説明

組電池

【課題】放熱面積を確保して電池セルの冷却性能の向上を図る組電池を提供する。
【解決手段】放熱部材3は、流れ方向Fに対して垂直な断面形状が、両側の電池セルのうち、一方の電池セルの側面2aに対面する第1の平坦部31と、第1の平坦部31の端部から、一方の電池セルの側面2aに対して垂直方向に曲がる直角部34を形成して他方の電池セルの側面2aに向かって延びる垂直部30と、垂直部30の端部から、第1の平坦部31とは反対の方向に前記他方の電池セルの側面2aに対面するように延びる第2の平坦部32と、第2の平坦部32の端部から直角部34に向かって延びて、第1の平坦部31に隣合う別の第1の平坦部31の端部と第2の平坦部32の端部とを連結する傾斜部33と、を備える直角三角形状を繰り返し形成する。さらに放熱部材3は、当該繰り返される直角三角形状が両側の電池セルにおける流れ方向Fの幅に亘って延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層した複数個の電池セルの集合体である組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、組電池を構成する各電池セルは、例えば、車両の制動、加速等によって大きな充放電電流が繰り返し流れるため、電池の内部抵抗によるジュール熱によって電池が発熱するようになる。
【0003】
電池に発熱に対し、特許文献1に記載の組電池は、電気的に直列接続されるとともに積層配置された電池セルの間に放熱のためのスペーサを介在させて、電池セルとスペーサとを交互に配して一体とした一つの積層体をなしている。当該スペーサは、金属製の断面波形の板状部材であり、波形の頂部が電池セルの側面に接触し、電池セル間において空気等の冷却流体が流れる通路を形成するとともに、電池セルの熱を受熱して冷却流体へ放熱する放熱体として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4253935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の組電池においては、電池セルの側面のスペーサとの接触部分は断面波形のスペーサの頂点部と接触する部分のみであるため、電池セルからスペーサへの接触熱抵抗が大きく、電池セルの熱がスペーサに伝達しにくいという問題がある。したがって、特許文献1の組電池では、スペーサの放熱体としての機能が十分でなく、電池の冷却性能に課題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、放熱面積を確保して電池セルの冷却性能の向上を図る組電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1は、積層して配置される複数個の電池セル(2)と、熱伝導性を有し、隣接する電池セル間に介在して冷却流体が流通する流体通路を形成し、両側の電池セルから圧縮力を受ける放熱部材(3)と、を一体に備えて構成される組電池(1)に係る発明であって、
放熱部材(3)は、
冷却流体の流れ方向(F)に対して垂直な断面形状が、
両側の電池セルのうち、一方の電池セルの側面(2a)に対面する第1の平坦部(31)と、
第1の平坦部(31)の端部から、一方の電池セルの側面(2a)に対して垂直方向に曲がる直角部(34)を形成して他方の電池セルの側面(2a)に向かって延びる垂直部(30)と、
垂直部(30)の端部から、第1の平坦部(31)とは反対の方向に他方の電池セルの側面(2a)に対面するように延びる第2の平坦部(32)と、
第2の平坦部(32)の端部から直角部(34)に向かって延びて、第1の平坦部(31)に隣合う別の第1の平坦部(31)の端部と第2の平坦部(32)の端部とを連結する傾斜部(33)と、を備える直角三角形状を繰り返し形成するとともに、
当該繰り返される直角三角形状が両側の電池セルにおける冷却流体の流れ方向(F)の幅に亘って延びることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、放熱部材が備える特徴的断面形状によって放熱部材において冷却機能を果たす表面積が大きくなるため、各電池セルの冷却性能向上が図れる。さらに、垂直部によって両側の電池セルから受ける圧縮力に抗する構造であるため、放熱部材の各部が圧縮力に対して強度を有し、圧縮力に対して大きな強度を備えることになる。特に、垂直部は、その軸方向に圧縮力を受けるため、座屈し難く、放熱部材の強度確保に寄与している。したがって、放熱面積を確保して電池セルの冷却性能の向上を図る組電池を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、垂直部(30)は、冷却流体の流れ方向(F)に対して垂直な断面における長さ寸法が第1の平坦部(31)及び第2の平坦部(32)と同じあることを特徴とする。この発明によれば、放熱部材を所定の形状に形成するときに板材を折り曲げ加工等する場合に、等しい角度及び等しい寸法の各部を形成するため、加工性が向上し、放熱部材の製造性向上が図れる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、垂直部(30)は、冷却流体の流れ方向(F)に対して垂直な断面における長さ寸法が第1の平坦部(31)及び第2の平坦部(32)よりも長いことを特徴とする。この発明によれば、放熱部材に作用する圧縮力に対して抗力を発揮する垂直部が他の部分よりも長くなるため、圧縮力に対するさらなる強度向上が図れる。また、冷却流体の流れ方向に対して垂直方向の単位長さ当たりの放熱面積を増加させることができるため、電池セルの冷却性能のさらなる向上が図れる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、電池セル(2)の外装ケース及び前記放熱部材(3)は導電性材料で形成されており、電池セルの側面(2a)と第1の平坦部(31)及び第2の平坦部(32)との互いに対面する部分のうち、第1の平坦部(31)及び第2の平坦部(32)の表面は、絶縁性物質(40)で被覆されていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、隣接する電池セル間で接触する部分同士が絶縁性物質の被覆部分を介して接触するようになるため、電池セル間の電気絶縁性が確保される。さらに、電気絶縁のための被覆部分は、第1の平坦部及び第2の平坦部であるため、他の部分を被覆する必要がなく、被覆面積の低減が図れる。したがって、絶縁被覆する面積を抑制できるため伝熱抵抗の低減が可能であり、電池冷却性能及び電気的安全性の確保が図れる。また、隣接する電池セル間の電位差により、導電性材料が腐食する事態を抑制できる。
【0013】
上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した第1実施形態の組電池の構成を説明するための斜視図である。
【図2】組電池に含まれる第1実施形態の放熱部材を示す部分拡大図である。
【図3】第1実施形態の放熱部材について、その放熱面積を説明するための概略図である。
【図4】第1実施形態の放熱部材に対する第1の比較例としての放熱部材を示す部分拡大図である。
【図5】第1の比較例の放熱部材について、その放熱面積を説明するための概略図である。
【図6】第2の比較例の放熱部材について、その放熱面積を説明するための概略図である。
【図7】第3の比較例の放熱部材について、その放熱面積を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る組電池は、例えば内燃機関と電池に充電された電力によって駆動されるモータとを組み合わせて走行駆動源とするハイブリッド自動車、モータを走行駆動源とする電気自動車等に用いられる。組電池を構成する電池は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池、有機ラジカル電池であり、筐体内に収納された状態で自動車の座席下、後部座席とトランクルームとの間の空間、運転席と助手席の間の空間などに配置される。
【0016】
本発明の一実施形態である第1実施形態について図1〜図7を参照して説明する。図1は、本発明を適用した第1実施形態の組電池1の構成を説明するための斜視図である。図2は、組電池1に含まれる第1実施形態の放熱部材3を示す部分拡大図である。なお、図1では、多数個の電池セル2と放熱部材3とが積層されて組電池1を構成するところを、理解を容易にするため、4個の電池セル2と3個の放熱部材3のみを図示している。各図において、電池セル2が複数個積層されて並ぶ方向を積層方向Xとし、各電池セル2の対向する側面に沿う所定の方向を冷却流体の流れ方向F(以下、単に流れ方向Fともいう)とし、積層方向Xと冷却流体の流れ方向Fの両方に垂直な方向を、放熱部材3が折り曲げ加工により連続的に形成される方向Y(以下、単に方向Yともいう)とする。
【0017】
複数個の電池セル2の集合体である組電池1は、複数個の電池セル2の充放電または温度調節が電子部品(図示せず)によって制御される。各電池セル2は、図示しない送風部材による送風を受けて冷却される。組電池1は、電気的に直列接続された複数個の電池セル2をその側面を対向させるように並べて積層され、これらを一体化して構成されたものであり、図示しない筐体内に収納されている。上記の電子部品は、リレー、送風部材を駆動するモータ、インバータ等を制御する電子部品、各種の電子式制御装置等である。
【0018】
当該筐体は、メンテナンスのために少なくとも一面を取り外し可能に構成されたケースであり、樹脂または鋼板等で形成されている。筐体には、車両側に筐体をボルト締め等により固定するための取付部、および機器収納ボックス(図示せず)が設けられている。
【0019】
当該機器ボックスには、電池状態(例えば電圧、温度等)を監視する各種センサ等からの検出結果が入力される電池監視ユニット(図示せず)と、電池監視ユニットと通信可能に構成されリレーを制御するとともに、送風部材のモータの駆動を制御する制御装置と、各機器を接続するワイヤハーネス等と、が収納されている。電池監視ユニットは、各電池セル2の状態を監視する電池ECU(電池の電子式制御ユニット)であり、組電池1と多数の配線にて接続されている。
【0020】
組電池1は、積層方向Xに直交する電池セルの側面2a(方向Y及び方向Fに平行な側面)が拘束装置(図示せず)によって押圧されることにより拘束力を受け(図1参照)、積層された複数の角形状の電池セル2が一体に保持して形成される電池セル集合体である。組電池1を構成する複数の電池セル2は、例えば、組電池1の積層方向Xの両端部に設置された拘束板(図示せず)がロッド(図示せず)等によって連結されることにより、当該両端部から内側に向かう外力による圧縮力を受けて、拘束されることになる。複数の電池セル2は、4本の棒状のロッドによって圧縮力(拘束力)を受けて一体に固定される。ロッドは、積層された複数の電池セル2を安定した力で押圧して一体化できるように、金属、硬質の樹脂等の強度に優れた材料で形成されている。
【0021】
次に、組電池1を構成する各電池セル2について説明する。各電池セル2は、外装ケースによってその外周面を被覆された扁平状直方体である。外装ケースは、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属缶、または樹脂製ケースで形成されている。各電池セル2には、正極端子および負極端子からなる二つの電極端子が例えば冷却流体の流れ方向Fに離れて配置されており、当該電極端子は外装ケースから方向Yに突出するように露出している。
【0022】
組電池1を構成する複数個の電池セル2は、例えば、積層方向Xの一方端部側に位置する電池セル2における負極端子から始まって、各電池セル2の電極端子間を接続する各バスバー(図示せず)によって、組電池1内をF方向に往復しながら組電池1の積層方向Xの他方端部側に位置する電池セル2の正極端子に至るまで通電可能に直列接続されている。このようにして積層方向Xに隣接する電池セル2間は電気的に接続されることになる。換言すれば、組電池1を構成するすべての電池セル2は、積層方向Xの一方側端部に位置する電池セル2の電極端子から積層方向Xの他方側端部に位置する電池セル2の電極端子に至るまで、電流がジグザク状または蛇行状に流れるようにバスバーを介して電気的に直列接続される。
【0023】
積層方向Xに直交する電池セルの側面2a間には、当該側面のほぼ全体に亘る放熱部材3が介在している。放熱部材3は、スペーサとも呼ばれ、隣合う電池セル2の側面間ほぼ全体を占める大きさであり、空気等の冷却流体が電池セル間を流通する流体通路を形成するとともに、各電池セル2の熱を受熱して外部に放出する伝熱部材の機能を果たす。放熱部材3は、鉄、アルミニウム、銅またはその合金等の金属材料からなる板状部材を所定の形状に折り曲げ加工等により形成することにより製作される。
【0024】
放熱部材3は、流体の流れ方向Fに垂直な面における断面形状が特徴的な形状を有し、この特徴的形状が流体の流れ方向Fに連続的に延びることにより、流体の流れ方向Fに延びる冷却流体の流通経路を形成している。すなわち、冷却流体は、電池セル2間を流れるときに、放熱部材3の特徴的形状部分に接触しながら流体の流れ方向Fにスムーズに流下し、放熱部材3から吸熱して電池セル2の外部に熱を搬送するのである。
【0025】
以下、当該特徴的形状について、図2等を参照しながら説明する。放熱部材3は電池セル2間に介在して挟持される伝熱性のある部材である。放熱部材3は、電池セル2間を流通する冷却流体の流れ方向Fに対して直交する断面形状が第1の平坦部31、垂直部30、第2の平坦部32、傾斜部33、第1の平坦部31の順に繋がって繰り返し連続される形状であり、この繰り返し形状が電池セル2間を流れ方向Fに垂直な方向(方向Y)に延びる部材である。
【0026】
第1の平坦部31は、一方の電池セルの側面2aに平行に対面する部分であり、当該対面する部分が一方の電池セルの側面2aにおける流れ方向Fの幅全体に亘って延びている。第2の平坦部32は、一方の電池セル2とともに放熱部材3を挟む他方の電池セルの側面2aに平行に対面する部分であり、当該対面する部分が他方の電池セルの側面2aにおける流れ方向Fの幅全体に亘って延びている。
【0027】
垂直部30は、第1の平坦部31及び第2の平坦部32に対して垂直な部分であって、第1の平坦部31の端部と第2の平坦部32の端部とを連結し、電池セルの側面2aにおける流れ方向Fの幅全体に亘って延びている。第1の平坦部31と第2の平坦部32は、図2に図示するように、垂直部30の中点に対して点対称な位置に配されている。すなわち、第1の平坦部31を垂直部30の中点(垂直部30を線分とした場合の中点)に対して180度回転させると、第2の平坦部32に一致する位置関係になっている。したがって、第1の平坦部31と第2の平坦部32は、上記の繰り返し形状が反復される方向(方向Y)に垂直部30に対して、反対側にずれた位置にある。連続する第1の平坦部31、垂直部30及び第2の平坦部32の形状は、いわゆるクランク機構の鉤の手状を呈している。
【0028】
傾斜部33は、図2に図示するように、電池セルの側面2aに対して傾斜する部分であり、第2の平坦部32における垂直部30と接続する端部とは反対側に位置する端部と、当該垂直部30と接続する第1の平坦部31の隣に位置する別の第1の平坦部31における端部と、を連結する。傾斜部33は、第2の平坦部32と、第2の平坦部32に接続する垂直部30と、によって、第2の平坦部32と垂直部30でなす角度を直角とする直角三角形状を呈するようになっている。また、傾斜部33は、前述の別の第1の平坦部31と、この第1の平坦部31に接続する垂直部30と、によって、第1の平坦部31と垂直部30でなす角度を直角とする直角三角形状を呈するようになっている。そして、これらの直角三角形形状は、方向Yに交互に繰り返され、かつ電池セルの側面2aにおける流れ方向Fの幅全体に亘って同様の形状で延びている。
【0029】
以上のような形態の放熱部材3は、電池セルの側面2aにおける流れ方向Fの幅全体に等しい幅を有する金属製の板材を所定の折り曲げ加工することにより製作される。放熱部材3は、当該折り曲げ加工等により、図2に図示するように、流れ方向Fに直交する断面形状が第1の平坦部31、垂直部30、第2の平坦部32、傾斜部33、第1の平坦部31の順に繋がって繰り返し連続される形状に形成される。そして、組電池1において、放熱部材3は、各電池セル2に作用する拘束力に対して耐えうる拘束強度を発揮する機能を有するとともに、電池セル2間に形成される流体通路を流通する冷却流体に接触することにより電池セル2の伝熱面積を拡大する部分であり、電池セル2の熱を冷却流体へ放出するための伝熱経路として機能する。
【0030】
さらに、第1の平坦部31と垂直部30との接続部に相当する折り曲げ部である直角部34と、第1の平坦部31と傾斜部33との接続部に相当する折り曲げ部である鋭角部37とは、近接していることが好ましい。また、第2の平坦部32と垂直部30との接続部に相当する折り曲げ部である直角部35と、第2の平坦部32と傾斜部33との接続部に相当する折り曲げ部である鋭角部分36とは、近接していることが好ましい。さらに直角部34及び鋭角部37と、直角部35及び鋭角部分36とは、両方とも近接していることが好ましく、両方とも平坦部、傾斜部及び垂直部を三辺とする断面形状が直角三角形をなすことが好ましい。
【0031】
また、垂直部30は、流れ方向Fに対して垂直な断面における長さ寸法が第1の平坦部31及び第2の平坦部32と同じあることが好ましい。この場合、垂直部30と傾斜部33とのなす角度は、45度となる。また、第1の平坦部31及び第2の平坦部32のそれぞれは、垂直部30よりも長さが短いことが好ましい。この場合、垂直部30と傾斜部33とのなす角度は、45度よりも小さい角度となる。
【0032】
また、他の構成として、電池セル2の外装ケースが導電性材料で形成されている場合には、電池セルの側面2aと第1の平坦部31及び第2の平坦部32との互いに対面する部分のうち、少なくとも一方は、絶縁性物質40で被覆されていることが好ましい。当該部分における絶縁性物質40の被覆は、蒸着、コーティング、一体成形等によって形成することができる。例えば、折り曲げ加工等により上記の形状に形成した後の放熱部材3において、第1の平坦部31及び第2の平坦部32における電池セルの側面2aに対面する外表面に絶縁グリス等を塗布して絶縁性物質40を構成するようにしてもよい。
【0033】
図3は、放熱部材3の放熱面積を説明するための概略図であり、放熱部材3の断面形状について各部を線図によって示している。図3に示すように、本実施形態の放熱部材3について、第1の平坦部31と垂直部30のなす角度θ=90度とし、第1の平坦部31及び第2の平坦部32の長さをともに寸法a、隣接する電池セルの側面間の距離を(√3/2)aとする。この場合、傾斜部33の寸法は、(√7/2)aとなる。
【0034】
したがって、図3に示す線図の合計寸法は、第1の平坦部31、第2の平坦部32、垂直部30及び傾斜部33の合計寸法を2倍した値で、(4+√3+√7)aである。つまり、放熱部材3における直角三角形形状4個分当たりの放熱有効断面長さは、約8.38aになる。
【0035】
これに対して、放熱部材3に対する第1の比較例としての放熱部材10を示した部分拡大図が図4である。放熱部材10は、電池セル2間を流通する冷却流体の流れ方向Fに対して直交する断面形状が第1の平坦部100、第1の傾斜部102、第2の平坦部101、第2の傾斜部103、第1の平坦部100の順に繋がって繰り返し連続される形状であり、この繰り返し形状が電池セル2間を流れ方向Fに垂直な方向(方向Y)に延びる部材である。放熱部材10の断面形状は、第1の平坦部100、第1の傾斜部102及び第2の傾斜部103を三辺とする直角三角形と、第2の平坦部101、第1の傾斜部102及び第2の傾斜部103を三辺とする直角三角形とが交互に方向Yに繰り返される形態を呈している(以上、図4参照)。つまり、放熱部材10は、対向する第1の平坦部100及び第2の平坦部101が二つの傾斜部102と103によって連結され、正三角形状(後述のθ=60度の場合)の断面形状を呈している。
【0036】
図5は第1の比較例である放熱部材10の放熱面積を説明するための概略図であり、放熱部材10の断面形状について各部を線図によって示している。図5に示すように、第1の比較例の放熱部材10について、第1の平坦部100と第2の傾斜部103のなす角度θ=60度とし、第1の平坦部100及び第2の平坦部101の長さをともに寸法a、隣接する電池セルの側面間の距離を(√3/2)aとする。この場合、第1の傾斜部102及び第2の傾斜部103の長さ寸法は、ともにaとなる。
【0037】
したがって、図5に示す第1の比較例における線図の合計寸法は、第1の平坦部100、第2の平坦部101、第1の傾斜部102及び第2の傾斜部103の合計寸法を2倍した値に、さらに第2の平坦部101の寸法の2倍した値を加えた8aである。つまり、第1の比較例の放熱部材10における正三角形形状4個分当たりの放熱有効断面長さは、8aになる。
【0038】
以上より、本実施形態の放熱部材3と第1の比較例の放熱部材10とを比較すると、上記の放熱有効断面長さが放熱部材3の方が長い。このため、放熱部材3は、放熱部材全体としての放熱有効面積の向上が図れ、冷却性能の向上が見込めるのである。
【0039】
次に、図6は第2の比較例である放熱部材10Aの放熱面積を説明するための概略図であり、放熱部材10Aの断面形状について各部を線図によって示している。図6に示すように、第2の比較例の放熱部材10Aについて、第1の平坦部100と第2の傾斜部103Aのなす角度θ=30度とし、第1の平坦部100及び第2の平坦部101の長さをともに寸法a、隣接する電池セルの側面間の距離を(√3/2)aとする。この場合、第2の傾斜部103Aの長さ寸法は、aよりも長くなる。また、第2の平坦部101と第2の傾斜部103Aとが交わる頂点部は、図6のように本実施形態の放熱部材3における第2の平坦部32と傾斜部33との頂点部に対してa/2だけずれる位置にある。
【0040】
第2の比較例の場合には、両側の電池セル2から放熱部材10Aに対して拘束力としての圧縮力がかかった場合、当該圧縮力に対して強度を保持する必要のある第1の傾斜部102A及び第2の傾斜部103Aに、図6に白抜き矢印で図示するように、同じ方向に力が作用する。このため、第2の比較例の放熱部材10Aは、垂直部30の軸方向で圧縮力を受ける放熱部材3の構造と比べて、構造的に圧縮力に耐える力が小さく、強度的に不利である。
【0041】
また、図7は第3の比較例である放熱部材10Bの放熱面積を説明するための概略図であり、放熱部材10Bの断面形状について各部を線図によって示している。図7に示すように、第3の比較例の放熱部材10Bについて、第1の平坦部100と第2の傾斜部103Bのなす角度θ=120度とし、第1の平坦部100及び第2の平坦部101の長さをともに寸法a、隣接する電池セルの側面間の距離を(√3/2)aとする。この場合、第1の傾斜部102Bの長さ寸法は、aよりも長くなる。また、第2の平坦部101と第1の傾斜部102Bとが交わる頂点部は、図7のように本実施形態の放熱部材3の場合に対してa/2だけずれる位置にある。
【0042】
第3の比較例の場合には、両側の電池セル2から放熱部材10Bに対して拘束力としての圧縮力がかかった場合、当該圧縮力に対して強度を保持する必要のある第1の傾斜部102B及び第2の傾斜部103Bに、図7に白抜き矢印で図示するように、同じ方向に力が作用する。このため、第3の比較例の放熱部材10Bについても、垂直部30の軸方向で圧縮力を受ける放熱部材3の構造と比べて、構造的に圧縮力に耐える力が小さく、強度的に不利である。
【0043】
本実施形態の組電池1がもたらす作用効果について述べる。組電池1が備える放熱部材3は、流れ方向Fに対して垂直な断面形状が、両側の電池セルのうち、一方の電池セルの側面2aに対面する第1の平坦部31と、第1の平坦部31の端部から、一方の電池セルの側面2aに対して垂直方向に曲がる直角部34を形成して他方の電池セルの側面2aに向かって延びる垂直部30と、垂直部30の端部から、第1の平坦部31とは反対の方向に前記他方の電池セルの側面2aに対面するように延びる第2の平坦部32と、第2の平坦部32の端部から直角部34に向かって延びて、第1の平坦部31に隣合う別の第1の平坦部31の端部と第2の平坦部32の端部とを連結する傾斜部33と、を備える直角三角形状を繰り返し形成する。さらに放熱部材3は、当該繰り返される直角三角形状が両側の電池セルにおける流れ方向Fの幅に亘って延びている。
【0044】
この構成によれば、放熱部材3の特徴的断面形状によって、放熱部材3には冷却機能を果たす表面積が大きくなるため、電池セル2の冷却性能の向上が図れる。さらに、垂直部30によって両側の電池セル2から受ける圧縮力に抗するため、放熱部材3の各部が座屈しがたく、圧縮力に対して大きな強度を備えることになる。したがって、大きな拘束力に耐えられるため、電池セル2の拘束機能と、放熱のための表面積向上による電池セル2の冷却性能向上との両方が実現できるのである。
【0045】
また、放熱部材3は、電池セル2間を流通する冷却流体が接触し得る表面積を向上する特徴を有するので、より少ない冷却流体の流量で、より小さな流体機器の動力で、またより低い騒音で、必要な冷却性能を発揮することができる。したがって、このような作用効果を奏することにより、電池寿命の向上、電池セル数の低減、組電池1の小型化及び低コスト化が図れるのである。
【0046】
放熱部材3において、垂直部30は、冷却流体の流れ方向Fに対して垂直な断面における長さ寸法が第1の平坦部31及び第2の平坦部32と同じあることが好ましい。この構成を採用すれば、放熱部材3を所定の形状に形成するときに板材を折り曲げ加工等する場合に、等しい角度及び等しい寸法の各部を形成することができる。このため、加工性が向上し、放熱部材3の製造性向上が図れる。
【0047】
また、垂直部30は、冷却流体の流れ方向Fに対して垂直な断面における長さ寸法が第1の平坦部31及び第2の平坦部32よりも長いことが好ましい。この構成を採用すれば、放熱部材3に作用する圧縮力に対して抗力を発揮する垂直部30が他の部分よりも長くなるため、圧縮力に対する放熱部材3のさらなる強度向上が図れる。また、冷却流体の流れ方向Fに対して垂直方向の単位長さ当たりの放熱面積を増加させることができる。このため、電池セルの冷却性能をさらなる向上させることができる。
【0048】
また、電池セルの側面2a及び放熱部材3は導電性材料で形成されている。電池セルの側面2aと第1の平坦部31及び第2の平坦部32との互いに対面する部分のうち、第1の平坦部31及び第2の平坦部32の表面は、絶縁性物質40で被覆されている。
【0049】
このような構成によれば、隣接する電池セル2の外装ケースと放熱部材3との接触部位同士が絶縁性物質の被覆部分を介して接触するようになるため、電池セル2間の電気絶縁性が確保される。さらに、電気絶縁のための被覆部分は、第1の平坦部及び第2の平坦部であるため、絶縁被覆面積の低減が図れる。絶縁被覆面積の低減により、電池冷却のための伝熱抵抗、被覆材料、被覆工数の低減にも寄与する。
【0050】
したがって、絶縁被覆する面積を抑制できるため伝熱抵抗の低減が可能であり、電池冷却性能及び電気的安全性の確保を図ることができる。また、隣接する電池セル2間の電位差により、導電性材料部分が腐食する事態を抑制できる。
【符号の説明】
【0051】
1…組電池
2…電池セル
2a…電池セルの側面
3…放熱部材
30…垂直部
31…第1の平坦部
32…第2の平坦部
33…傾斜部
34…直角部
40…絶縁性物質
F…冷却流体の流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層して配置される複数個の電池セル(2)と、
熱伝導性を有し、隣接する前記電池セル間に介在して冷却流体が流通する流体通路を形成し、両側の前記電池セルから圧縮力を受ける放熱部材(3)と、を一体に備えて構成される組電池(1)であって、
前記放熱部材(3)は、
前記冷却流体の流れ方向(F)に対して垂直な断面形状が、
前記両側の電池セルのうち、一方の電池セルの側面(2a)に対面する第1の平坦部(31)と、
前記第1の平坦部(31)の端部から、前記一方の電池セルの側面(2a)に対して垂直方向に曲がる直角部(34)を形成して前記他方の電池セルの側面(2a)に向かって延びる垂直部(30)と、
前記垂直部(30)の端部から、前記第1の平坦部(31)とは反対の方向に前記他方の電池セルの側面(2a)に対面するように延びる第2の平坦部(32)と、
前記第2の平坦部(32)の端部から前記直角部(34)に向かって延びて、前記第1の平坦部(31)に隣合う別の第1の平坦部(31)の端部と前記第2の平坦部(32)の端部とを連結する傾斜部(33)と、を備える直角三角形状を繰り返し形成するとともに、
当該繰り返される直角三角形状が前記両側の電池セルにおける前記流れ方向(F)の幅に亘って延びることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記垂直部(30)は、前記冷却流体の流れ方向(F)に対して垂直な断面における長さ寸法が前記第1の平坦部(31)及び前記第2の平坦部(32)と同じあることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記垂直部(30)は、前記冷却流体の流れ方向(F)に対して垂直な断面における長さ寸法が前記第1の平坦部(31)及び前記第2の平坦部(32)よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項4】
前記電池セル(2)の外装ケース及び前記放熱部材(3)は導電性材料で形成されており、
前記電池セルの側面(2a)と前記第1の平坦部(31)及び前記第2の平坦部(32)との互いに対面する部分のうち、前記第1の平坦部(31)及び前記第2の平坦部(32)の表面は、絶縁性物質(40)で被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の組電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−169227(P2012−169227A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31276(P2011−31276)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】