説明

経路維持部材付コルゲートチューブ及びワイヤーハーネス

【課題】より低コストで、電線を覆いつつその経路を一定に維持できるようにすることを目的とする。
【解決手段】経路維持部材付コルゲートチューブCは、コルゲートチューブ20と、経路維持部材30とを備える。コルゲートチューブ20は、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成されている。経路維持部材30は、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された長尺部材であり、コルゲートチューブ20にその長手方向に沿って取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線を覆いつつその経路を一定に維持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1〜4に開示のように、車両等に敷設されるワイヤーハーネスを、屈曲性良好なコルゲートチューブにて覆う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−86022号公報
【特許文献2】特開2000−184551号公報
【特許文献3】特開2002−64917号公報
【特許文献4】特開2006−296166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コルゲートチューブ自体は、屈曲性に優れるもの故、それ自体はワイヤーハーネスの経路を一定に維持する機能を持たない。このため、ワイヤーハーネス或はコルゲートチューブに取付けられたクランプ部材を車両の一定位置に固定することで、ワイヤーハーネスの経路を一定に維持する必要がある。クランプ部材の固定箇所が多くなると、部品コスト増、取付けコスト増等を招く恐れがある。
【0005】
ここで、ワイヤーハーネスの敷設箇所に合わせて3次元形状に形成した樋状の樹脂成型品(プロテクタ)によれば、ワイヤーハーネスを保護しつつその経路を一定に維持することができる。
【0006】
しかしながら、ワイヤーハーネスを保護可能な樹脂成型品を、ワイヤーハーネスの敷設箇所に合わせて3次元形状に形成するためには、その金型形状が複雑化してしまう。このため、製造コストが高くなる。
【0007】
そこで、本発明は、より低コストで、電線を覆いつつその経路を一定に維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブは、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成されたコルゲートチューブと、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された長尺部材であり、前記コルゲートチューブにその長手方向に沿って取付けられた経路維持部材とを備える。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記コルゲートチューブに、その長手方向に沿ってスリットが形成され、前記路維持部材は、前記スリットに配設した状態で前記コルゲートチューブに取付けられる。
【0010】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの両側の端縁部が収容される一対の凹溝部が形成された部分を含む。
【0011】
第4の態様は、第1又は第2の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの外側部分を覆う蓋部と、前記蓋部の幅方向中央部に突出され前記スリット内に配設される突条部とを有する部分を含む。
【0012】
第5の態様は、第1又は第2の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの両側の端縁部が収容される一対の凹溝部が形成された第1の部分と、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの外側部分を覆う蓋部と前記蓋部の幅方向中央部に突出され前記スリット内に配設される突条部とを有する第2の部分とを含み、前記第2の部分は、前記第2の部分よりも急に曲げられている。
【0013】
第6の態様は、第1又は第2の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの両側の端縁部が収容される一対の凹溝部が形成された第1の部分と、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの外側部分を覆う蓋部と前記蓋部の幅方向中央部に突出され前記スリット内に配設される突条部とを有する第2の部分とを含み、前記第1の部分は、前記第2の部分よりも急に曲げられている。
【0014】
第7の態様に係るワイヤーハーネスは、第1〜第6のいずれか1つの態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブと、少なくとも1本の電線を有し、前記経路維持部材付コルゲートチューブ内に挿通されたワイヤーハーネス本体部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、コルゲートチューブによって電線を覆い、また、そのコルゲートチューブに取付けられた経路維持部材によってその経路を一定に維持できる。経路維持部材自体で電線を覆わなくてもよいため、経路維持部材自体を小型かつ単純な形状にすることができる。このため、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された経路維持部材を、比較的低コストで形成することができる。従って、より低コストで、電線を覆いつつその経路を一定に維持できる。
【0016】
第2の態様によると、前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブの前記スリットに取付けられるため、コルゲートチューブと経路維持部材との取付位置関係が安定化し、コルゲートチューブを所期の形状に維持し易い。
【0017】
第3の態様によると、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの両側の端縁部が一対の凹溝部にそれぞれ収容された状態で、経路維持部材がコルゲートチューブに取付けられるため、経路維持部材がコルゲートチューブから外れることが抑制される。
【0018】
第4の態様によると、コルゲートチューブの外周側から突条部をスリット内に配設して、経路維持部材をコルゲートチューブに装着すればよいため、経路維持部材の装着作業を容易に行える。
【0019】
第5の態様によると、比較的急に曲げられる部分で、コルゲートチューブの外周側から突条部をスリット内に配設して、経路維持部材をコルゲートチューブに装着すればよいため、経路維持部材の装着作業を容易に行える。
【0020】
第6の態様によると、急に曲げられる部分で、コルゲートチューブのスリットの両側の端縁部が一対の凹溝に収容され、コルゲートチューブと経路維持部材との合体状態がより確実に維持される。
【0021】
第7の態様に係るワイヤーハーネスによると、コルゲートチューブによってワイヤーハーネス本体部を覆い、また、そのコルゲートチューブに取付けられた経路維持部材によってその経路を一定に維持できる。経路維持部材自体でワイヤーハーネス本体部を覆わなくてもよいため、経路維持部材自体を小型かつ単純な形状にすることができる。このため、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された経路維持部材を、比較的低コストで形成することができる。従って、より低コストで、ワイヤーハーネス本体部を覆いつつその経路を一定に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係るワイヤーハーネスのうちコルゲートチューブの装着部分を示す概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線概略断面図である。
【図3】コルゲートチューブに経路維持部材を取付ける工程を示す説明図である。
【図4】第2実施形態に係るワイヤーハーネスのうちコルゲートチューブの装着部分を示す概略斜視図である。
【図5】図1のV−V線概略断面図である。
【図6】経路維持部材の変形例を示す概略斜視図である。
【図7】経路維持部材の他の変形例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るワイヤーハーネス及び経路維持部材付コルゲートチューブについて説明する。図1はワイヤーハーネス10のうちコルゲートチューブ20の装着部分を示す概略斜視図であり、図2は図1のII−II線概略断面図であり、図3はコルゲートチューブ20に経路維持部材30を取付ける工程を示す説明図である。
【0024】
このワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス本体部12と、コルゲートチューブ20と、経路維持部材30とを備える。
【0025】
ワイヤーハーネス本体部12は、複数の電線が結束された構成とされている。より具体的には、ワイヤーハーネス本体部12は、複数の電線が配設対象となる車両への配線形態に応じて分岐しつつ結束された構成とされている。ワイヤーハーネス本体部12は、必ずしも分岐している必要はないし、また、単一の電線によって構成されていてもよい。また、ワイヤーハーネス本体部12に、他の光ケーブル等が結束されていてもよい。
【0026】
上記ワイヤーハーネス本体部12を、車両等に配設する際、ワイヤーハーネス本体部12はその配設形態に沿って曲げられる。ワイヤーハーネス本体部12が周辺部分に干渉すること等を抑制するため、ワイヤーハーネス本体部12はその配線形態に沿って曲げられた形状に維持されることがある。このような場合に、本経路維持部材付コルゲートチューブCがワイヤーハーネス本体部12に装着され、当該ワイヤーハーネス本体部12を一定の曲げ形状に維持する。なお、ワイヤーハーネス本体部12に対して本経路維持部材付コルゲートチューブCが装着される部分は、ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部であればよく、ワイヤーハーネス本体部12の一部であっても、ほぼ全体であってもよい。
【0027】
コルゲートチューブ20は、長手方向に沿って環状凸部21と環状凹部22とが交互に形成された筒状部材であり(図3参照)、樹脂等で形成されている。かかるコルゲートチューブ20は、環状凸部21と環状凹部22との間の段部等で容易に弾性変形するため、それ自体では全体として曲げ変形容易な性質を有している。通常、コルゲートチューブ20としては、装着対象となるワイヤーハーネス本体部12の部分の外径よりも大きい(通常は多少大きい程度)内径を有するものが用いられる。
【0028】
また、コルゲートチューブ20の一側部にその長手方向に沿ってスリット24が形成されている。そして、当該スリット24で割開くようにして、ワイヤーハーネス本体部12をコルゲートチューブ20内に容易に配設できるようになっている。
【0029】
経路維持部材30は、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された長尺部材であり、P.P.(ポリプロピレン)等の樹脂によって形成されている。換言すれば、経路維持部材30は、金型成型時点で、少なくとも一部が曲げられた形状に形成されている。経路維持部材30の曲げ形状は、ワイヤーハーネス本体部12のうち装着対象となる部分が配設される配設経路に応じた形状に設定されている。図1に示す例では、経路維持部材30の長手方向の中間部がなだらかなS字を描くように曲っており、経路維持部材30の両端部が直線状に形成されている。経路維持部材30のうち曲げた形状に形成され部分は、その全体であっても一部であってもよい。また、曲げた形状に形成される部分は、平面上で曲る形状に形成されていてもよいし、立体的(3次元的)に曲る形状に形成されていてもよい。
【0030】
上記経路維持部材30は、コルゲートチューブ20にその長手方向に沿って取付けられている。すなわち、経路維持部材30は、コルゲートチューブ20のうちスリット24の両側の端縁部を収容可能な一対の凹溝部36gが形成された部分を有している。換言すれば、経路維持部材30は、長尺状の連結部31の一方側(外周側)縁部に外周側突起部32が配設されると共に、連結部31の他方側(内周側)縁部に内周側突起部33が配設された構成とされ、その長手方向に対して直交する面における断面形状が略H字状を呈している。上記外周側突起部32の外側面は、コルゲートチューブ20の外周面に沿った弧状曲面を呈している。凹溝部36gの幅寸法は、コルゲートチューブ20の厚み寸法(より具体的には、コルゲートチューブ20の径方向において環状凸部21の最外周部分と環状凹部22の最内周部分との差)と略同じかそれよりも大きい(僅かに大きい)程度の寸法に設定されている。凹溝部36gの深さ寸法は、コルゲートチューブ20の端縁部をその径方向に位置決めした状態で収容できる程度であればよく、特に限定はない。
【0031】
上記経路維持部材30のうち上記一対の凹溝部36gが形成された部分は、経路維持部材30の長手方向全体であってもよいし、その長手方向に沿った一部であってもよい。本実施形態では、一対の凹溝部36gが経路維持部材30の長手方向全体に亘って形成された例で説明する。
【0032】
上記経路維持部材30は、コルゲートチューブ20にその長手方向に沿って取付けられる。ここでは、経路維持部材30は、次のようにして、スリット24に配設した状態で、コルゲートチューブ20に取付けられる。
【0033】
すなわち、コルゲートチューブ20を前記スリット24で開くことで、コルゲートチューブ20内にワイヤーハーネス本体部12を収容する。この状態で、コルゲートチューブ20をスリット24で開いて、コルゲートチューブ20のうちスリット24の両側の端縁部を一対の凹溝部36g内に嵌め込む。この状態では、連結部31がスリット24内に配設され、外周側突起部32がスリット24の外側でコルゲートチューブ20の外周面に沿って配設され、内周側突起部33がスリット24の内側でコルゲートチューブ20内周面に沿って配設される。これにより、コルゲートチューブ20は、経路維持部材30の形状に沿って曲げられた状態で、当該経路維持部材30と一体化されることとなる。
【0034】
この後、必要に応じて、タイバンド、粘着テープ等がコルゲートチューブ20の外周に巻付けられ、コルゲートチューブ20の閉状態が維持されると共に、コルゲートチューブ20と経路維持部材30との一体化状態が維持される。なお、上記の他、コルゲートチューブ20自体に設けられたロック構造等によってコルゲートチューブ20の閉状態が維持されてもよい。
【0035】
このように構成された経路維持部材付コルゲートチューブC及びワイヤーハーネス10によると、ワイヤーハーネス本体部12はコルゲートチューブ20によって覆われて保護されると共に、経路維持部材30によって所定の形状に曲った経路を描くように維持されている。このため、経路維持部材30をワイヤーハーネス本体部12の敷設箇所に合わせた形状に形成することで、ワイヤーハーネス本体部12を当該敷設箇所に合わせた一定の経路に維持できる。経路維持部材30自体は、いわゆるプロテクタと呼ばれる部材のように、ワイヤーハーネス本体部12を覆う役割を有してないため、小型かつ単純な形状に形成することができる。このため、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成形された経路維持部材30を製造する際に、金型構造の複雑化を抑制して、比較的簡易な金型構造によって比較的低コストで経路維持部材30を形成することができる。従って、より低コストでワイヤーハーネス本体部12を覆いつつその経路を一定に維持できる。特に、ワイヤーハーネス本体部12が3次元的に曲げられた状態で敷設される場合には、その経路規制用の部材が複雑な形状となるため、本実施形態はそのような場合に有効である。
【0036】
また、ワイヤーハーネス本体部12を曲げた状態に維持できる結果、当該ワイヤーハーネス本体部12を車両等に組付ける際に、車両に対する取付箇所を少なくすることができる。換言すれば、経路維持部材付コルゲートチューブCの取付箇所が少なくとも、ワイヤーハーネス本体部12を一定の曲げ形状に維持できる。このため、ワイヤーハーネス本体部12を取付固定するためのクランプ部材等の使用個数、取付作業を少なくすることができ、この観点からも、経路維持部材付コルゲートチューブCの製造コスト、取付作業コストの低減を図ることができる。
【0037】
また、経路維持部材30をスリット24に配設した状態で、コルゲートチューブ20に取付けているため、コルゲートチューブ20と経路維持部材30との取付位置関係が安定化する。このため、コルゲートチューブ20を、経路維持部材30の形状に沿った所期の形状に維持し易い。
【0038】
また、コルゲートチューブ20のうちスリット24の両側の端縁部が一対の凹溝部36gにそれぞれ収容されているため、経路維持部材30がコルゲートチューブ20から外れることが抑制される。
【0039】
また、スリット24は経路維持部材30によって閉塞されているため、コルゲートチューブ20内のワイヤーハーネス本体部12がスリット24から外部に脱してしまうといった事態が抑制される。
【0040】
{第2実施形態}
第2実施形態に係るワイヤーハーネス及び経路維持部材付コルゲートチューブについて説明する。図4はワイヤーハーネス110のうちコルゲートチューブ20の装着部分を示す概略斜視図であり、図5は図1のV−V線概略断面図である。なお、本実施の形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
このワイヤーハーネス110は、ワイヤーハーネス本体部12と、コルゲートチューブ20と、経路維持部材130とを備える。
【0042】
ワイヤーハーネス本体部12及びコルゲートチューブ20は、上記実施形態で説明したものと同じである。
【0043】
経路維持部材130は、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された長尺部材であり、P.P.(ポリプロピレン)等の樹脂によって形成されている。換言すれば、経路維持部材130は、金型成型時点で、少なくとも一部が曲げられた形状に形成されている。図4に示す例では、経路維持部材130の長手方向全体がなだらかに湾曲するように形成されている。経路維持部材130のうち曲げた形状に形成され部分は、その全体であっても一部であってもよい。また、曲げた形状に形成される部分は、平面上で曲る形状に形成されていてもよいし、立体的(3次元的)に曲る形状に形成されていてもよい。
【0044】
上記経路維持部材130は、コルゲートチューブ20にその長手方向に沿って取付けられている。ここでは、経路維持部材130は、蓋部132と突条部134とを有しており、その長手方向に対して直交する面における断面形状が略H字状を呈している。より具体的には、蓋部132は、コルゲートチューブ20のうちスリット24の外側部分を覆う長尺板形状に形成されている。蓋部132の外側面は、コルゲートチューブ20の外周面に沿った弧状曲面を呈している。突条部134は、蓋部132の幅方向中央部に突出された突条形状に形成されている。突条部134の先端部には、その幅方向に突出する部材は設けられていない。突条部134の先端部はその先端側に向けて徐々に細くなる形状に形成されていてもよい。突条部134の突出寸法は、コルゲートチューブ20の厚み寸法(より具体的には、コルゲートチューブ20の径方向において環状凸部21の最外周部分と環状凹部22の最内周部分との差)と略同じかそれよりも大きい(僅かに大きい)程度の寸法に設定されている。もっとも、突条部134の突出寸法は、コルゲートチューブ20の厚み寸法より小さくてもよい。
【0045】
上記経路維持部材130のうち蓋部132と突条部134と有する部分は、経路維持部材130の長手方向全体であってもよいし、その長手方向に沿った一部であってもよい。本実施形態では、蓋部132と突条部134と有する部分が経路維持部材130の長手方向全体亘って形成された例で説明する。
【0046】
上記経路維持部材130は、次のようにして、スリット24に配設した状態で、コルゲートチューブ20に取付けられる。
【0047】
すなわち、コルゲートチューブ20を前記スリット24で開くことで、コルゲートチューブ20内にワイヤーハーネス本体部12を収容する。この状態で、コルゲートチューブ20をスリット24で開いて、経路維持部材130の突条部134をスリット24内に嵌め込む。すると、突条部134がスリット24内に配設されると共に、蓋部132がスリット24の外側でコルゲートチューブ20の外周面に沿って配設されるようになる。
【0048】
この後、必要に応じて、タイバンド、粘着テープ等がコルゲートチューブ20の外周に巻付けられ、コルゲートチューブ20の閉状態が維持されると共に、コルゲートチューブ20と経路維持部材130との一体化状態が維持される。なお、上記の他、コルゲートチューブ20自体に設けられたロック構造等によってコルゲートチューブ20の閉状態が維持されてもよい。これにより、コルゲートチューブ20は、経路維持部材130の形状に沿って曲げられた状態で、当該経路維持部材130と一体化されることとなる。
【0049】
このように構成された経路維持部材付コルゲートチューブC2及びワイヤーハーネス110によると、ワイヤーハーネス本体部12はコルゲートチューブ20によって覆われて保護されると共に、経路維持部材130によって所定の形状に曲った経路を描くように維持されている。このため、経路維持部材130をワイヤーハーネス本体部12の敷設箇所に合わせた形状に形成することで、ワイヤーハーネス本体部12を当該敷設箇所に合わせた一定の経路に維持できる。経路維持部材130自体は、いわゆるプロテクタと呼ばれる部材のように、ワイヤーハーネス本体部12を覆う役割を有してないため、小型かつ単純な形状に形成することができる。このため、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成形された経路維持部材130を製造する際に、金型構造の複雑化を抑制して、比較的簡易な金型構造によって比較的低コストで経路維持部材130を形成することができる。従って、より低コストでワイヤーハーネス本体部12を覆いつつその経路を一定に維持できる。特に、ワイヤーハーネス本体部12が3次元的に曲げられた状態で敷設される場合には、その経路規制用の部材が複雑な形状となるため、本実施形態はそのような場合に有効である。
【0050】
しかも、経路維持部材130は、上記実施形態における経路維持部材30よりも内周側突起部33が無い分、より単純化された形状とされている。このため、経路維持部材130を製造する際に、より簡易な金型構造によって比較的低コストで経路維持部材130を形成することができる。
【0051】
また、コルゲートチューブ20の外周側から突条部134をスリット24内に配設して、経路維持部材130をコルゲートチューブ20に装着すればよいため、経路維持部材130の装着作業を容易に行える。
【0052】
また、上記実施形態で述べたのと同様の理由によって、ワイヤーハーネス本体部12を取付固定するためのクランプ部材等の使用個数、取付作業を少なくすることができ、この観点からも、経路維持部材付コルゲートチューブC2の製造コスト、取付作業コストの低減を図ることができる。
【0053】
また、経路維持部材130をスリット24に配設した状態で、コルゲートチューブ20に取付けているため、コルゲートチューブ20と経路維持部材130との取付位置関係が安定化する。このため、コルゲートチューブ20を、経路維持部材130の形状に沿った所期の形状に維持し易い。
【0054】
また、突条部134がスリット24内に配設されると共に蓋部132がスリット24の外側でコルゲートチューブ20の外周面に配設されているため、経路維持部材130とコルゲートチューブ20との位置関係をより安定化させることができる。
【0055】
{変形例}
なお、1つの経路維持部材において、第1実施形態で説明したように、一対の凹溝部36gを有する部分と、第2実施形態で説明したように、蓋部132と突条部134とを有する部分とが混在していてもよい。
【0056】
この場合、図6に示す変形例に係る経路維持部材230のように、当該経路維持部材230が一対の凹溝部36gを有する第1の部分232と、蓋部132及び突条部134を有する第2の部分234とを含み、前記第2の部分234が前記第1の部分232よりも急に曲げられていてもよい。前記第2の部分234が前記第1の部分232よりも急に曲げられているとは、前記第2の部分234の曲げ半径が前記第1の部分232の曲げ半径より小さい場合、及び、第1の部分232が直線状であるのに対して第2の部分234が曲げられている場合を含む。ここでは、第1の部分232は経路維持部材230の長手方向両端部で直線状に延在しており、第2の部分234は経路維持部材230の長手方向中間部で緩やかにS字状を描くように曲っている。
【0057】
この変形例によると、経路維持部材230が比較的小さい曲げ半径で曲げられる部分では、コルゲートチューブ20の外周側から突条部134をスリット24内に押込めばよいため、経路維持部材230の装着作業を容易に行える。また、経路維持部材230は、比較的急に曲げられた部分で、比較的単純化な形状に形成されているため、比較的簡易な金型構造とし易いというメリットもある。
【0058】
また、図7に示す変形例に係る経路維持部材330のように、当該経路維持部材330が一対の凹溝部36gを有する第1の部分332と、蓋部132及び突条部134を有する第2の部分334とを含み、前記第1の部分332が前記第2の部分334よりも急に曲げられていてもよい。前記第1の部分332が前記第2の部分334よりも急に曲げられているとは、前記第1の部分332の曲げ半径が前記第2の部分334の曲げ半径より小さい場合、及び、第2の部分334が直線状であるのに対して第1の部分332が曲げられている場合を含む。ここでは、第2の部分334は経路維持部材330の長手方向両端部で直線状に延在しており、第1の部分332は経路維持部材330の長手方向中間部で緩やかにS字状を描くように曲っている。
【0059】
この変形例によると、経路維持部材330が比較的急に曲げられる部分では、コルゲートチューブ20のスリット24の両側の端縁部が一対の凹溝部36g内に収容されるため、コルゲートチューブ20と経路維持部材330との合体状態がより確実に維持される。このため、ワイヤーハーネス本体部12の曲げ状態をより確実に維持できる。
【0060】
なお、上記各実施形態及び変形例では、経路維持部材30、130、230、330がスリット24に配設される例で説明したが必ずしもその必要はない。予め所定の曲げ形状に形成された経路維持部材30がコルゲートチューブ20に対してテープ巻等で固定されていればよい。
【0061】
また、1つのワイヤーハーネス本体部12に対して、上記各実施形態、変形例で説明した経路維持部材30、130、230、330等が混在して用いられていてもよい。
【0062】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0063】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0064】
10、110 ワイヤーハーネス
12 ワイヤーハーネス本体部
20 コルゲートチューブ
21 環状凸部
22 環状凹部
24 スリット
30、130、230、330 経路維持部材
36g 凹溝部
132 蓋部
134 突条部
C、C2 経路維持部材付コルゲートチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成されたコルゲートチューブと、
長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された長尺部材であり、前記コルゲートチューブにその長手方向に沿って取付けられた経路維持部材と、
を備える経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項2】
請求項1記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記コルゲートチューブに、その長手方向に沿ってスリットが形成され、
前記路維持部材は、前記スリットに配設した状態で前記コルゲートチューブに取付けられる、経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの両側の端縁部が収容される一対の凹溝部が形成された部分を含む、経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの外側部分を覆う蓋部と、前記蓋部の幅方向中央部に突出され前記スリット内に配設される突条部とを有する部分を含む、経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの両側の端縁部が収容される一対の凹溝部が形成された第1の部分と、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの外側部分を覆う蓋部と前記蓋部の幅方向中央部に突出され前記スリット内に配設される突条部とを有する第2の部分とを含み、
前記第2の部分は、前記第2の部分よりも急に曲げられている、経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの両側の端縁部が収容される一対の凹溝部が形成された第1の部分と、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの外側部分を覆う蓋部と前記蓋部の幅方向中央部に突出され前記スリット内に配設される突条部とを有する第2の部分とを含み、
前記第1の部分は、前記第2の部分よりも急に曲げられている、経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の経路維持部材付コルゲートチューブと、
少なくとも1本の電線を有し、前記経路維持部材付コルゲートチューブ内に挿通されたワイヤーハーネス本体部と、
を備えるワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−5605(P2013−5605A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134791(P2011−134791)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】