説明

組立台車及びそれを用いた生産システム

【課題】小型化を図ることができるとともに、楽な作業姿勢で部品の組付け作業を行うことにより作業効率を向上させることができる組立台車を提供すること。
【解決手段】モータ33により駆動する牽引車30を備える組立台車10において、台車の横フレーム11aの下側四隅に設けられた車輪12a,12bと、横フレーム11aの上側でワークWを保持するクランプ部20と、モータ33を駆動するためのバッテリ31と、牽引車30の駆動を制御する制御装置40とを有し、クランプ部20は、ワークWを保持した状態でワークWの重心位置Cが、車輪間Tの外側に位置するように配置され、バッテリ31は、クランプ部20の固定部20aに対し、クランプ部20に保持されたワークWとは逆側にて横フレーム11a上に配置され、牽引車30は、横フレーム11aの下側に配置されて横フレーム11aに連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車を備える組立台車及びそれを用いた生産システムに関する。より詳細には、ワークを移動させながら部品の組付け作業を行うことができる組立台車及びそれを用いた生産システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、重量物の組立工場では、ワークをコンベアで搬送しながら各種の部品を組み付けるラインが設けられている。ところが、このような生産ラインは、広大なスペースが必要であるばかりでなく、生産する製品の数量や形状などの変更があった場合に、その変更に応じてラインの構成を簡単に変更することができなかった。生産ラインを変更するには、時間と費用がかなりかかるからである。
【0003】
そこで、生産する製品の数量や形状などの変更に臨機応変に対応するために、コンベアの代わりに搬送台車を用いて、ワークを搬送しながら部品の組付けを行う生産システムが考えられている。ここで、生産システムに利用する搬送台車としては、ワーク等を積載して走行する積載自走車(積載型AGV)や、ワーク等が載置された台車を床面の磁気情報などにより規定される走行経路に沿って牽引して無人走行させる牽引型自走車(牽引型AGV)が知られている。そして、牽引型AGVは、積載型AGVに比べて台車駆動車の駆動輪に過大な荷重が掛かるのを防止することができ、車体の小型化も可能となるため、重量物を搬送する場合には牽引型AGVが用いられることが多い。
【0004】
このような牽引型AGVを備えた搬送台車が、特許文献1に開示されている。ここに開示された搬送台車では、特許文献1の図2や図3に示されているように、牽引型AGV(台車牽引車)が、搬送台車内の搬送方向前方側に配置され、牽引型AGVにより搬送台車を牽引するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−297809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した搬送台車では、牽引型AGVのモータを駆動するためのバッテリ及び制御装置が牽引型AGVに配置されているため、台車の小型化を図ることが困難であった。
また、この搬送台車を用いてワークを搬送しながら部品の組付けを行う場合、つまり搬送台車を用いた生産システムでは、ワークが台車上に積載(特に、重量物の場合には台車の中央に積載)されるため、ワークへの部品の組付け作業を前屈みの姿勢で行わなければならなかった。このように作業姿勢が前屈みになるため、作業効率が悪くなるとともに作業者への負担も大きかった。
【0007】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、小型化を図ることができる組立台車、及び、楽な作業姿勢で部品の組付け作業を行うことにより作業効率を向上させることができる組立台車及びそれを用いた生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一形態は、モータにより駆動する牽引車を備える組立台車において、台車のフレームの下側四隅に設けられた車輪と、前記フレームの上側でワークを保持するクランプ部と、前記モータを駆動するためのバッテリと、前記フレームに取り付けられ、前記牽引車の駆動を制御する制御装置とを有し、前記クランプ部は、ワークを保持した状態でワークの重心位置が、前記車輪間の外側に位置するように配置され、前記バッテリは、前記クランプ部の前記フレームへの固定部に対し、前記クランプ部に保持されたワークとは逆側にて前記フレーム上に配置され、前記牽引車は、前記フレームの下側に配置されて前記フレームに連結されていることを特徴とする。
【0009】
この組立台車では、ワークを保持した状態でワークの重心位置が、台車のフレームの四隅に設けられた車輪間の外側に位置するようにクランプ部が配置されている。このため、ワークは、その一部分が組立台車のフレーム端部からはみ出して保持される。これにより、作業者がワークに近づくことができ、楽な作業姿勢で部品の組付け作業を行うことができる。その結果、作業効率を向上させることができる。
【0010】
ここで、このようなクランプ部の配置では、ワークを保持した際に重量バランスが崩れて組立台車が転倒するおそれがある。そのため、この組立台車では、牽引車のモータを駆動するためのバッテリを、クランプ部のフレームへの固定部に対し、クランプ部に保持されたワークとは逆側にてフレーム上に配置している。これにより、バッテリの重量によって、ワークを保持した際の組立台車における重量バランスが保たれるため、組立台車の転倒を防止することができる。このようにして、この組立台車では、作業性と安全性とを確保している。
【0011】
また、この組立台車では、バッテリ及び制御装置が台車のフレームに取り付けられているため、牽引車の小型化を図ることができ、牽引車をフレームの下側に配置することができる。これにより、組立台車の小型化を図ることができる。
【0012】
上記した組立台車において、前記制御装置は、前記バッテリの上方に配置されていることが望ましい。
【0013】
このような構成にすることにより、制御装置もバッテリと同様に、クランプ部に保持されたワークとは逆側に配置される。その結果、組立台車の重心を台車中央に近づけることができるので、組立台車の安定性を一層向上させることができる。
【0014】
上記した組立台車において、前記牽引車は、上方に突出する連結ピンを有し、前記連結ピンは、前記フレームに設けられたピン受け開口に挿入され、抜け止め部材によって前記ピン受け開口から抜けないようにされていることが望ましい。
【0015】
このような構成にすることにより、組立台車が傾いたとき、フレームの下側に配置された牽引車の重量が組立台車にかかり組立台車を元に戻そうとする。従って、組立台車の転倒をより確実に防止することができる。
【0016】
上記した組立台車において、前記クランプ部は、保持したワークを回転させる回転機構と、保持したワークを昇降させる昇降機構とを有することが望ましい。
【0017】
このような構成にすることにより、組立台車において保持したワークの向きや高さ位置を変更することができるため、作業者の体格などに合わせて作業しやすい位置にワークを配置することができる。これにより、作業者への負担を大幅に減らすことができる結果、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0018】
そして、上記課題を解決するためになされた本発明の別形態は、上記したいずれか1つの組立台車を用いた生産システムにおいて、前記牽引車の走行軌道が周回路となっており、前記牽引車の走行軌道の外側に、ワークに組み付ける部品の供給スペースが設けられ、前記牽引車の走行軌道の内側に、前記牽引車に対する指令を送信するホストコンピュータが配置され、前記組立台車は、前記クランプ部が前記部品の供給スペース側に向くように配置されており、前記牽引車は、前記制御装置で受信した前記ホストコンピュータからの指令に基づき、前記走行軌道に沿って走行するとともに前記部品の供給スペースの前で停止するように制御されることを特徴とする。
【0019】
このような生産システムにすることにより、小さなスペースで生産が可能になるとともに、生産する製品の数量や形状などの変更があった場合に、その変更に応じて簡単にシステム構成を変えることができる。また、システム構成の変更に、時間及び費用がほとんどかからない。そして、この生産システムでは、上記した組立台車を用いているため、安全性を確保した上で作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る組立台車によれば、上記した通り、小型化を図るとともに、楽な作業姿勢で部品の組付け作業を行うことできるので作業効率を向上させることができる。また、本発明に係る生産システムによれば、上記した通り、本発明に係る組立台車を用いているため、安全性を確保した上で作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る組立台車の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態に係る組立台車の概略構成を示す正面図である。
【図3】組立台車のフレームと牽引車との連結構造を模式的に示す図である。
【図4】実施の形態に係る生産システムの構成を模式的に示す図である。
【図5】図4に示す生産システムにおいて、部品の組付け作業を行う作業者と組立台車に保持されたオートマチックトランスミッションとの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る組立台車及びこれを用いた生産システムを具体化した実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。ここでは、オートマチックトランスミッションの組立工程に本発明を適用した場合を例示して説明する。
そこで、本実施の形態に係る組立台車について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る組立台車の概略構成を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る組立台車の概略構成を示す正面図である。図3は、組立台車のフレームと牽引車との連結構造を模式的に示す図である。
【0023】
図1に示すように、組立台車10は、フレーム11と、車輪12と、クランプ部20と、牽引車30と、バッテリ31と、制御装置40とを有している。そして、牽引車30を駆動・停止させることにより、組立台車10が走行・停止するようになっている。なお、組立台車10は、図1の矢印方向へ進行する。
【0024】
フレーム11は、横フレーム11aと縦フレーム11bとを備えており、全体として略逆T字形をなしている。すなわち、横フレーム11aの上面に、縦フレーム11bが立設されている。一方、横フレーム11aの下面には、その四隅に車輪12a,12bが取り付けられており、それら車輪間の内側に牽引車30が配置されている。なお、本実施の形態では、前輪12aが自在輪であり、後輪12bが固定輪となっている。
そして、横フレーム11aの上面にバッテリ31が配置され、縦フレーム11bにクランプ部20及び制御装置40が取り付けられている。また、縦フレーム11bの上端部には、一時的に部品や工具などを置くためのパレット18と、組立台車10を手動で移動させる場合に作業者が握る手押しハンドル19とが取り付けられている。
【0025】
クランプ部20は、ワークであるオートマチックトランスミッションWを保持するためのものであり、横フレーム11aの上側に設けられている。具体的に、クランプ部20は、縦フレーム11bに固定された支持板13に垂直方向へ設けられた2本の昇降レール14,14に対し、固定部20aを介して片持ちの状態で上下にスライド可能に取り付けられている。
支持板13の左右両端には、L字形の支持フレーム15,15が取り付けられており、支持フレーム15,15の下部が横フレーム11aに固定されている。このように支持板13は、横フレーム11a及び縦フレーム11bの両方に固定されている。
【0026】
このクランプ部20は、オートマチックトランスミッションWを把持するための把持爪21と、把持爪21を回転させる回転機構22と、把持爪21を昇降させる昇降機構23とを備えている。そして、回転機構22の操作ハンドル22aを回転させることにより、公知の歯車機構を介して、クランプ部20で保持したオートマチックトランスミッションWの向きを変更する(回転させる)ことができるようになっている。また、昇降機構23の操作レバー23aを操作して、モータ23bを駆動させて固定部20aに係合するスクリューシャフト23cを回転させることにより、固定部20aが昇降レール14に沿って昇降するようになっている。なお、回転機構22を昇降機構23のように電動化することもできる。また、昇降機構23としては、ネジ式の他、チェーン式のもの等を使用することもできる。
【0027】
このように、組立台車10では、操作ハンドル22aや操作レバー23aを操作して、クランプ部20に保持したオートマチックトランスミッションWの向きや高さ位置を変更することができるようになっている。これにより、作業者は、組付け作業がやりやすいように、組立台車10に保持されたオートマチックトランスミッションWの向きや高さ位置を調整することができる。
【0028】
そして、このようなクランプ部20は、把持爪21がオートマチックトランスミッションWを保持した際に、図2に示すように、オートマチックトランスミッションWの重心位置Cが車輪間(前輪12a間、後輪12b間、つまりトレッド間)Tの外側に位置するように、フレーム11に取り付けられている。これにより、クランプ部20に保持されたオートマチックトランスミッションWは、その半分以上が横フレーム11aの外側に位置することになる。そのため、作業者が組立台車10に保持されたオートマチックトランスミッションWに近づくことができ、楽な作業姿勢で部品の組付け作業を行うことができるようになっている(図5参照)。
【0029】
牽引車30は、組立台車10の駆動源であり、モータによって駆動するものである。この牽引車30は、図3に示すように、車体32と、モータ33と、1つの前輪34aと、2つの後輪34bとを有している。モータ33は、車体32の内部に取り付けられており、前輪34aを駆動するようになっている。この駆動輪となる前輪34aは、車体32の幅方向(図3では左右方向)の中央に設けられている。一方、後輪34bは、車体32の幅方向左右に設けられている。そして、モータ33の駆動力が前輪34aに伝達されることにより、牽引車30が駆動するようになっている。モータ33の駆動は、制御装置40により制御される。
なお、前輪34aも後輪34bと同様に車体32の幅方向左右に設けて良い。また、後輪34bをモータ33あるいは別のモータで駆動するようにしても良い。
【0030】
この牽引車30は、図1〜図3に示すように、組立台車10の前輪12a,12b間の内側であって、横フレーム11aの下側に配置されている。このような牽引車30の配置が可能になるのは、後述するように、バッテリ31及び制御装置40が、牽引車30ではなくフレーム11に取り付けられており、牽引車30の小型化が図られているからである。そして、組立台車10において、牽引車30の小型化を図って上記したように牽引車30を配置することにより、組立台車10の小型化が図られている。
【0031】
そして、牽引車30の車体32には、上方に突出する連結ピン35が設けられている。連結ピン35は、横フレーム11aに設けられたピン受け開口16に挿入され、抜け止め部材36によってピン受け開口16から抜けないようにされている。このようにして、牽引車30が横フレーム11aに連結されている。これにより、牽引車30の駆動により組立台車10を走行(牽引)させることができるようになっている。
また、抜け止め部材36によって連結ピン35がピン受け開口16から抜けないようにされているため、仮に組立台車10が傾いた場合に、組立台車10の傾きを元に戻すように横フレーム11aに対し牽引車30の重量がかかるようになっている。
【0032】
ここで、バッテリ31は、モータ33,23bを駆動するための電源であり、それぞれのモータに電気的に接続されている。このバッテリ31は、図1及び図2に示すように横フレーム11a上に搭載されている。より詳細には、バッテリ31は、クランプ部20の縦フレーム11bへの固定部20aに対し、クランプ部20に保持されたオートマチックトランスミッションWとは逆側において横フレーム11a上に配置されている。これにより、バッテリ31の重量によって、オートマチックトランスミッションWを保持した際の組立台車10における重量バランスが保たれている。その結果、組立台車10の転倒を防止することができるようになっている。また、上記した牽引車30の連結構造によっても、組立台車10の転倒の防止が図られている。このようにして、組立台車10では、作業性と安全性とが確保されている。
【0033】
そして、本実施の形態では、図1及び図2に示すように、バッテリ31が横フレーム11aの端部(クランプ部20の配置位置とは反対側端部)に配置されている。そして、横フレーム11aの四隅に車輪12a,12bが配置されているため、バッテリ31,31は、組立台車10の左側前後輪の上部辺りに位置することになる。これにより、オートマチックトランスミッションWを保持していない状態において、バッテリ31の重量により組立台車10の重量バランスが崩れないようにされている。つまり、組立台車10では、オートマチックトランスミッションWを保持していない状態においても、組立台車10が転倒しないように重量バランスが考慮されており、安全性が十分に確保されている。
【0034】
このような牽引車30の駆動制御は、制御装置40により行われるようになっている。そのため、制御装置40は、バッテリ31及びモータ33に接続されている。この制御装置40は、後述する生産システム50における、ホストコンピュータ51からの指令、又は磁気テープ52を通じて入力される指令を受信して、その受信した指令に基づき、モータ33の駆動を制御することにより牽引車30(組立台車10)の走行制御を行うようになっている。
【0035】
そして、この制御装置40は、バッテリ31の上方に配置され、縦フレーム11bに固定されている。つまり、制御装置40は、バッテリ31と同様、クランプ部20に保持されたオートマチックトランスミッションWとは逆側に配置されている。このような制御装置40の配置も、組立台車10の安定性向上に寄与している。
【0036】
続いて、上記した組立台車10を用いてオートマチックトランスミッションWの組み立てを行うための生産システムについて、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態に係る生産システムの構成を模式的に示す図である。
図4に示すように、生産システム50は、組立台車10と、ホストコンピュータ51と、磁気テープ52と、部品供給スペース55〜58とにより構成されている。そして、生産システム50では、組立台車10によりオートマチックトランスミッションWを保持して搬送しながら、オートマチックトランスミッションWに対し、部品供給スペース55〜58に供給される各種部品を組み付けていくようになっている。
【0037】
ホストコンピュータ51は、生産システム50を統括的に管理するものであり、組立台車10の牽引車30に対する動作指令などを制御装置40に対し送信等するようになっている。そして、ホストコンピュータ51から送信された指令を、組立台車10の制御装置40が受信するようになっている。制御装置40が受信する指令は、ホストコンピュータ51からの指令の他、床面に設けられた磁気テープ52を通じて入力される指令もある。そして、ホストコンピュータ51と制御装置40との情報伝達は、無線通信により行われる。
【0038】
組立台車10の走行軌道となる磁気テープ52は、周回路を形成するように床面に設けられている。本実施の形態では、略長方形状に磁気テープ52が敷設されている。そして、この磁気テープ52上を牽引車30が図4に示す矢印方向(反時計周り)に走行するようになっている。なお、走行軌道の形状は、略長方形状に限られることはなく、生産システムを設けるスペースや、前工程及び後工程の配置などを考慮して決定すればよい。
【0039】
そして、組立台車10は、磁気テープ52上に、周回路をなす磁気テープ52の内側を向くように配置されている。また、周回路をなす磁気テープ52の内側に、上記したホストコンピュータ51が設置されている。一方、周回路をなす磁気テープ52の外側には、各種の組付け部品が供給(配置)される第1〜第4の部品供給スペース55〜58が設けられている。このような配置により、ホストコンピュータ51と制御装置40との間に無線通信の障害となるものをなくすことができ、ホストコンピュータ51と制御装置40との無線通信が確実に行われるようになっている。
なお、第1部品供給スペース55と第4部品供給スペース58との間には、組立台車10へのオートマチックトランスミッションWの脱着が行われる移載スペース59が設けられている。
【0040】
ここで、第1部品供給スペース55には、キャリア及びエクステンションハウジングが供給されて配置されている。第2部品供給スペース56には、バルブボディ及びオイルパンが供給されて配置されている。第3部品供給スペース57には、オイルポンプが供給されて配置されている。第4部品供給スペース58には、ケースハウジング及びトルクコンバータが供給されて配置されている。
【0041】
このように、本実施の形態に係る生産システム50では、組立台車10を用いることにより、生産システム(ライン)の設置スペースを小さくすることができる。本実施の形態では、従来の生産ラインに比べて設置スペースを1/3程度に削減することができる。
また、生産システム50であれば、システム構成の自由度が非常に高いため、各部品供給スペース55〜58に供給する部品の数や部品自体を簡単に変更することができる。また、部品供給スペース自体の増減や配置転換も簡単に行うことができる。従って、生産するオートマチックトランスミッションの数量や仕様など応じて、従来の生産ラインのように膨大な時間及び費用をかけることなく、簡単にシステム構成を変えることができる。
【0042】
次に、上記した生産システム50におけるオートマチックトランスミッションの組立作業について、図4及び図5を参照しながら説明する。図5は、図4に示す生産システムにおいて、部品の組付け作業を行う作業者と組立台車に保持されたオートマチックトランスミッションとの位置関係を示す図である。
まず、生産システム50における移載スペース59に、ミッションケース内に各種ギヤやクラッチなどが組み付けられた半製品状態のオートマチックトランスミッションWが、前工程から搬送されてくる。そうすると、半製品状態のオートマチックトランスミッションWが、移載スペース59において、組立台車10に移載される。つまり、前工程から搬送されてきた半製品状態のオートマチックトランスミッションWが、組立台車10のクランプ部20に保持される。
【0043】
半製品状態のオートマチックトランスミッションWが、組立台車10のクランプ部20に保持されると、牽引車30が駆動して磁気テープ52に沿って走行し始める。これにより、組立台車10が牽引車30に牽引されて走行する。このとき、組立台車10においては、上記したようにバッテリ31及び制御装置40により重量バランスが保たれている。このため、オートマチックトランスミッションWは、その半分以上が横フレーム11aからはみ出した状態で搬送されるが、組立台車10は転倒することなく安定して走行する。仮に、組立台車10が傾き転倒しそうになったとしても、上記した牽引車30と横フレーム11aとの連結構造により、組立台車10の傾きを元に戻すように横フレーム11aに対し牽引車30の重量がかかるため、組立台車10の転倒が確実に防止される。
【0044】
そして、組立台車10は、第1部品供給スペース55の前に到達するとそこで停止する。組立台車10が停止すると、キャリア及びエクステンションハウジングの組付け作業が実施される。すなわち、組立台車10に保持された半製品状態のオートマチックトランスミッションWに対し、まずキャリアが組付けられ、その後にエクテンションハウジングが組み付けられる。
【0045】
このとき、図5に示すように、組立台車10に保持された半製品状態のオートマチックトランスミッションWは、その半分以上が横フレーム11aからはみ出している。このため、作業者はオートマチックトランスミッションWに近づいて組付け作業を行うことができる。また、作業者は、操作ハンドル22aあるいは操作レバー23aを操作して、クランプ部20を回転あるいは昇降させることにより、組立台車10に保持されたオートマチックトランスミッションWの向きや高さ位置を自由に調整することができる。これらのことから、作業者は非常に楽な姿勢で部品の組付け作業を行うことができる。その結果、作業者への負担が軽減され、作業効率を向上させることができる。
【0046】
キャリア及びエクステンションハウジングの組付け作業が終了すると、牽引車30が再び駆動して組立台車10が第2部品供給スペース56に向かって走行し始め、第2部品供給スペース56の前で停止する。組立台車10が停止すると、バルブボディ及びオイルパンの組付け作業が実施される。すなわち、キャリア及びエクステンションハウジングが組み付けられた状態のオートマチックトランスミッションWに対し、まずバルブボディが組付けられ、その後にオイルパンが組み付けられる。このときも、作業者は非常に楽な姿勢で部品の組付け作業を行うことができる。
【0047】
バルブボディ及びオイルパンの組付け作業が終了すると、牽引車30が再び駆動して組立台車10が第3部品供給スペース57に向かって走行し始め、第3部品供給スペース57の前で停止する。組立台車10が停止すると、オイルポンプの組付け作業が実施される。すなわち、組立台車10に保持され、キャリア、エクステンションハウジング、バルブボディ及びオイルパンが組み付けられた状態のオートマチックトランスミッションWに対し、オイルポンプが組み付けられる。このときも、作業者は非常に楽な姿勢で部品の組付け作業を行うことができる。
【0048】
オイルポンプの組付け作業が終了すると、牽引車30が再び駆動して組立台車10が第4部品供給スペース58に向かって走行し始め、第4部品供給スペース58の前で停止する。組立台車10が停止すると、ケースハウジング及びトルクコンバータの組付け作業が実施される。すなわち、組立台車10に保持され、キャリア、エクステンションハウジング、バルブボディ、オイルパン及びオイルポンプが組み付けられた状態のオートマチックトランスミッションWに対し、ケースハウジング及びトルクコンバータが組み付けられる。このときも、作業者は非常に楽な姿勢で部品の組付け作業を行うことができる。かくして、オートマチックトランスミッションWの組立が完了する。
【0049】
そして、ケースハウジング及びトルクコンバータが組み付けられて、オートマチックトランスミッションWの組立が完了すると、牽引車30が再び駆動して組立台車10が移載スペース59に向かって走行し始め、移載スペース59で停止する。組立台車10が停止すると、完成品のオートマチックトランスミッションWが組立台車10から降ろされて、後工程へと搬送される。
【0050】
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る組立台車10によれば、クランプ部20で保持したオートマチックトランスミッションWの重心位置Cが、組立台車10の四隅に配置された車輪のトレッド間Tの外側に位置するようにクランプ部20が配置されている。また、牽引車30のモータ33を駆動するためのバッテリ31が、クランプ部20の固定部20aに対し、クランプ部20に保持されたオートマチックトランスミッションWとは逆側にて横フレーム11aの端部に配置されている。これにより、組立台車10においてオートマチックトランスミッションWの半分以上が横フレーム11aからはみ出した状態でオートマチックトランスミッションWを保持する一方、組立台車10における重量バランスを保って組立台車10の転倒を防止している。このようにして、組立台車10では、作業性と安全性とが確保されている。
【0051】
また、組立台車10では、バッテリ31及び制御装置40が縦フレーム11bに取り付けられているため、牽引車30の小型化を図ることができ、牽引車30を横フレーム11aの下側に配置することができる。これにより、組立台車10の小型化を図ることができる。
【0052】
そして、本実施の形態に係る生産システム50によれば、上記の組立台車10を用いてオートマチックトランスミッションWを搬送しながら各種部品を組み付けていくので、コンベアを使用する従来の生産ラインに比べ、小さなスペースでオートマチックトランスミッションの生産が可能になるとともに、生産するオートマチックトランスミッションの数量や形状などの変更があった場合に、その変更に応じて簡単にシステム構成を変えることができる。
【0053】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態では、オートマチックトランスミッションの組立工程に本発明を適用した場合を例示したが、本発明はこれに限らず、様々な製品の組立工程に適用することができる。特に、重量物の製品を多品種少量生産する場合に、本発明を適用することが好ましい。
【符号の説明】
【0054】
10 組立台車
11 フレーム
11a 横フレーム
11b 縦フレーム
12a 前輪
12b 後輪
16 ピン受け開口
20 クランプ部
20a 固定部
22 回転機構
23 昇降機構
30 牽引車
31 バッテリ
35 連結ピン
36 抜け止め部材
40 制御装置
C 重心位置
T 車輪間
W オートマチックトランスミッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動する牽引車を備える組立台車において、
台車のフレームの下側四隅に設けられた車輪と、
前記フレームの上側でワークを保持するクランプ部と、
前記モータを駆動するためのバッテリと、
前記牽引車の駆動を制御する制御装置とを有し、
前記クランプ部は、ワークを保持した状態でワークの重心位置が、前記車輪間の外側に位置するように配置され、
前記バッテリは、前記クランプ部の前記フレームへの固定部に対し、前記クランプ部に保持されたワークとは逆側にて前記フレーム上に配置され、
前記牽引車は、前記フレームの下側に配置されて前記フレームに連結されている
ことを特徴とする組立台車。
【請求項2】
請求項1に記載する組立台車において、
前記制御装置は、前記バッテリの上方に配置されている
ことを特徴とする組立台車。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する組立台車において、
前記牽引車は、上方に突出する連結ピンを有し、
前記連結ピンは、前記フレームに設けられたピン受け開口に挿入され、抜け止め部材によって前記ピン受け開口から抜けないようにされている
ことを特徴とする組立台車。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載するいずれか1つの組立台車において、
前記クランプ部は、
保持したワークを回転させる回転機構と、
保持したワークを昇降させる昇降機構と
を有することを特徴とする組立台車。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載するいずれか1つの組立台車を用いた生産システムにおいて、
前記牽引車の走行軌道が周回路となっており、
前記牽引車の走行軌道の外側に、ワークに組み付ける部品の供給スペースが設けられ、
前記牽引車の走行軌道の内側に、前記牽引車に対する指令を送信するホストコンピュータが配置され、
前記組立台車は、前記クランプ部が前記部品の供給スペース側に向くように配置されており、
前記牽引車は、前記制御装置で受信した前記ホストコンピュータからの指令に基づき、前記走行軌道に沿って走行するとともに前記部品の供給スペースの前で停止するように制御される
ことを特徴とする生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206666(P2012−206666A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75216(P2011−75216)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】