説明

結合治具および籠体

【課題】 ストランドへの治具取り付け、帯鉄筋への治具取り付け、籠体の組立などの各工程における作業性が良く、経済的で、籠体の長さを十分に縮小できる結合治具および籠体を提供すること。
【解決手段】 ネジスタッド15の一端が溶接部23によって固定されたスリーブ9にストランド3を通し、スリーブ9内に樹脂19を充填し、ストランド3とスリーブ9とを一体化する。また、アングル材11を帯鉄筋5に溶接する。そして、スリーブ9に固定されたネジスタッド15を、ワッシャ13、帯鉄筋5に固定されたアングル材11に挿通し、ネジ部21にナット16、ナット17を捩じ込む。アングル材11に対して筒状部材9を回転させて帯鉄筋5とストランド3との交差角を変化させつつ、ストランド3を螺旋状にすると同時に帯筋5の配筋間隔を徐々に縮めて、籠体1の長さを短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合治具および籠体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、杭等を建設しようとする場所の上方の空間に制限がある場合には、(1)軸方向の鋼材に使用するストランドをドラムに巻きつけておき、ストランドを掘削孔に建て込みつつ帯筋を設置して籠体を組み立てる方法(例えば、特許文献1)や、(2)軸方向の鋼材にストランドを用いた籠体を、掘削孔の入り口付近で曲げつつ掘削孔内に降下させる方法(例えば、特許文献2参照)があった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−36294号公報
【特許文献2】特開平11−293668号公報
【0004】
また、(3)結束治具を用いて、軸筋であるストランドと帯筋とを交差角が変化可能なように結束して籠体を形成し、ストランドを円弧状に曲げて長さを縮めた状態の籠体を、ストランドを直線状に戻しつつ掘削孔に設置する方法が提案されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、(1)の方法では、孔の直上にストランドの本数と同じ数量のドラムを含む設置用機材を配置する必要があるため、広い作業領域が必要となるうえ、頻繁に継手を入れるため作業効率が良くない。(2)の方法では、組み立てた鉄筋籠を限られた空頭内で曲げるのが困難である。
【0006】
(3)の方法は、(1)、(2)の問題点を解決するものであるが、その結合治具は、ストランドと帯鉄筋をそれぞれ断面が円形の部材で保持し、結合するものであった。結合治具の寸法や構造は,完成した杭の曲げモーメントやせん断力に対する耐荷性能、籠体を製造する過程における作業の容易さ、籠体の縮小率などにおいて極めて重要な役割を担っており、改良が望まれていた。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ストランドへの治具取り付け、帯鉄筋への治具取り付け、籠体の組立などの各工程における作業性が良く、経済的で、籠体の長さを十分に縮小できる結合治具および籠体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための第1の発明は、軸筋であるストランドを保持する筒状部材と、前記ストランドの周囲に設けられた帯筋に固定されたアングル材と、端部が前記筒状部材に固定され、前記アングル材を貫通する棒材と、前記アングル材が前記棒材から抜けることを防ぐために前記棒材に設置される部材と、からなり、前記アングル材に対して前記筒状部材が回転することを特徴とする結合治具である。
【0009】
筒状部材は、例えば鋼管とする。この場合、ストランドを鋼管の内部に通し、ストランドと鋼管との間に樹脂等の接着剤を充填する。筒状部材は、筒軸方向の2辺を外側に曲げて形成した外向き溝を有する第1の半筒体と、筒軸方向の2辺を内側に曲げて形成した内向き溝を有する第2の半筒体とからなるものとしてもよい。この場合、ストランドを第1の半筒体内に配置し、第1の半筒体の外向き溝と第2の半筒体の内向き溝とを嵌め合わせて、第1の半筒体と第2の半筒体とをストランドを挟んで一体化させる。
【0010】
棒材は、ボルト、ネジスタッド等とする。アングル材を、筒状部材に固定されたボルト、ネジスタッド等に挿通することにより、アングル材に対する筒状部材の回転が可能となる。また、アングル材がボルト、ネジスタッド等から抜けることを防ぐために、ナットがボルト、ネジスタッド等に固定される。
【0011】
第2の発明は、軸筋であるストランドを保持する筒状部材と、凹型に成形され、前記凹型の底部に穴を有し、前記凹型の上端部が前記ストランドの周囲に設けられた帯筋に固定されたプレス材と、一端に設けられた拡径部が前記穴を介して前記凹型の内部に配置され、他端が前記筒状部材に固定された棒材と、を具備し、前記プレス材に対して前記筒状部材が回転することを具備することを特徴とする結合治具である。
【0012】
プレス材に設けられる穴は、径が棒材の拡径部の径より大きい第1の穴と、径が棒材の拡径部の径より小さく棒材の通常部の径より大きい第2の穴とを連続して配置したものとするのが望ましい。棒材の拡径部は、第1の穴に通してプレス材の凹型の内部に配置される。そして、棒材を第2の穴の方向に移動させた後、第1の穴が塞がれる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明の結合治具を用いて、ストランドと帯筋とが結合されたことを特徴とする籠体である。帯筋の内側には、必要に応じて補強リングが設置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ストランドへの治具取り付け、帯鉄筋への治具取り付け、籠体の組立などの各工程における作業性が良く、経済的で、籠体の長さを十分に縮小できる結合治具および籠体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、籠体1の立面図である。図1の(a)図は、通常の状態の籠体1の立面図、図1の(b)図は、長さを縮めた状態の籠体1の立面図を示す。図1に示すように、籠体1は、軸筋であるストランド3、複数のストランド3を囲むように配置された帯筋5等からなる。
【0016】
ストランド3は、帯筋5の直径と同程度以上に曲げても強度等に問題が生じないような、可撓性を有する材料とする。ストランド3には、例えば、PC鋼より線、ワイヤロープの他、炭素繊維、グラスファイバー、アラミド繊維等の繊維をより合わせたもの等が用いられる。帯筋5は、鉄筋等とする。
【0017】
図2は、ストランド3と帯鉄筋5の結合に用いる回転結合治具7(7a)の斜視図である。図3は、ストランド3と帯鉄筋5との結合部の断面図である。図3の(a)図は、図1の(a)図のBaに示す部分を拡大したものの断面図、図3の(b)図は、図1の(b)図のBbに示す部分を拡大したものの断面図である。
【0018】
図2、図3に示すように、回転結合治具7は、スリーブ9、アングル材11、ワッシャ13、ネジスタッド15、ナット16、ナット17等からなる。スリーブ9は、ストランド3を保持する筒状部材である。スリーブ9の内部にはストランド3が通され、スリーブ9とストランド3との間には、接着剤として樹脂19等が充填される。ネジスタッド15は、その一端の溶接部23において、スリーブ9の外側面に固定される。
【0019】
アングル材11は、辺11aと辺11bとからなる。アングル材11の辺11aの外側面12aは、フレア溶接等によって帯鉄筋5に固定される。帯鉄筋5は、通常、1本の鉄筋を円弧状に加工し、両端を重ね合せた部分をフレア溶接して1本の環状としている。この溶接は、適切な管理のもとに行えれば、帯鉄筋5としての強度などの所要性能を確保することができる。アングル材11を帯鉄筋5に固定する際にも、適切な方法と管理によって直接溶接することにより、十分な強度が得られる。
【0020】
ネジスタッド15の溶接部23の周囲には、ワッシャ13が配置される。ネジスタッド15のネジ部21は、アングル材11の辺11bに挿通される。ワッシャ13はネジスタッド15とアングル材11の回転を円滑にする。ナット16およびナット17は、お互いを締付けるように螺合することでネジスタッド15に固定され、ネジスタッド15がアングル材11から抜け出すのを防ぐ。
【0021】
回転結合治具7を用いてストランド3と帯鉄筋5とを結合するには、例えば、ネジスタッド15が固定されたスリーブ9の内部にストランド3を通して樹脂19を充填する。また、アングル11の辺11aに帯鉄筋5を溶接しておく。そして、ネジスタッド15をワッシャ13、アングル材11に挿通し、ネジ部21にナット16、ナット17を捩じ込む。
【0022】
回転結合治具7を用いて籠体1を組み立てる際には、アングル材11の辺11bが同心円上に配置されるようにすれば、ストランド3が真円上に配置される。そのため、辺11aに溶接される帯鉄筋5の真円誤差による位置の多少不ぞろいは問題とならない。
【0023】
回転結合治具7では、図2の矢印Cに示すように、アングル材11に対して、ネジスタッド15が固定されたスリーブ9が回転する。これにより、籠体1では、ストランド3と帯鉄筋5との交差角を変化させることができる。
【0024】
籠体1が図1の(a)図に示す状態のとき、Baに示すストランド3と帯鉄筋5との交差点は図3の(a)図に示す状態であるが、図1の(a)図の矢印Aに示す方向にストランド3を曲げると、図3の(b)図に示すように、帯鉄筋5とストランド3との交差角が変化し、ストランド3が螺旋状になると同時に帯筋5の配筋間隔が徐々に縮まり、図1の(b)図に示すように籠体1の長さが短くなる。
【0025】
籠体1は、図1の(b)図に示すように縮小された状態から、図1の(a)図に示すように伸展させつつ、地盤に掘削された孔内に設置される。籠体1を伸展させる際には、帯鉄筋5とストランド3との交差角が変化して、ストランド3が直線状になると同時に、帯筋5の配筋間隔が徐々に大きくなる。
【0026】
このように、第1の実施の形態の回転結合治具7を用いれば、帯鉄筋5へのアングル材11の取り付けと、ストランド3へのスリーブ9の取り付けを別工程で行え、分業が可能であるので、製造効率が良い。アングル材11に帯鉄筋5を直接溶接するため、従来の治具と比較して、部品数が少なく、コストが安くなる。また、帯鉄筋5の加工精度を必要以上に厳しくする必要がなく、真円に対して誤差をもっている場合にも、精度のよい籠体1を容易に製造することができる。
【0027】
次に、第2の実施の形態について説明する。図4は、帯鉄筋5に取り付けた回転結合治具25の図である。図4の(a)図は、帯鉄筋5に取り付けた回転結合治具25を円形の帯鉄筋5の上下方向から見た図、図4の(b)図は、帯鉄筋5に取り付けた回転結合治具25を円形の帯鉄筋5の内側方向から見た図を示す。
【0028】
第2の実施の形態では、図1に示す籠体1を組み立てる際に、図2、図3に示す回転結合治具7のかわりに、回転結合治具25を用いる。図5は、ストランド3と帯鉄筋5との結合部の断面図である。図5の(a)図は、図1の(a)図のBaに示す部分を拡大したものの断面図、図5の(b)図は、図1の(b)図のBbに示す部分を拡大したものの断面図である。
【0029】
図4、図5に示すように、回転結合治具25は、スリーブ9、プレス材27、スタッド31、外れ止め37等からなる。図5に示すように、スリーブ9は、ストランド3を保持する筒状部材である。スリーブ9の内部にはストランド3が通され、スリーブ9とストランド3との間には、接着剤として樹脂19等が充填される。
【0030】
図4の(a)図に示すように、スタッド31は、本体35と、本体35の片端の溶接部33と、本体35の他端に設けられた拡径部である頭部29とからなる。スタッド31は、その一端の溶接部33において、スリーブ9の外側面に固定される。また、外れ止め37は、板状材の2辺を、それぞれL字型とコの字型に曲げて形成したものである。
【0031】
図4の(a)図に示すように、プレス材27は、凹型部28の凹型の上端に溶接部30を設けて成形され、溶接部30が帯鉄筋5に固定される。プレス材27を帯鉄筋5に固定する際にも、第1の実施の形態でのアングル材11の帯鉄筋5への固定と同様に、適切な方法と管理によって直接溶接することにより、帯鉄筋5としての十分な強度が得られる。
【0032】
図4の(b)図に示すように、プレス材27の凹型部28の底部32には、鍵穴39が設けられる。鍵穴39は、径がスタッド31の頭部29の径より大きい穴39aと、径がスタッド31の頭部29の径より小さく本体35の径より大きい穴39bとを連続して配置したものである。
【0033】
図4、図5に示すように、スタッド31の頭部29は、プレス材27の凹型部28の内部に配置される。スタッド31の本体35は、穴39b内に配置される。なお、図5に示すように、回転結合治具25の供用中には、図4の(b)図に示すように、外れ止め37をプレス材27に嵌め込むことによって穴39aが塞がれる。外れ止め37は、スタッド31の頭部39が鍵穴39から抜けるのを防ぐ。
【0034】
回転結合治具25を用いてストランド3と帯鉄筋5とを結合するには、例えば、スリーブ9の外側面にスタッド31を固定し、内部にストランド3を通して樹脂19を充填する。また、プレス材27を帯鉄筋5に固定しておく。そして、プレス材27の鍵穴39の穴39aにスタッド31の頭部29を挿入し、スタッド31を図4の(a)図の矢印Eに示す方向に移動させて本体31を穴39b内に配置した後、図4の(b)図に示すように外れ止め37をプレス材27に嵌め込んで穴39aを塞ぐ。
【0035】
回転結合治具25では、図4の(b)図の矢印Fに示すように、プレス材27に対して、スリーブ9に固定されたスタッド31が回転する。これにより、籠体1では、ストランド3と帯鉄筋5との交差角を変化させることができる。
【0036】
籠体1が図1の(a)図に示す状態のとき、Baに示すストランド3と帯鉄筋5との交差点は図5の(a)図に示す状態であるが、図1の(a)図の矢印Aに示す方向にストランド3を曲げると、図5の(b)図に示すように、帯鉄筋5とストランド3との交差角が変化し、ストランド3が螺旋状になると同時に帯筋5の配筋間隔が徐々に縮まり、図1の(b)図に示すように籠体1の長さが短くなる。
【0037】
このように、第2の実施の形態の回転結合治具25を用いれば、帯鉄筋5へのプレス材27の取り付けと、ストランド3へのスリーブ9の取り付けを別工程で行え、分業が可能であるので、製造効率が良い。また、籠体1の組立は極めて簡単で、工場、工事現場の作業ヤードのいずれにおいても可能である。さらに、帯鉄筋5を含めた回転結合治具25の高さ寸法が小さいので、籠体1の縮小率が回転結合治具25を含む帯鉄筋5で決まってしまう場合には、第1の実施の形態よりも縮小率を向上することができる。
【0038】
なお、プレス材27を帯鉄筋5に固定する方法は、溶接でなくてもよい。また、鍵穴39のうち穴39aを塞ぐ部材は、外れ止め37に限らず、樹脂製のリベット等を穴39aに取り付けてもよい。頭部29を有するスタッド31は、ナットとボルトを一体化したものでも代用できる。さらに、帯鉄筋5の軸直角方向に穴39aと穴39bを配置して鍵穴39を形成し、籠体1の組立時にスタッド31を軸直角方向にスライドさせて穴39aを塞いでもよい。但し、図4、図5に示すように、ストランド3の可撓性を利用して、スタッド31を帯鉄筋5の軸方向にスライドさせる方が望ましい。
【0039】
次に、第3の実施の形態について説明する。図6は、帯鉄筋5aとストランド3の結合に用いる回転結合治具7bの各部品を示す図である。図7は、ストランド3と帯鉄筋5との結合部の断面図を示す図である。図7の(a)図は、図1の(a)図のBcに示す部分を拡大したものの断面図、図7の(b)図は、図1の(b)図のBdに示す部分を拡大したものの断面図である。
【0040】
第3の実施の形態では、図1に示す籠体1を組み立てる際に、上下端の帯鉄筋5の位置において、ストランド3の内側に補強リング45を設置する。図6に示すように、上下端の帯鉄筋5aとストランド3の交差部には、回転結合治具7bが設置される。
【0041】
図6に示すように、回転結合治具7bは、回転結合治具7a(図2)の構成部品に、さらに、ネジスタッド41、ワッシャ43、補強リング45、ナット46、ナット47等を追加して構成される。
【0042】
回転結合治具7bのネジスタッド41は、図7に示すように、溶接部42において、スリーブ9の外側面に固定される。ネジスタッド41は、ネジスタッド15と回転軸が一致するように配置される。
【0043】
ネジスタッド41の溶接部42の周囲には、ワッシャ43が配置される。ネジスタッド41のネジ部44は、補強リング45に挿通される。ワッシャ43はネジスタッド41と補強リング45の回転を円滑にする。ナット47およびナット46は、お互いを締付けるように螺合することでネジスタッド41に固定され、ネジスタッド41が補強リング45から抜け出すのを防ぐ。
【0044】
補強リング45は、図6に示すように、複数の円弧状の平板48、平板状の連結材49、頭付きボルト51、ナット53からなる。補強リング45は、平板48の端部を突き合せた状態で、連結材49に挟まれる。平板48と連結材49とは、ボルト51およびナット53により一体化される。
【0045】
回転結合治具7bを用いてストランド3と帯鉄筋5aとを結合するには、例えば、スリーブ9にネジスタッド15、ネジスタッド41を固定した状態で、スリーブ9の内部にストランド3を通して樹脂19を充填する。また、アングル11の辺11aに、帯鉄筋5aを溶接しておく。
【0046】
その後、ネジスタッド15に、ワッシャ13、帯鉄筋5aを溶接したアングル材11を挿通し、ネジ部21にナット16、ナット17を捩じ込む。前後して、ネジスタッド41に、ワッシャ43、平板48を挿通し、ネジ部44にナット47、ナット46を捩じ込む。さらに、平板48端部に連結材49を配置し、平板48と連結材49に頭付きボルト51を挿入し、頭付きボルト51にナット53を捩じ込んで複数の平板48を一体化し、円形の補強リング45とする。
【0047】
図7に示す回転結合治具7bでは、アングル材11に対して、ネジスタッド15が固定されたスリーブ9が回転する。また、補強リング45に対して、ネジスタッド41が固定されたスリーブ9が回転する。これにより、籠体1では、ストランド3と帯鉄筋5との交差角を変化させることができる。
【0048】
籠体1が図1の(a)図に示す状態のとき、Bcに示すストランド3と帯鉄筋5aとの交差点は図7の(a)図に示す状態であるが、図1の(a)図の矢印Aに示す方向にストランド3を曲げると、図7の(b)図に示すように、帯鉄筋5aとストランド3との交差角が変化し、ストランド3が螺旋状になると同時に帯筋5の配筋間隔が徐々に縮まり、図1の(b)図に示すように籠体1の長さが短くなる。
【0049】
縮小される途中の状態にある籠体1のストランド3には、曲げと捩じれが生じており、これを帯鉄筋5とストランド3の交差部に設置される回転結合治具7が拘束している。回転結合治具7に作用する荷重は、籠体1の位置によって異なり、籠体1の端部位置、すなわち、最上下段の帯鉄筋5a位置の回転結合治具7bにおいて最も大きい。回転結合治具7bでは、補強リング45を用いることにより、強度に余裕をもたせることができる。
【0050】
このように、第3の実施の形態によれば、籠体1の上下端部において、第1の実施の形態の回転結合治具7aに補強リング45等を追加した回転結合治具7bを用いる。これにより、回転結合治具7bは、帯鉄筋5aとストランド3の交差部に作用する荷重に対し、十分耐えられるものとなる。追加された補強リング45等は、籠体1が完全に伸展した状態では不要であるので、必要に応じて回収・再利用が可能である。
【0051】
なお、補強リングは、図6に示すような、複数の平板48を円形に一体化したものに限らない。補強リングは、例えば、帯鉄筋5と同様の組立リング鉄筋としてもよい。補強リングの設置位置は、籠体1の上下端のみに限らない。第3の実施の形態では、回転結合治具7aと補強リング45を組み合わせた回転結合治具7bについて説明したが、例えば、強度が高く溶接性に劣る帯鉄筋5を用いる場合には、ストランド3と帯鉄筋5との交差点に何も設けずに、あるいは、交差点を紐状のもので結合し、ストランド3に固定したスリーブ9に補強リング45を設置してもよい。
【0052】
次に、第4の実施の形態について説明する。図8は、ストランド3に回転結合治具55の半割方式治具57a、半割方式治具57bを設置する各工程を示す図である。図8の(a)図は、ストランド3に設置する前の半割方式治具57a、半割方式治具57bの斜視図、図8の(b)図は、半割方式治具57a、半割方式治具57bをストランド3に設置した状態の斜視図である。
【0053】
図9は、ストランド3と帯鉄筋5との結合部の断面図である。図9の(a)図は、図1の(a)図のBaに示す部分を拡大したものの断面図、図9の(b)図は、図1の(b)図のBbに示す部分を拡大したものの断面図である。
【0054】
図9に示すように、回転結合治具55は、半割方式治具57a、半割方式治具57b、アングル材11、ワッシャ13、ネジスタッド15、ナット16、ナット17等からなる。回転結合治具55は、図2および図3に示す回転結合治具7において、スリーブ9の代わりに、半割方式治具57a、半割方式治具57bからなる筒体を用いたものである。
【0055】
図8の(a)図に示すように、半割方式治具57aの本体61a、半割方式治具57bの本体61bは、いずれも、断面がコの字型の半筒体で、筒軸方向の2辺が斜辺となっている。半割方式治具57aの本体61aは、筒軸方向の2辺を外側に曲げて形成した外向き溝59aを有する。半割方式治具57bの本体61bは、筒軸方向の2辺を内側に曲げて形成した内向き溝59bを有する。
【0056】
図8の(b)図に示すように、半割方式治具57aと半割方式治具57bとの間には、ストランド3が挟まれる。半割方式治具57aの外側面には、ネジスタッド15が、その一端の溶接部23において固定される。
【0057】
回転結合治具55を用いてストランド3と帯鉄筋5とを結合するには、例えば、図8の(a)図に示すように、半割方式治具57aの本体61a内にストランド3を配置した後、半割方式治具57aの外向き溝59aの延長上に、半割方式治具57bの内向き溝59bを配置する。そして、外向き溝59aと内向き溝59bとを嵌め合わせつつ、半割方式治具57bを図8の(a)図の矢印Gに示す方向に移動させて、図8の(b)図に示すように、半割方式治具57aと半割方式治具57bとを筒状に一体化する。
【0058】
半割方式治具57aおよび半割方式治具57bとストランド3との間には、必要に応じて樹脂等を充填する。また、適切な時期に、図9に示すように、ネジスタッド15をワッシャ13、帯鉄筋5が溶接されたアングル材11に挿通し、ネジ部21にナット16、ナット17を捩じ込む。
【0059】
回転結合治具55では、帯鉄筋5が固定されたアングル材11に対して、ネジスタッド15が固定された半割方式治具57a、半割方式治具57bが回転する。これにより、籠体1では、ストランド3と帯鉄筋5との交差角を変化させることができる。
【0060】
籠体1が図1の(a)図に示す状態のとき、Baに示すストランド3と帯鉄筋5との交差点は図9の(a)図に示す状態であるが、図1の(a)図の矢印Aに示す方向にストランド3を曲げると、図9の(b)図に示すように、帯鉄筋5とストランド3との交差角が変化し、ストランド3が螺旋状になると同時に帯筋5の配筋間隔が徐々に縮まり、図1の(b)図に示すように籠体1の長さが短くなる。
【0061】
このように、第4の実施の形態では、半筒体の半割方式治具57a、半割方式治具57bを、ストランド3を挟んで一体化させる。第1の実施の形態に示すような筒状のスリーブ9(図2)を用いる場合は、製造ラインでストランド3の端部に圧着スリーブ等を加工する前に必要な数のスリーブ9をストランド3に取り付ける必要があるが、半割方式治具57a、半割方式治具57bは取り付け時期を選ばない。半割方式治具57a、半割方式治具57bは、通常の製造ラインでストランド3の端部に圧着スリーブ等を加工した後にストランド3に取り付けることができる。
【0062】
また、通常、ストランド3の端部は、素線がほどけないようにバンドなどで結束されており、径が大きくなっている。そのため、スリーブ9にストランド3を挿通させる方法では、スリーブ9の内径をストランド3の端部を挿通させることができる大きさとする必要がある。しかし、半割方式治具57a、半割方式治具57bを用いることにより、本体61a、本体61bの大きさをストランド3の外接直径に合わせて設定することができる。
【0063】
回転結合治具55では、本体61a、本体61bの大きさをストランド3の外接直径に合わせて設定するため、ストランド3との固定に使用する樹脂の量を、スリーブ9を用いる場合と比較して、著しく減じることができる。また、ストランド3の中心と、帯鉄筋5に固定されるアングル材11との距離が小さくなるので、軸方向鋼材であるストランド3と帯鉄筋5の間隔(鋼材間隔)を小さくできる。鋼材間隔が小さいと、帯鉄筋5、回転結合治具55、ストランド3の配置位置を決定する際に、最外縁鋼材である帯鉄筋5に対するコンクリートのかぶりを十分に確保すると同時にストランド3の配置直径を大きくでき、曲げに対する有効高さが大きく取れるので、断面性能がよいことに繋がる。
【0064】
なお、回転結合治具55では、半割方式治具57a、半割方式治具57bの断面形状をコの字型としたが、半割方式治具57は、一体化して筒状になるような形状であればよい。
【0065】
第1から第4の実施の形態で述べた各回転結合治具は、組み合わせて用いることができる。例えば、籠体1の縮小率が帯鉄筋5の高さ寸法で決まらない部分(杭下端付近で、通常、帯鉄筋5が200〜300mm間隔で配置される範囲)については、第1の実施の形態の回転結合治具7aを用い、縮小率が帯鉄筋5を固定する部材の高さ寸法で決まってしまう部分(杭頭付近で、通常、帯鉄筋5が125〜150mm間隔で配置される範囲)については、第2の実施の形態の回転結合治具25を用い、帯鉄筋5が最も密に配置される杭頭部直近(杭頭部から杭径の2倍程度の範囲)については、治具を用いないか紐状のもので結束し、最上下段の帯鉄筋5には第3の実施の形態の回転結合治具7bを用いることなどが考えられる。第1の実施の形態の回転結合治具7a、第2の実施の形態の回転結合治具25、第3の実施の形態の回転結合治具7bのスリーブ9の代わりに第4の実施の形態で述べたような半割方式治具を用いてもよい。
【0066】
上述したように、帯鉄筋5の位置に応じて回転結合治具を使い分けることで、ストランド3を縮小・伸展するときに、治具に作用する荷重に対して十分な強度を有し、籠体1の製造が容易で、コストの安い籠体1を提供することができる。
【0067】
籠体1では、ストランド3と帯鉄筋5の全ての交差点に、第1から第4の実施の形態で述べたような回転結合治具を設置する必要はない。例えば、途中段の交差点を紐状のもので結束してもよいし、交差点に何も治具を設けなくてもよい。
【0068】
ストランド3と帯鉄筋5の交差点に治具を設けない場合は、籠体1を伸展する作業を行いながら、通常の結束点線などにより帯鉄筋5とストランド3とを結束することが可能である。この場合、籠体1を建てこみながら組み立てる必要があるが、籠体全体の治具個数を減らすことができ、治具のコストが安くなるという利点がある。
【0069】
第1の実施の形態で述べたように、籠体1は、伸展させつつ掘削孔内に設置されるが、ストランド3と帯鉄筋5の交差点に治具を設けない場合は、その際、帯鉄筋5を所定の間隔で紐に取り付け、すだれ状としておいて、ストランド3を伸展した後、自重によりすだれを伸ばして所定の間隔に配置し、ストランド3と帯鉄筋5とを結束してもよい。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる結合治具および籠体の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】籠体1の立面図
【図2】ストランド3と帯鉄筋5の結合に用いる回転結合治具7(7a)の斜視図
【図3】ストランド3と帯鉄筋5との結合部の断面図
【図4】帯鉄筋5に取り付けた回転結合治具25の図
【図5】ストランド3と帯鉄筋5との結合部の断面図
【図6】帯鉄筋5aとストランド3の結合に用いる回転結合治具7bの各部品を示す図
【図7】ストランド3と帯鉄筋5との結合部の断面図
【図8】ストランド3に回転結合治具55の半割方式治具57a、半割方式治具57bを設置する各工程を示す図
【図9】ストランド3と帯鉄筋5との結合部の断面図
【符号の説明】
【0072】
1………籠体
3………ストランド
5、5a………帯鉄筋
7、7a、7b、25、55………回転結合治具
9………スリーブ
11………アングル材
15、41………ネジスタッド
16、17、46、47、53………ナット
19………樹脂
21、44………ネジ部
27………プレス材
28………凹型部
29………頭部
31………スタッド
32………底部
37………外れ止め
39………鍵穴
39a、39b………穴
45………補強リング
57a、57b………半割方式治具
59a………外向き溝
59b………内向き溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筋であるストランドを保持する筒状部材と、
前記ストランドの周囲に設けられた帯筋に固定されたアングル材と、
端部が前記筒状部材に固定され、前記アングル材を貫通する棒材と、
前記アングル材が前記棒材から抜けることを防ぐために前記棒材に設置される部材と、
からなり、
前記アングル材に対して前記筒状部材が回転することを特徴とする結合治具。
【請求項2】
前記筒状部材が鋼管であり、前記ストランドを前記鋼管の内部に通し、前記ストランドと前記鋼管との間に接着剤を充填することを特徴とする請求項1記載の結合治具。
【請求項3】
前記筒状部材が、筒軸方向の2辺を外側に曲げて形成した外向き溝を有する第1の半筒体と、筒軸方向の2辺を内側に曲げて形成した内向き溝を有する第2の半筒体とからなり、
前記ストランドを前記第1の半筒体内に配置し、前記外向き溝と前記内向き溝とを嵌め合わせて、前記第1の半筒体と前記第2の半筒体とを一体化することを特徴とする請求項1記載の結合治具。
【請求項4】
軸筋であるストランドを保持する筒状部材と、
凹型に成形され、前記凹型の底部に穴を有し、前記凹型の上端部が前記ストランドの周囲に設けられた帯筋に固定されたプレス材と、
一端に設けられた拡径部が前記穴を介して前記凹型の内部に配置され、他端が前記筒状部材に固定された棒材と、
を具備し、
前記プレス材に対して前記筒状部材が回転することを具備することを特徴とする結合治具。
【請求項5】
前記穴が、径が前記拡径部の径より大きい第1の穴と、径が前記拡径部の径より小さく前記棒材の通常部の径より大きい第2の穴とを連続して配置したものであり、
前記拡径部を前記第1の穴に通して前記凹型の内部に配置した後、前記棒材を前記第2の穴の方向に移動させ、前記第1の穴を塞ぐことを特徴とする請求項4記載の結合治具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された結合治具を用いて、ストランドと帯筋とが結合されたことを特徴とする籠体。
【請求項7】
前記帯筋の内側に、補強リングが設置されたことを特徴とする請求項6記載の籠体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−89960(P2006−89960A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274453(P2004−274453)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390029012)株式会社エスイー (28)
【Fターム(参考)】