説明

組織再生のモジュレーター

【課題】損傷されたまたは再生中の組織においてアップレギュレートされるタンパク質、およびこれらのタンパク質をコードするDNA、ならびに治療的組成物を提供する。
【解決手段】以下の項目(1)〜(3)のいずれか1項に記載のポリペプチドの可溶性改変体を含むポリペプチド:(1)(a)特定の腎臓損傷分子(KIM)に対応するアミノ酸配列;あるいは(b)該(a)に由来するアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の欠失、置換および/または付加を有し、かつ該(a)のアミノ酸配列の活性を有するアミノ酸配列、からなるポリペプチド;(2)項目(1)のポリペプチドであって、特定の配列を含む、ポリペプチド;(3)項目(1)のポリペプチドであって、特定の配列からなるポリペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、損傷されたまたは再生中の組織においてアップレギュレートされるタンパク質、およびこれらのタンパク質をコードするDNAに関する。本発明はさらに、治療的組成
物、およびこれらのタンパク質を包含する処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
組織構造の動力学的再造形は、発達の間および損傷後の組織修復の間に生じる。
このプロセスを研究するために、本発明者らは、虚血−再灌流傷害により引き起こされる腎臓損傷のモデルに注目した。
【0003】
腎臓は、近位細管上皮に対する損傷を、細胞死、生存近位細管上皮細胞の増殖、露出された基底膜の上のあまり分化していない再生性上皮の形成、および完全に機能性の近位細管上皮細胞を形成する再生性上皮の分化を含む複雑な一連の事象を介して修復し得る(Wallinら、Lab.Invest.66:474-484,1992;Witzgallら、Mol.Cell.Biol.13:1933-1942,1994;Ichimuraら、Am.J.Physiol.269:F653-662,1995;Thadhaniら、N.Engl.J.Med.334:1448-1460,1996)。IGF、EGF、およびHGFのような増殖因子は、内皮細胞接着
分子ICAM-1と同様に、この修復のプロセスに関連付けられている。しかし、それによって細管上皮細胞が復元される機構はなお理解されていない。
【0004】
細管上皮の損傷および修復のプロセスに関与する分子を同定するために、本発明者らは、損傷/再生腎臓と、正常腎臓との間のmRNA集団における差異を、呈示差異分析(reprensentationaldifferenceanalysis)(RDA)を使用して分析した。RDAは、反復するサブトラクションおよび増幅により標的組織または細胞特異的cDNAフラグメントを生じる、サブトラクションのためのPCRに基づく方法である(HubankおよびSchutz,Nucl.AcidsRes.22:5640-5648,1994)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明により、例えば、以下が提供される。
(1)配列番号1、配列番号2、配列番号4または配列番号6に記載のヌクレオチド配列を有する精製および単離されたDNA分子。
(2)以下から選択される精製および単離されたDNA分子:
a)配列番号1のDNA分子またはその相補鎖;
b)配列番号2のDNA分子またはその相補鎖;
c)配列番号4のDNA分子またはその相補鎖;
d)配列番号6のDNA分子またはその相補鎖;
e)a)、b)、c)またはd)で定義されたDNA分子に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA分子、またはそれらのフラグメント;
f)遺伝子コードの縮重がなければ、a)、b)、c)、d)またはe)で定義されたDNA分子にハイブリダイズするDNA分子。
(3)発現制御配列に作動可能に連結されている、項目1または2に記載の組換えDNA分子。
(4)配列番号1、配列番号2、配列番号4または配列番号6に記載のヌクレオチド配列を有する精製および単離されたDNA分子を含むベクター。
(5)項目1、2または3のいずれか1項に記載のDNA分子を含む、生物学的に機能性
のプラスミドまたはウイルスDNAベクター。
(6)項目1に記載のDNA分子を含むベクターによって安定に形質転換またはトランスフェクトされた原核生物または真核生物宿主細胞。
(7)項目1、2または3に記載のDNA分子によってコードされるポリペプチド産物の産生のためのプロセスであって、該プロセスは、適切な培養条件下で、DNA分子で形質転
換またはトランスフェクトされた原核生物または真核生物宿主細胞を、DNA分子の発現を
可能にする様式で増殖させること、および該発現のポリペプチド産物を回収することを含む、プロセス。
(8)項目7に記載のプロセスによって産生されたポリペプチド産物。
(9)配列番号3、配列番号5または配列番号7を含むアミノ酸配列を有するタンパク質。
(10)配列番号1、配列番号2、配列番号4または配列番号6のDNAによってコードされる精製および単離されたタンパク質。
(11)他のヒトタンパク質を実質的に含まない、項目9または10に記載のタンパク質。
(12)配列番号3、配列番号5または配列番号7の改変体である、タンパク質。
(13)項目9、10、11または12に記載のタンパク質の可溶性改変体。
(14)項目9、10、11、12または13に記載のタンパク質を含む、IgG融合タンパク質。
(15)毒素、造影可能化合物、または放射性核種に融合される、項目13に記載の可溶性タンパク質。
(16)項目9、10、11または12に記載のタンパク質に対する特異的モノクローナル抗体。
(17)毒素、造影可能化合物、または放射性核種に結合される、項目16に記載の抗体。
(18)項目9、10、11、12または13に記載のタンパク質に対する特異的抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞株。
(19)項目18に記載のハイブリドーマによって産生される抗体。
(20)治療有効量の項目9、10、11、12、13、14または15に記載のタンパク質を含む薬学的組成物であって、薬理学的に受容可能なキャリアをさらに含む、薬学的組成物。
(21)治療有効量の項目16、17または19に記載の抗体を含む薬学的組成物であって、薬理学的に受容可能なキャリアをさらに含む、薬学的組成物。
(22)腎臓疾患を有する被験体を処置する方法であって、治療有効量の項目9、10、11、12、13、14または15に記載のタンパク質を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(23)腎臓疾患を有する被験体を処置する方法であって、治療有効量の項目16、17または19に記載の抗体を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(24)腎臓疾患を有する被験体を処置する方法であって、治療有効量の項目20に記載の薬学的組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(25)被験体における新たな組織の成長を促進する方法であって、治療有効量の項目9、10、11、12、13または14に記載のタンパク質を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(26)前記組織が腎臓組織である、項目25に記載の方法。
(27)被験体において損傷された組織の生存を促進する方法であって、治療有効量の項目9、10、11、12、13または14に記載のタンパク質を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(28)前記組織が腎臓組織である、項目27に記載の方法。
(29)腎臓疾患を有する被験体を処置する方法であって、治療有効量の項目16、17または19に記載の抗体を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(30)腎臓疾患を有する被験体を処置する方法であって、治療有効量の項目21に記載の薬学的組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(31)被験体における新たな組織の成長を促進する方法であって、治療有効量の項目16、17または19に記載の抗体を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(32)被験体において損傷された組織の生存を促進する方法であって、治療有効量の項目16、17または19に記載の抗体を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(33)腎臓障害を有する被験体を処置する方法であって、項目4または5に記載のベクターを該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(34)被験体における新たな組織の成長を促進する方法であって、項目4または5に記載のベクターを該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(35)被験体において損傷された組織の生存を促進する方法であって、治療有効量の項目4または5に記載のベクターを該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(36)前記組織が腎臓組織である、項目35に記載の方法。
(37)造影可能化合物を、配列番号3、配列番号5または配列番号7のタンパク質を発現する細胞に標的化するための方法であって、該細胞を、造影可能化合物に融合された項目16に記載のモノクローナル抗体と接触させる工程を包含する、方法。
(38)前記細胞が被験体内にあり、前記モノクローナル抗体が、該被験体に投与される、項目37に記載の方法。
(39)被験体の腎臓細胞の損傷または再生を同定する方法であって、該被験体の腎臓細胞における配列番号1、配列番号2、配列番号4または配列番号6の発現のレベルを、コントロール腎臓細胞における配列番号1、配列番号2、配列番号4または配列番号6の発現のコントロールレベルと比較する工程を包含する、方法。
(40)細胞における配列番号1、配列番号2、配列番号4、または配列番号6のアップレギュレーションを同定する方法であって、該細胞をアンチセンスプローブと接触させること、および該細胞内のRNAに対するハイブリダイゼーションを測定することを含む、方
法。
(41)被験体における腎臓細胞の損傷または再生を同定する方法であって、該被験体の腎臓細胞、腎臓細胞断片または体液における配列番号3、配列番号5または配列番号7の濃度を、コントロール腎臓細胞における配列番号3、配列番号5または配列番号7の発現のコントロールレベルと比較する工程を包含する、方法。
(42)前記体液が、尿または血清である、項目41に記載の方法。
(43)前記腎臓細胞または腎臓細胞断片が、前記被験体の尿沈渣から得られる、項目41に記載の方法。
【0006】
発明の要旨
本発明は、一般に、腎臓損傷関連分子(Kidney Injury-relatedMolecule)(その各々
が以下で「KIM」と呼ばれる)を提供する。これは、腎臓に対する損傷後に腎臓組織にお
いてアップレギュレートされる。本発明のKIMタンパク質およびペプチド、ならびにそれ
らのアゴニストおよびアンタゴニスト、ならびにそれらの対応物は、種々の治療介入において有用である。
【0007】
本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号4、または配列番号6に記載されるヌクレオチド配列を有する精製および単離されたDNA分子を提供する。本発明はまた、これら
の配列の相補鎖、上記DNA分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA分子、および遺伝子コードの縮重がなければ、任意の上記で定義されるDNA分子にハイブリダ
イズするDNA分子を包含する。これらのDNA分子は組換え体であり得、そして発現制御配列に作動可能に連結され得る。
【0008】
本発明はさらに、配列番号1、配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号6に記載されるヌクレオチド配列を有する精製および単離されたDNA分子、または上記で定義される
他のDNA分子の1つを含むベクターを提供する。このベクターは、生物学的に機能性のプ
ラスミドまたはウイルスDNAベクターであり得る。本発明の1つの実施態様は、配列番号
1、配列番号2、配列番号4、または配列番号6のDNA分子を含むベクターにより安定に
形質転換またはトランスフェクトされた原核生物または真核生物宿主細胞を提供する。本発明の別の実施態様において、上記のようなDNA分子によりコードされるKIMポリペプチド産物の産生のためのプロセスが提供され;このプロセスは、適切な培養条件下で、DNA分
子で形質転換またはトランスフェクトされた原核生物または真核生物宿主細胞を、DNA分
子の発現を可能にする様式で増殖させること、およびこの発現のポリペプチド産物を回収することを含む。
【0009】
詳細には、実質的に他のヒトタンパク質を含まない精製および単離されたヒトKIMタン
パク質は、KIMタンパク質の一次構造コンホメーションおよび生物学的活性の一部または
全部を有するポリペプチド産物の産生のためのプロセスと同様に、本発明の範囲内である。本発明のKIMタンパク質は、配列番号3、配列番号5、もしくは配列番号7を含むアミ
ノ酸配列を有し得るか;または配列番号3、配列番号5、もしくは配列番号7の改変体であり得るか;または配列番号1、配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号6のDNAに
よりコードされる精製もしくは単離されたタンパク質であり得る。これらのタンパク質は、実質的に他のヒトタンパク質を含まないで提供され得る。本発明はさらに、これらのタンパク質の改変体(例えば、可溶性改変体または融合タンパク質)を包含する。本発明のKIM融合タンパク質は、免疫グロブリン、毒素、造影可能化合物、または放射性核種を含
み得る。
【0010】
本発明はまた、上記のKIMタンパク質に対する特異的モノクローナル抗体を提供する。
抗KIM抗体は、毒素、造影可能化合物、または放射性核種と結合され得る。そのような特
異的抗体を産生するハイブリドーマ細胞株がさらに教示される。
【0011】
薬学的組成物もまた、本発明の範囲内である。本発明の薬学的組成物は、治療有効量の本発明のKIMタンパク質または抗KIM抗体を、薬理学的に受容可能なキャリアとともに含み得る。
【0012】
腎臓疾患を有するか、または腎臓疾患を発生する危険にある患者の尿、血清、または尿沈渣におけるKIMの濃度を測定することにより、腎臓損傷の存在または消散の過程を評価
することのような診断方法は、本発明の範囲内である。
【0013】
本発明の処置方法は、患者を、治療有効量のKIM、KIM改変体、KIMアナログ、KIM融合タンパク質、KIMアゴニスト、およびKIMまたはKIMリガンドに対する抗体で処置する工程を
包含する。本発明の他の治療化合物は、KIMリガンド、抗KIM抗体、およびKIMリガンドの
融合タンパク質を包含する。これらの化合物は、KIMの機能に依存している細胞性応答を
刺激するかまたは阻害するかのいずれかの治療方法において有用であり得る。
【0014】
本発明のさらなる方法は、細胞を、KIMリガンドの融合タンパク質および毒素もしくは
放射性核種のいずれかと、または毒素もしくは放射性核種に結合された抗KIM抗体と接触
させることにより、KIM発現腫瘍細胞の増殖を阻害する。同様に、KIMリガンドを発現する腫瘍細胞の増殖は、細胞を、KIMの融合タンパク質および毒素もしくは放射性核種のいず
れかと、または毒素もしくは放射性核種に結合された抗KIMリガンド抗体と接触させるこ
とにより、阻害され得る。
【0015】
本発明はまた、遺伝子治療の方法を包含する。これらは、腎臓障害を有する被験体を処置する方法、被験体における新たな組織の成長を促進する方法、および被験体における損傷された組織の生存を促進する方法を包含し、被験体に、配列番号1、配列番号2、配列
番号4、または配列番号6のヌクレオチド配列を含むDNAを含むベクターを投与する工程
を包含する。
【0016】
本発明の化合物はまた、インビトロまたはインビボのいずれかで組織を画像化するために有用である。そのような方法の1つは、造影可能化合物を、配列番号3、配列番号5、または配列番号7のタンパク質を発現する細胞に標的化する工程を包含し、これは、細胞を、造影可能化合物に融合された、本発明のモノクローナル抗体または上記のようなタンパク質を含む融合タンパク質のいずれかと接触されることを含む。インビボ方法については、細胞は被験体内にあり、そしてタンパク質またはモノクローナル抗体は、被験体に投与される。
【0017】
本発明はまた、被験体の腎臓細胞における配列番号1、配列番号2、配列番号4、または配列番号6のいずれかの発現のレベルを、コントロール腎臓細胞におけるこの配列の発現のコントロールのレベルと比較する工程を包含する、被験体における腎臓細胞の損傷または再生を同定する方法のような、診断方法を包含する。本発明の別の方法は、細胞をアンチセンスプローブと接触させること、および細胞内のRNAに対するハイブリダイゼーシ
ョンを測定することを含む、細胞における配列番号1、配列番号2、配列番号4、または配列番号6のアップレギュレーションを同定する工程を包含する。
【0018】
本発明の診断方法のさらなる実施態様は、尿、血清、もしくは他の体液における、または尿沈渣、もしくは組織サンプルにおける本発明の分子の存在または濃度を評価する工程を包含する。測定される損傷関連分子は、病理学的プロセスの存在、程度、または過程に相関させられ得る。この相関はまた、治療レジメの効力を評価するために使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明者らは、呈示差異分析(RDA)を使用して、再生中の腎臓と正常腎臓との間のmRNA発現における差異を分析することにより、KIM遺伝子を同定した。RDAは、反復するサブ
トラクションおよび増幅により標的組織または細胞特異的cDNAフラグメントを生じる、サブトラクションのためのPCRに基づく方法である。虚血後48時間の成体ラット腎臓RNA由来のcDNA呈示は、正常(疑似手術した)成体ラット腎臓由来のサンプルを用いてサブトラクトされる。この手順において、虚血後腎臓サンプルおよび正常腎臓サンプルの両方に共通する配列は除去され、損傷された腎臓組織においてのみ顕著に発現される配列を残す。そのような遺伝子は、腎臓障害のために治療的に有益であり得るか、または損傷プロセスに関与し得るタンパク質をコードする。いくつかのクローンが得られ、配列決定され、そして特徴付けられた。次いで、クローンは、腎臓修復の間のそれらの発現パターン、発達、および組織分布について、ノーザン分析およびRNAインサイチュハイブリダイゼーション
により研究される。
【0020】
配列番号
本明細書中で言及されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列には、以下の配列番号が与えられている:
配列番号1−ラット3-2cDNAインサートのヌクレオチド配列
配列番号2−ラット1-7cDNAインサートのヌクレオチド配列
配列番号3−ラット3-2および1-7cDNAによりコードされるラットKIM-1のアミノ酸配列
配列番号4−ラット4-7cDNAインサートのヌクレオチド配列
配列番号5−4-7cDNAインサートによりコードされるアミノ酸配列
配列番号6−ヒトcDNAクローンH13-10-85のヌクレオチド配列
配列番号7−ヒトcDNAクローンH13-10-85によりコードされるアミノ酸配列。
【0021】
用語の定義
本明細書中で「KIM」と同義的に用いられる「KIMタンパク質」は、腎臓に対する損傷後に選択的にアップレギュレートされるmRNAによりコードされるタンパク質である。目的のKIMタンパク質の1つの群は、腎臓組織に対する損傷を生じる任意の傷害後1週間以内の
任意の時点で選択的にアップレギュレートされるmRNAによりコードされるタンパク質を含む。そのようなアップレギュレーションが同定され得る時点の例は、傷害後10時間、24時間、48時間、または96時間を含む。傷害の型の例は、虚血性、毒性、または他の型の損傷を生じる傷害を含む。
【0022】
「KIMアゴニスト」は、KIMのKIMリガンドとの相互作用により通常引き起こされる細胞
性応答を特異的に引き起こし得る分子である。KIMアゴニストは、KIM改変体、またはKIM
に対する特異的抗体、またはKIMリガンドの可溶性形態であり得る。
【0023】
「KIMアンタゴニスト」は、KIMリガンドまたはKIMと特異的に会合し得、それによりKIMリガンドへのKIMの結合をブロックするかまたはそうでなければ阻害する分子である。ア
ンタゴニストの結合は、そうでなければKIMリガンドのKIMまたはKIMアゴニストとの連結
により引き起こされる細胞性応答をブロックまたは阻害する。KIMアンタゴニストの例は
、特定のKIM改変体、KIM融合タンパク質、およびKIMリガンドまたはKIMに対する特異的抗体を含む。
【0024】
「KIMリガンド」は、KIMタンパク質に非共有結合的に、そして特異的に結合する任意の分子である。そのようなリガンドは、任意の形態の(天然、組換え生産、またはそうでなければ合成を含む)、タンパク質、ペプチド、ステロイド、抗体、アミノ酸誘導体、または他の型の分子であり得る。KIMリガンドは、任意の形態(可溶性、膜結合、または免疫
グロブリン、脂肪酸、もしくは他の部分との融合構築物の一部)であり得る。KIMリガン
ドは、インテグリンであり得る。膜結合KIMリガンドは、KIMに結合または会合される場合に、細胞性応答を引き起こすレセプターとして作用し得る。いくつかの相互作用において、KIMは、1つより多いKIMリガンドと会合し得るか、または1つ以上の他の分子もしくは補因子との複合体の一部としてのKIMリガンドと会合し得る。KIMおよびKIMリガンドの両
方が細胞膜に結合されている状況において、KIMは、KIMと同じ細胞に結合しているKIMリ
ガンドと会合および反応し得るか、またはそれは第2の細胞に結合しているKIMリガンド
と会合および反応し得る。KIM連結が異なる細胞に結合している分子間で生じる場合、2
つの細胞は、細胞型もしくは起源、表現型もしくは代謝条件、または所定の刺激に対する細胞性応答(例えば、増殖、分化、もしくはアポトーシス)の型もしくは程度に関して同一であり得るか、または異なり得る。「KIM連結」は、KIMのKIMリガンドとの接触および
結合をいう。
【0025】
「配列のアラインメント」によって、一方の関連する部分の配列の、他方の関連する部分の配列との比較を可能にする、1つの配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸のいずれか)の、別の配列との位置決めが意味される。この手順の1つの方法の例は、Needlemanら(J.Mol.Biol.48:443-453,1970)において示される。この方法は、Alignプログラム(DNAstar,Inc.)のようなコンピュータープログラムにより都合良く実行され得る。当業者に理解
されるように、相同なまたは機能的に等価な配列は、保存されたシステイン骨格内のシステイン残基の機能的に等価な配置を含む。これは、これらのシステインの直線的な配置を変えるが、タンパク質の折り畳み構造におけるそれらの関連を実質的に損なわないアミノ酸の挿入または欠失を含む。それゆえ、候補の配列中の内部ギャップおよびアミノ酸挿入は、候補と参照配列との間のアミノ酸配列相同性または同一性のレベルを算出する目的のために無視される。タンパク質の相同性を確立することにおいて頻繁に使用される1つの特徴は、1つのタンパク質と別のタンパク質との間でのシステイン残基の数および位置の類似性である。
【0026】
「アンチセンスDNA」は、転写される染色体DNAの配列をいう。
【0027】
「アンチセンスプローブ」は、目的の核酸部分に対するアンチセンスDNAの少なくとも
一部を含むプローブである。
【0028】
「クローニング」によって、ベクター分子中へ特定の遺伝子または他のDNA配列を挿入
するためのインビトロ組換え技術の使用が意味される。所望の遺伝子を首尾良くクローン化するために、DNAフラグメントを生成するための、フラグメントをベクター分子に連結
するための、混成DNA分子をそれが複製し得る宿主細胞中に導入するための、および受容
体宿主細胞の中から標的遺伝子を有するクローンを選択するための方法を用いることが必要である。
【0029】
「cDNA」によって、RNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)の作用によりRNAテンプ
レートから産生される相補性DNAまたはコピーDNAが意味される。従って、「cDNAクローン」は、クローニングベクター中に有される目的のRNA分子に相補的な二重鎖DNA配列を意味する。
【0030】
「cDNAライブラリー」によって、全体の生物または組織(RNAテンプレートの供給源に
依存して)中に存在するmRNA分子の提示を一緒に構成するcDNAインサートを含む組換えDNA分子の収集物が意味される。そのようなcDNAライブラリーは、当業者に公知の方法、お
よび例えば、Maniatisら,MolecularCloning:A Laboratory Manual(前出)に記載される方法により調製され得る。一般に、RNAは、最初にそのゲノムから特定の遺伝子をクロー
ン化することが所望される生物の細胞から単離される。本発明の目的にとって、哺乳動物、そして特にヒトの細胞株が好ましい。あるいは、RNAは動物の腫瘍、そして好ましくは
ヒト腫瘍由来の腫瘍細胞から単離され得る。従って、ライブラリーは、例えば、ヒト副腎腫瘍から調製され得るが、任意の腫瘍が使用され得る。
【0031】
本明細書中で使用される用語「DNA多型性」は、二つ以上の異なるヌクレオチド配列が
、DNA中の特定の部位に存在し得る状態をいう。
【0032】
「発現ベクター」は、その中に含まれるDNA配列を発現し得る(即ち、コード配列が、
それらの発現をもたらし得る他の配列に作動可能に連結されている)ベクターを含む。常にはっきりと述べられるわけではないが、これらの発現ベクターが、エピソームとしてまたは染色体DNAの組込み部分としてのいずれかで宿主生物中で複製されなければならない
ことが意味される。効率的な発現ベクターの有用であるが必要ではない要素はマーカーコード配列であり、これは、細胞が容易に同定されることを可能にするタンパク質を含む細胞の表現型特性(例えば、テトラサイクリン耐性)を生じるタンパク質をコードする配列である。つまり、「発現ベクター」は機能的な定義を示し、そして特定される含まれるDNAコードの発現をもたらし得る任意のDNA配列が、それが特定される配列に適用されるように、この用語に含まれる。現在、このようなベクターは、しばしばプラスミドの形態であるので、従って、「プラスミド」および「発現ベクター」はしばしば互換的に使用される。しかし、本発明は、等価の機能に作用し、そして時々当該分野で公知になり得る発現ベクターのその他の形態を含むことが意図される。
【0033】
「機能性誘導体」によって、分子の「フラグメント」、「改変体」、「アナログ」、または「化学的誘導体」が意味される。分子の「フラグメント」(例えば、本発明の任意の抗原)は、分子の任意のポリペプチドサブセットをいうように意味される。そのような分子の「改変体」は、全体の分子またはそのフラグメントのいずれかに実質的に類似する天然に生じる分子をいうように意味される。分子の「アナログ」は、全体の分子またはその
フラグメントのいずれかに実質的に類似の非天然の分子をいうように意味される。
【0034】
用語「遺伝子」はペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を意味する。
【0035】
「均質」によって、ペプチドまたはDNAの配列をいう場合、考慮される組成物中に存在
する実質的に全ての分子の一次分子構造(すなわち、アミノ酸配列またはヌクレオチドの配列)が同一であることが意味される。
【0036】
「単離された」は、本発明のタンパク質、またはそのようなタンパク質をコードする任意の遺伝子をいい、これは、それぞれ他のタンパク質もしくは遺伝子を、またはそれとともにそれが通常天然において見出され得る他の混入物を本質的に含まず、そしてそれで天然において見出されない形態で存在する。
【0037】
用語「標識」は、例として、限定ではなく、放射性同位元素、酵素、ルミネセンス物質、および色素を含む、検出可能な分子部分をいう。
【0038】
用語「プローブ」は、標的の抗リガンドに選択的に結合し得る既知の性質のリガンドをいう。核酸に適用される場合、用語「プローブ」は、標的鎖に相補的な塩基配列を有する核酸の鎖をいう。
【0039】
「組換え宿主細胞」は、組換えDNA技術を用いて構築されたベクターで形質転換されて
いる細胞をいう。本明細書中で定義されるように、組換え宿主細胞により産生される抗体またはその改変体は、この形質転換によって、非形質転換宿主により産生されるような、より少ない量、またはより一般的には、検出可能な量より少ない量ではない。
【0040】
「実質的に純粋な」によって、本発明の任意のタンパク質、または任意のそのようなタンパク質をコードする任意の遺伝子が意味される。それらは、それぞれ、他のタンパク質もしくは遺伝子、または通常それとともにそれが天然において見出され得る他の混入物を本質的に含まず、そしてそれで天然では見出されない形態で存在する。
【0041】
分子は、両方の分子中のアミノ酸の配列が実質的に同一である場合、そして両方の分子が類似の生物学的活性を有する場合、別の分子に「実質的に類似している」といわれる。従って、2つの分子が類似の活性を有するのであれば、たとえ分子の一方が他方において見出されないさらなるアミノ酸残基を含んでも、またはアミノ酸残基の配列が同一でなくても、それらはその用語が本明細書中で用いられるような改変体であると考えられる。本明細書中で用いられる場合、分子は、通常には分子の一部ではないさらなる化学的部分を含む場合、別の分子の「化学的誘導体」といわれる。そのような部分は、分子の可溶性、吸収、生物学的半減期などを改善し得る。あるいは、この部分は分子の毒性を減少させ得るか、分子の任意の所望でない副作用を除去し得るか、または減弱するなどし得る。このような効果を媒介し得る部分は、例えば、Remington'sPharmaceuticalSciences、第16版、Mack Publishing Co.,Easton,Penn.(1980)中に開示される。
【0042】
「ベクター」によって、その中にDNAのフラグメントが挿入され得るかまたはクローン
化され得るプラスミドまたはバクテリオファージに由来するDNA分子が意味される。ベク
ターは1つ以上の唯一の(unique)制限部位を含み、そしてクローン化された配列が再生
されるように規定された宿主またはビヒクル生物体において自律的な複製が可能であり得る。
【0043】
本発明の化合物
本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号4、または配列番号6のcDNA、ならびに
配列番号1、配列番号2、配列番号4,または配列番号6の配列を含む配列、およびこれらの配列の誘導体を含む。本発明はまた、ベクター、リポソーム、およびこれらの配列またはこれらの配列の誘導体を含む他のキャリアービヒクルを含む。本発明はさらに、配列番号1、配列番号2、配列番号4、または配列番号6から転写されるタンパク質(配列番号3、配列番号5、または配列番号7を含むがこれらの限定されない)ならびにそれらの誘導体および改変体を含む。
【0044】
本発明の1つの実施態様は、通常膜結合型タンパク質として合成され、そして損傷後にアップレギュレートされる、KIMタンパク質の可溶性改変体を含む。可溶性改変体は、天
然のKIMタンパク質の膜貫通部分または膜内部分の少なくとも一部を欠く。いくつかの例
において、可溶性改変体は、天然のKIMタンパク質の膜貫通部分または膜内部分の全体を
欠く。可溶性改変体は、天然のKIMタンパク質の膜貫通部分または膜内部分の少なくとも
一部を欠くKIMタンパク質の誘導体を含む融合タンパク質を含む。全ての型のKIM融合タンパク質、特に、hisタグ、Igタグ、およびmycタグ形態の分子を組み込むタンパク質が含まれる。これらのKIM融合体は、治療的に有利である特徴(例えば、Igタグにより与えられ
る増加した半減期)を有し得る。KIMタンパク質の選択されたドメインの部分を組み込む
融合タンパク質もまた含まれる。
【0045】
改変体は、アミノ酸配列で、もしくは配列が関与しない方法で、またはその両方で天然に生じるKIMタンパク質とは異なり得る。アミノ酸配列における改変体は、天然に生じるKIMタンパク質における1つ以上のアミノ酸が異なる天然のアミノ酸、アミノ酸誘導体、または非天然のアミノ酸で置換される場合、生成される。特に好ましい改変体は、天然に生じるKIMタンパク質、または天然に生じるKIMタンパク質の生物学的に活性なフラグメントを含み、その改変体の配列は、代表的には、タンパク質またはペプチドの2次構造および疎水的性質に対して最小限の影響を有する1つ以上の保存的アミノ酸の置換により野生型配列とは異なる。改変体はまた、KIMタンパク質の生物学的活性を無効にしない、1つ以
上の非保存的アミノ酸の置換、欠失、または挿入により異なる配列を有し得る。保存的置換は、代表的には、1つのアミノ酸を同様の特徴を有する別のアミノ酸への置換(例えば、以下の群内での置換:バリン、グリシン;グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン)を含む。非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。正に荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、およびヒスチジンを含む。負に荷電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。
【0046】
他の保存的置換は、以下の表から引用され得、そしてさらに他はDayhoff,the Atlas of Protein Sequence andStructure(1988)に記載される。
表1:保存的アミノ酸置換
【0047】
【表1−1】

【0048】
【表1−2】

本発明内の他の改変体は、ペプチドの安定性を増大する改変を有する改変体である。そのような改変体は、例えば、ペプチド配列内に1つ以上の非ペプチド結合(ペプチド結合を置換する)を含み得る。さらに以下のものが挙げられる:天然に生じるL-アミノ酸以外の残基((例えば、D-アミノ酸または天然に生じないかもしくは合成アミノ酸(例えば、βまたはγアミノ酸および環状改変体))を含む改変体。ポリペプチド内へのL-アミノ酸の代わりのD-アミノ酸の取り込みは、プロテアーゼへのその耐性を増加し得る。例えば、米国特許第5,219,990号を参照のこと。
【0049】
一般的に、KIMポリペプチドの機能的特性に変化を誘導すると予想され得る置換は、以
下のものである:(I)親水性残基(例えば、セリンまたはトレオニン)は、疎水性残基(
例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、またはアラニン)により置換される;(ii)システイン残基は、任意の他の残基へ(またはその残基によって)置換される;(iii)正に帯電した側鎖を有する残基(例えば、リジン、アルギニン、またはヒスチジン
)は、負に帯電した電荷を有する残基(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)へ(またはその残基によって)置換される;または(iv)かさ高い側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)は、そのような側鎖を有さない(例えば、グリシン)残基へ(またはその残基によって)置換される。
【0050】
本発明のペプチドもまた、挿入、欠失、および置換のような種々の変化(このような変化が、それらの使用において特定の利点を提供し得る保存的かまたは非保存的かのいずれか)により改変され得る。スプライス改変体は特に本発明に含まれる。
【0051】
他の実施態様において、より保存的でないアミノ酸置換を有する改変体もまた、所望の誘導体を(例えば、電荷、立体構造、および他の生物学的特性における変化を生じることによって)生じ得る。このような置換は、例えば、親水性残基の疎水性残基への置換、システインもしくはプロリンの別の残基への置換、小さな側鎖を有する残基のかさ高い側鎖を有する残基への置換、または正味の正電荷を有する残基の正味の負電荷を有する残基への置換を含む。所定の置換の結果が確信を持って予測され得ない場合、誘導体は、所望の特徴の存在または非存在を決定するために本明細書中に開示される方法に従って容易にアッセイされ得る。
【0052】
本発明の範囲内の改変体は、KIMタンパク質に少なくとも80%の相同性を有するアミノ
酸配列を有するタンパク質およびペプチドを含む。より好ましくは、配列相同性は、少なくとも90%、または少なくとも95%である。相同性を決定する目的のために、配列比較の
長さは、一般には、少なくとも8アミノ酸残基であり、通常には、少なくとも20アミノ酸残基である。本発明の化合物の改変体はまた、1)本発明のKIMタンパク質と少なくとも40
%相同なアミノ酸配列を有し、そしてまた2)KIM配列(図5中に、ヒトおよびラットのKIM-1について示される)の最適なアラインメントで配置された後、本発明のKIMタンパク
質内のシステインと整列したそのシステイン残基の少なくとも80%を有する、任意のタンパク質も含む。
【0053】
まさに、骨格の置換基を置換することが可能であるので、同様の特色により特徴付けられる基を有する骨格に結合される官能基の置換もまた可能である。これらの置換は、まず保存的である(すなわち、置換基は元の基とほぼ同じサイズ、形、疎水性および電荷を有する)。非配列改変は、例えば、インビボまたはインビトロでの天然に生じるKIMタンパ
ク質の一部の化学的誘導体化、ならびにアセチル化、メチル化、リン酸化、カルボキシル化またはグリコシル化における変化を含み得る。
【0054】
本発明のタンパク質、またはそのタンパク質のフラグメント(配列番号3、5、または7)に特異的に結合する因子もまた本発明内に含まれる。これらの因子は、リガンドおよび抗体(天然の、ヒトの、ヒト化された、霊長類化された(primatized)、またはキメラのいずれかであろうと、モノクローナル、単鎖、二本鎖、Fabフラグメントなどを含む)を
含む。これらのカテゴリーの因子のさらなる説明は、PCT出願95/16709にあり、その明細
書は、本明細書中に参考として援用される。
【0055】
実験手順
1.虚血性および正常なラット成体腎臓からのRNAの作製
虚血損傷ラット腎臓を、Witzgallら(J.Clin Invest.93:2175-2188,1994)に記載のように作製する。手短には、成体Sprague-Dawleyラットの1つの腎臓からの腎動脈および腎静脈を40分間締め付け、次いで再灌流する。損傷した腎臓を再灌流後24時間および48時間でラットから採取する。偽手術した正常成体Sprague-Dawleyラットからの腎臓もまた採取する。
【0056】
総RNAを、Glisinら(Biochemistry 13:2633,1974)によるプロトコルに基づいて器官
から調製する。手短には、採取した器官を直ちにGNC緩衝液(4Mチオシアン酸グアニジ
ン、0.5%SDS、25mMクエン酸ナトリウム、0.1%Sigma消泡剤)中に入れ、そしてポリトロンを用いて氷上で破壊する。細胞破片を、臨床的遠心分離機における低速遠心で除去し、そして上清液を5.7MCsCl、25mM酢酸ナトリウム、1mMEDTAのクッション上に載せる。RNAを、SW40Tiローターにおいて22Kで15時間、クッションを通してペレット化させる。RNA
を滅菌DEPC処理水中に再懸濁し、1/10容量の3M酢酸ナトリウムおよび2.5容量のEtOHで
2回沈澱させる。ポリA+RNAを、mRNA精製キット(Pharmacia,カタログ番号27-9258-02)を用いて単離する。
【0057】
2.1-7、3-2、および4-7提示差違分析(RDA)フラグメントを単離するためのRDA方法
二本鎖cDNAを、偽手術した腎臓、および虚血後48時間の腎臓のポリA+RNAから、GibcoBRL「Superscript ChoiceTMSystemcDNA Synthesis Kit」、カタログ番号18090を用いて
合成する。第1鎖を、オリゴdTでプライムし、そしてSuperscriptIITM逆転写酵素を用い
ることにより合成する。第2鎖を、E.coli DNAポリメラーゼIおよびRNase H、続いてT4 DNAポリメラーゼを用いてBRLの推奨する条件を用いて作製する。
【0058】
RDA分析を、基本的にHubankおよびSchatz(Nucleic Acid Research 22:5640-48,1994
)により記載されたように実施する。手短には、虚血後48時間の腎臓cDNAを、制限酵素DpnIIで消化し、そしてR-Bgl-12/24オリゴヌクレオチドに連結する(正確な配列については文献を参照のこと)。リンカー連結cDNAのPCR増幅物(Perkin-ElmerTaqポリメラーゼおよ
びそれらに対応するPCR緩衝液を用いて実施する)を用いて、最初の提示物を作製する。
このPCR産物を、「テスターアンプリコン」と称する。同じ手順を用いて偽手術ラット腎
臓cDNAから「ドライバーアンプリコン」を作製する。
【0059】
テスターアンプリコンおよびドライバーアンプリコンのハイブリダイゼーション、それに続く選択的増幅を3回実施して、ディファレンシャル産物1(DP1)、2(DP2)、および3(DP3)を作製する。DP1産物の作製を、HubankおよびSchatz(NucleicAcidResearch
22:5640-48,1994)により記載されたように実施する。DP2産物およびDP3産物もまた、
ドライバー:テスター比がDP2については5,333:1に、そしてDP3については40,000:1また
は4,000:1に変更される以外は、HubankおよびSchatz(同書)に記載されたように作製す
る。
【0060】
3つのRDA産物を、DP3からクローニングベクターpUC18ヘクローン化する:40,000:1の
比を用いてDP3を作製する場合、RDA産物1-7(252bp)、そして4,000:1の比を用いてDP3を作製する場合、産物RDA3-2(445bp)および4-7(483bp)。DNAフラグメントを、PharmaciaSurecloneTMキット(カタログ番号27-9300-01)を用いてサブクローン化し、PCRフラグメントの末端をKlenow酵素を用いて修復し、そしてpUC18ベクター中へのフラグメントの
平滑末端連結を容易にする。
【0061】
3.ノーザン分析
ラット正常成体腎臓(疑似手術)から、虚血損傷後48時間の成体腎臓から、および18日目の胎児腎臓からのポリA+RNA(2.5μg)を電気泳動し、そしてGeneScreenTMメンブレン(Dupont)にノーザンブロット(Cate、Cell45:685、1986)する。10%の硫酸デキストランおよび100μg/mlのtRNAを含む、PSB緩衝液(50mMTris7.5、1MNaCl、0.1%ピロリン酸Na、0.2%PVP、0.2%Ficoll、0.2%BSA、1%SDS)中のハイブリダイゼーションを、3つの異なるプローブ:1-7RDA産物、3-2RDA産物および4-7RDA産物、を用いて65℃で行った。すべての産物は、Pharmaciaの「ReadytoGoTM」ランダムプライミングラベリングキット(カタログ番号27-9521-01)を用いて放射能標識する。RDA産物1-7、3-2および4-7は、すべての3つのサンプ
ル中に存在するmRNAにハイブリダイズするが、虚血後48時間の腎臓RNAサンプル中のmRNA
に最も強くハイブリダイズする。
【0062】
成体ラット組織のノーザンブロット分析は、1-7遺伝子が、正常な成体腎臓、精巣、脾
臓および肺では、非常に低レベルで発現されることを示す。3-2遺伝子は、肝臓、腎臓、
脾臓、および脳で発現される。4-7遺伝子は、脾臓、腎臓、肺、精巣、心臓、脳、肝臓、
および骨格筋で発現される。1-7および3-2ブロットにおけるいくつかの組織中の異なるサイズのmRNAの存在は、1-7遺伝子および3-2遺伝子の主要な転写産物が、オルターネートスプライシングおよび/またはポリアデニル化を行い得ることを示す。
【0063】
4.3-2および4-7cDNAクローンの単離
虚血損傷後48時間の腎臓由来の4μgのポリA+RNAから、cDNA合成用のBRLSuperscript ChoiceTMSystem、およびStratageneTM、LambdaZapIIクローニングキット(カタログ番
号236201)からの試薬を用い、製造業者により推奨されたプロトコールに従って、cDNAラ
イブラリーを生成する。
【0064】
105のクローンを、プローブとして3-2RDA産物(上記のようにランダムプライムラベルされる)を用いてスクリーニングする。8つのポジティブなクローンを選択し、そして4つ
を第2の分析用にランダムに選択し純粋ファージプラークを得る。三次スクリーニングの後、4つの純粋ファージクローンを単離する。ファージからのクローン化インサートを、StratageneTM、LambdaZapIIキットに従ったインビボ切除手順により単離する。約2.6kbの最も大きいインサート(cDNAクローン3-2と呼ばれる)を、DNA配列決定に供する。インサー
ト(配列番号1)の配列を図1に示す。cDNAクローン3-2(E.coliK-12、SOLR/p3-2#5-1)をATCC No.98061として寄託した。cDNAクローン3-2の配列は、配列番号1のヌクレオチド136〜605が挿入を示すことを除いて、クローン1-7cDNA(配列番号2)の配列と同じである。従って、配列番号2は、配列番号1のスプライス改変体を示す。1-7に対するクローン1-7(E.coliK-12、SOLR/p1-7#3-1)をATCCNo.98060として寄託した。
【0065】
105のクローンを、プローブとして1-7RDA産物(上記のようにランダムプライム放射ラベルされる)を用いてスクリーニングする。8つのポジティブなクローンを選択し、そして
4つを第2の分析用にランダムに選択し純粋ファージプラークを得る。三次スクリーニングの後、4つの純粋ファージクローンを単離する。ファージからのクローン化インサートを、StratageneTM、LambdaZapIIキットに従ったインビボ切除手順により単離する。約2.0kbの最も大きいインサート(cDNAクローン1-7と呼ばれる)を、DNA配列決定に供する;インサート(配列番号2)の配列を図2に示す。
【0066】
105のクローンを、プローブとして4-7RDA産物(上記のようにランダムプライムラベルし、そして65℃でPSB中でハイブリダイズした)を用いてスクリーニングする。8つのポジティブなクローンを選択し、そして4つを第2の分析用にランダムに選択し純粋ファージプラークを得る。二次スクリーニングの後、2つの純粋ファージクローンを単離する。ファージからのクローン化インサートを、StratageneTM、LambdaZapIIキットに従ったインビ
ボ切除手順により単離する。約2.4kbの最も大きいインサート(cDNAクローン4-7と呼ばれ
る)を、DNA配列決定に供する;インサートの配列、配列番号4の配列を図3に示す。cDNAクローン4-7(E.coliK-12、SOLR/p4-7#1-1)をATCCNo.98062として寄託した。
【0067】
5.1-7、3-2および4-7cDNAクローンの特徴付け
A.)DNA配列およびタンパク質配列:
3-2cDNAの配列(図1;配列番号1)は、307アミノ酸のオープンリーディングフレームを含む(図1;配列番号3)。21アミノ酸のシグナル配列が、VonHeijne分析(VonHeijneら、Nucl.Acid Res.14:14683(1986))から推断され、そして約aa235〜257に広がる膜貫通領域
は、細胞表面タンパク質である3-2産物を示す。
【0068】
1-7cDNAの配列(図2;配列番号2)は、3-2cDNA(配列番号3)中に含まれるオープンリーディングフレームと同一である、307アミノ酸のオープンリーディングフレームを含む(配列番号3)。4-7cDNAの配列(図3;配列番号4)は、572アミノ酸のオープンリーディング
フレームを含む(配列番号5)。膜貫通領域は、約アミノ酸501〜521に位置する。
【0069】
B.)対側のそして虚血後の成体ラット腎臓における1-7、3-2および4-7mRNAのインサイチュ分析:
インサイチュハイブリダイゼーションを、Finchら、Dev.Dynamics203:223〜240、1995により記載される方法に従って実施する。要約すれば、虚血および対側の腎臓の両方を、PBS中の4%パラホルムアルデヒドで灌流固定する。腎臓をさらに4℃で一晩固定し、そして処理する。パラフィン切片を脱パラフィンおよび再水和し、PBS中の4%パラホルムアルデヒドで固定し、プロティナーゼKで消化し、再固定し、次いでトリエタノールアミン緩衝液中の無水酢酸でアセチル化する。次いで、切片を脱水し、そして32P標識リボプロー
ブと55℃で一晩ハイブリダイズする。33P標識リボプローブは、pGEM-11ZのBamHI部位中にサブクローン化した3-2RDA産物または1-7RDA産物から生成する。ハイブリダイゼーションの後、切片を高ストリンジェンシー条件下(2×SSC、65℃で50%ホルムアミド)で洗浄した。切片を最後に脱水し、オートラジオグラフィー用にエマルジョン(NBT-2)コートし、そ
して少なくとも1週間感光した。銀粒子を展開し、そして切片をトルイジンブルーで対比染色し、そして顕微鏡撮影する。
【0070】
インサイチュハイブリダイゼーションによる1-7および3-2mRNA発現の分析は、これらの遺伝子が、正常腎臓切片中のそれらの発現と比較して、損傷腎臓細胞で大きくアップレギュレートされることを示す。観察される発現は、皮質および外部髄質の再生細胞中にあり、その大部分は、基部細管細胞であるように見える。
【0071】
4-7インサイチュRNA発現パターンの分析はまた、正常成体腎臓と比較して損傷虚血腎臓中でこの遺伝子の豊富な発現を示す。発現の部位は、浸潤細胞であるように見える。
【0072】
6.)ラット3-2cDNAに交差ハイブリダイズするヒトcDNAクローンの単離
図1に示されるクローン3-2のインサートのヌクレオチド546〜969を含む32P標識DNAを
生成し、そしてヒト胎児肝臓λgt10cDNAライブラリー(Clontechカタログ#HL5003a)をスクリーニングするために用いる。1×106のプラークを、上記の標準的条件を用い、ただし
スクリーニング温度は55℃で2回スクリーニングする。高ストリンジェンシー洗浄のために、フィルターを2×SSC中55℃で洗浄する。50のポジティブファージを同定し、そして
プラーク精製し、そしてDNAを調製する。ファージDNAを、上記と同じプローブを用いてサザン分析に供する。サザンブロットフィルターを、0.5×SSC、55℃で最終洗浄に供する。2つのクローンがポジティブとして同定される。クローンH13-10-85のインサートを配列
決定し、そして図3に示される3-2タンパク質に高いレベルの同一性を備えたタンパク質
をコードする領域が見出される。
【0073】
ヒト3-2関連タンパク質のヌクレオチド配列(配列番号6)および推定アミノ酸配列(配
列番号7)を図4に示す。図5に示される最も適合する分析により示されるように、ヒト3-2関連タンパク質は、ラット3-2タンパク質に対して43.8%同一および59.1%類似である。両者は、IgG、ムチン、膜貫通、および細胞質ドメインを含む。両タンパク質のIgGドメイン内の6つのシステインが保存されている。
【0074】
7)KIM-1 Ig融合タンパク質の産生
KIMの細胞外ドメインおよび免疫グロブリン(Ig)のFc領域の融合タンパク質は、損傷/再生腎臓の分子および細胞生物学の研究用、および治療分子として有用なツールである。ヒトおよびラットKIM-1タンパク質の細胞外ドメインとのKimIg融合タンパク質を産生するために、KIM-1cDNAの細胞外ドメインのフラグメントを、PCRにより増幅し、そしてCOS細胞における一過性発現のためにBiogen発現ベクターpCA125中にクローン化した。発現ベクターpCA125は、N末端でクローン化した遺伝子およびC末端でヒトIgFc領域由来の構造を有する融合タンパク質を産生する。COS細胞を、プラスミドSJR103または104でトランスフェクトした;
これらのプラスミドは、ヒトIg Fc領域に融合した細胞外ドメインのヒトKIM配列263〜1147(配列番号6;SJR103)またはラットKIM配列599〜1319(配列番号1;SJR104)を含む融合
タンパク質を発現する。細胞を、細胞ファクトリー(Nunc,Naperville,II)中のDMEM中10%FBS中で増殖させた。感染の2〜3日後、培地を回収し、Amicon濃縮器を用いて濃縮し
、そしてProtein-ASepharoseカラムを用いて融合タンパク質を精製した。精製後、融合タンパク質の純度をSDS-PAGEにより評価した。
【0075】
本発明の化合物の診断用途
配列番号3、配列番号5または配列番号7のタンパク質またはそのフラグメントに特異的に結合する本発明の抗KIM抗体は、いくつかの診断方法において有用である。これらの
因子(agent)は、X線透視法によりまたは放射線撮影で不透過性の物質のような、検出マ
ーカーで標識され得、そして被験体に投与され、KIMタンパク質を発現する組織の造影を
可能にし得る。因子はまた、西洋ワサビペルオキシダーゼのような、組織学切片上のKIM
タンパク質ポジティブ細胞の領域の可視化を可能にする免疫細胞化学的染色として用いられ得る基質に結合され得る。特異的抗体は、このように、単独で使用され得、そしてそれ
が結合する部位は、それ自身が検出マーカーに結合する抗免疫グロブリン抗体を用いるサンドイッチアッセイで可視化され得る。
【0076】
KIMタンパク質に特異的な抗体はまた、身体組織および体液サンプル中のKIMの存在またはその濃度を測定するためのイムノアッセイで有用である。このような濃度は、異なる疾患状態と相関し得る。特定の目的の実施態様として、本発明は、患者の尿、血漿または血清中のKIMまたはKIMフラグメントの濃度を測定することにより、腎臓損傷を診断する、または腎臓修復のプロセスを監視する方法を含む。同様に、KIMは、尿沈渣中、特に尿沈渣
中の細胞残渣中で測定され得る。腎臓細管細胞の円柱は、腎臓疾患が進行中の患者からの尿沈渣中に存在し得、KIMタンパク質およびmRNAの増加したレベルを含み得る。
【0077】
KIMタンパク質に特異的な抗体はまた、ビーズまたはディッシュのような固体支持体に
結合され、そして測定のため、精製およびタンパク質またはその特質(翻訳後の改変など)の特徴付けためのいずれかに、溶液からリガンドを取り除くために用いられ得る。患者のKIMタンパク質のこのような特徴付けは、KIM機能を妨害し、そして異常な患者表現型をともなう有害な変異体またはプロセッシング欠陥の同定に有用であり得る。これら技法の各々は、免疫学の分野の当業者にはルーチンに行われている。
【0078】
さらなる造影方法は、KIMリガンドを発現する組織、特に腫瘍の診断造影のために、造
影可能な部分に融合されたKIMまたはKIMフラグメントを利用する。
【0079】
さらなる診断技法は、損傷関連プロセスの指標として、組織中のアップレギュレートされたKIMm RNAの実証に基く。この技法が試験され、そして以下のように、ラットにおける虚血損傷のモデル中で行い得ることが見出された。
【0080】
損傷後、KIM-1タンパク質の量が増加するか否かを測定するために、本発明者らは、各
ラットの1つの腎臓の腎臓動脈および静脈を40分クランプで遮断した24時間後および48時間後に、対側および虚血後の腎臓のホモジネートを調べた。腎臓ホモジネートを、KIM-1
タンパク質の存在について評価した。ウェスタンブロット分析は、虚血損傷後、2つの異なる抗体により検出される3つのタンパク質を同定し、これらは、虚血損傷に曝されなかった対側の腎臓からのホモジネート中には検出されない。バンドの見かけの分子量は、約40kDa、50kDaおよび70〜80kDaである。ウェスタンブロッティングにより検出される、こ
の3つのタンパク質種は、潜在的なNおよびO連結グリコシル化部位があるとして、同一タンパク質のグリコシル化形態を示し得る。これらのタンパク質の各々が、ポリクローナル抗体の2つの異なるセットと反応する事実は、それらがKIM-1と関連し、そして交差反
応するバンドではないという考えを支持する。この予測の確認は、それらが共通のCNBr切断フラグメントを共有していたことを示した3つのタンパク質のCNBr部分切断の結果から得られた。KIM-1タンパク質の細胞質ドメインは、任意の主要な翻訳後改変を含むことは
予測されないので、KIM-1の細胞質ドメインに対して惹起された抗体で検出された、消化
物の2つの最小の産物(4.7kDaおよび7.4kDa)は、それらが同じタンパク質に由来する場合、3つの異なるKIM-1タンパク質バンドについて同じサイズであるべきである。本発明者
らは、KIM140kDaおよび70〜80kDaタンパク質が、予測されたサイズで移動するフラグメントを生じることを観察した。50kDaタンパク質バンドの消化物もまた、同じC末端特徴バ
ンドペプチドを与えた。
【0081】
KIM-1配列は、2つの推定のNグリコシル化部位およびOグリコシル化部位がポリペプ
チド鎖をカバーするムチンドメインを示す。虚血後の腎臓中に検出された3つのKIM-1バ
ンドは、同じコアタンパク質のグリコシル化改変体に対応し得る。PNGアーゼFを用いた
脱Nグリコシル化は、すべての3つのバンドの、約3kDaの損失に対応する低分子量への
シフトを生じ、3つのタンパク質のすべてがNグリコシル化されることを示した。Oグリ
コシル化の違いは、これら3つのバンドのサイズにおける差違を説明し得る。
【0082】
本発明の化合物の治療的使用
本発明の治療方法は、KIM連結に依存する細胞性応答を選択的に促進するまたは阻害す
ることを含む。KIMおよびKIMリガンドが共に膜結合であり、そして異なる細胞により発現される場合、シグナル伝達は、KIM発現細胞、KIMリガンド発現細胞、またはその両方で起こり得る。
【0083】
KIMリガンド発現細胞中のKIM連結により引き起こされる応答は、細胞を、外因性KIM、KIM融合タンパク質、またはKIMリガンドに対する活性化抗体と、インビトロまたはインビ
ボのいずれかで接触させることにより生成され得る。さらに、そうでなければ内因性KIM
により引き起こされるKIMリガンド発現細胞の応答は、KIMリガンド発現細胞をKIMリガン
ドアンタゴニスト(例えば、KIMリガンドに結合するアンタゴニスト抗体)と接触させる
ことにより、または内因性KIMを抗KIM抗体もしくは他の、KIMの、KIMリガンドとの有効な連結を妨げるKIM結合分子と接触させることによりブロックされ得る。
【0084】
同様に、KIM発現細胞中のKIM連結により引き起こされる応答は、外因性化合物を用いて促進され得るか、または阻害され得る。例えば、KIM発現細胞中のKIM連結により引き起こされる応答は、細胞を可溶性KIMリガンド、または特定の抗KIM活性化抗体と接触させることにより、生成され得る。さらに、そうでなければ、内因性KIMリガンドとの相互作用に
より引き起こされるKIM発現細胞の応答は、KIM発現細胞を、KIMに対するアンタゴニスト
(例えば、有効な、シグナルを生成するKIM連結を妨げる様式でKIMに結合するブロッキング抗体)と接触させることにより、または内因性KIMリガンドを、抗KIMリガンド抗体もしくは他の、KIMの、KIMリガンドとの有効な連結を妨げるKIMリガンド結合分子と接触させ
ることにより、ブロックされ得る。
【0085】
上記の介入のいずれが特定の治療的使用のために有用であるかは、医学の当業者に明らかであるように、阻害されるべき病理学的プロセスまたは促進されるべき医療学的に所望されるプロセスのいずれかの、関連する病因学的機構に依存する。例えば、KIM連結が、
所望の細胞性増殖、分化した表現型の維持、種々の傷害により誘導されるアポトーシスに対する耐性、または他の医学的に有利な応答を生じる場合、連結により引き起こされる応答を促進する上記介入の1つが使用され得る。代替において、KIM連結が、新形成性増殖
、細胞性機能の有害な欠失、アポトーシスに対する感受性、または炎症性事象の促進のような所望でない結果を引き起こす場合、阻害的介入の1つが、有用であり得る。
【0086】
以下は、本発明の以前に記載した治療方法の例である。本発明のKIM関連化合物の治療
的使用の1つは、腎臓疾患を有する被験体の処置、被験体における新たな組織の増殖の促進、または被験体における損傷した組織の生存の促進のためであり、そして治療有効量の本発明のKIMタンパク質、または本発明のタンパク質を含む薬学的組成物を被験体に投与
する工程を含む。これらの方法において使用されるタンパク質は、全長KIMタンパク質の
フラグメント、可溶性KIMリガンドタンパク質もしくは融合フラグメント、またはKIMアゴニストであり得る。これらの方法はまた、治療有効量の本発明のアゴニスト抗体、または本発明のアゴニスト抗体を含む薬学的組成物を被験体に投与することにより実施され得る。KIMタンパク質は、医学的に所望させる補助的効果を発揮する第2の化合物の治療有効
量と共に、同時に投与され得る。これらの方法のための目的の組織は任意の組織を含み得るが、好ましい組織は、腎臓組織、肝臓、神経組織、心臓、胃、小腸、脊髄、または肺を含む。本発明の化合物で有益に処置され得る特定の腎臓状態は、急性腎不全、急性腎炎、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、腎尿細管欠損症、腎臓移植、毒性損傷、低酸素性損傷、および外傷を含む。腎尿細管欠損症は、多嚢胞性腎疾患、腎髄質嚢胞病、および髄質海綿腎のような、遺伝性または後天性特性のいずれかの欠損症を含む。このリストは限定され
ず、そして多くの他の腎障害を含み得る(例えば、参考として本明細書中に援用されるHarrison'sPrinciples of Internal Medicine,第13版,1994を参照のこと)。この方法の
被験体はヒトであり得る。
【0087】
被験体における所望でないKIMリガンド発現組織の増殖を阻害するための治療的介入は
、KIMアンタゴニスト(例えば、KIMリガンドに結合するアンダゴニスト抗体)の治療的有効量を被験体に投与する工程を含むか、または、KIMのKIMリガンド発現組織への結合をブロックする抗KIM抗体もしくは他のKIM結合分子の治療有効量を投与することによる。目的の実施態様において、KIMアンタゴニストまたは抗KIM抗体は、増殖のためにKIMタンパク
質に依存する腫瘍の増殖を阻害またはブロックするために治療的に使用され得る。
【0088】
本発明の他の方法は、細胞を、KIMおよび毒素もしくは放射性核種の融合タンパク質と
、または毒素もしくは放射性核種に結合された抗KIMリガンド抗体と接触させることによ
り、KIMリガンド発現腫瘍細胞を死滅させるか、またはそれらの増殖を阻害することを含
む。細胞は被験体内であり得、そしてタンパク質または結合された抗体は被験体に投与される。
【0089】
毒素または放射性核種をKIMを発現している細胞に標的化するための方法もまた本発明
の範囲内である。この方法は、細胞を、KIMリガンドおよび毒素または放射性核種を含む
融合タンパク質、または毒素もしくは放射性核種に結合された抗KIM抗体と接触させるこ
とを含む。別の実施態様は、KIMを発現する腫瘍細胞の増殖を抑制する方法を包含し、こ
の方法は、細胞を、KIMリガンドおよび毒素もしくは放射性核種の融合タンパク質、また
は毒素もしくは放射性核種に結合された抗KIM抗体と接触させることを含み;細胞は被験
体内であり得、そしてタンパク質は被験体に投与される。
【0090】
本明細書中で用いられる用語「被験体」は、KIMが投与され得る任意の哺乳動物を意味
するとされる。本発明の方法を用いる処置について特に意図される被験体は、ヒト、ならびに非ヒト霊長類、ヒツジ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ラット、およびマウス、ならびに、これらの宿主に由来するかまたはこれらを起源とする器官、腫瘍、および細胞を含む。
【0091】
遺伝子治療における本発明の化合物の使用
本発明のKIM遺伝子は、傷害組織または刺激された増殖が所望される組織へ導入される
。このような遺伝子治療は、トランスフェクトされた細胞によるKIMタンパク質の産生を
刺激し、KIMタンパク質を発現する細胞の増殖および/または細胞の生存を促進する。
【0092】
遺伝子治療方法の特定の実施態様において、KIMタンパク質をコードする遺伝子は、腎
臓標的組織に導入され得る。KIMタンパク質は安定して発現され、そして組織の増殖、分
裂、もしくは分化を刺激し、または細胞生存を増強し得る。さらに、KIM遺伝子は、ウイ
ルスまたは非ウイルスベースの戦略のいずれかを使用する、種々の周知の方法を使用して標的細胞に導入され得る。
【0093】
非ウイルス方法は、エレクトロポレーション、リポソームを用いる膜融合、DNAコート
微粒子銃での高速ボンバードメント、リン酸カルシウム-DNA沈降物とのインキュベーション、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、および単一細胞への直接マイクロインジェクションを含む。例えば、KIM遺伝子は、リン酸カルシウム共沈澱により細胞に導入
され得る(Pillicerら、Science、209:1414-1422(1980));機械的マイクロインジェクションおよび/または粒子加速(Andersonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:5399-5403(1980));リポソームベースのDNA移入(例えば、LIPOFECTIN媒介トランスフェクション−Fefgnerら、Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,84:471-477,1987;GaoおよびHuang、Biochim.Biophys
.Res.Comm.,179:280-285,1991);DEAEデキストラン媒介トランスフェクション;エレクトロポレーション(米国特許第4,956,288号);またはDNAを結合してDNAを優先的に肝
細胞に送達させるポリリジンベースの方法(Wolffら、Science、247:465-468,1990;Curielら、HumanGene Therapy3:147-154,1992)。
【0094】
標的細胞は、直接的な遺伝子移入により、本発明の遺伝子でトランスフェクトされ得る。例えば、Wolffら、「Direct Gene TransferIntoMouse Muscle In Vivo」,Science 247:1465-68,1990を参照のこと。多くの場合、ベクター媒介のトランスフェクションが所望される。ベクターへのポリヌクレオチド配列の挿入のための、当該分野で公知の任意の方法が使用され得る。(例えば、Sambrookら、MolecularCloning:ALaboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)およびAusubelら、CurrentProtocolsin MolecuIar Biology,J.Wiley & Sons,NY(1992)(これらの両方は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。)プロモーター活性化は、組織特異的であり得るか、または代謝産物もしくは投与された物質により誘導され得る。このようなプロモーター/エンハンサーは、ネイティブのc-retリガンドタンパク質プロモーター、
サイトメガロウイルス前初期プロモーター/エンハンサー(Karasuyamaら、J.Exp.Med.,169:13(1989));ヒトβアクチンプロモーター(Gunningら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA
.84:4831(1987));マウス乳房腫瘍ウイルス長末端反復(MMTVLTR)中に存在するグルココルチコイド誘導性プロモーター(Klessigら、Mol.Cell.Biol.、4:1354(1984));モロ
ニーマウス白血病ウイルスの長末端反復配列(MuLVLTR)(Weissら、RNA Tumor Viruses,Cold Spring HarborLaboratory,Cold Spring Harbor,NY(1985));SV40初期領域プロモーター(BernoistおよびChambon,Nature、290:304(1981));ラウス肉腫ウイルス(RSV)
のプロモーター(Yamamotoら、Cell,22:787(1980));単純ヘルペスウイルス(HSV)チミ
ジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA,78:1441(1981));アデノウイルスプロモーター(Yamadaら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA,82:3567(1985))を含むが、
これらに限定されない。
【0095】
KIM遺伝子はまた、現在充分に確立されている遺伝子移入系における使用のための特定
のウイルスベクターにより導入され得る。例えば、Madzakら、J.Gen.Virol.,73:1533-36、1992(パポバウイルスSV40);Berknerら、Curr.TopMicrobiol.Immunol.,158:39-61、1992(アデノウイルス);Hofmannら、Proc.Natl.Acad.Sci.92:10099-10103、1995(バキュ
ロウイルス);Mossら、Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158:25-38、1992(ワクシニアウ
イルス);Muzyczka、Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158:97-123、1992(アデノ随伴ウ
イルス);Margulskee、Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158:67-93、1992(単純ヘルペス
ウイルス(HSV)およびエプスタイン-バーウイルス(HBV));Miller、Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158:l-24、1992(レトロウイルス);Brandyopadhyayら、Mol.Cell.Biol.,4:749-754、1984(レトロウイルス);Millerら、Nature、357:455-450、1992(レトロウイルス);Anderson、Science,256:808-813、1992(レトロウイルス)、CurrentProtocolsin Molecular Biology:9.10-9.14節(Ausubelら、編)、GreenePublishingAssociates,1989
を参照のこと。これらすべては本明細書中で参考として援用する。
【0096】
好ましいベクターはDNAウイルスであり、これは、アデノウイルス(好ましくは、Ad-2
またはAd-5に基づくベクター)、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス(好ましくは、単純ヘルペスウイルスに基づくベクター)、およびパルボウイルス(好ましくは、「欠損」または非自律性パルボウイルスに基づくベクター、より好ましくは、アデノ随伴ウイルスに基づくベクター、最も好ましくは、AAV-2に基づくベクター)を含む。例えば、Aliら、GeneTherapy1:367-384,1994;米国特許第4,797,368号および同第5,399,346号、ならびに
以下の議論を参照のこと。
【0097】
例えば、KIM配列を移入するための特定のベクター系の選択は、種々の要素に依存する
。1つの重要な要素は、標的細胞集団の性質である。レトロウイルスベクターは広範に研究されており、そして多数の遺伝子治療適用において使用されているが、それらは、一般に分裂中ではない細胞を感染するためには適していないが、ガン治療において有用であり得る。なぜなら、それらは、複製中の細胞においてそれらの遺伝子を組み込み、そして発現するだけだからである。それらは、エクスビボアプローチに有用であり、そしてこの点で標的細胞ゲノムへのその安定な組み込みによって魅力的である。
【0098】
アデノウイルスは、真核細胞DNAウイルスであり、これは、治療的トランスジーンまた
はレポータートランスジーンを種々の細胞型へと効率的に送達するように改変され得る。一般的なアデノウイルスの2型および5型(それぞれ、Ad2およびAd5)は、ヒトにおいて呼吸器疾患を生じ、そして現在デュシェーヌ筋ジストロフィー(DMD)および嚢胞性線維
症(CF)の遺伝子治療のために開発されている。Ad2およびAd5の両方は、ヒト悪性腫瘍に関連しないアデノウイルスの亜網に属する。アデノウイルスベクターは、有糸分裂状態に関係なく、極度に高レベルのトランスジーンの実質的にすべての細胞型への送達を提供し得る。高力価(1013プラーク形成単位/ml)の組換えウイルスは、293細胞(アデノウイルスでトランスフォームされた、相補性ヒト胚性腎細胞株:ATCCCRL1573)において容易に
生成され得、そして認識可能な損失なしに長期間凍結保存され得る。遺伝的アンバランスを補完する治療的トランスジーンをインビボで送達することにおけるこの系の効力は、種々の障害の動物モデルにおいて実証されている。Watanabe、Atherosclerosis、36:261-268(1986);Tanzawaら、FEBSLetters、118(1):81-84(1980);Golastenら、NewEngl.J.Med.,309:288-296(1983);Ishibashiら、J.Clin.Invest.,92:883-893(1993);およびIshibashiら、J.Clin.Invest.,93:1889-1893(1994)を参照のこと。これらの全ては本明細書中
で参考として援用される。実際、嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)のcDNAをコ
ードする組換え複製欠損アデノウイルスは、少なくとも2つのヒトCF臨床試験における使用を承認されている。例えば、Wilson,Nature,365:691-692,1993を参照のこと。遺伝
子治療のための組換えアデノウイルスの安全性のさらなる支持は、ヒト集団における生アデノウイルスワクチンの広範な経験である。
【0099】
DMDおよび他の遺伝障害の遺伝子治療のために開発されている第一世代の組換え複製欠
損アデノウイルスは、E1aの全体およびE1b領域の一部の欠失を含む。この複製欠損ウイルスは、トランスに作用するE1aタンパク質を提供する機能的なアデノウイルスE1a遺伝子を含む293細胞において増殖される。E1欠失ウイルスは、293細胞(これは、トランスにE1a
およびE1b領域遺伝子産物を提供する)において複製し得、そして感染性ウイルスを生成
し得る。得られるウイルスは、多くの細胞型を感染させ得、そして導入された遺伝子を発現し得る(自身のプロモーターを保有している場合)が、細胞が非常に高い感染多重度で感染されない限り、E1領域のDNAを有さない細胞においては複製し得ない。アデノウイル
スは、それらが広い宿主範囲を有しているという利点を有し、静止細胞またはニューロンのような最終分化細胞に感染し得、そして本質的に非腫瘍形成性のようである。アデノウイルスは、宿主ゲノムへは取り込まれないようである。それらが染色体外で存在するので、挿入変異誘発の危険性は、多大に低減される。Aliら、前出、373。組換えアデノウイルス(rAdV)は、非常に高い力価を生成し、ウイルス粒子は、中程度に安定で、発現レベルは高く、そして広範囲の細胞が感染され得る。これらの天然の宿主細胞は、気道上皮であるので、それらは肺ガンの治療のために有用である。
【0100】
バキュロウイルス媒介移入は、いくつかの利点を有する。バキュロウイルス遺伝子移入は、複製中の細胞および複製中でない細胞において生じ得、そして腎細胞ならびに肝細胞、神経細胞、脾臓、皮膚、および筋肉において生じ得る。バキュロウイルスは、哺乳動物細胞において非複製および非病原性である。ヒトは、感染をブロックし得る、組換えバキュロウイルスに対する既存の抗体を欠く。さらに、バキュロウイルスは、非常に大きなDNA挿入物を取り込み得、そして形質導入し得る。
【0101】
アデノ随伴ウイルス(AAV)もまた、体細胞性遺伝子治療のためのベクターとして使用
されている。AAVは、単純なゲノム構成(4〜7kb)を有する小さな1本鎖(ss)のDNAウイルスであり、このことは、AAVを、遺伝子操作に理想的な基質としている。2つのオープン
リーディングフレームは、一連のrepおよびcapポリペプチドをコードする。Repポリペプ
チド(rep78、rep68、rep62、およびrep40)は、AAVゲノムの複製、レスキュー、および
組み込みに関与する。capタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)は、ビリオンキャプシドを形成する。repおよびcapオープンリーディングフレームの5'および3'末端に隣接して、145bpの逆方向末端反復配列(ITR)が存在し、その最初の125bpは、Y-およびT-形状の二重
鎖構造を形成し得る。AAVベクターの開発のために重要なことに、全体のrepドメインおよびcapドメインが切り出され得、そして治療的またはレポータートランスジーンで置換さ
れ得る。B.J.Carter、Handbookof Parvoviruses、P.Tijsser編、CRC Press、155〜168頁
(1990)を参照のこと。ITRは、AAVゲノムの複製、レスキュー、パッケージング、および組み込みに必要とされる最小配列を表すことが示されている。
【0102】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、遺伝子治療において重大な可能性を有する。
【0103】
ウイルス粒子は、非常に安定であり、そして組換えAAV(rAAV)は、ペレット化による
かまたはCsCl勾配バンド形成によりrAAVが精製され得るという点で、「薬物様」の特徴を有する。それらは、熱安定性であり、そして凍結乾燥により粉末にされ得、そして再水和されて完全な活性になり得る。それらのDNAは、宿主染色体に安定に組み込まれるので発
現は長期である。それらの宿主域は広範であり、そしてAAVは既知の疾患を発症させず、
それゆえ組換えベクターは非毒性である。
【0104】
一旦、標的細胞に導入されると、目的の配列は、従来の方法(例えば、ベクターの挿入された遺伝子配列に相同/相補的である配列を含むプローブを使用する核酸ハイブリダイゼーション)により同定され得る。別のアプローチにおいて、配列(単数または複数)は、標的細胞への発現ベクターの導入により生じる「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質耐性など)の存在または非存在により同定され得る。
【0105】
処方および投与
本発明の化合物は、キャリアビヒクルにおける調製のような、標準的な実施に従って投与される。用語「薬理学的に受容可能なキャリア」は、変異プロトオンコジーンまたは変異腫瘍性タンパク質がそれと結合され、その適用を容易にする、1つ以上の有機または無機成分(天然または合成)を意味する。適切なキャリアは、滅菌生理食塩水を含むが、薬学的に受容可能であることが既知である他の水性および非水性等張滅菌溶液および滅菌懸濁液は、当業者に公知である。この点において、用語「キャリア」は、リポソームおよびHIV-1tatタンパク質(Chenら、Anal.Biochem.227:168-175,1995を参照のこと)なら
びに任意のプラスミドおよびウイルス性発現ベクターを包含する。
【0106】
本発明の任意の新規なポリペプチドは、薬学的に受容可能な塩の形態において使用され得る。本発明のポリペプチドと塩を形成することが可能な、適切な酸および塩基は、当業者に周知であり、そして無機性および有機性の酸および塩を含む。
【0107】
本発明の化合物は治療有効量で、被験体に投与され、これは、医学的に所望される結果を生成するまたは特定の処置されている状態に対して影響を及ぼす化合物の量を意味する。本発明の化合物の有効量は、疾患状態、変性状態、または損傷状態の寛解または遅延が可能である。有効量は個体に基づいて決定され得、そして部分的に、被験体の身体的特性、処置されるべき症状、および求められる結果の考慮に基づく。有効量は、このような因子を使用して、そして慣習的実験以下を使用して、当業者により決定され得る。
【0108】
本発明の化合物のためのリポソーム送達システムは、任意の種々の単ラメラ小胞、多重ラメラ小胞、または安定な複ラメラ(plurilamellar)小胞であり得、そして当業者に周
知の方法に従って(例えば、米国特許第5,169,637号、同第4,762,915号、同第5,000,958号、または同第5,185,154号の教示に従って)調製および投与され得る。さらに、それら
のリポソームへの結合を増強するために、本発明の新規なポリペプチド、ならびに他の選択されたポリペプチドをリポタンパク質として発現することが所望され得る。例として、ヒト急性腎不全の、リポソーム被包化KIMタンパク質を用いた処置は、リポソームを使用
するこのような処置を必要とする細胞中に、KIMタンパク質を導入することにより、イン
ビボで行われ得る。リポソームはカテーテルを介して腎動脈に送達され得る。組換えKIM
タンパク質は、例えば、イムノアフィニティクロマトグラフィーまたは任意の他の便利な方法によりCHO細胞から精製され、次いでリポソームと混合され、そして高い効率でそれ
らに組み込まれる。被包されたタンパク質は、細胞増殖の刺激に対する任意の効果についてインビトロで試験され得る。
【0109】
本発明の化合物は、医学的に受容可能な任意の様式で投与され得る。これは、注射、非経口的経路(例えば、静脈内、血管内、動脈内、皮下、筋肉内、腫瘍内、腹腔内、脳室内、硬膜内、またはその他)、ならびに経口、経鼻、経眼、直腸的、もしくは局所的を含み得る。持続放出投与もまた、本発明に具体的に含まれる(例えば、蓄積注射または侵食可能移植物のような手段による)。局所的な腫瘍に供給している1つ以上の動脈(例えば、腎動脈または血管)に対するカテーテルを介する送達のような手段によるような、局在化送達が特に意図される。
【0110】
上記の発明は、理解の明瞭さの目的で、例証および例によりいくらか詳細に記載されているが、特定の変更および改変が、添付の請求の範囲によってのみ制限されるような本発明の範囲内で実施され得ることは当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1−1】図1は、ラットクローンcDNA3-2のヌクレオチド配列であり、推定タンパク質リーディングフレームは615〜1535である。
【図1−2】図1は、ラットクローンcDNA3-2のヌクレオチド配列であり、推定タンパク質リーディングフレームは615〜1535である。
【図1−3】図1は、ラットクローンcDNA3-2のヌクレオチド配列であり、推定タンパク質リーディングフレームは615〜1535である。
【図2−1】図2は、ラットクローン1-7のcDNA配列のリストであり、推定タンパク質リーディングフレームは145〜1065である。
【図2−2】図2は、ラットクローン1-7のcDNA配列のリストであり、推定タンパク質リーディングフレームは145〜1065である。
【図3−1】図3は、ラットクローン4-7のcDNA配列のリストであり、推定タンパク質リーディングフレームは107〜1822である。
【図3−2】図3は、ラットクローン4-7のcDNA配列のリストであり、推定タンパク質リーディングフレームは107〜1822である。
【図3−3】図3は、ラットクローン4-7のcDNA配列のリストであり、推定タンパク質リーディングフレームは107〜1822である。
【図4−1】図4は、ヒトクローンH13-10-85のcDNAおよび推定アミノ酸配列のリストであり、推定タンパク質リーディングフレームは1〜1002である。リストの上の行はcDNA配列であり(配列番号6)、そして下の行は推定アミノ酸配列である(配列番号7)。
【図4−2】図4は、ヒトクローンH13-10-85のcDNAおよび推定アミノ酸配列のリストであり、推定タンパク質リーディングフレームは1〜1002である。リストの上の行はcDNA配列であり(配列番号6)、そして下の行は推定アミノ酸配列である(配列番号7)。
【図5】図5は、ヒトクローンH13-10-85のヌクレオチド配列のラットクローン3-2のヌクレオチド配列とのBESTFIT比較である。
【0112】
(配列表)
【0113】
【数1】

【0114】
【数2】

【0115】
【数3】

【0116】
【数4】

【0117】
【数5】

【0118】
【数6】

【0119】
【数7】

【0120】
【数8】

【0121】
【数9】

【0122】
【数10】

【0123】
【数11】

【0124】
【数12】

【0125】
【数13】

【0126】
【数14】

【0127】
【数15】

【0128】
【数16】

【0129】
【数17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−39111(P2009−39111A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187615(P2008−187615)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【分割の表示】特願2007−236021(P2007−236021)の分割
【原出願日】平成9年5月23日(1997.5.23)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】