説明

結像光学素子および画像読取装置

【課題】結像光学素子を構成する遮光部材の貫通孔への塵埃の侵入を効果的に防止して高品質な物体の正立等倍像を形成する。
【解決手段】レンズ512を有するレンズアレイ51a、51bを積層配置して原稿(物体)OBの正立等倍像を形成する結像光学系51と、原稿OBで反射した光を通過させる貫通孔52aを有し、光が貫通孔52aを通過して原稿OBに最も近い位置に配置された結像光学系51のレンズアレイ51aに形成されたレンズ512に入射されるように結像光学系51の物体(原稿)側に配置される遮光部材52と、光を透過する材料で形成され、遮光部材52の物体側に配置されて貫通孔52aを覆う透過性平板55とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原稿などの物体で反射した光または物体を透過した光を結像して正立等倍像を形成する結像光学素子および当該結像光学素子を用いた画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の結像光学素子の一例として、例えば特許文献1に記載されたように、レンズを有するレンズアレイと、貫通孔を有する遮光部材とを組み合わせたレンズアレイユニットが知られている。また、このレンズアレイユニットを用いた画像読取装置が上記特許文献1に記載されている。すなわち、この画像読取装置では、原稿から反射された光をレンズにより正立等倍で結像するとともに、当該レンズにより結像された光を受光素子によって受光する。そして、遮光部材を設けることで複数のレンズ間における光のクロストークを適切に防止している。その結果、受光素子で読み取られる画像をより鮮明にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4271841号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の画像読取装置では、レンズアレイユニット(結像光学素子)の最上部は貫通孔を有する遮光部材であるため、貫通孔に塵埃が侵入することがある。そのため、貫通孔内に塵埃が滞留すると、受光素子などの読取部に結像される正立等倍像の画像劣化が発生することがあった。
【0005】
この発明にかかるいくつかの態様は、結像光学素子を構成する遮光部材の貫通孔への塵埃の侵入を効果的に防止して高品質な物体の正立等倍像を形成することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、結像光学素子であって、レンズを有するレンズアレイを1枚配置または複数枚積層配置して物体の正立等倍像を形成する結像光学系と、物体で反射した光または物体を透過した光を通過させる第1貫通孔を有し、光が第1貫通孔を通過して物体に最も近い位置に配置された結像光学系のレンズアレイに形成されたレンズに入射されるように結像光学系の物体側に配置される第1遮光部材と、光を透過する材料で形成され、第1遮光部材の物体側に配置されて第1貫通孔を覆う透過性平板55とを備えることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の第2の態様は、画像読取装置であって、物体に光を照射する光源部と、この発明にかかる結像光学素子と、結像光学素子により結像される正立像を読み取る読取部とを備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(結像光学素子および画像読取装置)では、第1透過性平板が第1遮光部材の物体側に配置されて第1遮光部材の第1貫通孔を覆う。このように結像光学素子を構成する構成要素のうち第1透過性平板が最も物体側に位置しており、第1貫通孔への塵埃の侵入を阻止する。その結果、従来技術において問題となっていた第1貫通孔内への塵埃の滞留が解消され、高品質な物体の正立等倍像を形成することが可能となっている。なお、「物体に最も近い位置に配置された結像光学系のレンズアレイ」とは、結像光学系を構成するレンズアレイのうち最も物体側に配置されたレンズアレイを意味しており、1枚のレンズアレイにより結像光学系を構成した場合には当該レンズアレイがこれに相当し、複数枚のレンズアレイにより結像光学系を構成した場合には最も物体側に位置するレンズアレイがこれに相当する。
【0009】
ここで、結像光学素子の物体側より飛散してくる塵埃は第1透過性平板の物体側の主面に止められて第1貫通孔内への塵埃の侵入が阻止されるが、第1透過性平板の物体側の主面に塵埃が付着して残存してしまうと、正立等倍像の画像劣化を招くおそれがある。したがって、第1透過性平板の物体側の主面に塵埃が残存するのを防止するために、当該主面に対して防塵処理を施しておくのが望ましい。また、第1透過性平板を水平面に対して傾斜して配置しておくことで、第1透過性平板の物体側の主面に塵埃が堆積するのを防止することができ、当該主面への塵埃の残存量を抑制することができ、より好適である。
【0010】
また、結像光学系により物体の正立等倍像を読取部に結像する場合、読取部側に第2遮光部材を配置して画質向上を図ってもよく、さらに、結像光学系から出射される光を通過させる第2貫通孔を有し、読取部に最も近い位置に配置された結像光学系のレンズアレイに形成されたレンズから出射される光が第2貫通孔を通過して読取部に入射されるように結像光学系の読取部側に配置される第2遮光部材をさらに設けてもよい。この場合、結像光学素子を構成する構成要素のうち第2透過性平板が最も読取部側に位置しており、第2遮光部材の第2貫通孔を覆っている。このため、第2透過性平板により第2貫通孔への塵埃の侵入が阻止され、より高品質な物体の正立等倍像を形成することが可能となる。なお、「読取部に最も近い位置に配置された結像光学系のレンズアレイ」とは、結像光学系を構成するレンズアレイのうち最も読取部側に配置されたレンズアレイを意味しており、1枚のレンズアレイにより結像光学系を構成した場合には当該レンズアレイがこれに相当し、複数枚のレンズアレイにより結像光学系を構成した場合には最も読取部側に位置するレンズアレイがこれに相当する。
【0011】
このように第2遮光部材の読取部側に第2透過性平板を配置する場合にも、第1透過性平板と同様の理由から、第2透過性平板の読取部側の主面に対して防塵処理を施す、あるいは第2透過性平板を水平面に対して傾斜して配置するのが望ましく、これらによって、結像光学素子の読取部側より飛散してくる塵埃が第2透過性平板の読取部側の主面に残存するのを効果的に防止することができ、より好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる画像読取装置の第1実施形態を示す部分側面図。
【図2】図1のCISモジュールの概略構成を示す部分断面図。
【図3】結像光学素子の部分組立斜視図。
【図4】結像光学素子の構成を示す組立断面図。
【図5】本発明にかかる画像読取装置の第2実施形態を示す図。
【図6】本発明にかかる画像読取装置の第3実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1実施形態
図1は、本発明にかかる画像読取装置の第1実施形態であるCIS(Contact Image Sensor)モジュール(以下、「CISモジュール」と略称する)の概略構成を示す部分側面図である。図2は、図1のCISモジュールの概略構成を示す部分断面図である。これら図1、図2および以下で説明する図では、各部材の位置関係を示すために、XYZ直交座標を適宜示すものとする。このCISモジュール1は、原稿ガラスGL上に載置された原稿OBを読み取り対象物(本発明の「物体」に相当)として原稿OBに印刷された画像を読み取る装置であり、原稿ガラスGLの直下に配置されている。CISモジュール1は、X方向における最大読取範囲より長く延びる略直方体状のフレーム2を有しており、同フレーム2内に光源部3、結像光学素子5、受光センサーで構成された読取部7およびプリント回路基板8が配置されている。
【0014】
光源部3は、図示を省略するLED(Light Emitting Diode)を光源としている。このLEDはライトガイド31のX方向の一方端に取り付けられており、ライトガイド31の当該一方端に向けて照明光を射出する。このライトガイド31は、最大読取範囲と略同じ長さだけX方向に延設されている。そして、照明光はライトガイド31の一方端に入射すると、ライトガイド31の他方端に向けてライトガイド31中を伝播しながら、ライトガイド31の各部で部分的に先端部32(光出射面)を介して原稿ガラスGLに向けて射出して、原稿ガラスGL上の原稿OBに照射される。こうして、X方向に延びる帯状の照明光が原稿OBに照射され、原稿OBで反射される。
【0015】
照明光の照射位置の直下には結像光学素子5が配置されている。この結像光学素子5は、2枚のレンズアレイ51a、51bをZ方向(本実施形態では鉛直方向)に積層配置して構成された結像光学系51と、3枚の遮光部材52〜54と、2枚の透過性平板55、56とで構成されている。以下、図1ないし図4を参照しつつ結像光学素子5の構成について詳述する。
【0016】
図3は結像光学素子の構成を示す組立分解斜視図であり、図4は結像光学素子の構成を示す組立分解断面図である。結像光学系51を構成する2枚のレンズアレイのうち物体(原稿OB)側のレンズアレイ51aでは、原稿OBからの光を透過させる光透過性材料で形成された透明平板511の両主面に対し、上記光を透過させる透過性樹脂でレンズ面LS1、LS2がそれぞれ設けられている。本実施形態では、レンズ面LS1、LS2はそれぞれ物体(原稿)側および読取部側に突き出ており、両凸レンズ512が形成されている。各レンズ面LS1、LS2の形状はCISモジュール1の構成に応じて適宜最適化すればよく、例えばレンズ面LS1、LS2が同一形状となるように結像光学系51を設計してもよい。また、このように構成されるレンズ512は図3に示すようにX方向に複数個一列配置されている。なお、レンズアレイ51aを製造するにあたっては、透明平板511に対してレンズ面LS1、LS2を形成してもよいし、透明平板511とレンズ面LS1、LS2とを一体的に樹脂成形することでレンズアレイ51aを製造してもよく、従来より周知の製造技術を用いることができる。また、レンズアレイ51bもレンズアレイ51bと同様に、透明平板511の両主面に対し、上記光を透過させる透過性樹脂でレンズ面LS3、LS4が設けられ、これによって両凸レンズ512が形成されている。
【0017】
そして、レンズアレイ51aに装備されるレンズ512毎に、レンズアレイ51bに装備されるレンズ512が1個ずつ鉛直方向Zの下方側に離間して配置されて結像光学系51が形成されており、原稿OBの正立像を等倍の結像倍率で読取部7の画像読取面(図示省略)に結像する。
【0018】
また、レンズアレイ51aの物体側(図2の上方側)、レンズアレイ51a、51bの間、およびレンズアレイ51bの読取部側(図2の下方側)に、遮光部材52〜54がそれぞれ配置されている。これらの遮光部材52〜54は、YZ平面において略H字状断面を有しながらX方向に延設された形状を有しており、原稿OBからの光を遮光する材料で構成されている。また、各遮光部材52〜54の中央部には、各レンズアレイ51a、51bに設けられたレンズ512のレンズピッチと同一ピッチで各レンズアレイ51a、51bのレンズ512と同数の貫通孔52a〜54aがそれぞれX方向に一列で形成されている。
【0019】
これらのうち遮光部材52は、レンズアレイ51aに装備されるレンズ512毎に遮光部材52の貫通孔52aが1個ずつ鉛直方向Zの上方側に位置するように、結像光学系51の物体側に配置されている。これによって、原稿OBで反射した光は貫通孔52aを通過して結像光学系51を構成する2枚のレンズアレイのうちの物体側のレンズアレイ51aに形成されたレンズ512に入射される。
【0020】
また、本実施形態では、上記したようにレンズアレイ51aに装備されるレンズ512毎に、レンズアレイ51bに装備されるレンズ512が1個ずつ対応して複数のレンズ対を構成している。そして、これらのレンズ対毎に遮光部材53の貫通孔53aが1個ずつレンズアレイ51aのレンズ512とレンズアレイ51bのレンズ512との間に位置するように、遮光部材53はレンズアレイ51a、51bの間に配置されている。これによって、レンズアレイ51aの各レンズ512から出射した光を対応するレンズアレイ51bのレンズ512に案内し、X方向に隣接するレンズ512の間でのクロストークを防止する。
【0021】
さらに、遮光部材54は、レンズアレイ51bに装備されるレンズ512毎に遮光部材54の貫通孔54aが1個ずつ鉛直方向Zの下方側に位置するように、結像光学系51の読取部側に配置されている。これによって、レンズアレイ51bの各レンズ512から出射した光を読取部7の画像読取面に案内する。このように、本実施形態では、貫通孔52a毎に、レンズアレイ51aのレンズ512、貫通孔53a、レンズアレイ51bのレンズ512および貫通孔54aが1つずつ鉛直方向Zにこの順序で配列されており、このような配列構造がX方向に所定ピッチで設けられて原稿OBの正立等倍像を読取部7の画像読取面に結像する。
【0022】
これら3つの遮光部材のうち結像光学系51の物体側に配置される遮光部材52の物体側の主面に対し、光を透過する材料で形成された透過性平板55が配置されて遮光部材52の貫通孔52aを鉛直方向Zの上方側から覆う。この実施形態では、図4に示すように、遮光部材52の物体側の主面に対し、透過性平板55の厚みと同じ深さの段差部52bが設けられている。そして、図2に示すように、遮光部材52の物体側の段差部52bに透過性平板55をすっぽりと嵌入して遮光部材52の物体側端部の上面と、透過性平板55の物体側の平面55Sとが面一となるように構成している。また、本実施形態では、透過性平板55の物体側の平面55Sに対し、防塵処理を施して塵埃が当該平面55Sに付着するのを防止している。
【0023】
ここで、「防塵処理」としては、例えば分子の末端官能基がCFのシランカップリング剤(有機ケイ素化合物)を表面処理剤として用いて平面55Sにフッ素をコーティングしてもよく、これによって平面55Sの表面自由エネルギーが下がり、平面55Sへの塵埃の付着を効果的に防止することが可能となる。また、別の「防塵処理」として、平面55Sに微細な凹凸形状を付与してもよく、その凹凸によりファンデルワールス力を低下させて塵埃の付着を防止することができる。また、さらに別の「防塵処理」として、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜や吸水性材料の膜を平面55S上に成膜することで平面55Sの表面抵抗を1013[Ω/sq]以下に低下させてもよく、これによって塵埃の付着を効果的に防止することが可能となる。
【0024】
また、3つの遮光部材のうち結像光学系51の読取部側に配置される遮光部材54の読取部側の主面に対しても、遮光部材52の物体側の主面と同様に、透過性平板56が配置されるとともに、その透過性平板56の読取部側の平面56Sに対して防塵処理が施されている。すなわち、図4に示すように遮光部材54の読取部側の主面に対し、透過性平板56の厚みと同じ深さの段差部54bが設けられている。そして、図2に示すように、遮光部材54の読取部側の段差部54bに透過性平板56をすっぽりと嵌入して遮光部材54の読取部側端部の下面と、透過性平板56の読取部側の平面56Sとが面一となるように構成している。
【0025】
以上のように、本実施形態では、透過性平板55を遮光部材52の物体側に配置することで遮光部材52の貫通孔52aを覆っている。このように結像光学素子5を構成する構成要素のうち透過性平板55を最も物体側に位置させて貫通孔52aへの塵埃の侵入を阻止しているため、貫通孔52a内に塵埃が滞留するのを確実に解消し、原稿OBの正立等倍像を高品質で形成することができ、優れた読み取り精度を有するCISモジュール(画像読取装置)が得られる。
【0026】
また、本実施形態では、物体側のみならず、読取部側についても透過性平板56を配置して貫通孔54aへの塵埃の侵入を防止している。すなわち、結像光学素子5を構成する構成要素のうち透過性平板56を最も読取部側に位置させて貫通孔54aへの塵埃の侵入を阻止しているため、貫通孔54a内に塵埃が滞留するのを確実に解消し、原稿OBの正立等倍像をさらに高品質で形成することができ、CISモジュールの読み取り精度をさらに高めることができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、上記のように結像光学素子5の最外部に位置する透過性平板55の平面55Sおよび透過性平板56の平面56Sに対して防塵処理を施しているため、これらの平面55S、56Sへの塵埃の残存量を抑制することができ、塵埃による影響を低下させることができる。
【0028】
このように、第1実施形態では、レンズアレイ51a、51bがそれぞれ本発明の「物体に最も近い位置に配置された結像光学系のレンズアレイ」、「読取部に最も近い位置に配置された結像光学系のレンズアレイ」に相当している。また、3つの遮光部材のうち遮光部材52が本発明の「第1遮光部材」に相当し、その遮光部材52に設けられた貫通孔52aが本発明の「第1貫通孔」に相当する。また、遮光部材54が本発明の「第2遮光部材」に相当し、その遮光部材54に設けられた貫通孔54aが本発明の「第2貫通孔」に相当する。また、透過性平板55が本発明の「第1透過性平板」に相当し、その透過性平板55の平面55Sが本発明の「第1透過性平板の物体側の主面」に相当する。さらに、透過性平板56が本発明の「第2透過性平板」に相当し、その透過性平板56の平面56Sが本発明の「第2透過性平板の読取部側の主面」に相当する。
【0029】
第2実施形態
図5は本発明にかかる画像読取装置の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、透過性平板55の配置関係であり、その他の構成は第1実施形態と同一である。したがって、以下の説明においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
この第2実施形態では、同図に示すように、遮光部材52の物体(原稿OB)側の段差底面52cは水平面(XY平面)に対して傾斜している。そして、この段差部52bに透過性平板55を嵌入すると、第1実施形態と同様に、透過性平板55が遮光部材52の貫通孔52aを鉛直方向Zの上方側から覆うが、その透過性平板55の物体側の平面55Sも水平面(XY平面)に対して傾斜する。ここで、結像光学素子5の上端部に塵埃が飛散してきたとしても、透過性平板55の平面55Sによって遮られ、塵埃が遮光部材52の貫通孔52aに侵入するのが阻止されるが、その塵埃は透過性平板55に達して堆積する可能性がある。しかしながら、第2実施形態では、透過性平板55の平面55Sは傾斜しているため、その傾斜面に沿って塵埃が低い側に移動し、当該平面55Sから除外され、透過性平板55の物体側の平面55Sに塵埃が堆積するのを防止することができる。その結果、当該平面55Sに残存する塵埃によって正立等倍像の品質が低下するのを抑制することができ、好適である。
【0031】
また、第2実施形態では、図5に示すように、X方向に平行な仮想回動軸(図示省略)を回動中心として水平状態から同図紙面において時計回りに所定角度だけ回動させて傾斜させている。したがって、透過性平板55の平面55Sに達した塵埃は傾斜面に沿って移動し、結像光学系51および光源部3から離れる方向、つまり(+Y)方向に落下していくため、落下した塵埃が結像光学系51や光源部3に侵入して悪影響を及ぼすのを効果的に防止することができる。また、透過性平板55を傾斜させるために、図5(b)に示すように、遮光部材52の物体側端部のうち光源部側(同図の左手側)の端部を反光源部側(同図の右手側)の端部よりも上方に延設し、透過性平板55と遮光部材52とが隙間なく一体化されるように構成しているため、透過性平板55と遮光部材52との間から塵埃が侵入するのを防止することができる。
【0032】
なお、このように構成された透過性平板55の平面55Sに対しても第1実施形態と同様に防塵処理を施すことで塵埃をさらに効果的に当該平面55Sから除去することができる。また、透過性平板56の平面56Sについても、透過性平板55の平面55Sと同様に傾斜させてもよく、さらに傾斜面に対して防塵処理を施してもよい。
【0033】
第3実施形態
図6は本発明にかかる画像読取装置の第3実施形態を示す図である。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、遮光部材54および透過性平板55が設けられていない点であり、その他の構成は第1実施形態と同一である。したがって、以下の説明においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
このように第3実施形態では、遮光部材53の読取部側(同図の下方側)にレンズアレイ51bが配置されて遮光部材53の貫通孔53aを覆っているため、当該貫通孔53aに塵埃が侵入するのを防止することができる。すなわち、結像光学素子5を構成する構成要素のうちレンズアレイ51bを最も読取部側に位置させて貫通孔53aへの塵埃の侵入を阻止しているため、貫通孔53a内に塵埃が滞留するのを確実に解消し、原稿OBの正立等倍像を高品質で形成することができ、CISモジュールの読み取り精度を高めることができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、2枚のレンズアレイ51a、51bにより結像光学系51を構成しているが、1枚のレンズアレイ、あるいは3枚以上のレンズアレイにより結像光学系51を構成する結像光学素子5に対して本発明を適用してもよい、特に、1枚のレンズアレイにより結像光学系51を構成する結像光学素子5では、このレンズアレイが本発明の「物体に最も近い位置に配置された結像光学系のレンズアレイ」および「読取部に最も近い位置に配置された結像光学系のレンズアレイ」に相当する。
【0036】
また、上記実施形態では、各レンズアレイに対して両凸レンズ512を形成しているが、レンズ形状はこれに限定されるものではなく、遮光部材の貫通孔を通過する光をレンズにより集光して正立等倍像を形成する結像光学系51を備えた結像光学素子全般に本発明を適用することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、各レンズアレイ51a、51bにおいてレンズ512をX方向に一列で配置するとともにするとともに各遮光部材52〜54において貫通孔をX方向に一列で配置した結像光学素子5に対して本発明を適用しているが、レンズ512および貫通孔52a〜54aを複数列で配置したCISモジュール(結像光学素子)に対しても適用可能である。
【0038】
また、上記実施形態では、CISモジュール1に光源部3を搭載して原稿OBで反射した光を結像光学素子5に入射させていた。しかしながら、CISモジュール1(の結像光学素子5)と原稿を挟んでCISモジュール1(の結像光学素子5)に対向する側に光源部を配置して、光源部から射出されてフィルムなどの原稿を透過した光を結像光学素子5に入射させる構成とすることもできる。
【0039】
また、透過性平板55の平面55Sや透過性平板56の平面56Sに付着した塵埃を積極的に除去するために、次のような手段を追加し、適切な除去タイミングで塵埃除去を行うように構成してもよい。例えばX方向における最大読取範囲より長く延びるブラシや布などの清掃手段をセットしておき、当該清掃手段により上記平面55S、56Sを清掃可能に構成してもよい。また、ファンなどにより装置外部から空気を取り込むとともに当該空気を上記平面55S、56Sに向けて吹き付けて塵埃を除去する吹付手段を設けてもよい。さらに、モーターやピエゾ素子などの振動付与手段を設け、当該振動付与手段により透過性平板55、56に対して振動を与えてもよい。
【0040】
さらに、結像光学素子5の最外層に対し、AR(アンチリフレクション)処理を施してもよく、これによって空気との界面での反射を抑制することができる。このAR処理としては、例えば無機材料などのアンチリフレクション材料からなる反射防止膜を蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成法にて成膜する処理がある。また、透過性平板55、56の屈折率は例えば1.5程度であるため、空気との中間の屈折率、例えば1.3〜1.4の屈折率を有する材料を結像光学素子5の最外層に塗布してAR層を設けてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…CISモジュール(画像読取装置)、 3…光源部、 31…ライトガイド、 32…先端部、 5…結像光学素子、 7…読取部、 51…結像光学系、 51a、51b…レンズアレイ、 52…(第1)遮光部材、 52a…(第1)貫通孔、 54…(第2)遮光部材、 54a…(第2)貫通孔、 55…(第1)透過性平板、 55S…平面(第1透過性平板の物体側の主面)、 56…(第2)透過性平板、 56S…平面(第2透過性平板の読取部側の主面)、512…レンズ、 OB…原稿(物体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを有するレンズアレイを1枚配置または複数枚積層配置して物体の正立等倍像を形成する結像光学系と、
前記物体で反射した光または前記物体を透過した光を通過させる第1貫通孔を有し、前記光が前記第1貫通孔を通過して前記物体に最も近い位置に配置された前記結像光学系のレンズアレイに形成されたレンズに入射されるように前記結像光学系の物体側に配置される第1遮光部材と、
前記光を透過する材料で形成され、前記第1遮光部材の物体側に配置されて前記第1貫通孔を覆う第1透過性平板と
を備えることを特徴とする結像光学素子。
【請求項2】
前記第1透過性平板の物体側の主面に対し、防塵処理が施されている請求項1に記載の結像光学素子。
【請求項3】
前記第1透過性平板は水平面に対して傾斜して配置される請求項1または2に記載の結像光学素子。
【請求項4】
前記結像光学系により前記物体の正立等倍像を読取部に結像する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の結像光学素子であって、
前記結像光学系から出射される光を通過させる第2貫通孔を有し、前記読取部に最も近い位置に配置された前記結像光学系のレンズアレイに形成されたレンズから出射される光が前記第2貫通孔を通過して前記読取部に入射されるように前記結像光学系の読取部側に配置される第2遮光部材と、
前記光を透過する材料で形成され、前記第2遮光部材の読取部側に配置されて前記第2貫通孔を覆う第2透過性平板と
を備える結像光学素子。
【請求項5】
前記第2透過性平板の読取部側の主面に対し、防塵処理が施されている請求項4に記載の結像光学素子。
【請求項6】
前記第2透過性平板は水平面に対して傾斜して配置される請求項4または5に記載の結像光学素子。
【請求項7】
物体に光を照射する光源部と、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の結像光学素子と、
前記結像光学素子により結像される正立等倍像を読み取る読取部と
を備えることを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−25018(P2013−25018A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158725(P2011−158725)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】