説明

経管栄養注入装置

【課題】栄養剤バッグからの栄養剤の押し出しを効率的に行うことが出来ると共に、栄養剤を安定した流量で継続的に且つ最後まで押し出すことが出来る、新規な経管栄養注入装置を提供すること。
【解決手段】経管栄養注入装置において、以下の(i)〜(vii)の構成を有する。(i)栄養剤バッグ34の装着部30に対して圧力を及ぼす加圧空気室18を備えたバッグ加圧手段16。(ii)加圧空気室18に加圧空気を供給する電動ポンプ74。(iii)加圧空気室18から加圧空気を排出する排気弁78。(iv)電動ポンプ74と排気弁78を加圧空気室18に接続する空気圧管路26。(v)電動ポンプ74の作動をON−OFFするポンプスイッチ94。(vi)加圧空気室18の圧力を計測する圧力センサ76。(vii)加圧空気室18の圧力に応じてポンプスイッチ94をONとOFFに切り替える加圧制御手段86。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経管栄養法による栄養投与に際して用いられる経管栄養注入装置に係り、特に栄養剤バッグに収容された栄養剤を流出させて患者に注入投与する経管栄養注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食物の経口摂取は困難だが消化器官の機能は保たれている患者に対して栄養等を投与する医療行為の一つとして、PEG栄養療法等の経管栄養法(経腸栄養法ともいう)がある。経管栄養法は、鼻腔や口腔を通じて或いは胃壁に形成した瘻孔を通じて体外からチューブを挿入し、かかるチューブを通じて体外から栄養剤等を体内に注入することによって行なわれる。
【0003】
ところで、経管栄養法で用いられる栄養剤は、胃から食道への逆流や下痢等の問題を回避するためにゲル状や半固形状のものが採用されており、ラミネートフィルム製の袋状容器に充填された栄養剤バッグとして提供されている。そして、使用時には、開封した口部にチューブを接続した後、栄養剤バッグを手で圧迫することにより押し出した栄養剤を、チューブを通じて体内に注入していた。
【0004】
ところが、栄養剤バッグを手で圧迫して体内注入を行なうためには、数十分以上の長時間に亘って介護者等が栄養剤バッグを手で圧迫し続けなければならず、その労力負担が極めて大きかった。また、栄養剤バッグの全体を人手で圧迫することが難しいことから、残量が少なくなる程に作業が難しくなると共に、栄養剤バッグ内に栄養剤が残留し易いという問題もあった。
【0005】
なお、特許文献1(特開2007−29562号公報)には、栄養剤バッグを圧迫するエアーバッグを設け、注入開始時にエアーバッグの圧力を所定レベルまで高めておくことにより、栄養剤バッグを最後まで圧迫し続けるようにした押し出し装置も提案されている。しかし、この押し出し装置では、患者の体内への栄養剤の注入流量を調節することが難しかった。特に、栄養剤バッグから栄養剤が押し出されるにつれて、栄養剤バッグに及ぼされるエアーバッグの圧力が低下することから、患者の体内への栄養剤注入流量を安定化させることが困難であると共に、栄養剤バッグから栄養剤を完全に出し切ることも難しかったのである。しかも、栄養剤の注入経路やエアーバッグの圧力領域に漏れ等の不具合が発生した場合に、その不具合の発見が難しく、作動状態の良否の判定及び確認や早期対応も困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−29562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、栄養剤バッグからの栄養剤の押し出しを少ない作業時間及び労力で効率的に行うことが出来ると共に、栄養剤バッグを適切な圧力で圧迫することで栄養剤を安定した流量で継続的に且つ最後まで押し出すことが出来る、新規な経管栄養注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、経管栄養注入装置において、栄養剤バッグの装着部に対して圧力を及ぼす加圧空気室を備えたバッグ加圧手段と、該バッグ加圧手段の前記加圧空気室に加圧空気を供給する電動ポンプと、前記バッグ加圧手段の前記加圧空気室から加圧空気を排出する排気弁と、それら電動ポンプと排気弁を前記バッグ加圧手段の前記加圧空気室に接続する空気圧管路と、前記電動ポンプの作動をON−OFFするポンプスイッチと、前記加圧空気室の圧力を計測する圧力センサと、該圧力センサによって計測された前記加圧空気室の圧力が予め設定された目標上限値に達した場合に前記ポンプスイッチをOFFする一方、該加圧空気室の圧力が予め設定された目標下限値に達した場合に該ポンプスイッチをONする加圧制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】
第1の態様によれば、加圧空気室の圧力が一定の範囲に保持されることから、栄養剤の栄養剤バッグから患者の体内への注入流量を安定化させることが出来ると共に、栄養剤バッグ内に栄養剤が残留するのを防いで略全量を注入することが出来る。しかも、加圧空気室の圧力が、圧力センサによる加圧空気室の圧力の計測値に基づいて加圧制御手段で自動的に調節されることから、圧力の調節作業に時間や労力を消費する必要も無い。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の経管栄養注入装置において、前記電動ポンプの加圧作動時に経過時間を計測する加圧計時手段を備えていると共に、前記ポンプスイッチのON状態で、前記圧力センサと該加圧計時手段との各計測値に基づいて得られた前記加圧空気室の圧力上昇速度が予め設定された下限速度よりも小さい場合に第1の異常信号を出力する第1の異常検出手段を設けたものである。
【0011】
第2の態様によれば、加圧空気室の圧力上昇速度を圧力上昇速度の下限値(下限速度)と比較判定することにより、空気圧管路や加圧空気室における空気の漏れ等を検出することが出来る。しかも、第1の異常信号を利用することで、電動ポンプや圧力センサ,加圧制御手段等を自動的に停止させたり、使用者に異常を通知することも可能となる。このように、従来では把握することが困難であった作動状態の良否を容易に判定し、確認することが出来て、不具合の発生時に迅速且つ的確に対応することが可能となる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の経管栄養注入装置において、前記第1の異常信号の入力によって警告を発する第1の異常通知手段を設けたものである。
【0013】
第3の態様によれば、音や光,振動等の警告を発する第1の異常通知手段を設けることにより、使用者が経管栄養注入装置の作動状態を容易に把握することが出来る。また、第1の異常通知手段が、経管栄養注入装置から離れたナースステーションや医療関係者のPHS等の端末に異常信号を送信するようになっていれば、経管栄養注入装置の使用場所から離れていても、作動状態の良否を把握することが可能となる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか一態様に記載の経管栄養注入装置において、前記電動ポンプの停止時に経過時間を計測する停止計時手段を備えていると共に、前記ポンプスイッチのOFF状態で、前記圧力センサと該停止計時手段との各計測値に基づいて得られた前記加圧空気室の圧力下降速度が予め設定された上限速度よりも大きい場合に第2の異常信号を出力する第2の異常信号検出手段を設けたものである。
【0015】
第4の態様によれば、加圧空気室の圧力下降速度を圧力下降速度の上限値(上限速度)と比較判定することにより、空気圧管路や加圧空気室における空気の漏れ等を検出することが出来る。しかも、第2の異常信号を利用することで、電動ポンプや圧力センサ,加圧制御手段等を自動的に停止させたり、使用者に異常を通知することも可能となる。このように、従来では把握することが困難であった作動状態の良否を容易に判定し、確認することが出来て、不具合の発生時に迅速且つ的確に対応することが可能となる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載の経管栄養注入装置において、前記第2の異常信号の入力によって警告を発する第2の異常通知手段を設けたものである。
【0017】
第5の態様によれば、第3の態様と同様に、第2の異常通知手段を設けることによって使用者が経管栄養注入装置の作動状態を容易に把握することが出来る。また、第1の異常通知手段と同様に、経管栄養注入装置の使用場所から離れた場所で作動状態の良否を把握することも可能となり得る。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか一態様に記載の経管栄養注入装置において、前記電動ポンプの停止時に経過時間を計測する停止計時手段を備えていると共に、前記ポンプスイッチのOFF状態で、前記圧力センサと該停止計時手段との各計測値に基づいて得られた前記加圧空気室の圧力下降速度が予め設定された下限速度よりも小さい場合に終了信号を出力する終了検出手段を設けたものである。
【0019】
第6の態様によれば、加圧空気室の圧力下降速度を圧力下降速度の下限値(下限速度)と比較することにより、栄養剤の注入が完了しているか否かを自動的に判定することが出来る。しかも、終了検出手段が出力する終了信号を利用することで、ポンプスイッチをOFF状態に保持して加圧の再開を中止したり、使用者に終了を通知することも可能となる。
【0020】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の経管栄養注入装置において、前記終了信号の入力によって警告を発する終了通知手段を設けたものである。
【0021】
第7の態様によれば、音や光,振動等の警告を発する終了通知手段を設けることにより、経管栄養注入装置による栄養剤の注入が完了したか否かを容易に把握することが出来る。また、第1,第2の異常通知手段と同様に、経管栄養注入装置の使用場所から離れた場所で注入の完了を把握することも可能となり得る。
【0022】
本発明の第8の態様は、第1〜第7の何れか一態様に記載の経管栄養注入装置において、前記電動ポンプの加圧作動時に経過時間を計測する加圧計時手段と、該電動ポンプの停止時に経過時間を計測する停止計時手段とを備えていると共に、該加圧計時手段による計測値と該停止計時手段による計測値との合計値を表示する経過時間表示手段を設けたものである。
【0023】
第8の態様によれば、栄養剤注入時間の総計を表示することにより、作業完了までの残り時間に見当をつけたり、栄養剤の減り具合と経過時間の比較によって作動状態の良否を把握することが出来て、利便性の向上が図られる。特に、栄養剤を体内に注入する経路となる瘻管の直径や長さ等に応じた注入終了予定時間を予め表などにまとめて準備しておくことにより、使用者が終了予定時間を把握できて、効率的な医療活動を実現することが出来る。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、電動ポンプの作動状態と停止状態が、圧力センサの計測結果に基づいて加圧制御手段で自動的に制御されるようになっていることにより、栄養剤の注入時において加圧空気室の圧力が目標上限値と目標下限値の間に保持されて、栄養剤注入流量の安定化が実現されると共に、栄養剤の略全量を栄養剤バッグから出し切ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態としての経管栄養注入装置を示す斜視図。
【図2】図1の経管栄養注入装置を構成するバッグ加圧手段の正面図。
【図3】図2のIII−III断面図。
【図4】図2のIV−IV断面図。
【図5】図1の経管栄養注入装置を構成する注入制御手段の斜視図。
【図6】図5の注入制御手段のブロック図。
【図7】図5の注入制御手段の圧力制御方法を説明するフローチャート。
【図8】図2のバッグ加圧手段における加圧空気室の圧力変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1には、本発明の一実施形態としての経管栄養注入装置10が示されている。経管栄養注入装置10は、加圧部12と制御部14を有している。
【0028】
加圧部12は、図2〜4に示されているように、バッグ加圧手段としてのエアーバッグ16を含んで構成されている。エアーバッグ16は、内部に加圧空気室18を備えた袋状とされており、少なくとも一部が可撓性を有する材料で形成されている。本実施形態では、エアーバッグ16が、可撓性を有する合成樹脂材料やゴム材料等で形成された伸縮面20と、伸縮面20に比べて変形量を抑えられた圧力保持面22とを、重ね合わせると共に、それら伸縮面20と圧力保持面22の外周縁部を全周に亘って接着や高周波溶着等で固着した構造とされている。これにより、加圧空気室18の壁部の一部が伸縮面20で形成されて、充分な可撓性を有している。なお、伸縮面20の形成材料は特に限定されるものではないが、ポリ塩化ビニルフィルムやポリエステルフィルム等の合成樹脂製フィルム,ゴム弾性体で形成された可撓性膜等が、単体で或いは積層されて使用される。また、圧力保持面22は、それ自体が伸縮面20よりも変形し難い材料で形成されていても良いし、伸縮面20と同様の材料で形成されて、別体の非伸縮性のネット等で変形を制限されるようになっていても良い。
【0029】
また、圧力保持面22には、給排気孔24が貫通形成されている。給排気孔24は小径の円形孔であって、開口周縁部に環状の接続金具が取り付けられている。また、給排気孔24には、空気圧管路26の一方の端部が接続されており、空気圧管路26を通じて加圧空気室18が後述する電動ポンプ74に接続されている。
【0030】
また、エアーバッグ16の伸縮面20には、保持体28が重ね合わされている。保持体28は、シート状或いは網状とされており、伸縮変形を生じ難くなっている。また、保持体28は、長手方向(図2中の左右方向)での寸法が、伸縮面20及び圧力保持面22の同方向での寸法よりも小さくなっており、一方の端部が伸縮面20よりも長手方向内側に位置していると共に、他方の端部が長手方向で伸縮面20の他方の端部に重ね合わされている。そして、保持体28は、短手方向(図2中の上下方向)の両端部が、何れも伸縮面20の短手方向両端部に固着されることにより、エアーバッグ16の伸縮面20側表面に配設されている。また、保持体28と伸縮面20の間には、長手方向両側に開口部を有する装着部としての収容空間30が形成されており、後述する加圧空気室18の圧力上昇時には、伸縮面20によって収容空間30が圧迫されるようになっている。
【0031】
また、エアーバッグ16の短手方向一方の端部には、吊下紐32が取り付けられている。吊下紐32は、その両端部が伸縮面20及び圧力保持面22の長手方向各一方の端部付近に固着されていると共に、中央部分に充分な弛みをもたされている。
【0032】
この収容空間30には、栄養剤バッグ34が収容されるようになっている。栄養剤バッグ34は、ポリエチレンフィルム等の合成樹脂フィルムにアルミニウム箔を蒸着等によって積層させたラミネートフィルムで形成されており、栄養剤が封入されている。また、栄養剤バッグ34の口部を開封した後で、手等によって圧迫することにより栄養剤を口部から押し出して取り出すことが出来る。また、栄養剤バッグ34の口部には、チューブ(瘻管)35の一方の端部が固定されている。このチューブ35の他方の端部は、瘻孔を通じて患者の体内に挿し込まれており、チューブ35を通じて栄養剤バッグ34に充填された栄養剤が体内に注入されるようになっている。
【0033】
そして、加圧部12は、栄養剤バッグ34が収容空間30に挿し込まれた状態で懸架ポール36によって支持される。懸架ポール36は、金属等で形成されており、図示しない脚部によって自立可能とされている。また、懸架ポール36の上端部分には、フック38が突出形成されており、このフック38にエアーバッグ16の吊下紐32が引っ掛けられることによって、加圧部12が懸架ポール36で吊り下げ支持されるようになっている。
【0034】
また、エアーバッグ16は、空気圧管路26によって制御部14に接続されている。制御部14は、図5に示されているように、上面が傾斜面で構成されたボックス形状を有しており、傾斜面に操作パネル40が設けられている。操作パネル40は、液晶ディスプレイ42と、操作キー44と、LEDランプ46とを含んでいる。
【0035】
液晶ディスプレイ42は、圧力値を表示する圧力表示部48を有している。圧力表示部48は、二桁の数字を表示できるようになっている。また、圧力表示部48の上方には、作動開始からの総経過時間や加圧時間,減圧時間等を表示する経過時間表示手段としての時間表示部50が設けられている。時間表示部50は、分と秒をそれぞれ二桁の数字でデジタル表示することが出来るようになっている。また、時間表示部50の上方には、電池残量を表示する電池残量表示部52が設けられている。電池残量表示部52では、電池の形状を有する外枠内に三分割されたゲージを電池残量に応じて表示することで、電池残量を視覚的に確認できるようになっている。また、電池残量表示部52の隣には、アダプタ接続表示部54が設けられている。アダプタ接続表示部54では、ACアダプタ56からの給電時にプラグの図柄を表示することで、外部からの電源供給を視覚的に確認できるようになっている。
【0036】
操作キー44は、電源スイッチ58,圧力設定スイッチ60,上下の選択スイッチ62a,62b,開始スイッチ64,停止/消音スイッチ66を含んでいる。本実施形態では、電源スイッチ58と上下の選択スイッチ62a,62bが図5中で液晶ディスプレイ42の右方に配置されていると共に、圧力設定スイッチ60が図5中で液晶ディスプレイ42の左方に配置されている。更に、図5中における液晶ディスプレイ42の下方には、開始スイッチ64と停止/消音スイッチ66が配置されている。
【0037】
電源スイッチ58は、制御部14の電源のオンとオフを切り替えるスイッチであって、誤作動を防ぐために一定時間押しつづけることで電源がオンとオフに切り替えられるようになっていることが望ましい。圧力設定スイッチ60は、後述する圧力の目標上限値,目標下限値,上昇下限速度,下降上限速度,下降下限速度をそれぞれ設定する設定モードに切り替えるスイッチである。上下の選択スイッチ62a,62bは、設定モードにおいて選択項目や数値を変更するスイッチである。開始スイッチ64は、後述する電動ポンプ74を始動してエアーバッグ16の加圧を開始するスイッチである。停止/消音スイッチ66は、電動ポンプ74を停止してエアーバッグ16の加圧を停止すると共に、後述するブザー82を停止して消音するスイッチである。
【0038】
LEDランプ46は、電源スイッチ58の上方に設けられた加圧ランプ68と、開始スイッチ64と停止/消音スイッチ66の間に設けられた停止・終了ランプ70とで構成されている。加圧ランプ68は、加圧モード時に点灯するようになっている。一方、停止・終了ランプ70は、制御部14の電源がオンで、且つ後述する加圧モード以外の場合に点灯するようになっている。要するに、制御部14の電源がオンの状態では、加圧ランプ68と停止・終了ランプ70の何れか一方が点灯して、加圧モードであるか否かが表示されるようになっている。
【0039】
また、制御部14は、図6に示された外部入出力手段72を備えている。更に、外部入出力手段72は、電動ポンプ74,圧力センサ76,排気弁としての電磁弁78,電池80,ブザー82を含んで構成されている。電動ポンプ74は、一般的なエアーポンプであって、空気圧管路26によってエアーバッグ16の加圧空気室18に連通されている。そして、電動ポンプ74は、外部からの通電によって、空気圧管路26を通じてエアーバッグ16に空気を送り込むようになっていると共に、後述するポンプスイッチ94によって作動のON−OFFを切り替えられるようになっている。圧力センサ76は、圧電素子等の一般的に知られるものであって、エアーバッグ16内の空気圧を連続的或いは断続的に計測するセンサである。電磁弁78は、通電によって磁力を利用して開閉作動される弁体であって、非通電時に開作動状態とされてエアーバッグ16における加圧空気室18内の加圧空気が空気圧管路26と電磁弁78を通じて外部に排出されるようになっている。電池80は、マンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池,ニッケル−水素乾電池等の一般的な電池であって、制御部14に電源を供給するようになっている。ブザー82は、電動ポンプ74や圧力センサ76の故障,空気圧管路26の漏れ,電池80の残量が少ない等のエラーを検出した際に、警告音によって使用者にエラーの発生を知らせるものである。
【0040】
外部入出力手段72は、図6に示されているように、入出力インターフェース84を介して加圧制御手段としてのコンピュータシステム86と電気的に接続されており、コンピュータシステム86によってコントロールされるようになっている。
【0041】
入出力インターフェース84は、操作キー44とLEDランプ46と電磁弁78をコンピュータシステム86に接続するパラレルインターフェース88と、ブザー82をコンピュータシステム86に接続して警報の発音を制御する音源回路90と、液晶ディスプレイ42をコンピュータシステム86に接続して表示を制御するLCDコントローラ92と、ACアダプタ56及び電池80からコンピュータシステム86への電源供給を制御する電源回路93と、電動ポンプ74をコンピュータシステム86に接続して作動のON−OFFを切り替えるポンプスイッチ94と、圧力センサ76をコンピュータシステム86に接続して計測結果の信号を送信するセンサ信号処理部96とを、備えている。
【0042】
コンピュータシステム86は、中央演算装置(CPU)98を備えており、メモリ(RAM)100とメモリ(ROM)102とを備えた一般的なものであって、RAM100に書き込まれたデータに基づいてROM102のデータを読み込んで、入出力インターフェース84を介して外部入出力手段72を制御するようになっている。なお、コンピュータシステム86は、加圧計時手段及び停止計時手段としてのタイマ/カウンタ104を備えている。
【0043】
このような構造の制御部14は、空気圧管路26の一方の端部が電動ポンプ74に取り付けられると共に、他方の端部がエアーバッグ16に取り付けられることにより、加圧部12に取り付けられている。これにより、加圧部12と制御部14を備えた経管栄養注入装置10が形成されている。
【0044】
この経管栄養注入装置10では、電動ポンプ74から空気圧管路26を通じて加圧空気がエアーバッグ16の加圧空気室18に送り込まれることにより、エアーバッグ16の伸縮面20が膨出変形して収容空間30が変形し、収容空間30に挿入配置された栄養剤バッグ34が圧迫されるようになっている。これにより、栄養剤バッグ34に収容された栄養剤が、口部を通じて押し出されて、チューブ35を通じて患者の体内に注入されるようになっている。
【0045】
次に、経管栄養注入装置10の操作と制御について説明する。
【0046】
先ず、制御部14の電源スイッチ58を押すと、制御部14にACアダプタ56及び電池80から電源が供給されて、制御部14が停止モードで起動する。停止モードでは、停止・終了ランプ70が点灯すると共に、液晶ディスプレイ42にエアーバッグ16内の現在の圧力値と、初期時間(00:00)と、電池80の残量と、ACアダプタ56の接続表示(ACアダプタ56の接続時のみ)が表示される。
【0047】
また、圧力設定スイッチ60を押すと、停止モードから設定モードに切り替わる。設定モードでは、液晶ディスプレイ42の圧力表示部48の表示が、圧力の目標上下限値或いは加圧速度又は減圧速度の上下限値に切り替わる。なお、設定モードでは、圧力表示部48が点滅表示される。
【0048】
そして、設定モードで上下の選択スイッチ62a,62bを押すことにより、圧力の目標上下限値又は加圧速度及び減圧速度の上下限値を変更設定できる。設定完了後は、操作キー44からの入力が無い状態で所定時間を経過することにより、停止モードに復帰する。
【0049】
また、停止モード及び設定モードにおいて、開始スイッチ64を押すことにより、加圧モードに移行する。加圧モードでは、圧力センサ76の計測結果と圧力の目標上限値及び目標下限値を利用して電動ポンプ74が自動制御されることにより、エアーバッグ16における加圧空気室18の圧力が安定して高圧力状態に保持されるようになっている。なお、加圧モードにおいて、圧力設定スイッチ60を押すことにより、圧力の目標上限値と目標下限値,圧力上昇及び下降の上限速度と下限速度を液晶ディスプレイ42に表示させて確認することも出来る。
【0050】
また、栄養剤の注入完了が後述する圧力の下降速度に基づいて検出されると、電動ポンプ74が自動的に停止されると共に、電磁弁78への通電が停止されて、電磁弁78が開放されることにより、エアーバッグ16内の空気が排気される。また、加圧ランプ68が消灯すると共に、停止・終了ランプ70が点灯する。更に、ブザー82によって終了通知音が発せられる。以上をもって、加圧モードから停止モードへの移行が完了する。なお、停止モードへの移行後に停止/消音スイッチ66を押すことにより、ブザー82の終了通知音を止めることが出来る。
【0051】
さらに、加圧モードにおいて、停止/消音スイッチ66を押すことによって、加圧モードを強制的に終了させることも出来る。この場合には、加圧ランプ68の消灯及び停止・終了ランプ70の点灯と、電動ポンプ74の停止及び電磁弁78による排気が行われるが、ブザー82による警告音の発音はなされない。
【0052】
また、停止,設定,加圧の各モードにおいて、電池80の残量が少ないことが検出されると、液晶ディスプレイ42にエラーが表示されると共に、ブザー82によるエラー警告音が発せられる。なお、液晶ディスプレイ42のエラー表示は、例えば、圧力表示部48に「E」を表示することで実現される。また、エラーによる警報は、停止/消音スイッチ66を押すことによって停止させることが出来る。
【0053】
また、停止モードにおいて、操作キー44からの入力がないまま所定時間が経過すると、ブザー82の警告音によって操作忘れが警告される。これにより、電源の消し忘れによる無駄な電力消費を防ぐことが出来る。警告音は、停止/消音スイッチ66を押すことで停止させることが出来る。なお、警告音を鳴らす以外にも、自動的に電源がオフになるように設定されていても良く、省電力化がより有利に実現され得る。
【0054】
最後に、全ての状態において、電源スイッチ58を押すことにより、制御部14の電源をオフに切り替えることが出来る。これにより、コンピュータシステム86のRAM100やタイマ/カウンタ104に記憶されているデータが全てリセットされると共に、液晶ディスプレイ42の表示やブザー82の警報,LEDランプ46の点灯がすべて停止される。なお、再度使用する場合には、電源スイッチ58をオンにすれば良い。
【0055】
ここにおいて、加圧モードでは、電動ポンプ74が自動的に制御されて、略一定の圧力で栄養剤を栄養剤バッグ34から押し出すようになっている。以下に、加圧モードにおける圧力制御方法を、図7を参照しながら詳説する。
【0056】
先ず、加圧モードに移行することによって、ステップ(以下、S)1において、電動ポンプ74が作動される。これにより、空気圧管路26を通じてエアーバッグ16の加圧空気室18に加圧空気が送り込まれて、加圧空気室18の圧力が上昇する。
【0057】
また、S2において、電動ポンプ74の作動と略同時に加圧ランプ68が点灯する。これにより、使用者は、制御部14の加圧モードへの移行を目視で確認できる。
【0058】
また、S3において、電動ポンプ74の加圧作動時間がコンピュータシステム86のタイマ/カウンタ104によって計時されると共に、計測された加圧作動時間がタイマ/カウンタ104によって記憶される。なお、本実施形態では、加圧作動時間として、所定の時間が計時されるようになっているが、加圧開始から加圧完了までの時間が計時されるようになっていても良い。要するに、後述するS4において、単位時間当たりの圧力上昇値(圧力上昇速度)を算出できれば良い。また、タイマ/カウンタ104では、加圧作動時間とは別に、加圧モードに移行した時点からの経過時間が計時されて、時間表示部50に表示される。
【0059】
また、S4において、圧力上昇速度(v1)を中央演算装置98で演算する。圧力上昇速度は、S3における計時開始時点の圧力と計時終了時点の圧力との差を、S3において計時された加圧作動時間で除することにより、算出される。
【0060】
次に、S5において、S4で算出された圧力上昇速度(v1)が圧力上昇の下限速度(u1)以上(v1≧u1)であるか否かを、コンピュータシステム86が判定することにより、空気漏れを検査する。
【0061】
S5における判定結果がv1<u1の場合には、空気漏れ等の不具合が発生している可能性があることから、制御部14を自動的に停止して、停止モードに移行する。即ち、コンピュータシステム86から入出力インターフェース84に異常信号が出力されることにより、S6において、ポンプスイッチ94がOFFにされて、電動ポンプ74が停止される。更に、S7において、LCDコントローラ92が液晶ディスプレイ42にエラーを表示すると共に、S8において、音源回路90がブザー82による警告音を発する。以上によって、エラーによる停止モードへの移行が完了する。
【0062】
一方、S5における判定結果がv1≧u1の場合には、空気漏れではないと判断されることから、加圧モードを続行する。即ち、S9において、加圧空気室18の圧力(P)が圧力の目標上限値(Pmax)以上(P≧Pmax)であるか否かを判定することにより、電動ポンプ74の作動状態を決定する。
【0063】
すなわち、S9における判定結果がP<Pmaxの場合には、所定時間の経過後にS3以下の処理を再度実行する。この際、電動ポンプ74は、作動状態に保持されることから、エアーバッグ16内の空気圧は徐々に上昇して最終的にPmaxに到達する。
【0064】
一方、S9における判定結果がP≧Pmaxの場合には、S10において、コンピュータシステム86がポンプスイッチ94に停止信号を出力して、電動ポンプ74を停止する。これにより、エアーバッグ16内の圧力は徐々に低下する。蓋し、栄養剤がエアーバッグ16の圧力によって徐々に押し出されて、栄養剤バッグ34の容量が減少するのに伴って、エアーバッグ16の圧力が低下していくためである。
【0065】
また、S11において、電動ポンプ74の停止時間がコンピュータシステム86のタイマ/カウンタ104によって計時されると共に、計時された停止時間がタイマ/カウンタ104によって記憶される。停止時間としては、加圧作動時間と同様に、所定時間を計時するが、電動ポンプ74の停止から作動までの時間を計時しても良く、後述するS12において単位時間当たりの圧力下降値を算出できれば良い。
【0066】
また、S12において、圧力下降速度(v2)を中央演算装置98で演算する。圧力下降速度は、S11における計時開始時点の圧力と計時終了時点の圧力との差を、S11において計時された停止時間で除することにより、算出される。
【0067】
次に、S13において、S11で算出された圧力下降速度(v2)が圧力下降の上限速度(u2)以下(v2≦u2)であるか否かを、コンピュータシステム86が判定することにより、空気漏れが検査される。
【0068】
S13における判定結果がv2>u2の場合には、空気漏れの可能性があることから、S6〜S8の処理によって制御部14が自動的に停止されて、エラーによる停止モードへ移行する。なお、S7,S8から明らかなように、液晶ディスプレイ42とブザー82によって第1,第2の異常通知手段が構成されている。
【0069】
一方、S13における判定結果がv2≦u2の場合には、空気漏れではないと判断されて、加圧モードを続行する。即ち、S14において、加圧空気室18の圧力(P)が圧力の目標下限値(Pmin)以下(P≦Pmin)であるか否かを判定することにより、電動ポンプ74の作動状態を決定する。
【0070】
S14における判定結果がP>Pminの場合には、S11以下の処理を再度実行する。これによれば、電動ポンプ74が停止状態に保持されることから、圧力の低下が持続されて、加圧空気室18の圧力が最終的にPminに到達する。
【0071】
一方、S14における判定結果がP≦Pminの場合には、S15において、圧力下降速度(v2)が圧力下降の下限速度(u3)よりも小さい(v2<u3)か否かを、コンピュータシステム86が判定することにより、終了判定を行う。
【0072】
S15における判定結果がv2≧u3の場合には、S16において、コンピュータシステム86がポンプスイッチ94に起動信号を出力して電動ポンプ74を加圧作動させた後、S3以下の処理を再度実行する。これにより、エアーバッグ16内の圧力が目標下限値から上昇する。かかるS3〜S16の処理を繰り返すことにより、空気漏れ等のエラーを検査しながら、エアーバッグ16内の圧力を目標上限値と目標下限値の間で自動的に維持することが出来る。
【0073】
一方、S15における判定結果がv2<u3の場合には、コンピュータシステム86から入出力インターフェース84に終了信号が出力されて、S17において、加圧ランプ68が消灯されると共に、終了通知手段である停止・終了ランプ70が点灯される。これをもって、自動的に加圧モードを終了して停止モードに移行する。また、S17と略同時に、電磁弁78が開放状態となり、加圧空気室18の圧力を低下させる。なお、コンピュータシステム86によって、第1,第2の異常検出手段と終了検出手段が構成されている。
【0074】
以上のような制御方法は、図8に示されたグラフによって理解を深めることが出来る。即ち、図8には、経管栄養注入装置10における加圧空気室18の圧力の経時変化が、折れ線グラフで示されている。なお、図8中の二点鎖線は、何れも圧力の変化速度を表している。
【0075】
先ず、加圧空気室18の圧力が初期状態から圧力の目標上限値(Pmax)に到達するまでの時間領域:Δt1では、電動ポンプ74が作動状態とされて、加圧空気室18の圧力が徐々に上昇する。このとき、正常な作動状態では、グラフの傾きである圧力の上昇速度(v1)が、圧力上昇の上限速度(u1)よりも大きくなっている。
【0076】
加圧空気室18の圧力(P)が目標上限値(Pmax)に到達すると、圧力(P
)が目標上限値(Pmax)から目標下限値(Pmin)に到達するまでの時間領域:Δt2において、電動ポンプ74が停止状態となって、加圧空気室18の圧力が徐々に下降する。このとき、栄養剤注入中の正常な作動状態では、グラフの傾きである圧力の下降速度(v2)が、圧力下降の上限速度(u2)よりも小さくなっていると共に、圧力下降の下限速度(u3)よりも大きくなっている。
【0077】
加圧空気室18の圧力(P)が目標下限値(Pmin)に到達すると、圧力(P)が目標下限値(Pmin)から目標上限値(Pmax)に到達するまでの時間領域:Δt3において、再び電動ポンプ74が作動状態となって、加圧空気室18の圧力が徐々に上昇する。この際にも、正常な作動状態では、グラフの傾きである圧力の上昇速度(v1)が、圧力上昇の上限速度(u1)よりも大きくなっている。
【0078】
そして、時間領域:Δt2に示された減圧状態と、時間領域:Δt3に示された加圧状態を繰り返すことによって、栄養剤の注入中には、加圧空気室18の圧力が目標上限値(Pmax)と目標下限値(Pmin)の間に保持されて、栄養剤が安定した流量で患者の体内に注入される。
【0079】
また、栄養剤の注入が完了して、栄養剤バッグ34が空になった後、減圧状態に移行した時間領域:Δt4においては、栄養剤の流出による栄養剤バッグ34の変形がストップすることから、圧力の下降速度が注入中に比べて低減される(v2’)。その結果、圧力の下降速度(v2’)が圧力下降の下限速度(u3)よりも小さくなって、栄養剤の注入終了が検出される。これにより、加圧モードから停止モードへの移行がなされると共に、使用者に終了が通知される。
【0080】
なお、図8では、圧力の制御方法を分かり易く説明するために、圧力の増減速度を略一定に単純化したモデルを示したが、実際には、圧力の増減速度は、加圧空気室18の圧力変化やエアーバッグ16の変形許容量等に応じて、以下の如く経時的に変化することが予想される。即ち、加圧開始直後には、エアーバッグ16の変形が容易に許容されることから、加圧空気室18の圧力の上昇速度が小さい。その後、エアーバッグ16の変形が進行するに従って、加圧空気室18の圧力上昇速度が次第に増大する。また、加圧空気室18の圧力が目標上限値に到達した後の減圧状態では、加圧空気室18の圧力低下に伴って圧力の下降速度が次第に低下する。
【0081】
このように圧力の上昇速度及び下降速度が経時的に変化する場合には、例えば、圧力の上昇速度又は下降速度の平均値や最大値又は最小値を、圧力の変化速度の上限値又は下限値と比較することにより、空気漏れ等の異常発生や注入の終了を簡易に検出することが出来る。また、例えば、圧力上昇又は下降の上限値及び下限値が、加圧時間又は減圧時間の経過に応じて自動的に変更されるようにすることで、異常や注入完了を高精度に検出することも可能である。
【0082】
このような自動的な圧力制御手段を備えた経管栄養注入装置10によれば、栄養剤バッグ34を略一定の圧力で持続的に圧迫することにより、栄養剤を安定した流量で患者の体内に注入することが出来る。
【0083】
しかも、電動ポンプ74の作動状態が圧力センサ76で計測された加圧空気室18の圧力に応じて自動的に制御されて、加圧空気室18の圧力が栄養剤の注入完了まで略一定に維持される。それ故、栄養剤の略全量を栄養剤バッグ34から出し切ることが出来て、最終的に手で押し出す等といった追加の作業をすることなく、所定分量の栄養剤を注入することが出来る。
【0084】
また、電動ポンプ74の作動時間と停止時間をそれぞれ計時して、圧力の上昇速度及び下降速度を算出することにより、空気圧管路26における空気漏れを検出するようになっている。それ故、従来では把握することが困難であった注入状態(加圧状態)の良否を容易に把握することが可能となって、不具合の発生時に速やかに対処することが出来る。特に本実施形態では、電動ポンプ74の作動時と停止時の何れにおいても空気漏れを検出するようになっている。それ故、作動開始前に生じた配管の不具合だけでなく、作動中に空気漏れが生じた場合にも速やかに検出することが可能となる。
【0085】
さらに、空気漏れ等の不具合発生時に加圧モードから停止モードへ自動的に移行するようになっていることから、不良な作動状態での使用を可及的に回避することが出来る。しかも、異常の発生がブザー82の警報によって使用者に通知されることから、医療関係者が患者の傍にいない場合にも異常の発生を把握することが出来る。なお、液晶ディスプレイ42の表示によって不具合を確認することも可能である。
【0086】
また、圧力の下降速度を利用して、栄養剤の注入完了が自動的に検出されると共に、自動的に停止モードに移行するようになっている。それ故、医療関係者が注入完了時に直ちに制御部14を操作する必要が無いと共に、電動ポンプ74や制御部14の無駄な作動を防いで電力消費を抑えることも出来る。
【0087】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、空気漏れ等の異常発生時や栄養剤の注入完了時等にエラーや終了を通知する手段としては、ブザーによる警報や液晶ディスプレイへの表示,LEDランプの点灯及び消灯の他、PHSやポケットベル,コンピュータ等の端末に電子メール等の通知を送信するようになっていても良い。
【0088】
また、空気漏れ等の異常を発見する異常検出手段としては、圧力の上昇速度及び下降速度を利用するものに限定されない。例えば、電動ポンプ74の加圧作動時の経過時間(加圧空気室18の圧力が目標上限値に到達するまでの加圧時間)が予め設定された上限時間よりも大きい場合に異常信号を出力する異常検出手段を設けても良い。また、例えば、電動ポンプ74の停止時の経過時間(加圧空気室18の圧力が目標下限値に到達するまでの減圧時間)が予め設定された下限時間よりも小さい場合に異常信号を出力する異常検出手段を設けても良い。なお、終了検出手段についても、電動ポンプ74の停止時の経過時間が、予め設定された上限時間よりも大きい場合に、終了信号を出力するようになっていても良い。
【0089】
このように加減圧時間の上下限値を異常検出(終了検出)の閾値とする場合には、この加減圧時間の閾値が、圧力の目標上限値と目標下限値の少なくとも一方に応じて設定されることが望ましい。即ち、圧力の目標上限値と目標下限値の少なくとも一方が変更されると、加減圧速度が略一定の状態下では、加圧空気室18の圧力が目標上限値又は目標下限値に到達するまでに要する時間も変化する。具体的には、例えば、圧力の目標上限値が2倍に増大すると、加圧空気室18の圧力が目標上限値に到達するまでに必要な時間も略2倍になる。この際に、加減圧時間の閾値が変更されていないと、正常な作動状態にもかかわらず、異常が検出されて加圧が中断されることになる。そこで、圧力の目標上限値と目標下限値との少なくとも一方の変更に応じて加減圧時間の閾値を変更することにより、正確な異常及び終了の検出が実現される。特に、加減圧時間の上限値が圧力の目標上限値及び目標下限値に応じて自動的に設定されるようになっていれば、変更忘れによる異常の誤検出を防ぐことが出来る。
【0090】
また、エアーバッグ16は、必ずしも伸縮面20と圧力保持面22を備えていなくても良く、全体が同一の材料で形成されて、加圧空気室18の圧力上昇によって略一様に変形するようになっていても良い。
【符号の説明】
【0091】
10:経管栄養注入装置、16:エアーバッグ(バッグ加圧手段)、18:加圧空気室、26:空気圧管路、30:収容空間(装着部)、34:栄養剤バッグ、50:時間表示部(経過時間表示手段)、70:停止・終了ランプ(終了通知手段)、74:電動ポンプ、76:圧力センサ、78:電磁弁(排気弁)、82:ブザー(第1,第2の異常通知手段)、86:コンピュータシステム(加圧制御手段、第1,第2の異常検出手段、終了検出手段)、94:ポンプスイッチ、104:タイマ/カウンタ(加圧計時手段、停止計時手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養剤バッグの装着部に対して圧力を及ぼす加圧空気室を備えたバッグ加圧手段と、
該バッグ加圧手段の前記加圧空気室に加圧空気を供給する電動ポンプと、
前記バッグ加圧手段の前記加圧空気室から加圧空気を排出する排気弁と、
それら電動ポンプと排気弁を前記バッグ加圧手段の前記加圧空気室に接続する空気圧管路と、
前記電動ポンプの作動をON−OFFするポンプスイッチと、
前記加圧空気室の圧力を計測する圧力センサと、
該圧力センサによって計測された前記加圧空気室の圧力が予め設定された目標上限値に達した場合に前記ポンプスイッチをOFFする一方、該加圧空気室の圧力が予め設定された目標下限値に達した場合に該ポンプスイッチをONする加圧制御手段と、
を含むことを特徴とする経管栄養注入装置。
【請求項2】
前記電動ポンプの加圧作動時に経過時間を計測する加圧計時手段を備えていると共に、前記ポンプスイッチのON状態で、前記圧力センサと該加圧計時手段との各計測値に基づいて得られた前記加圧空気室の圧力上昇速度が予め設定された下限速度よりも小さい場合に第1の異常信号を出力する第1の異常検出手段を設けた請求項1記載の経管栄養注入装置。
【請求項3】
前記第1の異常信号の入力によって異常の発生を通知する第1の異常通知手段を設けた請求項2に記載の経管栄養注入装置。
【請求項4】
前記電動ポンプの停止時に経過時間を計測する停止計時手段を備えていると共に、前記ポンプスイッチのOFF状態で、前記圧力センサと該停止計時手段との各計測値に基づいて得られた前記加圧空気室の圧力下降速度が予め設定された上限速度よりも大きい場合に第2の異常信号を出力する第2の異常信号検出手段を設けた請求項1〜3の何れか1項に記載の経管栄養注入装置。
【請求項5】
前記第2の異常信号の入力によって異常の発生を通知する第2の異常通知手段を設けた請求項4に記載の経管栄養注入装置。
【請求項6】
前記電動ポンプの停止時に経過時間を計測する停止計時手段を備えていると共に、前記ポンプスイッチのOFF状態で、前記圧力センサと該停止計時手段との各計測値に基づいて得られた前記加圧空気室の圧力下降速度が予め設定された下限速度よりも小さい場合に終了信号を出力する終了検出手段を設けた請求項1〜5の何れか1項に記載の経管栄養注入装置。
【請求項7】
前記終了信号の入力によって注入の終了を通知する終了通知手段を設けた請求項6に記載の経管栄養注入装置。
【請求項8】
前記電動ポンプの加圧作動時に経過時間を計測する加圧計時手段と、該電動ポンプの停止時に経過時間を計測する停止計時手段とを備えていると共に、該加圧計時手段による計測値と該停止計時手段による計測値との合計値を表示する経過時間表示手段を設けた請求項1〜7の何れか1項に記載の経管栄養注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−24817(P2011−24817A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174352(P2009−174352)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】