説明

組電池

【課題】高出力、高容量仕様に対応可能で、過充電を抑制できる組電池を提供する。
【解決手段】組電池10は、少なくとも2種類からなる複数個のリチウムイオン二次電池である、複数個の主要セル101と少なくとも一つの基準セル100とを直列接続して構成される。主要セル101は、Ni、Co、もしくはMn、またはこれらのうち少なくとも二つを含有する活物質を有する正極と、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、チタン酸化物、シリコン合金、もしくは錫合金、またはこれらの少なくとも二つを含有する負極と、非水電解質と、を有している。基準セル100は、オリビン構造を有する活物質を含む正極100a、負極100b、及び非水電解質を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類以上の二次電池を電気的に接続して構成される組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の非水電解質二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータ、及び非水電解質を含む単セルを備え、正極の容量が負極の容量よりも大きく、充電時に非水電解質の少なくとも一部が負極近傍でガス化するように構成されている。これにより、負極の容量が正極の容量より小さくても、非水電解質の少なくとも一部が分解して負極の容量を補填するため、過充電に対して劣化しにくく、さらに適切な材料組成を選定することで過放電に対しても劣化しにくい非水電解質二次電池を提供できる。また、組電池における個々のセルの監視を不必要にできるので、電池監視に要するコストを低減することもできる。
【0003】
一方、特許文献2には、組電池のSOCを検出する目的において、複数の電位が平坦となるセルと電位勾配の大きいセルを組み合わせた組電池について記載されている。そして、特許文献2の技術は、通常使用域での熱的安定性の高いセルを多数組み合わせたことで組電池としての安全を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−273405号公報
【特許文献2】特開2007−220658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、個々の電池セルに限られた特有の電解液を用いる必要があるため、様々な仕様に対応可能な組電池を提供することが難しく、例えば高出力及び高容量を満たす組電池を提供することが困難である。また、ハイレート放電を必要とする場合には、特許文献1に記載の電池セルでは過充電が発生することがある。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術においては組電池としての安全性は確保できるものの、主体とするセルのエネルギー密度が小さいため、組電池全体としてのエネルギー密度が大きく低下することになり、高エネルギー密度化が必要と考えられる用途への適用は困難である。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高出力、高容量仕様に対応可能で、過充電を抑制できる組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1は、少なくとも2種類からなる複数個のリチウムイオン二次電池を電気的に接続して構成される組電池に係る発明であって、
Ni、Co、もしくはMn、またはこれらのうち少なくとも二つを含有する活物質を有する正極と、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、チタン酸化物、シリコン合金、もしくは錫合金、またはこれらの少なくとも二つを含有する負極と、非水電解質と、を有し、当該組電池を構成する主要な電池である複数個の主要セルと、
オリビン構造を有する活物質を含む正極、負極、及び非水電解質を備えた少なくとも一つの基準セルと、を備え、
基準セルと複数個の主要セルを直列接続して構成されることを特徴とする。
【0009】
この発明の基準セルは、当該充放電特性において、SOCが100%に近づくと電圧及び抵抗が急激に上昇する高SOC領域を示す。この発明によれば、少なくとも一つの基準セルと複数個の主要セルとを直列接続して組電池を構成することにより、充電時における組電池の電圧監視の際に、基準セルの電圧検出を行うことができる。基準セルは、SOCが100%に近い状態で急激な電圧変化の特性及び抵抗が急上昇する特性を有するため、例えば基準セルを電圧監視することにより、SOCの小さな変化に対して電圧の大きな変化が検出可能であり、組電池が過充電状態に遷移するタイミングを確実に検出することができるのみでなく、電流を絞ることが可能となる。
【0010】
さらに主要セルは、その活物質の特性から、数量の少ない基準セルよりもエネルギー密度が大きいため、特許文献2の組電池の場合に比べて、組電池全体としてのエネルギー密度の低下を低減でき、高エネルギー密度を要する用途に適用可能である。したがって、高出力、高容量仕様に対応可能で、過充電を抑制できる組電池を提供することができる。
【0011】
請求項2の発明によると、請求項1の発明において、基準セルが備える負極の容量は、正極の容量の1.0倍〜2.0倍の範囲であることを特徴とする。この発明によれば、例えば過度な充電が行われると、負極側では金属リチウムが析出することがあるが、基準セルの負極の容量が正極の容量以上であることにより、負極側での金属リチウムの析出を低減でき、一方で、基準セルの負極の容量を正極の容量の2.0倍以下にすることにより、基準セルのエネルギー密度を確保することができる。したがって、金属リチウム析出の抑制とエネルギー密度の確保とのバランスが図れる基準セルを提供することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、電池電圧が2.0Vから4.2Vに対応する主要セルの電池容量を、基準セルの蓄電可能な容量に対して1.0倍〜2.5倍の範囲に設定することを特徴とする。この発明によれば、主要セルの容量を基準セルの容量の1.0倍以上に設定することにより、基準セルが過充電状態に移ることを抑制可能である。さらに主要セルの容量を基準セルの容量の2.5倍以下に設定することにより、基準セルの容量に規定される組電池の容量低下を最低限に抑えることが可能となる。したがって、組電池の蓄電量の確保と劣化の抑制とのバランスが図れる組電池を提供することができる。
【0013】
請求項4の発明によると、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、基準セルは、負極及び正極間に介在するセパレータを備え、セパレータは、樹脂にセラミックスを塗布したセラミックス層を有し、セラミックス層は、正極に面していることを特徴とする。この発明によれば、基準セルにおいて高電圧状態になった場合に、セラミックス層が正極に対向して設けられていることにより、例えばセパレータ樹脂部分の酸化分解等による極間短絡を抑制することができ、組電池の安全を確保可能となる。
【0014】
請求項5の発明によると、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、基準セルの単位電極面積当たりの電流密度は、主要セルの単位電極面積当たりの電流密度よりも小さく設定され、
基準セルは、非水電解質に対する添加剤として、ビニルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、またはプロパンスルトン、リチウムビスオキサレートボレートを含むことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、電流密度が大きいと起こり易い局所的な金属リチウムの析出を基準セルにおいて抑制することができるため、当該析出によりもたらさせる極間短絡を防止することができる。このような作用効果を基準セルにおいて発揮させることにより、組電池の過充電状態を検出するために重要な機能を果たす基準セルについて、組電池過充電時Liの析出および短絡に基づいた組電池への充電の継続や、劣化を遅らせることができる。
【0016】
請求項6の発明によると、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、基準セルは、直列接続されてセル群を構成する全セルの中で、中央部に配置されることを特徴とする。複数のセルを直列に接続してなるセル群において、その中央部に位置するセルは、温度が高くなる傾向にあり、他の部分に比べてセルの劣化が早い傾向がある。そこで、本発明によれば、その構造から主要セルに比べて劣化しにくい性質を有する基準セルをセル群の中央部に配置することにより、組電池全体の劣化速度を遅らせることができる。
【0017】
請求項7の発明によると、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、基準セルは、直列接続されてセル群を構成する全セルの中で、端部に配置されることを特徴とする。電池は、低温環境下で負極側において金属リチウムの析出を起こし易い傾向にあり、直列接続により構成されるセル郡において端部に位置するセルの温度は他のセルに比べて低温になりやすい。そこで、本発明によれば、その構造から主要セルに比べて金属リチウムの析出を起こしにくい性質を有する基準セルをセル群の端部に配置することにより、組電池全体としての劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第1実施形態の組電池を適用可能な組電池システムの構成を示した概略図である。
【図2】第1実施形態の組電池に含まれる基準セルの一例を示すリチウムイオン二次電池の断面図である。
【図3】第1実施形態の組電池に含まれる主要セルの充放電特性を示す図である。
【図4】第1実施形態の組電池に含まれる基準セルの充放電特性を示す図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の組電池を適用可能な組電池システムの構成を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0020】
(第1実施形態)
本発明に係る組電池を適用する第1実施形態について説明する。組電池10に含まれるリチウムイオン二次電池は、少なくとも2種類からなる。組電池10は、少なくとも二種類のリチウムイオン二次電池を直列接続して構成されている。少なくとも二種類のリチウムイオン二次電池は、少なくとも一つの基準セル100と、基準セル100よりも多数設けられる複数個の主要セル101とから構成されている。組電池10は、例えば、電動機のみによって走行する電気自動車(EV)、電動機と内燃機関とを併用して走行駆動力とするプラグインハイブリッド自動車(PHV)等に搭載される車両用蓄電池、あるいは住宅における蓄電池用の定置用蓄電池として用いることができる。
【0021】
図1は、本発明に係る組電池10を適用可能な組電池システム200の構成を示した概略図である。組電池システム200は、ハイブリッド自動車に搭載され、走行のための電動機と接続されている。この組電池システム200は、図1に示すように、組電池10と、電流検出装置30と、電圧検出装置20と、電池制御装置40とを備えている。
【0022】
組電池10は、ここでは、その一例として1個の基準セル100と、複数個の主要セル101とを含んでいる。組電池10は、例えば、50個の主要セルと1個の基準セル100とを直列接続して構成される。基準セル100は、オリビン構造の正極活物質を有するため、エネルギー密度が小さいので、組電池10に含まれる基準セル100の比率は、組電池10全体のエネルギー密度を多く確保するためにも、小さい方が好ましい。
【0023】
1個の基準セル100は、直列接続されて組電池10を構成する全セルの中で端部に配置されている。基準セル100と主要セル101は、充電時、放電時のSOC(電池の蓄電率)と端子間電圧の関係を示した充放電特性が異なる電池である。つまり、基準セル100と主要セル101は、異なる充放電特性を有するために、正極に異なる活物質を含んでいる。
【0024】
電池制御装置40は、入力部41、演算部42、記憶部43、出力部44等を備えている。電流検出装置30は、組電池10を構成する複数のリチウムイオン二次電池(基準セル100及び主要セル101)を流れる電流値を検出する。電圧検出装置20は、各々の主要セル101と基準セル100の端子間電圧を検出する。電圧検出装置20は、組電池10の充電時や放電時に、少なくとも基準セル100の端子間電圧を検出する。
【0025】
電流検出装置30が検出する電流値や、電圧検出装置20が検出する端子間電圧は、入力部41に入力される。組電池10におけるSOCの状態は、例えば記憶部43に記憶されたマップ等を用いて演算部42によって演算される。当該マップは、例えば、主要セル101固有の充放電特性、基準セル100固有の充放電特性図等である。つまり、演算部42は、主要セル101と基準セル100のそれぞれについて、電圧検出装置20によって検出された端子間電圧と当該マップから充電時、放電時のSOCを算出し、組電池10全体のSOCをも算出することができる。
【0026】
出力部44は、演算結果に基づいて組電池10の充放電を制御する。したがって、電池制御装置40は、電流検出装置30が検出する電流値や、電圧検出装置20が検出する端子間電圧を用いて、組電池10の充放電を制御する。上記のように、電池制御装置40は、電圧検出装置20が検出する端子間電圧と、記憶部43に記憶されている充放電特性を示したマップとを用いて、組電池10の充電容量または放電容量を算出し、組電池10に蓄えられている電気容量を求める。
【0027】
図2は、基準セル100の一例を示すリチウムイオン二次電池の断面図である。基準セル100は、オリビン構造を有する正極活物質を含む正極100aと、負極活物質を含む負極100bと、正極100aと負極100bの間に介在する媒体である非水電解質と、正極100aと負極100bの間に介在して、これらが電気的に短絡しないように配されるセパレータ100cと、正極100a、負極100b、非水電解質、及びセパレータ100cを内部に含む外装ケース100fと、を備えている。
【0028】
(正極100a)
基準セル100に含まれる正極100aの活物質としては、オリビン構造を有する活物質を用いることが望ましい。オリビン構造を有する活物質としては、鉄を含む鉄オリビン、マンガンを含むマンガンオリビンを用いることができる。特に正極100aの活物質としてFe、Mn、Ni、Coから選択された少なくとも1種の金属元素を含むことが望ましい。
【0029】
また、正極100aの活物質には、オリビン構造を有するオリビン型リチウム化合物、例えば、リン酸化合物の一つであるリチウム金属リン酸塩を用いてもよい。リチウム金属リン酸塩は、例えば、LiMPOで表される化合物とする。Mには、Mn,Fe,Co,Niから選択された少なくとも2種以上の金属元素を用いることができる。
【0030】
その他に有することができる要素としては導電材、結着材、集電体等が挙げられる。正極活物質は、導電材、結着材等と混合した状態で集電体の表面に層状に形成された活物質層を形成することができる。例えば、正極活物質と結着材と導電材等とを水、Nメチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶媒中で混合した後、集電体上に塗布して形成することができる。
【0031】
導電材は、活物質から生成される電子の授受を行う材料であり、導電性を有するものであればよい。例えば炭素材料や導電性高分子材料が挙げられる。炭素材料としてはケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、非晶質炭素等を採用できる。また、導電性高分子材料としてはポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセンを採用できる。
【0032】
結着材は活物質等の構成要素を結合させて電極を形作る材料である。種々の高分子材料を採用することができ、化学的・物理的安定性が高いものが望ましい。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(PAA)バインダ、ポリアクリル酸リチウム(PAALi)バインダ等が挙げられる。また、導電材として導電性高分子材料を採用すると、導電材の作用に加え結着材の作用を発現させることができる。集電体としてはアルミニウム等の金属から形成される金属箔等を採用することができる。
【0033】
図2に示すように、正極100aは、正極集電体100a2の両面に活物質を含む正極層100a1,100a3が担持された構造を有する。正極100aは、ラミネートシートで形成される外装ケース100f内に、例えば1枚設けられている。正極100aは負極100bとともに積層されて、電極積層体を構成している。正極集電体100a2は、この集電体と同じ材料からなる端子接続部100a4に接続されている。端子接続部100a4は、同じ材料からなる正極端子部100dに接続されている。正極端子部100dは、電極積層体を被覆する外装ケース100fの外部にその先端が所定長さ寸法突出して配されている。
【0034】
(負極100b)
負極100bの構成は特に限定されないが、例えば負極活物質として黒鉛を用いることができる。負極活物質の種類によっては結着材や集電体等を用いる場合もある。結着材は正極100aにて説明したものと同様のものが採用できる。集電体としては銅等の金属から形成される金属箔等を採用することができる。
【0035】
基準セル100を構成する場合には、負極100bの活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる化合物を単独または組み合わせて用いることができる。リチウムイオンを吸蔵及び放出できる化合物の一例としてはリチウム等の金属材料、ケイ素、スズ、銅等を含有する合金系材料、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、コークス等の炭素系材料、チタン酸化物等がある。また、チタン酸化物は、ブロンズ構造を有するもの、ブロンズ構造を有さないその他のものを採用することができる。したがって、基準セル100の負極100bは、リチウム金属、炭素系材料、ブロンズ構造を有するチタン酸化物、その他のチタン酸化物、合金系材料のいずれかを含むものである。また、これらの活物質は単独で用いるだけでなく、これらを複数種類混合して用いることもできる。
【0036】
例えば、黒鉛を負極として用いる場合、基準セルのエネルギー密度を高めることができる一方で、ハードカーボンまたはソフトカーボンのような負極材を用いた際には高い安全性に加えて主要セルと同等またはそれ以上の電位勾配を基準セルに持たせることも可能となる。また負極活物質として合金材料、炭素材料を用いる場合は、負極活物質と結着材等とを水、NMP等の溶媒中で混合した後、銅等の金属からなる集電体上に塗布して形成することができる。
【0037】
図2に示すように、負極100bは、負極集電体100b2の両面に活物質を含む負極層100b1,100b3が担持された構造を有する。負極100bは、ラミネートシートで形成される外装ケース100f内に、例えば2枚設けられている。各負極100bは正極100aとともに積層されて、電極積層体を構成している。したがって、負極集電体100b2は、負極100bの積層方向に2個積層して配置されている。各負極集電体100b2は、この集電体と同じ材料からなる端子接続部100b4に接続されている。2本の端子接続部100b4は、同じ材料からなる1個の負極端子部100eに接続されている。負極端子部100eは、電極積層体を被覆する外装ケース100fの外部にその先端が所定長さ寸法突出して配されている。
【0038】
(非水電解質)
非水電解質は正極100a及び負極100b間のイオン等の荷電担体の輸送を行う媒体であり、正極100aと負極100bの間に介在して電極積層体及びセパレータ100cを十分に濡らしている。非水電解質は、特に限定しないが、リチウムイオン二次電池が使用される雰囲気下で物理的、化学的、電気的に安定なものが望ましい。
【0039】
例えば、非水電解質としては、LiBF,LiPF,LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiN(CFSO)(CSO)の中から選ばれた1種以上を支持電解質とし、これを有機溶媒に溶解させた電解液が好ましい。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等及びこれらの混合物を採用できる。中でもカーボネート系溶媒を含む電解液は、高温での安定性が高い点で好ましい。また、非水電解質に対する添加剤としては、例えばビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロパンスルトン、リチウムビスオキサレートボレート等を含むことが好ましい。
【0040】
(セパレータ100c)
正極100aと負極100bとの間には電気的な絶縁作用とイオン伝導作用とを両立する部材であるセパレータ100cが介装されている。非水電解質が液状である場合にはセパレータ100cは、液状の電解質を保持する役割をも果たす。セパレータとしては、多孔質合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)やガラス繊維からなる多孔質膜、不織布を採用できる。さらに、セパレータ100cは、正極100a及び負極100bの間の絶縁を担保する目的で、正極100a及び負極100bよりもさらに大型の形態となっている。
【0041】
図2に示す本例では、セパレータ100cは、樹脂層100c1にセラミックスを塗布したセラミックス層100c2を有する。樹脂層100c1は、例えば、ポリエチレンにより形成された多孔性膜を用いることができる。セラミックス層100c2は、この多孔性膜にセラミックの微粒子を塗布することで作製することができる。セラミックス層100c2は、正極100aに面するように配置されている。すなわち、セラミックス層100c2は、正極100aの正極層100a1や正極層100a3に対向する。」
(電極体構造)
電極体としては、本実施形態に記載した積層体構造の他、捲回体構造等用途に応じた構造を選択することが可能である。
【0042】
(外装ケース100f)
外装ケース100fは、外観が平板状体であり、例えば、二つ折りにされたラミネートシートの端部同士を熱融着することにより当該端部同士を封止して、密閉された内部空間を形成している。このような形態で形成された内部空間には、電極積層体、非水電解質、端子接続部100a4,100b4、正極端子部100dの一部、及び負極端子部100eの一部が内蔵されている。熱融着は、熱融着されるラミネートシートの端部同士を合わせて加圧した状態で、繰り返しの充放電によって電池特性が低下しない所望の気密性能が得られるように、適正な所定温度かつ所定時間、加熱することにより実施する。
【0043】
なお、外装ケースとしてはラミネートシートに限らず金属缶を用いても良好な特性が得られる。金属缶の形状としては例えば円筒型、角型が想定される。これら外装ケースおよびそのサイズは種々の組み合わせが想定されるが、この組み合わせによって本発明の効果が損なわれることは無い。例えば、基準セルとしてラミネートシート外装ケースを用いたセル、主要セルとしてラミネートシート外装ケースのセルより成る組電池、基準セルとして、26650円筒型セル、主要セルとして18650円筒型セルより成る組電池、基準セルとして26650円筒型セル、主要セルとしてラミネートシート外装ケースセルよりなる組電池等種々の組電池が用途に応じて想定可能である。
【0044】
主要セル101は、Ni、Co、もしくはMn、またはこれらのうち少なくとも二つを含有する正極活物質を有する正極と、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、チタン酸化物、シリコン合金、もしくは錫合金、またはこれらの少なくとも二つを含有する負極と、正極と負極の間に介在する媒体である非水電解質と、を有したリチウムイオン二次電池である。主要セル101は、さらに、正極と負極の間に介在して、これらが電気的に短絡しないように配されるセパレータと、正極、負極部、非水電解質、及びセパレータを内部に含む外装ケースと、を備えている。
【0045】
主要セル101における正極の活物質は、LiFeMnCoPO,LiFeMnNiPO,LiMnCoNiPOのように、Mとして3種の金属元素を含む化合物(3元系の正極活物質)を採用してもよい。この場合、X,Y,Zは、それぞれ0より大きく1未満の任意の値であるとともに、X,Y及びZの和は1になるように設定する。
【0046】
さらに、組電池10を構成する基準セル100と主要セル101は、以下の構成上の特徴を有している。基準セル100が備える負極100bの容量は、正極100aの容量の1.0倍〜2.0倍の範囲に設定するのが好ましい。主要セル101のOCV範囲2.0V〜4.2Vで利用可能な容量は、基準セル100の蓄電可能な容量に対して1.0倍〜2.5倍の範囲に設定されることが好ましい。さらにエネルギー密度を向上させるため、1.0倍〜1.5倍であることがより好ましい。例えば、基準セル100の蓄電可能容量が10(Ah)、主要セル101の容量が12(Ah)であれば、主要セル101の蓄電可能な容量は、基準セル100の蓄電可能な容量に対して1.2倍である。また、基準セル100の単位電極面積当たりの電流密度は、主要セル101の単位電極面積当たりの電流密度よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0047】
図3は組電池10に含まれる主要セル101の充放電特性を示す図である。なお、図3に示す充放電特性を有する主要セル101は、一例としてNi系の正極活物質と黒鉛の負極活物質を備えたセルである。図4は、組電池10に含まれる基準セル100の充放電特性を示す図である。なお、図4に示す充放電特性を有する基準セル100は、一例として鉄オリビン構造の正極活物質と黒鉛の負極活物質を備えたセルである。
【0048】
基準セル100は、図4に示すように、充放電特性において、SOCが100%に近づくと電圧が急激に変化する高SOC領域(SOC98%〜100%の領域)を示す。
【0049】
また、ここでは、主要セル101の容量は、基準セル100の容量の100%〜130%の範囲に設定する。そして、SOCに対する基準セル100の端子間電圧は、主要セル101の端子間電圧よりも低い値で検出される。例えば、主要セル101の容量と基準セル100の容量が同じ場合(主要セル101の容量が基準セル100の容量の100%と同等の場合)には、基準セル100、主要セル101のそれぞれの端子間電圧は、SOC10%で3.20V、3.35Vであり、SOC87%で3.35V、4.00Vである。
【0050】
組電池10への充電中に、満充電に近づき、基準セル100のSOCが98%に達すると、鉄オリビン活物質中のLiが枯渇状態に近づき電圧が急上昇する。この際、電気抵抗の急激な上昇が生じる。つまり、基準セル100の電気抵抗が上昇することによりセルに電流が流せなくなり、組電池10全体に対しても電流が流れ難くなる。そして、それ以上の充電が進行し難くなり、その他多数の主要セルが過充電状態にならなくなるため、組電池10への充電を安全な状態で終了することができる。
【0051】
電池制御装置40は、組電池10の監視ユニットとして、充電時や放電時に少なくとも基準セル100の端子間電圧を電圧検出装置20によって検出する。演算部42は、基準セル100の端子間電圧の検出値と当該マップとから、端子間電圧の検出値が低SOC領域(急激な電圧変化域)に入り、放電停止条件としての所定の電圧値以下になったと判断した場合は、放電時において過放電状態が近いと判断し、出力部44に直ちに放電を停止する必要があることを出力する。そして、組電池10からの放電は停止される。
【0052】
また、演算部42は、基準セル100の端子間電圧の検出値と当該マップとから、端子間電圧の検出値が高SOC領域(急激な電圧変化域)に入り、充電停止条件としての所定の電圧値以上になったと判断した場合は、充電時において過充電状態が近いと判断し、出力部44に直ちに充電を停止する必要があることを出力する。そして、組電池10への充電は停止される。このように基準セル100は、組電池10の電圧監視において、過放電や過充電を防止するシャットダウン機能を果たすセルである。
【0053】
さらに、複数個の主要セル101の蓄電可能な容量が、基準セル100の蓄電可能な容量の同等以上に設定されている場合には、複数個の主要セル101と少なくとも一つの基準セル100は直列に接続されているので、基準セル100のSOCが高SOC領域に達して充電がシャットダウン(基準セルの容量上限・抵抗上昇によりそれ以上の電流が流れなくなること)される前に、主要セル101のSOCが0%あるいは100%に達することはない。
【0054】
(試験例の評価)
以下に、本発明を適用する複数の試験例の組電池に関して、過充電時のシャットダウン機能とエネルギー密度について評価した結果を説明する。
【表1】

【0055】
表1の試験例1〜8は、Niを含む正極活物質及び黒鉛を含む負極活物質を備えた主要セルを50個直列接続したものである。このうち試験例1〜4は、鉄を含むオリビン構造の正極活物質と黒鉛を含む負極活物質を備えた1個または2個の基準セルを50個の主要セルに接続してなる組電池である。さらに試験例1は、1個の基準セルを組電池の中央部に配置して直列接続してなる組電池である。試験例2は、1個の基準セルを組電池の端部に配置して直列接続してなる組電池である。試験例3は、基準セルを組電池両端部それぞれに配置して直列接続してなる組電池である。試験例4は、2個の基準セルを組電池の一端部に配置して直列接続してなる組電池である。
【0056】
また、試験例5は、鉄を含むオリビン構造の正極活物質とハードカーボンを含む負極活物質を備えた1個の基準セルを組電池の中央部に配置して直列接続してなる組電池である。試験例6は、鉄を含むオリビン構造の正極活物質とソフトカーボンを含む負極活物質を備えた1個の基準セルを組電池の中央部に配置して直列接続してなる組電池である。試験例8は、鉄を含むオリビン構造の正極活物質とチタン酸リチウムを含む負極活物質を備えた1個の基準セルを組電池の中央部に配置して直列接続してなる組電池である。
【0057】
次に試験例9〜11は、3元系の正極活物質及び黒鉛を含む負極活物質を備えた主要セルを50個直列接続したものである。このうち試験例9は、鉄を含むオリビン構造の正極活物質と、黒鉛を含む負極活物質と、正極に面するセラミックス層を有したセパレータとを備える1個の基準セルを組電池の端部に配置して直列接続してなる組電池である。また、試験例10は、鉄を含むオリビン構造の正極活物質と黒鉛を含む負極活物質を備え、電解液添加剤としてビニレンカーボネートを有する1個の基準セルを組電池の端部に配置して直列接続してなる組電池である。また、試験例11は、鉄を含むオリビン構造の正極活物質と黒鉛を含む負極活物質を備え、電解液添加剤としてビニレンカーボネートを有し、単位電極面積当たりの電流密度が他の試験例の半分に設定された1個の基準セルを組電池の端部に配置して直列接続してなる組電池である。
【0058】
比較例1は、Niを含む正極活物質及び黒鉛を含む負極活物質を備えたセルを50個直列接続してなる組電池である。比較例2は、Niを含む正極活物質及びチタンを含む負極活物質を備えたセルを50個直列接続してなる組電池である。なお、各試験例及び各比較例に用いられるセルの容量は、20(Ah)〜22(Ah)の範囲である。
【0059】
各試験例及び各比較例について、過充電時のシャットダウン機能及び組電池のエネルギー密度の評価結果を、表1を参照して以下に説明する。過充電試験は、各試験例及び各比較例の組電池に対して、セル当たり6V、電流レート4Cの過酷な条件で3時間継続して充電を行った。この条件の過充電によって、比較例1では発火が発生し、比較例2では発火しないものの発煙が発生したが、本発明の組電池に含まれる試験例1〜11では、発煙及び発火は発生しなかった。したがって、本発明に係る組電池は、上記の過充電試験において良好な結果が得られた。
【0060】
次に、組電池のエネルギー密度に関する評価結果を説明する。この評価では、まず、各試験例及び各比較例に係る組電池のエネルギー密度を求め、オリビン構造を有する基準セルを主要セルに置き換えて構成される主要セルのみからなる組電池のエネルギー密度を求める。そして、各試験例及び各比較例に係る組電池のエネルギー密度が、当該主要セルのみからなる組電池のエネルギー密度の90%以上であるか否かを判定する。この評価によれば、比較例2では90%に達しない結果であったが、試験例1〜11及び比較例2では90%以上であるため、良好な結果が得られた。以上の二つの評価結果から、本発明に含まれる試験例1〜11は、電池容量の面と過充電に対する強さの面とから、これらの両立が図れる良好な組電池であり、上記本発明の目的を達成できる組電池である。
【0061】
本実施形態の組電池10がもたらす作用効果について説明する。組電池10は、少なくとも2種類からなる複数個のリチウムイオン二次電池である、複数個の主要セル101と少なくとも一つの基準セル100とを直列接続して構成される。主要セル101は、Ni、Co、もしくはMn、またはこれらのうち少なくとも二つを含有する活物質を有する正極と、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、チタン酸化物、シリコン合金、もしくは錫合金、またはこれらの少なくとも二つを含有する負極と、非水電解質と、を有し、組電池10を構成する主要な電池である。基準セル100は、オリビン構造を有する活物質を含む正極100a、負極100b、及び非水電解質を備えている。
【0062】
主要セル101は充電時、放電時のSOCと端子間電圧の関係を示す充放電特性において、SOCの全範囲にわたって電圧変化率が大きく変動しないが、基準セル100は、SOCが0%に近づく電圧が急激に変化する低SOC領域と、SOCが100%に近づくと電圧が急激に変化する高SOC領域を示す。本実施形態によれば、少なくとも一つの基準セル100と複数個の主要セル101とを直列接続して組電池10を構成することによって、充電時や放電時における組電池10の電圧監視の際に、基準セル100の電圧検出を行うことができる。基準セル100は、SOCが0%や100%に近い状態で急激な電圧変化を示す特性を有するため、基準セル100を電圧監視することにより、SOCの小さな変化に対して電圧の大きな変化が検出可能であり、組電池10が過充電状態や過放電状態に遷移するタイミングを確実に検出することができる。
【0063】
さらに主要セル101は、その活物質の特性から、数量の少ない基準セル100よりもエネルギー密度が大きいため、従来の組電池に比べて組電池全体としてのエネルギー密度の低下を低減できる。ゆえに、高エネルギー密度を要する用途に適用可能である。以上より、本実施形態の組電池10によれば、高出力、高容量仕様に対応可能で、過放電や過充電を抑制できるのである。
【0064】
また、本実施形態の組電池10によれば、正極と負極の間に介在して、過充電状態で溶融することによりシャットダウン機能を発揮するセパレータを備えた従来の組電池と異なり、シャットダウン機能を発揮する際に、セルの構成要素に変質、変形を伴う損傷がないため、セルの再使用が可能である。したがって、過充電、過放電状態を未然に回避して、長く機能を発揮し続ける組電池を提供できる。
【0065】
また、基準セル100が備える負極100bの容量は、正極100aの容量の1.0倍〜2.0倍の範囲に設定されている。これによれば、例えば過度な充電が行われると、一般に負極側では金属リチウムが析出することがあるが、基準セル100は、負極100bの容量が正極100aの容量以上であることにより、負極100b側での金属リチウムの析出を低減でき、一方で、基準セル100の負極100bの容量を正極100aの容量の2.0倍以下にすることにより、基準セル100のエネルギー密度をある程度確保することができる。したがって、金属リチウム析出の抑制とエネルギー密度の確保とのバランスが図れる基準セル100が得られるのである。
【0066】
また、主要セル101の蓄電可能な容量は、基準セル100の蓄電可能な容量に対して1.0倍〜2.5倍の範囲に設定されている。これによれば、主要セル101の容量を基準セル100の容量の1.0倍以上に設定することにより、基準セル100よりも個数の多い主要セル101の蓄電量を多くできるため、組電池10全体の蓄電量を確保することができる。さらに主要セル101の容量を基準セル100の容量の1.3倍以下に設定することにより、充電時や放電時の電圧監視の際に、主要セル101のSOCが0%や100%に近くなる前に、基準セル100の低SOC領域や高SOC領域での急激な電圧変化を検出することができる。このため、主要セル101が過充電状態や過放電状態になることをより確実に防止することが可能であり、組電池10全体の劣化を抑制することができる。
【0067】
また、基準セル100は、負極100b及び正極100a間に介在するセパレータ100cを備える。セパレータ100cは、樹脂層100c1にセラミックスを塗布したセラミックス層100c2を有する。セラミックス層100c2は、正極100aに面している。この構成によれば、基準セル100において高電圧状態になった場合に、セラミックス層100c2が正極100aに対向して設けられていることにより、極間短絡を抑制することに寄与する。
【0068】
また、基準セル100の単位電極面積当たりの電流密度は、主要セル101の単位電極面積当たりの電流密度よりも小さく設定されている。基準セル100は、非水電解質に対する添加剤として、ビニルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロパンスルトン、またはリチウムビスオキサレートボレートを含んでいる。この構成によれば、電流密度が大きいと起こり易い局所的な金属リチウムの析出を抑制することができるため、当該析出によりもたらさせる極間短絡を防止することができる。さらに、負極上に良好な被膜を形成可能であり、耐久劣化を抑制可能である。このような作用効果を基準セル100において発揮させることにより、組電池10の過充電状態や過放電状態を検出するために重要な機能を果たす重要部品である基準セル100について、劣化を遅らせることができる。したがって、組電池10の過充電、過放電の抑制機能を長く発揮させることが可能になる。
【0069】
また、基準セル100は、直列接続されて組電池10を構成する全セルの中で、端部に配置されている。一般に、電池は、低温環境下で負極側において金属リチウムの析出を起こし易い傾向にあり、直列接続により構成される組電池10において端部に位置するセルの温度は他のセルに比べて低温になりやすい。そこで、その構造から主要セル101に比べて金属リチウムの析出を起こしにくい性質を有する基準セル100を、組電池10の端部に配置することにより、組電池10全体としての劣化を抑制することができるのである。
【0070】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る組電池10A及び組電池システム200Aについて、図5にしたがって説明する。図5は第2実施形態の組電池10Aを適用可能な組電池システム200Aの構成を示した概略図である。本実施形態で特に説明しない構成、作用効果等は、第1実施形態と同様である。
【0071】
第2実施形態は、第1実施形態に対して、複数個のセルを直列接続してなるセル群を複数個有し、当該複数個のセル群を並列接続して組電池を構成する点が異なる。図5に示すように、第2実施形態の組電池10Aは、3個のセル群10A1,10A2,10A3を有し、これら3個のセル群を並列接続して構成されている。
【0072】
図5に示すように、セル群10A1は、複数個の主要セル101と1個の基準セル100Aとを直列接続して構成されている。基準セル100Aは、直列接続されてセル群10A1を構成する全セルの中で、セル群10A1の端部に配置されている。セル群10A2は、複数個の主要セル101と1個の基準セル100Bとを直列接続して構成されている。基準セル100Bは、直列接続されてセル群10A2を構成する全セルの中で、セル群10A2の端部に配置されている。セル群10A3は、複数個の主要セル101と1個の基準セル100Cとを直列接続して構成されている。基準セル100Cは、直列接続されてセル群10A3を構成する全セルの中で、セル群10A3の中央部に配置されている。このように、各セル群には、少なくとも1個の基準セルが含まれ、主要セルと直列接続されている。
【0073】
組電池システム200Aは、組電池10Aと、電流検出装置30と、電圧検出装置20Aと、電池制御装置40とを備えている。
【0074】
電圧検出装置20Aは、各セル群10A1,10A2,10A3について、各々の主要セル101と基準セル100の端子間電圧を検出する。電圧検出装置20Aは、組電池10Aの充電時や放電時に、各セル群10A1,10A2,10A3において、少なくとも基準セル100A,100B,100Cの端子間電圧を検出する。
【0075】
電流検出装置30が検出する電流値や、電圧検出装置20Aが検出する端子間電圧は、入力部41に入力される。組電池10AにおけるSOCの状態は、例えば記憶部43に記憶されたマップ等を用いて演算部42によって演算される。当該マップは、例えば、主要セル101固有の充放電特性、基準セル100A,100B,100C固有の充放電特性図等である。つまり、演算部42は、主要セル101と基準セル100A,100B,100Cのそれぞれについて、電圧検出装置20Aによって検出された端子間電圧と当該マップから充電時、放電時のSOCを算出し、組電池10A全体のSOCをも算出することができる。
【0076】
したがって、電池制御装置40は、電流検出装置30が検出する電流値や、電圧検出装置20Aが検出する端子間電圧を用いて、組電池10Aの充放電を制御する。電池制御装置40は、電圧検出装置20Aが検出する各セル群における各セルの端子間電圧と、記憶部43に記憶されている充放電特性を示したマップとを用いて、組電池10Aの充電容量または放電容量を算出し、組電池10Aに蓄えられている電気容量を求める。
【0077】
組電池10Aへの充電中に、満充電に近づき、各セル群10A1,10A2,10A3における基準セル100A,100B,100Cのいずれかが低SOC領域に達すると、電気抵抗が上昇して当該基準セルの端子間電圧が急増する。つまり、当該基準セルの電気抵抗が上昇することにより当該基準セルに電流が流せなくなるため、当該基準セルが所属するセル群に電流が流せなくなり、組電池10A全体に対しても電流が流れ難くなる。そして、それ以上の充電が進行し難くなり、その他多数の主要セルが過充電状態にならなくなるため、組電池10Aへの充電を安全な状態で終了することができる。
【0078】
本実施形態によれば、基準セル100Cは、直列接続されてセル群10A3を構成する全セルの中で、中央部に配置されている。複数のセルを直列に接続してなるセル群において、その中央部に位置するセルは、電圧が高くなる傾向にあり、他の部分に比べてセルの劣化が早い傾向がある。そこで、その構造から主要セル101に比べて劣化しにくい性質を有する基準セル100Cをセル群10A3の中央部に配置することにより、組電池10A全体の劣化速度を遅らせることができる。
【符号の説明】
【0079】
10,10A…組電池
10A1,10A2,10A3…セル群
100,100A…基準セル
100a…正極
100b…負極
100c…セパレータ
100c1…樹脂層(樹脂部)
100c2…セラミックス層
101…主要セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類からなる複数個のリチウムイオン二次電池を電気的に接続して構成される組電池であって、
Ni、Co、もしくはMn、またはこれらのうち少なくとも二つを含有する活物質を有する正極と、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、チタン酸化物、シリコン合金、もしくは錫合金、またはこれらの少なくとも二つを含有する負極と、非水電解質と、を有し、当該組電池を構成する主要な電池である複数個の主要セルと、
オリビン構造を有する活物質を含む正極、負極、及び非水電解質を備えた少なくとも一つの基準セルと、
を備え、
前記基準セルと前記複数個の主要セルを直列接続して構成されることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記基準セルが備える前記負極の容量は、前記正極の容量の1.0倍〜2.0倍の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
電池電圧が2.0Vから4.2Vに対応する前記主要セルの電池容量を、前記基準セルの容量に対して1.0倍〜2.5倍の範囲に設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記基準セルは、前記負極及び前記正極間に介在するセパレータを備え、
前記セパレータは、樹脂部にセラミックスを塗布したセラミックス層を有し、
前記セラミックス層は、前記正極に面していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項5】
前記基準セルの単位電極面積当たりの電流密度は、前記主要セルの単位電極面積当たりの電流密度よりも小さく設定され、
前記基準セルは、前記非水電解質に対する添加剤として、ビニルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロパンスルトン、またはリチウムビスオキサレートボレートを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項6】
前記基準セルは、直列接続されてセル群を構成する全セルの中で、中央部に配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項7】
前記基準セルは、直列接続されてセル群を構成する全セルの中で、端部に配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37863(P2013−37863A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172453(P2011−172453)
【出願日】平成23年8月6日(2011.8.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】