説明

結晶性ジベンゾチアゼピン誘導体およびその抗精神病薬としての使用

【解決手段】結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(I)は、好ましくは水の不在下で非芳香族溶剤、例えばエチルアセテート、イソブチルアセテート、メチルイソブチルケトンまたはメチルt−ブチルエーテルから11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを晶出されることによって製造することができる。製造された結晶性物質は製薬学的に認容性の塩、例えばフマル酸塩に変換されてもよい。
【効果】結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンは、精神病の治療のために使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアゼピン誘導体および、特に11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよび該化合物の塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(式I)
【化1】

は、有用な抗ドーパミン活性を示し、かつ副作用、例えば急性失調症、急性運動障害、偽性パーキンソン氏病および錐体外路性終末欠陥症候群を引き起こす、潜在性を実際に減少させる抗精神病薬として用いることも可能である。
【0003】
式Iの化合物は、譲渡されたヨーロッパ特許第240228号明細書に記載されている。この特許明細書には、式Iの化合物の特性およびジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11(10−H)−オンからの該化合物の合成が記載されている。この合成経路では、化合物2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル−1−ピペラジン(HEEP)の製造および精製が必要とされる。
【0004】
譲渡されたヨーロッパ特許282236号明細書では、この改良された方法が2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−1−ピペラジンを用いないために、この化合物の製造および精製を必要としない、式Iの化合物の改良された製造方法が記載されている。さらに、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル−1−ピペラジンを製造するために用いられるカルボキシエチルピペラジンを用いることも不要である。
【0005】
多くの薬剤は、製薬学的に認容性の酸の塩または塩基の塩として開発される。これは通常、生物学的有効物質自体が、大量生産工程での取り扱いに適さない物質形態を有する場合に行われる。多くの大量生産工程は、混合物で取り扱われる物質および液体であるか、あるいは流動性の高融点の固体である有効物質によって容易にされる製剤を含む。しかしながら塩は、しばしば薬剤の治療的効果が全く加えられず、ゆえに過剰に生物学的な適した酸または塩基の塩からなってもよい。薬剤が純粋な有効物質として大量生産され得る場合にはより好ましい。
【0006】
11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの報告された合成により、フマル酸塩としての11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンが提供される。それというのも、十分な純度の生成物を効率よく得るために塩を生成することが必要とされたからである。さらに、フマル酸塩を製造するために、最初にフマル酸水素塩を製造し、その後にこれをフマル酸エステルへ変換することが必要である。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第240228号明細書
【特許文献2】ヨーロッパ特許282236号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくともある程度、式Iの化合物の改良された精製方法、特に結晶の形で得られる式Iの化合物の精製方法に基づく。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンが提供される。
【0009】
結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンは、その製薬学的に認容性の塩の一つに変換されてもよく、したがってまた本発明は結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは該化合物から生成される製薬学的に認容性の塩を提供する。
【0010】
結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンは、一般に十分に純粋な形で供給される。一般に、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンは90%を上廻る純度、さらには99%またはそれを上廻る純度が好ましい。
【0011】
本発明によれば、非芳香族溶剤から11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを晶出し、その後に、製薬学的に認容性の塩が必要される場合には、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンと製薬学的に認容性のアニオンを生じる酸とを反応させることによって特徴付けられる、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは
該化合物の製薬学的に認容性の塩を製造する方法が提供される。
【0012】
本発明によれば、実質的に水の不存在下で非芳香族溶剤から11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを晶出し、その後に製薬学的に認容性の塩が必要とされる場合には、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンと製薬学的に認容性のアニオンを生じる酸とを反応させることによって特徴付けられる、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製薬学的に認容性の塩を製造する方法が提供される。
【0013】
晶出は種晶を用いて開始されてもよい。
【0014】
11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの塩は、一般に酸付加塩を含む。有利な塩は、刊行物に公知の製薬学的に認容性の塩から選択されてもよい。この塩は当業界で知られた任意の常用の製造法によって得ることができる。例えば、塩は11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンと、有利な塩、例えば塩酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、ホスホン酸、メタンスルホン酸および硫酸との反応によって得ることができる。
【0015】
好ましい塩はフマル酸塩、特にヘミフマル酸塩を含む。一般に、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンのフマル酸塩は、ビス−[11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン]フマル酸塩であることが好ましい。
【0016】
一般に、例えば溶剤が無水であることは好ましい。さらに、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンが無水であることも好ましく、これによって、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを溶剤中に溶解した際に形成される溶液は実質的に水を含まない。さらに詳しくは、晶出工程で形成される溶液は水を含んでいてはならない。
【0017】
したがって、好ましい実施態様において、水を含まない非芳香族溶剤中の11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン溶液から11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを晶出させることによって特徴付けられる、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製薬学的に認容性の塩を製造する方法が提供される。
【0018】
必要に応じて、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンは、上記に挙げられたような製薬学的に認容性の塩に変換されてもよい。
【0019】
適した溶剤の例は、例えばRおよびRがアルキル基である、式RCOのエステル;RおよびRがアルキル基である、式RORのエーテル;およびRおよびRがアルキル基である、式RCORのケトンを含む。
【0020】
、R、R、R、RおよびRの詳細な意味は、例えば(1〜6C)アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。有利には、R、R、RおよびRが(1〜4C)アルキルから選択される。
【0021】
適した溶剤の具体的な例は、例えば酢酸エチル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトンおよびメチルt−ブチルエーテルを含む。
【0022】
特に重要な溶剤は、例えばエーテルを含有する。したがっって、特に重要な溶剤はメチル−t−ブチルエーテルである。
【0023】
11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを含有する溶液の温度は、晶出の間に低下させてもよい。一般に、温度は約O℃まで低下される。有利には、温度は或る時間の間、徐々に減少させる。即ち、具体的な例では、温度は室温(約25℃)まで減少され、次に1時間を超えて、一般には2時間を超えて約O℃までさらに減少される。特に、温度は室温から0℃に約2〜4時間、好ましくは約3時間に亘って減少される。種晶が使用される場合には、これは一般に晶出混合物が周囲温度である場合に晶出混合物に添加される。一般に、温度を減少させる場合には、種晶は、温度を減少させる直前に添加される(周囲温度から)。
【0024】
11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの晶出のために使用される溶剤の量は、選択した好適な溶剤によって変動する。特に、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンが溶剤中に溶解されている場合には、溶剤の量は約120〜160mg/ml、特に130〜150mg/mlの濃度(晶出前)である。一般に、溶剤の量が約135〜145mg/mlの濃度(晶出前)であることが好ましい。
【0025】
特に本発明の実施態様において、水の不存在下でメチル−t−ブチルエーテルから11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを晶出させることによって特徴付けられる、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの精製方法が提供される。
【0026】
詳細かつ具体的な好ましい条件は、前記に挙げられたものを含む。
【0027】
有利には、前記に挙げられたように結晶生成物は製薬学的に認容性の塩に変換されてもよい。
【0028】
本発明の他の実施態様において、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンとフマル酸を反応させることによって特徴付けられる、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンのフマル酸塩を製造する方法が提供される。
【0029】
一般に、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの結晶は、本明細書中の前記の定義と同様に製造される。
【0030】
一般に、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンは、溶剤、例えばアルコール中でフマル酸と反応される。適したアルコールの例は、メタノールおよびエタノールを含む。特に適した溶剤は、有利には工業用変性アルコール(IMS)の形であってもよいエタノールである。
【0031】
また、本発明は、芳香族溶剤中の11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液から、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたはその製薬学的に認容性の塩を製造する方法を提供し、この場合、この方法は、
a)芳香族溶剤中の11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液に水および酸を添加し;
b)水相と有機相を分離し;
c)非芳香族溶剤および塩基を水相に添加し;
d)水相と非芳香族溶剤相を分離し;
e)非芳香族相を乾燥させ;
f)非芳香族溶剤から11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを晶出させ;その後に、製薬学的に認容性の塩が望まれる場合には、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンと製薬学的に認容性のアニオンを生じる酸を反応させることによって特徴付けられる。
【0032】
特に好ましい具体的な意味は、前記に挙げられた意味を含む。
【0033】
芳香族溶剤は、好ましくはトルエンである。
【0034】
工程(a)で添加された酸の量/濃度が水相を酸性にする程度のものであり、かつ工程(c)で添加された塩基の量/濃度が水相を塩基性にする程度のものであることは、評価される。
【0035】
本発明の化合物は、中枢神経系抑制剤であり、かつ例えばマウス、猫、ラット、犬ならびに他の哺乳類での躁状態の軽減のため、さらにはヒトでの精神状態の管理のための精神安定剤として、クロールプロマジンと同様に使用されてもよい。この目的のために、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは該化合物の製薬学的に認容性の酸付加塩は、経口的または非経口的に、有利な剤形、例えば錠剤、ピル剤、カプセル剤、注射液または類似物で投与されてもよい。哺乳類における本発明による化合物の体重1kg当たりの投与量mgは、動物の大きさおよび特に体重に対する脳の重さの割合によって変動する。一般に、小型の動物、例えば犬への高い投与量mg/kgは、成人におけるより低い投与量mg/kgで同様の効果を得る。式Iの化合物の効果的な最小投与量は、哺乳動物に関して1日当たり体重1kgにつき少なくとも約1.0mg/kgであり、小型の哺乳類、例えば犬の最大投与量は1日当たり約200mg/kgである。ヒトについては1日当たり約1.0〜40mg/kgの投与量が効果的であり、例えば、50kgの体重の平均的なヒトについては、1日当たり約50〜2000mgである。投薬は1日に1回または分割投薬、例えば1日に2〜4回の投薬であってよい。通常、投与量は、常用のビヒクル、付形剤、結合剤、保存剤、安定剤、フレーバーまたは米国特許第3755340号明細書に記載されているように、薬剤試験で認定されることが必要とされるようなものの単位投与量当たり約25〜500mgを配合することによって、経口的または非経口的な剤形で処方されてもよい。式Iの化合物(または塩)は、上記に記載されたような医薬品組成物中に使用されてもよいか、またはそれに含まれていてもよいか、あるいは一つ以上の公知の薬剤と共に投与されてもよい。
【0036】
また、本発明によれば結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは製薬学的に認容性の該化合物の塩を、製薬学的に認容性の希釈剤または担持剤と一緒に含有する医薬品組成物も提供される。
【0037】
特に、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよび製薬学的に認容性の希釈剤または担持剤を含有する医薬品組成物が提供される。
【0038】
また、本発明は、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは該化合物から製造される製薬学的に許容可能な塩を使用する、神経精神病学的疾病の治療方法(特に精神病、殊に精神分裂病の治療方法)を提供する。
【0039】
特に本発明は、温血動物、例えばヒトへの結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの有効量を投与することを特徴とする、神経精神病学的疾病の治療方法を提供する。特に本発明は、精神病、より詳しくは精神分裂病の治療方法を提供する。
【0040】
また本発明は、神経精神病学的疾病および特に精神病、例えば精神分裂病を治療するための医薬品の製造における、結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの使用をも提供する。
【0041】
前記に記載したように、本発明は11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよび該化合物の塩を製造する公知の方法を凌駕する利点を提供する。
【0042】
最初に、本発明は結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを提供する。特に、本発明は高純度の結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを製造するための方法を提供する。一般に結晶物質は、高純度および良品質の結晶性固体と一致した高い融点を有するものであった。
【0043】
以前には、純粋な11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンは、精製された塩のフマル酸塩を準備することによって得られた。これは、水素化フマル酸塩を製造し、引き続きその後にフマル酸塩へ変換することが必要とされた。この変換は、水素化フマル酸塩とフマル酸塩の混合物の形成よりも、むしろ望ましいフマル酸塩の形成を確実にするために、相対的に希薄な反応混合物の使用を必要とする比較的に低生産量の方法である。
【0044】
正確な塩の形を得ることに関連した困難さが最小限になるので、フマル酸塩は、精製した結晶性11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの利用によって、比較的に高生産量の方法で製造されてもよい。
【0045】
また、本発明は、プラントおよび/または材料、例えば溶剤をより効率よく使用する、以前に報告された方法よりも、より生産的な手段での、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよび該化合物の塩の製造方法を提供する。
【0046】
ところで、本発明は、別記しない限りは以下の制限のない実施例によって例証される:
(i)温度は摂氏度(℃)で記載される:
操作は室温または周囲温度、すなわち18〜25℃の範囲内の温度で実施された。
(ii)溶剤の蒸発はロータリーエバポレーターを用いて、減圧下(600〜4000パスカル;4.5〜30mmHg)で60℃までの浴温で実施され;
(iii)一般に、反応の経過は、TLCおよび/またはHPLCによって追跡され、かつ反応時間は説明のためだけに記載され;
(iv)融点は正確なものでなく、(dec)は分解を示し;記載された融点は記載されたように製造された物質のために得られるものである:同質多形は、幾つかの製造において異なる融点を有する物質を単離してもよい。
(v)すべての最終生成物は、TLCおよび/またはHPLCによって本質的に純粋であり、かつ申し分のない核磁気共鳴(NMR)スペクトルおよび微量分析データを有し;
(vi)収率は説明のためだけにのみ記載され;
(vii)減圧はパスカル(Pa)での絶対圧として記載され;他の圧力はバールでのゲージ圧として記載され;
(viii)化学記号は通常の意味を有し;また以下の略符号が使用された:v(質量)、w(重量)、mp(融点)、L(リットル)、ml(ミリリットル)、g(グラム)、mmol(ミリモル)、mg(ミリグラム)、min(分)、h(時間)、IMS(工業用変性アルコール);ならびに
11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンは、譲渡されたヨーロッパ特許第282236号明細書の記載と同様に製造された。また、この化合物は譲渡されたヨーロッパ特許第240228号明細書の記載と同様に製造されてもよい。
【実施例】
【0047】
例1
(a)水(106ml)を、トルエンの11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(59g)の撹拌された混合物に、40℃で添加した。濃厚な塩酸(21.4ml)を混合物に添加し、かつこの混合物を40℃で15分に亘り強力に撹拌した。相は分離された。
【0048】
メチルt−ブチルエーテル(256ml)を水相に添加した。水酸化ナトリウム水溶液(15.4ml、濃度1.5g/cm)を添加し、この混合物を45℃までに加熱し、15分間に亘り強力に撹拌した。混合物を静置させ、相を分離した。有機相を45℃で、水(2×25ml)で洗浄し、次いでディーンアンドスターク分離器(Dean and Stark separator)を用いて55℃で蒸留することによって乾燥させた。乾燥した混合物を25℃まで冷却し、種晶をまき、かつ一晩に亘って撹拌し、固体を生じた。混合物を0℃に冷却し、4時間に亘って0℃を保った。固体を濾過によって捕集し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄し、真空炉中で50℃で一晩に亘って乾燥させた。
【0049】
こうして、m.p.82〜84℃の白色の結晶性固体として、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(46.7g)を得た。
(b)IMS(35ml)を遊離塩基(30.0g)に添加し、撹拌した混合物を100mlのフラスコ中で60℃に加熱し、溶液を生じた。この溶液を、焼結を経てから500mlの反応容器に移した。100mlのフラスコを温かい(60℃)IMS(10ml)で洗浄し、この洗浄液を反応容器に添加した。反応容器中の混合物を撹拌しながら60℃に昇温させた。
【0050】
フマル酸(4.65g)およびIMS(60ml)を100mlのフラスコに添加した。混合物を撹拌しながら60℃まで加熱し、材料の固体塊をわずかに含有する溶液を生じた。混合物を濾過し塊を除去するために、混合物を焼結を経てから反応容器に添加した。反応容器中で生じる混合物を撹拌し、結晶性物質を生じた。
【0051】
IMS(10ml)を100mlのフラスコに添加し、60℃に昇温させ、かつ反応容器に移した。反応容器中の厚手の結晶性塊を還流下に加熱し、次いで周囲温度まで冷却させ、固体を生じた。撹拌した混合物を0℃まで冷却し、混合物の温度をこの温度で1時間に亘って維持した。固体を濾過によって捕集し、冷たい(0〜5℃)IMS(30ml)で洗浄した。このIMSは、反応容器を洗い流すために使用された。この固体を真空炉中で55℃で、一晩に亘って乾燥させ、白色の結晶性の固体(32.7g、収率94.4%)としてビス−[11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン]フマル酸塩を生じた。
【0052】
例2
例1に記載された方法と類似の方法を用いて、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを、メチル−t−ブチルエーテルの代わりに下記に列記された溶剤から晶出させた。
溶剤 濃度(%) 収率(%) 融点(℃)
エチルアセテート[1] 100 39.7 −[2]
イソブチルアセテート 97.5 70.1 83−86
メチルイソブチルケトン 99.4 69.7 83−86
メチルイソブチルケトン[3] 99.3 67.8 83−86
メチルt−ブチルエーテル 100 86 83−86
メチルt−ブチルエーテル 99 81 83−86
[1]先に分離された11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンからの晶出
[2]良質の固体
[3]充填率80%
濃度は、純度の1つの尺度である。濃度%は、分離された材料の質量中の、望ましい成分、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの%である。
【0053】
例3
以下は、化合物、例えば前記実施例のいずれか一つに例証された11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよび該化合物の塩(以下、化合物Xと呼称する)を含有する、ヒトへの治療的または予防的使用のための代表的な医薬品の剤形を例証する。
(a)錠剤
mg/錠剤
化合物X 50.0
マンニトール(Mannitol)、USP 223.75
クロスカルメロース(Croscarmellose)ナトリウム 6.0
トウモロコシデンプン(maize starch) 15.0
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC) 2.25
ステアリン酸マグネシウム 3.0
(b)カプセル
化合物X 10.0
マンニトール、USP 488.5
クロスカルメロースナトリウム 15.0
ステアリン酸マグネシウム 1.5
上記処方は、医薬品業界でよく知られた常法によって得ることができる。錠剤は常用の手段によって、例えばセルロースアセテートフタレートの剤皮を提供するために腸溶被覆されていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水および酸を、芳香族溶剤中の11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン溶液に添加し;
b)水相と有機相に分離し;
c)非芳香族溶剤および塩基を水相に添加し;
d)水相と非芳香族溶剤相に分離し;
e)非芳香族溶剤相を乾燥させ;
f)非芳香族溶剤から晶出させることによって得られ、かつ90%を上廻る純度を有する、結晶11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンである化合物。
【請求項2】
a)水および酸を、芳香族溶剤中の11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン溶液に添加し;
b)水相と有機相に分離し;
c)非芳香族溶剤および塩基を水相に添加し;
d)水相と非芳香族溶剤相に分離し;
e)非芳香族溶剤相を乾燥させ;
f)非芳香族溶剤から晶出させることによって得られ、かつ99%を上廻る純度を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
結晶11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは該化合物の製薬学的に認容性の塩を製造する方法において、
非芳香族溶剤から11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを晶出させ;
その後に、製薬学的に認容性の塩が必要とされる場合には、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンと製薬学的に認容性のアニオンを生じる酸とを反応させることを特徴とする、結晶11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは該化合物の製薬学的に認容性の塩を製造する方法。
【請求項4】
結晶11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは該化合物の製薬学的に認容性の塩を製造する方法において、
非芳香族溶剤中の11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの溶液から11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを晶出させ、この場合、この溶液は実質的に水を含まず;その後に、製薬学的に認容性の塩が必要とされる場合には、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンと製薬学的に認容性のアニオンを生じる酸とを反応させることを特徴とする、結晶11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは製薬学的に認容性の該化合物の塩を製造する方法。
【請求項5】
非芳香族溶剤を、RおよびRがアルキル基である式RCOのエステル;RおよびRがアルキル基である式RORのエーテル;かつRおよびRがアルキル基である式RCORのケトンから選択する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
、R、RおよびRを(1〜4C)アルキルから選択する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
非芳香族溶剤をエチルアセテート、イソブチルアセテート、メチルイソブチルケトンおよびメチルt−ブチルエーテルから選択する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
溶剤をメチルt−ブチルエーテルから選択する、請求項3から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを精製する方法において、
水の不存在下でメチル−t−ブチルエーテルから11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを晶出させること特徴とする、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンの精製方法。
【請求項10】
11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよび非芳香族溶剤を加熱し、溶液を生じさせ、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを含有する溶液の温度を周囲温度まで減少させ、その後さらに1時間を超えて約0℃まで減少させる、請求項3から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
温度を周囲温度から0℃まで、2〜4時間に亘って減少させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
温度を周囲温度から0℃まで、3時間に亘って減少させる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンが非芳香族溶剤中に溶解されている場合には、非芳香族溶剤の量により、120〜160mg/mlの濃度(晶出前)が生じる、請求項3から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
非芳香族溶剤の量が、135〜145mg/mlの濃度(晶出前)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
結晶11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンとフマル酸とを反応させ、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンフマル酸塩を生じさせる、請求項3から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
芳香族溶剤中の11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン溶液からの結晶11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン、または該化合物の製薬学的に認容性の塩を製造する方法において、
a)水および酸を、芳香族溶剤中の11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン溶液に添加し;
b)水相と有機相に分離し;
c)非芳香族溶剤および塩基を水相に添加し;
d)水相と非芳香族溶剤相に分離し;
e)非芳香族溶剤相を乾燥させ;
f)非芳香族溶剤から11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンを晶出させ;その後に製薬学的に認容性の塩が望まれる場合には、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンと製薬学的に認容性のアニオンを生じる酸とを反応させることを特徴とする、結晶11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンまたは該化合物の製薬学的に認容性の塩を製造する方法。
【請求項17】
芳香族溶剤がトルエンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(f)を請求項3から16までのいずれか1項の記載と同様に実施する、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
結晶11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンおよび製薬学的に認容性の希釈剤または担持剤を含有する、医薬品組成物。

【公開番号】特開2009−102345(P2009−102345A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313248(P2008−313248)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【分割の表示】特願2000−505140(P2000−505140)の分割
【原出願日】平成10年7月28日(1998.7.28)
【出願人】(300022113)アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】15 Stanhope Gate, London W1K 1LN, United Kingdom
【Fターム(参考)】