪酸エチルエステルの分画は,選択的にDHAが富化された長鎖オメガ−3油が製造されるように実施することができる。そのような混合脂肪酸組成物の市販品の例は,EPAX2050TG(EPAXA.S.),Incromega DHA500TGおよびIncromega 700ESR(Croda),およびMEG−320/50TGおよびMEG−305/55EE(Ocean Nutrition Canada)である。
【0112】
すなわち,上述の市販品のすべての例は,上述した一般的方法および当該技術分野においてよく知られる方法にしたがって,2位で置換することができる。これらの化合物は,そのアルコールまたはエチルエステルとして存在することができる。
【0113】
本発明は,示される態様または実施例に限定されるべきではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オメガ−3脂質化合物の官能基から数えて炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物を含む脂質組成物であって,
該オメガ−3脂質化合物は,
一般式(I)の化合物:
【化75】

および一般式(II)の化合物:
【化76】

[式中,
およびRは,同じまたは異なり,水素原子,ヒドロキシ基,アルキル基,ハロゲン原子,アルコキシ基,アシルオキシ基,アシル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基,アルキルチオ基,アルコキシカルボニル基,カルボキシ基,アルキルスルフィニル基,アルキルスルホニル基,アミノ基,およびアルキルアミノ基からなる群より選択され;および
Xは,カルボン酸またはその誘導体,カルボキシレート,無水カルボン酸,ヒドロキシメチル(−CHOH)またはそのプロドラッグ,またはカルボキサミドを表し;
ただし,RおよびRは同時に水素原子ではない]
またはその薬学的に許容しうる複合体,塩,溶媒和物またはプロドラッグである,脂質組成物。
【請求項2】
炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物は,組成物の総脂質含量の少なくとも30重量%の濃度で存在する,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項3】
炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物は,組成物の総脂質含量の少なくとも50重量%の濃度で存在する,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項4】
炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物は,組成物の総脂質含量の少なくとも70重量%の濃度で存在する,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項5】
炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物は,組成物の総脂質含量の少なくとも80重量%の濃度で存在する,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項6】
一般式(I)および式(II)の化合物は,少なくとも約20重量%の炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物を含む,請求項1−5のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項7】
一般式(I)および式(II)の化合物は,少なくとも約40重量%の炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物を含む,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項8】
一般式(I)および式(II)の化合物は,少なくとも約70重量%の炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物を含む,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項9】
一般式(I)および式(II)の化合物は,少なくとも約80重量%の炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物を含む,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項10】
式(I)の化合物は,組成物の総脂質含量の約5%−95重量%の濃度で存在する,請求項1−9のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項11】
式(I)の化合物は,組成物の総脂質含量の約40%−55重量%の濃度で存在する,請求項10記載の脂質組成物。
【請求項12】
式(II)の化合物は,組成物の総脂質含量の約5%−95重量%の濃度で存在する,請求項1−9のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項13】
式(II)の化合物は,組成物の総脂質含量の約30%−60重量%の濃度で存在する,請求項12記載の脂質組成物。
【請求項14】
炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物は,式(I)および式(II)の化合物を,[式(I)の化合物]:[式(II)の化合物]が99:1−1:99の重量比で含む,請求項1−13のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項15】
炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物は,式(I)および式(II)の化合物を,[式(I)の化合物]:[式(II)の化合物]が10:1−1:10の重量比で含む,請求項14記載の脂質組成物。
【請求項16】
炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物は,式(I)および式(II)の化合物を,[式(I)の化合物]:[式(II)の化合物]が5:1−1:5の重量比で含む,請求項15記載の脂質組成物。
【請求項17】
炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物は,式(I)および式(II)の化合物を,[式(I)の化合物]:[式(II)の化合物]が3:1−1:3の重量比で含む,請求項16記載の脂質組成物。
【請求項18】
炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物は,式(I)および式(II)の化合物を,[式(I)の化合物]:[式(II)の化合物]が1:2−2:1の重量比で含む,請求項17記載の脂質組成物。
【請求項19】
前記アルキル基は,メチル,エチル,n−プロピル,イソプロピル,n−ブチル,イソブチル,sec−ブチルおよびn−ヘキシルからなる群より選択される,請求項1−18のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項20】
前記ハロゲン原子はフッ素である,請求項1−19のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項21】
前記アルコキシ基は,メトキシ,エトキシ,プロポキシ,イソプロポキシ,sec−ブトキシ,フェノキシ,ベンジルオキシ,OCHCF,およびOCHCHOCHからなる群より選択される,請求項1−20のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項22】
前記アルキニル基は,アリル,2−ブテニルおよび3−ヘキセニルからなる群より選択される,請求項1−21のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項23】
前記アルキニル基は,プロパルギル,2−ブチニルおよび3−ヘキシニルからなる群より選択される,請求項1−22のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項24】
前記アリール基は,ベンジルまたは置換ベンジル基である,請求項1−23のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項25】
前記アルキルチオ基は,メチルチオ,エチルチオ,イソプロピルチオおよびフェニルチオからなる群より選択される,請求項1−24のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項26】
前記アルコキシカルボニル基は,メトキシカルボニル,エトキシカルボニル,プロポキシカルボニルおよびブトキシカルボニルからなる群より選択される,請求項1−25のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項27】
前記アルキルスルフィニル基は,メタンスルフィニル,エタンスルフィニルおよびイソプロパンスルフィニルからなる群より選択される,請求項1−26のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項28】
前記アルキルスルホニル基は,メタンスルホニル,エタンスルホニルおよびイソプロパンスルホニルからなる群より選択される,請求項1−27のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項29】
前記アルキルアミノは,メチルアミノ,ジメチルアミノ,エチルアミノおよびジエチルアミノからなる群より選択される,請求項1−28のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項30】
前記カルボキシレート基は,エチルカルボキシレート,メチルカルボキシレート,n−プロピルカルボキシレート,イソプロピルカルボキシレート,n−ブチルカルボキシレート,sec−ブチルカルボキシレートおよびヘキシルカルボキシレートからなる群より選択される,請求項1−29のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項31】
前記カルボキサミド基は,1級カルボキサミド,N−メチルカルボキサミド,N,N−ジメチルカルボキサミド,N−エチルカルボキサミド,およびN,N−ジエチルカルボキサミドからなる群より選択される,請求項1−30のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項32】
Xは,モノ−,ジ−またはトリグリセリド,およびリン脂質からなる群より選択されるカルボン酸誘導体である,請求項1−31のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項33】
式(I)および(II)の塩は,
【化77】

および
【化78】

[式中,XはCOOであり,
は,Li,Na,K,NH
【化79】

メグルミン,
【化80】

トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン,
【化81】

ジエチルアミン,および
【化82】

アルギニンからなる群より選択される];
により,または
【化83】

および
【化84】

[式中,XはCOOであり,
2+は,Mg2+,Ca2+
【化85】

エチレンジアミン,および
【化86】

ピペラジンからなる群より選択される]
により,または
【化87】

および
【化88】

[式中,XはCOOであり,
n+
【化89】

キトサンである]
により表される,請求項1−32のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項34】
およびRは,水素原子,ヒドロキシ基,アルキル基,ハロゲン原子,アルコキシ基,アルキルチオ基,アルキルスルフィニル基,アルキルスルホニル基,アミノ基,およびアルキルアミノ基からなる群より選択される,請求項1−33のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項35】
およびRは,水素原子,ヒドロキシ基,C−Cアルキル基,ハロゲン原子,C−Cアルコキシ基,C−Cアルキルチオ基,C−Cアルキルスルフィニル基,C−Cアルキルスルホニル基,アミノ基,およびC−Cアルキルアミノ基からなる群より選択される,請求項33記載の脂質組成物。
【請求項36】
前記C−Cアルキル基は,メチル,エチル,またはプロピルであり;
前記ハロゲン原子は,フッ素であり;
前記C−Cアルコキシ基は,メトキシまたはエトキシであり;
前記C−Cアルキルチオ基は,メチルチオ,エチルチオまたはフェニルチオであり;
前記C−Cアルキルスルフィニル基は,エタンスルフィニルであり;
前記C−Cアルキルスルホニル基は,エタンスルホニルであり;
前記C−Cアルキルアミノ基は,エチルアミノまたはジエチルアミノであり;および
Xはエチルカルボキシレートまたはカルボキサミド基を表す
請求項35記載の脂質組成物。
【請求項37】
およびRは,水素原子,C−Cアルキル基,ハロゲン原子,C−Cアルコキシ基,C−Cアルキルチオ基,C−Cアルキルスルフィニル基,C−Cアルキルスルホニル基,アミノ基,およびC−Cアルキルアミノ基からなる群より選択され;および
Xはヒドロキシメチル(−CHOH)を表す,請求項1−36のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項38】
前記C−Cアルキル基は,メチル,エチルまたはプロピルであり;
前記ハロゲン原子はフッ素であり;
前記C−Cアルコキシ基は,メトキシまたはエトキシであり;
前記C−Cアルキルチオ基は,メチルチオ,エチルチオまたはフェニルチオであり;
前記C−Cアルキルスルフィニル基は,エタンスルフィニルであり;
前記C−Cアルキルスルホニル基は,エタンスルホニルであり;
前記C−Cアルキルアミノ基は,エチルアミノまたはジエチルアミノであり;
前記アシルはベンジルであり;
およびXは,ヒドロキシメチル(−CHOH)を表し,または
【化90】

および
【化91】

[式中,XはCOOであり,
は,Li,Na,K,NH
【化92】

メグルミン,
【化93】

トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン,
【化94】

ジエチルアミン,および
【化95】

アルギニンからなる群より選択される];
により,または
【化96】

および
【化97】

[式中,XはCOOであり,
2+は,Mg2+,Ca2+
【化98】

エチレンジアミン,および
【化99】

ピペラジンからなる群より選択される],
により,または
【化100】

および
【化101】

[式中,XはCOOであり,
n+
【化102】

キトサンである]
により表される,請求項37記載の脂質組成物。
【請求項39】
およびRの一方はメチルであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項40】
およびRの一方はエチルであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項41】
およびRの一方はプロピルであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項42】
およびRの一方はメトキシであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項43】
およびRの一方はエトキシであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項44】
およびRの一方はプロポキシであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項45】
およびRの一方はチオメチルであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項46】
およびRの一方はチオエチルであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項47】
およびRの一方はチオプロピルであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項48】
およびRの一方はエチルアミノであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項49】
およびRの一方はジエチルアミノであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項50】
およびRの一方はアミノであり,他方は水素原子である,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項51】
Xは,エチルカルボキシレートまたはヒドロキシルメチルである,請求項1−50のいずれかに記載の脂質組成物。
【請求項52】
オメガ−3脂質化合物の官能基から数えて炭素2で置換されたオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む脂質組成物であって,
該オメガ−3脂質化合物は,一般式(I)の化合物:
【化103】

および一般式(II)の化合物:
【化104】

[式中,組成物中の式(I)および(II)の構成成分の比率は1:10から10:1であり;
およびRは,同じまたは異なり,メチル,エチル,プロピル,ジメチル,ジエチル,チオメチル,チオエチル,メトキシ,エトキシ,OH,メチルアミノおよびエチルアミノからなる群より選択され;および
Xは,カルボン酸またはその誘導体,カルボキシレート,カルボン酸,ヒドロキシメチル(−CHOH)またはそのプロドラッグ,またはカルボキサミドを表す]
を少なくとも含むことを特徴とする脂質組成物。
【請求項53】
前記プロドラッグは,ピバロエートエステル,またはヘミスクシネートエステルまたはそれらの塩の形で存在する,請求項52記載の脂質組成物。
【請求項54】
オメガ−3脂質化合物の官能基から数えて炭素2で置換されているオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む脂質組成物であって,
オメガ−3脂質化合物は,一般式(I)の化合物:
【化105】

および一般式(II)の化合物:
【化106】

[式中,
およびRは,メチル,エチル,プロピル,エトキシ,メトキシ,ベンジル,チオメチルおよびチオエチルからなる群より選択され;および
Xはヒドロキシメチル(−CHOH)を表す]
を少なくとも含むことを特徴とする脂質組成物。
【請求項55】
オメガ−3脂質化合物の官能基から数えて炭素2で置換されているオメガ−3脂質化合物を少なくとも含む脂質組成物であって,オメガ−3脂質化合物は,式(I)および式(II)の化合物の下記の組み合わせ:
A)
【化107】

エチル(全Z)−2−エチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2−エチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
B)
【化108】


エチル(全Z)−2−メチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2−メチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
C)
【化109】

エチル(全Z)−2,2−ジメチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2,2−ジメチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
D)
【化110】

エチル(全Z)−2,2−ジエチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2,2−ジエチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
E)
【化111】

エチル(全Z)−2−メトキシ−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2−メトキシl−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
F)
【化112】

エチル(全Z)−2−エトキシ−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2−エトキシ−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
G)
【化113】

エチル(全Z)−2−チオエチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエノエート
エチル(全Z)−2−チオエチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノエート
H)
【化114】

(全Z)−2−エチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2−エチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
I)
【化115】

(全Z)−2−メチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2−メチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
J)
【化116】

(全Z)−2,2−ジメチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2,2−ジメチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
K)
【化117】

(全Z)−2,2−ジエチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2,2−ジエチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
L)
【化118】

(全Z)−2−メトキシ−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2−メトキシ−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
M)
【化119】

(全Z)−2−エトキシ−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2−エトキシ−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
および/または
N)
【化120】

(全Z)−2−チオエチル−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン−1−オール
(全Z)−2チオエチル−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン−1−オール
の少なくとも1つを含むことを特徴とする脂質組成物。
【請求項56】
およびRは異なる,請求項1記載の脂質組成物。
【請求項57】
式(I)および(II)の化合物の一方または双方はラセミ体である,請求項56記載の脂質組成物。
【請求項58】
式(I)および(II)の化合物はR立体異性体の形であるか,または少なくとも一方がR立体異性体であり,他方がS立体異性体である,請求項56記載の脂質組成物。
【請求項59】
式(I)および(II)の化合物はS立体異性体の形である,請求項55記載の脂質組成物。
【請求項60】
請求項1−59のいずれかに記載の脂質組成物を含む医薬組成物。
【請求項61】
治療に用いるための,請求項1−60のいずれかに記載の脂質または医薬組成物。
【請求項62】
さらに薬学的に許容しうる担体を含む,請求項60記載の医薬組成物。
【請求項63】
経口投与用に製剤されている,請求項60または61記載の医薬組成物。
【請求項64】
カプセル,サシェまたは固体投与形態の形態である,請求項63記載の医薬組成物。
【請求項65】
1mgから10gの前記組成物の1日投与量を与えるよう製剤されている,請求項1−64のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項66】
1mgから1gの前記組成物の1日投与量を与えるよう製剤されている,請求項65記載の医薬組成物。
【請求項67】
50mgから200mgの前記組成物の1日投与量を与えるよう製剤されている,請求項66記載の医薬組成物。
【請求項68】
さらに薬学的に許容しうる抗酸化剤を含む,請求項1−67のいずれかに記載の脂質または医薬組成物。
【請求項69】
前記抗酸化剤はトコフェロールまたはアスタキサンチンである,請求項68記載の脂質組成物。
【請求項70】
ヒトペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)アイソフォームの少なくとも1つの活性化または調節に関連する医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項71】
前記ペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)はPPARαである,請求項70記載の使用。
【請求項72】
前記ペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)はPPARαおよび/またはγである,請求項71記載の使用。
【請求項73】
インスリン耐性および/または糖尿病性状態の治療および/または予防用の医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項74】
血漿インスリン,血中グルコースおよび/または血清トリグリセリドの低下用の医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項75】
2型糖尿病の治療および/または予防用の医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項76】
トリグリセリドレベル,LDLコレステロールレベル,および/またはVLDLコレステロールレベルの上昇の予防および/または治療用の医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項77】
脂質異常症状態の予防および/または治療用の医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項78】
前記脂質異常症状態は高トリグリセリド血症(HTG)である,請求項77記載の使用。
【請求項79】
ヒトにおいて血清HDLレベルを上昇させる医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項80】
肥満または体重過多の治療および/または予防用の医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項81】
体重の減少および/または体重増加の防止用の医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項82】
脂肪肝疾患の治療および/または予防用の医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項83】
前記脂肪肝疾患は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である,請求項82記載の使用。
【請求項84】
インスリン耐性,高脂血症および/または肥満または体重過多の治療用の医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項85】
炎症性疾患または状態の治療および/または予防用の医薬品の製造のための,請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物の使用。
【請求項86】
ヒトペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)アイソフォームの少なくとも1つの機能の上昇と関連した状態を治療および/または予防する方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項87】
前記ペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)は,PPARαである,請求項86記載の方法。
【請求項88】
,前記ペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)はPPARαおよび/またはγである,請求項86記載の使用。
【請求項89】
請求項1記載の脂質組成物を含む,ペルオキシゾーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)αおよび/またはγアゴニスト。
【請求項90】
末梢インスリン耐性および/または糖尿病性状態を治療および/または予防する方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項91】
血漿インスリン,血中グルコースおよび/または血清トリグリセリドを低下させる方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項92】
2型糖尿病を治療および/または予防する方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項93】
トリグリセリドレベル,非HDL(LDLおよび/またはVLDLコレステロールレベル)の上昇を予防および/または治療する方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項94】
脂質異常症状態を予防および/または治療する方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項95】
前記脂質異常症状態は高トリグリセリド血症(HTG)である,請求項94記載の方法。
【請求項96】
ヒトにおいて血清HDLレベルを上昇させる方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項97】
肥満または体重過多を治療および/または予防する方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項98】
体重を減少させ,および/または体重増加を防止する方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項99】
脂肪肝疾患を治療および/または予防する方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項100】
前記脂肪肝疾患は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である,請求項99記載の方法。
【請求項101】
インスリン耐性,高脂血症および/または肥満または体重過多を治療する方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項102】
炎症性疾患または状態を治療および/または予防する方法であって,それを必要とする哺乳動物に薬学的に活性な量の請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を投与することを含む方法。
【請求項103】
請求項1−69のいずれかに記載の脂質組成物を製造する方法。
【請求項104】
請求項1−69のいずれかに記載の本明細書に実質的に記載され例示されるアルファ置換化合物を少なくとも含む脂質組成物を製造する方法。
【請求項105】
請求項103または104に記載の脂質組成物を製造する方法であって,前記脂質組成物は,植物,微生物および/または動物起源から製造されることを特徴とする方法。
【請求項106】
請求項1−105のいずれかに記載の脂質組成物を製造する方法であって,前記脂質組成物は海産物油から製造されることを特徴とする方法。
【請求項107】
前記脂質組成物は,魚油またはオキアミ油から製造される,請求項106記載の脂質組成物を製造する方法。



【公表番号】特表2010−508262(P2010−508262A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533985(P2009−533985)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004613
【国際公開番号】WO2008/142482
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509117067)プロノヴァ バイオファーマ ノルゲ アーエス (2)
【Fターム(参考)】