組換え型アデノウイルスベクターの組織親和性を増大させるための方法および組成物
組換え型アデノウイルスに対して第2の繊維を提供する組換え細胞を使用することによって組換え型アデノウイルスの親和性を変更することを含む、組換え型アデノウイルスの組織親和性を増加するための、方法、組成物、および使用法を提供する。アデノウイルスを含む組換え型アデノウイルスベクターであって、該アデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含み、該アデノウイルスに対して異種である第2の繊維遺伝子をさらに含み、該第2の繊維遺伝子が、該第2の繊維遺伝子を安定して発現する細胞株中で該組換え型アデノウイルスを増殖させることにより該組換え型アデノウイルスによって取得される、組換え型アデノウイルスベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、組換え型アデノウイルスの組織親和性(tissue tropism)を増大させるための方法および組成物であって、組換え型アデノウイルスに第2の繊維を提供する組換え細胞を使用し、それによって組換え型アデノウイルスの親和性を変更することを含む方法および組成物に関する。本発明はまた、親和性が変更された組換え型アデノウイルスを製造および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
アデノウイルスは、腸感染症または呼吸感染症をヒト並びに家畜および実験用動物に生じる。アデノウイルス繊維タンパク質は、感受性の宿主細胞中への侵入を促進する特異的細胞受容体と相互作用することによって、ウイルスの付着に必須の役割を果たす。したがって、繊維タンパク質は、特定のアデノウイルスの特異的な組織親和性を決定する(非特許文献1)。したがって、この繊維は、標的細胞に対するビリオンの付着において、最も重要なウイルス表面分子であると考えられる。
【0003】
この標的化特性を活かすため、特定のヒトアデノウイルスによって保有される繊維タンパク質を変更しようと、いくつかの方法が使用されてきた。アデノウイルス粒子を異なる細胞型に再標的化するため、いくつかのアプローチが行われてきており、例えば、組換え型アデノウイルスの改変した繊維構造とともに使用すること(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)、単鎖抗体(scFv)(非特許文献5;非特許文献6)、キメラ繊維タンパク質(非特許文献7;非特許文献8)、および血清型が異なる繊維タンパク質の交換(非特許文献9)が挙げられる。これらのアプローチは、外来遺伝子をウイルスゲノム内に組み込むために、既に制限されている使用可能な空間を減少させるアデノウイルスゲノムの遺伝子操作、あるいは、二重特異性結合体とアデノウイルス粒子との複合体化のいずれかを必要とする。
【0004】
非特許文献10は、異なるアプローチを使用して、ヒトアデノウイルス血清型5(HAdV5)の繊維タンパク質を安定して発現する細胞株を構築した。HAdV3をこの細胞株を通して継代した後、ウイルス粒子は、血清型5の繊維タンパク質を含んでいた。この細胞株中における繊維欠損変異体HAdVの増殖は、繊維陽性ヒトアデノウイルスの生成を可能にした。
【0005】
さらに、多数の調節遺伝子が欠失されたアデノウイルスベクターの補完を可能にする遺伝子を発現する細胞株も報告されている(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chroboczek,J.,Ruigrok,R.W.H.,and Cusack,S.(1995).Adenovirus fibre.Curr Top Microbiol Immunol 199,163−200.
【非特許文献2】Wickham,T.J.,Tzeng,E.,Shears II,L.L.,Roelvink,P.W.,Li,Y.,Lee,G.M.,Brough,D.E.,Lizonova,A.,and Kovesdi,I.(1997).Increased in vitro and in vivo gene transfer by adenovirus vectors containing chimeric fibre proteins.J Virol 71,8221−8229.
【非特許文献3】Dmitriev,L,Krasnykh,V.,Miller,CR.,Wang,M.,Kashentseva,E.,Mikheeva,G.,Belousova,N.,and Curiel,D.T.(1998).An adenovirus vector with genetically modified fibres demonstrates expanded tropism via utilization of a coxsackievirus and adenovirus receptor−independent cell entry mechanism.J Virol 72,9706−13.
【非特許文献4】Wirtz,S.,Galle,P.R.,and Neurath,M.F.(1999).Efficient gene delivery to the inflamed colon by local administration of recombinant adenoviruses with normal or modified fibre structure.Gut 44,800−807.
【非特許文献5】Watkins,SJ.,Mesyanzhinov,V.V.,Kurochkina,L.P.,and Hawkins,R.E.(1997).The ’adenobody’ approach to viral targeting: specific and enhanced adenoviral gene delivery.Gene Ther 4,1004−1012.
【非特許文献6】Douglas,J.T.,Miller,C.R.,Kim,M.,Dmitriev,I,Mikheeva,G.,Krashnykh,V.,and Curiel,D.T.(1999).A system for the propagation of adenoviral vectors with genetically modified receptor specificities.Nat Biotechnol 17,470−475.
【非特許文献7】Krashnykh,V.N.,Mikheeva,G.V.,Douglas,J.T.,and Curiel,D.T.(1996).Generation of recombinant adenovirus vectors with modified fibres for altering viral tropism.J Virol 70,6839−6846.
【非特許文献8】Stevenson,S.C.,Rollence,M.,Marshall−Neff,J.,and McClelland,A.(1997).Selective targeting of human cells by a chimeric adenovirus vector containing a modified fibre protein.J Virol 71,4782−90.
【非特許文献9】Gall,J.,Kass−Eisler,A.,Leinwand,L.,and Falck−Pedersen,E.(1996).Adenovirus type 5 and 7 capsid chimera: fibre replacement alters receptor tropism without affecting primary immune neutralization epitopes.J Virol 70,2116−2123.
【非特許文献10】von Seggern,D.J.,Kehler,J.,Endo,R.I.,and Nemerow,G.R.(1998).Complementation of a fibre mutant adenovirus by packaging cell lines stably expressing the adenovirus type 5 fibre protein.J Gen Virol 79,1461−1468.
【非特許文献11】Wang,Q.,Jia,X.C.,and Finer,M.H.(1995).A packaging cell line for propagation of recombinant adenovirus vectors containing two lethal gene−region deletions.Gene Ther 2,775−783.
【非特許文献12】Amalfitano,A.,Begy,C.R.,and Chamberlain,J.S.(1996).Improved adenovirus packaging cell lines to support the growth of replication−defective gene−delivery vectors.Proc Natl Acad Sci 93,3352−3356.
【非特許文献13】Amalfitano,A.,and Chamberlain,J.S.(1997).Isolation and characterization of packaging cell lines that coexpress the adenovirus E1,DNA polymerase,and preterminal proteins: implications for gene therapy.Gene Ther 4,258−263.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、繊維を対象とした標的化に関してこれまでに公開されたすべての研究は、アデノウイルスをある特異的な標的組織型から別の特異的な標的組織に再度指向させ、場合により、アデノウイルスが付着可能な標的細胞を大いに制限することに焦点を合わせているように思われる。組換え型アデノウイルスが結合可能な動物中の標的組織型を広げるために、さらなる方法が依然として必要である。このような方法は、特定の抗原に対して生成される免疫応答または免疫調節分子の治療効果の量および/または質のいずれかを増大または上方調節するのに有用であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、第2の繊維遺伝子を組換え型アデノウイルスゲノム中に遺伝子挿入することを必要とせずに、第2の繊維の添加を組換え型アデノウイルスベクターに提供するために、繊維タンパク質を発現する細胞株を活用する。そのため、これらの細胞、およびこの細胞を使用する方法は、特定のアデノウイルスの特異的な組織親和性を増大させることを可能にする。さらに、第2遺伝子を組換え型アデノウイルス中に遺伝子挿入する必要がないという事実によって、ウイルスゲノム中でより大きな空間を外来遺伝子の挿入に使用することが可能になる。
【0009】
したがって、本発明は、一態様では、アデノウイルスを含む組換え型アデノウイルスベクターであって、アデノウイルスに固有の(native)繊維遺伝子を含み、アデノウイルスと異種の第2の繊維遺伝子をさらに含み、第2の繊維遺伝子が、第2の繊維遺伝子を安定して発現する細胞株中における組換え型アデノウイルスの増殖により組換え型アデノウイルスによって取得される、組換え型アデノウイルスベクターを提供する。アデノウイルスベクターは、任意のアデノウイルスベクターであってもよく、これにはブタ、ヒト、トリ、ウシ、ウマ、およびヒツジのアデノウイルスからなる群より選択されるアデノウイルスベクターが挙げられるが、これらだけに限らない。当業者は、多くのアデノウイルスの血清型があることを十分承知しており、本発明のアデノウイルスベクターが、任意の特定の血清型に限る必要はないことを理解すべきである。本発明は、特に、本発明の組換え型アデノウイルスベクターを含む組成物を意図する。このような組成物は、好ましくは、薬学的に許容可能な賦形剤または希釈剤を含む薬学的組成物である。
【0010】
特定の実施態様では、アデノウイルスは、組換え型ブタアデノウイルス血清型(PAdV−1)、組換え型PAdV−2、組換え型PAdV−3、組換え型PAdV−4、組換え型PAdV−5、組換え型PAdV−6、および組換え型PAdV−7からなる群より選択される組換え型ブタアデノウイルスであってよい。ブタアデノウイルス血清型PAdV−1〜PAdV−5は、当業者に周知であり、十分に特徴付けられている。PAdV−6およびPAdV−7も、Kadoiによって存在が示されており、特徴付けられている(Kadoi等、New Microbiol.,20:215−220、1997年;およびKadoi、New Microbiol.,20:89−91、1997年)。好ましい実施態様では、組換え型アデノウイルスベクターは組換え型PAdV−3である。
【0011】
他の実施態様では、アデノウイルスは、組換え型HAdV、組換え型ウシアデノウイルス(BAdV)、組換え型ヒツジアデノウイルス(OAdV)、組換え型マウスアデノウイルス(MAdV)、組換え型サルアデノウイルス(SAdV)、または組換え型イヌアデノウイルス(CAdV)である。
【0012】
本発明の特定の組換え型アデノウイルスベクターでは、第2の繊維タンパク質は、PAdV−1、PAdV−2、PAdV−3、PAdV−4、およびPAdV−5から選択される繊維タンパク質である。
【0013】
本発明の特定の態様では、組換え型アデノウイルスベクターは、第1の繊維タンパク質または第2の繊維タンパク質と異なる第3の繊維タンパク質をさらに含むアデノウイルスベクター(例えば、PAdVベースのベクター)である。
【0014】
好ましい態様では、組換え型ベクター中の第2の繊維タンパク質は、PAdV−4からの繊維タンパク質を含む。
【0015】
本発明の組換え型アデノウイルスベクターは、複製可能型であっても、または複製欠損型であってもよい。例えば、複製欠損ベクターは、PAdVゲノムの必須領域中に挿入された異種ヌクレオチド配列を含む組換え型PAdVであってもよく、そして繊維遺伝子を安定して発現する細胞株は、異種ヌクレオチド配列が挿入されたPAdVゲノムの必須領域も発現する。
【0016】
複製可能型である例示的な組換え型アデノウイルスベクターは、組換え型アデノウイルスが、アデノウイルスゲノムの非必須領域中に挿入された異種ヌクレオチド配列を含む、組換え型アデノウイルスベクターである。異種ヌクレオチド配列は、実施態様によっては、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質をコードする異種遺伝子であってもよい。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、ブタアデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含むアデノウイルスを含む宿主細胞であって、アデノウイルスと異種であってかつブタアデノウイルスによって感染され得る繊維遺伝子を発現する組換え細胞である宿主細胞に関する。この細胞は、哺乳類細胞であっても、またはトリ細胞であってもよい。例示的な哺乳類細胞としては、ブタ細胞、ヒト細胞、ウシ細胞、およびヒツジ細胞が挙げられるが、これらだけに限らない。特定の態様では、細胞は組換え型ブタ細胞である。
【0018】
本発明のさらに他の態様は、哺乳類被験体に免疫応答を誘発することが可能な組成物であって、本発明の組換え型アデノウイルスベクター、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物に関する。
【0019】
他の態様では、本発明は、哺乳類被験体において免疫応答を誘発し、このような組成物を哺乳類被験体に投与することを含む方法について説明する。たとえば、哺乳類被験体はブタである。
【0020】
本発明はまた、アデノウイルスを調製する方法であって、細胞がアデノウイルスに感染するのに適する条件下で、アデノウイルス繊維遺伝子を発現する組換え型宿主細胞を培養することと、キャプシド形成に必須のアデノウイルス配列および異種タンパク質をコードする異種遺伝子を含む組換え型アデノウイルスベクターに細胞を接触させ、組換え型アデノウイルスが、宿主細胞中の繊維遺伝子とは異なる繊維遺伝子を含むことと;必要に応じてアデノウイルスを収集することとを包含する方法に関する。特定の実施態様では、異種タンパク質は、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質である。
【0021】
特定の実施態様では、この方法は、収集されたアデノウイルスベクターが、組換え型宿主細胞と接触されていないアデノウイルスベクターと比べて、より広範な組織特異性を含む方法である。
【0022】
さらに、上記の方法では、アデノウイルスベクターは、複製に必須でない1つ以上のアデノウイルスタンパク質の一部または全部が必要に応じて欠失されていてもよい。
【0023】
本発明はさらに、哺乳類宿主を感染から防御するためのワクチンであって、本発明の組換え型アデノウイルスベクター、および必要に応じて薬学的に許容可能な賦形剤を含むワクチンに関する。特定の実施態様では、非必須領域は、ブタアデノウイルスゲノムの、E3領域、E4のORF1−2および4−7、E4の末端とITRとの間の領域からなる群より選択される。
【0024】
また、本明細書では、アデノウイルス繊維遺伝子を発現する宿主細胞、および発現制御配列の制御下で異種タンパク質をコードする核酸を含む組換え型アデノウイルスベクターを含む組成物であって、組換え型アデノウイルスベクターがこのベクターのアデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含む組成物が記載される。好ましい態様では、宿主細胞を、組換え型ブタアデノウイルスベクターに感染させた。
【0025】
本発明は、たとえば、動物にワクチンを接種する方法などの処置方法であって、治療上有効な量の本明細書に記載するワクチンを動物に投与することを包含する方法にさらに関する。
【0026】
本発明のその他の方法は、組換え型アデノウイルスベクターの宿主組織細胞の特異性を増大させることに関しており、この方法は組換え型アデノウイルスの繊維タンパク質とは異なる第2の繊維タンパク質を含む宿主細胞中で組換え型アデノウイルスを増殖させることを包含する。このような方法では、組み換え型アデノウイルスベクターは、組換え型PAdV−1、組換え型PAdV−2、組換え型PAdV−3、組換え型PAdV−4、および組換え型PAdV−5から選択される組換え型PAdVであってもよい。好ましくは、第2の繊維タンパク質は、PAdV−1、PAdV−2、PAdV−3、PAdV−4、およびPAdV−5から選択される繊維タンパク質である。本発明の方法では、組換え型PAdVは、第1の繊維タンパク質または第2の繊維タンパク質とは異なる第3の繊維タンパク質をさらに含んでもよい。
【0027】
組換え型アデノウイルスベクターの宿主組織細胞の特異性を増大させる好ましい方法では、使用される組換え型PAdVは組換え型PAdV−3である。特定の実施態様では、このような組換え型PAdV−3は、PAdV−4由来の繊維タンパク質を含む。これらの方法では、組換え型PAdVは複製可能型であっても、または複製欠損型であってもよい。特定の好ましい実施態様では、組換え型PAdVは、PAdVゲノムの非必須領域に挿入された異種ヌクレオチド配列を含む。例示的な実施態様では、異種ヌクレオチド配列は、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質をコードする遺伝子である。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施態様を示すが、単に具体的に説明するためのものであることを理解すべきである。なぜなら、つまり、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および改変は、当業者にとって、この詳細な説明から明らかになるからである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下の図面は、本発明の明細書の一部を構成し、本発明の態様をさらに具体的に示すために含まれる。本発明は、本明細書に提示する具体的な実施態様の詳細な説明と組み合わせてこの図面を参照することによって、より良く理解され得る。
【図1】PAdV−4繊維遺伝子を含むプラスミドの構成。a)PAdV−4繊維遺伝子は、PCRによってPAdV−4 DNAから増幅され、pGEM−T(Promega)にクローニングされて、プラスミドPJJ392を生じた。b)PAdV−4繊維遺伝子を含むpJJ392由来のBamHI/BglIIフラグメントは、前初期プロモーター−エンハンサー(CMV)プロモーターおよびPAV−3 TPL配列の直前のヒトサイトメガロウイルスの下流で、プラスミドpCI−PAdV−3トリパータイト(tripertite)リーダー(TPL)のBamHI部位に挿入され、pJJ741を生じた。c)移入ベクターpJJ743は、PAdV−3TPLおよびPAdV−4繊維遺伝子を含むpJJ741のNheI/NotIフラグメントをpCI−neo(Promega)に挿入することによって構築した。
【図2】細胞株中のPAdV−4繊維DNAのPCR検出。トランスフェクトした細胞からのゲノムDNAを精製して、PCRによってPAdV−4繊維遺伝子の存在を試験した。a)レーン1=PK15クローン8、レーン2=PK15クローン9、レーン3=pJJ743対照、M=1Kb DNAラダー。b)レーン1〜5=STクローン2〜6、レーン6は非トランスフェクトST DNA、レーン7はPADV−4 DNA、レーン8はpJJ743対照。c)レーン9〜15=STクローン7〜14、M=1Kb DNAラダー。
【図3】細胞株からのPAdV−4繊維mRNAの逆転写PCR(RT−PCR)検出。トランスフェクトされた細胞から総RNAを調製し、PCRによってPAdV−4繊維遺伝子が陽性のクローンを、RT−PCRによってPAdV−4繊維mRNAの合成に関して試験した。a)レーン1=PK15クローン8、レーン2=PK15クローン9、M=1Kb DNAラダー。b)レーン1〜6=STクローン2、3、5、6、7および8、M=1Kb DNAラダー。
【図4】PAdV−3およびPAdV−4の繊維タンパク質の完全アミノ酸配列、およびペプチドの位置。ウサギの抗血清を生成するために使用される共通ペプチドおよび特異的ペプチドの配列は、太字および下線で強調表示されている(Reddy等、1995年;Kleiboeker、1995年)。
【図5】改変したワクチンにおけるPAdV−3およびPAdV−4の繊維の実証。組換え型PAdV−糖タンパク質55(gp55)は、PK15A細胞(未改変)またはPK743細胞(改変)中で増やした。複製ウイルスサンプル中に存在するタンパク質を、SDS/PAGEにより分離して、ニトロセルロース上にブロットして、共通繊維ペプチドに対して産生されたウサギ抗体(パネルa)、またはPAdV−4の特異的な繊維ペプチドに対して産生されたウサギ抗体(パネルb)のいずれかで染色した。レーン1=非改変ウイルス、レーン2=改変ウイルス。広範囲の分子量マーカー、繊維タンパク質の位置およびおおよその分子量を示す。
【図6】チャレンジ後のブタの体温。0日目にブタにワクチンを接種し、22日目にブースター用量を投与した。49日目にブタに古典的ブタコレラウイルス(CSFV)を使ってチャレンジした。各々のブタの直腸温度を、毎日、CSFVチャレンジ後に測定した。ブタの各々の群の平均温度および標準誤差バーを示す。◆=非改変rPAdV−gp55s/c、■=改変rPAdV−gp55s/c、▲=改変rPAdV−gp55経口、□=対照、+=安楽死させた。
【図7】ワクチン接種後のNPLA力価。0日目にブタにワクチンを接種し、22日目にブースター投与を与えた。49日目にブタにCSFVを使ってチャレンジした。0日目に全血サンプルを収集し、次に、1週間間隔でNPLA抗体の存在について血清をアッセイした。ワクチンを接種した群の平均NPLAの力価を示す。□=非改変rPAdV−gp55s/c、□=改変rPAdV−gp55s/c、■=改変rPAdV−gp55経口、↓=ワクチンを接種。
【図8】ワクチンを経口接種したブタにおけるCSFV特異的な中和抗体の発達。0日目にブタにワクチンを経口接種し、22日目に1回分のブースター投与を与えた。49日目に、CSFVを使ってブタにチャレンジした。0日目に全血サンプルを収集し、次いで1週間間隔でNPLA抗体の存在について血清をアッセイした。ワクチンを接種した群の平均NPLA力価を示す。□=非改変rPAdV−gp55*、ドット入り□=改変rPAdV−gp55。*=Hammond等、2003年における別個の実験データ。↓=ワクチン接種。
【図9】ワクチンを接種したブタにおけるCSFV特異的中和抗体の発達の比較。0日目にブタにワクチンを経口接種し、22日目に1回分のブースターの投与を与えた。49日目に、CSFVを使ってブタにチャレンジした。0日目に全血サンプルを収集し、次に、1週間間隔でNPLA抗体の存在について血清をアッセイした。ワクチンを接種した群の平均NPLA力価を示す。↓=ワクチン接種。s/c=非改変ワクチンを皮下投与、改変s/c=改変ワクチンを皮下投与、経口=非改変ワクチンを経口投与*、改変経口=改変ワクチンを経口投与。*=Hammond等、2003年における別個の実験データ。
【図10】ブタの脾臓におけるCSFV抗原の検出。死後後、脾臓サンプルを抗原捕捉ELISAによってCSFV抗原の存在について分析した。群の平均抗原力価を示す。陽性=陽性対照の脾臓サンプル、陰性=陰性対照の脾臓サンプル、+=安楽死させた。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の例示的な実施形態の詳細な説明)
本発明は、改良されたアデノウイルスベクターの知見および構築に関連する。本明細書に記載する方法および組成物は、ブタアデノウイルスベクターをモデルシステムとして使用して例示されるが、本発明の方法を、ブタ以外の宿主に感染する組換え型アデノウイルスベクターを調製する際の使用に容易に適応させることができることは、容易に明らかである。本発明の方法および組成物は、組換え型アデノウイルスベクターの親和性を変更し、それによって、このベクターが通常はベクターが感染しない組織を標的とするようにしてこのベクターの有用性を高めるために使用される。本発明では、第2の繊維遺伝子を、このような第2の繊維遺伝子を発現する細胞株中で、組換え型アデノウイルスベクターを増殖させることによって組換え型アデノウイルスに提供し、このような細胞株中の増殖が、組換え型アデノウイルスベクターの親和性の変化に関連する。組換え型アデノウイルスを繁殖させる細胞株中に含まれる第2の繊維は、細胞株中の繊維遺伝子が特異的である組織にアデノウイルスが感染することを可能にする。この知見を活用するための方法および組成物が、本発明により意図されている。
【0031】
「アデノウイルスベクター」(adenovirus vector)という用語は、本明細書では、「アデノウイルスベクター」(adenoviral vector)と相互に交換可能に使用される。本明細書で使用するアデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクターによって送達されるべきタンパク質を発現させるためのポリヌクレオチド構築物を含む組換え型ベクターである。ポリヌクレオチド構築物は、好ましくは、送達されるべきタンパク質をコードするDNAを含む。このようなDNAは、ヌクレオチド塩基A、T、C、およびGからなってもよいが、このような塩基の任意のアナログおよび修飾型を含んでもよい。このようなアナログおよび修飾塩基は、当業者には周知であり、メチル化ヌクレオチド、ヌクレオチド間修飾(たとえば、非荷電性結合およびチオエート)、糖アナログの使用、並びに修飾されたかおよび/または代替的な骨格の構築物(たとえば、ポリアミド)が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0032】
本明細書で使用されるアデノウイルスベクターは、標的細胞中で複製可能型であっても、または複製欠損型であってもよい。ベクターが、複製欠損である場合、ベクターは、複製を促進するために、ヘルパー細胞またはヘルパーウイルスを使用することを必要とし得る。ヘルパー細胞またはヘルパーウイルスを使用して、複製欠損型アデノウイルスベクターの複製を促進することは慣用的であり、当該分野で周知である。一般に、このようなヘルパー細胞は、複製欠損型にするために組換え型アデノウイルスベクターがノックアウトされている実体の機能を提供する。一方、複製可能型ベクターは、ベクター中で欠陥のある何かを供給するために、第2のウイルスまたは細胞株のいずれをも必要としないという点で、「ヘルパーなしのウイルスベクター(helper−free virus vector)」と呼ばれ得る。
【0033】
上記のとおり、本発明は、所定のアデノウイルスベクターの親和性を変更させる、すなわちアデノウイルスの特異性を変更するために使用される。「改変された親和性(altered tropism)」という用語は、種の特異性の変更、およびアデノウイルスの組織または細胞の特異性の変更を包含する。本発明の例示的な実施態様では、アデノウイルスベクターの特異性は、ベクターに第2の繊維タンパク質を提供することによって変更される。アデノウイルスベクターに2つの繊維タンパク質が存在することによって、アデノウイルスベクターの親和性の所望の変更が達成される。
【0034】
A.繊維遺伝子
本発明は、これらのベクターの親和性を変更するために、組換え型アデノウイルスに第2の繊維を提供する。好ましい実施態様では、本発明の方法は、組換え型ブタアデノウイルスベクターの親和性を変更することを包含する。PAdV感染症は、脳炎、肺炎、腎臓障害および下痢と関連付けられた。(Derbyshire(1992年)In:「Diseases of Swine」(編集者Leman等),第7版,Iowa State University Press、Ames,Iowa.225〜227ページ)。さらに、PAdVは、感染した子豚の腸における体液性応答および粘膜抗体応答の両方を刺激することができる。Tuboly等(1993年)Res.in Vet.Sci.54:345〜350ページ。記載されている少なくとも5つのPAdV血清型がある(PAdV−1、PAdV−2、PAdV−3、PAdV−4、PAdV−5;Derbyshire等(1975年)J.Comp.Pathol.85:437〜443ページ;およびHirahara等(1990年)Jpn.J.Vet.Sci.52:407〜409ページ)。これらの血清型の各々は、たとえばブタ用のワクチン製造に使用される組換え型アデノウイルスベクターを調製するために、容易に使用することができる。PAdV−3の配列全体はクローニングされた(Reddy等、1998年;米国特許第6,492,343号、引用することにより本明細書に援用する)。さらに、制限マッピングを使用し、制限フラグメントをクローニングすることで、PAdDV−3並びにPAdV−1およびPAdV−2のゲノムの広範囲にわたる特徴付けが行われている。Reddy等(1993年)Intervirology 36:161−168;Reddy等(1995b)Arch.Virol.140:195〜200ページを参照。
【0035】
様々なPAdV血清型の様々なセグメントのヌクレオチド配列が、当業者に周知である。たとえば、PAdV−3のE3、pVIIIおよび繊維の遺伝子は、Reddy等(1995年)Virus Res.36:97〜106ページに示される。PAdV−1およびPAdV−2のE3、pVIIIおよび繊維の遺伝子は、Reddy等(1996年)Virus Res. 43:99〜109に示される。Kleibockerは、PAdV−4のE3、pVIIIおよび繊維の遺伝子配列の配列を提供する(Kleiboeker 1994年 Virus Res.31:17〜25ページ)。PAdV−4繊維遺伝子配列は、Kleiboeker(1995年)Virus Res.39:299〜309によって決定された。PAdV−1、PAdV−2、PAdV−3、PAdV−4、およびPAdV−5の各々の逆方向末端反復配列も、当該分野で公知である(Reddy等(1995年)Virology212:237〜239ページ)。PAdV−3 ペントンの配列は、McCoy等(1996年)Arch.Virol.141:1367〜1375によって決定された。PAdV−4のE1領域のヌクレオチド配列は、Kleiboeker(1995年)Virus Res.36:259〜268ページに示された。PAdV−3のプロテアーゼ(23K)遺伝子の配列は、McCoy等(1996年)DNA Seq.6:251〜254ページによって決定された。PAdV−3ヘキソン遺伝子(および23Kプロテアーゼ遺伝子の14個のN末端コドン)の配列は、登録番号U34592でGenBankのデータベースに寄託されている。PAdV−3 100K遺伝子の配列は、登録番号U82628でGenBankデータベースに寄託されている。PAdV−3 E4領域の配列は、当該分野で公知である(Reddy等(1997年)Virus Genes 15:87〜90ページ)参照。Vrati等(1995年、Virology,209:400〜408ページ)は、OAdVの配列を開示している。PAdV−5の繊維およびHNF−61 pVIII、ORF2、ORF3、ORF4の配列は、GenBank登録番号AF186621に示される。PAdV−5の完全ゲノム配列は、GenBank登録番号AC_000009 BK000411に示され、そこでは、繊維遺伝子は、Genbank登録番号AP_000254に割り当てられており、26487..27989の間にあることが示されている。ブタアデノウイルスCの完全な配列は、GenBank登録番号NC_002702にあり、ここでは、繊維遺伝子は、26487..27989間にあり、GenBank登録番号NP_108675.1を割り当てられていると示されている。PAdV−4の繊維配列は、Genbank登録番号U25120に示される。
【0036】
ヒトアデノウイルスHAdV−3、HAdV−4、HAdV−5、HAdV−9およびHAdV−35は全て、当該分野で十分に特徴付けられ、American Tissue Culture Collection ATCCから入手可能である。Ad5のNational Center for Biotechnology InformationのGenBank登録番号は、M73260/M29978であり;Ad9に関してはX74659であり;そしてAd35に関してはU10272である。Chow等(1977年、Cell 12:1〜8ページ)は、ヒトアデノウイルス2の配列を開示しており;Davison等(1993年、J.Mole.Biol.234:1308〜1316ページ)は、HAdV−40のDNA配列を開示しており;Sprengel等(1994年、J.Virol.68:379〜389ページ)は、HAdV−12 DNAのDNA配列を開示しており;Vrati等(1995年、Virology,209:400〜408)は、OAdVの配列を開示しており;Morrison等(1997年、J.Gen.Virol.78:873〜878ページ)は、CAdV−1のDNA配列を開示しており;Reddy等(1998年、Virology,251:414)は、PAdVのDNA配列を開示している。様々なヒトアデノウイルスの繊維配列は、登録番号Y14241(HAdV−28繊維遺伝子)、Y14241(HAdV−17繊維遺伝子)としてGenBankから入手可能である;HAdV−17の完全ゲノム配列は完全ゲノムに示されており、AC_000006 BK000406にあり、ここで繊維CDSは30935..32035間にあり、Genbank登録番号AP_000157.1が割り当てられている;X76706(HAdV−15H9(Morrison)繊維遺伝子)、X76548(繊維タンパク質のHAdV−31遺伝子);AB125751(HAdV−6繊維遺伝子の完全cds)、AB125750(HAdV−1繊維遺伝子の完全cds)、AB073168(HAdV−34繊維遺伝子の完全cds);Genbank登録番号S75136は、HAdV−8の繊維遺伝子の配列を示す。HAdV−3繊維遺伝子の部分配列は、GenBank登録番号AB 244095に寄託され、ヒトアデノウイルスの完全ゲノム配列は、GenBank登録番号DQ086466に割り当てられ、これは、繊維配列が、GenBank登録番号ABB17809.1が割り当てられた位置31368..32327に位置することを示している。HAdV−12の完全配列は、繊維遺伝子CDSが、GenBank登録番号AP_000135.1が割り当てられた位置29368..31131にあるAC_000005 BK000405に示される。ヒトアデノウイルス5の完全配列は、繊維CDSが、GenBank登録番号AP_000226.1が割り当てられた31042..32787にあるGenBank登録番号AC_000008に示される。ヒトアデノウイルス2の完全配列は、繊維cdsが、GenBank登録番号AP_000190.1が割り当てられた31030..32778にあるGenBank登録番号AC_000007 BK000407に示される。繊維タンパク質株:130HのHAdV−9遺伝子の配列は、GenBank登録番号AB098565に示される。別のHAdV−9繊維遺伝子配列は、GenBank登録番号X74659に位置する。HAdV−37の繊維遺伝子は、GenBank登録番号X94484に示される。HAdV−19の繊維遺伝子は、GenBank登録番号X94485に示される。HAdV−15の繊維遺伝子は、GenBank登録番号X72934に示される。HAdV−7(E3領域を伴う)の繊維遺伝子は、GenBank登録番号Z48954に示される。HAdV−4繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号X76547に示される。HAdV−31繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号X76548に示される。HAdV−8繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号X74660に示される。HAdV−3繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号X01998 M12411に示される。HAdV−21繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号AY380332に示される。HAdV−7繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号AY380326に示される。
【0037】
サルアデノウイルス1の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_006879に示され、ここでは繊維は、位置28731..29822に位置し、GenBank登録番号YP_213988.1を割り当てられ、繊維2変異体は、GenBank登録番号YP_213989.1を割り当てられる。サルアデノウイルスAの完全配列は、GenBank登録番号NC_006144が割り当てられ、繊維は29606..31246に位置し、GenBank登録番号YP_067930を割り当てられる。サルアデノウイルス25の完全ゲノム配列は、GenBank登録番号AF394196に示され、ここでは繊維cdsは32137..33414にあり、GenBank登録番号AAL35536.1を割り当てられる。
【0038】
Reddy等(1998年)Journal of Virology 72:1394)は、BAdV−3のヌクレオチド配列を開示している。この配列では、BAdV−3のペントン領域は12919で開始し、14367で終了し;ヘキソン領域は17809で開始し、20517で終了し;BAdV−3の繊維領域は27968で開始し、30898で終了する。繊維配列、およびウシアデノウイルス3型のpVIII遺伝子、初期領域3、および繊維タンパク質の配列は、登録番号D16839でGenBank登録番号に寄託されている。ウシアデノウイルスDの完全ゲノムは、NC_002685が与えられており、ここでは、繊維遺伝子は、22343..23950間に位置するとアノテーションされ、繊維遺伝子は、GenBank登録番号NP_077404.1において与えられる。同様に、ウシアデノウイルスAの完全ゲノムは、Genbank登録番号NC_006324に与えられており、ここでは、繊維は位置27483..29294に位置し、GenBank登録番号YP_094049.1に示される。ウシアデノウイルス4のTHT/62株の完全ゲノムは、GenBank登録番号AF036092に示され、ここで繊維遺伝子は位置22343..23950に位置し、GenBank番号AAK13185.1を割り当てられている。BAdV−3の完全配列は、GenBank登録番号AC_000002 BK000401に示され、ここでは、繊維cdsは27968..30898にあり、Genbank登録番号AP_000041.1を割り当てられている。BAdV−2繊維および17Kタンパク質の配列は、AF308811に示される。
【0039】
CAdV−1の完全ゲノム配列は、Genbank登録番号AC_000003 BK000402が与えられており、ここで繊維cdsは、位置25887..27518にあるとアノテーションされ、ここでタンパク質および関連コード配列は、Genbank登録番号AP_000069.1に寄託されている。CAdV−2のコード配列は、Genbank登録番号AC_000020 BK000403に示されており、ここでは繊維cdsは、位置26592..28220にあるとアノテーションされ、このタンパク質および関連コード配列は、GenBank登録番号AP_000632.1に寄託されている。GenBank登録番号Z37498は、CAdV−2繊維遺伝子の配列を示す。
【0040】
OAdV−7の完全ゲノム配列は、GenBank登録番号NC_004037に示されており、ここでは、繊維cdsは、位置22273..23904にあるとアノテーションされ、タンパク質および関連コード配列は、GenBank登録番号NP_659529.1に寄託されている。
【0041】
ネコアデノウイルスの繊維配列は、登録番号AY518270の下にGenBankに寄託されている。
【0042】
マウスアデノウイルスAの完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_000942に示されており、ここでは、繊維遺伝子cdsは25412..27253に位置し、GenBank登録番号NP_015554.1を割り当てられている。
【0043】
GenBank登録番号AC_000013 BK001451は、ニワトリアデノウイルス9の完全ゲノムを示し、ここでは、繊維CDSは、タンパク質とともに位置30161..31876にあるとあのテーションされており、このタンパク質および関連コード配列は、AP_000390.1に寄託されている。FAdV−10繊維配列は、GenBank登録番号AF007579に示される。ニワトリアデノウイルスDの完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_000899に示されており、ここでは、繊維遺伝子cdsは30161..31876に位置し、GenBank登録番号NP_050293.1を割り当てられている。ニワトリアデノウイルスAの完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_001720に示されており、ここでは、繊維遺伝子CDSは28363..30495に位置し、GenBank登録番号NP_043891.1を割り当てられている。シチメンチョウアデノウイルス3の完全ゲノムは、GenBank AC_000016 BK001454に示されており、ここでは、その繊維は、位置22518..23882にあるとアノテーションされ、GenBank登録番号AP_000495.1を割り当てられている。
【0044】
カエルアデノウイルスのゲノム配列は、GenBank登録番号NC_002501に与えられており、ここでは、その繊維cdsは位置22343..23632に位置し、GenBank登録番号NP_062452.1を割り当てられている。
【0045】
特定の例示的な実施態様では、本発明は、PAdV−4由来の繊維配列を使用する。PAdV−4の新規な繊維コード配列のヌクレオチド配列は、配列番号1に示される。PAdV−1由来の新規な繊維コード配列のヌクレオチド配列は、配列番号2に示される。PAdV−2由来の新規な繊維コード配列のヌクレオチド配列は、配列番号3に示される。
【0046】
上記の説明から容易に明らかなとおり、当業者は、多様なアデノウイルス型からの繊維遺伝子に関する多くのコード配列を認識している。本明細書の発明は、これらの繊維配列のうちの何れか1つの使用に限定されないことを理解すべきである。実際、本発明の方法および組成物は、上記の任意の繊維、これらの繊維の任意の改変体、およびアデノウイルスのその他の様々な株から同定される繊維を使用して実施することができる。当業者は、アデノウイルスのゲノム構成の知識、および上記の例示的な配列の知識から、このようなその他の繊維を簡単に同定することができる。この点に関して、米国特許出願公開第20020034519号(引用することにより、全体を本明細書に援用する)において、その図12〜17は、様々な繊維タンパク質(HAdV−5繊維タンパク質(その中の図12)、BAdV−3(その中の図13)、ヒツジアデノウイルス287繊維タンパク質(その中の図14);PAdV−3繊維タンパク質(その中の図15);CAdV−2繊維タンパク質(その中の図16);および図17A〜17Gを含む)は、多重整列プログラムのclustal法を使用して、哺乳類のアデノウイルス繊維領域のアミノ酸整列を示しているので、特に着目されることが留意される。
【0047】
本発明の例示的な実施態様では、組換え型アデノウイルスベクターの調製に使用される従来の方法により調製された組換え型アデノウイルスベクターは、組換え型アデノウイルス中に存在する繊維遺伝子とは異なる繊維遺伝子を発現する組換え細胞株である細胞株中で繁殖される。組換え型アデノウイルスは、好ましくは、その血清型に関連する繊維遺伝子を含むが(たとえば、組換え型アデノウイルスがPAdV−3ベースの組換え型アデノウイルスである場合、当該組換え型アデノウイルス中の繊維遺伝子は、固有のPAdV−3繊維遺伝子である)、本発明を使用して、固有の繊維遺伝子が改変された(たとえば、別のアデノウイルスの繊維と交換されたか、あるいは固有の野生型繊維遺伝子とは異なるように変異させた)組換え型アデノウイルスの親和性を変更することもまた可能であることを理解すべきである。
【0048】
本明細書で使用する場合、「繁殖する」という用語は、「複製する」と相互に交換可能に使用され、アデノウイルスベクターが、再生または増殖する能力を指す。これらの用語は、当該分野で十分に理解されている。本明細書で使用する場合、複製は、アデノウイルスタンパク質の生成を伴い、一般に、アデノウイルスベクターの再生産に関する。複製は、当該分野で標準的で、本明細書に記載するアッセイ、たとえばバーストアッセイまたはプラークアッセイを使用して測定することができる。「複製」および「繁殖」は、ウイルスの生成過程に直接的または間接的に関連する任意の活動を含み、たとえば、ウイルス遺伝子の発現;ウイルスのタンパク質、核酸、またはその他の成分および生成;完全なウイルス中へのウイルス成分のパッケージング;および細胞溶解が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0049】
例示的な実施態様では、第2の繊維タンパク質をコードするコードポリヌクレオチド配列の一部または全部は、このアデノウイルスベクターが繁殖される組換え型宿主細胞中で発現される。この宿主細胞中における組換え型アデノウイルスベクターの繁殖は、アデノウイルスの親和性を変える。本明細書に開示する特定の実施態様では、PAdV−4繊維遺伝子を発現する組換え細胞が調製される。例示的な実施態様では、PAdV−4繊維遺伝子を安定して発現する細胞株が生成された。PAdV−3繊維は、ウイルスがブタの腸内の細胞に付着するのを促進し、PAdV−4血清型繊維は、ブタの気道細胞への付着を可能とする。CSFV[Hammond等、2000年]のgp55遺伝子を発現する既存のブタアデノウイルス組換え型ベクターは、これらの細胞株中で増殖させることができ、結果として得られる先祖ウイルスは、固有のPAdV−3繊維および追加のPAdV−4繊維タンパク質の両方を含む。2つの異なる繊維タンパク質がウイルスキャプシド上に存在すると、ベクターの細胞親和性が広まる。したがって、ベクターが動物中のより多様な細胞型を標的とし、送達された外来遺伝子をより広範囲の宿主免疫応答に暴露することが可能になる。さらに、繊維遺伝子を欠失させて外来遺伝子を挿入するためのより多くの空間を提供するように設計されたPAdVベクターは、繊維タンパク質を発現する細胞株でこれらのベクターを継代することによって補完させることも可能である。このアプローチは、さらにDNAのパッケージング能を有する繊維陽性ウイルスの生成を可能にする。
【0050】
このような細胞株による組換え型PAdVの増殖は、ベクターの、宿主細胞の標的範囲を拡張することによってベクターの効力を増大させ、ベクター中に挿入可能な外来遺伝物質の量を増加し、その結果、いくつかの抗原、あるいは抗原およびサイトカインなどの免疫調節剤を1つのベクターに組み入れ、その後送達することを可能にすることが予想される。
【0051】
「宿主細胞」は、外因性DNA配列によって形質転換された細胞であるか、あるいは形質転換が可能な細胞である。本発明では、宿主細胞は、アデノウイルスベクターの複製を支援することが可能であって(つまり、アデノウイルスによる感染が可能であり、その内部でアデノウイルスが複製することを可能にする)、繊維タンパク質の全部または一部をコードする外因性DNA配列によって形質転換された宿主細胞である。細胞の「形質転換」は、外因性DNAを細胞中に導入することを含む。外因性DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み込まれる(共有結合される)かまたは組み込まれなくてもよいことが理解されるべきであるが、本発明では、細胞は、繊維コードポリヌクレオチドによって安定して形質転換される。安定して形質転換される細胞は、外因性DNAが染色体中に組み込まれており、その結果、染色体複製により該DNAが娘細胞によって遺伝する細胞である。哺乳類細胞では、この安定性は、細胞が外因性DNAを含む娘細胞の集団から成る細胞株またはクローンを確立する能力によって実証される。
【0052】
例示的な実施態様では、本発明は、安定して形質転換されたブタ細胞であって、PAdV−4繊維をコードする外因性DNAによって安定して形質転換されたブタ細胞の例を提供する。より詳細には、2つの例示的な連続(安定した)細胞株であるブタの腎臓15(PK15)およびブタの睾丸(ST)は、PAdV−4由来の繊維遺伝子を含み、発現するように操作された。これらの細胞株は、それぞれPK−743およびST−743と命名された。この繊維遺伝子は、両方の細胞株中にPAdV−4繊維のmRNAが存在することを実証することによって、発現が実証された。両方の繊維に共通のペプチドに対して産生されたウサギポリクローナル抗体、またはPAdV−4繊維に特異的なペプチドに対して産生されたウサギポリクローナル抗体のいずれかを使用するウェスタンブロット分析は、改変ウイルス中の両方の繊維の存在を明確に実証した。この細胞株は、感染研究に使用され、この研究では、PK15A(非改変対照)およびPK−743(改変)細胞を組換え型PAdV−3−gp55によって感染させ、細胞が80%の細胞病理効果を示した時に、子孫ウイルスを収集した。
【0053】
子孫ウイルスは、当業者に公知の標準的な技術を使用して分析することができる。たとえば、子孫ウイルスのタンパク質内容物のウェスタンブロット分析は、ビリオン中にPAdV−3およびPAdV−4の繊維タンパク質が両方存在することを実証した。PAdV−3繊維の予想分子量(45kD)のバンドは、両方のウイルス調製品に存在したが、PAdV−4繊維の予想分子量(77kD)のバンドは、改変ウイルスの調製品に特異的に検出された。
【0054】
本発明は、例示的なブタ宿主細胞を提供するが、その他の適切な宿主細胞は容易に調製することができ、宿主細胞中のアデノウイルスゲノムおよびアデノウイルス繊維間の組換えを支援する任意の細胞を含む。宿主細胞は、組換え型アデノウイルスゲノムを含むプラスミドでトランスフェクトされ、これらの宿主細胞中にウイルス粒子を生成する。真核細胞および哺乳類細胞株の増殖は、当業者に周知の手順である。
【0055】
上記のとおり、組換え型アデノウイルスベクターの調製は、当業者が十分に周知している技術を使用する。このような技術を使用して、1つ以上の異種ポリヌクレオチド配列は、アデノウイルスゲノムの1つ以上の領域中に挿入され、組換え型アデノウイルスベクターが生成される。これらのベクターの調製は、所定のアデノウイルスゲノムの挿入能力、および組換え型アデノウイルスベクターが、挿入された異種配列を発現する能力のみによって限定される。一般に、アデノウイルスゲノムは、組換え型アデノウイルスのサイズを野生型ゲノムの長さの約105%に増加させるとともに、ウイルス粒子中にパッケージングされることが可能な状態を保つ挿入物を受け入れることが可能である。挿入能力は、非必須領域を欠失させ、そして/またはたとえばE1の機能などの必須領域を欠失させることにより増やすことが可能であり、その機能は、E1の機能を提供するヘルパー細胞株のようなヘルパー細胞株によって提供することができる。実施態様によっては、タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドは、アデノウイルスのE3遺伝子領域に挿入される。その他の実施態様では、E3領域の非必須部分を欠失させており、タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドが、欠失によって生じた隙間に挿入される。組換え型アデノウイルスベクターが、PAdV−3ベースのアデノウイルスベクターであるいくつかの好ましい実施態様では、異種遺伝子は、PAdV−3 E3のポリアデニル化シグナルの後ろでかつPAdV−3繊維遺伝子のORFの開始点前に位置するPAdV−3ゲノムの領域内に挿入することができる。
【0056】
実施態様によっては、アデノウイルスが生成され、ここで、挿入、または欠失とその後の挿入がアデノウイルスのE1遺伝子領域にあり、次に、該ベクターが、E1機能を提供するヘルパー細胞株中で繁殖される。異種遺伝子が挿入され得るその他の領域としては、E4領域がある。組換え型アデノウイルスベクターが、PAdV−3ベースのベクターである場合、ORF3をコードする領域を除くE4領域全体を欠失させて、異種遺伝子のための空間を作ることができる。Li等(Virus Research 104(2004年)181〜190ページ)に示されているように、ゲノムの右側末端に位置するPAdV−3 E4領域は、左方向に転写され、7つの(p1〜p7)ORFをコードする潜在能力を有する。これらのうち、ORF p3のみが、複製に必須である。したがって、他のE4領域の残りの全部ではないにしても多くは、ウイルスを複製欠損型にすることなく容易に欠失させることができ、その結果、異種挿入物のためのより多くの空間が可能になる。
【0057】
本発明の一実施態様では、挿入は、たとえば、望ましい治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドなどを挿入することが望ましいアデノウイルスゲノムの領域を含むプラスミドを構築することによって達成することができる。プラスミドは、次に、プラスミドのアデノウイルス部分に認識配列を有する制限酵素によって消化され、そして異種ポリヌクレオチド配列は制限消化部位に挿入される。挿入された異種配列と共にアデノウイルスゲノムの一部分を含むプラスミドは、アデノウイルスゲノム、またはアデノウイルスゲノムを含む直鎖状プラスミドとともに、細菌細胞(たとえば、大腸菌など)に共形質転換(co−transform)される。プラスミド間の相同組換えは、挿入された異種配列を含む組換え型アデノウイルスゲノムを生成する。これらの実施態様では、アデノウイルスゲノムは、全長ゲノムであるか、あるいは本明細書に記載するように、1つ以上の欠失を含むことができる。
【0058】
たとえば、異種配列を挿入する部位を提供するか、あるいは別の部位に追加の挿入能力を提供するためのアデノウイルス配列の欠失は、当業者が十分に周知している方法で行うことができる。たとえば、プラスミド中にクローンされるアデノウイルス配列の場合、1つ以上の制限酵素による消化(アデノウイルス挿入物中に少なくとも1つの認識配列がある)、およびその後の連結は、場合によって、制限酵素認識部位間の配列の欠失を生じる。あるいは、アデノウイルス挿入物中の単一の制限酵素認識部位における消化、その後のエクソヌクレアーゼ処理、その後の連結は、該制限部位に隣接するアデノウイルス配列の欠失を生じる。上記のように構築され、1つ以上の欠失を含むアデノウイルスゲノムの1つ以上の部分を含むプラスミドは、アデノウイルスゲノム(全長または欠失された)、あるいは全長かまたは欠失されたかのいずれかのゲノムを含むプラスミドとともに、細菌細胞中に共トランスフェクトされ、相同組換えによって、1つ以上の特異的な部位に欠失を有する組換え型ゲノムを含むプラスミドを生成する。次に、この欠失を含むアデノウイルスビリオンは、哺乳類細胞(たとえば、ただしこれらだけに限らないが、安定して形質転換された、本明細書に記載する追加の繊維遺伝子を含む細胞)を、組換え型アデノウイルスゲノムを含むプラスミドでトランスフェクトすることによって獲得することが可能である。
【0059】
挿入部位は、アデノウイルス中の内因性プロモーターに隣接し、転写的に下流でよい。「内因性」のプロモーター、エンハンサー、または制御領域は、アデノウイルスの固有のものであるか、または、それに由来する。所定のプロモーターの下流の、挿入部位として使用可能な制限酵素認識配列は、挿入が望ましいアデノウイルスゲノムの配列の一部または全部の知識から、当業者が容易に決定することができる。あるいは、様々なインビトロ技術を利用して、制限酵素認識配列を特定の部位に挿入すること、あるいは制限酵素認識配列を含まない部位に異種配列を挿入することが可能である。このような方法としては、1つ以上の制限酵素認識配列を挿入するための、オリゴヌクレオチドが媒介するヘテロ二重鎖形成(たとえば、Zoller等(1982年)Nucleic Acids Res.10:6487−6500;Brennan等(1990年)Roux’s Arch.Dev.Biol.199:89〜96年;およびKunkel等(1987年)Meth.Enzymology154:367〜382ページ参照)、およびより長い配列を挿入するための、PCRによって媒介される方法が挙げられるが、これらだけに限らない。たとえば、Zheng等(1994年)Virus Research 31:163〜186ページ参照。
【0060】
内因性プロモーターの下流ではない部位に挿入される異種配列の発現も、真核細胞中で活性のある転写制御配列を、異種配列とともに提供することによって達成することができる。このような転写制御配列は、細胞プロモーター、たとえばウイルスプロモーター、たとえばヘルペスウイルス、アデノウイルス、およびパポーバウイルスのプロモーター、並びにレトロウイルスの長い末端反復(LTR)配列のDNAコピーを含むことができる。このような実施態様では、異種遺伝子は、異種遺伝子が、そような転写調節要素に作動可能に連結される発現構築物中に導入される。
【0061】
特定の例示的実施態様では、PAdV−4繊維遺伝子は、強力な構成的転写を実現するように、CMVプロモーターの制御下に配置された。ウイルスの感染の後期に生じるウイルスパッケージング時にも、繊維の生成を継続することが望ましい。ヒトアデノウイルスは、宿主細胞の翻訳開始因子を不活性化することによって、宿主細胞のタンパク質合成を遮断することが実証された(Zhang等、1994年)。したがって、後期ウイルスメッセージの効率的な翻訳は、PAdV−3 TPL配列を含むことによって維持されると予想された。TPLは、合計248個のヌクレオチド(nt)を有する3つのエキソンから構成され、これらは、後期ウイルスmRNAの5’末端にスプライスされる(Reddy等、1998年)。この配列は、比較的不規則な構造をmRNAの5’末端に提供して宿主細胞の開始複合体からの独立性を与えることによって機能すると考えられる(Dolph等、1988年;Dolph等、1990年)。組換え型繊維mRNAの継続的な翻訳を確保するために、PAdV−4繊維遺伝子は、pCI−TPL中のPAdV−3 TPL配列の下流に配置された。ルシフェラーゼを発現する構築物にHAdV 5 TPLを添加すると、感染していない細胞中でも、発現レベルが上昇することが報告されている(Sheay等、1993年)。
【0062】
異種遺伝子の発現を調節するために使用することが可能な制御配列は、たとえば、転写制御配列、プロモーター、エンハンサー、上流の制御ドメイン、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、翻訳制御配列、リボソーム結合部位、および翻訳終止配列であってよい。
【0063】
組換え型アデノウイルスベクターの調製は、プラスミドとしてのクローン化アデノウイルスゲノムの繁殖、およびプラスミドを含む細胞からの感染性ウイルスの回収を含むと理解すべきである。
【0064】
ウイルス核酸の存在は、当業者に公知の技術によって検出することができ、こうした技術としては、ハイブリダイゼーションアッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応、およびその他のタイプの増幅反応が挙げられるが、これらだけに限らない。同様に、タンパク質の検出方法は、当業者が十分に周知しており、様々なタイプの免疫アッセイ、ELISA、ウェスタンブロット、酵素アッセイ、免疫組織化学などが挙げられるが、これらだけに限らない。本発明のヌクレオチド配列を含む診断キットは、細胞破壊および核酸精製のための試薬、並びにハイブリッドの形成、選択、および検出のための緩衝剤および溶媒も含み得る。本発明のポリペプチドまたはアミノ酸配列を含む診断キットは、タンパク質の単離、ならびに免疫複合体の形成、単離、精製、および/または検出のための試薬も含み得る。
【0065】
本発明は、組換え型アデノウイルスベクターを改変させて、その親和性を変更する。これらのベクターは、好ましくは、様々な外来遺伝子またはヌクレオチド配列またはコード配列(原核性、および真核性)を標的細胞に送達するために使用される。このようなベクターは、広範な疾病に対する防御を提供するためのワクチンとして特に有用であり、多くのこのような遺伝子は、当該分野で既に公知である。ウイルスワクチンとしては、DNAワクチン(つまり、プラスミド、ベクター、または、DNAをブタ中に直接注入するための従来からあるその他の担体を使用したもの)、生ワクチン、改変生ワクチン、不活性化ワクチン、サブユニットワクチン、弱毒ワクチン、遺伝子操作されたワクチンなどが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0066】
アデノウイルス中に組み入れられる外因性(つまり、外来)ヌクレオチド配列は、1つ以上の目的の遺伝子、または遺伝子ではないが他の機能(好ましくは目的の治療上の機能)を持つ他のヌクレオチド配列からなることができる。本発明との関連で、目的のヌクレオチド配列または遺伝子は、アンチセンスRNA、ショートヘアピン型RNA、リボザイム、またはその後目的のタンパク質に翻訳されるmRNAをコードすることができる。このようなヌクレオチド配列または遺伝子は、ゲノムDNA、相補DNA(cDNA)、または混合型(少なくとも1つのイントロンが欠失しているミニ遺伝子)を含み得る。ヌクレオチド配列または遺伝子は、制御または治療機能、成熟タンパク質、成熟タンパク質の前駆体、特に、シグナルペプチドを含む前駆体、多様な起源の配列の融合から生じるキメラタンパク質、あるいは改良または改変された生物学的特性を呈する、天然タンパク質の変異体をコードすることができる。このような変異体は、天然タンパク質をコードする遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換、および/または付加、あるいは、たとえば転位(transposition)または逆位(inversion)など、天然タンパク質をコードする配列の任意のその他のタイプの変更によって取得し得る。
【0067】
ベクターによって送達される遺伝子は、遺伝子が宿主細胞中で発現するのに適する要素の制御下に配置され得る(DNA制御配列)。適切なDNA制御配列は、遺伝子をRNA(アンチセンスRNAまたはmRNA)に転写し、このmRNAをタンパク質に翻訳するために必要な要素のセットを意味すると理解される。たとえば、これらの要素は、少なくとも1つのプロモーターを含む。このプロモーターは、構成的プロモーターまたは調節可能なプロモーターでよく、真核性、原核性、またはウイルス源、さらにアデノウイルス源の任意の遺伝子から単離することができる。あるいは、プロモーターは、目的遺伝子の天然プロモーターでよい。一般的に述べるなら、本発明に使用されるプロモーターは、制御配列を含むように改変させてもよい。例示的なプロモーターは、遺伝子が所定の組織タイプを標的とすべき時に、組織に特異的なプロモーターを含み得る。使用し得るその他の従来のプロモーターとしては、たとえば、多くの細胞型で発現することを可能にする、HSV−1 TK(ヘルペスウイルス型1のチミジンキナーゼ)遺伝子プロモーター、アデノウイルスMLP(主要後期プロモーター)、RSV(ラウス肉腫ウイルス)LTR(長い末端反復)、CMV前初期プロモーター、SV−40前初期プロモーター、およびPGK(ホスホグリセレートキナーゼ)遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0068】
アデノウイルスベクターによって送達されるべき遺伝子は、任意の遺伝子でよく、サイトカイン、たとえばインターフェロンおよびインターロイキンをコードする遺伝子、;リンホカインをコードする遺伝子;たとえば、病原生物(ウイルス、細菌または寄生生物)、好ましくはHIVウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)によって認識される受容体などの膜受容体をコードする遺伝子などの膜受容体をコードする遺伝子;第VIII因子および第IX因子などの凝固因子をコードする遺伝子;ジストロフィンをコードする遺伝子;宿主細胞の免疫性を高めるための抗原性エピトープをコードする遺伝子;主要組織適合遺伝子複合体のクラスIおよびIIタンパク質をコードする遺伝子、並びにこれらの遺伝子の誘導因子であるタンパク質をコードする遺伝子;抗体をコードする遺伝子;イムノトキシンをコードする遺伝子;毒素をコードする遺伝子;増殖因子または成長ホルモンをコードする遺伝子;細胞受容体およびそのリガンドをコードする遺伝子;腫瘍抑制因子をコードする遺伝子;心血管疾患に関わる遺伝子であって、腫瘍遺伝子を含むがこれだけに限らない遺伝子;繊維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、および神経成長因子(NGF)を含むが、これらだけに限らない成長因子をコードする遺伝子;e−nos、腫瘍抑制遺伝子であって、Rb(網膜芽細胞腫)遺伝子を含むが、これだけに限らないもの;リポタンパク質リパーゼ;スーパーオキシドジムスターゼ(SOD);カタラーゼ;酸素およびフリーラジカルスカベンジャー;アポリポタンパク質;pai−1(プラスミノーゲン活性化阻害剤−1);細胞性酵素、または病原生物によって生成される酵素をコードする遺伝子;自殺遺伝子が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0069】
特定の好ましい実施態様では、本発明のワクチンは、動物の疾病の原因に対してブタにワクチンを接種するように調製される。たとえば、ワクチンは、仮性狂犬病ウイルス(PRV)gp50;伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)S遺伝子;ブタロタウイルスのVP7およびVP8遺伝子;ブタ呼吸および生殖症候群ウイルス(PRRS)、特にORF3、5および7の遺伝子;ブタ流行性下痢ウイルスの遺伝子;ブタコレラウイルスの遺伝子;ブタパルボウイルスの遺伝子;および口蹄疫ウイルスの遺伝子;ブタサーコウイルスに関連する遺伝子;並びにブタインフルエンザウイルスの遺伝子に関するものであり得る。代表的なウシ病原体抗原としては、ウシヘルペスウイルス1型、ウシ下痢ウイルス;ウシコロナウイルス;および口蹄疫ウイルスの遺伝子が挙げられる。代表的なヒト病原体抗原としては、HIVウイルス抗原および肝炎ウイルス抗原が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0070】
サイトカインおよび増殖因子、たとえば血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮細胞増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、プレイオトロフィン、血小板由来増殖因子、エリスロポエチン、幹細胞因子(SCF)、TNF−α;インターフェロン、たとえばインターフェロン−γ、インターフェロンβ、インターフェロン−α、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);ストロマ細胞由来因子−1、マクロファージコロニー刺激因子、RANTES、IGF−1、SDF−1、MIP1α、MCP−1およびMCP−2、エオタキシン、エオタキシン3、エオタキシン4、LKN1、MPIF−2およびLD78ベータ、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン、たとえばIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、TOLL様受容体およびリガンド、インテグリン受容体なども、本発明のベクターを使用して送達され得る。
【0071】
場合によっては、遺伝子全体をベクター中に組み入れることが望ましいかもしれないが、野生型の生物に見られるような完全配列ではなく、使用され得る遺伝子のヌクレオチド配列の一部分のみ(これらが防御免疫応答または特異的な生物学的効果を生成するのに十分な場合)を含むその他のベクターも構築されることができることを理解すべきである。遺伝子が多数のイントロンを含む場合、cDNAが好適であり得る。
【0072】
上記のとおり、遺伝子は、適切なプロモーターの制御下に挿入され得る。さらに、ベクターは、エンハンサー要素およびポリアデニル化配列も含み得る。哺乳類細胞における外来遺伝子の成功裏の発現および発現カセットの構築を提供するプロモーターおよびポリアデニル化配列は、当該分野、たとえば米国特許第5,151,267号で公知であり、この特許の開示は、引用することにより本明細書に援用される。
【0073】
「発現カセット」という用語は、細胞内で遺伝子または遺伝子配列を発現することが可能な、天然または組換え技術で生成される核酸分子を指す。発現カセットは、一般に、プロモーター(転写開始を可能にする)、および1つ以上のタンパク質またはRNAをコードする配列を含む。必要に応じて発現カセットは、転写エンハンサー、非コード配列、スプライシングシグナル、転写終止シグナル、およびポリアデニル化シグナルを含み得る。RNA発現カセットは、一般に、翻訳開始コドン(翻訳の開始を可能にする)、および1つ以上のタンパク質をコードする配列を含む。必要に応じて、発現カセットは、翻訳終止シグナル、ポリアデノシン配列、内部リボソーム進入部位(IRES)、および非コード配列を含み得る。必要に応じて、発現カセットは、タンパク質に翻訳されない、遺伝子または部分遺伝子配列を含み得る。この核酸は、標的細胞のDNAまたはRNAの配列に変化を生じさせることが可能である。これは、ハイブリダイゼーション、多重鎖核酸の形成、相同組換え、遺伝子のコンバージョン、RNA干渉、またはその他の未だ記述されていないメカニズムにより達成することができる。
【0074】
アデノウイルスベクターは、1種より多くの外来遺伝子を含み得る。本発明の方法は、ブタ、ヒト、ウシ、およびその他の哺乳類に感染する多様な疾病に対する防御を提供するために使用することができる。本発明の任意の組換え型抗原決定基または組換え型生ウイルスは、抗原決定基ワクチンまたは生ワクチンベクターに関して記載されている方法と実質的に同じ方法で処方および使用することができる。
【0075】
本発明の例示的な実施態様では、異種ヌクレオチド(本明細書では、異種核酸とも呼ぶ)が、タンパク質をコードするヌクレオチドであるが、異種ヌクレオチドは、実際上、細胞内に存在または転写することが望ましい配列を含む任意のポリヌクレオチドで良いと理解すべきである。したがって、ベクターは、たとえば、遺伝子の機能、転写、または翻訳の配列特異的な崩壊または抑制を引き起こす任意のポリヌクレオチドを送達するために使用され得る。このような異種ヌクレオチドは、siRNA、マイクロRNA、干渉RNAまたはRNAi、dsRNA、リボザイム、アンチセンスポリヌクレオチド、およびsiRNA、マイクロRNA、dsRNA、リボザイムまたはアンチセンス核酸をコードするDNA発現カセットからなる群より選択され得る。SiRNAは、一般に15〜50塩基対、好ましくは19〜25塩基対を含み、かつ細胞内で発現される標的遺伝子またはRNAと同一またはほぼ同一のヌクレオチド配列を有する、二本鎖構造を含む。siRNAは、2個のアニールしたポリヌクレオチド、またはヘアピン構造を形成する1個のポリヌクレオチドから構成され得る。マイクロRNA(mRNA)は、それぞれのmRNA標的の破壊または翻訳抑制を導く約22ヌクレオチド長の小さい非コードポリヌクレオチドである。アンチセンスポリヌクレオチドは、遺伝子またはmRNAに対して相補的な配列を含む。アンチセンスポリヌクレオチドとしては、モルホリン、2’−O−メチルポリヌクレオチド、DNA、RNAなどが挙げられるが、これらだけに限らない。このような異種ヌクレオチド配列は、インビトロで重合させるか、組換え体であるか、キメラ配列を含むか、あるいは、これらの基の誘導体でよい。これらの配列は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、合成ヌクレオチド、あるいは標的RNAおよび/または遺伝子が抑制されるような任意の適切な組合せを含み得る。
【0076】
例示的な実施態様では、改変rPAdV−gp55をPK15−743細胞中で増殖させたか、あるいはrPAdV−gp55を非改変PK15A細胞中で増殖させた。次に、これは、市販の大型白色ブタに対し、皮下または経口経路で投与された。改変ワクチンは、皮下注射または経口経路によって投与した時に、CSFVによる致命的なチャレンジからブタを完全に防御した。さらに、皮下経路によって与えられた改変ワクチンは、非改変ワクチン群で検出されたレベルより高い最高レベルのNPLA抗体を生成した。従来の研究では、非改変ワクチンを経口経路で投与すると、チャレンジ以前に、1回分の用量のブースターの後でも、NPLA抗体の力価は検出できないことが実証された[Hammond等、2001年;Hammond等、2003年]。しかし、経口群では、1回の用量の改変ワクチンの後、非常に著しいレベルのNPLA抗体が検出され、これらのレベルは、2回目の用量の投与によって増進された。これは、PAdV−3およびPAdV−4の繊維タンパク質の両方を含む改変ワクチンが、非改変ワクチンと比べて、ブタ内のより多様な組織へと標的化され、その結果、宿主中でより広範囲の免疫応答を生成していることを実証する。
【0077】
本明細書では、本発明の方法に従って調製された治療上有効な量の組換え型アデノウイルスベクター、組換え型アデノウイルス、または組換え型タンパク質を、薬学的に許容可能な賦形剤および/またはアジュバントと組み合わせて含む薬学的組成物を特に意図している。このような薬学的組成物は、当該分野で周知の技術に従って調製され、用量を決定することが可能である。本発明の薬学的組成物は、任意の公知の投与経路で投与することができ、たとえば、全身的(たとえば、静脈内、気管内、経脈管的、肺内、腹腔内、鼻腔内、非経口、経腸的、筋肉内注射、皮下、腫瘍内または頭蓋内)、経口投与により、エアロゾル投与により、あるいは肺内点滴が挙げられるが、これらだけに限らない。投与は、単回投与で行われるか、あるいは一定の時間間隔の後に1回以上反復して行うことができる。適切な投与経路および投薬量は、状況(たとえば、処置される個体、処置される障害、あるいは目的の遺伝子またはポリペプチド)によって異なるが、当業者が決めることができる。
【0078】
本発明は、さらに、繊維遺伝子を含む細胞株中で繁殖されなかった組換え型ベクターと比べて、改変された親和性を有する治療上有効な量の組換え型アデノウイルスベクター(たとえば、PAdV−3アデノウイルスベクター)が、処置を要する哺乳類被験体に投与される処置方法を提供する。
【0079】
本発明に使用される抗原は、固有または組換え型の抗原ポリペプチドまたはフラグメントのいずれであってよい。これらは、部分配列、全長配列、またはさらにh融合体(たとえば、組換え型宿主に適するリーダー配列を有するか、あるいは別の病原体のための追加の抗原配列を含む)であってもよい。本発明のウイルス系によって発現される好ましい抗原性ポリペプチドは、抗原をコードする全長(またはほぼ全長)配列を含む。あるいは、抗原性の(つまり、1つ以上のエピトープをコードする)、より短い配列を使用することができる。より短い配列は、インビトロアッセイでウイルスの感染力を中和する抗体を誘発することが可能なエピトープとして定義される「中和エピトープ」をコードすることができる。好ましくは、このペプチドは、宿主中で「防御免疫応答」、つまり免疫された宿主を感染症から防御する抗体媒介免疫応答および/または細胞媒介免疫応答を誘起することが可能な「防御エピトープ」をコードするべきである。
【0080】
本発明に使用される抗原は、特に、短いオリゴペプチドから構成される場合、ワクチン担体に結合することができる。ワクチン担体は、当該分野で周知であり、たとえば、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)がある。
【0081】
挿入可能な所望の抗原またはそのコード配列の遺伝子としては、哺乳類の疾病を引き起こす生物、特にウシ病原体、たとえば口蹄疫ウイルス、ウシロタウイルス、ウシコロナウイルス、ウシヘルペスウイルス1型、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3型(BPI−3)、ウシ下痢ウイルス、パスツレラヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)、ヘモフィルスソムナス(Haemophilus somunus)などの遺伝子が挙げられる。ヒト病原体の抗原をコードする遺伝子も、本発明の実施に有用である。外来遺伝子またはフラグメントを保有する本発明のワクチンは、適切な経口担体、たとえば腸溶性コーティング剤形において経口投与することもできる。経口製剤は、たとえば、医薬品等級のマンニトール、乳糖、デンプン類、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリンセルロース、炭酸マグネシウムなどの一般的に使用されている賦形剤を含む。経口ワクチン組成物は、約10%〜約95%、好ましくは約25%〜約70%の活性成分を含む、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出剤、または散剤の形態を取り得る。経口および/または鼻腔内ワクチン投与は、全身免疫と組み合わせて、粘膜免疫(呼吸および消化管に感染する病原体を防御する上で重要な役割を果たす)を高めるために好適であり得る。
【0082】
さらに、ワクチンは、坐剤中に処方することができる。坐剤の場合、ワクチン組成物は、従来の結合剤および担体、たとえばポリアルカリグリコールまたはトリグリセリドを含む。このような坐剤は、約0.5%〜約10%(w/w)、好ましくは約1%〜約2%の範囲の活性成分を含む混合物から形成され得る。
【0083】
本発明のワクチン組成物(単数または複数)を動物に投与するためのプロトコルは、本開示を考慮すると、当該分野の技術範囲内である。当業者は、抗原性フラグメントに対する抗体および/またはT細胞媒介免疫応答、あるいは別のタイプの治療または予防効果を誘発するのに効果的である用量のワクチン組成物の濃度を選択する。広範な制限内では、投与量は、臨界的であるとは考えられない。一般的に、ワクチン組成物は、好都合な体積、たとえば約1〜10ccの賦形剤中に約1〜約1,000マイクログラムのサブユニット抗原を送達する方法で投与される。好ましくは、1回の免疫における投与量は、約1〜約500マイクログラム、より好ましくは約5〜10から約100〜200マイクログラムまで(たとえば、5〜200マイクログラム)のサブユニット抗原を送達する。
【0084】
投与のタイミングも、重要な場合がある。たとえば、一次接種の次に、必要な場合、好ましくはブースター接種を行うことができる。必要に応じてではあるが、最初の免疫から数週間から数ヶ月後に、動物に対して第2のブースター免疫を行うことが好ましい場合もある。疾病に対して持続的な高レベルの防御を確実に行うために、一定の間隔で、たとえば数年ごとに1回、動物にブースター免疫を再度投与すると役立つ場合がある。あるいは、初期投与量を経口投与し、次に、その後の接種を行うか、あるいはこの逆に行うことができる。好ましいワクチン接種プロトコルは、慣用的なワクチン接種プロトコル実験により確立することができる。
【0085】
インビボの組換え型ウイルスワクチンのすべての投与経路に関する投与量は、宿主/患者のサイズ、防御が必要な感染症の性質、担体などを含む様々な要因によって決まり、当業者が容易に決定することができる。非制限的な例により、103pfu〜1015pfu、好ましくは104〜1013pfu、より好ましくは105〜1011pfuなどの投与量を使用することができる。インビトロのサブユニットワクチンと同様、追加の投与量は、関連する臨床要因によって決定されるとおりに投与することができる。
【0086】
本発明の実施態様によっては、組換え細胞株は、実施例に示されているように、繊維領域、たとえばPADV−4の繊維領域を含む発現カセットを構築し、これらによって宿主細胞を形質転換し、組換え型アデノウイルスの親和性を変更するという本発明の目的のための第2の繊維遺伝子を含む細胞を提供することによって生成される。これらの組換え細胞株は、第2の繊維をアデノウイルスベクター中に挿入することを可能にすることができる。これらの細胞株は、DNAが介在する共トランスフェクトおよびその後のインビボにおける組換えにより、繊維遺伝子の欠失を、外来遺伝子またはフラグメントをコードする異種ヌクレオチド配列で置き換えた組換え型ベクターを生成する際にきわめて有用でもある。さらに、宿主細胞はまた、アデノウイルスゲノムにおいてコードされる1つ以上の必須の機能を提供することもでき、ここで、該細胞株は、特定の欠損型組換え型アデノウイルスベクターで欠けている1つまたは複数の機能を提供する。したがって、繊維を含む組換え細胞株はまた、たとえば、ヘルパーウイルスとの同時感染により、あるいは特定のウイルス機能をコードするウイルスゲノムのフラグメントを安定した形態で組み込むかさもなければ維持することによりウイルス機能を提供することが可能な補完細胞株でもよい。
【0087】
本発明の組換え型の哺乳類(特にブタ)の細胞株も、タンパク質の組換え生成に使用することができる。
【0088】
本発明は、遺伝子送達を必要とするブタ、ウシ、ヒト、ヒツジ、イヌ、ネコまたはその他の哺乳類などの哺乳類に遺伝子送達を提供するか、遺伝子の欠損を制御するか、治療用遺伝子もしくはヌクレオチド配列を提供するか、および/または遺伝子の変異体を誘発もしくは改変するための方法も含む。この方法は、たとえば、遺伝性疾患、感染性疾患、心血管疾患、およびウイルス感染症を含むが、これらだけに限らない状態の処置に使用することができる。この種の技術は、現在、当業者によって、多様な疾患状態の処置に使用されている。従来の遺伝子療法に使用するために組み込むことが可能な外来遺伝子、ヌクレオチド配列、またはその一部分の例としては、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御遺伝子、ヒトミニジストロフィン遺伝子、α−1−抗トリプシン遺伝子、心血管疾患に関連する遺伝子などが挙げられる。
【0089】
特に、ヒトにおける遺伝子の送達に関連する本発明の実施は、遺伝性疾患(たとえば、血友病、サラセミア、気腫、ゴーシェ病、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィ、デュシェンヌ型またはベッカー型の筋障害など)、癌、ウイルス性疾患(たとえば、AIDS、ヘルペスウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症およびパピローマウイルス感染症)、心血管疾患などを含むがこれらに限定されない疾患の予防または処置を意図している。本発明の目的上、本発明の方法により調製されるベクター、細胞およびウイルス粒子は、エキソビボで(つまり、患者から取り出された1つ以上の細胞内で)、あるいは処置されるべき体内にインビボでのいずれかにより、被験体内に直接導入され得る。
【実施例】
【0090】
本発明の実施例では、PAdV−4繊維遺伝子を安定して発現する細胞株を生成するための方法および組成物の例示的な教示を提供する。古典的ブタコレラウイルス(CSFV)のgp55遺伝子を発現する既存のブタアデノウイルスの組換え型ベクター、たとえばPAdV−3ベクター[Hammond等、2000年]は、これらの細胞株中で増殖し得、結果として生じる先祖ウイルスは、固有のPAdV−3繊維および追加のPAdV−4繊維タンパク質の両方を含む。2つの異なる繊維タンパク質がウイルスキャプシド上に存在することによって、ベクターの細胞親和性が広げられる。このようにすることにより、ベクターは、動物中のより多様な細胞型を標的とし、送達された外来遺伝子をより広範囲の宿主免疫応答に暴露することが可能になる。さらに、組換え型ベクターは、繊維遺伝子を欠損させて、外来遺伝子を挿入するためのより多くの空間を提供するように操作され得、繊維タンパク質を発現する細胞株にこれらのベクターを継代させることによって補完することができる。このアプローチは、さらなるDNAパッケージング能力を有する繊維陽性ウイルスの生成を可能にする。
【0091】
(実施例1:材料および方法)
細胞およびウイルス:American Type Culture Collection番号CCL−33(ATCC−CCL−33)から取得したブタ腎臓細胞(PK−15)を、5%のウシ胎児血清(FCS)、10mMのN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタン−スルホン酸(HEPES)、1%のピルビン酸Naおよび2mMのグルタミンを補充したEarleの改変イーグル培地(EMEM)中で増殖させた。United States Department of Agriculture−Animal and Plant Health Inspection Services(USDA−APHIS)からのブタ睾丸細胞(ST)を、10%FCS、10mM HEPES、1%ピルビン酸Na、0.25%ラクトアルブミン加水分解物(LAH)および2mMのグルタミンを補充したEMEM中で維持した。
【0092】
ブタアデノウイルスは、2%FCSを補充したEMEM中に維持された初代ブタ腎臓(10PK)細胞で増殖させ、90%の細胞が細胞変性効果(CPE)を示す時に収集した。すべての培地に、2.5μg/mlのフンギゾーン(fungizone)(Squibb)、100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(CSL)をさらに補充した。
【0093】
ウイルスDNAの調製:ウイルスDNAを、Shinagawa等(1983年)に記載されているように多少変更したHirt(1967年)の方法によって調製し、製造業者の指示書に従って制限酵素消化を行った。
【0094】
プラスミドDNAの調製:Qiagenシステムを製造業者の指示書に従って使用してプラスミドDNAを調製した。
【0095】
PAdV−4 DNAからのPAdV−4繊維遺伝子の単離:以下のプライマー対を使用してPAdV−4 DNAからPADV−4繊維遺伝子を増幅した:
【0096】
【化1】
PCRスーパーミックス(Life technologies)を94℃で1分間、50℃で2分間、および72℃で30秒間を30サイクル行い、サイクルごとに30秒間伸長する伸長プロトコルで使用してPCRを実施した。
【0097】
プラスミド構築物:PAdV−4繊維PCR生成物をゲル精製し、pGEM−T(Promega)に連結して、プラスミドPJJ392を生じさせた(図1a)。制限酵素消化の後、PAdV−4繊維遺伝子を含むpJJ392からのBamHI/BglIIフラグメントを、プラスミドpCI−TPLのBamHI部位に挿入し、pJJ741を生じさせた(図1b)。次に、TPL−PADV−4繊維遺伝子を含むpJJ741のNheI/NotIフラグメントをpCIneo(Promega)に挿入することによって、転移ベクターpJJ743を構築した(図1c)。プラスミド構築物を、制限酵素消化によって正しい挿入物の存在についてチェックし、TPL配列の5’に結合するプライマー5’TTT ACT GGG CTT GTC GAG ACA G 3’を使用する配列決定によって確認した。
【0098】
安定した細胞株の生成および特徴付け:STおよびPK−15細胞をそれぞれの培地中で増殖させ、約5×106の細胞を、300V、960μFおよび∞Ωの設定のBio−Rad Genepulserを使用して、20μgのXmnI直鎖状プラスミドpJJ743 DNAで電気穿孔した。細胞を、1.25%DMSOを補充したそれぞれの培地(Melkonyan等、1996年)中で、一晩放置して回復させた。次に、800μg/ml(ST)または1000μg/ml(PK15)のいずれかのG418(Promega)を培養物に添加してG418耐性細胞を選択した。個々のクローンを限界希釈によって単離し、増やした。クローンを、繊維遺伝子の存在についてPCRでスクリーニングし、RT−PCRで繊維mRNAの発現を確認した。
【0099】
ゲノムDNAの精製:トランスフェクト細胞からのゲノムDNAを、DNeasy Tissue Kit(Qiagen)を製造業者の指示書に従って使用して精製した。
【0100】
PCRの条件およびプライマー:PCRスーパーミックス(Gibco BRL)を使用して、94℃で10分間を1サイクル、94℃で1分間、50℃で1分間、および72℃で2分間を30サイクル、72℃で10分間の最終伸長という標準プロトコルでPCRを実施した。プライマー対5’ GCA CTG GAC TCG GAT GGA CAおよび3’ AGC TGC TTG GTC CTG CGT CT 3’を、804bpの予想バンドを有するPADV−4繊維遺伝子の検出に使用した。
【0101】
細胞mRNAのRT−PCR精製:トランスフェクト細胞からの総RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を製造業者の指示書に従って使用して精製した。
【0102】
RT−PCR第1鎖cDNAの合成:mRNAを、第1鎖cDNA合成用SUPERSCRIPTプレ増幅システム(Gibco BRL)を製造業者の指示書に従って使用してcDNAに変換した。
【0103】
標的cDNAのRT−PCR増幅:標的cDNAを、上記のPCRプロトコルおよびプライマーを使用して増幅した。
【0104】
rPAdV−gp55ストックの生成:PK15A、PK15−743、STおよびST−743細胞を、rPAdV−gp55による感染前に90%の密集度まで培養した。200μlのrPAdVgp55を細胞シートに添加し、37℃で1時間にわたって吸着させた。20mlのEMEM(2%の最終濃度のFCSを補充した)を添加した。フラスコを37℃で5%CO2中でインキュベートし、毎日、細胞変性効果について観察した。フラスコが70〜80%の細胞変性効果を示した時、3回凍結/融解することによってウイルスを収集した。
【0105】
精製ウイルスストックの調製:フラスコの各々の群からの上清をプールし、Jouan C3000ベンチ遠心分離機内において2000rpmで20分間にわたって遠心分離することによって澄明とした。次に、上清をSW28超遠心分離チューブ中にデカントし、Beckman LM−80超遠心分離機において25,000rpm、20℃で90分間にわたって遠心分離した。上清を廃棄し、ウイルスのペレットを500μlのTE中に再懸濁させた。材料を、必要になるまで、1.5mlのスクリューキャップチューブ(Sarstedt)内に−20℃で保管した。
【0106】
不連続ショ糖密度勾配を使用する精製:粗製ウイルス調製物を、さらに、NTE中で60%(w/v)、30%(w/v)および20%(w/v)の3種類の濃度のショ糖を含むSW28超遠心分離チューブ内に用意した不連続ショ糖勾配を使用して精製した。1mlのウイルスストックを勾配の上に注意深く重層し、このチューブをBeckman LM−80超遠心分離機内で28,000rpmにて4℃で2時間にわたって遠心分離した。精製されたウイルスを5mlのシリンジおよび19ゲージの針を使って取り出し、SW28超遠心分離チューブ内に入れ、次いでこの遠心分離チューブにはTEを充填した。次に、精製されたウイルスを、Beckman LM−80超遠心分離機内で25,000rpmで20℃で90分間遠心分離してペレット状にして、ショ糖を除去した。ペレットを最後にTE中に再懸濁させて、必要になるまで−20℃で保存した。
【0107】
繊維特異的ペプチドのウサギ抗血清の生成:PAdV−3およびPAdV−4の繊維タンパク質(Reddy等、1995年;Kleiboeker 1995年)のアミノ酸配列を比較し、2つの合成ペプチド(Auspep Pty Ltd−オーストラリア)を設計および生成した。ペプチド1は、PAdV−3とPAdV−4との間で保存された繊維タンパク質の領域を含み、ペプチド2は、PAdV−4繊維に特異的な配列を構成した。
【0108】
【化2】
PAdV−3およびPAdV−4繊維タンパク質の完全アミノ酸配列、並びに2つのペプチドの位置を図5に示す。ウサギにおいて免疫応答を生成するため、両方のペプチドをKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)に結合した。両ペプチド結合体を表1に示すようにウサギ中に注入して、特異的な抗血清を生成させた。
【0109】
【表1】
PAdV−4繊維の存在についての精製したウイルスの検査:SDS−PAGEゲル分析。精製したウイルスのサンプルを、8〜12%のBis−Tris SDS−PAGEプレキャストゲル(Invitrogen)で、PADV−3およびPADV−4の繊維タンパク質の存在について分析した。電気泳動後、100Vで1時間にわたって免疫ブロットを行うことにより、タンパク質をニトロセルロース膜上に転写した。次に、膜は、TBS/3%のウシ血清アルブミン中で、4℃で一晩にわたってブロックした。
【0110】
PAdV−4繊維の存在に関する精製したウイルスの検査:ウェスタンブロット分析。洗浄および抗体のインキュベーションをすべて、室温で実施した。膜を、TBS−Tween/Triton中で5分間にわたって2回、およびTBSで10分間にわたって1回洗浄した。TBS/3%BSA中で200倍に希釈したウサギ抗繊維ポリクロナール抗体を膜に添加し、次に1時間にわたってインキュベートした。膜を、TBS−Tween/Triton中で5分間を2回、TBS中で10分間を1回洗浄した。膜を、次に、5%の脱脂粉乳/ブロット(blotto)溶液中で500倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Sigma)に結合したヤギ抗ウサギとともにインキュベートした。膜を、次に、上記のように洗浄し、化学発光強化(ECL)検出(Amersham Pharmacia Biotech Ltd)を使用して、タンパク質バンドを視覚化した。
【0111】
ブタ実験を使用するインビボ分析。PK15−743細胞中で増殖させた改変rPAdV−gp55、または非改変PK15A細胞中で増殖させたrPAdV−gp55を、以下のレジメを使用して市販の大型白色ブタに投与した:
0日目:すべてのブタを採血し、ワクチンを接種した
グループ1:第1回用量−2×105 TCID50非改変rPAdV−gp55ワクチンを皮下注射
グループ2:第1回用量−2×105 TCID50改変rPAdV−gp55を皮下注射
グループ3:第1回用量−2×105 TCID50改変rPAdV−gp55を経口経路
22日目:
グループ1:第2回ブースター用量−2×105 TCID50非改変rPAdV−gp55ワクチンを皮下注射
グループ2:第2回ブースター用量−2×105 TCID50改変PAdV−gp55ワクチンを皮下注射
グループ3:第2回ブースター用量−2×105 TCID50改変rPAdV−gp55経口経路
47日目:2匹の、感染の無い、年齢および体重が一致するブタを、チャレンジウイルス対照として持ち込んだ
49日目:無感染対照を含めてすべてのブタに、致命的な用量のCSFV「Weybridge」株(1000TCID50)を皮下注射によりチャレンジした。抗体投与後、直腸温度を毎日記録し、すべてのブタについて、食欲減退、横臥姿勢、下痢、および足の発赤として明らかになる疾病の臨床的徴候を毎日監視した。ブタを実験の終わりかまたは臨床的に重症な疾病を示した時に安楽死させ、CSFV抗原を検出のために脾臓を取り出した。安楽死させたすべてのブタについて、死後検査を実施した。
【0112】
CSFVに対する血清中和抗体の検出:ブタから1週間間隔で採血し、Terpstraおよびその同僚[1984]によって記載された中和ペルオキシダーゼ結合アッセイ(NPLA)により、CSFVに対する中和抗体の存在について血清を試験した。NPLA力価を、複製培養物の50%において200TCID50のWeybridge株を中和した血清希釈度の逆数として表した。
【0113】
抗原捕捉ELISA:チャレンジされたブタの脾臓におけるCSFV抗原の存在を、抗原捕捉ELISA[Shannon等、1993年]で決定した。
【0114】
(実施例2:ベクター、細胞株、およびウイルスの調製結果)
PAdV−4繊維を含む転移ベクターの生成。ヌクレオチドを配列決定したところ、転移ベクターpJJ743が、PAdV−3 TPL配列の下流にPAdV−4繊維遺伝子を含むことが確認された(図1c)。
【0115】
PAd V−4繊維タンパク質を恒常的に発現する細胞株の生成:ST細胞およびPK−15細胞を転移ベクターpJJ743でトランスフェクトし、次に、G418によって選択し、組み込まれたDNAを含むクローンを確立した。テストした2つのPK−15クローン(8および9)は、PAdV−4繊維遺伝子を含むことがPCRで示された(図2a)。pJJ743(2〜14)でトランスフェクトした12個のSTクローンをPCRで試験したところ、10個(2、3、5、6、7、8、および11〜14)がPAdV−4繊維遺伝子を含むことが示された(図2bおよびc)。次に、陽性クローンを、細胞型、続いて接頭語743、およびクローン番号で、すなわち、PK15−743−9のように命名した。
【0116】
次に、これらの細胞クローンにおける繊維mRNAの発現をRT−PCRで評価した。
【0117】
細胞株PK15−743−9およびST−743−2、5、6および8中に、多量の繊維4 mRNAが検出された(図3aおよびb)。
【0118】
増殖特性:繊維遺伝子を挿入後、PK−15−743およびST 743細胞はともに、親系統よりもゆっくりと増殖した。
【0119】
PAdV−4繊維の存在に関する精製したウイルスの検査:細胞株PK15−743−9をrPAdV−gp55に感染させ、細胞が80%の細胞変性効果を示した時にウイルスを収集した。ウイルスを精製し、8〜12%のSDS−PAGEゲルでサンプルを分離した。ナイロン膜に転写した後、ウェスタンブロットで、上記の2つのペプチドに対して産生されたウサギ抗血清を使用して、PAdV−3およびPAdV−4繊維タンパク質の存在についてサンプルを分析した。
【0120】
PAdV 3および4の繊維の共通のエピトープに対して産生されたペプチド抗血清で処理すると、非改変PK15細胞中で増殖させたrPAdV−gp55を含むレーンに、PAdV−3繊維の予想分子量(45kD)に対応するバンドのダブレットが見られた(図5a、レーン1)。対照的に、改変PK15−743−9細胞中で増殖させたrPAdV−gp55を含むレーンは、PAdV−3繊維に対応するダブレットを含んでおり、さらにPAdV−4繊維の予想分子量(77kD)に追加のバンドを含んでいた(図5a、レーン2)。PAdV−4繊維上の特異的なエピトープに対して産生されたペプチド抗血清で処理した場合、非改変PK15細胞中で増殖させたrPAdV−gp55を含むレーンで、バンドは検出されなかったが(図5bレーン1)、改変PK15−743−9細胞中で増殖させたrPAdV−gp55を含むレーンでは、PAdV−4繊維の予想分子量における1つのバンドが見られた(図5bレーン2)。
【0121】
(実施例3:ブタに対するワクチン接種の研究結果)
改変繊維プロファイルを有するrPAdV−gp55の効力をテストするためのブタ臨床試験。PAdV−3およびPAdV−4の血清型の両方の繊維を含む改変rPAdV−gp55ワクチンの効力をテストするため、大型白色ブタのグループに、非改変または改変のワクチンを2回投与し、致命的CSFVチャレンジに対する感受性を決定した。さらに、経口経路で投与した場合に、改変ワクチンが中和抗体を誘発して防御を与える能力をテストした。
【0122】
ワクチン接種に対するブタの反応:どちらのワクチン製剤をどちらの経路でワクチン接種しても、ブタに対する悪影響はなかった。体温の上昇も臨床的な徴候の発現もなかった。
【0123】
チャレンジ後のブタの体温:対照用ブタ、およびワクチンを接種した各グループのブタにおける、毎日の平均体温および標準誤差を図6に示す。
【0124】
対照用ブタ:対照用ブタは、4日目までに発熱し、CSFの臨床的徴候を示し、1匹のブタは、4日目と5日目の間の晩に死亡し、1匹のブタは、チャレンジ後(p.c)7日目に重篤な疾病に罹病したために安楽死させた。
【0125】
グループ1:非改変rPAdV−gp55を皮下投与されたどのブタも、実験が終了するまで、発熱せず、CSFのどの臨床的徴候も示さなかった。
【0126】
グループ2:改変rPAdV−gp55を皮下投与されたどのブタも、実験が終了するまで、発熱せず、CSFのどの臨床的徴候も示さなかった。
【0127】
グループ3:改変rPAdV−gp55を経口投与された3匹のブタのうち2匹は、実験が終了するまで、発熱せず、CSFのどの臨床的徴候も示さなかった。1匹のブタは、連続しない、別々の2日に40℃を超える体温を示したが、実験が終了するまで、他のCSFの臨床的徴候は示さなかった。重要なことに、このグループの平均体温は、チャレンジ期間中に40℃を超えて上昇しなかった。
【0128】
CSFV特異的な中和抗体の発達:すべてのブタを0日目に、そして実験が終了するまで1週間間隔で採血し、血清を、NPLA(Terpstra等、1984年)によりCSFVに対する中和抗体の存在についてテストした。NPLA力価を図7〜9に示す。
【0129】
対照用ブタ:対照用ブタは、検出可能なCSFV中和抗体を発達させなかった。
【0130】
グループ1:すべてのブタは、ワクチン接種後14日目には検出可能なCSFV中和抗体を発達させ、1匹のブタは、7日目に検出可能な力価を示した。このレベルは、2回目の用量を投与することによって上昇した。すべてのブタはチャレンジ後も生き残り、8192よりも高いチャレンジ後力価を有した。
【0131】
グループ2:すべてのブタは、ワクチン接種後14日目には、検出可能なCSFV中和抗体を発達させ、これらのレベルは、2回目の用量を投与することによって上昇した。すべてのブタはチャレンジ後も生き残り、8192よりも高いチャレンジ後力価を有した。
【0132】
グループ3:すべてのブタは、ワクチン接種後14日目には、検出可能なCSFV中和抗体を発達させ、これらのレベルは、2回目の用量を投与することによって上昇した。すべてのブタはチャレンジ後も生き残り、8192よりも高いチャレンジ後力価を有した。
【0133】
ブタの脾臓におけるCSFV抗原の存在のテスト:チャレンジされたブタの脾臓におけるCSFV抗原の存在を、抗原捕捉ELISA[Shannon等、1993]によって決定した。レベルを図9に示す。
【0134】
対照用ブタ:対照用のブタは、それぞれの脾臓内に高レベルの抗原を有し、終了時における進行中の感染症を示した。
【0135】
グループ1:どのブタも、脾臓においてCSFV抗原に陽性ではなく、すべてのブタが、実験の終わりに疾病およびウイルスがないことを実証した。
【0136】
グループ2:どのブタも、脾臓においてCSFV抗原に陽性ではなく、すべてのブタが、実験の終わりに疾病およびウイルスがないことを実証した。
【0137】
グループ3:どのブタも、脾臓においてCSFV抗原に陽性ではなく、すべてのブタが、実験の終わりに疾病およびウイルスがないことを実証した。
【0138】
上記の研究から、PAdV−4繊維遺伝子を含むプラスミドベクターは、PK15細胞およびST細胞中にトランスフェクトされ、PAdV−4繊維を発現する、安定してトランスフェクトされた細胞株が生成されたことが実証される。
【0139】
組換え型PADV−3(rPAdV−gp55)は、PAdV−4繊維を発現するPK15−743細胞株を通して継代させた後、PAdV−3およびPAdV−4の血清型繊維の両方を含むことが実証された。この改変された組換え型ワクチンをブタに投与し、CSFVチャレンジ臨床試験においてその効力を評価した。
【0140】
改変されたワクチンは、皮下注射として、または経口経路により投与した場合、CSFVによる致命的なチャレンジからブタを完全に防御した。チャレンジ後の体温反応に関しても、脾臓からのCSFV抗原の除去に関しても、改変されたワクチンを投与されたブタと非改変ワクチンを投与されたブタとの間で、有意差は検出されなかった。しかし、改変されたワクチンを皮下経路により投与した場合、3つのグループすべてで、非改変ワクチンのグループで検出されたレベルより大きい、最高レベルのNPLA抗体を生成した。さらに、本発明者らは以前、非改変ワクチンを経口経路で投与した場合、チャレンジ前も、1回分の用量のブースター後でさえも、NPLA抗体の力価を検出することができないことを実証した[Hammond等、2001年;Hammond等、2003年]。この実験では、非常に著しいレベルのNPLA抗体が、経口グループで、ほんの1回の投与の後に検出され、これらのレベルは、2回目の用量の投与によって上昇した。この知見は、PADV−3およびPAdV−4の繊維タンパク質の両方を含む改変されたワクチンが、非改変ワクチンと比べて、ブタ内のより広範囲にわたる組織を標的とし、その結果、宿主中でさらに大規模な免疫応答を生成するという優れた証拠を提供する。
【0141】
上記のデータから、改変されたrPAdV−gp55は、経口投与した場合、gp55に対して血清中和抗体を生成するのに効果的であるが、非改変ワクチンの場合はそうではないと結論することができる。したがって、PAdV−3およびPAdV−4の両方の繊維を含むこのキメラワクチンは、ブタ内の免疫応答の大きさを変更および/または増大させた。このようなワクチンは、効果的な経口送達を可能にするために生産されてもよい。本明細書で教示する例示的な実施態様を前提として、開発された技術は、PAdV−4繊維を任意のPAdV−3ベースのワクチン中に組み入れ、送達を標的化することによって効率を改善することを可能にする。
【0142】
さらに、二重繊維系の使用により組換え型アデノウイルスワクチンの親和性を増大させることを可能にする、その他のアデノウイルスベクターおよび細胞株を生成することができる。
【0143】
文献には、本発明のさらなる背景を提供する多くの参考文献が存在する。これらの参考文献のいくつかを以下に記載し、引用することにより、その全体を本明細書に援用する。
【0144】
【表2−1】
【0145】
【表2−2】
【0146】
【表2−3】
【0147】
【表2−4】
配列情報
配列番号1:繊維から右側末端(rhe)に向かう2250塩基の配列からのPAdV4繊維遺伝子。PAdV3繊維とよく一致している(太字)が、後続のすべての配列は新規である。
【0148】
【化3−1】
【0149】
【化3−2】
配列番号2 PadV1からの繊維から右側末端(rhe)に向かう1858塩基の配列。一部分(太字部分)でPAdV3とよく一致している。新規の配列は普通のフォント。
【0150】
【化4】
配列番号3 PAdV2の繊維から右側末端(rhe)に向かう969塩基の配列。一部分(太字部分)でPAdV3とよく一致しており、PAdV3の完全rheを含む。新規な配列は普通のフォント。
【0151】
【化5】
配列番号4:第2セットのデータからのPAdV2繊維。1176塩基の配列は、PAdV3とよく一致しているが、左側末端(太字)に向かって逆の向きにある。これは、最後のプライマーが、おそらくITRによりゲノムの両端で働かず、二重配列情報を与えたことを示唆している。
【0152】
【化6】
配列番号5:PAdV2コンティグの逆相補体
【0153】
【化7】
(配列表)
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、組換え型アデノウイルスの組織親和性(tissue tropism)を増大させるための方法および組成物であって、組換え型アデノウイルスに第2の繊維を提供する組換え細胞を使用し、それによって組換え型アデノウイルスの親和性を変更することを含む方法および組成物に関する。本発明はまた、親和性が変更された組換え型アデノウイルスを製造および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
アデノウイルスは、腸感染症または呼吸感染症をヒト並びに家畜および実験用動物に生じる。アデノウイルス繊維タンパク質は、感受性の宿主細胞中への侵入を促進する特異的細胞受容体と相互作用することによって、ウイルスの付着に必須の役割を果たす。したがって、繊維タンパク質は、特定のアデノウイルスの特異的な組織親和性を決定する(非特許文献1)。したがって、この繊維は、標的細胞に対するビリオンの付着において、最も重要なウイルス表面分子であると考えられる。
【0003】
この標的化特性を活かすため、特定のヒトアデノウイルスによって保有される繊維タンパク質を変更しようと、いくつかの方法が使用されてきた。アデノウイルス粒子を異なる細胞型に再標的化するため、いくつかのアプローチが行われてきており、例えば、組換え型アデノウイルスの改変した繊維構造とともに使用すること(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)、単鎖抗体(scFv)(非特許文献5;非特許文献6)、キメラ繊維タンパク質(非特許文献7;非特許文献8)、および血清型が異なる繊維タンパク質の交換(非特許文献9)が挙げられる。これらのアプローチは、外来遺伝子をウイルスゲノム内に組み込むために、既に制限されている使用可能な空間を減少させるアデノウイルスゲノムの遺伝子操作、あるいは、二重特異性結合体とアデノウイルス粒子との複合体化のいずれかを必要とする。
【0004】
非特許文献10は、異なるアプローチを使用して、ヒトアデノウイルス血清型5(HAdV5)の繊維タンパク質を安定して発現する細胞株を構築した。HAdV3をこの細胞株を通して継代した後、ウイルス粒子は、血清型5の繊維タンパク質を含んでいた。この細胞株中における繊維欠損変異体HAdVの増殖は、繊維陽性ヒトアデノウイルスの生成を可能にした。
【0005】
さらに、多数の調節遺伝子が欠失されたアデノウイルスベクターの補完を可能にする遺伝子を発現する細胞株も報告されている(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chroboczek,J.,Ruigrok,R.W.H.,and Cusack,S.(1995).Adenovirus fibre.Curr Top Microbiol Immunol 199,163−200.
【非特許文献2】Wickham,T.J.,Tzeng,E.,Shears II,L.L.,Roelvink,P.W.,Li,Y.,Lee,G.M.,Brough,D.E.,Lizonova,A.,and Kovesdi,I.(1997).Increased in vitro and in vivo gene transfer by adenovirus vectors containing chimeric fibre proteins.J Virol 71,8221−8229.
【非特許文献3】Dmitriev,L,Krasnykh,V.,Miller,CR.,Wang,M.,Kashentseva,E.,Mikheeva,G.,Belousova,N.,and Curiel,D.T.(1998).An adenovirus vector with genetically modified fibres demonstrates expanded tropism via utilization of a coxsackievirus and adenovirus receptor−independent cell entry mechanism.J Virol 72,9706−13.
【非特許文献4】Wirtz,S.,Galle,P.R.,and Neurath,M.F.(1999).Efficient gene delivery to the inflamed colon by local administration of recombinant adenoviruses with normal or modified fibre structure.Gut 44,800−807.
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【非特許文献6】Douglas,J.T.,Miller,C.R.,Kim,M.,Dmitriev,I,Mikheeva,G.,Krashnykh,V.,and Curiel,D.T.(1999).A system for the propagation of adenoviral vectors with genetically modified receptor specificities.Nat Biotechnol 17,470−475.
【非特許文献7】Krashnykh,V.N.,Mikheeva,G.V.,Douglas,J.T.,and Curiel,D.T.(1996).Generation of recombinant adenovirus vectors with modified fibres for altering viral tropism.J Virol 70,6839−6846.
【非特許文献8】Stevenson,S.C.,Rollence,M.,Marshall−Neff,J.,and McClelland,A.(1997).Selective targeting of human cells by a chimeric adenovirus vector containing a modified fibre protein.J Virol 71,4782−90.
【非特許文献9】Gall,J.,Kass−Eisler,A.,Leinwand,L.,and Falck−Pedersen,E.(1996).Adenovirus type 5 and 7 capsid chimera: fibre replacement alters receptor tropism without affecting primary immune neutralization epitopes.J Virol 70,2116−2123.
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【非特許文献13】Amalfitano,A.,and Chamberlain,J.S.(1997).Isolation and characterization of packaging cell lines that coexpress the adenovirus E1,DNA polymerase,and preterminal proteins: implications for gene therapy.Gene Ther 4,258−263.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、繊維を対象とした標的化に関してこれまでに公開されたすべての研究は、アデノウイルスをある特異的な標的組織型から別の特異的な標的組織に再度指向させ、場合により、アデノウイルスが付着可能な標的細胞を大いに制限することに焦点を合わせているように思われる。組換え型アデノウイルスが結合可能な動物中の標的組織型を広げるために、さらなる方法が依然として必要である。このような方法は、特定の抗原に対して生成される免疫応答または免疫調節分子の治療効果の量および/または質のいずれかを増大または上方調節するのに有用であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、第2の繊維遺伝子を組換え型アデノウイルスゲノム中に遺伝子挿入することを必要とせずに、第2の繊維の添加を組換え型アデノウイルスベクターに提供するために、繊維タンパク質を発現する細胞株を活用する。そのため、これらの細胞、およびこの細胞を使用する方法は、特定のアデノウイルスの特異的な組織親和性を増大させることを可能にする。さらに、第2遺伝子を組換え型アデノウイルス中に遺伝子挿入する必要がないという事実によって、ウイルスゲノム中でより大きな空間を外来遺伝子の挿入に使用することが可能になる。
【0009】
したがって、本発明は、一態様では、アデノウイルスを含む組換え型アデノウイルスベクターであって、アデノウイルスに固有の(native)繊維遺伝子を含み、アデノウイルスと異種の第2の繊維遺伝子をさらに含み、第2の繊維遺伝子が、第2の繊維遺伝子を安定して発現する細胞株中における組換え型アデノウイルスの増殖により組換え型アデノウイルスによって取得される、組換え型アデノウイルスベクターを提供する。アデノウイルスベクターは、任意のアデノウイルスベクターであってもよく、これにはブタ、ヒト、トリ、ウシ、ウマ、およびヒツジのアデノウイルスからなる群より選択されるアデノウイルスベクターが挙げられるが、これらだけに限らない。当業者は、多くのアデノウイルスの血清型があることを十分承知しており、本発明のアデノウイルスベクターが、任意の特定の血清型に限る必要はないことを理解すべきである。本発明は、特に、本発明の組換え型アデノウイルスベクターを含む組成物を意図する。このような組成物は、好ましくは、薬学的に許容可能な賦形剤または希釈剤を含む薬学的組成物である。
【0010】
特定の実施態様では、アデノウイルスは、組換え型ブタアデノウイルス血清型(PAdV−1)、組換え型PAdV−2、組換え型PAdV−3、組換え型PAdV−4、組換え型PAdV−5、組換え型PAdV−6、および組換え型PAdV−7からなる群より選択される組換え型ブタアデノウイルスであってよい。ブタアデノウイルス血清型PAdV−1〜PAdV−5は、当業者に周知であり、十分に特徴付けられている。PAdV−6およびPAdV−7も、Kadoiによって存在が示されており、特徴付けられている(Kadoi等、New Microbiol.,20:215−220、1997年;およびKadoi、New Microbiol.,20:89−91、1997年)。好ましい実施態様では、組換え型アデノウイルスベクターは組換え型PAdV−3である。
【0011】
他の実施態様では、アデノウイルスは、組換え型HAdV、組換え型ウシアデノウイルス(BAdV)、組換え型ヒツジアデノウイルス(OAdV)、組換え型マウスアデノウイルス(MAdV)、組換え型サルアデノウイルス(SAdV)、または組換え型イヌアデノウイルス(CAdV)である。
【0012】
本発明の特定の組換え型アデノウイルスベクターでは、第2の繊維タンパク質は、PAdV−1、PAdV−2、PAdV−3、PAdV−4、およびPAdV−5から選択される繊維タンパク質である。
【0013】
本発明の特定の態様では、組換え型アデノウイルスベクターは、第1の繊維タンパク質または第2の繊維タンパク質と異なる第3の繊維タンパク質をさらに含むアデノウイルスベクター(例えば、PAdVベースのベクター)である。
【0014】
好ましい態様では、組換え型ベクター中の第2の繊維タンパク質は、PAdV−4からの繊維タンパク質を含む。
【0015】
本発明の組換え型アデノウイルスベクターは、複製可能型であっても、または複製欠損型であってもよい。例えば、複製欠損ベクターは、PAdVゲノムの必須領域中に挿入された異種ヌクレオチド配列を含む組換え型PAdVであってもよく、そして繊維遺伝子を安定して発現する細胞株は、異種ヌクレオチド配列が挿入されたPAdVゲノムの必須領域も発現する。
【0016】
複製可能型である例示的な組換え型アデノウイルスベクターは、組換え型アデノウイルスが、アデノウイルスゲノムの非必須領域中に挿入された異種ヌクレオチド配列を含む、組換え型アデノウイルスベクターである。異種ヌクレオチド配列は、実施態様によっては、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質をコードする異種遺伝子であってもよい。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、ブタアデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含むアデノウイルスを含む宿主細胞であって、アデノウイルスと異種であってかつブタアデノウイルスによって感染され得る繊維遺伝子を発現する組換え細胞である宿主細胞に関する。この細胞は、哺乳類細胞であっても、またはトリ細胞であってもよい。例示的な哺乳類細胞としては、ブタ細胞、ヒト細胞、ウシ細胞、およびヒツジ細胞が挙げられるが、これらだけに限らない。特定の態様では、細胞は組換え型ブタ細胞である。
【0018】
本発明のさらに他の態様は、哺乳類被験体に免疫応答を誘発することが可能な組成物であって、本発明の組換え型アデノウイルスベクター、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物に関する。
【0019】
他の態様では、本発明は、哺乳類被験体において免疫応答を誘発し、このような組成物を哺乳類被験体に投与することを含む方法について説明する。たとえば、哺乳類被験体はブタである。
【0020】
本発明はまた、アデノウイルスを調製する方法であって、細胞がアデノウイルスに感染するのに適する条件下で、アデノウイルス繊維遺伝子を発現する組換え型宿主細胞を培養することと、キャプシド形成に必須のアデノウイルス配列および異種タンパク質をコードする異種遺伝子を含む組換え型アデノウイルスベクターに細胞を接触させ、組換え型アデノウイルスが、宿主細胞中の繊維遺伝子とは異なる繊維遺伝子を含むことと;必要に応じてアデノウイルスを収集することとを包含する方法に関する。特定の実施態様では、異種タンパク質は、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質である。
【0021】
特定の実施態様では、この方法は、収集されたアデノウイルスベクターが、組換え型宿主細胞と接触されていないアデノウイルスベクターと比べて、より広範な組織特異性を含む方法である。
【0022】
さらに、上記の方法では、アデノウイルスベクターは、複製に必須でない1つ以上のアデノウイルスタンパク質の一部または全部が必要に応じて欠失されていてもよい。
【0023】
本発明はさらに、哺乳類宿主を感染から防御するためのワクチンであって、本発明の組換え型アデノウイルスベクター、および必要に応じて薬学的に許容可能な賦形剤を含むワクチンに関する。特定の実施態様では、非必須領域は、ブタアデノウイルスゲノムの、E3領域、E4のORF1−2および4−7、E4の末端とITRとの間の領域からなる群より選択される。
【0024】
また、本明細書では、アデノウイルス繊維遺伝子を発現する宿主細胞、および発現制御配列の制御下で異種タンパク質をコードする核酸を含む組換え型アデノウイルスベクターを含む組成物であって、組換え型アデノウイルスベクターがこのベクターのアデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含む組成物が記載される。好ましい態様では、宿主細胞を、組換え型ブタアデノウイルスベクターに感染させた。
【0025】
本発明は、たとえば、動物にワクチンを接種する方法などの処置方法であって、治療上有効な量の本明細書に記載するワクチンを動物に投与することを包含する方法にさらに関する。
【0026】
本発明のその他の方法は、組換え型アデノウイルスベクターの宿主組織細胞の特異性を増大させることに関しており、この方法は組換え型アデノウイルスの繊維タンパク質とは異なる第2の繊維タンパク質を含む宿主細胞中で組換え型アデノウイルスを増殖させることを包含する。このような方法では、組み換え型アデノウイルスベクターは、組換え型PAdV−1、組換え型PAdV−2、組換え型PAdV−3、組換え型PAdV−4、および組換え型PAdV−5から選択される組換え型PAdVであってもよい。好ましくは、第2の繊維タンパク質は、PAdV−1、PAdV−2、PAdV−3、PAdV−4、およびPAdV−5から選択される繊維タンパク質である。本発明の方法では、組換え型PAdVは、第1の繊維タンパク質または第2の繊維タンパク質とは異なる第3の繊維タンパク質をさらに含んでもよい。
【0027】
組換え型アデノウイルスベクターの宿主組織細胞の特異性を増大させる好ましい方法では、使用される組換え型PAdVは組換え型PAdV−3である。特定の実施態様では、このような組換え型PAdV−3は、PAdV−4由来の繊維タンパク質を含む。これらの方法では、組換え型PAdVは複製可能型であっても、または複製欠損型であってもよい。特定の好ましい実施態様では、組換え型PAdVは、PAdVゲノムの非必須領域に挿入された異種ヌクレオチド配列を含む。例示的な実施態様では、異種ヌクレオチド配列は、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質をコードする遺伝子である。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施態様を示すが、単に具体的に説明するためのものであることを理解すべきである。なぜなら、つまり、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および改変は、当業者にとって、この詳細な説明から明らかになるからである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下の図面は、本発明の明細書の一部を構成し、本発明の態様をさらに具体的に示すために含まれる。本発明は、本明細書に提示する具体的な実施態様の詳細な説明と組み合わせてこの図面を参照することによって、より良く理解され得る。
【図1】PAdV−4繊維遺伝子を含むプラスミドの構成。a)PAdV−4繊維遺伝子は、PCRによってPAdV−4 DNAから増幅され、pGEM−T(Promega)にクローニングされて、プラスミドPJJ392を生じた。b)PAdV−4繊維遺伝子を含むpJJ392由来のBamHI/BglIIフラグメントは、前初期プロモーター−エンハンサー(CMV)プロモーターおよびPAV−3 TPL配列の直前のヒトサイトメガロウイルスの下流で、プラスミドpCI−PAdV−3トリパータイト(tripertite)リーダー(TPL)のBamHI部位に挿入され、pJJ741を生じた。c)移入ベクターpJJ743は、PAdV−3TPLおよびPAdV−4繊維遺伝子を含むpJJ741のNheI/NotIフラグメントをpCI−neo(Promega)に挿入することによって構築した。
【図2】細胞株中のPAdV−4繊維DNAのPCR検出。トランスフェクトした細胞からのゲノムDNAを精製して、PCRによってPAdV−4繊維遺伝子の存在を試験した。a)レーン1=PK15クローン8、レーン2=PK15クローン9、レーン3=pJJ743対照、M=1Kb DNAラダー。b)レーン1〜5=STクローン2〜6、レーン6は非トランスフェクトST DNA、レーン7はPADV−4 DNA、レーン8はpJJ743対照。c)レーン9〜15=STクローン7〜14、M=1Kb DNAラダー。
【図3】細胞株からのPAdV−4繊維mRNAの逆転写PCR(RT−PCR)検出。トランスフェクトされた細胞から総RNAを調製し、PCRによってPAdV−4繊維遺伝子が陽性のクローンを、RT−PCRによってPAdV−4繊維mRNAの合成に関して試験した。a)レーン1=PK15クローン8、レーン2=PK15クローン9、M=1Kb DNAラダー。b)レーン1〜6=STクローン2、3、5、6、7および8、M=1Kb DNAラダー。
【図4】PAdV−3およびPAdV−4の繊維タンパク質の完全アミノ酸配列、およびペプチドの位置。ウサギの抗血清を生成するために使用される共通ペプチドおよび特異的ペプチドの配列は、太字および下線で強調表示されている(Reddy等、1995年;Kleiboeker、1995年)。
【図5】改変したワクチンにおけるPAdV−3およびPAdV−4の繊維の実証。組換え型PAdV−糖タンパク質55(gp55)は、PK15A細胞(未改変)またはPK743細胞(改変)中で増やした。複製ウイルスサンプル中に存在するタンパク質を、SDS/PAGEにより分離して、ニトロセルロース上にブロットして、共通繊維ペプチドに対して産生されたウサギ抗体(パネルa)、またはPAdV−4の特異的な繊維ペプチドに対して産生されたウサギ抗体(パネルb)のいずれかで染色した。レーン1=非改変ウイルス、レーン2=改変ウイルス。広範囲の分子量マーカー、繊維タンパク質の位置およびおおよその分子量を示す。
【図6】チャレンジ後のブタの体温。0日目にブタにワクチンを接種し、22日目にブースター用量を投与した。49日目にブタに古典的ブタコレラウイルス(CSFV)を使ってチャレンジした。各々のブタの直腸温度を、毎日、CSFVチャレンジ後に測定した。ブタの各々の群の平均温度および標準誤差バーを示す。◆=非改変rPAdV−gp55s/c、■=改変rPAdV−gp55s/c、▲=改変rPAdV−gp55経口、□=対照、+=安楽死させた。
【図7】ワクチン接種後のNPLA力価。0日目にブタにワクチンを接種し、22日目にブースター投与を与えた。49日目にブタにCSFVを使ってチャレンジした。0日目に全血サンプルを収集し、次に、1週間間隔でNPLA抗体の存在について血清をアッセイした。ワクチンを接種した群の平均NPLAの力価を示す。□=非改変rPAdV−gp55s/c、□=改変rPAdV−gp55s/c、■=改変rPAdV−gp55経口、↓=ワクチンを接種。
【図8】ワクチンを経口接種したブタにおけるCSFV特異的な中和抗体の発達。0日目にブタにワクチンを経口接種し、22日目に1回分のブースター投与を与えた。49日目に、CSFVを使ってブタにチャレンジした。0日目に全血サンプルを収集し、次いで1週間間隔でNPLA抗体の存在について血清をアッセイした。ワクチンを接種した群の平均NPLA力価を示す。□=非改変rPAdV−gp55*、ドット入り□=改変rPAdV−gp55。*=Hammond等、2003年における別個の実験データ。↓=ワクチン接種。
【図9】ワクチンを接種したブタにおけるCSFV特異的中和抗体の発達の比較。0日目にブタにワクチンを経口接種し、22日目に1回分のブースターの投与を与えた。49日目に、CSFVを使ってブタにチャレンジした。0日目に全血サンプルを収集し、次に、1週間間隔でNPLA抗体の存在について血清をアッセイした。ワクチンを接種した群の平均NPLA力価を示す。↓=ワクチン接種。s/c=非改変ワクチンを皮下投与、改変s/c=改変ワクチンを皮下投与、経口=非改変ワクチンを経口投与*、改変経口=改変ワクチンを経口投与。*=Hammond等、2003年における別個の実験データ。
【図10】ブタの脾臓におけるCSFV抗原の検出。死後後、脾臓サンプルを抗原捕捉ELISAによってCSFV抗原の存在について分析した。群の平均抗原力価を示す。陽性=陽性対照の脾臓サンプル、陰性=陰性対照の脾臓サンプル、+=安楽死させた。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の例示的な実施形態の詳細な説明)
本発明は、改良されたアデノウイルスベクターの知見および構築に関連する。本明細書に記載する方法および組成物は、ブタアデノウイルスベクターをモデルシステムとして使用して例示されるが、本発明の方法を、ブタ以外の宿主に感染する組換え型アデノウイルスベクターを調製する際の使用に容易に適応させることができることは、容易に明らかである。本発明の方法および組成物は、組換え型アデノウイルスベクターの親和性を変更し、それによって、このベクターが通常はベクターが感染しない組織を標的とするようにしてこのベクターの有用性を高めるために使用される。本発明では、第2の繊維遺伝子を、このような第2の繊維遺伝子を発現する細胞株中で、組換え型アデノウイルスベクターを増殖させることによって組換え型アデノウイルスに提供し、このような細胞株中の増殖が、組換え型アデノウイルスベクターの親和性の変化に関連する。組換え型アデノウイルスを繁殖させる細胞株中に含まれる第2の繊維は、細胞株中の繊維遺伝子が特異的である組織にアデノウイルスが感染することを可能にする。この知見を活用するための方法および組成物が、本発明により意図されている。
【0031】
「アデノウイルスベクター」(adenovirus vector)という用語は、本明細書では、「アデノウイルスベクター」(adenoviral vector)と相互に交換可能に使用される。本明細書で使用するアデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクターによって送達されるべきタンパク質を発現させるためのポリヌクレオチド構築物を含む組換え型ベクターである。ポリヌクレオチド構築物は、好ましくは、送達されるべきタンパク質をコードするDNAを含む。このようなDNAは、ヌクレオチド塩基A、T、C、およびGからなってもよいが、このような塩基の任意のアナログおよび修飾型を含んでもよい。このようなアナログおよび修飾塩基は、当業者には周知であり、メチル化ヌクレオチド、ヌクレオチド間修飾(たとえば、非荷電性結合およびチオエート)、糖アナログの使用、並びに修飾されたかおよび/または代替的な骨格の構築物(たとえば、ポリアミド)が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0032】
本明細書で使用されるアデノウイルスベクターは、標的細胞中で複製可能型であっても、または複製欠損型であってもよい。ベクターが、複製欠損である場合、ベクターは、複製を促進するために、ヘルパー細胞またはヘルパーウイルスを使用することを必要とし得る。ヘルパー細胞またはヘルパーウイルスを使用して、複製欠損型アデノウイルスベクターの複製を促進することは慣用的であり、当該分野で周知である。一般に、このようなヘルパー細胞は、複製欠損型にするために組換え型アデノウイルスベクターがノックアウトされている実体の機能を提供する。一方、複製可能型ベクターは、ベクター中で欠陥のある何かを供給するために、第2のウイルスまたは細胞株のいずれをも必要としないという点で、「ヘルパーなしのウイルスベクター(helper−free virus vector)」と呼ばれ得る。
【0033】
上記のとおり、本発明は、所定のアデノウイルスベクターの親和性を変更させる、すなわちアデノウイルスの特異性を変更するために使用される。「改変された親和性(altered tropism)」という用語は、種の特異性の変更、およびアデノウイルスの組織または細胞の特異性の変更を包含する。本発明の例示的な実施態様では、アデノウイルスベクターの特異性は、ベクターに第2の繊維タンパク質を提供することによって変更される。アデノウイルスベクターに2つの繊維タンパク質が存在することによって、アデノウイルスベクターの親和性の所望の変更が達成される。
【0034】
A.繊維遺伝子
本発明は、これらのベクターの親和性を変更するために、組換え型アデノウイルスに第2の繊維を提供する。好ましい実施態様では、本発明の方法は、組換え型ブタアデノウイルスベクターの親和性を変更することを包含する。PAdV感染症は、脳炎、肺炎、腎臓障害および下痢と関連付けられた。(Derbyshire(1992年)In:「Diseases of Swine」(編集者Leman等),第7版,Iowa State University Press、Ames,Iowa.225〜227ページ)。さらに、PAdVは、感染した子豚の腸における体液性応答および粘膜抗体応答の両方を刺激することができる。Tuboly等(1993年)Res.in Vet.Sci.54:345〜350ページ。記載されている少なくとも5つのPAdV血清型がある(PAdV−1、PAdV−2、PAdV−3、PAdV−4、PAdV−5;Derbyshire等(1975年)J.Comp.Pathol.85:437〜443ページ;およびHirahara等(1990年)Jpn.J.Vet.Sci.52:407〜409ページ)。これらの血清型の各々は、たとえばブタ用のワクチン製造に使用される組換え型アデノウイルスベクターを調製するために、容易に使用することができる。PAdV−3の配列全体はクローニングされた(Reddy等、1998年;米国特許第6,492,343号、引用することにより本明細書に援用する)。さらに、制限マッピングを使用し、制限フラグメントをクローニングすることで、PAdDV−3並びにPAdV−1およびPAdV−2のゲノムの広範囲にわたる特徴付けが行われている。Reddy等(1993年)Intervirology 36:161−168;Reddy等(1995b)Arch.Virol.140:195〜200ページを参照。
【0035】
様々なPAdV血清型の様々なセグメントのヌクレオチド配列が、当業者に周知である。たとえば、PAdV−3のE3、pVIIIおよび繊維の遺伝子は、Reddy等(1995年)Virus Res.36:97〜106ページに示される。PAdV−1およびPAdV−2のE3、pVIIIおよび繊維の遺伝子は、Reddy等(1996年)Virus Res. 43:99〜109に示される。Kleibockerは、PAdV−4のE3、pVIIIおよび繊維の遺伝子配列の配列を提供する(Kleiboeker 1994年 Virus Res.31:17〜25ページ)。PAdV−4繊維遺伝子配列は、Kleiboeker(1995年)Virus Res.39:299〜309によって決定された。PAdV−1、PAdV−2、PAdV−3、PAdV−4、およびPAdV−5の各々の逆方向末端反復配列も、当該分野で公知である(Reddy等(1995年)Virology212:237〜239ページ)。PAdV−3 ペントンの配列は、McCoy等(1996年)Arch.Virol.141:1367〜1375によって決定された。PAdV−4のE1領域のヌクレオチド配列は、Kleiboeker(1995年)Virus Res.36:259〜268ページに示された。PAdV−3のプロテアーゼ(23K)遺伝子の配列は、McCoy等(1996年)DNA Seq.6:251〜254ページによって決定された。PAdV−3ヘキソン遺伝子(および23Kプロテアーゼ遺伝子の14個のN末端コドン)の配列は、登録番号U34592でGenBankのデータベースに寄託されている。PAdV−3 100K遺伝子の配列は、登録番号U82628でGenBankデータベースに寄託されている。PAdV−3 E4領域の配列は、当該分野で公知である(Reddy等(1997年)Virus Genes 15:87〜90ページ)参照。Vrati等(1995年、Virology,209:400〜408ページ)は、OAdVの配列を開示している。PAdV−5の繊維およびHNF−61 pVIII、ORF2、ORF3、ORF4の配列は、GenBank登録番号AF186621に示される。PAdV−5の完全ゲノム配列は、GenBank登録番号AC_000009 BK000411に示され、そこでは、繊維遺伝子は、Genbank登録番号AP_000254に割り当てられており、26487..27989の間にあることが示されている。ブタアデノウイルスCの完全な配列は、GenBank登録番号NC_002702にあり、ここでは、繊維遺伝子は、26487..27989間にあり、GenBank登録番号NP_108675.1を割り当てられていると示されている。PAdV−4の繊維配列は、Genbank登録番号U25120に示される。
【0036】
ヒトアデノウイルスHAdV−3、HAdV−4、HAdV−5、HAdV−9およびHAdV−35は全て、当該分野で十分に特徴付けられ、American Tissue Culture Collection ATCCから入手可能である。Ad5のNational Center for Biotechnology InformationのGenBank登録番号は、M73260/M29978であり;Ad9に関してはX74659であり;そしてAd35に関してはU10272である。Chow等(1977年、Cell 12:1〜8ページ)は、ヒトアデノウイルス2の配列を開示しており;Davison等(1993年、J.Mole.Biol.234:1308〜1316ページ)は、HAdV−40のDNA配列を開示しており;Sprengel等(1994年、J.Virol.68:379〜389ページ)は、HAdV−12 DNAのDNA配列を開示しており;Vrati等(1995年、Virology,209:400〜408)は、OAdVの配列を開示しており;Morrison等(1997年、J.Gen.Virol.78:873〜878ページ)は、CAdV−1のDNA配列を開示しており;Reddy等(1998年、Virology,251:414)は、PAdVのDNA配列を開示している。様々なヒトアデノウイルスの繊維配列は、登録番号Y14241(HAdV−28繊維遺伝子)、Y14241(HAdV−17繊維遺伝子)としてGenBankから入手可能である;HAdV−17の完全ゲノム配列は完全ゲノムに示されており、AC_000006 BK000406にあり、ここで繊維CDSは30935..32035間にあり、Genbank登録番号AP_000157.1が割り当てられている;X76706(HAdV−15H9(Morrison)繊維遺伝子)、X76548(繊維タンパク質のHAdV−31遺伝子);AB125751(HAdV−6繊維遺伝子の完全cds)、AB125750(HAdV−1繊維遺伝子の完全cds)、AB073168(HAdV−34繊維遺伝子の完全cds);Genbank登録番号S75136は、HAdV−8の繊維遺伝子の配列を示す。HAdV−3繊維遺伝子の部分配列は、GenBank登録番号AB 244095に寄託され、ヒトアデノウイルスの完全ゲノム配列は、GenBank登録番号DQ086466に割り当てられ、これは、繊維配列が、GenBank登録番号ABB17809.1が割り当てられた位置31368..32327に位置することを示している。HAdV−12の完全配列は、繊維遺伝子CDSが、GenBank登録番号AP_000135.1が割り当てられた位置29368..31131にあるAC_000005 BK000405に示される。ヒトアデノウイルス5の完全配列は、繊維CDSが、GenBank登録番号AP_000226.1が割り当てられた31042..32787にあるGenBank登録番号AC_000008に示される。ヒトアデノウイルス2の完全配列は、繊維cdsが、GenBank登録番号AP_000190.1が割り当てられた31030..32778にあるGenBank登録番号AC_000007 BK000407に示される。繊維タンパク質株:130HのHAdV−9遺伝子の配列は、GenBank登録番号AB098565に示される。別のHAdV−9繊維遺伝子配列は、GenBank登録番号X74659に位置する。HAdV−37の繊維遺伝子は、GenBank登録番号X94484に示される。HAdV−19の繊維遺伝子は、GenBank登録番号X94485に示される。HAdV−15の繊維遺伝子は、GenBank登録番号X72934に示される。HAdV−7(E3領域を伴う)の繊維遺伝子は、GenBank登録番号Z48954に示される。HAdV−4繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号X76547に示される。HAdV−31繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号X76548に示される。HAdV−8繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号X74660に示される。HAdV−3繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号X01998 M12411に示される。HAdV−21繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号AY380332に示される。HAdV−7繊維遺伝子の配列は、GenBank登録番号AY380326に示される。
【0037】
サルアデノウイルス1の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_006879に示され、ここでは繊維は、位置28731..29822に位置し、GenBank登録番号YP_213988.1を割り当てられ、繊維2変異体は、GenBank登録番号YP_213989.1を割り当てられる。サルアデノウイルスAの完全配列は、GenBank登録番号NC_006144が割り当てられ、繊維は29606..31246に位置し、GenBank登録番号YP_067930を割り当てられる。サルアデノウイルス25の完全ゲノム配列は、GenBank登録番号AF394196に示され、ここでは繊維cdsは32137..33414にあり、GenBank登録番号AAL35536.1を割り当てられる。
【0038】
Reddy等(1998年)Journal of Virology 72:1394)は、BAdV−3のヌクレオチド配列を開示している。この配列では、BAdV−3のペントン領域は12919で開始し、14367で終了し;ヘキソン領域は17809で開始し、20517で終了し;BAdV−3の繊維領域は27968で開始し、30898で終了する。繊維配列、およびウシアデノウイルス3型のpVIII遺伝子、初期領域3、および繊維タンパク質の配列は、登録番号D16839でGenBank登録番号に寄託されている。ウシアデノウイルスDの完全ゲノムは、NC_002685が与えられており、ここでは、繊維遺伝子は、22343..23950間に位置するとアノテーションされ、繊維遺伝子は、GenBank登録番号NP_077404.1において与えられる。同様に、ウシアデノウイルスAの完全ゲノムは、Genbank登録番号NC_006324に与えられており、ここでは、繊維は位置27483..29294に位置し、GenBank登録番号YP_094049.1に示される。ウシアデノウイルス4のTHT/62株の完全ゲノムは、GenBank登録番号AF036092に示され、ここで繊維遺伝子は位置22343..23950に位置し、GenBank番号AAK13185.1を割り当てられている。BAdV−3の完全配列は、GenBank登録番号AC_000002 BK000401に示され、ここでは、繊維cdsは27968..30898にあり、Genbank登録番号AP_000041.1を割り当てられている。BAdV−2繊維および17Kタンパク質の配列は、AF308811に示される。
【0039】
CAdV−1の完全ゲノム配列は、Genbank登録番号AC_000003 BK000402が与えられており、ここで繊維cdsは、位置25887..27518にあるとアノテーションされ、ここでタンパク質および関連コード配列は、Genbank登録番号AP_000069.1に寄託されている。CAdV−2のコード配列は、Genbank登録番号AC_000020 BK000403に示されており、ここでは繊維cdsは、位置26592..28220にあるとアノテーションされ、このタンパク質および関連コード配列は、GenBank登録番号AP_000632.1に寄託されている。GenBank登録番号Z37498は、CAdV−2繊維遺伝子の配列を示す。
【0040】
OAdV−7の完全ゲノム配列は、GenBank登録番号NC_004037に示されており、ここでは、繊維cdsは、位置22273..23904にあるとアノテーションされ、タンパク質および関連コード配列は、GenBank登録番号NP_659529.1に寄託されている。
【0041】
ネコアデノウイルスの繊維配列は、登録番号AY518270の下にGenBankに寄託されている。
【0042】
マウスアデノウイルスAの完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_000942に示されており、ここでは、繊維遺伝子cdsは25412..27253に位置し、GenBank登録番号NP_015554.1を割り当てられている。
【0043】
GenBank登録番号AC_000013 BK001451は、ニワトリアデノウイルス9の完全ゲノムを示し、ここでは、繊維CDSは、タンパク質とともに位置30161..31876にあるとあのテーションされており、このタンパク質および関連コード配列は、AP_000390.1に寄託されている。FAdV−10繊維配列は、GenBank登録番号AF007579に示される。ニワトリアデノウイルスDの完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_000899に示されており、ここでは、繊維遺伝子cdsは30161..31876に位置し、GenBank登録番号NP_050293.1を割り当てられている。ニワトリアデノウイルスAの完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_001720に示されており、ここでは、繊維遺伝子CDSは28363..30495に位置し、GenBank登録番号NP_043891.1を割り当てられている。シチメンチョウアデノウイルス3の完全ゲノムは、GenBank AC_000016 BK001454に示されており、ここでは、その繊維は、位置22518..23882にあるとアノテーションされ、GenBank登録番号AP_000495.1を割り当てられている。
【0044】
カエルアデノウイルスのゲノム配列は、GenBank登録番号NC_002501に与えられており、ここでは、その繊維cdsは位置22343..23632に位置し、GenBank登録番号NP_062452.1を割り当てられている。
【0045】
特定の例示的な実施態様では、本発明は、PAdV−4由来の繊維配列を使用する。PAdV−4の新規な繊維コード配列のヌクレオチド配列は、配列番号1に示される。PAdV−1由来の新規な繊維コード配列のヌクレオチド配列は、配列番号2に示される。PAdV−2由来の新規な繊維コード配列のヌクレオチド配列は、配列番号3に示される。
【0046】
上記の説明から容易に明らかなとおり、当業者は、多様なアデノウイルス型からの繊維遺伝子に関する多くのコード配列を認識している。本明細書の発明は、これらの繊維配列のうちの何れか1つの使用に限定されないことを理解すべきである。実際、本発明の方法および組成物は、上記の任意の繊維、これらの繊維の任意の改変体、およびアデノウイルスのその他の様々な株から同定される繊維を使用して実施することができる。当業者は、アデノウイルスのゲノム構成の知識、および上記の例示的な配列の知識から、このようなその他の繊維を簡単に同定することができる。この点に関して、米国特許出願公開第20020034519号(引用することにより、全体を本明細書に援用する)において、その図12〜17は、様々な繊維タンパク質(HAdV−5繊維タンパク質(その中の図12)、BAdV−3(その中の図13)、ヒツジアデノウイルス287繊維タンパク質(その中の図14);PAdV−3繊維タンパク質(その中の図15);CAdV−2繊維タンパク質(その中の図16);および図17A〜17Gを含む)は、多重整列プログラムのclustal法を使用して、哺乳類のアデノウイルス繊維領域のアミノ酸整列を示しているので、特に着目されることが留意される。
【0047】
本発明の例示的な実施態様では、組換え型アデノウイルスベクターの調製に使用される従来の方法により調製された組換え型アデノウイルスベクターは、組換え型アデノウイルス中に存在する繊維遺伝子とは異なる繊維遺伝子を発現する組換え細胞株である細胞株中で繁殖される。組換え型アデノウイルスは、好ましくは、その血清型に関連する繊維遺伝子を含むが(たとえば、組換え型アデノウイルスがPAdV−3ベースの組換え型アデノウイルスである場合、当該組換え型アデノウイルス中の繊維遺伝子は、固有のPAdV−3繊維遺伝子である)、本発明を使用して、固有の繊維遺伝子が改変された(たとえば、別のアデノウイルスの繊維と交換されたか、あるいは固有の野生型繊維遺伝子とは異なるように変異させた)組換え型アデノウイルスの親和性を変更することもまた可能であることを理解すべきである。
【0048】
本明細書で使用する場合、「繁殖する」という用語は、「複製する」と相互に交換可能に使用され、アデノウイルスベクターが、再生または増殖する能力を指す。これらの用語は、当該分野で十分に理解されている。本明細書で使用する場合、複製は、アデノウイルスタンパク質の生成を伴い、一般に、アデノウイルスベクターの再生産に関する。複製は、当該分野で標準的で、本明細書に記載するアッセイ、たとえばバーストアッセイまたはプラークアッセイを使用して測定することができる。「複製」および「繁殖」は、ウイルスの生成過程に直接的または間接的に関連する任意の活動を含み、たとえば、ウイルス遺伝子の発現;ウイルスのタンパク質、核酸、またはその他の成分および生成;完全なウイルス中へのウイルス成分のパッケージング;および細胞溶解が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0049】
例示的な実施態様では、第2の繊維タンパク質をコードするコードポリヌクレオチド配列の一部または全部は、このアデノウイルスベクターが繁殖される組換え型宿主細胞中で発現される。この宿主細胞中における組換え型アデノウイルスベクターの繁殖は、アデノウイルスの親和性を変える。本明細書に開示する特定の実施態様では、PAdV−4繊維遺伝子を発現する組換え細胞が調製される。例示的な実施態様では、PAdV−4繊維遺伝子を安定して発現する細胞株が生成された。PAdV−3繊維は、ウイルスがブタの腸内の細胞に付着するのを促進し、PAdV−4血清型繊維は、ブタの気道細胞への付着を可能とする。CSFV[Hammond等、2000年]のgp55遺伝子を発現する既存のブタアデノウイルス組換え型ベクターは、これらの細胞株中で増殖させることができ、結果として得られる先祖ウイルスは、固有のPAdV−3繊維および追加のPAdV−4繊維タンパク質の両方を含む。2つの異なる繊維タンパク質がウイルスキャプシド上に存在すると、ベクターの細胞親和性が広まる。したがって、ベクターが動物中のより多様な細胞型を標的とし、送達された外来遺伝子をより広範囲の宿主免疫応答に暴露することが可能になる。さらに、繊維遺伝子を欠失させて外来遺伝子を挿入するためのより多くの空間を提供するように設計されたPAdVベクターは、繊維タンパク質を発現する細胞株でこれらのベクターを継代することによって補完させることも可能である。このアプローチは、さらにDNAのパッケージング能を有する繊維陽性ウイルスの生成を可能にする。
【0050】
このような細胞株による組換え型PAdVの増殖は、ベクターの、宿主細胞の標的範囲を拡張することによってベクターの効力を増大させ、ベクター中に挿入可能な外来遺伝物質の量を増加し、その結果、いくつかの抗原、あるいは抗原およびサイトカインなどの免疫調節剤を1つのベクターに組み入れ、その後送達することを可能にすることが予想される。
【0051】
「宿主細胞」は、外因性DNA配列によって形質転換された細胞であるか、あるいは形質転換が可能な細胞である。本発明では、宿主細胞は、アデノウイルスベクターの複製を支援することが可能であって(つまり、アデノウイルスによる感染が可能であり、その内部でアデノウイルスが複製することを可能にする)、繊維タンパク質の全部または一部をコードする外因性DNA配列によって形質転換された宿主細胞である。細胞の「形質転換」は、外因性DNAを細胞中に導入することを含む。外因性DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み込まれる(共有結合される)かまたは組み込まれなくてもよいことが理解されるべきであるが、本発明では、細胞は、繊維コードポリヌクレオチドによって安定して形質転換される。安定して形質転換される細胞は、外因性DNAが染色体中に組み込まれており、その結果、染色体複製により該DNAが娘細胞によって遺伝する細胞である。哺乳類細胞では、この安定性は、細胞が外因性DNAを含む娘細胞の集団から成る細胞株またはクローンを確立する能力によって実証される。
【0052】
例示的な実施態様では、本発明は、安定して形質転換されたブタ細胞であって、PAdV−4繊維をコードする外因性DNAによって安定して形質転換されたブタ細胞の例を提供する。より詳細には、2つの例示的な連続(安定した)細胞株であるブタの腎臓15(PK15)およびブタの睾丸(ST)は、PAdV−4由来の繊維遺伝子を含み、発現するように操作された。これらの細胞株は、それぞれPK−743およびST−743と命名された。この繊維遺伝子は、両方の細胞株中にPAdV−4繊維のmRNAが存在することを実証することによって、発現が実証された。両方の繊維に共通のペプチドに対して産生されたウサギポリクローナル抗体、またはPAdV−4繊維に特異的なペプチドに対して産生されたウサギポリクローナル抗体のいずれかを使用するウェスタンブロット分析は、改変ウイルス中の両方の繊維の存在を明確に実証した。この細胞株は、感染研究に使用され、この研究では、PK15A(非改変対照)およびPK−743(改変)細胞を組換え型PAdV−3−gp55によって感染させ、細胞が80%の細胞病理効果を示した時に、子孫ウイルスを収集した。
【0053】
子孫ウイルスは、当業者に公知の標準的な技術を使用して分析することができる。たとえば、子孫ウイルスのタンパク質内容物のウェスタンブロット分析は、ビリオン中にPAdV−3およびPAdV−4の繊維タンパク質が両方存在することを実証した。PAdV−3繊維の予想分子量(45kD)のバンドは、両方のウイルス調製品に存在したが、PAdV−4繊維の予想分子量(77kD)のバンドは、改変ウイルスの調製品に特異的に検出された。
【0054】
本発明は、例示的なブタ宿主細胞を提供するが、その他の適切な宿主細胞は容易に調製することができ、宿主細胞中のアデノウイルスゲノムおよびアデノウイルス繊維間の組換えを支援する任意の細胞を含む。宿主細胞は、組換え型アデノウイルスゲノムを含むプラスミドでトランスフェクトされ、これらの宿主細胞中にウイルス粒子を生成する。真核細胞および哺乳類細胞株の増殖は、当業者に周知の手順である。
【0055】
上記のとおり、組換え型アデノウイルスベクターの調製は、当業者が十分に周知している技術を使用する。このような技術を使用して、1つ以上の異種ポリヌクレオチド配列は、アデノウイルスゲノムの1つ以上の領域中に挿入され、組換え型アデノウイルスベクターが生成される。これらのベクターの調製は、所定のアデノウイルスゲノムの挿入能力、および組換え型アデノウイルスベクターが、挿入された異種配列を発現する能力のみによって限定される。一般に、アデノウイルスゲノムは、組換え型アデノウイルスのサイズを野生型ゲノムの長さの約105%に増加させるとともに、ウイルス粒子中にパッケージングされることが可能な状態を保つ挿入物を受け入れることが可能である。挿入能力は、非必須領域を欠失させ、そして/またはたとえばE1の機能などの必須領域を欠失させることにより増やすことが可能であり、その機能は、E1の機能を提供するヘルパー細胞株のようなヘルパー細胞株によって提供することができる。実施態様によっては、タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドは、アデノウイルスのE3遺伝子領域に挿入される。その他の実施態様では、E3領域の非必須部分を欠失させており、タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドが、欠失によって生じた隙間に挿入される。組換え型アデノウイルスベクターが、PAdV−3ベースのアデノウイルスベクターであるいくつかの好ましい実施態様では、異種遺伝子は、PAdV−3 E3のポリアデニル化シグナルの後ろでかつPAdV−3繊維遺伝子のORFの開始点前に位置するPAdV−3ゲノムの領域内に挿入することができる。
【0056】
実施態様によっては、アデノウイルスが生成され、ここで、挿入、または欠失とその後の挿入がアデノウイルスのE1遺伝子領域にあり、次に、該ベクターが、E1機能を提供するヘルパー細胞株中で繁殖される。異種遺伝子が挿入され得るその他の領域としては、E4領域がある。組換え型アデノウイルスベクターが、PAdV−3ベースのベクターである場合、ORF3をコードする領域を除くE4領域全体を欠失させて、異種遺伝子のための空間を作ることができる。Li等(Virus Research 104(2004年)181〜190ページ)に示されているように、ゲノムの右側末端に位置するPAdV−3 E4領域は、左方向に転写され、7つの(p1〜p7)ORFをコードする潜在能力を有する。これらのうち、ORF p3のみが、複製に必須である。したがって、他のE4領域の残りの全部ではないにしても多くは、ウイルスを複製欠損型にすることなく容易に欠失させることができ、その結果、異種挿入物のためのより多くの空間が可能になる。
【0057】
本発明の一実施態様では、挿入は、たとえば、望ましい治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドなどを挿入することが望ましいアデノウイルスゲノムの領域を含むプラスミドを構築することによって達成することができる。プラスミドは、次に、プラスミドのアデノウイルス部分に認識配列を有する制限酵素によって消化され、そして異種ポリヌクレオチド配列は制限消化部位に挿入される。挿入された異種配列と共にアデノウイルスゲノムの一部分を含むプラスミドは、アデノウイルスゲノム、またはアデノウイルスゲノムを含む直鎖状プラスミドとともに、細菌細胞(たとえば、大腸菌など)に共形質転換(co−transform)される。プラスミド間の相同組換えは、挿入された異種配列を含む組換え型アデノウイルスゲノムを生成する。これらの実施態様では、アデノウイルスゲノムは、全長ゲノムであるか、あるいは本明細書に記載するように、1つ以上の欠失を含むことができる。
【0058】
たとえば、異種配列を挿入する部位を提供するか、あるいは別の部位に追加の挿入能力を提供するためのアデノウイルス配列の欠失は、当業者が十分に周知している方法で行うことができる。たとえば、プラスミド中にクローンされるアデノウイルス配列の場合、1つ以上の制限酵素による消化(アデノウイルス挿入物中に少なくとも1つの認識配列がある)、およびその後の連結は、場合によって、制限酵素認識部位間の配列の欠失を生じる。あるいは、アデノウイルス挿入物中の単一の制限酵素認識部位における消化、その後のエクソヌクレアーゼ処理、その後の連結は、該制限部位に隣接するアデノウイルス配列の欠失を生じる。上記のように構築され、1つ以上の欠失を含むアデノウイルスゲノムの1つ以上の部分を含むプラスミドは、アデノウイルスゲノム(全長または欠失された)、あるいは全長かまたは欠失されたかのいずれかのゲノムを含むプラスミドとともに、細菌細胞中に共トランスフェクトされ、相同組換えによって、1つ以上の特異的な部位に欠失を有する組換え型ゲノムを含むプラスミドを生成する。次に、この欠失を含むアデノウイルスビリオンは、哺乳類細胞(たとえば、ただしこれらだけに限らないが、安定して形質転換された、本明細書に記載する追加の繊維遺伝子を含む細胞)を、組換え型アデノウイルスゲノムを含むプラスミドでトランスフェクトすることによって獲得することが可能である。
【0059】
挿入部位は、アデノウイルス中の内因性プロモーターに隣接し、転写的に下流でよい。「内因性」のプロモーター、エンハンサー、または制御領域は、アデノウイルスの固有のものであるか、または、それに由来する。所定のプロモーターの下流の、挿入部位として使用可能な制限酵素認識配列は、挿入が望ましいアデノウイルスゲノムの配列の一部または全部の知識から、当業者が容易に決定することができる。あるいは、様々なインビトロ技術を利用して、制限酵素認識配列を特定の部位に挿入すること、あるいは制限酵素認識配列を含まない部位に異種配列を挿入することが可能である。このような方法としては、1つ以上の制限酵素認識配列を挿入するための、オリゴヌクレオチドが媒介するヘテロ二重鎖形成(たとえば、Zoller等(1982年)Nucleic Acids Res.10:6487−6500;Brennan等(1990年)Roux’s Arch.Dev.Biol.199:89〜96年;およびKunkel等(1987年)Meth.Enzymology154:367〜382ページ参照)、およびより長い配列を挿入するための、PCRによって媒介される方法が挙げられるが、これらだけに限らない。たとえば、Zheng等(1994年)Virus Research 31:163〜186ページ参照。
【0060】
内因性プロモーターの下流ではない部位に挿入される異種配列の発現も、真核細胞中で活性のある転写制御配列を、異種配列とともに提供することによって達成することができる。このような転写制御配列は、細胞プロモーター、たとえばウイルスプロモーター、たとえばヘルペスウイルス、アデノウイルス、およびパポーバウイルスのプロモーター、並びにレトロウイルスの長い末端反復(LTR)配列のDNAコピーを含むことができる。このような実施態様では、異種遺伝子は、異種遺伝子が、そような転写調節要素に作動可能に連結される発現構築物中に導入される。
【0061】
特定の例示的実施態様では、PAdV−4繊維遺伝子は、強力な構成的転写を実現するように、CMVプロモーターの制御下に配置された。ウイルスの感染の後期に生じるウイルスパッケージング時にも、繊維の生成を継続することが望ましい。ヒトアデノウイルスは、宿主細胞の翻訳開始因子を不活性化することによって、宿主細胞のタンパク質合成を遮断することが実証された(Zhang等、1994年)。したがって、後期ウイルスメッセージの効率的な翻訳は、PAdV−3 TPL配列を含むことによって維持されると予想された。TPLは、合計248個のヌクレオチド(nt)を有する3つのエキソンから構成され、これらは、後期ウイルスmRNAの5’末端にスプライスされる(Reddy等、1998年)。この配列は、比較的不規則な構造をmRNAの5’末端に提供して宿主細胞の開始複合体からの独立性を与えることによって機能すると考えられる(Dolph等、1988年;Dolph等、1990年)。組換え型繊維mRNAの継続的な翻訳を確保するために、PAdV−4繊維遺伝子は、pCI−TPL中のPAdV−3 TPL配列の下流に配置された。ルシフェラーゼを発現する構築物にHAdV 5 TPLを添加すると、感染していない細胞中でも、発現レベルが上昇することが報告されている(Sheay等、1993年)。
【0062】
異種遺伝子の発現を調節するために使用することが可能な制御配列は、たとえば、転写制御配列、プロモーター、エンハンサー、上流の制御ドメイン、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、翻訳制御配列、リボソーム結合部位、および翻訳終止配列であってよい。
【0063】
組換え型アデノウイルスベクターの調製は、プラスミドとしてのクローン化アデノウイルスゲノムの繁殖、およびプラスミドを含む細胞からの感染性ウイルスの回収を含むと理解すべきである。
【0064】
ウイルス核酸の存在は、当業者に公知の技術によって検出することができ、こうした技術としては、ハイブリダイゼーションアッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応、およびその他のタイプの増幅反応が挙げられるが、これらだけに限らない。同様に、タンパク質の検出方法は、当業者が十分に周知しており、様々なタイプの免疫アッセイ、ELISA、ウェスタンブロット、酵素アッセイ、免疫組織化学などが挙げられるが、これらだけに限らない。本発明のヌクレオチド配列を含む診断キットは、細胞破壊および核酸精製のための試薬、並びにハイブリッドの形成、選択、および検出のための緩衝剤および溶媒も含み得る。本発明のポリペプチドまたはアミノ酸配列を含む診断キットは、タンパク質の単離、ならびに免疫複合体の形成、単離、精製、および/または検出のための試薬も含み得る。
【0065】
本発明は、組換え型アデノウイルスベクターを改変させて、その親和性を変更する。これらのベクターは、好ましくは、様々な外来遺伝子またはヌクレオチド配列またはコード配列(原核性、および真核性)を標的細胞に送達するために使用される。このようなベクターは、広範な疾病に対する防御を提供するためのワクチンとして特に有用であり、多くのこのような遺伝子は、当該分野で既に公知である。ウイルスワクチンとしては、DNAワクチン(つまり、プラスミド、ベクター、または、DNAをブタ中に直接注入するための従来からあるその他の担体を使用したもの)、生ワクチン、改変生ワクチン、不活性化ワクチン、サブユニットワクチン、弱毒ワクチン、遺伝子操作されたワクチンなどが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0066】
アデノウイルス中に組み入れられる外因性(つまり、外来)ヌクレオチド配列は、1つ以上の目的の遺伝子、または遺伝子ではないが他の機能(好ましくは目的の治療上の機能)を持つ他のヌクレオチド配列からなることができる。本発明との関連で、目的のヌクレオチド配列または遺伝子は、アンチセンスRNA、ショートヘアピン型RNA、リボザイム、またはその後目的のタンパク質に翻訳されるmRNAをコードすることができる。このようなヌクレオチド配列または遺伝子は、ゲノムDNA、相補DNA(cDNA)、または混合型(少なくとも1つのイントロンが欠失しているミニ遺伝子)を含み得る。ヌクレオチド配列または遺伝子は、制御または治療機能、成熟タンパク質、成熟タンパク質の前駆体、特に、シグナルペプチドを含む前駆体、多様な起源の配列の融合から生じるキメラタンパク質、あるいは改良または改変された生物学的特性を呈する、天然タンパク質の変異体をコードすることができる。このような変異体は、天然タンパク質をコードする遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換、および/または付加、あるいは、たとえば転位(transposition)または逆位(inversion)など、天然タンパク質をコードする配列の任意のその他のタイプの変更によって取得し得る。
【0067】
ベクターによって送達される遺伝子は、遺伝子が宿主細胞中で発現するのに適する要素の制御下に配置され得る(DNA制御配列)。適切なDNA制御配列は、遺伝子をRNA(アンチセンスRNAまたはmRNA)に転写し、このmRNAをタンパク質に翻訳するために必要な要素のセットを意味すると理解される。たとえば、これらの要素は、少なくとも1つのプロモーターを含む。このプロモーターは、構成的プロモーターまたは調節可能なプロモーターでよく、真核性、原核性、またはウイルス源、さらにアデノウイルス源の任意の遺伝子から単離することができる。あるいは、プロモーターは、目的遺伝子の天然プロモーターでよい。一般的に述べるなら、本発明に使用されるプロモーターは、制御配列を含むように改変させてもよい。例示的なプロモーターは、遺伝子が所定の組織タイプを標的とすべき時に、組織に特異的なプロモーターを含み得る。使用し得るその他の従来のプロモーターとしては、たとえば、多くの細胞型で発現することを可能にする、HSV−1 TK(ヘルペスウイルス型1のチミジンキナーゼ)遺伝子プロモーター、アデノウイルスMLP(主要後期プロモーター)、RSV(ラウス肉腫ウイルス)LTR(長い末端反復)、CMV前初期プロモーター、SV−40前初期プロモーター、およびPGK(ホスホグリセレートキナーゼ)遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0068】
アデノウイルスベクターによって送達されるべき遺伝子は、任意の遺伝子でよく、サイトカイン、たとえばインターフェロンおよびインターロイキンをコードする遺伝子、;リンホカインをコードする遺伝子;たとえば、病原生物(ウイルス、細菌または寄生生物)、好ましくはHIVウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)によって認識される受容体などの膜受容体をコードする遺伝子などの膜受容体をコードする遺伝子;第VIII因子および第IX因子などの凝固因子をコードする遺伝子;ジストロフィンをコードする遺伝子;宿主細胞の免疫性を高めるための抗原性エピトープをコードする遺伝子;主要組織適合遺伝子複合体のクラスIおよびIIタンパク質をコードする遺伝子、並びにこれらの遺伝子の誘導因子であるタンパク質をコードする遺伝子;抗体をコードする遺伝子;イムノトキシンをコードする遺伝子;毒素をコードする遺伝子;増殖因子または成長ホルモンをコードする遺伝子;細胞受容体およびそのリガンドをコードする遺伝子;腫瘍抑制因子をコードする遺伝子;心血管疾患に関わる遺伝子であって、腫瘍遺伝子を含むがこれだけに限らない遺伝子;繊維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、および神経成長因子(NGF)を含むが、これらだけに限らない成長因子をコードする遺伝子;e−nos、腫瘍抑制遺伝子であって、Rb(網膜芽細胞腫)遺伝子を含むが、これだけに限らないもの;リポタンパク質リパーゼ;スーパーオキシドジムスターゼ(SOD);カタラーゼ;酸素およびフリーラジカルスカベンジャー;アポリポタンパク質;pai−1(プラスミノーゲン活性化阻害剤−1);細胞性酵素、または病原生物によって生成される酵素をコードする遺伝子;自殺遺伝子が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0069】
特定の好ましい実施態様では、本発明のワクチンは、動物の疾病の原因に対してブタにワクチンを接種するように調製される。たとえば、ワクチンは、仮性狂犬病ウイルス(PRV)gp50;伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)S遺伝子;ブタロタウイルスのVP7およびVP8遺伝子;ブタ呼吸および生殖症候群ウイルス(PRRS)、特にORF3、5および7の遺伝子;ブタ流行性下痢ウイルスの遺伝子;ブタコレラウイルスの遺伝子;ブタパルボウイルスの遺伝子;および口蹄疫ウイルスの遺伝子;ブタサーコウイルスに関連する遺伝子;並びにブタインフルエンザウイルスの遺伝子に関するものであり得る。代表的なウシ病原体抗原としては、ウシヘルペスウイルス1型、ウシ下痢ウイルス;ウシコロナウイルス;および口蹄疫ウイルスの遺伝子が挙げられる。代表的なヒト病原体抗原としては、HIVウイルス抗原および肝炎ウイルス抗原が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0070】
サイトカインおよび増殖因子、たとえば血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮細胞増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、プレイオトロフィン、血小板由来増殖因子、エリスロポエチン、幹細胞因子(SCF)、TNF−α;インターフェロン、たとえばインターフェロン−γ、インターフェロンβ、インターフェロン−α、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);ストロマ細胞由来因子−1、マクロファージコロニー刺激因子、RANTES、IGF−1、SDF−1、MIP1α、MCP−1およびMCP−2、エオタキシン、エオタキシン3、エオタキシン4、LKN1、MPIF−2およびLD78ベータ、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン、たとえばIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、TOLL様受容体およびリガンド、インテグリン受容体なども、本発明のベクターを使用して送達され得る。
【0071】
場合によっては、遺伝子全体をベクター中に組み入れることが望ましいかもしれないが、野生型の生物に見られるような完全配列ではなく、使用され得る遺伝子のヌクレオチド配列の一部分のみ(これらが防御免疫応答または特異的な生物学的効果を生成するのに十分な場合)を含むその他のベクターも構築されることができることを理解すべきである。遺伝子が多数のイントロンを含む場合、cDNAが好適であり得る。
【0072】
上記のとおり、遺伝子は、適切なプロモーターの制御下に挿入され得る。さらに、ベクターは、エンハンサー要素およびポリアデニル化配列も含み得る。哺乳類細胞における外来遺伝子の成功裏の発現および発現カセットの構築を提供するプロモーターおよびポリアデニル化配列は、当該分野、たとえば米国特許第5,151,267号で公知であり、この特許の開示は、引用することにより本明細書に援用される。
【0073】
「発現カセット」という用語は、細胞内で遺伝子または遺伝子配列を発現することが可能な、天然または組換え技術で生成される核酸分子を指す。発現カセットは、一般に、プロモーター(転写開始を可能にする)、および1つ以上のタンパク質またはRNAをコードする配列を含む。必要に応じて発現カセットは、転写エンハンサー、非コード配列、スプライシングシグナル、転写終止シグナル、およびポリアデニル化シグナルを含み得る。RNA発現カセットは、一般に、翻訳開始コドン(翻訳の開始を可能にする)、および1つ以上のタンパク質をコードする配列を含む。必要に応じて、発現カセットは、翻訳終止シグナル、ポリアデノシン配列、内部リボソーム進入部位(IRES)、および非コード配列を含み得る。必要に応じて、発現カセットは、タンパク質に翻訳されない、遺伝子または部分遺伝子配列を含み得る。この核酸は、標的細胞のDNAまたはRNAの配列に変化を生じさせることが可能である。これは、ハイブリダイゼーション、多重鎖核酸の形成、相同組換え、遺伝子のコンバージョン、RNA干渉、またはその他の未だ記述されていないメカニズムにより達成することができる。
【0074】
アデノウイルスベクターは、1種より多くの外来遺伝子を含み得る。本発明の方法は、ブタ、ヒト、ウシ、およびその他の哺乳類に感染する多様な疾病に対する防御を提供するために使用することができる。本発明の任意の組換え型抗原決定基または組換え型生ウイルスは、抗原決定基ワクチンまたは生ワクチンベクターに関して記載されている方法と実質的に同じ方法で処方および使用することができる。
【0075】
本発明の例示的な実施態様では、異種ヌクレオチド(本明細書では、異種核酸とも呼ぶ)が、タンパク質をコードするヌクレオチドであるが、異種ヌクレオチドは、実際上、細胞内に存在または転写することが望ましい配列を含む任意のポリヌクレオチドで良いと理解すべきである。したがって、ベクターは、たとえば、遺伝子の機能、転写、または翻訳の配列特異的な崩壊または抑制を引き起こす任意のポリヌクレオチドを送達するために使用され得る。このような異種ヌクレオチドは、siRNA、マイクロRNA、干渉RNAまたはRNAi、dsRNA、リボザイム、アンチセンスポリヌクレオチド、およびsiRNA、マイクロRNA、dsRNA、リボザイムまたはアンチセンス核酸をコードするDNA発現カセットからなる群より選択され得る。SiRNAは、一般に15〜50塩基対、好ましくは19〜25塩基対を含み、かつ細胞内で発現される標的遺伝子またはRNAと同一またはほぼ同一のヌクレオチド配列を有する、二本鎖構造を含む。siRNAは、2個のアニールしたポリヌクレオチド、またはヘアピン構造を形成する1個のポリヌクレオチドから構成され得る。マイクロRNA(mRNA)は、それぞれのmRNA標的の破壊または翻訳抑制を導く約22ヌクレオチド長の小さい非コードポリヌクレオチドである。アンチセンスポリヌクレオチドは、遺伝子またはmRNAに対して相補的な配列を含む。アンチセンスポリヌクレオチドとしては、モルホリン、2’−O−メチルポリヌクレオチド、DNA、RNAなどが挙げられるが、これらだけに限らない。このような異種ヌクレオチド配列は、インビトロで重合させるか、組換え体であるか、キメラ配列を含むか、あるいは、これらの基の誘導体でよい。これらの配列は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、合成ヌクレオチド、あるいは標的RNAおよび/または遺伝子が抑制されるような任意の適切な組合せを含み得る。
【0076】
例示的な実施態様では、改変rPAdV−gp55をPK15−743細胞中で増殖させたか、あるいはrPAdV−gp55を非改変PK15A細胞中で増殖させた。次に、これは、市販の大型白色ブタに対し、皮下または経口経路で投与された。改変ワクチンは、皮下注射または経口経路によって投与した時に、CSFVによる致命的なチャレンジからブタを完全に防御した。さらに、皮下経路によって与えられた改変ワクチンは、非改変ワクチン群で検出されたレベルより高い最高レベルのNPLA抗体を生成した。従来の研究では、非改変ワクチンを経口経路で投与すると、チャレンジ以前に、1回分の用量のブースターの後でも、NPLA抗体の力価は検出できないことが実証された[Hammond等、2001年;Hammond等、2003年]。しかし、経口群では、1回の用量の改変ワクチンの後、非常に著しいレベルのNPLA抗体が検出され、これらのレベルは、2回目の用量の投与によって増進された。これは、PAdV−3およびPAdV−4の繊維タンパク質の両方を含む改変ワクチンが、非改変ワクチンと比べて、ブタ内のより多様な組織へと標的化され、その結果、宿主中でより広範囲の免疫応答を生成していることを実証する。
【0077】
本明細書では、本発明の方法に従って調製された治療上有効な量の組換え型アデノウイルスベクター、組換え型アデノウイルス、または組換え型タンパク質を、薬学的に許容可能な賦形剤および/またはアジュバントと組み合わせて含む薬学的組成物を特に意図している。このような薬学的組成物は、当該分野で周知の技術に従って調製され、用量を決定することが可能である。本発明の薬学的組成物は、任意の公知の投与経路で投与することができ、たとえば、全身的(たとえば、静脈内、気管内、経脈管的、肺内、腹腔内、鼻腔内、非経口、経腸的、筋肉内注射、皮下、腫瘍内または頭蓋内)、経口投与により、エアロゾル投与により、あるいは肺内点滴が挙げられるが、これらだけに限らない。投与は、単回投与で行われるか、あるいは一定の時間間隔の後に1回以上反復して行うことができる。適切な投与経路および投薬量は、状況(たとえば、処置される個体、処置される障害、あるいは目的の遺伝子またはポリペプチド)によって異なるが、当業者が決めることができる。
【0078】
本発明は、さらに、繊維遺伝子を含む細胞株中で繁殖されなかった組換え型ベクターと比べて、改変された親和性を有する治療上有効な量の組換え型アデノウイルスベクター(たとえば、PAdV−3アデノウイルスベクター)が、処置を要する哺乳類被験体に投与される処置方法を提供する。
【0079】
本発明に使用される抗原は、固有または組換え型の抗原ポリペプチドまたはフラグメントのいずれであってよい。これらは、部分配列、全長配列、またはさらにh融合体(たとえば、組換え型宿主に適するリーダー配列を有するか、あるいは別の病原体のための追加の抗原配列を含む)であってもよい。本発明のウイルス系によって発現される好ましい抗原性ポリペプチドは、抗原をコードする全長(またはほぼ全長)配列を含む。あるいは、抗原性の(つまり、1つ以上のエピトープをコードする)、より短い配列を使用することができる。より短い配列は、インビトロアッセイでウイルスの感染力を中和する抗体を誘発することが可能なエピトープとして定義される「中和エピトープ」をコードすることができる。好ましくは、このペプチドは、宿主中で「防御免疫応答」、つまり免疫された宿主を感染症から防御する抗体媒介免疫応答および/または細胞媒介免疫応答を誘起することが可能な「防御エピトープ」をコードするべきである。
【0080】
本発明に使用される抗原は、特に、短いオリゴペプチドから構成される場合、ワクチン担体に結合することができる。ワクチン担体は、当該分野で周知であり、たとえば、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)がある。
【0081】
挿入可能な所望の抗原またはそのコード配列の遺伝子としては、哺乳類の疾病を引き起こす生物、特にウシ病原体、たとえば口蹄疫ウイルス、ウシロタウイルス、ウシコロナウイルス、ウシヘルペスウイルス1型、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3型(BPI−3)、ウシ下痢ウイルス、パスツレラヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)、ヘモフィルスソムナス(Haemophilus somunus)などの遺伝子が挙げられる。ヒト病原体の抗原をコードする遺伝子も、本発明の実施に有用である。外来遺伝子またはフラグメントを保有する本発明のワクチンは、適切な経口担体、たとえば腸溶性コーティング剤形において経口投与することもできる。経口製剤は、たとえば、医薬品等級のマンニトール、乳糖、デンプン類、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリンセルロース、炭酸マグネシウムなどの一般的に使用されている賦形剤を含む。経口ワクチン組成物は、約10%〜約95%、好ましくは約25%〜約70%の活性成分を含む、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出剤、または散剤の形態を取り得る。経口および/または鼻腔内ワクチン投与は、全身免疫と組み合わせて、粘膜免疫(呼吸および消化管に感染する病原体を防御する上で重要な役割を果たす)を高めるために好適であり得る。
【0082】
さらに、ワクチンは、坐剤中に処方することができる。坐剤の場合、ワクチン組成物は、従来の結合剤および担体、たとえばポリアルカリグリコールまたはトリグリセリドを含む。このような坐剤は、約0.5%〜約10%(w/w)、好ましくは約1%〜約2%の範囲の活性成分を含む混合物から形成され得る。
【0083】
本発明のワクチン組成物(単数または複数)を動物に投与するためのプロトコルは、本開示を考慮すると、当該分野の技術範囲内である。当業者は、抗原性フラグメントに対する抗体および/またはT細胞媒介免疫応答、あるいは別のタイプの治療または予防効果を誘発するのに効果的である用量のワクチン組成物の濃度を選択する。広範な制限内では、投与量は、臨界的であるとは考えられない。一般的に、ワクチン組成物は、好都合な体積、たとえば約1〜10ccの賦形剤中に約1〜約1,000マイクログラムのサブユニット抗原を送達する方法で投与される。好ましくは、1回の免疫における投与量は、約1〜約500マイクログラム、より好ましくは約5〜10から約100〜200マイクログラムまで(たとえば、5〜200マイクログラム)のサブユニット抗原を送達する。
【0084】
投与のタイミングも、重要な場合がある。たとえば、一次接種の次に、必要な場合、好ましくはブースター接種を行うことができる。必要に応じてではあるが、最初の免疫から数週間から数ヶ月後に、動物に対して第2のブースター免疫を行うことが好ましい場合もある。疾病に対して持続的な高レベルの防御を確実に行うために、一定の間隔で、たとえば数年ごとに1回、動物にブースター免疫を再度投与すると役立つ場合がある。あるいは、初期投与量を経口投与し、次に、その後の接種を行うか、あるいはこの逆に行うことができる。好ましいワクチン接種プロトコルは、慣用的なワクチン接種プロトコル実験により確立することができる。
【0085】
インビボの組換え型ウイルスワクチンのすべての投与経路に関する投与量は、宿主/患者のサイズ、防御が必要な感染症の性質、担体などを含む様々な要因によって決まり、当業者が容易に決定することができる。非制限的な例により、103pfu〜1015pfu、好ましくは104〜1013pfu、より好ましくは105〜1011pfuなどの投与量を使用することができる。インビトロのサブユニットワクチンと同様、追加の投与量は、関連する臨床要因によって決定されるとおりに投与することができる。
【0086】
本発明の実施態様によっては、組換え細胞株は、実施例に示されているように、繊維領域、たとえばPADV−4の繊維領域を含む発現カセットを構築し、これらによって宿主細胞を形質転換し、組換え型アデノウイルスの親和性を変更するという本発明の目的のための第2の繊維遺伝子を含む細胞を提供することによって生成される。これらの組換え細胞株は、第2の繊維をアデノウイルスベクター中に挿入することを可能にすることができる。これらの細胞株は、DNAが介在する共トランスフェクトおよびその後のインビボにおける組換えにより、繊維遺伝子の欠失を、外来遺伝子またはフラグメントをコードする異種ヌクレオチド配列で置き換えた組換え型ベクターを生成する際にきわめて有用でもある。さらに、宿主細胞はまた、アデノウイルスゲノムにおいてコードされる1つ以上の必須の機能を提供することもでき、ここで、該細胞株は、特定の欠損型組換え型アデノウイルスベクターで欠けている1つまたは複数の機能を提供する。したがって、繊維を含む組換え細胞株はまた、たとえば、ヘルパーウイルスとの同時感染により、あるいは特定のウイルス機能をコードするウイルスゲノムのフラグメントを安定した形態で組み込むかさもなければ維持することによりウイルス機能を提供することが可能な補完細胞株でもよい。
【0087】
本発明の組換え型の哺乳類(特にブタ)の細胞株も、タンパク質の組換え生成に使用することができる。
【0088】
本発明は、遺伝子送達を必要とするブタ、ウシ、ヒト、ヒツジ、イヌ、ネコまたはその他の哺乳類などの哺乳類に遺伝子送達を提供するか、遺伝子の欠損を制御するか、治療用遺伝子もしくはヌクレオチド配列を提供するか、および/または遺伝子の変異体を誘発もしくは改変するための方法も含む。この方法は、たとえば、遺伝性疾患、感染性疾患、心血管疾患、およびウイルス感染症を含むが、これらだけに限らない状態の処置に使用することができる。この種の技術は、現在、当業者によって、多様な疾患状態の処置に使用されている。従来の遺伝子療法に使用するために組み込むことが可能な外来遺伝子、ヌクレオチド配列、またはその一部分の例としては、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御遺伝子、ヒトミニジストロフィン遺伝子、α−1−抗トリプシン遺伝子、心血管疾患に関連する遺伝子などが挙げられる。
【0089】
特に、ヒトにおける遺伝子の送達に関連する本発明の実施は、遺伝性疾患(たとえば、血友病、サラセミア、気腫、ゴーシェ病、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィ、デュシェンヌ型またはベッカー型の筋障害など)、癌、ウイルス性疾患(たとえば、AIDS、ヘルペスウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症およびパピローマウイルス感染症)、心血管疾患などを含むがこれらに限定されない疾患の予防または処置を意図している。本発明の目的上、本発明の方法により調製されるベクター、細胞およびウイルス粒子は、エキソビボで(つまり、患者から取り出された1つ以上の細胞内で)、あるいは処置されるべき体内にインビボでのいずれかにより、被験体内に直接導入され得る。
【実施例】
【0090】
本発明の実施例では、PAdV−4繊維遺伝子を安定して発現する細胞株を生成するための方法および組成物の例示的な教示を提供する。古典的ブタコレラウイルス(CSFV)のgp55遺伝子を発現する既存のブタアデノウイルスの組換え型ベクター、たとえばPAdV−3ベクター[Hammond等、2000年]は、これらの細胞株中で増殖し得、結果として生じる先祖ウイルスは、固有のPAdV−3繊維および追加のPAdV−4繊維タンパク質の両方を含む。2つの異なる繊維タンパク質がウイルスキャプシド上に存在することによって、ベクターの細胞親和性が広げられる。このようにすることにより、ベクターは、動物中のより多様な細胞型を標的とし、送達された外来遺伝子をより広範囲の宿主免疫応答に暴露することが可能になる。さらに、組換え型ベクターは、繊維遺伝子を欠損させて、外来遺伝子を挿入するためのより多くの空間を提供するように操作され得、繊維タンパク質を発現する細胞株にこれらのベクターを継代させることによって補完することができる。このアプローチは、さらなるDNAパッケージング能力を有する繊維陽性ウイルスの生成を可能にする。
【0091】
(実施例1:材料および方法)
細胞およびウイルス:American Type Culture Collection番号CCL−33(ATCC−CCL−33)から取得したブタ腎臓細胞(PK−15)を、5%のウシ胎児血清(FCS)、10mMのN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタン−スルホン酸(HEPES)、1%のピルビン酸Naおよび2mMのグルタミンを補充したEarleの改変イーグル培地(EMEM)中で増殖させた。United States Department of Agriculture−Animal and Plant Health Inspection Services(USDA−APHIS)からのブタ睾丸細胞(ST)を、10%FCS、10mM HEPES、1%ピルビン酸Na、0.25%ラクトアルブミン加水分解物(LAH)および2mMのグルタミンを補充したEMEM中で維持した。
【0092】
ブタアデノウイルスは、2%FCSを補充したEMEM中に維持された初代ブタ腎臓(10PK)細胞で増殖させ、90%の細胞が細胞変性効果(CPE)を示す時に収集した。すべての培地に、2.5μg/mlのフンギゾーン(fungizone)(Squibb)、100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(CSL)をさらに補充した。
【0093】
ウイルスDNAの調製:ウイルスDNAを、Shinagawa等(1983年)に記載されているように多少変更したHirt(1967年)の方法によって調製し、製造業者の指示書に従って制限酵素消化を行った。
【0094】
プラスミドDNAの調製:Qiagenシステムを製造業者の指示書に従って使用してプラスミドDNAを調製した。
【0095】
PAdV−4 DNAからのPAdV−4繊維遺伝子の単離:以下のプライマー対を使用してPAdV−4 DNAからPADV−4繊維遺伝子を増幅した:
【0096】
【化1】
PCRスーパーミックス(Life technologies)を94℃で1分間、50℃で2分間、および72℃で30秒間を30サイクル行い、サイクルごとに30秒間伸長する伸長プロトコルで使用してPCRを実施した。
【0097】
プラスミド構築物:PAdV−4繊維PCR生成物をゲル精製し、pGEM−T(Promega)に連結して、プラスミドPJJ392を生じさせた(図1a)。制限酵素消化の後、PAdV−4繊維遺伝子を含むpJJ392からのBamHI/BglIIフラグメントを、プラスミドpCI−TPLのBamHI部位に挿入し、pJJ741を生じさせた(図1b)。次に、TPL−PADV−4繊維遺伝子を含むpJJ741のNheI/NotIフラグメントをpCIneo(Promega)に挿入することによって、転移ベクターpJJ743を構築した(図1c)。プラスミド構築物を、制限酵素消化によって正しい挿入物の存在についてチェックし、TPL配列の5’に結合するプライマー5’TTT ACT GGG CTT GTC GAG ACA G 3’を使用する配列決定によって確認した。
【0098】
安定した細胞株の生成および特徴付け:STおよびPK−15細胞をそれぞれの培地中で増殖させ、約5×106の細胞を、300V、960μFおよび∞Ωの設定のBio−Rad Genepulserを使用して、20μgのXmnI直鎖状プラスミドpJJ743 DNAで電気穿孔した。細胞を、1.25%DMSOを補充したそれぞれの培地(Melkonyan等、1996年)中で、一晩放置して回復させた。次に、800μg/ml(ST)または1000μg/ml(PK15)のいずれかのG418(Promega)を培養物に添加してG418耐性細胞を選択した。個々のクローンを限界希釈によって単離し、増やした。クローンを、繊維遺伝子の存在についてPCRでスクリーニングし、RT−PCRで繊維mRNAの発現を確認した。
【0099】
ゲノムDNAの精製:トランスフェクト細胞からのゲノムDNAを、DNeasy Tissue Kit(Qiagen)を製造業者の指示書に従って使用して精製した。
【0100】
PCRの条件およびプライマー:PCRスーパーミックス(Gibco BRL)を使用して、94℃で10分間を1サイクル、94℃で1分間、50℃で1分間、および72℃で2分間を30サイクル、72℃で10分間の最終伸長という標準プロトコルでPCRを実施した。プライマー対5’ GCA CTG GAC TCG GAT GGA CAおよび3’ AGC TGC TTG GTC CTG CGT CT 3’を、804bpの予想バンドを有するPADV−4繊維遺伝子の検出に使用した。
【0101】
細胞mRNAのRT−PCR精製:トランスフェクト細胞からの総RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を製造業者の指示書に従って使用して精製した。
【0102】
RT−PCR第1鎖cDNAの合成:mRNAを、第1鎖cDNA合成用SUPERSCRIPTプレ増幅システム(Gibco BRL)を製造業者の指示書に従って使用してcDNAに変換した。
【0103】
標的cDNAのRT−PCR増幅:標的cDNAを、上記のPCRプロトコルおよびプライマーを使用して増幅した。
【0104】
rPAdV−gp55ストックの生成:PK15A、PK15−743、STおよびST−743細胞を、rPAdV−gp55による感染前に90%の密集度まで培養した。200μlのrPAdVgp55を細胞シートに添加し、37℃で1時間にわたって吸着させた。20mlのEMEM(2%の最終濃度のFCSを補充した)を添加した。フラスコを37℃で5%CO2中でインキュベートし、毎日、細胞変性効果について観察した。フラスコが70〜80%の細胞変性効果を示した時、3回凍結/融解することによってウイルスを収集した。
【0105】
精製ウイルスストックの調製:フラスコの各々の群からの上清をプールし、Jouan C3000ベンチ遠心分離機内において2000rpmで20分間にわたって遠心分離することによって澄明とした。次に、上清をSW28超遠心分離チューブ中にデカントし、Beckman LM−80超遠心分離機において25,000rpm、20℃で90分間にわたって遠心分離した。上清を廃棄し、ウイルスのペレットを500μlのTE中に再懸濁させた。材料を、必要になるまで、1.5mlのスクリューキャップチューブ(Sarstedt)内に−20℃で保管した。
【0106】
不連続ショ糖密度勾配を使用する精製:粗製ウイルス調製物を、さらに、NTE中で60%(w/v)、30%(w/v)および20%(w/v)の3種類の濃度のショ糖を含むSW28超遠心分離チューブ内に用意した不連続ショ糖勾配を使用して精製した。1mlのウイルスストックを勾配の上に注意深く重層し、このチューブをBeckman LM−80超遠心分離機内で28,000rpmにて4℃で2時間にわたって遠心分離した。精製されたウイルスを5mlのシリンジおよび19ゲージの針を使って取り出し、SW28超遠心分離チューブ内に入れ、次いでこの遠心分離チューブにはTEを充填した。次に、精製されたウイルスを、Beckman LM−80超遠心分離機内で25,000rpmで20℃で90分間遠心分離してペレット状にして、ショ糖を除去した。ペレットを最後にTE中に再懸濁させて、必要になるまで−20℃で保存した。
【0107】
繊維特異的ペプチドのウサギ抗血清の生成:PAdV−3およびPAdV−4の繊維タンパク質(Reddy等、1995年;Kleiboeker 1995年)のアミノ酸配列を比較し、2つの合成ペプチド(Auspep Pty Ltd−オーストラリア)を設計および生成した。ペプチド1は、PAdV−3とPAdV−4との間で保存された繊維タンパク質の領域を含み、ペプチド2は、PAdV−4繊維に特異的な配列を構成した。
【0108】
【化2】
PAdV−3およびPAdV−4繊維タンパク質の完全アミノ酸配列、並びに2つのペプチドの位置を図5に示す。ウサギにおいて免疫応答を生成するため、両方のペプチドをKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)に結合した。両ペプチド結合体を表1に示すようにウサギ中に注入して、特異的な抗血清を生成させた。
【0109】
【表1】
PAdV−4繊維の存在についての精製したウイルスの検査:SDS−PAGEゲル分析。精製したウイルスのサンプルを、8〜12%のBis−Tris SDS−PAGEプレキャストゲル(Invitrogen)で、PADV−3およびPADV−4の繊維タンパク質の存在について分析した。電気泳動後、100Vで1時間にわたって免疫ブロットを行うことにより、タンパク質をニトロセルロース膜上に転写した。次に、膜は、TBS/3%のウシ血清アルブミン中で、4℃で一晩にわたってブロックした。
【0110】
PAdV−4繊維の存在に関する精製したウイルスの検査:ウェスタンブロット分析。洗浄および抗体のインキュベーションをすべて、室温で実施した。膜を、TBS−Tween/Triton中で5分間にわたって2回、およびTBSで10分間にわたって1回洗浄した。TBS/3%BSA中で200倍に希釈したウサギ抗繊維ポリクロナール抗体を膜に添加し、次に1時間にわたってインキュベートした。膜を、TBS−Tween/Triton中で5分間を2回、TBS中で10分間を1回洗浄した。膜を、次に、5%の脱脂粉乳/ブロット(blotto)溶液中で500倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Sigma)に結合したヤギ抗ウサギとともにインキュベートした。膜を、次に、上記のように洗浄し、化学発光強化(ECL)検出(Amersham Pharmacia Biotech Ltd)を使用して、タンパク質バンドを視覚化した。
【0111】
ブタ実験を使用するインビボ分析。PK15−743細胞中で増殖させた改変rPAdV−gp55、または非改変PK15A細胞中で増殖させたrPAdV−gp55を、以下のレジメを使用して市販の大型白色ブタに投与した:
0日目:すべてのブタを採血し、ワクチンを接種した
グループ1:第1回用量−2×105 TCID50非改変rPAdV−gp55ワクチンを皮下注射
グループ2:第1回用量−2×105 TCID50改変rPAdV−gp55を皮下注射
グループ3:第1回用量−2×105 TCID50改変rPAdV−gp55を経口経路
22日目:
グループ1:第2回ブースター用量−2×105 TCID50非改変rPAdV−gp55ワクチンを皮下注射
グループ2:第2回ブースター用量−2×105 TCID50改変PAdV−gp55ワクチンを皮下注射
グループ3:第2回ブースター用量−2×105 TCID50改変rPAdV−gp55経口経路
47日目:2匹の、感染の無い、年齢および体重が一致するブタを、チャレンジウイルス対照として持ち込んだ
49日目:無感染対照を含めてすべてのブタに、致命的な用量のCSFV「Weybridge」株(1000TCID50)を皮下注射によりチャレンジした。抗体投与後、直腸温度を毎日記録し、すべてのブタについて、食欲減退、横臥姿勢、下痢、および足の発赤として明らかになる疾病の臨床的徴候を毎日監視した。ブタを実験の終わりかまたは臨床的に重症な疾病を示した時に安楽死させ、CSFV抗原を検出のために脾臓を取り出した。安楽死させたすべてのブタについて、死後検査を実施した。
【0112】
CSFVに対する血清中和抗体の検出:ブタから1週間間隔で採血し、Terpstraおよびその同僚[1984]によって記載された中和ペルオキシダーゼ結合アッセイ(NPLA)により、CSFVに対する中和抗体の存在について血清を試験した。NPLA力価を、複製培養物の50%において200TCID50のWeybridge株を中和した血清希釈度の逆数として表した。
【0113】
抗原捕捉ELISA:チャレンジされたブタの脾臓におけるCSFV抗原の存在を、抗原捕捉ELISA[Shannon等、1993年]で決定した。
【0114】
(実施例2:ベクター、細胞株、およびウイルスの調製結果)
PAdV−4繊維を含む転移ベクターの生成。ヌクレオチドを配列決定したところ、転移ベクターpJJ743が、PAdV−3 TPL配列の下流にPAdV−4繊維遺伝子を含むことが確認された(図1c)。
【0115】
PAd V−4繊維タンパク質を恒常的に発現する細胞株の生成:ST細胞およびPK−15細胞を転移ベクターpJJ743でトランスフェクトし、次に、G418によって選択し、組み込まれたDNAを含むクローンを確立した。テストした2つのPK−15クローン(8および9)は、PAdV−4繊維遺伝子を含むことがPCRで示された(図2a)。pJJ743(2〜14)でトランスフェクトした12個のSTクローンをPCRで試験したところ、10個(2、3、5、6、7、8、および11〜14)がPAdV−4繊維遺伝子を含むことが示された(図2bおよびc)。次に、陽性クローンを、細胞型、続いて接頭語743、およびクローン番号で、すなわち、PK15−743−9のように命名した。
【0116】
次に、これらの細胞クローンにおける繊維mRNAの発現をRT−PCRで評価した。
【0117】
細胞株PK15−743−9およびST−743−2、5、6および8中に、多量の繊維4 mRNAが検出された(図3aおよびb)。
【0118】
増殖特性:繊維遺伝子を挿入後、PK−15−743およびST 743細胞はともに、親系統よりもゆっくりと増殖した。
【0119】
PAdV−4繊維の存在に関する精製したウイルスの検査:細胞株PK15−743−9をrPAdV−gp55に感染させ、細胞が80%の細胞変性効果を示した時にウイルスを収集した。ウイルスを精製し、8〜12%のSDS−PAGEゲルでサンプルを分離した。ナイロン膜に転写した後、ウェスタンブロットで、上記の2つのペプチドに対して産生されたウサギ抗血清を使用して、PAdV−3およびPAdV−4繊維タンパク質の存在についてサンプルを分析した。
【0120】
PAdV 3および4の繊維の共通のエピトープに対して産生されたペプチド抗血清で処理すると、非改変PK15細胞中で増殖させたrPAdV−gp55を含むレーンに、PAdV−3繊維の予想分子量(45kD)に対応するバンドのダブレットが見られた(図5a、レーン1)。対照的に、改変PK15−743−9細胞中で増殖させたrPAdV−gp55を含むレーンは、PAdV−3繊維に対応するダブレットを含んでおり、さらにPAdV−4繊維の予想分子量(77kD)に追加のバンドを含んでいた(図5a、レーン2)。PAdV−4繊維上の特異的なエピトープに対して産生されたペプチド抗血清で処理した場合、非改変PK15細胞中で増殖させたrPAdV−gp55を含むレーンで、バンドは検出されなかったが(図5bレーン1)、改変PK15−743−9細胞中で増殖させたrPAdV−gp55を含むレーンでは、PAdV−4繊維の予想分子量における1つのバンドが見られた(図5bレーン2)。
【0121】
(実施例3:ブタに対するワクチン接種の研究結果)
改変繊維プロファイルを有するrPAdV−gp55の効力をテストするためのブタ臨床試験。PAdV−3およびPAdV−4の血清型の両方の繊維を含む改変rPAdV−gp55ワクチンの効力をテストするため、大型白色ブタのグループに、非改変または改変のワクチンを2回投与し、致命的CSFVチャレンジに対する感受性を決定した。さらに、経口経路で投与した場合に、改変ワクチンが中和抗体を誘発して防御を与える能力をテストした。
【0122】
ワクチン接種に対するブタの反応:どちらのワクチン製剤をどちらの経路でワクチン接種しても、ブタに対する悪影響はなかった。体温の上昇も臨床的な徴候の発現もなかった。
【0123】
チャレンジ後のブタの体温:対照用ブタ、およびワクチンを接種した各グループのブタにおける、毎日の平均体温および標準誤差を図6に示す。
【0124】
対照用ブタ:対照用ブタは、4日目までに発熱し、CSFの臨床的徴候を示し、1匹のブタは、4日目と5日目の間の晩に死亡し、1匹のブタは、チャレンジ後(p.c)7日目に重篤な疾病に罹病したために安楽死させた。
【0125】
グループ1:非改変rPAdV−gp55を皮下投与されたどのブタも、実験が終了するまで、発熱せず、CSFのどの臨床的徴候も示さなかった。
【0126】
グループ2:改変rPAdV−gp55を皮下投与されたどのブタも、実験が終了するまで、発熱せず、CSFのどの臨床的徴候も示さなかった。
【0127】
グループ3:改変rPAdV−gp55を経口投与された3匹のブタのうち2匹は、実験が終了するまで、発熱せず、CSFのどの臨床的徴候も示さなかった。1匹のブタは、連続しない、別々の2日に40℃を超える体温を示したが、実験が終了するまで、他のCSFの臨床的徴候は示さなかった。重要なことに、このグループの平均体温は、チャレンジ期間中に40℃を超えて上昇しなかった。
【0128】
CSFV特異的な中和抗体の発達:すべてのブタを0日目に、そして実験が終了するまで1週間間隔で採血し、血清を、NPLA(Terpstra等、1984年)によりCSFVに対する中和抗体の存在についてテストした。NPLA力価を図7〜9に示す。
【0129】
対照用ブタ:対照用ブタは、検出可能なCSFV中和抗体を発達させなかった。
【0130】
グループ1:すべてのブタは、ワクチン接種後14日目には検出可能なCSFV中和抗体を発達させ、1匹のブタは、7日目に検出可能な力価を示した。このレベルは、2回目の用量を投与することによって上昇した。すべてのブタはチャレンジ後も生き残り、8192よりも高いチャレンジ後力価を有した。
【0131】
グループ2:すべてのブタは、ワクチン接種後14日目には、検出可能なCSFV中和抗体を発達させ、これらのレベルは、2回目の用量を投与することによって上昇した。すべてのブタはチャレンジ後も生き残り、8192よりも高いチャレンジ後力価を有した。
【0132】
グループ3:すべてのブタは、ワクチン接種後14日目には、検出可能なCSFV中和抗体を発達させ、これらのレベルは、2回目の用量を投与することによって上昇した。すべてのブタはチャレンジ後も生き残り、8192よりも高いチャレンジ後力価を有した。
【0133】
ブタの脾臓におけるCSFV抗原の存在のテスト:チャレンジされたブタの脾臓におけるCSFV抗原の存在を、抗原捕捉ELISA[Shannon等、1993]によって決定した。レベルを図9に示す。
【0134】
対照用ブタ:対照用のブタは、それぞれの脾臓内に高レベルの抗原を有し、終了時における進行中の感染症を示した。
【0135】
グループ1:どのブタも、脾臓においてCSFV抗原に陽性ではなく、すべてのブタが、実験の終わりに疾病およびウイルスがないことを実証した。
【0136】
グループ2:どのブタも、脾臓においてCSFV抗原に陽性ではなく、すべてのブタが、実験の終わりに疾病およびウイルスがないことを実証した。
【0137】
グループ3:どのブタも、脾臓においてCSFV抗原に陽性ではなく、すべてのブタが、実験の終わりに疾病およびウイルスがないことを実証した。
【0138】
上記の研究から、PAdV−4繊維遺伝子を含むプラスミドベクターは、PK15細胞およびST細胞中にトランスフェクトされ、PAdV−4繊維を発現する、安定してトランスフェクトされた細胞株が生成されたことが実証される。
【0139】
組換え型PADV−3(rPAdV−gp55)は、PAdV−4繊維を発現するPK15−743細胞株を通して継代させた後、PAdV−3およびPAdV−4の血清型繊維の両方を含むことが実証された。この改変された組換え型ワクチンをブタに投与し、CSFVチャレンジ臨床試験においてその効力を評価した。
【0140】
改変されたワクチンは、皮下注射として、または経口経路により投与した場合、CSFVによる致命的なチャレンジからブタを完全に防御した。チャレンジ後の体温反応に関しても、脾臓からのCSFV抗原の除去に関しても、改変されたワクチンを投与されたブタと非改変ワクチンを投与されたブタとの間で、有意差は検出されなかった。しかし、改変されたワクチンを皮下経路により投与した場合、3つのグループすべてで、非改変ワクチンのグループで検出されたレベルより大きい、最高レベルのNPLA抗体を生成した。さらに、本発明者らは以前、非改変ワクチンを経口経路で投与した場合、チャレンジ前も、1回分の用量のブースター後でさえも、NPLA抗体の力価を検出することができないことを実証した[Hammond等、2001年;Hammond等、2003年]。この実験では、非常に著しいレベルのNPLA抗体が、経口グループで、ほんの1回の投与の後に検出され、これらのレベルは、2回目の用量の投与によって上昇した。この知見は、PADV−3およびPAdV−4の繊維タンパク質の両方を含む改変されたワクチンが、非改変ワクチンと比べて、ブタ内のより広範囲にわたる組織を標的とし、その結果、宿主中でさらに大規模な免疫応答を生成するという優れた証拠を提供する。
【0141】
上記のデータから、改変されたrPAdV−gp55は、経口投与した場合、gp55に対して血清中和抗体を生成するのに効果的であるが、非改変ワクチンの場合はそうではないと結論することができる。したがって、PAdV−3およびPAdV−4の両方の繊維を含むこのキメラワクチンは、ブタ内の免疫応答の大きさを変更および/または増大させた。このようなワクチンは、効果的な経口送達を可能にするために生産されてもよい。本明細書で教示する例示的な実施態様を前提として、開発された技術は、PAdV−4繊維を任意のPAdV−3ベースのワクチン中に組み入れ、送達を標的化することによって効率を改善することを可能にする。
【0142】
さらに、二重繊維系の使用により組換え型アデノウイルスワクチンの親和性を増大させることを可能にする、その他のアデノウイルスベクターおよび細胞株を生成することができる。
【0143】
文献には、本発明のさらなる背景を提供する多くの参考文献が存在する。これらの参考文献のいくつかを以下に記載し、引用することにより、その全体を本明細書に援用する。
【0144】
【表2−1】
【0145】
【表2−2】
【0146】
【表2−3】
【0147】
【表2−4】
配列情報
配列番号1:繊維から右側末端(rhe)に向かう2250塩基の配列からのPAdV4繊維遺伝子。PAdV3繊維とよく一致している(太字)が、後続のすべての配列は新規である。
【0148】
【化3−1】
【0149】
【化3−2】
配列番号2 PadV1からの繊維から右側末端(rhe)に向かう1858塩基の配列。一部分(太字部分)でPAdV3とよく一致している。新規の配列は普通のフォント。
【0150】
【化4】
配列番号3 PAdV2の繊維から右側末端(rhe)に向かう969塩基の配列。一部分(太字部分)でPAdV3とよく一致しており、PAdV3の完全rheを含む。新規な配列は普通のフォント。
【0151】
【化5】
配列番号4:第2セットのデータからのPAdV2繊維。1176塩基の配列は、PAdV3とよく一致しているが、左側末端(太字)に向かって逆の向きにある。これは、最後のプライマーが、おそらくITRによりゲノムの両端で働かず、二重配列情報を与えたことを示唆している。
【0152】
【化6】
配列番号5:PAdV2コンティグの逆相補体
【0153】
【化7】
(配列表)
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノウイルスを含む組換え型アデノウイルスベクターであって、該アデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含み、該アデノウイルスに対して異種である第2の繊維遺伝子をさらに含み、該第2の繊維遺伝子が、該第2の繊維遺伝子を安定して発現する細胞株中で該組換え型アデノウイルスを増殖させることにより該組換え型アデノウイルスによって取得される、組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項2】
前記アデノウイルスベクターが、ブタ、ヒト、トリ、ウシ、ウマおよびヒツジのアデノウイルスからなる群より選択されるアデノウイルスベクターである、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項3】
請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクターを含む、組成物。
【請求項4】
薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アデノウイルスが、組換え型PAdV−1、組換え型PAdV−2、組換え型PAdV−3、組換え型PAdV−4、組換え型PAdV−5、組換え型PAdV−6、および組換え型PAdV−7からなる群より選択される組換え型ブタアデノウイルスである、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項6】
前記アデノウイルスが、組換え型ヒトアデノウイルス(HAdV)、組換え型ウシアデノウイルス(BAdV)、組換え型ヒツジアデノウイルス(OAdV)、組換え型マウスアデノウイルス(MAdV)、組換え型サルアデノウイルス(SAdV)、または組換え型イヌアデノウイルス(CAdV)である、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項7】
前記第2の繊維タンパク質が、PAdV−1、PAdV−2、PAdV−3、PAdV−4およびPAdV−5から選択される繊維タンパク質である、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項8】
前記組換え型アデノウイルスベクターが、前記第1の繊維タンパク質または前記第2の繊維タンパク質とは異なる第3の繊維タンパク質をさらに含む、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項9】
前記組換え型PAdVが組換え型PAdV−3である、請求項5に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項10】
前記組換え型ベクターが、PAdV−4由来の繊維タンパク質を含む、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項11】
前記組換え型アデノウイルスベクターが複製可能型である、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項12】
前記組換え型PAdVが複製欠損型である、請求項1に記載の組換え型ブタアデノウイルスベクター。
【請求項13】
前記組換え型PAdVが、前記PAdVゲノムの必須領域に挿入される異種ヌクレオチド配列を含み、前記繊維遺伝子を安定して発現する前記細胞株が、該異種ヌクレオチド配列が内部に挿入された該PAdVゲノムの該必須領域も発現する、請求項12に記載の組換え型ブタアデノウイルスベクター。
【請求項14】
前記組換え型アデノウイルスが、前記アデノウイルスゲノムの非必須領域内に挿入された異種ヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項15】
前記異種ヌクレオチド配列が、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質をコードする遺伝子である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ブタアデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含むアデノウイルスを含む宿主細胞であって、該宿主細胞が、該アデノウイルスとは異種であってブタアデノウイルスによって感染され得る繊維遺伝子を発現する組換え細胞である、宿主細胞。
【請求項17】
前記細胞が哺乳類細胞またはトリ細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
前記細胞が、ブタ細胞、ヒト細胞、ウシ細胞、およびヒツジ細胞からなる群より選択される哺乳類細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項19】
前記細胞が組換え型ブタ細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項20】
哺乳類被験体に免疫応答を誘発することが可能な組成物であって、該組成物が、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、組成物。
【請求項21】
哺乳類被験体に免疫応答を誘発するための方法であって、請求項20に記載の組成物を該哺乳類被験体に投与することを含む、方法。
【請求項22】
前記哺乳類被験体がブタである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アデノウイルスを調製する方法であって、
a.アデノウイルス繊維遺伝子を発現する組換え型宿主細胞を、該細胞がアデノウイルスに感染するのに適する条件下で培養することと、
b.キャプシド形成に必須の前記アデノウイルス配列と、異種タンパク質をコードする異種遺伝子とを含む組換え型アデノウイルスベクターに該細胞を接触させることであって、該組換え型アデノウイルスが、該宿主細胞中の該繊維遺伝子とは異なる繊維遺伝子を含むことと、
必要に応じて該アデノウイルスを収集することと
を包含する、方法。
【請求項24】
前記収集されたアデノウイルスベクターが、前記組換え型宿主細胞に接触しない前記アデノウイルスベクターと比べて、より広範な組織特異性を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アデノウイルスベクターは、複製に非必須の1つ以上のアデノウイルスタンパク質の一部または全部が必要に応じて欠失されている、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記異種タンパク質が、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
哺乳類宿主を感染症に対して防御するためのワクチンであって、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター、および必要に応じて薬学的に許容可能な賦形剤を含む、ワクチン。
【請求項28】
前記非必須領域が、ブタアデノウイルスゲノムの、E3領域、E4のORF1−2および4−7、E4の末端とITRとの間の領域からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
アデノウイルス繊維遺伝子を発現する宿主細胞、および発現制御配列の制御下に異種タンパク質をコードする核酸を含む組換え型アデノウイルスベクターを含む組成物であって、該組換え型アデノウイルスベクターが、該ベクターのアデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含む、組成物。
【請求項30】
前記宿主細胞が、前記組換え型ブタアデノウイルスベクターに感染している、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
動物にワクチンを接種する方法であって、治療上有効な量の請求項27に記載のワクチンを該動物に投与することを包含する、方法。
【請求項32】
組換え型アデノウイルスベクターの宿主組織細胞特異性を増大させる方法であって、該組換え型アデノウイルスの繊維タンパク質と異なる第2の繊維タンパク質を含む宿主細胞中で該組換え型アデノウイルスを増殖させることを包含する、方法。
【請求項33】
前記組換え型アデノウイルスベクターが、組換え型PADV−1、組換え型PADV−2、組換え型PADV−3、組換え型PADV−4、および組換え型PADV−5から選択される組換え型ブタアデノウイルスである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の繊維タンパク質が、PADV−1、PADV−2、PADV−3、PADV−4、およびPADV−5から選択される繊維タンパク質である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組換え型PADVが、前記第1の繊維タンパク質または前記第2の繊維タンパク質と異なる第3の繊維タンパク質をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記組換え型PADVが組換え型PADV−3である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記組換え型PADV−3が、PADV−4由来の繊維タンパク質を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記組換え型PADVが複製可能型である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記組換え型PADVが複製欠損型である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記組換え型PADVが、PADVゲノムの非必須領域に挿入された異種ヌクレオチド配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記異種ヌクレオチド配列が、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質をコードする遺伝子である、請求項40に記載の方法。
【請求項1】
アデノウイルスを含む組換え型アデノウイルスベクターであって、該アデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含み、該アデノウイルスに対して異種である第2の繊維遺伝子をさらに含み、該第2の繊維遺伝子が、該第2の繊維遺伝子を安定して発現する細胞株中で該組換え型アデノウイルスを増殖させることにより該組換え型アデノウイルスによって取得される、組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項2】
前記アデノウイルスベクターが、ブタ、ヒト、トリ、ウシ、ウマおよびヒツジのアデノウイルスからなる群より選択されるアデノウイルスベクターである、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項3】
請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクターを含む、組成物。
【請求項4】
薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アデノウイルスが、組換え型PAdV−1、組換え型PAdV−2、組換え型PAdV−3、組換え型PAdV−4、組換え型PAdV−5、組換え型PAdV−6、および組換え型PAdV−7からなる群より選択される組換え型ブタアデノウイルスである、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項6】
前記アデノウイルスが、組換え型ヒトアデノウイルス(HAdV)、組換え型ウシアデノウイルス(BAdV)、組換え型ヒツジアデノウイルス(OAdV)、組換え型マウスアデノウイルス(MAdV)、組換え型サルアデノウイルス(SAdV)、または組換え型イヌアデノウイルス(CAdV)である、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項7】
前記第2の繊維タンパク質が、PAdV−1、PAdV−2、PAdV−3、PAdV−4およびPAdV−5から選択される繊維タンパク質である、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項8】
前記組換え型アデノウイルスベクターが、前記第1の繊維タンパク質または前記第2の繊維タンパク質とは異なる第3の繊維タンパク質をさらに含む、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項9】
前記組換え型PAdVが組換え型PAdV−3である、請求項5に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項10】
前記組換え型ベクターが、PAdV−4由来の繊維タンパク質を含む、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項11】
前記組換え型アデノウイルスベクターが複製可能型である、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項12】
前記組換え型PAdVが複製欠損型である、請求項1に記載の組換え型ブタアデノウイルスベクター。
【請求項13】
前記組換え型PAdVが、前記PAdVゲノムの必須領域に挿入される異種ヌクレオチド配列を含み、前記繊維遺伝子を安定して発現する前記細胞株が、該異種ヌクレオチド配列が内部に挿入された該PAdVゲノムの該必須領域も発現する、請求項12に記載の組換え型ブタアデノウイルスベクター。
【請求項14】
前記組換え型アデノウイルスが、前記アデノウイルスゲノムの非必須領域内に挿入された異種ヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター。
【請求項15】
前記異種ヌクレオチド配列が、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質をコードする遺伝子である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ブタアデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含むアデノウイルスを含む宿主細胞であって、該宿主細胞が、該アデノウイルスとは異種であってブタアデノウイルスによって感染され得る繊維遺伝子を発現する組換え細胞である、宿主細胞。
【請求項17】
前記細胞が哺乳類細胞またはトリ細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
前記細胞が、ブタ細胞、ヒト細胞、ウシ細胞、およびヒツジ細胞からなる群より選択される哺乳類細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項19】
前記細胞が組換え型ブタ細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項20】
哺乳類被験体に免疫応答を誘発することが可能な組成物であって、該組成物が、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、組成物。
【請求項21】
哺乳類被験体に免疫応答を誘発するための方法であって、請求項20に記載の組成物を該哺乳類被験体に投与することを含む、方法。
【請求項22】
前記哺乳類被験体がブタである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アデノウイルスを調製する方法であって、
a.アデノウイルス繊維遺伝子を発現する組換え型宿主細胞を、該細胞がアデノウイルスに感染するのに適する条件下で培養することと、
b.キャプシド形成に必須の前記アデノウイルス配列と、異種タンパク質をコードする異種遺伝子とを含む組換え型アデノウイルスベクターに該細胞を接触させることであって、該組換え型アデノウイルスが、該宿主細胞中の該繊維遺伝子とは異なる繊維遺伝子を含むことと、
必要に応じて該アデノウイルスを収集することと
を包含する、方法。
【請求項24】
前記収集されたアデノウイルスベクターが、前記組換え型宿主細胞に接触しない前記アデノウイルスベクターと比べて、より広範な組織特異性を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アデノウイルスベクターは、複製に非必須の1つ以上のアデノウイルスタンパク質の一部または全部が必要に応じて欠失されている、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記異種タンパク質が、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
哺乳類宿主を感染症に対して防御するためのワクチンであって、請求項1に記載の組換え型アデノウイルスベクター、および必要に応じて薬学的に許容可能な賦形剤を含む、ワクチン。
【請求項28】
前記非必須領域が、ブタアデノウイルスゲノムの、E3領域、E4のORF1−2および4−7、E4の末端とITRとの間の領域からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
アデノウイルス繊維遺伝子を発現する宿主細胞、および発現制御配列の制御下に異種タンパク質をコードする核酸を含む組換え型アデノウイルスベクターを含む組成物であって、該組換え型アデノウイルスベクターが、該ベクターのアデノウイルスに固有の繊維遺伝子を含む、組成物。
【請求項30】
前記宿主細胞が、前記組換え型ブタアデノウイルスベクターに感染している、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
動物にワクチンを接種する方法であって、治療上有効な量の請求項27に記載のワクチンを該動物に投与することを包含する、方法。
【請求項32】
組換え型アデノウイルスベクターの宿主組織細胞特異性を増大させる方法であって、該組換え型アデノウイルスの繊維タンパク質と異なる第2の繊維タンパク質を含む宿主細胞中で該組換え型アデノウイルスを増殖させることを包含する、方法。
【請求項33】
前記組換え型アデノウイルスベクターが、組換え型PADV−1、組換え型PADV−2、組換え型PADV−3、組換え型PADV−4、および組換え型PADV−5から選択される組換え型ブタアデノウイルスである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の繊維タンパク質が、PADV−1、PADV−2、PADV−3、PADV−4、およびPADV−5から選択される繊維タンパク質である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組換え型PADVが、前記第1の繊維タンパク質または前記第2の繊維タンパク質と異なる第3の繊維タンパク質をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記組換え型PADVが組換え型PADV−3である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記組換え型PADV−3が、PADV−4由来の繊維タンパク質を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記組換え型PADVが複製可能型である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記組換え型PADVが複製欠損型である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記組換え型PADVが、PADVゲノムの非必須領域に挿入された異種ヌクレオチド配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記異種ヌクレオチド配列が、免疫調節剤、抗原、病原体、免疫原性ポリペプチド、治療用ポリペプチド、成長ホルモン、およびサイトカインからなる群より選択されるタンパク質をコードする遺伝子である、請求項40に記載の方法。
【図1】
【図2a)】
【図2b)】
【図2c)】
【図3a)】
【図3b)】
【図4】
【図5a)】
【図5b)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2a)】
【図2b)】
【図2c)】
【図3a)】
【図3b)】
【図4】
【図5a)】
【図5b)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−544303(P2009−544303A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521375(P2009−521375)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002710
【国際公開番号】WO2008/012682
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002710
【国際公開番号】WO2008/012682
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】
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