説明

経口摂取用毛穴縮小剤

【課題】経口摂取することによって毛穴を縮小することができ、且つ継続的な経口摂取にも可能な天然由来で安全性の高い経口摂取用毛穴縮小剤の提供。
【解決手段】セリ科(Umbelliferae)カワラボウフウ属(Peucedanum L.)の植物の中から選ばれる1種又は2種以上の植物体又はその抽出物を含有する経口摂取用毛穴縮小剤。また、セリ科カワラボウフウ属の植物としてボタンボウフウ(Peucedanum japonicum Thunb.)の植物体又はその抽出物を含有する経口摂取用毛穴縮小剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口摂取用の毛穴縮小剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に若い女性を中心として、毛穴の目立ちに関する悩みが増えており、この目立ちを改善する皮膚外用剤が求められてきた。毛穴の目立ちを改善する方法として、収斂化粧水や角栓の除去による対応が一般的となっている。あるいはファンデーションで見た目の改善を図ることも多い。しかしながら、例えば収斂化粧水は、肌を引き締めることを目的にしており、アルコールにより一時的に皮膚表面温度を下げたり、有機酸などにより、蛋白質を凝固させたりする作用による。そのため、皮膚への負荷が大きく、また毛穴の目立ちの根本的な解決となっておらず、その効果も充分ではなかった。
【0003】
また、角栓除去は毛穴につまった角栓を物理的に除去する方法であり、例えば、塩生成基を有する高分子化合物を含有した角栓除去剤(例えば、特許文献1参照。)、水不溶性シクロデキストリンポリマーを含有した化粧料(例えば、特許文献2参照。)、粘度が5〜80mPa・s/25℃の油分を50質量%以上含有した角栓除去用化粧料(例えば、特許文献3参照。)等による除去が知られている。このような角栓を除去する方法では物理的な力が肌にダメージになることもあり、皮膚への副作用が問題となることがあった。またその効果も一時的で角栓がすぐに再生してしまうことや、角栓を除去すると逆に毛穴が大きくなってしまうこともあり、必ずしも効果は充分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−97627号公報
【特許文献2】特開平5−105619号公報
【特許文献3】特開2002−241260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、経口摂取することによって毛穴を縮小することができ、且つ継続的な経口摂取も可能な天然由来で安全性の高い経口摂取用毛穴縮小剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、セリ科(Umbelliferae)カワラボウフウ属(Peucedanum L.)の植物体又はその抽出物を継続的に経口摂取した場合、皮膚の毛穴を縮小することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、セリ科カワラボウフウ属の植物の中から選ばれる1種又は2種以上の植物体又はその抽出物を有効成分として含有する経口摂取用毛穴縮小剤である。
【0008】
また、本発明は、セリ科カワラボウフウ属の植物としてボタンボウフウ(Peucedanum japonicum Thunb.)の植物体又はその抽出物を含有する経口摂取用毛穴縮小剤である。
【0009】
さらに、本発明は、上記の経口摂取用毛穴縮小剤を配合したことを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の経口摂取用毛穴縮小剤によれば、継続的に経口摂取した場合、毛穴の開口部面積、体積、深さ(毛穴の最深部の深さ)、個数すべてにおいて減小(減少)する効果が得られ、これにより毛穴を縮小することができる。
【0011】
また、本発明の経口摂取用毛穴縮小剤によれば、セリ科カワラボウフウ属の植物体又はその抽出物を有効成分として含有しているので安全性が高く、継続的な摂取を実現可能とし、様々な嗜好に応じて摂取時の形態を設定することができ、飲食品や経口用医薬品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】レプリカの採取部位を示す図
【図2】毛穴総面積の変化を示すグラフ
【図3】毛穴総体積の変化を示すグラフ
【図4】毛穴平均深さの変化を示すグラフ
【図5】毛穴の個数の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の経口摂取用毛穴縮小剤は、経口的に摂取することが可能なセリ科カワラボウフウ属の植物から得られる抽出物を有効成分として含有する。カワラボウフウ属の植物には、ボタンボウフウ(別名「長命草」)(Peucedanum japonicum Thunb.)、ハクサンボウフウ(Peucedanum multivittatum Maxim.)、カワラボウフウ(Peucedanum terebinthaceum Fisch.)がある。
【0014】
カワラボウフウ属の植物は生のままでも乾燥したものでも使用することができるが、使用性、製剤化等の観点から乾燥粉末あるいは抽出物として用いることが好ましい。
【0015】
乾燥粉末を得る方法としては、植物の全草あるいは各種部位(葉、花、根等)を細断又は粉砕し、その後に乾燥する方法や植物を乾燥した後に細断又は粉砕して乾燥粉末を得る方法がある。また、植物を細断又は粉砕し、発酵や酵素処理を施した後、乾燥し、更に必要に応じて所定の粒径にすべく粉砕する方法等を適宜採ることができる。
【0016】
本発明で用いる抽出物の抽出方法は溶媒抽出により行うことができる。溶媒抽出の場合には、植物の全草あるいは各種部位(葉、花、根等)を必要に応じて乾燥させ、更に必要に応じて細断又は粉砕した後、水性抽出剤、例えば冷水、温水、又は沸点若しくはそれより低温の熱水、あるいは有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、1,3−ブタンジオール、エーテル等を常温で又は加熱して用いることにより抽出される。しかしながら、抽出方法は溶媒抽出に限定されず、当業界で知られている常用の手法によってもよい。上記抽出物の形態は、抽出液自体だけでなく、常用の手法により適宜希釈又は濃縮したものであってもよく、更に、抽出液を乾燥することによって得られる粉状あるいは塊状の固体であってもよい。
【0017】
本発明の経口摂取用毛穴縮小剤は、各種飲食品に配合し摂取することができ、また、医薬製剤として投与することができる。
【0018】
摂取(投与)するセリ科カワラボウフウ属の植物の量は、摂取(投与)する方法や剤型等に応じて、適宜決めることができるが、一日当たりの摂取(投与)量を、生葉換算で5g以上、好ましくは16g以上とするように調製することが望ましい。
【0019】
本発明の経口摂取用皮膚内透明度増加剤を飲食品に配合する場合には、必要に応じて添加剤を任意に選択し併用することができる。添加剤としては機能性素材、賦形剤、呈味剤を含ませることができる。
【0020】
機能性素材としては、パントテン酸、葉酸、ビオチンなど各種ビタミン類、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄など各種ミネラル類、アミノ酸、オリゴ糖、プロポリス、ローヤルゼリー、イチョウ葉、ウコン、EPA、DHA、コエンザイムQ10、コンドロイチン、乳酸菌、ラクトフェリン、イソフラボン、プルーン、キチン、キトサン、グルコサミン、α−リポ酸、アガリクス、ガルシニア、プロポリス、コラーゲン、アスタキサンチン、フォースリン、カテキン、セサミン、セラミド、モロヘイヤ、スピルリナ、キャッツクローなどが挙げられる。これらの機能性素材は、単独で又は二種以上で組み合わせて使用できる。
【0021】
賦形剤としては、所望の剤型としたときに通常用いられるものであれば何でも良く、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリンなどのでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、乳化オリゴ糖などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトールなどの糖アルコール類が挙げられる。これら賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
呈味剤としては、ボンタンエキス、ライチエキス、ゆずエキス等の各種果汁エキス、リンゴ果汁、オレンジ果汁、レモン果汁等の各種果汁、ピーチフレーバー、ウメフレーバー、ヨーグルトフレーバー等の各種フレーバー、アセスルファムK、スクラロース、エリスリトール、オリゴ糖類、マンノース、キシリトール、異性化糖類等の各種甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の各種酸味料、緑茶、ウーロン茶、バナバ茶、杜仲茶、鉄観音茶、ハトムギ茶、アマチャヅル茶、マコモ茶、昆布茶等の各種茶成分等が挙げられる。これら呈味剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0023】
その他の着色剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤等については、食品等に使用される公知のものを適宜選択して使用できる。
【0024】
飲食品の形態としては、例えば、液体状、固形状、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状など任意に選択することができる。
【0025】
飲食品の具体例として、例えば、野菜ジュース、果汁飲料、清涼飲料、茶等の飲料類、スープ、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、クッキー、キャンディー、グミ、ガム等の各種一般加工食品のほか、ドリンク剤などの栄養補助飲食品、特定保健用飲食品、機能性飲食品、健康飲食品などが挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0026】
本発明の経口摂取用毛穴縮小剤を医薬製剤として用いる場合、剤型は適宜選択できるが、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経液体製剤等とすることができ、これらの医薬製剤には、通常用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜使用してもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
沖縄県で栽培されたボタンボウフウの地上部を洗浄し、洗浄時の水分を乾燥させた後、滅菌処理して粉砕した粉砕物を得る。その粉砕物を更に低温で微粉砕した微粉砕物を飲料水に分散し、試験用ドリンクとした。1本160gのドリンクに含まれるボタンボウフウは生葉に換算して約16g分とした。尚、明日葉抽出物などの他の有効成分や果汁、ハチミツ等の呈味剤を適宜添加しても良い。
【0029】
試験は、健常人男性パネル17名を対象に、試験用ドリンクを1日1本、連日服用し、服用前と服用後4週間および8週間での頬下部(直径約3cm)から毛穴のレプリカ(レプリカ剤:即乾性シリコンゴム(SILFLO、Flexico Developments イギリス)を採取した。レプリカの採取部位を図1に示す。
【0030】
採取したレプリカから、広視野共焦点顕微鏡HD100D(レーザーテック社)を用いた3次元解析システム(平成16年3月20日 社団法人日本皮膚科学会発行「日本皮膚科学会雑誌 第114巻 第3号 臨時増刊号」および特開2005−345297号公報(特許第4286724号公報))により、毛穴の開口部面積、体積、深さ(毛穴の最深部の深さ)、個数を解析した。尚、共焦点顕微鏡を用いて3次元データを取り込んだレプリカの計測範囲は、3.34×3.34mmである。
【0031】
パネル毎に、全毛穴の開口部面積の総和を「毛穴総面積」として、全毛穴の体積の総和を「毛穴総体積」として、全毛穴の深さ(毛穴の最深部の深さ)の平均値を「毛穴平均深さ」として算出し、全パネルによるこれら数値の平均値を求めて、試験用ドリンクの毛穴の縮小効果を確認した。
【0032】
収集したサンプルに基づいて違いがあるか検証するために、統計処理を実施した。検定結果で示された有意確率(P)が5%(p<0.05)であれば、検定に用いたデータ項目(変数という)間に有意差があるという。(P)が10%未満(p<0.1)であれば、検定に用いたデータ項目(変数という)間に有意な傾向差があるという。有意差および有意な傾向差が出たということは、何らかの原因で違いが生じたことを意味する。生物学試験を行うときは、最終的に有意差があったか否かが群間に変化があったかどうかを導き出す手法となる。検定は対応のあるt検定にて実施した。
【0033】
毛穴総面積の推移(図2)では、服用後8週間において毛穴総面積が減小する傾向(p<0.1)が確認された。
【0034】
毛穴総体積の推移(図3)では、服用後8週間において毛穴総体積が減小する傾向(p<0.1)が確認された。
【0035】
平均深さの推移(図4)では、服用後4週間で平均深さの縮小傾向(p<0.1)が確認され、8週間経過後では、平均深さの縮小効果について統計的な有意性(p<0.05)が確認された。
【0036】
毛穴個数の推移(図5)では、服用後4週間で毛穴個数の減少傾向(p<0.1)が確認され、8週間経過後では、毛穴個数の減少効果について統計的な有意性(p<0.01)が確認された。
【0037】
以上の結果から、本発明のセリ科カワラボウフウ属の植物体を含有する経口摂取用毛穴縮小剤について、継続的な摂取を行うことにより、毛穴の開口部面積、体積、深さ(毛穴の最深部の深さ)、個数のすべてにおいて減小(減少)する効果が認められた。これは、本発明の経口摂取用毛穴縮小剤が、単に毛穴を目立たせなくする効果のみならず、根本的に毛穴を縮小する効果に優れることを示すものである。
【0038】
以下に、配合例を実施例として示す。
【0039】
[配合例1:錠剤]
ボタンボウフウの地上部を洗浄し、洗浄時の水分を乾燥させた後、滅菌処理して粉砕した粉砕物を得る。その粉砕物を更に低温で微粉砕した微粉砕物に、前記粉砕物から抽出したエキス末、デキストリン、セルロース、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素を混合して打錠し、試験用錠剤とした。300mgの錠剤に含まれるボタンボウフウは生葉に換算して約5g分とした。
【0040】
[配合例2:顆粒]
ボタンボウフウの地上部を洗浄し、洗浄時の水分を乾燥させた後、滅菌処理して粉砕した粉砕物を得る。その粉砕物を更に低温で微粉砕した微粉砕物にシカクマメ若莢乾燥滅菌粉砕物、カルシウム、オリゴ糖、乳酸菌、アスタキサンチン、デキストリン、ビタミンC、ゼラチンを混合して顆粒状にし、試験用顆粒とした。7gの顆粒に含まれるボタンボウフウは生葉に換算して約50g分とした。
【0041】
[配合例3:食品]
ボタンボウフウの地上部を洗浄し、洗浄時の水分を乾燥させた後、滅菌処理して粉砕した粉砕物を得る。その粉砕物を更に低温で微粉砕した微粉砕物にユズエキス、カルシウム、鉄、砂糖、液糖、ウコン、コエンザイムQ10、プルーン、コラーゲン、小麦粉、食塩、植物性油脂、ベーキングパウダー、コンソメフレーバーを混合して、成型し、カットして、オーブンにて焼成し、冷却し、試験用クッキーとした。5gのクッキーに含まれるボタンボウフウは生葉に換算して約10g分とした。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリ科(Umbelliferae)カワラボウフウ属(Peucedanum L.)の植物の中から選ばれる1種又は2種以上の植物体又はその抽出物を含有することを特徴とする経口摂取用毛穴縮小剤。
【請求項2】
セリ科(Umbelliferae)カワラボウフウ属(Peucedanum L.)の植物がボタンボウフウ(Peucedanum japonicum Thunb.)であることを特徴とした請求項1記載の経口摂取用毛穴縮小剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の経口摂取用毛穴縮小剤を配合したことを特徴とする飲食品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−184356(P2011−184356A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51243(P2010−51243)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【特許番号】特許第4608017号(P4608017)
【特許公報発行日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】