説明

組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体、並びにそれを含有する人工酸素運搬体および赤血球代替物

【課題】酸素親和性を調整できる組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体を提供する。
【解決手段】ヒト血清アルブミンのヘム結合サイトであるサブドメインIBにおいて、金属ポルフィリンと配位結合するヒスチジンが遺伝子組換え技術により、前記アルブミンの142イソロイシン、185ロイシン、138チロシン、115ロイシンおよび/または139ロイシンを置換して導入され、またそれとは別の位置に鍵アミノ酸が遺伝子組換え技術により少なくとも一つ導入され、さらに161チロシンがチロシン以外の疎水性アミノ酸で置換された組換えヒト血清アルブミンに、金属ポルフィリンを配位結合させた組換えヒト血清アルブミン−ポルフィリン金属錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体、並びにその組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体を含有する人工酸素運搬体および人工赤血球代替物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、人間の体内において血液、皮膚、細胞間液など多くの場所に分布する分子量66,500の単純蛋白質であり、17個のジスルフィド結合を含む585個のアミノ酸から構成されている。血中ではコロイド浸透圧の維持のほか、各種内因性物質・外因性薬物を運搬、貯蔵、分配する重要な役割を担っている。アルブミンに関する研究は古くから行われているが、X線結晶構造解析によりその三次元構造の全容が明らかにされたのは1989年のことであった(非特許文献1)。その後、1998年には、カリーらにより、脂肪酸が7分子結合したアルブミン−脂肪酸複合体の結晶構造が詳細に解明された(非特許文献2)。HSAは三つのドメイン(I、II、III)からなり、それらはさらに二つのサブドメイン(A、B)から構成されている。
【0003】
もし、血清アルブミンにヘモグロビン(Hb)のような酸素輸送能を付与することができれば、人工酸素運搬体(赤血球代替物)としての利用価値はきわめて高く、例えば救急医療現場における救命措置に汎用されれば、人類の医療福祉に大な貢献をもたらすことは間違いない。
【0004】
血漿中には、ヘミン(鉄(III)プロトポルフィリン)を自発的に取り込んで、ヘム蛋白質を構成するヘモペキシンという糖蛋白質も存在する。酸化したHb(メトHb)から遊離したヘミンは細胞毒性があるため、このヘモペキシンにより速やかに捕捉され、肝臓へと運ばれる(非特許文献3)。ヘモペキシンに取り込まれたヘミン分子は、2つのヒスチジン残基との軸配位結合及びアミノ酸残基との多重水素結合により、非常に強く固定されている(K>1012-1)(非特許文献4)。しかし、ヘモペキシンの血中濃度は<17μMと低いため、これが飽和した際には、血清アルブミンがその機能を代替する(アルブミンとヘミンの結合定数は約108-1、非特許文献5参照)。ごく最近、カーターらと本発明者らの研究グループは、独立に、アルブミン−ヘミン−ミリスチン酸錯体のX線結晶構造解析に成功した(非特許文献6、非特許文献7)。ヘミンはアルブミンのサブドメインIBに取り込まれ、161チロシンとの軸配位結合、及び3つの塩基性アミノ酸(リジン190、ヒスチジン146、アルギニン114)残基とプロピオン酸側鎖との間の静電的相互作用により固定されている。ヘミン結合サイトを取り囲む分子環境は、疎水性アミノ酸残基のみから構成されており、ミオグロビン(Mb)のヘムポケットとの構造類似性がある。窒素雰囲気下でHSA−ヘミン錯体水溶液に亜二チオン酸ナトリウム水溶液を添加し、ヘミンを鉄(II)プロトポルフィリン錯体(プロトヘム)へ還元すると、可視吸収スペクトルは161チロシンが配位した鉄(II)5配位高スピン錯体を形成する。しかし、そこへ酸素を通気しても中心鉄(II)は瞬時に酸化されてしまい、安定な酸素錯体を得ることはできない(非特許文献8)。
【0005】
他方、本発明者らの研究グループは、4つの疎水性置換基と軸塩基配位子を分子内に共有結合した鉄(II)テトラフェニルポルフィリンがアルブミンに効率よく包接され、得られたアルブミン−ヘム複合体が生理条件下(生理塩水中、pH7.3、37℃)でHbやMbと同じように酸素を吸脱着できることを明らかにしている(特許文献1、特許文献2)。また、本発明者らの研究グループは、赤外吸収、共鳴ラマン、磁気円偏光二色性スペクトルなどから、アルブミン−ヘム複合体の酸素配位錯体の電子状態を詳細に解析(非特許文献9)し、アルブミン−ヘム複合体が生体内でも酸素を運搬できる血清ヘム蛋白質として機能することを動物実験から定量的に実証している。
【0006】
しかしながら、これらのアルブミン−ヘム複合体において酸素配位活性中心として作用する合成ヘムは、4つの疎水性置換基と軸塩基配位子を分子内に共有結合した特殊な立体構造を有する鉄(II)テトラフェニルポルフィリンに限定されていた。この種のヘム誘導体の合成方法は多段階からなることは言うまでもなく、量産が難しいなどの欠点があるばかりか、生体内へ投与した後の合成ヘム誘導体の代謝分解過程についても未だ不明な点が多いのも現状であった。天然の金属ポルフィリン、例えば鉄(II)プロトポルフィリン、またはその誘導体を血清アルブミンに固定して得たアルブミン−金属ポルフィリン錯体がHbやMbと同じような酸素配位能を発現することができれば、その生体適合性、生産性は大幅に向上し、極めて有用な材料となるものと考えられる。
【0007】
そこで、本発明者らは、軸塩基を金属ポルフィリンの分子内に共有結合させなくとも、アルブミンのポルフィリン結合サイトであるサブドメインIBに、近位塩基として作用するヒスチジンを遺伝子組換え技術により導入すれば、金属ポルフィリンに、そのヒスチジンのイミダゾール基が軸配位して、5配位錯体が得られ、そこへ酸素を通気することによりHbやMbに見られる酸素配位錯体が生成するはずであると考えた。
【0008】
カーターらは、ヒト血清アルブミンに遺伝子組換え技術により、親水性アミノ酸(ヒスチジンまたはグルタミン)を導入して、プロトヘムを配位固定させた組換えアルブミン−プロトヘム錯体を調製し、その酸素結合反応を検討している(特許文献3)。しかし、用いた酸素配位活性中心はプロトヘムのみであり、しかも酸素結合定数など、酸素配位能に関する定量的な解析は行っていない。さらに、本発明者らの研究グループは、永年にわたる合成ヘムを利用した人工酸素運搬体に関する研究の結果から、酸素配位座近傍に親水性基が存在すると、プロトンを媒介する中心金属(II)の酸化反応が促進され、酸素錯体の安定度が低下することを実証している(非特許文献10)。
【0009】
このような背景の下、本発明者らの研究グループは、アルブミンのポルフィリン結合サイトであるサブドメインIB内に、近位塩基として作用するヒスチジンを遺伝子組換え技術により導入し、さらに酸素配位座側に結合している161チロシンを遺伝子組換え技術により、疎水的なアミノ酸に置換し、人工のヘムポケットを構築すれば、その内部へ金属ポルフィリン錯体が軸配位結合して、安定な酸素錯体を生成するばかりか、活性中心はプロトヘムのみならず、広く多くの金属ポルフィリンで普遍化できるのではないかと考え、組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体を調製し、酸素の可逆的な結合解離を初めて明らかにした(非特許文献8、特許文献4)。
【0010】
しかしながら、実際にこれら組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体の水溶液を人工酸素運搬体として実用化する場合には、酸素親和性などの酸素結合パラメータをそれぞれの使用条件、臨床上の適応にあわせて調整することが必要となってくる。前述した4つの疎水性置換基と軸塩基配位子を分子内に有する複雑な立体構造を有する金属テトラフェニルポルフィリンの場合、置換基構造や軸塩基配位子の化学構造を調節することにより、酸素親和性を調整できることが明らかにされている(非特許文献10)。
【0011】
すなわち、組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体については、酸素配位能を調節するための新しい技術の確立が待たれていた。
【非特許文献1】D. C. Carter et al., Science 244: 1195-1198 (1989)
【非特許文献2】S. Curry et al., Nature Struct. Biol. 5: 827-835 (1998)
【非特許文献3】E. Tolosano et al., DNA Cell Biol., 21: 297-306 (2002)
【非特許文献4】M. Paoli et al., Nature Struct. Biol. 6: 926-931 (1999)
【非特許文献5】P. A. Adams et al., Biochem. J. 191: 95-102 (1980)
【非特許文献6】M. Wardell et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 291: 813-819 (2002)
【非特許文献7】P. A. Zunszain et al., BMC Struct. Biol. 3: 6 (2003)
【非特許文献8】T. Komatsu et al., J. Am. Chem. Soc. 127: 15933-15942 (2005)
【非特許文献9】E. Tsuchida et al., Bioconjugate Chem. 10: 797-802 (1999)
【非特許文献10】T. Komatsu et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 74: 1695-1702 (2001)
【特許文献1】特開平8−301873号公報
【特許文献2】特開2003−40893号公報
【特許文献3】特表2002−500862号公報
【特許文献4】特開2006−45172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、酸素親和性を調整できる遺伝子組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体、並びにこの遺伝子組換えアルブミン−金属ポルフィリン錯体を含有する人工酸素運搬体および赤血球代替物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
酸素配位能を金属ポルフィリンに付与するための重要な要件は、軸塩基配位子となるイミダゾールがポルフィリン中心金属の第5配位座に結合されていることである。他方、酸素親和性は、酸素が結合する第6配位座近傍の分子環境に大きく影響を受ける。天然ヘム蛋白質であるMbの場合、配位酸素分子の酸素原子から2.77〜2.95Åの距離に位置するヒスチジン64のN原子が、プロトンを介して配位酸素と水素結合を形成し、酸素錯体の安定化、及び酸素親和性の増大に寄与している(S. E. Phillips and B. P. Schoeborn, Nature 292:81-82 (1981))。シュプリンガーらは、遺伝子組換え技術を駆使して、Mbのヒスチジン64を他のアミノ酸に変換した組換えMbを合成し、その酸素配位能を詳細に解析して、天然型であるヒスチジン64の構造の時、最も酸素親和性が高くなることを明らかにした(B. A. Springer et al., Chem. Rev. 94:699-714 (1994))。
【0014】
本発明者らは、組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体の酸素親和性を制御するための分子環境設計と機能発現について鋭意研究を重ねた結果、アルブミンのポルフィリン結合サイトであるサブドメインIBに、金属ポルフィリンの近位塩基として作用するヒスチジンを遺伝子組換え技術により導入するとともに、それとは別の位置(特に配位酸素と相互作用し得る距離の位置)に、鍵アミノ酸を導入することにより、HbやMbに見られる酸素配位錯体の生成が可能となるばかりか、鍵アミノ酸の位置と構造の調節により、組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体の酸素親和性を制御できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第1の側面によれば、ヒト血清アルブミンのヘム結合サイトであるサブドメインIBにおいて、金属ポルフィリンと配位結合するヒスチジンが遺伝子組換え技術により、前記アルブミンの142イソロイシン、185ロイシン、138チロシン、115ロイシンまたは139ロイシンを置換して導入され、またその導入位置とは別の位置に鍵アミノ酸が遺伝子組換え技術により少なくとも一つ導入され、さらに161チロシンがチロシン以外の疎水性アミノ酸で置換された組換えヒト血清アルブミンに、金属ポルフィリンを配位結合させた組換えヒト血清アルブミン−ポルフィリン金属錯体が提供される。
【0016】
本発明の第2の側面によれば、本発明の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体を含有する人工酸素運搬体が提供される。この場合、金属ポルフィリンは、中心金属として鉄(II)またはコバルト(II)を有する。
【0017】
また、本発明の第3の側面によれば、本発明の組換えヒト血清アルブミン-金属ポルフィリン錯体を含有する赤血球代替物が提供される。この場合、金属ポルフィリンは、中心金属として鉄(II)またはコバルト(II)を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体は、遺伝子組換え技術によりポルフィリン結合サイトであるサブドメインIBへ導入されたヒスチジンに中心金属が軸配位結合することにより、金属ポルフィリンがアルブミン内部に固定されて5配位高スピン錯体を形成し、酸素の通気により安定度の高い酸素配位錯体を形成することができるばかりか、配位酸素近傍に鍵アミノ酸が遺伝子組換え技術により導入されているため、酸素親和性の調節ができる特徴を有する。さらに、本発明の組換えヒト血清アルブミンは、Hbの酸素結合部位であるプロトヘムはもちろん、合成の金属ポルフィリンでさえも、その内部に軸塩基配位を介して固定し、酸素結合能を発現させることができる上、鍵アミノ酸の種類及び位置の選定により、酸素親和性を制御することができる。また、本発明の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体を含有する人工酸素運搬体は、生体内に投与する場合も安全度の高い輸血用血液の代替物として利用できる。加えて、本発明の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体は、移植臓器または組織の保存液、組織培養液、腫瘍の抗癌治療増感剤、術前血液希釈液、人工心肺など体外循環回路の補填液、移植臓器の灌流液、虚血部位への酸素供給液(心筋梗塞、脳梗塞、呼吸不全など)、慢性貧血治療剤、液体換気の環流液、として利用でき、またガス吸着剤、酸化還元触媒、酸素酸化反応触媒、酸素添加反応触媒としても有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のアルブミン−金属ポルフィリン錯体は、ヘム結合サイトであるサブドメインIBにおいて、金属ポルフィリンと配位結合するヒスチジンを遺伝子組換え技術により所定の位置に導入し、またそれとは別の位置に鍵アミノ酸を遺伝子組換え技術により少なくとも一つ導入し、さらに161チロシンをチロシン以外の疎水性アミノ酸で置換した組換えヒト血清アルブミンに、金属ポルフィリンを軸配位により結合させることにより得られる。
【0020】
使用する組換えヒト血清アルブミンは、サブドメインIBにおいて、142イソロイシン、185ロイシン、138チロシン、115ロイシンまたは139ロイシンがヒスチジンで置換され(これらの位置のいずれか1つに導入されたヒスチジンは金属ポルフィリンに対し軸配位子として作用する)、その導入位置とは別の位置に鍵アミノ酸が導入され(これらの鍵アミノ酸が配位性アミノ酸で、前記ヒスチジンの導入位置のうち、実際にヒスチジンが導入された位置以外の位置に導入された場合、金属ポリフィリンに軸配位することもあり得る)、しかも161チロシンが非配位性の疎水性アミノ酸で置換されている組換えアルブミンである。
【0021】
上記鍵アミノ酸としては、極性アミノ酸、特にアスパラギン、グルタミン、リジン、ヒスチジン、アルギニンまたはプロリンが好ましい。また、161チロシンを置換するヒスチジン以外の非配位性の疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、トリプトファン、またはフェニルアラニンを好適に使用することができる。
【0022】
金属ポルフィリンは、好ましくは、金属プロトポルフィリン、金属デューテロポルフィリン、金属ジアセチルデューテロポルフィリン、金属メソポルフィリン、金属ジホルミルポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属オクタエチルポルフィリンである。また、その中心金属は。鉄またはコバルト、特に鉄(II)またはコバルト(II)が好ましい。
【0023】
本発明の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体の分子表面にポリエチレングリコール基を共有結合することにより、表面修飾組換え血清アルブミン−金属ポルフィリン複錯体が得られる。好ましくは、ポリエチレングリコール基がチオエーテル結合で導入されており、特に、血清アルブミンの分子表面に存在するリジン残基のアミノ基をイミノチオランでチオレート基に変換し、それに末端マレイミド基を有するポリエチレングリコールを反応させることによりポリエチレングリコール基をチオエーテル結合で導入して得た表面修飾組換え血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体が望ましい。
【0024】
本発明の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体は、水中でHbやMbのように酸素を結合解離できるので、完全合成系の人工酸素運搬体として機能する。もちろん体内へ投与した場合には、赤血球代替物としての役割を果たすばかりでなく、この組換えアルブミン−金属ポルフィリン錯体の水溶液中に、移植に適した臓器または組織を保存することで、移植前の臓器または組織の安全かつ長期の保存が可能となる。また、この組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体は組織の増殖を促進させる培養液として作用することもできるし、腫瘍の低酸素部位へ投与すれば、赤血球の進入できない細い毛細管内を通過できるので、腫瘍低酸素部位の酸素化が可能で、その後直ちに患部へ放射線を照射することにより、腫瘍を縮小または治癒することができる。
【0025】
人工酸素運搬体の適用として、出血ショックの蘇生液(輸血用血液の代替物)はもちろんのこと、術前血液希釈液、人工心肺など体外循環回路の補填液、移植臓器の灌流液、虚血部位への酸素供給液(心筋梗塞、脳梗塞、呼吸不全など)、慢性貧血治療剤、液体換気の環流液、さらに、稀少血液型患者への利用、宗教上の理由による輸血拒否患者への対応、動物医療への応用が期待されている。人工酸素運搬体は、本発明の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体を生理食塩水に分散させることによって得られる。組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体の濃度は、その用途によって異なるが、赤血球代替物としては、ヘム濃度で9.2mM程度、その他では、それ以上の濃度で用いることができる。
【0026】
加えて、金属ポルフィリンが例えば第4〜5周期に属する金属イオンの錯体である場合、酸化還元反応、酸素酸化反応または酸素添加反応の触媒としての付加価値も高い。従って、本発明のポルフィリン金属錯体は、人工酸素運搬体のほか、ガス吸着剤、酸化還元触媒、酸素酸化反応触媒、酸素添加反応触媒としての特徴を持つ。
【0027】
本発明の組換えヒト血清アルブミンは、サブドメインIBにヒスチジンを置換または挿入すること、またそれとは別の位置に鍵アミノ酸を置換または挿入すること、さらには161チロシンを非配位性の疎水性アミノ酸で置換することによって得られる。特定位置へのアミノ酸の導入は、アルブミンにおけるかかる組換えを達成するために現在知られている種々の慣用手段によって達成される。さらに、本発明の組換えアルブミンの調製は、アルブミンをコードするDNAを慣用の部位特異的突然変異誘発を使用して変異させることによって行うことができる。本変異は、アルブミン本来の立体構造、物性、特徴に影響を及ぼさない程度の小さな変異である。また、遺伝子組換えアルブミンは、酵母を利用した慣用の培養法を使用して産生できる。例えば、変異導入はQuick Change XL Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)を用いて行うことができ、発現はPichia Expression Kit(Invitrogen社)を使用して、C. E. Peterson et al., Biochemistry, 36, 7012-7017 (1997)に記載された方法に従って行うことができる。得られた組換えヒト血清アルブミンは、慣用の方法、例えばブルーセファロース6ファーストフローを充填したカラムクロマトグラフィー、続いて、SUPERDEX pg75を充填したカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
【0028】
組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体の分子表面をポリエチレングリコール基で修飾することは、例えば特開2006−45173号公報に記載の方法により実施できる。アルブミン1分子当りのポリエチレングリコールの平均結合本数は1〜15が好ましく、ポリエチレングリコールの平均分子量は2,000〜5,000が好ましい。
【0029】
本発明の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体は、例えば前述のT. Komatsu et al., J. Am. Chem. Soc. 127: 15933-15942 (2005)に記載の通常の方法により調製することができる。なお、金属ポルフィリンが鉄(III)錯体の形を有する場合は、適当な還元剤(亜二チオン酸ナトリウム、アスコルビン酸など)を用い、常法により中心金属を3価から2価へ還元すれば、酸素結合活性が付与できる。いずれの場合も酸素と接触すると速やかに安定な酸素錯体を生成する。また、これらの錯体は酸素分圧に応じて酸素を吸脱着できる。この酸素結合解離は可逆的に繰り返し行うことができ、酸素運搬体として作用する。
【0030】
酸素以外にも、金属に配位性である気体の場合、相当する配位錯体を形成できる(例えば、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素など)。これらの理由から、本発明の組換えアルブミン−金属ポルフィリン錯体は、特に鉄(II)またはコバルト(II)錯体の場合、人工酸素運搬体として上記した多くの用途に有効な機能を発揮することはもちろん、均一系、不均一系での酸化還元反応触媒、およびガス吸着剤としての応用が可能となる。
【実施例】
【0031】
以下、この発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明が実施例のものに限定されないことは、言うまでもないことである。
【0032】
例1
本発明の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体の酸素結合反応を観測することを目的として、ヒト血清アルブミンの142イソロイシンをヒスチジンに置換し、161チロシンをロイシンに置換し、さらに185ロイシンをアスパラギンに置換した組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161L/L185N)を慣用の部位特異的突然変異誘発とピキア酵母を用いた慣用の培養法により産生した。すなわち、変異導入は、Quick Change XL Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)を用いて実施し、発現はPichia Expression Kit(Invitrogen社)を使用し、C. E. Peterson et al., Biochemistry, 36, 7012-7017 (1997)に記載された方法に従って行った。
【0033】
得られた組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161L/L185N)をブルーセファロース6ファーストフローを充填したカラムクロマトグラフィーにより、続いて、SUPERDEX pg75を充填したカラムクロマトグラフィーにより精製した。この組換えアルブミン(I142H/Y161L/L185N)(20μM、50mMリン酸緩衝水溶液)へ鉄(III)プロトポルフィリン(0.266mM、DMSO溶液)をポルフィリン/アルブミンのモル比が1.1/1になるように添加し、12時間、暗所で回転攪拌しながら混合した。得られた混合溶液を限外濾過装置(限外分子量:10kDa)で洗浄し、DMSO濃度が0.1%以下になるまで、50mMリン酸緩衝水溶液で濃縮・希釈を繰り返した。得られた水溶液の紫外可視吸収スペクトルを図1に示す(Fe3+として示す)。
【0034】
この水溶液をアルゴンで十分に置換して脱酸素した後、亜ニチオン酸ナトリウム水溶液を添加して、中心鉄を鉄(II)に還元して、組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161L/L185N)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体を調製した。この水溶液の紫外可視吸収スペクトルはλmax:425、532、559nmを示し、これがMbのデオキシ型のスペクトルパターンとよく類似したことから、Fe(II)5配位高スピン錯体の形成が明らかとなった(図1、Fe2+として示す)。142ヒスチジンのイミダゾール基が軸塩基として中心鉄に配位し、デオキシ体が得られたものと考えられた。そこへ酸素を通気すると、直ちに酸素錯体型のスペクトルへ移行(λmax:411、537、576nm)し(図1、Fe2+(O2)として示す)、一酸化炭素を通気すると安定な一酸化炭素錯体(λmax:419、537、564nm)が得られた(図1、Fe2+(CO)として示す)。
【0035】
例2
例1で調製した組換えアルブミン(I142H/Y161L/L185N)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体水溶液に、レザーフラッシュ(ND:YAGレーザー、532nm、パルス幅6ns)を照射し、瞬時に起こる非平衡状態から平衡状態への可視吸収スペクトル変化の時間分解解析から、酸素親和性(P50)及び酸素結合解離速度定数(kon、koff)を算出した。実際の測定は前記Komatsu et al., J. Am. Chem. Soc. 2005, 176, 30552-30265に記載の方法で行った。その結果、酸素の結合反応には二成分存在することがわかり、ヘムポケット内における鉄(II)プロトポルフィリンの配向構造が二つ存在する(I型とII型)ことが明らかとなった。I型のP50は1Torr(22℃)で、L185Nを持たない組換えアルブミン(I142H/Y161L)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体に比べて1/18と低く(酸素親和性は18倍高いことになる)、Mbの値に近い。konは1.3×107-1-1、koffは21s-1であり、これらの値もMbの値(kon:1.4×107-1-1、koff:12s-1)と類似した。また、II型のP50は14Torr(22℃)であり、Mbの値に比べ27倍高かった(酸素親和性は1/27低いことになる)。これは、軸塩基配位子の歪みに基づく大きなkoff値(290s-1)に起因するものと推測された。
【0036】
例3
例1において、ヒト血清アルブミンの161チロシンをロイシンに置換する代わりにフェニルアラニンに置換した組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161F/L185N)を慣用の部位特異的突然変異誘発とピキア酵母を用いた慣用の培養法により産生した以外は、同様の手法に従い、組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161F/L185N)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体を調製した。この水溶液の紫外可視吸収スペクトルはλmax:425、532、559nmを示し、これがMbのデオキシ型のスペクトルパターンとよく類似したことから、Fe(II)5配位高スピン錯体の形成が明らかとなった。142ヒスチジンのイミダゾール基が軸塩基として中心鉄に配位しているものと考えられた。そこへ酸素を通気すると、直ちに酸素錯体型のスペクトルへ移行(λmax:411、540、579nm)し、一酸化炭素を通気すると安定な一酸化炭素錯体(λmax:419、539、566nm)が得られた。
【0037】
例4
例2において、組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161L/L185N)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体の代わりに、組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161F/L185N)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体を用いた以外は、全く同様な方法に従って、酸素親和性(P50)及び酸素結合解離速度定数(kon、koff)を算出した。その結果、酸素の結合反応には二成分存在することがわかり、ヘムポケット内における鉄(II)プロトポルフィリンの配向構造が二つ存在する(I型とII型)ことが明らかとなった。I型のP50は2.3Torr(22℃)で、Mbに比べて4.5倍高かった(酸素親和性は1/4.5低い)。
【0038】
例5
例1において、ヒト血清アルブミンの185ロイシンをアスパラギンに置換する代わりに182ロイシンをヒスチジンに置換した組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161L/L182H)を慣用の部位特異的突然変異誘発とピキア酵母を用いた慣用の培養法により産生した以外は、同様の手法に従い、組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161L/L182H)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体を調製した。この水溶液の紫外可視吸収スペクトルはλmax:426、532、557nmを示し、これがMbのデオキシ型のスペクトルパターンとよく類似したことから、Fe(II)5配位高スピン錯体の形成が明らかとなった。142ヒスチジンのイミダゾール基が軸塩基として中心鉄に配位しているものと考えられた。そこへ酸素を通気すると、直ちに酸素錯体型のスペクトルへ移行(λmax:412、540、576nm)し、一酸化炭素を通気すると安定な一酸化炭素錯体(λmax:419、539、565nm)が得られた。
【0039】
例6
例1において、ヒト血清アルブミンの185ロイシンをアスパラギンに置換する代わりに186アルギニンをヒスチジンに置換し、161チロシンをロイシンに置換する代わりにフェニルアラニンに置換した組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161F/R186H)を慣用の部位特異的突然変異誘発とピキア酵母を用いた慣用の培養法により産生した以外は、同様の手法に従い、組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161F/R186H)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体を調製した。この水溶液の紫外可視吸収スペクトルはλmax:426、533、558nmを示し、これがMbのデオキシ型のスペクトルパターンとよく類似したことから、Fe(II)5配位高スピン錯体の形成が明らかとなった。142ヒスチジンのイミダゾール基が軸塩基として中心鉄に配位しているものと考えられた。そこへ酸素を通気すると、直ちに酸素錯体型のスペクトルへ移行(λmax:411、541、577nm)し、一酸化炭素を通気すると安定な一酸化炭素錯体(λmax:419、538、566nm)が得られた。
【0040】
例7
例1において、ヒト血清アルブミンの161チロシンをロイシンに置換する代わりにバリンに置換し、185ロイシンをアスパラギンに置換する代わりに182ロイシンをアルギニンに置換した組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161V/L182R)を慣用の部位特異的突然変異誘発とピキア酵母を用いた慣用の培養法により産生した以外は、同様の手法に従い、組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161V/L182R)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体を調製した。この水溶液の紫外可視吸収スペクトルはλmax:427、534、557nmを示し、これがMbのデオキシ型のスペクトルパターンとよく類似したことから、Fe(II)5配位高スピン錯体の形成が明らかとなった。142ヒスチジンのイミダゾール基が軸塩基として中心鉄に配位しているものと考えられた。そこへ酸素を通気すると、直ちに酸素錯体型のスペクトルへ移行(λmax:411、540、576nm)し、一酸化炭素を通気すると安定な一酸化炭素錯体(λmax:419、537、565nm)が得られた。
【0041】
例8
例1において、ヒト血清アルブミンの142イソロイシンをヒスチジンに置換する代わりにリジンに置換し、161チロシンをロイシンに置換する代わりにアラニンに置換し、185ロイシンをアスパラギンに置換する代わりにヒスチジンに置換した組換えヒト血清アルブミン(I142K/Y161A/L185H)を慣用の部位特異的突然変異誘発とピキア酵母を用いた慣用の培養法により産生した以外は、同様の手法に従い、組換えヒト血清アルブミン(I142K/Y161A/L185H)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体を調製した。この水溶液の紫外可視吸収スペクトルはλmax:426、535、557nmを示し、これがMbのデオキシ型のスペクトルパターンとよく類似したことから、Fe(II)5配位高スピン錯体の形成が明らかとなった。185ヒスチジンのイミダゾール基が軸塩基として中心鉄に配位しているものと考えられた。そこへ酸素を通気すると、直ちに酸素錯体型のスペクトルへ移行(λmax:412、541、578nm)し、一酸化炭素を通気すると安定な一酸化炭素錯体(λmax:419、536、568nm)が得られた。
【0042】
例9
例1において合成された(I142H/Y161L/L185N)−鉄(III)プロトポルフィリン錯体(アルブミン濃度:0.1wt%)のリン酸緩衝水溶液(pH7.0)にイミノチオラン(ピアスケミカル製、イミノチオラン/アルブミン:20(モル/モル))を加え、室温でゆっくりと4時間攪拌した。続いてアルブミンに対して小過剰モルの片末端マレイミド片末端メチル−ポリオエチレングリコール(サンブライトメマール50−H、Mw:5,000、日本油脂製)を添加し、同条件で2時間反応させた。得られた混合物を限外濾過装置(アドバンテック製、UHP−76K、限外分子量膜:5kDa)を用い、1Lのリン酸緩衝水溶液で濃縮・洗浄を繰り返し、所望の濃度に調整した。得られた赤色の表面修飾組換えヒト血清アルブミン−鉄(III)ポルフィリン錯体水溶液を0.45μmの除菌フィルター(アドバンテック製、DISMIC 25CS045AS)を通過させて最終調整した。
【0043】
得られた表面修飾組換えヒト血清アルブミン−鉄(III)ポルフィリン錯体のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法−質量分析(MALDI−TOFMS)(島津製作所製、KRATOS AXIMA−CFR)により、分子量を測定したところ、アルブミン表面に結合したポリエチレングリコール鎖の本数は平均6本であることがわかった。
【0044】
この水溶液をアルゴンで十分に置換して脱酸素した後、亜ニチオン酸ナトリウム水溶液を添加して、中心鉄を鉄(II)に還元、表面修飾組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161L/L185N)−鉄(II)プロトポルフィリン錯体を調製した。この水溶液の紫外可視吸収スペクトルはλmax:425、532、559nmを示し、これがMbのデオキシ型のスペクトルパターンとよく類似したことから、Fe(II)5配位高スピン錯体の形成が明らかとなった。142ヒスチジンのイミダゾール基が軸塩基として中心鉄に配位し、デオキシ体が得られたものと考えられた。そこへ酸素を通気すると、直ちに酸素錯体型のスペクトルへ移行(λmax:412、537、576nm)し、一酸化炭素を通気すると安定な一酸化炭素錯体(λmax:419、536、564nm)が得られた。
【0045】
例10
例1において、鉄(III)プロトポルフィリンの代わりに、鉄(III)デューテロポルフィリンを用いた以外は、同様の手法に従い、組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161L/L185N)−鉄(II)デューテロポルフィリン錯体を調製した。この水溶液の紫外可視吸収スペクトルはλmax:413、517、546nmを示し、これはMbのデオキシ型のスペクトルパターンとよく類似したことから、Fe(II)5配位高スピン錯体の形成が明らかとなった。142ヒスチジンのイミダゾール基が軸塩基として中心鉄に配位し、デオキシ体が得られたものと考えられた。そこへ酸素を通気すると、直ちに酸素錯体型のスペクトルへ移行(λmax:401、528、563nm)し、一酸化炭素を通気すると安定な一酸化炭素錯体(λmax:409、528、556nm)が得られた。
【0046】
例11
例1において、鉄(III)プロトポルフィリンの代わりに、コバルト(II)プロトポルフィリンを用いた以外は、同様の手法に従い、組換えヒト血清アルブミン(I142H/Y161L/L185N)−コバルト(II)プロトポルフィリン錯体を調製した。この水溶液の紫外可視吸収スペクトルはλmax:406、558nmを示し、これはコバルトMbのデオキシ型のスペクトルパターンとよく類似したことから、Co(II)5配位高スピン錯体の形成が明らかとなった。142ヒスチジンのイミダゾール基が軸塩基として中心鉄に配位し、デオキシ体が得られたものと考えられた。そこへ酸素を通気すると、直ちに酸素錯体型のスペクトルへ移行した(λmax:426、539、578nm)。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】例1で得た種々の形態にある組換えヒト血清アルブミン−鉄プロトポルフィリン錯体の紫外可視吸収スペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト血清アルブミンのヘム結合サイトであるサブドメインIBにおいて、金属ポルフィリンと配位結合するヒスチジンが遺伝子組換え技術により、前記アルブミンの142イソロイシン、185ロイシン、138チロシン、115ロイシンまたは139ロイシンを置換して導入され、またその導入位置とは別の位置に鍵アミノ酸が遺伝子組換え技術により少なくとも一つ導入され、さらに161チロシンがチロシン以外の疎水性アミノ酸で置換された組換えヒト血清アルブミンに、金属ポルフィリンを配位結合させた組換えヒト血清アルブミン−ポルフィリン金属錯体。
【請求項2】
前記鍵アミノ酸が、極性アミノ酸であることを特徴とする請求項1に記載の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体。
【請求項3】
前記金属ポルフィリンが、金属プロトポルフィリン、金属デューテロポルフィリン、金属ジアセチルデューテロポルフィリン、金属メソポルフィリン、金属ジホルミルポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンおよび金属オクタエチルポルフィリンからなる群の中から選ばれる少なくとも1種の金属ポルフィリンであることを特徴とする請求項1または2に記載の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体。
【請求項4】
前記組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体の分子表面に、ポリエチレングリコール基が共有結合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体。
【請求項5】
前記金属が、鉄またはコバルトであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体。
【請求項6】
前記金属が、鉄(II)またはコバルト(II)であることを特徴とする請求項5に記載の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体。
【請求項7】
請求項6に記載の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体を含有する人工酸素運搬体。
【請求項8】
請求項6に記載の組換えヒト血清アルブミン−金属ポルフィリン錯体を含有する赤血球代替物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−302569(P2007−302569A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129471(P2006−129471)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000218719)
【Fターム(参考)】