説明

結晶質で完全に溶解するリチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩(LiBOB)

本発明の対象は、結晶性で完全に溶解性のリチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩(LiBOB)、その製造方法およびリチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、結晶性で完全に溶解性のリチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩(LiBOB)、その製造方法およびリチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩の使用である。
【0002】
リチウム電池は、その他のタイプの電池と比較して高いエネルギー密度および電力密度に基づいて、エネルギー貯蔵体として特に、携帯用電子機器(いわゆるラップトップ、携帯電話)中での適用のために使用される。多くはリチウム金属アノードを有する、再充電できない一次電池と、二次電池(リチウム蓄電池)、つまり再充電可能な電池とが区別されている。
【0003】
いずれのタイプの電池も、無水の液状もしくはゲル状のイオン伝導性の電解質を含有しており、該電解質中には導電性の塩、たとえばLiPF6、LiBF4、リチウムイミド、リチウムメチドまたはホウ酸リチウムの塩、たとえばリチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩(LiBOB、Li[B(C242]に相応)が、溶解した形で存在している。
【0004】
ホウ酸リチウムの塩、たとえばLiBOBは、リチウム二次電池中で、リチウム元素のフッ化物、たとえばLiPF6またはLiBF4と比較して、サイクル安定性および安全性の著しい改善をもたらす(Cox、S.S.Zhang、U.Lee、J.L.Allen、T.R.Jow、J. Power Sources 46、2005年、第79〜85頁)。このことは、リチウム電池の炭素アノード上での保護層の形成の形の変更に起因する。つまり、ホウ酸塩電解質によって、薄くて極めて安定したLi+伝導層がこのアノード上に形成され、この層は、高温でも安定しており、従って帯電したアノードとたとえば電解質との間での危険な分解反応が防止される(J.-C.Panitz、U.Wietelmann、M.Wachtler、S.Stroebele、M.Wohlfahrt-Mehrens、J.Power Source、153、2006年、第396〜401頁、Broschuere der Chemetall 2005)。保護層におけるホウ酸塩による改善によって、適用者にとっては電解質調製物の新たな可能性が生じる。従ってたとえば取り扱いの難しいエチレンカーボネート(1,3−ジオキソラン−2−オン)を断念することができ、かつその代わりにプロピレンカーボネート(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)を使用することができる(K.Xu、S.Zhang、R.Jow、J.Power Source 143、2005年、第197〜202頁)。さらに、1,3−ジオキソラン−2−オン化合物を完全に断念し、その代わりにγ−ラクトン、たとえばγ−ブチロラクトンを使用することも可能である(US−A−2007/0065727)。
【0005】
DE−C−19829030は、LiBOBを製造するための一連の方法を開示している:
1.水素化ホウ素リチウムと無水蓚酸との反応:
【化1】

【0006】
欠点は、高いLiBOB価格以外に、副反応が生じることであり、この反応の際に蓚酸もしくは蓚酸イオンは、水素化物によって攻撃されて還元される。
2.水溶液中での水酸化リチウムまたは炭酸リチウムとホウ酸または酸化ホウ素および蓚酸との反応およびその後の生成物の乾燥、たとえば:
【化2】

【0007】
この反応実施の変法は、3つの原料成分のうちの2つを、先に反応させ、次いで初めてLiBOB合成を行うことであり、つまりたとえば:
【化3】

【0008】
その他の適切な原料はLiHC24またはLiBO2である。
3.有機溶剤、たとえばトルエン中での2.に記載した原料の反応および共沸蒸留による、形成された水の除去。
4.溶剤、たとえばアルコール中でのリチウムアルコキシドおよびホウ酸エステルと無水蓚酸との反応:
【化4】

【0009】
最後にDE−C−1018608からは、(2)に記載されている反応は、不均質相中で、水またはその他の溶剤を添加しないで実施されることが公知である。
【0010】
前記の方法全てにおいて共通していることは、LiBOBが十分に純粋な形で生じないことである。LiBOBは種々の量の水、酸性成分ならびに溶解しない副生成物、たとえば蓚酸リチウム(Li224)または炭酸リチウム(Li2CO3)によって汚染されている。従ってLiBOBの粗製塩が非プロトン性溶剤、たとえばエステルまたはニトリル中で溶解する際に、著しく濁った溶液が生じる。不溶性の割合は一般に0.5〜2質量%であり、均質化された溶液は、100NTU(NTU=比濁計濁度単位)を越える濁度、一般に200〜1000NTUの濁度を有している。
【0011】
この理由から、LiBOB粗製塩は、精製工程に供する必要がある。これは従来技術によれば、アセトニトリル(AN)からの再結晶化により生じる。このためにまず、アセトニトリル中の飽和の清澄なLiBOB溶液を製造し、次いでトルエンを添加する。トルエンは該溶液からLiBOBを置換して、ANを含むLiBOB・AN錯体からなる針状結晶が溶媒和化合物として形成される。引き続きこの錯体をたとえば80℃で数日間真空乾燥させる(W.Xu、C.A.Angell、Electrochem.Solid−State Lett.4(2001)、E1〜E4)。この乾燥手順において、結合されていたANが除去され、その際に結晶形は破壊される。こうして形成された、ほぼ溶媒和化合物不含のLiBOBは、極めて微細な、取り扱いの難しい形で得られる。同様にしてLiBOBはその他の多くの溶剤、たとえばテトラヒドロフラン(THF)または酢酸エチルから、溶媒和化合物の形で晶出する。前記の溶剤は全て、電池において慣用ではないか、または望ましくないので、これらの溶剤を使用前に完全に除去しなくてはならない。その際にANの場合と同様に、微細な、吸湿性の粉末が生じ、これは取り扱いが極めて困難である。
【0012】
さらに、最後の溶剤残留分を完全に除去することは困難である。酢酸エチルからは、比較的低い濃度であってもリチウムイオン電池の高温安定性を妨げうることが公知である(T.R.Jow、K.Xu、M.S.Ding、S.S.Zhang、J.L.Allen、K.Amine、J.Electrochem.Soc.151、A1702−A1706(2004))。
【0013】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することである。
【0014】
本発明の特別の課題は、電池にとって異物である溶剤を含有していない、特にアセトニトリルを含有していない、完全に溶解性で、かつ同時にダストの少ないLiBOB結晶を提供することである。完全に溶解性であるとは本発明の意味ではこの場合、アセトニトリル中約15%のLiBOB溶液の濁度が最大で100NTU、有利には最大で50NTUであることを意味する。ダストが少ないとは本発明の意味ではこの場合、ダスト割合が10質量%より少ないことを意味する。本発明の意味でのダストとは、その最大直径が10μmより小さい粒子を意味する。
【0015】
本発明によれば、前記課題は意外にも、請求項1に記載の特徴を有するLiBOBによって解決される。有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【0016】
前記課題の本発明による解決方法は意外にも、粗結晶性の、実質的に直方体の形であって、一次結晶の最大直径の平均値が、50μm〜5mm、有利には200μm〜2mm、特に有利には500μm〜1mmであるLiBOBを提供することにある。有利にはLiBOBの20質量%未満が、この平均値の半分の長さを下回る。一次結晶の平均体積は、0.01〜100mm3、有利には0.1〜50mm3である。
【0017】
ダスト割合は本発明によれば10質量%未満、有利には5質量%未満、特に有利には2質量%未満である。
【0018】
本発明により製造されるLiBOBは、非プロトン性溶剤中で、たとえばカーボネート溶剤、エステルまたはアセトニトリル中でほぼ残留物を残さずに溶解する。不溶性の残留物は最大で0.1質量%、有利には最大で0.01質量%である。溶液は清澄であるか、またはいずれの場合でも僅かに濁っている。アセトニトリル中約15%の本発明によるLiBOBの溶液の濁度は、最大で100NTU、有利には最大で50NTUである。
【0019】
本発明によれば、LiBOBは、精製のため、特にLiBOB粗製塩を再結晶化するために、本質的な成分として環式の5員環エステルを含有するか、または該エステルからなる溶剤を使用する方法により得られる。この場合、本発明による環式5員環エステルは、1,3−ジオキソラン−2−オン化合物、または複数の1,3−ジオキソラン−2−オン化合物またはγ−ラクトンまたは複数のγ−ラクトンまたは前記の化合物少なくとも2種類からなる混合物である。
【0020】
本発明によるLiBOBは、溶媒和化合物として本発明により選択される5員環エステルとのLiBOB・(n5員環エステル)錯体(ここでnはLiBOBに対する5員環エステルのモル数を表す(LiBOBのモル数=1))として得られる。モル数nは、方法の実施に依存して、0.001〜10、有利には0.01〜5、特に有利には0.1〜3、とりわけ有利には0.2〜2当量であってよい。本発明の特別な実施態様では、n=0、つまりLiBOBは溶媒和化合物を含有していない。
【0021】
本発明によれば有利にはLiBOBは、50質量%より小さい残留溶剤割合を有している。
【0022】
有利であるのは、エチレンカーボネート(EC、1,3−ジオキソラン−2−オン)、プロピレンカーボネート(PC、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)またはブチレンカーボネート(BC、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)から選択される1,3−ジオキソラン−2−オン化合物である。γ−ラクトンは有利にはγ−ブチルラクトンまたはγ−バレロラクトンから選択される。
【0023】
本発明によるLiBOBが溶媒和化合物を含有している場合には、この溶媒和化合物は本発明により選択される5員環エステル自体のみからなる。本発明によればLiBOBは、本発明により選択される5員環エステル以外の溶媒和化合物を含有しておらず、特にアセトニトリルを含有していない(AN不含)。
【0024】
本発明により選択される溶剤はさらに、もう1種の、または複数の、LiBOBと溶媒和化合物を形成しない別の非プロトン性溶剤を含有していてもよく、この溶剤はたとえば炭化水素、エーテル、エステルまたは非環式カーボネートから選択される。
【0025】
本発明によれば有利には、本発明により選択される溶剤は、市販品において通常の純度と、0.5質量%未満の含水率を有する1,3−ジオキソラン−2−オン化合物またはγ−ラクトンからなる。
【0026】
本発明による方法は、複数の変法で実施することができる。まず本発明により選択される溶剤中でLiBOB溶液を製造する。このために、自体公知の方法で製造されたLiBOB粗製塩を、空気と湿分との排除下で、最大の飽和濃度に相当する量で本発明により選択される溶剤中に導入する。引き続きLiBOBを溶液から結晶化させるべき場合には、本発明によればほぼ飽和の溶液(つまりLiBOB溶液は、最大のLiBOB濃度の少なくとも90%を有する)を製造することが有利である。ECおよびPCの場合には、これはLiBOB約16〜20質量%である。溶解プロセスは、従来技術による適切な均質化措置により、たとえば攪拌または振とう、および場合により加熱、たとえば30〜100℃の温度に加熱することによって支援することができる。
【0027】
あるいは本発明により選択される溶剤中のLiBOB粗製塩の、これよりも濃度の低い溶液、たとえば5〜15質量%の濃度を有する溶液を添加することもできる。これは、水の含有率が500ppm未満、有利には200ppm未満であるべき、ほぼ無水のLiBOB溶液が得たい場合には有利である。
【0028】
本発明により選択される溶剤を用いて製造されるLiBOB粗製溶液は一般に濁っている。この原因は、従来技術により製造されるLiBOB粗製塩の使用である。この濁りはリチウム電池の適用にとって認容することができないので、該溶液から従来技術により、たとえば濾過、デカンテーションおよび/または遠心分離によって不溶性の成分を除去しなくてはならない。有利であるのは、膜濾過法であり、この場合に特に有利には、0.5μm以下、有利には0.2μm以下の溶剤抵抗性の膜を使用する。
【0029】
固−液分離により得られる、完全に清澄な、および場合により1もしくは複数の別の前処理工程によって脱酸処理した、および/または乾燥させた、本発明により選択された溶剤中のLiBOBの溶液を本発明によれば、3つの変法によって、ダストを含まない結晶へと後処理することができる。このために本発明により有利には、ほぼ飽和のLiBOB溶液を使用する。
【0030】
A)蒸発濃縮による結晶化:LiBOB溶液を、減圧下(有利には0.01〜100ミリバール)および最大200℃の塔底温度で蒸発濃縮させ、その際、飽和濃度を超えた時に、意外にも溶媒和化合物不含のLiBOBが結晶の形で析出する。固体のLiBOB溶媒和錯体の形成を回避するために、結晶化の間の温度は、溶媒和化合物の分解温度よりも高くなくてはならない。80℃以上の塔底温度で意外にも、溶媒和化合物不含のLiBOBのみが結晶化された。
【0031】
B)置換結晶化:LiBOB溶液に、LiBOBが錯体として、たとえば溶媒和化合物としての本発明による溶剤中に含有されている5員環エステルの0.01〜5、有利には0.1〜3、特に有利には0.2〜2当量を有する錯体として析出するまで、LiBOBを溶解しない有機溶剤または溶剤混合物を添加し、かつ該混合物を均質化、たとえば攪拌または振とうする。有機置換溶剤として、有利には芳香族炭化水素、たとえばトルエン、エチルベンゼンまたはキシレンまたは飽和炭化水素、たとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンまたは完全に、もしくは部分的にフッ素化された炭化水素またはエーテル、たとえばジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−アミルエーテルまたはメチル−t−ブチルエーテルまたはこれらの溶剤からなる混合物を使用する。装入されたLiBOB溶液の体積に対して、置換溶剤を30〜300体積%添加する。この添加は0〜100℃で、有利には0〜60℃で行う。特に有利な実施態様では、置換溶剤を複数の分量に分けて添加することができる。そのつどの添加の後で、形成される2つの液相の間に平衡状態が調整されるのを待って、上側の、LiBOBが少ない相を、たとえばデカンテーションによって除去する。このようにして、溶液相からのLiBOBのほぼ完全な置換を達成することができる。この場合、結晶としてLiBOB・(n5員環エステル)錯体の特に高い収率が達成される。
【0032】
C)冷却結晶化:LiBOB溶液を低い温度で、たとえば0℃で貯蔵する。生じる結晶は、LiBOB・5員環エステル錯体であり、これは母液から、たとえば濾過によって分離することができる。40〜150℃で飽和のLiBOB溶液を製造し、かつこれを−20℃〜+20℃の温度に冷却することが有利である。結晶化を完全に行うために、該溶液を少なくとも10分間、有利には少なくとも2時間、特に有利には2〜10時間、低い温度で貯蔵し、次いでLiBOB・(n5員環エステル)錯体を結晶として単離する。
【0033】
本発明によれば個々の結晶化技術を組み合わせることも可能である。たとえば置換溶剤を高温で、たとえば50℃で添加し、混合後にたとえば0℃に冷却することができる。置換結晶化B)の変法は、LiBOB溶液を装入し、置換溶剤を均質化することなく添加する、つまりLiBOB溶液を比重の小さい溶剤で覆うことである。混合は拡散によって行われるにすぎず、ひいては極めて緩慢に行われるのみであるため、相応して大きな、欠陥箇所の少ないLiBOB・(n5員環エステル)錯体が結晶として形成され、該結晶は相応して特に高い純度を有している。
【0034】
本発明によれば有利には蒸発濃縮による結晶化である。この技術は、第二の溶剤を断念するので、このことによって方法は特に経済的になる。しかし特別な利点は、このような方法で意外にもほぼ溶剤不含であってかつ溶媒和化合物不含のLiBOBが得られることである。残留溶剤含有率は2質量%未満である。このような提供形でのみ、最終使用者が液体電解質組成物における完全な自由度を有する。本発明により適用される溶剤は、電池の適用にとって慣用の物質、1,3−ジオキソラン−2−オン化合物またはγ−ラクトンであるため、残留する溶剤の残留含有率は全く問題とならない。
【0035】
当業者にとって特に、蒸発濃縮による結晶化によって溶媒和化合物を含有していないLiBOBを製造することができるという事実が意外である。本発明により選択される5員環エステルはつまりは極めて強いルイス塩基であって、これはLiBOBと、アセトニトリル、THF、エチルアセテートおよびその他の溶剤から公知であるように、相応して固体の錯体を形成する。以下に種々の溶剤の双極子モーメントの比較を記載する。これらの物理定数は、ルイス塩基性と相関する:
【表1】

【0036】
置換結晶化または冷却結晶化の際に形成されるLiBOB・(n5員環エステル)錯体は、実際に安定していることが判明した。図1は、このことを、加熱速度10K/分でLiBOB・2EC錯体の例を用いて熱重量分析法に基づいて示している:
縦座標:温度(℃)、
横座標:時間(分)。
【0037】
しかし本発明により選択される5員環エステルの高い含有率を有するLiBOB結晶もまた、本発明による実施態様である。本発明による5員環エステルはこの場合、静電気による相互作用によってLiBOBに結合している、つまり固体の溶媒和錯体が存在している。溶媒和化合物錯体の正確な組成、つまり5員環エステルに対するLiBOBのモル比は、顕著に変動することができ、結晶化の際のそのつどの圧力/温度条件およびそのつど使用される5員環エステルの物質特性から生じる。
【0038】
慣用の、つまり市場で使用されているリチウムイオン電池用電解質は、1,3−ジオキソラン−2−オン化合物、多くの場合、エチレンカーボネート、またはγ−ラクトンをベースとする少なくとも1の溶剤を含有しているので、前記の溶媒和化合物はたいてい、欠点を有することなく、電池用電解質のために直接に使用される。
【0039】
本発明による方法により製造されるLiBOBは、粗結晶性の、ダストを有していない形で生じる。これは溶媒和化合物を含まないLiBOBに関しても、LiBOB・5員環エステル錯体に関しても該当する。意外にも従来技術により製造されるLiBOB・溶媒和化合物錯体に対して、これらは極めて安定しているので、乾燥した、流動性の形にすることができ、緩和な温度での、たとえば20〜60℃での乾燥の際に本発明により選択される5員環エステルが失われることがない。つまり本発明による方法により製造されるLiBOB・(n5員環エステル)錯体はこの場合、従来技術による方法により製造されるLiBOB・溶媒和化合物錯体の場合のように粉末へと分解することがない。
【0040】
本発明による方法の特に有利な実施態様では、第一工程で製造される、なお濁った、本発明により選択される溶剤中のLiBOB粗製塩の溶液を、本発明により選択される溶剤中で不溶性の塩基性化合物または同様に本発明により選択される溶剤中で不溶性の、水を除去する固体によって前処理する。塩基性化合物としてアルカリ金属水素化物、有利には水素化ナトリウムおよび/または水素化リチウム、金属酸化物、有利には酸化カルシウム、蓚酸リチウム、蓚酸水素リチウム、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、炭酸リチウムまたは無水の水酸化リチウムまたは前記の物質からなる混合物を使用することができる。水を除去する固体として、分子ふるいおよび/または酸化アルミニウムを使用する。
【0041】
この前処理は、空気および湿分の排除下で、閉鎖された装置中で行う。前記の物質は、単独で、または組み合わせて、LiBOB粗製塩の溶液の水および酸の含分を低減することができる。これらは一般に、LiBOB溶液の0.01〜10質量%の量で添加される。生じる懸濁液を均質化する、つまりたとえば攪拌および/または振とうすることが有利である。多くの場合、この工程を高めた温度で、一般に30〜200℃で行うことが推奨される。前処理剤、その濃度、および温度に依存して、作用時間は10分〜1週間、有利には1時間〜20時間である。その後、精製された懸濁液は、上記のとおり、固−液分離によって清澄にされる。
【0042】
本発明による溶剤中のLiBOB粗製塩の溶液を乾燥させるもう1つの可能性は、水を部分的な溶剤除去の過程で留去することである。このために、LiBOB溶液を有利には真空下で加熱し、かつ溶剤の一部を留去する。意外にも、この方法で、含有されている水を少なくとも部分的に一緒に蒸発させることができることが判明した。この変法で、有利には本発明により選択される溶剤中のLiBOB粗製塩の希釈した溶液、たとえば5〜15質量%の濃度を有する溶液を使用する。このようにして、LiBOBまたはLiBOB溶媒和化合物錯体が晶出することを回避することができる。有利には本発明による溶剤は、標準圧力で約200℃より低い温度で沸騰する溶剤成分を含有していない。特に有利には本発明により選択される溶剤は、本発明により選択される5員環エステルのみからなる。500〜5000ppmの水を含有するLiBOB溶液から出発する場合、本発明による乾燥法によって一般に、200ppm未満、有利には100ppm未満の残留水含有率を達成することができる。
【0043】
LiBOBが蒸留の際に分解することを回避するために、蒸留温度は200℃を超えるべきではない。有利には蒸留は80〜170℃の温度範囲で行う。LiBOBの濃縮と結びついたこの蒸留工程は、有利には減圧下で、特に有利には約50ミリバールで実施される。
【0044】
本発明により製造される精製されたLiBOB固体または非プロトン性溶剤中のLiBOBの溶液は、電気的な部材、たとえばリチウムイオン電池における電解質または電解質成分として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】LiBOB・2ECの熱重量分析法に基づく分析結果を示す図
【図2】走査電子顕微鏡による本発明による結晶を示す図
【図3】走査電子顕微鏡による本発明による結晶を示す図
【図4】走査電子顕微鏡による比較例による結晶を示す図
【0046】
以下の例は、本発明を詳細に説明するものであるが、本発明を限定するものではない。全ての試験において、膜濾過された(フルオロポリマー、DSS/Alfa Laval、孔径0.15μm)LiBOB溶液を使用し、その際、LiBOBはDE−C−19839030により製造したものである。
【0047】
例1:溶媒和化合物を含有していないLiBOB結晶の製造(蒸発濃縮による結晶化、結晶の分離は約100℃における)
プロピレンカーボネート(PC)中、水含有率230ppmを有するLiBOB17%の溶液5064gを、約8〜10ミリバールおよび約120℃で蒸発させた。PC約0.8kgを留去した後に、真空を短時間中断し、本発明によるLiBOB結晶1gを添加した。その後の真空蒸留の過程で、LiBOB溶液は濁りを生じた。合計で2.34kgのPCが留去された。
【0048】
真空を中断し、生じた懸濁液を撹拌下で110℃に冷却した。次いで該懸濁液を加熱可能な焼結ガラスフィルターに放出して濾過した。濾過時間は約3分であった。結晶をそのつど100mlの、予熱したトルエンで3回洗浄し、80〜90℃の温度で真空乾燥させた。
【0049】
収率:粗結晶382g、
Li+(ICP):5.15ミリモル/g(≒理論値の99.8%)、
水含有率:検出不可能(1H−NMR法)、
安定性:>300℃で分解開始(熱重量分析法)、
純度:11B−NMRスペクトルにおいて検出可能な不純物を含まず(CD3CN中の溶液)、
SEM:最大縁長さ約0.2mmを有する直方体の結晶(図2を参照のこと)。
【0050】
結晶はアセトニトリル中で完全に残留物を残すことなく溶解した(清澄な溶液)。PC残留含有率は0.2質量%未満であった。ダストの割合は1%未満である。
【0051】
例2:LiBOB・0.2PC溶媒和化合物の製造(蒸発濃縮による結晶化、室温での結晶の分離)
プロピレンカーボネート(PC)中のLiBOBの16.1%溶液639gを、アルゴンで充填した、乾燥した1lのシュレンクフラスコ中に充填し、回転蒸発器を用いて約30ミリバールおよび油浴温度150〜160℃で蒸留により濃縮した。PC170gを留去した後で、粗結晶が析出し始めた。合計でPC236gを留去した。次いで室温に冷却し、該バッチをこの温度で1日貯蔵した。結晶を逆流式焼結ガラスフィルターに通して濾過することにより単離した。メチル−t−ブチルエーテルで2回洗浄した後に、室温で結晶を4時間真空乾燥させた。
【0052】
収率:20g、
Li+(ICP):4.80ミリモル/g(≒LiBOB93%、残分PC)、
水含有率:250ppm、
熱重量分析法:300℃で9.2%の質量損失(≒LiBOB・0.19PC)、
純度:11B−NMRスペクトルにおいて検出可能な不純物を含まず(CD3CN中の溶液)、
SEM:最大縁長さ約0.5mmを有する直方体の結晶(図3を参照のこと)。
【0053】
ダストを有していない生成物(ダストの割合は1%未満)は、アセトニトリル中で完全に溶解性であることが判明した。
【0054】
例3:LiBOB・0.4PC溶媒和化合物の製造(置換結晶化)
プロピレンカーボネート中のLiBOB17.0%の清澄な溶液300gを、撹拌下にトルエン560gで被覆した。トルエンの添加が終わる頃に、無色の固体が下側の液相中で晶出し始めた。攪拌機を停止し、上側のトルエンが富化された相をデカンテーションで分離した(550g、Li+含有率0.057ミリモル/gを有する)。次いで攪拌機を再び開始し、新鮮なトルエン340gを添加した。その際にはるかに多くの結晶が形成され、より重い液相は消失した。
【0055】
これを0℃に冷却し、この温度で2時間維持した。次いで冷たい混合物を濾過した。結晶をそのつど50mlのトルエンで2回洗浄し、次いで室温で5時間真空乾燥させた。
【0056】
4.2ミリモル/gのリチウムおよびホウ素含有率を有する無色の結晶40.2gが得られた。この値は、81%のLiBOB含有率、つまりLiBOB・0.43PC錯体に相当する。
【0057】
収率:理論値の64%。
【0058】
LiBOB溶媒和化合物は、完全に溶解し、アセトニトリル中で残留物を残さず、かつ1質量%未満のダストの割合を有していた。
【0059】
例4:酸化アルミニウムによるLiBOB/PC粗製溶液の前処理(前乾燥)
PC中、470ppmの水含有率(カール・フィッシャーの滴定)を有するLiBOBの17.0%溶液11.2kgを、酸化アルミニウム(ICN BiomedicalsのAlu−N)538gと共に5時間攪拌した。この時間の後で、試料を取り出し、濾過して得られた清澄な溶液の水含有率を分析したが、これは130ppmであった。再度、酸化アルミニウム780gを添加し、2時間攪拌した。水含有率は、その後、30ppmであった。
【0060】
無水の溶液をデカンテーションによって固体から分離し、引き続き膜濾過した(Alfa Lavalのフルオロポリマー膜FSM 0.15PP)。清澄な、無色の濾液(10.1kg)中で滴定によれば水の値は35ppmであった。
【0061】
例5:水素化リチウムを用いたLiBOB/PC溶液の前処理
PC中、0.3μモルH+/gの酸含有率を有するLiBOBの清澄な16%溶液210gに、LiH粉末1.73gを添加し、かつ空気の遮断下で4日間攪拌した。この時間の後で試料を取り出し、シリンジフィルター(0.2μm、PTFE膜)を介して濾過して清澄な溶液が得られ、改めて酸の測定を行った。この試料中で酸はもはや検出することができなかった(≦0.01μモルH+/g)。
【0062】
滴定法:PC中のトリブチルアミン、指示薬としてのブロモフェノールブルーに対する。
【0063】
比較例1:アセトニトリルからのLiBOBの再結晶化(置換結晶化)
アセトニトリル(AN)中のLiBOBの清澄な20%溶液324gを、アルゴンで充填された、乾燥した500mlの二重壁反応器に充填した。撹拌下で0℃に冷却し、次いでトルエン340gを約20分以内に滴加した。トルエンはまずLiBOB/AN溶液と均質に混合された。トルエン約50mlを添加した後ですでに結晶化の開始が観察された。
【0064】
0℃で約1時間、ゆっくり攪拌し、次いで懸濁液を焼結ガラスフィルターに放出した。
【0065】
粗結晶をまずトルエン90mlで洗浄し、次いでそのつど50mlのペンタンで2回洗浄した。次いで、室温で2時間真空乾燥させた。
【0066】
収率:アセトニトリル含有率28質量%を有する粗結晶63.0g。
【0067】
LiBOB・1.8AN溶媒和化合物を真空乾燥室中、90℃で24時間、後乾燥させた。
【0068】
収率:約40%のダスト割合を有する結晶43.4g(理論値の67%)(図4を参照のこと)、
分析(ICP):Li+:5.10ミリモル/g、
B:5.15ミリモル/g。
【0069】
分析値は、99.4%のLiBOB含有率に相応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiBOBにおいて、本発明の意味で粗結晶性であり、かつ本発明の意味で完全に溶解性であり、かつLiBOB・(n5員環エステル)錯体として存在しており、nは、0.01〜5、有利には0.1〜3、特に有利には0.2〜2の値であり、とりわけ有利には0の値であってよいことを特徴とする、LiBOB。
【請求項2】
5員環エステルが、1,3−ジオキソラン−2−オン化合物、または複数の1,3−ジオキソラン−2−オン化合物、またはγ−ラクトン、または複数のγ−ラクトン、または前記の化合物少なくとも2種類からなる混合物から選択されていることを特徴とする、請求項1記載のLiBOB。
【請求項3】
1,3−ジオキソラン−2−オン化合物が、エチレンカーボネート(EC、1,3−ジオキソラン−2−オン)、プロピレンカーボネート(PC、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)またはブチレンカーボネート(BC、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)から選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載のLiBOB。
【請求項4】
γ−ラクトンが、γ−ブチロラクトンまたはγ−バレロラクトンから選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載のLiBOB。
【請求項5】
一次結晶の最大直径の平均が、50μm〜5mm、有利には200μm〜2mm、特に有利には500μm〜1mmであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のLiBOB。
【請求項6】
LiBOBの20質量%未満が、一次結晶の最大直径の平均の半分の長さを下回ることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のLiBOB。
【請求項7】
一次結晶の体積が、0.01〜100mm3、有利には0.1〜50mm3であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のLiBOB。
【請求項8】
LiBOBのダスト割合が、10質量%を下回る、有利には5質量%を下回る、特に有利には2質量%を下回ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のLiBOB。
【請求項9】
アセトニトリル中のLiBOB15%溶液の濁度が、最大で100NTU、有利には最大で50NTUであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のLiBOB。
【請求項10】
1,3−ジオキソラン−2−オン化合物またはγ−ラクトン以外の有機物質が含有されていないことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のLiBOB。
【請求項11】
ANが含まれていないことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のLiBOB。
【請求項12】
残留溶剤割合が50質量%未満である、結晶性でダストの少ない、かつ完全に溶解性のLiBOB・(n5員環エステル)錯体を製造する方法において、溶媒和化合物を形成する溶剤中に粗製LiBOBを溶解することによりLiBOB粗製溶液を製造し、この場合、溶剤は実質的な成分として、少なくとも1の環式の5員環エステルを含有しているか、該エステルからなり、溶解しない粒子を分離し、ここから得られる清澄なLiBOB溶液を、固体のLiBOBが析出するまで蒸発濃縮による結晶化により濃縮し、かつLiBOBを第二の固−液分離工程により単離することを特徴とする、結晶性でダストの少ない、かつ完全に溶解性のLiBOB・(n5員環エステル)錯体を製造する方法。
【請求項13】
蒸発濃縮を、減圧下に、塔底の最大温度200℃で実施することを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
蒸発濃縮および結晶の単離を少なくとも80℃の温度で実施することを特徴とする、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
蒸発濃縮工程の間の圧力が、0.01〜100ミリバールの範囲であることを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
置換結晶化により結晶性で、かつ完全に溶解性のLiBOB・(n5員環エステル)錯体を製造する方法において、実質的な成分として少なくとも1の環式5員環エステルを含有するか、または該エステルからなる、溶媒和化合物を形成する溶剤中のLiBOBの清澄な溶液を、純粋な形でLiBOBを溶解しない溶剤と接触させ、この混合の過程で晶出するLiBOB溶媒和化合物を自体公知の方法で単離することを特徴とする、置換結晶化により結晶性で、かつ完全に溶解性のLiBOB・(n5員環エステル)錯体を製造する方法。
【請求項17】
清澄なLiBOB溶液が環式5員環エステルのみを含有することを特徴とする、請求項12から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
清澄なLiBOB溶液が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ラクトン、たとえばγ−ブチロラクトンまたはγ−バレロラクトンまたはこれらの混合物を含有していることを特徴とする、請求項12から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
残留溶剤割合が50質量%未満である、結晶性で、ダストが少なく、かつ完全に溶解性のLiBOB・(n5員環エステル)錯体を製造する方法において、溶媒和化合物を形成する溶剤中に粗製LiBOBを溶解することによりLiBOB粗製溶液を製造し、その際、溶媒和化合物を形成する溶剤は実質的な成分として、少なくとも1の環式5員環エステルを含有しているか、または該エステルからなり、溶解していない粒子を分離し、かつここから得られる清澄なLiBOB溶液から置換結晶化により固体のLiBOBを析出させ、LiBOBを第二の固−液分離工程により単離することを特徴とする、残留溶剤割合が50質量%未満である、結晶性で、ダストが少なく、かつ完全に溶解性のLiBOB・(n5員環エステル)錯体を製造する方法。
【請求項20】
置換溶剤を添加する前に、清澄なLiBOB溶液が、有利に最大で可能なLiBOB濃度(飽和濃度)の少なくとも90%に相当するLiBOB濃度を有していることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
溶媒和化合物を形成する溶剤に加えて、液状の、飽和または芳香族炭化水素、過フッ化または部分フッ化炭化水素、脂肪族エーテルまたはこれらからなる混合物から選択される、溶媒和化合物を形成しない溶剤を添加することを特徴とする、請求項12から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
溶媒和化合物を形成しない溶剤として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、メチル−t−アミルエーテルまたはこれらからなる混合物を添加することを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項23】
混合を、0〜100℃の温度で、および特に有利には0〜60℃で行うことを特徴とする、請求項19から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
冷却結晶化により、結晶性で完全に溶解性のLiBOB・(n5員環エステル)錯体を製造する方法において、実質的な成分として少なくとも1の環式5員環エステルを含有するか、または該エステルからなる、溶媒和化合物を形成する溶剤中の、特定の温度で飽和の清澄なLiBOB溶液を、より低い温度に冷却して、LiBOBをLiBOB・(n5員環エステル)錯体の形で晶出させ、該結晶を自体公知の方法で単離することを特徴とする、冷却結晶化により、結晶性で完全に溶解性のLiBOB・(n5員環エステル)錯体を製造する方法。
【請求項25】
40〜150℃の温度で飽和のLiBOB溶液を、−20℃〜+20℃に冷却し、形成された結晶を自体公知の方法で単離することを特徴とする、請求項24記載の方法。
【請求項26】
溶媒和化合物を形成する溶剤が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ラクトン、たとえばγ−ブチロラクトンまたはγ−バレロラクトンまたはこれらからなる混合物から選択されていることを特徴とする、請求項19から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
溶媒和化合物を形成する溶剤中のLiBOB粗製溶液を、塩基性化合物および/または水を除去する固体と接触させることを特徴とする、請求項12から26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
LiBOB粗製溶液を、塩基性化合物および/または水を除去する固体と共に攪拌するか、振とうするか、またはその他の方法で均質化することを特徴とする、請求項12から27までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
LiBOB粗製溶液と塩基性化合物および/または水を除去する固体との間の接触時間が、0℃〜200℃の温度で10分〜1週間であることを特徴とする、請求項12から28までのいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
接触時間が、有利に30〜200℃の温度で1〜10時間であることを特徴とする、請求項12から29までのいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
塩基性化合物および/または水を除去する固体が、1もしくは複数の以下の物質:
アルカリ金属水素化物、有利には水素化ナトリウムおよび/または水素化リチウム、金属酸化物、有利には酸化カルシウム、蓚酸リチウム、蓚酸水素リチウム、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、炭酸リチウム、無水水酸化リチウム、分子ふるいおよび/または酸化アルミニウム
から選択されていることを特徴とする、請求項12から30までのいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
塩基性化合物および/または水を除去する物質を、LiBOB溶液の0.01〜10質量%の量で添加することを特徴とする、請求項12から31までのいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
塩基性化合物および/または水を除去する物質とLiBOB溶液とからなる混合物を、攪拌または振とうによって均質化することを特徴とする、請求項12から32までのいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
溶解しない塩基性化合物および/または水を除去する物質を、LiBOB粗製溶液との接触時間の後で、固−液分離操作、有利には膜濾過により分離することを特徴とする、請求項12から33までのいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
電気部材、たとえばリチウムイオン電池のための電解質中でのLiBOB・(n5員環エステル)錯体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−531856(P2010−531856A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513990(P2010−513990)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058602
【国際公開番号】WO2009/004061
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(500399116)ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】Chemetall GmbH
【住所又は居所原語表記】Trakehner Str. 3, D−60487 Frankfurt am Main,Germany
【Fターム(参考)】