説明

結腸直腸腺腫及び/又は癌腫に対するバイオマーカーとしてのC3a及びその誘導体の使用;検出方法及び試験システム

本発明は、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための方法であって、a)個体から採取した単離供試材料を用意し、b)単離した当該供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量し、c)定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、工程を含む方法に関する。本発明はさらに、結腸直腸腺腫と結腸直腸癌腫とを識別するための方法や、結腸直腸腺腫及び/若しくは結腸直腸癌腫の経過、並びに/又は結腸直腸腺腫及び/若しくは結腸直腸癌腫の処置をモニターするための方法に関する。さらに、本発明は、これらの方法において使用するための試験システム及びアレイに関する。さらには、本発明は、個体における結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出のためのバイオマーカーとしての、C3aの使用に関する。さらに本発明は、化合物が結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の処置において有効かどうかを判定するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
結腸直腸癌腫は、世界中で診断頻度が第三番目に高い癌腫である(9.4%)。2003年には、世界中で約945000件の結腸直腸癌腫の症例が新しく診断され、およそ492000名がこの疾病で死亡している。結腸直腸癌腫の発症率は増加しているが、一方、結腸直腸癌腫の死亡率は減少している。結腸直腸癌腫の発症率は40歳頃から年齢と共に増加し、女性よりも男性の方がこの率は高い(年間100000名あたり、男性で40.6名に対し、女性では30.6名)(World cancer report、2003、Ed、BW.Stewart及びP.Kleihues.IARC Press,リヨン)。
【0003】
ほとんどの患者で、結腸直腸癌腫の発症は、前癌性腺腫から転移に対する性向を備えた侵襲的悪性へという、多段階の進行の後に起こる。結腸直腸癌腫の罹患率及び死亡率の低下は、初期の結腸直腸癌腫の検出及び処置、並びに結腸直腸癌腫の前兆である結腸直腸の腺腫性ポリープの同定及び除去によって成し遂げうることが証明されている。
【0004】
これまで、結腸内視鏡検査などといった、侵襲的な結腸直腸のスクリーニング試験のみにより、初期の結腸直腸癌腫及びその前兆、すなわち、腺腫性ポリープ及び/又は扁平腫瘍性域の検出が成し遂げられることが示されている。結腸直腸癌腫スクリーニングに対する選択肢としていくつかの試験を利用することが可能である。スクリーニング試験として、便潜血試験(FOBT)、フレキシブルS状結腸鏡検査、FOBTとフレキシブルS状結腸鏡検査の併用、及び結腸内視鏡検査が挙げられる。様々なスクリーニング試験は、性能、有効性、可能なスクリーニング頻度、試験の複雑性、価格、及び患者による受容度について、互いに相違している。
【0005】
現在のところ、便潜血試験によるスクリーニングが、費用対効果の点で最適なスクリーニングストラテジーであると考えられる。便の潜血はグアヤクなどの化学試薬により、ヘムポリフィリンを通じて、又は免疫学的方法で検出することができる。スミスクライン・ダイアグノスティックスより入手可能なグアヤクスライド試験Hemoccult(II)が、最も広く用いられている。
【0006】
様々な技術的因子が、その臨床的性能に影響を及ぼす。Hemoccultは、結腸直腸癌腫に対する感度が約50%で、特異性が約98%であるが、ポリープに対する感度はおよそ10%と低い(Simon JB.(1998)Gastroenterologist、6:66−78.Review)。潜血スクリーニングの重大なもう一つの欠点は、予測の精度が低いことであり、陽性反応のわずか10%しか結腸直腸癌腫に起因するものではないことがわかっている(Simon JB.(1998)Gastroenterologist、6:66−78.Review;Mandel JSら(1999)J.Natl.Cancer Inst.、91:434−437;Hardcastle JDら(1996)Lancet、348:1472−1477;Kronborg Oら(1996)Lancet、348:1467−71;Winawer SJら(1997)Gastroenterology、112:594−642;Fletcher RH(1998)N.Engl.J.Med.、338:1153−1154)。
【0007】
さらに、便潜血試験では、特定の段階に疾病が進行した後にしか結果が得られない。より早期の時点での結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出を可能とする試験システムがあれば望ましいであろう。
【0008】
さらに最近になって開発された免疫学的試験は、一般に感度が高いが特性が低く、未だ重大な問題を残している。KRAS癌遺伝子及びp53タンパク質に対する便試料の遺伝的試験などの他の方法は未だ、価格対効果が悪く、感度が低い(Calistri Dら(2003)Clin.Gastroenterol.Hepatol.、1:377−383;Schoen RE(2002)Nat.Rev.Cancer、2:65−70)。
【0009】
フレキシブルS字結腸鏡又は結腸内視鏡(Lieberman DA(1997)Gastroenterol.Clin.N.Am.、26:71−83)の何れかを用いた内視鏡検査(Kavanagh AM(1998)Cancer Causes Control、9:455−462)が最も決定的な検出手段であるが、限度がある。扁平腫瘍性病変に対する偽陰性が認められており、その率は高いままである(Kudo S(1997)Gastrointest.Endosc.Clin.N.Am.、7:87−98)。結腸内視鏡検査では、直径が少なくとも10mmのポリープ状病変に対する偽陰性率が低い、結腸の検査が可能となる。この理由により、陰性と判定されてから再検査までの間隔が上限10年、又はポリープ切除後の場合は上限5年と、比較的長期になりうる。
【0010】
しかしながら、結腸内視鏡検査後のこのような再検査を薦めても、患者が受容する可能性は低い。さらに、結腸内視鏡検査は費用がかかるし厄介である。一般化されている検査の費用が高いことと、人々による結腸内視鏡検査の認知度が限られていることから、この検査方法の施用には限度がある。
【0011】
収集した単離組織試料は、結腸直腸癌腫及びその前兆である結腸直腸腺腫につき様々な方法によって試験することができる。DE197 11 111A号には、上皮内結腸細菌、成分及びその反応産物のインビトロでの決定を用いる方法が開示されている。組織試料中のHERG遺伝子発現を用いる別の方法が、DE102 24 534号に開示されている。
【0012】
血液試料中のCEA(癌胎児性抗原)のレベルが、結腸癌腫を検出するために使用されている。しかしながら、CEAレベルは、結腸癌腫で特異的に上昇するものでなく、他の悪性疾患(例えば、胃、膵臓、乳房、及び肺の癌)、並びに様々な非悪性状態(例えば、アルコール性肝疾患、炎症性腸疾患、多量の喫煙、慢性気管支炎、及び膵炎)の患者でも上昇することが示されている。(Posner MR、Mayer RJ:胃腸の悪性における血清学的腫瘍マーカーの使用、Hematol Oncol Clin North Am、8:533、1994)。さらに、CEAレベルは、結腸腺腫では上昇しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、結腸腺腫及び/又は結腸癌腫の初期の検出を可能とする手段を提供することにある。
【0014】
結腸腺腫及び/又は結腸癌腫の非侵襲的な方法による選択的かつ特異的な検出を可能とする手段を提供することが、さらなる目的である。
【0015】
結腸直腸腺腫及び/又は癌腫の検出で使用することができるバイオマーカーを提供することが、さらなる目的である。
【0016】
本発明の別の目的は、価格対効果が高く広範に用いることができる、結腸直腸腺腫又は癌腫を検出するための試験システムを提供することである。
【0017】
さらに、その試験システムは、操作が簡単であって、結腸直腸腺腫及び/又は癌腫を検査する個体にとってより好都合なものであるべきである。
【0018】
化合物が結腸直腸腺腫及び/又は癌腫の処置において有効かどうかを判定するためのスクリーニングシステムを提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の基礎をなす目的は、個体における結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出のためのバイオマーカーとしての、C3a又はその誘導体の使用によって解決される。検出は、インビボ及びインビトロのどちらでも行うことができる。好ましい実施形態によれば、この検出はインビトロで行われる。
【0020】
本発明の目的はさらに、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための方法であって、
a)個体から採取した単離供試材料を用意し、
b)単離した当該供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量し、
c)定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、
工程を含む方法によって解決される。
【0021】
本発明の目的はさらに、結腸直腸腺腫と結腸直腸癌腫とを識別するための方法であって、
a)個体から採取した単離供試材料を用意し、
b)単離した当該供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量し、
c)定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、
工程を含む方法によって解決される。
【0022】
本発明の目的は、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の、発症及び/又は経過及び/又は処置をモニターするための方法であって:
a)個体から採取した単離供試材料を用意し、
b)単離した当該供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量し、
c)定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、
工程を含む方法によっても解決される。
【0023】
好ましい実施形態において、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫が完全に除去されたか否かを判断するために、外科的又は治療的手技の有効性が制御される。別の実施形態において、1以上の化学物質、抗体、アンチセンスRNA、放射線、例えばX線、又はその組み合わせを用いた結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌患者の治療が、その処置の有効性を制御するために制御される。
【0024】
本発明の目的はまた、個体の試料中の結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌を検出するための試験システムであって、
a)C3a又はその誘導体のエピトープに結合する抗体又はレセプター、
b)当該抗体又はレセプターを支持する固体支持体、
c)当該抗体又はレセプターへの、当該C3a又はその誘導体のエピトープの結合を検出するための試薬、
を含む試験システムを提供することによっても解決される。
【0025】
本発明の目的はさらにまた、個体における結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための検出分子を含むアレイであって、検出分子として、
a)C3a若しくはその誘導体をコードするmRNAに結合してこれを検出するため、及び/又はC3aタンパク質若しくはその誘導体に結合してこれを検出するため固体支持体に固定化された核酸プローブ、又は
b)C3a若しくはその誘導体のエピトープに結合してこれを検出するため固体支持体に固定化された抗体、又は
c)C3a若しくはその誘導体のエピトープに結合してこれを検出するため固体支持体に固定化されたレセプターを含み、
好ましくは各々異なる量の検出分子が固体支持体に固定化されて、数量化の精度が高められるアレイを提供することによって解決される。
【0026】
核酸プローブは、例えば、一本鎖若しくは二本鎖DNA又はRNA、アプタマー及びその組み合わせからなる群より選択される。アプタマーは、特異的な、配列依存的な形状を推測し、高い特異性及び親和性にてタンパク質標的に結合する一本鎖オリゴヌクレオチドである。アプタマーは、SELEXプロセス(Tuerk C.及びGold L.(1990)Science、249:505−510;Ellington AD ans Szostak JW.(1990)Nature、346:818−822)を用いて同定される。
【0027】
本発明の目的はさらに、化合物が結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の処置において有効かどうかを判定するための方法であって:
a)結腸直腸腺腫又は結腸直腸癌腫患者を化合物で処置し、
b)当該患者の供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量し、及び
c)定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、
工程を含む方法によって解決される。
【0028】
好ましい実施形態は、従属請求項で特定される。
【0029】
本発明によれば、「供試材料」の用語は「試料」とも表される。
【0030】
本発明によれば、「バイオマーカー」の用語は、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の発症に対する指標である、タンパク質若しくはタンパク質断片又は核酸を示す意味を有する。これは、「バイオマーカー」が結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための手段として使用されることを意味する。
【0031】
「個体」又は「個体(複数)」の用語は、哺乳動物を示す意味を有する。好ましくは、哺乳動物は、患者などのヒトである。
【0032】
「健常個体」又は「健常個体(複数)」の用語は、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫に罹患していない個体(単数又は複数)を示す意味を有する。すなわち、「健常個体(単数又は複数)」の用語は、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の病理学的状態に関してのみ用いられ、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫以外の疾患に罹患している個体を除外するものではない。
【0033】
「その誘導体」の用語は、例えば切欠遺伝子、当該遺伝子の断片、突然変異遺伝子、又は修飾遺伝子を含め、DNA、mRNA又はタンパク質レベルに対するいかなる修飾をも表す意味を有する。「遺伝子」の用語には、DNA、RNA、mRNAなどの核酸配列、又はタンパク質配列、又はオリゴペプチド配列若しくはペプチド配列が含まれる。誘導体は、遺伝子の欠失、置換又は挿入の結果による修飾体でありうる。遺伝子修飾は、天然の遺伝子の可変性の結果でありうる。「天然の遺伝子の可変性」の用語は、遺伝子工学の結果ではない修飾を意味する。遺伝子修飾は、体内での遺伝子若しくは遺伝子産物のプロセッシングの結果、及び/又は分解産物でありうる。タンパク質レベルの修飾は、体内での酵素的又は化学的修飾に起因しうるものである。例えば、その修飾は、グリコシル化又はリン酸化又はファルネシル化でありうる。好ましくは、誘導体は、非修飾タンパク質の少なくとも5アミノ酸、より好ましくは10アミノ酸、最も好ましくは20アミノ酸をコードするか又はこれを含んでいる。一つの実施形態において、誘導体は、それぞれのタンパク質の少なくとも1つのエピトープをコードしている。
【0034】
本発明において使用する場合、「C3a又はその誘導体」の用語は、切欠C3a、C3aの断片、突然変異C3a、修飾C3a、又は前駆体C3(図1、配列番号:1)又はC3の断片を含むものとする。一つの実施形態において、誘導体は配列番号:2の配列(図2A、配列番号:2)と80%、好ましくは90%、より好ましくは98%のタンパク質配列一致度を有している。「C3a」の修飾は、酵素的又は化学的修飾に起因しうる。とりわけ、C3a又はその誘導体の用語には、好ましくは8,950±25Daの範囲、より好ましくは8,950±20Daの範囲の分子量を有する切欠C3a−タンパク質が特に含まれている。好ましい実施形態において、切欠C3a−タンパク質は8,939Daの分子量を有している。好ましくは、C3a−タンパク質はC末端アルギニンを有しておらず、任意に8,950±20Daの範囲の分子量を有している。一つの実施形態において、C3a誘導体はC3a−desArg(図2B、配列番号:3)である。一つの実施形態において、C3a誘導体は肥満細胞のキマーゼによりC3aを切断することによって得られる。別の実施形態において、C3aは、C3をC3−コンバターゼにより切断することによって得られる。
【0035】
C3aは、アナフィラトキシン類の群に属する。C3a、C4a及びC5aは、補体系のセリンプロテアーゼのタンパク質分解産物である。C3a(配列番号:2)は、補体活性化の際の血液補体系の第三成分(C3)(配列番号:1)に由来する。C3aは、局所的有効性を備えたホルモンである。C3aのアミノ酸残基のおよそ40%が、ヘリックス構造に含まれている。血清アナフィラトキシン類は、様々な細胞性免疫応答に関わるほか、強力な炎症誘発性物質である。C3aは、血管壁に対する強い効果、平滑筋の収縮、及び血管透過性の増大をもたらす。C3aのC末端アルギニンは、その生物学的活性にとって基本的に重要なものである。アナフィラトキシン類は、カルボキシペプチダーゼN(アナフィラトキシン失活剤)によって調節され、これが数秒以内でカルボキシ末端アルギニンを除去する。この機構によって、完全型アナフィラトキシンが、より活性の低いC3a−desArg型(配列番号:3)へと変換される。
【0036】
「エピトープ」の用語は、抗体、抗体断片、タンパク質若しくはペプチド構造又はレセプターの特異的結合を可能とする、タンパク質若しくはペプチドの構造エレメントのいずれも、又はタンパク様構造のいずれをも示す意味を有する。
【0037】
本発明の方法は、既に人体から単離されている体液又は組織試料などの供試材料を用いて行われる。引き続いて、供試材料は、分画及び/又は精製されうる。例えば、試験すべき供試材料をフリーザーに保存して、それぞれの供試材料を解凍した後、適切な時点で本発明の方法を実施することが可能である。
【0038】
驚くべきことに、本発明者らによって、タンパク質C3a又はその誘導体を結腸直腸腺腫及び/又は癌腫の検出のためのバイオマーカーとして使用できることが見出されている。本発明者らは意外にも現今、タンパク質C3a又はその誘導体の体液中のレベルは、結腸直腸腺腫及び/又は癌腫を有する個体で上昇することを見出している。さらに、体液中のタンパク質C3a又はその誘導体のレベルは、結腸直腸腺腫及び/又は癌腫を有するヒトから健常人を、また、結腸直腸癌腫を有するヒトから結腸直腸腺腫を有するヒトを識別するのに使用することができる。
【0039】
本発明によれば、供試材料は、組織、細胞又は体液でありうる。好ましくは、供試材料は、血液、血液血漿、血液血清、骨髄、糞便、滑液、リンパ液、脳脊髄液、痰、尿、母乳、精液、滲出液及びそれらの混合液などの体液である。好ましい実施形態において、体液は陰イオン交換クロマトグラフィーで分画される。C3aタンパク質は、例えば、pH9.0で溶出される。トランスサイレチンタンパク質(p13,776)は、例えば、pH4.0で溶出される。
【0040】
好ましくは、体液は、本発明の方法を実施する前に単離されている。本発明の方法は、好ましくは検査室の技術者によってインビトロで行われる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、血液血漿又は血液血清中のC3aが測定される。血液血清は、医学的に検査すべき個体から血液を採取し、凝固した血液から上清を分離することによって容易に得ることができる。
【0042】
好ましくは血液血清である体液中のC3a又はその誘導体のレベルは、結腸直腸腺腫の漸進的形成に伴って高まる。結腸直腸腺腫は、悪性になりうる良性の腫瘍である。良性の結腸直腸腺腫から結腸直腸癌を発症した場合、好ましくは血液血清である体液中のC3a又はその誘導体のレベルは、さらに上昇する。
【0043】
結腸直腸腺腫の結腸直腸癌への形質変換の後、罹病個体の病理学的状態は、転移形成によってさらに増悪されうる。
【0044】
本発明は、初期の未だ良性の段階で腫瘍性疾患を、初期又は良性の段階及び/又は初期の腫瘍段階で腫瘍性疾患を検出することを可能とする初期バイオマーカーを提供する。初期の検出によって、医師が結腸直腸腺腫を適時に除去して個体が生存する見込みを劇的に増大させることができるようになる。
【0045】
さらに、本発明によって、血液血清などの体液中のC3a又はその誘導体のレベルを、年単位など、長期間にわたってモニターすることが可能になる。
【0046】
長期間モニターすることで、健常個体と結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫とを区別することが可能になる。C3a又はその誘導体のレベルは、例えば年に1度又は2度、定期的にチェックすることができる。C3a又はその誘導体のレベルの増加が検出されれば、これが結腸直腸腺腫及び/又は初期の結腸直腸癌腫の指標となりうる。その後のC3a又はその誘導体のレベルのさらなる増加は、悪性の結腸直腸癌腫への形質転換の指標となりうる。
【0047】
さらに、疾病の経過及び/又は処置をモニターすることができる。例えば結腸直腸腺腫の除去の後にC3a又はその誘導体のレベルがさらに増加する場合、これは病理学的状態の悪化の指標となりうる。
【0048】
すなわち、C3a又はその誘導体のレベルは、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出及び/又はモニターのための有益な臨床パラメータである。体液中のC3a又はその誘導体のレベルは、結腸直腸腺腫の発症後に高まる。従って、C3a又はその誘導体のレベルは、早期診断と、それにより疾患の早期処置を可能とする重要な臨床パラメータである。好ましい実施形態において、C3a又はその誘導体のレベルが上昇した患者は、その後、続いて結腸内視鏡検査によって検査される。
【0049】
結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出のための本発明の方法は、個体から採取した単離供試材料を用意し、次いでその単離供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量して、最後に、定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、工程を含む。一つの実施形態において、1以上のさらなるバイオマーカーを、個体から採取した単離供試材料でさらに検出し、そのバイオマーカーのレベルを定量して1以上のそれぞれの基準値と比較する。
【0050】
基準値は、複数の健常個体又は結腸直腸腺腫及び/若しくは結腸直腸癌腫に罹患している個体の単離試料中で定量されるC3a又はその誘導体の平均レベルとして算出することができる。この基準値は、そのヒトが健常であるか、又は結腸直腸腺腫及び/若しくは結腸直腸癌腫に罹患していることを意味する、正常と考えられる範囲として確立することができる。そこで、この範囲内の特定の数値は、健常状態又は結腸直腸腺腫及び/若しくは結腸直腸癌腫の病理学的状態の指標となりうる。この基準値の範囲は、例えば血糖などといったその他の医学的パラメータ範囲のいずれでも行われるように、統計的に適切な数の、健常個体の血清試料などの体液試料を採取することによって確立することができる。好ましくは、2つの基準値を算出し、陰性コントロール及び陽性コントロール1として表わす。陰性コントロールの基準値は健常個体から求め、陽性コントロールは結腸直腸腺腫又は結腸直腸癌腫に罹患している個体から求める。より好ましくは、3つの基準値を算出し、陰性コントロール並びに陽性コントロール1及び陽性コントロール2として表す。陽性コントロール1は、結腸直腸癌腫に罹患している個体から算出することができ、そして陽性コントロール2は、結腸直腸腺腫に罹患している個体から算出することができる。
【0051】
本発明の別の実施形態において、基準値は、長期間にわたって個体から採取した複数の単離試料で定量した、C3a又はその誘導体の平均レベルとして算出される個体の基準値でありうる。
【0052】
1カ月を超えたり又は1年を超えたりするような長期間、C3a又はその誘導体のレベルをモニターする場合、個体の平均レベルを確立することが可能である。C3a又はその誘導体レベルは、例えば血糖を測定する場合と同じ血液血清試料から測定することができ、そしてこれを用いてC3a又はその誘導体のレベルの個体の何らかの増加を特異的に検出することを可能とする個体の検量線を確立ことができる。
【0053】
さらなるバイオマーカーに対する基準値は、C3aについて記載したのと同様に算出することができる。C3a又はさらなるバイオマーカーの平均レベルは、中間又は中央レベルであってよい。
【0054】
別の特徴において、本発明はさらに、個体の単離供試材料中の結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための試験システムを提供する。試験システムは、C3a若しくはその誘導体又はその断片のエピトープ又は好適な構造エレメントに特異的に結合する抗体又はレセプターのいずれかの特異性に基づくものである。レセプターは、C3a又はその誘導体に特異的に結合することのできるいかなる構造もとりうる。レセプターは、例えば、Fab若しくはF(ab’)断片などの抗体断片、又はC3a若しくはその誘導体に特異的に結合することのできる何れか他のタンパク質若しくはペプチド構造でありうる。
【0055】
抗体、抗体断片又はレセプターは、例えば、プラスチック表面又はビーズなどの固体支持体に結合されて、C3a又はその誘導体の結合及び検出を可能とする。例えば、従来のマイクロタイタープレートを、プラスチック表面として使用することができる。C3a又はその誘導体の結合の検出は、例えば、検出可能な基で標識付けされた二次抗体を使用することによって成し遂げることができる。検出可能な基とは、例えば、放射性同位体、又は好適な基質を添加することによって、例えば発色若しくは蛍光信号を生じさせることにより検出可能となる、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼのような酵素でありうる。
【0056】
試験システムは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)又は放射性免疫測定法(RIA)又は発光免疫測定法(LIA)などの免疫測定法でありうる。しかしながら、ウエスタンブロッティング又は免疫沈降などの、抗体又は抗体の断片の特異性を使用する何れの他の免疫学的試験システムも使用することができる。
【0057】
本発明はまた、個体における結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための検出分子を含むアレイであって、検出分子が、C3a、断片、突然変異体、バリアント、若しくはそれらの誘導体をコードするmRNAに結合してこれを検出するため固体支持体上に固定化された核酸プローブ、又はC3a若しくはその誘導体のエピトープに結合してこれを検出するため固体支持体上に固定化された抗体、又はC3a若しくはその誘導体のエピトープに結合してこれを検出するため固体支持体上に固定化されたレセプターでありうるアレイも提供する。好ましくは、アレイは、結腸直腸腺腫及び結腸直腸癌腫を検出するためのバイオマーカーであるさらなる検出分子を含む。
【0058】
核酸プローブは、天然若しくは合成のオリゴヌクレオチド又は化学修飾されたオリゴヌクレオチドや、cDNA、cRNA、アプタマー等のいずれでもありうる。
【0059】
あるいは、本発明には、前記のごとき定義の検出分子によって検出されうる固体支持体に固定化された患者の試料を含む逆アレイも含まれる。
【0060】
好ましくは、アレイは、同定可能な位置で固体表面に固定化される検出分子を含む。
【0061】
本発明において用いる場合、「アレイ」の用語は、群化又は配置をいい、これは必ずしも規則的な配置というわけではない。アレイは、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは5つの異なる検出分子又は患者試料の組を含む。好ましくは、本発明のアレイは、少なくとも50の検出分子又は患者試料の組、さらに好ましくは少なくとも100の検出分子又は患者試料の組を含む。本発明のさらなる実施形態によれば、本発明のアレイは、少なくとも500の検出分子又は患者試料の組を含む。検出分子は、例えば、核酸プローブ又は抗体又はレセプターでありうる。
【0062】
前記アレイは、本発明に係る試験システムで使用することができる。このアレイは、マイクロアレイ又はマクロアレイのいずれかでありうる。
【0063】
検出分子は、固体表面又は支持体又は固体支持体表面に固定化される。このアレイ又はマイクロアレイは次いで、患者試料から調製した核酸プローブでハイブリダイズすることにより、又は患者試料から調製したタンパク質様プローブとアレイを接触させることによりスクリーニングされる。
【0064】
支持体は、ナイロン若しくはプラスチックなどのポリマー材料、又は例えばシリコンウェハのようなシリコン、若しくはセラミックなどの無機材料でありうる。好ましい実施形態によれば、ガラス(SiO)が固体支持体材料として使用される。ガラスは、スライドガラス又はガラスチップでありうる。本発明の別の実施形態によれば、ガラス基材は原子的に平坦な表面を有する。
【0065】
例えば、アレイは、血清などの体液中に存在している、C3a若しくはその誘導体のmRNAに特異的に結合することができる固定化された核酸プローブで、又は、C3aタンパク質若しくはその誘導体に特異的に結合する抗体で構成されうる。別の好ましい実施形態は、C3aをコードするmRNAの、又はC3aの誘導体をコードするmRNAの逆転写によってcDNAを産生して、前記アレイでそれぞれのcDNAの量を特異的に検出することにある。アレイ技術は、当業者に知られているものである。測定したmRNA又はcDNA又はタンパク質の数量化はそれぞれ、測定値を、既知量のC3a又はその誘導体のmRNA又はcDNA又はタンパク質の標準又は検量線と比較することによって行うことができる。
【0066】
好ましくは、異なる量の検出分子を固体支持体上に各々固定化して、C3a又はその誘導体のレベルの正確な数量化を可能とする。
【0067】
本発明の別の実施形態によれば、C3a又はその誘導体のレベルは質量分析法によって定量される。
【0068】
質量分析法によって、C3a又はその誘導体を、その分子量に基づいて特異的に検出し、そしてC3a又はその誘導体の量を非常に簡単に数量化することが可能になる。
【0069】
質量分析法の分野で従来公知の適切なイオン化方法であれば何れでも、C3a又はその誘導体分子、断片、突然変異体、バリアント又はその誘導体をイオン化するのに採用することができる。イオン化方法としては、電子衝撃法(EI)、化学的イオン化法(CI)、電界イオン化法(FDI)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、レーザ脱離イオン化法(LDI)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI)及び表面増強レーザ脱離イオン化法(SELDI)が挙げられる。
【0070】
質量分析法の分野で従来公知の適切な検出方法であれば何れでも、C3a又はその誘導体の分子量を決定するのに採用することができる。検出方法としては、四重極型質量分析法(QMS)、フーリエ変換質量分析法(FT−MS)及び飛行時間型質量分析法(TOF−MS)が挙げられる。
【0071】
好ましくは、質量分析法は、表面増強レーザ脱離イオン化−飛行時間−質量分析法(SELDI−TOF−MS)である。SELDI−TOF−MSを行う前に、単離試料中のC3a又はその誘導体は、好ましくは、活性化表面を備えたチップ又は固体支持体に固定化される。活性化表面は、好ましくは、例えばウサギポリクローナル抗体などの、抗C3a又はその誘導体に対する、固定化された抗体を含む。抗体へのC3a又はその誘導体の結合の後にSELDI−TOF質量分析計で飛行時間解析が行なわれ、これがC3a又はその誘導体レベルの定量用の強度シグナルを送達する。
【0072】
さらに、質量分析法によって、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌の検出について関連性を有しうる別のタンパク質を同時に検出することが可能になる。
【0073】
本発明の実施形態において、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出の感度及び/又は特異性は、さらなるバイオマーカーを付加的に検出することによって増強される。特に、一つの実施形態において、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出の感度及び/又は特異性は、C3a又はその誘導体と組み合わせて別のタンパク質又は核酸を検出することによって増強される。
【0074】
好ましくは、本発明に係る方法、アレイ、試験システム及び使用の感度及び特異性は、C3a及びその誘導体と組み合わせてトランスサイレチン及びその誘導体を検出することによって増大する。
【0075】
本発明で使用する場合、「トランスサイレチン又はその誘導体」の用語は、切欠型トランスサイレチン、トランスサイレチンの断片、突然変異型トランスサイレチン、又は修飾型トランスサイレチンも含む。「トランスサイレチン」の修飾は、酵素的又は化学的修飾に起因しうる。さらに、「トランスサイレチン」の用語は、トランスサイレチンの単量体又は多量型を示すのにも使用される。例えば、「トランスサイレチン」の用語は特に、通常はホモ四量体タンパク質トランスサイレチンの一部となっている単量体タンパク質鎖を包含する。
【0076】
トランスサイレチンはまた、プレアルブミンとも命名されている。トランスサイレチンは、主に肝臓で合成される、約54,000Daの分子量を有する四量体のタンパク質である。トランスサイレチンは通常、各々約14,000Daの分子量を有する4つのタンパク質鎖を含むホモ四量体である。本発明者らは、質量分析法を用いて、とりわけ13,776Da、13,884Da又は14,103Daの分子量を有するトランスサイレチンタンパク質鎖のいくつかのバリアントを検出している。本発明者らは、13,776Da及び13,884Daの分子量を有するトランスサイレチンの分子バリアントのレベルが特に、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の発症の場合に血清などの体液中で減少することを見出している。
【0077】
本発明のさらなる実施形態において、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出の感度及び/又は特異性は、C3a又はその誘導体と組み合わせて、p53、CEA(癌胎児性抗原)及び/若しくはCA 19−9、CA 15−3、Kras、突然変異E−カドヘリン、β−カテニン又はその誘導体を付加的に検出することによって増強される。
【0078】
本発明のさらなる実施形態において、DNAミスマッチ遺伝子、例えばMSH2、MSH3、MLH1、PMS1、PMS2、MSH6における突然変異、例えばMHL1若しくはMSH2のマイクロサテライト不安定性、SNPs(一塩基多型)、又はC−反応性タンパク質血漿濃度を付加的に検出することによって、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出の感度及び/又は特異性を増強することができる。
【0079】
本発明のさらなる実施形態において、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出の感度及び/又は特異性は、C3a又はその誘導体と組み合わせてCA15−3、CA−125及び/又はHer−2/neuを検出することによって任意に増強される。CA15−3は癌胎児性抗原であり、これは様々な癌腫によって発現され、他の腫瘍マーカーと共に測定されることが多いものである。CA15−3及びCA−125の双方とも、主に乳癌に対する予後指標であるが、さらにまた、内臓の転移の予後指標でもある。乳癌腫におけるHer−2/neuの増幅は予後不良、短い無病期間、及び短い生存時間と関連している。これまでに、Her−2/neuの増幅の開始点と進度についてはほとんど知られていない。
【0080】
好ましい実施形態において、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫は、バイオマーカーのC3aとトランスサイレチン又はその誘導体との組み合わせによって検出される。これによって、より高い感度及び/又は特異性での、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出が可能となる。さらに、この検出方法は非侵襲性であるため、この検出方法の患者による受容は良好なものである。
【0081】
感度及び特異性は、以下のとおりに定義される。
【0082】
感度とは、全ての患者数(100%)に対する、真陽性の患者数(%)である。患者とは、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を有する個体である。
【0083】
特異性とは、全ての健常個体数(100%)に対する、真陰性の個体数(%)である。
【0084】
感度及び特異性は、以下の式によって二者択一的に定義することができる。
【0085】
【数1】


TP:真陽性(試験で陽性、診断で正しい);
FP:擬陽性(試験で陽性、診断で正しくない);
TN:真陰性(試験で陰性、診断で正しい);
FN:擬陰性(試験で陰性、診断で正しくない);
感度は、以下の式によって算出され:
TP/(TP+FN)、
そして特異性は以下の式によって算出される:
TN/(TN+FP)。
【0086】
TP、FP、TN、FNから選択される、各々の解析群の結果は、健常個体、結腸直腸腺腫患者及び/又は結腸直腸癌腫患者からなる群より選択される、複数の単離試料について算出される。TP、FP、TN、FNは、それぞれ真陽性、擬陽性、真陰性、偽陰性の状態に関連付けられる個体の数に関するものである。
【0087】
本発明の方法は、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出のための他の診断方法と組み合わせて行って、全体としての感度及び/又は特異性を増加させることができる。C3aの検出によって、結腸直腸腺腫の非常に初期の検出が可能になり、従って非常に初期のマーカーとして使用することができる。
【0088】
好ましくは、本発明の方法は早期の検出及び/又はモニタリング方法として行われる。本発明の方法の結果が結腸直腸腺腫の発症及び/又は結腸直腸腺腫を示したならば、結腸内視鏡検査などのさらなる検査を行うべきである。
【0089】
本発明を実施する場合、以下のポリクローナル抗トランスサイレチン抗体及びC3a抗体を使用することができる:
抗トランスサイレチン:The Binding Site Ltd.、Birmingham、イギリスより入手可能なPC 066、及びDAKO、Hamburg、ドイツより入手可能なA 0002。
抗C3a−desArg:Quidel Immunoassay(Quidel Corporation、10165 McKellar Court、San Diego、CA 92121、米国)で入手可能。
【0090】
本発明はさらに、化合物が結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の処置において有効かどうかを判定するための方法を提供する。
【0091】
化合物が結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の処置において有効かどうかを判定するためのその方法は、
a)結腸直腸腺腫又は結腸直腸癌腫患者を化合物で処置し、
b)当該患者の供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量し、
c)定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、
工程を含む。
【0092】
本願において使用する場合、「患者」の用語は、ヒトや、さらには動物などのヒト以外の生命体を網羅する。動物は、好ましくは齧歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスター、並びにその他の動物、例えば、モルモット、家兎、野ウサギ、イヌ及びブタからなる群より選択される。
【0093】
これらの動物は、研究目的で、結腸直腸腺腫及び結腸直腸癌腫のような特定の疾患状態を特異的に誘発するのに使用することができる。当該疾患状態の誘発は、例えば、結腸直腸癌又は結腸直腸腺腫の疾患状態を誘発することが知られている、例えば放射性又は化学物質で動物を処置することによってもたらすことができる。疾患状態はまた、ウイルスのトランスフェクション系を使用して誘発することもできる。1以上の特定の遺伝子機能が変更されている遺伝子改変動物、又は特定の遺伝子機能が欠失しているノックアウトマウスなどのノックアウト動物を使用することも可能である。
【0094】
「化合物」は、1以上の化学物質、抗体、タンパク質、ペプチド、アンチセンスmRNA、小分子薬物又はこれらの組み合わせでありうる。化合物は、例えばX線などの放射線で置き換えることもでき、又は化合物と放射線との組み合わせを使用することもできる。
【0095】
当該患者の供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルは、上記の検出技術によって定量することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0096】
以下の図面及び実施例は、例示のみを目的として記載している。本発明は、以下の実施例に限定されるように解釈されるべきでない。
【実施例】
【0097】
別段に明記しない限り、すべての方法は分析システムの製造業者のプロトコルに従って行った。
【0098】
血清収集及び血清分画
ヒト患者の3群から血清を採集して調べた。
【0099】
第1群は、鼠径ヘルニア、胆石又は憩室炎などの非癌性疾患の処置を受けた外科患者である28名の患者からなっていた。第1群のこれらの個体を健常個体、すなわち、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫に罹患していない個体の群として採用した。
【0100】
第2群は、すべて未特定の腫瘍の処置を受け、良性の結腸直腸腺腫であることが判明した外科患者である28名の患者からなっていた。
【0101】
第3群は、結腸直腸癌腫を有する患者である28名の患者からなっていた。これらの28名の患者はすべて、TNMステージIII(腫瘍、結節、転移ステージIII)結腸直腸癌腫に罹患していた。
【0102】
倫理指針及び患者の秘密を厳守し、すべての患者から、本研究に参加することについての書面による同意を得た。すべての患者は、絶食時間及び手術時の投薬などの同等の術前調製を受けた。
【0103】
各患者からの血清を、陰イオン交換クロマトグラフィー(Serum Fractionation Kit/Q HyperD樹脂、Ciphergen Biosystems,Inc.)により、96ウェル形式の自動化アプローチ(Biomek2000、Ciphergen)を用い、製造業者のプロトコルに従って分画して、最も豊富なタンパク質による干渉をある程度低減させた。図3に示すとおり、分画によって、タンパク質のpI値に基づき大まかに分離されたタンパク質を含む6つの画分が得られた。
【0104】
C3A−desArgタンパク質(p8,960Da)は、pH9.0の洗浄溶液(0.1%OGP(オクチル−β−D−グルコピラノシドを含む50mMトリス−HCl、pH9.0)で画分1に溶出された(Ciphergen Biosystems Inc.発現差マッピングキット−血清分画、cat.no K100−0007により規定された条件に従う)。トランスサイレチンタンパク質(p13,776Daは、pH4.0(0.1%OGPを含む100mM酢酸ナトリウム、pH4.0の条件で画分4に溶出された(Ciphergen Biosystems Inc.発現差マッピングキット−血清分画、cat.no K100−0007により規定された条件に従う)。
【0105】
SELDI−TOF MS解析
CM10タンパク質アレイを、製造業者のプロトコルに従ってバイオプロセッサ(Ciphergen Biosystems,Inc.)にて処理した。チップをCM10結合バッファー(Ciphergen Biosystems,Inc.)で2×5分間平衡化して、その後(CM10結合バッファーにて1:10に希釈しておいた)血清画分とインキュベートした。45分後に、結合しなかった材料を除去して、チップをCM10結合バッファーで3回、水で2回洗浄した。室温で10分間乾燥させた後、0.05Mシナピン酸(1.0μl)を2施用回数添加して、チップをCiphergen Protein ChipReader(モデルPBSII)で分析した。
【0106】
Protein ChipReaderは、飛行時間型質量分析計である。検出タンパク質に対する質量値及びシグナル強度をソフトウェアに転送するが、このソフトウェアは、ProteinChip Data Analysis Program及びBiomarker Wizard Programによるさらに詳細な分析のために、Ciphergenにより供給されているものである。
【0107】
データの変動性を最小化するために、チップ上にランダムに分配した全患者群からの試料を用いて2日以内に測定を実施した。標準化用の基準コントロールとして、貯蔵しておいた正常血清を全ての測定に平行して用いた。
【0108】
タンパク質の質量スペクトルを、185のレーザ強度で195の平均レーザショットを使用することによって作成した。検出器は、7の感度で作動させた。データを得るために、検出サイズの範囲は、2,000から40,000Daの間に設定した。レーザは、10,000Daで収束させた。データを、ProteinChip Data Analysis Program(バージョン3.1、Ciphergen Biosystems)及びBiomarker Wizard Program(バージョン3.1、Ciphergen Biosystems)で分析した。ピーク強度は、総イオン電流に対して標準化した。測定された分子量は測定ごとに変動しうるものであり、使用される質量分析装置の仕様に依存しうることには注意すべきである。C3desArgの測定分子量は、8,950±25Daの範囲内でありうる。
【0109】
C3a ELISA分析
血清中のC3a−desArg断片の数量化のために、Quidelの酵素イムノアッセイを使用した(Quidel Corporation、10165 McKellar Court、San Diego、CA92121、米国)。ELISAは、製造業者の取扱説明書に従って実施した。
【0110】
キットに含まれるマイクロタイターストリップを、ヒトC3a−desArgに特異的なモノクローナル抗体(Quidelのイムノアッセイに含まれる)で被覆する。試料を1:500で希釈して、18〜25℃で1時間インキュベートした。このインキュベーションの間に、検体中のC3a−desArgはモノクローナル抗体に結合するはずである。結合しなかったそのままのC3を濯いで除去した後、結合したC3a−desArgを検出するためにペルオキシダーゼ接合ウサギ抗C3aを使用した。過剰の接合物は洗浄工程で除去して、血清試料中のC3a−desArgの量を、ペルオキシダーゼ反応及び標準曲線を用いて数量化した。
【0111】
トランスサイレチンの数量化のための放射状免疫拡散
放射状免疫拡散アッセイ(Tina−Quant Prealbumin assay、プレアルブミンの定量用の免疫濁度測定アッセイ、Roche diagnostics GmbH、Mannheim、ドイツ、Cat.−No.11660519)を、臨床的サービスをする検査室で実施した。血清を、均一な濃度の単一特異性抗体を含有するゲルマトリックスで切り込んだ円筒状のウェルに付した。ウェルに入れた抗原は放射上に拡散し、沈降輪を作った。沈降輪は、終夜のインキュベーション後、又は終点のいずれの時点でも読み取ることができる。試料によって作られる沈降輪の直径を、既知濃度の標準物によって作られる沈降輪と比較することにより、結果を数量化した。
【0112】
データの統計的評価
3つの患者群につき、決定樹解析に基づいてC&RT(CART)アルゴリズムによりカットオフ値を算出する(Breiman,L.、Friedman,J.H.、Olshen,R.A.、及びStone,C.J.(1984)、分類及び回帰樹。Monterey,CA:Wadsworth & Brooks/Cole Advanced Books & Software)。カットオフ値は、異なる解析群間の限界値を選択及び特定するために算出される。評価は、STATSOFT INC,のSTATISTICA Software Vs7.1で実施しており、決定樹解析はData−Miner Modul subprogramm Standard Classification Trees(CAndRT)で実施する(StatSoft,Inc.(2005).STATISTICA(データ解析ソフトウェアシステム)、バージョン7.1.www.statsoft.com.)。
【0113】
統計的データは、平均値及び標準偏差に基づいて評価する。さらに、図には平均±95の信頼区間を示し、この区間内で95%の確率で見込み患者群の真の平均値が求められることを示唆している。統計的評価は、t−検定によって実施する。検定は、p<0,05のp値で有意であると考えた。箱形のプロットのウィスカは、標準偏差を示す。
【0114】
実施例1
本実験では、非癌腫患者(第1群、n=28名の患者)由来の血清と結腸直腸腺腫(第2群、n=28名の患者)及び結腸直腸癌腫(第3群、n=28名の患者)の患者由来の血清の間のC3a−desArgの発現を、ELISA(Quidel C3a酵素イムノアッセイ)によって、及びSELDI−TOF MS解析によって、前記のとおり二重に同定した。
【0115】
実施例2
トランスサイレチンの発現は、同じ患者の集団につき、放射状免疫拡散によって、及びSELDI−TOF MS解析によって、前記のとおり数量化した。
【0116】
結果及び統計的評価
図4に示すように、C3a−desArgの濃度[ng/ml]の強度は、三群間で有意に異なっている。C3a−desArgレベルは、健常個体から結腸直腸腺腫患者、そして結腸直腸癌腫患者に至るまで、増加している。
【0117】
表1に、検証のためにSELDI−TOF MS及び免疫測定(C3a−desArg−ELISA、トランスサイレチン免疫拡散)を用いた、84の血清試料間のC3a−desArg[ng/ml]、及びトランスサイレチン[g/l]の血清レベルの分布を示す。各群で28の血清試料を測定した。
【0118】
【表1】

【0119】
ELISAによって測定したC3a−desArgの血清濃度は、非癌性のコントロール群に比較して腺腫及び癌腫患者で有意に高かった(図5A)。これらのデータによると、癌患者から健常個体を識別することが可能であった。さらに、健常個体と腺腫患者との識別も可能であった。その結果は、SELDI−TOF MS解析によって得られたデータ(図5B)に非常に類似していた。図7に、両者の方法(SELDI−TOF MS及びELISA)の撒布図を示しており、各患者のSELDI−TOF MSによって測定したp8,960の強度とELISAによって測定したC3a−desArgの濃度の間の良好な相関(図7A;r=0.7)、さらには各患者のSELDI−TOF MSによって測定したp13,776の強度とELISAによって測定したトランスサイレチンの濃度の間の良好な相関(図7B、r=0.81)を明示している。これにより、結果は分析法に依存するものでないことが示唆される。
【0120】
トランスサイレチンのデータは、SELDI−TOF MS解析(図6B)によって作成し、放射状免疫拡散(図6A)によって確認した。結腸直腸癌の患者では、非癌患者に比べてトランスサイレチンが有意に低かった。さらに、腺腫患者の血清中のトランスサイレチン濃度もやはり、正常血清中よりも有意に低い。
【0121】
表2に、健常コントロールと腺腫/腫瘍患者との識別のため、それぞれSELDI−TOF MS及びELISAによって測定した、C3a−desArgの感度及び特異性の比較を示す。
【0122】
【表2】

【0123】
表3に、健常コントロールと腺腫/腫瘍患者との識別のため、それぞれSELDI−TOF MS及び放射状免疫拡散によって測定した、トランスサイレチンの感度及び特異性の比較を示す。
【0124】
【表3】

【0125】
表4に、両者のバイオマーカー(C3a−desArg/トランスサイレチン)を組み合わせた、感度及び特異性の比較を示す。健常コントロールと腺腫/腫瘍患者との識別のため、免疫測定によってC3a−desArg及びトランスサイレチンを測定した。トランスサイレチン(TTR)及びC3a−desArgに対するカットオフ値を括弧内に示す。
【0126】
【表4】

【0127】
表5に、単一のバイオマーカーとしてのC3a−desArgの感度及び特異性を示す。健常コントロールと腺腫及び/又は腫瘍患者との識別のため、ELISAによってC3a−desArgレベルを測定した。カットオフ値を括弧内に示す。
【0128】
【表5】

【0129】
表6に、単一のバイオマーカーとしてのトランスサイレチンの感度及び特異性を示す。健常コントロールと腺腫及び/又は腫瘍患者との識別のため、放射状免疫拡散によってトランスサイレチンレベルを測定した。カットオフ値を括弧内に示す。
【0130】
【表6】

【0131】
表7に、C3a−desArgとトランスサイレチン(TTR)とを組み合わせた、その感度及び特異性を示す。トランスサイレチン及びC3a−desArgレベルは、それぞれELISA及び放射状免疫拡散によって測定した。カットオフ値を括弧内に示す。
【0132】
【表7】

【0133】
これらのデータは、C3aが、任意にトランスサイレチンと組み合わせて、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出のための優れたバイオマーカーであることを示す。既知のバイオマーカーであるCEA及びCA 19−9とは対照的に、健常個体と腺腫患者とを識別することが可能である。C3a試験の感度及び特異性は高く、結腸内視鏡検査をすることなく腺腫を初期に特異的に検出することが可能になる。とりわけ、バイオマーカーC3aとトランスサイレチンとの組み合わせによって、優れた感度及び高い特異性にて腺腫を検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】C3タンパク質配列を示す図である。
【図2】(A)はC3aタンパク質配列、そして(B)はC3a−desArgタンパク質配列を示す図である。
【図3】血清試料の分画及びプロファイリングを示す模式図である。
【図4】ELISAを用いたC3a−desArgの数量化を示す図である。非癌(n=28)、腺腫(n=28)及び結腸直腸癌患者(n=28)からの血清試料を、Quidel C3a Enzyme Immunoassayにて二重にアッセイした(A=腺腫群、N=健常コントロール群、T=癌群)。
【図5】A)ELISA及びB)SELDI−TOF MSによるC3a−desArgの分析を示す図である。平均C3a−desArg濃度は、非癌性コントロール群に比べて、腺腫及び癌群で有意に高い(A=腺腫群、N=健常コントロール群、T=癌群)。
【図6】A)放射状免疫拡散及びB)SELDI−TOF MS解析によるトランスサイレチンの数量化を示す図である。平均トランスサイレチン濃度は、非癌性コントロール群に比べて、腺腫及び癌群で有意に低い。さらに、平均トランスサイレチン濃度は、放射状免疫拡散によって測定した場合、腺腫群に比べて癌群で有意に低い(A=腺腫群、N=健常コントロール群、T=癌群)。
【図7】SELDI−TOF MSと免疫測定のデータの相関を示す図である。C3a−desArg(A)はELISAによって分析し、トランスサイレチン(B)は放射状免疫拡散によって分析した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための方法であって、
a)個体から採取した単離供試材料を用意し、
b)単離した当該供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量し、
c)定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、
工程を含む方法。
【請求項2】
結腸直腸腺腫と結腸直腸癌腫とを識別するための方法であって、
a)個体から採取した単離供試材料を用意し、
b)単離した当該供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量し、
c)定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、
工程を含む方法。
【請求項3】
結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の、発症及び/又は経過及び/又は処置をモニターするための方法であって:
a)個体から採取した単離供試材料を用意し、
b)単離した当該供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量し、
c)定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、
工程を含む方法。
【請求項4】
結腸直腸腺腫又は結腸直腸癌腫患者から採取した前記供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルが、健常個体の供試材料と比較して高い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第一供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルの第一の増加が結腸直腸腺腫の指標となり、かつ第一供試材料よりも後の時点で前記個体から単離した第二供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルの第二の増加が結腸直腸癌腫の指標となり、但し第二の増加は第一の増加よりも大幅である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)において、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための1以上のさらなるバイオマーカーが、前記単離供試材料中で定量され、かつ工程(c)において、定量した当該バイオマーカーのレベルが1以上のそれぞれの基準値と比較される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための少なくとも1つのさらなるバイオマーカーが、トランスサイレチン、p53、CEA、CA 19−9、CA 15−3、CA−125、Kras、β−カテニン、Her−2/neu、C−反応性タンパク質血漿及びそれらの誘導体、並びに、E−カドヘリン、MSH2、MSH3、MLH1、PMS1、PMS2、MSH6遺伝子の突然変異、並びに、MHL1又はMSH2のマイクロサテライト不安定性、並びに、SNPsと、それらの組み合わせからなる群より任意に選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
C3a及び/又はその誘導体の基準値、並びに任意のさらなるバイオマーカー及び/又はその誘導体の基準値が、個体のそれぞれの群の複数の単離試料中のC3a及び/又はその誘導体並びに任意のさらなるバイオマーカー及び/又はその誘導体の平均レベルとして算出され、個体の群が、健常個体、結腸直腸腺腫患者及び/又は結腸直腸癌腫患者である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
基準値が、長期間にわたって個体から採取した複数の単離供試材料で定量した、C3a及び/又はその誘導体並びに任意のさらなるバイオマーカー及び/又はその誘導体の平均レベルとして算出される個体の基準値である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
単離された供試材料が体液であり、血液、血液血漿、血清、骨髄、糞便、滑液、リンパ液、脳脊髄液、痰、尿、母乳、精液、滲出液及びそれらの混合物からなる群より任意に選択される、以上の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記供試材料中のC3a及び/又はその誘導体並びに任意のさらなるバイオマーカーのレベルが、DNA、mRNA及び/又はタンパク質レベルについて定量される、以上の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記供試材料中のC3a及び/又はその誘導体並びに任意のさらなるバイオマーカーのレベルが、核酸ハイブリダイゼーション技術、免疫学的方法若しくはプロテオミクス技術、及び/又は質量分析法によって定量される、以上の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の他の診断方法と組み合わせて行なわれ、感度及び/又は特異性が高められる、以上の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
個体又は個体で単離された試料における結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の検出のためのバイオマーカーとしての、C3a又はその誘導体の使用。
【請求項15】
個体の単離試料における、結腸直腸及び/又は結腸直腸癌腫腺腫の初期の検出のための、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫に対する1以上のさらなるバイオマーカーと組み合わせられて、感度及び/又は特異性が高められる、請求項14又は15に記載の使用。
【請求項17】
少なくとも1つのさらなるバイオマーカーが、トランスサイレチン、p53、CEA、CA 19−9、CA 15−3、CA−125、Kras、β−カテニン、Her−2/neu、C−反応性タンパク質血漿及びそれらの誘導体、並びに、E−カドヘリン、MSH2、MSH3、MLH1、PMS1、PMS2、MSH6遺伝子の突然変異、並びに、MHL1又はMSH2のマイクロサテライト不安定性、並びに、SNPsと、それらの組み合わせからなる群より任意に選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
個体の単離供試材料中の結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための試験システムであって、
a)C3a又はその誘導体のエピトープに結合する抗体又はレセプター、
b)当該抗体又はレセプターを支持する固体支持体、
c)当該抗体又はレセプターへの、当該C3a又はその誘導体のエピトープの結合を検出するための試薬、
を含む試験システム。
【請求項19】
試験システムが、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫に対する、1以上のさらなるバイオマーカーを検出するための、1以上の抗体又はレセプターを含む、請求項18に記載の試験システム。
【請求項20】
少なくとも1つのさらなるバイオマーカーが、トランスサイレチン、p53、CEA、CA 19−9、CA 15−3、CA−125、Kras、β−カテニン、Her−2/neu、C−反応性タンパク質血漿及びそれらの誘導体、並びに、E−カドヘリン、MSH2、MSH3、MLH1、PMS1、PMS2、MSH6遺伝子の突然変異、並びに、MHL1又はMSH2のマイクロサテライト不安定性、並びに、SNPsと、それらの組み合わせからなる群より任意に選択される、請求項19に記載の試験システム。
【請求項21】
個体における結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫を検出するための検出分子を含むアレイであって、検出分子として、
a)C3a若しくはその誘導体をコードするmRNAに結合してこれを検出するため固体支持体に固定化された核酸プローブ、又は
b)C3a若しくはその誘導体のエピトープに結合してこれを検出するため固体支持体に固定化された抗体、又は
c)C3a若しくはその誘導体のエピトープに結合してこれを検出するため固体支持体に固定化されたレセプターを含み、
好ましくは各々異なる量の検出分子が固体支持体に固定化されて、数量化の精度が高められるアレイ。
【請求項22】
前記試験システムが、結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫に対する、1以上のさらなるバイオマーカーを検出するための、1以上の抗体又はレセプターを含む、請求項21に記載のアレイ。
【請求項23】
少なくとも1つのさらなるバイオマーカーが、トランスサイレチン、p53、CEA、CA 19−9、CA 15−3、CA−125、Kras、β−カテニン、Her−2/neu、C−反応性タンパク質血漿及びそれらの誘導体、並びに、E−カドヘリン、MSH2、MSH3、MLH1、PMS1、PMS2、MSH6遺伝子の突然変異、並びに、MHL1又はMSH2のマイクロサテライト不安定性、並びに、SNPsと、それらの組み合わせからなる群より任意に選択される、請求項22に記載のアレイ。
【請求項24】
化合物が結腸直腸腺腫及び/又は結腸直腸癌腫の処置において有効かどうかを判定するための方法であって:
a)結腸直腸腺腫又は結腸直腸癌腫患者を化合物で処置し、
b)当該患者の供試材料中のC3a又はその誘導体のレベルを定量し、及び
c)定量したC3a又はその誘導体のレベルを1以上の基準値と比較する、
工程を含む方法。
【請求項25】
工程b)において、さらなるバイオマーカーのレベルが定量され、かつ工程c)において、1以上のそれぞれの基準値と比較される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのさらなるバイオマーカーが、トランスサイレチン、p53、CEA、CA 19−9、CA 15−3、CA−125、Kras、β−カテニン、Her−2/neu、C−反応性タンパク質血漿及びそれらの誘導体、並びに、E−カドヘリン、MSH2、MSH3、MLH1、PMS1、PMS2、MSH6遺伝子の突然変異、並びに、MHL1又はMSH2のマイクロサテライト不安定性、並びに、SNPsと、それらの組み合わせからなる群より任意に選択される、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−509409(P2008−509409A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525256(P2007−525256)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008742
【国際公開番号】WO2006/053592
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(505233479)インディヴュームド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】Indivumed GmbH
【Fターム(参考)】