説明

絞りしごき缶被覆用塗料、該塗料を塗布した絞りしごき缶およびそれらの製造方法

【課題】本発明は、絞りしごき加工時に樹脂被膜の破損が生じにくい絞りしごき缶被覆用塗料および該塗料を塗布した絞りしごき缶を提供する。また、該塗料および絞りしごき缶の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む絞りしごき缶被覆用塗料、ならびに(a)熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を得る工程、(b)該溶液を冷却して平均1次粒子径1000nm以下の該熱可塑性樹脂の粒子の懸濁液を得る工程、(c)該懸濁液から粒子を分離する工程、および(d)該分離した粒子を、溶媒中に分散させる工程からなる絞りしごき缶被覆用塗料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞りしごき缶被覆用塗料、該塗料を塗布した絞りしごき缶およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食物などを保存する食缶や飲料缶などの金属缶・容器は、その形状からスリーピース缶とツーピース缶とに大きくわけることができる。スリーピース缶は、上蓋、缶胴、下蓋の3ピースからなり、ツーピース缶は、下蓋(缶底)と缶胴とが一体となったものと上蓋の2ピースからなる。また、このツーピース缶は、その製法(絞り加工としごき加工)から、絞りしごき缶ともよばれており、密封性・薄肉性に優れており、炭酸飲料やビールなどの内圧缶として広く用いられている。
【0003】
ところで、金属缶の場合、缶表面には、耐食性の確保から塗装が施されて使用されている。この塗膜からのオリゴマーなど香味阻害成分の溶出、塗膜による香味成分の吸着などの抑制のため、近年、熱可塑性樹脂を積層したラミネート缶が開発され、ビールやコーラのような炭酸飲料を充填した飲料缶分野で市場に出回っている。しかし、絞りしごき缶は、その製法において加工度が大きく、さらに、近年、省資源の観点から缶の軽量化が切望されており、缶胴部の減厚加工度が高まっているため、成形時に樹脂フィルムに傷が入り易く、缶内面の品質確保ができなくなる等の問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1では、熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムで被覆されたラミネート板の樹脂フィルム被覆面に潤滑油を塗布したシームレス缶用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板が開示されている。特許文献1のシームレス缶の加工においては、潤滑剤を塗布することにより、絞りしごき加工時のしわ押さえ部やダイなどの加工具とラミネート板との間の摩擦を低減し、缶底部のコーナー部の破断や樹脂フィルム欠陥を防ぐものであるが、加工後、潤滑剤を取り除くための脱脂作業が必要であるため、手間と製造コストがかかり、経済的ではない。さらに、用いられている樹脂フィルムの厚さは10〜50μmであり、該フィルムの厚さを10μm以下にすることで、絞りしごき加工において塗膜にピンホールが発生し、充分な耐食性の確保が困難になることが予測され、塗膜の物性等において充分に満足のいくものではない。
【0005】
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂を加熱溶融してフィルムを作製し、金属板に該フィルムを圧接ロールで圧着した後、Tg以下に急冷して樹脂被覆金属板を作製する方法が開示されている。この方法では、樹脂フィルムを被覆した金属板は、絞りしごき缶を形成するために、金属板に被覆した状態で無配向の状態とすることが不可欠であり、金属板に被覆した後に樹脂フィルムの配向を消失させた樹脂フィルム被覆金属板を絞りしごき加工して成形した缶は、加工によって樹脂中に生じた応力を緩和し、配向した樹脂フィルムを熱固定するために熱処理が施される。しかし、この方法では、装置が大掛かりであるため、コストの点で充分に満足がいくものではなく、さらに、樹脂フィルムの厚さとしては、5〜60μmであることが記載されているが、ラミネート用フィルムの薄膜化には限界があり、数μm程度のより薄いフィルムを得ることは難しい。そのため、外観、加工性、コストの点で充分に満足のいくものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−24722号公報
【特許文献2】特開2002−120278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、絞りしごき加工時に樹脂被膜の破損が生じにくい絞りしごき缶被覆用塗料および該塗料を塗布した絞りしごき缶を提供する。また、該塗料および絞りしごき缶の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む絞りしごき缶被覆用塗料に関する。
【0009】
また、本発明は、絞りしごき缶被覆用塗料の製造方法であって、(a)熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を得る工程、(b)該溶液を冷却して平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子の懸濁液を得る工程、(c)該懸濁液から粒子を分離する工程、および(d)該分離した粒子を溶媒中に分散させる工程からなる製造方法に関する。
【0010】
さらに、本発明は、前記絞りしごき缶被覆用塗料を塗布した絞りしごき缶、および前記絞りしごき缶に、さらに前記絞りしごき缶被覆用塗料を塗布した絞りしごき缶に関する。
【0011】
また、本発明は、絞りしごき缶の製造方法であって、(e)前記絞りしごき缶被覆用塗料を金属板に塗布する工程、および(f)該塗布した塗料を加熱して粒子を溶融させる工程からなる製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の絞りしごき缶被覆用塗料に含まれる熱可塑性樹脂は、本来常温では有機溶媒に溶解しにくく、たとえ溶解しても高粘度で、そのまま塗料化できない熱可塑性樹脂の粒子であるが、該熱可塑性樹脂の溶液を冷却することにより、平均1次粒子径を10〜1000nmにできるものであるため、公知の各種重合反応を利用することで得られる粒子のように塗膜物性に影響を与える重合開始剤、乳化剤、分散剤などを使用せずに得られる粒子である。そのため、該熱可塑性樹脂の粒子を含む本発明の絞りしごき缶被覆用塗料を塗布することで、加工度の高い絞りしごき加工時にも樹脂被膜の破損が生じることが少なく、耐食性に優れた絞りしごき缶を製造することができる。また、該塗料は、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性に優れた塗膜を短時間で簡単に形成することができる。さらに、該塗料は、成形加工前の金属板に塗布した場合は、金属板との密着性および耐加工性の点で優れ、成形加工後の缶に塗布した場合は、耐吸着性および香味保持性の点で優れるように、適宜調整することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の絞りしごき缶被覆用塗料は、熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む。
【0014】
本発明の絞りしごき缶被覆用塗料の塗布対象となる金属の素材としては、通常の製缶材料として使用される金属板であればよいが、例えば、アルミニウム、スチール、銅、ステンレス鋼板、ならびにこれらに表面処理を施した金属板、例えば、極薄スズメッキ鋼板、スズメッキ鋼板(ブリキ)、ニッケルメッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、電解クロム酸処理鋼板(ティンフリースチール)、クロムメッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、リン酸処理鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板などがあげられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。金属メッキ鋼板には、耐食性および熱可塑性樹脂との接着の観点から、表面処理が施されているものが望ましく、たとえばクロメート処理、リン酸処理、有機無機複合処理などである。
【0015】
さらには2層クラッド、部分クラッド、多層クラッド、完全被覆クラッドなど種類を問わずクラッド材が使用可能であり、たとえばニッケル/ステンレス鋼クラッド材、モネル/ステンレス鋼クラッド材、銅/ステンレス鋼クラッド材、ステンレス鋼/鉄/ステンレス鋼クラッド材、タンタル/銅/ステンレス鋼クラッド材、チタン/ステンレス鋼/ニッケルクラッド材、アルミニウム/ステンレス鋼クラッド材、鉄/銅クラッド材、アルミニウム/ニオブクラッド材、アルミニウム/チタン/ステンレス鋼クラッド材、銅/アルミニウムクラッド材、銅/ニッケルクラッド材、ニッケル/鉄クラッド材などがあげられる。
【0016】
板厚は、絞りしごき缶の中で最も厚い部分である缶底部の厚みを有していればよく、例えば、0.1〜0.5mmの厚さを有することが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3mmである。特に、表面処理鋼板の場合は、0.1〜0.3mmであることが好ましく、軽金属板の場合には、0.15〜0.4mmの厚みを有することが好ましい。
【0017】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンアルカノエート、ポリブチレンアルカノエート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル樹脂;6ナイロン、66ナイロン、12ナイロン、MXD6ナイロンなどのポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂などがあげられる。なかでも、バリヤー性、透明性、物性、安全性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。また、熱可塑性樹脂としては、再生PET樹脂などに代表される再生樹脂を用いることもできる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0018】
熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルなどの二塩基酸エステル系溶媒、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどのエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒および水ならびにこれらの混合物などがあげられるが、これらに限定されるものではない。なかでも得られた懸濁液から粒子を分離した後の液をさらに熱可塑性樹脂を溶解する溶媒として繰り返し使うことが可能である点から、熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合には、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルからなる混合エステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトン、2−(2−メトキシエトキシ)エタノールが、熱可塑性樹脂としてナイロンを用いる場合には、ベンジルアルコール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0019】
熱可塑性樹脂を溶解する際の溶媒の温度は、70〜200℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートである場合は、130〜190℃であることがより好ましく、140〜185℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリ乳酸である場合は、70〜150℃であることがより好ましく、100〜140℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリグリコール酸である場合は、130〜170℃が好ましく、140〜160℃がさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、MXD6ナイロンである場合は、130〜180℃であることがより好ましく、150〜170℃であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂が、6ナイロンである場合は、120〜180℃であることがより好ましく、130〜170℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が66ナイロンである場合は、150〜190℃であることがより好ましく、170〜180℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、12ナイロンである場合は、120〜150℃であることがより好ましく、130〜140℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートである場合は、130〜180℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。溶媒の温度が、70℃未満であると熱可塑性樹脂が溶解しないため、目的とする平均1次粒子径10〜1000nmの粒子が得られない傾向にあり、200℃をこえると熱可塑性樹脂あるいは溶媒の分解が起こり黄色に変色する傾向がある。
【0020】
熱可塑性樹脂の溶媒への配合量は、溶媒100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましく、1〜10重量部がさらに好ましい。配合量が1重量部未満であると、生産性の点で問題がある。また、30重量部を超えると、目的とする平均1次粒子径1000nm以下の粒子を得ることが困難になる傾向がある。
【0021】
熱可塑性樹脂の溶液の冷却手段としては、熱交換器などの冷却装置があげられる。該冷却手段を使用して、70〜200℃の熱可塑性樹脂溶液を、50℃以下に冷却することが好ましく、より好ましくは45℃以下である。冷却後の溶液の温度が50℃をこえると、得られる粒子の1次粒子径、2次粒子径共に大きくなる傾向がある。
【0022】
冷却方法としては、熱可塑性樹脂の溶液そのものを熱交換器を使用して冷却する方法と、熱交換器を使用して20〜−90℃に冷却された溶媒と該熱可塑性樹脂の溶液を混合することで冷却する方法があげられる。冷却効率の点から、冷却された溶媒と混合する方法が好ましい。
【0023】
冷却速度としては、20℃/s以上が好ましく、50℃/s以上がより好ましく、100℃/s以上がさらに好ましい。20℃/s未満であると、得られる粒子の1次粒子径が1000nmを超える傾向がある。
【0024】
冷却して得られる熱可塑性樹脂の粒子の平均1次粒子径10〜1000nmであり、好ましくは10〜800nmであり、より好ましくは30〜500nm、さらに好ましくは50〜300nmである。平均1次粒子径が1000nmをこえると、塗膜の膜厚が大きくなる、または薄膜にした場合に、連続膜にならないなどの問題が生じる傾向があり、10nm未満であると、得られた懸濁液の粘度が高くなり、分離操作が困難になる傾向がある。
【0025】
前記粒子の平均2次粒子径は30μm以下が好ましく、1〜10μmがより好ましい。平均2次粒子径が30μmをこえると、塗布した際に膜厚が大きくなり、求める塗膜を得ることができない傾向がある。
【0026】
ここで、1次粒子とは、それ以上に分散できない状態の粒子をいう。また、2次粒子とは、1次粒子が凝集した状態の粒子をいう。
【0027】
粒子を含む懸濁液から、粒子を分離する方法としては、ろ過、遠心分離などがあげられるが、これらに限定されるものではない。ろ過するためのフィルターとしては、たとえばセラミックフィルターなどがあげられる。
【0028】
また、粒子を分離したのち、粒子を乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、真空乾燥、自然乾燥、ドライヤーまたはオーブンによる乾燥など、特に限定されるものではない。ただし、ドライヤーまたはオーブンによる乾燥を行なう際は、粒子が溶融しない温度に設定する必要がある。
【0029】
本発明の絞りしごき缶被覆用塗料は、平均1次粒子径10〜1000nmである熱可塑性樹脂粒子からなるものである。しかし、該熱可塑性樹脂粒子相互の混合物からなるものであっても良いし、該熱可塑性樹脂粒子に硬化剤などの添加剤を加えてもよい。さらに、該熱可塑性樹脂粒子をその他の塗料に添加して使用してもよい。該熱可塑性樹脂粒子をその他の塗料に添加することで、より強靭な塗膜を形成することができるため好ましい。
【0030】
前記塗料としては、一般的に塗料として用いられているものであれば、特に限定はされないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂などからなる熱硬化型塗料をあげることができる。
【0031】
得られた粒子を分散させる溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルなどの二塩基酸エステル系溶媒、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどのエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒および水ならびにこれらの混合物などがあげられるが、これらに限定されるものではなく、求める塗料に適したあらゆる溶媒を使用することができる。
【0032】
熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートである場合は、シクロヘキサノンおよびキシレン混合溶媒、ジメチルアセトアミド、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルからなる混合エステル系溶媒、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトン、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチル、水が好ましく、熱可塑性樹脂が、MXD6ナイロンである場合は、ジメチルアセトアミドが好ましく、熱可塑性樹脂が12ナイロンである場合は、ジメチルアセトアミド、ベンジルアルコールが好ましく、熱可塑性樹脂が66ナイロンである場合はベンジルアルコールが好ましく、熱可塑性樹脂が6ナイロンである場合は、ジメチルアセトアミド、ベンジルアルコールが好ましく、熱可塑性樹脂がポリ乳酸である場合は、ジメチルアセトアミド、酢酸ブチル、コハク酸ジメチル、メチルイソブチルケトンが好ましく、熱可塑性樹脂がポリグリコール酸である場合は、ビス(2−メトキシエチル)エーテルが好ましく、熱可塑性樹脂がポリカーボネートである場合はジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルからなる混合エステル系溶媒が好ましい。分散させる際に、一般的に使用されている分散剤を用いてもよい。分散剤の使用量としては、特に限定されるものではなく、求める塗膜の性能を損なわない程度で使用できるものである。
【0033】
また、必要により、たとえば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸類、アルキルリン酸などのリン酸類などの酸触媒、該酸触媒のアミンブロック体などの硬化助剤、レベリング剤、濡れ剤、消泡剤、滑剤などの添加剤、顔料などの着色剤などが配合されていてもよい。
【0034】
熱可塑性樹脂粒子の添加量は、塗料に含まれる全樹脂中、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることがさらに好ましく、20重量%以上であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂の添加量が、5重量%未満であると、得られた塗膜にピンホールが発生する傾向がある。
【0035】
また、熱可塑性樹脂粒子と溶媒との割合は、特に限定されるものではなく、求める塗膜に応じて、適宜調整すればよい。
【0036】
熱可塑性樹脂粒子の分散方法としては、超音波による分散、攪拌機による分散などがあげられる。たとえば、ホモジナイザー、ホモミキサー、ロールミル、ビーズミル、高圧型湿式微粉化装置などがあげられる。
【0037】
2次粒子を溶媒に分散する場合、溶媒および分散方法を選択して、微粒化することが好ましく、最終的には1次粒子とすることがより好ましい。微粒化することは、塗膜厚を所望の厚さに制御することが可能となり、より滑らかな塗膜に仕上げることが可能である。
【0038】
本発明の塗料の塗装は、たとえば、ロールコート法、スプレーコート法、ハケ塗り法、ヘラ塗り法、浸漬塗装法、電着塗装法、静電塗装法などの公知の方法によって行うことができる。
【0039】
本発明の塗料を用いて塗膜を形成する場合の該塗料の塗布量は、該塗料の乾燥後の重量が、0.1〜50g/m2であることが好ましく、より好ましくは1〜50g/m2、さらに好ましくは3〜20g/m2となるように調整される。
【0040】
本発明の塗料からの塗膜の形成は、塗料を塗布した後に、加熱により溶媒を蒸発させ、その後粒子を溶融させることで行う。これにより、ピンホールがなく、均一な塗膜が形成され、耐溶剤性などに優れた塗膜が得られる。
【0041】
加熱温度は100〜300℃が好ましく、150〜280℃がより好ましい。また、加熱時間は、10〜60秒が好ましく、15〜30秒がより好ましい。さらに、加熱後、水冷することが好ましい。水冷を行なうことで、塗膜の外観、加工性などの諸物性がより優れるためである。
【0042】
本発明の絞りしごき缶は、本発明の塗料で被覆した金属板を用いて成形することによっても得られるし、無塗装の絞りしごき缶に本発明の塗料で被覆することによっても得られる。
【0043】
また、本発明の塗料を塗布した絞りしごき缶に、さらに、本発明の塗料を塗布することもできる。絞りしごき加工においては、延伸速度が異なる被覆樹脂と金属が同時に延伸されるため、樹脂被膜の割れなどの欠陥が生じることがあり、さらに、使用する金型により樹脂被膜に傷が入ることもある。その場合に、樹脂被膜の欠陥が生じた部分、欠陥が生じた面全体、または缶全体に本発明の塗料を再度塗布することで、該欠陥の補修をすることが可能となる。塗布方法としては、スプレーコート法、はけ塗り法、へら塗り法、浸漬塗装法、静電塗装法などをあげることができる。絞りしごき缶の製造方法および形状は、公知の各種の方法および形状が採用できる。
【0044】
最も一般的な方法としては、しごきポンチを用いて一段階もしくは数段階しごき加工する方法により製造することができる。たとえば、絞りしごき加工は下記のような条件下行なうことができる。
プランク径 :100〜200mm
絞り条件 :一段絞り比 1.1〜2.4
二段絞り比 1.1〜1.6
絞りしごき径:3段アイアニング 20〜100mmφ
加工度 :20〜80%
【0045】
本発明の絞りしごき缶を作製する際の加工度は、特に限定されるものではなく、幅広い加工度に対応することができ、たとえば、10〜68%の加工度であれば、充分な耐食性を有した塗膜を形成することが可能である。加工度が10%未満であると、コスト的にメリットがなくなる傾向があり、68%をこえると、成形加工に塗膜が耐えられず、亀裂欠陥が生じる場合があり、耐食性が充分に確保することができない傾向がある。加工度は、下記式により計算することができる。
加工度=[(Ta−Tb)/Ta]×100
【0046】
ここで、Taは、缶底部の板厚であり、Tbは、缶壁部の金属板の最も薄い部分の板厚である。
【0047】
絞りしごき缶としては、たとえば、飲料缶、食缶、美術缶、エアゾール缶、電池缶、コンデンサー、キャパシタなどがあげられる。
【0048】
本発明の絞りしごき缶被覆用塗料を塗布することで、加工度の高い絞りしごき加工時にも樹脂被膜の破損が生じることがなく、耐食性に優れた絞りしごき缶を製造することができる。さらに、該塗料は、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性に優れた塗膜を短時間で簡単に形成することができる。
【実施例】
【0049】
つぎに、本発明の塗料を、実施例にもとづいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
<平均1次粒子径>
走査型電子顕微鏡(JEM−6301F、日本電子株式会社製)、動的光散乱式粒径分布測定装置(LB−550、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
【0051】
<膜厚>
電磁誘導/過電流式膜厚計(LZ−200W、株式会社ケット科学研究所製)を用いて測定した。
【0052】
<成形直後の缶底部のクラック、スジ等不具合の有無の確認>
成形直後の缶底部のクラック、スジなど不具合発生の有無を目視にて確認し、以下の評価方法で評価した。
◎・・・スジもクラックも発生しておらず、まったく問題がない。
○・・・クラックはなく、スジがわずかに入っている。
△・・・クラックはなく、スジがはっきりと確認できる。
×・・・クラックが発生している。
【0053】
<成型後の缶内外面被覆樹脂の密着性評価>
絞りしごき加工して得られた缶の内面をイオン交換水で洗浄し、260℃、風速8m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)にて60秒で乾燥した後の密着性を評価した。密着性の評価方法は、JIS K−5400(1990)に準拠し、缶内外面とも缶体の最上部により30mmのところで、1mm幅でます目の合計が100個(10×10)になるように碁盤目に傷をいれ、傷をいれた塗膜上に株式会社ニチバン製セロテープ(登録商標)を貼り付け、塗面に対して90°方向に勢いよく剥がしたときの剥離したます目の数により塗膜の密着性を評価した。
◎・・・まったく剥離なし。
○・・・1〜5個/100個の剥離あり。
△・・・5個以上/100個の剥離あり。
【0054】
<成型後の缶内外面の傷つきや破れの評価>
絞りしごき加工して得られた缶の内面をイオン交換水で洗浄し、熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)にて50℃×1時間で乾燥した後、缶内外面の通電量を測定した。通電量測定については、缶体を陽極、陰極を銅線とし、缶体を0.1重量%食塩水の電解液で浸して、6Vの電圧を印加し、4秒後の通電量をミリアンペア(mA)表示する。この値が小さいほど、塗膜欠陥が少なく、良好な塗装がなされている。
【0055】
<成型後の缶内面のリモンネン吸着性>
絞りしごき加工して得られた缶の内面をイオン交換水で洗浄し、熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)にて50℃×1時間で乾燥した後、市販の清涼飲料水マッチ(大塚食品株式会社製)をリパックし、70℃×10分後、38℃×24時間保存した。容器内の飲料を出した後、イオン交換水で洗浄、水分を乾燥エアーで吹き飛ばし、試験缶を得た。試験缶は、ヘキサン350mlを用いて抽出(38℃×24時間)し、GC−MS(株式会社島津製作所製 GCMS−9P5050)で分析して、缶内面に吸着されたリモネン量を測定した。
【0056】
<過マンガン酸カリウム(KMnO4)消費量>
塗装板600cm2に対して、600ccの蒸留水を用いて130℃×30分のレトルト抽出を行い、厚生省告示20号に基づき試験を行なった。
【0057】
抽出液と空試験に対し、以下の計算式で算出した。
KMnO4消費量(ppm)=((a−b)×1000×0.316)/100
a:本試験における0.01N過マンガン酸カリウム溶液の滴定量(mL)
b:空試験における0.01N過マンガン酸カリウム溶液の滴定量(mL)
【0058】
<全有機炭素量(TOC)>
塗装板600cm2に対して、600ccの蒸留水を用いて130℃×30分のレトルト抽出を行い、全有機炭素計(株式会社島津製作所製 TOC−V CHS/CSN)を用いて全有機炭素量を測定した。
【0059】
製造例1(ポリエチレンテレフタレート樹脂粒子の製造)
温度計、攪拌器を備えつけた容量1Lの4つ口フラスコに熱可塑性樹脂として8モル%のイソフタル酸を共重合させたポリエチレンテレフタレート(MA−1340P、ユニチカ株式会社製)を30g、溶媒として、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルの混合物(DBE(登録商標)、デュポン株式会社製)570gを量り取った。その後、窒素を通気しながら液温を180℃にして、熱可塑性樹脂を溶媒中に溶解させた。得られた溶液を、熱交換器(エムテクニック株式会社製)により−35℃に冷却したDBE溶媒と混合することにより、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液を得た。混合した時点から1秒後の懸濁液の温度は45℃であった。
【0060】
得られた懸濁液から、シャープレス遠心分離機(巴工業株式会社製)を用いて粒子を分離し、濾過ケーキを得た。得られたケーキは溶剤含有率75%であった。
【0061】
また、得られた粒子のSEM画像(図1)および粒径分布(図2)より、平均1次粒子径は200nm以下であった。
【0062】
製造例2(ポリブチレンテレフタレート樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレート(ノバデュラン5008、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)、溶媒としてジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を用いて、溶解時の温度を160℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液を得た。混合した時点から1秒後の懸濁液の温度は、45℃であった。
【0063】
得られた懸濁液から、製造例1と同様、シャープレス遠心分離機を用いて粒子を分離し、濾過ケーキを得た。得られたケーキの溶剤含有率は90%であった。
【0064】
また、得られた粒径分布(図3)より、平均1次粒子径は200nm以下であった。
【0065】
製造例3(ポリ乳酸樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリ乳酸、溶媒としてDBEを用いて、溶解時の温度を140℃、冷却温度を−35℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0066】
得られたケーキの溶剤含有率は71%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図4)より250nm以下であった。
【0067】
製造例4(ポリグリコール酸樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリグリコール酸(PGA−P 三井化学株式会社)、溶媒としてビス(2−メトキシエチル)エーテルを用いて、溶解温度を150℃、冷却温度を−35℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0068】
得られたケーキの溶剤含有率は73%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図5)より150nm以下であった。
【0069】
製造例5(MXD6ナイロン樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてMXD6ナイロン(メタキシリレンジアミンアジパミド、6007、三菱ガス化学株式会社製)、溶媒としてジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を用いて、溶解温度を160℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0070】
得られたケーキの溶剤含有率は80%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図6)より350nm以下であった。
【0071】
製造例6(6ナイロン樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂として6ナイロン(ノバミッド1010J、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(三菱化学株式会社製)を用いて、溶解温度を170℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0072】
得られたケーキの溶剤含有率は79%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図7)より350nm以下であった。
【0073】
製造例7(66ナイロン樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂として66ナイロン(ノバミッド3010、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、溶媒としてベンジルアルコール(東北東ソー化学株式会社製)を用いて、溶解温度を170℃、冷却温度を−15℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0074】
得られたケーキの溶剤含有率は77%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図8)より200nm以下であった。
【0075】
製造例8(ポリカーボネート樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリカーボネート(ユーピロンS−2000R、三菱ガス化学株式会社製)、溶媒としてDBEを用いて、溶解温度を170℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0076】
得られたケーキの溶剤含有率は64%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図9)より300nm以下であった。
【0077】
実施例1
製造例1で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂のケーキ150.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコール−n−モノブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.0g、DBE98.0gおよび2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)で2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分15.0%、粘度44秒(フォードカップNo.4)であった。
【0078】
得られた塗料をバーコーターを用いてアルミニウム板(A3004材、素板厚 0.30mm、住友軽金属工業株式会社製)の内外面に、乾燥後の膜厚が5μmになるように塗装(乾燥後塗布量7.0g/m2)し、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷し、樹脂被覆板を得た。
【0079】
得られた樹脂被覆板を板温50℃で絞り加工を行い、カップを得た。このカップの温度を50℃にし、しごき加工を付加した再絞り加工を行った後、金型温度を35℃に固定し、最終加工度が67%のしごき加工を行い、350mlサイズの缶を作製した。加工の条件を以下に示す。
プランク径 :137mm
絞り条件 :一段絞り比 1.6
二段絞り比 1.3
絞りしごき径:3段アイアニング 65.8mmφ
加工度 :〔(Ta−Tb)/Ta〕×100
(Ta:缶底部の板厚、Tb:缶壁部の最も薄い部分の板厚)
【0080】
得られた缶の内側面の評価結果を表1に示す。
【0081】
実施例2
乾燥後の塗膜が10μmになるように塗装(乾燥後塗布量14.0g/m2)した以外は、実施例1と同様の方法で絞りしごき缶を得た。得られた絞りしごき缶の内側面および外側面の性能試験の結果を、それぞれ表1(内側面)および表2(外側面)に示す。以下の実施例で得られた塗膜の性能試験についても表1に内面側の結果、表2に外面側の結果を示す。
【0082】
実施例3
実施例1で得られた350mlサイズの缶の内面側に、乾燥塗膜の重量が100mg/缶(約3μm)になるように、実施例1で得られた塗料を均一にスプレー塗装し、260℃、30秒間焼付けて、乾燥させた。得られた絞りしごき缶の評価結果を表1に示す。
【0083】
実施例4
製造例2で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂のケーキ200.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコール−n−モノブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.1g、ジメチルアセトアミド 48.9gおよび2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)で2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分8.0%、粘度58秒(フォードカップNo.4)であった。
【0084】
内面側に実施例1で得られた塗料で樹脂被覆された(乾燥後塗布量14.0g/m2)アルミニウム板(A3004材、素板厚 0.30mm、住友軽金属工業株式会社製)の外面側に得られた塗料をバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が10μmになるよう塗装(乾燥後塗布量13.0g/m2)し、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷し、樹脂被覆板を得た。
【0085】
得られた樹脂被覆板を実施例1と同様の方法で絞りしごき缶を得た。得られた絞りしごき缶の評価結果を表2に示す。
【0086】
実施例5
製造例3で得られたポリ乳酸樹脂のケーキ155.2g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.4g、DBE 92.4g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分18.0%、粘度40秒(フォードカップNo.4)であった。
【0087】
内面側に実施例1で得られた塗料で樹脂被覆された(乾燥後塗布量14.0g/m2)アルミニウム板(A3004材、素板厚 0.30mm、住友軽金属工業株式会社製)の外面側に得られた塗料をバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が10μmになるように塗装(乾燥後塗布量13.0g/m2)し、200℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷し、樹脂被覆板を得た。
【0088】
得られた樹脂被覆板を実施例1と同様の方法で絞りしごき缶を得た。得られた絞りしごき缶の評価結果を表2に示す。
【0089】
実施例6
製造例4で得られたポリグリコール酸樹脂のケーキ162.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.4g、ビス(2−メトキシエチル)エーテル 85.6g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分17.5%、粘度43秒(フォードカップNo.4)であった。
【0090】
内面側に実施例1で得られた塗料で樹脂被覆された(乾燥後塗布量14.0g/m2)アルミニウム板(A3004材、素板厚 0.30mm、住友軽金属工業株式会社製)の外面側に得られた塗料をバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が10μmになるように塗装(乾燥後塗布量16.0g/m2)し、230℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷し、樹脂被覆板を得た。
【0091】
得られた樹脂被覆板を実施例1と同様の方法で絞りしごき缶を得た。得られた絞りしごき缶の評価結果を表2に示す。
【0092】
実施例7
製造例5で得られたMXD6ナイロン樹脂のケーキ175.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.9g、ジメチルアセトアミド 73.1g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分14.0%、粘度50秒(フォードカップNo.4)であった。
【0093】
内面側に実施例1で得られた塗料で樹脂被覆された(乾燥後塗布量14.0g/m2)アルミニウム板(A3004材、素板厚 0.30mm、住友軽金属工業株式会社製)の外面側に得られた塗料をバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が10μmになるように塗装(乾燥後塗布量12.0g/m2)し、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷し、樹脂被覆板を得た。
【0094】
得られた樹脂被覆板を実施例1と同様の方法で絞りしごき缶を得た。得られた絞りしごき缶の評価結果を表2に示す。
【0095】
実施例8
製造例6で得られた6ナイロン樹脂のケーキ166.7g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.9g、N−メチル−2−ピロリドン 81.4g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分14.0%、粘度54秒(フォードカップNo.4)であった。
【0096】
内面側に実施例1で得られた塗料で樹脂被覆された(乾燥後塗布量14.0g/m2)アルミニウム板(A3004材、素板厚 0.30mm、住友軽金属工業株式会社製)の外面側に得られた塗料をバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が10μmになるように塗装(乾燥後塗布量11.4g/m2)し、250℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷し、樹脂被覆板を得た。
【0097】
得られた樹脂被覆板を実施例1と同様の方法で絞りしごき缶を得た。得られた絞りしごき缶の評価結果を表2に示す。
【0098】
実施例9
製造例7で得られた66ナイロン樹脂のケーキ157.6g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.0g、ベンジルアルコール 90.4g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分14.5%、粘度58秒(フォードカップNo.4)であった。
【0099】
内面側に実施例1で得られた塗料で樹脂被覆された(乾燥後塗布量14.0g/m2)アルミニウム板(A3004材、素板厚 0.30mm、住友軽金属工業株式会社製)の外面側に得られた塗料をバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が10μmになるように塗装(乾燥後塗布量11.4g/m2)し、280℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷し、樹脂被覆板を得た。
【0100】
得られた樹脂被覆板を実施例1と同様の方法で絞りしごき缶を得た。得られた絞りしごき缶の評価結果を表2に示す。
【0101】
実施例10
製造例8で得られたポリカーボネート樹脂のケーキ156.3g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)3.0g、DBE 90.7g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分22.5%、粘度60秒(フォードカップNo.4)であった。
【0102】
内面側に実施例1で得られた塗料で樹脂被覆された(乾燥後塗布量14.0g/m2)アルミニウム板(A3004材、素板厚 0.30mm、住友軽金属工業株式会社製)の外面側に得られた塗料をバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が10μmになるように塗装(乾燥後塗布量11.0g/m2)し、250℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷し、樹脂被覆板を得た。
【0103】
得られた樹脂被覆板を実施例1と同様の方法で絞りしごき缶を得た。得られた絞りしごき缶の評価結果を表2に示す。
【0104】
比較例1
二軸延伸ポリエステルフィルム11.5μm(ルミラーS10 #12 東レ株式会社製)をアルミニウム板(A3004材、素板厚 0.30mm、住友軽金属工業株式会社製) の内外面に、板温250℃、ラミネートロール温度160℃、通板速度30m/分で熱ラミネートし、直ちに水冷することによりラミネートによる樹脂被覆板を得た。
【0105】
得られた樹脂被覆板を実施例1と同様の方法で絞りしごき缶を得た。
【0106】
得られた絞りしごき缶の評価結果を表1、表2に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】製造例1で得られた熱可塑性樹脂の1次粒子のSEM画像(×35000倍)である。
【図2】製造例1で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図3】製造例2で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図4】製造例3で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図5】製造例4で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図6】製造例5で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図7】製造例6で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図8】製造例7で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図9】製造例8で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【符号の説明】
【0110】
1 1次粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む絞りしごき缶被覆用塗料。
【請求項2】
絞りしごき缶被覆用塗料の製造方法であって、
(a)熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を得る工程、
(b)該溶液を冷却して平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子の懸濁液を得る工程、
(c)該懸濁液から粒子を分離する工程、および
(d)該分離した粒子を溶媒中に分散させる工程、
からなる製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の絞りしごき缶被覆用塗料を塗布した絞りしごき缶。
【請求項4】
請求項1記載の絞りしごき缶被覆用塗料を塗布した絞りしごき缶に、さらに該絞りしごき缶被覆用塗料を塗布した絞りしごき缶。
【請求項5】
絞りしごき缶の製造方法であって、
(e)請求項1記載の絞りしごき缶被覆用塗料を金属板に塗布する工程、および
(f)該塗布した塗料を加熱して粒子を溶融させる工程、
からなる製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−45543(P2006−45543A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193957(P2005−193957)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(591176225)桜宮化学株式会社 (22)
【Fターム(参考)】