説明

経口投与用医薬組成物

【解決手段】 (a)塩基性基、酸性基またはそれらの両方を有する親水性薬物、(b)当該親水性薬物とイオンコンプレックスを形成して脂溶性を高める酸性基、塩基性基もしくはそれらの両方を有する化合物またはそれらの塩、および(c)当該イオンコンプレックスを分散または溶解する溶剤を含有する経口投与用医薬組成物。
【効果】 親水性が高く消化管吸収が低かった薬物の消化管吸収性を著しく高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塩基性基、酸性基またはそれらの両方を有する親水性の高い薬物の消化管吸収性を向上させた経口用医薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】薬物の中には、消化管吸収性が低いために、経口投与では期待する薬理効果が得られない例がある。これらの経口吸収性の低い薬物は、静脈内あるいは筋肉内注射などにより投与され得るが、それらの投与方法は長期間の薬物投与を必要とする場合には、好ましくない。
【0003】消化管吸収性が低い薬物では、その物理化学的な性質が低吸収性の原因となっている場合が多い。例えば、水に難溶な薬物は、一般に消化管吸収性が低い。一方、水に溶解し易い薬物でも、その薬物の親水性が高い場合、すなわちLogPの値が小さい場合には、消化管吸収性が低い。特に、塩基性基、酸性基またはそれらの両方を有し、水溶液中で分子の殆どがイオン型となる親水性の高い薬物は、消化管吸収性が低い。
【0004】このようなイオン型となる親水性の高い薬物の経口吸収性を向上させる手段として、従来、ペニシリン、セファロスポリンおよびアンジオテンシンI変換酵素阻害薬などに見られるように、親水性の高い薬物をプロドラッグ化することにより薬物の脂溶性を増大させて経口吸収性を向上させるなどの方法が取られてきた。しかしながら、プロドラッグ化が困難な薬物の場合には、このような方法で経口吸収性を向上させることは困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、塩基性基、酸性基、またはそれらの両方を有する親水性の高い薬物の消化管吸収性を向上させた経口用医薬組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、塩基性基、酸性基、またはそれらの両方を有する親水性の高い薬物の消化管吸収性を向上させるための経口用医薬組成物について鋭意検討した。その結果、薬物が水溶液中でイオンとなって示す電荷とは反対の電荷を有するイオン性化合物を用いて、薬物とイオンコンプレックスを形成させて脂溶性を高め、さらにそれを溶剤に分散または溶解させた経口用医薬組成物が、薬物の消化管吸収性を向上させることを見出し発明を完成させた。
【0007】すなわち、本発明は、(a)塩基性基、酸性基またはそれらの両方を有する親水性薬物、(b)当該親水性薬物とイオンコンプレックスを形成して脂溶性を高める酸性基、塩基性基もしくはそれらの両方の基を有する化合物またはそれらの塩、および(c)当該イオンコンプレックスを分散または溶解する溶剤を含有する経口投与用医薬組成物を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明における(a)親水性薬物は、塩基性基もしくは酸性基を有するか、またはそれらの両方を有し、親水性が高く、消化管吸収性の低い化合物であり、その化合物の医薬的に許容し得る塩、その化合物の医薬的に許容し得る各種溶媒和物、その化合物の塩の溶媒和物を含む。さらに、これらの結晶多形も含む。当該成分(a)の親水性薬物は、その分子式中に1個または2個以上の塩基性基または酸性基を有するものであり、塩基性基と酸性基の両方を有する薬物は、その分子式中に1個または2個以上の塩基性基と1個または2個以上の酸性基を有するものである。ここで塩基性基としては、アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基等が挙げられ、それらの基の窒素原子は1ないし3個の低級アルキル基で置換されてもよく、またアミジノ基およびグアニジノ基の場合にはそれらの基の1ないし2個の窒素原子が5ないし7員環式基の構成原子となっていてもよい。例えば、イミダゾリル基、4,5−ジヒドロイミダゾリル基、ピリミジル基、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジル基のような環状アミジノ基、イミダゾリル−2−アミノ基、4,5−ジヒドロイミダゾリル−2−アミノ基、ピリミジル−2−アミノ基、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジル−2−アミノ基等を挙げることができる。酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。
【0009】成分(a)の親水性薬物としては、以下に例示するような化合物、その塩もしくは溶媒和物、またはその塩の溶媒和物を挙げることができる。
【0010】特開平5−208946号公報および国際公開WO96/16940号公報に記載されているようなアミジノ基を有する化合物である一般式(1)、
【0011】
【化17】


【0012】[式中、R1 は水素原子または低級アルコキシル基を示し、R2 は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基またはアルコキシカルボニルアルキル基を示し、R3 は水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルコキシル基またはアルコキシカルボニルアルコキシル基を示し、R4 は水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、低級アルキル基または低級アルコキシル基を示し、nは0〜4の数を示し、Aは1〜2個のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基もしくはアルコキシカルボニルアルキル基が置換していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基または式
【0013】
【化18】−B−N(R5)−
【0014】で表わされる基{式中、Bは低級アルキレン基またはカルボニル基を示し、R5は水素原子または式
【0015】
【化19】−D−W−R6
【0016】で表わされる基(式中、Dは式
【0017】
【化20】−C(=Z)−
【0018】で表わされる基(式中、Zは酸素原子または硫黄原子を示す。)、式
【0019】
【化21】−C(=O)−C(=O)−
【0020】で表わされる基またはスルホニル基を示し、Wは単結合または−N(R7)−で表わされる基(式中、R7 は水素原子、カルバモイル基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルキルスルホニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノチオカルボニル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基または置換基を有していてもよい低級アルカノイル基を示す。)を示し、R6 は水酸基、低級アルコキシル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)}を示し、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子またはカルボニル基を示し、Yは、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアミノアルキル基、置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和の5〜6員の環状炭化水素基、または置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和の5〜6員の複素環式基を示し、
【0021】
【化22】


【0022】で表わされる基は、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ナフチル、テトラヒドロナフチルおよびインダニルより選ばれる基を示す]で表わされる化合物、その塩もしくは溶媒和物、またはその塩の溶媒和物が挙げられる。
【0023】上述の一般式(1)における低級アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基のいずれをも挙げることができ、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。なお、低級アルキル基は置換基を有していてもよく、低級アルキル基に置換し得る基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、低級アルカノイル基、低級アルコキシル基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノ基、アリール基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、低級アルキルチオ基、低級アルキチオカルボニル基、水酸基、カルバモイル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノカルボニル基等を挙げることができる。
【0024】低級アルコキシル基としては、炭素数1〜6のものを挙げることができ、具体例としてはメトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、イソプロポキシル基、ブトキシル基、第二級ブトキシル基および第三級ブトキシル基等を挙げることができる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。カルボキシアルキル基としては、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基等を挙げることができる。アルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基、エトキシカルボニルプロピル基等を挙げることができる。カルボキシアルコキシル基としては、カルボキシメトキシル基、カルボキシエトキシル基、カルボキシプロポキシル基等を挙げることができ、アルコキシカルボニルアルコキシル基としては、メトキシカルボニルメトキシル基、エトキシカルボニルメトキシル基、プロポキシカルボニルメトキシル基、メトキシカルボニルエトキシル基、エトキシカルボニルエトキシル基等を挙げることができる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等を挙げることができる。炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等を挙げることができる。
【0025】モノ−またはジ−低級アルキルアミノカルボニル基としては、モノ−低級アルキルアミノカルボニル基として、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、イソプロピルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、イソブチルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、イソペンチルアミノカルボニル基、ヘキシルアミノカルボニル基、イソヘキシルアミノカルボニル基等を挙げることができる。また、ジアルキルアミノカルボニル基として、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、ジプロピルアミノカルボニル基、ジイソプロピルアミノカルボニル基、ジブチルアミノカルボニル基、ジペンチルアミノカルボニル基等の低級アルキル基でジ置換された対称型のジアルキルアミノカルボニル基、ならびに、エチルメチルアミノカルボニル基、メチルプロピルアミノカルボニル基、エチルプロピルアミノカルボニル基、ブチルメチルアミノカルボニル基、ブチルエチルアミノカルボニル基、ブチルプロピルアミノカルボニル基等の相異なる低級アルキル基でジ置換された非対称型のジアルキルアミノカルボニル基を挙げることができる。
【0026】低級アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、ヘキシルプロピル基、イソヘキシルプロピル基等を挙げることができる。
【0027】モノ−またはジ−低級アルキルアミノチオカルボニル基としては、モノ−低級アルキルアミノチオカルボニル基として、メチルアミノチオカルボニル基、エチルアミノチオカルボニル基、プロピルアミノチオカルボニル基、イソプロピルアミノチオカルボニル基、ブチルアミノチオカルボニル基、イソブチルアミノチオカルボニル基、ペンチルアミノチオカルボニル基、イソペンチルアミノチオカルボニル基、ヘキシルアミノチオカルボニル基、イソヘキシルアミノチオカルボニル基等を挙げることができる。また、ジアルキルアミノチオカルボニル基として、ジメチルアミノチオカルボニル基、ジエチルアミノチオカルボニル基、ジプロピルアミノチオカルボニル基、ジイソプロピルアミノチオカルボニル基、ジブチルアミノチオカルボニル基、ジペンチルアミノチオカルボニル基等の低級アルキル基でジ置換された対称型のジアルキルアミノチオカルボニル基、ならびに、エチルメチルアミノチオカルボニル基、メチルプロピルアミノチオカルボニル基、エチルプロピルアミノチオカルボニル基、ブチルメチルアミノチオカルボニル基、ブチルエチルアミノチオカルボニル基、ブチルプロピルアミノチオカルボニル基等の相異なる低級アルキル基でジ置換された非対称型のジアルキルアミノチオカルボニル基を挙げることができる。
【0028】低級アルカノイル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基等を挙げることができ、好ましくは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基であり、更に好ましくはアセチル基、プロピオニル基である。低級アルカノイル基は置換基を有していてもよい。なお、低級アルカノイル基に置換し得る基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、低級アルカノイル基、低級アルコキシル基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノ基、アリール基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、低級アルキルチオ基、低級アルキチオカルボニル基、水酸基、カルバモイル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノカルボニル基等を挙げることができる。
【0029】アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基等を挙げることができ、アリール基は置換基を有していてもよい。ヘテロアリール基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノリジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、ベンズイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾフラニル基、ナフチリジニル基、1,2−ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、オキサゾロピリジル基、イソチアゾロピリジル基、ベンゾチエニル基等を挙げることができ、好ましくは、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基等を挙げることができ、アリール基は置換基を有していてもよい。なお、これらのアリール基またはヘテロアリール基に置換し得る基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノ基、低級アルカノイル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基を挙げることができる。
【0030】飽和もしくは不飽和の5〜6員の複素環式基は、1〜2個の窒素原子または酸素原子をヘテロ原子として含む複素環式基が好ましい。このような複素環式基の具体例としては、ピロリジン、ピペリジン、イミダゾリン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、ヘキサヒドロピリミジン、ピロール、イミダゾール、ピラジン、ピロリジノン、ピペリジノン、モルホリン等の複素環が置換基となったものを挙げることができ、その結合位置は、炭素原子または窒素原子であり、結合位置が炭素原子のものが好ましい。これらの複素環式基は、置換基を有していてもよく、置換基としては低級アルキル基、低級アルカノイル基、カルバモイル基、モノアルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基、ホルムイミドイル基、アルカノイミドイル基、ベンズイミドイル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基、アルキルカルボニルアルキル基、アミノアルキル基、アルカノイルアミノ基、アルカノイルアミノアルキル基、イミノ基、アルコキシカルボニルイミノ基等を挙げることができる。さらに、好ましい複素環式基としては、式
【0031】
【化23】


【0032】または、式
【0033】
【化24】


【0034】で表される基[式中、R8 およびR9 は、水素原子、アミジノ基、または式
【0035】
【化25】


【0036】で表される5〜6員の複素環式基(式中、R10は低級アルキル基を示す)]が挙げられる。
【0037】飽和または不飽和の5〜6員の環状炭化水素基は、フェニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などが具体的に挙げられ、これらの環状炭化水素基は置換基を有していてもよく、低級アルキル基、低級アルカノイル基、カルバモイル基、モノアルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基、ホルムイミドイル基、アルカノイミドイル基、ベンズイミドイル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基、アルキルカルボニルアルキル基、アミノアルキル基、アルカノイルアミノ基、アルカノイルアミノアルキル基、イミノ基、アルコキシカルボニルイミノ基等で置換されてもよい。また、アミノアルキル基としては、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基等を挙げることができる。また、式
【0038】
【化26】


【0039】で示される基としては、ベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、インドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチルより選ばれる基が好ましい。
【0040】また、一般式(1)中、R1 〜R4 が水素原子、nは0、Xは酸素原子、Aが1個のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基もしくはアルコキシカルボニル基が置換していてもよい炭素数2のアルキレン基または式
【0041】
【化27】−CH2−N(R11)−
【0042】で表わされる基[式中、R11は水素原子または式
【0043】
【化28】−SO2−W1−R12
【0044】で表わされる基を示し、W1 は単結合または−N(R13)−で表わされる基(式中、R13は水素原子、カルバモイル基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルキルスルホニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノチオカルボニル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基または置換基を有していてもよい低級アルカノイル基を示す)を示し、R12は水酸基、低級アルコキシル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す)]を示し、Yは、式
【0045】
【化29】


【0046】または、式
【0047】
【化30】


【0048】で表される基[式中、R8 およびR9 は、水素原子、アミジノ基、または式
【0049】
【化31】


【0050】で表される基(式中、R10は低級アルキル基を示す)]であり、式
【0051】
【化32】


【0052】で表わされる基は、ベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、インドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチルより選ばれる基を示す]である化合物が好ましい。
【0053】一般式(1)で表わされる化合物には、1または2以上の不斉炭素原子が存在することがあり、その場合、不斉炭素原子に基づく光学異性体あるいは立体異性体が存在するが、これらの光学異性体、立体異性体およびこれらの混合物のいずれも本発明に含まれる。
【0054】本発明においては、上述した一般式(1)で表わされる化合物の中でも以下のものが好ましい。
1)2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、2)(+)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、3)(2S)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、4)(2R)−2−[4−[((3R)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、5)2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、6)(+)−2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、7)2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸、8)2−[4−[((2S)−1−アセトイミドイル−2−ピロリジニル)メトキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸、9)(+)−2−[4−[((2S)−1−アセトイミドイル−2−ピロリジニル)メトキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸、10)3−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−4−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)酪酸、11)2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(6−アミジノ−1−エチル−2−インドリル)プロピオン酸、12)2−[4−[((3R)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(6−アミジノ−1−エチル−2−インドリル)プロピオン酸、13)2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(6−アミジノ−1−エチル−2−インドリル)プロピオン酸、14)N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]−N’−メチルスルファミド、15)エチル N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]カルバメート、16)4−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]安息香酸、17)N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル酢酸、18)エチル N−[N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシネート、19)N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]−N−エトキシカルボニルグリシン、20)N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシン。
【0055】さらには、1)(2S)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸・塩酸塩・5水和物、2)(+)−2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸 2塩酸塩、3)(+)−2−[4−[((2S)−1−アセトイミドイル−2−ピロリジニル)メトキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸・2塩酸塩、4)N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル酢酸・2塩酸塩、5)エチル N−[N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシネート・2塩酸塩、6)N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシン・2塩酸塩が好ましい。
【0056】また、上記の化合物以外にも、J. Med. Chem., 41, 4983-4994 (1998)に記載されているグアニジノ基を有する下記の化合物、その塩もしくは溶媒和物、またはその塩の溶媒和物などが好ましい例として挙げられる。
【0057】
【化33】


【0058】
【化34】


【0059】本発明における成分(b)である(a)親水性薬物とイオンコンプレックスを形成して脂溶性を高める化合物は、成分(a)が塩基性基を有する薬物の場合には、酸性基を有する物質であり、その中でも脂溶性の高い物質であるC5〜C20のアルキルもしくはアリールスルホン酸、C5〜C20の飽和もしくは不飽和の脂肪酸、アリールカルボン酸またはC5〜C20の硫酸モノアルキルエステルなどを挙げることができる。それらの中でも、C5〜C12のアルキルスルホン酸、C5〜C12の飽和もしくは不飽和の脂肪酸、またはC5〜C12の硫酸モノアルキルエステルが好ましく、さらには1−ペンタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、カプリル酸、ラウリル硫酸、それらの塩もしくは溶媒和物、またはそれらの塩の溶媒和物などが好ましく、特に1−ペンタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸それらの塩もしくは溶媒和物、またはそれらの塩の溶媒和物が好ましい。
【0060】成分(a)が酸性基を有する薬物の場合には、成分(b)は塩基性基を有する物質であり、例えばC5〜C30の第四級アンモニウム塩、およびそれらの溶媒和物などを挙げることができ、具体的には塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ラウリルピリジニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリミジウムなどの第四級アンモニウム塩、およびそれらの溶媒和物を好ましい例として挙げることができる。
【0061】成分(a)が塩基性基と酸性基の両方を有する薬物の場合には、成分(b)は(a)の薬物の正味の電荷と反対の電荷を有する物質を用いて、イオンコンプレックスを形成させるのが好ましい。例えば、塩基性基2個と酸性基1個を有する薬物の場合には、薬物の正味の電荷が陽性となるので上記の第四級アンモニウム塩を用いてイオンコンプレックスを形成させることは好ましくなく、むしろ1−ペンタンスルホン酸などを用いてイオンコンプレックスを形成させる方が好ましい。また、成分(a)が分子内に2個以上の塩基性基あるいは2個以上の酸性基を有する薬物の場合には、成分(a)と成分(b)とが、1対1以外の比でイオンコンプレックスを形成する可能性があるが、薬物(a)の親水性や成分(b)として用いる物質の毒性などを考慮して適切な組成比のイオンコンプレックスを形成すればよい。
【0062】このようにして得たイオンコンプレックスは、(a)親水性薬物そのものよりも脂溶性が高くなる。(a)親水性薬物と成分(b)のイオンコンプレックスを生成させる場合には、実施例に記載されているように、水、メタノール、エタノールなどの極性の高い溶媒中に(a)親水性薬物を溶解し、成分(b)の物質1当量ないしその若干過剰量を加えた後、析出した沈殿物をろ取し乾燥すればよい。イオンコンプレックスが析出しない場合には、溶媒を減圧下などで留去して乾燥すればよい。
【0063】本発明に用いられる(c)溶剤は、上述のイオンコンプレックスを分散または溶解できるものであれば制限されないが、例えば油状、または融点が100℃以下の低融点物質が好ましく、動物油、植物油、脂肪酸アルキルエステル、高級アルコール、多価アルコールもしくはその各種誘導体、またはポリアルキレングリコールもしくはその各種誘導体などを挙げることができる。より好ましいものとしては、1)C2〜C6の多価アルコールの1ないし全ての水酸基が、1種または2種以上のC2〜C20の飽和または不飽和の脂肪酸でアシル化された化合物、2)C2〜C6の多価アルコールの水酸基が、1種または2種以上のC2〜C20の飽和または不飽和の脂肪酸で部分的にアシル化され、残りの1ないし全ての水酸基が、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC2〜C20のアルキニル基の1種ないし3種で置換された化合物、3)C2〜C6の多価アルコールの1ないし全ての水酸基が、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC2〜C20のアルキニル基の1種ないし3種で置換された化合物、4)C3〜C6の3価以上の多価アルコールの水酸基が、1種または2種以上のC2〜C20の飽和または不飽和の脂肪酸で部分的にアシル化され、残りの1ないし全ての水酸基が、C2〜C6のアルキレングリコールまたはそれが重合した重合度2〜50のポリアルキレングリコールの1つの水酸基と脱水縮合した化合物、5)C2〜C6のアルキレングリコールが脱水重合した重合度2〜50のポリアルキレングリコール、6)C2〜C6のアルキレングリコールが脱水重合した重合度2〜50のポリアルキレングリコールの1または2個の水酸基が、C2〜C20の飽和または不飽和の脂肪酸で部分的にアシル化された化合物、7)C2〜C6のアルキレングリコールが脱水重合した重合度2〜50のポリアルキレングリコールの1または2個の水酸基が、C1〜C20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基の1種または2種で置換された化合物、および8)C2〜C6の2アルキレングリコールが脱水重合した重合度2〜50のポリアルキレングリコールの水酸基1個が、C1〜C20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基のいずれかで置換され、残りの水酸基1個が、C2〜C20の飽和または不飽和の脂肪酸でアシル化された化合物を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いるのがより好ましい。
【0064】特に好ましいものの例としては、1)エチレングリコール モノメチルエーテル(EGME)、2)エチレングリコール モノエチルエーテル(EGEE)、3)エチレングリコール モノエチルエーテル モノアセテート(EGEEA)、4)エチレングリコール モノブチルエーテル(EGBE)、5)ジエチレングリコール モノメチルエーテル(DEGME)、6)ジエチレングリコール モノエチルエーテル(DEGEE)、7)ジエチレングリコール モノブチルエーテル(DEGBE)、8)2−プロピレングリコール 1−メチルエーテル(2PG1ME)、9)モノ−、ジ−、およびトリ−ラウロイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノ−およびジ−ラウロイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=32)を含む混合物10)モノ−、ジ−、およびトリ−ステアロイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノ−およびジ−ステアロイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=32)を含む混合物11)モノ−、ジ−、およびトリ−カプロイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノおよびジ−カプロイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=8)を含む混合物12)モノ−、ジ−、およびトリ−オレオイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノ−およびジ−オレオイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=6)を含む混合物13)モノ−、ジ−、およびトリ−リノレイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノ−およびジ−リノレイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=6)を含む混合物などを挙げることができる。なお、ここで、POEはポリエチレングリコールの平均重合度を示す。
【0065】本発明組成物において、成分(a)と成分(b)の配合比は、前記の如くイオンコンプレックスを形成する量であり、成分(c)は当該イオンコンプレックスを溶解または分散させる量配合すればよいが、通常成分(a)と(b)により形成されたイオンコンプレックスの重量に対し1〜1000重量倍、特に1〜200重量倍配合するのが好ましい。また、本発明組成物における成分(a)の配合量は、成分(a)の有効性と安全性から定められるが、一般式(1)の化合物の場合には、1〜1000mg、好ましくは1〜300mgである。
【0066】また、本発明組成物は、前記の如く、成分(a)と成分(b)によりイオンコンプレックスを形成せしめ、これに成分(c)を配合することにより調製することができる。
【0067】本発明の医薬用組成物のとり得る製剤の形態としては、油性製剤、O/W型エマルジョン製剤、懸濁剤およびゲル剤等を挙げることができる。また、これらの製剤をマイクロカプセル、ソフトカプセルおよびハードカプセル等のカプセルに充填してカプセル剤としてもよく、またイオンコンプレックスを溶剤(c)に分散または溶解させたものを固体の基剤に吸着させて固形製剤としてもよい。なお、上記の製剤は、通常知られた方法によって製造することができ、その場合、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、防腐剤、安定化剤等の医薬品添加物を適宜加えることができる。
【0068】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例11−オクタンスルホン酸ナトリウム243.32mgを水に溶解させ、50mlとし、その15mlを分取り、(2S)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸・塩酸塩・5水和物(以下、化合物A・HCl・5H2Oと称す)257mgを加え、撹拌しながら全量が20mlとなるように1−オクタンスルホン酸ナトリウム水溶液を加えた。析出した沈殿物をろ取し、デシケータ中で減圧乾燥させて、イオンコンプレックスを得た。
元素分析(実測値):C,58.62; H,7.27; N,8.32。
HPLCによる定量:ODSカラムを用いて、pH6.8のリン酸塩緩衝液/メタノール/アセトニトリル混液(50:7:5)を移動相として、イオンコンプレックス1g当たりの化合物Aを定量した結果、696mgが含有されていた。
【0069】実施例2実施例1で得たイオンコンプレックス0.72mg(化合物A・HCl・5H2Oとして、0.5mgに相当)をモノ−、ジ−、およびトリ−ラウロイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノ−およびジ−ラウロイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=32)を含む混合物(GELUCIRE 44/14:商品名,GATTEFOSSE社)200mgとジエチレングリコール モノエチルエーテル200mgに溶解させて、油状の物質を得た。
【0070】試験例腸内および腹部大動脈にそれぞれカニュレーションを施したラット(平均体重200g)をボールマンゲージに固定し、実施例2で得た油状の製剤400mg/ラット(化合物A・HCl・5H2Oとして、2.5mgに相当)、または化合物A・HCl・5H2Oの生理食塩溶液をそれぞれカニューレを通して腸内へ投与した。投与0.5、1、2、4、8時間後に、腹部大動脈から血液1mlを採取し、それをヘパリン処理後、遠心分離して血漿を得た。HPLC(定量条件:ODSカラムを用い、pH6.8のリン酸塩緩衝液/アセトニトリル混液(100:14)に5mMオクチルアミンを添加した溶液を移動相とした)を用いて、血漿中に含まれる化合物Aの濃度を求めた。
【0071】その結果、表1に示すように、実施例2で得た油状の製剤を投与した場合には、化合物A・HCl・5H2Oの生理食塩溶液を投与した場合と比較し、有意に高い血漿中濃度を示した。
【0072】
【表1】


【0073】
【発明の効果】本発明によれば、親水性が高く消化管吸収が低かった薬物の消化管吸収性を著しく高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)塩基性基、酸性基またはそれらの両方を有する親水性薬物、(b)当該親水性薬物とイオンコンプレックスを形成して脂溶性を高める酸性基、塩基性基もしくはそれらの両方を有する化合物またはそれらの塩、および(c)当該イオンコンプレックスを分散または溶解する溶剤を含有する経口投与用医薬組成物。
【請求項2】 (a)親水性薬物が、その化学構造式中に1個または2個以上のアミノ基、アミジノ基またはグアジノ基を有する薬物である請求項1記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項3】 (a)親水性薬物が、下記の一般式(1)で表される薬物である請求項1記載の経口投与用医薬組成物。
【化1】


[式中、R1 は水素原子または低級アルコキシル基を示し、R2 は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基またはアルコキシカルボニルアルキル基を示し、R3 は水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルコキシル基またはアルコキシカルボニルアルコキシル基を示し、R4 は水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、低級アルキル基または低級アルコキシル基を示し、nは0〜4の数を示し、Aは1〜2個のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基もしくはアルコキシカルボニルアルキル基が置換していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基または式
【化2】−B−N(R5)−で表わされる基{式中、Bは低級アルキレン基またはカルボニル基を示し、R5は水素原子または式
【化3】−D−W−R6で表わされる基(式中、Dは式
【化4】−C(=Z)−で表わされる基(式中、Zは酸素原子または硫黄原子を示す。)、式
【化5】−C(=O)−C(=O)−で表わされる基またはスルホニル基を示し、Wは単結合または−N(R7)−で表わされる基(式中、R7 は水素原子、カルバモイル基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルキルスルホニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノチオカルボニル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基または置換基を有していてもよい低級アルカノイル基を示す。)を示し、R6 は水酸基、低級アルコキシル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)}を示し、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子またはカルボニル基を示し、Yは、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアミノアルキル基、置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和の5〜6員の環状炭化水素基、または置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和の5〜6員の複素環式基を示し、
【化6】


で表わされる基は、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ナフチル、テトラヒドロナフチルおよびインダニルより選ばれる基を示す]で表わされる化合物、その塩もしくは溶媒和物、またはその塩の溶媒和物。
【請求項4】 一般式(1)中、
【化7】


で示される基が、ベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、インドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチルより選ばれる基である請求項3記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項5】 一般式(1)中、飽和または不飽和の5〜6員環の複素環式基が、1〜2個の窒素原子または酸素原子をヘテロ原子として含む基である請求項3記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項6】 一般式(1)中、飽和または不飽和の5〜6員環の複素環式基Yが、式
【化8】


または、式
【化9】


で表される基[式中、R8 およびR9 は、水素原子、アミジノ基、または式
【化10】


で表される基(式中、R10は低級アルキル基を示す)]である請求項3記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項7】 一般式(1)中、R1 〜R4 が水素原子、nは0、Xは酸素原子、Aが1個のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基もしくはアルコキシカルボニルアルキル基が置換していてもよい炭素数2のアルキレン基または式
【化11】−CH2−N(R11)−で表わされる基[式中、R11は水素原子または式
【化12】−SO2−W1−R12で表わされる基を示し、W1 は単結合または−N(R13)−で表わされる基(式中、R13は水素原子、カルバモイル基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルキルスルホニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノチオカルボニル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基または置換基を有していてもよい低級アルカノイル基を示す)を示し、R12は水酸基、低級アルコキシル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す)]を示し、Yは、式
【化13】


または、式
【化14】


で表される基[式中、R8 およびR9 は、水素原子、アミジノ基、または式
【化15】


で表される基(式中、R10は低級アルキル基を示す)]であり、式
【化16】


で表わされる基は、ベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、インドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチルより選ばれる基を示す]である請求項3記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項8】 (a)親水性薬物が、以下の群より選ばれる化合物、その塩もしくは溶媒和物、またはその塩の溶媒和物である請求項1記載の経口投与用医薬組成物。
1)2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、2)(+)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、3)(2S)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、4)(2R)−2−[4−[((3R)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、5)2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、6)(+)−2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、7)2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸、8)2−[4−[((2S)−1−アセトイミドイル−2−ピロリジニル)メトキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸、9)(+)−2−[4−[((2S)−1−アセトイミドイル−2−ピロリジニル)メトキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸、10)3−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−4−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)酪酸、11)2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(6−アミジノ−1−エチル−2−インドリル)プロピオン酸、12)2−[4−[((3R)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(6−アミジノ−1−エチル−2−インドリル)プロピオン酸、13)2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(6−アミジノ−1−エチル−2−インドリル)プロピオン酸、14)N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]−N’−メチルスルファミド、15)エチル N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]カルバメート、16)4−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]安息香酸、17)N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル酢酸、18)エチル N−[N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシネート、19)N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]−N−エトキシカルボニルグリシン、20)N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシン。
【請求項9】 (a)親水性薬物が、以下の群より選ばれるものである請求項1記載の経口投与用医薬組成物。
1)(2S)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸・塩酸塩・5水和物、2)(+)−2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸 2塩酸塩、3)(+)−2−[4−[((2S)−1−アセトイミドイル−2−ピロリジニル)メトキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸・2塩酸塩、4)N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル酢酸・2塩酸塩、5)エチル N−[N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシネート・2塩酸塩、6)N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシン・2塩酸塩。
【請求項10】 (b)親水性薬物とイオンコンプレックスを形成して脂溶性を高める化合物またはその塩が、C5〜C20のアルキルもしくはアリールスルホン酸、C5〜C20の飽和もしくは不飽和の脂肪酸、アリールカルボン酸、またはC5〜C20の硫酸モノアルキルエステルである請求項1記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項11】 (b)親水性薬物とイオンコンプレックスを形成して脂溶性を高める化合物またはその塩が、C5〜C12のアルキルスルホン酸、C5〜C12の飽和もしくは不飽和の脂肪酸、またはC5〜C12の硫酸モノアルキルエステルである請求項1記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項12】 (b)親水性薬物とイオンコンプレックスを形成して脂溶性を高める化合物が、1−ペンタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、カプリル酸またはラウリル硫酸である請求項1記載の経口投与用医薬組成物。
【請求項13】 (c)溶剤が下記の1)〜8)から選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の経口投与用医薬組成物。
1)C2〜C6の多価アルコールの1ないし全ての水酸基が、1種または2種以上のC2〜C20の飽和または不飽和の脂肪酸でアシル化された化合物、2)C2〜C6の多価アルコールの水酸基が、1種または2種以上のC2〜C20の飽和または不飽和の脂肪酸で部分的にアシル化され、残りの1ないし全ての水酸基が、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC2〜C20のアルキニル基の1種ないし3種で置換された化合物、3)C2〜C6の多価アルコールの1ないし全ての水酸基が、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC2〜C20のアルキニル基の1種ないし3種で置換された化合物、4)C3〜C6の3価以上の多価アルコールの水酸基が、1種または2種以上のC2〜C20の飽和または不飽和の脂肪酸で部分的にアシル化され、残りの1ないし全ての水酸基が、C2〜C6のアルキレングリコールまたはそれが重合した重合度2〜50のポリアルキレングリコールの1つの水酸基と脱水縮合した化合物、5)C2〜C6のアルキレングリコールが脱水重合した重合度2〜50のポリアルキレングリコール、6)C2〜C6のアルキレングリコールが脱水重合した重合度2〜50のポリアルキレングリコールの1または2個の水酸基が、C2〜C20の飽和または不飽和の脂肪酸で部分的にアシル化された化合物、7)C2〜C6のアルキレングリコールが脱水重合した重合度2〜50のポリアルキレングリコールの1または2個の水酸基が、C1〜C20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基の1種または2種で置換された化合物、8)C2〜C6の2アルキレングリコールが脱水重合した重合度2〜50のポリアルキレングリコールの水酸基1個が、C1〜C20のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基のいずれかで置換され、残りの水酸基1個が、C2〜C20の飽和または不飽和の脂肪酸でアシル化された化合物。
【請求項14】 (c)溶剤が下記の1)〜13)から選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の経口投与用医薬組成物。
1)エチレングリコール モノメチルエーテル(EGME)、2)エチレングリコール モノエチルエーテル(EGEE)、3)エチレングリコール モノエチルエーテル モノアセテート(EGEEA)、4)エチレングリコール モノブチルエーテル(EGBE)、5)ジエチレングリコール モノメチルエーテル(DEGME)、6)ジエチレングリコール モノエチルエーテル(DEGEE)、7)ジエチレングリコール モノブチルエーテル(DEGBE)、8)2−プロピレングリコール 1−メチルエーテル(2PG1ME)、9)モノ−、ジ−、およびトリ−ラウロイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノ−およびジ−ラウロイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=32)を含む混合物10)モノ−、ジ−、およびトリ−ステアロイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノ−およびジ−ステアロイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=32)を含む混合物11)モノ−、ジ−、およびトリ−カプロイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノおよびジ−カプロイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=8)を含む混合物12)モノ−、ジ−、およびトリ−オレオイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノ−およびジ−オレオイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=6)を含む混合物13)モノ−、ジ−、およびトリ−リノレイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノ−およびジ−リノレイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=6)を含む混合物
【請求項15】 (a)親水性薬物が(2S)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸であり、(b)親水性薬物とイオンコンプレックスを形成して脂溶性を高める化合物が1−オクタンスルホン酸であり、(c)溶剤がモノ−、ジ−、およびトリ−ラウロイルグリセリド、ポリエチレングリコール(POE=32)モノ−およびジ−ラウロイルエステル、およびポリエチレングリコール(POE=32)を含む混合物並びにジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合物である請求項1記載の経口投与用医薬組成物。

【公開番号】特開2000−302671(P2000−302671A)
【公開日】平成12年10月31日(2000.10.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−119541
【出願日】平成11年4月27日(1999.4.27)
【出願人】(599058431)
【出願人】(599058442)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】