経口薬物送達のための組成物および方法
本発明は、有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤、ならびに生体接着ポリマーを含む生体接着層を含み、任意選択的に固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の一方向放出を誘導することができる開口部を有する不透過性の層または半透性の層を含む固体投薬形態を含む経口送達のための薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物の作製方法および使用方法も提供する。1つの実施形態では、本発明は、コアを形成するための有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含み、生体接着ポリマーを含有する生体接着層によってコーティングされた固体投薬形態を含む薬物送達のための薬学的組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2009年12月16日に出願された中国特許出願第200910201248.3号、および2010年7月14日に出願された同第201010227045.4号、ならびに2009年12月16日に出願された米国出願第61/287,146号、および2010年7月20日に出願された同第61/365,916号(これらは、それらの全体が参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、経口薬物送達分野、特に、従来の経口薬物送達系において低吸収および低い生物学的利用能を示す治療薬の吸収の増強および生物学的利用能の増大のための薬学的組成物に関する。本発明は、さらに、開示の薬学的組成物の作製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
経口薬物送達は、最も一般的で許容されている薬物投与経路の1つである。しかし、多数の治療薬は、経口経路を介した送達は不十分である。例えば、生物学的に活性な高分子(タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、および核酸など)は、しばしば、酵素分解、低吸収、または不安定性の複合的作用によって経口投与することができない。同様に、多数の小分子薬クラス(シクロスポリン、フェノフィブラート、脂質低下薬スタチン、降圧剤サルタン、抗生物質(セフトリアキソンまたはアジスロマイシンなど)、およびビスホスホネートクロドロネート(clodronrate)など)の経口処方物は、低吸収および薬物動態プロフィールの変動が問題とされている。
【0004】
低吸収性の治療薬の経口送達を改善するための多数の異なるアプローチが調査されている。例えば、透過促進剤は、一般に、他の低吸収性の薬物の吸収を増強するために使用される(概説として、B.J.Aungst,J.Pharm.Sci.,2000,89(4):429−442を参照のこと)。経皮または経粘膜吸収を改良することが公知の透過促進剤の多数の例が、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、米国特許第5,912,014号、同第5,929,027号、同第5,952,000号、同第5,972,911号、同第6,071,538号、同第6,156,731号、同第6,200,602号、同第6,333,046号、同第6,423,334号、同第6,747,014号、同第7,316,819号、同第7,576,067号、米国特許出願公開第2007/0148228号、同第2007/0196464号、同第2007/0238707号、同第2008/0275001号、同第2008/0299079号、同第2009/0087484号、同第2009/0111736号、および欧州特許第1154761号に開示されている。
【0005】
経口処方物中への吸収促進剤の適用は、しばしば、関連する毒性によって制限される。吸収促進剤を含む首尾の良い医薬品の1つの報告例は、結腸坐剤アンピシリン処方物である。これは、スウェーデン(DOKTACILLIN(商標)、Astra Lakemedel AB)で市販されている。透過促進剤として25mgカプリン酸ナトリウムを含む処方物は、アンピシリンの最大血清濃度(Cmax)、血清中濃度時間曲線下面積(AUC)、および尿中回収率を、アンピシリンのみと比較してそれぞれ2.6倍、2.3倍、および1.8倍に増加することが報告された(T.Lindmarkら,Pharm.Res.,1997,14(7):930−935)。
【0006】
しかし、結腸環境は、運動性、残留時間、水流、粘液、および腸内容物に関して経口経路と非常に異なる。したがって、経口送達のための透過促進剤の必要量は、非常により高い。例えば、Burchamらは、イヌにおけるペプチド模倣薬DMP728の吸収に及ぼすカプリン酸ナトリウムおよび他の透過促進剤の影響について研究した(Pharm.Res.,1995,12(12):2065−7200)。ゼラチンカプセル中に115〜120mgカプリン酸ナトリウムを含む処方物が生物学的利用能をわずかに改善した一方で(13.0%〜17.7%)、同量のカプリン酸ナトリウムを含む腸溶処方物はいかなる影響も示すことができなかった。
【0007】
吸収および生物学的利用能を一貫して有意に増強させるために、同一の実験系におけるカプリン酸ナトリウムの必要量は、275〜550mg/錠剤の範囲であることが見い出された(米国特許出願公開第2008/0275001号)。しかし、経口薬物送達のための透過促進剤の必要量が高いことが、しばしば有毒となり、安全上の懸念を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,525,339号明細書
【特許文献2】米国特許第4,722,941号明細書
【特許文献3】米国特許第5,318,781号明細書
【特許文献4】米国特許第5,393,738号明細書
【特許文献5】米国特許第5,424,289号明細書
【特許文献6】米国特許第5,597,562号明細書
【特許文献7】米国特許第5,714,477号明細書
【特許文献8】米国特許第5,817,624号明細書
【特許文献9】米国特許第5,827,534号明細書
【特許文献10】米国特許第5,854,281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今日まで、特に高分子生物医薬品についての吸収および生物学的利用能が低い治療薬の経口送達の問題のための安全且つ有効な解決策は見い出されていない。したがって、過剰量の透過促進剤を使用することなく吸収および生物学的利用能を有意に改善することができる薬物送達系を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明の1つの目的は、吸収性の低い治療薬の吸収および/または生物学的利用能を増強することができる非毒性薬学的組成物を提供することである。別の目的は、治療薬の薬物動態プロフィールを調整することができ、安価であり、製造が比較的容易な薬物送達が増強された薬学的組成物を提供することである。
【0011】
1つの実施形態では、本発明は、コアを形成するための有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含み、生体接着ポリマーを含有する生体接着層によってコーティングされた固体投薬形態を含む薬物送達のための薬学的組成物を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記薬学的組成物を、内容物の胃内の放出を防止し、胃腸管中の好ましい部位(小腸など)で放出させるための腸溶材料でさらにコーティングすることができる。
【0013】
本発明者らは、驚いたことに、生体接着ポリマー層の存在が、吸収性の低い治療薬の吸収および生物学的利用能を有意に改善するために必要な透過促進剤の量を減少させることができることを見い出した。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、コアを形成するための有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含み、生体接着ポリマーを含有する生体接着層によってコーティングされ、固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を有する不透過性の層または半透性の層によってさらにコーティングされた固体投薬形態を含む薬物送達のための薬学的組成物を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物を、内容物の胃内の放出を防止し、胃腸管中の好ましい部位(小腸など)で放出させるための腸溶材料でさらにコーティングすることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、治療薬および透過促進剤は、固体投薬形態からの相対放出速度が実質的に等価である。したがって、本発明の薬学的組成物により、治療薬および透過促進剤が局所的であり、限定され、且つ実質的に同時の放出が可能であり、それにより、先行技術と比較して有意に減少した量の透過促進剤を使用して治療薬の吸収を改善することが可能である。
【0017】
別の態様では、本発明は、治療薬の薬物動態プロフィールを調整することができる薬学的組成物を提供する。治療薬および透過促進剤の放出動態を、所望の治療効果に応じて、コアマトリックス中の成分の組成および/または比率の相違、生体接着ポリマー層の組成、比率、および/または厚さの相違、または不透過性の層または半透性の層の組成、比率、および/または厚さの相違によって調整して、バースト放出もしくは即時放出または長期もしくは徐放プロフィールを得ることができる。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む固体投薬形態を作製する工程、固体投薬形態を生体接着ポリマーを含む生体接着層でコーティングする工程、および、任意選択的に、固体投薬形態を、固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を含む不透過性の層または半透性の層でコーティングする工程を含む、薬物送達用の薬学的組成物の作製方法を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、生体接着ポリマー層および不透過性の層または半透性の層の適用順序を逆にする。いくつかの実施形態では、本方法は、組成物を腸溶層でコーティングする工程をさらに含む。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、経口、鼻腔内、口内、舌下、直腸、または膣投与経路によって本発明の薬学的組成物を被験体に投与することによる治療的処置を必要とする被験体の処置方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)および腸溶ポリマー(enteric polymer)であるオイドラギット(登録商標)L30D−55の層でコーティングした錠剤からのエクセナチドおよび吸収促進剤であるカプリン酸ナトリウムの同時放出を示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、HPMCおよび腸溶ポリマーの層でコーティングした錠剤からのエクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの放出動態に及ぼす一方向放出層の影響を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、100および400mgカプリン酸ナトリウムおよび腸溶層の存在下でのエクセナチドの生物学的利用能に及ぼす生体接着層の影響を示す。
【図4】図4は、AA1層および腸溶層の存在下でのエクセナチドの生物学的利用能に及ぼすカプリン酸ナトリウム量の影響を示す。
【図5】図5は、50mgカプリン酸塩、HPMC層、および腸溶層の存在下でのエクセナチドの生物学的利用能に及ぼす一方向放出層の影響を示す。
【図6】図6は、100mgカプリン酸塩、HPMC層、および腸溶層の存在下でのエクセナチドの生物学的利用能に及ぼす一方向放出層の影響を示す。
【図7】図7は、200mgカプリン酸ナトリウム、HPMC層、および一方向放出層の存在下でのエクセナチドの生物学的利用能に及ぼす腸溶層の影響を示す。
【図8A】図8Aは、200mgカプリン酸ナトリウム、HPMC層、および一方向放出層の存在下でのインスリンを含む0.01N HCl(最初の2時間)および疑似腸液(SIF)(pH6.8)(3〜7時間)の放出動態を示す。
【図8B】図8Bおよび8Cは、ソマトスタチン処置したイヌにおける血中グルコース濃度および血清インスリン濃度のそれぞれに及ぼす経口インスリン処置の影響を示す。
【図8C】図8Bおよび8Cは、ソマトスタチン処置したイヌにおける血中グルコース濃度および血清インスリン濃度のそれぞれに及ぼす経口インスリン処置の影響を示す。
【図9】図9は、ソマトスタチン処置したイヌにおける血中グルコースレベルに及ぼす2つの経口インスリン処方物の影響を比較している。第1の処方物は、200mgカプリン酸ナトリウム、HPMC層、および一方向放出層を含む二層錠剤であった。第2の処方物は、200mgカプリン酸ナトリウム、HPMC層、一方向放出層、および腸溶外層を含む三層錠剤であった。
【図10A】図10A〜Cは、60℃(図10A)、25℃にて相対湿度92.5%(図10B)、および4500ルクスでの光曝露(図10C)で0、5、および10日間の保存後の種々の固体処方物におけるエクセナチドの安定性を比較する。
【図10B】図10A〜Cは、60℃(図10A)、25℃にて相対湿度92.5%(図10B)、および4500ルクスでの光曝露(図10C)で0、5、および10日間の保存後の種々の固体処方物におけるエクセナチドの安定性を比較する。
【図10C】図10A〜Cは、60℃(図10A)、25℃にて相対湿度92.5%(図10B)、および4500ルクスでの光曝露(図10C)で0、5、および10日間の保存後の種々の固体処方物におけるエクセナチドの安定性を比較する。
【図11】図11は、正常なイヌにおける血中グルコースに及ぼす経口インスリン投与の影響を示す。この実験のために使用したインスリン処方物は、100カプリン酸ナトリウム、HPMC層、一方向放出層、および腸溶層を含む三層錠剤であった。
【図12】図12は、手作業によるプロセスおよびレーザーアブレーションプロセス(laser ablation process)によって生成された一方向放出層によって媒介されるエクセナチド吸収を比較している。この実験のために使用したエクセナチド処方物は、手作業またはレーザーアブレーションのいずれかによって調製した200mgカプリン酸ナトリウム、L30D−55腸溶材料を含むHPMC層、および一方向放出層を含む二層錠剤であった。
【図13】図13は、ソマトスタチン処置したイヌにおける血中グルコースレベルに及ぼす経口インスリン投与(25U、25U×2、および50U)の用量依存性の影響を示す。この実験のために使用したインスリン処方物は、200mgカプリン酸ナトリウム、L30D−55腸溶材料を含むHPMC層、および一方向放出層を含む二層錠剤であった。
【図14A】図14Aおよび14Bは、正常なイヌにおけるエクセナチドの放出および吸収の動態に及ぼす生体接着層中の生体接着ポリマー含有量の影響を示す。この実験のために使用したエクセナチド処方物は、100mgカプリン酸ナトリウム、65%または80%HPMCおよびL30D−55腸溶材料を含むHPMC層、およびレーザーアブレーションによって調製した一方向放出層を含む二層錠剤であった。
【図14B】図14Aおよび14Bは、正常なイヌにおけるエクセナチドの放出および吸収の動態に及ぼす生体接着層中の生体接着ポリマー含有量の影響を示す。この実験のために使用したエクセナチド処方物は、100mgカプリン酸ナトリウム、65%または80%HPMCおよびL30D−55腸溶材料を含むHPMC層、およびレーザーアブレーションによって調製した一方向放出層を含む二層錠剤であった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
用語および定義
他で定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する当業者によって一般に理解されている意味を有する。本明細書中で言及された全ての特許、公開特許出願、ならびに他の刊行物およびデータベースは、その全体が参考として援用される。本項に記載の定義が本明細書中で参考として援用される特許、公開特許出願、ならびに他の刊行物および他のデータベースに記載の定義に反するか、そうでなければ矛盾する場合、本明細書中で参考として援用される定義よりも本項に記載の定義を優先する。
【0023】
刊行物または書類の引用は、任意のかかる刊行物または書類が先行技術と関連性を承認していることを意図せず、これらの刊行物または書類の内容または日付に関していかなる承認もしていない。
【0024】
本明細書中で使用する場合、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0025】
本明細書中で使用する場合、用語「薬学的組成物」または「薬学的に許容され得る処方物」は、その所望の活性に最も適切な物理的位置に一部または化合物が有効に分布することが可能な組成物または処方物をいう。
【0026】
本明細書中で使用する場合、用語、活性薬剤の「有効量」または「治療有効量」は、非毒性であるがほとんどの患者または個体に所望の治療効果または予防効果を得るのに十分な薬剤の量をいう。薬理学的に活性な薬剤の有効量が投与経路、ならびに薬物または薬理学的に活性な薬剤が投与される個体の年齢、体重、および性別に応じて変化し得ると一般に認識されている。当業者が異なる投与経路について本明細書中でさらに開示の単位用量範囲内での投与後に活性薬剤の血漿レベルに影響を及ぼす代謝、生物学的利用能、および他の要因などの要因を考慮することによって適切な有効量を決定することができることも一般に認識される。
【0027】
本明細書中で使用する場合、用語「薬学的に許容され得る」は、ヒトまたは他の哺乳動物と生理学的に適合可能な非毒性で不活性の組成物をいう。
【0028】
本明細書中で使用する場合、用語「薬学的賦形剤」は、アジュバント、キャリア、pH調整剤および緩衝剤、張度調整剤、湿潤薬、および防腐剤などの材料をいう。
【0029】
本明細書中で使用する場合、用語「被験体」、「個体」、「宿主」、および「患者」を、処置、観察、および/または実験の対象である動物をいうために交換可能に使用する。用語「動物」には、脊椎動物および無脊椎動物(魚類、甲殻類、爬虫類、鳥類、特に、哺乳動物など)が含まれる。用語「哺乳動物」には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類(サル、チンパンジー、および類人猿、特にヒトなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書中で使用する場合、用語「処置」は、疾患または感染状態または症状を修復または防止するか、そうでなければ疾患/感染または他の望ましくない症状の進行を阻止、妨害、遅延、または逆転する任意および全ての使用をいう。本明細書中で使用する場合、用語「処置」および「治療」は、疾患の任意の結果の任意の向上または改善をいい、疾患を完全に根絶する必要はない。特定の障害の症状の改善は、持続性か一過性かに無関係に、本発明の治療組成物の投与に寄与し得るか関連し得る症状の任意の緩和をいう。
【0031】
本明細書中で使用する場合、用語「投与(administration)」または「投与(administering)」は、本発明の組成物を被験体に提供するのに適切な任意の方法をいう。本発明の薬学的組成物を、経口、鼻腔内、口内、舌下、直腸、または膣の投与経路によって投与することができる。薬学的組成物を、各投与経路に適切な投薬単位処方物中に処方することができる。
【0032】
本明細書中で使用する場合、用語「固体投薬形態」は、固体(錠剤、カプレット、カプセル(硬質または軟質の材料(ゼラチンまたは天然もしくは合成のゼラチン代用物など)から作製されたものが含まれる)、ロゼンジ、およびその組み合わせなどが含まれるが、これらに限定されない)の任意の投薬形態をいう。
【0033】
本明細書中で使用する場合、用語「透過促進剤」は、粘膜表面を横切る薬理学的に活性な薬剤の輸送速度を改善する薬剤をいう。典型的には、透過促進剤は、治療薬への粘膜組織の透過性を増大させる。例えば、透過促進剤は、治療薬が膜を透過して血流に侵入する速度を増大させる。透過促進剤を使用した透過の増強を、例えば、動物またはヒトの膜を横切る薬理学的に活性な薬剤の流動の測定によって観察することができる。本明細書中で使用する場合、透過促進剤の「有効」量は、粘膜透過性を望ましく増加させ、それにより、例えば、選択された化合物の所望の吸収および/または生物学的利用能が得られる量をいう。
【0034】
本明細書中で使用する場合、用語「生体接着剤」は、一般に、生きている組織および/または体液を結び付ける任意の接着剤をいう。用語「生体接着層」は、被験体の粘膜組織に接着することが意図される固体層をいう。生体接着層は、少なくとも1つの「生体接着ポリマー」を含む。生体接着層は、カルボマー、ポリカルボフィル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、キトサン、アルギン酸塩、キサンタンガム(xanthum gum)、アクリル酸ポリマー、ならびにその誘導体および混合物から選択することができるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書中で使用する場合、用語「不透過性または半透性」は、薬物送達系内に含まれる生理学的流動物および成分に、不透過性または半透性の材料を介したかかる流動物および成分の系の内外への移動が実質的に系の機能に悪影響を及ぼさないほど遅いように十分に不透過性を示す材料をいう。
【0036】
本明細書中で使用する場合、用語「実質的な一方向放出」は、固体投薬形態中に含まれる治療薬および透過促進剤の約50%超、60%超、70%超、好ましくは約80%超、より好ましくは約90%超、最も好ましくは約95%超が、不透過性の層または半透性の層中の開口部によって規定される同一の単一方向で固体投薬形態から放出されることを意味する。
【0037】
本明細書中で使用する場合、用語「実質的に等価な相対放出速度」は、固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の放出が実質的に同時である(すなわち、所与の時間に放出される治療薬の放出部分(%)と同時の透過促進剤の放出部分との間の相違が約50%未満、40%未満、30%未満、好ましくは約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満である)ことを意味する。
【0038】
本明細書中で使用する場合、用語「腸溶コーティング」、「腸溶層」、「腸溶材料」、および「腸溶ポリマー」は、固体投薬形態に適用され、口腔内、食道内、または胃内での有効成分の放出を防止するが、投薬形態が下部消化管の近位部を通過する場合に薬物を迅速且つ完全に放出させる薬学的に許容され得る賦形剤の混合物をいう。腸溶層は、好ましくは、固体投薬形態重量とコーティング重量との組み合わせに基づいて、約1〜15%、より好ましくは約3〜12%、最も好ましくは約6〜10重量%含む。腸溶コーティングポリマーを、セルロースアセタートフタラート(オイドラギット(登録商標)SまたはL)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートトリメリタート、ポリビニルアセタートフタラート、シェラック、およびメタクリル酸コポリマーから選択することができるが、これらに限定されない。コーティングの厚さを、コーティングの性質および厚さに応じた所望の放出速度が得られるように選択する。
【0039】
本明細書中で使用する場合、用語「可塑剤」は、ポリマー鎖間の自由体積の増加によってポリマーのガラス転移温度および融解粘度を低下させるために薬学的組成物に組み込むことができる材料をいう。可塑剤には、クエン酸エステル(例えば、トリエチルシトラート、トリアセチン)、低分子量ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコール)、グリセロール、ペンタエリスリトール、グリセロールモノアセタート、ジアセタート、またはトリアセタート、プロピレングリコール、およびジエチルナトリウムスルホスクシナートが含まれるが、これらに限定されない。可塑剤は、薬学的組成物の約0.1〜約25重量%、好ましくは約0.5〜15重量%または約1〜20重量%の濃度で存在することができる。可塑剤のさらなる例を、M.&I.Ash,THE HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL ADDITIVES(3rd ed.,Synapse Information Resources,Inc.,2007)中に見い出すことができる。
【0040】
本開示を通して、本発明の種々の態様を、範囲形式で示すことができる。範囲形式の記載は便宜上および簡潔さのみを目的とすると理解すべきであり、本発明の範囲を不変に制限すると解釈すべきではない。したがって、範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能性のある部分的な範囲およびその範囲内の各数値を有すると見なすべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜3、2〜4、2〜5、2〜6などの具体的に開示された部分範囲およびその範囲内の各数値(例えば、1、2、3、4、5、および6)を有すると見なすべきである。範囲の広さと無関係にこれを適用する。
【0041】
薬物送達系
上記のように、本発明は、コアを形成するための有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含み、生体接着ポリマーを含有する生体接着層でさらにコーティングされた錠剤、パッチ、ディスク、または粉末の固体投薬形態を含む薬物送達のための薬学的組成物を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物を、胃腸管中の好ましい部位で放出させるための腸溶材料でさらにコーティングする。
【0043】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコールなどのポリマーでの膜コーティングを、腸溶コーティングプロセスを増強するために一般に実施するにもかかわらず、本発明者らは、驚いたことに、生体接着ポリマー層の存在によって低吸収性治療薬の吸収および生物学的利用能を有意に改善するために必要な透過促進剤の量を減少させることが可能であることを見い出した。
【0044】
開示の薬学的組成物の例を、実施例に示す。実施例では、透過促進剤はカプリン酸ナトリウムであり、試験した薬物はエクセナチド(39アミノ酸ペプチドである)(2型糖尿病治療用のBYETTA(登録商標)としてAmylin and Eli Lillyから市販されている)であった。先行技術では、有意な吸収増強を達成するためのカプリン酸ナトリウムの必要量は、イヌにおいて275〜550mgの範囲であった(米国特許出願公開第2008/0275001号)。より少量のカプリン酸ナトリウム(115〜120mg)を含む腸溶コーティングされた処方物では同一の動物モデルにおいて無効であることが見い出された(Burchamら,Pharm.Res.,1995,12(12):2065−2070)。
【0045】
本発明者らは、先行技術と一致して、100mgカプリン酸ナトリウムのみを含む処方物も無効であることを見い出した。しかし、驚いたことに、同量のカプリン酸ナトリウム(100mg)および生体接着層を含む処方物は、より大量のカプリン酸ナトリウムのみを含む処方物と比較して同等またはより有効であった。生体接着層をより大量のカプリン酸ナトリウム(400mg)を含む処方物中に組み込んだ場合、吸収のさらなる増強が認められた。生体接着層の存在がかかる相当な範囲まで透過促進剤の必要量に影響を及ぼすことは全く予想外であった。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明は、コアを形成するための有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含み、生体接着ポリマーを含有する生体接着層によってさらにコーティングされ、次いで、固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を有する不透過性の層または半透性の層によってさらにコーティングされた錠剤、パッチ、ディスク、または粉末の固体投薬形態を含む薬物送達のための薬学的組成物を提供する。
【0047】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物を、胃腸管中の好ましい部位で放出させるための腸溶材料でさらにコーティングすることができる。驚いたことに、この組成物は、吸収の増強に悪影響を及ぼすことなく透過促進剤の量をさらに減少させることができることが見い出された。
【0048】
先行技術は、一方向放出投薬形態の異なる例を含む。例えば、米国特許第4,772,470号および同第5,827,525号は、口内薬物投与のためのパッチまたは経口用包帯を開示している。同様に、部位選択層、薬物、接着層、および不透過性の層を含む経口用パッチ形式は、米国特許第7,097,851号および多数の非特許刊行物(例えば、S.Eaimtrakarnら,Biomaterials,2002,23(1):145−152;S.Eaimtrakarnら,Intl.J.Pharm.,2003,250(1):111−117;およびS.L.Tao & T.A.Desai,Drug Discov.Today,2005,10(13):909−915)に開示されている。不透過性エチルセルロース層でコーティングされた生体接着パッチは、ラットin situモデルにおいてインスリンを送達させることが報告され、透過促進剤は、この送達系の作用に重要でないことが見い出された(K.Whiteheadら,J.Control.Release,2004,98(1):37−45)。全てのこれらの刊行物は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0049】
特に、多数の特許および非特許刊行物が経口パッチ形式および一方向放出投薬形態を開示しているにもかかわらず、この薬学的に重要な分野においてその後に商業的な適用は報告されておらず、このことは、経口パッチ形式が深刻な技術的困難をもたらし続けていることを示す。
【0050】
カプリン酸ナトリウムの存在下でのエクセナチドの吸収および生物学的利用能に及ぼす一方向放出層の影響を、実施例6に示す。50mgカプリン酸ナトリウムを含むが一方向放出層を含まない処方物では、イヌにおけるエクセナチド吸収は最小であった。これは、当該分野の以前の報告と一致していた(米国特許第7,605,123号)。しかし、一方向放出層を適用した場合、エクセナチド吸収が有意に増強された。コーティング材料は、不透過性または半透性のいずれかであり得る。
【0051】
透過促進剤がしばしば一定の最小有効濃度を必要とすることが当該分野で公知である。例えば、透過増強効果を達成するために必要なカプリン酸ナトリウムの濃度は、少なくとも10〜13mMと推定されている(E.K.Anderbergら,Pharm.Res.,1993,10(6):857−864を参照のこと)。流動物の一定の流れにおける胃腸管中での急速な希釈を回避するために透過促進剤の放出が比較的迅速であり、且つ治療薬の放出が実質的に同時であることが必要であることがさらに認識される。例えば、米国特許出願公開第2008/0275001号は、透過促進剤としてカプリン酸ナトリウムを含む低分子量ヘパリンの即時放出(IR)および徐放(SR)処方物を開示している。同量のカプリン酸ナトリウムを考慮する場合、徐放処方物は、即時放出処方物と比較して有意に有効性が低かった。
【0052】
したがって、さらなる不透過性の層または半透性の層を含み、より単純な処方物と比較して広範な放出プロフィールを有する処方物が比較的高レベルの吸収増強を示すことが見い出されたことは驚きであった。本発明者らは、一方向放出処方物を使用して、不透過性の層または半透性の層の厚さ、不透過性または半透性材料を改変するために使用される可塑剤の含有量および性質、ならびに開口部のサイズを変化させることによって治療薬の薬物動態プロフィールを調整することができることをさらに見い出した。いくつかの実施形態では、治療薬および透過促進剤は、実質的に同時様式で薬学的組成物から放出される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、放出時間を延長させ、持続的吸収が可能である。
【0053】
治療薬
いくつかの実施形態では、送達すべき治療薬は、胃腸管での吸収が低く、且つ生物薬剤学分類系(BCS)分類(Food and Drug Administration,“Guidance for Industry:Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate−Release Solid Oral Dosage Forms Based on a Biopharmaceutics Classification System”を参照のこと)に従ってクラスIIIまたはIV化合物に属する治療薬を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、低吸収性治療薬は、アセチルシステイン、アカンプロサート、アシクロビル、アルベンダゾール、アルクロニウム、アレンドロネート、アルフゾシン、アルプラゾラム、アルプロスタジル、アミカシン、アミノビスホスホネート、アミオダロン、アミトリプチリン、アムロジピン、アモキシリン、アンフェタミン、アンホテリシンB、アンピシリン、アルテメーテル、アルテスナート、アスピリン、アタザナビル、アテノロール、アトモキセチン、アトルバスタチン、アトロピン、アジスロマイシン、AZT、バシトラシン、ベクロメタゾン、ベンザチンベンジルペニシリン、ベンジルペニシリン、ビペリデン、ブレオマイシン、ボセンタン、ブピバカイン、ブプレノルフィン、ブプロピオン、カンデサルタン、カンドキサトリル、カプレオマイシン、カプトプリル、カルバマゼピン、カルビドパ、カルベジロール、カスポフンギン、セファゾリン、セフジニル、セフィキシム、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セレコキシブ、クロラムブシル、クロラムフェニコール、クロロキン、クロルフェナミン、クロルプロマジン、シラスタチン、シミチジン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クロファジミン、クロミプラミン、クロニジン、クロピドグレル、クロトリマゾール、クロキサシリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビン、d−9−テトラヒドロカンナビノール、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダナゾール、ダプソン、ダウノルビシン、デフェロキサミン、デシプラミン、デキサメタゾン、ジダノシン、ジエチルカルバマジン、ジゴキシン、ジヒドロエルゴタミン、ジルチアゼム、ジメルカプロール、ドラルジン、ドンペリドン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキサゾシン、ドキセタキセル、ドキソルビシン、デュロキセチン、エファビレンツ、エフロルニチン、エナラプリル、エンプロスチル、エピネフリン、エルゴメトリン、エルロチニブ、エリスロマイシン、エソメプラゾール、エストラジオール、エスゾピクロン、エトポシド、エゼチミブ、ファモチジン、フェロジピン、フェノフィブラート、フェンタニル、フェキソフェナジン、フィナステリド、フルシトシン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキセチン、フルフェナジン、フルルビプロフェン、フルチカゾン、フルバスタチン、ホルモテロール、フロセミド、ガバペンチン、ガンシクロビル、ゲムシタビン、ゲンタマイシン、グリベンクラミド、グリメピリド、三硝酸グリセリン、グリセオフルビン、グリセオフルビン、ハロペリドール、ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコルチゾン(hydrocortizone)、ヒドロキソコバラミン、イバンドロン酸、イブプロフェン、イミペネム、イミプラミン、インジナビル、臭化イプラトロピウム、イルベサルタン、イリノテカン、イソシアジド、二硝酸イソソルビド、イトラコナゾール、カナマイシン、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ラベタロール、ラタノプロスト、レバミソール、レボドパ、リドカイン、リシノプリル、ロペラミド、ロピナビル、ロサルタン、ロバスタチン、ルメファントリン、メベンダゾール、メドロキシプロゲステロン、メフロキン、アンチモン酸メグルミン、メラルソプロール、メルカプトプリン、メスナ、メトホルミン、メタドン、メトトレキサート、メチルドーパ、メチルフェニデート、塩化メチルチオニニウム、メトプロロール、ミフェプリストン、ミソプロストール、モダフィニル、モメタゾン、モンテルカスト、モルヒネ、ナドロール、ナロキソン、ナプロキセン、ネオスチグミン、ネビラピン、ニクロサミド、ニフェジピン、ニフルチモックス、ニトロフラントイン、ノルエチステロン、ノルトリプチレン、ナイスタチン、オフロキサシン、オルメサルタン、オメプラゾール、オンダンセトロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロナート、p−アミノサリチル酸、パロモマイシン、ペメトレキセド、ペニシラミン、ペンタミジン、フェノキシメチルペニシリン、フェニル酢酸マスタード、フェニトイン、フィトメナジオン、植物ステロール、ピロキシカム、ピロカルピン、ピペラシリン、プラバスタチン、プラジカンテル、プラゾシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロカインベンジルペニシリン、プロカルバジン、プロゲステロン、プログアニル、プロメタジン、プロプラノロール、プロパノール、プロピルチオウラシル、プロスタグランジン、ピランテル、ピリドスチグミン、クエチアピン、キニジン、キニーネ、ラベプラゾール、ラロキシフェン、ラミプリル、ラニチジン、ラパマイシン、リバビリン、リセドロン酸、リトナビル、ロピニロール、ロスバスタチン、サルブタモール、サリチル酸、サルメテロール、サキナビル、スコポラミン、セルトラリン、シルデナフィル、シンバスタチン、ニトロプルッシドナトリウム、スペクチノマイシン、スタブジン、ステロイド、スチボグルコナート、スチグマステロール、スルファドキシン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スマトリプタン、スラミン、スキサメトニウム、タクロリムス、タダラフィル、タモキシフェン、テガセロド、テルミサルタン、テモゾロミド、テニダップ、テノホビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル、テルフェナジン、テストステロン、テトラカイン、テトラサイクリン、チモロール、チオトロピウム、トリアムシナロン、トリクラベンダゾール、トロバフロキサシン、ツボクラリン、ユビキノン、バラシクロビル、バルプロ酸(valproic)、バルサルタン、バンコマイシン、バルデナフィル、ベクロニウム、ベンラファキシン、ベラパミル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビタミンB12、ジドブジン、ジプラシドン、ゾレドロン酸、ゾルピデム、その塩、アナログ、および誘導体からなる群から選択される。
【0055】
いくつかの実施形態では、治療薬は、特定の吸収部位(上部小腸が含まれるが、これに限定されない)で選択的に吸収される治療薬を含む。治療薬には、リボフラビン、レボドパ、メルホルミン、およびフロセミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
いくつかの実施形態では、治療薬は、タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、核酸、脂質、炭水化物、またはその組み合わせから選択される生物学的に活性な高分子を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、抗トロンビン、アルブミン、α−1−プロテイナーゼインヒビター、抗血友病因子、凝固因子、抗体、抗CD20抗体、抗CD52抗体、抗CD33免疫毒素、DNアーゼ、エリスロポエチン、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、濾胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ペグ化G−CSF、ガラクトシダーゼαまたはβ、グルカゴン、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、絨毛性ゴナドトロピン、B型肝炎抗原、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、B型肝炎外被抗原、C型肝炎抗原、ヒルジン、抗HER−2抗体、抗IgE抗体、抗IL−2受容体抗体、インスリン、インスリングラルジン、インスリンアスパルト、インスリンデテミール、インスリンリスプロ、インターフェロン、ペグ化インターフェロン、インターフェロンαまたはα2aまたはα2bまたはコンセンサス、インターフェロンβまたはβ−1aまたはβ−1bまたはベータサー、インターフェロンγ、インターロイキン−2、インターロイキン−11、インターロイキン−12、黄体形成ホルモン、ネシリチド、骨形成タンパク質−1、骨形成タンパク質(osteogeneic protein)−2、ライムワクチン、血小板由来成長因子、抗血小板抗体、抗RSV抗体、ソマトトロピン、抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体、TNF受容体−Fc融合タンパク質、組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)、TNK−tPA、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、線維素溶解酵素、血栓溶解酵素、アデノシンデアミナーゼ、ペグ化アデノシンデアミナーゼ、アニストレプラーゼ、アスパラギナーゼ、コラゲナーゼ、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、ウロキナーゼ、アプロチニン、ボツリヌス毒素、線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、毒液、抗体、抗体フラグメント、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される。タンパク質を、組換えテクノロジー、化学合成によって産生するか、生物学的起源から抽出することができる。タンパク質には、野生型の改変アナログまたは誘導体も含まれる。タンパク質供給源は、ヒトであり得るか、他の種に由来し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、ACTH、抗血管新生ペプチド、アダムトソスタチン、アディポネクチン、脂質動員ホルモン、デイポヌトリン、脂肪デスニュートリン、アドレノメズリン、アグーチ関連タンパク質、アラリン、アラトスタチン、アメロゲニン、カルシトニン、アミリン、アミロイド、アンギオポエチン(agiopoietin)、アンギオテンシン、食欲不振誘発性ペプチド、抗炎症性ペプチド、抗利尿因子、抗菌ペプチド、アペリン、アピデシン、RGDペプチド、心房性ナトリウム利尿ペプチド、アトリオペプチン、アウリクリン、オータキシン、ボンベシン、ボンビナキニン、ブランジキニン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、脳由来神経栄養因子、ブレビニン、C−ペプチド、カスパーゼインヒビター、膵臓ポリペプチド、ブッカリン、ブルシン、C型ナトリウム利尿ペプチド、カルシトニン関連ペプチド、カルシトニン受容体刺激ペプチド、カルモジュリン、CART、カルチロスタチン、カソモキニン、カソモルフィン、カテスタチン、カテプシン、セクロピン、セレベリン、ケメリン、コレシストキニン、クロモグラニン、毛様体神経栄養因子、コナントキン、コノプレシン、コノトキシン、コペプチン、皮質アンドロゲン刺激ホルモン、コルチコトロピン放出因子、コルチスタチン、共役因子、ディフェンシン、デルタ睡眠誘発ペプチド、デルモルフィン、バソプレシン、デスアミノ−バソプレシン、利尿ホルモン、ダイノルフィン、エンドキニン、エンドモルフィン、エンドルフィン、エンドスタチン、エンドセリン、エンケファリン、エンテロスタチン、エキセンジン(exendin)、エキセンジン−4、赤血球生成ペプチド、上皮成長因子、脂肪標的化ペプチド、ガラニン、胃抑制ペプチド、ガストリン、ガストリン放出ペプチド、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、グルタチオン誘導体、グルテンエクソルフィン、成長ホルモン放出因子、GM−CSF阻害ペプチド、成長ホルモンペプチド、グアニリン、HIVペプチド、ヘロデミン、ヘモキニン、HCVペプチド、HBVペプチド、HSVペプチド、ヘルペスウイルスペプチド、ヒルジン、ヒドラペプチド、インスリン様成長因子、ヒドリン、インテルメジン、カッシニン、角化細胞成長因子、キネテンシン、キニノーゲン、キッスペプチン、キョートルフィン、ラミニンペプチド、レプチンペプチド、ロイコキニン、ロイコピロキニン、ロイペプチン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、リンホカイン、メラニン凝集ホルモンおよびそのインヒビター、メラノサイト刺激ホルモン放出インヒビター、メラノトロピン促進因子、モルヒネ調整神経ペプチド、MSH、ネオエンドルフィン、ネスファチン、ニューロキニン、ニューロメジン、ニュートロペプチドY、ニューロテンシン、神経栄養因子、ノシセプチン、オベスタチン、オピオイド受容体アンタゴニスト、オレキシン、オステオカルシン、オキシトシン、パンクレアスタチン、ペプチドYY、フィサレミン様ペプチド、セクレチン、ソマトスタチン,精子活性化ペプチド、サブスタンスP、シンジファリン、トロンボスポンジン、サイモポイエチン、サイモシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、トランスフォーミング成長因子、タフトシン、腫瘍壊死因子アンタゴニストまたは関連ペプチド、ウスレキスタキキニン、ウロコルチン、ウロテンシンアンタゴニスト、バロルフィン、バソトシン、VIP、キセノプシンまたは関連ペプチド、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される。ペプチドを、組換えテクノロジー、化学合成によって産生するか、生物学的起源から抽出することができる。ペプチドには、野生型タンパク質の改変アナログまたは誘導体が含まれる。ペプチド供給源は、ヒトであり得るか、他の種に由来し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、生物学的に活性な高分子は、アデノウイルス、炭疽菌、BCG、ボツリヌス菌、コレラ、ジフテリア類毒素、ジフテリアおよび破傷風類毒素、ジフテリア破傷風および百日咳、ヘモフィルスB、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、脳炎、麻疹、ムンプス、風疹、髄膜炎菌、ペスト、百日咳、肺炎球菌、ポリオ、狂犬病、ロタウイルス、風疹、天然痘、破傷風類毒素、チフス菌、水痘、黄熱病、細菌抗原、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される微生物に対するワクチンである。
【0060】
いくつかの実施形態では、生物学的に活性な高分子は、チリダニ、動物の鱗屑、カビ、花粉、ブタクサ、ラテックス、ハチ毒、および昆虫由来アレルゲン、およびその任意の組み合わせからなる群から選択されるアレルゲンである。
【0061】
生物学的に活性な高分子は、高分子と類似の生物学的機能との組み合わせ(例えば、野生型分子とその化学的または生物学的に改変されたアナログとの組み合わせが含まれる)を含むことができる。かかる野生型高分子およびアナログの例には、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)およびそのアナログ、リラグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド、リキセナチド、およびエクセナチドならびにそのアナログおよび任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
いくつかの実施形態では、治療薬は、エクセナチド、39−アミノ酸ペプチド(2型糖尿病治療用のBYETTA(登録商標)としてAmylin and Eli Lillyから市販されている)ならびに塩および機能的誘導体(ペグ化エクセナチドなど)、エクセナチド融合タンパク質(アルブミンなど)、トランスフェリン、XTEN、Fc融合物、およびその脂肪酸改変誘導体から選択される。
【0063】
透過促進剤
上記のように、多数の透過促進剤が当該分野で公知である。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、脂肪酸、中鎖グリセリド、界面活性剤、ステロイド性洗剤、アシルカルニチン、アルカノイルコリン、N−アセチル化アミノ酸、ならびにそのエステル、塩、および誘導体からなる群から選択される。
【0064】
いくつかの実施形態では、透過促進剤は、脂肪酸(酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸(linolinic acid)、その塩、誘導体、および任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)を含む。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、脂肪酸(酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸(linolinic acid)、その塩、誘導体、および任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)のグリセリドを含む。グリセリドは、モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリドであり得る。そして、脂肪酸は、同一または異なる脂肪酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、8〜14炭素原子を有する脂肪鎖(fatty chain)を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、透過促進剤は、胆汁酸または塩(抱合または非抱合の胆汁酸(コラート、デオキシコラート、タウロコラート、グリココラート、タウロデオキシコラート、ウルソデオキシコラート、タウロウルソデオキシコラート、ケノデオキシコラート、その誘導体およびその組み合わせなど)が含まれる)を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、透過促進剤は、金属キレート剤(EDTAまたはEGTAなど)、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、ポリエチレンエーテルまたはエステル、ポリエチレングリコール−12ラウリルエーテル、サリチラート、ポリソルベート80(ツウィーン80(登録商標))、ノニルフェノキシポリオキシエチレン、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、サポニン、パルミトイルカルニチン、ラウロイル l−カルニチン、ドデシルマルトシド、アシルカルニチン、アルカノイルコリン、およびその任意の組み合わせなど)を含む。他の透過促進剤には、3’−ニトロベンゾアート、閉鎖帯毒素、乳酸塩の脂肪酸エステル、グリチルリチン酸塩、ヒドロキシルβ−シクロデキストリン、N−アセチル化アミノ酸(N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム、およびキトサンなど)、これらの化合物の塩および誘導体ならびにその組み合わせが含まれる。
【0067】
いくつかの実施形態では、透過促進剤は、密着結合を選択的にターゲティングして開かせる化合物(例えば、キトサンおよびその誘導体)を含む。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、カプリン酸またはその塩もしくは誘導体である。
【0068】
処方物および賦形剤
上記のように、本発明は、とりわけ薬学的に許容され得る賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、カプセル、錠剤、ペレット、パッチ、またはディスクの形態であり得る。適切な賦形剤およびその処方物は当該分野で公知であり、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005)に記載されており、その関連する項が本明細書中に援用される。
【0069】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容され得る賦形剤は、キャリアの分散を補助する材料を含む。いくつかの実施形態では、薬学的賦形剤は崩壊剤を含む。いくつかの実施形態では、薬学的賦形剤は、ポリプラスドン、クロスカルメロース、クロスポビドン、グリコール酸デンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、およびその任意の組み合わせを含む。
【0070】
薬学的組成物は、他の成分(緩衝液、防腐剤、非イオン性界面活性剤、溶解補助剤、吸収促進剤、安定剤、軟化薬、潤滑剤、および等張化剤など)を含むことができる。組成物を、薬物が制御放出されるように処方することができる。
【0071】
薬学的組成物は、経口使用(例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、または硬カプセルもしくは軟カプセルとして)に適切な形態であり得る。経口使用を意図した組成物を、薬学的組成物の製造について当該分野で公知の任意の方法にしたがって調製することができ、かかる組成物は、例えば、薬学的に安定且つ美味な調製物を得るための1つ以上の薬剤(甘味剤、香味物質、着色剤、および防腐剤など)を含むことができる。
【0072】
錠剤で使用される賦形剤には、例えば、不活性な希釈剤または充填剤(炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムもしくはリン酸ナトリウム、微結晶性セルロース、スクロース、マンニトール、およびソルビトールなど)、造粒剤または結合剤(ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、またはその組み合わせなど)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、シリカ粉末、ステアリン酸、またはタルク)が含まれ得る。本明細書中に開示の例示的処方物では、コア処方物を含む賦形剤には、以下が含まれる。
【0073】
【表1−1】
いくつかの実施形態では、処方物中の透過促進剤、特にカプリン酸ナトリウムの量は、約400mg、約300mg、約200mg、約100mg、約50mg、または約25mg、好ましくは約200mg、約100mg、または約50mg、より好ましくは約100mgである。いくつかの実施形態では、カプリン酸ナトリウムの含有量は、約25〜300mg、約50〜200mg、または約100〜200mgの範囲である。
【0074】
コア中のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の存在は、コア処方物の透過促進剤の放出プロフィールおよび治療薬接着性を調整する。種々の粘度のHPMCを、コアの接着を調整することが可能な比率または組み合わせで組み込むことができる。実施例は、・・・を示している。
【0075】
本発明で組み込まれる高分子薬物は、しばしば、非常に強力であり、コア処方物中の薬物含有率は、約1%、約0.1%、または約0.01%と低い。これらなどの低用量処方物は、しばしば、品質管理の局面(安定性、含量均一性、および分析方法が含まれる)で大変な困難にぶつかる。しばしば、含量均一性を維持しながら治療薬の安定性を確保するための過程を工夫する必要がある。
【0076】
高用量薬物処方物は、低用量処方物と比較して異なる困難(コンパクタビリティおよび流動性に関する困難など)が存在する傾向がある。
【0077】
いくつかの実施形態では、処方物は、米国特許出願公開第2005/0234114号、米国特許出願第12/434,557号、およびPCT公開番号WO2005/084637号およびWO2009/135190号(その全ての全体が本明細書中で参考として援用される)に記載のように、リン酸カルシウムナノ粒子をさらに含むことができる。
【0078】
本発明の薬学的組成物を、薬物の直腸投与のための坐剤形態で投与することもできる。これらの組成物を、薬学的組成物と適切な非刺激性の賦形剤(常温で固体であるが、直腸温度で液体であり、したがって、直腸内で融解して薬物を放出するであろう)との混合によって調製することができる。かかる材料には、カカオバターおよびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の薬学的組成物を、膣経路を介して投与することもできる。膣投与に適切な処方物には、ペッサリー、錠剤、またはタンポンが含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明の化合物の投与のための薬学的組成物は、投薬単位形態で都合良く存在することができ、薬学分野で周知の任意の方法によって調製することができる。
【0081】
生体接着層
上記で考察するように、本発明のコア薬学的組成物を、生体接着ポリマーを含む生体接着層でコーティングする。いくつかの実施形態では、生体接着層を、固体投薬形態上に直接接触させてコーティングする。他の実施形態では、固体投薬形態と生体接着層との間に1つ以上の中間層が存在し得る。いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層を、固体投薬形態と生体接着層との間に配置する。あるいは、生体接着層を、固体投薬形態と不透過性の層または半透性の層との間に配置することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、生体接着層は、胃腸管などの所望の標的部位に接着することができる生体接着ポリマーを含む。生体接着ポリマーには、カルボマー、ポリカルボフィル、キトサン、アルギン酸塩、チオマー、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolindone)、フマル酸無水物オリゴマー、ポリエステル、ポリアクリラート、ポリサッカリド、改変デキストラン、ヒアルロン酸ナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、ならびにその塩、誘導体、および混合物が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0083】
好ましい実施形態では、生体接着層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはポリカルボフィルAA1を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、生体接着層は、材料(生体接着ポリマー、可塑剤、または放出速度を調整するための他の材料など)の複合物を含む。生体接着材料を大量に含有することが望ましい。いくつかの実施形態では、生体接着ポリマーの含有量は、約50%超、約65%超、約75%、約80%超、または約90%超を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、生体接着層は、腸溶材料(セルロースアセタートフタラート(オイドラギット(登録商標)SまたはL)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートトリメリタート、ポリビニルアセタートフタラート、メタクリル酸コポリマー、シェラック、ならびにその塩、誘導体、およびその任意の組み合わせなど)をさらに含むことができる。
【0086】
生体接着層中の腸溶材料の存在により、胃内で投薬量を完全に保持することができ、pHが上昇する腸内で放出および吸収される。しばしば、酸安定性を維持するために高比率の腸溶材料(約50%以上など)が必要である。したがって、約10〜20%の低比率の腸溶材料を使用した場合でさえ、投薬量の酸安定性が認められることが非常に驚きである。
【0087】
いくつかの実施形態では、生体接着層中の腸溶材料の含有量は、約5〜50%、好ましくは約10〜35%、より好ましくは約15〜25%の範囲である。
【0088】
いくつかの実施形態では、生体接着層は、可塑剤(グリセロール、トリアセチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、その誘導体、およびその任意の組み合わせなど)をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、生体接着層中の可塑剤は、約1〜35%、好ましくは約5〜25%、より好ましくは約10〜15%の範囲である。
【0089】
いくつかの実施形態では、生体接着層は、薬学的組成物の約0.5重量%〜約10重量%、好ましくは約1〜5重量%、より好ましくは約2〜3重量%の範囲の含有量で存在し得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、生体接着層の厚さを、所望の放出動態および吸収が達成されるように調整することができる。
【0091】
一旦所望のpHに到達すると、腸溶材料は急速に溶解する。組成物中の生体接着剤および腸溶層中の腸溶材料の存在量が有意に異ならないので、腸溶材料を含む生体接着層と腸溶層との間の溶解速度は類似すると予想されるであろう。
【0092】
したがって、同一の腸溶材料を含む腸溶層を含む処方物と比較して腸溶材料を含む生体接着層を使用した処方物からのより迅速な吸収および薬理学的影響が認められることは非常に意外である。
【0093】
この驚くべき所見は、生体接着層に組み込んだ腸溶材料を使用した処方物が腸内での吸収領域を増大させ、より迅速な臨床応答(一般に、より望ましい)を達成することができることを示唆している。
【0094】
生体接着層に組み込んだ腸溶材料を使用した処方物は、コーティングの必要性を軽減し、製造過程を簡潔にする。それにより、所望の処方物を生成するための生成時間およびその後の費用が軽減される。
【0095】
不透過性層または半透性層
上記で考察するように、不透過性の層または半透性の層を使用して、低吸収性治療薬の吸収および生物学的利用能の改善に必要な放出動態を調整し、透過促進剤の量をさらに軽減する。いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層は、固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を含む。開口部のサイズおよび形状は、固体投薬形態の性質および所望の放出動態に必ず依存するであろう。開口部のサイズの決定は、十分に当業者の技能の範囲内である。いくつかの実施形態では、開口部は、錠剤またはカプレットの一つの面を完全に覆うことができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、一方向放出錠剤の開口部は、錠剤の一つの面の領域の約20〜90%、好ましくは約40〜80%、より好ましくは約50〜70%を覆っている。
【0097】
一方向放出錠剤の開口部は、任意の形状(例えば、円形、三角形、四角形、矩形、菱形、平行四辺形、台形、または任意の他の形状)を有することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層は、1つ以上の親水性ポリマーおよび/または1つ以上の疎水性ポリマーを含む。親水性ポリマーの例には、タンパク質ベースのポリマー(例えば、ゼラチンまたはカゼイン)、ペクチン、アガロース(寒天)、キトサン、カラギーナン、デンプン、デキストラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムの架橋ポリマー(例えば、クロスカルメロースナトリウム)、微結晶性セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、セルロースエーテル、酢酸セルロース、セルロースアセタートフタラート、他のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポビドン、他のビニルポリマーおよびコポリマー、グアールガム、ポロクサマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリエーテル、アルコキシポリマー、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、他の天然ヒドロゲルまたは天然物由来のヒドロゲル、またはその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。疎水性ポリマーの例には、エチルセルロース、ポリエステル(ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステルアミド(PEA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸(polylatic)グリコール酸(PLGA)、ポリヒドロキシブチラート−co−ヒドロキシバレラート(PHBV)およびポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)など)、ワックスおよび低融点ワックス、ポリエチレンおよびエチレンコポリマー、エチレン/ビニルアセタート、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン/ビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリビニリデン(polyvinyllidene)、ポリオレフィン、またはその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層は、層をより柔軟にする溶媒または可塑剤をさらに含む。溶媒は、不透過性または半透性の材料と適合する任意の溶媒(例えば、水およびエタノールが含まれる)であり得る。可塑剤の例には、クエン酸エステル(例えば、トリエチルシトラート、トリアセチン)、低分子量ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコール)、グリセロール、ペンタエリスリトール、グリセロールモノアセタート、ジアセタート、またはトリアセタート、プロピレングリコール、ナトリウムジエチルスルホスクシナート、糖アルコール、コーンシロップ、およびその任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施形態では、不透過性の層は、可塑剤としてグリセロール、ポリエチレングリコール、またはトリアセチンと併せたエチルセルロースポリマーを含む。いくつかの実施形態では、半透性の層は、可塑剤としてポリエチレングリコール、トリアセチン、またはグリセロールと併せた酢酸セルロースを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層中の可塑剤の含有量は、5〜40%、好ましくは10〜30%、より好ましくは15〜25%の範囲である。
【0102】
いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層は、薬学的組成物の約0.5〜約10重量%、好ましくは約1〜5重量%、より好ましくは約2〜4重量%の範囲の含有量で存在し得る。
【0103】
不透過性の層は、薬学的組成物の安定性を改良するための他の成分(防腐薬、防腐剤、および他の成分など)をさらに含むことができる。さらなる可塑剤および成分の例を、M.&I.Ash,THE HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL ADDITIVES(3rd ed.,Synapse Information Resources,Inc.,2007)(その関連項が本明細書中で援用される)中に見い出すことができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、処方物上の一方向開口部を、浸透圧ポンプの生成で一般に使用されるレーザーアブレーションプロセスによって形成する。浸透圧ポンプ錠剤と異なり、一方向口はかなりより大きく(典型的な直径10mmの錠剤についての直径0.5mm未満と比較して直径3〜9mm)、コーティングはより薄い。したがって、異なるレーザー光源および装置の配置を本発明のために適応させなければならない。
【0105】
腸溶層
いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物は、生体接着層でコーティングされたコア処方物を含み、一方向層を部位選択的薬剤でさらにコーティングして胃腸管内の選択された部位に薬物を放出させることができる。いくつかの実施形態では、部位選択的薬剤は、一定のpH値を有する環境下で溶解することができるpH感受性ポリマーを含む。部位選択的薬剤でのコーティングにより、キャリアが接着層を胃腸管の一定の領域に選択的に曝露させることが可能である。
【0106】
腸溶コーティングポリマーは、セルロースアセタートフタラート、オイドラギット(登録商標)SまたはL、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートトリメリタート、ポリビニルアセタートフタラート、メタクリル酸コポリマー、シェラック、その塩および誘導体、ならびにその任意の組み合わせから選択することができるが、これらに限定されない。1つの特に好ましい実施形態では、腸溶コーティングポリマーはオイドラギット(登録商標)L30D−55である。
【0107】
いくつかの実施形態では、部位選択的薬剤は、結腸に選択的に付着するか、結腸中に放出することができるポリマーを含む。かかる結腸選択的薬剤には、アゾポリマーおよび結腸分解性ポリサッカリド(ペクチン、アミロース、グアールガム、キシラン、シクロデキストリン、デキストラン、その塩および誘導体、ならびにその任意の組み合わせ)が含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
コーティングの厚さを、所望の放出速度が得られるように選択し、この放出速度はコーティングの性質および厚さの両方に依存する。いくつかの実施形態では、腸溶層は、固体投薬形態の重量とコーティングの重量との組み合わせに基づいて、約1〜15重量%、より好ましくは約3〜12重量%、最も好ましくは約6〜10重量%含む。
【0109】
例示的処方物
前述を考慮して、本発明が種々の固体投薬形態(治療薬、透過促進剤、生体接着層、半透性または不透過性の層、および/または腸溶層の多数の異なる組み合わせが含まれる)を意図すると理解される。
【0110】
いくつかの実施形態では、固体投薬形態は治療薬としてのエキセンジンまたはエキセンジンペプチドアナログおよび透過促進剤としてのカプリン酸ナトリウムを含み、生体接着層は生体接着ポリマーとしてのHPMCまたはAA1および腸溶ポリマーとしてのオイドラギット(登録商標)L30D−55を含み、半透性の層は酢酸セルロースまたはエチルセルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含む。いくつかの実施形態では、生体接着層は、層の少なくとも約70重量%の生体接着ポリマーおよび層の少なくとも約5重量%の腸溶ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、カプリン酸ナトリウムの量は、約100mgと150mgとの間の範囲である。いくつかの実施形態では、エキセンジンはエキセンジン−4であり、エキセンジンペプチドアナログはエクセナチドまたはその塩または機能的誘導体の1つである。いくつかの実施形態では、生体接着層は生体接着ポリマーとしてHPMCを含み、半透膜は酢酸セルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含み、固体投薬形態は錠剤形態である。いくつかの実施形態では、生体接着層は生体接着ポリマーとしてHPMCを含み、半透性の層はエチルセルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含み、固体投薬形態は錠剤形態である.
いくつかの実施形態では、固体投薬形態は治療薬としてのエキセンジンまたはエキセンジンペプチドアナログおよび透過促進剤としてのカプリン酸ナトリウムを含み、生体接着層は生体接着ポリマーとしてHPMCまたはAA1を含み、半透性の層は酢酸セルロースまたはエチルセルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含み、腸溶層はオイドラギット(登録商標)L30D−55を含む。いくつかの実施形態では、生体接着層は、層の少なくとも約70重量%の生体接着ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、カプリン酸ナトリウムの量は、約100mgと150mgとの間の範囲である。いくつかの実施形態では、エキセンジンはエキセンジン−4であり、エキセンジンペプチドアナログはエクセナチドまたはその塩または機能的誘導体の1つである。いくつかの実施形態では、生体接着層は生体接着ポリマーとしてHPMCを含み、半透性の層は酢酸セルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含み、固体投薬形態は錠剤形態である。いくつかの実施形態では、生体接着層は生体接着ポリマーとしてHPMCを含み、半透性の層はエチルセルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含み、固体投薬形態は錠剤形態である。
【0111】
生成方法
1つの態様では、本発明は、以下の工程:有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む固体投薬形態を作製する工程、固体投薬形態を生体接着ポリマーを含む生体接着層でコーティングする工程、任意選択的に、固体投薬形態を固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部不透過性の層または半透性の層でコーティングする工程を含む、本発明の薬学的組成物の作製方法を提供する。いくつかの実施形態では、生体接着ポリマー層および不透過性の層または半透性の層の適用順序を逆にする。いくつかの実施形態では、本方法は、組成物を腸溶層でコーティングする工程をさらに含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、生体接着剤および不透過性または半透性の材料(エチルセルロースまたはオイドラギット(登録商標)L30−D55など)の水性懸濁物を使用することができる。いくつかの実施形態では、材料を、溶媒を用いずに直接分散させることができる。いくつかの実施形態では、加熱時にポリカプロラクトン(PCL)またはワックスを直接分散させることができる。
【0113】
好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物を、錠剤またはカプレットの形態で生成する。コア錠剤を、一般的にロータリープレスを使用して実施される打錠によって形成する。錠剤生産過程(湿式造粒法および直接打錠が含まれる)は十分に記載されており、当該分野で周知である(DEVELOPING SOLID ORAL DOSAGE FORMS:PHARMACEUTICAL THEORY AND PRACTICE,Ed.by Qiuら,Academic Press 2009)。
【0114】
しかし、高分子薬物のための錠剤形態の開発は困難なままである。ほとんどの高分子薬物はペプチドおよびタンパク質であり、脆弱な構造を有し、非常に不安定である。これらの高分子薬物は、しばしば、非常に強力であるので低用量処方物が必要であり、低用量処方物には内容物を確実に均一にするための特殊な過程(湿式造粒法など)が必要である(FORMULATION AND ANALYTICAL DEVELOPMENT FOR LOW DOSE ORAL DRUG PRODUCTS,Ed.by Zheng,Wiley 2009)。
【0115】
過程の開発の困難さを、薬物としてエクセナチドおよびインスリンを使用した例で示す。湿式造粒過程を使用して錠剤を生成する場合、エクセナチドが不安定であるにもかかわらず含有量の均一性は実際に規格の範囲内であり、その一方で、処方物中のエクセナチド粉末およびエクセナチドおよび賦形剤との直接ブレンドが同一条件下で安定性を維持することが見い出されている。
【0116】
したがって、直接打錠プロセス(direct compression process)は、約0.5〜2mgなどの許容され得る用量の薬物に適切な選択である。通常の低用量処方物における直接打錠プロセスはしばしば容易である。なぜなら、含有量の均一性を保証することができる限り、錠剤の性質(コンパクタビリティ、流動性、および硬さなど)が薬物の存在に影響を受けないほど薬物の含有量が非常に低いからである。例えば、薬物粉末の粒径が適切に制御される場合、インスリン粉末(小結晶粒子を示し、含水率が低い)を、直接打錠プロセスに組み込んで錠剤を製造することができる。
【0117】
本発明の処方物は、比率の高い透過促進剤(カプリン酸ナトリウムなど)の存在によってさらに別の困難があり、その存在により、コンパクタビリティが低く、粒子の分離も引き起こし得る。いくつかの実施形態では、本発明の直接打錠処方物を、以下の表に示す。
【0118】
【表1−2】
エクセナチドのような薬物について、単位用量がさらに低いと予想され、そして/または薬物粉末が含水性を示す場合、製造過程における含有量の均一性の達成が困難であることに起因して、直接打錠プロセスはしばしば推奨されない(Zheng 2009,ibid.)。
【0119】
本発明では、安定性と含量均一性との間のバランスを、非溶媒造粒プロセス(non−solvent granulation process)によって維持することができる。いくつかの実施形態では、薬物が不溶性を示す流体媒質中に薬物粉末を懸濁し、薬物の粒径を超音波処理または均質化によって調節し、モニタリングすることができる。均一性を促進するために、結合薬を懸濁物に添加することができる。一般的に実施される造粒プロセスなどで懸濁物を賦形剤混合物に添加する。実施例12および13に示すように、非溶媒造粒プロセスは、含量均一性を確実にしながら安定性を維持するのに役立ち得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明で使用することができる一般に使用される非溶媒には、エタノール、イソプロパノール、アセトン、および酢酸エチルが含まれる。
【0121】
使用方法
本発明の薬学的組成物は、薬物の所望の粘膜表面への送達に有用である。組成物は粘膜表面に選択的に付着することができ、固体投薬形態中に含まれる治療薬および透過促進剤は、キャリアから粘膜表面に一方向性に流れて、これらの両方の局所濃度が高くなるであろう。したがって、本発明の薬学的組成物は、少量の透過促進剤を有する薬物の吸収を増強することができるか、そうでなければ無効である。
【0122】
したがって、1つの態様では、本発明は、薬学的組成物を使用した治療薬の送達方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書中に開示の薬学的組成物を被験体、好ましくは粘膜表面に投与する工程を含む治療的処置を必要とする被験体の処置方法を提供する。薬学的組成物を、当該分野で公知の任意の手段(経口、口内、舌下、膣、および直腸経路が含まれるが、これらに限定されない)によって被験体に投与することができる。投与は全身投与または局所投与であり得る。
【実施例】
【0123】
実施例1:錠剤の作製
1.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表1に列挙した処方にしたがってシングルタブレットプレスを使用した材料の圧縮によって作製した。エクセナチドおよびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として15%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールを使用して顆粒を形成させ、60℃で2時間乾燥させた。顆粒を22−メッシュの篩にかけ、エクセナチドおよびステアリン酸マグネシウムと共に単一の錠剤に基づいて秤量した。組成物を混合し、打錠した。全錠剤を個別に秤量し、平均重量の5%を超える錠剤を排除した。
【0124】
【表1−3】
1.2生体接着層
コア錠剤を、生体接着ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、またはポリカルボフィルAA1でさらにコーティングした。HPMCコーティングについて、錠剤を、小規模錠剤コーティング機(BY300A,Yellow Sea Machinery)にて2%HPMC水溶液を使用してコーティングした。コーティングに起因する重量増加は、錠剤重量の2%であった。別々に、小型の錠剤コーティング機を使用して錠剤を4%ポリカルボフィルAA1を含むエタノールでコーティングした。重量増加は3%であった。コーティング錠剤を30℃で14時間乾燥させた。
【0125】
1.3一方向放出層
コア錠剤を、その後に不透過性または半透性の材料のいずれかを含む層でコーティングした。錠剤の一つの面を接着紙で最初に覆って一方向放出開口部を作製した。次に、錠剤を、可塑剤として20%トリアセチンを含有する4%エチルセルロースを含むエタノールまたは可塑剤として20%ポリエチレングリコールMW2000(PEG2000)を含有する3%酢酸セルロースを含むアセトンとギ酸との混合物(9:1v/v)のいずれかでコーティングした。コーティング後、錠剤を30℃で30分間乾燥させた。コーティングに起因する重量増加を、2〜5%に調整した。最後に、接着紙を剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0126】
1.4腸溶層
錠剤を、腸溶ポリマーであるオイドラギット(登録商標)L30D−55でコーティングした。コーティング混合物は、200gのL30D−55、12gの超微細タルク粉末、および6gのポリエチレングリコールMW6000(PEG 6000)を含み、水中で均質化して最終体積400mlとした。小規模錠剤コーティング機にてコーティングを行った。腸溶コーティングに起因する重量増加は、錠剤重量の10%であった。錠剤を30℃で14時間乾燥させた。
【0127】
実施例2:エクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの同時放出
異なる処方物におけるエクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの動態学的放出プロフィールを、いくつかのin vitro試験で評価した。
【0128】
第1に、処方物の酸感受性を、薬物溶解装置中にて腸溶コーティング錠剤を100ml 0.1N HCl中に37℃で2時間置くことによって試験した。種々の時点でサンプルを取り、エクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの濃度を、C18カラム(Waters)を使用したHPLCシステムを使用して決定した。錠剤は酸性媒質中でインタクトであることが見い出され、エクセナチドまたはカプリン酸ナトリウムは検出されなかった。
【0129】
動態学的放出プロフィールを、酸性媒質の除去および100ml疑似腸液(pH6.8)に入れることによってさらに研究した。放出を37℃でモニタリングし、種々の時点でサンプルを取ってエクセナチドまたはカプリン酸ナトリウムの濃度を決定した。表2は、50mgカプリン酸ナトリウムを含む腸溶コーティング錠剤およびHPMCコーティング錠剤から放出されたエクセナチドまたはカプリン酸ナトリウムの画分を示す。結果を、図1にもまとめている。容易に認めることができるように、pH6.8でのエクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの放出は、実質的に同時である。
【0130】
【表2】
同様に、表3は、50mgカプリン酸ナトリウムを含む腸溶ポリマー、酢酸セルロース、およびHPMCでコーティングした錠剤から放出されたエクセナチドまたはカプリン酸ナトリウムの画分を示す。結果を、図2Aにもまとめている。またしてもエクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの放出は実質的に同時であり、酢酸セルロース層を含まない錠剤と比較してさらに有意に延長された(最大放出は3時間対2時間で到達した)。
【0131】
【表3】
表4は、50mgカプリン酸ナトリウムを含む腸溶ポリマー、エチルセルロース、およびHPMCでコーティングした錠剤から放出されたエクセナチドまたはカプリン酸ナトリウムの画分を示す。結果を、図2Bにもまとめている。前の実験にあるように、エクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの放出は実質的に同時である。特に、エチルセルロースコーティング錠剤からの放出は、酢酸セルロース層を含む錠剤と比較してさらに延長される(最大放出は5時間対3時間で到達した)。
【0132】
【表4】
実施例3:100mgカプリン酸ナトリウムを使用したイヌにおけるエクセナチド吸収に及ぼす生体接着層の影響。
【0133】
透過促進剤として100mgカプリン酸ナトリウムを含む異なる処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0134】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを6群に無作為に分け、1週間の休止期を使用して処置を反復した。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。投与後6時間まで食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表5にまとめる。
【0135】
【表5】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0136】
標準を含む全サンプルを、20%血清を含むように調整した。エクセナチドの血清濃度を検量線に基づいて計算し、曲線下面積を評価し、比較した。各群についてのエクセナチド吸収の相対的な生物学的利用能および動態を、表6および図3Aにまとめる。
【0137】
【表6】
結果は、エクセナチドの吸収が生体接着層によって有意に影響を受けることを示す。生体接着層を使用しない場合、エクセナチド吸収は、透過促進剤としての100mgカプリン酸ナトリウムの存在下で最小である。AA1、HPMC、またはキトサンでのコーティングにより、キトサンの影響はあまり明白でなかったが、エクセナチド吸収が有意に改善された。
【0138】
実施例4:400mgカプリン酸ナトリウムを使用したイヌにおけるエクセナチド吸収に及ぼす生体接着層の影響。
【0139】
400mgカプリン酸ナトリウムを含む異なる処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0140】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを4群に無作為に分け、1週間の休止期を使用して処置を反復した。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。投与後6時間まで食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表7にまとめる。
【0141】
【表7】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0142】
標準を含む全サンプルを、20%血清に調整した。エクセナチドの血清濃度を検量線に基づいて計算し、曲線下面積を評価し、比較した。各群についてのエクセナチド吸収の相対的な生物学的利用能および動態を、表8および図3Bにまとめる。
【0143】
【表8】
実施例3にあるように、結果は、エクセナチドの吸収が生体接着層によって有意に影響を受けることを示す。生体接着層を使用しない場合、エクセナチド吸収は、透過促進剤としての500mgカプリン酸ナトリウムの存在下で中程度である。AA1でのコーティングにより、エクセナチド吸収が有意に改善される。
【0144】
実施例5:イヌにおけるエクセナチド吸収に及ぼすカプリン酸ナトリウム量の影響。
【0145】
異なる量のカプリン酸ナトリウムを含む処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0146】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを6群に無作為に分け、1週間の休止期を使用して処置を反復した。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。投与後6時間まで食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表9にまとめる。
【0147】
【表9】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0148】
標準を含む全サンプルを、20%血清に調整した。エクセナチドの血清濃度を検量線に基づいて計算し、曲線下面積を評価し、比較した。各群についてのエクセナチド吸収の相対的な生物学的利用能および動態を、表10および図4にまとめる。
【0149】
【表10】
結果は、エクセナチド吸収がカプリン酸ナトリウム量に依存することを示す。エクセナチド吸収は透過促進剤としての50mgカプリン酸ナトリウムの存在下で最小であるのに対して、100mg超のカプリン酸ナトリウムについて有意なエクセナチド吸収が認められる。100mg超のカプリン酸ナトリウムでは、さらなる改善は認められなかった。
【0150】
実施例6:イヌにおけるエクセナチド吸収に及ぼす一方向放出投薬量の影響
50mgカプリン酸ナトリウムを含む処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0151】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを5群に無作為に分け、1週間の休止期を使用して処置を反復した。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。投与後6時間まで食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表11にまとめる。
【0152】
【表11】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0153】
標準を含む全サンプルを、20%血清に調整した。エクセナチドの血清濃度を検量線に基づいて計算し、曲線下面積を評価し、比較した。各群についてのエクセナチド吸収の相対的な生物学的利用能および動態を、表12および図5にまとめる。
【0154】
【表12】
結果は、生体接着層と併せた一方向放出層の使用によってエクセナチド吸収をさらに増強することができることを示す。一方向放出層を使用しない場合、50mgカプリン酸ナトリウムおよびHPMCの存在下でのエクセナチド吸収および生物学的利用能は最小である。錠剤の片面に開口部を含む酢酸セルロース半透膜またはエチルセルロース不透過性膜での錠剤のコーティングにより、同量のカプリン酸ナトリウムおよびHPMCを使用してエクセナチド吸収が有意に改善される。
【0155】
実施例7:イヌにおける経口エクセナチドの生物学的利用能
100mgカプリン酸ナトリウムを含む処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0156】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを3群に無作為に分け、1週間の休止期を使用して処置を反復した。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。投与後6時間まで食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表13にまとめる。
【0157】
【表13】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0158】
標準を含む全サンプルを、20%血清に調整した。エクセナチドの血清濃度を検量線に基づいて計算し、曲線下面積を評価し、比較した。各群についてのエクセナチド吸収の相対的な生物学的利用能および動態を、表14および図6にまとめる。
【0159】
【表14】
結果は、100mgカプリン酸ナトリウムの存在下でのHPMC、エチルセルロース、および腸溶コーティングした錠剤の形態の経口エクセナチドの相対的生物学的利用能が皮下注射と比較して4.98%であることを示す。錠剤の片面に開口部を含むエチルセルロース不透過性膜での錠剤のコーティングにより、同量のカプリン酸ナトリウムおよびHPMCを使用したエクセナチドの吸収および相対的生物学的利用能が有意に改善される(2.37%;実施例5、群4を参照のこと)。
【0160】
実施例8:イヌにおけるエクセナチド吸収に及ぼす腸溶層の影響。
【0161】
8.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表15に列挙した処方にしたがってシングルタブレットプレスを使用した圧縮によって作製した。エクセナチドおよびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として15%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールを使用して顆粒を形成させ、真空下で一晩乾燥させた。顆粒を22−メッシュの篩にかけ、エクセナチドおよびステアリン酸マグネシウムと共に単一の顆粒に基づいて秤量した。組成物を混合し、打錠した。全錠剤を個別に秤量し、平均錠剤重量から5%超逸脱した錠剤をさらなる実験から排除した。
【0162】
【表15】
8.2生体接着層
コア錠剤を、腸溶材料オイドラギット(登録商標)L30D−55を使用するか使用しないでヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)でコーティングした。L30D−55を使用しないコーティングについて、6%HPMCおよび1.5%ポリエチレングリコールMW6000(PEG 6000)の水溶液を、錠剤パンコーター(BY300A,Yellow Sea Machinery)中で使用した。生体接着層に起因する重量増加は3〜4mgであった。L30D−55を使用したコーティングについて、3%HPMCおよび0.6%L30D−55の水溶液を、錠剤パンコーター中で使用した。コーティング錠剤を40℃で約14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3mgであった。
【0163】
8.3一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、半透性酢酸セルロース層でコーティングした。錠剤の一つの面を接着紙で最初に覆って一方向放出開口部を作製した。次に、錠剤を、パンコーターにおいて3%酢酸セルロースおよび1.2%ポリエチレングリコールMW2000(PEG 2000)を含むアセトンとギ酸との混合物(9:1 v/v)を含む一方向コーティング溶液でコーティングし、40℃で一晩乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。最後に、接着紙を剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0164】
8.4腸溶層
L30D−55を使用せずに生体接着HPMC層でコーティングした錠剤を、腸溶層でさらにコーティングした。コーティング混合物は、200gのL30D−55、12gの超微細タルク粉末、および6gのポリエチレングリコールMW6000(PEG 6000)を含み、最終体積400mlの水中で均質化した。コーティングを小規模パンコーターで行い、錠剤を40℃で14時間乾燥させた。腸溶層に起因する重量増加は25mgであった。
【0165】
8.5イヌにおける経口エクセナチドの吸収
200mgカプリン酸ナトリウムを含む処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0166】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを4群に無作為に分け、1週間の休薬期間を使用して反復処置を行った。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。研究中は食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表16にまとめる。
【0167】
【表16−1】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0168】
標準を含む全サンプルを、20%血清に調整した。エクセナチドの血清濃度を、検量線に基づいて計算した。各処置群についてのエクセナチド吸収の動態を、図7にまとめる。
【0169】
結果は、200mgカプリン酸ナトリウムの存在下でのHPMCおよび酢酸セルロースのコーティング錠剤形態における経口エクセナチドの吸収がHPMC、酢酸セルロース、および腸溶材料でコーティングした錠剤と比較して同様に有効であることを示す。腸溶外層の非存在下で、エクセナチドの最大濃度は、腸溶層の存在下よりも約1時間速く到達した(3時間対4時間)。しかし、最大濃度および曲線下面積のいずれも腸溶層の存在に有意に影響を受けないようであった。したがって、いくつかの実施形態では腸溶層を任意選択的に使用することができるが、本発明の必須成分ではないようである。
【0170】
二層処方物によって証明された早期の吸収および応答は、臨床背景で望ましい。
【0171】
実施例9:ソマトスタチン注入したイヌにおける経口インスリンの影響
9.1リン酸カルシウムインスリンナノ粒子の調製
リン酸カルシウムインスリン粒子を調製し、本研究において薬物キャリアとして使用した。インスリン(5mg/ml)を、20mMリン酸二ナトリウム、20mM HEPES緩衝液(pH6.9)、2%PEG(分子量6000)、および0.5%ウルソデオキシコラート(UDCA)を含む40mlの溶液Aに溶解した。UDCAを、添加前に1.5mlエタノールに溶解した。等体積(40ml)の0.01N HClおよび60mM CaCl2を含む溶液Bを溶液と混合して沈殿を誘導した。粒子を15000rpmで30分間遠心分離し、回収した粒子を真空下で完全に乾燥させた。
【0172】
粒子中のインスリン含有量を、0.2mg/mlの粒子を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH9.1)に37℃で15分間懸濁することによって測定した。標準として既知量のインスリンを使用した逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)によってインスリンを評価した。この特定のリン酸カルシウム粒子バッチ中のインスリン含有量は0.56mg/mgであり、インスリン回収率は99%であった。
【0173】
9.2コア錠剤の作製
コア錠剤を、表16に列挙した処方にしたがってシングルタブレットプレスを使用した圧縮によって作製した。インスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として8%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールを使用して顆粒を形成させ、真空下で一晩乾燥させた。顆粒を22−メッシュの篩にかけ、インスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウムと共に単一の顆粒に基づいて秤量した。組成物を混合し、打錠した。全錠剤を秤量し、平均錠剤重量から5%超逸脱した錠剤をさらなる実験から排除した。錠剤の硬度、厚さ、および破砕性もモニタリングした。
【0174】
【表16−2】
9.3生体接着層
コア錠剤を、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E50)および腸溶材料オイドラギット(登録商標)L30D−55でコーティングした。3%HPMCおよび0.6%L30D−55の水性懸濁物を、錠剤パンコーター(BY300A,Yellow Sea Machinery)中で使用した。コーティング錠剤を40℃で約14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3mgであった。
【0175】
9.4一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、半透性酢酸セルロース層でコーティングした。直径9mmの錠剤の一つの面を、直径7mmの円形の接着紙で最初に覆った。次に、錠剤を、パンコーターにおいて3%酢酸セルロースおよび1.2%ポリエチレングリコールMW2000(PEG 2000)を含むアセトンとギ酸との混合物(9:1 v/v)を含む一方向コーティング溶液でコーティングし、40℃で一晩乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。最後に、円形ステッカーを剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0176】
9.5インスリン放出プロフィール
インスリン放出を、最初に、37℃での100rpmの撹拌と設定したバスケットデザインを備えた溶出装置にて100mlの0.01N HCl中で2時間評価した。1時間後および2時間後にアリコートを採取し、インスリン含有量をRP−HPLCによって測定した。次いで、錠剤を、同一条件下の100mlの疑似腸液(SIF)(pH6.8)に移し、アリコートを種々の時点でRP−HPLCに供してインスリン含有量を測定した。
【0177】
インスリン放出プロフィールを図8Aに示す。2時間のインキュベーションで10%未満のインスリンが放出されたという所見によって証明されるように、錠剤は酸性溶液中で安定であった。SIF中のインスリン放出は徐々に起こり、約3〜4時間で完了した。
9.6ソマトスタチン注入したイヌにおける経口インスリンの影響
ビーグルにおける留置静脈カテーテルを介した1μg/kg/分でのソマトスタチン注入下での経口インスリンの吸収を評価した。ソマトスタチンの注入は、内因性のグルカゴンおよびインスリンの分泌を抑制する(Sakuraiら,J.Clin.Invest.54:1395,1974)。これらの動物における血中グルコースレベルは最初に減少し、その後にインスリン抑制に起因して急速に増加する。このモデルにより、経口インスリンの薬物動態評価および薬力学的評価を同時に行うことが可能である。
【0178】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。イヌを3群に無作為に分け、一晩絶食させた。水を自由に与えた。ソマトスタチン注入(1μg/kg/分)を、留置静脈カテーテルを介してバルーン注入ポンプを使用して行い、ソマトスタチン注入開始の4時間後に、錠剤を10ml水を使用して投与した。研究中は食事を制限し、血液サンプルを、種々の時点でヘパリン処置した管中に回収した。この実験で評価した処置群を、表17にまとめる。
【0179】
【表17】
血中グルコース濃度を、血糖計および適合試験ストリップ(Johnson & Johnson,OneTouch(登録商標))を使用して測定し、0.5〜0.6mlの血清サンプルを、血液サンプルの採取後に回収し、3000rpmで10分間遠心分離した。サンプルを−20℃で凍結し、インスリン濃度をELISA(Linco)によって測定した。
【0180】
血中グルコースおよび血清インスリン濃度に及ぼす経口インスリン処置の影響を、それぞれ8Bおよび8Cに示す。
【0181】
図8Bに示すように、予想通り、ブランク錠剤で処置した動物において血中グルコース濃度は最初に減少し、その後に実質的に増加した。インスリン注射により、急速且つ著明なグルコースレベルの減少が誘導された。同様に、経口インスリンでの処置により、血中グルコースの有意な減少も誘導された。グルコースレベルのAUCに基づいた生物作用能は5%と推定された。
【0182】
図8Cに示すように、インスリンレベルはブランク錠剤で処置された動物において全実験中に抑制された一方で、インスリン注射によってインスリン濃度が非常に増加した。興味深いことに、経口インスリンで処置した動物におけるインスリン濃度の増加は中程度でしかなった。本研究における生物学的利用能は、生物作用能の約2%または約40%であった。この所見により、門脈または天然のインスリン分泌と酷似して、経口インスリンによってより高い生物作用能およびより低い末梢インスリンが得られることが確認される。したがって、低血糖の確率(インスリンの臨床使用を制限する重大な問題)は有意に減少する。
【0183】
実施例10:ソマトスタチン注入したイヌにおける二層経口インスリン錠剤の影響
10.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表18に列挙した処方にしたがってシングルタブレットプレスを使用した圧縮によって作製した。インスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として8%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールを使用して顆粒を形成させ、真空下で一晩乾燥させた。顆粒を22−メッシュの篩にかけ、各錠剤の必要量を秤量し、その後にインスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウムを添加した。組成物を混合し、打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0184】
【表18】
10.2生体接着層
コア錠剤を、腸溶材料オイドラギット(登録商標)L30D−55を使用するか使用しないでヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)でコーティングした。L30D−55を使用しないコーティングについて、6%HPMCおよび1.5%ポリエチレングリコールMW6000(PEG 6000)の水溶液を、錠剤パンコーター(BY300A,Yellow Sea Machinery)中で使用した。生体接着層に起因する重量増加は3〜4mgであった。L30D−55を使用したコーティングについて、3%HPMCおよび0.6%L30D−55の水溶液を、錠剤パンコーター中で使用した。コーティング錠剤を40℃で約14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3mgであった。
【0185】
10.3一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、半透性酢酸セルロース層でコーティングした。直径10mmの錠剤の一つの面を、直径7mmの円形ステッカーで最初に覆った。次に、錠剤を、パンコーターにおいて3%酢酸セルロースおよび1.2%ポリエチレングリコールMW2000(PEG 2000)を含むアセトンとギ酸との混合物(9:1 v/v)を含む一方向コーティング溶液でコーティングした。コーティングの完了後、錠剤を40℃で一晩乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。最後に、接着紙を剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0186】
10.4腸溶層
L30D−55を使用せずに生体接着HPMC層でコーティングした錠剤を、腸溶層でさらにコーティングした。コーティング混合物は、200gのL30D−55、12gの超微細タルク粉末、および6gのポリエチレングリコールMW6000(PEG 6000)を含み、最終体積400mlの水中で均質化した。コーティングを小規模パンコーターで行い、錠剤を40℃で14時間乾燥させた。腸溶層に起因する重量増加は25mgであった。
【0187】
10.5グルコースに及ぼす経口インスリンの影響
二層処方物(L30D55を含む生体接着層でコーティングし、その後に酢酸セルロースで一方向コーティングしたコア錠剤)および三層処方物(L30D55を含まない生体接着層でコーティングし、その後に酢酸セルロースコーティングを行い、その後に腸溶コーティングを行ったコア錠剤)を使用した経口インスリンの影響を、実施例9に記載のようにソマトスタチンを注入したビーグル犬において評価した。
【0188】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。水を自由に与えた。イヌを4群に無作為に分け、一晩絶食させた。ソマトスタチン注入開始から約4時間後に10ml水を使用して錠剤を咽頭に直接投与した。研究中は食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表19にまとめる。
【0189】
【表19】
血液サンプルを回収し、血糖計を使用して血中グルコース濃度を測定した。血中グルコースに及ぼす2つの経口インスリン処方物の影響を図9に示す。
【0190】
図9に示すように、経口インスリン錠投与により、インスリン注射と類似して血中グルコースの有意な減少が誘導されたのに対して、ブランク処置動物における血中グルコースは、最初に減少が認められ、その後に急速な増加が認められた。腸溶外層の非存在下では、血中グルコースの減少は錠剤投与の1時間後に最初に認められた一方で、腸溶コーティング錠剤投与の4時間後にのみ同一の影響が認められた。
【0191】
この結果は、エクセナチドを使用した類似の処方物における所見と一致し、二層処方物による早期の応答が臨床背景で望ましいことを証明している。
【0192】
実施例11:直接打錠した錠剤
造粒を使用しない直接打錠は、簡潔且つ経済的な錠剤製造過程であり、薬物の結晶構造および安定性を維持する傾向がある。直接打錠プロセスを使用して製造された低用量錠剤の主な困難は、許容され得る含量の均一性を達成することである。
【0193】
表20に列挙したインスリンおよびエクセナチドの処方物を、直接打錠によって生成した。インスリンおよびエクセナチド粉末を200−メッシュの篩にかけ、全ての賦形剤と完全に混合した。組成物を、ロータリープレスを使用して打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0194】
【表20】
インスリンおよびエクセナチドのブレンド均一性を米国薬局方総則<905>、「投薬単位の均一性」(「USP <905>」)にしたがって評価し、ブレンドの完全な混合後に同一重量(錠剤重量に等しい)のサンプルを異なる位置から回収した。インスリンまたはエクセナチドの含有量を、RP−HPLCによって測定した。ブレンド均一性の結果を表21に示す。
【0195】
【表21】
結果は、単位用量1mg(錠剤含有量の0.5%)でのインスリンのブレンド均一性が許容され得ることを示す。対照的に、含有量0.27%での0.6mgのエクセナチドは均一性試験に合格しなかった。エクセナチド粉末は、より高い含水活性を示し、この困難の一因となり得る。したがって、錠剤を作製するための直接打錠プロセスは実行可能であり、異なる性質(含水性および粒径など)を有する薬物は、許容され得る均一性の達成における困難の程度が多様であり得る。
【0196】
実施例12:錠剤生成における非溶媒造粒
上記のように、直接打錠はエクセナチドのような低用量薬物の含量均一性に関する課題を示すのに対して、湿式造粒法は薬物安定性に問題がある。したがって、インスリン錠およびエクセナチド錠を、非溶媒造粒によって作製した。異なるロットの組成物を、表22〜26に列挙する。
【0197】
インスリンおよびエクセナチド粉末を200−メッシュの篩にかけ、8%PVPを含むエタノールに懸濁した。薬物懸濁物を、視覚可能な巨大粒子が検出されなくなるまで軽く超音波処理した。シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウム以外の全ての他の賦形剤を秤量し、造粒機中で完全に予め混合した。薬物懸濁物を賦形剤ブレンドに添加して顆粒を形成し、次いで、18−メッシュの篩にかけ、真空下で乾燥させた。シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウムの乾燥および添加後、ロータリープレスを使用して組成物を打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0198】
【表22】
【0199】
【表23】
【0200】
【表24】
【0201】
【表25】
【0202】
【表26】
これらの錠剤中のインスリンまたはエクセナチドの含有量をRP−HPLCによって測定し、含量均一性をUSP<905>にしたがって評価した。結果を、表27に示す。
【0203】
【表27】
これらの結果は、非溶媒造粒を使用して作製したインスリン錠およびエクセナチド錠の含量均一性が許容され得ることを証明している。
【0204】
実施例13:異なる処方物およびプロセスにおけるエクセナチドの安定性
種々の処方物中のエクセナチドの安定性を、ストレス条件下で評価した。試験した処方物を表28に示す。
【0205】
【表28】
基本的処方物中に含まれる賦形剤を表29に列挙する。
【0206】
【表29】
全処方物をペトリ皿に入れ、ストレス条件下(温度60℃、25℃で相対湿度92.5%、および4500ルクス光曝露で10日連続が含まれる)におく。各処方物中のエクセナチド含有量を、0、5、および10日目にRP−HPLCによって測定した。各処方物中に残存する含有量を図10A〜10Cに示す。
【0207】
結果は、エクセナチド粉末がストレス条件下で相対的に安定であり、エクセナチド含有量が高温、高湿度、および光曝露下で10日間の曝露後に95%残存することを証明している。全賦形剤を使用した直接ブレンドは類似の安定性プロフィールを示し、賦形剤が錠剤処方物中のエクセナチドと適合することを示唆している。
【0208】
しかし、湿式造粒法によって作製された錠剤は相対的に不安定な挙動を示し、曝露5日目および10日目にエクセナチドの著しい喪失が認められる。ゼラチンまたはマンニトールの添加は、不安定性を軽減しなかった。実際に、特に高湿度でエクセナチドの不安定性は悪化した。この所見は、ゼラチンおよびマンニトールが高湿度で相当量の水分を吸収する能力に原因し得る。
【0209】
対照的に、直接打錠または非溶媒造粒によって作製された錠剤は、エクセナチド粉末に類似して、これらの条件で良好な安定性を示す。低分子量PEGの添加により、非溶媒造粒プロセスによって生成した処方物においてさえ不安定になり、これは低分子量PEG中のエクセナチドの部分的溶解性に原因し得ることに注目すべきである。
【0210】
実施例14:イヌにおける経口インスリンの影響
14.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表30に列挙した処方にしたがって非溶媒造粒およびその後のロータリープレスでの圧縮によって作製した。インスリン、PVP、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、造粒機で完全に混合した。インスリン粉末を8%ポリビニルピロリドン(PVP)を含むエタノールに懸濁し、超音波処理を行って巨大なインスリン粒子を破壊した。インスリン懸濁物を他の成分に添加し、混合物を真空下で一晩乾燥させることによって顆粒を形成させた。シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウムを乾燥した顆粒に添加し、組成物を混合し、打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0211】
【表30】
14.2生体接着層
コア錠剤を、錠剤パンコーター(BY300A,Yellow Sea Machinery)中で6%HPMCおよび1.5%ポリエチレングリコール(MW 6000)の溶液を使用してヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)でコーティングした。生体接着層に起因する重量増加は4mgであった。
【0212】
14.3一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、半透性エチルセルロース層でコーティングした。直径10mmの錠剤の一つの面を、直径7mmの円形ステッカーで最初に覆った。次に、錠剤を、パンコーターにおいて3%エチルセルロースおよび1.2%ポリエチレングリコール(MW 2000)を含むエタノールを含む一方向コーティング溶液でコーティングした。コーティング完了後に錠剤を室温で乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。最後に、接着紙を剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0213】
14.4腸溶層
錠剤を腸溶層でさらにコーティングした。コーティング混合物は、8%L30D−55、2%ポリエチレングリコール(MW 6000)を含むエタノールを含んでいた。コーティングを小規模パンコーターで行い、腸溶層に起因する重量増加は20mgであった。
14.5 正常なイヌにおける血中グルコースレベルに及ぼす経口インスリンの影響
血中グルコースレベルに及ぼす経口インスリン投与の影響を、正常なビーグル犬において評価した。
【0214】
体重が8〜12kgの9匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。水を自由に与えた。イヌを3群に無作為に分け、一晩絶食させた。10ml水を使用して錠剤を咽頭に直接投与した。研究中は食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表31にまとめる。
【0215】
【表31】
血液サンプルを回収し、血糖計を使用して血中グルコース濃度を測定した。血中グルコースに及ぼす経口インスリン投与の影響を図11に示す。
【0216】
図11に示すように、経口インスリン錠は、インスリン注射に類似して、投与から2〜3時間以内に有意な血中グルコースの減少を誘導したのに対して、ブランク処置動物における血中グルコースは比較的一定であった。
【0217】
血中グルコースは、しばしば、正常な被験体において狭い範囲内で調節される。したがって、皮下注射におけるグルコース低下でさえも変化した。経口インスリン錠剤は、正常なビーグルにインスリンを注射した場合と類似の規模および変化の様式でグルコース低下を誘導した。
【0218】
実施例15:錠剤生成におけるレーザーアブレーションプロセス
15.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表32に列挙した処方にしたがってロータリープレスでの圧縮によって作製した。エクセナチド、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として8%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールに溶解したエクセナチドを使用して顆粒を形成させ、顆粒を真空下で一晩乾燥させ、22−メッシュの篩にかけ、シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウムを添加した。組成物を混合し、打錠した。錠剤の重量、硬度、厚さ、および破砕性をモニタリングした。
【0219】
【表32】
15.2生体接着層
コア錠剤を、3%HPMCおよび0.6%L30D−55の水性懸濁物を使用してパンコーター(BY300A,Yellow Sea Machinery)中でヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E50)および腸溶材料オイドラギット(登録商標)L30D−55でコーティングした。コーティング錠剤を40℃で約14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3mgであった。
【0220】
15.3一方向放出層
上記錠剤を、半透性酢酸セルロース層でさらにコーティングした。手作業のプロセスのために、9mmの錠剤の一つの面を直径7mmの円形の接着紙で最初に覆い、その後にパンコーターにおいて3%酢酸セルロースおよび1.2%ポリエチレングリコールMW2000(PEG 2000)を含むアセトンとギ酸との混合物(9:1 v/v)を含む溶液でコーティングした。コーティングおよび乾燥の完了後に円形ステッカーを剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0221】
レーザーアブレーションプロセスのために、錠剤をステッカーで覆わず、同一の酢酸セルロース溶液でコーティングした。コーティング錠剤を40℃で一晩乾燥させた。完成した錠剤をレーザードリル装置(CMS)でアブレーションして、上記の手作業のプロセスによって得られた開口に類似の直径7mmの開口を形成した。生体接着コーティングの完全性を、疑似胃液中で2時間の酸感受性試験によって検証した。
【0222】
両方の場合における一方向放出層に起因する重量増加は2〜3mgであった。
【0223】
15.4正常なイヌにおける経口エクセナチドの吸収
手作業のプロセスおよびレーザーアブレーションプロセスによって形成された一方向放出コーティングによって媒介される経口エクセナチドの吸収を、正常なビーグルにおいて評価した。
【0224】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。イヌを4群に無作為に分け、一晩絶食させた。水を自由に与えた。10ml水を使用して錠剤を咽頭に直接投与し、研究中は食事を制限した。血液サンプルを、種々の時点でヘパリン処置した管中に回収した。この実験で評価した処置群を、表33にまとめる。
【0225】
【表33】
0.5〜0.6mlの血清サンプルを、血液サンプルの採取後に回収し、3000rpmで10分間遠心分離した。サンプルを−20℃で凍結し、ELISAキット(Phoenix)を使用してエクセナチド濃度を測定した。
【0226】
血清エクセナチド濃度に及ぼす経口エクセナチド処置の影響を図12に示す。一方向放出開口部を形成するための手作業のプロセスおよびレーザーアブレーションプロセスによって作製された処方物は類似の吸収範囲を達成したが、レーザーアブレーションを使用して作製した処方物は、吸収動態がいくらか速かったようである。
【0227】
実施例16:ソマトスタチン注入したイヌにおける経口インスリンの用量応答
16.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表34に列挙した処方にしたがってシングルタブレットプレスを使用した圧縮によって作製した。インスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として8%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールを使用して顆粒を形成させ、真空下で一晩乾燥させた。顆粒を22−メッシュの篩にかけ、各錠剤の必要量を個別に秤量し、その後にインスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウムを添加した。組成物を混合し、打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0228】
【表34】
16.2生体接着層
コア錠剤を、錠剤パンコーター中にて3%HPMCおよび0.6%L30D−55の水性懸濁物でコーティングした。コーティング錠剤を40℃で14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3mgであった。
【0229】
16.3一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、半透性酢酸セルロース層でコーティングした。直径10mmの錠剤の一つの面を、直径7mmの円形ステッカーで最初に覆った。次に、錠剤を、パンコーターにおいて3%酢酸セルロースおよび1.2%ポリエチレングリコールMW2000(PEG 2000)を含むアセトンとギ酸との混合物(9:1 v/v)を含む一方向コーティング溶液でコーティングした。コーティングの完了後、錠剤を40℃で一晩乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。最後に、接着紙を剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0230】
16.4ソマトスタチン処置したイヌにおける血中グルコースレベルに及ぼす経口インスリンの影響
実施例9に記載のように、経口インスリンの影響を、ソマトスタチンを注入したビーグル犬において評価した。
【0231】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。水を自由に与えた。イヌを5群に無作為に分け、一晩絶食させた。ソマトスタチン注入開始から4時間後に10ml水を使用して錠剤を咽頭に直接投与した。研究中は食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表35にまとめる。
【0232】
【表35】
血液サンプルを回収し、血糖計を使用して血中グルコース濃度を測定した。血中グルコースに及ぼす2つの経口インスリン処方物の影響を図13に示す。
【0233】
図13に示すように、経口インスリン錠は、インスリン注射に類似して、血中グルコースの有意な減少を誘導した。グルコースの減少は、25U経口インスリンにおける応答を50U経口インスリンまたは25U×2回処置のいずれかと比較した場合に用量依存性であった。グルコースの減少は、50Uおよび25U×2回の経口インスリン処置群においてほぼ等価なようであった。
【0234】
実施例17:エクセナチドの放出および吸収に及ぼす生体接着ポリマーの影響
17.1コア錠剤の作製
エクセナチド錠を、前述のようにエタノール造粒プロセスを使用して作製した。この錠剤バッチの処方物を表36に列挙する。エクセナチド粉末(power)を8%PVPを含むエタノールに懸濁し、視覚可能な巨大粒子が検出されなくなるまで軽く超音波処理した。シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウム以外の全ての他の賦形剤を秤量し、造粒機中で完全に予め混合した。薬物懸濁物を賦形剤ブレンドに添加して顆粒を形成し、次いで、18−メッシュの篩にかけ、真空下で乾燥させた。シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウムの添加後、ロータリープレスにて組成物を打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0235】
【表36】
17.2生体接着層
コア錠剤を、錠剤パンコーター中にて3%HPMCおよび0.6%L30D−55を含む50%エタノールの水性懸濁物でコーティングした。あるいは、コア錠剤を、2.6%HPMC、0.8%L30−D55、および0.6%PEGを含む50%エタノールでコーティングした。コーティング錠剤を40℃で14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3〜4mgであった。
【0236】
17.3一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、パンコーターにおいて3.2%エチルセルロース、0.6%ポリエチレングリコールMW2000、および0.2%トリアセチンを含む85%エタノールを含む一方向コーティング溶液を使用して半透性エチルセルロースでコーティングした。コーティングの完了後、錠剤を40℃で一晩乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。錠剤の一つの面をレーザーでアブレーションして直径9mmの錠剤上に直径7mmの一方向放出開口部を形成させた。
【0237】
17.4正常なイヌにおけるエクセナチドの吸収
エクセナチドの吸収を、正常なビーグル犬において評価した。
【0238】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。水を自由に与えた。イヌを4群に無作為に分け、一晩絶食させた。10ml水を使用して錠剤を咽頭に直接投与した。研究中は食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表37にまとめる。
【0239】
【表37】
血液サンプルを種々の時点で採取し、3000rpmで5分間の遠心分離後に血清サンプルを回収した。血清エクセナチド濃度を、ELISAアッセイ(Phoenix)を使用して測定した。結果を図14Aおよび14Bに示す。
【0240】
結果は、生体接着層の存在が必要であり、生体接着層中の生体接着ポリマーの含有量がエクセナチドの放出および吸収に有意に影響を及ぼすことを示す。
【0241】
前述の実施例は例示を目的として含まれ、本発明の範囲を制限することを意図しない。本開示を考慮して、当業者は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の実施形態を得ることができることがさらに認識される。したがって、本発明は本明細書中の全ての等価物を含むと理解される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2009年12月16日に出願された中国特許出願第200910201248.3号、および2010年7月14日に出願された同第201010227045.4号、ならびに2009年12月16日に出願された米国出願第61/287,146号、および2010年7月20日に出願された同第61/365,916号(これらは、それらの全体が参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、経口薬物送達分野、特に、従来の経口薬物送達系において低吸収および低い生物学的利用能を示す治療薬の吸収の増強および生物学的利用能の増大のための薬学的組成物に関する。本発明は、さらに、開示の薬学的組成物の作製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
経口薬物送達は、最も一般的で許容されている薬物投与経路の1つである。しかし、多数の治療薬は、経口経路を介した送達は不十分である。例えば、生物学的に活性な高分子(タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、および核酸など)は、しばしば、酵素分解、低吸収、または不安定性の複合的作用によって経口投与することができない。同様に、多数の小分子薬クラス(シクロスポリン、フェノフィブラート、脂質低下薬スタチン、降圧剤サルタン、抗生物質(セフトリアキソンまたはアジスロマイシンなど)、およびビスホスホネートクロドロネート(clodronrate)など)の経口処方物は、低吸収および薬物動態プロフィールの変動が問題とされている。
【0004】
低吸収性の治療薬の経口送達を改善するための多数の異なるアプローチが調査されている。例えば、透過促進剤は、一般に、他の低吸収性の薬物の吸収を増強するために使用される(概説として、B.J.Aungst,J.Pharm.Sci.,2000,89(4):429−442を参照のこと)。経皮または経粘膜吸収を改良することが公知の透過促進剤の多数の例が、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、米国特許第5,912,014号、同第5,929,027号、同第5,952,000号、同第5,972,911号、同第6,071,538号、同第6,156,731号、同第6,200,602号、同第6,333,046号、同第6,423,334号、同第6,747,014号、同第7,316,819号、同第7,576,067号、米国特許出願公開第2007/0148228号、同第2007/0196464号、同第2007/0238707号、同第2008/0275001号、同第2008/0299079号、同第2009/0087484号、同第2009/0111736号、および欧州特許第1154761号に開示されている。
【0005】
経口処方物中への吸収促進剤の適用は、しばしば、関連する毒性によって制限される。吸収促進剤を含む首尾の良い医薬品の1つの報告例は、結腸坐剤アンピシリン処方物である。これは、スウェーデン(DOKTACILLIN(商標)、Astra Lakemedel AB)で市販されている。透過促進剤として25mgカプリン酸ナトリウムを含む処方物は、アンピシリンの最大血清濃度(Cmax)、血清中濃度時間曲線下面積(AUC)、および尿中回収率を、アンピシリンのみと比較してそれぞれ2.6倍、2.3倍、および1.8倍に増加することが報告された(T.Lindmarkら,Pharm.Res.,1997,14(7):930−935)。
【0006】
しかし、結腸環境は、運動性、残留時間、水流、粘液、および腸内容物に関して経口経路と非常に異なる。したがって、経口送達のための透過促進剤の必要量は、非常により高い。例えば、Burchamらは、イヌにおけるペプチド模倣薬DMP728の吸収に及ぼすカプリン酸ナトリウムおよび他の透過促進剤の影響について研究した(Pharm.Res.,1995,12(12):2065−7200)。ゼラチンカプセル中に115〜120mgカプリン酸ナトリウムを含む処方物が生物学的利用能をわずかに改善した一方で(13.0%〜17.7%)、同量のカプリン酸ナトリウムを含む腸溶処方物はいかなる影響も示すことができなかった。
【0007】
吸収および生物学的利用能を一貫して有意に増強させるために、同一の実験系におけるカプリン酸ナトリウムの必要量は、275〜550mg/錠剤の範囲であることが見い出された(米国特許出願公開第2008/0275001号)。しかし、経口薬物送達のための透過促進剤の必要量が高いことが、しばしば有毒となり、安全上の懸念を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,525,339号明細書
【特許文献2】米国特許第4,722,941号明細書
【特許文献3】米国特許第5,318,781号明細書
【特許文献4】米国特許第5,393,738号明細書
【特許文献5】米国特許第5,424,289号明細書
【特許文献6】米国特許第5,597,562号明細書
【特許文献7】米国特許第5,714,477号明細書
【特許文献8】米国特許第5,817,624号明細書
【特許文献9】米国特許第5,827,534号明細書
【特許文献10】米国特許第5,854,281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今日まで、特に高分子生物医薬品についての吸収および生物学的利用能が低い治療薬の経口送達の問題のための安全且つ有効な解決策は見い出されていない。したがって、過剰量の透過促進剤を使用することなく吸収および生物学的利用能を有意に改善することができる薬物送達系を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明の1つの目的は、吸収性の低い治療薬の吸収および/または生物学的利用能を増強することができる非毒性薬学的組成物を提供することである。別の目的は、治療薬の薬物動態プロフィールを調整することができ、安価であり、製造が比較的容易な薬物送達が増強された薬学的組成物を提供することである。
【0011】
1つの実施形態では、本発明は、コアを形成するための有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含み、生体接着ポリマーを含有する生体接着層によってコーティングされた固体投薬形態を含む薬物送達のための薬学的組成物を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記薬学的組成物を、内容物の胃内の放出を防止し、胃腸管中の好ましい部位(小腸など)で放出させるための腸溶材料でさらにコーティングすることができる。
【0013】
本発明者らは、驚いたことに、生体接着ポリマー層の存在が、吸収性の低い治療薬の吸収および生物学的利用能を有意に改善するために必要な透過促進剤の量を減少させることができることを見い出した。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、コアを形成するための有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含み、生体接着ポリマーを含有する生体接着層によってコーティングされ、固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を有する不透過性の層または半透性の層によってさらにコーティングされた固体投薬形態を含む薬物送達のための薬学的組成物を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物を、内容物の胃内の放出を防止し、胃腸管中の好ましい部位(小腸など)で放出させるための腸溶材料でさらにコーティングすることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、治療薬および透過促進剤は、固体投薬形態からの相対放出速度が実質的に等価である。したがって、本発明の薬学的組成物により、治療薬および透過促進剤が局所的であり、限定され、且つ実質的に同時の放出が可能であり、それにより、先行技術と比較して有意に減少した量の透過促進剤を使用して治療薬の吸収を改善することが可能である。
【0017】
別の態様では、本発明は、治療薬の薬物動態プロフィールを調整することができる薬学的組成物を提供する。治療薬および透過促進剤の放出動態を、所望の治療効果に応じて、コアマトリックス中の成分の組成および/または比率の相違、生体接着ポリマー層の組成、比率、および/または厚さの相違、または不透過性の層または半透性の層の組成、比率、および/または厚さの相違によって調整して、バースト放出もしくは即時放出または長期もしくは徐放プロフィールを得ることができる。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む固体投薬形態を作製する工程、固体投薬形態を生体接着ポリマーを含む生体接着層でコーティングする工程、および、任意選択的に、固体投薬形態を、固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を含む不透過性の層または半透性の層でコーティングする工程を含む、薬物送達用の薬学的組成物の作製方法を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、生体接着ポリマー層および不透過性の層または半透性の層の適用順序を逆にする。いくつかの実施形態では、本方法は、組成物を腸溶層でコーティングする工程をさらに含む。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、経口、鼻腔内、口内、舌下、直腸、または膣投与経路によって本発明の薬学的組成物を被験体に投与することによる治療的処置を必要とする被験体の処置方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)および腸溶ポリマー(enteric polymer)であるオイドラギット(登録商標)L30D−55の層でコーティングした錠剤からのエクセナチドおよび吸収促進剤であるカプリン酸ナトリウムの同時放出を示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、HPMCおよび腸溶ポリマーの層でコーティングした錠剤からのエクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの放出動態に及ぼす一方向放出層の影響を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、100および400mgカプリン酸ナトリウムおよび腸溶層の存在下でのエクセナチドの生物学的利用能に及ぼす生体接着層の影響を示す。
【図4】図4は、AA1層および腸溶層の存在下でのエクセナチドの生物学的利用能に及ぼすカプリン酸ナトリウム量の影響を示す。
【図5】図5は、50mgカプリン酸塩、HPMC層、および腸溶層の存在下でのエクセナチドの生物学的利用能に及ぼす一方向放出層の影響を示す。
【図6】図6は、100mgカプリン酸塩、HPMC層、および腸溶層の存在下でのエクセナチドの生物学的利用能に及ぼす一方向放出層の影響を示す。
【図7】図7は、200mgカプリン酸ナトリウム、HPMC層、および一方向放出層の存在下でのエクセナチドの生物学的利用能に及ぼす腸溶層の影響を示す。
【図8A】図8Aは、200mgカプリン酸ナトリウム、HPMC層、および一方向放出層の存在下でのインスリンを含む0.01N HCl(最初の2時間)および疑似腸液(SIF)(pH6.8)(3〜7時間)の放出動態を示す。
【図8B】図8Bおよび8Cは、ソマトスタチン処置したイヌにおける血中グルコース濃度および血清インスリン濃度のそれぞれに及ぼす経口インスリン処置の影響を示す。
【図8C】図8Bおよび8Cは、ソマトスタチン処置したイヌにおける血中グルコース濃度および血清インスリン濃度のそれぞれに及ぼす経口インスリン処置の影響を示す。
【図9】図9は、ソマトスタチン処置したイヌにおける血中グルコースレベルに及ぼす2つの経口インスリン処方物の影響を比較している。第1の処方物は、200mgカプリン酸ナトリウム、HPMC層、および一方向放出層を含む二層錠剤であった。第2の処方物は、200mgカプリン酸ナトリウム、HPMC層、一方向放出層、および腸溶外層を含む三層錠剤であった。
【図10A】図10A〜Cは、60℃(図10A)、25℃にて相対湿度92.5%(図10B)、および4500ルクスでの光曝露(図10C)で0、5、および10日間の保存後の種々の固体処方物におけるエクセナチドの安定性を比較する。
【図10B】図10A〜Cは、60℃(図10A)、25℃にて相対湿度92.5%(図10B)、および4500ルクスでの光曝露(図10C)で0、5、および10日間の保存後の種々の固体処方物におけるエクセナチドの安定性を比較する。
【図10C】図10A〜Cは、60℃(図10A)、25℃にて相対湿度92.5%(図10B)、および4500ルクスでの光曝露(図10C)で0、5、および10日間の保存後の種々の固体処方物におけるエクセナチドの安定性を比較する。
【図11】図11は、正常なイヌにおける血中グルコースに及ぼす経口インスリン投与の影響を示す。この実験のために使用したインスリン処方物は、100カプリン酸ナトリウム、HPMC層、一方向放出層、および腸溶層を含む三層錠剤であった。
【図12】図12は、手作業によるプロセスおよびレーザーアブレーションプロセス(laser ablation process)によって生成された一方向放出層によって媒介されるエクセナチド吸収を比較している。この実験のために使用したエクセナチド処方物は、手作業またはレーザーアブレーションのいずれかによって調製した200mgカプリン酸ナトリウム、L30D−55腸溶材料を含むHPMC層、および一方向放出層を含む二層錠剤であった。
【図13】図13は、ソマトスタチン処置したイヌにおける血中グルコースレベルに及ぼす経口インスリン投与(25U、25U×2、および50U)の用量依存性の影響を示す。この実験のために使用したインスリン処方物は、200mgカプリン酸ナトリウム、L30D−55腸溶材料を含むHPMC層、および一方向放出層を含む二層錠剤であった。
【図14A】図14Aおよび14Bは、正常なイヌにおけるエクセナチドの放出および吸収の動態に及ぼす生体接着層中の生体接着ポリマー含有量の影響を示す。この実験のために使用したエクセナチド処方物は、100mgカプリン酸ナトリウム、65%または80%HPMCおよびL30D−55腸溶材料を含むHPMC層、およびレーザーアブレーションによって調製した一方向放出層を含む二層錠剤であった。
【図14B】図14Aおよび14Bは、正常なイヌにおけるエクセナチドの放出および吸収の動態に及ぼす生体接着層中の生体接着ポリマー含有量の影響を示す。この実験のために使用したエクセナチド処方物は、100mgカプリン酸ナトリウム、65%または80%HPMCおよびL30D−55腸溶材料を含むHPMC層、およびレーザーアブレーションによって調製した一方向放出層を含む二層錠剤であった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
用語および定義
他で定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する当業者によって一般に理解されている意味を有する。本明細書中で言及された全ての特許、公開特許出願、ならびに他の刊行物およびデータベースは、その全体が参考として援用される。本項に記載の定義が本明細書中で参考として援用される特許、公開特許出願、ならびに他の刊行物および他のデータベースに記載の定義に反するか、そうでなければ矛盾する場合、本明細書中で参考として援用される定義よりも本項に記載の定義を優先する。
【0023】
刊行物または書類の引用は、任意のかかる刊行物または書類が先行技術と関連性を承認していることを意図せず、これらの刊行物または書類の内容または日付に関していかなる承認もしていない。
【0024】
本明細書中で使用する場合、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0025】
本明細書中で使用する場合、用語「薬学的組成物」または「薬学的に許容され得る処方物」は、その所望の活性に最も適切な物理的位置に一部または化合物が有効に分布することが可能な組成物または処方物をいう。
【0026】
本明細書中で使用する場合、用語、活性薬剤の「有効量」または「治療有効量」は、非毒性であるがほとんどの患者または個体に所望の治療効果または予防効果を得るのに十分な薬剤の量をいう。薬理学的に活性な薬剤の有効量が投与経路、ならびに薬物または薬理学的に活性な薬剤が投与される個体の年齢、体重、および性別に応じて変化し得ると一般に認識されている。当業者が異なる投与経路について本明細書中でさらに開示の単位用量範囲内での投与後に活性薬剤の血漿レベルに影響を及ぼす代謝、生物学的利用能、および他の要因などの要因を考慮することによって適切な有効量を決定することができることも一般に認識される。
【0027】
本明細書中で使用する場合、用語「薬学的に許容され得る」は、ヒトまたは他の哺乳動物と生理学的に適合可能な非毒性で不活性の組成物をいう。
【0028】
本明細書中で使用する場合、用語「薬学的賦形剤」は、アジュバント、キャリア、pH調整剤および緩衝剤、張度調整剤、湿潤薬、および防腐剤などの材料をいう。
【0029】
本明細書中で使用する場合、用語「被験体」、「個体」、「宿主」、および「患者」を、処置、観察、および/または実験の対象である動物をいうために交換可能に使用する。用語「動物」には、脊椎動物および無脊椎動物(魚類、甲殻類、爬虫類、鳥類、特に、哺乳動物など)が含まれる。用語「哺乳動物」には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類(サル、チンパンジー、および類人猿、特にヒトなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書中で使用する場合、用語「処置」は、疾患または感染状態または症状を修復または防止するか、そうでなければ疾患/感染または他の望ましくない症状の進行を阻止、妨害、遅延、または逆転する任意および全ての使用をいう。本明細書中で使用する場合、用語「処置」および「治療」は、疾患の任意の結果の任意の向上または改善をいい、疾患を完全に根絶する必要はない。特定の障害の症状の改善は、持続性か一過性かに無関係に、本発明の治療組成物の投与に寄与し得るか関連し得る症状の任意の緩和をいう。
【0031】
本明細書中で使用する場合、用語「投与(administration)」または「投与(administering)」は、本発明の組成物を被験体に提供するのに適切な任意の方法をいう。本発明の薬学的組成物を、経口、鼻腔内、口内、舌下、直腸、または膣の投与経路によって投与することができる。薬学的組成物を、各投与経路に適切な投薬単位処方物中に処方することができる。
【0032】
本明細書中で使用する場合、用語「固体投薬形態」は、固体(錠剤、カプレット、カプセル(硬質または軟質の材料(ゼラチンまたは天然もしくは合成のゼラチン代用物など)から作製されたものが含まれる)、ロゼンジ、およびその組み合わせなどが含まれるが、これらに限定されない)の任意の投薬形態をいう。
【0033】
本明細書中で使用する場合、用語「透過促進剤」は、粘膜表面を横切る薬理学的に活性な薬剤の輸送速度を改善する薬剤をいう。典型的には、透過促進剤は、治療薬への粘膜組織の透過性を増大させる。例えば、透過促進剤は、治療薬が膜を透過して血流に侵入する速度を増大させる。透過促進剤を使用した透過の増強を、例えば、動物またはヒトの膜を横切る薬理学的に活性な薬剤の流動の測定によって観察することができる。本明細書中で使用する場合、透過促進剤の「有効」量は、粘膜透過性を望ましく増加させ、それにより、例えば、選択された化合物の所望の吸収および/または生物学的利用能が得られる量をいう。
【0034】
本明細書中で使用する場合、用語「生体接着剤」は、一般に、生きている組織および/または体液を結び付ける任意の接着剤をいう。用語「生体接着層」は、被験体の粘膜組織に接着することが意図される固体層をいう。生体接着層は、少なくとも1つの「生体接着ポリマー」を含む。生体接着層は、カルボマー、ポリカルボフィル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、キトサン、アルギン酸塩、キサンタンガム(xanthum gum)、アクリル酸ポリマー、ならびにその誘導体および混合物から選択することができるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書中で使用する場合、用語「不透過性または半透性」は、薬物送達系内に含まれる生理学的流動物および成分に、不透過性または半透性の材料を介したかかる流動物および成分の系の内外への移動が実質的に系の機能に悪影響を及ぼさないほど遅いように十分に不透過性を示す材料をいう。
【0036】
本明細書中で使用する場合、用語「実質的な一方向放出」は、固体投薬形態中に含まれる治療薬および透過促進剤の約50%超、60%超、70%超、好ましくは約80%超、より好ましくは約90%超、最も好ましくは約95%超が、不透過性の層または半透性の層中の開口部によって規定される同一の単一方向で固体投薬形態から放出されることを意味する。
【0037】
本明細書中で使用する場合、用語「実質的に等価な相対放出速度」は、固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の放出が実質的に同時である(すなわち、所与の時間に放出される治療薬の放出部分(%)と同時の透過促進剤の放出部分との間の相違が約50%未満、40%未満、30%未満、好ましくは約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満である)ことを意味する。
【0038】
本明細書中で使用する場合、用語「腸溶コーティング」、「腸溶層」、「腸溶材料」、および「腸溶ポリマー」は、固体投薬形態に適用され、口腔内、食道内、または胃内での有効成分の放出を防止するが、投薬形態が下部消化管の近位部を通過する場合に薬物を迅速且つ完全に放出させる薬学的に許容され得る賦形剤の混合物をいう。腸溶層は、好ましくは、固体投薬形態重量とコーティング重量との組み合わせに基づいて、約1〜15%、より好ましくは約3〜12%、最も好ましくは約6〜10重量%含む。腸溶コーティングポリマーを、セルロースアセタートフタラート(オイドラギット(登録商標)SまたはL)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートトリメリタート、ポリビニルアセタートフタラート、シェラック、およびメタクリル酸コポリマーから選択することができるが、これらに限定されない。コーティングの厚さを、コーティングの性質および厚さに応じた所望の放出速度が得られるように選択する。
【0039】
本明細書中で使用する場合、用語「可塑剤」は、ポリマー鎖間の自由体積の増加によってポリマーのガラス転移温度および融解粘度を低下させるために薬学的組成物に組み込むことができる材料をいう。可塑剤には、クエン酸エステル(例えば、トリエチルシトラート、トリアセチン)、低分子量ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコール)、グリセロール、ペンタエリスリトール、グリセロールモノアセタート、ジアセタート、またはトリアセタート、プロピレングリコール、およびジエチルナトリウムスルホスクシナートが含まれるが、これらに限定されない。可塑剤は、薬学的組成物の約0.1〜約25重量%、好ましくは約0.5〜15重量%または約1〜20重量%の濃度で存在することができる。可塑剤のさらなる例を、M.&I.Ash,THE HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL ADDITIVES(3rd ed.,Synapse Information Resources,Inc.,2007)中に見い出すことができる。
【0040】
本開示を通して、本発明の種々の態様を、範囲形式で示すことができる。範囲形式の記載は便宜上および簡潔さのみを目的とすると理解すべきであり、本発明の範囲を不変に制限すると解釈すべきではない。したがって、範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能性のある部分的な範囲およびその範囲内の各数値を有すると見なすべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜3、2〜4、2〜5、2〜6などの具体的に開示された部分範囲およびその範囲内の各数値(例えば、1、2、3、4、5、および6)を有すると見なすべきである。範囲の広さと無関係にこれを適用する。
【0041】
薬物送達系
上記のように、本発明は、コアを形成するための有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含み、生体接着ポリマーを含有する生体接着層でさらにコーティングされた錠剤、パッチ、ディスク、または粉末の固体投薬形態を含む薬物送達のための薬学的組成物を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物を、胃腸管中の好ましい部位で放出させるための腸溶材料でさらにコーティングする。
【0043】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコールなどのポリマーでの膜コーティングを、腸溶コーティングプロセスを増強するために一般に実施するにもかかわらず、本発明者らは、驚いたことに、生体接着ポリマー層の存在によって低吸収性治療薬の吸収および生物学的利用能を有意に改善するために必要な透過促進剤の量を減少させることが可能であることを見い出した。
【0044】
開示の薬学的組成物の例を、実施例に示す。実施例では、透過促進剤はカプリン酸ナトリウムであり、試験した薬物はエクセナチド(39アミノ酸ペプチドである)(2型糖尿病治療用のBYETTA(登録商標)としてAmylin and Eli Lillyから市販されている)であった。先行技術では、有意な吸収増強を達成するためのカプリン酸ナトリウムの必要量は、イヌにおいて275〜550mgの範囲であった(米国特許出願公開第2008/0275001号)。より少量のカプリン酸ナトリウム(115〜120mg)を含む腸溶コーティングされた処方物では同一の動物モデルにおいて無効であることが見い出された(Burchamら,Pharm.Res.,1995,12(12):2065−2070)。
【0045】
本発明者らは、先行技術と一致して、100mgカプリン酸ナトリウムのみを含む処方物も無効であることを見い出した。しかし、驚いたことに、同量のカプリン酸ナトリウム(100mg)および生体接着層を含む処方物は、より大量のカプリン酸ナトリウムのみを含む処方物と比較して同等またはより有効であった。生体接着層をより大量のカプリン酸ナトリウム(400mg)を含む処方物中に組み込んだ場合、吸収のさらなる増強が認められた。生体接着層の存在がかかる相当な範囲まで透過促進剤の必要量に影響を及ぼすことは全く予想外であった。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明は、コアを形成するための有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含み、生体接着ポリマーを含有する生体接着層によってさらにコーティングされ、次いで、固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を有する不透過性の層または半透性の層によってさらにコーティングされた錠剤、パッチ、ディスク、または粉末の固体投薬形態を含む薬物送達のための薬学的組成物を提供する。
【0047】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物を、胃腸管中の好ましい部位で放出させるための腸溶材料でさらにコーティングすることができる。驚いたことに、この組成物は、吸収の増強に悪影響を及ぼすことなく透過促進剤の量をさらに減少させることができることが見い出された。
【0048】
先行技術は、一方向放出投薬形態の異なる例を含む。例えば、米国特許第4,772,470号および同第5,827,525号は、口内薬物投与のためのパッチまたは経口用包帯を開示している。同様に、部位選択層、薬物、接着層、および不透過性の層を含む経口用パッチ形式は、米国特許第7,097,851号および多数の非特許刊行物(例えば、S.Eaimtrakarnら,Biomaterials,2002,23(1):145−152;S.Eaimtrakarnら,Intl.J.Pharm.,2003,250(1):111−117;およびS.L.Tao & T.A.Desai,Drug Discov.Today,2005,10(13):909−915)に開示されている。不透過性エチルセルロース層でコーティングされた生体接着パッチは、ラットin situモデルにおいてインスリンを送達させることが報告され、透過促進剤は、この送達系の作用に重要でないことが見い出された(K.Whiteheadら,J.Control.Release,2004,98(1):37−45)。全てのこれらの刊行物は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0049】
特に、多数の特許および非特許刊行物が経口パッチ形式および一方向放出投薬形態を開示しているにもかかわらず、この薬学的に重要な分野においてその後に商業的な適用は報告されておらず、このことは、経口パッチ形式が深刻な技術的困難をもたらし続けていることを示す。
【0050】
カプリン酸ナトリウムの存在下でのエクセナチドの吸収および生物学的利用能に及ぼす一方向放出層の影響を、実施例6に示す。50mgカプリン酸ナトリウムを含むが一方向放出層を含まない処方物では、イヌにおけるエクセナチド吸収は最小であった。これは、当該分野の以前の報告と一致していた(米国特許第7,605,123号)。しかし、一方向放出層を適用した場合、エクセナチド吸収が有意に増強された。コーティング材料は、不透過性または半透性のいずれかであり得る。
【0051】
透過促進剤がしばしば一定の最小有効濃度を必要とすることが当該分野で公知である。例えば、透過増強効果を達成するために必要なカプリン酸ナトリウムの濃度は、少なくとも10〜13mMと推定されている(E.K.Anderbergら,Pharm.Res.,1993,10(6):857−864を参照のこと)。流動物の一定の流れにおける胃腸管中での急速な希釈を回避するために透過促進剤の放出が比較的迅速であり、且つ治療薬の放出が実質的に同時であることが必要であることがさらに認識される。例えば、米国特許出願公開第2008/0275001号は、透過促進剤としてカプリン酸ナトリウムを含む低分子量ヘパリンの即時放出(IR)および徐放(SR)処方物を開示している。同量のカプリン酸ナトリウムを考慮する場合、徐放処方物は、即時放出処方物と比較して有意に有効性が低かった。
【0052】
したがって、さらなる不透過性の層または半透性の層を含み、より単純な処方物と比較して広範な放出プロフィールを有する処方物が比較的高レベルの吸収増強を示すことが見い出されたことは驚きであった。本発明者らは、一方向放出処方物を使用して、不透過性の層または半透性の層の厚さ、不透過性または半透性材料を改変するために使用される可塑剤の含有量および性質、ならびに開口部のサイズを変化させることによって治療薬の薬物動態プロフィールを調整することができることをさらに見い出した。いくつかの実施形態では、治療薬および透過促進剤は、実質的に同時様式で薬学的組成物から放出される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、放出時間を延長させ、持続的吸収が可能である。
【0053】
治療薬
いくつかの実施形態では、送達すべき治療薬は、胃腸管での吸収が低く、且つ生物薬剤学分類系(BCS)分類(Food and Drug Administration,“Guidance for Industry:Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate−Release Solid Oral Dosage Forms Based on a Biopharmaceutics Classification System”を参照のこと)に従ってクラスIIIまたはIV化合物に属する治療薬を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、低吸収性治療薬は、アセチルシステイン、アカンプロサート、アシクロビル、アルベンダゾール、アルクロニウム、アレンドロネート、アルフゾシン、アルプラゾラム、アルプロスタジル、アミカシン、アミノビスホスホネート、アミオダロン、アミトリプチリン、アムロジピン、アモキシリン、アンフェタミン、アンホテリシンB、アンピシリン、アルテメーテル、アルテスナート、アスピリン、アタザナビル、アテノロール、アトモキセチン、アトルバスタチン、アトロピン、アジスロマイシン、AZT、バシトラシン、ベクロメタゾン、ベンザチンベンジルペニシリン、ベンジルペニシリン、ビペリデン、ブレオマイシン、ボセンタン、ブピバカイン、ブプレノルフィン、ブプロピオン、カンデサルタン、カンドキサトリル、カプレオマイシン、カプトプリル、カルバマゼピン、カルビドパ、カルベジロール、カスポフンギン、セファゾリン、セフジニル、セフィキシム、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セレコキシブ、クロラムブシル、クロラムフェニコール、クロロキン、クロルフェナミン、クロルプロマジン、シラスタチン、シミチジン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クロファジミン、クロミプラミン、クロニジン、クロピドグレル、クロトリマゾール、クロキサシリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビン、d−9−テトラヒドロカンナビノール、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダナゾール、ダプソン、ダウノルビシン、デフェロキサミン、デシプラミン、デキサメタゾン、ジダノシン、ジエチルカルバマジン、ジゴキシン、ジヒドロエルゴタミン、ジルチアゼム、ジメルカプロール、ドラルジン、ドンペリドン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキサゾシン、ドキセタキセル、ドキソルビシン、デュロキセチン、エファビレンツ、エフロルニチン、エナラプリル、エンプロスチル、エピネフリン、エルゴメトリン、エルロチニブ、エリスロマイシン、エソメプラゾール、エストラジオール、エスゾピクロン、エトポシド、エゼチミブ、ファモチジン、フェロジピン、フェノフィブラート、フェンタニル、フェキソフェナジン、フィナステリド、フルシトシン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキセチン、フルフェナジン、フルルビプロフェン、フルチカゾン、フルバスタチン、ホルモテロール、フロセミド、ガバペンチン、ガンシクロビル、ゲムシタビン、ゲンタマイシン、グリベンクラミド、グリメピリド、三硝酸グリセリン、グリセオフルビン、グリセオフルビン、ハロペリドール、ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコルチゾン(hydrocortizone)、ヒドロキソコバラミン、イバンドロン酸、イブプロフェン、イミペネム、イミプラミン、インジナビル、臭化イプラトロピウム、イルベサルタン、イリノテカン、イソシアジド、二硝酸イソソルビド、イトラコナゾール、カナマイシン、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ラベタロール、ラタノプロスト、レバミソール、レボドパ、リドカイン、リシノプリル、ロペラミド、ロピナビル、ロサルタン、ロバスタチン、ルメファントリン、メベンダゾール、メドロキシプロゲステロン、メフロキン、アンチモン酸メグルミン、メラルソプロール、メルカプトプリン、メスナ、メトホルミン、メタドン、メトトレキサート、メチルドーパ、メチルフェニデート、塩化メチルチオニニウム、メトプロロール、ミフェプリストン、ミソプロストール、モダフィニル、モメタゾン、モンテルカスト、モルヒネ、ナドロール、ナロキソン、ナプロキセン、ネオスチグミン、ネビラピン、ニクロサミド、ニフェジピン、ニフルチモックス、ニトロフラントイン、ノルエチステロン、ノルトリプチレン、ナイスタチン、オフロキサシン、オルメサルタン、オメプラゾール、オンダンセトロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロナート、p−アミノサリチル酸、パロモマイシン、ペメトレキセド、ペニシラミン、ペンタミジン、フェノキシメチルペニシリン、フェニル酢酸マスタード、フェニトイン、フィトメナジオン、植物ステロール、ピロキシカム、ピロカルピン、ピペラシリン、プラバスタチン、プラジカンテル、プラゾシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロカインベンジルペニシリン、プロカルバジン、プロゲステロン、プログアニル、プロメタジン、プロプラノロール、プロパノール、プロピルチオウラシル、プロスタグランジン、ピランテル、ピリドスチグミン、クエチアピン、キニジン、キニーネ、ラベプラゾール、ラロキシフェン、ラミプリル、ラニチジン、ラパマイシン、リバビリン、リセドロン酸、リトナビル、ロピニロール、ロスバスタチン、サルブタモール、サリチル酸、サルメテロール、サキナビル、スコポラミン、セルトラリン、シルデナフィル、シンバスタチン、ニトロプルッシドナトリウム、スペクチノマイシン、スタブジン、ステロイド、スチボグルコナート、スチグマステロール、スルファドキシン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スマトリプタン、スラミン、スキサメトニウム、タクロリムス、タダラフィル、タモキシフェン、テガセロド、テルミサルタン、テモゾロミド、テニダップ、テノホビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル、テルフェナジン、テストステロン、テトラカイン、テトラサイクリン、チモロール、チオトロピウム、トリアムシナロン、トリクラベンダゾール、トロバフロキサシン、ツボクラリン、ユビキノン、バラシクロビル、バルプロ酸(valproic)、バルサルタン、バンコマイシン、バルデナフィル、ベクロニウム、ベンラファキシン、ベラパミル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビタミンB12、ジドブジン、ジプラシドン、ゾレドロン酸、ゾルピデム、その塩、アナログ、および誘導体からなる群から選択される。
【0055】
いくつかの実施形態では、治療薬は、特定の吸収部位(上部小腸が含まれるが、これに限定されない)で選択的に吸収される治療薬を含む。治療薬には、リボフラビン、レボドパ、メルホルミン、およびフロセミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
いくつかの実施形態では、治療薬は、タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、核酸、脂質、炭水化物、またはその組み合わせから選択される生物学的に活性な高分子を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、抗トロンビン、アルブミン、α−1−プロテイナーゼインヒビター、抗血友病因子、凝固因子、抗体、抗CD20抗体、抗CD52抗体、抗CD33免疫毒素、DNアーゼ、エリスロポエチン、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、濾胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ペグ化G−CSF、ガラクトシダーゼαまたはβ、グルカゴン、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、絨毛性ゴナドトロピン、B型肝炎抗原、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、B型肝炎外被抗原、C型肝炎抗原、ヒルジン、抗HER−2抗体、抗IgE抗体、抗IL−2受容体抗体、インスリン、インスリングラルジン、インスリンアスパルト、インスリンデテミール、インスリンリスプロ、インターフェロン、ペグ化インターフェロン、インターフェロンαまたはα2aまたはα2bまたはコンセンサス、インターフェロンβまたはβ−1aまたはβ−1bまたはベータサー、インターフェロンγ、インターロイキン−2、インターロイキン−11、インターロイキン−12、黄体形成ホルモン、ネシリチド、骨形成タンパク質−1、骨形成タンパク質(osteogeneic protein)−2、ライムワクチン、血小板由来成長因子、抗血小板抗体、抗RSV抗体、ソマトトロピン、抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体、TNF受容体−Fc融合タンパク質、組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)、TNK−tPA、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、線維素溶解酵素、血栓溶解酵素、アデノシンデアミナーゼ、ペグ化アデノシンデアミナーゼ、アニストレプラーゼ、アスパラギナーゼ、コラゲナーゼ、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、ウロキナーゼ、アプロチニン、ボツリヌス毒素、線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、毒液、抗体、抗体フラグメント、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される。タンパク質を、組換えテクノロジー、化学合成によって産生するか、生物学的起源から抽出することができる。タンパク質には、野生型の改変アナログまたは誘導体も含まれる。タンパク質供給源は、ヒトであり得るか、他の種に由来し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、ACTH、抗血管新生ペプチド、アダムトソスタチン、アディポネクチン、脂質動員ホルモン、デイポヌトリン、脂肪デスニュートリン、アドレノメズリン、アグーチ関連タンパク質、アラリン、アラトスタチン、アメロゲニン、カルシトニン、アミリン、アミロイド、アンギオポエチン(agiopoietin)、アンギオテンシン、食欲不振誘発性ペプチド、抗炎症性ペプチド、抗利尿因子、抗菌ペプチド、アペリン、アピデシン、RGDペプチド、心房性ナトリウム利尿ペプチド、アトリオペプチン、アウリクリン、オータキシン、ボンベシン、ボンビナキニン、ブランジキニン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、脳由来神経栄養因子、ブレビニン、C−ペプチド、カスパーゼインヒビター、膵臓ポリペプチド、ブッカリン、ブルシン、C型ナトリウム利尿ペプチド、カルシトニン関連ペプチド、カルシトニン受容体刺激ペプチド、カルモジュリン、CART、カルチロスタチン、カソモキニン、カソモルフィン、カテスタチン、カテプシン、セクロピン、セレベリン、ケメリン、コレシストキニン、クロモグラニン、毛様体神経栄養因子、コナントキン、コノプレシン、コノトキシン、コペプチン、皮質アンドロゲン刺激ホルモン、コルチコトロピン放出因子、コルチスタチン、共役因子、ディフェンシン、デルタ睡眠誘発ペプチド、デルモルフィン、バソプレシン、デスアミノ−バソプレシン、利尿ホルモン、ダイノルフィン、エンドキニン、エンドモルフィン、エンドルフィン、エンドスタチン、エンドセリン、エンケファリン、エンテロスタチン、エキセンジン(exendin)、エキセンジン−4、赤血球生成ペプチド、上皮成長因子、脂肪標的化ペプチド、ガラニン、胃抑制ペプチド、ガストリン、ガストリン放出ペプチド、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、グルタチオン誘導体、グルテンエクソルフィン、成長ホルモン放出因子、GM−CSF阻害ペプチド、成長ホルモンペプチド、グアニリン、HIVペプチド、ヘロデミン、ヘモキニン、HCVペプチド、HBVペプチド、HSVペプチド、ヘルペスウイルスペプチド、ヒルジン、ヒドラペプチド、インスリン様成長因子、ヒドリン、インテルメジン、カッシニン、角化細胞成長因子、キネテンシン、キニノーゲン、キッスペプチン、キョートルフィン、ラミニンペプチド、レプチンペプチド、ロイコキニン、ロイコピロキニン、ロイペプチン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、リンホカイン、メラニン凝集ホルモンおよびそのインヒビター、メラノサイト刺激ホルモン放出インヒビター、メラノトロピン促進因子、モルヒネ調整神経ペプチド、MSH、ネオエンドルフィン、ネスファチン、ニューロキニン、ニューロメジン、ニュートロペプチドY、ニューロテンシン、神経栄養因子、ノシセプチン、オベスタチン、オピオイド受容体アンタゴニスト、オレキシン、オステオカルシン、オキシトシン、パンクレアスタチン、ペプチドYY、フィサレミン様ペプチド、セクレチン、ソマトスタチン,精子活性化ペプチド、サブスタンスP、シンジファリン、トロンボスポンジン、サイモポイエチン、サイモシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、トランスフォーミング成長因子、タフトシン、腫瘍壊死因子アンタゴニストまたは関連ペプチド、ウスレキスタキキニン、ウロコルチン、ウロテンシンアンタゴニスト、バロルフィン、バソトシン、VIP、キセノプシンまたは関連ペプチド、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される。ペプチドを、組換えテクノロジー、化学合成によって産生するか、生物学的起源から抽出することができる。ペプチドには、野生型タンパク質の改変アナログまたは誘導体が含まれる。ペプチド供給源は、ヒトであり得るか、他の種に由来し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、生物学的に活性な高分子は、アデノウイルス、炭疽菌、BCG、ボツリヌス菌、コレラ、ジフテリア類毒素、ジフテリアおよび破傷風類毒素、ジフテリア破傷風および百日咳、ヘモフィルスB、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、脳炎、麻疹、ムンプス、風疹、髄膜炎菌、ペスト、百日咳、肺炎球菌、ポリオ、狂犬病、ロタウイルス、風疹、天然痘、破傷風類毒素、チフス菌、水痘、黄熱病、細菌抗原、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される微生物に対するワクチンである。
【0060】
いくつかの実施形態では、生物学的に活性な高分子は、チリダニ、動物の鱗屑、カビ、花粉、ブタクサ、ラテックス、ハチ毒、および昆虫由来アレルゲン、およびその任意の組み合わせからなる群から選択されるアレルゲンである。
【0061】
生物学的に活性な高分子は、高分子と類似の生物学的機能との組み合わせ(例えば、野生型分子とその化学的または生物学的に改変されたアナログとの組み合わせが含まれる)を含むことができる。かかる野生型高分子およびアナログの例には、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)およびそのアナログ、リラグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド、リキセナチド、およびエクセナチドならびにそのアナログおよび任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
いくつかの実施形態では、治療薬は、エクセナチド、39−アミノ酸ペプチド(2型糖尿病治療用のBYETTA(登録商標)としてAmylin and Eli Lillyから市販されている)ならびに塩および機能的誘導体(ペグ化エクセナチドなど)、エクセナチド融合タンパク質(アルブミンなど)、トランスフェリン、XTEN、Fc融合物、およびその脂肪酸改変誘導体から選択される。
【0063】
透過促進剤
上記のように、多数の透過促進剤が当該分野で公知である。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、脂肪酸、中鎖グリセリド、界面活性剤、ステロイド性洗剤、アシルカルニチン、アルカノイルコリン、N−アセチル化アミノ酸、ならびにそのエステル、塩、および誘導体からなる群から選択される。
【0064】
いくつかの実施形態では、透過促進剤は、脂肪酸(酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸(linolinic acid)、その塩、誘導体、および任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)を含む。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、脂肪酸(酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸(linolinic acid)、その塩、誘導体、および任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)のグリセリドを含む。グリセリドは、モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリドであり得る。そして、脂肪酸は、同一または異なる脂肪酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、8〜14炭素原子を有する脂肪鎖(fatty chain)を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、透過促進剤は、胆汁酸または塩(抱合または非抱合の胆汁酸(コラート、デオキシコラート、タウロコラート、グリココラート、タウロデオキシコラート、ウルソデオキシコラート、タウロウルソデオキシコラート、ケノデオキシコラート、その誘導体およびその組み合わせなど)が含まれる)を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、透過促進剤は、金属キレート剤(EDTAまたはEGTAなど)、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、ポリエチレンエーテルまたはエステル、ポリエチレングリコール−12ラウリルエーテル、サリチラート、ポリソルベート80(ツウィーン80(登録商標))、ノニルフェノキシポリオキシエチレン、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、サポニン、パルミトイルカルニチン、ラウロイル l−カルニチン、ドデシルマルトシド、アシルカルニチン、アルカノイルコリン、およびその任意の組み合わせなど)を含む。他の透過促進剤には、3’−ニトロベンゾアート、閉鎖帯毒素、乳酸塩の脂肪酸エステル、グリチルリチン酸塩、ヒドロキシルβ−シクロデキストリン、N−アセチル化アミノ酸(N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム、およびキトサンなど)、これらの化合物の塩および誘導体ならびにその組み合わせが含まれる。
【0067】
いくつかの実施形態では、透過促進剤は、密着結合を選択的にターゲティングして開かせる化合物(例えば、キトサンおよびその誘導体)を含む。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、カプリン酸またはその塩もしくは誘導体である。
【0068】
処方物および賦形剤
上記のように、本発明は、とりわけ薬学的に許容され得る賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、カプセル、錠剤、ペレット、パッチ、またはディスクの形態であり得る。適切な賦形剤およびその処方物は当該分野で公知であり、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005)に記載されており、その関連する項が本明細書中に援用される。
【0069】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容され得る賦形剤は、キャリアの分散を補助する材料を含む。いくつかの実施形態では、薬学的賦形剤は崩壊剤を含む。いくつかの実施形態では、薬学的賦形剤は、ポリプラスドン、クロスカルメロース、クロスポビドン、グリコール酸デンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、およびその任意の組み合わせを含む。
【0070】
薬学的組成物は、他の成分(緩衝液、防腐剤、非イオン性界面活性剤、溶解補助剤、吸収促進剤、安定剤、軟化薬、潤滑剤、および等張化剤など)を含むことができる。組成物を、薬物が制御放出されるように処方することができる。
【0071】
薬学的組成物は、経口使用(例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、または硬カプセルもしくは軟カプセルとして)に適切な形態であり得る。経口使用を意図した組成物を、薬学的組成物の製造について当該分野で公知の任意の方法にしたがって調製することができ、かかる組成物は、例えば、薬学的に安定且つ美味な調製物を得るための1つ以上の薬剤(甘味剤、香味物質、着色剤、および防腐剤など)を含むことができる。
【0072】
錠剤で使用される賦形剤には、例えば、不活性な希釈剤または充填剤(炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムもしくはリン酸ナトリウム、微結晶性セルロース、スクロース、マンニトール、およびソルビトールなど)、造粒剤または結合剤(ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、またはその組み合わせなど)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、シリカ粉末、ステアリン酸、またはタルク)が含まれ得る。本明細書中に開示の例示的処方物では、コア処方物を含む賦形剤には、以下が含まれる。
【0073】
【表1−1】
いくつかの実施形態では、処方物中の透過促進剤、特にカプリン酸ナトリウムの量は、約400mg、約300mg、約200mg、約100mg、約50mg、または約25mg、好ましくは約200mg、約100mg、または約50mg、より好ましくは約100mgである。いくつかの実施形態では、カプリン酸ナトリウムの含有量は、約25〜300mg、約50〜200mg、または約100〜200mgの範囲である。
【0074】
コア中のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の存在は、コア処方物の透過促進剤の放出プロフィールおよび治療薬接着性を調整する。種々の粘度のHPMCを、コアの接着を調整することが可能な比率または組み合わせで組み込むことができる。実施例は、・・・を示している。
【0075】
本発明で組み込まれる高分子薬物は、しばしば、非常に強力であり、コア処方物中の薬物含有率は、約1%、約0.1%、または約0.01%と低い。これらなどの低用量処方物は、しばしば、品質管理の局面(安定性、含量均一性、および分析方法が含まれる)で大変な困難にぶつかる。しばしば、含量均一性を維持しながら治療薬の安定性を確保するための過程を工夫する必要がある。
【0076】
高用量薬物処方物は、低用量処方物と比較して異なる困難(コンパクタビリティおよび流動性に関する困難など)が存在する傾向がある。
【0077】
いくつかの実施形態では、処方物は、米国特許出願公開第2005/0234114号、米国特許出願第12/434,557号、およびPCT公開番号WO2005/084637号およびWO2009/135190号(その全ての全体が本明細書中で参考として援用される)に記載のように、リン酸カルシウムナノ粒子をさらに含むことができる。
【0078】
本発明の薬学的組成物を、薬物の直腸投与のための坐剤形態で投与することもできる。これらの組成物を、薬学的組成物と適切な非刺激性の賦形剤(常温で固体であるが、直腸温度で液体であり、したがって、直腸内で融解して薬物を放出するであろう)との混合によって調製することができる。かかる材料には、カカオバターおよびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の薬学的組成物を、膣経路を介して投与することもできる。膣投与に適切な処方物には、ペッサリー、錠剤、またはタンポンが含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明の化合物の投与のための薬学的組成物は、投薬単位形態で都合良く存在することができ、薬学分野で周知の任意の方法によって調製することができる。
【0081】
生体接着層
上記で考察するように、本発明のコア薬学的組成物を、生体接着ポリマーを含む生体接着層でコーティングする。いくつかの実施形態では、生体接着層を、固体投薬形態上に直接接触させてコーティングする。他の実施形態では、固体投薬形態と生体接着層との間に1つ以上の中間層が存在し得る。いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層を、固体投薬形態と生体接着層との間に配置する。あるいは、生体接着層を、固体投薬形態と不透過性の層または半透性の層との間に配置することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、生体接着層は、胃腸管などの所望の標的部位に接着することができる生体接着ポリマーを含む。生体接着ポリマーには、カルボマー、ポリカルボフィル、キトサン、アルギン酸塩、チオマー、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolindone)、フマル酸無水物オリゴマー、ポリエステル、ポリアクリラート、ポリサッカリド、改変デキストラン、ヒアルロン酸ナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、ならびにその塩、誘導体、および混合物が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0083】
好ましい実施形態では、生体接着層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはポリカルボフィルAA1を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、生体接着層は、材料(生体接着ポリマー、可塑剤、または放出速度を調整するための他の材料など)の複合物を含む。生体接着材料を大量に含有することが望ましい。いくつかの実施形態では、生体接着ポリマーの含有量は、約50%超、約65%超、約75%、約80%超、または約90%超を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、生体接着層は、腸溶材料(セルロースアセタートフタラート(オイドラギット(登録商標)SまたはL)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートトリメリタート、ポリビニルアセタートフタラート、メタクリル酸コポリマー、シェラック、ならびにその塩、誘導体、およびその任意の組み合わせなど)をさらに含むことができる。
【0086】
生体接着層中の腸溶材料の存在により、胃内で投薬量を完全に保持することができ、pHが上昇する腸内で放出および吸収される。しばしば、酸安定性を維持するために高比率の腸溶材料(約50%以上など)が必要である。したがって、約10〜20%の低比率の腸溶材料を使用した場合でさえ、投薬量の酸安定性が認められることが非常に驚きである。
【0087】
いくつかの実施形態では、生体接着層中の腸溶材料の含有量は、約5〜50%、好ましくは約10〜35%、より好ましくは約15〜25%の範囲である。
【0088】
いくつかの実施形態では、生体接着層は、可塑剤(グリセロール、トリアセチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、その誘導体、およびその任意の組み合わせなど)をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、生体接着層中の可塑剤は、約1〜35%、好ましくは約5〜25%、より好ましくは約10〜15%の範囲である。
【0089】
いくつかの実施形態では、生体接着層は、薬学的組成物の約0.5重量%〜約10重量%、好ましくは約1〜5重量%、より好ましくは約2〜3重量%の範囲の含有量で存在し得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、生体接着層の厚さを、所望の放出動態および吸収が達成されるように調整することができる。
【0091】
一旦所望のpHに到達すると、腸溶材料は急速に溶解する。組成物中の生体接着剤および腸溶層中の腸溶材料の存在量が有意に異ならないので、腸溶材料を含む生体接着層と腸溶層との間の溶解速度は類似すると予想されるであろう。
【0092】
したがって、同一の腸溶材料を含む腸溶層を含む処方物と比較して腸溶材料を含む生体接着層を使用した処方物からのより迅速な吸収および薬理学的影響が認められることは非常に意外である。
【0093】
この驚くべき所見は、生体接着層に組み込んだ腸溶材料を使用した処方物が腸内での吸収領域を増大させ、より迅速な臨床応答(一般に、より望ましい)を達成することができることを示唆している。
【0094】
生体接着層に組み込んだ腸溶材料を使用した処方物は、コーティングの必要性を軽減し、製造過程を簡潔にする。それにより、所望の処方物を生成するための生成時間およびその後の費用が軽減される。
【0095】
不透過性層または半透性層
上記で考察するように、不透過性の層または半透性の層を使用して、低吸収性治療薬の吸収および生物学的利用能の改善に必要な放出動態を調整し、透過促進剤の量をさらに軽減する。いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層は、固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を含む。開口部のサイズおよび形状は、固体投薬形態の性質および所望の放出動態に必ず依存するであろう。開口部のサイズの決定は、十分に当業者の技能の範囲内である。いくつかの実施形態では、開口部は、錠剤またはカプレットの一つの面を完全に覆うことができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、一方向放出錠剤の開口部は、錠剤の一つの面の領域の約20〜90%、好ましくは約40〜80%、より好ましくは約50〜70%を覆っている。
【0097】
一方向放出錠剤の開口部は、任意の形状(例えば、円形、三角形、四角形、矩形、菱形、平行四辺形、台形、または任意の他の形状)を有することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層は、1つ以上の親水性ポリマーおよび/または1つ以上の疎水性ポリマーを含む。親水性ポリマーの例には、タンパク質ベースのポリマー(例えば、ゼラチンまたはカゼイン)、ペクチン、アガロース(寒天)、キトサン、カラギーナン、デンプン、デキストラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムの架橋ポリマー(例えば、クロスカルメロースナトリウム)、微結晶性セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、セルロースエーテル、酢酸セルロース、セルロースアセタートフタラート、他のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポビドン、他のビニルポリマーおよびコポリマー、グアールガム、ポロクサマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリエーテル、アルコキシポリマー、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、他の天然ヒドロゲルまたは天然物由来のヒドロゲル、またはその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。疎水性ポリマーの例には、エチルセルロース、ポリエステル(ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステルアミド(PEA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸(polylatic)グリコール酸(PLGA)、ポリヒドロキシブチラート−co−ヒドロキシバレラート(PHBV)およびポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)など)、ワックスおよび低融点ワックス、ポリエチレンおよびエチレンコポリマー、エチレン/ビニルアセタート、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン/ビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリビニリデン(polyvinyllidene)、ポリオレフィン、またはその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層は、層をより柔軟にする溶媒または可塑剤をさらに含む。溶媒は、不透過性または半透性の材料と適合する任意の溶媒(例えば、水およびエタノールが含まれる)であり得る。可塑剤の例には、クエン酸エステル(例えば、トリエチルシトラート、トリアセチン)、低分子量ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコール)、グリセロール、ペンタエリスリトール、グリセロールモノアセタート、ジアセタート、またはトリアセタート、プロピレングリコール、ナトリウムジエチルスルホスクシナート、糖アルコール、コーンシロップ、およびその任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施形態では、不透過性の層は、可塑剤としてグリセロール、ポリエチレングリコール、またはトリアセチンと併せたエチルセルロースポリマーを含む。いくつかの実施形態では、半透性の層は、可塑剤としてポリエチレングリコール、トリアセチン、またはグリセロールと併せた酢酸セルロースを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層中の可塑剤の含有量は、5〜40%、好ましくは10〜30%、より好ましくは15〜25%の範囲である。
【0102】
いくつかの実施形態では、不透過性の層または半透性の層は、薬学的組成物の約0.5〜約10重量%、好ましくは約1〜5重量%、より好ましくは約2〜4重量%の範囲の含有量で存在し得る。
【0103】
不透過性の層は、薬学的組成物の安定性を改良するための他の成分(防腐薬、防腐剤、および他の成分など)をさらに含むことができる。さらなる可塑剤および成分の例を、M.&I.Ash,THE HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL ADDITIVES(3rd ed.,Synapse Information Resources,Inc.,2007)(その関連項が本明細書中で援用される)中に見い出すことができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、処方物上の一方向開口部を、浸透圧ポンプの生成で一般に使用されるレーザーアブレーションプロセスによって形成する。浸透圧ポンプ錠剤と異なり、一方向口はかなりより大きく(典型的な直径10mmの錠剤についての直径0.5mm未満と比較して直径3〜9mm)、コーティングはより薄い。したがって、異なるレーザー光源および装置の配置を本発明のために適応させなければならない。
【0105】
腸溶層
いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物は、生体接着層でコーティングされたコア処方物を含み、一方向層を部位選択的薬剤でさらにコーティングして胃腸管内の選択された部位に薬物を放出させることができる。いくつかの実施形態では、部位選択的薬剤は、一定のpH値を有する環境下で溶解することができるpH感受性ポリマーを含む。部位選択的薬剤でのコーティングにより、キャリアが接着層を胃腸管の一定の領域に選択的に曝露させることが可能である。
【0106】
腸溶コーティングポリマーは、セルロースアセタートフタラート、オイドラギット(登録商標)SまたはL、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートトリメリタート、ポリビニルアセタートフタラート、メタクリル酸コポリマー、シェラック、その塩および誘導体、ならびにその任意の組み合わせから選択することができるが、これらに限定されない。1つの特に好ましい実施形態では、腸溶コーティングポリマーはオイドラギット(登録商標)L30D−55である。
【0107】
いくつかの実施形態では、部位選択的薬剤は、結腸に選択的に付着するか、結腸中に放出することができるポリマーを含む。かかる結腸選択的薬剤には、アゾポリマーおよび結腸分解性ポリサッカリド(ペクチン、アミロース、グアールガム、キシラン、シクロデキストリン、デキストラン、その塩および誘導体、ならびにその任意の組み合わせ)が含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
コーティングの厚さを、所望の放出速度が得られるように選択し、この放出速度はコーティングの性質および厚さの両方に依存する。いくつかの実施形態では、腸溶層は、固体投薬形態の重量とコーティングの重量との組み合わせに基づいて、約1〜15重量%、より好ましくは約3〜12重量%、最も好ましくは約6〜10重量%含む。
【0109】
例示的処方物
前述を考慮して、本発明が種々の固体投薬形態(治療薬、透過促進剤、生体接着層、半透性または不透過性の層、および/または腸溶層の多数の異なる組み合わせが含まれる)を意図すると理解される。
【0110】
いくつかの実施形態では、固体投薬形態は治療薬としてのエキセンジンまたはエキセンジンペプチドアナログおよび透過促進剤としてのカプリン酸ナトリウムを含み、生体接着層は生体接着ポリマーとしてのHPMCまたはAA1および腸溶ポリマーとしてのオイドラギット(登録商標)L30D−55を含み、半透性の層は酢酸セルロースまたはエチルセルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含む。いくつかの実施形態では、生体接着層は、層の少なくとも約70重量%の生体接着ポリマーおよび層の少なくとも約5重量%の腸溶ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、カプリン酸ナトリウムの量は、約100mgと150mgとの間の範囲である。いくつかの実施形態では、エキセンジンはエキセンジン−4であり、エキセンジンペプチドアナログはエクセナチドまたはその塩または機能的誘導体の1つである。いくつかの実施形態では、生体接着層は生体接着ポリマーとしてHPMCを含み、半透膜は酢酸セルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含み、固体投薬形態は錠剤形態である。いくつかの実施形態では、生体接着層は生体接着ポリマーとしてHPMCを含み、半透性の層はエチルセルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含み、固体投薬形態は錠剤形態である.
いくつかの実施形態では、固体投薬形態は治療薬としてのエキセンジンまたはエキセンジンペプチドアナログおよび透過促進剤としてのカプリン酸ナトリウムを含み、生体接着層は生体接着ポリマーとしてHPMCまたはAA1を含み、半透性の層は酢酸セルロースまたはエチルセルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含み、腸溶層はオイドラギット(登録商標)L30D−55を含む。いくつかの実施形態では、生体接着層は、層の少なくとも約70重量%の生体接着ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、カプリン酸ナトリウムの量は、約100mgと150mgとの間の範囲である。いくつかの実施形態では、エキセンジンはエキセンジン−4であり、エキセンジンペプチドアナログはエクセナチドまたはその塩または機能的誘導体の1つである。いくつかの実施形態では、生体接着層は生体接着ポリマーとしてHPMCを含み、半透性の層は酢酸セルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含み、固体投薬形態は錠剤形態である。いくつかの実施形態では、生体接着層は生体接着ポリマーとしてHPMCを含み、半透性の層はエチルセルロースおよび一方向放出が可能な開口部を含み、固体投薬形態は錠剤形態である。
【0111】
生成方法
1つの態様では、本発明は、以下の工程:有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む固体投薬形態を作製する工程、固体投薬形態を生体接着ポリマーを含む生体接着層でコーティングする工程、任意選択的に、固体投薬形態を固体投薬形態からの治療薬および透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部不透過性の層または半透性の層でコーティングする工程を含む、本発明の薬学的組成物の作製方法を提供する。いくつかの実施形態では、生体接着ポリマー層および不透過性の層または半透性の層の適用順序を逆にする。いくつかの実施形態では、本方法は、組成物を腸溶層でコーティングする工程をさらに含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、生体接着剤および不透過性または半透性の材料(エチルセルロースまたはオイドラギット(登録商標)L30−D55など)の水性懸濁物を使用することができる。いくつかの実施形態では、材料を、溶媒を用いずに直接分散させることができる。いくつかの実施形態では、加熱時にポリカプロラクトン(PCL)またはワックスを直接分散させることができる。
【0113】
好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物を、錠剤またはカプレットの形態で生成する。コア錠剤を、一般的にロータリープレスを使用して実施される打錠によって形成する。錠剤生産過程(湿式造粒法および直接打錠が含まれる)は十分に記載されており、当該分野で周知である(DEVELOPING SOLID ORAL DOSAGE FORMS:PHARMACEUTICAL THEORY AND PRACTICE,Ed.by Qiuら,Academic Press 2009)。
【0114】
しかし、高分子薬物のための錠剤形態の開発は困難なままである。ほとんどの高分子薬物はペプチドおよびタンパク質であり、脆弱な構造を有し、非常に不安定である。これらの高分子薬物は、しばしば、非常に強力であるので低用量処方物が必要であり、低用量処方物には内容物を確実に均一にするための特殊な過程(湿式造粒法など)が必要である(FORMULATION AND ANALYTICAL DEVELOPMENT FOR LOW DOSE ORAL DRUG PRODUCTS,Ed.by Zheng,Wiley 2009)。
【0115】
過程の開発の困難さを、薬物としてエクセナチドおよびインスリンを使用した例で示す。湿式造粒過程を使用して錠剤を生成する場合、エクセナチドが不安定であるにもかかわらず含有量の均一性は実際に規格の範囲内であり、その一方で、処方物中のエクセナチド粉末およびエクセナチドおよび賦形剤との直接ブレンドが同一条件下で安定性を維持することが見い出されている。
【0116】
したがって、直接打錠プロセス(direct compression process)は、約0.5〜2mgなどの許容され得る用量の薬物に適切な選択である。通常の低用量処方物における直接打錠プロセスはしばしば容易である。なぜなら、含有量の均一性を保証することができる限り、錠剤の性質(コンパクタビリティ、流動性、および硬さなど)が薬物の存在に影響を受けないほど薬物の含有量が非常に低いからである。例えば、薬物粉末の粒径が適切に制御される場合、インスリン粉末(小結晶粒子を示し、含水率が低い)を、直接打錠プロセスに組み込んで錠剤を製造することができる。
【0117】
本発明の処方物は、比率の高い透過促進剤(カプリン酸ナトリウムなど)の存在によってさらに別の困難があり、その存在により、コンパクタビリティが低く、粒子の分離も引き起こし得る。いくつかの実施形態では、本発明の直接打錠処方物を、以下の表に示す。
【0118】
【表1−2】
エクセナチドのような薬物について、単位用量がさらに低いと予想され、そして/または薬物粉末が含水性を示す場合、製造過程における含有量の均一性の達成が困難であることに起因して、直接打錠プロセスはしばしば推奨されない(Zheng 2009,ibid.)。
【0119】
本発明では、安定性と含量均一性との間のバランスを、非溶媒造粒プロセス(non−solvent granulation process)によって維持することができる。いくつかの実施形態では、薬物が不溶性を示す流体媒質中に薬物粉末を懸濁し、薬物の粒径を超音波処理または均質化によって調節し、モニタリングすることができる。均一性を促進するために、結合薬を懸濁物に添加することができる。一般的に実施される造粒プロセスなどで懸濁物を賦形剤混合物に添加する。実施例12および13に示すように、非溶媒造粒プロセスは、含量均一性を確実にしながら安定性を維持するのに役立ち得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明で使用することができる一般に使用される非溶媒には、エタノール、イソプロパノール、アセトン、および酢酸エチルが含まれる。
【0121】
使用方法
本発明の薬学的組成物は、薬物の所望の粘膜表面への送達に有用である。組成物は粘膜表面に選択的に付着することができ、固体投薬形態中に含まれる治療薬および透過促進剤は、キャリアから粘膜表面に一方向性に流れて、これらの両方の局所濃度が高くなるであろう。したがって、本発明の薬学的組成物は、少量の透過促進剤を有する薬物の吸収を増強することができるか、そうでなければ無効である。
【0122】
したがって、1つの態様では、本発明は、薬学的組成物を使用した治療薬の送達方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書中に開示の薬学的組成物を被験体、好ましくは粘膜表面に投与する工程を含む治療的処置を必要とする被験体の処置方法を提供する。薬学的組成物を、当該分野で公知の任意の手段(経口、口内、舌下、膣、および直腸経路が含まれるが、これらに限定されない)によって被験体に投与することができる。投与は全身投与または局所投与であり得る。
【実施例】
【0123】
実施例1:錠剤の作製
1.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表1に列挙した処方にしたがってシングルタブレットプレスを使用した材料の圧縮によって作製した。エクセナチドおよびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として15%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールを使用して顆粒を形成させ、60℃で2時間乾燥させた。顆粒を22−メッシュの篩にかけ、エクセナチドおよびステアリン酸マグネシウムと共に単一の錠剤に基づいて秤量した。組成物を混合し、打錠した。全錠剤を個別に秤量し、平均重量の5%を超える錠剤を排除した。
【0124】
【表1−3】
1.2生体接着層
コア錠剤を、生体接着ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、またはポリカルボフィルAA1でさらにコーティングした。HPMCコーティングについて、錠剤を、小規模錠剤コーティング機(BY300A,Yellow Sea Machinery)にて2%HPMC水溶液を使用してコーティングした。コーティングに起因する重量増加は、錠剤重量の2%であった。別々に、小型の錠剤コーティング機を使用して錠剤を4%ポリカルボフィルAA1を含むエタノールでコーティングした。重量増加は3%であった。コーティング錠剤を30℃で14時間乾燥させた。
【0125】
1.3一方向放出層
コア錠剤を、その後に不透過性または半透性の材料のいずれかを含む層でコーティングした。錠剤の一つの面を接着紙で最初に覆って一方向放出開口部を作製した。次に、錠剤を、可塑剤として20%トリアセチンを含有する4%エチルセルロースを含むエタノールまたは可塑剤として20%ポリエチレングリコールMW2000(PEG2000)を含有する3%酢酸セルロースを含むアセトンとギ酸との混合物(9:1v/v)のいずれかでコーティングした。コーティング後、錠剤を30℃で30分間乾燥させた。コーティングに起因する重量増加を、2〜5%に調整した。最後に、接着紙を剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0126】
1.4腸溶層
錠剤を、腸溶ポリマーであるオイドラギット(登録商標)L30D−55でコーティングした。コーティング混合物は、200gのL30D−55、12gの超微細タルク粉末、および6gのポリエチレングリコールMW6000(PEG 6000)を含み、水中で均質化して最終体積400mlとした。小規模錠剤コーティング機にてコーティングを行った。腸溶コーティングに起因する重量増加は、錠剤重量の10%であった。錠剤を30℃で14時間乾燥させた。
【0127】
実施例2:エクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの同時放出
異なる処方物におけるエクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの動態学的放出プロフィールを、いくつかのin vitro試験で評価した。
【0128】
第1に、処方物の酸感受性を、薬物溶解装置中にて腸溶コーティング錠剤を100ml 0.1N HCl中に37℃で2時間置くことによって試験した。種々の時点でサンプルを取り、エクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの濃度を、C18カラム(Waters)を使用したHPLCシステムを使用して決定した。錠剤は酸性媒質中でインタクトであることが見い出され、エクセナチドまたはカプリン酸ナトリウムは検出されなかった。
【0129】
動態学的放出プロフィールを、酸性媒質の除去および100ml疑似腸液(pH6.8)に入れることによってさらに研究した。放出を37℃でモニタリングし、種々の時点でサンプルを取ってエクセナチドまたはカプリン酸ナトリウムの濃度を決定した。表2は、50mgカプリン酸ナトリウムを含む腸溶コーティング錠剤およびHPMCコーティング錠剤から放出されたエクセナチドまたはカプリン酸ナトリウムの画分を示す。結果を、図1にもまとめている。容易に認めることができるように、pH6.8でのエクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの放出は、実質的に同時である。
【0130】
【表2】
同様に、表3は、50mgカプリン酸ナトリウムを含む腸溶ポリマー、酢酸セルロース、およびHPMCでコーティングした錠剤から放出されたエクセナチドまたはカプリン酸ナトリウムの画分を示す。結果を、図2Aにもまとめている。またしてもエクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの放出は実質的に同時であり、酢酸セルロース層を含まない錠剤と比較してさらに有意に延長された(最大放出は3時間対2時間で到達した)。
【0131】
【表3】
表4は、50mgカプリン酸ナトリウムを含む腸溶ポリマー、エチルセルロース、およびHPMCでコーティングした錠剤から放出されたエクセナチドまたはカプリン酸ナトリウムの画分を示す。結果を、図2Bにもまとめている。前の実験にあるように、エクセナチドおよびカプリン酸ナトリウムの放出は実質的に同時である。特に、エチルセルロースコーティング錠剤からの放出は、酢酸セルロース層を含む錠剤と比較してさらに延長される(最大放出は5時間対3時間で到達した)。
【0132】
【表4】
実施例3:100mgカプリン酸ナトリウムを使用したイヌにおけるエクセナチド吸収に及ぼす生体接着層の影響。
【0133】
透過促進剤として100mgカプリン酸ナトリウムを含む異なる処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0134】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを6群に無作為に分け、1週間の休止期を使用して処置を反復した。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。投与後6時間まで食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表5にまとめる。
【0135】
【表5】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0136】
標準を含む全サンプルを、20%血清を含むように調整した。エクセナチドの血清濃度を検量線に基づいて計算し、曲線下面積を評価し、比較した。各群についてのエクセナチド吸収の相対的な生物学的利用能および動態を、表6および図3Aにまとめる。
【0137】
【表6】
結果は、エクセナチドの吸収が生体接着層によって有意に影響を受けることを示す。生体接着層を使用しない場合、エクセナチド吸収は、透過促進剤としての100mgカプリン酸ナトリウムの存在下で最小である。AA1、HPMC、またはキトサンでのコーティングにより、キトサンの影響はあまり明白でなかったが、エクセナチド吸収が有意に改善された。
【0138】
実施例4:400mgカプリン酸ナトリウムを使用したイヌにおけるエクセナチド吸収に及ぼす生体接着層の影響。
【0139】
400mgカプリン酸ナトリウムを含む異なる処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0140】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを4群に無作為に分け、1週間の休止期を使用して処置を反復した。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。投与後6時間まで食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表7にまとめる。
【0141】
【表7】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0142】
標準を含む全サンプルを、20%血清に調整した。エクセナチドの血清濃度を検量線に基づいて計算し、曲線下面積を評価し、比較した。各群についてのエクセナチド吸収の相対的な生物学的利用能および動態を、表8および図3Bにまとめる。
【0143】
【表8】
実施例3にあるように、結果は、エクセナチドの吸収が生体接着層によって有意に影響を受けることを示す。生体接着層を使用しない場合、エクセナチド吸収は、透過促進剤としての500mgカプリン酸ナトリウムの存在下で中程度である。AA1でのコーティングにより、エクセナチド吸収が有意に改善される。
【0144】
実施例5:イヌにおけるエクセナチド吸収に及ぼすカプリン酸ナトリウム量の影響。
【0145】
異なる量のカプリン酸ナトリウムを含む処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0146】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを6群に無作為に分け、1週間の休止期を使用して処置を反復した。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。投与後6時間まで食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表9にまとめる。
【0147】
【表9】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0148】
標準を含む全サンプルを、20%血清に調整した。エクセナチドの血清濃度を検量線に基づいて計算し、曲線下面積を評価し、比較した。各群についてのエクセナチド吸収の相対的な生物学的利用能および動態を、表10および図4にまとめる。
【0149】
【表10】
結果は、エクセナチド吸収がカプリン酸ナトリウム量に依存することを示す。エクセナチド吸収は透過促進剤としての50mgカプリン酸ナトリウムの存在下で最小であるのに対して、100mg超のカプリン酸ナトリウムについて有意なエクセナチド吸収が認められる。100mg超のカプリン酸ナトリウムでは、さらなる改善は認められなかった。
【0150】
実施例6:イヌにおけるエクセナチド吸収に及ぼす一方向放出投薬量の影響
50mgカプリン酸ナトリウムを含む処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0151】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを5群に無作為に分け、1週間の休止期を使用して処置を反復した。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。投与後6時間まで食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表11にまとめる。
【0152】
【表11】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0153】
標準を含む全サンプルを、20%血清に調整した。エクセナチドの血清濃度を検量線に基づいて計算し、曲線下面積を評価し、比較した。各群についてのエクセナチド吸収の相対的な生物学的利用能および動態を、表12および図5にまとめる。
【0154】
【表12】
結果は、生体接着層と併せた一方向放出層の使用によってエクセナチド吸収をさらに増強することができることを示す。一方向放出層を使用しない場合、50mgカプリン酸ナトリウムおよびHPMCの存在下でのエクセナチド吸収および生物学的利用能は最小である。錠剤の片面に開口部を含む酢酸セルロース半透膜またはエチルセルロース不透過性膜での錠剤のコーティングにより、同量のカプリン酸ナトリウムおよびHPMCを使用してエクセナチド吸収が有意に改善される。
【0155】
実施例7:イヌにおける経口エクセナチドの生物学的利用能
100mgカプリン酸ナトリウムを含む処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0156】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを3群に無作為に分け、1週間の休止期を使用して処置を反復した。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。投与後6時間まで食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表13にまとめる。
【0157】
【表13】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0158】
標準を含む全サンプルを、20%血清に調整した。エクセナチドの血清濃度を検量線に基づいて計算し、曲線下面積を評価し、比較した。各群についてのエクセナチド吸収の相対的な生物学的利用能および動態を、表14および図6にまとめる。
【0159】
【表14】
結果は、100mgカプリン酸ナトリウムの存在下でのHPMC、エチルセルロース、および腸溶コーティングした錠剤の形態の経口エクセナチドの相対的生物学的利用能が皮下注射と比較して4.98%であることを示す。錠剤の片面に開口部を含むエチルセルロース不透過性膜での錠剤のコーティングにより、同量のカプリン酸ナトリウムおよびHPMCを使用したエクセナチドの吸収および相対的生物学的利用能が有意に改善される(2.37%;実施例5、群4を参照のこと)。
【0160】
実施例8:イヌにおけるエクセナチド吸収に及ぼす腸溶層の影響。
【0161】
8.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表15に列挙した処方にしたがってシングルタブレットプレスを使用した圧縮によって作製した。エクセナチドおよびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として15%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールを使用して顆粒を形成させ、真空下で一晩乾燥させた。顆粒を22−メッシュの篩にかけ、エクセナチドおよびステアリン酸マグネシウムと共に単一の顆粒に基づいて秤量した。組成物を混合し、打錠した。全錠剤を個別に秤量し、平均錠剤重量から5%超逸脱した錠剤をさらなる実験から排除した。
【0162】
【表15】
8.2生体接着層
コア錠剤を、腸溶材料オイドラギット(登録商標)L30D−55を使用するか使用しないでヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)でコーティングした。L30D−55を使用しないコーティングについて、6%HPMCおよび1.5%ポリエチレングリコールMW6000(PEG 6000)の水溶液を、錠剤パンコーター(BY300A,Yellow Sea Machinery)中で使用した。生体接着層に起因する重量増加は3〜4mgであった。L30D−55を使用したコーティングについて、3%HPMCおよび0.6%L30D−55の水溶液を、錠剤パンコーター中で使用した。コーティング錠剤を40℃で約14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3mgであった。
【0163】
8.3一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、半透性酢酸セルロース層でコーティングした。錠剤の一つの面を接着紙で最初に覆って一方向放出開口部を作製した。次に、錠剤を、パンコーターにおいて3%酢酸セルロースおよび1.2%ポリエチレングリコールMW2000(PEG 2000)を含むアセトンとギ酸との混合物(9:1 v/v)を含む一方向コーティング溶液でコーティングし、40℃で一晩乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。最後に、接着紙を剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0164】
8.4腸溶層
L30D−55を使用せずに生体接着HPMC層でコーティングした錠剤を、腸溶層でさらにコーティングした。コーティング混合物は、200gのL30D−55、12gの超微細タルク粉末、および6gのポリエチレングリコールMW6000(PEG 6000)を含み、最終体積400mlの水中で均質化した。コーティングを小規模パンコーターで行い、錠剤を40℃で14時間乾燥させた。腸溶層に起因する重量増加は25mgであった。
【0165】
8.5イヌにおける経口エクセナチドの吸収
200mgカプリン酸ナトリウムを含む処方物中のエクセナチドの吸収を、健康なビーグルにおいて評価した。
【0166】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した(Shanghai TCM University Animal Center)。水を自由に与えた。イヌを4群に無作為に分け、1週間の休薬期間を使用して反復処置を行った。イヌを一晩絶食させ、錠剤を10ml水を用いて直接投与した。研究中は食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表16にまとめる。
【0167】
【表16−1】
処置後、1.5mlの血液サンプルを、種々の時点で静脈カテーテルからヘパリン処置した管中に採取し、0.5〜0.6ml血清サンプルを3000rpmで10分間の遠心分離後に回収した。サンプルを−20℃で凍結し、エクセナチド濃度を、ELISAキット(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.)を使用して測定した。
【0168】
標準を含む全サンプルを、20%血清に調整した。エクセナチドの血清濃度を、検量線に基づいて計算した。各処置群についてのエクセナチド吸収の動態を、図7にまとめる。
【0169】
結果は、200mgカプリン酸ナトリウムの存在下でのHPMCおよび酢酸セルロースのコーティング錠剤形態における経口エクセナチドの吸収がHPMC、酢酸セルロース、および腸溶材料でコーティングした錠剤と比較して同様に有効であることを示す。腸溶外層の非存在下で、エクセナチドの最大濃度は、腸溶層の存在下よりも約1時間速く到達した(3時間対4時間)。しかし、最大濃度および曲線下面積のいずれも腸溶層の存在に有意に影響を受けないようであった。したがって、いくつかの実施形態では腸溶層を任意選択的に使用することができるが、本発明の必須成分ではないようである。
【0170】
二層処方物によって証明された早期の吸収および応答は、臨床背景で望ましい。
【0171】
実施例9:ソマトスタチン注入したイヌにおける経口インスリンの影響
9.1リン酸カルシウムインスリンナノ粒子の調製
リン酸カルシウムインスリン粒子を調製し、本研究において薬物キャリアとして使用した。インスリン(5mg/ml)を、20mMリン酸二ナトリウム、20mM HEPES緩衝液(pH6.9)、2%PEG(分子量6000)、および0.5%ウルソデオキシコラート(UDCA)を含む40mlの溶液Aに溶解した。UDCAを、添加前に1.5mlエタノールに溶解した。等体積(40ml)の0.01N HClおよび60mM CaCl2を含む溶液Bを溶液と混合して沈殿を誘導した。粒子を15000rpmで30分間遠心分離し、回収した粒子を真空下で完全に乾燥させた。
【0172】
粒子中のインスリン含有量を、0.2mg/mlの粒子を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH9.1)に37℃で15分間懸濁することによって測定した。標準として既知量のインスリンを使用した逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)によってインスリンを評価した。この特定のリン酸カルシウム粒子バッチ中のインスリン含有量は0.56mg/mgであり、インスリン回収率は99%であった。
【0173】
9.2コア錠剤の作製
コア錠剤を、表16に列挙した処方にしたがってシングルタブレットプレスを使用した圧縮によって作製した。インスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として8%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールを使用して顆粒を形成させ、真空下で一晩乾燥させた。顆粒を22−メッシュの篩にかけ、インスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウムと共に単一の顆粒に基づいて秤量した。組成物を混合し、打錠した。全錠剤を秤量し、平均錠剤重量から5%超逸脱した錠剤をさらなる実験から排除した。錠剤の硬度、厚さ、および破砕性もモニタリングした。
【0174】
【表16−2】
9.3生体接着層
コア錠剤を、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E50)および腸溶材料オイドラギット(登録商標)L30D−55でコーティングした。3%HPMCおよび0.6%L30D−55の水性懸濁物を、錠剤パンコーター(BY300A,Yellow Sea Machinery)中で使用した。コーティング錠剤を40℃で約14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3mgであった。
【0175】
9.4一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、半透性酢酸セルロース層でコーティングした。直径9mmの錠剤の一つの面を、直径7mmの円形の接着紙で最初に覆った。次に、錠剤を、パンコーターにおいて3%酢酸セルロースおよび1.2%ポリエチレングリコールMW2000(PEG 2000)を含むアセトンとギ酸との混合物(9:1 v/v)を含む一方向コーティング溶液でコーティングし、40℃で一晩乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。最後に、円形ステッカーを剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0176】
9.5インスリン放出プロフィール
インスリン放出を、最初に、37℃での100rpmの撹拌と設定したバスケットデザインを備えた溶出装置にて100mlの0.01N HCl中で2時間評価した。1時間後および2時間後にアリコートを採取し、インスリン含有量をRP−HPLCによって測定した。次いで、錠剤を、同一条件下の100mlの疑似腸液(SIF)(pH6.8)に移し、アリコートを種々の時点でRP−HPLCに供してインスリン含有量を測定した。
【0177】
インスリン放出プロフィールを図8Aに示す。2時間のインキュベーションで10%未満のインスリンが放出されたという所見によって証明されるように、錠剤は酸性溶液中で安定であった。SIF中のインスリン放出は徐々に起こり、約3〜4時間で完了した。
9.6ソマトスタチン注入したイヌにおける経口インスリンの影響
ビーグルにおける留置静脈カテーテルを介した1μg/kg/分でのソマトスタチン注入下での経口インスリンの吸収を評価した。ソマトスタチンの注入は、内因性のグルカゴンおよびインスリンの分泌を抑制する(Sakuraiら,J.Clin.Invest.54:1395,1974)。これらの動物における血中グルコースレベルは最初に減少し、その後にインスリン抑制に起因して急速に増加する。このモデルにより、経口インスリンの薬物動態評価および薬力学的評価を同時に行うことが可能である。
【0178】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。イヌを3群に無作為に分け、一晩絶食させた。水を自由に与えた。ソマトスタチン注入(1μg/kg/分)を、留置静脈カテーテルを介してバルーン注入ポンプを使用して行い、ソマトスタチン注入開始の4時間後に、錠剤を10ml水を使用して投与した。研究中は食事を制限し、血液サンプルを、種々の時点でヘパリン処置した管中に回収した。この実験で評価した処置群を、表17にまとめる。
【0179】
【表17】
血中グルコース濃度を、血糖計および適合試験ストリップ(Johnson & Johnson,OneTouch(登録商標))を使用して測定し、0.5〜0.6mlの血清サンプルを、血液サンプルの採取後に回収し、3000rpmで10分間遠心分離した。サンプルを−20℃で凍結し、インスリン濃度をELISA(Linco)によって測定した。
【0180】
血中グルコースおよび血清インスリン濃度に及ぼす経口インスリン処置の影響を、それぞれ8Bおよび8Cに示す。
【0181】
図8Bに示すように、予想通り、ブランク錠剤で処置した動物において血中グルコース濃度は最初に減少し、その後に実質的に増加した。インスリン注射により、急速且つ著明なグルコースレベルの減少が誘導された。同様に、経口インスリンでの処置により、血中グルコースの有意な減少も誘導された。グルコースレベルのAUCに基づいた生物作用能は5%と推定された。
【0182】
図8Cに示すように、インスリンレベルはブランク錠剤で処置された動物において全実験中に抑制された一方で、インスリン注射によってインスリン濃度が非常に増加した。興味深いことに、経口インスリンで処置した動物におけるインスリン濃度の増加は中程度でしかなった。本研究における生物学的利用能は、生物作用能の約2%または約40%であった。この所見により、門脈または天然のインスリン分泌と酷似して、経口インスリンによってより高い生物作用能およびより低い末梢インスリンが得られることが確認される。したがって、低血糖の確率(インスリンの臨床使用を制限する重大な問題)は有意に減少する。
【0183】
実施例10:ソマトスタチン注入したイヌにおける二層経口インスリン錠剤の影響
10.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表18に列挙した処方にしたがってシングルタブレットプレスを使用した圧縮によって作製した。インスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として8%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールを使用して顆粒を形成させ、真空下で一晩乾燥させた。顆粒を22−メッシュの篩にかけ、各錠剤の必要量を秤量し、その後にインスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウムを添加した。組成物を混合し、打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0184】
【表18】
10.2生体接着層
コア錠剤を、腸溶材料オイドラギット(登録商標)L30D−55を使用するか使用しないでヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)でコーティングした。L30D−55を使用しないコーティングについて、6%HPMCおよび1.5%ポリエチレングリコールMW6000(PEG 6000)の水溶液を、錠剤パンコーター(BY300A,Yellow Sea Machinery)中で使用した。生体接着層に起因する重量増加は3〜4mgであった。L30D−55を使用したコーティングについて、3%HPMCおよび0.6%L30D−55の水溶液を、錠剤パンコーター中で使用した。コーティング錠剤を40℃で約14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3mgであった。
【0185】
10.3一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、半透性酢酸セルロース層でコーティングした。直径10mmの錠剤の一つの面を、直径7mmの円形ステッカーで最初に覆った。次に、錠剤を、パンコーターにおいて3%酢酸セルロースおよび1.2%ポリエチレングリコールMW2000(PEG 2000)を含むアセトンとギ酸との混合物(9:1 v/v)を含む一方向コーティング溶液でコーティングした。コーティングの完了後、錠剤を40℃で一晩乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。最後に、接着紙を剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0186】
10.4腸溶層
L30D−55を使用せずに生体接着HPMC層でコーティングした錠剤を、腸溶層でさらにコーティングした。コーティング混合物は、200gのL30D−55、12gの超微細タルク粉末、および6gのポリエチレングリコールMW6000(PEG 6000)を含み、最終体積400mlの水中で均質化した。コーティングを小規模パンコーターで行い、錠剤を40℃で14時間乾燥させた。腸溶層に起因する重量増加は25mgであった。
【0187】
10.5グルコースに及ぼす経口インスリンの影響
二層処方物(L30D55を含む生体接着層でコーティングし、その後に酢酸セルロースで一方向コーティングしたコア錠剤)および三層処方物(L30D55を含まない生体接着層でコーティングし、その後に酢酸セルロースコーティングを行い、その後に腸溶コーティングを行ったコア錠剤)を使用した経口インスリンの影響を、実施例9に記載のようにソマトスタチンを注入したビーグル犬において評価した。
【0188】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。水を自由に与えた。イヌを4群に無作為に分け、一晩絶食させた。ソマトスタチン注入開始から約4時間後に10ml水を使用して錠剤を咽頭に直接投与した。研究中は食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表19にまとめる。
【0189】
【表19】
血液サンプルを回収し、血糖計を使用して血中グルコース濃度を測定した。血中グルコースに及ぼす2つの経口インスリン処方物の影響を図9に示す。
【0190】
図9に示すように、経口インスリン錠投与により、インスリン注射と類似して血中グルコースの有意な減少が誘導されたのに対して、ブランク処置動物における血中グルコースは、最初に減少が認められ、その後に急速な増加が認められた。腸溶外層の非存在下では、血中グルコースの減少は錠剤投与の1時間後に最初に認められた一方で、腸溶コーティング錠剤投与の4時間後にのみ同一の影響が認められた。
【0191】
この結果は、エクセナチドを使用した類似の処方物における所見と一致し、二層処方物による早期の応答が臨床背景で望ましいことを証明している。
【0192】
実施例11:直接打錠した錠剤
造粒を使用しない直接打錠は、簡潔且つ経済的な錠剤製造過程であり、薬物の結晶構造および安定性を維持する傾向がある。直接打錠プロセスを使用して製造された低用量錠剤の主な困難は、許容され得る含量の均一性を達成することである。
【0193】
表20に列挙したインスリンおよびエクセナチドの処方物を、直接打錠によって生成した。インスリンおよびエクセナチド粉末を200−メッシュの篩にかけ、全ての賦形剤と完全に混合した。組成物を、ロータリープレスを使用して打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0194】
【表20】
インスリンおよびエクセナチドのブレンド均一性を米国薬局方総則<905>、「投薬単位の均一性」(「USP <905>」)にしたがって評価し、ブレンドの完全な混合後に同一重量(錠剤重量に等しい)のサンプルを異なる位置から回収した。インスリンまたはエクセナチドの含有量を、RP−HPLCによって測定した。ブレンド均一性の結果を表21に示す。
【0195】
【表21】
結果は、単位用量1mg(錠剤含有量の0.5%)でのインスリンのブレンド均一性が許容され得ることを示す。対照的に、含有量0.27%での0.6mgのエクセナチドは均一性試験に合格しなかった。エクセナチド粉末は、より高い含水活性を示し、この困難の一因となり得る。したがって、錠剤を作製するための直接打錠プロセスは実行可能であり、異なる性質(含水性および粒径など)を有する薬物は、許容され得る均一性の達成における困難の程度が多様であり得る。
【0196】
実施例12:錠剤生成における非溶媒造粒
上記のように、直接打錠はエクセナチドのような低用量薬物の含量均一性に関する課題を示すのに対して、湿式造粒法は薬物安定性に問題がある。したがって、インスリン錠およびエクセナチド錠を、非溶媒造粒によって作製した。異なるロットの組成物を、表22〜26に列挙する。
【0197】
インスリンおよびエクセナチド粉末を200−メッシュの篩にかけ、8%PVPを含むエタノールに懸濁した。薬物懸濁物を、視覚可能な巨大粒子が検出されなくなるまで軽く超音波処理した。シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウム以外の全ての他の賦形剤を秤量し、造粒機中で完全に予め混合した。薬物懸濁物を賦形剤ブレンドに添加して顆粒を形成し、次いで、18−メッシュの篩にかけ、真空下で乾燥させた。シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウムの乾燥および添加後、ロータリープレスを使用して組成物を打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0198】
【表22】
【0199】
【表23】
【0200】
【表24】
【0201】
【表25】
【0202】
【表26】
これらの錠剤中のインスリンまたはエクセナチドの含有量をRP−HPLCによって測定し、含量均一性をUSP<905>にしたがって評価した。結果を、表27に示す。
【0203】
【表27】
これらの結果は、非溶媒造粒を使用して作製したインスリン錠およびエクセナチド錠の含量均一性が許容され得ることを証明している。
【0204】
実施例13:異なる処方物およびプロセスにおけるエクセナチドの安定性
種々の処方物中のエクセナチドの安定性を、ストレス条件下で評価した。試験した処方物を表28に示す。
【0205】
【表28】
基本的処方物中に含まれる賦形剤を表29に列挙する。
【0206】
【表29】
全処方物をペトリ皿に入れ、ストレス条件下(温度60℃、25℃で相対湿度92.5%、および4500ルクス光曝露で10日連続が含まれる)におく。各処方物中のエクセナチド含有量を、0、5、および10日目にRP−HPLCによって測定した。各処方物中に残存する含有量を図10A〜10Cに示す。
【0207】
結果は、エクセナチド粉末がストレス条件下で相対的に安定であり、エクセナチド含有量が高温、高湿度、および光曝露下で10日間の曝露後に95%残存することを証明している。全賦形剤を使用した直接ブレンドは類似の安定性プロフィールを示し、賦形剤が錠剤処方物中のエクセナチドと適合することを示唆している。
【0208】
しかし、湿式造粒法によって作製された錠剤は相対的に不安定な挙動を示し、曝露5日目および10日目にエクセナチドの著しい喪失が認められる。ゼラチンまたはマンニトールの添加は、不安定性を軽減しなかった。実際に、特に高湿度でエクセナチドの不安定性は悪化した。この所見は、ゼラチンおよびマンニトールが高湿度で相当量の水分を吸収する能力に原因し得る。
【0209】
対照的に、直接打錠または非溶媒造粒によって作製された錠剤は、エクセナチド粉末に類似して、これらの条件で良好な安定性を示す。低分子量PEGの添加により、非溶媒造粒プロセスによって生成した処方物においてさえ不安定になり、これは低分子量PEG中のエクセナチドの部分的溶解性に原因し得ることに注目すべきである。
【0210】
実施例14:イヌにおける経口インスリンの影響
14.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表30に列挙した処方にしたがって非溶媒造粒およびその後のロータリープレスでの圧縮によって作製した。インスリン、PVP、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、造粒機で完全に混合した。インスリン粉末を8%ポリビニルピロリドン(PVP)を含むエタノールに懸濁し、超音波処理を行って巨大なインスリン粒子を破壊した。インスリン懸濁物を他の成分に添加し、混合物を真空下で一晩乾燥させることによって顆粒を形成させた。シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウムを乾燥した顆粒に添加し、組成物を混合し、打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0211】
【表30】
14.2生体接着層
コア錠剤を、錠剤パンコーター(BY300A,Yellow Sea Machinery)中で6%HPMCおよび1.5%ポリエチレングリコール(MW 6000)の溶液を使用してヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)でコーティングした。生体接着層に起因する重量増加は4mgであった。
【0212】
14.3一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、半透性エチルセルロース層でコーティングした。直径10mmの錠剤の一つの面を、直径7mmの円形ステッカーで最初に覆った。次に、錠剤を、パンコーターにおいて3%エチルセルロースおよび1.2%ポリエチレングリコール(MW 2000)を含むエタノールを含む一方向コーティング溶液でコーティングした。コーティング完了後に錠剤を室温で乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。最後に、接着紙を剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0213】
14.4腸溶層
錠剤を腸溶層でさらにコーティングした。コーティング混合物は、8%L30D−55、2%ポリエチレングリコール(MW 6000)を含むエタノールを含んでいた。コーティングを小規模パンコーターで行い、腸溶層に起因する重量増加は20mgであった。
14.5 正常なイヌにおける血中グルコースレベルに及ぼす経口インスリンの影響
血中グルコースレベルに及ぼす経口インスリン投与の影響を、正常なビーグル犬において評価した。
【0214】
体重が8〜12kgの9匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。水を自由に与えた。イヌを3群に無作為に分け、一晩絶食させた。10ml水を使用して錠剤を咽頭に直接投与した。研究中は食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表31にまとめる。
【0215】
【表31】
血液サンプルを回収し、血糖計を使用して血中グルコース濃度を測定した。血中グルコースに及ぼす経口インスリン投与の影響を図11に示す。
【0216】
図11に示すように、経口インスリン錠は、インスリン注射に類似して、投与から2〜3時間以内に有意な血中グルコースの減少を誘導したのに対して、ブランク処置動物における血中グルコースは比較的一定であった。
【0217】
血中グルコースは、しばしば、正常な被験体において狭い範囲内で調節される。したがって、皮下注射におけるグルコース低下でさえも変化した。経口インスリン錠剤は、正常なビーグルにインスリンを注射した場合と類似の規模および変化の様式でグルコース低下を誘導した。
【0218】
実施例15:錠剤生成におけるレーザーアブレーションプロセス
15.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表32に列挙した処方にしたがってロータリープレスでの圧縮によって作製した。エクセナチド、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として8%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールに溶解したエクセナチドを使用して顆粒を形成させ、顆粒を真空下で一晩乾燥させ、22−メッシュの篩にかけ、シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウムを添加した。組成物を混合し、打錠した。錠剤の重量、硬度、厚さ、および破砕性をモニタリングした。
【0219】
【表32】
15.2生体接着層
コア錠剤を、3%HPMCおよび0.6%L30D−55の水性懸濁物を使用してパンコーター(BY300A,Yellow Sea Machinery)中でヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E50)および腸溶材料オイドラギット(登録商標)L30D−55でコーティングした。コーティング錠剤を40℃で約14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3mgであった。
【0220】
15.3一方向放出層
上記錠剤を、半透性酢酸セルロース層でさらにコーティングした。手作業のプロセスのために、9mmの錠剤の一つの面を直径7mmの円形の接着紙で最初に覆い、その後にパンコーターにおいて3%酢酸セルロースおよび1.2%ポリエチレングリコールMW2000(PEG 2000)を含むアセトンとギ酸との混合物(9:1 v/v)を含む溶液でコーティングした。コーティングおよび乾燥の完了後に円形ステッカーを剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0221】
レーザーアブレーションプロセスのために、錠剤をステッカーで覆わず、同一の酢酸セルロース溶液でコーティングした。コーティング錠剤を40℃で一晩乾燥させた。完成した錠剤をレーザードリル装置(CMS)でアブレーションして、上記の手作業のプロセスによって得られた開口に類似の直径7mmの開口を形成した。生体接着コーティングの完全性を、疑似胃液中で2時間の酸感受性試験によって検証した。
【0222】
両方の場合における一方向放出層に起因する重量増加は2〜3mgであった。
【0223】
15.4正常なイヌにおける経口エクセナチドの吸収
手作業のプロセスおよびレーザーアブレーションプロセスによって形成された一方向放出コーティングによって媒介される経口エクセナチドの吸収を、正常なビーグルにおいて評価した。
【0224】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。イヌを4群に無作為に分け、一晩絶食させた。水を自由に与えた。10ml水を使用して錠剤を咽頭に直接投与し、研究中は食事を制限した。血液サンプルを、種々の時点でヘパリン処置した管中に回収した。この実験で評価した処置群を、表33にまとめる。
【0225】
【表33】
0.5〜0.6mlの血清サンプルを、血液サンプルの採取後に回収し、3000rpmで10分間遠心分離した。サンプルを−20℃で凍結し、ELISAキット(Phoenix)を使用してエクセナチド濃度を測定した。
【0226】
血清エクセナチド濃度に及ぼす経口エクセナチド処置の影響を図12に示す。一方向放出開口部を形成するための手作業のプロセスおよびレーザーアブレーションプロセスによって作製された処方物は類似の吸収範囲を達成したが、レーザーアブレーションを使用して作製した処方物は、吸収動態がいくらか速かったようである。
【0227】
実施例16:ソマトスタチン注入したイヌにおける経口インスリンの用量応答
16.1コア錠剤の作製
コア錠剤を、表34に列挙した処方にしたがってシングルタブレットプレスを使用した圧縮によって作製した。インスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウム以外の全成分を最初に秤量し、完全に混合した。次いで、接着材料として8%ポリビニルピロリドン(PVP)を含む25%エタノールを使用して顆粒を形成させ、真空下で一晩乾燥させた。顆粒を22−メッシュの篩にかけ、各錠剤の必要量を個別に秤量し、その後にインスリン、シリカ粉末、およびステアリン酸マグネシウムを添加した。組成物を混合し、打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0228】
【表34】
16.2生体接着層
コア錠剤を、錠剤パンコーター中にて3%HPMCおよび0.6%L30D−55の水性懸濁物でコーティングした。コーティング錠剤を40℃で14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3mgであった。
【0229】
16.3一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、半透性酢酸セルロース層でコーティングした。直径10mmの錠剤の一つの面を、直径7mmの円形ステッカーで最初に覆った。次に、錠剤を、パンコーターにおいて3%酢酸セルロースおよび1.2%ポリエチレングリコールMW2000(PEG 2000)を含むアセトンとギ酸との混合物(9:1 v/v)を含む一方向コーティング溶液でコーティングした。コーティングの完了後、錠剤を40℃で一晩乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。最後に、接着紙を剥して一方向放出開口部を曝露させた。
【0230】
16.4ソマトスタチン処置したイヌにおける血中グルコースレベルに及ぼす経口インスリンの影響
実施例9に記載のように、経口インスリンの影響を、ソマトスタチンを注入したビーグル犬において評価した。
【0231】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。水を自由に与えた。イヌを5群に無作為に分け、一晩絶食させた。ソマトスタチン注入開始から4時間後に10ml水を使用して錠剤を咽頭に直接投与した。研究中は食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表35にまとめる。
【0232】
【表35】
血液サンプルを回収し、血糖計を使用して血中グルコース濃度を測定した。血中グルコースに及ぼす2つの経口インスリン処方物の影響を図13に示す。
【0233】
図13に示すように、経口インスリン錠は、インスリン注射に類似して、血中グルコースの有意な減少を誘導した。グルコースの減少は、25U経口インスリンにおける応答を50U経口インスリンまたは25U×2回処置のいずれかと比較した場合に用量依存性であった。グルコースの減少は、50Uおよび25U×2回の経口インスリン処置群においてほぼ等価なようであった。
【0234】
実施例17:エクセナチドの放出および吸収に及ぼす生体接着ポリマーの影響
17.1コア錠剤の作製
エクセナチド錠を、前述のようにエタノール造粒プロセスを使用して作製した。この錠剤バッチの処方物を表36に列挙する。エクセナチド粉末(power)を8%PVPを含むエタノールに懸濁し、視覚可能な巨大粒子が検出されなくなるまで軽く超音波処理した。シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウム以外の全ての他の賦形剤を秤量し、造粒機中で完全に予め混合した。薬物懸濁物を賦形剤ブレンドに添加して顆粒を形成し、次いで、18−メッシュの篩にかけ、真空下で乾燥させた。シリカ粉末およびステアリン酸マグネシウムの添加後、ロータリープレスにて組成物を打錠した。錠剤の硬度、破砕性、および厚さも測定した。
【0235】
【表36】
17.2生体接着層
コア錠剤を、錠剤パンコーター中にて3%HPMCおよび0.6%L30D−55を含む50%エタノールの水性懸濁物でコーティングした。あるいは、コア錠剤を、2.6%HPMC、0.8%L30−D55、および0.6%PEGを含む50%エタノールでコーティングした。コーティング錠剤を40℃で14時間乾燥させた。生体接着層に起因する重量増加は3〜4mgであった。
【0236】
17.3一方向放出層
生体接着層でコーティングした錠剤を、次いで、パンコーターにおいて3.2%エチルセルロース、0.6%ポリエチレングリコールMW2000、および0.2%トリアセチンを含む85%エタノールを含む一方向コーティング溶液を使用して半透性エチルセルロースでコーティングした。コーティングの完了後、錠剤を40℃で一晩乾燥させた。一方向放出層に起因する重量増加は2mgであった。錠剤の一つの面をレーザーでアブレーションして直径9mmの錠剤上に直径7mmの一方向放出開口部を形成させた。
【0237】
17.4正常なイヌにおけるエクセナチドの吸収
エクセナチドの吸収を、正常なビーグル犬において評価した。
【0238】
体重が8〜12kgの12匹のビーグル犬を、動物施設に収容した。水を自由に与えた。イヌを4群に無作為に分け、一晩絶食させた。10ml水を使用して錠剤を咽頭に直接投与した。研究中は食事を制限した。この実験で評価した処置群を、表37にまとめる。
【0239】
【表37】
血液サンプルを種々の時点で採取し、3000rpmで5分間の遠心分離後に血清サンプルを回収した。血清エクセナチド濃度を、ELISAアッセイ(Phoenix)を使用して測定した。結果を図14Aおよび14Bに示す。
【0240】
結果は、生体接着層の存在が必要であり、生体接着層中の生体接着ポリマーの含有量がエクセナチドの放出および吸収に有意に影響を及ぼすことを示す。
【0241】
前述の実施例は例示を目的として含まれ、本発明の範囲を制限することを意図しない。本開示を考慮して、当業者は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の実施形態を得ることができることがさらに認識される。したがって、本発明は本明細書中の全ての等価物を含むと理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物であって、
a)有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む固体投薬形態;ならびに
b)生体接着ポリマーを含む生体接着層
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記生体接着層中の前記生体接着ポリマーの含有量が、約50〜100重量%、約70〜90重量%、または約80〜90重量%の範囲である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記薬学的組成物中の前記生体接着層の含有量が、約0.5〜10重量%、約1〜5重量%、または約2〜3重量%の範囲である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記固体投薬形態からの前記治療薬および前記透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を有する不透過性の層または半透性の層をさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記開口部の面積が、前記固体投薬形態の一つの面の全面積の約20〜90%、約40〜80%、または約50〜70%におよぶ、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記薬学的組成物中の前記不透過性の層または前記半透性の層の含有量が、約0.5〜10重量%、約1〜5重量%、または約2〜4重量%の範囲である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記治療薬および前記透過促進剤が、前記固体投薬形態からの実質的に等価な相対放出速度を有する、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
腸溶層をさらに含む、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記生体接着ポリマーが、カルボマー、ポリカルボフィル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、ならびにその塩および誘導体から選択される、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記生体接着層が腸溶ポリマーをさらに含む、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記不透過性の層または前記半透性の層が水不透過性または半透性の材料を含む、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記水不透過性または半透性の材料が、エチルセルロース、酢酸セルロース、ならびにその塩および誘導体から選択される、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記不透過性の層または前記半透性の層が可塑剤をさらに含む、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記透過促進剤が、脂肪酸、中鎖グリセリド、界面活性剤、ステロイド性洗剤、アシルカルニチン、アルカノイルコリン、N−アセチル化アミノ酸、そのエステル、塩、および誘導体、ならびにその任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記透過促進剤が8〜14炭素原子を有する脂肪鎖を含む、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記透過促進剤が、カプリン酸およびその塩、エステル、または誘導体から選択される、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記透過促進剤がカプリン酸ナトリウムまたはその誘導体である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記カプリン酸ナトリウムまたはその誘導体の含有量が、約25〜300mg、約50〜200mg、または約100〜200mgの範囲である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記治療薬および前記透過促進剤を粘膜表面に送達させるように構成されている、請求項1から18のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記治療薬を経口経路を介して必要とする被験体に送達させるように構成されている、請求項1から18のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記治療薬が生物学的に活性な高分子を含む、請求項1から20のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記生物学的に活性な高分子が、タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、核酸、脂質、および炭水化物、ならびにその組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記生物学的に活性な高分子が、インスリン、エリスロポエチン、インターフェロン、成長ホルモン、エクセナチド、GLP−1アゴニスト、PTH、カルシトニン、ロイプロリド、オクトレオチド(octreotide)、低分子量ヘパリン、ならびにその機能的アナログ、変異体、塩、および誘導体からなる群から選択される、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記GLP−1アゴニストがエキセンジンまたはエキセンジンペプチドアナログである、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記エキセンジンがエキセンジン−4である、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記エキセンジンペプチドアナログが、エクセナチドならびにその塩および機能的誘導体から選択される、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記組成物が、カプセル剤、錠剤、ペレット剤、散剤、または顆粒剤の形態で処方される、請求項1から26のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記固体投薬形態を直接打錠プロセスを使用して生成する、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記固体投薬形態を、非溶媒造粒プロセスを使用して生成する、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記非溶媒造粒プロセスが、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、および酢酸エチルから選択される非溶媒媒質を使用する、請求項29に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記治療薬が、室温での保存中に実質的に安定である、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
薬学的組成物の作製方法であって、該方法は:
a)有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む固体投薬形態を作製する工程、および
b)該固体投薬形態を生体接着ポリマーを含む生体接着層でコーティングする工程
を含む、方法。
【請求項33】
c)前記固体投薬形態を、該固体投薬形態からの前記治療薬および前記透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を含む不透過性の層または半透性の層でコーティングする工程
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記開口部を、レーザーアブレーションプロセスを使用して前記固体投薬形態の一つの面に形成する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
工程b)およびc)の順序が逆である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物を腸溶層でコーティングする工程をさらに含む、請求項32から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
治療的処置を必要とする被験体を処置する方法であって、該被験体に請求項1から31のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項1】
薬学的組成物であって、
a)有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む固体投薬形態;ならびに
b)生体接着ポリマーを含む生体接着層
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記生体接着層中の前記生体接着ポリマーの含有量が、約50〜100重量%、約70〜90重量%、または約80〜90重量%の範囲である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記薬学的組成物中の前記生体接着層の含有量が、約0.5〜10重量%、約1〜5重量%、または約2〜3重量%の範囲である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記固体投薬形態からの前記治療薬および前記透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を有する不透過性の層または半透性の層をさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記開口部の面積が、前記固体投薬形態の一つの面の全面積の約20〜90%、約40〜80%、または約50〜70%におよぶ、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記薬学的組成物中の前記不透過性の層または前記半透性の層の含有量が、約0.5〜10重量%、約1〜5重量%、または約2〜4重量%の範囲である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記治療薬および前記透過促進剤が、前記固体投薬形態からの実質的に等価な相対放出速度を有する、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
腸溶層をさらに含む、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記生体接着ポリマーが、カルボマー、ポリカルボフィル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、ならびにその塩および誘導体から選択される、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記生体接着層が腸溶ポリマーをさらに含む、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記不透過性の層または前記半透性の層が水不透過性または半透性の材料を含む、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記水不透過性または半透性の材料が、エチルセルロース、酢酸セルロース、ならびにその塩および誘導体から選択される、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記不透過性の層または前記半透性の層が可塑剤をさらに含む、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記透過促進剤が、脂肪酸、中鎖グリセリド、界面活性剤、ステロイド性洗剤、アシルカルニチン、アルカノイルコリン、N−アセチル化アミノ酸、そのエステル、塩、および誘導体、ならびにその任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記透過促進剤が8〜14炭素原子を有する脂肪鎖を含む、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記透過促進剤が、カプリン酸およびその塩、エステル、または誘導体から選択される、請求項1または4に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記透過促進剤がカプリン酸ナトリウムまたはその誘導体である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記カプリン酸ナトリウムまたはその誘導体の含有量が、約25〜300mg、約50〜200mg、または約100〜200mgの範囲である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記治療薬および前記透過促進剤を粘膜表面に送達させるように構成されている、請求項1から18のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記治療薬を経口経路を介して必要とする被験体に送達させるように構成されている、請求項1から18のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記治療薬が生物学的に活性な高分子を含む、請求項1から20のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記生物学的に活性な高分子が、タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、核酸、脂質、および炭水化物、ならびにその組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記生物学的に活性な高分子が、インスリン、エリスロポエチン、インターフェロン、成長ホルモン、エクセナチド、GLP−1アゴニスト、PTH、カルシトニン、ロイプロリド、オクトレオチド(octreotide)、低分子量ヘパリン、ならびにその機能的アナログ、変異体、塩、および誘導体からなる群から選択される、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記GLP−1アゴニストがエキセンジンまたはエキセンジンペプチドアナログである、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記エキセンジンがエキセンジン−4である、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記エキセンジンペプチドアナログが、エクセナチドならびにその塩および機能的誘導体から選択される、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記組成物が、カプセル剤、錠剤、ペレット剤、散剤、または顆粒剤の形態で処方される、請求項1から26のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記固体投薬形態を直接打錠プロセスを使用して生成する、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記固体投薬形態を、非溶媒造粒プロセスを使用して生成する、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記非溶媒造粒プロセスが、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、および酢酸エチルから選択される非溶媒媒質を使用する、請求項29に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記治療薬が、室温での保存中に実質的に安定である、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
薬学的組成物の作製方法であって、該方法は:
a)有効量の治療薬、透過促進剤、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む固体投薬形態を作製する工程、および
b)該固体投薬形態を生体接着ポリマーを含む生体接着層でコーティングする工程
を含む、方法。
【請求項33】
c)前記固体投薬形態を、該固体投薬形態からの前記治療薬および前記透過促進剤の実質的な一方向放出を誘導することができる開口部を含む不透過性の層または半透性の層でコーティングする工程
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記開口部を、レーザーアブレーションプロセスを使用して前記固体投薬形態の一つの面に形成する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
工程b)およびc)の順序が逆である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物を腸溶層でコーティングする工程をさらに含む、請求項32から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
治療的処置を必要とする被験体を処置する方法であって、該被験体に請求項1から31のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【公表番号】特表2013−514976(P2013−514976A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544835(P2012−544835)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060809
【国際公開番号】WO2011/084618
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(506274305)ノッド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060809
【国際公開番号】WO2011/084618
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(506274305)ノッド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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