結晶ジアセチレンインジケーター化合物およびこの化合物の調製方法
【課題】新規の結晶ジアセチレン化合物および前記化合物を調製する方法を提供すること。
【解決手段】一定の結晶特性および他の特性を有する結晶ジアセチレン化合物;ジアセチレン溶液から結晶化させたジアセチレン化合物および混合物;ジアセチレン化合物を溶解するための溶媒系を調製および同定する方法;ジアセチレン溶液;ジアセチレン化合物を再結晶化させる方法;2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶;ならびに結晶ジアセチレン化合物を含む周囲条件インジケーターおよび時間−温度条件インジケーター。
【解決手段】一定の結晶特性および他の特性を有する結晶ジアセチレン化合物;ジアセチレン溶液から結晶化させたジアセチレン化合物および混合物;ジアセチレン化合物を溶解するための溶媒系を調製および同定する方法;ジアセチレン溶液;ジアセチレン化合物を再結晶化させる方法;2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶;ならびに結晶ジアセチレン化合物を含む周囲条件インジケーターおよび時間−温度条件インジケーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の結晶ジアセチレン化合物および前記化合物を調製する方法に関する。本明細書に記載の方法および製品は一般に、環境条件、例えば、ホスト製品(host product)の貯蔵寿命、鮮度、熟成または他の特性に関連する温度などの条件への曝露の視覚的インジケーターにおいて活性薬剤として使用可能なジアセチレン化合物またはモノマーに関連して有用である。
【背景技術】
【0002】
固相重合反応して、発色または他の視覚的に明らかな変化を予測可能および不可逆的に生じる様々なジアセチレンモノマーが、時間−温度条件および他の周囲条件インジケーターにおいて活性薬剤として長らく使用されている。このようなインジケーターは、環境条件へのホスト製品の累積曝露の単純な視覚的表示をもたらし得る。これらは、不適切な周囲温度またはその周辺もしくは貯蔵環境の他の条件により不利な影響を受け得る食料、ワクチン、医薬品などの腐敗しやすいホスト製品の有効貯蔵寿命を監視するために使用することができる。インジケーター系は、活性薬剤としてジアセチレンモノマーが導入されているラベルを含み得る。このラベルを、ホスト製品に、またはホスト製品に付随している包装もしくは別のものに固定するか、または何か他の簡便な形態で組み入れることができる。
【0003】
重合反応で、多くのジアセチレン分子が相互に連鎖して、ポリジアセチレンを形成する。この反応は固相で生じ、不可逆性である。場合によっては、この状況ではモノマーであるジアセチレン化合物の無色またはほぼ無色の結晶は、熱または他の環境条件への十分な累積曝露に応答して、ポリマーの強く発色した結晶へと変化する。重合反応は、周囲条件により主に決定される速度で、自発的に進行する。
【0004】
重合反応から生じる色変化は、不可逆性である。この特性により、この化合物は、熱への過剰な累積曝露の後に鮮度を失い得る食品または医薬品などの腐敗しやすい製品を監視するために有用である。ジアセチレンモノマーはまた、熟成する製品、例えば、ワインまたはチーズの熟成を監視するために使用されるインジケーターにおいて活性薬剤として使用することもできる。これらの目的または他の目的のために、ジアセチレンモノマーを、監視されるホスト製品に随伴させるインジケーターラベルに活性薬剤として導入することができる。インジケーターラベルは、ジアセチレンモノマーの重合に由来する色変化を示し、これを、観察者が簡便な可視距離で、例えば、買い物客がスーパーマーケットにおいて冷蔵されている陳列品を調べて知ることができる。可逆性のインジケーターは、これらの目的には有用ではないであろう。
【0005】
ホスト製品において起こり得る変化を有効に追跡するために、使用されるジアセチレンモノマーが、意図されているホスト製品が同じ周囲または環境条件に対して有する応答パラメーターとほぼ相関し得る監視される熱または他の周囲条件に対する応答パラメーターを有することが望まれ得る。この目的のために、インジケーター配合物が、特定のホスト製品を監視するのに適したモノマーをそこから選択するための様々な応答パラメーターを示す幅広い市場で有用なジアセチレンモノマーを有することが有用であろう。
【0006】
多くの重合性ジアセチレン化合物が公知であるか、または提案されており、そのうちの一部は、重合すると有用な色変化を示す。例えば、Patelの特許文献1;特許文献2および特許文献3ならびにPreziosiらの特許文献4および特許文献5参照。しかしながら、これらの化合物のうちの限られた数しか、腐敗しやすいかまたは熟成する商品を監視するためにそれらを有用にする性能パラメーターを示さない。市販されている有用なジアセチレン化合物の数が限られていることにより、活性なインジケーター薬剤として使用するためにジアセチレンモノマーを探す場合に、インジケーター配合物が有する応答パラメーターの選択肢が制限されている。
【0007】
したがって、当技術は、既知の市場で有用なジアセチレンモノマーの反応性を所定の周囲条件に対して様々に応答するように変性して、配合物にさらなる選択肢を与える提案を包含している。
【0008】
例えば、Preziosiらへの特許文献5は、2種以上のジアセチレン化合物を加熱されている共通溶媒に溶かし、溶けた化合物を再結晶化させて、共結晶組成物を生じさせることを開示している。共結晶組成物は、個々の化合物の反応性とは異なる反応性を有する。
【0009】
JP Laboratoriesへの特許文献6は、ジアセチレンなどの放射線感受性物質を利用して高エネルギー放射線量を監視するためのフィルム、ステッカーまたはバッジなどの放射線検知デバイスを開示している。特許文献6に記載されている通り、ジアセチレンは、1種を超える結晶変種または相へと結晶化することが知られていて、適正な溶媒系を選択することにより、一部のジアセチレンを、非常に低い熱反応性および高い放射線反応性を有する相に結晶化させることができる。
【0010】
また、Prusikらの特許文献7は、アセチレン薬剤の溶液を還流させて、その反応性を変えることを開示している。この特許中の一部の例は、この目的のために、溶媒として氷酢酸およびジメチルホルムアミドを使用することを記載している。数種の他の溶媒もまた、前記発明の実施において使用可能であると開示されている。しかしながら、このような他の溶媒へのジアセチレン化合物の溶解性についての具体的な情報は示されていないようである。多少のX線回折データが1種のジアセチレンモノマー化合物について示されている。
【0011】
さらに、Prusikらへの特許文献8は、アセチレン薬剤結晶化プロセスにおいて粒径に有利な影響を及ぼす非粉砕プロセスを開示している。一部の記載されている例は、アセチレン薬剤の酢酸溶液を使用し、水性メタノールおよび3−エトキシプロピオン酸エチルなどの様々な溶媒が、沈殿またはクエンチ流体として有用であると記載されている。
【0012】
加えて、Prusikらへの特許文献9(出願第11/427,589号明細書)は、ジアセチレンインジケーター薬剤の反応性を合わせるための反応性増強補助剤(reactivity−enhancing adjuvant)の使用を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3,999,946号明細書
【特許文献2】米国特許第4,189,399号明細書
【特許文献3】米国特許第4,384,980号明細書
【特許文献4】米国特許第4,789,637号明細書
【特許文献5】米国特許第4,788,151号明細書
【特許文献6】国際公開第2004/077097号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6,924,148号明細書
【特許文献8】米国特許第7,019,171号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0004372号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
様々な公知であるジアセチレンモノマーおよび変更された反応性を有するジアセチレンモノマーを得る方法にも関わらず、利用可能なさらなるジアセチレンモノマー反応性オプションを有し、新規または変更された反応性をジアセチレンモノマーに与える新規の方法および生成物を有することが、望ましい。
【0015】
背景技術の前記の記載は、本発明以前には該当分野で知られていなかったが、本発明により示された開示の洞察、発見、理解もしくは開示または関連を一緒に包含することがある。一部の本発明のこのような寄与は、本明細書で特に記載されていることもあるが、他の本発明のこのような寄与は、その文脈から明白であろう。文献が本明細書で挙げられているからといって、本発明の分野とは全く異なり得る文献の分野が本発明の1つまたは複数の分野と類似していることを認めるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は特に、結晶ジアセチレン化合物を新規または変更された反応性状態で提供する。結晶ジアセチレン化合物は、環境条件インジケーター、例えば、累積時間−温度インジケーターにおいて不可逆性の外観変化を示す1種または複数の化合物であってよい。外観変化は例えば、1種または複数の化合物の外観の色、強度または濃さの変化であってよい。
【0017】
本発明はまた、結晶ジアセチレン化合物を調製する方法ならびにこれらの方法で有用な溶媒系およびジアセチレン溶液を提供する。
【0018】
一態様では、本発明は、環境条件インジケーターの不可逆性の外観変化を提供し得る結晶ジアセチレン化合物である、下式の構造の重合性ジアセチレンモノマーを含む結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物を提供する
R1C≡C−C≡CR2
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、上記不可逆性の外観変化の提供と適合する有機置換基である]。重合性ジアセチレンモノマー分子は、結晶の隣接単位格子の幾何学的中心に関して、4.7Å未満の中心間分離を有することができ、この際、中心間分離は、固相重合が生じる得る方向である。
【0019】
R1およびR2はそれぞれ独立に、−R4NHCONHR3であってよく、ここで、R3は、1から20個の炭素原子を有するアルキル、場合によって、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシルまたはオクタデシルであり、R4は、1から20個の炭素原子を有するアルキルである。別法では、R1およびR2はそれぞれ独立に、−CH2NHCONHR3であってよく、ここで、R3は、アルキル、場合によって、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシルまたはオクタデシルである。
【0020】
R1およびR2がそれぞれ、−NHCONH−基を含む場合、結晶ジアセチレン化合物は、各尿素基に2個の水素結合を含み得、ここで、2個の水素結合は1個ずつ、1個の重合性ジアセチレン分子上の2個のNH基の一方と、隣接する重合性ジアセチレン分子中のC=O基との間に延びる。
【0021】
望ましい場合には、重合性ジアセチレンモノマーは対称に置換されていてよく、場合によっては、ジアセチレン化合物が対称中心を有し、対称軸も対称面も存在しない結晶構造を有し得る。対称軸も対称面も有さない結晶構造は一般に、「三斜晶系」と記載される。
【0022】
結晶ジアセチレン化合物薬剤は場合によって、少なくとも1種の非アセチレン化合物を結晶相を含んでもよく、ここで、その少なくとも1種の非アセチレン化合物は場合によって、1種または複数の溶媒である。前述の通り、結晶ジアセチレン化合物またはモノマーは、周囲熱に応答して重合し、インジケーター応答、例えば色変化を示し得る。望ましくは、結晶ジアセチレン化合物は、ジアセチレン化合物およびポリマーの重量に対して重合ジアセチレン化合物約10重量パーセント以下を含む。ポリマーの割合は例えば、約3パーセント以下または約1パーセント以下もしくはそれ未満であってよい。
【0023】
本発明はまた、さらなる態様において、約100ミクロンを超える第1の方向での結晶サイズおよび約10ミクロン以下の第1の方向に対して垂直な第2の方向での最大寸法の結晶サイズを有する結晶ジアセチレン化合物を提供する。
【0024】
他の態様では、本発明は、構造式
CH3CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH3
を有し、三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物を提供する。化合物は、中心対称結晶相を有し得、ここで、中心対称結晶相は、a=約4.2Å、b=約4.6Å、c=約16.5Å、α=約89°、β=約85°およびγ=約81°の単位格子パラメーターを有する。
【0025】
本発明はまた、さらなる態様で、約15度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含むX線回折パターンを示す2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶を提供する。回折パターンはまた、約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定する場合、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ未満の高い強度ピークを含む。本発明のこの態様の一実施形態では、X線回折パターンは、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に高い強度ピークを含まない。
【0026】
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物は例えば、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)または2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)であってよく、それぞれ、水とエチルアルコールとの、イソプロピルアルコールとの、ジメチルスルホキシドとの、または他の適切な溶媒との混合物中の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)または2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶液から再結晶化させることができる。
【0027】
加えて、本発明は、まださらなる態様において、溶媒系から再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶を提供し、ここで、結晶は、約12度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含み、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ以下の高い強度ピークを含むX線回折パターンを示し、この際、高い角度の回折パターンは、再結晶化のために使用される溶媒系により決定される。
【0028】
本発明による結晶ジアセチレン化合物は、例えば、少なくとも純度約99.8重量パーセントである比較的高い純度を有することができるか、または例えば、少なくとも純度約90重量パーセントであるより低い純度であってよい。
【0029】
本発明による結晶ジアセチレン化合物は、任意の適切な方法により、例えば、ジアセチレン化合物を、ジアセチレン化合物の溶媒系中のジアセチレン溶液から結晶化させることにより調製することができる。
【0030】
望ましい場合には、ジアセチレン溶液を、ジアセチレン化合物を溶媒系に溶かすことにより調製することができ、ジアセチレン化合物は場合によって、不純な結晶化生成物を含むことができる。
【0031】
本発明はまた、本明細書に記載の結晶ジアセチレン化合物または結晶ジアセチレン薬剤を含む周囲条件インジケーター、場合によって、時間−温度インジケーターまたは高エネルギー放射線モニターを包含し、ここで、少なくとも1種の結晶ジアセチレン化合物または薬剤が、周囲条件への曝露に応答して視覚的な外観変化を示す。
【0032】
他の態様では、本発明は、構造式
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
を有するジアセチレンを包含する固相組成物を含む時間−温度インジケーターを提供し、ここで、ジアセチレンは、ジアセチレンの分子間での反応により重合することができ、その際、1個の分子上のC=O基は、隣接する分子上の2個のNH基に水素結合し、式中、「m」は、1から7の奇数であり;
「n」は、1から19の奇数であり、
固相は、三斜晶系空間群P−1を含む。
【0033】
本発明の別の態様では、「n」は、奇数ではなく2から20の偶数であり、固相は、三斜晶系空間群P−1ではなく、b軸が21軸である単斜晶系空間群P21/aまたはP21/cを含む。
【0034】
本発明の一部の実施形態では、溶媒系は、約6MPa1/2から約17MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターを有し、約7.5MPa1/2から約26MPa1/2の範囲の水素結合溶解性パラメーターを有するが、但し、溶媒系が、溶媒系の単独の成分としての酢酸からもジメチルホルムアミドからもピリジンからもならないことを条件とする。
【0035】
溶媒を規定の溶解性パラメーターで選択することにより、ジアセチレンモノマーのための新規かつ有用な溶媒系を特定することができ、所望のジアセチレン溶解性をもたらす溶媒系の利用可能な範囲を広げることができる。
【0036】
所定のジアセチレンモノマーのための新規の結晶相または形態を特定することにより、本発明は、ジアセチレンモノマーのための有望な市場での用途範囲を拡大することができる。場合によっては、新規の結晶相または形態は、反応に関して新規の一連の時間−温度パラメーターを提供して、腐敗しやすい製品の変質または熟成する製品の所望の熟成度に時間−温度特性を合わせる相応に高い能力を提供することができる。
【0037】
本発明はまた、追加の態様で、ジアセチレン化合物のために1種または複数の新規の溶媒系を特定するための有用な方法を提供し、この溶媒系は、1種または複数の有用なアセチレン化合物を溶解する能力、環境相容性特性またはこれらの特性もしくは他の特性の有用な組合せなどの新規の特性の組合せを有する。
【0038】
本発明はまた、ジアセチレン溶液を調製する様々な方法を提供する。1つの方法は、その溶解性パラメーターにより溶媒を示す溶解性マップを案出し、溶解されるジアセチレンモノマーのための有望な溶媒系の溶媒成分を特定および選択するためにその溶解性マップを使用することを含む。他の方法は、1種または複数のジアセチレン化合物を本明細書に開示されている新規の溶媒系の1種に溶かすことを含み、ここで、1種または複数の溶解されるジアセチレン化合物は、合成混合物または温酢酸溶液からのメタノール沈殿の生成物に由来する結晶化の原料製品を含む。
【0039】
重合性ジアセチレン化合物が個々の溶媒それぞれへの溶解性よりもかなり高い溶解性を有するいくつかの意外な溶媒混合物が、本発明により提供される。これらの、および他の新たに発見された溶解性オプションにより、ジアセチレン化合物を新たな方法で再結晶化させることができ、場合によっては、新たな反応性選択肢を提供することができる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目A1)
固体状態で重合して環境条件インジケーター中で用いられた場合に不可逆性の外観変化を提供し得る結晶ジアセチレン化合物であって、構造式
R1C≡C−C≡CR2
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、前記不可逆性の外観変化の提供に適合する有機置換基である]を有し、前記ジアセチレン化合物分子が、異なる分子中の隣接ジアセチレン単位の幾何学的中心に関して4.7Å未満の中心間分離を有する結晶構造を有し、ここで、前記中心間分離は、固相重合が生じる得る方向である、結晶ジアセチレン化合物。
(項目A2)
前記中心間分離が、前記結晶ジアセチレン化合物の単位格子反復距離に対応している、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A3)
R1およびR2がそれぞれ独立に、−R4NHCONHR3であり、R3およびR4がそれぞれ、出現する毎に、1から20個の炭素原子を有するアルキル基である、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A4)
R1およびR2がそれぞれ独立に、−CH2NHCONHR3であり、R3が、出現する毎に独立に、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシルまたはオクタデシルである、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A5)
各尿素基に2個の水素結合を含み、前記2個の水素結合は1個ずつ、1個の重合性ジアセチレン分子上の尿素基中の2個のNH基の一方と、隣接する重合性ジアセチレン分子中のC=O基との間に延びている、項目A3に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A6)
前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されており、前記固相重合が起こり得る方向は結晶単位格子のb軸の方向である、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A7)
前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されていて、前記結晶ジアセチレン化合物が対称中心を有し、三斜晶系であり、対称軸も対称面も存在しない結晶構造を有する、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A8)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって、1種または複数の結晶化溶媒を包含する、項目A1、A2、A3、A4、A5またはA6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A9)
三斜晶系結晶構造を含み、ここで、三斜晶系結晶構造を有する前記結晶ジアセチレン化合物の割合が、少なくとも約50パーセント、少なくとも約80パーセントおよび少なくとも約90パーセントからなる群から選択され、前記割合は、結晶ジアセチレン化合物の全重量に対する重量による、項目A1、A2、A3、A4、A5またはA6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A10)
少なくとも1種の非アセチレン化合物を結晶相中に含み、前記少なくとも1種の非アセチレン化合物が場合によって、1種または複数の溶媒である、項目A1、A2、A3、A4、A5またはA6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A11)
前記ジアセチレン化合物および前記ポリマーの重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物を含む、項目A1、A2、A3、A4、A5またはA6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A12)
前記ジアセチレン化合物の重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物の前記重合ジアセチレン化合物を含み、ここで、前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されていて、前記結晶ジアセチレン化合物が、対称中心を含む三斜晶系結晶構造を有し、前記結晶ジアセチレン化合物が純度少なくとも約98重量パーセントである、項目A5に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A13)
構造式
CH3CH2CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH2CH3
を有し、三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物。
(項目A14)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる純度範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって、1種または複数の結晶化溶媒を包含する、項目A13に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A15)
構造式
CH3CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH3
を有し、三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物。
(項目A16)
中心対称結晶相を有し、ここで、前記中心対称結晶相は、a=約4.2Å、b=約4.6Å、c=約16.5Å、α=約89°、β=約85°およびγ=約81°の単位格子パラメーターを有する、項目A15に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A17)
約100ミクロンを超える第1の方向での結晶サイズおよび約10ミクロン以下の前記第1の方向に対して垂直方向の第2の方向での最大寸法の結晶サイズを有する、項目A15に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A18)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる純度範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって1種または複数の結晶化溶媒を含む、項目A15、A16またはA17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A19)
少なくとも1種の非アセチレン化合物を前記結晶相中に含み、前記少なくとも1種の非アセチレン化合物が場合によって1種または複数の溶媒である、項目A15、A16またはA17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A20)
前記ジアセチレン化合物および前記ポリマーの重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物を含む、項目A15、A16またはA17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A21)
約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定した場合に、12度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含み、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ未満の高い強度ピークを含むX線回折粉末パターンを示す、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶。
(項目A22)
前記X線回折パターンが、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に高い強度ピークを欠いている、項目A20に記載の結晶。
(項目A23)
低い2θ回折角での前記2つの高い強度ピークのうちの一方が、約4度から約6度の範囲の角度にあり、他方が、約8度から約12度の範囲の角度にある、項目A21に記載の結晶。
(項目A24)
前記結晶が、約4度から約6度の範囲の角度での前記高い強度ピークに対応するd空間が約8度から約12度の範囲の角度での前記高い強度ピークに対応するd空間の値の半分であることを示し、12度未満の低い2θ回折角での前記2つの高い強度ピークは場合によって、一方のピークと他方のピークとの調和関係を有する、項目A23に記載の結晶。
(項目A25)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物が、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)である、項目A21、A22、A23またはA24に記載の結晶。
(項目A26)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)が、水性エチルアルコール中の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の溶液からの結晶化生成物である、項目A25に記載の結晶。
(項目A27)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物が、水性エチルアルコール、水性イソプロプルアルコールまたは水性ジメチルスルホキシド中の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶液からの結晶化生成物である、項目A21、A22、A23またはA24に記載の結晶。
(項目A28)
溶媒系から結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶であって、前記結晶は、約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定した場合に、約12度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含み、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ以下の高い強度ピークを含む回折パターンを示し、ここで、前記高い角度の回折パターンは、前記溶媒系または結晶化方法により決定される、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶。
(項目A29)
項目A1、A2、A3、A4、A5またはA6に記載の結晶ジアセチレン化合物を含む、場合によって時間−温度インジケーターまたは高エネルギー放射線モニターである周囲条件インジケーター。
(項目A30)
時間−温度インジケーターであって、下記構造のジアセチレン化合物を含有する結晶相を含み
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
[式中、
「n」は、1から19の奇数であり、
「m」は、1から7の奇数である]、
前記ジアセチレン化合物の分子は、2個の隣接するジアセチレン分子中のジアセチレン基との反応により重合することができ、
前記第1のジアセチレン分子上の前記2個のC=O基はそれぞれ、前記2個の隣接するジアセチレン分子中の2個のNH基に水素結合することができ、
前記結晶相は、三斜晶系であり、
前記結晶相は、対称中心を有する時間−温度インジケーター。
(項目A31)
時間−温度インジケーターであって、構造式
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
を有するジアセチレンを含む固相組成物を含み、
前記ジアセチレンは、前記ジアセチレンの分子間での反応により重合することができ、ここで、1個の分子上のC=O基は、隣接する分子上の2個のNH基に水素結合し、式中、
「m」は、1から7の奇数であり、
「n」は、1から19の奇数であり、
前記固相は、三斜晶系空間群P−1(bar)を含む、時間−温度インジケーター。
(項目A32)
時間−温度インジケーターであって、構造式
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
を有するジアセチレンを含む固相組成物を含み、
前記ジアセチレンは、前記ジアセチレンの分子間での反応により重合することができ、ここで、1個の分子上のC=O基は、隣接する分子上の2個のNH基に水素結合し、式中、
「m」は、1から7の奇数であり、
「n」は、2から20の偶数であり、
前記固相は、単斜晶系空間群P21/aまたはP21/cを含み、ここで、b軸は、21軸である、時間−温度インジケーター。
(項目A33)
前記ジアセチレン化合物を、以下:
前記ジアセチレン化合物に対する溶媒系中の不純な結晶化生成物の形態の前記ジアセチレン化合物の混合物を約50℃から約100℃の範囲の温度で加熱して、前記溶媒系中に前記ジアセチレン化合物を溶解させるステップと;
熱を供給することなく、かつクエンチすることなく、前記溶液を冷却して、前記ジアセチレン化合物の結晶を沈殿させるステップ
により、溶媒系中の前記ジアセチレン化合物の溶液から結晶化させることを含む、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物の調製法。
(項目A34)
前記溶媒系が、約6MPa1/2から約17MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターを有し、約7.5MPa1/2から約26MPa1/2の範囲の水素結合溶解性パラメーターを有し、前記溶媒系が、前記溶媒系の単独の溶媒成分としての酢酸からもジメチルホルムアミドからもピリジンからもならない、項目A33に記載の方法。
(項目A35)
(a)前記ジアセチレン化合物のための数種の有望な溶媒の極性溶解性パラメーターが、前記有望な溶媒の水素結合溶解性パラメーターに対してプロットされていて、有望な溶媒それぞれでの溶解性パラメーターポイントを提供する溶媒マップを得るステップと;
(b)少なくとも3種の液体であって、前記ジアセチレン化合物がそれらの液体中のいずれにも不溶性ではない液体中への前記ジアセチレン化合物の溶解性に関する情報から、前記ジアセチレン化合物のための溶解性領域を特定し、ここで、前記溶解性領域は、所望の溶液特性に関連する極性および水素結合溶解性パラメーターの同一限界内のエリアであるステップと;
(c)前記溶媒系において、
(i)前記溶解性領域内にある溶解性パラメーターポイントを有し、前記ジアセチレン化合物の前記溶解性に関する情報を提供する前記液体のいずれかではない有望な個々の溶媒;または
(ii)前記溶解性領域内にある組合せ溶解性パラメーターポイントを有する有望な溶媒の組合せ
のいずれかを選択および使用するステップにより、前記溶媒系を調製することを含む、項目A33またはA34に記載の方法。
(項目A36)
前記アセチレン化合物が、構造式
R3HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHR3
[式中、R3はそれぞれ独立に、エチル−、プロピル−、ブチル−、オクチル−、ドデシル−またはオクタデシル−である]を有する化合物を含み、前記溶媒系が、酢酸、ジメチルホルムアミド、ピリジン、メタノール、ギ酸、ジメチルスルホキシド、前記溶媒の2種以上の混合物、アセトンおよび水、エタノールおよび水、ギ酸および水、ジメチルホルムアミドおよび水またはジメチルスルホキシドおよび水を含む、項目A33、A34またはA35に記載の方法。
(項目A37)
前記ジアセチレン化合物が、5,7−ドデカジイン−1,12−ビス−n−オクタデシルウレタンを含み、場合によって、前記溶媒系が水とエチルアルコールとの、またはアセトンとの混合物を含む、項目A33に記載の方法。
【0040】
本発明の、ならびに本発明を製造および使用する一部の実施形態、さらに、本発明の実施で企図される最良の方式を、本明細書中では実施例により、添付の図面を参照しつつ詳述し、ここで、同じ参照記号は、複数の図を通して同じ要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ジアセチレン重合の1モデルの略図である。
【図2】ジアセチレンモノマー分子の骨格図である。
【図3】ジアセチレンモノマー分子の空間充填モデルである。
【図4】溶媒および溶媒混合物のいくつかの溶解性ポイントが示されている溶解性マップである。
【図5】いくつかの溶解性領域が本発明に従って規定されているさらなる溶解性マップである。
【図6】追加の溶解性領域が本発明に従って規定されている他の溶解性マップである。
【図7】なおさらなる溶解性領域が本発明に従って規定されている追加の溶解性マップである。
【図8】さらなる溶解性領域が本発明に従って規定されていて、ジアセチレンモノマーに関して算出された溶解性ポイントが示されている他の溶解性マップである。
【図9】この場合にはTeasグラフで本発明を実施する際に有用な三次元溶解性マップの実施形態である。
【図10】室温での様々な溶媒系へのジアセチレンモノマーの溶解性を示す棒グラフである。
【図11】左側は公知であるジアセチレンモノマーであり、右側は本発明によるジアセチレンモノマーである2種の結晶ジアセチレンモノマーの2枚の顕微鏡写真である。
【図12】1周囲温度に曝露されたいくつかのジアセチレンモノマーの累積色変化応答を示すグラフである。
【図13】他の周囲温度に曝露された図12で参照されたジアセチレンモノマーの累積色変化応答を示すグラフである。
【図14】第3の周囲温度に曝露された図12で参照されたジアセチレンモノマーの累積色変化応答を示すグラフである。
【図15】第1の結晶ジアセチレンモノマーの特性決定の結果を示すX線回折パターンである。
【図16】いくつかの追加の結晶ジアセチレンモノマーの特性決定の結果を示すX線回折パターンのセットである。
【図17】本発明によりジアセチレン溶液から沈殿させた2種の結晶ジアセチレンモノマーの特性決定の結果を示す2つのX線回折パターンである。
【図18】X線回折データから得られる第1のジアセチレンモノマーでの結晶構造のモデルの透視図である。
【図19】X線回折データから得られる第2のジアセチレンモノマーでの結晶構造のモデルの透視図である。
【図20】ジアセチレンモノマーの結晶に関する結晶軸の図式的な配向である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を実施する他の例は、本開示を考慮すれば、通常の当業者には明らかであるか、明らかになるであろう。
【0043】
本発明は特に、結晶ジアセチレン化合物(本明細書中では「モノマー」と称されることもある)、ジアセチレン化合物(本明細書中では「ジアセチレン」と称されることもある)を含むか、またはそれからなる結晶および新規の反応性を有するか、またはさらなる反応性の選択肢をもたらすジアセチレン組成物を提供する。一般に、本発明により提供されるジアセチレン物質は、公知であるジアセチレン化合物の物理的処理または物理的変更により、出発物質の化学的変化もしくは変更または出発物質の化学的構造の変化を伴うことなく調製することができる。
【0044】
物理的処理および反応性の変更を容易にするために、本発明はまた、1種または複数のジアセチレンモノマーが良好な室温溶解性を有する溶媒を包含するジアセチレンモノマーのための新規の溶媒および溶媒系を提供する。本発明は、新規の溶媒に溶解されたジアセチレンモノマーの溶液を包含する。
【0045】
また、本発明は、このような新規の溶媒へのジアセチレンモノマー溶解性に関する定量的情報を提供する。本発明の他の態様は、新規のジアセチレンモノマー溶液からの再結晶化に由来し得る新規のジアセチレンモノマー結晶および結晶構造情報を提供する。
【0046】
本発明は、溶媒系の調製方法、再結晶化方法、有用な結晶構造情報の決定方法、さらに、ジアセチレンインジケーター溶液および分子モデリング方法を包含する。
【0047】
本発明は、本明細書に記載されているジアセチレン溶液から結晶化させたか、または本明細書に記載の方法により調製されたジアセチレン化合物を包含する。本発明はさらに、ジアセチレン溶液を基材に塗布することを含む環境条件インジケーターを製造する方法を包含する。
【0048】
多くの溶媒が一般に、ジアセチレンを溶解するために有用であると示唆されている。しかしながら、具体的な溶媒への既知のジアセチレン化合物の特定の溶解性について、溶解性データはほとんど存在しない。一部のジアセチレン化合物が示唆されている溶媒に多少の溶解性を示すことはあるが、その溶解性はかなり低く、さらなる処理のために有用であるには足りないことがある。多くのジアセチレン化合物は、室温での溶解性がほとんど知られてなく、高温で処理されることがある。例えば、一部のジアセチレンモノマーは、温氷酢酸から、90〜100℃程度の温度で再結晶化される。
【0049】
熱不安定な腐敗しやすいものを監視するためのジアセチレン化合物は一般に、製造および貯蔵に費用がかかる。鮮度インジケーターを包含するいくつかの目的のために有用である室温反応性のジアセチレン化合物は、貯蔵に費用がかかり、場合によっては、低温での冷蔵を必要とする。これらの検討事項および他の検討事項が、ジアセチレン化合物の有用である可能性のある新規の溶解性特性を特定する大規模スクリーニング検査を行うことを困難にしている。
【0050】
したがって、本発明は、溶媒の大規模なスクリーニングの必要性を低減または回避し得る有用なジアセチレン溶解性を有する有望な溶媒を特定する方法を提供する。一部の実施形態では、この方法により、特定の溶解性、例えば、少なくとも1重量パーセントまたは少なくとも4重量パーセント溶液を提供することができる。
【0051】
本発明は、特定のジアセチレン化合物またはモノマーに関する新規の理解および洞察を使用し、そのインジケーター関連反応性および他の特性を、化合物を化学的には変化させないままの物理的処理での変化を介して操作する手段を提供する。本発明は、化学的反応を介してジアセチレンモノマーを変更することなく、新規の反応性特性を提供し得る実施形態を包含する。これは、確立されている市販品とは化学的に区別される新規の分子が一部の用途のために安全性および他の目的に関して費用のかかる研究を必要とし得るためである。したがって、本発明は、一部の態様では、化学的に同一の構造の化合物と比較して、新規か、または変更された反応性を有する新規か、または変更された物理的状態で結晶化されたジアセチレン化合物を提供する。例えば、ジアセチレン化合物は、特殊な結晶構造を有することがある。
【0052】
新規の反応性または他の特性を生じさせるために、ジアセチレンモノマーの構造およびその反応の機構を分子レベルでより十分に理解することが望ましいであろう。本発明はまた、これらの目的の助けとなる新規の方法および生成物を提供する。
【0053】
本発明は特定の理論に何ら制限されないが、ジアセチレン化合物、「モノマー」または「ジアセチレンモノマー」の固相重合では、重合の状況において、これは、自発的に重合し得るように並列されている個々のジアセチレンモノマー分子を持つモノマーの結晶構造であると考えられる。この概念が図1に図示されているが、ここでは、3つのジアセチレンモノマー分子が、ジアセチレンモノマーの固晶で配列されている通りに、並列配列で、縦方向に、かつ角度的に規則的に配列されて示されている。隣接分子のアセチレン基は、隣接分子間で二重結合を自発的に形成して、モノマー分子同士が1−4付加ポリマー生成物へと結合し得るのに十分に近接している。
【0054】
2個のジアセチレン化合物のより詳細なモデルが図2および3に図示されている。図2は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)モノマー分子の骨格構造を図示しており、図3は、上側のモデルは2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)および下側のモデルは2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の空間充填モデルを図示している。
【0055】
ジアセチレンモノマー重合の作用機構のこれらのモデルは、正確と考えられるが、おそらく包括的ではない。即ち、他の機構も作用することがある。さらに、これらは、新規のインジケーター関連反応性または反応性プロファイルを伴う新規のジアセチレンモノマーを提供し得るであろう化合物、処理条件、添加剤または他の変更の特定に役立ち得る予測モデリングに関して、不十分にしか説明されていない。
【0056】
例えば、ジアセチレンモノマーおよび対応ポリマーの両方における単位格子寸法および角度、原子間隔ならびに立体配座に関するさらなる結晶情報および他の情報を有することが望ましいであろう。有用なこのような情報は、X線結晶データにより得られるであろう。しかしながら、包括的なX線結晶研究のために十分なサイズの反応性ジアセチレンモノマーの結晶を得ることが困難なために、X線結晶データはほとんど得られないと考えられる。したがって、これらの目的および他の目的のために、ジアセチレンモノマーの比較的大きな結晶、例えば、少なくとも約0.2mmの寸法を有する結晶を得ることが望ましいであろう。
【0057】
本発明は特定の理論に何ら制限されないが、ジアセチレン分子が結晶中に一緒に収まる方法は、時間−温度インジケーターで使用される結晶子の重合性に関連していると理解される。これらの比較的複雑な分子では、モノマー構造単独の知識から、結晶構造を確実に予測することは現在のところ不可能であると考えられる。したがって前述の通り、所定のジアセチレンモノマーに関しての新規の結晶相の発見は、反応に関する時間−温度パラメーターの新規のセットおよび対応して、腐敗しやすい製品の変質または熟成する製品での望ましい熟成度に関して時間−温度特性を緊密に適合させる高い能力を提供することにより、既知のジアセチレンモノマーに関しての市場適用機会を著しく広げる可能性をもたらす。
【0058】
本発明の一部の実施形態は、公知であるか、または新規に特定されたか、または新たに合成されたジアセチレンモノマーの反応性を変化または変更する方法を含む。反応性変更方法は、ジアセチレンモノマーを溶液から結晶化または再結晶化させる方法であってよく、この方法は、色応答のチューニングされた時間−温度依存性を有するジアセチレンモノマーを得るために、粒径、粒子形態、結晶構造、結晶欠陥、結晶中に包含される溶媒分子および熱履歴などの少なくとも1つの結晶パラメーターを制御することを含む。
【0059】
本発明は特定の理論に何ら制限されないが、ジアセチレンモノマーを周囲条件インジケーターにおいて有用なものとする色変化をもたらす重合反応は、ジアセチレンモノマーの結晶構造により支配または影響されることが公知である。重合性ジアセチレンモノマーの結晶においては、結晶を含む積み重ねられたジアセチレンモノマー分子は、ポリマー分子を合成する際に隣接して配列されたモノマー分子間で生じる小さな寸法変化のみでモノマーからポリマーへの遷移に対応し得る格子中に主に配置されていると考えられる。また、必要な小さな寸法変化が、結晶表面では、かつ格子中のジアセチレンモノマー分子がより自由に動くことができる結晶構造欠陥ではより容易に生じ得ると考えられる。これらの考察は、本明細書に記載されている結晶パラメーターのうちの1種などの結晶パラメーターを制御することにより、ジアセチレンモノマーの反応性を変化または変更することに関する本明細書に記載されている発明のある種の態様を理解するために役立つと考えられる。
【0060】
溶液からジアセチレンモノマーを結晶化または再結晶化させるために、ジアセチレンモノマーのための適切な溶媒系を得ることが必要である。「溶媒系」は、この用語が本明細書中で使用される場合、1種または複数の溶媒を含み得る。望ましくは、溶媒系は、有用な負荷で、許容可能な温度でジアセチレンモノマーを溶かし、再結晶化条件下にジアセチレンモノマーと反応しないものである。ジアセチレンモノマーの加熱された過飽和溶液から溶解したジアセチレンモノマー粉末を再結晶化させる場合、温度および時間により駆動される望ましくない重合を回避する処置が望ましい。この理由で、場合によっては、純粋なジアセチレンモノマーの大きな結晶、例えば、2mmを超える寸法を有する結晶をジアセチレンモノマーの過飽和溶液から成長させる試みにおいて、これが、長期間にわたる加熱を必要とする場合には、困難が生じ得る。また、場合によっては、過飽和の室温か、またはより冷たい溶液から大きな結晶を成長させる試みにおいては、これらの温度でのジアセチレンモノマーの限られた溶解性によって、困難が生じ得る。
【0061】
したがって、印刷インジケーターデバイスへとジアセチレンモノマーを処理する費用を、十分な濃度のジアセチレンモノマーを溶解し得る溶媒を発見することにより低減することができる。さらに、ジアセチレンモノマーは場合によって、印刷することができるインクとして配合する前に、簡便に予備結晶化され、この目的のために、良好な溶解性をもたらす溶媒の選択肢の利用可能性が望まれ得る。
【0062】
したがって、1つまたは複数のこれらの問題を改善し得る1種または複数の溶媒系を特定することは有用であるだろう。
【0063】
溶媒マッピング
一般的に述べると、本発明は、一態様では、ジアセチレン化合物を溶解するための溶媒系を調製するための方法を含み、これは、ジアセチレン化合物のための数種の有望な溶媒の極性溶解性パラメーターが、有望な溶媒の水素結合溶解性パラメーターに対してプロットされていて、それぞれの有望な溶媒での溶解性パラメーターポイントを示している溶媒マップを得ることを含む。加えて、方法は、少なくとも3種の液体中へのジアセチレン化合物の溶解性に関する情報から(ここで、ジアセチレン化合物は、どの液体にも不溶性ではない)、ジアセチレン化合物のための溶解性領域を特定することを包含する。望ましくは、溶解性領域は、所望の溶解特性に関連する極性および水素結合溶解性パラメーターの同一限界内のエリア(contiguous area)である。方法はさらに、溶媒系において、溶解性領域内にある溶解性パラメーターポイントを有し、ジアセチレン化合物の溶解性に関する情報をもたらす液体のいずれかではない有望な個別の溶媒か、または溶解性領域内にある組合せ溶解性パラメーターポイントを有する有望な溶媒の組合せを選択および使用することを包含する。溶媒系を調製する方法は、望ましい場合には、1種または複数の有望な溶媒を混合することを包含してよい。
【0064】
本発明により、ジアセチレンモノマーの溶解性を、熱力学特性によって、例えば、Charles Hansenにより記載され、Hansen溶解性パラメーターとして公知であるものなどの溶解性パラメーターによって記載することができることが決定された。Hansenは、3種の異なるタイプの溶媒分子間の相互作用、即ち、分散性パラメーターδd、極性パラメーターδpおよび水素結合パラメーターδhに関する3種の異なる溶解性パラメーターを記載した。溶解性パラメーターは、メガパスカルMPa1/2の平方根の単位で測定される。
【0065】
3種の溶解性パラメーターは、それぞれ各パラメーター毎に三次元でプロットされるチャート上の溶解性ポイントのための座標として示され得る。Hansen理論によると、2個の分子がこの三次元空間において相互に近いほど、これらは相互によく溶解する。多くの溶媒での溶解性パラメーターを、例えば、「Hansen Solubility Parameters:A user’s handbook」、C.M.Hansen、2000年、CRC Press ISBN 0−8493−1525−5で見ることができる。また、作表されていない溶解性パラメーターを概算するための方法が、この参照文献中に示されている。
【0066】
場合によっては、これらが有用であることがある一方で、いくつかの限界が通常は当てはまる。例えば、パラメーターは近似であり、分子間の結合は、3種のパラメーターが示唆し得るよりも緻密である。誘起双極子、ファンデルワールスおよび静電的相互作用などの他のタイプの結合であり得る通り、分子形状およびサイズが関連し得る。したがって、Hansen溶解性パラメーターの使用に由来する溶解性予測を実験的に確認することが望まれ得る。
【0067】
また、Hansen溶解性パラメーターは一般に、ジアセチレンモノマーについては知られていない。Hansen溶解性パラメーターは場合によっては、比較的単純な化合物については算出することができるが、ジアセチレン化合物中に存在する2個の三重結合および他の因子が、算出に不確実性をもたらし、信頼可能な図表を一部のジアセチレンモノマーについては算出できないようにしている。
【0068】
本発明の一実施形態は、Hansen溶解性パラメーターを利用するが、意図されている溶質、ジアセチレンモノマーの溶解性パラメーターについての知識を必要としない、特定のジアセチレンモノマーのための新規の溶媒系を特定する方法を含む。本発明は、新たに特定された1種または複数の溶媒中のジアセチレンモノマーの溶液を包含する。
【0069】
例えば、溶解性実験を行って、いくつかの公知である溶媒中での該当するジアセチレンモノマーの溶解性を決定または検査することができる。これらの溶解性実験の結果を、溶媒群のためのHansen溶解性パラメーターの一部または全てのチャートまたはマップ上にグラフで示すか、もしくはマッピングするか、またはその他の方法で論理的に同定することができる。次いで、この溶媒マップデータを使用して、高いジアセチレンモノマー溶解性に対応すると期待し得る溶解性パラメーター座標のマップ上の領域を規定することにより、ジアセチレンモノマーのための他の溶媒を特定することができる。
【0070】
Hansen溶解性パラメーターを、ジアセチレンモノマーが公知である溶解性を有する該当するジアセチレンモノマーのための公知である溶媒;ジアセチレンモノマーが溶解性をほとんど有さないか、または有さないことが公知である非溶媒;およびジアセチレンモノマーの溶解性が知られていない有望な溶媒を含む一群の溶媒のために得ることができる。
【0071】
任意の適切な数の公知である溶媒を使用して、ジアセチレンモノマーの溶解性に関するデータを得て、ジアセチレンモノマーのための溶解性領域の規定に役立てることができる。本発明の一部の実施形態は、2種または3種の公知である溶媒からのデータを使用する。他の実施形態は、4種または5種以上の公知である溶媒からのデータを使用する。例えば、溶解性領域を特定するために使用される情報は、アルコール、酸、水、芳香族化合物、窒素含有化合物、エステル、グリコール、ハロゲン化有機化合物、アルカンおよび前記液体の混合物からなる群から選択される少なくとも5種の液体へのジアセチレン化合物の溶解性についての情報を含み得る。
【0072】
その溶解性データが使用される公知である溶媒の数は、2から約20以上であってよい。比較的少ない数の溶媒、例えば、約3種から約10種での溶解性データを、本発明の一部の実施形態では使用する。
【0073】
望ましい場合には、より多数の溶媒からの溶解性データを使用することができる。必須ではないが、望ましくは、チャートの様々な部分にパラメーターを有する溶媒を使用することができる。推定ピーク溶解性の領域を特定したら、望ましい場合には、特定された領域の反対側にある溶媒からの追加のデータを使用することができる。例えば、その溶媒の溶解性ポイントから他の溶媒の溶解性ポイントへの直線が推定ピーク溶解性領域を通過するような溶解性パラメーターを有する追加の溶媒を選択することができる。
【0074】
溶媒マップは、溶解性パラメーターに対してプロットされた公知である各溶媒についての複数の溶解性ポイントを含み得る。三次元空間における個々の溶解性パラメーターの座標により、各溶解性ポイントを規定する。簡易さのために、本発明の一部の実施形態は、溶解性ポイントを二次元空間でマッピングすることができるように、3種のパラメーターのうちの2種、例えば、極性パラメーターおよび水素結合パラメーターのデータを利用することができる。溶媒マップは、2種または3種全てのHansenパラメーターを使用するかどうかに応じて、溶解性ポイントがプロットされる空間を規定する2軸または3軸を有し得る。
【0075】
本発明の一実施形態では、公知である溶解性ポイントを、水素結合パラメーターおよび極性パラメーターに対してプロットし、ここで、水素結合パラメーターは任意にy軸上にあり、極性パラメーターはx軸上にあってよい。本発明のこの実施形態では、簡易さのために、分散性パラメーターは無視されるか、または経験的に考慮される。望ましい場合には、本明細書で説明されている通りに、分散性パラメーターを、全てではないが一部の溶媒に関連して考慮することができる。
【0076】
本発明の他の実施形態では、分散性パラメーターを第3の次元にz軸上に、または他の適切な方法でプロットし、本開示を考慮すれば通常の当業者には明らかな通り、方法を三次元へと広げる。本発明の他の実施形態は、極性パラメーターデータまたは水素パラメーターデータを分散性パラメーターデータと一緒に二次元溶媒マップで使用する。
【0077】
溶媒マップでは、ジアセチレンモノマーが所望の溶解性を有することが公知である溶媒を溶媒マップにマーキングするか、着色するか、標識するか、もしくは他の方法で図により、または論理的に特定して、溶媒マップ中の公知である溶媒を公知である非溶媒から区別することができる。溶媒マップは、特定のジアセチレンモノマーに対して特異的であってよい。所望の溶解性は、任意の所望の値、例えば、約0.1パーセントから約20パーセントの範囲の溶解性を有してよい。本発明の一部の実施形態は、それぞれ約0.5、1、4、7、10および13パーセントの所望の溶解性を使用する。少なくとも所望の溶解性を示す溶媒をマーキングすることができる一方で、より低い溶媒性を示すことが公知であるか、特定のモノマーが不溶性である溶媒をマーキングしないか、別にマーキングする。
【0078】
本明細書中でパーセンテージで示されている溶解性は、溶液の重量に対する溶質の重量によると理解されたい。本明細書に述べられている場合、または文脈から明らかである場合、溶解性は、加熱溶解性または室温溶解性であってよい。
【0079】
特定のジアセチレンモノマーに関して所望の溶解性またはその欠如を示す公知である溶媒および公知である非溶媒を特定することができる。この情報から、ジアセチレンモノマーに関して高い溶解性を示す溶解性パラメーターの組合せを包含する溶解性領域を、溶解性マップ上で規定または表示することができる。規定の溶解性領域はまた、包含されている公知である溶媒ポイントの間の溶媒マップエリアを包含することもできる。場合によっては、規定の溶解性領域はまた、公知である溶媒ポイントに隣接するか、またはそれと同一限界内の1つまたは複数のエリアを包含することもできる。
【0080】
ジアセチレンモノマーのための溶解性領域は、ジアセチレンモノマーが不溶性ではない少なくとも3種の液体へのジアセチレンモノマーの溶解性に関する情報から特定することができる。利用することができる溶解性情報に従って、任意の適切な数の液体を、例えば、5種、10種または20種以上の液体を使用することができる。
【0081】
有効には、溶解性領域は、所望の溶液特性に関連する極性および水素結合溶解性パラメーターの同一限界内のエリアであってよい。また、規定の溶解性領域は、所望の溶解性に関連するHansenパラメーター値の組合せを包含し得る。望ましくは、規定の溶解性領域は、特定のジアセチレンモノマーに関して所望の溶解性を示す公知である溶媒の全てまたはほとんどを包含する。望ましくはまた、規定の溶解性領域は、その所望の溶解性を示さない溶媒である非溶媒の全てまたはほとんどを除外している。
【0082】
望ましい場合には、規定の溶解性領域を、周囲線により囲むことができる。周囲線は、開いた形態、例えば「V」または「C」型であってもよいが、望ましくは、閉じたループ型である。溶媒マップに示されている溶解性データに応じて、閉鎖ループ型周囲線は、不規則的または規則的または幾何学的形態、例えば、楕円、卵形、円形、三角形、長方形、多角形、四角形の形態または他の適切な形態を有することができる。
【0083】
また、望ましい場合には、周囲線を、解析学を援用して確率論的に位置づけ、形づけて、溶媒が所望の溶解特性を有するか有さないかにより、規定の溶解性領域内に包含されるHansenパラメーターの組合せが得られる可能性に従って線を規定することができる。別法では周囲線を、例えば目により、経験的に決定することができる。
【0084】
望ましい場合には、溶解性領域を、ジアセチレンモノマーの一定の最小溶解性、例えば、溶液の重量に対して約1重量パーセント、約4重量パーセント、約7重量パーセントまたは約10重量パーセントの溶解性を示すことが期待される溶解性パラメーターの組合せを包含するように規定することができる。
【0085】
このような溶解性領域は、ジアセチレン溶液の重量に対してジアセチレン化合物少なくとも約1、少なくとも約7および少なくとも10重量パーセントからなる群から選択される最小割合のジアセチレン化合物を含むジアセチレン溶液を得る際に役立ち得る。望ましい場合には、ジアセチレン溶液は、まだより高い濃度の1種または複数の溶解ジアセチレン化合物を有することができる。
【0086】
本発明の一部の実施形態では、溶解性領域は、溶解性パラメーターに加えて、他の因子によっても規定または変更される。例えば、溶解性領域を、所望の溶解性を得るには沸点が低すぎる溶媒または溶媒組合せを回避するように位置づけるか、または形づけることができる。また、Hansen溶解性パラメーターに反映され得ない、特定の溶質に関する溶媒和力に影響を及ぼす特定の構造形態を有する溶媒または溶媒系を包含または除外するように、溶解性領域を位置づけるか、または形づけることができる。例えば、1個または複数の電子供与基を伴う塩基性を有する溶媒は、その負末端は有望な溶媒へは接近しにくい双極子の正末端などの1個または複数の利用可能な電子受容基を有する溶質に関して意外な溶媒和力を有する。しかしながら、本発明は、このような理論には何ら制限されない。
【0087】
アセチレンモノマーに関して所望の溶解性を示すか、示しそうな有望な溶媒および溶媒系を、規定の溶解性領域に溶解性ポイントを有する他の溶媒系を探すことにより特定することができる。
【0088】
意外にも、水素結合および極性パラメーターの溶解性マップを使用し、分散性パラメーターを使用することなく、ジアセチレンモノマーのためのいくつかの有用な溶媒系を特定することができることが判明した。本発明は、分散性パラメーターを無視する実施形態を包含する。
【0089】
本発明の一部の実施形態は、規定の溶解性領域内にある溶解性パラメーターポイントを有する溶媒中のジアセチレンモノマーの溶液を含む。本発明のさらなる実施形態は、規定の溶解性領域内に溶解性パラメーターポイントを有する溶媒系中のジアセチレンモノマーの溶液を含む。
【0090】
混和性溶媒を組み合わせる場合、混合物中の各液体の体積分率である荷重係数を使用して、混合物中の液体でのHansenパラメーターを平均することにより、そのHansenパラメーターを組み合わせることができる。したがって、溶媒マップでは、2種の溶媒からなる混合物での溶解性ポイントは通常、個々の溶解性ポイントの間の直線上に、混合物中のその個々の体積分率に反比例する線に沿った距離にある。別法では、望ましい場合には、これらを、混合物中の各溶媒の個々の質量分率での比により組み合わせることができる。
【0091】
望ましくは、二成分溶媒系の2種の成分溶媒は、それらの個々の溶解性ポイントの間の直線が規定の溶解性領域を通るように溶媒マップ上に位置している個々の溶解性ポイントを有し得る。混合物の溶解性ポイントが規定の溶解性領域にあるように、混合物中の溶媒の割合を選択または調節することができる。
【0092】
本発明の一部のさらなる実施形態は、相互に混和性であり、相互に、または溶質と反応しない3種または4種以上の成分を有する溶媒系を含む。望ましい場合には、各成分溶媒の体積分率を荷重された平均Hansenパラメーターに等しくなるように溶解性ポイントのパラメーターを算出することにより、溶媒系が所望の溶解性領域に溶解性ポイントを有するように、溶媒を選択することができる。
【0093】
一部の例示的溶媒系には、個々の溶媒、さらには2種以上の溶媒の混合物が包含される。有用な溶媒系の一部の実施形態は、溶解される1種または複数のジアセチレン化合物のための貧溶媒または非溶媒である少なくとも1種の成分溶媒を含む。本発明を実施する際に使用される混合物中の溶媒は望ましくは、互いに完全に混和性であってよい。
【0094】
本発明を実施する際に有用な1種の溶媒系は、1種または複数のジアセチレン化合物のために2種の貧溶媒ではあるが混和性の溶媒または非溶媒、例えば、エチルアルコールおよび水を含む。他の有用な溶媒系は、1種または複数のジアセチレンモノマーのための1種または複数の比較的良好な溶媒、例えば、ジアセチレンモノマーを少なくとも1重量パーセント溶解し得る1種または複数の溶媒を、1種または複数のジアセチレン化合物のための1種または複数の貧溶媒または非溶媒と混合された形で含む。
【0095】
ジアセチレンモノマーのための有望な新規の溶媒を特定するための溶媒マップを調製するために、本明細書に記載されている通り、いくつかの溶媒中でのジアセチレンモノマーの溶解性についての多少の情報が必要である。十分な溶解性情報が当分野で得られない場合には、溶解性試験を行うことができる。
【0096】
該当するジアセチレンモノマーについて入手可能な溶解性情報に従って、有望な溶媒および溶媒系を試験のために選択することができる。選択された溶媒および溶媒系それぞれでの溶解性ポイントを、Y軸上の水素結合(δH)対X軸上の極性パラメーター(δP)のプロットで、または別段に本明細書に記載または提案されている通りにマッピングすることができる。
【0097】
ジアセチレンモノマーの極性および水素結合溶解性パラメーターが公知であるか、または信頼して算出することができる場合には、ジアセチレンモノマーのための溶解性ポイントもまた、マッピングすることができる。次いで、試験溶解性領域を、ジアセチレンモノマー溶解性ポイントに関してマッピングし、経験的に試験することができる。
【0098】
ジアセチレンモノマーの極性および水素結合溶解性パラメーターが知られていなく、信頼して算出することができない場合には、溶解性領域を実験結果から、例えば、下記の実施例1に例として記載されている通りに決定することができる。室温では限られた溶解性特性を示すジアセチレンモノマーでは、高温を使用することができる。例えば、約90から約95℃の範囲のプロセス温度が、酢酸溶液からジアセチレンモノマーを再結晶化させるために使用されている。一般に、約50から100℃の範囲か、または他の適切な限度内の温度を、使用される溶媒の沸点、溶解されるジアセチレンモノマーの安定性、望ましくない重合の可能性および他の因子に従って使用することができる。
【0099】
本明細書では、溶解性が、温度に言及することなく述べられている場合、その温度は、標準的な大気圧で、該当する溶媒で合理的に達成可能な任意の温度、即ち、溶媒の沸点を超えて数セルシウス度まで、例えば、5℃以下高い温度であると理解されたい。
【実施例】
【0100】
本発明を実施するいくつかの非限定的な実施例を記載する。
【0101】
(実施例1)
溶解性試験および溶解性領域の規定
この実施例は、新規の溶媒および溶解性情報がそのために望ましく、信頼できる溶解性パラメーター情報をそのために入手することができないジアセチレンモノマー、即ち、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための溶媒マッピング、試験および溶解性領域の規定を説明している。この実施例では、異なる化学種および物理化学的特性からなる幅広い溶媒のいくつかの代表的な試料のそれぞれについて、その溶解性パラメーターに従って、溶解性ポイントをマッピングする。代表的な溶媒の溶解性ポイント(中黒の四角)をY軸上の水素結合(δH)対X軸上の極性パラメーター(δP)のプロットでマッピングして、図4に示されているマップのようなマップを生じさせる。また、図4には、25重量パーセントの水/溶媒混合物(中抜きの四角)を含む溶媒系での溶解性ポイントも示されている。個々の溶媒での溶解性試験結果(下記に記載)をその溶解性パラメーターの図4のマップに適用することにより、これらの混合物は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解するための有用である可能性のある溶媒系として提案される。
【0102】
各溶媒を、溶媒の沸点上5℃以下の温度で少なくとも1重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解するその能力について試験する。試験される溶媒の沸点は56℃から189℃の範囲で広く変動するので、溶媒をそれぞれ、60、75、82および90℃の温度でバッチで処理する。プロセス温度は望ましくは、所定の溶媒沸点上4から5℃以下である。
【0103】
考察中のジアセチレンモノマーに関する溶解性情報またはその溶解性パラメーターの知識がない場合、図4において、ジアセチレンモノマーの可能な高い溶解性の領域の特定を実行することはできない。
【0104】
示されている溶媒での前記溶解性試験から2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)に関して得られたいくつかの例示的溶解性データを下記の表1に、溶媒についての溶解性パラメーター情報と共に示す。また、表1には、25重量パーセントの水/溶媒混合物に関するデータも包含されている。
【0105】
【表1】
表1および本明細書中の他の箇所で使用される場合、「DMF」はジメチルホルムアミドを示し、「DMSO」はジメチルスルホキシドを示し、「E3EP」は3−エトキシプロピオン酸エチルを示し、「THF」はテトラヒドロフランを示す。
【0106】
表1中の個々の溶媒での結果は、少なくとも1重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶かし、したがってさらなる研究を保証し得る5種を示している。これらの溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール(EtOH)およびエチレングリコールである。溶解性マップの使用に従って予測された通り、水/溶媒混合物は全て少なくとも1重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解する。
【0107】
1重量パーセント溶解性試験からの表1の結果をHansen溶解性パラメーターのマップに当てはめると、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)が合理的な処理温度で可溶性である明瞭な領域をマップ上に、極性および水素結合パラメーターに関して規定することができる。これは、溶質である2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の可溶性パラメーターでの溶解性ポイントおよび値に関する情報を有さなくても、行うことができる。
【0108】
(実施例2)
さらなる溶解性試験
次いで、実施例1溶解性試験を、異なる溶質濃度で、この場合には、先行する試験で少なくとも1パーセントの溶解性を証明している各溶媒および水/溶媒混合物中4重量パーセント、7重量パーセントおよび10重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)で繰り返す。90℃水浴を使用して、溶媒または溶液温度を維持し、得られた結果を下記の表2で作表したが、この場合にも、溶解性パラメーター情報が、アセトンおよび水でのデータの理解を容易にするために参照のために包含されている。
【0109】
【表2】
これらの結果は、本発明の様々な態様の実施を証明している。例えば、10パーセントを超える溶解性を示す2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための2種の新規の溶媒、即ち、ギ酸およびジメチルスルホキシドが特定されている。ギ酸は、室温でほぼ13重量%の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解し得る。
【0110】
また、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための2種の非溶媒、即ち、水およびアセトンは、その溶解性パラメーターを組み合わせて一緒に組み合わせると、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)が少なくとも4重量パーセントの予期せぬ良好な溶解性を有する溶媒系をもたらし得ることを特記することができる。
【0111】
さらに、意外にも、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)は水に不溶性であるという事実にも関わらず、25%水/エタノール混合物(水1重量部とエタノール3重量部との組合せ)は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性が4重量パーセント未満である純粋なエタノールよりも、少なくとも4重量パーセントで良好な2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性をもたらす。
【0112】
このような所見を慎重に考察すると、高いか、または最適な2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性の1つまたは複数の領域は、溶解性パラメーターの狭い範囲内にあることが示唆される。本発明のジアセチレンモノマー溶解実施形態および他の実施形態は、完全に混和性で、特定のジアセチレンモノマーについてそのような高いか、または最適な溶解性領域にあるように組み合わせることができる溶解性パラメーターを有する1種または複数の溶媒の組合せを使用することができる。
【0113】
表2に示されている2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性の結果の一部を、図4に示されているような溶解性マップに応用するいくつかの方法が、図5に図示されている。
【0114】
図5を参照すると、溶媒の双極子強度を定量化するパラメーターである「δP」とも称される極性パラメーターが、X軸にプロットされていて、溶媒の水素結合強度を定量化するパラメーターである「δH」とも称される水素結合パラメーターが、Y軸に沿ってプロットされている。単位はそれぞれ、メガパスカル1/2、MPa1/2である。本発明のこの実施形態では、「δP」とも称される分散性パラメーターは使用されていない。
【0115】
図5では、中黒の四角は、少なくとも10パーセントの溶解性をもたらす溶媒を示し、灰色の四角は、少なくとも4パーセントの溶解性をもたらす溶媒を示し、中抜きの四角は、少なくとも1パーセントの溶解性をもたらす溶媒を示している。「×」は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)が不溶性であるか、1パーセント未満の溶解性を有する溶媒を示している。明瞭さのために、水、アセトンおよび10重量%の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解し得る溶媒を除き、多くの溶媒の名称を省いている。
【0116】
それぞれ1パーセント、4パーセントおよび10パーセントの閾値溶解性に明らかに必要とされる近似溶解性パラメーターを有する3つの溶解性領域が図5には示されている。溶解性領域は、少なくとも1パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性を示す溶媒系を包含する最も広い溶媒領域に順次重ねられる。この広い領域内のより小さな領域は、少なくとも4パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性を示し、このより小さい領域内に全部収まっている最も小さい領域は、少なくとも4パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性を示す。図5に規定されている通り、各溶解性領域は台形形態を有する。しかしながら、溶解性領域は、他の形態を有することもできる。
【0117】
本発明は何ら特定の理論に制限されないが、アセトンの低い沸点では、全て100℃を超える沸点を有する最も小さい溶解性領域内の他の4種の溶媒により示される2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)での溶解性を達成するのに十分に溶液を熱くすることができないと考えられる。
【0118】
図5に示されているマップなどの溶解性マップを援用すると、有用な溶媒を特定するための様々な実際的な指針を、溶解性の必要に応じて決定することができる。例えば、少なくとも約1重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶かすためには、約7.5から約16.6MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターおよび約8.5から約26.0MPa1/2の範囲の水素結合パラメーターを有する溶媒系を使用することができる。少なくとも約4重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶かすためには、約7.7から約16.5MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターおよび約9.0から約22.5MPa1/2の範囲の水素結合パラメーターを有する溶媒系を使用することができる。少なくとも約10重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶かすためには、約8.0から約16.4MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターおよび約10.0から約17.0MPa1/2の範囲の水素結合パラメーターを有する溶媒系を使用することができる。
【0119】
したがって、表2に示されているようなデータを使用して、溶媒溶解性パラメーターの溶解性マップ上で所望の溶解性の領域を特定することができる。次には、その溶解性マップを使用して、該当するジアセチレンモノマーのための1種または複数の新規の溶媒系を特定することができる。
【0120】
図6に図示されている二次元溶媒マップの例は、いくつかの溶媒の溶解性ポイントと、選択された溶媒系への2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)などのジアセチレンモノマーの溶解性についての溶解性試験から経験的に決定することができる領域の例示となるいくつかの規定の溶解性領域とを示している。
【0121】
図6は一般的には、図5に似ているが、図6では、図5で規定された台形溶解性領域の代わりに、異なるサイズの2個の楕円形溶解性領域が規定されていることにおいて異なり、ここで、より小さい方は、より大きい方に完全に収まっていて、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のためにより高い溶解性を示すと期待される溶解性ポイントを包含している。大きい方の楕円形は、最小限望ましい2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性を示す溶媒および溶媒系に適していると期待される溶解性パラメーターの範囲を包含すると規定される。小さい方の楕円形は、より高いか、最適な望ましい2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性を示す溶媒および溶媒系に適していると期待される溶解性パラメーターの範囲を包含すると規定される。また、様々な溶解性ポイントが溶媒の名称で標識されている。
【0122】
図5〜7の溶解性領域周囲線は、公知である溶解性から、および実施例1および2に記載されているような溶解性試験で特定された新規の溶解性からの補完により、または他の適切な方法で決定することができる。
【0123】
図7は一般的には、図6に似ているが、表2に示されている水/溶媒混合物での溶解性ポイントが包含および特定されている一方で、水以外の個々の溶媒溶解性ポイントは特定されていない点において異なる。
【0124】
図7を参照すると、水は、前述の通り、試験された特定のジアセチレンモノマー、即ち2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための非溶媒であることと一致して、示されている高い溶解性領域のかなり外側に位置することが分かる。意外にも、水を、水が混和性である他の溶媒と混合すると、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のために良好な溶解性を有する新規の溶媒系を得ることができる。これらの混合物のうちの数種が、図7に三角形でマーキングされている。例えば、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)は、アセトン単独には限られた溶解性しか有さないが、アセトン−水混合物には有用な溶解性を有する。アセトンと水との溶解性ポイントの間の直線は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のためのピーク溶解性の領域を通過する。少ない割合、本明細書中の試験実施例では25%の水を有する混合物の混合物溶解性ポイントは、ピーク溶解性領域内に位置する。
【0125】
図8に示されている溶解性マップは、官能基により列挙されている数種の溶媒および個々の溶媒である水およびテトラヒドロフランについての溶解性ポイントを含む。溶解性を、実施例1に記載されている通り、90℃までの温度または所定の溶媒の沸点付近の温度での試験で決定した。
【0126】
得られたデータを使用して、少なくとも約1重量%、少なくとも約4重量%および少なくとも約10重量%の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶解性に対応する溶解性座標について、楕円形溶解性領域を規定する。
【0127】
また、図8には、この場合には、図8および添付の図面の一部の他の図中で「KE」と称されている2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)であるジアセチレンモノマーのための算出された溶解性ポイントの例が示されている。図8中に中実の三角形で示されている算出された溶解性ポイントは、van Krevelynの方法に従ってHansen溶解性パラメーターを算出することにより、基増分の一覧と共に決定されている。算出された値はMPa1/2で、δD=20.8、δP=7.3およびδH=10.1である。これらの算出された値は、合理的であるようであるが、実験とは十分には一致しない。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)(「KE」)は、それ自体の溶解性領域の外側に該当する。van Krevelynの方法に従ってHansen溶解性パラメーターを算出する一方法は、Brandrup,J;Immergut,E.H.;Grul E.A.編により、Polymer Handbook、4版;John Wiley&Sons,Inc.:Hoboken,NJ;1999年;2巻に記載されている。
【0128】
図9に示されている溶解性マップは、Teasグラフとして公知であるもの実施形態であり、これは、第3の溶解性パラメーターである分散性パラメーターを、図5〜8にプロットされている極性および水素結合パラメーターに加えてプロットしている。
【0129】
単一の平面グラフに3種全ての溶解性パラメーターをプロットするために、全ての物質が同じヒルデブランド溶解性パラメーターを有すると仮定する。これは、簡便さのための近似である。ヒルデブランド値は、ヒルデブランド値の追加成分と往々にして考えられる3種のHansenパラメーターの二乗平均平均値である。Teasグラフは、3種の成分のHansen溶解性パラメーター(即ち、分散性パラメーター、極性パラメーターおよび水素結合パラメーター)のそれぞれの全ヒルデブランド値に対する相対的寄与をプロットしている。次いで、溶解性パラメーターを、非相関ではなく全体パラメーターの割合で表すことができる。Teasグラフは、John Burkeにより「Solubility Parameters:Theory and Application」、The Book and Paper Group Annual、3巻、1984年、The American Institute for Conservation of Historic and Artistic Works(AIC)にさらに記載されている。
【0130】
様々な溶媒群、即ち、カルボン酸、極性非プロトン性溶媒、グリコール、アルコール、アルカン、芳香族物質、エステル、ハロゲン化溶媒、ケトン、ニトリル、さらに、水、ピリジンおよびテトラヒドロフランでの近似溶解性ポイントが図9に示されている。
【0131】
群での溶解性ポイントは、その群での近似平均値であり、示されている他の溶解性マップでの場合の通り、温度に伴って起こり得る溶解性パラメーターの変動は無視する。
【0132】
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための高い溶解性の帯域を示す2つの溶解性領域、即ち、少なくとも約1重量%の溶解性と近似的に関連していることが意図されている破線の三角形およびその内部の、少なくとも約10重量%の溶解性と近似的に関連していることが意図されている実線の三角形が示されている。これらの領域は、実験結果と十分に合理的に適合し得る。異常値の1つは、ピリジンであり、これは、約1重量%の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解するが、プロットされている三角形の外側に位置している。
【0133】
同様の結果が、図9に示されているものなどの三次元溶解性マップで、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)(本明細書では「KPr」とも称される)に関して得られると考えられる。溶解性パラメーターの3次元以上をプロットする他の方法は、当業者には明らかであるか、明らかになるであろう。
【0134】
いくつかの目的のために、ジアセチレンモノマーを室温で有効に溶媒和する溶媒を有することが有用であろう。より低温においては、重合がより高い温度におけるほど要因とはならない可能性が高く、結晶成長を促進することができる。また、良好な室温溶解性は、ジアセチレンモノマーの下流の処理および製造用途において有望な価値を有する。したがって、本発明の一部の実施形態は、ジアセチレンモノマーに関して重要な室温可溶性をもたらし得る溶媒系中のジアセチレンモノマーの溶液を包含する。
【0135】
この目的または他の目的のために、酢酸から再結晶化させたジアセチレンモノマー、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の様々な溶媒系への室温溶解性を、例えば、下記の表3に示されている通りに決定することができる。表3は、20℃の室温での溶解性を、溶液の重量に対する重量パーセントで示している。
【0136】
【表3】
「テトラメチル尿素」とも呼ばれ、「TMU」と称されることもある1,1,3,3テトラメチル尿素は、7重量%までの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を90℃の温度で密閉バイアル中で溶かすことができる。
【0137】
下記の表3に示されている通り、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶解性に関する情報を使用して、室温溶液を再結晶化のために、環境条件インジケーターを調製するためのインクとして使用するために、または他の目的のために製造することができる。他のジアセチレンモノマー溶液も同様に調製することができる。
【0138】
図10に示されている棒グラフは、表3に挙げられている室温溶解性をグラフで示している。
【0139】
本明細書の他の部分の場合と同様に、アセトン/水およびエタノール/水溶媒混合物は、表3および図10において重量対重量比で示されている。表3および図10から、高い溶解性を高温で示す溶媒系、例えば、酢酸および複数の水性混合物の一部は、室温では限られた溶解性しか有さないことが分かる。
【0140】
対照的に、ハロゲン化溶媒およびギ酸は、優れた室温溶解性を示す。しかしながら、これらの溶媒は、これらを一部の目的には適さなくする周知の取り扱い特性を有する。本発明の有用な態様は、環境に優しいか、または相容性である1種または複数のジアセチレン化合物のための新規の溶媒系を提供することである。環境に相容性な溶媒系の例は、高い割合の水、例えば、50重量パーセントを超える水を含む水性溶媒系である。
【0141】
本発明により提供されるか、または本発明の実施で使用される溶媒系への他のジアセチレンモノマーの溶解性は、外挿または日常的な実験により決定することができる。例えば、5,7−ドデカジイン−1,12−ビス−n−オクタデシルウレタン(本明細書では「4DOD」とも)の様々な溶媒系への溶解性を、下記の実施例2Aに記載されている通りに決定することができる。
【0142】
5,7−ドデカジイン−1,12−ビス−n−オクタデシルウレタン(「4DOD」)は、下記の化学構造
C18H37NHCOO(CH2)4CCCC(CH2)4COONHC18H37
を有し、放射線感受性で色変化を示すが、通常の周囲熱条件には比較的不感受性である。5,7−ドデカジイン−1,12ジオールビス(n−ブトキシカルボニルウレタンは、放射線感受性であるが、通常の周囲熱条件には比較的不感受性である別の化合物である。本発明は、1種または複数のこのような化合物を使用して、高エネルギー周囲放射線、例えば、紫外線、α線、β線または他の素粒子線、X線、γ線などへの累積曝露の視覚的な表示をもたらす放射線監視デバイスを包含する。
【0143】
(実施例2A)
5,7−ドデカジイン−1,12−ビス−n−オクタデシルウレタン(「4DOD」)の溶解性
インジケーター薬剤として役立てるために、熱不感受性の重合性ジアセチレンモノマー、即ち、5,7−ドデカジイン−1,12ジオールビス(n−オクタデシルウレタン)(後記では「4DOD」)を、インクのマスターバッチを調製するのに十分な量で、Yeeの米国特許第4,215,208号明細書、17欄、47〜65行に記載されている方法により合成し、フリーザー中に貯蔵する。少量の4DODを凍結貯蔵から取り出し、室温で様々な溶媒系への溶解性について次の手順を使用して試験する。
【0144】
脱イオン水100gを200mLガラスビーカーへ秤量する。溶液が飽和して過剰の4DODが溶解していない固体として存在したままになるまで、4DOD粉末をこのガラスビーカーに加える。脱イオン水75gを別の200mLガラスビーカーに秤量し、アセトン25gを加える。次いで、溶液が飽和し、過剰の4DODが溶解していない固体として残るまで、4DODをガラスビーカー内の水−アセトン溶媒系に加える。脱イオン水75gを第3の200mLガラスビーカーに秤量する。エタノール25gを水に加え、次いで、溶液が飽和し、過剰の4DODが溶解していない固体として残るまで、4DODを水−エタノール混合物に加える。各溶液を磁気プレート上で、約25℃の制御室温で16時間撹拌する。
【0145】
16時間撹拌した後に、各溶液7g(溶解部分のみで、溶解していない固体物質は避ける)を別のアルミニウムホイル皿に移す。アルミニウムホイル皿を換気フード下に2時間放置して、揮発性溶媒を全て蒸発させ、次いで、真空炉中で1時間乾燥させる。次いで、各アルミニウムホイル皿を秤量し、各溶媒系への4DODの溶解性を、溶媒系の重量に対する溶質のパーセントで算出する。得られた一部の結果を下記の表2Aに示す。
【0146】
【表2A】
表2Aの結果から分かる通り、試験条件下では、4DODは、水中には最小の溶解性を有する。しかしながら、エタノールまたはアセトンと混合されている高い割合の水を含む環境に許容され得る溶媒系は、溶媒系に対して約9または10重量パーセントの劇的に高い水中の4DODの溶解性を示している。また、結果は、単独の個々の有機溶媒、エタノールまたはアセトンへの4DODの顕著に高い溶解性も示している。
【0147】
本発明の方法は、ジアセチレンモノマー、例えば2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のために溶媒系を設計する際に柔軟性を提供する。例えば、図5〜7に示されている溶媒マップは、ジアセチレンモノマーのための新規の溶媒を特定するか、もしくはジアセチレンモノマーのための新規の溶媒系を作るか、またはその両方のために使用することができる溶媒マップの例示である。新規の溶媒および溶媒系は、ジアセチレンモノマーの後続の処理または利用において有用なジアセチレンモノマーに関する新規の溶解性情報をもたらし得る。新規の溶解性情報は、ジアセチレンモノマーが有用な溶解性を有する溶媒系に関する新規の知識または溶媒系へのその溶解性に関する新規の定量的情報を含み得る。
【0148】
下記は、本発明を実行する際に有用な個々の溶媒のいくつかの例である:メタノール、ギ酸、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、アリルアルコール、2−アミノエタノール、1,1,3,3−テトラメチル尿素、ジクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸。
【0149】
一部の有用な溶媒系は、水と、適切に相補的な溶解性パラメーターを有する他の溶媒との混合物を含む。水との混合物は、溶媒系の重量に対して約1から約40重量パーセントの水、約4から25重量パーセントの水または他の適切な割合を含むことができる。望ましい場合には、他の1種または複数の溶媒は、約15MPa1/2以下の水素結合パラメーターを有してよく、約18MPa1/2以下の極性結合パラメーターを有してよい。一部の他の有用な溶媒系は、上記で述べた個々の溶媒のうちの非アルコール溶媒と適切な1種または複数のアルコール溶媒との混合物を包含する非水性溶媒混合物を含む。
【0150】
下記は、本発明の溶媒系混合物の実施形態のいくつかの例であり、ここで、いずれの場合も、水の割合は、溶媒系の重量に対する:
約5パーセントから約25パーセントの水と残りは酢酸の割合の酢酸および水の混合物;
約5パーセントから約25パーセントの水と残りはアセトンの割合のアセトンおよび水の混合物;
約5パーセントから約25パーセントの水と残りはジメチルホルムアミドの割合のジメチルホルムアミド(本明細書中では「DMF」)および水の混合物;
約0パーセントから約25パーセントの水、場合によっては、少なくとも約5パーセントの水と残りはジメチルスルホキシドの割合のジメチルスルホキシドおよび水の混合物;
約0パーセントから約25パーセントの水、場合によっては、少なくとも約4パーセントの水と残りはエタノールの割合のエタノールおよび水の混合物;
約1パーセントから約25パーセントの水、場合によっては少なくとも約5パーセントの水と残りはピリジンの割合のピリジンおよび水の混合物;
約1パーセントから約25パーセントの水、場合によっては少なくとも約5パーセントの水と残りは酢酸の割合の1,1,3,3−テトラメチル尿素および水の混合物;および
約10パーセントから約90パーセントの水、場合によっては少なくとも約30パーセントの水と残りはジメチルスルホキシドの割合のジメチルスルホキシドおよびエタノールの混合物、例えば、約50:50混合物。
【0151】
したがって、本発明のジアセチレン溶液の実施形態で使用するための溶媒系は、メタノール、ギ酸、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、アミノエタノール、1,1,3,3−テトラメチル尿素、アリルアルコール、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸および水と1種または複数の前記溶媒との混合物(ここで、溶媒系の重量に対する水の割合は、約1から約50パーセントの範囲である)からなる群から選択することができる。アセトンおよび水ならびにエタノールおよび水は、同様の割合の水を伴って使用することができる水性混合物のさらなる例である。また、非水性溶媒混合物を、本発明を実施する際に溶媒系として使用することができる。
【0152】
本発明を実施する際に有用な溶媒系の一実施形態は、約95〜96重量パーセントのエタノールおよび約4〜5重量パーセントの水を含む共沸エタノール−水混合物を含む。本発明は、この共沸混合物中のジアセチレンモノマーの飽和溶液を包含する。
【0153】
望ましい場合には、本開示から明らかであるか、本開示により提案されている通り、他の混和性溶媒を前記混合物に加えて、三成分、四成分以上の複雑な溶媒系を形成することができる。例えば、水と2種の他の溶媒、例えば、イソプロピルアルコールおよびジメチルスルホキシドとの三成分混合物を使用することができる。このような三成分系溶媒系に適した割合には、約25重量パーセントまでが水で、残りは相対重量比約1:2から2:1の2種の他の溶媒である割合が包含される。一部の他の有用な溶媒系は、混和性溶媒の混合物を含み、ここで、溶媒系の極性溶解性パラメーターおよび水素結合溶解性パラメーターはそれぞれ、荷重係数として溶媒系中の各溶媒の体積分率を使用する個々の混和性溶媒での各パラメーターの平均を含む。
【0154】
なおさらに適切な溶媒系が、本開示を考慮すれば当業者には明らかであるか、明らかになるであろう。例えば、第1の有望な溶媒の極性および水素結合溶解性パラメーターを、図5〜9のいずれか1つに示されているものなどの溶解性マップにプロットすることができる。溶媒が、特定のジアセチレンモノマーに関する所望の溶解性領域内に位置しているか、または包含されている場合には、その有望な溶媒を単独で使用できると期待し得る。第1の有望な溶媒での溶解性ポイントがジアセチレンモノマーに関する所望の溶解性領域外に位置している場合、溶解性マップを本発明に従って利用して、第1の有望な溶媒と組み合わさって、ジアセチレンモノマーに関して所望の溶解性をもたらす溶媒系になり得る第2の有望な溶媒を選択することができる。
【0155】
溶媒系成分の割合を変動させることにより、多成分溶媒系をチューニングして、特定のジアセチレンモノマーのための系の溶媒和力を調節することができることは理解されるであろう。
【0156】
望ましい場合には、通常の当業者には明らかであるか、明らかになるであろう他の液体または固体が、溶媒系に包含されていてもよい。場合によっては、指定の1種または複数の溶媒は、少なくとも50重量パーセントの溶媒系を含み、残りは、使用される場合には他の液体および水であってよい。他の液体は、溶解される1種または複数のジアセチレン化合物のための溶媒または非溶媒であってよく、例えば、本明細書で溶媒系成分として述べられた液体以外であってよい。本発明の一部の実施形態は、溶解または未溶解固体を何ら含有しない溶媒系を使用し、溶媒系の他には、所望の1種または複数のジアセチレン化合物のみを含有する溶液を処方することができる。
【0157】
別法では、またはこれに加えて、固体添加物、例えば、Prusikらへの米国特許第7,019,171号明細書に記載および請求されているような沈殿添加物を溶媒系に導入することができるが、但し、これらは、本発明の目的と不相容性ではないことを条件とする。
【0158】
ジアセチレン溶液
本発明の一部の実施形態は、目的に適していると本明細書に記載されている溶媒系の1種中の1種または複数のジアセチレンモノマーの溶液を包含する。本発明のさらなる実施形態は、規定の溶解性領域に系溶解性ポイントを有する新規の溶媒系中のジアセチレンモノマーの溶液を含む。
【0159】
本発明はまた、溶媒系の溶媒和特性の限界までの任意の所望の割合での本発明の溶媒系実施形態中の1種または複数のジアセチレンモノマーの溶液を包含する。例えば、1種または複数のジアセチレン化合物の割合は、溶液の重量に対して少なくとも1重量パーセント、少なくとも4重量パーセントまたは少なくとも7重量パーセントであってよい。多くの目的のために、高い溶解性が有用であり、本発明は、溶解したジアセチレン化合物を溶液に対して少なくとも約7重量パーセント含むジアセチレン溶液実施形態を包含する。本発明の一部のさらなる実施形態は、溶液の重量に対して少なくとも約10重量パーセントの溶解したジアセチレン化合物を含むジアセチレン溶液を含む。
【0160】
本発明を実施する際に使用することができるジアセチレンモノマーのいくつかの例には、条件を表示または監視することができるように、環境条件への曝露に応答して色変化などの視覚的な表示を示すことができる任意のジアセチレン化合物が包含される。本発明を実施する際にジアセチレンモノマーとして有用な一部のジアセチレン化合物は、温度、湿度、周囲大気の化学的組成、環境圧力、周囲放射線、他の周囲条件またはこれらのパラメーターの組合せに応答し得る。
【0161】
例えば、累積熱曝露の不可逆的な表示をもたらし、本発明を実施する際にジアセチレンモノマーとして使用することができるインジケーター薬剤として有用なジアセチレン化合物は、本明細書に挙げられているPatel、Preziosiおよび他の特許に開示されている。Patelの米国特許第3,999,946号明細書、4欄13行から5欄48行まで、およびPreziosiらの米国特許第4,788,151号明細書、3欄58行から4欄62行の開示は参照により本明細書に援用される。これらの文献から援用される開示において、「本発明」、「好ましい」、「好ましくは」などの言及は、本明細書ではなく、挙げられている特許それぞれの発明に関していると理解されたい。
【0162】
望ましい場合には、ジアセチレンモノマー化合物は、アルキル基が1から20個の炭素原子を有する2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物;2個のアルキル基がそれぞれ独立に、エチル、プロピル、ブチル、オクチル−、ドデシルまたはオクタデシルである2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物;およびアルキル置換基が直鎖である前記の置換アルキル尿素化合物からなる群から選択することができる。重合性ジアセチレンモノマーは、望ましい場合には、対称に置換されていてよい。
【0163】
本発明を実施する際に有用であるのは、下記構造式の重合性ジアセチレン化合物またはモノマーである
R1C≡C−C≡CR2
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、不可逆性の外観変化をもたらすことと相容性な有機置換基である]。例えば、R1およびR2はそれぞれ独立に、−R4NHCONHR3であってよく、ここで、R3は、1から20個の炭素原子を有するアルキル、場合によっては、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシルまたはオクタデシルであり、R4は、1から20個の炭素原子を有するアルキル、例えば、メチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレンである。望ましい場合には、R1およびR2はそれぞれ、CH2−NHCONHR3であってよく、R3はそれぞれ独立に、直鎖または分枝鎖飽和アルキル基であってよい。一部の前記化合物は、周囲条件インジケーター、例えば時間−温度インジケーターの活性成分として有用である。
【0164】
本発明を実施する際に有効に使用することができる他のジアセチレン化合物またはモノマーは通常の当業者には明らかであるか、または明らかになるであろう。使用することができるジアセチレン化合物のいくつかのさらなる例には、5,7−ドデカジイン−1,12ジオールビス(n−オクタデシルウレタン(本明細書では「4DOD」とも称される)および5,7−ドデカジイン−1,12ジオールビス(n−ブトキシカルボニルウレタンなどのより高いエネルギー放射線には感受性であるが、周囲熱条件には比較的不感受性であるジアセチレン化合物が包含される。
【0165】
したがって、ジアセチレンモノマーは、望ましい場合には、下式の構造を有するジアセチレン化合物であってよい
R3HNCONH−R4−C≡C−C≡C−R4−NHCONHR3
[式中、R3およびR4はそれぞれ独立に、上記で述べられた通りである]。
【0166】
有用なジアセチレン化合物のいくつかの具体的な例は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)を含む。
【0167】
本発明は、少なくとも1種の第1および第2ジアセチレン化合物(ここで、第1および第2ジアセチレン化合物はそれぞれ、構造式R−C≡C−C≡C−R(式中、置換基Rは、第1の化合物では−CH2NHCONHCH2CH3であり、第2の化合物では、−CH2NHCONH(CH2)2CH3である)を有する)を含み、さらに、少なくとも1種の非アセチレン化合物を結晶相中に含む結晶相を有するジアセチレン活性インジケーター薬剤を含む時間−温度インジケーターを包含し、ここで、前記少なくとも1種の非アセチレン化合物は、場合によって、少なくとも1種の溶媒である。
【0168】
本発明によるジアセチレン溶液の実施形態で、および本明細書に記載の本発明の他の態様で使用することができる適切なジアセチレンモノマーのいくつかの例には、エチル−、プロピル−およびオクチル置換−2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物が包含される。
【0169】
再結晶化
溶液からのジアセチレンモノマーの再結晶化は往々にして、所望の反応性を有する新規のモノマー結晶構造を得るために、およびジアセチレンモノマーの大きな結晶を成長させるために、ポリマーを含有しない「新鮮な」活性モノマーを得る有用な方法であり得る。ジアセチレンモノマーを処理する公知である方法は一般に、非晶質または結晶粉末に慣用のX線結晶学により結晶構造を完全に特定するには小さすぎる最大寸法を有する結晶をもたらす。
【0170】
また、再結晶化プロセスを使用またはアレンジして、望ましい場合には、例えば、濾過、遠心分離または他の適切な手段によりモノマーの溶液からポリマーを分離することにより、原料から望ましくないポリマー物質を除去することができる。
【0171】
本明細書で述べた通り、加熱された過飽和溶液からジアセチレン化合物を結晶化または再結晶化する際に、時間−温度誘発される重合を回避する処置が必要なことがある。重合があまり問題とならないであろうより低い温度でも、より低い温度での公知である溶媒および溶媒系中でのジアセチレンモノマーの限られた溶解性により、問題が生じ得る。したがって、純粋なジアセチレン化合物からなるより大きな結晶、例えば、約2mmを超える寸法を有する結晶を過飽和溶液から成長させる方法が必要である。少なくとも約5mmまたは少なくとも約10mmの寸法を有するより大きな結晶もまた、一部の目的では望ましいであろう。
【0172】
本発明による結晶化ジアセチレン化合物は、任意の適切な方法により、例えば、ジアセチレン化合物の溶媒系中のジアセチレン溶液からジアセチレン化合物を結晶化させることにより調製することができる。
【0173】
ジアセチレン溶液は、ジアセチレン化合物を溶媒系に溶かすことにより、または他の適切な方法により調製することができる。望ましい場合には、ジアセチレン化合物は、不純な結晶化生成物を含み得る。
【0174】
一般的に述べると、本発明は、ジアセチレン化合物を再結晶化させる方法を包含し、この方法は、ジアセチレン化合物のための溶媒系中のジアセチレン化合物の混合物を約50℃から約100℃の範囲の温度で、場合によっては、加熱された水浴上で加熱してジアセチレン化合物を溶媒系に溶かし、熱を供給することなく、およびクエンチすることなく、溶液を冷却させてジアセチレン化合物の結晶を沈殿させることを含む。
【0175】
本発明の一実施形態は、ジアセチレンモノマー、例えば、ビス−アルキル尿素ジアセチレンモノマーを再結晶化させる方法を含み、この方法は、許容できる作業温度で所望の溶質の負荷が得られ、使用される条件下に溶質と反応しない適切な溶媒にジアセチレン化合物を溶かすことを含む。任意の有用な溶質負荷、例えば、溶液の重量に対して少なくとも約1重量パーセントのジアセチレン化合物の溶質負荷を使用することができる。より高い負荷、例えば、少なくとも約4重量パーセントまたは少なくとも約7重量パーセントを、望ましい場合には使用することができる。
【0176】
望ましい場合には、加熱、例えば、溶液の沸点の約5℃以内の温度への加熱を使用して、溶解を促進することができる。望ましい場合には、例えば、Prusikらへの米国特許第6,924,148号明細書に記載および請求されている通りに、溶液をその沸点か、その付近の温度で還流させて、ジアセチレン化合物の反応性を変化させることができる。
【0177】
望ましい場合には、原料の溶液を濾過するか、遠心分離するか、または別の方法で処理して、原料のジアセチレンモノマー粉末または溶液中に存在していたかもしれない重合物質または他の望ましくない固体物質の粒子または分子を除去することができる。
【0178】
(実施例3)
再結晶化
本発明の一実施形態では、通常の当業者には明らかであるように、次の手順を使用して、ジアセチレンモノマー、例えば、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を本明細書に記載のジアセチレンモノマー溶液、例えば、エタノール/水から、または他のジアセチレンモノマー溶液から再結晶化させることができる。
【0179】
水浴を温度制御されたホットプレート/攪拌機上で、選択されたプロセス温度、例えば90℃に予備加熱する。1%溶液では、原料の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)0.4グラムおよび1:3重量部の水/エタノール(または選択された他の溶媒)9.6グラムを、20mLガラスシンチレーションバイアルに加える。溶質、例えば、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の量を、所望の濃度に応じて変化させる。
【0180】
バイアルを90℃で水浴中で加熱し、磁気撹拌棒で撹拌する。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)ジアセチレンモノマーの溶解を観察する。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の粒子が視覚的に残っていなくなったら、加熱および撹拌のスイッチを切り、水浴を冷却する。結晶が溶液から徐々に沈殿する。
【0181】
水浴温度が約35℃に冷却したら、バイアルを浴から外し、5ミクロンの空孔サイズのポリテトラフルオロエチレンフィルターで真空濾過装備を調製する。結晶/溶媒スラリーを濾過し、生成物を15分間空気乾燥させ、次いで、これを、ガラスシンチレーションバイアルに移す。
【0182】
最終生成物を集め、これを、約−30℃のフリーザーに入れる。高沸点溶媒を用いた場合には起こり得るように、結晶がまだ湿っている場合には、冷却された結晶を真空室(FLEXI−DRY MP(商標)凍結乾燥機など)に<500mTorrの圧力で約1〜2時間入れ、次いで、これをフリーザーに戻す。
【0183】
実施例3の方法を利用して4重量パーセントおよび7重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶液を使用することにより、再結晶化された2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の大部分を回収して、長い白色針状物の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を得ることができる。
【0184】
本発明による再結晶化方法の他の実施形態は、約80℃以上の温度を有する温ジアセチレンモノマー溶液を中間温度まで急速に冷却して、起こり得るモノマーの重合を制限する第1のステップを含む。方法はまた、中間温度から、より低い温度、例えば室温以下に徐々にまたは穏やかに冷却することにより、所望のサイズの結晶を成長させる第2のステップを含む。中間温度は、約30℃から約50℃、例えば、約35℃、約40℃または他の適切な温度であってよい。望ましい場合には、不混和性溶媒または強制循環または他の適切な方法でのクエンチを使用して、第1ステップでの冷却を早めることができ、望ましい場合には、水浴などを使用して、第2ステップでの冷却を制限することができる。
【0185】
本発明は、本明細書に記載の任意の再結晶化方法により生じた結晶ジアセチレン化合物を包含する。多くの温度感受性ジアセチレン化合物は、結晶化の瞬間から、温度依存速度で常に重合している。低温貯蔵条件下、例えば、約−4℃から約−30℃では、重合速度は、数ヶ月または数年などの長期間の後でも、物理的作用がほとんど明らかでないか、明らかでないほどゆっくりであり得る。温度が高いほど速い重合速度は、適切な化合物では、発色または色変化をもたらし得る。公知である通り、この現象は、本発明の時間−温度インジケーターなどの時間−温度インジケーターにおいて有用である。
【0186】
したがって、本発明の結晶ジアセチレン化合物は、場合によっては、少量の重合ジアセチレン化合物を含むことがあり、例えば、約0.1重量パーセントまで、約1.0重量パーセントまで、または約1.0重量パーセントまでの結晶ジアセチレン化合物がポリマーを構成していることがある。
【0187】
図11に示されている画像は、異なる条件下に異なる溶媒中の溶液から成長させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の結晶の偏光光学顕微鏡画像である。左側の小さな結晶は、冷却させるためにメタノールでのクエンチを使用して温酢酸から再結晶化させることによる慣用の方法に得られる。右側のより大きな結晶は、約1℃/分で冷却することにより、25%水/エタノール混合物(重量で1:3の混合物)から成長させている。
【0188】
100ミクロン、0.1mmの目盛りが、サイズの推定のために各顕微鏡写真に示されている。画像を比較すると、本発明により水/エタノール混合物から再結晶化させた生成物は、約0.2mm以上の寸法をその多くが有する規則的で長い白色の結晶から主になることが分かる。対照的に、温酢酸から沈殿させた左側の結晶は、粉末により似ていて、形態が不規則で、比較的小さく、あるとしてもごく少数の結晶が0.1mm未満の大きさであり、あるとしてもごく少数の針状物が存在する。
【0189】
いくつかの異なる溶媒系から再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の試料を、その相対反応性に関して試験することができる。例えば、温度曝露などの環境条件に対する時間関連曝露に応答して色を変化させるジアセチレンモノマーの能力を、実施例4に記載の方法を使用して試験して、図12〜14に示されているような結果を得ることができる。
【0190】
(実施例4)
色変化反応性の比較
試料ペレットを、結晶ジアセチレンモノマー粉末から、International Crystal Laboratories(Garfield、New Jersey)が供給するE−Z Press 12−Ton液圧プレスおよび13mmのダイセットを備えたKBr Pellet Kitを使用して調製する。粉末約300mgを使用して、5から8トンの圧力を2〜3分間掛ける。ジメチルスルホキシド、メタノールおよび重量で4:1のエタノール/水混合物から沈殿させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の試料を調製する。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を合成した直後に、沈殿剤としてメタノールを使用して、温氷酢酸中の溶液から沈殿させた原料の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)結晶(「KE原料」)のペレットが、対象として包含されている。
【0191】
エッジによって取り扱っている間に、個々のペレットを約50mm×115mmの透明なヒートシールバッグに入れ、真空封止し、ヒートシール可能なホイルパウチに入れる。ホイルパウチを、Fuji Impulseテーブルトップ真空ヒートシーラーを使用して真空封止する。ペレットを含有する封止されたホイルパウチをフリーザー中−30℃で、または他の適切な温度で、試験の準備ができるまで貯蔵する。
【0192】
ペレットを含有するヒートシールされたホイルパウチ試料を、適切な温度、例えば、37℃、45℃または70℃に設定された水浴、例えば、Huber循環水浴に入れ、37℃で数日などの適切な測定期間、または反応がより迅速に進行する70℃で数時間エージングさせる。試料を、試験の間に水に浸漬させたままで秤量する。時間測定を、各パウチを水浴に入れた直後に開始する。所定の試験期間の終了時にパウチを取り出し、その光学密度を測定する。
【0193】
光学密度を測定するために、パウチを20℃に設定された第2の水浴に短時間浸漬させて、試料をクエンチし、測定の間のさらなる色変化を防ぐ。ホイルパウチを、透明ヒートシールバッグ内にペレットを残したままで切り開く。ジアセチレンモノマーの反応速度を、X−Rite404色反射濃度計を使用して、エージングされたペレットのシアン光学密度(O.D.)を測定することにより決定する。光学密度を任意の尺度で測定し、色変化反応性の比較可能な表示のために使用することができる。
【0194】
濃度計を使用する場合、約2mm厚のペレットの厚さに関して補正するために、濃度計を、対応する高さの高いプラットフォームまで持ち上げることができる。得られた結果の一部を図12〜14に示す。
【0195】
図14には、可能な試験結果が示されている溶媒系に対する記号表が包含されている。この記号表は、図12および13にも適用可能である。
【0196】
図12〜14のグラフは、試料の光学密度の変化として測定された色変化を日数の時間経過で、それぞれ37℃、45℃または70℃でプロットしており、これは、実施例4に記載の方法により生じさせることができる。グラフは、モノマーを再結晶化させるために使用された溶媒に応じて、試験されたジアセチレンモノマーの反応性について、著しい違いを示している。
【0197】
特に、図12で分かるように、37℃では、ピリジンから結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)(中実の四角)は、原料生成物(星形)よりも早い色変化速度を示し、また、試験においてどの他の溶媒から得られた生成物よりも早い色変化速度を示している。加えて、ピリジン生成物は、原料生成物よりも低い活性化エネルギーを、例えば、原料対照での23kcal/molに比較して約19kcal/molを有する。図13に示されている通り、同様の作用が45℃で明らかであり、図14に示されている通り、70℃のより高い温度では、より低い規模である。
【0198】
DMSOから再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)は、図12に示されている通り、37℃では、原料の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)よりも、やや早い反応性を示す。しかしながら45℃では、図13から分かる通り、この作用は、著しくより顕著になり、この場合、DMSO生成物の反応性プロファイルは、ピリジン生成物の反応性プロファイルに近く、試験された他の生成物とはかなり区別される。
【0199】
図14に示されている通り、70℃のより高い温度では、同様の相対結果を得ることができたが、より短い時間規模にわたっては、生成物間の差違はより僅かである。
【0200】
全体では、列挙された溶媒から再結晶化させたジアセチレンモノマーのいくつかの試料は、原料生成物に匹敵するか、またはそれよりも早い視覚的な応答反応性を示し、このことは、これらを、環境条件インジケーターにおいて活性要素として使用することができることを示唆している。原料生成物の反応性からの反応性のバリエーションにより、配合物に、インジケーターと監視されるホスト製品の応答とを対応させるためのさらなるオプションを与えることができる。
【0201】
ジアセチレンモノマー溶液を調製するために本発明により特定または提供される新規の溶媒系は、いくつかの方法で有用であり得る処理および再結晶化選択肢をもたらす。例えば、ジアセチレンモノマー溶液は場合によって、例えば、基材に塗布する場合に、または他の方法で、インジケーター薬剤または要素として有用であり得る。記載の通り、1種または複数の溶液を使用して、ジアセチレンモノマーの新規の結晶形態、例えば、X線または他の分析に有用なより大きな結晶を得ることができる。
【0202】
X線結晶分析
起こり得るジアセチレン重合反応機構の理解およびモデリングを容易にするために、ならびに有用な新規のジアセチレンモノマー処理方法を特定する助けになるように、結晶ジアセチレンモノマーについてのさらなる構造情報を有することが有用であり得る。本発明により、このような結晶情報を使用して、ジアセチレン化合物の結晶形態を区別し、インジケーター性能が結晶構造に対して感受性であり得る特定の用途のために、例えば、時間−温度、放射線量または他の周囲条件インジケーターのために他のものよりも有用であり得る形態を特定することができる。
【0203】
したがって、本発明の一部のさらなる実施形態は、X線回折または他の適切な技術により該当するジアセチレンモノマーの結晶粉末化試料を評価することを含む。結晶分析に有用な結晶粉末は一般に、酢酸または本明細書に記載もしくは示唆されている溶媒系の他の1種中のジアセチレンモノマーの温溶液から、またはジアセチレンモノマーが合成された溶液から、急速なクエンチまたは他の迅速な冷却法により得ることができる。一般に、X線回折研究は、存在し得るか、研究により生じ得る少量のポリマーからの過度の干渉無しにモノマーで行うことができるようである。
【0204】
X線分析の一つの例示的方法では、分析される結晶ジアセチレンモノマー物質の粉末化試料を、フリーザー内の貯蔵から取り出し、ホルダー上に置き、次いで、所望の固定波長のX線を使用して特性決定する。
【0205】
回折放射線の強度の角度変動を、ゴニオメーターを使用して記録する。次いで、記録されたデータを回折角および結晶回折で使用された放射線の波長に関して分析して、結晶構造における原子間隔またはd値をオングストローム単位「Å」(1Å=10−10m)で評価する。試料を構成する原子の平面間の距離を、ゴニオメーターデータから、ブラッグの法則を公知である方法で当てはめることにより算出することができる。X線回折ブラッグ角2θの値が本明細書中で述べられていて、X線放射線が規定されていない場合、使用されたX線放射線は、約1.54Åの波長を有すると理解されたい。
【0206】
典型的なX線スキャンで生じたd空間の特性セットにより通常、結晶試料中に存在する物質の固有の「指紋」が得られる。標準的な参照パターンおよび測定と比較することにより適切に翻訳すると、この「指紋」により往々にして、試料物質を明白に特定することができる。
【0207】
(実施例5)
粉末化結晶(エチル尿素化合物)の構造分析
該当するジアセチレン化合物、この場合には、例えば、一般にPreziosiら、米国特許第4,788,151号明細書の実施例Aに記載されている通りに、メタノールを使用して、酢酸溶液から合成した直後に沈殿させた原料2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の粉末結晶での実験的X線回折パターンを、Rigaku ULTIMA(商標)回折計を使用して1.54056Åの波長「λ」でCu K放射線を供給して生じさせる。得ることができる一部の結果を、図15に示されている一番下の回折パターンに示す。
【0208】
図15に示されているデータは、垂直軸上の回折ビーム強度の平方根に対する水平軸上の2θ度に依存してプロットされており、「θ」は、X線ビームの入射角度である。同じ軸設計を、図に示されている全てのX線回折パターンで使用する。文脈で別段に示されていない限り、回折角に対する本明細書の言及は、「2θ」を意味すると理解されたい。
【0209】
図15を参照すると、原料粉末化2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)での回折パターンの顕著な特徴は、約5.18度および10.39度の2θ値付近での2つの高い強度ピークの存在である。これら2つの強いピークは幅が狭く、背景よりも数倍高い強度まで鋭く高まっている。ピークが存在する2θ値は、ブラッグの法則に従うとそれぞれ17.06および8.51Åのd値に対応している。参照を簡便にするために、これら2つのピークに、ジアセチレンモノマー結晶格子の001および002反射と索引を付けることができる。
【0210】
(実施例6)
粉末化結晶(様々な溶媒)の構造分析
実施例5を、粉末結晶沈澱物が得られ、過度の自発重合を回避するように設計された比較的早い冷却条件下に、下記に特定されているいくつかの異なる溶媒から再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の結晶を使用して繰り返す。
試料A 酢酸
試料C 1:4重量部の水とジメチルスルホキシド
試料E 1:4重量部の水とエチルアルコール
試料F 1:4重量部の水とイソプロピルアルコール
得られた一部の結果を、図16に示されている回折パターンに示す。
【0211】
図16を参照すると、2θが約4度から約12度である低い角度領域での001および002ピークの位置および相対強度は、調査された全ての試料で同様であることが分かる。この事実は、結晶構造がそれぞれ、関連結晶平面方向において匹敵する平面間分離を有することを示唆し得る。本明細書に記載されている通り、文脈で別段に示されていない限り、2θ角度は、銅Kα放射線を使用して約1.542Åで特性決定されている。
【0212】
加えて、様々な回折パターンプロファイルが、2θが約19度から24度である高い角度の領域での重大な差違を明らかにしている。特に、高角度回折パターンは、使用される再結晶化溶媒によって著しく変動することが分かる。例えば、公知である酢酸生成物の試料である試料Aでの回折パターンは、2θが約19度から約24度である高い角度範囲で、4つの明瞭な高い強度ピークを示す。水/イソプロピルアルコール試料である試料Fでのパターンは、高い角度範囲では、また、2θが約19度から約24度である範囲でも、2つの目立つ高い強度ピークしか示さない。対照的に、ジメチルスルホキシド生成物から再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)である試料Cおよび水/エチルアルコール試料Eでの回折パターンは、2θの高い角度範囲で、著しい高い強度ピークを欠いている。
【0213】
図16に示されている垂直軸の高さを値1とすると、図の形状を測定することにより、試料Aは、約19度から約24度の高い角度範囲に値0.4を超える4つの高い強度ピークを示すと決定することができる。試料Fは、約19度から約24度の高い角度範囲に値0.4を超える2つの高い強度ピークを示す一方で、試料Cまたは試料Eは、何ら示さない。
【0214】
図15〜17に示されているX線回折データおよび表4は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物で得ることができるデータの例示である。本発明は、添付の図面に示されているか、もしくは本明細書に記載されているX線回折データを有するか、または本明細書に記載されている角度または他の範囲内にピークまたは他の特性を有する新規の結晶ジアセチレン化合物を包含する。
【0215】
(実施例7)
粉末化結晶(エタノール/水)の構造分析
実施例5を、95/5重量パーセントのエチルアルコール/水溶液から、粉末結晶沈澱物が得られ、過度の自発重合が回避されるように混合物の沸点付近の温度からの比較的急速な冷却で、比較的速い冷却条件下に再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)(「KE」)および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)(「KPr」)の結晶を使用して繰り返す。得られた一部の結果を図17に示されている回折パターンに示すが、ここで、個々のジアセチレンモノマーでのパターンは、「KE」および「KPr」と標識されている。
【0216】
図17を参照すると、5:95の水/エタノールから再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)での回折パターンは、図16に示されている1:4の水/エタノールからの再結晶化での回折パターンと同様であることが分かる。
【0217】
「KPr」と標識された2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)での回折パターンは全般に、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)での回折パターンと似ているが、但し、2つの低い角度での高い強度ピークが、それぞれ約4度および9度の2θ角度へと低い方へシフトしていることにおいて異なる。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)パターンはまた、高い角度範囲での高い強度ピークを欠いている。
【0218】
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)に関して、001および002と索引されている低い角度での高い強度ピークを見ることができる一部の測定可能な2θ値(度)が、対応する算出されたd値(オングストローム)と一緒に、下記の表4に示されている。
【0219】
【表4】
表4を参照すると、両方の結晶化合物は、002の高い強度ピークが、その001の高い強度ピークの2θ角度のほぼ2倍である2θ角度にあることを示している。対応するd空間は、逆相関、即ち、約1:2を示す。いずれの場合も、001および002の高い強度ピークは、同調相関を有すると理解される。KPr(2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素))でのd(001)は、KE(2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素))でのd(001)よりも約16%高い。この差は、2つの分子の長さの差により得る。
【0220】
上記で述べた通り、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶は、約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定すると、12度未満の低い2θ回折角で2つの高い強度ピークを含むX線回折パターンを示すことができ、このパターンは、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ未満の高い強度ピークを含み得る。
【0221】
本発明の一実施形態では、結晶のX線回折パターンは、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に高い強度ピークを欠いている。低い2θ回折角での2つの高い強度ピークの一方は、約4度から約6度の範囲の角度であり得、他方は、約8度から約12度の範囲の角度であり得る。
【0222】
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶は、約4度から約6度の範囲の角度での高い強度ピークに対応するd空間を示し得る。この空間は、約8度から約12度の範囲の角度での高い強度ピークに対応するd空間の値の半分であり得る。場合によっては、約12度未満の低い2θ回折角での2つの高い強度ピークは、調和関係(harmonic relationship)を有し得る。
【0223】
粉末X線結晶学から通常得られる情報よりも詳細な情報を得るために、研究中のジアセチレンモノマーの単一結晶を構造特性決定することが望ましい。例示的な手順および得られる結果を、下記の実施例8に記載する。
【0224】
(実施例8)
単一結晶(エチル尿素化合物)の構造分析
例として、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を使用して、ジアセチレンモノマー化合物の単一結晶を構造特性決定するために十分に大きな試料を、実施例3に記載されている再結晶化方法に従って重量で1:4のエタノール/水溶液から結晶化させることにより得る。結晶の一実施形態は、針状物の形態を有し、十分に規定される成長方向を示す。
【0225】
Leica MZ7偏光顕微鏡を使用して、例は下記の通りである任意の適切な手順を使用して代表的な物質のサンプリングから適切な試験体を特定することにより、構造特性決定を行うことができる。特定された試験体をナイロンループに結び付け、これを、銅取付ピンに合わせる。次いで、取り付けられた結晶を110°Kに維持された冷たい窒素流(Oxford)に入れる。
【0226】
Bruker D8 GADDS汎用三円X線回折計を試料のスクリーニングおよびデータ収集のために使用する。ゴニオメーターをGADDSソフトウェアスイート(Microsoft Win 2000オペレーティングシステム)を使用して制御する。試料を、ビデオカメラを用いて光学的に中心において、全ての位置で結晶を回転させて並進が観察されないようにする。検出器を結晶試料から50mmにセットする(MWPC Hi−Star Detector、512×512ピクセル)。使用されるX線放射線は、Cu封止されたX線管(Kα=1.54184Å、電圧40kVおよび電流40mA)から生じさせ、グラファイトモノクロメーターを用いて平行モードでフィルタリングする(0.5mmのピンホールを備えた175mmのコリメーター)。
【0227】
回転曝露を行って、結晶品質および検出器とのX線ビーム交差を決定する。ビーム交差座標を、設定された座標と比較して、それに応じて変化させる。回転曝露が許容可能な結晶品質を示したら、単位格子決定に取りかかることができる。60のデータフレームを、10秒の曝露時間で幅0.5°で取る。200を超える反射を中心に置き、その位置を決定する。これらの反射を、単位格子を決定するための自動索引作成手順で使用する。適切な格子を見つけ、非線形最小二乗およびブラヴェ格子手順により精密にし、結果を記録する。単位格子を、ゾーン写真を包含する複数のデータフレーム上でのhklオーバーレイの試験により検査する。スーパーセルまたは誤反射は観察すべきではない。
【0228】
単位格子を慎重に試験した後に、標準的なデータ収集手順を開始する。この手順は、オメガを変動させながら、φ、2θおよびχに関して固定された角度(2θ=−28°、χ=54.73°、2θ=−90°、χ=54.73°)で5000を超える0.5°フレームを収集することを包含するオメガスキャンを使用して、データの一方の半球を収集することを含む。追加のデータフレームを集めて、データセットを完了する。各フレームを10秒間曝露する。全データ収集を110°Kで約48時間行う。等価反射の著しい強度変動は観察されない。
【0229】
データ収集の後に、結晶をサイズ、形態および色に関して慎重に測定する。
【0230】
(実施例9)
単一結晶(プロピル尿素化合物)の構造分析
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の代わりに同量の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)を使用して、実施例3に記載されている再結晶化方法に従って重量で1:4のエタノール/水溶液から結晶化させることにより、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)(「KPr」)の単一結晶を構造特性決定するために十分に大きな試料を得る。
【0231】
針状物の形態を有し、十分に規定される成長方向を示す特性決定のために適した結晶が得られる。このような適切な結晶の1個を、実施例8に記載されている方法に従ってX線分析により特性決定する。
【0232】
結晶ジアセチレン化合物
本発明は、三斜晶系または他の結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物を包含する。
【0233】
1:4の水/エタノールから成長させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)で実施例8の方法により得られる例示的な単一結晶構造データを表5に示す。
【0234】
【表5】
単一結晶実験から決定される通りの16.6Åの単位格子パラメーターcは、約17.06Åである粉末回折から得られる値よりも小さいことを特記することができる。これは、異なる温度条件などにより得るか、または粉末回折パターンにおいて得られる幅広のピークが、d値の正確な決定を困難にするためか、または他の理由による。
【0235】
1:4の水/エタノールから成長させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)で実施例9の方法により得られる例示的な単一結晶構造データを表6に示す。
【0236】
【表6】
本明細書の終了部、請求項の直前に存在する表9〜12は、実施例9の方法により得られる追加のデータを示している。
【0237】
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)(「KE」)および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)(「KPr」)での特性データを表5および6から選択し、表7に示されている通りに比較すると、2種の化合物の全体構造は著しい差違を有する。
【0238】
【表7】
このように、いずれのジアセチレン化合物も、基本的な中心空間群名称「P」を示すが、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)は、
【0239】
【化1】
とも称される対称の単一の中心のみを伴う三斜晶系構造を有する。対照的に、KPrは、単斜晶系構造を有し、対称
【0240】
【化2】
の単一中心も有するが、21らせん軸およびa映進面を備えた空間群P21/aに属する。これらの形態は、a軸の長さおよび1格子当たりの分子の数を2倍にする。
【0241】
空間群は、分子が充填する方法を記載するために有用であり得る。単位格子パラメーターと原子座標との組合せは、ジアセチレンモノマーなどの複雑な化合物の結晶において分子が空間に配列する方法を示し得る。結晶における分子空間配置は、時間−温度インジケーターなどの環境条件インジケーターにおけるジアセチレン化合物の有望な反応性を記載または予測する際に有用であり得る。
【0242】
当分野で公知である通り、三斜晶系空間群は2つの構造P1および
【0243】
【化3】
からなる。単斜晶系空間群は、構造P21/aを包含する13の構造を含む。空間群についての情報源の1つは、www.nrl.navy.mil/lattice/spcgrp/index.htmlである。
【0244】
前記の差違にも関わらず、入手可能なデータのさらなる研究により、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の結晶構造は、例えば、下記の表8に示されている通り、重合性に関する特徴については類似性を有することが分かる。
【0245】
【表8】
表8に関して、長い単位格子軸は、c軸であり、C1−C4距離は、1分子中のジイン炭素原子と、隣接分子中の最も近いジイン炭素原子との距離である。ジイン基に沿って炭素原子に1から4の番号をふると、1分子のC1炭素に最も近く隣接するのは、その隣接分子のC4炭素である。d1は、C1−C4距離よりも広い隣接分子間の中心間分離である。「S」は、隣接するジアセチレンロッド間の垂直距離である。γ1(表8ではY1)は、短いb軸とジアセチレンロッド軸との角度であり、短いb軸は、反応方向と考えられる。
【0246】
全体的な構造の差違にも関わらず、表8のデータから、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の構造および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の構造は、本明細書中でさらに記載される通り、反応方向においては類似しているようである。
【0247】
本明細書中のデータから誘導可能な2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)での結晶構造の1つの可能なモデルを図18に示す。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)での結晶構造の比較モデルを図19に示す。これらの構造は、ジアセチレンファミリーの化合物に関して利用可能な構造情報と一致している。
【0248】
図19では、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の1分子のC(7)炭素原子が、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の隣接する分子のC(6)炭素原子と近接して並んでいることが分かる。図19では、炭素原子は、分子の各末端から分子の中心へとC(1)からC(7)と番号づけられている。水平の長方形の箱形は、格子の左奥下側の角の所に基点を有し、図19が描かれている紙または他の媒体の平面に対して「a」軸はこの基点から右へ延び、「b」軸は上へ延び、「c」軸は前方へ延びる単位格子を示している。
【0249】
上記の単一結晶構造データに基づく図18および19に示されているモデルでは、ジアセチレンモノマー分子は、結晶の隣接単位格子の幾何学的中心に対して、4.7Å未満の中心間分離を有する。また、中心間分離は、固相重合が生じ得る方向である。
【0250】
図20は、重合性ジアセチレン化合物の重合方向と針形結晶の針軸との関係を示している。図20に示されている単一結晶は、長方形断面図で図示されており、結晶軸(a)、(b)および(c)は、図に見られる通り、結晶の下方左側末端部に示されている。
【0251】
結晶軸に対して示されるジアセチレンモノマー分子の配向は、図19にマーキングされている矢印から明らかであり、これは、短い結晶軸bの方向を示している。
【0252】
図19および20から分かる通り、結晶の短い軸(b)は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)のための、また場合によっては2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための針軸である。
【0253】
図中に矢印でマーキングされている通り、図20は、二色性の軸は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)と2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の両方において針軸に平行していると考えられることを示している。したがって、両方の化合物の結晶において、重合方向は、針軸に沿っていると結論することができる。二色性の軸は、モノマーが重合すると着色が明らかになり得る方向である。
【0254】
本明細書に記載されているようなモデル構造にしたがって、本発明は、隣接する重合性ジアセチレン分子の間に水素結合を含む結晶ジアセチレン化合物を包含し、この水素結合は、2個の隣接する重合性ジアセチレン分子間の1,4−付加重合を可能にする方向に延び得る。望ましい場合には、水素結合は、1個の重合性ジアセチレン分子上の尿素基中の2個の−NH−基それぞれと、隣接する重合性ジアセチレン分子上の1個の=C=O基との間に延び得る。
【0255】
一般に、ジアセチレン化合物は、対称に置換されていてよく、結晶化されると、ジアセチレン化合物が対称中心を有し、対称軸も対称面も存在しない結晶構造を有することができ、この構造は、三斜晶系結晶構造に対応する。本発明の一部の態様は、a=約4.2Å、b=約4.6Å、c=約16.5Å、α=約89°、β=約85°およびγ=約81°の単位格子パラメーターを有し、場合によっては、三斜晶系構造を有する中心対称結晶相を有するジアセチレン化合物を含む。三斜晶系または単斜晶系結晶での結晶構造を表すための単位格子を特に選択することは、唯一の選択ではなく、望ましい場合には、格子軸または他の因子を選択することにより決定することができる通り、他の単位格子を使用することもできることを通常の当業者は理解するであろう。このような他の可能な単位格子は、公知である方法を使用して特に記載または選択される単位格子に数学的に由来してよく、特定の単位格子に関する情報を得ることにより固有に包含されると理解されたい。
【0256】
本発明は、構造式
CH3CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH3
または
CH3CH2CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH2CH3
を有し、上記の単位格子パラメーターを有し得る三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を包含する。
【0257】
三斜晶系構造を有する結晶ジアセチレン化合物を構成する結晶ジアセチレン化合物の割合は、少なくとも約50パーセント、少なくとも約80パーセントおよび少なくとも約90パーセントからなる群から選択することができ、ここで、前記割合は、ジアセチレン化合物の全重量に対する重量による。
【0258】
結晶ジアセチレン化合物は、任意の所望の純度、例えば、純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる範囲の群から選択される範囲の純度を有し得る。純粋な結晶化合物が、1種または複数の結晶化溶媒を場合によって包含してもよい。望ましい場合には、再結晶化プロセスを、同じまたは異なる溶媒系を使用して1回または複数回繰り返して、ジアセチレン化合物の純度を高めることができる。
【0259】
本発明はまた、構造
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
のジアセチレン化合物を含有する結晶相を含む時間−温度インジケーターを包含する[式中、「n」は、1から19の奇数(整数)であってよく、「m」は、1から7の奇数(整数)であってよい]。ジアセチレン化合物の第1のジアセチレン分子は、2個の隣接するジアセチレン分子中のジアセチレン基と反応することにより重合し得る。また、第1のジアセチレン分子上の2個の=C=O基はそれぞれ、隣接するジアセチレン分子中の2個の−NH−基に水素結合し得る。結晶相は、三斜晶系であってよく、場合によって、対称中心を有してよい。
【0260】
この時間−温度インジケーターの一部の実施形態では、三斜晶系結晶相は、上記の構造を有する2種以上の異なるジアセチレン化合物を含む。各ジアセチレン分子では、「m」は奇数である。一方のジアセチレン化合物では、「n」は、第1の値を有する奇数または偶数であり、他方のジアセチレン化合物では、「n」はまた、それぞれ奇数または偶数であり、第2の値を有し、ここで、第2の値は、第1の値とは異なる値である。本発明の一部の実施形態では、「n」は両方または全てのジアセチレン化合物で奇数である。他の実施形態では、「n」は、両方または全てのジアセチレン化合物で偶数である。本発明は、特定の理論に何ら制限されないが、アルキルおよびアルキレン基が往々にして採るジグザグ構造は、「m」および「n」の記載の数値選択に有利であると考えられる。これらの構造特性を有する化合物の適切な例は、本開示を考慮すれば、通常の当業者には明らかであるか、明らかになるであろう。
【0261】
本発明を、監視される1つまたは複数の環境条件下に自発的な重合の結果として環境モニターまたはインジケーターにおいて、外観変化をもたらすのに有用である可能性のあるジアセチレン化合物を参照しつつ幅広く記載した。このような有用な特性は、本発明の方法の生成物において望ましいが、出発物質が必ずしも有さなくてもよいことは理解されるであろう。したがって、場合によっては、原料の状態では、あったとしてもほんの僅かな有用なインジケーター活性を有するジアセチレン化合物を、本発明の方法またはプロセスにより、有用なインジケーター活性を有する生成物に変化させることができることが企図される。
【0262】
本発明はまた、本明細書に開示されている本発明の生成物および方法の様々な態様、実施形態または特徴の2種以上の相容性な組合せのうちの任意の有用な組合せを含む。通常の当業者であれば、本明細書に開示されている本発明の様々な実施形態および態様の多くの特徴または要素は、相互に組み合わせて使用することができることを理解するであろう。
【0263】
本明細書で特に参照された米国特許および特許出願のそれぞれおよび全て、諸外国および国際特許の各刊行物のそれぞれ、他の刊行物のそれぞれならびに刊行されていない特許出願のそれぞれの開示全体は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0264】
前記の詳細な説明は、当業者には明らかである通り、本発明を実施する際の最良の方式に関するか、または本発明の変更、代替もしくは有用な実施形態に関する部分的または完全な情報が記載または示唆されていることもある先行する背景および発明の概要の記載を考慮して、かつそれらと組み合わせて読まれるべきである。本明細書中で本発明の明細で使用される用語の意味と、他の文献から参照により引用される材料での使用法との間に衝突が生じているような場合には、本明細書で使用される意味を優先させることが意図されている。
【0265】
明細書を通して、組成物が具体的な成分を有するか、包含するか、もしくは含むと記載されているか、またはプロセスが具体的なプロセスステップを有するか、包含するか、もしくは含むと記載されている場合、本発明の組成物はまた、列挙されている成分から主になるか、それからなってよく、および本発明のプロセスはまた、列挙されているプロセスステップから主になるか、それからなってよいことが企図されている。ステップの順序または一定の動作を行うための順序は、本発明が実施可能なままである限り、重要ではないことを理解すべきである。さらに、2つ以上のステップまたは動作を、同時に行うことができる。加えて、本明細書に列挙されている割合は全て、文脈が別段に示していない限り、関連する組成物の重量に対する重量割合であると理解されたい。
【0266】
本発明の説明的な実施形態を上記したが、勿論、前記の記載を考慮すれば、多くの様々な変更が、関連分野の通常の当業者には明らかであるか、または技術が進歩するにつれて明らかになるであろうことは理解されるであろう。このような変更は、本明細書中に開示されている1つまたは複数の発明の意図および範囲内と企図される。
【0267】
【表9】
【0268】
【表10−1】
【0269】
【表10−2】
【0270】
【表11】
【0271】
【表12】
【0272】
(項目1)
重合して環境条件インジケーターの不可逆性の外観変化を提供し得る結晶ジアセチレン化合物であって、構造式
R1C≡C−C≡CR2
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、前記不可逆性の外観変化の提供に適合する有機置換基である]を有し、前記ジアセチレン化合物分子が、異なる分子中の隣接ジアセチレン単位の幾何学的中心に関して4.7Å未満の中心間分離を有する結晶構造を有し、ここで、前記中心間分離は、固相重合が生じる得る方向である、結晶ジアセチレン化合物。
(項目2)
前記中心間分離が、前記結晶ジアセチレン化合物の単位格子反復距離に対応している、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目3)
R1およびR2がそれぞれ独立に、−R4NHCONHR3であり、R3およびR4がそれぞれ、出現する毎に、1から20個の炭素原子を有するアルキル基である、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目4)
R1およびR2がそれぞれ独立に、−CH2NHCONHR3であり、R3が、出現する毎に独立に、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシルまたはオクタデシルである、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目5)
各尿素基に2個の水素結合を含み、前記2個の水素結合は1個ずつ、1個の重合性ジアセチレン分子上の尿素基中の2個のNH基の一方と、隣接する重合性ジアセチレン分子中のC=O基との間に延びている、項目3に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目6)
前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されている、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目7)
前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されていて、前記結晶ジアセチレン化合物が対称中心を有し、三斜晶系であり、対称軸も対称面も存在しない結晶構造を有する、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目8)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって、1種または複数の結晶化溶媒を包含する、項目1、2、3、4、5または6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目9)
三斜晶系結晶構造を含み、ここで、三斜晶系結晶構造を有する前記結晶ジアセチレン化合物の割合が、少なくとも約50パーセント、少なくとも約80パーセントおよび少なくとも約90パーセントからなる群から選択され、前記割合は、結晶ジアセチレン化合物の全重量に対する重量による、項目1、2、3、4、5または6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目10)
少なくとも1種の非アセチレン化合物を結晶相中に含み、前記少なくとも1種の非アセチレン化合物が場合によって、1種または複数の溶媒である、項目1、2、3、4、5または6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目11)
前記ジアセチレン化合物および前記ポリマーの重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物を含む、項目1、2、3、4、5または6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目12)
前記ジアセチレン化合物の重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物の前記重合ジアセチレン化合物を含み、ここで、前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されていて、前記結晶ジアセチレン化合物が、対称中心を含む三斜晶系結晶構造を有し、前記結晶ジアセチレン化合物が純度少なくとも約98重量パーセントである、項目5に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目13)
構造式
CH3CH2CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH2CH3
を有し、三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物。
(項目14)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる純度範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって、1種または複数の結晶化溶媒を包含する、項目13に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目15)
構造式
CH3CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH3
を有し、三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物。
(項目16)
中心対称結晶相を有し、ここで、前記中心対称結晶相は、a=約4.2Å、b=約4.6Å、c=約16.5Å、α=約89°、β=約85°およびγ=約81°の単位格子パラメーターを有する、項目15に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目17)
約100ミクロンを超える第1の方向での結晶サイズおよび約10ミクロン以下の前記第1の方向に対して垂直方向の第2の方向での最大寸法の結晶サイズを有する、項目15に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目18)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる純度範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって1種または複数の結晶化溶媒を含む、項目15、16または17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目19)
少なくとも1種の非アセチレン化合物を前記結晶相中に含み、前記少なくとも1種の非アセチレン化合物が場合によって1種または複数の溶媒である、項目15、16または17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目20)
前記ジアセチレン化合物および前記ポリマーの重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物を含む、項目15、16または17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目21)
約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定した場合に、12度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含み、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ未満の高い強度ピークを含むX線回折粉末パターンを示す、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶。
(項目22)
前記X線回折パターンが、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に高い強度ピークを欠いている、項目20に記載の結晶。
(項目23)
低い2θ回折角での前記2つの高い強度ピークのうちの一方が、約4度から約6度の範囲の角度にあり、他方が、約8度から約12度の範囲の角度にある、項目21に記載の結晶。
(項目24)
前記結晶が、約4度から約6度の範囲の角度での前記高い強度ピークに対応するd空間が約8度から約12度の範囲の角度での前記高い強度ピークに対応するd空間の値の半分であることを示し、12度未満の低い2θ回折角での前記2つの高い強度ピークは場合によって、一方のピークと他方のピークとの調和関係を有する、項目23に記載の結晶。
(項目25)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物が、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)である、項目21、22、23または24に記載の結晶。
(項目26)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)が、水性エチルアルコール中の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の溶液からの結晶化生成物である、項目25に記載の結晶。
(項目27)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物が、水性エチルアルコール、水性イソプロプルアルコールまたは水性ジメチルスルホキシド中の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶液からの結晶化生成物である、項目21、22、23または24に記載の結晶。
(項目28)
溶媒系から結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶であって、前記結晶は、約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定した場合に、約12度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含み、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ以下の高い強度ピークを含む回折パターンを示し、ここで、前記高い角度の回折パターンは、前記溶媒系または結晶化方法により決定される、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶。
(項目29)
項目1、2、3、4、5または6に記載の結晶ジアセチレン化合物を含む、場合によって時間−温度インジケーターまたは高エネルギー放射線モニターである周囲条件インジケーター。
(項目30)
時間−温度インジケーターであって、下記構造のジアセチレン化合物を含有する結晶相を含み
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
[式中、
「n」は、1から19の奇数であり、
「m」は、1から7の奇数である]、
前記ジアセチレン化合物の分子は、2個の隣接するジアセチレン分子中のジアセチレン基との反応により重合することができ、
前記第1のジアセチレン分子上の前記2個のC=O基はそれぞれ、前記2個の隣接するジアセチレン分子中の2個のNH基に水素結合することができ、
前記結晶相は、三斜晶系であり、
前記結晶相は、対称中心を有する時間−温度インジケーター。
(項目31)
時間−温度インジケーターであって、構造式
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
を有するジアセチレンを含む固相組成物を含み、
前記ジアセチレンは、前記ジアセチレンの分子間での反応により重合することができ、ここで、1個の分子上のC=O基は、隣接する分子上の2個のNH基に水素結合し、式中、
「m」は、1から7の奇数であり、
「n」は、1から19の奇数であり、
前記固相は、三斜晶系空間群P−1を含む、時間−温度インジケーター。
(項目32)
時間−温度インジケーターであって、構造式
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
を有するジアセチレンを含む固相組成物を含み、
前記ジアセチレンは、前記ジアセチレンの分子間での反応により重合することができ、ここで、1個の分子上のC=O基は、隣接する分子上の2個のNH基に水素結合し、式中、
「m」は、1から7の奇数であり、
「n」は、2から20の偶数であり、
前記固相は、単斜晶系空間群P21/aまたはP21/cを含み、ここで、b軸は、21軸である、時間−温度インジケーター。
(項目33)
前記ジアセチレン化合物を、前記ジアセチレン化合物の溶媒系中の溶液から結晶化させることを含む、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物の調製法。
(項目34)
前記ジアセチレン化合物を前記溶媒系に溶かすことにより、前記溶液を調製することを含み、ここで、前記ジアセチレン化合物が不純な結晶化生成物を含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記ジアセチレン化合物の結晶化が:
前記ジアセチレン化合物に対する溶媒系中の前記ジアセチレン化合物の混合物を約50℃から約100℃の範囲の温度で加熱して、前記溶媒系中に前記ジアセチレン化合物を溶解させるステップと;
熱を供給することなく、かつクエンチすることなく、前記溶液を冷却して、前記ジアセチレン化合物の結晶を沈殿させるステップとを含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記溶媒系が、約6MPa1/2から約17MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターを有し、約7.5MPa1/2から約26MPa1/2の範囲の水素結合溶解性パラメーターを有し、前記溶媒系が、前記溶媒系の単独の溶媒成分としての酢酸からもジメチルホルムアミドからもピリジンからもならない、項目33、34または35に記載の方法。
(項目37)
(a)前記ジアセチレン化合物のための数種の有望な溶媒の極性溶解性パラメーターが、前記有望な溶媒の水素結合溶解性パラメーターに対してプロットされていて、有望な溶媒それぞれでの溶解性パラメーターポイントを提供する溶媒マップを得るステップと;
(b)少なくとも3種の液体であって、前記ジアセチレン化合物がそれらの液体中のいずれにも不溶性ではない液体中への前記ジアセチレン化合物の溶解性に関する情報から、前記ジアセチレン化合物のための溶解性領域を特定し、ここで、前記溶解性領域は、所望の溶液特性に関連する極性および水素結合溶解性パラメーターの同一限界内のエリアであるステップと;
(c)前記溶媒系において、
(i)前記溶解性領域内にある溶解性パラメーターポイントを有し、前記ジアセチレン化合物の前記溶解性に関する情報を提供する前記液体のいずれかではない有望な個々の溶媒;または
(ii)前記溶解性領域内にある組合せ溶解性パラメーターポイントを有する有望な溶媒の組合せ
のいずれかを選択および使用するステップにより、
前記溶媒系を調製することを含む、項目35に記載の方法。
(項目38)
前記アセチレン化合物が、構造式
R3HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHR3
[式中、R3はそれぞれ独立に、エチル−、プロピル−、ブチル−、オクチル−、ドデシル−またはオクタデシル−である]を有する化合物を含み、前記溶媒系が、酢酸、ジメチルホルムアミド、ピリジン、メタノール、ギ酸、ジメチルスルホキシド、前記溶媒の2種以上の混合物、アセトンおよび水、エタノールおよび水、ギ酸および水、ジメチルホルムアミドおよび水またはジメチルスルホキシドおよび水を含む、項目33、34または35に記載の方法。
(項目39)
前記ジアセチレン化合物が、5,7−ドデカジイン−1,12−ビス−n−オクタデシルウレタンを含み、場合によって、前記溶媒系が水とエチルアルコールとの、またはアセトンとの混合物を含む、項目33、34または35に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の結晶ジアセチレン化合物および前記化合物を調製する方法に関する。本明細書に記載の方法および製品は一般に、環境条件、例えば、ホスト製品(host product)の貯蔵寿命、鮮度、熟成または他の特性に関連する温度などの条件への曝露の視覚的インジケーターにおいて活性薬剤として使用可能なジアセチレン化合物またはモノマーに関連して有用である。
【背景技術】
【0002】
固相重合反応して、発色または他の視覚的に明らかな変化を予測可能および不可逆的に生じる様々なジアセチレンモノマーが、時間−温度条件および他の周囲条件インジケーターにおいて活性薬剤として長らく使用されている。このようなインジケーターは、環境条件へのホスト製品の累積曝露の単純な視覚的表示をもたらし得る。これらは、不適切な周囲温度またはその周辺もしくは貯蔵環境の他の条件により不利な影響を受け得る食料、ワクチン、医薬品などの腐敗しやすいホスト製品の有効貯蔵寿命を監視するために使用することができる。インジケーター系は、活性薬剤としてジアセチレンモノマーが導入されているラベルを含み得る。このラベルを、ホスト製品に、またはホスト製品に付随している包装もしくは別のものに固定するか、または何か他の簡便な形態で組み入れることができる。
【0003】
重合反応で、多くのジアセチレン分子が相互に連鎖して、ポリジアセチレンを形成する。この反応は固相で生じ、不可逆性である。場合によっては、この状況ではモノマーであるジアセチレン化合物の無色またはほぼ無色の結晶は、熱または他の環境条件への十分な累積曝露に応答して、ポリマーの強く発色した結晶へと変化する。重合反応は、周囲条件により主に決定される速度で、自発的に進行する。
【0004】
重合反応から生じる色変化は、不可逆性である。この特性により、この化合物は、熱への過剰な累積曝露の後に鮮度を失い得る食品または医薬品などの腐敗しやすい製品を監視するために有用である。ジアセチレンモノマーはまた、熟成する製品、例えば、ワインまたはチーズの熟成を監視するために使用されるインジケーターにおいて活性薬剤として使用することもできる。これらの目的または他の目的のために、ジアセチレンモノマーを、監視されるホスト製品に随伴させるインジケーターラベルに活性薬剤として導入することができる。インジケーターラベルは、ジアセチレンモノマーの重合に由来する色変化を示し、これを、観察者が簡便な可視距離で、例えば、買い物客がスーパーマーケットにおいて冷蔵されている陳列品を調べて知ることができる。可逆性のインジケーターは、これらの目的には有用ではないであろう。
【0005】
ホスト製品において起こり得る変化を有効に追跡するために、使用されるジアセチレンモノマーが、意図されているホスト製品が同じ周囲または環境条件に対して有する応答パラメーターとほぼ相関し得る監視される熱または他の周囲条件に対する応答パラメーターを有することが望まれ得る。この目的のために、インジケーター配合物が、特定のホスト製品を監視するのに適したモノマーをそこから選択するための様々な応答パラメーターを示す幅広い市場で有用なジアセチレンモノマーを有することが有用であろう。
【0006】
多くの重合性ジアセチレン化合物が公知であるか、または提案されており、そのうちの一部は、重合すると有用な色変化を示す。例えば、Patelの特許文献1;特許文献2および特許文献3ならびにPreziosiらの特許文献4および特許文献5参照。しかしながら、これらの化合物のうちの限られた数しか、腐敗しやすいかまたは熟成する商品を監視するためにそれらを有用にする性能パラメーターを示さない。市販されている有用なジアセチレン化合物の数が限られていることにより、活性なインジケーター薬剤として使用するためにジアセチレンモノマーを探す場合に、インジケーター配合物が有する応答パラメーターの選択肢が制限されている。
【0007】
したがって、当技術は、既知の市場で有用なジアセチレンモノマーの反応性を所定の周囲条件に対して様々に応答するように変性して、配合物にさらなる選択肢を与える提案を包含している。
【0008】
例えば、Preziosiらへの特許文献5は、2種以上のジアセチレン化合物を加熱されている共通溶媒に溶かし、溶けた化合物を再結晶化させて、共結晶組成物を生じさせることを開示している。共結晶組成物は、個々の化合物の反応性とは異なる反応性を有する。
【0009】
JP Laboratoriesへの特許文献6は、ジアセチレンなどの放射線感受性物質を利用して高エネルギー放射線量を監視するためのフィルム、ステッカーまたはバッジなどの放射線検知デバイスを開示している。特許文献6に記載されている通り、ジアセチレンは、1種を超える結晶変種または相へと結晶化することが知られていて、適正な溶媒系を選択することにより、一部のジアセチレンを、非常に低い熱反応性および高い放射線反応性を有する相に結晶化させることができる。
【0010】
また、Prusikらの特許文献7は、アセチレン薬剤の溶液を還流させて、その反応性を変えることを開示している。この特許中の一部の例は、この目的のために、溶媒として氷酢酸およびジメチルホルムアミドを使用することを記載している。数種の他の溶媒もまた、前記発明の実施において使用可能であると開示されている。しかしながら、このような他の溶媒へのジアセチレン化合物の溶解性についての具体的な情報は示されていないようである。多少のX線回折データが1種のジアセチレンモノマー化合物について示されている。
【0011】
さらに、Prusikらへの特許文献8は、アセチレン薬剤結晶化プロセスにおいて粒径に有利な影響を及ぼす非粉砕プロセスを開示している。一部の記載されている例は、アセチレン薬剤の酢酸溶液を使用し、水性メタノールおよび3−エトキシプロピオン酸エチルなどの様々な溶媒が、沈殿またはクエンチ流体として有用であると記載されている。
【0012】
加えて、Prusikらへの特許文献9(出願第11/427,589号明細書)は、ジアセチレンインジケーター薬剤の反応性を合わせるための反応性増強補助剤(reactivity−enhancing adjuvant)の使用を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3,999,946号明細書
【特許文献2】米国特許第4,189,399号明細書
【特許文献3】米国特許第4,384,980号明細書
【特許文献4】米国特許第4,789,637号明細書
【特許文献5】米国特許第4,788,151号明細書
【特許文献6】国際公開第2004/077097号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6,924,148号明細書
【特許文献8】米国特許第7,019,171号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0004372号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
様々な公知であるジアセチレンモノマーおよび変更された反応性を有するジアセチレンモノマーを得る方法にも関わらず、利用可能なさらなるジアセチレンモノマー反応性オプションを有し、新規または変更された反応性をジアセチレンモノマーに与える新規の方法および生成物を有することが、望ましい。
【0015】
背景技術の前記の記載は、本発明以前には該当分野で知られていなかったが、本発明により示された開示の洞察、発見、理解もしくは開示または関連を一緒に包含することがある。一部の本発明のこのような寄与は、本明細書で特に記載されていることもあるが、他の本発明のこのような寄与は、その文脈から明白であろう。文献が本明細書で挙げられているからといって、本発明の分野とは全く異なり得る文献の分野が本発明の1つまたは複数の分野と類似していることを認めるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は特に、結晶ジアセチレン化合物を新規または変更された反応性状態で提供する。結晶ジアセチレン化合物は、環境条件インジケーター、例えば、累積時間−温度インジケーターにおいて不可逆性の外観変化を示す1種または複数の化合物であってよい。外観変化は例えば、1種または複数の化合物の外観の色、強度または濃さの変化であってよい。
【0017】
本発明はまた、結晶ジアセチレン化合物を調製する方法ならびにこれらの方法で有用な溶媒系およびジアセチレン溶液を提供する。
【0018】
一態様では、本発明は、環境条件インジケーターの不可逆性の外観変化を提供し得る結晶ジアセチレン化合物である、下式の構造の重合性ジアセチレンモノマーを含む結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物を提供する
R1C≡C−C≡CR2
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、上記不可逆性の外観変化の提供と適合する有機置換基である]。重合性ジアセチレンモノマー分子は、結晶の隣接単位格子の幾何学的中心に関して、4.7Å未満の中心間分離を有することができ、この際、中心間分離は、固相重合が生じる得る方向である。
【0019】
R1およびR2はそれぞれ独立に、−R4NHCONHR3であってよく、ここで、R3は、1から20個の炭素原子を有するアルキル、場合によって、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシルまたはオクタデシルであり、R4は、1から20個の炭素原子を有するアルキルである。別法では、R1およびR2はそれぞれ独立に、−CH2NHCONHR3であってよく、ここで、R3は、アルキル、場合によって、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシルまたはオクタデシルである。
【0020】
R1およびR2がそれぞれ、−NHCONH−基を含む場合、結晶ジアセチレン化合物は、各尿素基に2個の水素結合を含み得、ここで、2個の水素結合は1個ずつ、1個の重合性ジアセチレン分子上の2個のNH基の一方と、隣接する重合性ジアセチレン分子中のC=O基との間に延びる。
【0021】
望ましい場合には、重合性ジアセチレンモノマーは対称に置換されていてよく、場合によっては、ジアセチレン化合物が対称中心を有し、対称軸も対称面も存在しない結晶構造を有し得る。対称軸も対称面も有さない結晶構造は一般に、「三斜晶系」と記載される。
【0022】
結晶ジアセチレン化合物薬剤は場合によって、少なくとも1種の非アセチレン化合物を結晶相を含んでもよく、ここで、その少なくとも1種の非アセチレン化合物は場合によって、1種または複数の溶媒である。前述の通り、結晶ジアセチレン化合物またはモノマーは、周囲熱に応答して重合し、インジケーター応答、例えば色変化を示し得る。望ましくは、結晶ジアセチレン化合物は、ジアセチレン化合物およびポリマーの重量に対して重合ジアセチレン化合物約10重量パーセント以下を含む。ポリマーの割合は例えば、約3パーセント以下または約1パーセント以下もしくはそれ未満であってよい。
【0023】
本発明はまた、さらなる態様において、約100ミクロンを超える第1の方向での結晶サイズおよび約10ミクロン以下の第1の方向に対して垂直な第2の方向での最大寸法の結晶サイズを有する結晶ジアセチレン化合物を提供する。
【0024】
他の態様では、本発明は、構造式
CH3CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH3
を有し、三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物を提供する。化合物は、中心対称結晶相を有し得、ここで、中心対称結晶相は、a=約4.2Å、b=約4.6Å、c=約16.5Å、α=約89°、β=約85°およびγ=約81°の単位格子パラメーターを有する。
【0025】
本発明はまた、さらなる態様で、約15度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含むX線回折パターンを示す2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶を提供する。回折パターンはまた、約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定する場合、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ未満の高い強度ピークを含む。本発明のこの態様の一実施形態では、X線回折パターンは、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に高い強度ピークを含まない。
【0026】
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物は例えば、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)または2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)であってよく、それぞれ、水とエチルアルコールとの、イソプロピルアルコールとの、ジメチルスルホキシドとの、または他の適切な溶媒との混合物中の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)または2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶液から再結晶化させることができる。
【0027】
加えて、本発明は、まださらなる態様において、溶媒系から再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶を提供し、ここで、結晶は、約12度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含み、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ以下の高い強度ピークを含むX線回折パターンを示し、この際、高い角度の回折パターンは、再結晶化のために使用される溶媒系により決定される。
【0028】
本発明による結晶ジアセチレン化合物は、例えば、少なくとも純度約99.8重量パーセントである比較的高い純度を有することができるか、または例えば、少なくとも純度約90重量パーセントであるより低い純度であってよい。
【0029】
本発明による結晶ジアセチレン化合物は、任意の適切な方法により、例えば、ジアセチレン化合物を、ジアセチレン化合物の溶媒系中のジアセチレン溶液から結晶化させることにより調製することができる。
【0030】
望ましい場合には、ジアセチレン溶液を、ジアセチレン化合物を溶媒系に溶かすことにより調製することができ、ジアセチレン化合物は場合によって、不純な結晶化生成物を含むことができる。
【0031】
本発明はまた、本明細書に記載の結晶ジアセチレン化合物または結晶ジアセチレン薬剤を含む周囲条件インジケーター、場合によって、時間−温度インジケーターまたは高エネルギー放射線モニターを包含し、ここで、少なくとも1種の結晶ジアセチレン化合物または薬剤が、周囲条件への曝露に応答して視覚的な外観変化を示す。
【0032】
他の態様では、本発明は、構造式
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
を有するジアセチレンを包含する固相組成物を含む時間−温度インジケーターを提供し、ここで、ジアセチレンは、ジアセチレンの分子間での反応により重合することができ、その際、1個の分子上のC=O基は、隣接する分子上の2個のNH基に水素結合し、式中、「m」は、1から7の奇数であり;
「n」は、1から19の奇数であり、
固相は、三斜晶系空間群P−1を含む。
【0033】
本発明の別の態様では、「n」は、奇数ではなく2から20の偶数であり、固相は、三斜晶系空間群P−1ではなく、b軸が21軸である単斜晶系空間群P21/aまたはP21/cを含む。
【0034】
本発明の一部の実施形態では、溶媒系は、約6MPa1/2から約17MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターを有し、約7.5MPa1/2から約26MPa1/2の範囲の水素結合溶解性パラメーターを有するが、但し、溶媒系が、溶媒系の単独の成分としての酢酸からもジメチルホルムアミドからもピリジンからもならないことを条件とする。
【0035】
溶媒を規定の溶解性パラメーターで選択することにより、ジアセチレンモノマーのための新規かつ有用な溶媒系を特定することができ、所望のジアセチレン溶解性をもたらす溶媒系の利用可能な範囲を広げることができる。
【0036】
所定のジアセチレンモノマーのための新規の結晶相または形態を特定することにより、本発明は、ジアセチレンモノマーのための有望な市場での用途範囲を拡大することができる。場合によっては、新規の結晶相または形態は、反応に関して新規の一連の時間−温度パラメーターを提供して、腐敗しやすい製品の変質または熟成する製品の所望の熟成度に時間−温度特性を合わせる相応に高い能力を提供することができる。
【0037】
本発明はまた、追加の態様で、ジアセチレン化合物のために1種または複数の新規の溶媒系を特定するための有用な方法を提供し、この溶媒系は、1種または複数の有用なアセチレン化合物を溶解する能力、環境相容性特性またはこれらの特性もしくは他の特性の有用な組合せなどの新規の特性の組合せを有する。
【0038】
本発明はまた、ジアセチレン溶液を調製する様々な方法を提供する。1つの方法は、その溶解性パラメーターにより溶媒を示す溶解性マップを案出し、溶解されるジアセチレンモノマーのための有望な溶媒系の溶媒成分を特定および選択するためにその溶解性マップを使用することを含む。他の方法は、1種または複数のジアセチレン化合物を本明細書に開示されている新規の溶媒系の1種に溶かすことを含み、ここで、1種または複数の溶解されるジアセチレン化合物は、合成混合物または温酢酸溶液からのメタノール沈殿の生成物に由来する結晶化の原料製品を含む。
【0039】
重合性ジアセチレン化合物が個々の溶媒それぞれへの溶解性よりもかなり高い溶解性を有するいくつかの意外な溶媒混合物が、本発明により提供される。これらの、および他の新たに発見された溶解性オプションにより、ジアセチレン化合物を新たな方法で再結晶化させることができ、場合によっては、新たな反応性選択肢を提供することができる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目A1)
固体状態で重合して環境条件インジケーター中で用いられた場合に不可逆性の外観変化を提供し得る結晶ジアセチレン化合物であって、構造式
R1C≡C−C≡CR2
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、前記不可逆性の外観変化の提供に適合する有機置換基である]を有し、前記ジアセチレン化合物分子が、異なる分子中の隣接ジアセチレン単位の幾何学的中心に関して4.7Å未満の中心間分離を有する結晶構造を有し、ここで、前記中心間分離は、固相重合が生じる得る方向である、結晶ジアセチレン化合物。
(項目A2)
前記中心間分離が、前記結晶ジアセチレン化合物の単位格子反復距離に対応している、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A3)
R1およびR2がそれぞれ独立に、−R4NHCONHR3であり、R3およびR4がそれぞれ、出現する毎に、1から20個の炭素原子を有するアルキル基である、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A4)
R1およびR2がそれぞれ独立に、−CH2NHCONHR3であり、R3が、出現する毎に独立に、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシルまたはオクタデシルである、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A5)
各尿素基に2個の水素結合を含み、前記2個の水素結合は1個ずつ、1個の重合性ジアセチレン分子上の尿素基中の2個のNH基の一方と、隣接する重合性ジアセチレン分子中のC=O基との間に延びている、項目A3に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A6)
前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されており、前記固相重合が起こり得る方向は結晶単位格子のb軸の方向である、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A7)
前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されていて、前記結晶ジアセチレン化合物が対称中心を有し、三斜晶系であり、対称軸も対称面も存在しない結晶構造を有する、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A8)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって、1種または複数の結晶化溶媒を包含する、項目A1、A2、A3、A4、A5またはA6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A9)
三斜晶系結晶構造を含み、ここで、三斜晶系結晶構造を有する前記結晶ジアセチレン化合物の割合が、少なくとも約50パーセント、少なくとも約80パーセントおよび少なくとも約90パーセントからなる群から選択され、前記割合は、結晶ジアセチレン化合物の全重量に対する重量による、項目A1、A2、A3、A4、A5またはA6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A10)
少なくとも1種の非アセチレン化合物を結晶相中に含み、前記少なくとも1種の非アセチレン化合物が場合によって、1種または複数の溶媒である、項目A1、A2、A3、A4、A5またはA6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A11)
前記ジアセチレン化合物および前記ポリマーの重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物を含む、項目A1、A2、A3、A4、A5またはA6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A12)
前記ジアセチレン化合物の重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物の前記重合ジアセチレン化合物を含み、ここで、前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されていて、前記結晶ジアセチレン化合物が、対称中心を含む三斜晶系結晶構造を有し、前記結晶ジアセチレン化合物が純度少なくとも約98重量パーセントである、項目A5に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A13)
構造式
CH3CH2CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH2CH3
を有し、三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物。
(項目A14)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる純度範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって、1種または複数の結晶化溶媒を包含する、項目A13に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A15)
構造式
CH3CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH3
を有し、三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物。
(項目A16)
中心対称結晶相を有し、ここで、前記中心対称結晶相は、a=約4.2Å、b=約4.6Å、c=約16.5Å、α=約89°、β=約85°およびγ=約81°の単位格子パラメーターを有する、項目A15に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A17)
約100ミクロンを超える第1の方向での結晶サイズおよび約10ミクロン以下の前記第1の方向に対して垂直方向の第2の方向での最大寸法の結晶サイズを有する、項目A15に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A18)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる純度範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって1種または複数の結晶化溶媒を含む、項目A15、A16またはA17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A19)
少なくとも1種の非アセチレン化合物を前記結晶相中に含み、前記少なくとも1種の非アセチレン化合物が場合によって1種または複数の溶媒である、項目A15、A16またはA17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A20)
前記ジアセチレン化合物および前記ポリマーの重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物を含む、項目A15、A16またはA17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目A21)
約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定した場合に、12度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含み、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ未満の高い強度ピークを含むX線回折粉末パターンを示す、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶。
(項目A22)
前記X線回折パターンが、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に高い強度ピークを欠いている、項目A20に記載の結晶。
(項目A23)
低い2θ回折角での前記2つの高い強度ピークのうちの一方が、約4度から約6度の範囲の角度にあり、他方が、約8度から約12度の範囲の角度にある、項目A21に記載の結晶。
(項目A24)
前記結晶が、約4度から約6度の範囲の角度での前記高い強度ピークに対応するd空間が約8度から約12度の範囲の角度での前記高い強度ピークに対応するd空間の値の半分であることを示し、12度未満の低い2θ回折角での前記2つの高い強度ピークは場合によって、一方のピークと他方のピークとの調和関係を有する、項目A23に記載の結晶。
(項目A25)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物が、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)である、項目A21、A22、A23またはA24に記載の結晶。
(項目A26)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)が、水性エチルアルコール中の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の溶液からの結晶化生成物である、項目A25に記載の結晶。
(項目A27)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物が、水性エチルアルコール、水性イソプロプルアルコールまたは水性ジメチルスルホキシド中の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶液からの結晶化生成物である、項目A21、A22、A23またはA24に記載の結晶。
(項目A28)
溶媒系から結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶であって、前記結晶は、約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定した場合に、約12度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含み、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ以下の高い強度ピークを含む回折パターンを示し、ここで、前記高い角度の回折パターンは、前記溶媒系または結晶化方法により決定される、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶。
(項目A29)
項目A1、A2、A3、A4、A5またはA6に記載の結晶ジアセチレン化合物を含む、場合によって時間−温度インジケーターまたは高エネルギー放射線モニターである周囲条件インジケーター。
(項目A30)
時間−温度インジケーターであって、下記構造のジアセチレン化合物を含有する結晶相を含み
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
[式中、
「n」は、1から19の奇数であり、
「m」は、1から7の奇数である]、
前記ジアセチレン化合物の分子は、2個の隣接するジアセチレン分子中のジアセチレン基との反応により重合することができ、
前記第1のジアセチレン分子上の前記2個のC=O基はそれぞれ、前記2個の隣接するジアセチレン分子中の2個のNH基に水素結合することができ、
前記結晶相は、三斜晶系であり、
前記結晶相は、対称中心を有する時間−温度インジケーター。
(項目A31)
時間−温度インジケーターであって、構造式
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
を有するジアセチレンを含む固相組成物を含み、
前記ジアセチレンは、前記ジアセチレンの分子間での反応により重合することができ、ここで、1個の分子上のC=O基は、隣接する分子上の2個のNH基に水素結合し、式中、
「m」は、1から7の奇数であり、
「n」は、1から19の奇数であり、
前記固相は、三斜晶系空間群P−1(bar)を含む、時間−温度インジケーター。
(項目A32)
時間−温度インジケーターであって、構造式
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
を有するジアセチレンを含む固相組成物を含み、
前記ジアセチレンは、前記ジアセチレンの分子間での反応により重合することができ、ここで、1個の分子上のC=O基は、隣接する分子上の2個のNH基に水素結合し、式中、
「m」は、1から7の奇数であり、
「n」は、2から20の偶数であり、
前記固相は、単斜晶系空間群P21/aまたはP21/cを含み、ここで、b軸は、21軸である、時間−温度インジケーター。
(項目A33)
前記ジアセチレン化合物を、以下:
前記ジアセチレン化合物に対する溶媒系中の不純な結晶化生成物の形態の前記ジアセチレン化合物の混合物を約50℃から約100℃の範囲の温度で加熱して、前記溶媒系中に前記ジアセチレン化合物を溶解させるステップと;
熱を供給することなく、かつクエンチすることなく、前記溶液を冷却して、前記ジアセチレン化合物の結晶を沈殿させるステップ
により、溶媒系中の前記ジアセチレン化合物の溶液から結晶化させることを含む、項目A1に記載の結晶ジアセチレン化合物の調製法。
(項目A34)
前記溶媒系が、約6MPa1/2から約17MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターを有し、約7.5MPa1/2から約26MPa1/2の範囲の水素結合溶解性パラメーターを有し、前記溶媒系が、前記溶媒系の単独の溶媒成分としての酢酸からもジメチルホルムアミドからもピリジンからもならない、項目A33に記載の方法。
(項目A35)
(a)前記ジアセチレン化合物のための数種の有望な溶媒の極性溶解性パラメーターが、前記有望な溶媒の水素結合溶解性パラメーターに対してプロットされていて、有望な溶媒それぞれでの溶解性パラメーターポイントを提供する溶媒マップを得るステップと;
(b)少なくとも3種の液体であって、前記ジアセチレン化合物がそれらの液体中のいずれにも不溶性ではない液体中への前記ジアセチレン化合物の溶解性に関する情報から、前記ジアセチレン化合物のための溶解性領域を特定し、ここで、前記溶解性領域は、所望の溶液特性に関連する極性および水素結合溶解性パラメーターの同一限界内のエリアであるステップと;
(c)前記溶媒系において、
(i)前記溶解性領域内にある溶解性パラメーターポイントを有し、前記ジアセチレン化合物の前記溶解性に関する情報を提供する前記液体のいずれかではない有望な個々の溶媒;または
(ii)前記溶解性領域内にある組合せ溶解性パラメーターポイントを有する有望な溶媒の組合せ
のいずれかを選択および使用するステップにより、前記溶媒系を調製することを含む、項目A33またはA34に記載の方法。
(項目A36)
前記アセチレン化合物が、構造式
R3HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHR3
[式中、R3はそれぞれ独立に、エチル−、プロピル−、ブチル−、オクチル−、ドデシル−またはオクタデシル−である]を有する化合物を含み、前記溶媒系が、酢酸、ジメチルホルムアミド、ピリジン、メタノール、ギ酸、ジメチルスルホキシド、前記溶媒の2種以上の混合物、アセトンおよび水、エタノールおよび水、ギ酸および水、ジメチルホルムアミドおよび水またはジメチルスルホキシドおよび水を含む、項目A33、A34またはA35に記載の方法。
(項目A37)
前記ジアセチレン化合物が、5,7−ドデカジイン−1,12−ビス−n−オクタデシルウレタンを含み、場合によって、前記溶媒系が水とエチルアルコールとの、またはアセトンとの混合物を含む、項目A33に記載の方法。
【0040】
本発明の、ならびに本発明を製造および使用する一部の実施形態、さらに、本発明の実施で企図される最良の方式を、本明細書中では実施例により、添付の図面を参照しつつ詳述し、ここで、同じ参照記号は、複数の図を通して同じ要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ジアセチレン重合の1モデルの略図である。
【図2】ジアセチレンモノマー分子の骨格図である。
【図3】ジアセチレンモノマー分子の空間充填モデルである。
【図4】溶媒および溶媒混合物のいくつかの溶解性ポイントが示されている溶解性マップである。
【図5】いくつかの溶解性領域が本発明に従って規定されているさらなる溶解性マップである。
【図6】追加の溶解性領域が本発明に従って規定されている他の溶解性マップである。
【図7】なおさらなる溶解性領域が本発明に従って規定されている追加の溶解性マップである。
【図8】さらなる溶解性領域が本発明に従って規定されていて、ジアセチレンモノマーに関して算出された溶解性ポイントが示されている他の溶解性マップである。
【図9】この場合にはTeasグラフで本発明を実施する際に有用な三次元溶解性マップの実施形態である。
【図10】室温での様々な溶媒系へのジアセチレンモノマーの溶解性を示す棒グラフである。
【図11】左側は公知であるジアセチレンモノマーであり、右側は本発明によるジアセチレンモノマーである2種の結晶ジアセチレンモノマーの2枚の顕微鏡写真である。
【図12】1周囲温度に曝露されたいくつかのジアセチレンモノマーの累積色変化応答を示すグラフである。
【図13】他の周囲温度に曝露された図12で参照されたジアセチレンモノマーの累積色変化応答を示すグラフである。
【図14】第3の周囲温度に曝露された図12で参照されたジアセチレンモノマーの累積色変化応答を示すグラフである。
【図15】第1の結晶ジアセチレンモノマーの特性決定の結果を示すX線回折パターンである。
【図16】いくつかの追加の結晶ジアセチレンモノマーの特性決定の結果を示すX線回折パターンのセットである。
【図17】本発明によりジアセチレン溶液から沈殿させた2種の結晶ジアセチレンモノマーの特性決定の結果を示す2つのX線回折パターンである。
【図18】X線回折データから得られる第1のジアセチレンモノマーでの結晶構造のモデルの透視図である。
【図19】X線回折データから得られる第2のジアセチレンモノマーでの結晶構造のモデルの透視図である。
【図20】ジアセチレンモノマーの結晶に関する結晶軸の図式的な配向である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を実施する他の例は、本開示を考慮すれば、通常の当業者には明らかであるか、明らかになるであろう。
【0043】
本発明は特に、結晶ジアセチレン化合物(本明細書中では「モノマー」と称されることもある)、ジアセチレン化合物(本明細書中では「ジアセチレン」と称されることもある)を含むか、またはそれからなる結晶および新規の反応性を有するか、またはさらなる反応性の選択肢をもたらすジアセチレン組成物を提供する。一般に、本発明により提供されるジアセチレン物質は、公知であるジアセチレン化合物の物理的処理または物理的変更により、出発物質の化学的変化もしくは変更または出発物質の化学的構造の変化を伴うことなく調製することができる。
【0044】
物理的処理および反応性の変更を容易にするために、本発明はまた、1種または複数のジアセチレンモノマーが良好な室温溶解性を有する溶媒を包含するジアセチレンモノマーのための新規の溶媒および溶媒系を提供する。本発明は、新規の溶媒に溶解されたジアセチレンモノマーの溶液を包含する。
【0045】
また、本発明は、このような新規の溶媒へのジアセチレンモノマー溶解性に関する定量的情報を提供する。本発明の他の態様は、新規のジアセチレンモノマー溶液からの再結晶化に由来し得る新規のジアセチレンモノマー結晶および結晶構造情報を提供する。
【0046】
本発明は、溶媒系の調製方法、再結晶化方法、有用な結晶構造情報の決定方法、さらに、ジアセチレンインジケーター溶液および分子モデリング方法を包含する。
【0047】
本発明は、本明細書に記載されているジアセチレン溶液から結晶化させたか、または本明細書に記載の方法により調製されたジアセチレン化合物を包含する。本発明はさらに、ジアセチレン溶液を基材に塗布することを含む環境条件インジケーターを製造する方法を包含する。
【0048】
多くの溶媒が一般に、ジアセチレンを溶解するために有用であると示唆されている。しかしながら、具体的な溶媒への既知のジアセチレン化合物の特定の溶解性について、溶解性データはほとんど存在しない。一部のジアセチレン化合物が示唆されている溶媒に多少の溶解性を示すことはあるが、その溶解性はかなり低く、さらなる処理のために有用であるには足りないことがある。多くのジアセチレン化合物は、室温での溶解性がほとんど知られてなく、高温で処理されることがある。例えば、一部のジアセチレンモノマーは、温氷酢酸から、90〜100℃程度の温度で再結晶化される。
【0049】
熱不安定な腐敗しやすいものを監視するためのジアセチレン化合物は一般に、製造および貯蔵に費用がかかる。鮮度インジケーターを包含するいくつかの目的のために有用である室温反応性のジアセチレン化合物は、貯蔵に費用がかかり、場合によっては、低温での冷蔵を必要とする。これらの検討事項および他の検討事項が、ジアセチレン化合物の有用である可能性のある新規の溶解性特性を特定する大規模スクリーニング検査を行うことを困難にしている。
【0050】
したがって、本発明は、溶媒の大規模なスクリーニングの必要性を低減または回避し得る有用なジアセチレン溶解性を有する有望な溶媒を特定する方法を提供する。一部の実施形態では、この方法により、特定の溶解性、例えば、少なくとも1重量パーセントまたは少なくとも4重量パーセント溶液を提供することができる。
【0051】
本発明は、特定のジアセチレン化合物またはモノマーに関する新規の理解および洞察を使用し、そのインジケーター関連反応性および他の特性を、化合物を化学的には変化させないままの物理的処理での変化を介して操作する手段を提供する。本発明は、化学的反応を介してジアセチレンモノマーを変更することなく、新規の反応性特性を提供し得る実施形態を包含する。これは、確立されている市販品とは化学的に区別される新規の分子が一部の用途のために安全性および他の目的に関して費用のかかる研究を必要とし得るためである。したがって、本発明は、一部の態様では、化学的に同一の構造の化合物と比較して、新規か、または変更された反応性を有する新規か、または変更された物理的状態で結晶化されたジアセチレン化合物を提供する。例えば、ジアセチレン化合物は、特殊な結晶構造を有することがある。
【0052】
新規の反応性または他の特性を生じさせるために、ジアセチレンモノマーの構造およびその反応の機構を分子レベルでより十分に理解することが望ましいであろう。本発明はまた、これらの目的の助けとなる新規の方法および生成物を提供する。
【0053】
本発明は特定の理論に何ら制限されないが、ジアセチレン化合物、「モノマー」または「ジアセチレンモノマー」の固相重合では、重合の状況において、これは、自発的に重合し得るように並列されている個々のジアセチレンモノマー分子を持つモノマーの結晶構造であると考えられる。この概念が図1に図示されているが、ここでは、3つのジアセチレンモノマー分子が、ジアセチレンモノマーの固晶で配列されている通りに、並列配列で、縦方向に、かつ角度的に規則的に配列されて示されている。隣接分子のアセチレン基は、隣接分子間で二重結合を自発的に形成して、モノマー分子同士が1−4付加ポリマー生成物へと結合し得るのに十分に近接している。
【0054】
2個のジアセチレン化合物のより詳細なモデルが図2および3に図示されている。図2は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)モノマー分子の骨格構造を図示しており、図3は、上側のモデルは2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)および下側のモデルは2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の空間充填モデルを図示している。
【0055】
ジアセチレンモノマー重合の作用機構のこれらのモデルは、正確と考えられるが、おそらく包括的ではない。即ち、他の機構も作用することがある。さらに、これらは、新規のインジケーター関連反応性または反応性プロファイルを伴う新規のジアセチレンモノマーを提供し得るであろう化合物、処理条件、添加剤または他の変更の特定に役立ち得る予測モデリングに関して、不十分にしか説明されていない。
【0056】
例えば、ジアセチレンモノマーおよび対応ポリマーの両方における単位格子寸法および角度、原子間隔ならびに立体配座に関するさらなる結晶情報および他の情報を有することが望ましいであろう。有用なこのような情報は、X線結晶データにより得られるであろう。しかしながら、包括的なX線結晶研究のために十分なサイズの反応性ジアセチレンモノマーの結晶を得ることが困難なために、X線結晶データはほとんど得られないと考えられる。したがって、これらの目的および他の目的のために、ジアセチレンモノマーの比較的大きな結晶、例えば、少なくとも約0.2mmの寸法を有する結晶を得ることが望ましいであろう。
【0057】
本発明は特定の理論に何ら制限されないが、ジアセチレン分子が結晶中に一緒に収まる方法は、時間−温度インジケーターで使用される結晶子の重合性に関連していると理解される。これらの比較的複雑な分子では、モノマー構造単独の知識から、結晶構造を確実に予測することは現在のところ不可能であると考えられる。したがって前述の通り、所定のジアセチレンモノマーに関しての新規の結晶相の発見は、反応に関する時間−温度パラメーターの新規のセットおよび対応して、腐敗しやすい製品の変質または熟成する製品での望ましい熟成度に関して時間−温度特性を緊密に適合させる高い能力を提供することにより、既知のジアセチレンモノマーに関しての市場適用機会を著しく広げる可能性をもたらす。
【0058】
本発明の一部の実施形態は、公知であるか、または新規に特定されたか、または新たに合成されたジアセチレンモノマーの反応性を変化または変更する方法を含む。反応性変更方法は、ジアセチレンモノマーを溶液から結晶化または再結晶化させる方法であってよく、この方法は、色応答のチューニングされた時間−温度依存性を有するジアセチレンモノマーを得るために、粒径、粒子形態、結晶構造、結晶欠陥、結晶中に包含される溶媒分子および熱履歴などの少なくとも1つの結晶パラメーターを制御することを含む。
【0059】
本発明は特定の理論に何ら制限されないが、ジアセチレンモノマーを周囲条件インジケーターにおいて有用なものとする色変化をもたらす重合反応は、ジアセチレンモノマーの結晶構造により支配または影響されることが公知である。重合性ジアセチレンモノマーの結晶においては、結晶を含む積み重ねられたジアセチレンモノマー分子は、ポリマー分子を合成する際に隣接して配列されたモノマー分子間で生じる小さな寸法変化のみでモノマーからポリマーへの遷移に対応し得る格子中に主に配置されていると考えられる。また、必要な小さな寸法変化が、結晶表面では、かつ格子中のジアセチレンモノマー分子がより自由に動くことができる結晶構造欠陥ではより容易に生じ得ると考えられる。これらの考察は、本明細書に記載されている結晶パラメーターのうちの1種などの結晶パラメーターを制御することにより、ジアセチレンモノマーの反応性を変化または変更することに関する本明細書に記載されている発明のある種の態様を理解するために役立つと考えられる。
【0060】
溶液からジアセチレンモノマーを結晶化または再結晶化させるために、ジアセチレンモノマーのための適切な溶媒系を得ることが必要である。「溶媒系」は、この用語が本明細書中で使用される場合、1種または複数の溶媒を含み得る。望ましくは、溶媒系は、有用な負荷で、許容可能な温度でジアセチレンモノマーを溶かし、再結晶化条件下にジアセチレンモノマーと反応しないものである。ジアセチレンモノマーの加熱された過飽和溶液から溶解したジアセチレンモノマー粉末を再結晶化させる場合、温度および時間により駆動される望ましくない重合を回避する処置が望ましい。この理由で、場合によっては、純粋なジアセチレンモノマーの大きな結晶、例えば、2mmを超える寸法を有する結晶をジアセチレンモノマーの過飽和溶液から成長させる試みにおいて、これが、長期間にわたる加熱を必要とする場合には、困難が生じ得る。また、場合によっては、過飽和の室温か、またはより冷たい溶液から大きな結晶を成長させる試みにおいては、これらの温度でのジアセチレンモノマーの限られた溶解性によって、困難が生じ得る。
【0061】
したがって、印刷インジケーターデバイスへとジアセチレンモノマーを処理する費用を、十分な濃度のジアセチレンモノマーを溶解し得る溶媒を発見することにより低減することができる。さらに、ジアセチレンモノマーは場合によって、印刷することができるインクとして配合する前に、簡便に予備結晶化され、この目的のために、良好な溶解性をもたらす溶媒の選択肢の利用可能性が望まれ得る。
【0062】
したがって、1つまたは複数のこれらの問題を改善し得る1種または複数の溶媒系を特定することは有用であるだろう。
【0063】
溶媒マッピング
一般的に述べると、本発明は、一態様では、ジアセチレン化合物を溶解するための溶媒系を調製するための方法を含み、これは、ジアセチレン化合物のための数種の有望な溶媒の極性溶解性パラメーターが、有望な溶媒の水素結合溶解性パラメーターに対してプロットされていて、それぞれの有望な溶媒での溶解性パラメーターポイントを示している溶媒マップを得ることを含む。加えて、方法は、少なくとも3種の液体中へのジアセチレン化合物の溶解性に関する情報から(ここで、ジアセチレン化合物は、どの液体にも不溶性ではない)、ジアセチレン化合物のための溶解性領域を特定することを包含する。望ましくは、溶解性領域は、所望の溶解特性に関連する極性および水素結合溶解性パラメーターの同一限界内のエリア(contiguous area)である。方法はさらに、溶媒系において、溶解性領域内にある溶解性パラメーターポイントを有し、ジアセチレン化合物の溶解性に関する情報をもたらす液体のいずれかではない有望な個別の溶媒か、または溶解性領域内にある組合せ溶解性パラメーターポイントを有する有望な溶媒の組合せを選択および使用することを包含する。溶媒系を調製する方法は、望ましい場合には、1種または複数の有望な溶媒を混合することを包含してよい。
【0064】
本発明により、ジアセチレンモノマーの溶解性を、熱力学特性によって、例えば、Charles Hansenにより記載され、Hansen溶解性パラメーターとして公知であるものなどの溶解性パラメーターによって記載することができることが決定された。Hansenは、3種の異なるタイプの溶媒分子間の相互作用、即ち、分散性パラメーターδd、極性パラメーターδpおよび水素結合パラメーターδhに関する3種の異なる溶解性パラメーターを記載した。溶解性パラメーターは、メガパスカルMPa1/2の平方根の単位で測定される。
【0065】
3種の溶解性パラメーターは、それぞれ各パラメーター毎に三次元でプロットされるチャート上の溶解性ポイントのための座標として示され得る。Hansen理論によると、2個の分子がこの三次元空間において相互に近いほど、これらは相互によく溶解する。多くの溶媒での溶解性パラメーターを、例えば、「Hansen Solubility Parameters:A user’s handbook」、C.M.Hansen、2000年、CRC Press ISBN 0−8493−1525−5で見ることができる。また、作表されていない溶解性パラメーターを概算するための方法が、この参照文献中に示されている。
【0066】
場合によっては、これらが有用であることがある一方で、いくつかの限界が通常は当てはまる。例えば、パラメーターは近似であり、分子間の結合は、3種のパラメーターが示唆し得るよりも緻密である。誘起双極子、ファンデルワールスおよび静電的相互作用などの他のタイプの結合であり得る通り、分子形状およびサイズが関連し得る。したがって、Hansen溶解性パラメーターの使用に由来する溶解性予測を実験的に確認することが望まれ得る。
【0067】
また、Hansen溶解性パラメーターは一般に、ジアセチレンモノマーについては知られていない。Hansen溶解性パラメーターは場合によっては、比較的単純な化合物については算出することができるが、ジアセチレン化合物中に存在する2個の三重結合および他の因子が、算出に不確実性をもたらし、信頼可能な図表を一部のジアセチレンモノマーについては算出できないようにしている。
【0068】
本発明の一実施形態は、Hansen溶解性パラメーターを利用するが、意図されている溶質、ジアセチレンモノマーの溶解性パラメーターについての知識を必要としない、特定のジアセチレンモノマーのための新規の溶媒系を特定する方法を含む。本発明は、新たに特定された1種または複数の溶媒中のジアセチレンモノマーの溶液を包含する。
【0069】
例えば、溶解性実験を行って、いくつかの公知である溶媒中での該当するジアセチレンモノマーの溶解性を決定または検査することができる。これらの溶解性実験の結果を、溶媒群のためのHansen溶解性パラメーターの一部または全てのチャートまたはマップ上にグラフで示すか、もしくはマッピングするか、またはその他の方法で論理的に同定することができる。次いで、この溶媒マップデータを使用して、高いジアセチレンモノマー溶解性に対応すると期待し得る溶解性パラメーター座標のマップ上の領域を規定することにより、ジアセチレンモノマーのための他の溶媒を特定することができる。
【0070】
Hansen溶解性パラメーターを、ジアセチレンモノマーが公知である溶解性を有する該当するジアセチレンモノマーのための公知である溶媒;ジアセチレンモノマーが溶解性をほとんど有さないか、または有さないことが公知である非溶媒;およびジアセチレンモノマーの溶解性が知られていない有望な溶媒を含む一群の溶媒のために得ることができる。
【0071】
任意の適切な数の公知である溶媒を使用して、ジアセチレンモノマーの溶解性に関するデータを得て、ジアセチレンモノマーのための溶解性領域の規定に役立てることができる。本発明の一部の実施形態は、2種または3種の公知である溶媒からのデータを使用する。他の実施形態は、4種または5種以上の公知である溶媒からのデータを使用する。例えば、溶解性領域を特定するために使用される情報は、アルコール、酸、水、芳香族化合物、窒素含有化合物、エステル、グリコール、ハロゲン化有機化合物、アルカンおよび前記液体の混合物からなる群から選択される少なくとも5種の液体へのジアセチレン化合物の溶解性についての情報を含み得る。
【0072】
その溶解性データが使用される公知である溶媒の数は、2から約20以上であってよい。比較的少ない数の溶媒、例えば、約3種から約10種での溶解性データを、本発明の一部の実施形態では使用する。
【0073】
望ましい場合には、より多数の溶媒からの溶解性データを使用することができる。必須ではないが、望ましくは、チャートの様々な部分にパラメーターを有する溶媒を使用することができる。推定ピーク溶解性の領域を特定したら、望ましい場合には、特定された領域の反対側にある溶媒からの追加のデータを使用することができる。例えば、その溶媒の溶解性ポイントから他の溶媒の溶解性ポイントへの直線が推定ピーク溶解性領域を通過するような溶解性パラメーターを有する追加の溶媒を選択することができる。
【0074】
溶媒マップは、溶解性パラメーターに対してプロットされた公知である各溶媒についての複数の溶解性ポイントを含み得る。三次元空間における個々の溶解性パラメーターの座標により、各溶解性ポイントを規定する。簡易さのために、本発明の一部の実施形態は、溶解性ポイントを二次元空間でマッピングすることができるように、3種のパラメーターのうちの2種、例えば、極性パラメーターおよび水素結合パラメーターのデータを利用することができる。溶媒マップは、2種または3種全てのHansenパラメーターを使用するかどうかに応じて、溶解性ポイントがプロットされる空間を規定する2軸または3軸を有し得る。
【0075】
本発明の一実施形態では、公知である溶解性ポイントを、水素結合パラメーターおよび極性パラメーターに対してプロットし、ここで、水素結合パラメーターは任意にy軸上にあり、極性パラメーターはx軸上にあってよい。本発明のこの実施形態では、簡易さのために、分散性パラメーターは無視されるか、または経験的に考慮される。望ましい場合には、本明細書で説明されている通りに、分散性パラメーターを、全てではないが一部の溶媒に関連して考慮することができる。
【0076】
本発明の他の実施形態では、分散性パラメーターを第3の次元にz軸上に、または他の適切な方法でプロットし、本開示を考慮すれば通常の当業者には明らかな通り、方法を三次元へと広げる。本発明の他の実施形態は、極性パラメーターデータまたは水素パラメーターデータを分散性パラメーターデータと一緒に二次元溶媒マップで使用する。
【0077】
溶媒マップでは、ジアセチレンモノマーが所望の溶解性を有することが公知である溶媒を溶媒マップにマーキングするか、着色するか、標識するか、もしくは他の方法で図により、または論理的に特定して、溶媒マップ中の公知である溶媒を公知である非溶媒から区別することができる。溶媒マップは、特定のジアセチレンモノマーに対して特異的であってよい。所望の溶解性は、任意の所望の値、例えば、約0.1パーセントから約20パーセントの範囲の溶解性を有してよい。本発明の一部の実施形態は、それぞれ約0.5、1、4、7、10および13パーセントの所望の溶解性を使用する。少なくとも所望の溶解性を示す溶媒をマーキングすることができる一方で、より低い溶媒性を示すことが公知であるか、特定のモノマーが不溶性である溶媒をマーキングしないか、別にマーキングする。
【0078】
本明細書中でパーセンテージで示されている溶解性は、溶液の重量に対する溶質の重量によると理解されたい。本明細書に述べられている場合、または文脈から明らかである場合、溶解性は、加熱溶解性または室温溶解性であってよい。
【0079】
特定のジアセチレンモノマーに関して所望の溶解性またはその欠如を示す公知である溶媒および公知である非溶媒を特定することができる。この情報から、ジアセチレンモノマーに関して高い溶解性を示す溶解性パラメーターの組合せを包含する溶解性領域を、溶解性マップ上で規定または表示することができる。規定の溶解性領域はまた、包含されている公知である溶媒ポイントの間の溶媒マップエリアを包含することもできる。場合によっては、規定の溶解性領域はまた、公知である溶媒ポイントに隣接するか、またはそれと同一限界内の1つまたは複数のエリアを包含することもできる。
【0080】
ジアセチレンモノマーのための溶解性領域は、ジアセチレンモノマーが不溶性ではない少なくとも3種の液体へのジアセチレンモノマーの溶解性に関する情報から特定することができる。利用することができる溶解性情報に従って、任意の適切な数の液体を、例えば、5種、10種または20種以上の液体を使用することができる。
【0081】
有効には、溶解性領域は、所望の溶液特性に関連する極性および水素結合溶解性パラメーターの同一限界内のエリアであってよい。また、規定の溶解性領域は、所望の溶解性に関連するHansenパラメーター値の組合せを包含し得る。望ましくは、規定の溶解性領域は、特定のジアセチレンモノマーに関して所望の溶解性を示す公知である溶媒の全てまたはほとんどを包含する。望ましくはまた、規定の溶解性領域は、その所望の溶解性を示さない溶媒である非溶媒の全てまたはほとんどを除外している。
【0082】
望ましい場合には、規定の溶解性領域を、周囲線により囲むことができる。周囲線は、開いた形態、例えば「V」または「C」型であってもよいが、望ましくは、閉じたループ型である。溶媒マップに示されている溶解性データに応じて、閉鎖ループ型周囲線は、不規則的または規則的または幾何学的形態、例えば、楕円、卵形、円形、三角形、長方形、多角形、四角形の形態または他の適切な形態を有することができる。
【0083】
また、望ましい場合には、周囲線を、解析学を援用して確率論的に位置づけ、形づけて、溶媒が所望の溶解特性を有するか有さないかにより、規定の溶解性領域内に包含されるHansenパラメーターの組合せが得られる可能性に従って線を規定することができる。別法では周囲線を、例えば目により、経験的に決定することができる。
【0084】
望ましい場合には、溶解性領域を、ジアセチレンモノマーの一定の最小溶解性、例えば、溶液の重量に対して約1重量パーセント、約4重量パーセント、約7重量パーセントまたは約10重量パーセントの溶解性を示すことが期待される溶解性パラメーターの組合せを包含するように規定することができる。
【0085】
このような溶解性領域は、ジアセチレン溶液の重量に対してジアセチレン化合物少なくとも約1、少なくとも約7および少なくとも10重量パーセントからなる群から選択される最小割合のジアセチレン化合物を含むジアセチレン溶液を得る際に役立ち得る。望ましい場合には、ジアセチレン溶液は、まだより高い濃度の1種または複数の溶解ジアセチレン化合物を有することができる。
【0086】
本発明の一部の実施形態では、溶解性領域は、溶解性パラメーターに加えて、他の因子によっても規定または変更される。例えば、溶解性領域を、所望の溶解性を得るには沸点が低すぎる溶媒または溶媒組合せを回避するように位置づけるか、または形づけることができる。また、Hansen溶解性パラメーターに反映され得ない、特定の溶質に関する溶媒和力に影響を及ぼす特定の構造形態を有する溶媒または溶媒系を包含または除外するように、溶解性領域を位置づけるか、または形づけることができる。例えば、1個または複数の電子供与基を伴う塩基性を有する溶媒は、その負末端は有望な溶媒へは接近しにくい双極子の正末端などの1個または複数の利用可能な電子受容基を有する溶質に関して意外な溶媒和力を有する。しかしながら、本発明は、このような理論には何ら制限されない。
【0087】
アセチレンモノマーに関して所望の溶解性を示すか、示しそうな有望な溶媒および溶媒系を、規定の溶解性領域に溶解性ポイントを有する他の溶媒系を探すことにより特定することができる。
【0088】
意外にも、水素結合および極性パラメーターの溶解性マップを使用し、分散性パラメーターを使用することなく、ジアセチレンモノマーのためのいくつかの有用な溶媒系を特定することができることが判明した。本発明は、分散性パラメーターを無視する実施形態を包含する。
【0089】
本発明の一部の実施形態は、規定の溶解性領域内にある溶解性パラメーターポイントを有する溶媒中のジアセチレンモノマーの溶液を含む。本発明のさらなる実施形態は、規定の溶解性領域内に溶解性パラメーターポイントを有する溶媒系中のジアセチレンモノマーの溶液を含む。
【0090】
混和性溶媒を組み合わせる場合、混合物中の各液体の体積分率である荷重係数を使用して、混合物中の液体でのHansenパラメーターを平均することにより、そのHansenパラメーターを組み合わせることができる。したがって、溶媒マップでは、2種の溶媒からなる混合物での溶解性ポイントは通常、個々の溶解性ポイントの間の直線上に、混合物中のその個々の体積分率に反比例する線に沿った距離にある。別法では、望ましい場合には、これらを、混合物中の各溶媒の個々の質量分率での比により組み合わせることができる。
【0091】
望ましくは、二成分溶媒系の2種の成分溶媒は、それらの個々の溶解性ポイントの間の直線が規定の溶解性領域を通るように溶媒マップ上に位置している個々の溶解性ポイントを有し得る。混合物の溶解性ポイントが規定の溶解性領域にあるように、混合物中の溶媒の割合を選択または調節することができる。
【0092】
本発明の一部のさらなる実施形態は、相互に混和性であり、相互に、または溶質と反応しない3種または4種以上の成分を有する溶媒系を含む。望ましい場合には、各成分溶媒の体積分率を荷重された平均Hansenパラメーターに等しくなるように溶解性ポイントのパラメーターを算出することにより、溶媒系が所望の溶解性領域に溶解性ポイントを有するように、溶媒を選択することができる。
【0093】
一部の例示的溶媒系には、個々の溶媒、さらには2種以上の溶媒の混合物が包含される。有用な溶媒系の一部の実施形態は、溶解される1種または複数のジアセチレン化合物のための貧溶媒または非溶媒である少なくとも1種の成分溶媒を含む。本発明を実施する際に使用される混合物中の溶媒は望ましくは、互いに完全に混和性であってよい。
【0094】
本発明を実施する際に有用な1種の溶媒系は、1種または複数のジアセチレン化合物のために2種の貧溶媒ではあるが混和性の溶媒または非溶媒、例えば、エチルアルコールおよび水を含む。他の有用な溶媒系は、1種または複数のジアセチレンモノマーのための1種または複数の比較的良好な溶媒、例えば、ジアセチレンモノマーを少なくとも1重量パーセント溶解し得る1種または複数の溶媒を、1種または複数のジアセチレン化合物のための1種または複数の貧溶媒または非溶媒と混合された形で含む。
【0095】
ジアセチレンモノマーのための有望な新規の溶媒を特定するための溶媒マップを調製するために、本明細書に記載されている通り、いくつかの溶媒中でのジアセチレンモノマーの溶解性についての多少の情報が必要である。十分な溶解性情報が当分野で得られない場合には、溶解性試験を行うことができる。
【0096】
該当するジアセチレンモノマーについて入手可能な溶解性情報に従って、有望な溶媒および溶媒系を試験のために選択することができる。選択された溶媒および溶媒系それぞれでの溶解性ポイントを、Y軸上の水素結合(δH)対X軸上の極性パラメーター(δP)のプロットで、または別段に本明細書に記載または提案されている通りにマッピングすることができる。
【0097】
ジアセチレンモノマーの極性および水素結合溶解性パラメーターが公知であるか、または信頼して算出することができる場合には、ジアセチレンモノマーのための溶解性ポイントもまた、マッピングすることができる。次いで、試験溶解性領域を、ジアセチレンモノマー溶解性ポイントに関してマッピングし、経験的に試験することができる。
【0098】
ジアセチレンモノマーの極性および水素結合溶解性パラメーターが知られていなく、信頼して算出することができない場合には、溶解性領域を実験結果から、例えば、下記の実施例1に例として記載されている通りに決定することができる。室温では限られた溶解性特性を示すジアセチレンモノマーでは、高温を使用することができる。例えば、約90から約95℃の範囲のプロセス温度が、酢酸溶液からジアセチレンモノマーを再結晶化させるために使用されている。一般に、約50から100℃の範囲か、または他の適切な限度内の温度を、使用される溶媒の沸点、溶解されるジアセチレンモノマーの安定性、望ましくない重合の可能性および他の因子に従って使用することができる。
【0099】
本明細書では、溶解性が、温度に言及することなく述べられている場合、その温度は、標準的な大気圧で、該当する溶媒で合理的に達成可能な任意の温度、即ち、溶媒の沸点を超えて数セルシウス度まで、例えば、5℃以下高い温度であると理解されたい。
【実施例】
【0100】
本発明を実施するいくつかの非限定的な実施例を記載する。
【0101】
(実施例1)
溶解性試験および溶解性領域の規定
この実施例は、新規の溶媒および溶解性情報がそのために望ましく、信頼できる溶解性パラメーター情報をそのために入手することができないジアセチレンモノマー、即ち、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための溶媒マッピング、試験および溶解性領域の規定を説明している。この実施例では、異なる化学種および物理化学的特性からなる幅広い溶媒のいくつかの代表的な試料のそれぞれについて、その溶解性パラメーターに従って、溶解性ポイントをマッピングする。代表的な溶媒の溶解性ポイント(中黒の四角)をY軸上の水素結合(δH)対X軸上の極性パラメーター(δP)のプロットでマッピングして、図4に示されているマップのようなマップを生じさせる。また、図4には、25重量パーセントの水/溶媒混合物(中抜きの四角)を含む溶媒系での溶解性ポイントも示されている。個々の溶媒での溶解性試験結果(下記に記載)をその溶解性パラメーターの図4のマップに適用することにより、これらの混合物は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解するための有用である可能性のある溶媒系として提案される。
【0102】
各溶媒を、溶媒の沸点上5℃以下の温度で少なくとも1重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解するその能力について試験する。試験される溶媒の沸点は56℃から189℃の範囲で広く変動するので、溶媒をそれぞれ、60、75、82および90℃の温度でバッチで処理する。プロセス温度は望ましくは、所定の溶媒沸点上4から5℃以下である。
【0103】
考察中のジアセチレンモノマーに関する溶解性情報またはその溶解性パラメーターの知識がない場合、図4において、ジアセチレンモノマーの可能な高い溶解性の領域の特定を実行することはできない。
【0104】
示されている溶媒での前記溶解性試験から2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)に関して得られたいくつかの例示的溶解性データを下記の表1に、溶媒についての溶解性パラメーター情報と共に示す。また、表1には、25重量パーセントの水/溶媒混合物に関するデータも包含されている。
【0105】
【表1】
表1および本明細書中の他の箇所で使用される場合、「DMF」はジメチルホルムアミドを示し、「DMSO」はジメチルスルホキシドを示し、「E3EP」は3−エトキシプロピオン酸エチルを示し、「THF」はテトラヒドロフランを示す。
【0106】
表1中の個々の溶媒での結果は、少なくとも1重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶かし、したがってさらなる研究を保証し得る5種を示している。これらの溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール(EtOH)およびエチレングリコールである。溶解性マップの使用に従って予測された通り、水/溶媒混合物は全て少なくとも1重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解する。
【0107】
1重量パーセント溶解性試験からの表1の結果をHansen溶解性パラメーターのマップに当てはめると、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)が合理的な処理温度で可溶性である明瞭な領域をマップ上に、極性および水素結合パラメーターに関して規定することができる。これは、溶質である2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の可溶性パラメーターでの溶解性ポイントおよび値に関する情報を有さなくても、行うことができる。
【0108】
(実施例2)
さらなる溶解性試験
次いで、実施例1溶解性試験を、異なる溶質濃度で、この場合には、先行する試験で少なくとも1パーセントの溶解性を証明している各溶媒および水/溶媒混合物中4重量パーセント、7重量パーセントおよび10重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)で繰り返す。90℃水浴を使用して、溶媒または溶液温度を維持し、得られた結果を下記の表2で作表したが、この場合にも、溶解性パラメーター情報が、アセトンおよび水でのデータの理解を容易にするために参照のために包含されている。
【0109】
【表2】
これらの結果は、本発明の様々な態様の実施を証明している。例えば、10パーセントを超える溶解性を示す2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための2種の新規の溶媒、即ち、ギ酸およびジメチルスルホキシドが特定されている。ギ酸は、室温でほぼ13重量%の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解し得る。
【0110】
また、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための2種の非溶媒、即ち、水およびアセトンは、その溶解性パラメーターを組み合わせて一緒に組み合わせると、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)が少なくとも4重量パーセントの予期せぬ良好な溶解性を有する溶媒系をもたらし得ることを特記することができる。
【0111】
さらに、意外にも、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)は水に不溶性であるという事実にも関わらず、25%水/エタノール混合物(水1重量部とエタノール3重量部との組合せ)は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性が4重量パーセント未満である純粋なエタノールよりも、少なくとも4重量パーセントで良好な2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性をもたらす。
【0112】
このような所見を慎重に考察すると、高いか、または最適な2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性の1つまたは複数の領域は、溶解性パラメーターの狭い範囲内にあることが示唆される。本発明のジアセチレンモノマー溶解実施形態および他の実施形態は、完全に混和性で、特定のジアセチレンモノマーについてそのような高いか、または最適な溶解性領域にあるように組み合わせることができる溶解性パラメーターを有する1種または複数の溶媒の組合せを使用することができる。
【0113】
表2に示されている2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性の結果の一部を、図4に示されているような溶解性マップに応用するいくつかの方法が、図5に図示されている。
【0114】
図5を参照すると、溶媒の双極子強度を定量化するパラメーターである「δP」とも称される極性パラメーターが、X軸にプロットされていて、溶媒の水素結合強度を定量化するパラメーターである「δH」とも称される水素結合パラメーターが、Y軸に沿ってプロットされている。単位はそれぞれ、メガパスカル1/2、MPa1/2である。本発明のこの実施形態では、「δP」とも称される分散性パラメーターは使用されていない。
【0115】
図5では、中黒の四角は、少なくとも10パーセントの溶解性をもたらす溶媒を示し、灰色の四角は、少なくとも4パーセントの溶解性をもたらす溶媒を示し、中抜きの四角は、少なくとも1パーセントの溶解性をもたらす溶媒を示している。「×」は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)が不溶性であるか、1パーセント未満の溶解性を有する溶媒を示している。明瞭さのために、水、アセトンおよび10重量%の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解し得る溶媒を除き、多くの溶媒の名称を省いている。
【0116】
それぞれ1パーセント、4パーセントおよび10パーセントの閾値溶解性に明らかに必要とされる近似溶解性パラメーターを有する3つの溶解性領域が図5には示されている。溶解性領域は、少なくとも1パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性を示す溶媒系を包含する最も広い溶媒領域に順次重ねられる。この広い領域内のより小さな領域は、少なくとも4パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性を示し、このより小さい領域内に全部収まっている最も小さい領域は、少なくとも4パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性を示す。図5に規定されている通り、各溶解性領域は台形形態を有する。しかしながら、溶解性領域は、他の形態を有することもできる。
【0117】
本発明は何ら特定の理論に制限されないが、アセトンの低い沸点では、全て100℃を超える沸点を有する最も小さい溶解性領域内の他の4種の溶媒により示される2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)での溶解性を達成するのに十分に溶液を熱くすることができないと考えられる。
【0118】
図5に示されているマップなどの溶解性マップを援用すると、有用な溶媒を特定するための様々な実際的な指針を、溶解性の必要に応じて決定することができる。例えば、少なくとも約1重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶かすためには、約7.5から約16.6MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターおよび約8.5から約26.0MPa1/2の範囲の水素結合パラメーターを有する溶媒系を使用することができる。少なくとも約4重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶かすためには、約7.7から約16.5MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターおよび約9.0から約22.5MPa1/2の範囲の水素結合パラメーターを有する溶媒系を使用することができる。少なくとも約10重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶かすためには、約8.0から約16.4MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターおよび約10.0から約17.0MPa1/2の範囲の水素結合パラメーターを有する溶媒系を使用することができる。
【0119】
したがって、表2に示されているようなデータを使用して、溶媒溶解性パラメーターの溶解性マップ上で所望の溶解性の領域を特定することができる。次には、その溶解性マップを使用して、該当するジアセチレンモノマーのための1種または複数の新規の溶媒系を特定することができる。
【0120】
図6に図示されている二次元溶媒マップの例は、いくつかの溶媒の溶解性ポイントと、選択された溶媒系への2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)などのジアセチレンモノマーの溶解性についての溶解性試験から経験的に決定することができる領域の例示となるいくつかの規定の溶解性領域とを示している。
【0121】
図6は一般的には、図5に似ているが、図6では、図5で規定された台形溶解性領域の代わりに、異なるサイズの2個の楕円形溶解性領域が規定されていることにおいて異なり、ここで、より小さい方は、より大きい方に完全に収まっていて、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のためにより高い溶解性を示すと期待される溶解性ポイントを包含している。大きい方の楕円形は、最小限望ましい2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性を示す溶媒および溶媒系に適していると期待される溶解性パラメーターの範囲を包含すると規定される。小さい方の楕円形は、より高いか、最適な望ましい2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)溶解性を示す溶媒および溶媒系に適していると期待される溶解性パラメーターの範囲を包含すると規定される。また、様々な溶解性ポイントが溶媒の名称で標識されている。
【0122】
図5〜7の溶解性領域周囲線は、公知である溶解性から、および実施例1および2に記載されているような溶解性試験で特定された新規の溶解性からの補完により、または他の適切な方法で決定することができる。
【0123】
図7は一般的には、図6に似ているが、表2に示されている水/溶媒混合物での溶解性ポイントが包含および特定されている一方で、水以外の個々の溶媒溶解性ポイントは特定されていない点において異なる。
【0124】
図7を参照すると、水は、前述の通り、試験された特定のジアセチレンモノマー、即ち2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための非溶媒であることと一致して、示されている高い溶解性領域のかなり外側に位置することが分かる。意外にも、水を、水が混和性である他の溶媒と混合すると、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のために良好な溶解性を有する新規の溶媒系を得ることができる。これらの混合物のうちの数種が、図7に三角形でマーキングされている。例えば、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)は、アセトン単独には限られた溶解性しか有さないが、アセトン−水混合物には有用な溶解性を有する。アセトンと水との溶解性ポイントの間の直線は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のためのピーク溶解性の領域を通過する。少ない割合、本明細書中の試験実施例では25%の水を有する混合物の混合物溶解性ポイントは、ピーク溶解性領域内に位置する。
【0125】
図8に示されている溶解性マップは、官能基により列挙されている数種の溶媒および個々の溶媒である水およびテトラヒドロフランについての溶解性ポイントを含む。溶解性を、実施例1に記載されている通り、90℃までの温度または所定の溶媒の沸点付近の温度での試験で決定した。
【0126】
得られたデータを使用して、少なくとも約1重量%、少なくとも約4重量%および少なくとも約10重量%の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶解性に対応する溶解性座標について、楕円形溶解性領域を規定する。
【0127】
また、図8には、この場合には、図8および添付の図面の一部の他の図中で「KE」と称されている2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)であるジアセチレンモノマーのための算出された溶解性ポイントの例が示されている。図8中に中実の三角形で示されている算出された溶解性ポイントは、van Krevelynの方法に従ってHansen溶解性パラメーターを算出することにより、基増分の一覧と共に決定されている。算出された値はMPa1/2で、δD=20.8、δP=7.3およびδH=10.1である。これらの算出された値は、合理的であるようであるが、実験とは十分には一致しない。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)(「KE」)は、それ自体の溶解性領域の外側に該当する。van Krevelynの方法に従ってHansen溶解性パラメーターを算出する一方法は、Brandrup,J;Immergut,E.H.;Grul E.A.編により、Polymer Handbook、4版;John Wiley&Sons,Inc.:Hoboken,NJ;1999年;2巻に記載されている。
【0128】
図9に示されている溶解性マップは、Teasグラフとして公知であるもの実施形態であり、これは、第3の溶解性パラメーターである分散性パラメーターを、図5〜8にプロットされている極性および水素結合パラメーターに加えてプロットしている。
【0129】
単一の平面グラフに3種全ての溶解性パラメーターをプロットするために、全ての物質が同じヒルデブランド溶解性パラメーターを有すると仮定する。これは、簡便さのための近似である。ヒルデブランド値は、ヒルデブランド値の追加成分と往々にして考えられる3種のHansenパラメーターの二乗平均平均値である。Teasグラフは、3種の成分のHansen溶解性パラメーター(即ち、分散性パラメーター、極性パラメーターおよび水素結合パラメーター)のそれぞれの全ヒルデブランド値に対する相対的寄与をプロットしている。次いで、溶解性パラメーターを、非相関ではなく全体パラメーターの割合で表すことができる。Teasグラフは、John Burkeにより「Solubility Parameters:Theory and Application」、The Book and Paper Group Annual、3巻、1984年、The American Institute for Conservation of Historic and Artistic Works(AIC)にさらに記載されている。
【0130】
様々な溶媒群、即ち、カルボン酸、極性非プロトン性溶媒、グリコール、アルコール、アルカン、芳香族物質、エステル、ハロゲン化溶媒、ケトン、ニトリル、さらに、水、ピリジンおよびテトラヒドロフランでの近似溶解性ポイントが図9に示されている。
【0131】
群での溶解性ポイントは、その群での近似平均値であり、示されている他の溶解性マップでの場合の通り、温度に伴って起こり得る溶解性パラメーターの変動は無視する。
【0132】
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための高い溶解性の帯域を示す2つの溶解性領域、即ち、少なくとも約1重量%の溶解性と近似的に関連していることが意図されている破線の三角形およびその内部の、少なくとも約10重量%の溶解性と近似的に関連していることが意図されている実線の三角形が示されている。これらの領域は、実験結果と十分に合理的に適合し得る。異常値の1つは、ピリジンであり、これは、約1重量%の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を溶解するが、プロットされている三角形の外側に位置している。
【0133】
同様の結果が、図9に示されているものなどの三次元溶解性マップで、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)(本明細書では「KPr」とも称される)に関して得られると考えられる。溶解性パラメーターの3次元以上をプロットする他の方法は、当業者には明らかであるか、明らかになるであろう。
【0134】
いくつかの目的のために、ジアセチレンモノマーを室温で有効に溶媒和する溶媒を有することが有用であろう。より低温においては、重合がより高い温度におけるほど要因とはならない可能性が高く、結晶成長を促進することができる。また、良好な室温溶解性は、ジアセチレンモノマーの下流の処理および製造用途において有望な価値を有する。したがって、本発明の一部の実施形態は、ジアセチレンモノマーに関して重要な室温可溶性をもたらし得る溶媒系中のジアセチレンモノマーの溶液を包含する。
【0135】
この目的または他の目的のために、酢酸から再結晶化させたジアセチレンモノマー、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の様々な溶媒系への室温溶解性を、例えば、下記の表3に示されている通りに決定することができる。表3は、20℃の室温での溶解性を、溶液の重量に対する重量パーセントで示している。
【0136】
【表3】
「テトラメチル尿素」とも呼ばれ、「TMU」と称されることもある1,1,3,3テトラメチル尿素は、7重量%までの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を90℃の温度で密閉バイアル中で溶かすことができる。
【0137】
下記の表3に示されている通り、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶解性に関する情報を使用して、室温溶液を再結晶化のために、環境条件インジケーターを調製するためのインクとして使用するために、または他の目的のために製造することができる。他のジアセチレンモノマー溶液も同様に調製することができる。
【0138】
図10に示されている棒グラフは、表3に挙げられている室温溶解性をグラフで示している。
【0139】
本明細書の他の部分の場合と同様に、アセトン/水およびエタノール/水溶媒混合物は、表3および図10において重量対重量比で示されている。表3および図10から、高い溶解性を高温で示す溶媒系、例えば、酢酸および複数の水性混合物の一部は、室温では限られた溶解性しか有さないことが分かる。
【0140】
対照的に、ハロゲン化溶媒およびギ酸は、優れた室温溶解性を示す。しかしながら、これらの溶媒は、これらを一部の目的には適さなくする周知の取り扱い特性を有する。本発明の有用な態様は、環境に優しいか、または相容性である1種または複数のジアセチレン化合物のための新規の溶媒系を提供することである。環境に相容性な溶媒系の例は、高い割合の水、例えば、50重量パーセントを超える水を含む水性溶媒系である。
【0141】
本発明により提供されるか、または本発明の実施で使用される溶媒系への他のジアセチレンモノマーの溶解性は、外挿または日常的な実験により決定することができる。例えば、5,7−ドデカジイン−1,12−ビス−n−オクタデシルウレタン(本明細書では「4DOD」とも)の様々な溶媒系への溶解性を、下記の実施例2Aに記載されている通りに決定することができる。
【0142】
5,7−ドデカジイン−1,12−ビス−n−オクタデシルウレタン(「4DOD」)は、下記の化学構造
C18H37NHCOO(CH2)4CCCC(CH2)4COONHC18H37
を有し、放射線感受性で色変化を示すが、通常の周囲熱条件には比較的不感受性である。5,7−ドデカジイン−1,12ジオールビス(n−ブトキシカルボニルウレタンは、放射線感受性であるが、通常の周囲熱条件には比較的不感受性である別の化合物である。本発明は、1種または複数のこのような化合物を使用して、高エネルギー周囲放射線、例えば、紫外線、α線、β線または他の素粒子線、X線、γ線などへの累積曝露の視覚的な表示をもたらす放射線監視デバイスを包含する。
【0143】
(実施例2A)
5,7−ドデカジイン−1,12−ビス−n−オクタデシルウレタン(「4DOD」)の溶解性
インジケーター薬剤として役立てるために、熱不感受性の重合性ジアセチレンモノマー、即ち、5,7−ドデカジイン−1,12ジオールビス(n−オクタデシルウレタン)(後記では「4DOD」)を、インクのマスターバッチを調製するのに十分な量で、Yeeの米国特許第4,215,208号明細書、17欄、47〜65行に記載されている方法により合成し、フリーザー中に貯蔵する。少量の4DODを凍結貯蔵から取り出し、室温で様々な溶媒系への溶解性について次の手順を使用して試験する。
【0144】
脱イオン水100gを200mLガラスビーカーへ秤量する。溶液が飽和して過剰の4DODが溶解していない固体として存在したままになるまで、4DOD粉末をこのガラスビーカーに加える。脱イオン水75gを別の200mLガラスビーカーに秤量し、アセトン25gを加える。次いで、溶液が飽和し、過剰の4DODが溶解していない固体として残るまで、4DODをガラスビーカー内の水−アセトン溶媒系に加える。脱イオン水75gを第3の200mLガラスビーカーに秤量する。エタノール25gを水に加え、次いで、溶液が飽和し、過剰の4DODが溶解していない固体として残るまで、4DODを水−エタノール混合物に加える。各溶液を磁気プレート上で、約25℃の制御室温で16時間撹拌する。
【0145】
16時間撹拌した後に、各溶液7g(溶解部分のみで、溶解していない固体物質は避ける)を別のアルミニウムホイル皿に移す。アルミニウムホイル皿を換気フード下に2時間放置して、揮発性溶媒を全て蒸発させ、次いで、真空炉中で1時間乾燥させる。次いで、各アルミニウムホイル皿を秤量し、各溶媒系への4DODの溶解性を、溶媒系の重量に対する溶質のパーセントで算出する。得られた一部の結果を下記の表2Aに示す。
【0146】
【表2A】
表2Aの結果から分かる通り、試験条件下では、4DODは、水中には最小の溶解性を有する。しかしながら、エタノールまたはアセトンと混合されている高い割合の水を含む環境に許容され得る溶媒系は、溶媒系に対して約9または10重量パーセントの劇的に高い水中の4DODの溶解性を示している。また、結果は、単独の個々の有機溶媒、エタノールまたはアセトンへの4DODの顕著に高い溶解性も示している。
【0147】
本発明の方法は、ジアセチレンモノマー、例えば2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のために溶媒系を設計する際に柔軟性を提供する。例えば、図5〜7に示されている溶媒マップは、ジアセチレンモノマーのための新規の溶媒を特定するか、もしくはジアセチレンモノマーのための新規の溶媒系を作るか、またはその両方のために使用することができる溶媒マップの例示である。新規の溶媒および溶媒系は、ジアセチレンモノマーの後続の処理または利用において有用なジアセチレンモノマーに関する新規の溶解性情報をもたらし得る。新規の溶解性情報は、ジアセチレンモノマーが有用な溶解性を有する溶媒系に関する新規の知識または溶媒系へのその溶解性に関する新規の定量的情報を含み得る。
【0148】
下記は、本発明を実行する際に有用な個々の溶媒のいくつかの例である:メタノール、ギ酸、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、アリルアルコール、2−アミノエタノール、1,1,3,3−テトラメチル尿素、ジクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸。
【0149】
一部の有用な溶媒系は、水と、適切に相補的な溶解性パラメーターを有する他の溶媒との混合物を含む。水との混合物は、溶媒系の重量に対して約1から約40重量パーセントの水、約4から25重量パーセントの水または他の適切な割合を含むことができる。望ましい場合には、他の1種または複数の溶媒は、約15MPa1/2以下の水素結合パラメーターを有してよく、約18MPa1/2以下の極性結合パラメーターを有してよい。一部の他の有用な溶媒系は、上記で述べた個々の溶媒のうちの非アルコール溶媒と適切な1種または複数のアルコール溶媒との混合物を包含する非水性溶媒混合物を含む。
【0150】
下記は、本発明の溶媒系混合物の実施形態のいくつかの例であり、ここで、いずれの場合も、水の割合は、溶媒系の重量に対する:
約5パーセントから約25パーセントの水と残りは酢酸の割合の酢酸および水の混合物;
約5パーセントから約25パーセントの水と残りはアセトンの割合のアセトンおよび水の混合物;
約5パーセントから約25パーセントの水と残りはジメチルホルムアミドの割合のジメチルホルムアミド(本明細書中では「DMF」)および水の混合物;
約0パーセントから約25パーセントの水、場合によっては、少なくとも約5パーセントの水と残りはジメチルスルホキシドの割合のジメチルスルホキシドおよび水の混合物;
約0パーセントから約25パーセントの水、場合によっては、少なくとも約4パーセントの水と残りはエタノールの割合のエタノールおよび水の混合物;
約1パーセントから約25パーセントの水、場合によっては少なくとも約5パーセントの水と残りはピリジンの割合のピリジンおよび水の混合物;
約1パーセントから約25パーセントの水、場合によっては少なくとも約5パーセントの水と残りは酢酸の割合の1,1,3,3−テトラメチル尿素および水の混合物;および
約10パーセントから約90パーセントの水、場合によっては少なくとも約30パーセントの水と残りはジメチルスルホキシドの割合のジメチルスルホキシドおよびエタノールの混合物、例えば、約50:50混合物。
【0151】
したがって、本発明のジアセチレン溶液の実施形態で使用するための溶媒系は、メタノール、ギ酸、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、アミノエタノール、1,1,3,3−テトラメチル尿素、アリルアルコール、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸および水と1種または複数の前記溶媒との混合物(ここで、溶媒系の重量に対する水の割合は、約1から約50パーセントの範囲である)からなる群から選択することができる。アセトンおよび水ならびにエタノールおよび水は、同様の割合の水を伴って使用することができる水性混合物のさらなる例である。また、非水性溶媒混合物を、本発明を実施する際に溶媒系として使用することができる。
【0152】
本発明を実施する際に有用な溶媒系の一実施形態は、約95〜96重量パーセントのエタノールおよび約4〜5重量パーセントの水を含む共沸エタノール−水混合物を含む。本発明は、この共沸混合物中のジアセチレンモノマーの飽和溶液を包含する。
【0153】
望ましい場合には、本開示から明らかであるか、本開示により提案されている通り、他の混和性溶媒を前記混合物に加えて、三成分、四成分以上の複雑な溶媒系を形成することができる。例えば、水と2種の他の溶媒、例えば、イソプロピルアルコールおよびジメチルスルホキシドとの三成分混合物を使用することができる。このような三成分系溶媒系に適した割合には、約25重量パーセントまでが水で、残りは相対重量比約1:2から2:1の2種の他の溶媒である割合が包含される。一部の他の有用な溶媒系は、混和性溶媒の混合物を含み、ここで、溶媒系の極性溶解性パラメーターおよび水素結合溶解性パラメーターはそれぞれ、荷重係数として溶媒系中の各溶媒の体積分率を使用する個々の混和性溶媒での各パラメーターの平均を含む。
【0154】
なおさらに適切な溶媒系が、本開示を考慮すれば当業者には明らかであるか、明らかになるであろう。例えば、第1の有望な溶媒の極性および水素結合溶解性パラメーターを、図5〜9のいずれか1つに示されているものなどの溶解性マップにプロットすることができる。溶媒が、特定のジアセチレンモノマーに関する所望の溶解性領域内に位置しているか、または包含されている場合には、その有望な溶媒を単独で使用できると期待し得る。第1の有望な溶媒での溶解性ポイントがジアセチレンモノマーに関する所望の溶解性領域外に位置している場合、溶解性マップを本発明に従って利用して、第1の有望な溶媒と組み合わさって、ジアセチレンモノマーに関して所望の溶解性をもたらす溶媒系になり得る第2の有望な溶媒を選択することができる。
【0155】
溶媒系成分の割合を変動させることにより、多成分溶媒系をチューニングして、特定のジアセチレンモノマーのための系の溶媒和力を調節することができることは理解されるであろう。
【0156】
望ましい場合には、通常の当業者には明らかであるか、明らかになるであろう他の液体または固体が、溶媒系に包含されていてもよい。場合によっては、指定の1種または複数の溶媒は、少なくとも50重量パーセントの溶媒系を含み、残りは、使用される場合には他の液体および水であってよい。他の液体は、溶解される1種または複数のジアセチレン化合物のための溶媒または非溶媒であってよく、例えば、本明細書で溶媒系成分として述べられた液体以外であってよい。本発明の一部の実施形態は、溶解または未溶解固体を何ら含有しない溶媒系を使用し、溶媒系の他には、所望の1種または複数のジアセチレン化合物のみを含有する溶液を処方することができる。
【0157】
別法では、またはこれに加えて、固体添加物、例えば、Prusikらへの米国特許第7,019,171号明細書に記載および請求されているような沈殿添加物を溶媒系に導入することができるが、但し、これらは、本発明の目的と不相容性ではないことを条件とする。
【0158】
ジアセチレン溶液
本発明の一部の実施形態は、目的に適していると本明細書に記載されている溶媒系の1種中の1種または複数のジアセチレンモノマーの溶液を包含する。本発明のさらなる実施形態は、規定の溶解性領域に系溶解性ポイントを有する新規の溶媒系中のジアセチレンモノマーの溶液を含む。
【0159】
本発明はまた、溶媒系の溶媒和特性の限界までの任意の所望の割合での本発明の溶媒系実施形態中の1種または複数のジアセチレンモノマーの溶液を包含する。例えば、1種または複数のジアセチレン化合物の割合は、溶液の重量に対して少なくとも1重量パーセント、少なくとも4重量パーセントまたは少なくとも7重量パーセントであってよい。多くの目的のために、高い溶解性が有用であり、本発明は、溶解したジアセチレン化合物を溶液に対して少なくとも約7重量パーセント含むジアセチレン溶液実施形態を包含する。本発明の一部のさらなる実施形態は、溶液の重量に対して少なくとも約10重量パーセントの溶解したジアセチレン化合物を含むジアセチレン溶液を含む。
【0160】
本発明を実施する際に使用することができるジアセチレンモノマーのいくつかの例には、条件を表示または監視することができるように、環境条件への曝露に応答して色変化などの視覚的な表示を示すことができる任意のジアセチレン化合物が包含される。本発明を実施する際にジアセチレンモノマーとして有用な一部のジアセチレン化合物は、温度、湿度、周囲大気の化学的組成、環境圧力、周囲放射線、他の周囲条件またはこれらのパラメーターの組合せに応答し得る。
【0161】
例えば、累積熱曝露の不可逆的な表示をもたらし、本発明を実施する際にジアセチレンモノマーとして使用することができるインジケーター薬剤として有用なジアセチレン化合物は、本明細書に挙げられているPatel、Preziosiおよび他の特許に開示されている。Patelの米国特許第3,999,946号明細書、4欄13行から5欄48行まで、およびPreziosiらの米国特許第4,788,151号明細書、3欄58行から4欄62行の開示は参照により本明細書に援用される。これらの文献から援用される開示において、「本発明」、「好ましい」、「好ましくは」などの言及は、本明細書ではなく、挙げられている特許それぞれの発明に関していると理解されたい。
【0162】
望ましい場合には、ジアセチレンモノマー化合物は、アルキル基が1から20個の炭素原子を有する2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物;2個のアルキル基がそれぞれ独立に、エチル、プロピル、ブチル、オクチル−、ドデシルまたはオクタデシルである2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物;およびアルキル置換基が直鎖である前記の置換アルキル尿素化合物からなる群から選択することができる。重合性ジアセチレンモノマーは、望ましい場合には、対称に置換されていてよい。
【0163】
本発明を実施する際に有用であるのは、下記構造式の重合性ジアセチレン化合物またはモノマーである
R1C≡C−C≡CR2
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、不可逆性の外観変化をもたらすことと相容性な有機置換基である]。例えば、R1およびR2はそれぞれ独立に、−R4NHCONHR3であってよく、ここで、R3は、1から20個の炭素原子を有するアルキル、場合によっては、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシルまたはオクタデシルであり、R4は、1から20個の炭素原子を有するアルキル、例えば、メチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレンである。望ましい場合には、R1およびR2はそれぞれ、CH2−NHCONHR3であってよく、R3はそれぞれ独立に、直鎖または分枝鎖飽和アルキル基であってよい。一部の前記化合物は、周囲条件インジケーター、例えば時間−温度インジケーターの活性成分として有用である。
【0164】
本発明を実施する際に有効に使用することができる他のジアセチレン化合物またはモノマーは通常の当業者には明らかであるか、または明らかになるであろう。使用することができるジアセチレン化合物のいくつかのさらなる例には、5,7−ドデカジイン−1,12ジオールビス(n−オクタデシルウレタン(本明細書では「4DOD」とも称される)および5,7−ドデカジイン−1,12ジオールビス(n−ブトキシカルボニルウレタンなどのより高いエネルギー放射線には感受性であるが、周囲熱条件には比較的不感受性であるジアセチレン化合物が包含される。
【0165】
したがって、ジアセチレンモノマーは、望ましい場合には、下式の構造を有するジアセチレン化合物であってよい
R3HNCONH−R4−C≡C−C≡C−R4−NHCONHR3
[式中、R3およびR4はそれぞれ独立に、上記で述べられた通りである]。
【0166】
有用なジアセチレン化合物のいくつかの具体的な例は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)を含む。
【0167】
本発明は、少なくとも1種の第1および第2ジアセチレン化合物(ここで、第1および第2ジアセチレン化合物はそれぞれ、構造式R−C≡C−C≡C−R(式中、置換基Rは、第1の化合物では−CH2NHCONHCH2CH3であり、第2の化合物では、−CH2NHCONH(CH2)2CH3である)を有する)を含み、さらに、少なくとも1種の非アセチレン化合物を結晶相中に含む結晶相を有するジアセチレン活性インジケーター薬剤を含む時間−温度インジケーターを包含し、ここで、前記少なくとも1種の非アセチレン化合物は、場合によって、少なくとも1種の溶媒である。
【0168】
本発明によるジアセチレン溶液の実施形態で、および本明細書に記載の本発明の他の態様で使用することができる適切なジアセチレンモノマーのいくつかの例には、エチル−、プロピル−およびオクチル置換−2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物が包含される。
【0169】
再結晶化
溶液からのジアセチレンモノマーの再結晶化は往々にして、所望の反応性を有する新規のモノマー結晶構造を得るために、およびジアセチレンモノマーの大きな結晶を成長させるために、ポリマーを含有しない「新鮮な」活性モノマーを得る有用な方法であり得る。ジアセチレンモノマーを処理する公知である方法は一般に、非晶質または結晶粉末に慣用のX線結晶学により結晶構造を完全に特定するには小さすぎる最大寸法を有する結晶をもたらす。
【0170】
また、再結晶化プロセスを使用またはアレンジして、望ましい場合には、例えば、濾過、遠心分離または他の適切な手段によりモノマーの溶液からポリマーを分離することにより、原料から望ましくないポリマー物質を除去することができる。
【0171】
本明細書で述べた通り、加熱された過飽和溶液からジアセチレン化合物を結晶化または再結晶化する際に、時間−温度誘発される重合を回避する処置が必要なことがある。重合があまり問題とならないであろうより低い温度でも、より低い温度での公知である溶媒および溶媒系中でのジアセチレンモノマーの限られた溶解性により、問題が生じ得る。したがって、純粋なジアセチレン化合物からなるより大きな結晶、例えば、約2mmを超える寸法を有する結晶を過飽和溶液から成長させる方法が必要である。少なくとも約5mmまたは少なくとも約10mmの寸法を有するより大きな結晶もまた、一部の目的では望ましいであろう。
【0172】
本発明による結晶化ジアセチレン化合物は、任意の適切な方法により、例えば、ジアセチレン化合物の溶媒系中のジアセチレン溶液からジアセチレン化合物を結晶化させることにより調製することができる。
【0173】
ジアセチレン溶液は、ジアセチレン化合物を溶媒系に溶かすことにより、または他の適切な方法により調製することができる。望ましい場合には、ジアセチレン化合物は、不純な結晶化生成物を含み得る。
【0174】
一般的に述べると、本発明は、ジアセチレン化合物を再結晶化させる方法を包含し、この方法は、ジアセチレン化合物のための溶媒系中のジアセチレン化合物の混合物を約50℃から約100℃の範囲の温度で、場合によっては、加熱された水浴上で加熱してジアセチレン化合物を溶媒系に溶かし、熱を供給することなく、およびクエンチすることなく、溶液を冷却させてジアセチレン化合物の結晶を沈殿させることを含む。
【0175】
本発明の一実施形態は、ジアセチレンモノマー、例えば、ビス−アルキル尿素ジアセチレンモノマーを再結晶化させる方法を含み、この方法は、許容できる作業温度で所望の溶質の負荷が得られ、使用される条件下に溶質と反応しない適切な溶媒にジアセチレン化合物を溶かすことを含む。任意の有用な溶質負荷、例えば、溶液の重量に対して少なくとも約1重量パーセントのジアセチレン化合物の溶質負荷を使用することができる。より高い負荷、例えば、少なくとも約4重量パーセントまたは少なくとも約7重量パーセントを、望ましい場合には使用することができる。
【0176】
望ましい場合には、加熱、例えば、溶液の沸点の約5℃以内の温度への加熱を使用して、溶解を促進することができる。望ましい場合には、例えば、Prusikらへの米国特許第6,924,148号明細書に記載および請求されている通りに、溶液をその沸点か、その付近の温度で還流させて、ジアセチレン化合物の反応性を変化させることができる。
【0177】
望ましい場合には、原料の溶液を濾過するか、遠心分離するか、または別の方法で処理して、原料のジアセチレンモノマー粉末または溶液中に存在していたかもしれない重合物質または他の望ましくない固体物質の粒子または分子を除去することができる。
【0178】
(実施例3)
再結晶化
本発明の一実施形態では、通常の当業者には明らかであるように、次の手順を使用して、ジアセチレンモノマー、例えば、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を本明細書に記載のジアセチレンモノマー溶液、例えば、エタノール/水から、または他のジアセチレンモノマー溶液から再結晶化させることができる。
【0179】
水浴を温度制御されたホットプレート/攪拌機上で、選択されたプロセス温度、例えば90℃に予備加熱する。1%溶液では、原料の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)0.4グラムおよび1:3重量部の水/エタノール(または選択された他の溶媒)9.6グラムを、20mLガラスシンチレーションバイアルに加える。溶質、例えば、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の量を、所望の濃度に応じて変化させる。
【0180】
バイアルを90℃で水浴中で加熱し、磁気撹拌棒で撹拌する。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)ジアセチレンモノマーの溶解を観察する。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の粒子が視覚的に残っていなくなったら、加熱および撹拌のスイッチを切り、水浴を冷却する。結晶が溶液から徐々に沈殿する。
【0181】
水浴温度が約35℃に冷却したら、バイアルを浴から外し、5ミクロンの空孔サイズのポリテトラフルオロエチレンフィルターで真空濾過装備を調製する。結晶/溶媒スラリーを濾過し、生成物を15分間空気乾燥させ、次いで、これを、ガラスシンチレーションバイアルに移す。
【0182】
最終生成物を集め、これを、約−30℃のフリーザーに入れる。高沸点溶媒を用いた場合には起こり得るように、結晶がまだ湿っている場合には、冷却された結晶を真空室(FLEXI−DRY MP(商標)凍結乾燥機など)に<500mTorrの圧力で約1〜2時間入れ、次いで、これをフリーザーに戻す。
【0183】
実施例3の方法を利用して4重量パーセントおよび7重量パーセントの2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶液を使用することにより、再結晶化された2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の大部分を回収して、長い白色針状物の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を得ることができる。
【0184】
本発明による再結晶化方法の他の実施形態は、約80℃以上の温度を有する温ジアセチレンモノマー溶液を中間温度まで急速に冷却して、起こり得るモノマーの重合を制限する第1のステップを含む。方法はまた、中間温度から、より低い温度、例えば室温以下に徐々にまたは穏やかに冷却することにより、所望のサイズの結晶を成長させる第2のステップを含む。中間温度は、約30℃から約50℃、例えば、約35℃、約40℃または他の適切な温度であってよい。望ましい場合には、不混和性溶媒または強制循環または他の適切な方法でのクエンチを使用して、第1ステップでの冷却を早めることができ、望ましい場合には、水浴などを使用して、第2ステップでの冷却を制限することができる。
【0185】
本発明は、本明細書に記載の任意の再結晶化方法により生じた結晶ジアセチレン化合物を包含する。多くの温度感受性ジアセチレン化合物は、結晶化の瞬間から、温度依存速度で常に重合している。低温貯蔵条件下、例えば、約−4℃から約−30℃では、重合速度は、数ヶ月または数年などの長期間の後でも、物理的作用がほとんど明らかでないか、明らかでないほどゆっくりであり得る。温度が高いほど速い重合速度は、適切な化合物では、発色または色変化をもたらし得る。公知である通り、この現象は、本発明の時間−温度インジケーターなどの時間−温度インジケーターにおいて有用である。
【0186】
したがって、本発明の結晶ジアセチレン化合物は、場合によっては、少量の重合ジアセチレン化合物を含むことがあり、例えば、約0.1重量パーセントまで、約1.0重量パーセントまで、または約1.0重量パーセントまでの結晶ジアセチレン化合物がポリマーを構成していることがある。
【0187】
図11に示されている画像は、異なる条件下に異なる溶媒中の溶液から成長させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の結晶の偏光光学顕微鏡画像である。左側の小さな結晶は、冷却させるためにメタノールでのクエンチを使用して温酢酸から再結晶化させることによる慣用の方法に得られる。右側のより大きな結晶は、約1℃/分で冷却することにより、25%水/エタノール混合物(重量で1:3の混合物)から成長させている。
【0188】
100ミクロン、0.1mmの目盛りが、サイズの推定のために各顕微鏡写真に示されている。画像を比較すると、本発明により水/エタノール混合物から再結晶化させた生成物は、約0.2mm以上の寸法をその多くが有する規則的で長い白色の結晶から主になることが分かる。対照的に、温酢酸から沈殿させた左側の結晶は、粉末により似ていて、形態が不規則で、比較的小さく、あるとしてもごく少数の結晶が0.1mm未満の大きさであり、あるとしてもごく少数の針状物が存在する。
【0189】
いくつかの異なる溶媒系から再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の試料を、その相対反応性に関して試験することができる。例えば、温度曝露などの環境条件に対する時間関連曝露に応答して色を変化させるジアセチレンモノマーの能力を、実施例4に記載の方法を使用して試験して、図12〜14に示されているような結果を得ることができる。
【0190】
(実施例4)
色変化反応性の比較
試料ペレットを、結晶ジアセチレンモノマー粉末から、International Crystal Laboratories(Garfield、New Jersey)が供給するE−Z Press 12−Ton液圧プレスおよび13mmのダイセットを備えたKBr Pellet Kitを使用して調製する。粉末約300mgを使用して、5から8トンの圧力を2〜3分間掛ける。ジメチルスルホキシド、メタノールおよび重量で4:1のエタノール/水混合物から沈殿させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の試料を調製する。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を合成した直後に、沈殿剤としてメタノールを使用して、温氷酢酸中の溶液から沈殿させた原料の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)結晶(「KE原料」)のペレットが、対象として包含されている。
【0191】
エッジによって取り扱っている間に、個々のペレットを約50mm×115mmの透明なヒートシールバッグに入れ、真空封止し、ヒートシール可能なホイルパウチに入れる。ホイルパウチを、Fuji Impulseテーブルトップ真空ヒートシーラーを使用して真空封止する。ペレットを含有する封止されたホイルパウチをフリーザー中−30℃で、または他の適切な温度で、試験の準備ができるまで貯蔵する。
【0192】
ペレットを含有するヒートシールされたホイルパウチ試料を、適切な温度、例えば、37℃、45℃または70℃に設定された水浴、例えば、Huber循環水浴に入れ、37℃で数日などの適切な測定期間、または反応がより迅速に進行する70℃で数時間エージングさせる。試料を、試験の間に水に浸漬させたままで秤量する。時間測定を、各パウチを水浴に入れた直後に開始する。所定の試験期間の終了時にパウチを取り出し、その光学密度を測定する。
【0193】
光学密度を測定するために、パウチを20℃に設定された第2の水浴に短時間浸漬させて、試料をクエンチし、測定の間のさらなる色変化を防ぐ。ホイルパウチを、透明ヒートシールバッグ内にペレットを残したままで切り開く。ジアセチレンモノマーの反応速度を、X−Rite404色反射濃度計を使用して、エージングされたペレットのシアン光学密度(O.D.)を測定することにより決定する。光学密度を任意の尺度で測定し、色変化反応性の比較可能な表示のために使用することができる。
【0194】
濃度計を使用する場合、約2mm厚のペレットの厚さに関して補正するために、濃度計を、対応する高さの高いプラットフォームまで持ち上げることができる。得られた結果の一部を図12〜14に示す。
【0195】
図14には、可能な試験結果が示されている溶媒系に対する記号表が包含されている。この記号表は、図12および13にも適用可能である。
【0196】
図12〜14のグラフは、試料の光学密度の変化として測定された色変化を日数の時間経過で、それぞれ37℃、45℃または70℃でプロットしており、これは、実施例4に記載の方法により生じさせることができる。グラフは、モノマーを再結晶化させるために使用された溶媒に応じて、試験されたジアセチレンモノマーの反応性について、著しい違いを示している。
【0197】
特に、図12で分かるように、37℃では、ピリジンから結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)(中実の四角)は、原料生成物(星形)よりも早い色変化速度を示し、また、試験においてどの他の溶媒から得られた生成物よりも早い色変化速度を示している。加えて、ピリジン生成物は、原料生成物よりも低い活性化エネルギーを、例えば、原料対照での23kcal/molに比較して約19kcal/molを有する。図13に示されている通り、同様の作用が45℃で明らかであり、図14に示されている通り、70℃のより高い温度では、より低い規模である。
【0198】
DMSOから再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)は、図12に示されている通り、37℃では、原料の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)よりも、やや早い反応性を示す。しかしながら45℃では、図13から分かる通り、この作用は、著しくより顕著になり、この場合、DMSO生成物の反応性プロファイルは、ピリジン生成物の反応性プロファイルに近く、試験された他の生成物とはかなり区別される。
【0199】
図14に示されている通り、70℃のより高い温度では、同様の相対結果を得ることができたが、より短い時間規模にわたっては、生成物間の差違はより僅かである。
【0200】
全体では、列挙された溶媒から再結晶化させたジアセチレンモノマーのいくつかの試料は、原料生成物に匹敵するか、またはそれよりも早い視覚的な応答反応性を示し、このことは、これらを、環境条件インジケーターにおいて活性要素として使用することができることを示唆している。原料生成物の反応性からの反応性のバリエーションにより、配合物に、インジケーターと監視されるホスト製品の応答とを対応させるためのさらなるオプションを与えることができる。
【0201】
ジアセチレンモノマー溶液を調製するために本発明により特定または提供される新規の溶媒系は、いくつかの方法で有用であり得る処理および再結晶化選択肢をもたらす。例えば、ジアセチレンモノマー溶液は場合によって、例えば、基材に塗布する場合に、または他の方法で、インジケーター薬剤または要素として有用であり得る。記載の通り、1種または複数の溶液を使用して、ジアセチレンモノマーの新規の結晶形態、例えば、X線または他の分析に有用なより大きな結晶を得ることができる。
【0202】
X線結晶分析
起こり得るジアセチレン重合反応機構の理解およびモデリングを容易にするために、ならびに有用な新規のジアセチレンモノマー処理方法を特定する助けになるように、結晶ジアセチレンモノマーについてのさらなる構造情報を有することが有用であり得る。本発明により、このような結晶情報を使用して、ジアセチレン化合物の結晶形態を区別し、インジケーター性能が結晶構造に対して感受性であり得る特定の用途のために、例えば、時間−温度、放射線量または他の周囲条件インジケーターのために他のものよりも有用であり得る形態を特定することができる。
【0203】
したがって、本発明の一部のさらなる実施形態は、X線回折または他の適切な技術により該当するジアセチレンモノマーの結晶粉末化試料を評価することを含む。結晶分析に有用な結晶粉末は一般に、酢酸または本明細書に記載もしくは示唆されている溶媒系の他の1種中のジアセチレンモノマーの温溶液から、またはジアセチレンモノマーが合成された溶液から、急速なクエンチまたは他の迅速な冷却法により得ることができる。一般に、X線回折研究は、存在し得るか、研究により生じ得る少量のポリマーからの過度の干渉無しにモノマーで行うことができるようである。
【0204】
X線分析の一つの例示的方法では、分析される結晶ジアセチレンモノマー物質の粉末化試料を、フリーザー内の貯蔵から取り出し、ホルダー上に置き、次いで、所望の固定波長のX線を使用して特性決定する。
【0205】
回折放射線の強度の角度変動を、ゴニオメーターを使用して記録する。次いで、記録されたデータを回折角および結晶回折で使用された放射線の波長に関して分析して、結晶構造における原子間隔またはd値をオングストローム単位「Å」(1Å=10−10m)で評価する。試料を構成する原子の平面間の距離を、ゴニオメーターデータから、ブラッグの法則を公知である方法で当てはめることにより算出することができる。X線回折ブラッグ角2θの値が本明細書中で述べられていて、X線放射線が規定されていない場合、使用されたX線放射線は、約1.54Åの波長を有すると理解されたい。
【0206】
典型的なX線スキャンで生じたd空間の特性セットにより通常、結晶試料中に存在する物質の固有の「指紋」が得られる。標準的な参照パターンおよび測定と比較することにより適切に翻訳すると、この「指紋」により往々にして、試料物質を明白に特定することができる。
【0207】
(実施例5)
粉末化結晶(エチル尿素化合物)の構造分析
該当するジアセチレン化合物、この場合には、例えば、一般にPreziosiら、米国特許第4,788,151号明細書の実施例Aに記載されている通りに、メタノールを使用して、酢酸溶液から合成した直後に沈殿させた原料2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の粉末結晶での実験的X線回折パターンを、Rigaku ULTIMA(商標)回折計を使用して1.54056Åの波長「λ」でCu K放射線を供給して生じさせる。得ることができる一部の結果を、図15に示されている一番下の回折パターンに示す。
【0208】
図15に示されているデータは、垂直軸上の回折ビーム強度の平方根に対する水平軸上の2θ度に依存してプロットされており、「θ」は、X線ビームの入射角度である。同じ軸設計を、図に示されている全てのX線回折パターンで使用する。文脈で別段に示されていない限り、回折角に対する本明細書の言及は、「2θ」を意味すると理解されたい。
【0209】
図15を参照すると、原料粉末化2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)での回折パターンの顕著な特徴は、約5.18度および10.39度の2θ値付近での2つの高い強度ピークの存在である。これら2つの強いピークは幅が狭く、背景よりも数倍高い強度まで鋭く高まっている。ピークが存在する2θ値は、ブラッグの法則に従うとそれぞれ17.06および8.51Åのd値に対応している。参照を簡便にするために、これら2つのピークに、ジアセチレンモノマー結晶格子の001および002反射と索引を付けることができる。
【0210】
(実施例6)
粉末化結晶(様々な溶媒)の構造分析
実施例5を、粉末結晶沈澱物が得られ、過度の自発重合を回避するように設計された比較的早い冷却条件下に、下記に特定されているいくつかの異なる溶媒から再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の結晶を使用して繰り返す。
試料A 酢酸
試料C 1:4重量部の水とジメチルスルホキシド
試料E 1:4重量部の水とエチルアルコール
試料F 1:4重量部の水とイソプロピルアルコール
得られた一部の結果を、図16に示されている回折パターンに示す。
【0211】
図16を参照すると、2θが約4度から約12度である低い角度領域での001および002ピークの位置および相対強度は、調査された全ての試料で同様であることが分かる。この事実は、結晶構造がそれぞれ、関連結晶平面方向において匹敵する平面間分離を有することを示唆し得る。本明細書に記載されている通り、文脈で別段に示されていない限り、2θ角度は、銅Kα放射線を使用して約1.542Åで特性決定されている。
【0212】
加えて、様々な回折パターンプロファイルが、2θが約19度から24度である高い角度の領域での重大な差違を明らかにしている。特に、高角度回折パターンは、使用される再結晶化溶媒によって著しく変動することが分かる。例えば、公知である酢酸生成物の試料である試料Aでの回折パターンは、2θが約19度から約24度である高い角度範囲で、4つの明瞭な高い強度ピークを示す。水/イソプロピルアルコール試料である試料Fでのパターンは、高い角度範囲では、また、2θが約19度から約24度である範囲でも、2つの目立つ高い強度ピークしか示さない。対照的に、ジメチルスルホキシド生成物から再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)である試料Cおよび水/エチルアルコール試料Eでの回折パターンは、2θの高い角度範囲で、著しい高い強度ピークを欠いている。
【0213】
図16に示されている垂直軸の高さを値1とすると、図の形状を測定することにより、試料Aは、約19度から約24度の高い角度範囲に値0.4を超える4つの高い強度ピークを示すと決定することができる。試料Fは、約19度から約24度の高い角度範囲に値0.4を超える2つの高い強度ピークを示す一方で、試料Cまたは試料Eは、何ら示さない。
【0214】
図15〜17に示されているX線回折データおよび表4は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物で得ることができるデータの例示である。本発明は、添付の図面に示されているか、もしくは本明細書に記載されているX線回折データを有するか、または本明細書に記載されている角度または他の範囲内にピークまたは他の特性を有する新規の結晶ジアセチレン化合物を包含する。
【0215】
(実施例7)
粉末化結晶(エタノール/水)の構造分析
実施例5を、95/5重量パーセントのエチルアルコール/水溶液から、粉末結晶沈澱物が得られ、過度の自発重合が回避されるように混合物の沸点付近の温度からの比較的急速な冷却で、比較的速い冷却条件下に再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)(「KE」)および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)(「KPr」)の結晶を使用して繰り返す。得られた一部の結果を図17に示されている回折パターンに示すが、ここで、個々のジアセチレンモノマーでのパターンは、「KE」および「KPr」と標識されている。
【0216】
図17を参照すると、5:95の水/エタノールから再結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)での回折パターンは、図16に示されている1:4の水/エタノールからの再結晶化での回折パターンと同様であることが分かる。
【0217】
「KPr」と標識された2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)での回折パターンは全般に、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)での回折パターンと似ているが、但し、2つの低い角度での高い強度ピークが、それぞれ約4度および9度の2θ角度へと低い方へシフトしていることにおいて異なる。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)パターンはまた、高い角度範囲での高い強度ピークを欠いている。
【0218】
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)に関して、001および002と索引されている低い角度での高い強度ピークを見ることができる一部の測定可能な2θ値(度)が、対応する算出されたd値(オングストローム)と一緒に、下記の表4に示されている。
【0219】
【表4】
表4を参照すると、両方の結晶化合物は、002の高い強度ピークが、その001の高い強度ピークの2θ角度のほぼ2倍である2θ角度にあることを示している。対応するd空間は、逆相関、即ち、約1:2を示す。いずれの場合も、001および002の高い強度ピークは、同調相関を有すると理解される。KPr(2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素))でのd(001)は、KE(2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素))でのd(001)よりも約16%高い。この差は、2つの分子の長さの差により得る。
【0220】
上記で述べた通り、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶は、約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定すると、12度未満の低い2θ回折角で2つの高い強度ピークを含むX線回折パターンを示すことができ、このパターンは、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ未満の高い強度ピークを含み得る。
【0221】
本発明の一実施形態では、結晶のX線回折パターンは、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に高い強度ピークを欠いている。低い2θ回折角での2つの高い強度ピークの一方は、約4度から約6度の範囲の角度であり得、他方は、約8度から約12度の範囲の角度であり得る。
【0222】
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶は、約4度から約6度の範囲の角度での高い強度ピークに対応するd空間を示し得る。この空間は、約8度から約12度の範囲の角度での高い強度ピークに対応するd空間の値の半分であり得る。場合によっては、約12度未満の低い2θ回折角での2つの高い強度ピークは、調和関係(harmonic relationship)を有し得る。
【0223】
粉末X線結晶学から通常得られる情報よりも詳細な情報を得るために、研究中のジアセチレンモノマーの単一結晶を構造特性決定することが望ましい。例示的な手順および得られる結果を、下記の実施例8に記載する。
【0224】
(実施例8)
単一結晶(エチル尿素化合物)の構造分析
例として、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を使用して、ジアセチレンモノマー化合物の単一結晶を構造特性決定するために十分に大きな試料を、実施例3に記載されている再結晶化方法に従って重量で1:4のエタノール/水溶液から結晶化させることにより得る。結晶の一実施形態は、針状物の形態を有し、十分に規定される成長方向を示す。
【0225】
Leica MZ7偏光顕微鏡を使用して、例は下記の通りである任意の適切な手順を使用して代表的な物質のサンプリングから適切な試験体を特定することにより、構造特性決定を行うことができる。特定された試験体をナイロンループに結び付け、これを、銅取付ピンに合わせる。次いで、取り付けられた結晶を110°Kに維持された冷たい窒素流(Oxford)に入れる。
【0226】
Bruker D8 GADDS汎用三円X線回折計を試料のスクリーニングおよびデータ収集のために使用する。ゴニオメーターをGADDSソフトウェアスイート(Microsoft Win 2000オペレーティングシステム)を使用して制御する。試料を、ビデオカメラを用いて光学的に中心において、全ての位置で結晶を回転させて並進が観察されないようにする。検出器を結晶試料から50mmにセットする(MWPC Hi−Star Detector、512×512ピクセル)。使用されるX線放射線は、Cu封止されたX線管(Kα=1.54184Å、電圧40kVおよび電流40mA)から生じさせ、グラファイトモノクロメーターを用いて平行モードでフィルタリングする(0.5mmのピンホールを備えた175mmのコリメーター)。
【0227】
回転曝露を行って、結晶品質および検出器とのX線ビーム交差を決定する。ビーム交差座標を、設定された座標と比較して、それに応じて変化させる。回転曝露が許容可能な結晶品質を示したら、単位格子決定に取りかかることができる。60のデータフレームを、10秒の曝露時間で幅0.5°で取る。200を超える反射を中心に置き、その位置を決定する。これらの反射を、単位格子を決定するための自動索引作成手順で使用する。適切な格子を見つけ、非線形最小二乗およびブラヴェ格子手順により精密にし、結果を記録する。単位格子を、ゾーン写真を包含する複数のデータフレーム上でのhklオーバーレイの試験により検査する。スーパーセルまたは誤反射は観察すべきではない。
【0228】
単位格子を慎重に試験した後に、標準的なデータ収集手順を開始する。この手順は、オメガを変動させながら、φ、2θおよびχに関して固定された角度(2θ=−28°、χ=54.73°、2θ=−90°、χ=54.73°)で5000を超える0.5°フレームを収集することを包含するオメガスキャンを使用して、データの一方の半球を収集することを含む。追加のデータフレームを集めて、データセットを完了する。各フレームを10秒間曝露する。全データ収集を110°Kで約48時間行う。等価反射の著しい強度変動は観察されない。
【0229】
データ収集の後に、結晶をサイズ、形態および色に関して慎重に測定する。
【0230】
(実施例9)
単一結晶(プロピル尿素化合物)の構造分析
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の代わりに同量の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)を使用して、実施例3に記載されている再結晶化方法に従って重量で1:4のエタノール/水溶液から結晶化させることにより、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)(「KPr」)の単一結晶を構造特性決定するために十分に大きな試料を得る。
【0231】
針状物の形態を有し、十分に規定される成長方向を示す特性決定のために適した結晶が得られる。このような適切な結晶の1個を、実施例8に記載されている方法に従ってX線分析により特性決定する。
【0232】
結晶ジアセチレン化合物
本発明は、三斜晶系または他の結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物を包含する。
【0233】
1:4の水/エタノールから成長させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)で実施例8の方法により得られる例示的な単一結晶構造データを表5に示す。
【0234】
【表5】
単一結晶実験から決定される通りの16.6Åの単位格子パラメーターcは、約17.06Åである粉末回折から得られる値よりも小さいことを特記することができる。これは、異なる温度条件などにより得るか、または粉末回折パターンにおいて得られる幅広のピークが、d値の正確な決定を困難にするためか、または他の理由による。
【0235】
1:4の水/エタノールから成長させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)で実施例9の方法により得られる例示的な単一結晶構造データを表6に示す。
【0236】
【表6】
本明細書の終了部、請求項の直前に存在する表9〜12は、実施例9の方法により得られる追加のデータを示している。
【0237】
2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)(「KE」)および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)(「KPr」)での特性データを表5および6から選択し、表7に示されている通りに比較すると、2種の化合物の全体構造は著しい差違を有する。
【0238】
【表7】
このように、いずれのジアセチレン化合物も、基本的な中心空間群名称「P」を示すが、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)は、
【0239】
【化1】
とも称される対称の単一の中心のみを伴う三斜晶系構造を有する。対照的に、KPrは、単斜晶系構造を有し、対称
【0240】
【化2】
の単一中心も有するが、21らせん軸およびa映進面を備えた空間群P21/aに属する。これらの形態は、a軸の長さおよび1格子当たりの分子の数を2倍にする。
【0241】
空間群は、分子が充填する方法を記載するために有用であり得る。単位格子パラメーターと原子座標との組合せは、ジアセチレンモノマーなどの複雑な化合物の結晶において分子が空間に配列する方法を示し得る。結晶における分子空間配置は、時間−温度インジケーターなどの環境条件インジケーターにおけるジアセチレン化合物の有望な反応性を記載または予測する際に有用であり得る。
【0242】
当分野で公知である通り、三斜晶系空間群は2つの構造P1および
【0243】
【化3】
からなる。単斜晶系空間群は、構造P21/aを包含する13の構造を含む。空間群についての情報源の1つは、www.nrl.navy.mil/lattice/spcgrp/index.htmlである。
【0244】
前記の差違にも関わらず、入手可能なデータのさらなる研究により、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の結晶構造は、例えば、下記の表8に示されている通り、重合性に関する特徴については類似性を有することが分かる。
【0245】
【表8】
表8に関して、長い単位格子軸は、c軸であり、C1−C4距離は、1分子中のジイン炭素原子と、隣接分子中の最も近いジイン炭素原子との距離である。ジイン基に沿って炭素原子に1から4の番号をふると、1分子のC1炭素に最も近く隣接するのは、その隣接分子のC4炭素である。d1は、C1−C4距離よりも広い隣接分子間の中心間分離である。「S」は、隣接するジアセチレンロッド間の垂直距離である。γ1(表8ではY1)は、短いb軸とジアセチレンロッド軸との角度であり、短いb軸は、反応方向と考えられる。
【0246】
全体的な構造の差違にも関わらず、表8のデータから、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の構造および2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の構造は、本明細書中でさらに記載される通り、反応方向においては類似しているようである。
【0247】
本明細書中のデータから誘導可能な2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)での結晶構造の1つの可能なモデルを図18に示す。2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)での結晶構造の比較モデルを図19に示す。これらの構造は、ジアセチレンファミリーの化合物に関して利用可能な構造情報と一致している。
【0248】
図19では、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の1分子のC(7)炭素原子が、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の隣接する分子のC(6)炭素原子と近接して並んでいることが分かる。図19では、炭素原子は、分子の各末端から分子の中心へとC(1)からC(7)と番号づけられている。水平の長方形の箱形は、格子の左奥下側の角の所に基点を有し、図19が描かれている紙または他の媒体の平面に対して「a」軸はこの基点から右へ延び、「b」軸は上へ延び、「c」軸は前方へ延びる単位格子を示している。
【0249】
上記の単一結晶構造データに基づく図18および19に示されているモデルでは、ジアセチレンモノマー分子は、結晶の隣接単位格子の幾何学的中心に対して、4.7Å未満の中心間分離を有する。また、中心間分離は、固相重合が生じ得る方向である。
【0250】
図20は、重合性ジアセチレン化合物の重合方向と針形結晶の針軸との関係を示している。図20に示されている単一結晶は、長方形断面図で図示されており、結晶軸(a)、(b)および(c)は、図に見られる通り、結晶の下方左側末端部に示されている。
【0251】
結晶軸に対して示されるジアセチレンモノマー分子の配向は、図19にマーキングされている矢印から明らかであり、これは、短い結晶軸bの方向を示している。
【0252】
図19および20から分かる通り、結晶の短い軸(b)は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)のための、また場合によっては2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)のための針軸である。
【0253】
図中に矢印でマーキングされている通り、図20は、二色性の軸は、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)と2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の両方において針軸に平行していると考えられることを示している。したがって、両方の化合物の結晶において、重合方向は、針軸に沿っていると結論することができる。二色性の軸は、モノマーが重合すると着色が明らかになり得る方向である。
【0254】
本明細書に記載されているようなモデル構造にしたがって、本発明は、隣接する重合性ジアセチレン分子の間に水素結合を含む結晶ジアセチレン化合物を包含し、この水素結合は、2個の隣接する重合性ジアセチレン分子間の1,4−付加重合を可能にする方向に延び得る。望ましい場合には、水素結合は、1個の重合性ジアセチレン分子上の尿素基中の2個の−NH−基それぞれと、隣接する重合性ジアセチレン分子上の1個の=C=O基との間に延び得る。
【0255】
一般に、ジアセチレン化合物は、対称に置換されていてよく、結晶化されると、ジアセチレン化合物が対称中心を有し、対称軸も対称面も存在しない結晶構造を有することができ、この構造は、三斜晶系結晶構造に対応する。本発明の一部の態様は、a=約4.2Å、b=約4.6Å、c=約16.5Å、α=約89°、β=約85°およびγ=約81°の単位格子パラメーターを有し、場合によっては、三斜晶系構造を有する中心対称結晶相を有するジアセチレン化合物を含む。三斜晶系または単斜晶系結晶での結晶構造を表すための単位格子を特に選択することは、唯一の選択ではなく、望ましい場合には、格子軸または他の因子を選択することにより決定することができる通り、他の単位格子を使用することもできることを通常の当業者は理解するであろう。このような他の可能な単位格子は、公知である方法を使用して特に記載または選択される単位格子に数学的に由来してよく、特定の単位格子に関する情報を得ることにより固有に包含されると理解されたい。
【0256】
本発明は、構造式
CH3CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH3
または
CH3CH2CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH2CH3
を有し、上記の単位格子パラメーターを有し得る三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)を包含する。
【0257】
三斜晶系構造を有する結晶ジアセチレン化合物を構成する結晶ジアセチレン化合物の割合は、少なくとも約50パーセント、少なくとも約80パーセントおよび少なくとも約90パーセントからなる群から選択することができ、ここで、前記割合は、ジアセチレン化合物の全重量に対する重量による。
【0258】
結晶ジアセチレン化合物は、任意の所望の純度、例えば、純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる範囲の群から選択される範囲の純度を有し得る。純粋な結晶化合物が、1種または複数の結晶化溶媒を場合によって包含してもよい。望ましい場合には、再結晶化プロセスを、同じまたは異なる溶媒系を使用して1回または複数回繰り返して、ジアセチレン化合物の純度を高めることができる。
【0259】
本発明はまた、構造
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
のジアセチレン化合物を含有する結晶相を含む時間−温度インジケーターを包含する[式中、「n」は、1から19の奇数(整数)であってよく、「m」は、1から7の奇数(整数)であってよい]。ジアセチレン化合物の第1のジアセチレン分子は、2個の隣接するジアセチレン分子中のジアセチレン基と反応することにより重合し得る。また、第1のジアセチレン分子上の2個の=C=O基はそれぞれ、隣接するジアセチレン分子中の2個の−NH−基に水素結合し得る。結晶相は、三斜晶系であってよく、場合によって、対称中心を有してよい。
【0260】
この時間−温度インジケーターの一部の実施形態では、三斜晶系結晶相は、上記の構造を有する2種以上の異なるジアセチレン化合物を含む。各ジアセチレン分子では、「m」は奇数である。一方のジアセチレン化合物では、「n」は、第1の値を有する奇数または偶数であり、他方のジアセチレン化合物では、「n」はまた、それぞれ奇数または偶数であり、第2の値を有し、ここで、第2の値は、第1の値とは異なる値である。本発明の一部の実施形態では、「n」は両方または全てのジアセチレン化合物で奇数である。他の実施形態では、「n」は、両方または全てのジアセチレン化合物で偶数である。本発明は、特定の理論に何ら制限されないが、アルキルおよびアルキレン基が往々にして採るジグザグ構造は、「m」および「n」の記載の数値選択に有利であると考えられる。これらの構造特性を有する化合物の適切な例は、本開示を考慮すれば、通常の当業者には明らかであるか、明らかになるであろう。
【0261】
本発明を、監視される1つまたは複数の環境条件下に自発的な重合の結果として環境モニターまたはインジケーターにおいて、外観変化をもたらすのに有用である可能性のあるジアセチレン化合物を参照しつつ幅広く記載した。このような有用な特性は、本発明の方法の生成物において望ましいが、出発物質が必ずしも有さなくてもよいことは理解されるであろう。したがって、場合によっては、原料の状態では、あったとしてもほんの僅かな有用なインジケーター活性を有するジアセチレン化合物を、本発明の方法またはプロセスにより、有用なインジケーター活性を有する生成物に変化させることができることが企図される。
【0262】
本発明はまた、本明細書に開示されている本発明の生成物および方法の様々な態様、実施形態または特徴の2種以上の相容性な組合せのうちの任意の有用な組合せを含む。通常の当業者であれば、本明細書に開示されている本発明の様々な実施形態および態様の多くの特徴または要素は、相互に組み合わせて使用することができることを理解するであろう。
【0263】
本明細書で特に参照された米国特許および特許出願のそれぞれおよび全て、諸外国および国際特許の各刊行物のそれぞれ、他の刊行物のそれぞれならびに刊行されていない特許出願のそれぞれの開示全体は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0264】
前記の詳細な説明は、当業者には明らかである通り、本発明を実施する際の最良の方式に関するか、または本発明の変更、代替もしくは有用な実施形態に関する部分的または完全な情報が記載または示唆されていることもある先行する背景および発明の概要の記載を考慮して、かつそれらと組み合わせて読まれるべきである。本明細書中で本発明の明細で使用される用語の意味と、他の文献から参照により引用される材料での使用法との間に衝突が生じているような場合には、本明細書で使用される意味を優先させることが意図されている。
【0265】
明細書を通して、組成物が具体的な成分を有するか、包含するか、もしくは含むと記載されているか、またはプロセスが具体的なプロセスステップを有するか、包含するか、もしくは含むと記載されている場合、本発明の組成物はまた、列挙されている成分から主になるか、それからなってよく、および本発明のプロセスはまた、列挙されているプロセスステップから主になるか、それからなってよいことが企図されている。ステップの順序または一定の動作を行うための順序は、本発明が実施可能なままである限り、重要ではないことを理解すべきである。さらに、2つ以上のステップまたは動作を、同時に行うことができる。加えて、本明細書に列挙されている割合は全て、文脈が別段に示していない限り、関連する組成物の重量に対する重量割合であると理解されたい。
【0266】
本発明の説明的な実施形態を上記したが、勿論、前記の記載を考慮すれば、多くの様々な変更が、関連分野の通常の当業者には明らかであるか、または技術が進歩するにつれて明らかになるであろうことは理解されるであろう。このような変更は、本明細書中に開示されている1つまたは複数の発明の意図および範囲内と企図される。
【0267】
【表9】
【0268】
【表10−1】
【0269】
【表10−2】
【0270】
【表11】
【0271】
【表12】
【0272】
(項目1)
重合して環境条件インジケーターの不可逆性の外観変化を提供し得る結晶ジアセチレン化合物であって、構造式
R1C≡C−C≡CR2
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、前記不可逆性の外観変化の提供に適合する有機置換基である]を有し、前記ジアセチレン化合物分子が、異なる分子中の隣接ジアセチレン単位の幾何学的中心に関して4.7Å未満の中心間分離を有する結晶構造を有し、ここで、前記中心間分離は、固相重合が生じる得る方向である、結晶ジアセチレン化合物。
(項目2)
前記中心間分離が、前記結晶ジアセチレン化合物の単位格子反復距離に対応している、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目3)
R1およびR2がそれぞれ独立に、−R4NHCONHR3であり、R3およびR4がそれぞれ、出現する毎に、1から20個の炭素原子を有するアルキル基である、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目4)
R1およびR2がそれぞれ独立に、−CH2NHCONHR3であり、R3が、出現する毎に独立に、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシルまたはオクタデシルである、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目5)
各尿素基に2個の水素結合を含み、前記2個の水素結合は1個ずつ、1個の重合性ジアセチレン分子上の尿素基中の2個のNH基の一方と、隣接する重合性ジアセチレン分子中のC=O基との間に延びている、項目3に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目6)
前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されている、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目7)
前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されていて、前記結晶ジアセチレン化合物が対称中心を有し、三斜晶系であり、対称軸も対称面も存在しない結晶構造を有する、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目8)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって、1種または複数の結晶化溶媒を包含する、項目1、2、3、4、5または6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目9)
三斜晶系結晶構造を含み、ここで、三斜晶系結晶構造を有する前記結晶ジアセチレン化合物の割合が、少なくとも約50パーセント、少なくとも約80パーセントおよび少なくとも約90パーセントからなる群から選択され、前記割合は、結晶ジアセチレン化合物の全重量に対する重量による、項目1、2、3、4、5または6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目10)
少なくとも1種の非アセチレン化合物を結晶相中に含み、前記少なくとも1種の非アセチレン化合物が場合によって、1種または複数の溶媒である、項目1、2、3、4、5または6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目11)
前記ジアセチレン化合物および前記ポリマーの重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物を含む、項目1、2、3、4、5または6に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目12)
前記ジアセチレン化合物の重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物の前記重合ジアセチレン化合物を含み、ここで、前記ジアセチレン化合物が対称的に置換されていて、前記結晶ジアセチレン化合物が、対称中心を含む三斜晶系結晶構造を有し、前記結晶ジアセチレン化合物が純度少なくとも約98重量パーセントである、項目5に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目13)
構造式
CH3CH2CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH2CH3
を有し、三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物。
(項目14)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる純度範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって、1種または複数の結晶化溶媒を包含する、項目13に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目15)
構造式
CH3CH2HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHCH2CH3
を有し、三斜晶系結晶構造を有する結晶ジアセチレン化合物。
(項目16)
中心対称結晶相を有し、ここで、前記中心対称結晶相は、a=約4.2Å、b=約4.6Å、c=約16.5Å、α=約89°、β=約85°およびγ=約81°の単位格子パラメーターを有する、項目15に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目17)
約100ミクロンを超える第1の方向での結晶サイズおよび約10ミクロン以下の前記第1の方向に対して垂直方向の第2の方向での最大寸法の結晶サイズを有する、項目15に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目18)
純度少なくとも約90重量パーセント;純度少なくとも約95重量パーセント;純度少なくとも約98重量パーセント;純度少なくとも約99重量パーセントおよび純度少なくとも約99.8重量パーセントからなる純度範囲の群から選択される範囲の純度を有し、前記純粋な結晶化合物が場合によって1種または複数の結晶化溶媒を含む、項目15、16または17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目19)
少なくとも1種の非アセチレン化合物を前記結晶相中に含み、前記少なくとも1種の非アセチレン化合物が場合によって1種または複数の溶媒である、項目15、16または17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目20)
前記ジアセチレン化合物および前記ポリマーの重量に対して、10重量パーセント以下の前記重合ジアセチレン化合物を含む、項目15、16または17に記載の結晶ジアセチレン化合物。
(項目21)
約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定した場合に、12度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含み、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ未満の高い強度ピークを含むX線回折粉末パターンを示す、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶。
(項目22)
前記X線回折パターンが、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に高い強度ピークを欠いている、項目20に記載の結晶。
(項目23)
低い2θ回折角での前記2つの高い強度ピークのうちの一方が、約4度から約6度の範囲の角度にあり、他方が、約8度から約12度の範囲の角度にある、項目21に記載の結晶。
(項目24)
前記結晶が、約4度から約6度の範囲の角度での前記高い強度ピークに対応するd空間が約8度から約12度の範囲の角度での前記高い強度ピークに対応するd空間の値の半分であることを示し、12度未満の低い2θ回折角での前記2つの高い強度ピークは場合によって、一方のピークと他方のピークとの調和関係を有する、項目23に記載の結晶。
(項目25)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物が、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)である、項目21、22、23または24に記載の結晶。
(項目26)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)が、水性エチルアルコール中の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(プロピル尿素)の溶液からの結晶化生成物である、項目25に記載の結晶。
(項目27)
前記2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物が、水性エチルアルコール、水性イソプロプルアルコールまたは水性ジメチルスルホキシド中の2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(エチル尿素)の溶液からの結晶化生成物である、項目21、22、23または24に記載の結晶。
(項目28)
溶媒系から結晶化させた2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶であって、前記結晶は、約1.54Åの波長でX線を使用して特性決定した場合に、約12度未満の低い2θ回折角に2つの高い強度ピークを含み、約19度から約24度の範囲の高い2θ回折角に4つ以下の高い強度ピークを含む回折パターンを示し、ここで、前記高い角度の回折パターンは、前記溶媒系または結晶化方法により決定される、2,4−ヘキサジイン−1,6−ビス(アルキル尿素)化合物の結晶。
(項目29)
項目1、2、3、4、5または6に記載の結晶ジアセチレン化合物を含む、場合によって時間−温度インジケーターまたは高エネルギー放射線モニターである周囲条件インジケーター。
(項目30)
時間−温度インジケーターであって、下記構造のジアセチレン化合物を含有する結晶相を含み
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
[式中、
「n」は、1から19の奇数であり、
「m」は、1から7の奇数である]、
前記ジアセチレン化合物の分子は、2個の隣接するジアセチレン分子中のジアセチレン基との反応により重合することができ、
前記第1のジアセチレン分子上の前記2個のC=O基はそれぞれ、前記2個の隣接するジアセチレン分子中の2個のNH基に水素結合することができ、
前記結晶相は、三斜晶系であり、
前記結晶相は、対称中心を有する時間−温度インジケーター。
(項目31)
時間−温度インジケーターであって、構造式
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
を有するジアセチレンを含む固相組成物を含み、
前記ジアセチレンは、前記ジアセチレンの分子間での反応により重合することができ、ここで、1個の分子上のC=O基は、隣接する分子上の2個のNH基に水素結合し、式中、
「m」は、1から7の奇数であり、
「n」は、1から19の奇数であり、
前記固相は、三斜晶系空間群P−1を含む、時間−温度インジケーター。
(項目32)
時間−温度インジケーターであって、構造式
[CH3(CH2)nNHCONH(CH2)mC≡C−]2
を有するジアセチレンを含む固相組成物を含み、
前記ジアセチレンは、前記ジアセチレンの分子間での反応により重合することができ、ここで、1個の分子上のC=O基は、隣接する分子上の2個のNH基に水素結合し、式中、
「m」は、1から7の奇数であり、
「n」は、2から20の偶数であり、
前記固相は、単斜晶系空間群P21/aまたはP21/cを含み、ここで、b軸は、21軸である、時間−温度インジケーター。
(項目33)
前記ジアセチレン化合物を、前記ジアセチレン化合物の溶媒系中の溶液から結晶化させることを含む、項目1に記載の結晶ジアセチレン化合物の調製法。
(項目34)
前記ジアセチレン化合物を前記溶媒系に溶かすことにより、前記溶液を調製することを含み、ここで、前記ジアセチレン化合物が不純な結晶化生成物を含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記ジアセチレン化合物の結晶化が:
前記ジアセチレン化合物に対する溶媒系中の前記ジアセチレン化合物の混合物を約50℃から約100℃の範囲の温度で加熱して、前記溶媒系中に前記ジアセチレン化合物を溶解させるステップと;
熱を供給することなく、かつクエンチすることなく、前記溶液を冷却して、前記ジアセチレン化合物の結晶を沈殿させるステップとを含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記溶媒系が、約6MPa1/2から約17MPa1/2の範囲の極性溶解性パラメーターを有し、約7.5MPa1/2から約26MPa1/2の範囲の水素結合溶解性パラメーターを有し、前記溶媒系が、前記溶媒系の単独の溶媒成分としての酢酸からもジメチルホルムアミドからもピリジンからもならない、項目33、34または35に記載の方法。
(項目37)
(a)前記ジアセチレン化合物のための数種の有望な溶媒の極性溶解性パラメーターが、前記有望な溶媒の水素結合溶解性パラメーターに対してプロットされていて、有望な溶媒それぞれでの溶解性パラメーターポイントを提供する溶媒マップを得るステップと;
(b)少なくとも3種の液体であって、前記ジアセチレン化合物がそれらの液体中のいずれにも不溶性ではない液体中への前記ジアセチレン化合物の溶解性に関する情報から、前記ジアセチレン化合物のための溶解性領域を特定し、ここで、前記溶解性領域は、所望の溶液特性に関連する極性および水素結合溶解性パラメーターの同一限界内のエリアであるステップと;
(c)前記溶媒系において、
(i)前記溶解性領域内にある溶解性パラメーターポイントを有し、前記ジアセチレン化合物の前記溶解性に関する情報を提供する前記液体のいずれかではない有望な個々の溶媒;または
(ii)前記溶解性領域内にある組合せ溶解性パラメーターポイントを有する有望な溶媒の組合せ
のいずれかを選択および使用するステップにより、
前記溶媒系を調製することを含む、項目35に記載の方法。
(項目38)
前記アセチレン化合物が、構造式
R3HNCONH−CH2−C≡C−C≡C−CH2−NHCONHR3
[式中、R3はそれぞれ独立に、エチル−、プロピル−、ブチル−、オクチル−、ドデシル−またはオクタデシル−である]を有する化合物を含み、前記溶媒系が、酢酸、ジメチルホルムアミド、ピリジン、メタノール、ギ酸、ジメチルスルホキシド、前記溶媒の2種以上の混合物、アセトンおよび水、エタノールおよび水、ギ酸および水、ジメチルホルムアミドおよび水またはジメチルスルホキシドおよび水を含む、項目33、34または35に記載の方法。
(項目39)
前記ジアセチレン化合物が、5,7−ドデカジイン−1,12−ビス−n−オクタデシルウレタンを含み、場合によって、前記溶媒系が水とエチルアルコールとの、またはアセトンとの混合物を含む、項目33、34または35に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−53166(P2013−53166A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−276502(P2012−276502)
【出願日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【分割の表示】特願2010−532251(P2010−532251)の分割
【原出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(502318881)テンプタイム コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−276502(P2012−276502)
【出願日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【分割の表示】特願2010−532251(P2010−532251)の分割
【原出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(502318881)テンプタイム コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
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