説明

結晶方位精度の高いウエハの製造方法

【課題】
異方性ウエットエッチングしてエッチング難易面を形成することにより結晶方位精度の高いウエハの製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明によるウエハの製造方法は、オリフラを機械的にカットしたインゴット又はスライスしたウエハのオリフラ端面のみをウエハの材質及び使用したいオリフラ方位に適した異方性エッチング液でウエットエッチングを行うことにより、オリフラの結晶方位精度を高くすることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン等の単結晶基板(以下ウエハと記載する)のの製造方法に関し、そして特にかかるウエハに異方性エッチングにより微細なパターンを形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン等のウエハに微細なパターン加工を行う際のウエハの基準としてはオリフラ(orientation flat)が一般に用いられている。しかし、従来オリフラは結晶方位に合わせて機械的に切断、研磨により成形されるが、凹凸や機械精度により、一般的に±2°程度のズレを生じる。このズレによりパターンと結晶方位の合せ精度が低下し、異方性エッチングの仕上がり形状がばらつくことになる。
【0003】
そこで、精度良くパターンと結晶方位を合わせる方法として、異方性エッチングによりエッチピットを形成し、このエッチピットを用いてアライメントを行う方法がある。すなわち、シリコンウエハに、オリフラのカットラインとほぼ平行なライン上に互いに離間させて、それぞれ互いに平行なピット辺をもつ二つのエッチピットを形成し、ピット辺の間隔より狭い間隔の二つの互いに平行なパターン辺をそれぞれ備えたホトマスクパターンを離間して設けたホトマスクを、ピット辺とパターン辺とが平行になるように位置合わせする方法が知られている(特許文献1参照特開平7−283117)。
【0004】
しかしながら、このような従来公知の方法では、エッチピットの作製にはリソグラフィー法などを用いる必要があり、工程が長くなる。また、エッチピットを頼りにパターンのアライメントを行うにはマークを検出しながらのアライメント機構を持った装置が必要になるなどの問題点がある。
【0005】
また、異方性の高いエッチングを行う技術として、半導体基板として、結晶軸が<110>方向であるシリコン(110)基板を用い、このシリコン基板に、(110)面に垂直に切り立った面となるようなウエットエッチングを施したものが知られている。(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平7−283117
【特許文献2】特開2001−332462
【0007】
ところで、基板において機械的に切断されたオリフラの精度は上述のように±2°程度であるため、マスクと結晶方位の合わせ誤差も同程度と考えられ、従って、機械的に切断されたオリフラが傾いていて、それを基準にマスク合わせした場合には、異方性ウエットエッチングにより基板を加工すると、マスクの開口と実際にエッチングされる形状にずれが生じる。これは、パターンの仕上がり寸法の誤差に大きく影響することになる。また逆にマスクの多少のずれに関係なく異方性ウエットエッチングをするとエッチング難易面ができることになる。
【0008】
この種の技術は特に、例えば光通信に用いられる多芯フェルールの製作に応用されるウエハのマイクロマシニングにおいて重要であり、マスク合わせに誤差があるとエッチピットの寸法とマスクの開口との間にずれが生じることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特にウエハのマイクロマシニングの分野においてシリコンウエハにエッチングなどの加工をする際に異方性ウエットエッチングしてエッチング難易面を形成することにより結晶方位精度の高いウエハの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明によるウエハの製造方法は、オリフラを機械的にカットしたインゴット又はスライスしたウエハのオリフラ端面のみをウエハの材質及び使用したいオリフラ方位に適した異方性エッチング液でウエットエッチングを行うことにより、オリフラの結晶方位精度を高くすることを特徴としている。
【0011】
また本発明においては、異方性ウエットエッチングは、オリフラを機械的にカットしたインゴット又はスライスしたウエハのオリフラをEDP、KOH、TMAH等のエッチング液でウエットエッチングすることからなり得る。
【0012】
また本発明においては、オリフラの他に酸化膜又はレジスト等の保護膜が形成され得る。代わりに、異方性ウエットエッチングは、オリフラ1aの断面のみをエッチング液に浸すことにより行われ得る
【0013】
本発明による方法においては、オリフラのエッジを検出してパターンとのアライメント可能な機構を用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による方法においては、ウエハにおけるオリフラの加工に異方性ウエットエッチングを行うので、従来のウエハ製造工程に異方性エッチングを加えるだけの簡便な方法で高精度なオリフラ方位をもつウエハを得ることができる。また、エッチピット等の結晶方位が分かるアライメントマークを作製する工程を必要としないため、工程を簡略化することができる。
【0015】
また、本発明による方法においては、特殊な機構を用いずに従来から用いられてきたオリフラ基準の単純な位置合せ機構で高精度なパターンと結晶方位の合わせが可能になる。すなわち、従来の装置に改造なしで合せ精度を向上させることが可能となる。
【0016】
オリフラのエッジを検出してパターンとのアライメント可能な機構を用いた場合にはさらに高精度なマスク合わせが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面及び実施例を参照して本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1、図2及び図3には、本発明の一実施例を示し、110シリコンウエハでオリフラ方位111を得る場合を例示し、オリフラ1aを111方向に機械的にカットしたインゴット2(図2)又はスライスしたウエハ3(図3)のオリフラ1aをEDP、KOH、TMAH等のエッチング液を用いてウエットエッチングされる。この場合、オリフラ1a以外の部分には酸化膜またはレジスト等の保護膜4が設けられる。代わりに、オリフラ1aの断面のみをエッチング液に浸すなどの方法を用いてもよい。
【0019】
このようにして、インゴット2又はウエハ3のオリフラ1aの端面は異方性エッチングされ、図1に点線1bで示すエッチング難易面である111面が出てくる。これにより自動的に精度の高いオリフラ方位111を得ることができる。
【実施例2】
【0020】
図4及び図5には、本発明の別の実施例を示し、100シリコンウエハ5でオリフラ方位110を得る場合を例示しており、オリフラ1aを110方向に機械的にカットしたウエハ5のオリフラをEDP、KOH、TMAH等のエッチング液を用いてウエットエッチングする。この際もオリフラ以外の部分は実施例1と同様に酸化膜またはレジスト等の保護膜6で保護する。このようにしてオリフラ端面1aが異方性エッチングされることで、図4に点線1bで示すようにオリフラに対して55°斜めにエッチング難易面の111面が出てくる。この時オリフラのエッジは110方向になり、自動的に精度の高いオリフラ方位110を得ることができる。
【0021】
上記実施例の場合に図6の(a)に示すように、マスクとエッチングされ難い結晶面7の傾きにより段差ができても、エッチングされ易い面8がエッチングされることにより最終的には図6の(b)に示すように一枚のエッチングされ難い結晶面7に揃うことになる。このようにオリフラ端面が異方性エッチングされることによって自動的にオリフラが希望の結晶方位と完全に一致することになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示す概略平面図。
【図2】図1の実施例に用いるインゴットを示す概略斜視図。
【図3】図1の実施例に用いるウエハを示す概略斜視図。
【図4】本発明の別の実施例を示す概略側面図。
【図5】本発明の別の実施例を示す概略平面図。
【図6】本発明の方法におけるオリフラ方位がどのようにして結晶方位と自動的に合致するかを示す概略図。
【符号の説明】
【0023】
1a:機械的にカットしたオリフラ
1b:ウエットエッチング後のオリフラ
2:インゴット
3:ウエハ
4:保護膜
5:ウエハ
6:保護膜
7:エッチングされ難い結晶面
8:エッチングされ易い面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリフラを機械的にカットしたインゴット又はスライスしたウエハのオリフラ端面のみをウエハの材質及び使用したいオリフラ方位に適した異方性エッチング液でウエットエッチングを行うことにより、オリフラの結晶方位精度を高くすることを特徴とするウエハの製造方法。
【請求項2】
異方性ウエットエッチングが、オリフラを機械的にカットしたインゴット又はスライスしたウエハのオリフラをEDP、KOH、TMAH等のエッチング液でウエットエッチングすることからなることを特徴とする請求項1に記載のウエハの製造方法。
【請求項3】
異方性ウエットエッチングが、オリフラ1aの断面のみをエッチング液に浸すことにより行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハの製造方法。
【請求項4】
オリフラの他に酸化膜又はレジスト等の保護膜が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハの製造方法。
【請求項5】
オリフラのエッジを検出してパターンとのアライメント可能な機構を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のウエハの製造方法。


【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−227772(P2007−227772A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48647(P2006−48647)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000101710)アルバック成膜株式会社 (39)
【Fターム(参考)】