組織抽出システム
【課題】画像を用いて組織を効率よく抽出する。
【解決手段】組織抽出システム10は、画像を用いて被検体の組織を抽出するシステムであって、座標軸をそろえて複数のシークエンスを撮像する撮像部11と、撮像部11により撮像された複数のシークエンスを、そのシークエンスを座標軸にとったヒストグラム空間に変換する変換部12と、変換部12により変換されたヒストグラムの分布から被検体の組織を抽出する抽出部13とを備える。
【解決手段】組織抽出システム10は、画像を用いて被検体の組織を抽出するシステムであって、座標軸をそろえて複数のシークエンスを撮像する撮像部11と、撮像部11により撮像された複数のシークエンスを、そのシークエンスを座標軸にとったヒストグラム空間に変換する変換部12と、変換部12により変換されたヒストグラムの分布から被検体の組織を抽出する抽出部13とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を用いて被検体の組織を抽出する組織抽出システム及びその三次元表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI(Magnetic Resonance Imaging system)では、T1強調画像やT2強調画像のように、組織のコントラストの違う様々なMRI画像(以下、それぞれの画像を「MRIシークエンス」又は「シークエンス」という)をセットで撮影するのが一般的である(特許文献1参照)。当初はMRI画像を白黒のフィルムに焼いて診断に利用していたので、ディスプレーで診断するようになった現在も白黒画像をもとに診断している。
【0003】
MRI信号は検査ごとに信号値が変化するので信号値のみで組織の診断はできないとされてきた。そこで、筋肉の信号値と比較して信号値が高い場合をHigh、低い場合をLow、同程度の場合をIsoと表現して診断に利用している。具体的には、MRI画像上で筋肉よりも白い部位をHigh、黒い部位をLow、同じ程度の部位をIsoと表現する。これにより、T1強調画像でHighでありT2強調画像でHighである部位は脂肪成分、T1強調画像でLowでありT2強調画像でHighである部位は水成分、というように推測することができる。
【0004】
診断能力を上げるためにT2*(スター)強調画像や拡散強調画像やT2脂肪抑制など、特定の組織のコントラストがつく様々なシークエンスが開発され、現在も増加しつつある。現在では、図11に示すように、目的に合わせて複数ののシークエンスを撮像し、それぞれのシークエンスを白黒画像で見比べることにより診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平7−505805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した通り、現在では、複数のシークエンスを見比べて組織を特定するのが通常である。しかしながら、このような方法によると、複数のシークエンスをバラバラにみて頭の中で重ね合わせる作業が必要であり、即座に組織を特定することが難しい場合もあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、画像を用いて組織を効率よく抽出することができる組織抽出システム及びその三次元表示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、画像を用いて被検体の組織を抽出する組織抽出システムであって、座標軸をそろえて複数のシークエンスを撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された複数のシークエンスを、そのシークエンスを座標軸にとったヒストグラム空間に変換する変換部と、前記変換部により変換されたヒストグラムの分布から被検体の組織を抽出する抽出部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のシークエンスがヒストグラム空間に変換されて組織分離効率が高まるため、組織を効率よく抽出することができる組織抽出システム及びその三次元表示方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における組織抽出システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるヒストグラム空間の処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態におけるヒストグラム空間への展開を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における島の解析手法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態における島の解析手法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態における島の中心位置を示す図である。
【図7】本発明の実施形態における表示部における画面表示例を示す図である。
【図8】錐体細胞の組み合わせと色の関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態における組織分類を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態におけるWLとWWを説明するための図である。
【図11】MRI読影を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
(1)組織抽出システムの構成
図1は、本発明の実施形態における組織抽出システム10の構成図である。この組織抽出システム10は、MRI画像を用いて被検体の組織を抽出するシステムであって、機能的には、撮像部11と、変換部12と、抽出部13と、加工部14と、メモリ15と、表示部16とを備えている。もちろん、情報を入力するための入力部や他のシステムと通信するための通信部などその他の処理部も備えているが、ここでは図示していない。
【0013】
撮像部11は、座標軸をそろえて複数のMRIシークエンスを撮像するMRI等である。変換部12は、撮像部11により撮像された複数のMRIシークエンスを、そのMRIシークエンスを座標軸にとったヒストグラム空間に変換する。抽出部13は、変換部12により変換されたヒストグラムの分布から被検体の組織を抽出する。加工部14は、抽出部13により抽出された結果を用いて各種の加工処理を行う。メモリ15は、各処理部の処理結果など各種データを記憶する。表示部16は、メモリ15に記憶されたデータを表示する液晶ディスプレイ等である。変換部12、抽出部13、加工部14、メモリ15、表示部16は画像処理ワークステーションに搭載することができる。画像処理ワークステーションは高度な画像処理を専門に行うための装置であるが、詳細については後述する。
【0014】
(2)CT画像の特徴と画像処理
組織抽出システム10の構成を詳しく説明する前に、CT(Computed Tomography)の機能を概観して画像処理が重要となってきた経緯について説明する。レントゲン写真は、被検体に放射線を照射し、被検体の後ろ側に放射線を感知するフィルムをおいて撮影するという二次元のシステムである。CTは、放射線源と受信機を回転させながら撮影してデータを計算することで断面像を作成するシステムである。1990年代まではスライス厚が3−5mm厚のデータであったため、一度の検査で画像枚数が100枚を超えることは少なく、画像をフィルムに焼いて診断していた。
【0015】
その後、ヘリカルCTが開発されて、スライス厚が0.5−1mmとなり、検出器の多列化によって被爆量が減少したことから撮影時間が短くなった。たとえば、頭から足までの撮影は10数秒で可能となり、画像枚数も1000枚を超えるようになった。そのおかげで交通外傷などにより意識がなく損傷部位が分からない場合でも、頭部・胸部・腹部・骨盤などを一度に診断することが可能となり、救命率が上昇した。しかし、1000枚以上の画像がある場合、それら画像をフィルムに焼くのはコスト的に問題があるため、医用画像表示用に開発された医療用ディスプレーの普及が進んでいる。
【0016】
一方、複雑な骨折を診断する場合、平面画像の集合であるCT画像を並べて頭の中で骨の立体構造を構築するのは難しいので、CT画像をもとに三次元画像を作成する需要が発生した。スライス厚が厚い時代には解像度の低い三次元画像しか作成できなかったが、スライス厚が薄くなった結果、非常に美しい三次元画像を作成できるようになった。
【0017】
CT画像の信号はハンスフィールド値(HU値)といい、MRIと違って水が0、空気が−1000となるように標準化されているため、筋肉や骨の信号分布はあらかじめ分かっている。骨の信号分布(だいたい200以上)の部位だけを抽出すれば骨の領域だけが得られ、その情報をもとに骨の三次元画像を自動で作成することができる。同様に内臓や筋肉などの信号分布も分かっているため、特定組織の三次元画像を自動で作成することも可能である。そのため、信号分布が他の組織と重なっていない組織ほど三次元化が容易である。血管などは筋肉などの軟部組織の信号分布と似ているので、血管だけを抽出するのは困難である。そこで、人体に安全でCT値が高い造影剤をCT撮影直前に静脈投与することで血管のコントラストをつけることができる。造影剤の信号値は骨の信号分布と似ている。そのため、造影CT画像だけから血管だけを抽出することは困難であるが、造影前のCT画像と造影後のCT画像を逆算することで血管だけを抽出することができる。このような高度な画像処理を専門に行っているのが画像処理ワークステーションである。なお、MRIでも造影検査は可能である。
【0018】
(3)医療画像規格の標準化と画像処理ワークステーション産業の出現
次に、臨床画像市場の歴史を概観して現状を把握する。従来、医療画像メーカーは独自規格の機器ばかり製造し、各社が囲い込みを行った結果、個々の医療機関では同じメーカーの機器しか使用できずコストも高くついた。そこで、アメリカの放射線専門医会と北米電子機器工業会が協議してDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格を定めた。その結果、違うメーカー同士でも画像のやり取りを行うことができるようになった。
【0019】
これによる市場への影響は二つある。一つ目は市場規模が拡大したことである。DICOM規格に則れば、欧米でもアジアでも売ることができるため市場が急激に拡大した。二つ目はメーカーの分業化が進んだことである。MRI、CT、画像サーバー、画像処理ワークステーション、医療用ディスプレー会社と専門会社に細分化していった。これら二つの要素があいまって世界中に医療画像関係のメーカーが出現し、技術革新の速度が速まった。現在、日本の大病院では画像処理ワークステーションが導入され、CT、MRIを撮影する部門と三次元などの画像処理の部門とに分業されている。
【0020】
画像処理ワークステーション会社の収益源はサポート費用である。通常は高機能PCに専用ソフトを搭載した状態で出荷するが、PCの性能は数年おきに上昇するため、購入時に最速であったとしてもすぐに陳腐化する。そのため、数年おきに更新可能とし、保守点検料で稼ぐビジネスモデルが多い。他社と差別化するためいろいろな画像処理機能を追加して市場価値を高めている。初期にはCTの三次元化などの機能だけであったが、近年はMRIの画像処理機能も搭載するようになってきた。本発明は、このような画像処理ワークステーションに搭載される画像処理ソフトにアドインとして追加することができる。
【0021】
(4)MRI画像をCT画像のように画像処理する手法
ヒストグラム空間を用いたMRI画像信号の標準化について説明する。MRI画像の問題点は信号が検査ごとに変化する相対値であることである。すなわち、CT画像の信号値は水を0、空気を−1000として標準化されているため、特定の組織を信号値だけを頼りに抽出することができる。一方、MRIでは、信号値だけから特定の組織を自動抽出することは困難であり、自動抽出をするには組織ごとの信号分布を知る必要がある。
【0022】
そこで、本発明の実施形態における組織抽出システム10では、MRI画像信号のヒストグラム(度数分布)から組織を抽出する手法を採用している。すなわち、HU値のように特定の物質を撮影した信号値から標準化するのではなく、信号分布から組織を分離するのが目標である。
【0023】
MRIで単一のシークエンスのヒストグラムを作成すると、複数のピークが連なった分布を得ることができる。しかし分布の重なりが広いため、単一のシークエンスのヒストグラム分布から、それぞれの組織分布を分離することが困難である。それぞれの組織信号分布が広く、お互いの信号分布が重なっていることが原因である。そのため、ヒストグラムから組織を分離するのは困難とされてきた。
【0024】
しかし、座標軸をそろえて複数のシークエンスを撮影すれば、そのヒストグラムから組織を分離することが可能となる。「座標軸をそろえて撮影する」とは、被検体の撮像条件(撮像範囲や撮像倍率など)を固定した状態で撮影することを意味する。各シークエンスの信号値を(x,y,z)=Sn(Sは指定された座標での信号値、nはシークエンス番号)とすると、それぞれのシークエンスを統合すれば(x,y,z)=(S1,S2,・・・,Sn)となる。そこで、シークエンスをそれぞれ座標軸にとったヒストグラム空間H(S1,S2,・・・,Sn)に変換する。これにより、各シークエンスでは信号分布が重なっていた組織もヒストグラム空間では分離される。すなわち、1変量では区別できない2群も多変量にすると区別できることがある。本発明では、このような多変量解析の手法を用いることで、複数のMRIシークエンスをヒストグラム空間に変換して組織分離効率を高めることを可能としている。
【0025】
撮影した部位が分かっていれば、その部位内にある組織の種類が分かるため、ヒストグラム空間内での信号パターンからどの分布が特定の組織であるかを同定することができる。ヒストグラム空間内での信号の集まりを「島」とすると、それぞれの島がどの組織であるか分かることになる。撮影シークエンスの微妙な設定によって島の厳密な位置は変化するが分布パターンは変わらない。たとえば、膝関節でT1強調画像、T2強調画像、T2*(スター)強調画像を撮影してヒストグラム空間に変換すると、水分・骨髄・脂肪・筋肉などの島が形成される。年齢による筋肉の変性などがあった場合、島と島の距離は変わるが、島の位置の順番関係が変わるほどではない。この特性を用いて信号値の標準化と組織抽出を行うことができる。
【0026】
(5)ヒストグラム空間の処理
図2は、本発明の実施形態におけるヒストグラム空間の処理を示すフローチャートである。本質的には座標に対して組織マスクラベルすることが重要である。以下、それぞれの処理を詳細に説明する。
【0027】
(5−1)ヒストグラム空間への展開
各シークエンスの信号値を(x,y,z)=Snとする。Snの最小値・最大値はシークエンス、MRIの機種、設定で変化するため、最終的にはSnを標準化したrSnに変換すること(下記5−2の段階)を考える。
【0028】
そこで、変換部12は、図3(A)に示すように、複数のシークエンスを統合してマルチシークエンス行列S(x,y,z)=(S1,S2,・・・, Sn)にデータ配列する(図2、ステップ1)。次に、図3(B)に示すように、ヒストグラム空間H(S1,S2,・・・,Sn)=mに度数分布を計算して展開する(図2、ステップ2)。
【0029】
(5−2)島の解析と標準化
ヒストグラム空間は隙間の多い分布となるため、単一のシークエンスよりも分離が容易となる。人によって筋肉が多い、骨が多いなどの違いはあるが、ヒストグラム空間での信号分布・島の分布は変わらない。しかし、この段階では信号値が標準化されていないので、まずは島の分布状況から島の組織名を同定する。関節を例に挙げると、シークエンスがT1強調画像、T2強調画像、T2*強調脂肪抑制画像である場合は、図4に示すように、(A)水分、(B)脂肪、(C)骨髄、(D)筋肉・軟骨、(E)空気・骨・靱帯がそれぞれ別の島に分離される。このヒストグラムを三次元で表すと図5のようになる。
【0030】
そこで、抽出部13は、図6に示すように、ヒストグラム空間上の島の中心位置Pを計算し、その中心位置Pをもとに標準化を行う(図2、ステップ3→4)。検査ごとに誤差がある程度生じるが、島の中心位置Pはそれほど動かないため標準化に有用である。
【0031】
具体的には、健常人をもとに作成した組織ごとの島中心データを用いて標準化を行う。たとえば、1.5T MRIで膝コイルを用いてT1強調画像、T2強調画像、T2*強調脂肪抑制画像を撮影したとき、膝の脂肪信号の中心がヒストグラム空間でH(200,200,100)であったとする。そのMRIでの膝の脂肪信号の島中心データがrH(150,200,60)であった場合、変換変数Aは“A*H=rH”よりA=(0.75,1.0,0.6)となる。島中心には信号値が大きな組織を選ぶと再現性が高くなる。この方法は線形変換であるが、より標準化精度を高めるためには、分布パターンの類似性を利用した非線形的な変換が有効となる。
【0032】
(5−3)組織ラベリング
次に、抽出部13は、ヒストグラム空間座標と組織とを対応付けるためのラベリングを行う(図2、ステップ5)。ある空間に筋肉があるか骨があるかなどを排他的に指定することは困難である。どのように画像検査の精度が向上しても、ボクセル(volume pixel)のサイズは細胞レベルまで小さくならないので、あるボクセルにいろいろな組織が入ってしまうことになる。そこで、組織ごとの存在確率をボクセルごとに指定する方法を考える。
【0033】
すなわち、ヒストグラム空間の島中心からの距離で存在確率を組織ごとに決定する。島の中心付近は、その組織である確率が100%であるとする。島の中心から離れた場合の確率指定には周囲の信号分布情報が必要なため、単純に島の中心からの距離で存在確率を決定することはできない。なぜなら、二つの組織が近接している場合、中心から離れるに従い組織の存在確立は急激に低下する。撮像部位にどのような組織があるかで存在確立のパターンは変化する。
【0034】
このようにヒストグラム空間での組織分類は撮影部位ごとに微妙に変化するため、各部位ごとに、組織の島中心が決定され標準化された場合の確率分布ライブラリーを作成しておく。このようにすれば、確率分布ライブラリーを用いて自動で組織ラベリングを行うことができる。
【0035】
自動化せずに手作業で組織ラベリングを行う場合、確率分布ライブラリーは必要ない。たとえば、ヒストグラム空間での信号分布を表示部16に表示するようにし、ユーザがその信号分布を見ながらヒストグラム空間でどの範囲までがどの組織にあたるかを指定することもできる。確立分布ライブラリーがない部位についてはこの方法が必要である。
【0036】
図7は、表示部16における画面表示例を示す図である。表示部16には、ヒストグラム空間を三面図などを用いて表示することができる。この図に示すように、表示エリア16aには操作ボタン群が配置され、この操作ボタン群を用いて各種の操作を指示できるようになっている。たとえば、表示エリア16bでは、各シークエンスの配色を選択することができ、また、表示エリア16cでは、各シークエンスのシグナル変換レベルやガンマ補正の設定をすることができる(後述する)。更に、表示エリア16dでは、特定の信号範囲(図中の矩形領域)を選択して囲んでいくことでヒストグラム空間での特定組織分布を指定することができる。この矩形領域に含まれる点の情報を集めると、結果的にその組織が存在している座標情報のリストが得られ、任意の組織を抽出することができる(図2、ステップ6)。
【0037】
ヒストグラム空間での組織分布は重なっていることが多い。単純な矩形領域ではなく複雑な形状の領域選択をすることで効率よく特定組織を抽出することができる。撮影部位ごとにそのような組織抽出パターンのライブラリを作成することが臨床上重要となってくる。
【0038】
(6)組織抽出の臨床応用法
座標情報のリストを用いて各シークエンスで共通な特定組織のマスクを得ることができる。この組織マスクを用いて行うことができる臨床上重要な応用法は以下の項目である。
【0039】
(6−1)病的組織のハイライト化と自動診断
腫瘍組織などは通常の信号パターンを示さないため、ヒストグラム空間内で通常認めない島として出現する。そこで、加工部14は、抽出部13により抽出された組織のうち異常信号パターンを示す病的組織をハイライト化する機能を備えている。具体的な方法としては、ヒストグラム空間の島パターンから信号を標準化したのち、異常信号パターンの島(通常認めない島)にあたる信号を赤などで表示する。このようにすると、通常の白黒画像に赤いマスク領域として病的組織がハイライトされる。ソフト上でハイライトのオン・オフ機能をつけておくと理解しやすい。
【0040】
実際には信号値だけでなく場所や広がりなどから診断するため、ハイライト機能は診断補助として有用である。もちろん、明らかに異常な信号分布であれば信号分布だけから診断を行うことができるので、その診断結果を自動的にユーザに提示する自動診断機能を備えてもよい。しかし、明らかに異常な部位を教えてくれるハイライト機能の方が安心して臨床利用できると思われる。
【0041】
(6−2)注目組織の体積測定による定量化
関節リウマチの滑膜の体積変化や腫瘍の体積変化は薬の効果判定などで利用されている。通常は、最も大きく見える断面図で縦横を測定して疑似的に体積を計算する。特定の組織を抽出するのに人間の眼を用いるため、このような測定方法がとられていた。近年、画像検査の量が膨大になってきたため、このような測定の仕事が増大し、読影する医師の負担が増加している状態である。
【0042】
自動的に特定組織の領域を抽出することができれば、抽出されたボクセルの数を数えるだけで複雑な形状でも自動的に体積を測定することができる。そこで、加工部14は、抽出部13により抽出された組織の領域に属するボクセルの数から当該組織の体積を測定する機能を備えている。同一人物の治療前後のMRI検査のデータセットに対して、ヒストグラム空間の同じ部位を抽出して組織体積を比較することで、再現性の高い病的組織の比較が可能となり、治療効果判定に有用である。
【0043】
(6−3)実体模型作製やナビゲーション
CT、MRIの三次元データから実寸大の模型を作成して骨モデルを作成し、その骨モデルに対してプレートの術前ベンディングを行っている。また、骨の三次元形状が分かればナビゲーション手術用のデータに利用することもできる。MRIの三次元データはCTの三次元データに劣るとされていたが、マルチシークエンスで抽出すれば組織コントラストが上昇するため抽出精度が上昇する。そこで、加工部14は、抽出部13により抽出された組織の座標情報を抽出することで組織の三次元データを作成する機能を備えている。この場合、組織の存在を「あり=1」「なし=0」としたマスクデータが必要であるが、本発明によれば、ヒストグラム空間から領域選択して座標情報を抽出するだけで実現することができる。
【0044】
(6−4)マルチシークエンスカラーマップ
複数のシークエンスそれぞれをRGBに変換して表示部16に表示すれば、複数のシークエンスを同時に診断することができる。そこで、加工部14は、各錐体細胞と各MRIシークエンスとを対応付け、その対応関係に基づいて複数のMRIシークエンスそれぞれをRGBに変換することでカラーマップを作成する機能を備えている。
【0045】
すなわち、人間の視細胞には、明暗を認識する桿体細胞と色を認識する錐体細胞があり、錐体細胞には「赤」「緑」「青」の三種類がある。いわゆる三原色である。具体的には、図8に示すように、赤、緑、青を重ね合わせることで「色」を認識している。そこで、図9に示すように、錐体細胞RとT1強調画像、錐体細胞GとT2強調画像、錐体細胞BとT2*強調画像とをそれぞれ対応付ける。この対応付けは、図7の表示エリア16bにおいてT1強調画像をR、T2強調画像をG、T2*強調画像をBに配色することで実現することができる。この状態で各シークエンスを合成すれば、脂肪は黄色で表示され、水は水色で表示されるので、自然な配色で各組織を分類することができる。
【0046】
(6−4−1)MRI信号は相対値であるため、各シークエンスを標準化しないと毎回色合いが変化してしまい混乱をきたす。このとき、ヒストグラム空間で島分布を用いた組織分類から信号を補正して標準化すれば、検査ごとに同じ色合いで表示することができる。通常、MRI画像は白黒画像であり、読影する医師がコントラストを変化させて読影している。R,G,B信号のそれぞれのコントラスト補正機能を付けることで、ヒストグラム空間での補正がうまくいかなかった時に微調整を加えることができる。この微調整の方法は様々考えられるが、MRI信号値の最小値(信号値0)には空気の信号が集まっているため、最大値をいかに設定するかが重要となる。そこで、図10に示すように、WL(Window Level)とWW(Window Width)の二つの変数を設定すればよい。これら二つの変数の値は、図7の表示エリア16cにおいて微調整することができる。もっと詳細な微調整が必要な場合は、ガンマ補正や、場合によっては自由曲線でのトーンカーブを設定する。
【0047】
(6−4−2)人間の色覚は三種類の錐体細胞でR,G,Bをそれぞれ同時に解析するというシステムであるため、四色以上を同時に解析することはできない(数は少ないが遺伝的に四原色の人もいる。二原色はいわゆる色弱)。しかし、MRIシークエンスが四種類以上になることはよくあるため、これらMRIシークエンスを同時に表示させるには四次元以上の情報を三次元の情報に変換する方法が必要である。
【0048】
最も単純な方法は、特定の二つのシークエンスを合成して一次元にする方法である。二次元の信号空間での変換関数を指定することで、特定の二つのシークエンスを合成することができる(式1)。通常は単純な線形変換を用いている(式2)。特定の組織をターゲットに表示能力を上げるために空間上での変換が有効な場合もある(式3)。ヒストグラム空間で島同士の色距離が最も広がるような変換が有用となってくる。
【0049】
F(S1,S2)=mS (式1)
F(S1,S2)=aS1+bS2 (式2)
F(S1,S2,S3,・・・Sn)=(R,G,B) (式3)
以上のように、本発明の実施形態における組織抽出システム10によれば、複数のMRIシークエンスがヒストグラム空間に変換されて組織分離効率が高まるため、組織を効率よく抽出することができる。しかも、病的組織のハイライト化や自動診断、注目組織の体積測定による定量化、実体模型作製やナビゲーション、マルチシークエンスカラーマップといった臨床上重要な様々な分野に応用することができ、実用的価値が極めて高い発明と言える。MRIはいろいろなシークエンスで撮影することができるので、組織コントラストが違う検査をたくさん行うことができるという利点もある。
【0050】
なお、ここではMRI画像を用いる場合を例示したが、CT画像や超音波画像、電子顕微鏡画像などMRI画像以外の画像を用いる場合でも、同一座標から複数の信号を得ることができる構成である以上、本発明を適用することができる。
【0051】
すなわち、CT装置は単一のエネルギーのみで撮影されていたが、二組のX線管球と検出器がそれぞれ90°だけずれた配置で撮影するDual energy イメージングが近年出現した。結果的に同一座標に二種類の信号を得ることができる。今後は検出器の種類を増やすことによって二種類以上の信号を得る時代がやってくることが予想される。このように同一座標から複数の信号を得ることができる場合は本発明を適用することができ、前記と同様の効果を得ることが可能である。
【0052】
現在、CTの三次元表示方法には、特定の信号値に対して透明度と色を設定することで三次元表示する方法が利用されている。たとえば骨の三次元表示では、骨の信号値を透明度0(つまり不透明)にして白く表現し、他の部位を透明度100にし、中間部位では色と透明度がグラデーション表示されるようなライブラリを事前に作成しておく。これにより、ワンステップでCTデータから三次元画像を作成することができる。
【0053】
この方法を拡張して、ヒストグラム空間内の各点において透明度と色を設定する機能を持てば、自動的に三次元表示することができる。MRIの場合は島情報を用いて各シークエンスを標準化することで、毎回同じような見栄えの三次元画像に変換することができる。島情報を用いても微妙にずれることがあるので標準化係数を各シークエンスごとに指定する機能が必要である。ヒストグラム空間での指定には、矩形だけではなく自由曲線を用いた領域選択を行うことで、ヒストグラム空間で近い組織も効率よく分離することができる。このシステムは三次元画像処理ソフトの領域選択機能を拡張することで作成することができる。
【0054】
なお、本発明は組織抽出システム10として実現することができるだけでなく、このような組織抽出システム10が備える特徴的な処理部をステップとする組織抽出方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させる組織抽出プログラムとして実現したりすることもできる。このような組織抽出プログラムは、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
10 組織抽出システム
11 撮像部
12 変換部
13 抽出部
14 加工部(ハイライト化部、体積測定部、三次元データ作成部、マップ作成部)
15 メモリ
16 表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を用いて被検体の組織を抽出する組織抽出システム及びその三次元表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI(Magnetic Resonance Imaging system)では、T1強調画像やT2強調画像のように、組織のコントラストの違う様々なMRI画像(以下、それぞれの画像を「MRIシークエンス」又は「シークエンス」という)をセットで撮影するのが一般的である(特許文献1参照)。当初はMRI画像を白黒のフィルムに焼いて診断に利用していたので、ディスプレーで診断するようになった現在も白黒画像をもとに診断している。
【0003】
MRI信号は検査ごとに信号値が変化するので信号値のみで組織の診断はできないとされてきた。そこで、筋肉の信号値と比較して信号値が高い場合をHigh、低い場合をLow、同程度の場合をIsoと表現して診断に利用している。具体的には、MRI画像上で筋肉よりも白い部位をHigh、黒い部位をLow、同じ程度の部位をIsoと表現する。これにより、T1強調画像でHighでありT2強調画像でHighである部位は脂肪成分、T1強調画像でLowでありT2強調画像でHighである部位は水成分、というように推測することができる。
【0004】
診断能力を上げるためにT2*(スター)強調画像や拡散強調画像やT2脂肪抑制など、特定の組織のコントラストがつく様々なシークエンスが開発され、現在も増加しつつある。現在では、図11に示すように、目的に合わせて複数ののシークエンスを撮像し、それぞれのシークエンスを白黒画像で見比べることにより診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平7−505805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した通り、現在では、複数のシークエンスを見比べて組織を特定するのが通常である。しかしながら、このような方法によると、複数のシークエンスをバラバラにみて頭の中で重ね合わせる作業が必要であり、即座に組織を特定することが難しい場合もあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、画像を用いて組織を効率よく抽出することができる組織抽出システム及びその三次元表示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、画像を用いて被検体の組織を抽出する組織抽出システムであって、座標軸をそろえて複数のシークエンスを撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された複数のシークエンスを、そのシークエンスを座標軸にとったヒストグラム空間に変換する変換部と、前記変換部により変換されたヒストグラムの分布から被検体の組織を抽出する抽出部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のシークエンスがヒストグラム空間に変換されて組織分離効率が高まるため、組織を効率よく抽出することができる組織抽出システム及びその三次元表示方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における組織抽出システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるヒストグラム空間の処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態におけるヒストグラム空間への展開を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における島の解析手法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態における島の解析手法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態における島の中心位置を示す図である。
【図7】本発明の実施形態における表示部における画面表示例を示す図である。
【図8】錐体細胞の組み合わせと色の関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態における組織分類を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態におけるWLとWWを説明するための図である。
【図11】MRI読影を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
(1)組織抽出システムの構成
図1は、本発明の実施形態における組織抽出システム10の構成図である。この組織抽出システム10は、MRI画像を用いて被検体の組織を抽出するシステムであって、機能的には、撮像部11と、変換部12と、抽出部13と、加工部14と、メモリ15と、表示部16とを備えている。もちろん、情報を入力するための入力部や他のシステムと通信するための通信部などその他の処理部も備えているが、ここでは図示していない。
【0013】
撮像部11は、座標軸をそろえて複数のMRIシークエンスを撮像するMRI等である。変換部12は、撮像部11により撮像された複数のMRIシークエンスを、そのMRIシークエンスを座標軸にとったヒストグラム空間に変換する。抽出部13は、変換部12により変換されたヒストグラムの分布から被検体の組織を抽出する。加工部14は、抽出部13により抽出された結果を用いて各種の加工処理を行う。メモリ15は、各処理部の処理結果など各種データを記憶する。表示部16は、メモリ15に記憶されたデータを表示する液晶ディスプレイ等である。変換部12、抽出部13、加工部14、メモリ15、表示部16は画像処理ワークステーションに搭載することができる。画像処理ワークステーションは高度な画像処理を専門に行うための装置であるが、詳細については後述する。
【0014】
(2)CT画像の特徴と画像処理
組織抽出システム10の構成を詳しく説明する前に、CT(Computed Tomography)の機能を概観して画像処理が重要となってきた経緯について説明する。レントゲン写真は、被検体に放射線を照射し、被検体の後ろ側に放射線を感知するフィルムをおいて撮影するという二次元のシステムである。CTは、放射線源と受信機を回転させながら撮影してデータを計算することで断面像を作成するシステムである。1990年代まではスライス厚が3−5mm厚のデータであったため、一度の検査で画像枚数が100枚を超えることは少なく、画像をフィルムに焼いて診断していた。
【0015】
その後、ヘリカルCTが開発されて、スライス厚が0.5−1mmとなり、検出器の多列化によって被爆量が減少したことから撮影時間が短くなった。たとえば、頭から足までの撮影は10数秒で可能となり、画像枚数も1000枚を超えるようになった。そのおかげで交通外傷などにより意識がなく損傷部位が分からない場合でも、頭部・胸部・腹部・骨盤などを一度に診断することが可能となり、救命率が上昇した。しかし、1000枚以上の画像がある場合、それら画像をフィルムに焼くのはコスト的に問題があるため、医用画像表示用に開発された医療用ディスプレーの普及が進んでいる。
【0016】
一方、複雑な骨折を診断する場合、平面画像の集合であるCT画像を並べて頭の中で骨の立体構造を構築するのは難しいので、CT画像をもとに三次元画像を作成する需要が発生した。スライス厚が厚い時代には解像度の低い三次元画像しか作成できなかったが、スライス厚が薄くなった結果、非常に美しい三次元画像を作成できるようになった。
【0017】
CT画像の信号はハンスフィールド値(HU値)といい、MRIと違って水が0、空気が−1000となるように標準化されているため、筋肉や骨の信号分布はあらかじめ分かっている。骨の信号分布(だいたい200以上)の部位だけを抽出すれば骨の領域だけが得られ、その情報をもとに骨の三次元画像を自動で作成することができる。同様に内臓や筋肉などの信号分布も分かっているため、特定組織の三次元画像を自動で作成することも可能である。そのため、信号分布が他の組織と重なっていない組織ほど三次元化が容易である。血管などは筋肉などの軟部組織の信号分布と似ているので、血管だけを抽出するのは困難である。そこで、人体に安全でCT値が高い造影剤をCT撮影直前に静脈投与することで血管のコントラストをつけることができる。造影剤の信号値は骨の信号分布と似ている。そのため、造影CT画像だけから血管だけを抽出することは困難であるが、造影前のCT画像と造影後のCT画像を逆算することで血管だけを抽出することができる。このような高度な画像処理を専門に行っているのが画像処理ワークステーションである。なお、MRIでも造影検査は可能である。
【0018】
(3)医療画像規格の標準化と画像処理ワークステーション産業の出現
次に、臨床画像市場の歴史を概観して現状を把握する。従来、医療画像メーカーは独自規格の機器ばかり製造し、各社が囲い込みを行った結果、個々の医療機関では同じメーカーの機器しか使用できずコストも高くついた。そこで、アメリカの放射線専門医会と北米電子機器工業会が協議してDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格を定めた。その結果、違うメーカー同士でも画像のやり取りを行うことができるようになった。
【0019】
これによる市場への影響は二つある。一つ目は市場規模が拡大したことである。DICOM規格に則れば、欧米でもアジアでも売ることができるため市場が急激に拡大した。二つ目はメーカーの分業化が進んだことである。MRI、CT、画像サーバー、画像処理ワークステーション、医療用ディスプレー会社と専門会社に細分化していった。これら二つの要素があいまって世界中に医療画像関係のメーカーが出現し、技術革新の速度が速まった。現在、日本の大病院では画像処理ワークステーションが導入され、CT、MRIを撮影する部門と三次元などの画像処理の部門とに分業されている。
【0020】
画像処理ワークステーション会社の収益源はサポート費用である。通常は高機能PCに専用ソフトを搭載した状態で出荷するが、PCの性能は数年おきに上昇するため、購入時に最速であったとしてもすぐに陳腐化する。そのため、数年おきに更新可能とし、保守点検料で稼ぐビジネスモデルが多い。他社と差別化するためいろいろな画像処理機能を追加して市場価値を高めている。初期にはCTの三次元化などの機能だけであったが、近年はMRIの画像処理機能も搭載するようになってきた。本発明は、このような画像処理ワークステーションに搭載される画像処理ソフトにアドインとして追加することができる。
【0021】
(4)MRI画像をCT画像のように画像処理する手法
ヒストグラム空間を用いたMRI画像信号の標準化について説明する。MRI画像の問題点は信号が検査ごとに変化する相対値であることである。すなわち、CT画像の信号値は水を0、空気を−1000として標準化されているため、特定の組織を信号値だけを頼りに抽出することができる。一方、MRIでは、信号値だけから特定の組織を自動抽出することは困難であり、自動抽出をするには組織ごとの信号分布を知る必要がある。
【0022】
そこで、本発明の実施形態における組織抽出システム10では、MRI画像信号のヒストグラム(度数分布)から組織を抽出する手法を採用している。すなわち、HU値のように特定の物質を撮影した信号値から標準化するのではなく、信号分布から組織を分離するのが目標である。
【0023】
MRIで単一のシークエンスのヒストグラムを作成すると、複数のピークが連なった分布を得ることができる。しかし分布の重なりが広いため、単一のシークエンスのヒストグラム分布から、それぞれの組織分布を分離することが困難である。それぞれの組織信号分布が広く、お互いの信号分布が重なっていることが原因である。そのため、ヒストグラムから組織を分離するのは困難とされてきた。
【0024】
しかし、座標軸をそろえて複数のシークエンスを撮影すれば、そのヒストグラムから組織を分離することが可能となる。「座標軸をそろえて撮影する」とは、被検体の撮像条件(撮像範囲や撮像倍率など)を固定した状態で撮影することを意味する。各シークエンスの信号値を(x,y,z)=Sn(Sは指定された座標での信号値、nはシークエンス番号)とすると、それぞれのシークエンスを統合すれば(x,y,z)=(S1,S2,・・・,Sn)となる。そこで、シークエンスをそれぞれ座標軸にとったヒストグラム空間H(S1,S2,・・・,Sn)に変換する。これにより、各シークエンスでは信号分布が重なっていた組織もヒストグラム空間では分離される。すなわち、1変量では区別できない2群も多変量にすると区別できることがある。本発明では、このような多変量解析の手法を用いることで、複数のMRIシークエンスをヒストグラム空間に変換して組織分離効率を高めることを可能としている。
【0025】
撮影した部位が分かっていれば、その部位内にある組織の種類が分かるため、ヒストグラム空間内での信号パターンからどの分布が特定の組織であるかを同定することができる。ヒストグラム空間内での信号の集まりを「島」とすると、それぞれの島がどの組織であるか分かることになる。撮影シークエンスの微妙な設定によって島の厳密な位置は変化するが分布パターンは変わらない。たとえば、膝関節でT1強調画像、T2強調画像、T2*(スター)強調画像を撮影してヒストグラム空間に変換すると、水分・骨髄・脂肪・筋肉などの島が形成される。年齢による筋肉の変性などがあった場合、島と島の距離は変わるが、島の位置の順番関係が変わるほどではない。この特性を用いて信号値の標準化と組織抽出を行うことができる。
【0026】
(5)ヒストグラム空間の処理
図2は、本発明の実施形態におけるヒストグラム空間の処理を示すフローチャートである。本質的には座標に対して組織マスクラベルすることが重要である。以下、それぞれの処理を詳細に説明する。
【0027】
(5−1)ヒストグラム空間への展開
各シークエンスの信号値を(x,y,z)=Snとする。Snの最小値・最大値はシークエンス、MRIの機種、設定で変化するため、最終的にはSnを標準化したrSnに変換すること(下記5−2の段階)を考える。
【0028】
そこで、変換部12は、図3(A)に示すように、複数のシークエンスを統合してマルチシークエンス行列S(x,y,z)=(S1,S2,・・・, Sn)にデータ配列する(図2、ステップ1)。次に、図3(B)に示すように、ヒストグラム空間H(S1,S2,・・・,Sn)=mに度数分布を計算して展開する(図2、ステップ2)。
【0029】
(5−2)島の解析と標準化
ヒストグラム空間は隙間の多い分布となるため、単一のシークエンスよりも分離が容易となる。人によって筋肉が多い、骨が多いなどの違いはあるが、ヒストグラム空間での信号分布・島の分布は変わらない。しかし、この段階では信号値が標準化されていないので、まずは島の分布状況から島の組織名を同定する。関節を例に挙げると、シークエンスがT1強調画像、T2強調画像、T2*強調脂肪抑制画像である場合は、図4に示すように、(A)水分、(B)脂肪、(C)骨髄、(D)筋肉・軟骨、(E)空気・骨・靱帯がそれぞれ別の島に分離される。このヒストグラムを三次元で表すと図5のようになる。
【0030】
そこで、抽出部13は、図6に示すように、ヒストグラム空間上の島の中心位置Pを計算し、その中心位置Pをもとに標準化を行う(図2、ステップ3→4)。検査ごとに誤差がある程度生じるが、島の中心位置Pはそれほど動かないため標準化に有用である。
【0031】
具体的には、健常人をもとに作成した組織ごとの島中心データを用いて標準化を行う。たとえば、1.5T MRIで膝コイルを用いてT1強調画像、T2強調画像、T2*強調脂肪抑制画像を撮影したとき、膝の脂肪信号の中心がヒストグラム空間でH(200,200,100)であったとする。そのMRIでの膝の脂肪信号の島中心データがrH(150,200,60)であった場合、変換変数Aは“A*H=rH”よりA=(0.75,1.0,0.6)となる。島中心には信号値が大きな組織を選ぶと再現性が高くなる。この方法は線形変換であるが、より標準化精度を高めるためには、分布パターンの類似性を利用した非線形的な変換が有効となる。
【0032】
(5−3)組織ラベリング
次に、抽出部13は、ヒストグラム空間座標と組織とを対応付けるためのラベリングを行う(図2、ステップ5)。ある空間に筋肉があるか骨があるかなどを排他的に指定することは困難である。どのように画像検査の精度が向上しても、ボクセル(volume pixel)のサイズは細胞レベルまで小さくならないので、あるボクセルにいろいろな組織が入ってしまうことになる。そこで、組織ごとの存在確率をボクセルごとに指定する方法を考える。
【0033】
すなわち、ヒストグラム空間の島中心からの距離で存在確率を組織ごとに決定する。島の中心付近は、その組織である確率が100%であるとする。島の中心から離れた場合の確率指定には周囲の信号分布情報が必要なため、単純に島の中心からの距離で存在確率を決定することはできない。なぜなら、二つの組織が近接している場合、中心から離れるに従い組織の存在確立は急激に低下する。撮像部位にどのような組織があるかで存在確立のパターンは変化する。
【0034】
このようにヒストグラム空間での組織分類は撮影部位ごとに微妙に変化するため、各部位ごとに、組織の島中心が決定され標準化された場合の確率分布ライブラリーを作成しておく。このようにすれば、確率分布ライブラリーを用いて自動で組織ラベリングを行うことができる。
【0035】
自動化せずに手作業で組織ラベリングを行う場合、確率分布ライブラリーは必要ない。たとえば、ヒストグラム空間での信号分布を表示部16に表示するようにし、ユーザがその信号分布を見ながらヒストグラム空間でどの範囲までがどの組織にあたるかを指定することもできる。確立分布ライブラリーがない部位についてはこの方法が必要である。
【0036】
図7は、表示部16における画面表示例を示す図である。表示部16には、ヒストグラム空間を三面図などを用いて表示することができる。この図に示すように、表示エリア16aには操作ボタン群が配置され、この操作ボタン群を用いて各種の操作を指示できるようになっている。たとえば、表示エリア16bでは、各シークエンスの配色を選択することができ、また、表示エリア16cでは、各シークエンスのシグナル変換レベルやガンマ補正の設定をすることができる(後述する)。更に、表示エリア16dでは、特定の信号範囲(図中の矩形領域)を選択して囲んでいくことでヒストグラム空間での特定組織分布を指定することができる。この矩形領域に含まれる点の情報を集めると、結果的にその組織が存在している座標情報のリストが得られ、任意の組織を抽出することができる(図2、ステップ6)。
【0037】
ヒストグラム空間での組織分布は重なっていることが多い。単純な矩形領域ではなく複雑な形状の領域選択をすることで効率よく特定組織を抽出することができる。撮影部位ごとにそのような組織抽出パターンのライブラリを作成することが臨床上重要となってくる。
【0038】
(6)組織抽出の臨床応用法
座標情報のリストを用いて各シークエンスで共通な特定組織のマスクを得ることができる。この組織マスクを用いて行うことができる臨床上重要な応用法は以下の項目である。
【0039】
(6−1)病的組織のハイライト化と自動診断
腫瘍組織などは通常の信号パターンを示さないため、ヒストグラム空間内で通常認めない島として出現する。そこで、加工部14は、抽出部13により抽出された組織のうち異常信号パターンを示す病的組織をハイライト化する機能を備えている。具体的な方法としては、ヒストグラム空間の島パターンから信号を標準化したのち、異常信号パターンの島(通常認めない島)にあたる信号を赤などで表示する。このようにすると、通常の白黒画像に赤いマスク領域として病的組織がハイライトされる。ソフト上でハイライトのオン・オフ機能をつけておくと理解しやすい。
【0040】
実際には信号値だけでなく場所や広がりなどから診断するため、ハイライト機能は診断補助として有用である。もちろん、明らかに異常な信号分布であれば信号分布だけから診断を行うことができるので、その診断結果を自動的にユーザに提示する自動診断機能を備えてもよい。しかし、明らかに異常な部位を教えてくれるハイライト機能の方が安心して臨床利用できると思われる。
【0041】
(6−2)注目組織の体積測定による定量化
関節リウマチの滑膜の体積変化や腫瘍の体積変化は薬の効果判定などで利用されている。通常は、最も大きく見える断面図で縦横を測定して疑似的に体積を計算する。特定の組織を抽出するのに人間の眼を用いるため、このような測定方法がとられていた。近年、画像検査の量が膨大になってきたため、このような測定の仕事が増大し、読影する医師の負担が増加している状態である。
【0042】
自動的に特定組織の領域を抽出することができれば、抽出されたボクセルの数を数えるだけで複雑な形状でも自動的に体積を測定することができる。そこで、加工部14は、抽出部13により抽出された組織の領域に属するボクセルの数から当該組織の体積を測定する機能を備えている。同一人物の治療前後のMRI検査のデータセットに対して、ヒストグラム空間の同じ部位を抽出して組織体積を比較することで、再現性の高い病的組織の比較が可能となり、治療効果判定に有用である。
【0043】
(6−3)実体模型作製やナビゲーション
CT、MRIの三次元データから実寸大の模型を作成して骨モデルを作成し、その骨モデルに対してプレートの術前ベンディングを行っている。また、骨の三次元形状が分かればナビゲーション手術用のデータに利用することもできる。MRIの三次元データはCTの三次元データに劣るとされていたが、マルチシークエンスで抽出すれば組織コントラストが上昇するため抽出精度が上昇する。そこで、加工部14は、抽出部13により抽出された組織の座標情報を抽出することで組織の三次元データを作成する機能を備えている。この場合、組織の存在を「あり=1」「なし=0」としたマスクデータが必要であるが、本発明によれば、ヒストグラム空間から領域選択して座標情報を抽出するだけで実現することができる。
【0044】
(6−4)マルチシークエンスカラーマップ
複数のシークエンスそれぞれをRGBに変換して表示部16に表示すれば、複数のシークエンスを同時に診断することができる。そこで、加工部14は、各錐体細胞と各MRIシークエンスとを対応付け、その対応関係に基づいて複数のMRIシークエンスそれぞれをRGBに変換することでカラーマップを作成する機能を備えている。
【0045】
すなわち、人間の視細胞には、明暗を認識する桿体細胞と色を認識する錐体細胞があり、錐体細胞には「赤」「緑」「青」の三種類がある。いわゆる三原色である。具体的には、図8に示すように、赤、緑、青を重ね合わせることで「色」を認識している。そこで、図9に示すように、錐体細胞RとT1強調画像、錐体細胞GとT2強調画像、錐体細胞BとT2*強調画像とをそれぞれ対応付ける。この対応付けは、図7の表示エリア16bにおいてT1強調画像をR、T2強調画像をG、T2*強調画像をBに配色することで実現することができる。この状態で各シークエンスを合成すれば、脂肪は黄色で表示され、水は水色で表示されるので、自然な配色で各組織を分類することができる。
【0046】
(6−4−1)MRI信号は相対値であるため、各シークエンスを標準化しないと毎回色合いが変化してしまい混乱をきたす。このとき、ヒストグラム空間で島分布を用いた組織分類から信号を補正して標準化すれば、検査ごとに同じ色合いで表示することができる。通常、MRI画像は白黒画像であり、読影する医師がコントラストを変化させて読影している。R,G,B信号のそれぞれのコントラスト補正機能を付けることで、ヒストグラム空間での補正がうまくいかなかった時に微調整を加えることができる。この微調整の方法は様々考えられるが、MRI信号値の最小値(信号値0)には空気の信号が集まっているため、最大値をいかに設定するかが重要となる。そこで、図10に示すように、WL(Window Level)とWW(Window Width)の二つの変数を設定すればよい。これら二つの変数の値は、図7の表示エリア16cにおいて微調整することができる。もっと詳細な微調整が必要な場合は、ガンマ補正や、場合によっては自由曲線でのトーンカーブを設定する。
【0047】
(6−4−2)人間の色覚は三種類の錐体細胞でR,G,Bをそれぞれ同時に解析するというシステムであるため、四色以上を同時に解析することはできない(数は少ないが遺伝的に四原色の人もいる。二原色はいわゆる色弱)。しかし、MRIシークエンスが四種類以上になることはよくあるため、これらMRIシークエンスを同時に表示させるには四次元以上の情報を三次元の情報に変換する方法が必要である。
【0048】
最も単純な方法は、特定の二つのシークエンスを合成して一次元にする方法である。二次元の信号空間での変換関数を指定することで、特定の二つのシークエンスを合成することができる(式1)。通常は単純な線形変換を用いている(式2)。特定の組織をターゲットに表示能力を上げるために空間上での変換が有効な場合もある(式3)。ヒストグラム空間で島同士の色距離が最も広がるような変換が有用となってくる。
【0049】
F(S1,S2)=mS (式1)
F(S1,S2)=aS1+bS2 (式2)
F(S1,S2,S3,・・・Sn)=(R,G,B) (式3)
以上のように、本発明の実施形態における組織抽出システム10によれば、複数のMRIシークエンスがヒストグラム空間に変換されて組織分離効率が高まるため、組織を効率よく抽出することができる。しかも、病的組織のハイライト化や自動診断、注目組織の体積測定による定量化、実体模型作製やナビゲーション、マルチシークエンスカラーマップといった臨床上重要な様々な分野に応用することができ、実用的価値が極めて高い発明と言える。MRIはいろいろなシークエンスで撮影することができるので、組織コントラストが違う検査をたくさん行うことができるという利点もある。
【0050】
なお、ここではMRI画像を用いる場合を例示したが、CT画像や超音波画像、電子顕微鏡画像などMRI画像以外の画像を用いる場合でも、同一座標から複数の信号を得ることができる構成である以上、本発明を適用することができる。
【0051】
すなわち、CT装置は単一のエネルギーのみで撮影されていたが、二組のX線管球と検出器がそれぞれ90°だけずれた配置で撮影するDual energy イメージングが近年出現した。結果的に同一座標に二種類の信号を得ることができる。今後は検出器の種類を増やすことによって二種類以上の信号を得る時代がやってくることが予想される。このように同一座標から複数の信号を得ることができる場合は本発明を適用することができ、前記と同様の効果を得ることが可能である。
【0052】
現在、CTの三次元表示方法には、特定の信号値に対して透明度と色を設定することで三次元表示する方法が利用されている。たとえば骨の三次元表示では、骨の信号値を透明度0(つまり不透明)にして白く表現し、他の部位を透明度100にし、中間部位では色と透明度がグラデーション表示されるようなライブラリを事前に作成しておく。これにより、ワンステップでCTデータから三次元画像を作成することができる。
【0053】
この方法を拡張して、ヒストグラム空間内の各点において透明度と色を設定する機能を持てば、自動的に三次元表示することができる。MRIの場合は島情報を用いて各シークエンスを標準化することで、毎回同じような見栄えの三次元画像に変換することができる。島情報を用いても微妙にずれることがあるので標準化係数を各シークエンスごとに指定する機能が必要である。ヒストグラム空間での指定には、矩形だけではなく自由曲線を用いた領域選択を行うことで、ヒストグラム空間で近い組織も効率よく分離することができる。このシステムは三次元画像処理ソフトの領域選択機能を拡張することで作成することができる。
【0054】
なお、本発明は組織抽出システム10として実現することができるだけでなく、このような組織抽出システム10が備える特徴的な処理部をステップとする組織抽出方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させる組織抽出プログラムとして実現したりすることもできる。このような組織抽出プログラムは、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
10 組織抽出システム
11 撮像部
12 変換部
13 抽出部
14 加工部(ハイライト化部、体積測定部、三次元データ作成部、マップ作成部)
15 メモリ
16 表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を用いて被検体の組織を抽出する組織抽出システムであって、
座標軸をそろえて複数のシークエンスを撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された複数のシークエンスを、そのシークエンスを座標軸にとったヒストグラム空間に変換する変換部と、
前記変換部により変換されたヒストグラムの分布から被検体の組織を抽出する抽出部と、
を備えたことを特徴とする組織抽出システム。
【請求項2】
前記抽出部は、前記ヒストグラム空間上の島の中心位置を計算し、その中心位置をもとに標準化を行うことを特徴とする請求項1記載の組織抽出システム。
【請求項3】
前記抽出部は、前記ヒストグラム空間座標と組織とを対応付けるためのラベリングを行うことを特徴とする請求項1又は2記載の組織抽出システム。
【請求項4】
更に、前記抽出部により抽出された組織のうち異常信号パターンを示す病的組織をハイライト化するハイライト化部を備えたことを特徴とする請求項3記載の組織抽出システム。
【請求項5】
更に、前記抽出部により抽出された組織の領域に属するボクセルの数から当該組織の体積を測定する体積測定部を備えたことを特徴とする請求項3記載の組織抽出システム。
【請求項6】
更に、前記抽出部により抽出された組織の座標情報を抽出することで三次元データを作成する三次元データ作成部を備えたことを特徴とする請求項3記載の組織抽出システム。
【請求項7】
更に、各錐体細胞と各シークエンスとを対応付け、その対応関係に基づいて前記複数のシークエンスそれぞれをRGBに変換することでカラーマップを作成するマップ作成部を備えたことを特徴とする請求項3記載の組織抽出システム。
【請求項8】
前記変換部は、前記複数のシークエンスを統合してマルチシークエンス行列にデータ配列し、前記ヒストグラム空間に度数分布を計算して展開することを特徴とする請求項1記載の組織抽出システム。
【請求項9】
画像を用いて被検体の組織を抽出する組織抽出システムの三次元表示方法であって、
座標軸をそろえて撮影した複数のシークエンスをそのシークエンスを座標軸にとったヒストグラム空間に変換し、前記ヒストグラム空間上の島情報を用いて各シークエンスを標準化する場合は自由曲線を用いた領域選択を行うことで標準化係数を各シークエンスごとに指定し、事前に作成しておいたライブラリを用いて前記ヒストグラム空間内の各点において透明度と色を設定することで結果的にヒストグラム空間内で同じ点は撮影空間で同じ透明度と色が設定され、その情報を用いて自動的に三次元変換をする
ことを特徴とする三次元表示方法。
【請求項1】
画像を用いて被検体の組織を抽出する組織抽出システムであって、
座標軸をそろえて複数のシークエンスを撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された複数のシークエンスを、そのシークエンスを座標軸にとったヒストグラム空間に変換する変換部と、
前記変換部により変換されたヒストグラムの分布から被検体の組織を抽出する抽出部と、
を備えたことを特徴とする組織抽出システム。
【請求項2】
前記抽出部は、前記ヒストグラム空間上の島の中心位置を計算し、その中心位置をもとに標準化を行うことを特徴とする請求項1記載の組織抽出システム。
【請求項3】
前記抽出部は、前記ヒストグラム空間座標と組織とを対応付けるためのラベリングを行うことを特徴とする請求項1又は2記載の組織抽出システム。
【請求項4】
更に、前記抽出部により抽出された組織のうち異常信号パターンを示す病的組織をハイライト化するハイライト化部を備えたことを特徴とする請求項3記載の組織抽出システム。
【請求項5】
更に、前記抽出部により抽出された組織の領域に属するボクセルの数から当該組織の体積を測定する体積測定部を備えたことを特徴とする請求項3記載の組織抽出システム。
【請求項6】
更に、前記抽出部により抽出された組織の座標情報を抽出することで三次元データを作成する三次元データ作成部を備えたことを特徴とする請求項3記載の組織抽出システム。
【請求項7】
更に、各錐体細胞と各シークエンスとを対応付け、その対応関係に基づいて前記複数のシークエンスそれぞれをRGBに変換することでカラーマップを作成するマップ作成部を備えたことを特徴とする請求項3記載の組織抽出システム。
【請求項8】
前記変換部は、前記複数のシークエンスを統合してマルチシークエンス行列にデータ配列し、前記ヒストグラム空間に度数分布を計算して展開することを特徴とする請求項1記載の組織抽出システム。
【請求項9】
画像を用いて被検体の組織を抽出する組織抽出システムの三次元表示方法であって、
座標軸をそろえて撮影した複数のシークエンスをそのシークエンスを座標軸にとったヒストグラム空間に変換し、前記ヒストグラム空間上の島情報を用いて各シークエンスを標準化する場合は自由曲線を用いた領域選択を行うことで標準化係数を各シークエンスごとに指定し、事前に作成しておいたライブラリを用いて前記ヒストグラム空間内の各点において透明度と色を設定することで結果的にヒストグラム空間内で同じ点は撮影空間で同じ透明度と色が設定され、その情報を用いて自動的に三次元変換をする
ことを特徴とする三次元表示方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図8】
【図9】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図2】
【図4】
【図8】
【図9】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−29903(P2012−29903A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172482(P2010−172482)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【特許番号】特許第4691732号(P4691732)
【特許公報発行日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【特許番号】特許第4691732号(P4691732)
【特許公報発行日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
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