組織因子経路インヒビターまたは組織因子経路インヒビター改変体を含有する安定化凍結乾燥組成物
長期保存に適したTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物は、炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤でpHが約4ないし約8のTFPIまたはTFPI改変体の水性製剤を凍結乾燥することによって、形成することができる。これらの凍結乾燥組成物は、40℃で保存した場合、3ヶ月以上安定である。本発明は、(1)TFPIまたはTFPI改変体と、(2)炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤とを含むTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物を提供し、この凍結乾燥組成物は、約45%以上の凝集安定性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、同時係属仮出願第60/438,524号(2003年1月8日出願)、第60/494,547号(2003年8月13日出願)、第60/509,276号(2003年10月8日出願)、および第60/512,092号(2003年10月20日出願)の恩恵を主張するとともに、ここに本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に安定化されたタンパク質製剤に関する。より詳しくは、本発明は組織因子経路インヒビター(TFPI)およびTFPIの安定化凍結乾燥組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
組織因子経路インヒビター(TFPI)は、276アミノ酸長であり、組織因子によって媒介される血液凝固のインヒビターとして機能する。そのアミノ酸配列を配列番号1で示す。TFPIのアミノ末端は負に帯電しており、またカルボキシ末端は正に帯電している。TFPIタンパク質は、3つのクニッツ型酵素インヒビタードメインを含有する。TFPIは、18個のシステイン残基を含み、正しく折りたたまれた場合、9個のジスルフィド架橋を形成する。一次配列は、3つのN結合コンセンサス糖化部位(Asn−X−Ser/Thr)を含む。一次配列は、3つのN結合コンセンサス糖化部位(Asn−X−Ser/Thr)を含む。糖化部位のアスパラギン酸残基は、145、195、および256位に位置している。TFPIもまた、リポ蛋白関連凝固インヒビター(LACI)、組織因子インヒビター(TFI)、および外因経路インヒビター(EPI)として知られている。
【0004】
TFPIを用いて、種々の適応症を治療することが提案された。例えば、敗血症(米国特許第6,063,764号およびWO93/24143)、深部静脈血栓(米国特許第5,563,123号、米国特許第5,589,359号、およびWO96/04378)、虚血(米国特許第5,885,781号、米国特許第6,242,414号、およびWO96/40224)、再狭窄(米国特許第5,824,644号、およびWO96/01649)、および癌(米国特許第5,902,582号およびWO97/09063)が挙げられる。TFPI改変体(アミノ末端でのアラニン残基の付加によってTFPIとは異なる)(”ala−TFPI”)が敗血症治療のための動物モデルで有効であることが示されている(Carr et al., Cire Shock 1994 Nov; 44(3): 126−37)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
TFPIは、水溶液中での溶解度が乏しい疎水性タンパク質である。溶液中でのTFPIの凝集は、生物活性の損失と相関していた。種々の製剤が作られた(例えば、米国特許第5,888,968号およびWO96/40784を参照せよ)。しかし、安定化されたTFPIまたはTFPI改変体組成物が当技術分野で、いまだ求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の簡単な説明)
本発明は、少なくとも以下の実施形態を提供する。
【0007】
本発明の一実施形態は、(1)TFPIまたはTFPI改変体と、(2)炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤とを含むTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物を提供する。この凍結乾燥組成物は、約45%以上の凝集安定性を有する。
【0008】
本発明の別の実施形態は、凍結乾燥に先立って、TFPIまたはTFPI改変体が、炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤を含む水性製剤に存在し、その水性製剤のpHが約4ないし約8であるTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物である。
【0009】
本発明の別の実施形態は、TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物を調製する方法である。この方法は、(1)TFPIまたはTFPI改変体と、(2)炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤とを含む水性製剤を凍結乾燥する工程を含み、前記水性製剤はpHが約4ないし約8であり、それによって、約45%以上の凝集安定性を持つTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物を形成する。
【0010】
本発明の別の実施形態は、凍結乾燥のためにTFPIまたはTFPI改変体の組成物を調製する上で役立つプロセスである。このプロセスは、TFPIまたはTFPI改変体を含み基本的にカオトロープを含まない第2の製剤を形成するために、(1)TFPIまたはTFPI改変体と(2)カオトロープとを含む第1の製剤から、カオトロープを取り除くことで、TFPIまたはTFPI改変体を含む第2の製剤を形成する工程を有し、上記第2の製剤はpHが約3.5ないし約4.5である。カオトロープを尿素とすることができる。いくつかの実施形態では、第2の製剤はpHが約4である。第1の製剤は、pHが約5.5で約300mMのアルギニンおよび約20mMのクエン酸;pHが7.2で約2Mの尿素、約150mMの塩化ナトリウム、および約20mMのリン酸ナトリウム;pHが約7.2で約2Mの尿素、約250mMの塩化ナトリウム、および約20mMのリン酸ナトリウム;またはpHが約7で約1Mの尿素、約125mMの塩化ナトリウム、および約10mMのリン酸ナトリウムを含むことができる。第2の製剤は、pHが約5.5で約300mMのアルギニンおよび約20mMのクエン酸ナトリウム、pHが約6で約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)のマンニトール、および10mMのヒスチジン、pHが約4で約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのグルタミン酸塩;あるいはpHが約6で約3%(w/v)アルギニン、約4%(w/v)マンニトール、および約10mMのヒスチジンを含むことができる。上記除去工程は、ダイアフィルタレーション、透析、およびサイズ排除クロマトグラフィーからなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、実施することができる。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態は、凍結乾燥のためにTFPIまたはTFPI改変体を調製する上で役立つプロセスである。(1)TFPIまたはTFPI改変体と(2)第1製剤低分子量溶質とを含む第1の製剤に含まれる第1製剤低分子量溶質を第2溶液低分子量溶質によって置換して第2の製剤を形成する工程を有し、上記第2の製剤はpHが約3.5ないし約4.5である。プロセスは、第2製剤溶質を第3溶質製剤と置き換えて第3の製剤を形成する工程を含むことができる。置換の工程は、ダイアフィルトレーションによっておこなうことができる。第3の製剤は、医薬的に許容しうる製剤である。第2製剤溶質を置き換える工程を、ダイアフィルタレーション、透析、およびサイズ排除クロマトグラフィーからなる群から選択される方法で実施することができる。必要に応じて、第3の製剤は、pHが約6で約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのヒスチジンと、約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)マンニトール、およびpHが約6.5で10mMのイミダゾールとを含むことができる。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態は、(1)TFPIまたはTFPI改変体と (2)クエン酸塩緩衝剤とを含むTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物であって、該凍結乾燥組成物が約45%以上の凝集安定性を有する。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態は、(1)TFPIまたはTFPI改変体と、(2)硫酸塩と、(3)リン酸緩衝剤とを含むTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物であって、該凍結乾燥組成物が約45%以上の凝集安定性を有する。
【0014】
本発明のさらなる実施形態は、TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物を調製する方法である。この方法は、TFPIまたはTFPI改変体およびクエン酸塩緩衝剤と、TFPIまたはTFPI改変体、硫酸塩、およびリン酸塩緩衝剤とからなる群から選択される水性製剤を凍結乾燥する工程を含み、それによって約45%以上の凝集安定性を持つTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物が形成される。
【0015】
(発明の詳細な説明)
高pH緩衝剤は、水性組成物でのTFPIまたはTFPI改変体の凝集に好都合である。TFPIまたはTFPI改変体の凝集は、分子の変性および不活化を生じる。低pH緩衝剤は、水性組成物でのTFPIまたはTFPI改変体の酸接触加水分解を生じる。このように、TFPIまたはTFPI改変体の安定な水性組成物にとって最適なpH範囲は、pH4ないしpH8である。pHが約4ないし約8であり、かつガラス形成剤を含有するTFPIまたはTFPI改変体組成物を凍結乾燥することで、非常に安定組成物を得ることができる。
【0016】
凍結乾燥(「フリーズ・ドライ」)は、製剤からの脱水である。凍結乾燥は、任意の周知の方法、例えば以下に説明するように、ハル・フリーズ・ドライヤー(Hull Freeze Dryer)を用いておこなうことができる。脱水は、水依存型崩壊反応が起こるのを防止する。そのような反応として、例えばペプチド結合加水分解とアミド分解とが挙げられる。
【0017】
本発明の凍結乾燥組成物は、約10mg/ml以下のTFPIまたはTFPI改変体(すなわち、10、7.5、5、2.5、1、0.5、もしくは0.2mg/ml以下)とガラス形成剤とを含む水性製剤を凍結乾燥することによって作られる。この水性製剤は、凍結乾燥に先立って、pHが約4ないし約8(すなわち、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、または8)、より好ましくはpHが約5ないし約8、それよりも好ましくはpHが約5.5ないし約6.5、さらにそれよりも好ましくはpH6である。必要に応じて、水性製剤が緩衝剤および/または1種類以上の結晶形成剤を含むことができる。
【0018】
他のTFPIおよびTFPI組成物の調製は、TFPIおよびTFPI改変体と、(a)クエン酸塩緩衝剤、(b)硫酸塩とリン酸塩緩衝剤との混合物、または(c)硫酸塩と緩衝剤(pHが約4ないし約8)を含む水性製剤を凍結乾燥することで、おこなうことができる。凍結乾燥組成物の成分は、以下に別々に説明する。
【0019】
好ましい凍結乾燥産物は、20mg/mlのTFPIまたはTFPI改変体、10mg/mlのポリリン酸塩、10mMのL−ヒスチジン(pH7)、4%のマンニトール、および1%のショ糖を含む。
【0020】
(凍結乾燥組成物の凝集安定性)
本発明の凍結乾燥組成物の凝集安定性は、約45%以上である。「凝集安定性率(percent aggregation stability)」は、40℃促進安定性アッセイで測定される可溶性をもつTFPIまたはTFPI改変体試料の比率のことをいう。40℃促進安定性アッセイでは、TFPIまたはTFPI改変体試料を40℃で3ヵ月間インキュベートする。インキュベーション後、凍結乾燥されたTFPIまたはTFPI改変体試料を滅菌水で元に戻し、0.2μmフイルターで濾過し、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー (CEX−HPLC) にかけて、溶液に残存する可溶性TFPIまたはTFPI改変体の量を測定する。CEX−HPLCアッセイついては、後述する。このように、例えば、60%の凝集安定性を持つTFPIまたはTFPI改変体組成物は、40℃促進安定性アッセイで測定されるようにTFPIまたはTFPI改変体の60%が可溶性である組成物である。80%の凝集安定性を持つTFPIまたはTFPI改変体組成物は、40℃促進安定性アッセイで測定されるように、TFPIまたはTFPI改変体の80%が可溶性である組成物である。本発明のTFPIまたはTFPI改変体組成物の凝集安定性率は、40℃促進安定性アッセイで測定されるように、好ましくは約45、50、60、70、または75%以上、より好ましくは80、82、84、85、90、92、94、95、96、97、98、または99%以上である。本発明のTFPIまたはTFPI改変体組成物の凝集安定性率は、例えば、約45%以上から約90%以上、約45%から約96%以上、50%以上から約99%以上、約50%以上から約70%以上、約60%以上から約80%以上、約70%から約95%以上、あるいは約85%以上から約96%以上の範囲に及ぶことができる。好ましくは、本発明の水溶性組成物に含まれるTFPIまたはTFPI改変体は、以下に説明するように、例えばプロトロビン時間アッセイによって測定される生物活性を有する。
【0021】
(保存温度)
本発明の組成物に対する保存温度を、約−70℃から約25℃までの範囲(例えば、約−70、−60、−50、−40、−30、−20、−10、5、10、15、20、または25℃)とすることができる。好ましくは、本発明の凍結乾燥組成物を約25℃で保存することができる。
【0022】
(TFPIおよびTFPI改変体)
TFPIは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を持つポリペプチドである。好ましくは、TFPIは、微生物宿主で生ずる組み換え型のヒト・タンパク質である。TFPIは、WO01/24814でその生物活性に関して、さらに特徴づけられ、かつ説明されている。
【0023】
TFPI改変体として、TFPIの類似体および誘導体、同様にTFPI、TFPI類似体、およびTFPI誘導体のフラグメントが挙げられる。TFPI改変体は、ヒトまたは他の哺乳類源から得ることができ、また合成あるいは組み換え技術によっても得られる。類似体は、一つ以上のアミノ酸の置換、挿入、欠失、および/または付加を有するTFPI分子である。保守的置換(アミノ酸が同様の特性を持つ別のアミノ酸と交換される)が好ましい。保守的置換の例として、限定されるものではないが、GlyとAlaとの間、ValとIleとLeuとの間、AspとGluとの間、LysとArgとの間、AsnとGlnとの間、およびPheとTrpとTyrとの間が挙げられる。これらは一般に、約1ないし5アミノ酸の範囲内である(すなわち、1、2、3、4、または5アミノ酸)。分子内の任意の位置、特にアミノ末端またはカルボキシ末端に、さらにアミノ酸を付加することができる。例えば、TFPI類似体の一つであるN−L−アラニル−TFPI(「ala−TFPI」)は、アミノ末端にアラニン残基が付加されている。アミノ酸付加は、1、2、5、10、25、100,またはそれ以上の数のアミノ酸を付加することである。この定義のなかに、融合タンパク質も包含される。
【0024】
フラグメントは、TFPI、TFPI類似体、またはTFPI誘導体の一部分である。フラグメントの例として、クニッツ(Kunitz)・ドメイン1、2、または3、クニッツ・ドメイン1および2または2および3、あるいはN末端、C末端、または両方の欠失が挙げられる。改変体の作製についての内容のある指導は、米国特許第5,106,833号に見いだされる。TFPIのフラグメントは、配列番号1の少なくとも20個の保守的アミノ酸から構成される。例えば、一つのフラグメントの長さを20、25、30、50、100、150、200、250、または275個の保守的アミノ酸とすることができる。生物活性を持たないTFPIフラグメントが、米国特許第5,106,833号に開示されている。本発明でのそのようなフラグメントの使用もまた、検討する。
【0025】
誘導体は、付加部分を持つTFPI、TFPI類似体、またはTFPIフラグメントとして、定義される。そのような付加として、そのような付加の例として、糖化、リン酸化反応、アセチル化、またはアミド化が挙げられる。
【0026】
TFPI改変体と配列番号1との相同率の測定は、Blast2アラインメント・プログラム(Blosum62、Expect10、標準遺伝子コード、オープン・ギャップ11、エクステンション・ギャップ1、ギャップxドロップオフ50、および低複雑度フイルター・オフ)を用いておこなう。TFPI改変体の配列番号1に対するアミノ酸の同一性は、一般に、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%ないし95%(すなわち、90、91、92、93、94、または95%)以上、最も好ましくは少なくとも98%もしくは99%である。
【0027】
TFPIをコードするDNA配列に変更を加えることで、TFPIのアミノ酸配列改変体を調製することができる。ヌクレオチド配列に変更を加える方法は、当技術分野で周知である。例えば、Walker and Gaastra, eds. (1983) Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company, New York)、 Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488−492、Kunkel et al. (1987) Methods Enzymol. 154:367−382、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, N.Y.)、米国特許第4,873,192号、および本明細書で引用される文献を参照せよ。
【0028】
TFPI改変体は、相当量の生物活性を有するもので、以下に説明するPTアッセイで測定されるように、例えばTFPIの生物活性の10%、30%、50%、60%、80%、90%、またはそれ以上を有する。明らかに、TFPI改変体をコードするDNAに加えられる変更は、その配列をリーディング・フレームから外すものであってはならず、好ましくは第2のmRNA構造を作りうる相補的領域を生成しない。TFPIまたはTFPI改変体の生物活性もしくは免疫活性を消失させることなく、どのアミノ酸を置換、挿入、または欠失させるかを判断する指針は、当技術分野で周知のコンピュータ・プログラム)例えば、DNASTARソフトウエア、もしくはDayhoff et al. (1978) in Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.にあるもの)を用いることで見いだされる。生物活性のないTFPI改変体の安定化についても検討する。
【0029】
米国特許第4,966,852号に示すように、TFPIまたはTFPI改変体を組み換え技術によって作ることが可能である。例えば、所望のタンパク質のcDNAを、原核生物または真核生物で発現させるプラスミドに取り込むことができる。微生物を用いたタンパク質の発現に対する詳細については、当業者に周知の多くの参考文献に記載されており、例えば、米国特許第4,847,201号およびManiatas et al., 1982, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, N.Y.)を参照せよ。
【0030】
微生物の形質転換と、形質転換された微生物を用いたTFPIまたはTFPI改変体の発現とに、種々の技術が利用できる。考えられるアプローチの単なる例を以下に示す。TFPIまたはTFPI改変体DNA配列を適当な制御配列に結合させることができる。TFPIまたはTFPI改変体DNA配列をプラスミド(例えば、Boehringer−Mannheim等の会社から市販されているpUC13またはpBR322)に取り込むことができる。いったんTFPIまたはTFPI改変体DNAをベクターに取り込むことで、そのDNAを適当な宿主にクローン化することができる。そのようなDNAの増幅を、米国特許第4,683,202号および米国特許第4,683,195号等に示される技術を用いておこなうことができる。cDNAは、HepG2またはSKHepヘパトーマ細胞等の細胞でmRNA産生を誘導し、そのmRNAを同定および単離し、さらにそれを逆転写してcDNAを得ることで、得てもよい。発現ベクターが宿主(例えば、大腸菌(E. coli))に形質転換された後、その細菌を培養してタンパク質を発現させることが可能である。細菌は、好ましい原核微生物であり、大腸菌(E. coli)が特に好ましい。本発明で有用な好ましい微生物は、大腸菌(E. coli)K−12のMM294株であり、この株は米国菌培養収集所(American Type Culture Collection) (現在の所在地:10801 University Blvd.,Manassas, Virginia)により1984年2月14日付でブタベスト条約の条項に従って寄託された(寄託番号39607)。
【0031】
TFPIまたはTFPI改変体を細菌または酵母で作り、その後精製してもよい。一般に、米国特許第5,212,091号、米国特許第6,063,764号、および米国特許第6,103,500号、もしくはWO96/40784に示すような手順を用いることができる。WO06/40784およびGustafson et al., Prot. Express. Pur. 5:233 (1994)にもとづいて、TFPIまたはTFPI改変体を精製し、可溶化し、さらに再生することができる。例えば、WO96/40784の実施例9にもとづいて調製した場合、生物活性ala−TFPIとして重量で全タンパク質の約85%ないし90%を含むala−TFPIの製剤が得られる。
【0032】
(ガラス形成剤)
「ガラス形成剤(glass forming agent)」は、臨界温度(ガラス転移温度(Tg)を下回る温度でガラスを形成する能力を持つ化学薬品である。もし、ガラス形成剤がそのTgを下回る温度で凍結乾燥されるならば、ガラスが形成されて凍結乾燥組成物のままである。しかし、もしガラス形成剤がTgを上回る温度で凍結乾燥されるならば、ガラスは形成されない。ガラス形成の過程では、タンパク質がガラス構造に埋め込まれ得る。本発明による使用に適したガラス形成剤として、限定されるものではないが、荷電高分子、単糖類、二糖類、三糖類、および天然アミノ酸が挙げられる。炭水化物とアミノ酸ガラス形成剤とが好ましい。ガラス形成剤の組み合わせもまた、単一の製剤として検討する。
【0033】
「荷電高分子(charged polymer)」は、いくつかが正または負に帯電した化学基を持つ直鎖状または非直鎖状の形態で結合した複数の反復構造単位からなる一本の主鎖で構成される任意の化合物である。反復構造単位は、有機または無機のいずれであってもよい。また、反復構造単位の数は2から数百万に及ぶものであってもよい。
【0034】
ガラス形成剤としての使用に適した荷電高分子として、限定されるものではないが、ポリリン酸塩、ヘパリン、硫酸デキストラン、アガロペクチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ無機物、ポリアミノ酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸塩、ポリヒスチジン、ポリオーガニック、DEAEデキストラン、ポリ有機アミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンセルロース、ポリアミン、ポリリジン、およびポリアルギニンが挙げられる。
【0035】
「ポリリン酸塩(polyphosphate)」は、リン酸無水物結合で連結したオルト・リン酸塩の反復単位からなるポリマーである。反復単位の数を、2(ピロリン酸塩)ないし数千とすることができる。ポリリン酸塩は、ヘキサメタリン酸ソーダ(SHMP)と、しばしば言及される。他の慣用名として、グラハムズ(Grahams)塩、カルゴン、リン酸塩ガラス、テトラメタリン酸ナトリウム、およびガラスHが挙げられる。
【0036】
ガラス形成剤として使用される単糖類として、限定されるものではないが、グリコールアルデヒド、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アロース、タロース、グロース、マンノース、ブドウ糖、イドース、ガラクトース、アルトロース、ジヒドロキシアセトン、エリトロース、リブロース、キシロケトース、プシコース、タガトース、ソルボース、およびフルクトースが挙げられる。硫酸化単糖類を用いることも可能である。
【0037】
単糖類を2つ結合させることで、二糖類が形成される。二糖類の形成に用いる2つの単糖類を、同一または異なるものとすることができる。ガラス形成剤として用いることができる二糖類の例として、ショ糖、トレハロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、ゲンチオビオース、ラミナリボース、およびセロビオースが挙げられる。硫酸化二糖類を用いることも可能である。
【0038】
単糖類を3つ連結することで、三糖類が形成される。三糖類の形成に用いる3つの単糖類を、同一または異なるものとすることができる。ガラス形成剤としての使用に適した三糖類の例として、ラフィノースおよびメレチトースが挙げられる。硫酸化三糖類を用いることも可能である。
【0039】
本発明でのガラス形成剤としての使用に適する天然アミノ酸として、限定されるものではないが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、リシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、プロリン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。アミノ酸は、L−立体異性体またはD−立体異性体のいずれであってもよい。L−アミノ酸が好ましい。
【0040】
ガラス形成剤は、約50mMないし約600mM(すなわち、約50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、または600mM)の量で、凍結乾燥用の水性製剤に存在する。好ましくは、ガラス製剤は、約100mMないし約500mM、より好ましくは約200mMないし約400mM、さらにより好ましくは約100mMないし約300mM、最も好ましくは約300mMの量で、存在する。
【0041】
高分子(例えば、ポリリン酸塩)は、一般に分子量に関しては十分に定まっていない。いくつかの高分子は長く、また他の高分子は短いことから、分子量は高分子間で変動する。もしガラス形成剤が十分に定まった分子でなければ、例えばポリリン酸塩のような高分子の場合、水性製剤に存在する量は、TFPIまたはTFPI改変体の重量と荷電高分子の重量との比として表される。好ましくは、TFPIまたはTFPI改変体と荷電高分子との比は、約8:1またはそれ以下であり、より好ましくは約6:1、最も好ましくは約2:1である。
【0042】
(緩衝剤)
TFPIまたはTFPI改変体組成物のpHは、タンパク質の溶解度に影響を及ぼし、それによってその安定性にも影響を及ぼす。Chen et al. (1999) J. Pharm. Sciences 88(9):881−888を参照せよ。本発明の組成物にとって好ましいpH範囲は、約4ないし約8(すなわち、約pH4、4.5、5.5、6、6.5、7、7.5、または8)、より好ましくは約5ないし約6.5である。pHはTFPI溶解度にとって重要な因子であることから、適当なpHに保つために緩衝剤を用いることで製剤の安定性をさらに改善し得る。したがって、本発明の水性組成物は、必要に応じて、溶液pHを保つために緩衝剤をさらに含むことができる。
【0043】
本発明による使用に適した典型的な緩衝剤として、限定されるものではないが、酢酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、グルタミン酸塩、L−グルタミン酸塩、イミダゾール、クエン酸塩、ヒスチジン、L−ヒスチジン、グリシン、アルギニン、L−アルギニン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい緩衝剤は、リン酸塩、L−グルタミン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、L−アルギニン、およびL−ヒスチジンである。最も好ましい緩衝剤は、L−アルギニンおよびL−ヒスチジンである。緩衝剤は、約0mMないし約600mM(すなわち、約0、5、10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、550、または600mM)の量で、水性製剤に加えられる。好ましくは、緩衝剤の濃度は、約10mMないし約100mM、より好ましくは約20mMないし約50mMである。
【0044】
いくつかのガラス形成剤もまた、緩衝剤となり得る。そのようなガラス形成剤の例として、アルギニンがある。そのようなガラス形成剤は、水性製剤のpHを緩衝し、製剤が凍結乾燥される場合に該ガラス形成剤がガラスを形成してTFPIまたはTFPI改変体の安定化を助ける。緩衝剤でもあるガラス形成剤は、概して約50mMないし約600mM(すなわち、約50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、または600mM)の量で凍結乾燥用の水性製剤に存在する。好ましくは、ガラス形成剤緩衝剤の濃度は、約100mMないし約500mM、より好ましくは約200mMないし約400mM、さらにより好ましくは約100mMないし約300mM、最も好ましくは約300mMである。
【0045】
(結晶形成剤)
必要に応じて、1種類以上の結晶形成剤を上記水性製剤に含有させることもできる。「結晶形成剤(Crystal forming agent)」は、結晶格子網様構造を形成する能力を持つ化学薬品である。概して、凍結乾燥される水性製剤に対して結晶形成剤を添加することで硬い構造が得られる。凍結乾燥後に残留する物質を「ケイク(cake)」と称する。結晶形成剤が存在することなしに、ケイクは一般に硬くならず、通常は崩壊または収縮してケイク形態が損なわれる。結晶格子の硬い支持体によってケイクの崩壊が妨げられる。ケイク形態は、製品外観の態様から望ましい。凍結乾燥TFPIまたはTFPI改変体の安定性および生物活性は、一般にケイク形態による影響を受けない。
【0046】
本発明による使用に適した結晶形成剤の例として、限定されるものではないが、マンニトール、アラニン、グリシン、塩化ナトリウム、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。結晶形成剤は、凍結乾燥用の水性製剤に、約0.5%ないし約16%(w/v)(すなわち、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16%)の量で存在する。
【0047】
(凍結乾燥のための製剤の調製)
TFPIまたはTFPI改変体の大量調製は、該TFPIまたはTFPI改変体が可溶性のままであることを確実にするためにカオトロープ(例えば、尿素)の使用を伴うものであってもよい。カオトロープは凍結乾燥に先立って除去することが望ましいか、または必要とされる可能性がある。したがって、本発明は凍結乾燥のためにTFPIまたはTFPI改変体を調製する上で役立つプロセスも提供する。
【0048】
このプロセスの第1の工程は、第1の製剤低分子量溶質(通常はカオトロープ)を除去し、それを第2の製剤低分子量溶質(例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、アルギニン、ヒスチジン、マンニトール、およびショ糖)と置換することである。第1の製剤低分子量溶質の除去にともなうTFPIまたはTFPI改変体の凝集を防ぐために、TFPIまたはTFPI改変体タンパク質の凝集または沈殿をともなうことなくカオトロープの除去を可能にするpHの値まで、pHを下げる。通常、pHを約4まで減少させる。カオトロープは当技術分野で公知の任意の方法によって取り除くことができる。そのような方法の例として、限定されるものではないが、ダイアフイルトレーション、透析、またはサイズ排除クロマトグラフィーが挙げられる。ダイアフィルトレーションが好ましい。大量調製で溶質を交換し、保存に先立って大量のTFPIまたはTFPI改変体を凍結乾燥することが望ましいと思われる。
【0049】
あるいは、カオトロープの濃度は、カオトロープを含まない製剤によってTFPIまたはTFPI改変体標品を希釈することで減少させることができる。この工程は、好ましくは、しかし必然的ではないが、基本的にカオトロープ・フリーである製剤の形成に帰着する。
【0050】
必要に応じて、結果として生じる製剤に含まれるいくつかの溶質を、他の溶質(例えば、ヒスチジン、イミダゾール、マンニトール、グリシン、またはショ糖)と交換することができる。この工程の間、通常、pHを増加させてTFPIが水性製剤で安定する値にする。好ましくは、pHを約6まで増加させる。その後、必要に応じて、製剤を当技術分野で公知の技術を用いて凍結乾燥させることができる。第3の製剤は、好ましくは医薬的に許容される製剤である。「意訳的に許容される(pharmaceutically acceptable)」という表現は、製剤を患者に投与した場合、顕著な生物学的副作用がないという意味である。「患者(patient)」という表現は、ヒト患者および獣医学的患畜の両方を包含する。
【0051】
本発明の凍結乾燥組成物を再構成してTFPIまたはTFPI改変体の水性製剤を提供することができる。凍結乾燥されたTFPIを、適当な媒体(例えば、食塩水または水)で再構成することができる。
【0052】
この開示で引用される全ての特許、特許出願、および文献は、それらの全体が本明細書の一部をなすものとして、援用される。
【0053】
以下の実施例は、例証を目的として提供され、本明細書中に開示された発明を限定するものではない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
(一般的方法)
(TFPIおよびTFPI改変体の大量調製)
ala−TFPIバルクを、透析によって異なる製剤緩衝剤に調製した。透析は、3,500ダルトンの分子量カットオフを持つSpec/Por7透析チューブを用いて、4℃でおこなった。50ないし100倍過剰の透析緩衝剤を3時間毎に更新した(全部で3回更新)。透析後、0.2μmフィルター・ユニットを通す濾過によって、凝集TFPIから可能性ala−TFPIを分離した。可溶性ala−TFPIの濃度を、UV吸光度で測定し、必要とする製剤に応じて、その濃度を所望の値に調製した。無菌のラミナー・フロー・フードにおいて、複数の3ccのI型ガラス・バイアルに、処方されたala−TFPI溶液1mlを移した。これらのバイアルを13mmダイキョー(Daikyo)D713フッ素樹脂積層ゴム栓で封じ、アルミニウム・シールでクリンピングして、スタビリティ・チャンバーに入れた。凍結乾燥するために、3ccのガラス・バイアルに1mlの配合ala−TFPI溶液を満たし、13mmウエスト(West)890グレイ(Gray)凍結乾燥栓で、半分栓をされた。これらのバイアルを凍結乾燥器にセットした。
【0055】
(HPLC)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC): 全てのHPLC方法を、717ヒーター/クーラー・オートサンプラーを備えたウォーターズ(Waters)626LCシステム上でおこなった。ウォーターズ(Waters)486吸光度検出器でUV吸光度をモニターし、日立(Hitachi)F−1050またはF−1080蛍光分光光度計によって蛍光を記録した。データの収集および処理を、パーキン−エルマー(Perkin−Elmer)ターボクロム(Turbochrom)システム上でおこなった。
【0056】
陽イオン交換HPLC(CEX−HPLC): CEX−HPLC方法は、ファルマシア・モノ(Pharmacia Mono)−S HR 5/5−ガラス・カラムを使用した。カラムの平衡化は、80%緩衝剤A(20mM酢酸ナトリウム三水和物:アセトニトリル溶液(70:30 v/v)、pH 5.4)と20%緩衝剤B(20mM酢酸ナトリウム三水和物−1.0M塩化アンモニウム−アセトニトリル溶液(70:30 v/v)、pH 5.4)とでおこなった。試料を注射した後、21分で20%緩衝剤Bから85%緩衝剤Bに0.7ml/分の流速でTFPIが溶出するように、勾配を与えた。タンパク質ピークは、280nmの吸光度で検出または280nm励起および320nm発酵を用いた蛍光によって検出された。
【0057】
サイズ排除HPLC(SEC−HPLC): SEC−HPLC方法は、フェノメネクス(Phenomenex) BIOSEP−SECS2000カラム(300 x 7.8 mm)を使用した。定組成溶離プロフィールを用いて、上記カラムからala−TFPIを溶出した。ala−TFPIの溶出は10mMのリン酸ナトリウム(pH6.5)と0.5MのNaClとでおこなった。タンパク質ピークを278nm吸光度によって検出し、タンパク質分子量を467nm励起および467nm発光を用いた蛍光によって測定した(Dollinger et al., J. Chromatogr. 592:215−228, 1992)。
【0058】
逆相HPLC(RP−HPLC): 逆相HPLC法は、直列になった2本のレイニン・ダイナマクス(Rainin Dynamax) C8カラム(5x4.6mm、5μm、300Å)(5cm x 4.6mm、5μm、300Å)を使用した。カラムを86%緩衝剤A(30%(v/v)アセトノトリル:0.45%(v/v)トリフルオロ酢酸)と14%緩衝剤B(60%(v/v)アセトノトリル:0.45%(v/v)トリフルオロ酢酸)で前平衡化した。注入されたタンパク質の溶出は、流速1ml/分で最初に緩衝剤Bを13分以内に21%に増加させ、つぎに30分以内に100%緩衝剤とすることで、おこなった。タンパク質溶出を280nm吸光度の測定によって検出した。
【0059】
(プロトロンビン時間(PT)アッセイ)
PTアッセイを、Coag−A−MateRA4インストルメント(Organon Teknika)上でおこなった。最初に、ala−TFPI試料を緩衝剤(2M尿素、20mMリン酸ナトリウム、250mM NaCl、pH7.2)で希釈して150μg/mlとし、続いてTBSA緩衝剤(50mM Tris、100mM NaCl、1mg/ml牛血清アルブミン、pH7.5)で希釈して30μg/mlとし、最後にTBSA緩衝剤によって希釈して12ないし15μg/mlとした。アッセイのために、10μlの希釈試料を最初に90μlのプールされたベリファイ(Verify)I(Organon Teknika、Cat.No.59566)と混合し、試験トレイ(Organon Teknika、Cat.No.35014)に載せ、さらにCoag−A−Mateに入れた。つぎに、200μlのシンプラスチン・エクセル(Simplastin Excel)(Organon Teknika, Cat.No.52001)を添加して凝固プロセスを開始させた。凝固時間を、数秒の凝固時間の対数と、標準のala−TFPI濃度の対数とからなる標準プロットと比較することよって、入力ala−TFPI濃度に変換した。
【0060】
(PEIの添加)
PR−HPLC分析およびPTアッセイに対するポリリン酸塩の干渉を排除するために、PEIをala−TFPI/ポリリン酸塩試料に添加した。PEI無しでは、ala−TFPIは異常なHPLC溶出プロフィールを示し、ポリリン酸塩存在下での生体外(in vitro)比活性(0.6〜0.9)を減少させた。0.8%(w/v)PEIの添加によって正常な溶出プロフィールおよび正常な生体内(in vitro)比活性が回復した。濃度0.2および0.4%(w/v)のPEIを添加することでala−TFPI沈殿が観察された。PEIの濃度が0.6ないし3.2%(w/v)ではala−TFPI沈殿は生ずることがなく、単独で用いた場合にPTアッセイでの凝固時間に影響を及ぼすことがなかった。
【0061】
(ダイアフィルトレーション)
ダイアフィルトレーション: 約10mg/mlのTFPIまたはTFPI改変体、2M尿素、20mMリン酸ナトリウム(pH7)、および150mM NaClを含むTFPIまたはTFPI改変体バルクを最初に1.25ないし5mg/mlポリリン酸塩(TFPI対ポリリン酸塩重量比が約8:1から約2:1に変化)と混合した。尿素を6Mまで添加した。ダイアフィルトレーション膜は、ミリポア・ペリコン(Millipore Pelicon)2ミニ(mini)10K PLGC再生セルロース膜(表面積0.1m2)とした。ペリスタル型ポンプの入口圧、放出口圧、および流速は、製造元の推奨にしたがって設定した。
【0062】
ダイアフィルトレーション効率: ダイアフィルトレーション容器内の溶液量が全ダイアフィルトレーション・プロセス(すなわち、送り(feed−in)ダイアフィルトレーション緩衝剤の量は、透過(permeate−out)溶液の量に等しい)の過程で一定に保たれる場合、交換等式:
Cn/Co=exp(−α、Vn/Vo)を用いて各々の緩衝剤交換量でのダイアフィルトレーション効率を算出することができる。
【0063】
ここで、CnおよびCoは、それぞれ緩衝剤交換量nおよびゼロでのダイアフィルトレーション容器内の溶質濃度(しかし、送り(feed−in)緩衝剤に存在しない)である。Voは、ダイアフィルトレーション容器内の開始TFPIまたはTFPIへにたい製剤の量であり、Vnは送り込まれた緩衝剤もしくは透過したダイアフィルトレーション溶液の量である。したがって、n=Vn/Vo。ダイアフィルトレーション・カートリッジは、尿素、NaCl、およびリン酸塩等の小さな溶質に対して完全に透過性を持つものとみなされる分子量カット・オフが10キロダルトンである膜を使用した。したがって、透過因子αは、分子量カットオフよりも十分に下回る小さな溶質に対して、1に等しい。この等式は、各緩衝剤交換量でのダイアフィルトレーション効率の算出を可能にする。例えば、98.2%および99.8%開始緩衝剤成分がそれぞれ4および6容量の緩衝剤交換の後に「透過(permeated out)」する。
【0064】
(透析)
いくつかの実験では、TFPIまたはTFPI改変体バルクは、透析によって異なる製剤緩衝剤に調製された。透析は、3,500ダルトンの分子量カットオフでSpectra/Por7(登録商標)透析チューブ(Spectrum(登録商標)Laboratories)を用いて、4℃でおこなった。50ないし100倍過剰の透析緩衝剤を3時間毎に合計3回交換した。透析後、0.2μmフィルター・ユニットで濾過することで、可溶性TFPIまたはTFPI改変体を凝集TFPIまたはTFPI改変体から分離した。TFPIまたはTFPI改変体の濃度を、UV吸光度によって測定し、求められる製剤にもとづいて所望の値に調製した。
【0065】
(凍結乾燥(フリーズ・ドライ))
製剤化されたTFPIまたはTFPI改変体を含む複数のバイアルを複数のメタル・トレイ上に置いた。これらのトレイを、事前に10℃に平衡化された保存温度のハル・フリーズ・ドライヤー(Hull Freeze Dryer)(Model 8FS 12C)に入れてた。フリーズ・ドライ・サイクルは、3つの工程から構成される。すなわち、凍結、一次乾燥、および2次乾燥である。最初にバイアルを−50℃に冷却して製品を凍結させる。続いて、一次乾燥を−25℃で30時間、また真空度100mtorrでおこなった。凍結乾燥完了後、保存温度を4℃まで下げ、凍結乾燥チェンバー内に窒素を流入させて真空状態を解き放した。つぎに、第2の乾燥を20℃、12時間、また真空度100mtorrで実施した。凍結乾燥完了後、保存温度を4℃に下げ、凍結乾燥チェンバー内に窒素を流入させて真空状態を解き放した。12psi窒素圧で、バイアルを栓でふさいだ。これらのバイアルを凍結乾燥器から取り出し、13mmフリップ・オフ・アルミニウム・シールでクリンピングした。
【0066】
(実施例1A)
(TFPI/ポリリン酸塩のダイアフィルトレーション)
ala−TFPI/ポリリン酸塩溶液は、ダイアフィルトレーションの前にala−TFPIバルク(2M尿素、20mMリン酸ナトリウム、および150mM NaClを含む)へポリリン酸塩を添加することによって調製された。その後、この混合物を水または緩衝剤に対してダイアフィルトレーションした。ダイアフィルトレーション中、尿素を6Mで用いることで、緩衝剤交換プロセス中でのタンパク質の可溶性を保った。
【0067】
ダイアフィルトレーションしたala−TFPI/ポリリン酸塩溶液は、良好な安定性を示した。沈殿は、周囲温度で後であること記憶の間、観察されなかった。それに続く周囲温度での保存の過程で、沈殿は観察されなかった。対照的に、バルク緩衝剤(2M尿素のみ含む)から直接調製したala−TFPI/ポリリン酸塩溶液は、その後の保存後、不安定性を示した。すなわち、周囲温度での保存1日を経過した後、沈殿の形成がみとめられた。したがって、6M尿素は、バルク緩衝剤から水/ポリリン酸緩衝剤への緩衝剤の移動の過程で、ala−TFPI可溶化を助ける。
【0068】
(実施例1B)
(凍結誘導ala−TFPI沈殿)
ダイアフィルトレーション処理ala−TFPI/ポリリン酸塩溶液は、凍結融解または周囲温度でのインキュベーションのいずれかに対して、不安定性を示した。可視沈殿物は、−70℃からの凍結融解後、または周囲温度での保存過程で、表Aに示すように、いくつかのala−TFPI/ポリリン酸塩溶液で見つかった。
【0069】
(表A)
【表A】
【0070】
これらの結果は、ala−TFPI安定性が保存条件および製剤中の緩衝剤に影響されることを示す。クエン酸塩およびリン酸塩緩衝剤は、周囲温度保存および凍結保存の両方で、ala−TFPI沈殿をしばしば生じた。−70℃でpHが変化したかどうか判断するために、凍結状態のpHは、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)から購入したユニバーサル(Universal)pH溶液を使用して染料の色変化で測定された。
【0071】
ala−TFPI/ポリリン酸塩溶液が、イオン強度およびpHの変化に非常に影響されるとわかった。酸またはNaClのいずれによって滴定することで、TFPIがpH5.8未満または80mMを上回るNaClのいずれかでala−TFPI/ポリリン酸塩中でTFPIが急激に沈殿したことが示された。別の実験では、5mMNaClほど低いNaClの添加後、周囲温度で、最終的にala−TFPIの沈殿物が形成されることが示された。NaClをさらに加えることで、沈殿がより速くなった。ala−TFPIが凍結融解と同時に沈殿した理由として、ポリリン酸塩存在下でのpHおよび塩の変化に対するala−TFPI/ポリリン酸塩の感受性が考えられる。クエン酸塩およびリン酸塩等の緩衝剤のpHは、緩衝剤系で異なる塩形態の部分的な沈殿のため、凍結と同時に減少する。おそらく、凍結で生ずるpHシフトおよび/または塩の濃縮は、ala−TFPIとポリリン酸塩とのあいだの相互作用を弱めてala−TFPI沈殿を生ずる。同様に、周囲温度での塩の添加もまた、ala−TFPIとポリリン酸塩とのあいだの静電的相互作用を弱めてala−TFPI沈殿を生ずる。
【0072】
L−ヒスチジンは、凍結と同時にpHを安定化させるための有用な緩衝剤である。L−ヒスチジンも、溶液中に単一の中性形状もしくはプロトン化形状として存在する。したがって、それはala−TFPIとポリリン酸塩との相互作用に、最小限の影響を及ぼさなければならない。
【0073】
(実施例2)
(ala−TFPI水溶性組成物の安定性)
ala−TFPI水性製剤の長期安定性を測定するために、ala−TFPIの凝集を高温で調べた。ala−TFPI試料(150mM塩化ナトリウム、0.015%(w/v)ポリソルベート−80、および10mMリン酸ナトリウム、pH7で処方)を種々の時間で40℃で保存した。保存時間を増加にともなって試料の混濁が生じ、目視可能な沈殿物の形成が示された。0.2μmフィルターによる濾過後、可溶性ala−TFPIを陽イオン交換HPLC(CEX−HPLC)によって分析した。図1は、これらの試料のCEX−HPLCのクロマトグラムである。図1のクロマトグラムは、単一タンパク質ピークが18分で溶出したことを示す。このピークは、ala−TFPIモノマーである。
【0074】
図1のクロマトグラムで、ピーク下の面積を計算することによってala−TFPI濃度を算出した。ピーク面積の減少が観察され、これらの試料で可溶性ala−TFPIの損失が示された。ピーク面積対保存時間の一つの指数関数当て嵌めを、可溶性ala−TFPI損失の計算に用いた。算出された速度定数を、標準の一次反応速度式を使用して、保存寿命t90(可溶性ala−TFPIポリペプチドの10%の損失と考えられる時間))に変換した(Cantor and Schimmel, eds., Biophysical Chemistry, W.H. Freeman and Co., 1980)。同様に、保存寿命の算出は、プロトロンビン時間(PT)アッセイで測定される生物活性データを使用しておこなった。可溶性ala−TFPIに関する保存寿命は、生物活性に関する保存寿命(表1)と十分一致していた。可溶性ala−TFPIの損失が生物活性の減少と平行していることから、凝集は最も可能性のある不活化経路であると考えられた。
【0075】
(表1)
【0076】
【表1】
凝集形成を減少させ、それによってala−TFPI水性製剤の長期安定性を高めるために、pH安定性の研究をおこなった。ala−TFPIを、150mM塩化ナトリウム、0.015%(w/v)ポリソルベート−80、および10mMリン酸ナトリウムで調製し、該製剤のpHをHClまたはNaOHの添加によって4ないし9の異なる値に調整した。40℃で保存後、これらの試料での可溶性ala−TFPIの損失をCEX−HPLCで測定した。図2は、pHの関数としての可溶性ala−TFPI損失の一次反応定数をプロットしたものである。pH6を下回ると凝集速度が遅くなり、基本pHではかなり速くなる。したがって、ala−TFPI凝集は塩基で触媒されるものであった。
【0077】
凝集反応がpH 6未満で最小化されたにもかかわらず、新たな崩壊反応が酸性pH条件で観察された。ala−TFPIのより小さな2つの種が、SDS−PAGE(データ不図示)によって検出された。遅く溶出する種も、CEX−HPLCクロマトグラム(図3)上で、pH 4で観察された。この種は、SDS−PAGEによって検出される分解産物に対応しているように思われた。図3は、40℃、酸性条件下で、ala−TFPIをより長くインキュベートして現れた新たな種と、18分で溶出している単量体ala−TFPIとを示す。したがって、単量体ala−TFPI種がインキュベーション時間にともなって減少し、遅く溶出するピークが、おそらく増加するala−TFPIを分解した。
【0078】
ala−TFPIの分解が酸加水分解によって触媒されたかどうか決定するために、異なるpHでala−TFPI試料をCEX−HPLC分析にかけた。切断率は、高pH条件でより遅くなった(図4)。40℃で10日間保存した後、TFPIの切断はpHがpH4に減少するのにともなって増加した。したがって、ala−TFPIの分解はポリペプチド内のペプチド結合が酸加水分解することによる。
【0079】
前の2つの研究結果にもとづいて、さらにスクリーニングにかけている製剤は、約pH6に焦点を置いた。表1に挙げられた他の11種類の製剤の安定性促進について評価した。試料を40℃に保存し、可溶性の損失についてはCEX−HPLCV分析によって、また生物活性の損失についてはPTアッセイにかけた。陽イオン交換HPLCで測定される保存寿命(t90)が1日から2週間以上に及ぶことがわかり、またPTアッセイでは1日から約8日に及ぶことがわかった。アレニウス(Arrehnius)分析は、それら40℃データを用いておこなった。10kcal/molの活性化エネルギー(凝集反応のための合理的な見積である)を仮定した。結果は、これらの水性製剤のTFPIがより長い期間(例えば18〜24ヵ月)に対しては安定していないことを示唆している。
【0080】
(実施例3)
(ala−TFPIの水性製剤に対するポリリン酸塩の効果の安定化)
ala−TFPI製剤のポリリン酸塩の安定化効果を評価した。ポリリン酸塩は、ala−TFPIに結合し、高次構造的にそれを安定させる。ポリリン酸塩による安定化を、2:1、6:1、および8:1のala−TFPI対ポリリン酸塩の重量比で調べた。製剤の調製は、10mMヒスチジン(pH7)における各ala−TFPI:ポリリン酸塩比でおこなった。また、ala−TFPI安定性に対するヒスチジンの効果を評価するために、水のみをもちいてala−TFPI対ポリリン酸塩重量比(8:1)を設定した。さらに別の製剤では、pH6.5の10mMヒスチジンにより、ala−TFPI対ポリリン酸塩重量比(8:1)を設定し、ala−TFPIに対するpHの効果を評価した。
【0081】
塩および他の荷電イオンがala−TFPI−ポリリン酸塩結合に干渉し得ることから、単糖および二糖類(例えば、マンニトール、ショ糖、およびソルビトール)がTFPI製剤に用いられた。単糖または二糖類を含む製剤は、ala−TFPI対ポリリン酸塩重量比8:1で調製した(製剤については表2を参照)。最後に、いくつかの高濃度ala−TFPI試料をセットアップしてそのような濃度でのTFPI安定性を評価した。これらのala−TFPI製剤の安定性を30℃および40℃で検討した。バイアルは、あらかじめ選択された時点で取り出し、0.22μmフイルターで濾過し、沈殿物を除去した。濾過されたala−TFPI試料を、分解および吸収帯強度についてSDS−PAGEによって、可溶性の損失について上記したように逆相HPLCによって、さらに生物活性の損失について上記したようにPTアッセイによって、続けて分析した。
【0082】
SDS−PAGEの結果は、ala−TFPIの切断を示さなかったが、3ヵ月間40℃に保存される製剤で吸収帯強度が減少することを示した。RP−HPLC分析の結果を図5に示した。図5は、40℃または30℃でインキュベートし、3ヵ月間−70℃で凍結した水溶性ポリリン酸塩製剤のクロマトグラムを示す。おおよそ12.2分で溶出したala−TFPIと、主要な種の前後いずれかにマイナーな種が溶出した。高温(30℃または40℃)でインキュベーションすると、試料中に目視可能な沈殿が生じた。目視可能な沈殿物を0.22μmフィルターで濾過することができ、それなりに、クロマトグラムは新たな種の出現なしにピーク面積の減少を示した。結果は、30℃または40℃での保存時の凝集によりala−TFPIが損失したことを示している。
【0083】
高温でのインキュベーション中に生ずる凝集は、6を超えるpHにおけるala−TFPIの腫瘍分解経路として確認された。RP−HPLCクロマトグラム(図5)上でピーク面積を計算することによって、可溶性ala−TFPIの濃度を算出した。残留する可溶性ala−TFPIの比率を算出するために、これらのデータを、−70℃保存した同一の製剤に対するデータに対して正規化した。結果を表2に示す。製剤1は水のみを含み、10mMヒスチジンによる対応の製剤(製剤2)よりも安定していた。30℃では、ヒスチジンの有無により観察された試料で、残留可溶性タンパク質に15%の違いがあった。30℃データは、ヒスチジンによる明らかな安定性の減少が、マンニトールおよび/またはショ糖の添加(製剤4、5、および7)によって補正され得ることを示した。マンニトールおよびショ糖は、ヒスチジン存在下でala−TFPIに対する弱い安定剤である。ala−TFPIとヒスチジンとala−TFPIとマンニトールまたはショ糖とのあいだの相互作用は、相加的であると思われる((Chen et al., J. Pharm Sci 85:419−422, 1996)。
【0084】
(表2)
【0085】
【表2】
ala−TFPI−ポリリン酸塩製剤の安定性は、pH依存度が高い。表2の30℃データは、pHが7から6.5に変化した場合、ala−TFPI安定性が1/2に減少することを示している(製剤2および3)。また、ポリリン酸塩製剤でのala−TFPI安定性は、ala−TFPI対ポリリン酸塩の比に依存している。表2の40℃データは、ala−TFPI対ポリリン酸塩の比が8:1から6:1、2:1に変化した場合に残留ala−TFPI率が0.9、2.7、および6.3になることを示している(製剤2、8、および9)。したがって、ala−TFPIは、ala−TFPI対ポリリン酸塩の比が2:1のときに最も安定である。
【0086】
30℃データは、ポリリン酸塩製剤(製剤1〜9)と高濃度ala−TFPI製剤(製剤10および11)とのあいだの差がほとんどないことを示している。40℃データは、高濃度TFPI製剤(製剤10および11)がTFPIポリリン酸塩製剤に比べて、より安定していることを示している。3ヶ月保存後、ポリリン酸塩製剤(製剤1〜9)が10%TFPI未満を残すだけであり、製剤10および11の残留TFPIは40%を上回る。したがって、長期安定性(例えば18〜23ヶ月におよぶ)を達成する代替え方法は、高濃度TFPI製剤を用いることである。
【0087】
(実施例4)
(凍結融解サイクルでのala−TFPIの安定性)
ala−TFPI製剤を−70℃で保存できるかどうかを決定するために、ala−TFPI−ポリリン酸塩(6.1w/w)製剤(表3)を凍結融解サイクルにかけた。表3に示すように、−70℃で凍結し融解した後、目視可能な沈殿物がいくつかのala−TFPI−ポリリン酸塩製剤で見られた。結果は、クエン酸塩およびリン酸塩緩衝剤が周囲温度保存および−70℃保存の両方でTFPI沈殿を生じ得ることを示す。
【0088】
(表3)
【0089】
【表3】
−70℃でpHが変化したかどうか判断するために、凍結状態のpHを、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)から購入したユニバーサル(Universal)pH溶液を使用して染料の色変化で測定した。ala−TFPI/ポリリン酸塩溶液が、イオン強度およびpHの変化に対して非常に感度が高かった。ala−TFPIは、pH5.8未満または80mMを上回るNaClのいずれかで処方された場合に、急激に沈殿した。ala−TFPIは、5mMNaClほど低いNaClの添加後、周囲温度で、最終的に沈殿物を形成した。NaClをさらに加えることで、沈殿がより速くなった。ala−TFPIが凍結融解の過程で沈殿した理由として、ポリリン酸塩存在下でのpHおよび塩の変化に対するala−TFPI/ポリリン酸塩の感受性が考えられる。クエン酸塩およびリン酸塩等の緩衝剤のpHは、緩衝剤系を作る異なる塩形態の部分的な沈殿のため、凍結と同時に減少する。凍結と同時に起こるpHまたは塩濃度の変化は、ala−TFPIとポリリン酸塩との相互作用を弱めることができる。その相互作用が弱められることで、ala−TFPIの沈殿が生ずる。同様に、周囲温度での塩の添加もまた、ala−TFPIとポリリン酸塩とのあいだの静電的相互作用を弱めてala−TFPI沈殿を生ずる。
【0090】
試験した緩衝剤の種類のなかで、L−ヒスチジンは凍結と同時にpHを最も安定化させた。L−ヒスチジンも、溶液中に単一の中性形状もしくはプロトン化形状として存在する。したがって、それはala−TFPIとポリリン酸塩との相互作用に、最小限の影響を及ぼさなければならないことから、好ましい緩衝剤である。
【0091】
(実施例5)
(凍結乾燥ala−TFPI製剤の開発)
(初期製剤スクリーニング)
凍結乾燥のための製剤のスクリーニングは、表4に示した18種類の製剤を用いた。製剤成分の選択は、(1)溶質(例えばL−アルギニン、クエン酸塩、L−ヒスチジン、イミダゾール、およびポリリン酸塩)のala−TFPIに対する可溶化効果、(2)凍結乾燥タンパク質を安定化させるガラス/マトリックスを形成する溶質(例えば、ショ糖)の傾向、(3)結晶ケイク構造を形成する溶質(例えば、マンニトールおよびグリシン)の能力にもとづいておこなわれる。ほとんどの製剤は、等張液よりもほぼ2倍である製剤2、3、および4を除いて、等張性に近い容量オスモル濃度を持つ。
【0092】
(表4)
【0093】
【表4】
凍結乾燥産物の目視可能な特性を、フリーズ・ドライ(凍結乾燥)後、検討した。ケイク形態の評価は、目視によりおこなった。結果を表5に示す。収縮または崩壊がほとんどないケイクは、「良好な」ケイク形態を保持すると考えられた。製剤10、12、13、16、および17は良好なケイク形態を示した。もちろん、結晶形成剤として、4種類がマンニトールを含み、1種類がグリシンを含んでいた。
【0094】
(表5)
【0095】
【表5】
残留水分は、乾燥状態にあるタンパク質を保存する上で決定要因の一つである。残留水分が1%(w/w)未満であることが好ましい。13種類の製剤に対して、カール・フィッシャー(Karl Fischer)滴定法(Angew. Chemie 48:394 (1935))で残留水分含有量を測定した。その結果を表5に示す。製剤9、10、12、13、および15は、残留水分が1%(w/w)未満であり、また製剤1ないし8は残留水分が1%(w/w)を上回った。
【0096】
凍結乾燥組成物の再構成は、「注射用水(Water For Injection)」(WFI)(すなわち、ヒト患者への注射についてFDAによって承認されている水)を添加することによっておこなった。大部分の凍結乾燥組成物が1分以内に溶け、上記18の再構成製剤のうち16が透明であった(表5)。再構成製剤9および10は混濁していた(表5)。このことは、凍結乾燥の過程でこれら2つの製剤でala−TFPI凝縮が生じたことを示唆している。
【0097】
再構成された製剤1〜9および13〜18もまた、生物活性についてはPTアッセイで、また可溶性ala−TFPIについてはCEX−HPLCによって、分析した。結果を表5に示す。製剤10、11、および12はこの分析には含まれなかった。なぜなら、これらの製剤のポリリン酸塩は陽イオン交換HPLCおよびPTアッセイによる干渉を受けたからである。
【0098】
RTアッセイの結果は、試験した15の製剤全てが生物学的活性を有し、また非凍結乾燥水性対照群と見分けがつかなかった。したがって、これらの製剤に含まれるala−TFPIは、凍結乾燥によるストレスに対して特に感受性があるわけではなかった。
【0099】
可溶性ala−TFPIの濃度をCEX−HPLC分析によって測定したところ、凍結乾燥試料と水性対照群との差は10%未満であった。ala−TFPI濃度の微妙な変化は、再構成の過程での小さな変化によって最も起こりやすかった。製剤13を例に挙げれば、5%容量増加が注射用水による最構築の際に生じた。
【0100】
(長期保存安定性)
凍結乾燥組成物(表5の1、2、4、5、および13〜18)の長期保存安定性について検討した。これらの製剤の試料を異なる温度で保存し、崩壊分析のために所定の時間間隔で取り出した。
【0101】
最初に、凍結乾燥組成物での凝集の度合いを調べた。可溶性タンパク質の損失をCEX−HPLC分析によって測定した。最大で3ヶ月間、40℃または50℃のいずれかで保存した試料について得られた結果を、表6に示す。ala−TFPIはこれらの製剤ではかなり安定であった。凍結乾燥組成物の生物活性をPTアッセイによって測定し、表6に示す。最大で3ヶ月間、40℃または50℃のいずれかで保存した試料は、再構成に対して初期の生物学的活性の約40〜100%を保持した。40℃または50℃で最大3ヶ月保存した試料は、再構成に対して初期の生物活性の約40〜100%を保持した(表6)。
【0102】
(表6)
【0103】
【表6】
*製剤の定義については表4を参照のこと。
【0104】
先に述べたように、陽イオン交換HPLC、逆相HPLC、サイズ除外HPLCによる分析を目的として、製剤13の選択をおこなった。図6は、3ヶ月にわたって異なる温度で保存されたこの製剤の試料に対するCEX−HPLC、RP−HPLC、およびSEC−HPLCのクロマトグラムである。
【0105】
ala−TFPIは、保持時間約18分のシグナル・ピークとしてCEX−HPLCから溶出した。CEX−HPLCクロマトグラム上のこのシグナル・ピークのプロフィールは、この製剤に関して全ての保存温度に対して不変のままであった(図6A)。
【0106】
ala−TFPIの溶離RPHPLCプロフィールは、かなり複雑だった。主要なala−TFPI種は19分で溶出し、2つの酸化されたala−TFPI種はわずか速く溶出し、いくつかのマイナーなアセチル化TFPI種はゆっくりと溶出した。図6Bに示すように、この溶出プロフィールもまた、種々の温度で3ヶ月にわたって保存される凍結乾燥ala−TFPIの試料として観察された。
【0107】
種々の温度で保存した凍結乾燥ala−TFPIのサイズ除外HPLC溶出プロフィールは、保存後、基本的に不変であった。8.25分で溶出する単量体種および11分頃に溶出される緩衝剤種について検出された変化は無かった。50℃の試料は緩衝剤ピークにいくつかの変化を示した(図6C).しかし、この変化は高温でのヒスチジン成分の酸化によって引き起こされたと思われる。
【0108】
促進的な安定性試験が製剤間での違いを示したにもかかわらず、2〜8℃で6ヶ月保存された異なる成分のリアルタイム安定性検査では陽イオン交換HPLC分析よる検出可能な変化は見られなかった。図7は、2〜8℃または50℃のいずれかで6ヶ月にわたる保存後、5つの製剤の試料に対するCEX−HPLCのクロマトグラムを示す。広範囲な分解が50℃保存の試料のいくつか(例えば、製剤4および17)で観察されたにもかかわらず、2〜8℃で保存された5つの試料では何ら変化が検出されなかった。
【0109】
ala−TFPIの凝集は、目視可能な沈殿を生ずる。この沈殿は0.22μmフィルターで取り除くことが可能である。したがって、元のピークの積分面積(integrated area)がHPLCクロマトグラム上に観察された。凝集以外の著しい変化は、これらのHPLCクロマトグラム上に検出されなかった。同様に、SDS−PAGEゲル上で分解種はなんら観察されなかった。したがって、凝集は、凍結乾燥状態にあるタンパク質とって主要な分解経路であった。
【0110】
(実施例6)
(凍結乾燥ala−TFPIの安定性に対する緩衝剤種、pH、およびala−TFPI濃度の効果)
凍結乾燥ala−TFPI組成物の安定性に対する緩衝剤種、pH、およびala−TFPI濃度の効果について調べた。緩衝剤種(L−ヒスチジン、クエン酸塩、およびイミダゾールを含む)を、10mM緩衝剤および4%(w/v)マンニトールを含む製剤においてpH6.5で比較した。表7は、40℃または50℃のいずれかで5週間にわたって保存した資料に対するCEX−HPLC分析よって測定された可溶性ala−TFPIの損失を示す。図7に示すように、L−ヒスチジンは可溶性ala−TFPIの保存にとって最高の緩衝剤種であり、その後にクエン酸塩が続いた。例えば、50℃での5週保存後にもかかわらず残っている可溶性ala−TFPIの分画は、L−ヒスチジン、クエン酸塩、およびイミダゾールについて、それぞれ95%、41%、および10%であった。このことは、この研究に用いた特定の凍結乾燥条件下でガラスを形成する傾向の順序と相関する。
【0111】
(表7)
【0112】
【表7】
別々の実験では、クエン酸塩およびリン酸塩の効果を、10mM緩衝剤(pH 6.0)、3%(w/v)L−アルギニン、および4%(w/v)マンニトールを含む2つの製剤で比較した。クエン酸塩は、ala−TFPI安定性を保存する上でリン酸塩よりも優れていた(図7)。
【0113】
凍結乾燥されたala−TFPIの安定性に対するpHの効果を、製剤13(表4)を使用して試験した。試験したpH範囲は、pH 6.5からpH 5.5までの狭い範囲であった。CEX−HPLC分析とPTアッセイとの結果を表7に示した。試験したpH値の範囲について安定性にわずかな差があった。低pH値(pH5.5)は、pH6.0またはpH6.5よりも凍結乾燥ala−TFPIの安定性が高かった。
【0114】
製剤13でのala−TFPIの安定性を、100μg/mlないし1,500μg/mlの範囲のタンパク質濃度で調べた。表8は、50℃で保存した試料と2〜8℃で保存した試料とのあいだのタンパク質濃度の違いを示す。高濃度のTFPIを含む試料は、わずかながら、ala−TFPI濃度が低い試料よりもわずかながら安定しており、50℃でのala−TFPIの損失がより少なかった。ala−TFPI濃度が250μg/mlを下回った場合にだけ、還元型の安定性が著しくなった。
【0115】
(表8)
【0116】
【表8】
(実施例7)
(ala−TFPIの凍結乾燥組成物に対するポリリン酸塩の安定化効果)
これらの研究では、ala−TFPIとポリリン酸塩との重量比2:1、6:1、および8:1を、TFPIの凍結乾燥組成物を安定化させるポリリン酸塩の能力について、試験した。緩衝剤(例えば、10mMヒスチジンおよび10mMイミダゾール)を製剤に添加してpHを7に上げた。マンニトールおよびショ糖を特定の製剤に添加してケイク強度を高めるとともに安定性を強化した。ala−TFPI濃度は、凍結乾燥に先立って20mg/mlに調製した。
【0117】
残留含水量およびケイク形態の結果を表9に示す。6つの製剤全てが1/2を下回る残留水分率を示す。ポリリン酸塩それ自体は、凍結乾燥にとって良好な薬剤と考えられ、なんら他の添加剤を必要とすることなくケイクをわずかながら収縮させる。ヒスチジンの添加によって、ケイク形態に対するさらなる改善は観察されなかった。しかし、製剤へのマンニトールおよびショ糖の添加によってケイク形態が改善された。後の実験では、4%(w/v)マンニトール単独による2:1の重量比でのala−TFPI−ポリリン酸塩製剤の乾燥凍結もまた、良好なケイク構造を生じた。したがって、マンニトールは製品をエレガンスなものにするために良好な結晶血清剤であることがわかった。
【0118】
(表9)
【0119】
【表9】
促進的な安定性試験を、40℃および50℃で実施した。試験される試料の典型的RP−HPLCクロマトグラムを図8に示した。水性製剤と同様に、高温で保存される間、凝集によるala−TFPIの損失が観察され、クロマトグラム上のピーク面積の減少をもたらした。
【0120】
試験される試料でala−TFPIの損失を示しているRP−HPLC分析の結果を表10に示した。表10に示す全ての製剤が水性高濃度製剤単独よりも安定していた。40℃での3ヶ月保存後、水性製剤試料は、PR−HPLCによれば可溶性TFPIが50%以下であり(表2)、一方全ての凍結乾燥製剤が含む可溶性ala−TFPIが80%を上回った。
【0121】
(表10)
【0122】
【表10】
表10に示す6つの製剤のなかで、ala−TFPI対ポリリン酸塩比が2:1である製剤が最良のala−TFPI安定性を示した。50℃で3ヶ月保存後、この製剤はRP−HPLCによる56%可溶性ala−TFPIをなおも含んでいたが、他の製剤ではほぼ完全に分解された。この製剤の50℃での分解カイネティクスを高濃度製剤と比較したものを図9に示す。凍結乾燥製剤は、この促進的な安定性試験で試験したように、水性製剤よりも安定性が約10倍高かった。
【0123】
示差走査熱量(DSC)測定によって、ヒスチジン/マンニトール/ショ糖製剤に含まれるポリリン酸塩のガラス転移点(Tg)は約−28℃であることがわかった。製品温度が−28℃未満であったことから、図10に示すように最初の11時間の初期乾燥中、ポリリン酸塩は、好ましくは凍結乾燥されると直ちにガラスを形成した。したがって、凍結乾燥された形状であるala−TFPIに対して提供されたポリリン酸塩の安定化は、なおもガラス安定化理論に従うことができ、該理論は強固なガラスが崩壊反応を除去する分子の拡散を著しく減らすことを述べる。
【0124】
ショ糖もまた、Tgが約32℃である良好なガラス形成剤であることから、ガラスを形成することでポリリン酸塩が単独で安定化できるかどうかを調べることが、興味深かった。別の実験では、2つの製剤(20mg/ml ala−TFPI、10mg/mlポリリン酸塩、10mM L−ヒスチジン(pH7)、および4%マンニトールを含み、1%ショ糖を含むものと含まないものとからなる)を調製して凍結乾燥した。両方の製剤とも類似のケイク形態と低残留水分量(1%ショ糖無しの場合0.69%、1%ショ糖を含む場合、0.49%)とを示した。ショ糖は、凍結乾燥のあいだ、TFPIに対してほとんど影響を及ぼさなかった。
【0125】
これらの2つの製剤の安定性を、高温での保存に対してRP−HPLCによるタンパク質濃度およびPTアッセイによる生体外(in vitro)比活性の両方の減少を試験することで、比較した。表11に示すように、これらの2つの製剤についての安定性の違いは、意味がない。これらの製剤は両方とも、60℃、二週間にわたる保存の後、ala−TFPIが2%損失したことが示された。50℃で4週間、ショ糖を含む製剤およびショ糖を含まない製剤は、それぞれala−TFPI損失が12%および18%であった。また、50℃で4週間のこれら2つの製剤の比活性を比較した。
【0126】
(表11)
【0127】
【表11】
(実施例8)
(凍結乾燥のためのala−TFPI製剤の調製)
ala−TFPI製剤の製造は、しばしば緩衝剤交換プロセスを必要とする。バルクala−TFPIは、例えば、10mg/mlタンパク質、2M尿素、20mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、および150mM NaClを含むものであってもよい。凍結乾燥された製剤は、通常、尿素またはNaClを含まない。尿素含有パルク由来のala−TFPIを製剤緩衝剤(表4)のなかへ処理するために、尿素およびNaClを緩衝剤交換方法(例えば、透析、ゲル濾過、またはダイアフィルトレーション)によって取り除く必要がある。これらの方法のなかで、ダイアフィルトレーションは製造の観点から好ましい。なぜなら、大量のala−TFPIが製造に関わっているからである。
【0128】
(一工程ダイアフィルトレーション)
いくつかのpH6または6.5製剤緩衝剤に対して直接入れられるala−TFPIバルク(例えば、10mg/mlタンパク質、2M尿素、20mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、および150mM NaClを含む)のダイアフィルトレーションは、広範なタンパク質沈殿をもたらした。表12に示すように、pH6または6.5のいずれかによる4種類の緩衝剤へのダイアフィルタレーションによって、混濁状溶液または低収率のいずれかが得られた。しかし、10mM L−グルタミン酸塩、4%(w/v)マンニトール、および1%(w/v)ショ糖を含むpH4緩衝剤へのダイアフィルトレーションによって、高収率で混濁溶液が得られた。
【0129】
(表12)
【0130】
【表12】
ダイアフィルトレーションで使用されるala−TFPI濃度(1mg/ml)は、出発緩衝剤と最終製剤緩衝剤との両方の溶解限度(5−10mg/mlの溶解度)よりもかなり低かった。これらの2つの緩衝剤系は、明らかに2つの異なる機構でala−TFPIを可溶化する。開始緩衝剤は尿素および塩を含みイオン強度が比較的高く、一方製剤緩衝剤のいくつかはイオン強度が低い。ダイアフィルトレーションは、比較的遅いプロセスである。バルク緩衝剤の尿素および塩が徐々にダイアフィルトレーションによって取り出され、製剤緩衝液成分は徐々にダイアフィルトレーションによって取り込まれる。ダイアフィルトレーションの過程で、ala−TFPI可溶性またはala−TFPI安定性のいずれかに影響を及ぼす一時的な溶媒条件をala−TFPIが経験することができる。
【0131】
本発明者らは、緩衝剤の各容量で、ダイアフィルトレーション容器でのala−TFPI製剤の混濁度変化を調べた。出発製剤は、1ないし1.5mg/mlのTFPIを含む1M尿素、10mMリン酸ナトリウム(pH7)、および125mM NaClである。結果を表13に示す。
【0132】
(表13)
【0133】
【表13】
*「+」は、わずかに混濁した溶液を示し、「++」は混濁溶液を示し、さらに「−」は透明な溶液を示す。
【0134】
pH4でダイアフィルトレーションしたAla−TFPIは、第1または第2の容量の緩衝剤交換での混濁度の一次的変化を示した。すなわち、それは透明になり、ダイアフィルトレーションの最後までそのまま残った。酢酸ナトリウムpH5.5緩衝剤を用いて、混濁度の変化が1、2、および5容量の緩衝剤交換で観察された。pH6またはpH6.5を用いたダイアフィルトレーションは、3%(w/v)L−アルギニンを含む溶液を除いて、ダイアフィルトレーションの後期で混濁溶液を生じた。したがって、低pHとL−アルギニンとがダイアフィルトレーション中にala−TFPIが沈殿するのを防いだ。
【0135】
(2工程ダイアフィルトレーション)
ダイアフィルトレーション中のala−TFPIの沈殿を、pHが約4である緩衝剤を用いることによって防ぐことができる。pHが約4である緩衝剤がバルク緩衝剤と最終製剤緩衝剤との間の橋渡しとして用いられるかどうかについて調べるために、二工程のダイアフィルトレーション実験をおこなった。第1の工程で、4容量の緩衝剤交換のためのpH4緩衝剤に対して、TFPIをダイアフィルトレーションした。第2の工程では、ダイアフィルトレーション緩衝剤が製剤緩衝剤に切り替えられ、6容量の緩衝剤交換が実行された。いつかの2工程ダイアフィルトレーション緩衝剤系でのダイアフィルトレーション中での混濁度の変化を記録して表14に示した。
【0136】
pH4緩衝剤は、好ましくはL−グルタミン酸塩緩衝剤である。
グルタミン酸塩緩衝剤による4通りの容量変化の後、適当な溶解剤による所望の最終産物緩衝剤は、第2の工程として導入される。この過程は、処理の間、生じたタンパク質のかなり少ない損失で、透明な配合最終産物を産生する。
【0137】
一実施形態では、上記出発溶液は、1mg/mlのala−TFPEを含む1M尿素、10mMリン酸ナトリウム、125mM NaCl(pH7)であり、最初に4容量交換用のL−グルタミン酸塩緩衝剤(10mM L−グルタミン酸/L−グルタミン酸塩、4%(w/v)マンニトール、1%(w/v)ショ糖、pH4.0)によってダイアフィルトレーションをおこない(工程1)、つぎに追加の6容量交換のためのL−ヒスチジンもしくはイミダゾール緩衝剤によってダイアフィルトレーションをおこなった(工程2)。ダイアフィルトレーションした溶液の透明度を記録した。ダイアフィルトレーションした溶液を0.22μmフィルター・ユニットで濾過し、その濾過液のala−TFT濃度を紫外線吸光度で測定してダイアフィルトレーション前の濃度を比較することで、再生を計算した。結果を表Bに示す。
【0138】
(表B)
【表B】
【0139】
この手順を、適当な商業規模での治療的用途のためにTFPIまたはTFPI改変体の液体(または溶液)製剤の調製のために、用いることができる。
【0140】
(表14)
【0141】
【表14】
*「+」は、わずかに混濁した溶液を示し、「++」は混濁溶液を示し、さらに「−」は透明な溶液を示す。
【0142】
表14に示すように、第1工程のダイアフィルトレーションが相対的に強イオン強度の緩衝剤(例えば10mM Lグルタミン酸塩、pH4,および140mM NaCl)を用いた場合、ダイアフィルトレーション中になんら一時的な混濁度変化が観察されなかった。しかし、ala−TFPIが第2工程のダイアフィルトレーション(低イオン強度の緩衝剤を使用)で沈殿した。一方、第1工程のダイアフィルトレーションで低イオン強度緩衝剤(例えば、10mM L−グルタミン酸塩、pH4、4%(w/v)マンニトール、および1%(w/v)ショ糖)を用いた場合、約1容量の緩衝剤交換で、ala−TFPI溶液が短い一時的な混濁工程を通過した後、なんら混濁度変化は観察されず、その後ダイアフィルトレーションの間、混濁度変化は検出されなかった。したがって、低イオン強度pH4緩衝剤を用いることで、2工程ダイアフィルトレーション・プロセスは透明な配合最終産物を産生する。
【0143】
(実施例9)
(50℃促進化安定性アッセイ)
促進的な安定性テストを用いて、ala−TFPIの種々の濃度の安定性を測定した。試料を、20mMクエン酸ナトリウム(pH5.0)および300mMアルギニンに調製した。Ala−TFPI濃度は、約1mg/mlから約7.4mg/mlの範囲とした。水性試料を50℃で最大約6ヶ月間インキュベートした。毎月、可溶性ala−TFPI残留率を各濃度に対して測定した。可溶性ala−TFPIの測定は、陽イオン交換HPLCでおこなった。その結果を図11に示す。図11に示すように、ala−TFPIは約4mg/ml未満の濃度でわずかにより安定している。
【0144】
(実施例10)
(生き残り研究)
マウスの盲腸結紮および穿刺研究をおこない、新たに調製された臨床等級ロットの組み換え型ala−TFPI(rTFPI)(TFPI92)と、部分的に脱アミド化および酸化された臨床等級材料(TFPI78)とを比較した。このモデルは直接的な糞便汚染および盲腸壊死による多微生物性腹腔内および全身性感染を誘導し、密接に人間の腹腔内敗血症を模倣する(Opal et al., Critical Care Medicine 29, 13−18, 2001)。
【0145】
両方のTFPI標品の調製は、2003年8月13日出願の米国特許出願第60/494,546号、2003年10月8日出願の米国特許出願第60/509,277号、および2003年10月20日出願の米国特許出願第60/512,199号の記載通りにおこなった。これらの出願の各々の内容全体を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。rTFPI78、rTFPI92、または希釈剤対照群のいずれも、48時間(SQ q12時間x4用量)にわたる盲検形式で与えられた。外科的手技前およびその48時間後に採血し、定量的菌血、内毒素、およびサイトカイン(腫瘍壊死因子アルファおよびインターロイキン‐6)のレベルを測定した。動物を毎日観察し、死亡が生じたらそれを記録した。全ての動物に対して、実験期間の終わりに、器官損傷および定量的細菌学を組織学的に明らかにするために剖検評価をおこなった。
【0146】
カプラン−マイヤー(Kaplan−Meier)生存プロットを図12に示す。部分的に酸化したもの(rTFPIの脱アミド化形態)を投与されたマウスと比較して、新たに調製されたrtFPIを投与されたマウスは、生存上著しく有利であった。両方のrTFPI群は、希釈剤を投与された対照群のマウスよりも餌をよく食べた。予想通りに、見せかけの手術(疑似手術)をしたマウス(結紮および穿刺以外の盲端の識別による外科的処置)は、7日の研究期間を生き残った。2通りのrTFPI処置群間で、菌血症、内毒血症、またはサイトカイン産生の第2のエンドポイントに有意差が認められなかった。
【0147】
この研究によれば、TFPIが細菌、内毒素、またはサイトカインの血中濃度によっては説明されない機構によって生存上の利点を提供しているように思われる。脱アミドされた酸化型のTFPIによって与えられる防御は、新たに調製されたTFPIよりも劣る。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は、pH7で水性製剤に調製される試料の安定性を試験するために、ala−TFPIの陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。水性製剤は、150μg/mlのala−TFPI、10mMのリン酸ナトリウム(pH 7)、150mMのNaCl、および0.015%(w/v)のポリソルベート−80を含んだ。この水性製剤を、40℃で0、3、5、10、または20日間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図2】図2は、水性製剤における40℃でのpHの関数としての可溶性ala−TFPIの損失に関する一次反応定数を示す。水性製剤は、150μg/mlのala−TFPI、10mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、および0.015%(w/v)のポリソルベート−80を含んだ。
【図3】図3は、pH4で水性製剤に調製した試料の安定性を試験するためのala−TFPIの陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。水性製剤は、150μg/mlのala−TFPI、10mMのリン酸ナトリウムpH4、150mMのNaCl、および0.015%(w/v)のポリソルベート−80を含んだ。水性製剤を、40℃で0、3、5、10、または20日間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図4】図4は、種々のpH値で水性製剤に調製される試料の安定性を試験するために、ala−TFPIの陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。水性製剤は、150μg/mlのala−TFPI、10mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、および0.015%(w/v)のポリソルベート−80を含んだ。水性製剤を、40℃で10日間保存した。pH値はpH4、5、6、または7である(それぞれ上から下まで)。
【図5】図5は、ala−TFPI安定性に対するポリリン酸塩の効果について逆相高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。水性製剤は、5mg/mlのala−TFPI、10mMのL−ヒスチジン(pH7)、および2.5mg/mlのポリリン酸塩を含んだ。水性製剤を40℃、30℃または−70℃で3ヶ月間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図6A】図6Aは、凍結乾燥組成物として調製したala−TFPI試料の陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー・クロマトグラムを示す。これらの凍結乾燥組成物は、0.5mg/mlのala−TFPI、10mMのL−ヒスチジン(pH6)、4%(w/v)のマンニトール、および1%(w/v)のショ糖を含んだ。凍結乾燥組成物を、50℃、40℃、30℃、または−70℃で3ヶ月間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図6B】図6Bは、凍結乾燥組成物として調製したala−TFPI試料の逆相高速液体クロマトグラフィー・クロマトグラムを示す。これらの凍結乾燥組成物は、0.5mg/mlのala−TFPI、10mMのL−ヒスチジン(pH6)、4%(w/v)のマンニトール、および1%(w/v)のショ糖を含んだ。凍結乾燥組成物を、50℃、40℃、30℃、または−70℃で3ヶ月間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図6C】図6Cは、凍結乾燥組成物として調製したala−TFPI試料のサイズ除外高速液体クロマトグラフィー・クロマトグラムを示す。これらの凍結乾燥組成物は、0.5mg/mlのala−TFPI、10mMのL−ヒスチジン(pH6)、4%(w/v)のマンニトール、および1%(w/v)のショ糖を含んだ。凍結乾燥組成物を、50℃、40℃、30℃、または−70℃で3ヶ月間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図7A】図7Aは、種々の凍結乾燥組成物として調製された試料(製剤2、4、13、15、および17)の安定性を試験するためのala−TFPIの陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。製剤の組成は表4を参照せよ。凍結乾燥組成物は50℃で6ヶ月間保存した。
【図7B】図7Bは、種々の凍結乾燥組成物として調製された試料(製剤2、4、13、15、および17)の安定性を試験するためのala−TFPIの陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。製剤の組成は表4を参照せよ。凍結乾燥組成物は2〜8℃で6ヶ月間保存した。
【図8】図8は、凍結乾燥組成物として調製される試料の安定性を試験するためのala−TFPIの逆相高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。凍結乾燥組成物は、5mg/mlのala−TFPI、10mMのL−ヒスチジン(pH7)4%(w/v)のマンニトール、1%(w/v)のショ糖、および2.5mg/mlのポリリン酸塩のを含んだ。凍結乾燥組成物は、50℃、40℃、または−70℃で3ヶ月間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図9】図9は、高濃度のala−TFPI水性製剤と比較したala−TFPI凍結乾燥製剤の安定性比較を示す。このグラフでは、50℃での保存後に残存する可溶性ala−TFPIの比率が示されている。
【図10】図10は、ala−TFPIと種々のポリリン酸塩製剤とを含む組成物の凍結乾燥のための温度記録を示す。実線は、凍結乾燥中の保存温度を示す。点線は、ala−TFPI/ポリリン酸塩製剤の平均温度であり、この製剤が入ったバイアル(5cc)に挿入された4本の温度プローブで測定した。
【図11】図11は、最大で6ヶ月間にわたり50℃でインキュベートした後の可溶性ala−TFPI残存率を示す。水性製剤は、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)および300mMアルギニン中に種々の量のala−TFPIを含んだ。示した時間にわたる50℃でのインキュベーション後、可溶性ala−TFPIを陽イオン交換HPLCでアッセイし、溶液に残存する可溶性ala−TFPI量を測定した。
【図12】図12は、カプラン・マイヤー生存プロットであり、X軸は生存、Y軸は時間(h)を表す。
【技術分野】
【0001】
この出願は、同時係属仮出願第60/438,524号(2003年1月8日出願)、第60/494,547号(2003年8月13日出願)、第60/509,276号(2003年10月8日出願)、および第60/512,092号(2003年10月20日出願)の恩恵を主張するとともに、ここに本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に安定化されたタンパク質製剤に関する。より詳しくは、本発明は組織因子経路インヒビター(TFPI)およびTFPIの安定化凍結乾燥組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
組織因子経路インヒビター(TFPI)は、276アミノ酸長であり、組織因子によって媒介される血液凝固のインヒビターとして機能する。そのアミノ酸配列を配列番号1で示す。TFPIのアミノ末端は負に帯電しており、またカルボキシ末端は正に帯電している。TFPIタンパク質は、3つのクニッツ型酵素インヒビタードメインを含有する。TFPIは、18個のシステイン残基を含み、正しく折りたたまれた場合、9個のジスルフィド架橋を形成する。一次配列は、3つのN結合コンセンサス糖化部位(Asn−X−Ser/Thr)を含む。一次配列は、3つのN結合コンセンサス糖化部位(Asn−X−Ser/Thr)を含む。糖化部位のアスパラギン酸残基は、145、195、および256位に位置している。TFPIもまた、リポ蛋白関連凝固インヒビター(LACI)、組織因子インヒビター(TFI)、および外因経路インヒビター(EPI)として知られている。
【0004】
TFPIを用いて、種々の適応症を治療することが提案された。例えば、敗血症(米国特許第6,063,764号およびWO93/24143)、深部静脈血栓(米国特許第5,563,123号、米国特許第5,589,359号、およびWO96/04378)、虚血(米国特許第5,885,781号、米国特許第6,242,414号、およびWO96/40224)、再狭窄(米国特許第5,824,644号、およびWO96/01649)、および癌(米国特許第5,902,582号およびWO97/09063)が挙げられる。TFPI改変体(アミノ末端でのアラニン残基の付加によってTFPIとは異なる)(”ala−TFPI”)が敗血症治療のための動物モデルで有効であることが示されている(Carr et al., Cire Shock 1994 Nov; 44(3): 126−37)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
TFPIは、水溶液中での溶解度が乏しい疎水性タンパク質である。溶液中でのTFPIの凝集は、生物活性の損失と相関していた。種々の製剤が作られた(例えば、米国特許第5,888,968号およびWO96/40784を参照せよ)。しかし、安定化されたTFPIまたはTFPI改変体組成物が当技術分野で、いまだ求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の簡単な説明)
本発明は、少なくとも以下の実施形態を提供する。
【0007】
本発明の一実施形態は、(1)TFPIまたはTFPI改変体と、(2)炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤とを含むTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物を提供する。この凍結乾燥組成物は、約45%以上の凝集安定性を有する。
【0008】
本発明の別の実施形態は、凍結乾燥に先立って、TFPIまたはTFPI改変体が、炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤を含む水性製剤に存在し、その水性製剤のpHが約4ないし約8であるTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物である。
【0009】
本発明の別の実施形態は、TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物を調製する方法である。この方法は、(1)TFPIまたはTFPI改変体と、(2)炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤とを含む水性製剤を凍結乾燥する工程を含み、前記水性製剤はpHが約4ないし約8であり、それによって、約45%以上の凝集安定性を持つTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物を形成する。
【0010】
本発明の別の実施形態は、凍結乾燥のためにTFPIまたはTFPI改変体の組成物を調製する上で役立つプロセスである。このプロセスは、TFPIまたはTFPI改変体を含み基本的にカオトロープを含まない第2の製剤を形成するために、(1)TFPIまたはTFPI改変体と(2)カオトロープとを含む第1の製剤から、カオトロープを取り除くことで、TFPIまたはTFPI改変体を含む第2の製剤を形成する工程を有し、上記第2の製剤はpHが約3.5ないし約4.5である。カオトロープを尿素とすることができる。いくつかの実施形態では、第2の製剤はpHが約4である。第1の製剤は、pHが約5.5で約300mMのアルギニンおよび約20mMのクエン酸;pHが7.2で約2Mの尿素、約150mMの塩化ナトリウム、および約20mMのリン酸ナトリウム;pHが約7.2で約2Mの尿素、約250mMの塩化ナトリウム、および約20mMのリン酸ナトリウム;またはpHが約7で約1Mの尿素、約125mMの塩化ナトリウム、および約10mMのリン酸ナトリウムを含むことができる。第2の製剤は、pHが約5.5で約300mMのアルギニンおよび約20mMのクエン酸ナトリウム、pHが約6で約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)のマンニトール、および10mMのヒスチジン、pHが約4で約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのグルタミン酸塩;あるいはpHが約6で約3%(w/v)アルギニン、約4%(w/v)マンニトール、および約10mMのヒスチジンを含むことができる。上記除去工程は、ダイアフィルタレーション、透析、およびサイズ排除クロマトグラフィーからなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、実施することができる。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態は、凍結乾燥のためにTFPIまたはTFPI改変体を調製する上で役立つプロセスである。(1)TFPIまたはTFPI改変体と(2)第1製剤低分子量溶質とを含む第1の製剤に含まれる第1製剤低分子量溶質を第2溶液低分子量溶質によって置換して第2の製剤を形成する工程を有し、上記第2の製剤はpHが約3.5ないし約4.5である。プロセスは、第2製剤溶質を第3溶質製剤と置き換えて第3の製剤を形成する工程を含むことができる。置換の工程は、ダイアフィルトレーションによっておこなうことができる。第3の製剤は、医薬的に許容しうる製剤である。第2製剤溶質を置き換える工程を、ダイアフィルタレーション、透析、およびサイズ排除クロマトグラフィーからなる群から選択される方法で実施することができる。必要に応じて、第3の製剤は、pHが約6で約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのヒスチジンと、約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)マンニトール、およびpHが約6.5で10mMのイミダゾールとを含むことができる。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態は、(1)TFPIまたはTFPI改変体と (2)クエン酸塩緩衝剤とを含むTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物であって、該凍結乾燥組成物が約45%以上の凝集安定性を有する。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態は、(1)TFPIまたはTFPI改変体と、(2)硫酸塩と、(3)リン酸緩衝剤とを含むTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物であって、該凍結乾燥組成物が約45%以上の凝集安定性を有する。
【0014】
本発明のさらなる実施形態は、TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物を調製する方法である。この方法は、TFPIまたはTFPI改変体およびクエン酸塩緩衝剤と、TFPIまたはTFPI改変体、硫酸塩、およびリン酸塩緩衝剤とからなる群から選択される水性製剤を凍結乾燥する工程を含み、それによって約45%以上の凝集安定性を持つTFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物が形成される。
【0015】
(発明の詳細な説明)
高pH緩衝剤は、水性組成物でのTFPIまたはTFPI改変体の凝集に好都合である。TFPIまたはTFPI改変体の凝集は、分子の変性および不活化を生じる。低pH緩衝剤は、水性組成物でのTFPIまたはTFPI改変体の酸接触加水分解を生じる。このように、TFPIまたはTFPI改変体の安定な水性組成物にとって最適なpH範囲は、pH4ないしpH8である。pHが約4ないし約8であり、かつガラス形成剤を含有するTFPIまたはTFPI改変体組成物を凍結乾燥することで、非常に安定組成物を得ることができる。
【0016】
凍結乾燥(「フリーズ・ドライ」)は、製剤からの脱水である。凍結乾燥は、任意の周知の方法、例えば以下に説明するように、ハル・フリーズ・ドライヤー(Hull Freeze Dryer)を用いておこなうことができる。脱水は、水依存型崩壊反応が起こるのを防止する。そのような反応として、例えばペプチド結合加水分解とアミド分解とが挙げられる。
【0017】
本発明の凍結乾燥組成物は、約10mg/ml以下のTFPIまたはTFPI改変体(すなわち、10、7.5、5、2.5、1、0.5、もしくは0.2mg/ml以下)とガラス形成剤とを含む水性製剤を凍結乾燥することによって作られる。この水性製剤は、凍結乾燥に先立って、pHが約4ないし約8(すなわち、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、または8)、より好ましくはpHが約5ないし約8、それよりも好ましくはpHが約5.5ないし約6.5、さらにそれよりも好ましくはpH6である。必要に応じて、水性製剤が緩衝剤および/または1種類以上の結晶形成剤を含むことができる。
【0018】
他のTFPIおよびTFPI組成物の調製は、TFPIおよびTFPI改変体と、(a)クエン酸塩緩衝剤、(b)硫酸塩とリン酸塩緩衝剤との混合物、または(c)硫酸塩と緩衝剤(pHが約4ないし約8)を含む水性製剤を凍結乾燥することで、おこなうことができる。凍結乾燥組成物の成分は、以下に別々に説明する。
【0019】
好ましい凍結乾燥産物は、20mg/mlのTFPIまたはTFPI改変体、10mg/mlのポリリン酸塩、10mMのL−ヒスチジン(pH7)、4%のマンニトール、および1%のショ糖を含む。
【0020】
(凍結乾燥組成物の凝集安定性)
本発明の凍結乾燥組成物の凝集安定性は、約45%以上である。「凝集安定性率(percent aggregation stability)」は、40℃促進安定性アッセイで測定される可溶性をもつTFPIまたはTFPI改変体試料の比率のことをいう。40℃促進安定性アッセイでは、TFPIまたはTFPI改変体試料を40℃で3ヵ月間インキュベートする。インキュベーション後、凍結乾燥されたTFPIまたはTFPI改変体試料を滅菌水で元に戻し、0.2μmフイルターで濾過し、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー (CEX−HPLC) にかけて、溶液に残存する可溶性TFPIまたはTFPI改変体の量を測定する。CEX−HPLCアッセイついては、後述する。このように、例えば、60%の凝集安定性を持つTFPIまたはTFPI改変体組成物は、40℃促進安定性アッセイで測定されるようにTFPIまたはTFPI改変体の60%が可溶性である組成物である。80%の凝集安定性を持つTFPIまたはTFPI改変体組成物は、40℃促進安定性アッセイで測定されるように、TFPIまたはTFPI改変体の80%が可溶性である組成物である。本発明のTFPIまたはTFPI改変体組成物の凝集安定性率は、40℃促進安定性アッセイで測定されるように、好ましくは約45、50、60、70、または75%以上、より好ましくは80、82、84、85、90、92、94、95、96、97、98、または99%以上である。本発明のTFPIまたはTFPI改変体組成物の凝集安定性率は、例えば、約45%以上から約90%以上、約45%から約96%以上、50%以上から約99%以上、約50%以上から約70%以上、約60%以上から約80%以上、約70%から約95%以上、あるいは約85%以上から約96%以上の範囲に及ぶことができる。好ましくは、本発明の水溶性組成物に含まれるTFPIまたはTFPI改変体は、以下に説明するように、例えばプロトロビン時間アッセイによって測定される生物活性を有する。
【0021】
(保存温度)
本発明の組成物に対する保存温度を、約−70℃から約25℃までの範囲(例えば、約−70、−60、−50、−40、−30、−20、−10、5、10、15、20、または25℃)とすることができる。好ましくは、本発明の凍結乾燥組成物を約25℃で保存することができる。
【0022】
(TFPIおよびTFPI改変体)
TFPIは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を持つポリペプチドである。好ましくは、TFPIは、微生物宿主で生ずる組み換え型のヒト・タンパク質である。TFPIは、WO01/24814でその生物活性に関して、さらに特徴づけられ、かつ説明されている。
【0023】
TFPI改変体として、TFPIの類似体および誘導体、同様にTFPI、TFPI類似体、およびTFPI誘導体のフラグメントが挙げられる。TFPI改変体は、ヒトまたは他の哺乳類源から得ることができ、また合成あるいは組み換え技術によっても得られる。類似体は、一つ以上のアミノ酸の置換、挿入、欠失、および/または付加を有するTFPI分子である。保守的置換(アミノ酸が同様の特性を持つ別のアミノ酸と交換される)が好ましい。保守的置換の例として、限定されるものではないが、GlyとAlaとの間、ValとIleとLeuとの間、AspとGluとの間、LysとArgとの間、AsnとGlnとの間、およびPheとTrpとTyrとの間が挙げられる。これらは一般に、約1ないし5アミノ酸の範囲内である(すなわち、1、2、3、4、または5アミノ酸)。分子内の任意の位置、特にアミノ末端またはカルボキシ末端に、さらにアミノ酸を付加することができる。例えば、TFPI類似体の一つであるN−L−アラニル−TFPI(「ala−TFPI」)は、アミノ末端にアラニン残基が付加されている。アミノ酸付加は、1、2、5、10、25、100,またはそれ以上の数のアミノ酸を付加することである。この定義のなかに、融合タンパク質も包含される。
【0024】
フラグメントは、TFPI、TFPI類似体、またはTFPI誘導体の一部分である。フラグメントの例として、クニッツ(Kunitz)・ドメイン1、2、または3、クニッツ・ドメイン1および2または2および3、あるいはN末端、C末端、または両方の欠失が挙げられる。改変体の作製についての内容のある指導は、米国特許第5,106,833号に見いだされる。TFPIのフラグメントは、配列番号1の少なくとも20個の保守的アミノ酸から構成される。例えば、一つのフラグメントの長さを20、25、30、50、100、150、200、250、または275個の保守的アミノ酸とすることができる。生物活性を持たないTFPIフラグメントが、米国特許第5,106,833号に開示されている。本発明でのそのようなフラグメントの使用もまた、検討する。
【0025】
誘導体は、付加部分を持つTFPI、TFPI類似体、またはTFPIフラグメントとして、定義される。そのような付加として、そのような付加の例として、糖化、リン酸化反応、アセチル化、またはアミド化が挙げられる。
【0026】
TFPI改変体と配列番号1との相同率の測定は、Blast2アラインメント・プログラム(Blosum62、Expect10、標準遺伝子コード、オープン・ギャップ11、エクステンション・ギャップ1、ギャップxドロップオフ50、および低複雑度フイルター・オフ)を用いておこなう。TFPI改変体の配列番号1に対するアミノ酸の同一性は、一般に、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%ないし95%(すなわち、90、91、92、93、94、または95%)以上、最も好ましくは少なくとも98%もしくは99%である。
【0027】
TFPIをコードするDNA配列に変更を加えることで、TFPIのアミノ酸配列改変体を調製することができる。ヌクレオチド配列に変更を加える方法は、当技術分野で周知である。例えば、Walker and Gaastra, eds. (1983) Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company, New York)、 Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488−492、Kunkel et al. (1987) Methods Enzymol. 154:367−382、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, N.Y.)、米国特許第4,873,192号、および本明細書で引用される文献を参照せよ。
【0028】
TFPI改変体は、相当量の生物活性を有するもので、以下に説明するPTアッセイで測定されるように、例えばTFPIの生物活性の10%、30%、50%、60%、80%、90%、またはそれ以上を有する。明らかに、TFPI改変体をコードするDNAに加えられる変更は、その配列をリーディング・フレームから外すものであってはならず、好ましくは第2のmRNA構造を作りうる相補的領域を生成しない。TFPIまたはTFPI改変体の生物活性もしくは免疫活性を消失させることなく、どのアミノ酸を置換、挿入、または欠失させるかを判断する指針は、当技術分野で周知のコンピュータ・プログラム)例えば、DNASTARソフトウエア、もしくはDayhoff et al. (1978) in Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.にあるもの)を用いることで見いだされる。生物活性のないTFPI改変体の安定化についても検討する。
【0029】
米国特許第4,966,852号に示すように、TFPIまたはTFPI改変体を組み換え技術によって作ることが可能である。例えば、所望のタンパク質のcDNAを、原核生物または真核生物で発現させるプラスミドに取り込むことができる。微生物を用いたタンパク質の発現に対する詳細については、当業者に周知の多くの参考文献に記載されており、例えば、米国特許第4,847,201号およびManiatas et al., 1982, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, N.Y.)を参照せよ。
【0030】
微生物の形質転換と、形質転換された微生物を用いたTFPIまたはTFPI改変体の発現とに、種々の技術が利用できる。考えられるアプローチの単なる例を以下に示す。TFPIまたはTFPI改変体DNA配列を適当な制御配列に結合させることができる。TFPIまたはTFPI改変体DNA配列をプラスミド(例えば、Boehringer−Mannheim等の会社から市販されているpUC13またはpBR322)に取り込むことができる。いったんTFPIまたはTFPI改変体DNAをベクターに取り込むことで、そのDNAを適当な宿主にクローン化することができる。そのようなDNAの増幅を、米国特許第4,683,202号および米国特許第4,683,195号等に示される技術を用いておこなうことができる。cDNAは、HepG2またはSKHepヘパトーマ細胞等の細胞でmRNA産生を誘導し、そのmRNAを同定および単離し、さらにそれを逆転写してcDNAを得ることで、得てもよい。発現ベクターが宿主(例えば、大腸菌(E. coli))に形質転換された後、その細菌を培養してタンパク質を発現させることが可能である。細菌は、好ましい原核微生物であり、大腸菌(E. coli)が特に好ましい。本発明で有用な好ましい微生物は、大腸菌(E. coli)K−12のMM294株であり、この株は米国菌培養収集所(American Type Culture Collection) (現在の所在地:10801 University Blvd.,Manassas, Virginia)により1984年2月14日付でブタベスト条約の条項に従って寄託された(寄託番号39607)。
【0031】
TFPIまたはTFPI改変体を細菌または酵母で作り、その後精製してもよい。一般に、米国特許第5,212,091号、米国特許第6,063,764号、および米国特許第6,103,500号、もしくはWO96/40784に示すような手順を用いることができる。WO06/40784およびGustafson et al., Prot. Express. Pur. 5:233 (1994)にもとづいて、TFPIまたはTFPI改変体を精製し、可溶化し、さらに再生することができる。例えば、WO96/40784の実施例9にもとづいて調製した場合、生物活性ala−TFPIとして重量で全タンパク質の約85%ないし90%を含むala−TFPIの製剤が得られる。
【0032】
(ガラス形成剤)
「ガラス形成剤(glass forming agent)」は、臨界温度(ガラス転移温度(Tg)を下回る温度でガラスを形成する能力を持つ化学薬品である。もし、ガラス形成剤がそのTgを下回る温度で凍結乾燥されるならば、ガラスが形成されて凍結乾燥組成物のままである。しかし、もしガラス形成剤がTgを上回る温度で凍結乾燥されるならば、ガラスは形成されない。ガラス形成の過程では、タンパク質がガラス構造に埋め込まれ得る。本発明による使用に適したガラス形成剤として、限定されるものではないが、荷電高分子、単糖類、二糖類、三糖類、および天然アミノ酸が挙げられる。炭水化物とアミノ酸ガラス形成剤とが好ましい。ガラス形成剤の組み合わせもまた、単一の製剤として検討する。
【0033】
「荷電高分子(charged polymer)」は、いくつかが正または負に帯電した化学基を持つ直鎖状または非直鎖状の形態で結合した複数の反復構造単位からなる一本の主鎖で構成される任意の化合物である。反復構造単位は、有機または無機のいずれであってもよい。また、反復構造単位の数は2から数百万に及ぶものであってもよい。
【0034】
ガラス形成剤としての使用に適した荷電高分子として、限定されるものではないが、ポリリン酸塩、ヘパリン、硫酸デキストラン、アガロペクチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ無機物、ポリアミノ酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸塩、ポリヒスチジン、ポリオーガニック、DEAEデキストラン、ポリ有機アミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンセルロース、ポリアミン、ポリリジン、およびポリアルギニンが挙げられる。
【0035】
「ポリリン酸塩(polyphosphate)」は、リン酸無水物結合で連結したオルト・リン酸塩の反復単位からなるポリマーである。反復単位の数を、2(ピロリン酸塩)ないし数千とすることができる。ポリリン酸塩は、ヘキサメタリン酸ソーダ(SHMP)と、しばしば言及される。他の慣用名として、グラハムズ(Grahams)塩、カルゴン、リン酸塩ガラス、テトラメタリン酸ナトリウム、およびガラスHが挙げられる。
【0036】
ガラス形成剤として使用される単糖類として、限定されるものではないが、グリコールアルデヒド、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アロース、タロース、グロース、マンノース、ブドウ糖、イドース、ガラクトース、アルトロース、ジヒドロキシアセトン、エリトロース、リブロース、キシロケトース、プシコース、タガトース、ソルボース、およびフルクトースが挙げられる。硫酸化単糖類を用いることも可能である。
【0037】
単糖類を2つ結合させることで、二糖類が形成される。二糖類の形成に用いる2つの単糖類を、同一または異なるものとすることができる。ガラス形成剤として用いることができる二糖類の例として、ショ糖、トレハロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、ゲンチオビオース、ラミナリボース、およびセロビオースが挙げられる。硫酸化二糖類を用いることも可能である。
【0038】
単糖類を3つ連結することで、三糖類が形成される。三糖類の形成に用いる3つの単糖類を、同一または異なるものとすることができる。ガラス形成剤としての使用に適した三糖類の例として、ラフィノースおよびメレチトースが挙げられる。硫酸化三糖類を用いることも可能である。
【0039】
本発明でのガラス形成剤としての使用に適する天然アミノ酸として、限定されるものではないが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、リシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、プロリン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。アミノ酸は、L−立体異性体またはD−立体異性体のいずれであってもよい。L−アミノ酸が好ましい。
【0040】
ガラス形成剤は、約50mMないし約600mM(すなわち、約50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、または600mM)の量で、凍結乾燥用の水性製剤に存在する。好ましくは、ガラス製剤は、約100mMないし約500mM、より好ましくは約200mMないし約400mM、さらにより好ましくは約100mMないし約300mM、最も好ましくは約300mMの量で、存在する。
【0041】
高分子(例えば、ポリリン酸塩)は、一般に分子量に関しては十分に定まっていない。いくつかの高分子は長く、また他の高分子は短いことから、分子量は高分子間で変動する。もしガラス形成剤が十分に定まった分子でなければ、例えばポリリン酸塩のような高分子の場合、水性製剤に存在する量は、TFPIまたはTFPI改変体の重量と荷電高分子の重量との比として表される。好ましくは、TFPIまたはTFPI改変体と荷電高分子との比は、約8:1またはそれ以下であり、より好ましくは約6:1、最も好ましくは約2:1である。
【0042】
(緩衝剤)
TFPIまたはTFPI改変体組成物のpHは、タンパク質の溶解度に影響を及ぼし、それによってその安定性にも影響を及ぼす。Chen et al. (1999) J. Pharm. Sciences 88(9):881−888を参照せよ。本発明の組成物にとって好ましいpH範囲は、約4ないし約8(すなわち、約pH4、4.5、5.5、6、6.5、7、7.5、または8)、より好ましくは約5ないし約6.5である。pHはTFPI溶解度にとって重要な因子であることから、適当なpHに保つために緩衝剤を用いることで製剤の安定性をさらに改善し得る。したがって、本発明の水性組成物は、必要に応じて、溶液pHを保つために緩衝剤をさらに含むことができる。
【0043】
本発明による使用に適した典型的な緩衝剤として、限定されるものではないが、酢酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、グルタミン酸塩、L−グルタミン酸塩、イミダゾール、クエン酸塩、ヒスチジン、L−ヒスチジン、グリシン、アルギニン、L−アルギニン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい緩衝剤は、リン酸塩、L−グルタミン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、L−アルギニン、およびL−ヒスチジンである。最も好ましい緩衝剤は、L−アルギニンおよびL−ヒスチジンである。緩衝剤は、約0mMないし約600mM(すなわち、約0、5、10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、550、または600mM)の量で、水性製剤に加えられる。好ましくは、緩衝剤の濃度は、約10mMないし約100mM、より好ましくは約20mMないし約50mMである。
【0044】
いくつかのガラス形成剤もまた、緩衝剤となり得る。そのようなガラス形成剤の例として、アルギニンがある。そのようなガラス形成剤は、水性製剤のpHを緩衝し、製剤が凍結乾燥される場合に該ガラス形成剤がガラスを形成してTFPIまたはTFPI改変体の安定化を助ける。緩衝剤でもあるガラス形成剤は、概して約50mMないし約600mM(すなわち、約50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、または600mM)の量で凍結乾燥用の水性製剤に存在する。好ましくは、ガラス形成剤緩衝剤の濃度は、約100mMないし約500mM、より好ましくは約200mMないし約400mM、さらにより好ましくは約100mMないし約300mM、最も好ましくは約300mMである。
【0045】
(結晶形成剤)
必要に応じて、1種類以上の結晶形成剤を上記水性製剤に含有させることもできる。「結晶形成剤(Crystal forming agent)」は、結晶格子網様構造を形成する能力を持つ化学薬品である。概して、凍結乾燥される水性製剤に対して結晶形成剤を添加することで硬い構造が得られる。凍結乾燥後に残留する物質を「ケイク(cake)」と称する。結晶形成剤が存在することなしに、ケイクは一般に硬くならず、通常は崩壊または収縮してケイク形態が損なわれる。結晶格子の硬い支持体によってケイクの崩壊が妨げられる。ケイク形態は、製品外観の態様から望ましい。凍結乾燥TFPIまたはTFPI改変体の安定性および生物活性は、一般にケイク形態による影響を受けない。
【0046】
本発明による使用に適した結晶形成剤の例として、限定されるものではないが、マンニトール、アラニン、グリシン、塩化ナトリウム、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。結晶形成剤は、凍結乾燥用の水性製剤に、約0.5%ないし約16%(w/v)(すなわち、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16%)の量で存在する。
【0047】
(凍結乾燥のための製剤の調製)
TFPIまたはTFPI改変体の大量調製は、該TFPIまたはTFPI改変体が可溶性のままであることを確実にするためにカオトロープ(例えば、尿素)の使用を伴うものであってもよい。カオトロープは凍結乾燥に先立って除去することが望ましいか、または必要とされる可能性がある。したがって、本発明は凍結乾燥のためにTFPIまたはTFPI改変体を調製する上で役立つプロセスも提供する。
【0048】
このプロセスの第1の工程は、第1の製剤低分子量溶質(通常はカオトロープ)を除去し、それを第2の製剤低分子量溶質(例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、アルギニン、ヒスチジン、マンニトール、およびショ糖)と置換することである。第1の製剤低分子量溶質の除去にともなうTFPIまたはTFPI改変体の凝集を防ぐために、TFPIまたはTFPI改変体タンパク質の凝集または沈殿をともなうことなくカオトロープの除去を可能にするpHの値まで、pHを下げる。通常、pHを約4まで減少させる。カオトロープは当技術分野で公知の任意の方法によって取り除くことができる。そのような方法の例として、限定されるものではないが、ダイアフイルトレーション、透析、またはサイズ排除クロマトグラフィーが挙げられる。ダイアフィルトレーションが好ましい。大量調製で溶質を交換し、保存に先立って大量のTFPIまたはTFPI改変体を凍結乾燥することが望ましいと思われる。
【0049】
あるいは、カオトロープの濃度は、カオトロープを含まない製剤によってTFPIまたはTFPI改変体標品を希釈することで減少させることができる。この工程は、好ましくは、しかし必然的ではないが、基本的にカオトロープ・フリーである製剤の形成に帰着する。
【0050】
必要に応じて、結果として生じる製剤に含まれるいくつかの溶質を、他の溶質(例えば、ヒスチジン、イミダゾール、マンニトール、グリシン、またはショ糖)と交換することができる。この工程の間、通常、pHを増加させてTFPIが水性製剤で安定する値にする。好ましくは、pHを約6まで増加させる。その後、必要に応じて、製剤を当技術分野で公知の技術を用いて凍結乾燥させることができる。第3の製剤は、好ましくは医薬的に許容される製剤である。「意訳的に許容される(pharmaceutically acceptable)」という表現は、製剤を患者に投与した場合、顕著な生物学的副作用がないという意味である。「患者(patient)」という表現は、ヒト患者および獣医学的患畜の両方を包含する。
【0051】
本発明の凍結乾燥組成物を再構成してTFPIまたはTFPI改変体の水性製剤を提供することができる。凍結乾燥されたTFPIを、適当な媒体(例えば、食塩水または水)で再構成することができる。
【0052】
この開示で引用される全ての特許、特許出願、および文献は、それらの全体が本明細書の一部をなすものとして、援用される。
【0053】
以下の実施例は、例証を目的として提供され、本明細書中に開示された発明を限定するものではない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
(一般的方法)
(TFPIおよびTFPI改変体の大量調製)
ala−TFPIバルクを、透析によって異なる製剤緩衝剤に調製した。透析は、3,500ダルトンの分子量カットオフを持つSpec/Por7透析チューブを用いて、4℃でおこなった。50ないし100倍過剰の透析緩衝剤を3時間毎に更新した(全部で3回更新)。透析後、0.2μmフィルター・ユニットを通す濾過によって、凝集TFPIから可能性ala−TFPIを分離した。可溶性ala−TFPIの濃度を、UV吸光度で測定し、必要とする製剤に応じて、その濃度を所望の値に調製した。無菌のラミナー・フロー・フードにおいて、複数の3ccのI型ガラス・バイアルに、処方されたala−TFPI溶液1mlを移した。これらのバイアルを13mmダイキョー(Daikyo)D713フッ素樹脂積層ゴム栓で封じ、アルミニウム・シールでクリンピングして、スタビリティ・チャンバーに入れた。凍結乾燥するために、3ccのガラス・バイアルに1mlの配合ala−TFPI溶液を満たし、13mmウエスト(West)890グレイ(Gray)凍結乾燥栓で、半分栓をされた。これらのバイアルを凍結乾燥器にセットした。
【0055】
(HPLC)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC): 全てのHPLC方法を、717ヒーター/クーラー・オートサンプラーを備えたウォーターズ(Waters)626LCシステム上でおこなった。ウォーターズ(Waters)486吸光度検出器でUV吸光度をモニターし、日立(Hitachi)F−1050またはF−1080蛍光分光光度計によって蛍光を記録した。データの収集および処理を、パーキン−エルマー(Perkin−Elmer)ターボクロム(Turbochrom)システム上でおこなった。
【0056】
陽イオン交換HPLC(CEX−HPLC): CEX−HPLC方法は、ファルマシア・モノ(Pharmacia Mono)−S HR 5/5−ガラス・カラムを使用した。カラムの平衡化は、80%緩衝剤A(20mM酢酸ナトリウム三水和物:アセトニトリル溶液(70:30 v/v)、pH 5.4)と20%緩衝剤B(20mM酢酸ナトリウム三水和物−1.0M塩化アンモニウム−アセトニトリル溶液(70:30 v/v)、pH 5.4)とでおこなった。試料を注射した後、21分で20%緩衝剤Bから85%緩衝剤Bに0.7ml/分の流速でTFPIが溶出するように、勾配を与えた。タンパク質ピークは、280nmの吸光度で検出または280nm励起および320nm発酵を用いた蛍光によって検出された。
【0057】
サイズ排除HPLC(SEC−HPLC): SEC−HPLC方法は、フェノメネクス(Phenomenex) BIOSEP−SECS2000カラム(300 x 7.8 mm)を使用した。定組成溶離プロフィールを用いて、上記カラムからala−TFPIを溶出した。ala−TFPIの溶出は10mMのリン酸ナトリウム(pH6.5)と0.5MのNaClとでおこなった。タンパク質ピークを278nm吸光度によって検出し、タンパク質分子量を467nm励起および467nm発光を用いた蛍光によって測定した(Dollinger et al., J. Chromatogr. 592:215−228, 1992)。
【0058】
逆相HPLC(RP−HPLC): 逆相HPLC法は、直列になった2本のレイニン・ダイナマクス(Rainin Dynamax) C8カラム(5x4.6mm、5μm、300Å)(5cm x 4.6mm、5μm、300Å)を使用した。カラムを86%緩衝剤A(30%(v/v)アセトノトリル:0.45%(v/v)トリフルオロ酢酸)と14%緩衝剤B(60%(v/v)アセトノトリル:0.45%(v/v)トリフルオロ酢酸)で前平衡化した。注入されたタンパク質の溶出は、流速1ml/分で最初に緩衝剤Bを13分以内に21%に増加させ、つぎに30分以内に100%緩衝剤とすることで、おこなった。タンパク質溶出を280nm吸光度の測定によって検出した。
【0059】
(プロトロンビン時間(PT)アッセイ)
PTアッセイを、Coag−A−MateRA4インストルメント(Organon Teknika)上でおこなった。最初に、ala−TFPI試料を緩衝剤(2M尿素、20mMリン酸ナトリウム、250mM NaCl、pH7.2)で希釈して150μg/mlとし、続いてTBSA緩衝剤(50mM Tris、100mM NaCl、1mg/ml牛血清アルブミン、pH7.5)で希釈して30μg/mlとし、最後にTBSA緩衝剤によって希釈して12ないし15μg/mlとした。アッセイのために、10μlの希釈試料を最初に90μlのプールされたベリファイ(Verify)I(Organon Teknika、Cat.No.59566)と混合し、試験トレイ(Organon Teknika、Cat.No.35014)に載せ、さらにCoag−A−Mateに入れた。つぎに、200μlのシンプラスチン・エクセル(Simplastin Excel)(Organon Teknika, Cat.No.52001)を添加して凝固プロセスを開始させた。凝固時間を、数秒の凝固時間の対数と、標準のala−TFPI濃度の対数とからなる標準プロットと比較することよって、入力ala−TFPI濃度に変換した。
【0060】
(PEIの添加)
PR−HPLC分析およびPTアッセイに対するポリリン酸塩の干渉を排除するために、PEIをala−TFPI/ポリリン酸塩試料に添加した。PEI無しでは、ala−TFPIは異常なHPLC溶出プロフィールを示し、ポリリン酸塩存在下での生体外(in vitro)比活性(0.6〜0.9)を減少させた。0.8%(w/v)PEIの添加によって正常な溶出プロフィールおよび正常な生体内(in vitro)比活性が回復した。濃度0.2および0.4%(w/v)のPEIを添加することでala−TFPI沈殿が観察された。PEIの濃度が0.6ないし3.2%(w/v)ではala−TFPI沈殿は生ずることがなく、単独で用いた場合にPTアッセイでの凝固時間に影響を及ぼすことがなかった。
【0061】
(ダイアフィルトレーション)
ダイアフィルトレーション: 約10mg/mlのTFPIまたはTFPI改変体、2M尿素、20mMリン酸ナトリウム(pH7)、および150mM NaClを含むTFPIまたはTFPI改変体バルクを最初に1.25ないし5mg/mlポリリン酸塩(TFPI対ポリリン酸塩重量比が約8:1から約2:1に変化)と混合した。尿素を6Mまで添加した。ダイアフィルトレーション膜は、ミリポア・ペリコン(Millipore Pelicon)2ミニ(mini)10K PLGC再生セルロース膜(表面積0.1m2)とした。ペリスタル型ポンプの入口圧、放出口圧、および流速は、製造元の推奨にしたがって設定した。
【0062】
ダイアフィルトレーション効率: ダイアフィルトレーション容器内の溶液量が全ダイアフィルトレーション・プロセス(すなわち、送り(feed−in)ダイアフィルトレーション緩衝剤の量は、透過(permeate−out)溶液の量に等しい)の過程で一定に保たれる場合、交換等式:
Cn/Co=exp(−α、Vn/Vo)を用いて各々の緩衝剤交換量でのダイアフィルトレーション効率を算出することができる。
【0063】
ここで、CnおよびCoは、それぞれ緩衝剤交換量nおよびゼロでのダイアフィルトレーション容器内の溶質濃度(しかし、送り(feed−in)緩衝剤に存在しない)である。Voは、ダイアフィルトレーション容器内の開始TFPIまたはTFPIへにたい製剤の量であり、Vnは送り込まれた緩衝剤もしくは透過したダイアフィルトレーション溶液の量である。したがって、n=Vn/Vo。ダイアフィルトレーション・カートリッジは、尿素、NaCl、およびリン酸塩等の小さな溶質に対して完全に透過性を持つものとみなされる分子量カット・オフが10キロダルトンである膜を使用した。したがって、透過因子αは、分子量カットオフよりも十分に下回る小さな溶質に対して、1に等しい。この等式は、各緩衝剤交換量でのダイアフィルトレーション効率の算出を可能にする。例えば、98.2%および99.8%開始緩衝剤成分がそれぞれ4および6容量の緩衝剤交換の後に「透過(permeated out)」する。
【0064】
(透析)
いくつかの実験では、TFPIまたはTFPI改変体バルクは、透析によって異なる製剤緩衝剤に調製された。透析は、3,500ダルトンの分子量カットオフでSpectra/Por7(登録商標)透析チューブ(Spectrum(登録商標)Laboratories)を用いて、4℃でおこなった。50ないし100倍過剰の透析緩衝剤を3時間毎に合計3回交換した。透析後、0.2μmフィルター・ユニットで濾過することで、可溶性TFPIまたはTFPI改変体を凝集TFPIまたはTFPI改変体から分離した。TFPIまたはTFPI改変体の濃度を、UV吸光度によって測定し、求められる製剤にもとづいて所望の値に調製した。
【0065】
(凍結乾燥(フリーズ・ドライ))
製剤化されたTFPIまたはTFPI改変体を含む複数のバイアルを複数のメタル・トレイ上に置いた。これらのトレイを、事前に10℃に平衡化された保存温度のハル・フリーズ・ドライヤー(Hull Freeze Dryer)(Model 8FS 12C)に入れてた。フリーズ・ドライ・サイクルは、3つの工程から構成される。すなわち、凍結、一次乾燥、および2次乾燥である。最初にバイアルを−50℃に冷却して製品を凍結させる。続いて、一次乾燥を−25℃で30時間、また真空度100mtorrでおこなった。凍結乾燥完了後、保存温度を4℃まで下げ、凍結乾燥チェンバー内に窒素を流入させて真空状態を解き放した。つぎに、第2の乾燥を20℃、12時間、また真空度100mtorrで実施した。凍結乾燥完了後、保存温度を4℃に下げ、凍結乾燥チェンバー内に窒素を流入させて真空状態を解き放した。12psi窒素圧で、バイアルを栓でふさいだ。これらのバイアルを凍結乾燥器から取り出し、13mmフリップ・オフ・アルミニウム・シールでクリンピングした。
【0066】
(実施例1A)
(TFPI/ポリリン酸塩のダイアフィルトレーション)
ala−TFPI/ポリリン酸塩溶液は、ダイアフィルトレーションの前にala−TFPIバルク(2M尿素、20mMリン酸ナトリウム、および150mM NaClを含む)へポリリン酸塩を添加することによって調製された。その後、この混合物を水または緩衝剤に対してダイアフィルトレーションした。ダイアフィルトレーション中、尿素を6Mで用いることで、緩衝剤交換プロセス中でのタンパク質の可溶性を保った。
【0067】
ダイアフィルトレーションしたala−TFPI/ポリリン酸塩溶液は、良好な安定性を示した。沈殿は、周囲温度で後であること記憶の間、観察されなかった。それに続く周囲温度での保存の過程で、沈殿は観察されなかった。対照的に、バルク緩衝剤(2M尿素のみ含む)から直接調製したala−TFPI/ポリリン酸塩溶液は、その後の保存後、不安定性を示した。すなわち、周囲温度での保存1日を経過した後、沈殿の形成がみとめられた。したがって、6M尿素は、バルク緩衝剤から水/ポリリン酸緩衝剤への緩衝剤の移動の過程で、ala−TFPI可溶化を助ける。
【0068】
(実施例1B)
(凍結誘導ala−TFPI沈殿)
ダイアフィルトレーション処理ala−TFPI/ポリリン酸塩溶液は、凍結融解または周囲温度でのインキュベーションのいずれかに対して、不安定性を示した。可視沈殿物は、−70℃からの凍結融解後、または周囲温度での保存過程で、表Aに示すように、いくつかのala−TFPI/ポリリン酸塩溶液で見つかった。
【0069】
(表A)
【表A】
【0070】
これらの結果は、ala−TFPI安定性が保存条件および製剤中の緩衝剤に影響されることを示す。クエン酸塩およびリン酸塩緩衝剤は、周囲温度保存および凍結保存の両方で、ala−TFPI沈殿をしばしば生じた。−70℃でpHが変化したかどうか判断するために、凍結状態のpHは、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)から購入したユニバーサル(Universal)pH溶液を使用して染料の色変化で測定された。
【0071】
ala−TFPI/ポリリン酸塩溶液が、イオン強度およびpHの変化に非常に影響されるとわかった。酸またはNaClのいずれによって滴定することで、TFPIがpH5.8未満または80mMを上回るNaClのいずれかでala−TFPI/ポリリン酸塩中でTFPIが急激に沈殿したことが示された。別の実験では、5mMNaClほど低いNaClの添加後、周囲温度で、最終的にala−TFPIの沈殿物が形成されることが示された。NaClをさらに加えることで、沈殿がより速くなった。ala−TFPIが凍結融解と同時に沈殿した理由として、ポリリン酸塩存在下でのpHおよび塩の変化に対するala−TFPI/ポリリン酸塩の感受性が考えられる。クエン酸塩およびリン酸塩等の緩衝剤のpHは、緩衝剤系で異なる塩形態の部分的な沈殿のため、凍結と同時に減少する。おそらく、凍結で生ずるpHシフトおよび/または塩の濃縮は、ala−TFPIとポリリン酸塩とのあいだの相互作用を弱めてala−TFPI沈殿を生ずる。同様に、周囲温度での塩の添加もまた、ala−TFPIとポリリン酸塩とのあいだの静電的相互作用を弱めてala−TFPI沈殿を生ずる。
【0072】
L−ヒスチジンは、凍結と同時にpHを安定化させるための有用な緩衝剤である。L−ヒスチジンも、溶液中に単一の中性形状もしくはプロトン化形状として存在する。したがって、それはala−TFPIとポリリン酸塩との相互作用に、最小限の影響を及ぼさなければならない。
【0073】
(実施例2)
(ala−TFPI水溶性組成物の安定性)
ala−TFPI水性製剤の長期安定性を測定するために、ala−TFPIの凝集を高温で調べた。ala−TFPI試料(150mM塩化ナトリウム、0.015%(w/v)ポリソルベート−80、および10mMリン酸ナトリウム、pH7で処方)を種々の時間で40℃で保存した。保存時間を増加にともなって試料の混濁が生じ、目視可能な沈殿物の形成が示された。0.2μmフィルターによる濾過後、可溶性ala−TFPIを陽イオン交換HPLC(CEX−HPLC)によって分析した。図1は、これらの試料のCEX−HPLCのクロマトグラムである。図1のクロマトグラムは、単一タンパク質ピークが18分で溶出したことを示す。このピークは、ala−TFPIモノマーである。
【0074】
図1のクロマトグラムで、ピーク下の面積を計算することによってala−TFPI濃度を算出した。ピーク面積の減少が観察され、これらの試料で可溶性ala−TFPIの損失が示された。ピーク面積対保存時間の一つの指数関数当て嵌めを、可溶性ala−TFPI損失の計算に用いた。算出された速度定数を、標準の一次反応速度式を使用して、保存寿命t90(可溶性ala−TFPIポリペプチドの10%の損失と考えられる時間))に変換した(Cantor and Schimmel, eds., Biophysical Chemistry, W.H. Freeman and Co., 1980)。同様に、保存寿命の算出は、プロトロンビン時間(PT)アッセイで測定される生物活性データを使用しておこなった。可溶性ala−TFPIに関する保存寿命は、生物活性に関する保存寿命(表1)と十分一致していた。可溶性ala−TFPIの損失が生物活性の減少と平行していることから、凝集は最も可能性のある不活化経路であると考えられた。
【0075】
(表1)
【0076】
【表1】
凝集形成を減少させ、それによってala−TFPI水性製剤の長期安定性を高めるために、pH安定性の研究をおこなった。ala−TFPIを、150mM塩化ナトリウム、0.015%(w/v)ポリソルベート−80、および10mMリン酸ナトリウムで調製し、該製剤のpHをHClまたはNaOHの添加によって4ないし9の異なる値に調整した。40℃で保存後、これらの試料での可溶性ala−TFPIの損失をCEX−HPLCで測定した。図2は、pHの関数としての可溶性ala−TFPI損失の一次反応定数をプロットしたものである。pH6を下回ると凝集速度が遅くなり、基本pHではかなり速くなる。したがって、ala−TFPI凝集は塩基で触媒されるものであった。
【0077】
凝集反応がpH 6未満で最小化されたにもかかわらず、新たな崩壊反応が酸性pH条件で観察された。ala−TFPIのより小さな2つの種が、SDS−PAGE(データ不図示)によって検出された。遅く溶出する種も、CEX−HPLCクロマトグラム(図3)上で、pH 4で観察された。この種は、SDS−PAGEによって検出される分解産物に対応しているように思われた。図3は、40℃、酸性条件下で、ala−TFPIをより長くインキュベートして現れた新たな種と、18分で溶出している単量体ala−TFPIとを示す。したがって、単量体ala−TFPI種がインキュベーション時間にともなって減少し、遅く溶出するピークが、おそらく増加するala−TFPIを分解した。
【0078】
ala−TFPIの分解が酸加水分解によって触媒されたかどうか決定するために、異なるpHでala−TFPI試料をCEX−HPLC分析にかけた。切断率は、高pH条件でより遅くなった(図4)。40℃で10日間保存した後、TFPIの切断はpHがpH4に減少するのにともなって増加した。したがって、ala−TFPIの分解はポリペプチド内のペプチド結合が酸加水分解することによる。
【0079】
前の2つの研究結果にもとづいて、さらにスクリーニングにかけている製剤は、約pH6に焦点を置いた。表1に挙げられた他の11種類の製剤の安定性促進について評価した。試料を40℃に保存し、可溶性の損失についてはCEX−HPLCV分析によって、また生物活性の損失についてはPTアッセイにかけた。陽イオン交換HPLCで測定される保存寿命(t90)が1日から2週間以上に及ぶことがわかり、またPTアッセイでは1日から約8日に及ぶことがわかった。アレニウス(Arrehnius)分析は、それら40℃データを用いておこなった。10kcal/molの活性化エネルギー(凝集反応のための合理的な見積である)を仮定した。結果は、これらの水性製剤のTFPIがより長い期間(例えば18〜24ヵ月)に対しては安定していないことを示唆している。
【0080】
(実施例3)
(ala−TFPIの水性製剤に対するポリリン酸塩の効果の安定化)
ala−TFPI製剤のポリリン酸塩の安定化効果を評価した。ポリリン酸塩は、ala−TFPIに結合し、高次構造的にそれを安定させる。ポリリン酸塩による安定化を、2:1、6:1、および8:1のala−TFPI対ポリリン酸塩の重量比で調べた。製剤の調製は、10mMヒスチジン(pH7)における各ala−TFPI:ポリリン酸塩比でおこなった。また、ala−TFPI安定性に対するヒスチジンの効果を評価するために、水のみをもちいてala−TFPI対ポリリン酸塩重量比(8:1)を設定した。さらに別の製剤では、pH6.5の10mMヒスチジンにより、ala−TFPI対ポリリン酸塩重量比(8:1)を設定し、ala−TFPIに対するpHの効果を評価した。
【0081】
塩および他の荷電イオンがala−TFPI−ポリリン酸塩結合に干渉し得ることから、単糖および二糖類(例えば、マンニトール、ショ糖、およびソルビトール)がTFPI製剤に用いられた。単糖または二糖類を含む製剤は、ala−TFPI対ポリリン酸塩重量比8:1で調製した(製剤については表2を参照)。最後に、いくつかの高濃度ala−TFPI試料をセットアップしてそのような濃度でのTFPI安定性を評価した。これらのala−TFPI製剤の安定性を30℃および40℃で検討した。バイアルは、あらかじめ選択された時点で取り出し、0.22μmフイルターで濾過し、沈殿物を除去した。濾過されたala−TFPI試料を、分解および吸収帯強度についてSDS−PAGEによって、可溶性の損失について上記したように逆相HPLCによって、さらに生物活性の損失について上記したようにPTアッセイによって、続けて分析した。
【0082】
SDS−PAGEの結果は、ala−TFPIの切断を示さなかったが、3ヵ月間40℃に保存される製剤で吸収帯強度が減少することを示した。RP−HPLC分析の結果を図5に示した。図5は、40℃または30℃でインキュベートし、3ヵ月間−70℃で凍結した水溶性ポリリン酸塩製剤のクロマトグラムを示す。おおよそ12.2分で溶出したala−TFPIと、主要な種の前後いずれかにマイナーな種が溶出した。高温(30℃または40℃)でインキュベーションすると、試料中に目視可能な沈殿が生じた。目視可能な沈殿物を0.22μmフィルターで濾過することができ、それなりに、クロマトグラムは新たな種の出現なしにピーク面積の減少を示した。結果は、30℃または40℃での保存時の凝集によりala−TFPIが損失したことを示している。
【0083】
高温でのインキュベーション中に生ずる凝集は、6を超えるpHにおけるala−TFPIの腫瘍分解経路として確認された。RP−HPLCクロマトグラム(図5)上でピーク面積を計算することによって、可溶性ala−TFPIの濃度を算出した。残留する可溶性ala−TFPIの比率を算出するために、これらのデータを、−70℃保存した同一の製剤に対するデータに対して正規化した。結果を表2に示す。製剤1は水のみを含み、10mMヒスチジンによる対応の製剤(製剤2)よりも安定していた。30℃では、ヒスチジンの有無により観察された試料で、残留可溶性タンパク質に15%の違いがあった。30℃データは、ヒスチジンによる明らかな安定性の減少が、マンニトールおよび/またはショ糖の添加(製剤4、5、および7)によって補正され得ることを示した。マンニトールおよびショ糖は、ヒスチジン存在下でala−TFPIに対する弱い安定剤である。ala−TFPIとヒスチジンとala−TFPIとマンニトールまたはショ糖とのあいだの相互作用は、相加的であると思われる((Chen et al., J. Pharm Sci 85:419−422, 1996)。
【0084】
(表2)
【0085】
【表2】
ala−TFPI−ポリリン酸塩製剤の安定性は、pH依存度が高い。表2の30℃データは、pHが7から6.5に変化した場合、ala−TFPI安定性が1/2に減少することを示している(製剤2および3)。また、ポリリン酸塩製剤でのala−TFPI安定性は、ala−TFPI対ポリリン酸塩の比に依存している。表2の40℃データは、ala−TFPI対ポリリン酸塩の比が8:1から6:1、2:1に変化した場合に残留ala−TFPI率が0.9、2.7、および6.3になることを示している(製剤2、8、および9)。したがって、ala−TFPIは、ala−TFPI対ポリリン酸塩の比が2:1のときに最も安定である。
【0086】
30℃データは、ポリリン酸塩製剤(製剤1〜9)と高濃度ala−TFPI製剤(製剤10および11)とのあいだの差がほとんどないことを示している。40℃データは、高濃度TFPI製剤(製剤10および11)がTFPIポリリン酸塩製剤に比べて、より安定していることを示している。3ヶ月保存後、ポリリン酸塩製剤(製剤1〜9)が10%TFPI未満を残すだけであり、製剤10および11の残留TFPIは40%を上回る。したがって、長期安定性(例えば18〜23ヶ月におよぶ)を達成する代替え方法は、高濃度TFPI製剤を用いることである。
【0087】
(実施例4)
(凍結融解サイクルでのala−TFPIの安定性)
ala−TFPI製剤を−70℃で保存できるかどうかを決定するために、ala−TFPI−ポリリン酸塩(6.1w/w)製剤(表3)を凍結融解サイクルにかけた。表3に示すように、−70℃で凍結し融解した後、目視可能な沈殿物がいくつかのala−TFPI−ポリリン酸塩製剤で見られた。結果は、クエン酸塩およびリン酸塩緩衝剤が周囲温度保存および−70℃保存の両方でTFPI沈殿を生じ得ることを示す。
【0088】
(表3)
【0089】
【表3】
−70℃でpHが変化したかどうか判断するために、凍結状態のpHを、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)から購入したユニバーサル(Universal)pH溶液を使用して染料の色変化で測定した。ala−TFPI/ポリリン酸塩溶液が、イオン強度およびpHの変化に対して非常に感度が高かった。ala−TFPIは、pH5.8未満または80mMを上回るNaClのいずれかで処方された場合に、急激に沈殿した。ala−TFPIは、5mMNaClほど低いNaClの添加後、周囲温度で、最終的に沈殿物を形成した。NaClをさらに加えることで、沈殿がより速くなった。ala−TFPIが凍結融解の過程で沈殿した理由として、ポリリン酸塩存在下でのpHおよび塩の変化に対するala−TFPI/ポリリン酸塩の感受性が考えられる。クエン酸塩およびリン酸塩等の緩衝剤のpHは、緩衝剤系を作る異なる塩形態の部分的な沈殿のため、凍結と同時に減少する。凍結と同時に起こるpHまたは塩濃度の変化は、ala−TFPIとポリリン酸塩との相互作用を弱めることができる。その相互作用が弱められることで、ala−TFPIの沈殿が生ずる。同様に、周囲温度での塩の添加もまた、ala−TFPIとポリリン酸塩とのあいだの静電的相互作用を弱めてala−TFPI沈殿を生ずる。
【0090】
試験した緩衝剤の種類のなかで、L−ヒスチジンは凍結と同時にpHを最も安定化させた。L−ヒスチジンも、溶液中に単一の中性形状もしくはプロトン化形状として存在する。したがって、それはala−TFPIとポリリン酸塩との相互作用に、最小限の影響を及ぼさなければならないことから、好ましい緩衝剤である。
【0091】
(実施例5)
(凍結乾燥ala−TFPI製剤の開発)
(初期製剤スクリーニング)
凍結乾燥のための製剤のスクリーニングは、表4に示した18種類の製剤を用いた。製剤成分の選択は、(1)溶質(例えばL−アルギニン、クエン酸塩、L−ヒスチジン、イミダゾール、およびポリリン酸塩)のala−TFPIに対する可溶化効果、(2)凍結乾燥タンパク質を安定化させるガラス/マトリックスを形成する溶質(例えば、ショ糖)の傾向、(3)結晶ケイク構造を形成する溶質(例えば、マンニトールおよびグリシン)の能力にもとづいておこなわれる。ほとんどの製剤は、等張液よりもほぼ2倍である製剤2、3、および4を除いて、等張性に近い容量オスモル濃度を持つ。
【0092】
(表4)
【0093】
【表4】
凍結乾燥産物の目視可能な特性を、フリーズ・ドライ(凍結乾燥)後、検討した。ケイク形態の評価は、目視によりおこなった。結果を表5に示す。収縮または崩壊がほとんどないケイクは、「良好な」ケイク形態を保持すると考えられた。製剤10、12、13、16、および17は良好なケイク形態を示した。もちろん、結晶形成剤として、4種類がマンニトールを含み、1種類がグリシンを含んでいた。
【0094】
(表5)
【0095】
【表5】
残留水分は、乾燥状態にあるタンパク質を保存する上で決定要因の一つである。残留水分が1%(w/w)未満であることが好ましい。13種類の製剤に対して、カール・フィッシャー(Karl Fischer)滴定法(Angew. Chemie 48:394 (1935))で残留水分含有量を測定した。その結果を表5に示す。製剤9、10、12、13、および15は、残留水分が1%(w/w)未満であり、また製剤1ないし8は残留水分が1%(w/w)を上回った。
【0096】
凍結乾燥組成物の再構成は、「注射用水(Water For Injection)」(WFI)(すなわち、ヒト患者への注射についてFDAによって承認されている水)を添加することによっておこなった。大部分の凍結乾燥組成物が1分以内に溶け、上記18の再構成製剤のうち16が透明であった(表5)。再構成製剤9および10は混濁していた(表5)。このことは、凍結乾燥の過程でこれら2つの製剤でala−TFPI凝縮が生じたことを示唆している。
【0097】
再構成された製剤1〜9および13〜18もまた、生物活性についてはPTアッセイで、また可溶性ala−TFPIについてはCEX−HPLCによって、分析した。結果を表5に示す。製剤10、11、および12はこの分析には含まれなかった。なぜなら、これらの製剤のポリリン酸塩は陽イオン交換HPLCおよびPTアッセイによる干渉を受けたからである。
【0098】
RTアッセイの結果は、試験した15の製剤全てが生物学的活性を有し、また非凍結乾燥水性対照群と見分けがつかなかった。したがって、これらの製剤に含まれるala−TFPIは、凍結乾燥によるストレスに対して特に感受性があるわけではなかった。
【0099】
可溶性ala−TFPIの濃度をCEX−HPLC分析によって測定したところ、凍結乾燥試料と水性対照群との差は10%未満であった。ala−TFPI濃度の微妙な変化は、再構成の過程での小さな変化によって最も起こりやすかった。製剤13を例に挙げれば、5%容量増加が注射用水による最構築の際に生じた。
【0100】
(長期保存安定性)
凍結乾燥組成物(表5の1、2、4、5、および13〜18)の長期保存安定性について検討した。これらの製剤の試料を異なる温度で保存し、崩壊分析のために所定の時間間隔で取り出した。
【0101】
最初に、凍結乾燥組成物での凝集の度合いを調べた。可溶性タンパク質の損失をCEX−HPLC分析によって測定した。最大で3ヶ月間、40℃または50℃のいずれかで保存した試料について得られた結果を、表6に示す。ala−TFPIはこれらの製剤ではかなり安定であった。凍結乾燥組成物の生物活性をPTアッセイによって測定し、表6に示す。最大で3ヶ月間、40℃または50℃のいずれかで保存した試料は、再構成に対して初期の生物学的活性の約40〜100%を保持した。40℃または50℃で最大3ヶ月保存した試料は、再構成に対して初期の生物活性の約40〜100%を保持した(表6)。
【0102】
(表6)
【0103】
【表6】
*製剤の定義については表4を参照のこと。
【0104】
先に述べたように、陽イオン交換HPLC、逆相HPLC、サイズ除外HPLCによる分析を目的として、製剤13の選択をおこなった。図6は、3ヶ月にわたって異なる温度で保存されたこの製剤の試料に対するCEX−HPLC、RP−HPLC、およびSEC−HPLCのクロマトグラムである。
【0105】
ala−TFPIは、保持時間約18分のシグナル・ピークとしてCEX−HPLCから溶出した。CEX−HPLCクロマトグラム上のこのシグナル・ピークのプロフィールは、この製剤に関して全ての保存温度に対して不変のままであった(図6A)。
【0106】
ala−TFPIの溶離RPHPLCプロフィールは、かなり複雑だった。主要なala−TFPI種は19分で溶出し、2つの酸化されたala−TFPI種はわずか速く溶出し、いくつかのマイナーなアセチル化TFPI種はゆっくりと溶出した。図6Bに示すように、この溶出プロフィールもまた、種々の温度で3ヶ月にわたって保存される凍結乾燥ala−TFPIの試料として観察された。
【0107】
種々の温度で保存した凍結乾燥ala−TFPIのサイズ除外HPLC溶出プロフィールは、保存後、基本的に不変であった。8.25分で溶出する単量体種および11分頃に溶出される緩衝剤種について検出された変化は無かった。50℃の試料は緩衝剤ピークにいくつかの変化を示した(図6C).しかし、この変化は高温でのヒスチジン成分の酸化によって引き起こされたと思われる。
【0108】
促進的な安定性試験が製剤間での違いを示したにもかかわらず、2〜8℃で6ヶ月保存された異なる成分のリアルタイム安定性検査では陽イオン交換HPLC分析よる検出可能な変化は見られなかった。図7は、2〜8℃または50℃のいずれかで6ヶ月にわたる保存後、5つの製剤の試料に対するCEX−HPLCのクロマトグラムを示す。広範囲な分解が50℃保存の試料のいくつか(例えば、製剤4および17)で観察されたにもかかわらず、2〜8℃で保存された5つの試料では何ら変化が検出されなかった。
【0109】
ala−TFPIの凝集は、目視可能な沈殿を生ずる。この沈殿は0.22μmフィルターで取り除くことが可能である。したがって、元のピークの積分面積(integrated area)がHPLCクロマトグラム上に観察された。凝集以外の著しい変化は、これらのHPLCクロマトグラム上に検出されなかった。同様に、SDS−PAGEゲル上で分解種はなんら観察されなかった。したがって、凝集は、凍結乾燥状態にあるタンパク質とって主要な分解経路であった。
【0110】
(実施例6)
(凍結乾燥ala−TFPIの安定性に対する緩衝剤種、pH、およびala−TFPI濃度の効果)
凍結乾燥ala−TFPI組成物の安定性に対する緩衝剤種、pH、およびala−TFPI濃度の効果について調べた。緩衝剤種(L−ヒスチジン、クエン酸塩、およびイミダゾールを含む)を、10mM緩衝剤および4%(w/v)マンニトールを含む製剤においてpH6.5で比較した。表7は、40℃または50℃のいずれかで5週間にわたって保存した資料に対するCEX−HPLC分析よって測定された可溶性ala−TFPIの損失を示す。図7に示すように、L−ヒスチジンは可溶性ala−TFPIの保存にとって最高の緩衝剤種であり、その後にクエン酸塩が続いた。例えば、50℃での5週保存後にもかかわらず残っている可溶性ala−TFPIの分画は、L−ヒスチジン、クエン酸塩、およびイミダゾールについて、それぞれ95%、41%、および10%であった。このことは、この研究に用いた特定の凍結乾燥条件下でガラスを形成する傾向の順序と相関する。
【0111】
(表7)
【0112】
【表7】
別々の実験では、クエン酸塩およびリン酸塩の効果を、10mM緩衝剤(pH 6.0)、3%(w/v)L−アルギニン、および4%(w/v)マンニトールを含む2つの製剤で比較した。クエン酸塩は、ala−TFPI安定性を保存する上でリン酸塩よりも優れていた(図7)。
【0113】
凍結乾燥されたala−TFPIの安定性に対するpHの効果を、製剤13(表4)を使用して試験した。試験したpH範囲は、pH 6.5からpH 5.5までの狭い範囲であった。CEX−HPLC分析とPTアッセイとの結果を表7に示した。試験したpH値の範囲について安定性にわずかな差があった。低pH値(pH5.5)は、pH6.0またはpH6.5よりも凍結乾燥ala−TFPIの安定性が高かった。
【0114】
製剤13でのala−TFPIの安定性を、100μg/mlないし1,500μg/mlの範囲のタンパク質濃度で調べた。表8は、50℃で保存した試料と2〜8℃で保存した試料とのあいだのタンパク質濃度の違いを示す。高濃度のTFPIを含む試料は、わずかながら、ala−TFPI濃度が低い試料よりもわずかながら安定しており、50℃でのala−TFPIの損失がより少なかった。ala−TFPI濃度が250μg/mlを下回った場合にだけ、還元型の安定性が著しくなった。
【0115】
(表8)
【0116】
【表8】
(実施例7)
(ala−TFPIの凍結乾燥組成物に対するポリリン酸塩の安定化効果)
これらの研究では、ala−TFPIとポリリン酸塩との重量比2:1、6:1、および8:1を、TFPIの凍結乾燥組成物を安定化させるポリリン酸塩の能力について、試験した。緩衝剤(例えば、10mMヒスチジンおよび10mMイミダゾール)を製剤に添加してpHを7に上げた。マンニトールおよびショ糖を特定の製剤に添加してケイク強度を高めるとともに安定性を強化した。ala−TFPI濃度は、凍結乾燥に先立って20mg/mlに調製した。
【0117】
残留含水量およびケイク形態の結果を表9に示す。6つの製剤全てが1/2を下回る残留水分率を示す。ポリリン酸塩それ自体は、凍結乾燥にとって良好な薬剤と考えられ、なんら他の添加剤を必要とすることなくケイクをわずかながら収縮させる。ヒスチジンの添加によって、ケイク形態に対するさらなる改善は観察されなかった。しかし、製剤へのマンニトールおよびショ糖の添加によってケイク形態が改善された。後の実験では、4%(w/v)マンニトール単独による2:1の重量比でのala−TFPI−ポリリン酸塩製剤の乾燥凍結もまた、良好なケイク構造を生じた。したがって、マンニトールは製品をエレガンスなものにするために良好な結晶血清剤であることがわかった。
【0118】
(表9)
【0119】
【表9】
促進的な安定性試験を、40℃および50℃で実施した。試験される試料の典型的RP−HPLCクロマトグラムを図8に示した。水性製剤と同様に、高温で保存される間、凝集によるala−TFPIの損失が観察され、クロマトグラム上のピーク面積の減少をもたらした。
【0120】
試験される試料でala−TFPIの損失を示しているRP−HPLC分析の結果を表10に示した。表10に示す全ての製剤が水性高濃度製剤単独よりも安定していた。40℃での3ヶ月保存後、水性製剤試料は、PR−HPLCによれば可溶性TFPIが50%以下であり(表2)、一方全ての凍結乾燥製剤が含む可溶性ala−TFPIが80%を上回った。
【0121】
(表10)
【0122】
【表10】
表10に示す6つの製剤のなかで、ala−TFPI対ポリリン酸塩比が2:1である製剤が最良のala−TFPI安定性を示した。50℃で3ヶ月保存後、この製剤はRP−HPLCによる56%可溶性ala−TFPIをなおも含んでいたが、他の製剤ではほぼ完全に分解された。この製剤の50℃での分解カイネティクスを高濃度製剤と比較したものを図9に示す。凍結乾燥製剤は、この促進的な安定性試験で試験したように、水性製剤よりも安定性が約10倍高かった。
【0123】
示差走査熱量(DSC)測定によって、ヒスチジン/マンニトール/ショ糖製剤に含まれるポリリン酸塩のガラス転移点(Tg)は約−28℃であることがわかった。製品温度が−28℃未満であったことから、図10に示すように最初の11時間の初期乾燥中、ポリリン酸塩は、好ましくは凍結乾燥されると直ちにガラスを形成した。したがって、凍結乾燥された形状であるala−TFPIに対して提供されたポリリン酸塩の安定化は、なおもガラス安定化理論に従うことができ、該理論は強固なガラスが崩壊反応を除去する分子の拡散を著しく減らすことを述べる。
【0124】
ショ糖もまた、Tgが約32℃である良好なガラス形成剤であることから、ガラスを形成することでポリリン酸塩が単独で安定化できるかどうかを調べることが、興味深かった。別の実験では、2つの製剤(20mg/ml ala−TFPI、10mg/mlポリリン酸塩、10mM L−ヒスチジン(pH7)、および4%マンニトールを含み、1%ショ糖を含むものと含まないものとからなる)を調製して凍結乾燥した。両方の製剤とも類似のケイク形態と低残留水分量(1%ショ糖無しの場合0.69%、1%ショ糖を含む場合、0.49%)とを示した。ショ糖は、凍結乾燥のあいだ、TFPIに対してほとんど影響を及ぼさなかった。
【0125】
これらの2つの製剤の安定性を、高温での保存に対してRP−HPLCによるタンパク質濃度およびPTアッセイによる生体外(in vitro)比活性の両方の減少を試験することで、比較した。表11に示すように、これらの2つの製剤についての安定性の違いは、意味がない。これらの製剤は両方とも、60℃、二週間にわたる保存の後、ala−TFPIが2%損失したことが示された。50℃で4週間、ショ糖を含む製剤およびショ糖を含まない製剤は、それぞれala−TFPI損失が12%および18%であった。また、50℃で4週間のこれら2つの製剤の比活性を比較した。
【0126】
(表11)
【0127】
【表11】
(実施例8)
(凍結乾燥のためのala−TFPI製剤の調製)
ala−TFPI製剤の製造は、しばしば緩衝剤交換プロセスを必要とする。バルクala−TFPIは、例えば、10mg/mlタンパク質、2M尿素、20mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、および150mM NaClを含むものであってもよい。凍結乾燥された製剤は、通常、尿素またはNaClを含まない。尿素含有パルク由来のala−TFPIを製剤緩衝剤(表4)のなかへ処理するために、尿素およびNaClを緩衝剤交換方法(例えば、透析、ゲル濾過、またはダイアフィルトレーション)によって取り除く必要がある。これらの方法のなかで、ダイアフィルトレーションは製造の観点から好ましい。なぜなら、大量のala−TFPIが製造に関わっているからである。
【0128】
(一工程ダイアフィルトレーション)
いくつかのpH6または6.5製剤緩衝剤に対して直接入れられるala−TFPIバルク(例えば、10mg/mlタンパク質、2M尿素、20mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、および150mM NaClを含む)のダイアフィルトレーションは、広範なタンパク質沈殿をもたらした。表12に示すように、pH6または6.5のいずれかによる4種類の緩衝剤へのダイアフィルタレーションによって、混濁状溶液または低収率のいずれかが得られた。しかし、10mM L−グルタミン酸塩、4%(w/v)マンニトール、および1%(w/v)ショ糖を含むpH4緩衝剤へのダイアフィルトレーションによって、高収率で混濁溶液が得られた。
【0129】
(表12)
【0130】
【表12】
ダイアフィルトレーションで使用されるala−TFPI濃度(1mg/ml)は、出発緩衝剤と最終製剤緩衝剤との両方の溶解限度(5−10mg/mlの溶解度)よりもかなり低かった。これらの2つの緩衝剤系は、明らかに2つの異なる機構でala−TFPIを可溶化する。開始緩衝剤は尿素および塩を含みイオン強度が比較的高く、一方製剤緩衝剤のいくつかはイオン強度が低い。ダイアフィルトレーションは、比較的遅いプロセスである。バルク緩衝剤の尿素および塩が徐々にダイアフィルトレーションによって取り出され、製剤緩衝液成分は徐々にダイアフィルトレーションによって取り込まれる。ダイアフィルトレーションの過程で、ala−TFPI可溶性またはala−TFPI安定性のいずれかに影響を及ぼす一時的な溶媒条件をala−TFPIが経験することができる。
【0131】
本発明者らは、緩衝剤の各容量で、ダイアフィルトレーション容器でのala−TFPI製剤の混濁度変化を調べた。出発製剤は、1ないし1.5mg/mlのTFPIを含む1M尿素、10mMリン酸ナトリウム(pH7)、および125mM NaClである。結果を表13に示す。
【0132】
(表13)
【0133】
【表13】
*「+」は、わずかに混濁した溶液を示し、「++」は混濁溶液を示し、さらに「−」は透明な溶液を示す。
【0134】
pH4でダイアフィルトレーションしたAla−TFPIは、第1または第2の容量の緩衝剤交換での混濁度の一次的変化を示した。すなわち、それは透明になり、ダイアフィルトレーションの最後までそのまま残った。酢酸ナトリウムpH5.5緩衝剤を用いて、混濁度の変化が1、2、および5容量の緩衝剤交換で観察された。pH6またはpH6.5を用いたダイアフィルトレーションは、3%(w/v)L−アルギニンを含む溶液を除いて、ダイアフィルトレーションの後期で混濁溶液を生じた。したがって、低pHとL−アルギニンとがダイアフィルトレーション中にala−TFPIが沈殿するのを防いだ。
【0135】
(2工程ダイアフィルトレーション)
ダイアフィルトレーション中のala−TFPIの沈殿を、pHが約4である緩衝剤を用いることによって防ぐことができる。pHが約4である緩衝剤がバルク緩衝剤と最終製剤緩衝剤との間の橋渡しとして用いられるかどうかについて調べるために、二工程のダイアフィルトレーション実験をおこなった。第1の工程で、4容量の緩衝剤交換のためのpH4緩衝剤に対して、TFPIをダイアフィルトレーションした。第2の工程では、ダイアフィルトレーション緩衝剤が製剤緩衝剤に切り替えられ、6容量の緩衝剤交換が実行された。いつかの2工程ダイアフィルトレーション緩衝剤系でのダイアフィルトレーション中での混濁度の変化を記録して表14に示した。
【0136】
pH4緩衝剤は、好ましくはL−グルタミン酸塩緩衝剤である。
グルタミン酸塩緩衝剤による4通りの容量変化の後、適当な溶解剤による所望の最終産物緩衝剤は、第2の工程として導入される。この過程は、処理の間、生じたタンパク質のかなり少ない損失で、透明な配合最終産物を産生する。
【0137】
一実施形態では、上記出発溶液は、1mg/mlのala−TFPEを含む1M尿素、10mMリン酸ナトリウム、125mM NaCl(pH7)であり、最初に4容量交換用のL−グルタミン酸塩緩衝剤(10mM L−グルタミン酸/L−グルタミン酸塩、4%(w/v)マンニトール、1%(w/v)ショ糖、pH4.0)によってダイアフィルトレーションをおこない(工程1)、つぎに追加の6容量交換のためのL−ヒスチジンもしくはイミダゾール緩衝剤によってダイアフィルトレーションをおこなった(工程2)。ダイアフィルトレーションした溶液の透明度を記録した。ダイアフィルトレーションした溶液を0.22μmフィルター・ユニットで濾過し、その濾過液のala−TFT濃度を紫外線吸光度で測定してダイアフィルトレーション前の濃度を比較することで、再生を計算した。結果を表Bに示す。
【0138】
(表B)
【表B】
【0139】
この手順を、適当な商業規模での治療的用途のためにTFPIまたはTFPI改変体の液体(または溶液)製剤の調製のために、用いることができる。
【0140】
(表14)
【0141】
【表14】
*「+」は、わずかに混濁した溶液を示し、「++」は混濁溶液を示し、さらに「−」は透明な溶液を示す。
【0142】
表14に示すように、第1工程のダイアフィルトレーションが相対的に強イオン強度の緩衝剤(例えば10mM Lグルタミン酸塩、pH4,および140mM NaCl)を用いた場合、ダイアフィルトレーション中になんら一時的な混濁度変化が観察されなかった。しかし、ala−TFPIが第2工程のダイアフィルトレーション(低イオン強度の緩衝剤を使用)で沈殿した。一方、第1工程のダイアフィルトレーションで低イオン強度緩衝剤(例えば、10mM L−グルタミン酸塩、pH4、4%(w/v)マンニトール、および1%(w/v)ショ糖)を用いた場合、約1容量の緩衝剤交換で、ala−TFPI溶液が短い一時的な混濁工程を通過した後、なんら混濁度変化は観察されず、その後ダイアフィルトレーションの間、混濁度変化は検出されなかった。したがって、低イオン強度pH4緩衝剤を用いることで、2工程ダイアフィルトレーション・プロセスは透明な配合最終産物を産生する。
【0143】
(実施例9)
(50℃促進化安定性アッセイ)
促進的な安定性テストを用いて、ala−TFPIの種々の濃度の安定性を測定した。試料を、20mMクエン酸ナトリウム(pH5.0)および300mMアルギニンに調製した。Ala−TFPI濃度は、約1mg/mlから約7.4mg/mlの範囲とした。水性試料を50℃で最大約6ヶ月間インキュベートした。毎月、可溶性ala−TFPI残留率を各濃度に対して測定した。可溶性ala−TFPIの測定は、陽イオン交換HPLCでおこなった。その結果を図11に示す。図11に示すように、ala−TFPIは約4mg/ml未満の濃度でわずかにより安定している。
【0144】
(実施例10)
(生き残り研究)
マウスの盲腸結紮および穿刺研究をおこない、新たに調製された臨床等級ロットの組み換え型ala−TFPI(rTFPI)(TFPI92)と、部分的に脱アミド化および酸化された臨床等級材料(TFPI78)とを比較した。このモデルは直接的な糞便汚染および盲腸壊死による多微生物性腹腔内および全身性感染を誘導し、密接に人間の腹腔内敗血症を模倣する(Opal et al., Critical Care Medicine 29, 13−18, 2001)。
【0145】
両方のTFPI標品の調製は、2003年8月13日出願の米国特許出願第60/494,546号、2003年10月8日出願の米国特許出願第60/509,277号、および2003年10月20日出願の米国特許出願第60/512,199号の記載通りにおこなった。これらの出願の各々の内容全体を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。rTFPI78、rTFPI92、または希釈剤対照群のいずれも、48時間(SQ q12時間x4用量)にわたる盲検形式で与えられた。外科的手技前およびその48時間後に採血し、定量的菌血、内毒素、およびサイトカイン(腫瘍壊死因子アルファおよびインターロイキン‐6)のレベルを測定した。動物を毎日観察し、死亡が生じたらそれを記録した。全ての動物に対して、実験期間の終わりに、器官損傷および定量的細菌学を組織学的に明らかにするために剖検評価をおこなった。
【0146】
カプラン−マイヤー(Kaplan−Meier)生存プロットを図12に示す。部分的に酸化したもの(rTFPIの脱アミド化形態)を投与されたマウスと比較して、新たに調製されたrtFPIを投与されたマウスは、生存上著しく有利であった。両方のrTFPI群は、希釈剤を投与された対照群のマウスよりも餌をよく食べた。予想通りに、見せかけの手術(疑似手術)をしたマウス(結紮および穿刺以外の盲端の識別による外科的処置)は、7日の研究期間を生き残った。2通りのrTFPI処置群間で、菌血症、内毒血症、またはサイトカイン産生の第2のエンドポイントに有意差が認められなかった。
【0147】
この研究によれば、TFPIが細菌、内毒素、またはサイトカインの血中濃度によっては説明されない機構によって生存上の利点を提供しているように思われる。脱アミドされた酸化型のTFPIによって与えられる防御は、新たに調製されたTFPIよりも劣る。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は、pH7で水性製剤に調製される試料の安定性を試験するために、ala−TFPIの陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。水性製剤は、150μg/mlのala−TFPI、10mMのリン酸ナトリウム(pH 7)、150mMのNaCl、および0.015%(w/v)のポリソルベート−80を含んだ。この水性製剤を、40℃で0、3、5、10、または20日間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図2】図2は、水性製剤における40℃でのpHの関数としての可溶性ala−TFPIの損失に関する一次反応定数を示す。水性製剤は、150μg/mlのala−TFPI、10mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、および0.015%(w/v)のポリソルベート−80を含んだ。
【図3】図3は、pH4で水性製剤に調製した試料の安定性を試験するためのala−TFPIの陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。水性製剤は、150μg/mlのala−TFPI、10mMのリン酸ナトリウムpH4、150mMのNaCl、および0.015%(w/v)のポリソルベート−80を含んだ。水性製剤を、40℃で0、3、5、10、または20日間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図4】図4は、種々のpH値で水性製剤に調製される試料の安定性を試験するために、ala−TFPIの陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。水性製剤は、150μg/mlのala−TFPI、10mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、および0.015%(w/v)のポリソルベート−80を含んだ。水性製剤を、40℃で10日間保存した。pH値はpH4、5、6、または7である(それぞれ上から下まで)。
【図5】図5は、ala−TFPI安定性に対するポリリン酸塩の効果について逆相高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。水性製剤は、5mg/mlのala−TFPI、10mMのL−ヒスチジン(pH7)、および2.5mg/mlのポリリン酸塩を含んだ。水性製剤を40℃、30℃または−70℃で3ヶ月間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図6A】図6Aは、凍結乾燥組成物として調製したala−TFPI試料の陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー・クロマトグラムを示す。これらの凍結乾燥組成物は、0.5mg/mlのala−TFPI、10mMのL−ヒスチジン(pH6)、4%(w/v)のマンニトール、および1%(w/v)のショ糖を含んだ。凍結乾燥組成物を、50℃、40℃、30℃、または−70℃で3ヶ月間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図6B】図6Bは、凍結乾燥組成物として調製したala−TFPI試料の逆相高速液体クロマトグラフィー・クロマトグラムを示す。これらの凍結乾燥組成物は、0.5mg/mlのala−TFPI、10mMのL−ヒスチジン(pH6)、4%(w/v)のマンニトール、および1%(w/v)のショ糖を含んだ。凍結乾燥組成物を、50℃、40℃、30℃、または−70℃で3ヶ月間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図6C】図6Cは、凍結乾燥組成物として調製したala−TFPI試料のサイズ除外高速液体クロマトグラフィー・クロマトグラムを示す。これらの凍結乾燥組成物は、0.5mg/mlのala−TFPI、10mMのL−ヒスチジン(pH6)、4%(w/v)のマンニトール、および1%(w/v)のショ糖を含んだ。凍結乾燥組成物を、50℃、40℃、30℃、または−70℃で3ヶ月間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図7A】図7Aは、種々の凍結乾燥組成物として調製された試料(製剤2、4、13、15、および17)の安定性を試験するためのala−TFPIの陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。製剤の組成は表4を参照せよ。凍結乾燥組成物は50℃で6ヶ月間保存した。
【図7B】図7Bは、種々の凍結乾燥組成物として調製された試料(製剤2、4、13、15、および17)の安定性を試験するためのala−TFPIの陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。製剤の組成は表4を参照せよ。凍結乾燥組成物は2〜8℃で6ヶ月間保存した。
【図8】図8は、凍結乾燥組成物として調製される試料の安定性を試験するためのala−TFPIの逆相高速液体クロマトグラフィーのクロマトグラムを示す。凍結乾燥組成物は、5mg/mlのala−TFPI、10mMのL−ヒスチジン(pH7)4%(w/v)のマンニトール、1%(w/v)のショ糖、および2.5mg/mlのポリリン酸塩のを含んだ。凍結乾燥組成物は、50℃、40℃、または−70℃で3ヶ月間保存した(それぞれ上から下まで)。
【図9】図9は、高濃度のala−TFPI水性製剤と比較したala−TFPI凍結乾燥製剤の安定性比較を示す。このグラフでは、50℃での保存後に残存する可溶性ala−TFPIの比率が示されている。
【図10】図10は、ala−TFPIと種々のポリリン酸塩製剤とを含む組成物の凍結乾燥のための温度記録を示す。実線は、凍結乾燥中の保存温度を示す。点線は、ala−TFPI/ポリリン酸塩製剤の平均温度であり、この製剤が入ったバイアル(5cc)に挿入された4本の温度プローブで測定した。
【図11】図11は、最大で6ヶ月間にわたり50℃でインキュベートした後の可溶性ala−TFPI残存率を示す。水性製剤は、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)および300mMアルギニン中に種々の量のala−TFPIを含んだ。示した時間にわたる50℃でのインキュベーション後、可溶性ala−TFPIを陽イオン交換HPLCでアッセイし、溶液に残存する可溶性ala−TFPI量を測定した。
【図12】図12は、カプラン・マイヤー生存プロットであり、X軸は生存、Y軸は時間(h)を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物であって、(1)TFPIまたはTFPI改変体、および(2)炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤を含有し、該凍結乾燥組成物が約45%以上の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項2】
TFPI改変体を含有する請求項1に記載の凍結乾燥組成物であって、該TFPI改変体がTFPI(配列番号1)に対して少なくとも約70%以上の相同性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項3】
前記TFPI改変体がala−TFPIである、請求項2に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項4】
前記ガラス形成剤が、単糖類、二糖類、三糖類、天然に存在するアミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の凍結乾燥組成物であって、約45%以上〜約95%以上、約70%以上〜約95%以上、および約85%以上〜約96%以上の凝集安定性からなる群より選択される範囲の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の凍結乾燥組成物であって、約45%以上〜約96%以上の範囲の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項7】
凍結乾燥の前に、前記TFPIまたはTFPI改変体が、炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤を含む水性処方物中に存在し、該水性処方物が約4〜約8のpHを有する、TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物。
【請求項8】
前記水性処方物が約50mM〜約600mMのガラス形成剤を含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記水性処方物が、約5mM〜約600mMの緩衝剤をさらに含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記緩衝剤が、リン酸塩、コハク酸塩、グルタミン酸塩、イミダゾール、クエン酸塩、ヒスチジン、グリシン、アルギニン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記水性処方物のpHが約5.5〜約6.5である、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記水性処方物が、以下:
約10mg/ml以下の前記TFPIまたはTFPI改変体、
約1mg/ml以下の前記TFPIまたはTFPI改変体、および
約0.2mg/ml以下の前記TFPIまたはTFPI改変体
からなる濃度の群から選択されるTFPIまたはTFPI改変体の濃度を含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
前記水性処方物が、以下:
約300mMのアルギニンおよび約20mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約5.5である、処方物;
約3%(w/v)のアルギニンおよび約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約2%(w/v)のリジンおよび約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約8.5%(w/v)のショ糖、約0.1%(w/v)のポリリン酸塩、および約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約8.5%(w/v)のショ糖および約10mMのヒスチジンからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;ならびに
約8.5%(w/v)のショ糖および約10mMのイミダゾールからなる処方物であって、pHが約6.5である、処方物;
の群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
前記水性処方物がさらに結晶形成剤を含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項15】
前記結晶形成剤が、マンニトール、アラニン、グリシン、NaCl、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記水性処方物が、約0.5%(w/v)〜約16%(w/v)の結晶形成剤を含有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記水性処方物が、以下:
約3%(w/v)のアルギニン、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約3%(w/v)のアルギニン、約2%(w/v)のグリシン、および約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約3%(w/v)のアルギニン、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのL−ヒスチジンからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約1%(w/v)のショ糖、約2%(w/v)のグリシン、および約10mMのヒスチジンからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのイミダゾールからなる処方物であって、pHが約6.5である、処方物;ならびに、
約1%(w/v)のショ糖、約2%(w/v)のグリシン、および約10mMのイミダゾールからなる処方物であって、pHが約6.5である、処方物
の群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物であって、(1)TFPIまたはTFPI改変体、および(2)クエン酸塩緩衝剤を含有し、約45%以上の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の凍結乾燥組成物であって、約45%以上〜約96%以上の範囲の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項20】
TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物であって、(1)TFPIまたはTFPI改変体、(2)硫酸塩、および(3)リン酸緩衝剤を含有し、約45%以上の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の凍結乾燥組成物であって、約45%以上〜約96%以上の範囲内の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項1】
TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物であって、(1)TFPIまたはTFPI改変体、および(2)炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤を含有し、該凍結乾燥組成物が約45%以上の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項2】
TFPI改変体を含有する請求項1に記載の凍結乾燥組成物であって、該TFPI改変体がTFPI(配列番号1)に対して少なくとも約70%以上の相同性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項3】
前記TFPI改変体がala−TFPIである、請求項2に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項4】
前記ガラス形成剤が、単糖類、二糖類、三糖類、天然に存在するアミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の凍結乾燥組成物であって、約45%以上〜約95%以上、約70%以上〜約95%以上、および約85%以上〜約96%以上の凝集安定性からなる群より選択される範囲の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の凍結乾燥組成物であって、約45%以上〜約96%以上の範囲の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項7】
凍結乾燥の前に、前記TFPIまたはTFPI改変体が、炭水化物またはアミノ酸ガラス形成剤を含む水性処方物中に存在し、該水性処方物が約4〜約8のpHを有する、TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物。
【請求項8】
前記水性処方物が約50mM〜約600mMのガラス形成剤を含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記水性処方物が、約5mM〜約600mMの緩衝剤をさらに含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記緩衝剤が、リン酸塩、コハク酸塩、グルタミン酸塩、イミダゾール、クエン酸塩、ヒスチジン、グリシン、アルギニン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記水性処方物のpHが約5.5〜約6.5である、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記水性処方物が、以下:
約10mg/ml以下の前記TFPIまたはTFPI改変体、
約1mg/ml以下の前記TFPIまたはTFPI改変体、および
約0.2mg/ml以下の前記TFPIまたはTFPI改変体
からなる濃度の群から選択されるTFPIまたはTFPI改変体の濃度を含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
前記水性処方物が、以下:
約300mMのアルギニンおよび約20mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約5.5である、処方物;
約3%(w/v)のアルギニンおよび約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約2%(w/v)のリジンおよび約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約8.5%(w/v)のショ糖、約0.1%(w/v)のポリリン酸塩、および約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約8.5%(w/v)のショ糖および約10mMのヒスチジンからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;ならびに
約8.5%(w/v)のショ糖および約10mMのイミダゾールからなる処方物であって、pHが約6.5である、処方物;
の群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
前記水性処方物がさらに結晶形成剤を含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項15】
前記結晶形成剤が、マンニトール、アラニン、グリシン、NaCl、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記水性処方物が、約0.5%(w/v)〜約16%(w/v)の結晶形成剤を含有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記水性処方物が、以下:
約3%(w/v)のアルギニン、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約3%(w/v)のアルギニン、約2%(w/v)のグリシン、および約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約3%(w/v)のアルギニン、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのクエン酸ナトリウムからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのL−ヒスチジンからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約1%(w/v)のショ糖、約2%(w/v)のグリシン、および約10mMのヒスチジンからなる処方物であって、pHが約6である、処方物;
約1%(w/v)のショ糖、約4%(w/v)のマンニトール、および約10mMのイミダゾールからなる処方物であって、pHが約6.5である、処方物;ならびに、
約1%(w/v)のショ糖、約2%(w/v)のグリシン、および約10mMのイミダゾールからなる処方物であって、pHが約6.5である、処方物
の群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物であって、(1)TFPIまたはTFPI改変体、および(2)クエン酸塩緩衝剤を含有し、約45%以上の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の凍結乾燥組成物であって、約45%以上〜約96%以上の範囲の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項20】
TFPIまたはTFPI改変体の凍結乾燥組成物であって、(1)TFPIまたはTFPI改変体、(2)硫酸塩、および(3)リン酸緩衝剤を含有し、約45%以上の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の凍結乾燥組成物であって、約45%以上〜約96%以上の範囲内の凝集安定性を有する、凍結乾燥組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−500942(P2008−500942A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500806(P2006−500806)
【出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/000235
【国際公開番号】WO2004/062646
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/000235
【国際公開番号】WO2004/062646
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】
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