説明

結像装置

【課題】再帰反射後における光の利用効率が良好な結像装置を提供する。
【解決手段】結像装置1は、透過軸に平行な偏光方向の光を透過し、透過軸に垂直な偏光方向の光を反射する偏光フィルタ21であって、表示画像12を表す表示光13が裏面側から入射し、入射した表示光13の、透過軸に垂直な偏光方向成分の光を第1の直線偏光として反射する偏光フィルタ21と、偏光フィルタ21で反射された第1の直線偏光が入射し、入射した第1の直線偏光を、その偏光方向を変更し、第1の直線偏光の偏光方向に対して垂直な偏光方向を有する第2の直線偏光として再帰反射する再帰反射部と、を備える。再帰反射部で反射した第2の直線偏光は、偏光フィルタ21を透過し、偏光フィルタ21の表面側で、表示画像12を表す像を結像する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結像装置として、例えば特許文献1に開示されるものがある。この結像装置は、光学系を構成する、ビームスプリッターと、再帰反射装置とを備えており、画像等を表す表示光を、ビームスプリッターについて面対称の位置に、画像等を表す像を結像させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平9−506717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図2及び図3で開示される結像装置では、表示光のうち、最初にビームスプリッターで反射した光は、再帰反射装置で再帰反射する。そして、再帰反射した光にうちの一部の光は、ビームスプリッターを通り、結像する。
【0005】
しかし、再帰反射した光のうちの他の一部の光は、ビームスプリッターで再び反射し、結像に寄与しない光となる。このように、特許文献1の図2及び図3で開示される結像装置では、再帰反射した光のうちの所定の割合の光が、損失してしまう。このため、表示光のうち、実像として結像する光の割合が小さくなってしまうことがあり、再帰反射後における光の利用効率が悪かった。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、再帰反射後における光の利用効率が良好な結像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る結像装置は、
表示部に表示された表示画像を表す像を結像する結像装置であって、
透過軸に平行な偏光方向の光を透過し、前記透過軸に垂直な偏光方向の光を反射する偏光フィルタであって、前記表示画像を表す表示光が裏面側から入射し、入射した前記表示光の、前記透過軸に垂直な偏光方向成分の光を第1の直線偏光として反射する偏光フィルタと、
前記偏光フィルタで反射された前記第1の直線偏光が入射し、入射した前記第1の直線偏光を、その偏光方向を変更し、前記第1の直線偏光の偏光方向に対して垂直な偏光方向を有する第2の直線偏光として再帰反射する再帰反射部と、を備え、
前記再帰反射部で反射した前記第2の直線偏光は、前記偏光フィルタを透過し、前記偏光フィルタの表面側で、前記表示画像を表す像を結像する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る結像装置によれば、再帰反射後における光の利用効率が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の1実施形態に係る結像装置の概略外観図であり、透過図である。
【図2】図1における、結像装置の概略A−A断面図である。
【図3】結像装置において、表示光が実像として結像するまでの光の性質の変遷を説明する概念図である。
【図4】結像装置において、外光のうち偏光フィルムを透過する光の変遷を説明する概念図である。
【図5】変形例に係る結像装置の概略断面図である。
【図6】変形例に係る結像装置の概略断面図である。
【図7】変形例として、表示光が円偏光である場合における、表示光が実像として結像するまでの光の性質の変遷を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る1実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施形態(図面の内容も含む。)によって限定されるものではない。下記の実施形態に変更(構成要素の削除も含む。)を加えることができるのはもちろんである。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略する。
【0011】
本実施形態に係る結像装置1の構造を、図1乃至図4を参照して説明する。
【0012】
なお、図1では、後述する光学系20(偏光フィルタ21、λ/4板22、及び再帰反射プリズム23)と、背景表示部30と、を便宜的に面として表した。また、偏光フィルタ21を網掛けで表し、表示画像12及び実像40をドットで表した。これらの表記は、あくまで、結像装置1の立体的構造を容易に把握するためのものである。また、図1の二点鎖線は、想像線にすぎず、構成部材を示すものではない。その他、各図で特記すべき事項は、適宜説明する。
【0013】
結像装置1は、表示装置10と、光学系20と、背景表示部30と、筐体(図示せず)と、を備える。
【0014】
表示装置10は、表示パネル11(表示部の一例)と、制御部(図示せず)と、バックライト(図示せず)と、を備える。
【0015】
本実施形態では、表示パネル11は、STN(Super Twisted Nematic)、又は、TN(Twisted Nematic)等の液晶パネルである。バックライトは、制御部に制御され、面状に発光し、表示パネル11を照光する。表示パネル11は、制御部による制御のもと、バックライトの光を透過又は遮光することによって、所定の表示光13を出射する。これによって表示装置10は、表示パネル11の表示面に表示光13によって表される所定の画像を表示する。
【0016】
本実施形態では、表示装置10は、表示パネル11に、一例として表示画像12を表示している。そして、表示画像12を表す表示光13の出射点と、後述する偏光フィルタ21面について面対称の位置に、表示画像12を表す像である実像40が結像される。表示画像12を表示する表示パネル11は、結果として、実像40を見る観察者が、表示画像12が表す情報を認識できるように(図1では、観察者が実像40を「Image」と読めるように)、配置されている。なお、図2は、結像装置1の概略A−A断面図であるが、図2に示す表示画像12及び実像40については、感覚的な理解を容易とするため、幅を持たせ、かつ、グラデーションを用いて表している。
【0017】
本実施形態では、表示パネル11は、液晶パネルであるため、表示パネル11から出射される表示光13は直線偏光となる。
【0018】
光学系20は、偏光フィルタ21と、λ/4板22(第1の位相差板の一例)と、再帰反射プリズム23(再帰反射板の一例)と、を備える。なお、この光学系20においては、実像40を見る観察者側の方向を「表」といい、その反対側を「裏」という。
【0019】
偏光フィルタ21は、例えば、アルミ線網を構成するワイヤグリッド面を有しており、入射光をワイヤグリッド面での複屈折作用によって偏光するワイヤグリッド偏光フィルタである。偏光フィルタ21は、前記アルミ線に垂直な透過軸を有し、透過軸に平行な偏光方向の光を透過し、透過軸に垂直な偏光方向の光を反射する。偏光フィルタ21と表示パネル11とは、偏光フィルタ21の透過軸が、表示光13の偏光方向と垂直になるようにそれぞれ調整されて配置されている。また、偏光フィルタ21は、表示装置10が備える表示パネル11の表側に、表示パネル11に対して所定の角度をなすように配置されている。
【0020】
偏光フィルタ21と表示パネル11とが上記のように配置されることで、表示光13は、偏光フィルタ21の裏面で反射する。この反射した光は、偏光フィルタ21の透過軸と垂直な偏光方向の直線偏光(以下、第1の直線偏光とも呼ぶ。)である。なお、本実施形態における偏光フィルタ21の役割は後に詳細に述べる。
【0021】
λ/4板22は、λ/4板22中を透過する光に、直交する偏光成分間に位相差π/2(90°)を与える複屈折素子である。つまり、λ/4板22を透過する光は、透過前後で、位相がπ/2ずれることになる。λ/4板22は、人工水晶で形成されており、進相軸(fast軸)と、遅相軸(slow軸)とを有する。λ/4板22は、進相軸に対し+−45°の角度(換言すれば、遅相軸に対して−+45°の角度)で入射した直線偏光を円偏光にし、逆に、円偏光を直線偏光にする。
【0022】
λ/4板22は、図2に示すように、偏光フィルタ21の裏面側であって、偏光フィルタ21に対して傾斜を有して配置される。これにより、偏光フィルタ21で反射した光(第1の直線偏光)を受けることができる。また、λ/4板22は、その進相軸が第1の直線偏光の偏光方向(即ち、偏光フィルタ21の透過軸と垂直な方向)に対して、+45°又は−45°になるように調整され配置されている。なお、λ/4板22は、光の透過率に優れるため、光の利用効率の悪化を防止することができる。
【0023】
λ/4板22は上記のように配置されるため、第1の直線偏光は、λ/4板22を透過した後は、円偏光(以下、第1の円偏光と呼ぶ。)へと変換される。なお、λ/4板22の役割については詳しくは後述する。
【0024】
また、λ/4板22は、その表面及び裏面に、図示しない反射防止膜(ARコーティング(Antireflection Film))を備えている。反射防止膜は、透明な薄膜状に形成されている。λ/4板22の表面では、入射光に対して僅かな反射光が生じるが、反射防止膜を設けることで、反射光に起因する表面反射を軽減し、λ/4板22の透過率をさらに増加することができる。この反射防止膜は、単層の反射防止膜であってもよいし、より良好な反射防止効果を得るため真空蒸着法等によって作られる多層の反射防止膜であってもよい。このように、反射防止膜を備えたλ/4板22は、光の透過率が99%以上あるため、光の利用効率の悪化をほぼ無視することができる。
【0025】
再帰反射プリズム23は、例えば、レトロリフレクタがアレイ状に配置されたレトロリフレクタアレイを含む。レトロリフレクタは、入射光をその入射光と平行かつ逆の方向に反射する(即ち、再帰反射する)。このようなレトロリフレクタをアレイ状に配置したものがレトロリフレクタアレイである。レトロリフレクタアレイにおいては、レトロリフレクタは平面上に存在している必要はなく、曲面上にあってもよい。また、レトロリフレクタは同一面上に存在している必要はなく、各レトロリフレクタは3次元的に散在していてもよい。なお、レトロリフレクタアレイは、再帰反射プリズム23の裏面に適宜の方法で形成されている凹凸によって構成されている。
【0026】
レトロリフレクタとしては、3つの隣接する鏡面から構成されるコーナーリフレクタ、キャッツアイレトロリフレクタ等がある。コーナーリフレクタとしては、例えば、相互に直交する3つの鏡面から構成されるコーナーリフレクタ、3つの隣接する鏡面がなす角度のうちの2つが90°であって、他の1つの角度が90°/N(ただしNは整数)であるコーナーリフレクタがある。また、また、コーナーリフレクタは、3つの鏡面がなす角度が90°、60°及び45°である鋭角レトロリフレクタ等であってもよい。
【0027】
再帰反射プリズム23は、図2に示すように、その表面がλ/4板22の裏面に接するように配置されている。このように配置された再帰反射プリズム23は、λ/4板22を透過し偏光された第1の円偏光を、再帰反射する。また、第1の円偏光は、再帰反射した後は、再帰反射前と回転方向が逆の円偏光(以下、第2の円偏光と呼ぶ。)となる。ある回転の円偏光が反射した場合、反射後の円偏光は、反射前の円偏光と回転方向が逆となる。再帰反射プリズム23で光が再帰反射する場合、入射光は、3回の反射によって再帰反射する。このため、第1の円偏光と第2の円偏光とでは、その回転方向が逆になっている。つまり、再帰反射プリズム23は、円偏光の回転方向を再帰反射前後で逆にする。
【0028】
なお、本実施形態では、図2に示すように、再帰反射プリズム23を、その表面がλ/4板22の裏面に接するように配置しているが、第1の円偏光を受けられる位置にある限り、再帰反射プリズム23の形状や位置は限定されない。また、再帰反射プリズム23を、λ/4板22の裏面側に、所定間隔を空けて配置してもよい。後述するように、表示光13を実像40として結像させるには、再帰反射プリズム23は、第1の円偏光を、偏光フィルタ21の位置する方向に再帰反射させることができればよいためである。
【0029】
背景表示部30は、例えば、指針と、目盛り及び数字からなる指標部とを備えた車両用の速度計である。背景表示部30は、偏光フィルタ21の表側であって、実像40より前方に配置されている。また、背景表示部30は、観察者がλ/4板23の表面とともに視認できる位置に配置される。このように配置されることで、観察者は、後述する実像40と背景表示部30とを一度に、立体的に視認することができる。表示光13が、実像40として、どのように結像するかは、後に詳細に述べる。
【0030】
筐体は、合成樹脂等から形成され、表示装置10と、光学系20と、背景表示部30とを上記所定の位置に固定するために用いられる。筐体でこれらの部材が固定されることにより、図2に示すように、表示装置10と、偏光フィルタ21と、λ/4板22とは、断面三角形状に組み合わされている。また、筐体は、表示部30からの表示光13が、不必要に外部に漏れないように構成されている。筐体がこのように構成されることで、結像装置1の内部には、表示装置10と、ワイヤグリッド板21と、λ/4板22と、筐体とで囲まれた略密閉空間が設けられている。このように、略密閉空間が設けられることで、横方向(図2における、結像装置1の断面形状が見える方向及びその方向の逆方向)から外光が入り込むことを防ぐことができる。外光を防ぐことができれば、λ/4板22が有する面で、意図せず発生する表面反射及び写り込みを防ぐことができ、視認性の悪化を防ぐことができる。なお、筐体は、上記した結像装置1の構成部材を一度に格納するようにはじめから一体的に形成されていてもよいし、このような筐体より小さい部分からなる複数の小筐体により構成され、これらの小筐体を嵌め合わせることで、上記構成部材を一体的に組み合わせるような形状で形成されてもよい。
【0031】
また、上記筐体等によって、表示装置10と、光学系20とが固定されるが、表示パネル11とλ/4板22とのなす角は90°以上が好ましい。表示光13が偏光フィルタ21に入射するのを遮らないためである。また、表示パネル11と偏光フィルタ21とのなす角は、図2のように、45°でなくても良い。実像40は表示画像12に対して偏光フィルタ21を基準面とした面対象の位置に現れるため、実像40を任意の位置に浮かび上がらせるための角度とすればよいからである。
【0032】
以下に、上記のように構成された本実施形態に係る結像装置1が、どのように表示光13を実像40として結像するかを、図2及び図3を参照して、説明する。なお、図3では、直線偏光を直線矢印で、円偏光を点線矢印で表している。
【0033】
以下では、説明便宜上、偏光フィルタ21の透過軸に垂直な偏光方向を「+」方向とし、+方向と垂直する偏光方向(偏光フィルタ21の透過軸に平行な方向)を「−」方向とする。また、直線偏光がその偏光方向に対して所定の角度で配置されたλ/4板22を透過した場合、円偏光に変換されるが、+方向の直線偏光がλ/4板22で変換された場合「右円偏光」になるとし、−方向の直線偏光がλ/4板22で変換された場合「左円偏光」になると表現する。また、表示光13は、+方向の直線偏光であるとする。
【0034】
+方向の直線偏光として出射される表示光13は、偏光フィルタ21の裏面に入射する。偏光フィルタ21は、その透過軸が表示光13の偏光方向(+方向)と垂直となる向きで配置されているので、表示光13を、λ/4板22の位置する方向へ略全反射する。この反射光は、+方向の直線偏光(第1の直線偏光)のままである。
【0035】
第1の直線偏光は、λ/4板22の表面に入射し、λ/4板22を略全透過する。このように透過した第1の直線偏光は、右円偏光(第1の円偏光)に変換されて出射される。その後、第1の円偏光は、λ/4板22の裏側にある再帰反射プリズム23へ入射する。
【0036】
第1の円偏光は、再帰反射プリズム23で再帰反射することで、回転方向が逆転し、左円偏光(第2の円偏光)となる。
【0037】
第2の円偏光は、λ/4板22の裏面に入射し、λ/4板22を略全透過する。すると、第2の円偏光は、λ/4板22透過後は、−方向の直線偏光の光(第2の直線偏光)となる。
【0038】
本実施形態に係る光学系20では、λ/4板22及び再帰反射プリズム23が再帰反射部を構成している。本実施形態では、上記のような構成によって、再帰反射部は、偏光フィルタ21で反射された第1の直線偏光が入射し、入射した第1の直線偏光を、その偏光方向を変更し、第1の直線偏光の偏光方向に対して垂直な偏光方向を有する第2の直線偏光として再帰反射する。λ/4板22に最初に入射する前は+方向である第1の直線偏光は、再帰反射部によって、光の偏光方向が90°回転し、−方向の第2の直線偏光となって偏光フィルタ21の裏面に向かって出射する。
【0039】
第2の直線偏光は、偏光フィルタ21の裏面に入射する。今度は、−方向の直線偏光として入射するため(即ち、透過軸と平行する偏光方向の直線偏光となっているため)、第2の直線偏光は、偏光フィルタ21を略全透過する。
【0040】
偏光フィルタ21を略全透過した第2の直線偏光は、偏光フィルタ21について、表示画像12と面対称の位置の空中に、表示画像12を表す像を実像40として結像する(図2参照)。
【0041】
以上のように、表示光13は、第1の直線偏光として出射され、結像装置1が備える光学系20により偏光を繰り返され、結果的には、第2の直線偏光となる。そして、第2の直線偏光は、表示画像12を表す像を実像40として結像する。観察者は、偏光フィルタ21を透過した第2の直線偏光の進行方向に対向する方向から空中に浮かぶ実像40を観察することができる。
【0042】
本実施形態に係る結像装置1では、偏光フィルタ21で反射した第1の直線偏光は、さらに再帰反射プリズム23で再帰反射するが、再帰反射プリズム23で再帰反射する前後でλ/4板22を透過する。これによって、λ/4板22を1回目に透過する前は+方向の直線偏光であった第1の直線偏光は、上述した通り、左円偏光(第1の円偏光)と右円偏光(第2の円偏光)とを経て、−方向の直線偏光である第2の直線偏光となる。表示光13が、第2の直線偏光となったことによって、今度は、偏光フィルタ21を略全透過することができるため、実像40として結像する光の損失量が少ない。よって、本実施形態に係る結像装置1では、再帰反射後における光の利用効率が良好である。
【0043】
また、結像装置1では、偏光フィルタ21が、その透過軸が+方向の偏光方向と垂直となるように配置されているため、+方向の直線偏光である表示光13を略全反射する。そのため、再帰反射前においても、実像40として結像する光の損失量が少ない。よって、結像装置1によれば、再帰反射後だけでなく再帰反射前においても、実像40として結像する光の損失量が少ないと言える。つまり、本実施形態に係る結像装置1によれば、結像の際の光の利用効率が良好である。
【0044】
また、本実施形態に係る結像装置1は、偏光フィルタ21の表面側に、従来技術の一例のように再帰反射部等の追加部材(上記特許文献1の図3参照)を設ける必要がなく、光の利用効率が良い光学系を簡単な構成で実現させることが可能である。
【0045】
また、本実施形態に係る結像装置1によれば、外光反射を抑えることができる。以下に、図4を参照して、その理由を説明する。なお、図4では、図3と同様に、直線偏光を直線矢印で、円偏光を点線矢印で表している。さらに、外光を一点鎖線矢印で表している。
【0046】
外光は、偏光板フィルタ21を透過することで、透過後は−方向の直線偏光(以下、第3の直線偏光)となる。
【0047】
第3の直線偏光は、λ/4板22の表面に入射し、λ/4板22を透過する。このように透過した第3の直線偏光は、左円偏光(以下、第3の円偏光と呼ぶ。)となる。第3の円偏光は、λ/4板22の裏側にある再帰反射プリズム23へ入射する。
【0048】
第3の円偏光は、再帰反射プリズム23で再帰反射することで、右円偏光(以下、第4の円偏光と呼ぶ。)となる。
【0049】
第4の円偏光は、λ/4板22の裏面に入射し、λ/4板22を透過する。すると、第4の円偏光は、λ/板22透過後は、+方向の直線偏光(以下、第4の直線偏光と呼ぶ。)となる。
【0050】
第4の直線偏光は、偏光フィルタ21の裏面に入射する。今度は、+方向の直線偏光として入射するため(即ち、透過軸と垂直する偏光方向を持つ直線偏光となっているため)、第4の直線偏光は、偏光フィルタ21を透過することができない。
【0051】
以上より、外光のうち偏光フィルタ21を透過した光は、偏光フィルタ21の表面に出光しないため、本実施形態に係る結像装置1によれば、外光反射を抑えることができる。
【0052】
また、結像装置1は、図2に示すように、偏光フィルタ21の表面側であって、偏光フィルタ21を透過した第2の直線偏光の進行方向と対向する方向に視線を合わせる観察者から見て、実像40よりも後方に、背景表示部30をさらに備える。このような構成により、観察者は、実像40と背景表示部30とを、一度に視認することができるため、斬新な情報の表示が可能である。なお、結像装置1は、従来技術の一例のように実像の前方に再帰反射部等の部材を設けなくともよい構成であるため、このような背景表示部30の設置が容易となっている。
【0053】
また、結像装置1は、λ/4板22の表面及び裏面に、反射防止部を備える。これにより、λ/4板22における、表示光13の表面反射及び映り込みを防止することができるため、視認性を向上できる。
【0054】
(変形例)
以下に、結像装置の変形例について述べる。なお、図5及び図6では、上記実施形態に係る結像装置1と共通又は対応する構成については同一の符号を付している。また、結像装置の構成部材以外の部材では、ハッチングを省略した。但し、画像については、上記実施形態同様、グラデーションを用いて表している。
【0055】
上記実施形態では、表示装置10を備えた結像装置1について述べたが、本発明はこれに限られない。図5に示す結像装置2のように、結像装置2は表示装置を備えず(つまり、表示パネルも備えない)、外部の表示装置に結像装置2を備え付けるようにしてもよい。また、図6に示す結像装置3のように、結像装置3は表示装置を備えず、外部の表示装置から出射された表示光を、外部のスクリーンを介して、偏光フィルタ21に照射させてもよい。
【0056】
また、上記実施形態に係る表示装置10は、液晶パネルである表示パネル11を備えるが、これに限られない。例えば、表示パネルとして、有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイ等を採用することもできる。また、上記実施形態に係る表示装置10は、液晶パネルである表示パネル11を備えるため、直線偏光を出射したが、これに限られない。結像装置が備える表示装置であるか、外部の表示装置であるかに関わらず、表示装置は円偏光を出射してもよい。なお、円偏光は適宜楕円偏光であってもよい。
【0057】
表示光が円偏光として出射される場合は、偏光フィルタ21に初めて入射し、反射する際に多少の損失が生じる。偏光フィルタ21は、表示光のうちの、偏光フィルタ21の透過軸と平行な偏光方向の光を透過し、透過軸と垂直な偏光方向の光を反射するので、透過した光が損失になるからである。なお、偏光フィルタ21を透過した光は、−方向の直線偏光である。偏光フィルタ21を反射した光は、+方向の直線偏光である。
【0058】
しかし、表示光が円偏光である場合であっても、一度、偏光フィルタ21で反射した後は、その反射光が+方向の直線偏光(第1の直線偏光)となっているため、偏光フィルタ21で反射後の偏光成分の変遷については区別なく、結像装置1の場合と同様に説明できる(図7参照(図3と同様の表現で偏光成分等を表した))。このため、結像装置1の場合と同様に、実像40として結像する光がほとんど損失しない。このように、表示光が円偏光として出射される変形例に係る結像装置によっても、再帰反射後における光の利用効率が良好である。
【0059】
また、表示器が出射する表示光が円偏光である場合、表示光の出射点(所定の表示部)と偏光フィルタ21との間に、図5に示すように、追加して、λ/4板222を配置することもできる。このように、λ/4板222を設けることで、偏光フィルタ21に入射する、表示画像を表す表示光を+方向の直線偏光(第1の直線偏光)とすることができる。追加するλ/4板222は、λ/4板222を透過する表示光が、透過後に+方向の直線偏光(第1の直線偏光)となるように調整して配置すればよい。このようにすれば、表示光が偏光フィルタ21で略全反射できるため、結像装置1と同様に、結像の際の光の利用効率が良好である。
【0060】
また、上記実施形態に係る再帰反射プリズム23は、レトロリフレクタアレイとしたが、これに限られない。入射光を再帰反射するのであれば、プリズムでなくても、膜やコーティングでもよい。また、再帰反射させる部材の形状は、平面でも曲面でもよい。
【0061】
また、上記実施形態に係る背景表示部30は、車両用の速度計としたが、これに限られない。実像40と併せて情報を表示することができればよいのであって、計器、静止画像、動画を表示するもの等、適宜目的に併せて背景表示部を選択すればよい。例えば、背景表示部に液晶パネルを備えることで様々な画像を表示してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、結像装置1が背景表示部30を備えているが、これに限られない。図6に示すように、結像装置3が背景表示部を備えておらず、外部の背景表示部を利用してもよい。なお、背景表示部が結像装置の構成部材であるとないとに関わらず、背景表示部は、平面状のものでも、立体状のものでもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 結像装置
10 表示装置
11 表示パネル
12 表示画像
13 表示光
20 光学系
21 偏光フィルタ
22 λ/4板
23 再帰反射プリズム
30 背景表示部
40 実像

2 結像装置
222 λ/4板
3 結像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部に表示された表示画像を表す像を結像する結像装置であって、
透過軸に平行な偏光方向の光を透過し、前記透過軸に垂直な偏光方向の光を反射する偏光フィルタであって、前記表示画像を表す表示光が裏面側から入射し、入射した前記表示光の、前記透過軸に垂直な偏光方向成分の光を第1の直線偏光として反射する偏光フィルタと、
前記偏光フィルタで反射された前記第1の直線偏光が入射し、入射した前記第1の直線偏光を、その偏光方向を変更し、前記第1の直線偏光の偏光方向に対して垂直な偏光方向を有する第2の直線偏光として再帰反射する再帰反射部と、を備え、
前記再帰反射部で反射した前記第2の直線偏光は、前記偏光フィルタを透過し、前記偏光フィルタの表面側で、前記表示画像を表す像を結像する、
ことを特徴とする結像装置。
【請求項2】
前記再帰反射部は、
透過していく光の位相差を変更する第1の位相差板と、
前記第1の位相差板の裏面側に位置し、入射光を再帰反射する再帰反射板と、を備え、
前記第1の直線偏光は、前記第1の位相差板を透過し、前記再帰反射板で再帰反射し、前記第1の位相差板を再度透過することによって、前記第2の直線偏光に変換されるとともに、再帰反射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の結像装置。
【請求項3】
前記偏光フィルタに入射する前記表示光は、前記第1の直線偏光であり、
前記偏光フィルタは、その透過軸が第1の直線偏光の偏光方向と垂直になるように配置され、前記第1の直線偏光を略全反射する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の結像装置。
【請求項4】
前記表示部と前記偏光フィルタとの間に第2の位相板をさらに備え、
前記第1の直線偏光は、前記表示画像から出射された円偏光が前記第2の位相差板で偏光された光である、
ことを特徴とする請求項3に記載の結像装置。
【請求項5】
前記偏光板の表面側に、前記実像の背景を表示する背景表示部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の結像装置。
【請求項6】
前記第1の位相差板は、入射する光の反射を防止する反射防止部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の結像装置。
【請求項7】
前記第1の位相差板は、λ/4板である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の結像装置。
【請求項8】
前記第2の位相差板は、λ/4板である、
ことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の結像装置。
【請求項9】
前記偏光フィルタは、ワイヤグリッド偏光フィルタである、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の結像装置。
【請求項10】
前記表示部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の結像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−253128(P2011−253128A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128287(P2010−128287)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】