説明

経皮吸収型貼付剤キット

【課題】分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとがエステル化するのを防止し、良好な鎮痛効果を発揮する経皮吸収型貼付剤キットを提供すること。
【解決手段】経皮吸収型貼付剤キット10は、分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤を含む第1の薬物含有部11を備えた第1の貼付剤1と、l−メントールを含み、かつ、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まない第2の薬物含有部21を備えた第2の貼付剤2とを有している。非ステロイド系鎮痛消炎剤は、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトロラク、フェルビナクからなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。第2の貼付剤2の貼付面積は、前記第1の貼付剤1の貼付面積よりも大きいのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮吸収型貼付剤キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高い鎮痛消炎作用を示す薬物として、インドメタシンやフェルビナクといった分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤が知られている。
【0003】
このような薬物は、経口投与すると、消化器系に副作用を起こし、胃腸障害を生じてしまうという問題があるため、経皮投与製剤としての検討が行われており、これまでに、ゲル剤、液剤、貼付剤等が市販されている。
【0004】
経皮投与製剤として、ゲル剤、液剤を用いた場合、定量的に投与するのが困難であり、また、生物学的利用率が低いといった問題もあった。また、投与回数の多さや衣服への付着等の問題もあった。
【0005】
経皮投与製剤として、貼付剤を用いた場合、上記のような問題点を改善することが可能であり、例えば、樹脂成分、l−メントール、および、薬効成分としてのフェルビナクを含有する薬物含有層を備えた貼付剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、従来の貼付剤では、加熱溶融型の薬物含有層を形成する際に、カルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤が、l−メントールとエステル化してしまい、十分な鎮痛効果を得ることができなかった。また、同じ層内に上記非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとが存在すると、経時的にエステル化が進行し、薬物を安定的に保持できないといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−286162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、上記問題に鑑み、鋭意検討した結果、非ステロイド系鎮痛消炎を含む第1の薬物含有部を備えた第1の貼付剤と、l−メントールを含み、かつ、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まない第2の薬物含有部21を備えた第2の貼付剤との2種類の貼付剤からなる貼付剤キットとすることにより、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとがエステル化するのを防止し、同時に使用することで良好な鎮痛作用を発揮することを見出し、本発明の完成に至った。また、別の貼付剤とすることにより、経時的な薬物の安定性の低下を防止することができることを見出した。
【0009】
本発明の目的は、分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとがエステル化するのを防止し、良好な鎮痛効果を発揮する経皮吸収型貼付剤キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1)分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤を含む第1の薬物含有部を備えた第1の貼付剤と、
l−メントールを含み、かつ、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まない第2の薬物含有部を備えた第2の貼付剤と、を有することを特徴とする経皮吸収型貼付剤キット。
【0011】
(2)前記非ステロイド系鎮痛消炎剤は、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトロラク、フェルビナクからなる群から選択される少なくとも1種である上記(1)に記載の経皮吸収型貼付剤キット。
【0012】
(3)前記第2の貼付剤の貼付面積は、前記第1の貼付剤の貼付面積よりも大きい上記(1)または(2)に記載の経皮吸収型貼付剤。
【0013】
(4)前記第1の貼付剤と、
前記第2の貼付剤と、
前記第1の貼付剤の上に前記第2の貼付剤を同一部位付近に重ねて貼付することを指示する指示事項を記載した説明書と、を含む上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の経皮吸収型貼付剤キット。
【0014】
(5)複数枚の前記第1の貼付剤の上に前記第2の貼付剤を同一部位付近に重ねて貼付して使用する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤キット。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとがエステル化するのを防止し、良好な鎮痛効果を発揮する経皮吸収型貼付剤キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の経皮吸収型貼付剤キットの第1の貼付剤の一例を示す平面図(a)および断面図(b)、第2の貼付剤の一例を示す平面図(c)および断面図(d)である。
【図2】本発明の経皮吸収型貼付剤キットの使用方法の第1形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図3】本発明の経皮吸収型貼付剤キットの使用方法の第2形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の経皮吸収型貼付剤キットを好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の経皮吸収型貼付剤キットの第1の貼付剤の一例を示す平面図(a)および断面図(b)、第2の貼付剤の一例を示す平面図(c)および断面図(d)、図2は、本発明の経皮吸収型貼付剤キットの使用方法の第1形態を示す平面図(a)および断面図(b)、図3は、本発明の経皮吸収型貼付剤の使用方法の第2形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0018】
経皮吸収型貼付剤キット10は、図1に示すように、分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎を含有する第1の薬物含有部11を備えた第1の貼付剤1と、l−メントールを含み、かつ、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まない第2の薬物含有部21を備えた第2の貼付剤2とを備えている。
【0019】
[第1の貼付剤]
本実施形態において、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤を含有する第1の貼付剤1は、図1に示すように平面視の形状が略円形状のシートである。
【0020】
第1の貼付剤1は、図1に示すように、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤を含有する第1の薬物含有部11と、第1の支持基材12とを有している。
【0021】
第1の薬物含有部11は、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤を含有しており、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤を皮膚に対して放出する機能を有している。
【0022】
分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤としては、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトロラク、フェルビナク(4−ビフェニル酢酸)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも、特に、フェルビナクを用いるのが好ましい。これにより、経皮吸収貼付剤は、特に優れた鎮痛消炎効果を発揮する。
【0023】
第1の薬物含有部11における上記非ステロイド系鎮痛消炎剤の含有量は、0.1〜50質量%であるのが好ましく、1〜30質量%であるのがより好ましい。これにより、皮膚に対する良好な粘着性を維持させると共に、より優れた鎮痛消炎効果を発揮させることができる。
【0024】
また、第1の薬物含有部11は、粘着基剤を含んでおり、皮膚に対して粘着性を有している。
【0025】
粘着基剤には、高分子材料や、必要に応じて粘着付与剤や可塑剤等が含まれている。高分子材料としては、例えば、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリプテン、ポリイソブチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、粘着付与剤としては、例えば、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、可塑剤としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン等の炭化水素類;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等の石油系オイル;ホホバ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、オリーブ油、ごま油、サフラワー油、スクワレン等の天然動植物油脂類;ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類;メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸類;液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等の液状ゴム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
また、粘着基剤には、必要に応じて、抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤等をさらに配合してもよい。
【0027】
抗酸化剤としては、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0028】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。
【0029】
このような抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤は、粘着基剤全体の質量に基づいて合計で、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下の範囲内で適宜配合される。
【0030】
第1の薬物含有部11における粘着基剤の含有量は、30〜99.9質量%であるのが好ましく、40〜99質量%であるのがより好ましい。
また、第1の薬物含有部11には、経皮吸収促進剤を配合してもよい。
【0031】
経皮吸収促進剤としては、従来皮膚での吸収促進作用が認められている化合物のいずれでもよく、例えば、炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪族系アルコール、脂肪酸アミド、脂肪酸エーテル、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル又はエーテル、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート系、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油等が挙げられる。
【0032】
特に、経皮吸収促進剤としては、セバシン酸エステル、アルキルグリセリルエーテルを用いるのが好ましい。これら化合物は、上述したような非ステロイド系鎮痛消炎剤の溶解助剤としての作用があり、粘着基剤中に上記非ステロイド系鎮痛消炎剤をより安定して配合することができる。
【0033】
セバシン酸エステルとしては、例えば、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジブチル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
アルキルグリセリルエーテルとしては、炭素数が8〜24の直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が12〜24の直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和のアルキル基を有するものがより好ましい。例えば、イソステアリルグリセリルエーテル、セチルグリセリルエーテル、オレイルグリセリルエーテル、ラウリルグリセリルエーテル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも、イソステアリルグリセリルエーテルは、特に優れた溶解補助効果、透過促進効果を有しており、本発明において、好適に用いることができる。
【0035】
第1の薬物含有部11中における経皮吸収促進剤の含有量は、0.1〜30質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。これにより、薬物の効果の速効性をより効果的に発揮させることができる。
【0036】
第1の薬物含有部11の平均厚さは、10〜500μmであるのが好ましく、20〜300μmであるのがより好ましい。
【0037】
第1の支持基材12は、第1の薬物含有部11を支持する機能を有する。かかる支持基材12は、可撓性(柔軟性)を有し、貼付時における曲面追従性をもち、加工時における裁断または打ち抜き等に適したものが好ましい。
【0038】
このような支持基材12としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ポリスルホン、ナイロン、ポリ乳酸、レーヨン、アクリル等の樹脂からなるプラスチックフィルム、織物、編物および不織布を用いることが可能である。さらに、プラスチックフィルムと、プラスチックフィルム、織物、編物、不織布または紙等との2層以上のラミネートシートを用いることが可能である。
【0039】
第1の支持基材12の平均厚さは、2〜4000μmであるのが好ましく、10〜300μmであるのがより好ましい。
【0040】
[第2の貼付剤]
第2の貼付剤2は、図1に示すように平面視の形状が略円形状のシートである。また、第2の貼付剤2は、図1、図2に示すように、第2の貼付剤2の貼付面積が、第1の貼付剤1の貼付面積よりも大きくなるよう構成されている。このように構成し、第1の貼付剤1の上に第2の貼付剤2を重ねて貼付することで、第1の貼付剤1が皮膚から不本意に剥がれるのを効果的に防止することができる。また、第2の貼付剤2に含まれる薬物の効果を効率よく発揮させることができる。また、このような構成とすることにより、各薬物の効果の速効性と持続性とのバランスを良好なものとすることができる。
【0041】
また、第2の貼付剤2の貼付面積が、第1の貼付剤1の貼付面積よりも2倍以上大きくなるよう構成されていることが好ましく、3〜10倍であることがより好ましい。
【0042】
第2の貼付剤2は、図1に示すように、l−メントールを含み、かつ、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まない第2の薬物含有部21と、第2の支持基材22とを有している。
【0043】
第2の薬物含有部21は、l−メントールを含み、かつ、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含んでいない。l−メントールを含むことにより、患部に対して良好な清涼感を与え、痛みを緩和することができる。
【0044】
なお、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まないとは、第2の薬物含有部21中における上記非ステロイド系鎮痛消炎剤の含有量が0.1質量%未満のことをいう。
【0045】
第2の薬物含有部21におけるl−メントールの含有量は、0.1〜50質量%であるのが好ましく、1〜30質量%であるのがより好ましい。これにより、皮膚に対する良好な粘着性を維持させると共に、患部に対してより良好な清涼感を与え、痛みを緩和することができる。
【0046】
また、第2の薬物含有部21は、上記第1の薬物含有部11と同様に、粘着基剤を含んでおり、皮膚に対して粘着性を有している。
粘着基剤としては、上記第1の薬物含有部11の説明で例示したものが挙げられる。
【0047】
第2の薬物含有部21における粘着基剤の含有量は、30〜99.9質量%であるのが好ましく、40〜99質量%であるのがより好ましい。
【0048】
第2の薬物含有部21の平均厚さは、10〜500μmであるのが好ましく、20〜300μmであるのがより好ましい。
【0049】
第2の支持基材22は、第2の薬物含有部21を支持する機能を有している。第2の支持基材22の詳細な構成は、前記第1の支持基材12と同様であるのでその説明を省略する。
【0050】
また、経皮吸収型貼付剤キット10を構成する第1の貼付剤1および第2の貼付剤2は、第1の薬物含有部11および第2の薬物含有部21が設けられている面に剥離シートを設けることが好ましい。剥離シートは、経皮吸収型貼付剤キット10の保管時(未使用時)において、第1の薬物含有部11および第2の薬物含有部21の貼着面を保護する機能を有している。
【0051】
このような剥離シートとしては、例えば、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙等のラミネート紙類;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム等の合成樹脂フィルム等が使用できる。また、剥離シートは、必要に応じてこれらの材料の片面または両面にシリコーン樹脂等により剥離処理が施されたものを使用してもよい。
【0052】
また、剥離シートの平均厚さは、10〜200μmであることが好ましく、15〜100μmであることがより好ましい。
【0053】
なお、上述したような第1の薬物含有部11および第2の薬物含有部21は、粘着基剤や各薬物等を含む材料を混合した溶液を塗布等の手段によって各支持基材上に設けてもよいし、支持基材上に薬物を含有しない粘着剤層を予め形成しておいたものに、各薬物を含む液を粘着剤層上に塗布、含浸させて形成してもよい。
【0054】
このような経皮吸収型貼付剤キット10は、例えば、図2に示すように、第1の貼付剤1の上に、第2の貼付剤2を同一部位付近に重ねて貼付して使用することができる。このように使用することにより、第1の貼付剤1の不本意な剥がれを防止することができるとともに、第1の薬物を安定して皮膚に供給することができる。また、貼付した後でも、第1の薬物含有部11と第2の薬物含有部21とが接触しないので、長期にわたって消炎鎮痛効果を発揮させることができる。また、第1の薬物含有部11に含まれる非ステロイド系鎮痛消炎剤を患部に対して集中的に供給するとともに、周囲の第2の薬物含有部12から清涼感を与えることにより、患部に対して良好な清涼感を与えることができる。
【0055】
このように使用する場合、経皮吸収型貼付剤キット10の構成として、第1の貼付剤の上に第2の貼付剤を同一部位付近に重ねて貼付することを指示する指示事項を記載した説明書を含めることができる。これにより、経皮吸収型貼付剤キット10の誤った使用を防止することができる。
【0056】
また、経皮吸収型貼付剤キット10は、例えば、図3に示すように、複数の第1の貼付剤1の上に第2の貼付剤2を同一部位付近に重ねて貼付して使用することができる。このように使用することにより、初期の治療では第1の貼付剤1の枚数を多くして集中的に治療し、痛みの具合によって、第1の貼付剤1の枚数を減らし、治療効率を向上させることができる。
【0057】
このように使用する場合、経皮吸収型貼付剤キット10の構成として、治療の経過に伴って、第1の貼付剤を貼付する枚数を調整することを指示する指示事項を記載した説明書を含めることができる。これにより、経皮吸収型貼付剤キット10の誤った使用を防止することができる。
【0058】
以上、本発明の経皮吸収型貼付剤キットについて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の経皮吸収型貼付剤キットは、図示の構成のものに限定されない。
【0059】
また、前述した実施形態では、経皮吸収型貼付剤キットを構成する第1の貼付剤および第2の貼付剤が円形状を有するものとして説明したが、楕円形状でもよいし、四角形状等であってもよい。
【0060】
また、前述した実施形態では、第1の貼付剤の上に第2の貼付剤を貼付するものとして説明したが、隣り合うように貼付するものであってもよい。
【0061】
また、前述した実施形態では、第2の貼付剤の貼付面積が第1の貼付剤の貼付面積よりも大きいものとして説明したが、同じ大きさであってもよい。
【実施例】
【0062】
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤キットの具体的実施例について説明する。
(実施例)
1.第2の貼付剤の作製
まず、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(クレイントポリマー社製、商品名「KRATON D−1107CP」):35質量部と、テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSレジン PX1150」):30質量部と、流動パラフィン(三光化学工業社製、商品名「流動パラフィン350S」):29質量部とを用意した。
【0063】
これら成分を160℃にて混練し、粘着基剤を得た。
次に、この粘着基剤に、l−メントール(高砂香料工業社製、商品名「l−メントール」):5質量部と、ジブチルヒドロキシトルエン(日光ケミカルズ社製、商品名「BHT−C」):1質量部とを添加し、均一に分散するまで混練し、第2の薬物含有部用塗工液を得た。
【0064】
次に、得られた第2の薬物含有部用塗工液を、剥離シートとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)製剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET7511」)上に、厚さ150μmになるように展延塗布した。次いで、剥離シート上に形成された塗工層上に第2の支持基材としての織布(KBセイレン社製、商品名「K45S」、材質:ポリエステル、目付:103g/m)をラミネートした。
【0065】
次に、直径:37.2mmの円形状に打ち抜き加工し、第2の支持基材/第2の薬物含有部/剥離シートで構成された第2の貼付剤を得た。なお、第2の薬物含有部中に含まれるl−メントールの含有量は、4.8質量%であった。
【0066】
2.第1の貼付剤の作製
まず、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(クレイントポリマー社製、商品名「KRATON D−1107CP」):30質量部と、テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSレジン PX1150」):25質量部と、流動パラフィン(三光化学工業社製、商品名「流動パラフィン350S」):29質量部とを用意した。
【0067】
これら成分を160℃にて混練し、粘着基剤を得た。
次に、この粘着基剤に、フェルビナク(金剛薬品社製、商品名「4−ビフェニル酢酸」):5質量部と、セバシン酸ジエチル(日光ケミカルズ社製、商品名「DES−SP」):5質量部と、イソステアリルグリセリルエーテル(花王社製、商品名「GE−IS」):5質量部と、ジブチルヒドロキシトルエン(日光ケミカルズ社製、商品名「BHT−C」):1質量部とを添加し、均一に分散するまで混練し、第1の薬物含有部用塗工液を得た。
【0068】
次に、得られた第1の薬物含有部用塗工液を、剥離シートとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)製リリースライナー(リンテック社製、商品名「SP−PET7511」)上に、厚さ150μmになるように展延塗布した。
【0069】
次に、剥離シート上に形成された塗工層上に、第1の支持基材としての平均厚さ:50μmのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー」)をラミネートした。
【0070】
次に、直径:22.5mmの円形状に打ち抜き加工して、第1の支持基材/第1の薬物含有部/剥離シートで構成された第1の貼付剤を得た。なお、第1の薬物含有部中に含まれるフェルビナクの含有量は、5質量%であった。
【0071】
以上により、第1の貼付剤および第2の貼付剤からなる経皮吸収型貼付剤キットを得た。
【0072】
(比較例)
まず、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(クレイントポリマー社製、商品名「KRATON D−1107CP」):28質量部と、テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSレジン PX1150」):23質量部と、流動パラフィン(三光化学工業社製、商品名「流動パラフィン350S」):28質量部とを用意した。
【0073】
これら成分を160℃にて混練し、粘着基剤を得た。
次に、この粘着基剤に、フェルビナク(金剛薬品社製、商品名「4−ビフェニル酢酸」):5質量部と、l−メントール(高砂香料工業社製、商品名「l−メントール」):5質量部と、セバシン酸ジエチル(日光ケミカルズ社製、商品名「DES−SP」):5質量部と、イソステアリルグリセリルエーテル(花王社製、商品名「GE−IS」):5質量部と、ジブチルヒドロキシトルエン(日光ケミカルズ社製、商品名「BHT−C」):5質量部とを添加し、均一に分散するまで混練し、薬物含有部用塗工液を得た。
【0074】
得られた薬物含有部用塗工液を、剥離シートとしてのPETリリースライナー(リンテック社製、商品名「SP−PET7511」)上に、厚さ150μmになるように展延塗布し、織布(KBセイレン社製、商品名「K45S」、材質:ポリエステル、目付:103g/m)をラミネートした。
【0075】
次に、直径:37.2mmの円形状に打ち抜き加工し、支持基材/薬物含有部/剥離シートの積層体からなる経皮吸収型貼付剤を得た。なお、薬物含有部中に含まれるフェルビナクの含有量は、5質量%であった。また、薬物含有部中に含まれるl−メントールの含有量は、4.8質量%であった。
【0076】
<経時安定性試験>
実施例の経皮吸収型貼付剤キットの第1の貼付剤および比較例で得られた経皮吸収型貼付剤をアルミニウム包材にて包装し、40℃の恒温槽(湿度75%)にて6ヵ月間保存し、経皮吸収貼付剤中のフェルビナクの含有量およびフェルビナク−メントールエステル体の含有量をHPLCで定量し、フェルビナクに対するフェルビナク−メントールエステル体の割合(%)を算出した。
【0077】
【表1】

【0078】
表1から明らかなように、実施例の経皮吸収貼付剤キットは、フェルビナク−メントールエステル体が生成せず、フェルビナク(分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤)の経時安定性に優れていた。これに対して、比較例の経皮吸収貼付剤は、フェルビナクとl−メントールが薬物含有部中に併存しているため、フェルビナク−メントールエステル体の生成量が多く、フェルビナク(分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤)の経時安定性に劣っていた。
【符号の説明】
【0079】
1 第1の貼付剤
2 第2の貼付剤
10 経皮吸収型貼付剤キット
11 第1の薬物含有部
12 第1の支持基材
21 第2の薬物含有部
22 第2の支持基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤を含む第1の薬物含有部を備えた第1の貼付剤と、
l−メントールを含み、かつ、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まない第2の薬物含有部を備えた第2の貼付剤と、を有することを特徴とする経皮吸収型貼付剤キット。
【請求項2】
前記非ステロイド系鎮痛消炎剤は、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトロラク、フェルビナクからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の経皮吸収型貼付剤キット。
【請求項3】
前記第2の貼付剤の貼付面積は、前記第1の貼付剤の貼付面積よりも大きい請求項1または2に記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項4】
前記第1の貼付剤と、
前記第2の貼付剤と、
前記第1の貼付剤の上に前記第2の貼付剤を同一部位付近に重ねて貼付することを指示する指示事項を記載した説明書と、を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の経皮吸収型貼付剤キット。
【請求項5】
複数枚の前記第1の貼付剤の上に前記第2の貼付剤を同一部位付近に重ねて貼付して使用する請求項1ないし4のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−201612(P2012−201612A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66234(P2011−66234)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】