説明

給水栓の弁装置

【課題】止水時の給水圧の急激な高まりを抑えWHを低減させることのできる給水栓の弁装置を提供すること。
【解決手段】スライド操作により吐水及び止水を選択可能なスライド自在なボタン2と、主弁30と副弁60とを備えた給水栓の弁装置において、ボタン2には、ボタン2のスライド操作により主弁30による開閉が可能な主流路88及び副弁60による開閉が可能な副流路86とが備えられ、吐水状態におけるボタン2の操作位置においては主弁30及び副弁60が開放状態とされ、止水状態におけるボタン2の操作位置においては主弁30及び副弁60が閉止状態とされるとともに、主弁30及び副弁60が閉止状態となるボタン2の操作位置と近接した操作位置において、主弁30が主流路88を閉止するとともに、副弁60が副流路86を開放可能な位置に、主弁30、主流路88、副弁60及び副流路86を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水栓の弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボタンを備えて当該ボタン操作により弁体を開閉駆動し、吐止水を行うことが可能な給水栓用弁装置が知られている。例えば、シャワーヘッドにおいて、シャワー散水口に至る通水路の開口部にシートパッキンが装着され、この開口部に対して横方向に移動可能なボール弁が備えられており、また、シャワーヘッド本体を貫通するようにしてプッシュボタンユニットが摺動自在にシャワーヘッドに取り付けられており、このプッシュボタンユニットをシャワーヘッド本体のいずれかの側面から押し込むことにより、ボール弁が開口部に対して移動され、開口部を開閉することにより、散水口からの吐止水を操作させることができるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3364787号公報(図1、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の弁装置においては、止水弁の閉止時に、給水圧により止水弁が開口部に急激に圧着される。よって、それまで開口部を流れていた湯水が開口部の急激な閉止により止められるため、給水栓内部の給水圧が急激に高まり、給水栓に衝撃、いわゆるウォーターハンマー(以下「WH」とする)が生ずる場合があった。このようなWHによりシャワーヘッドなどの水栓部品に不快な衝撃が伝わったり、場合によっては、このWHにより弁装置が破損するおそれもあった。
【0005】
本発明は前述した従来の給水栓の弁装置の問題点を解消するものであり、止水時の給水圧の急激な高まりを抑えWHを低減させることのできる給水栓の弁装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の採った手段を以下に説明する。本発明の給水栓の弁装置は、スライド操作により吐水及び止水を選択可能なスライド自在なボタンと、主弁と副弁とを備えた給水栓の弁装置であって、
前記ボタンには、前記ボタンのスライド操作により前記主弁による開閉が可能な主流路及び前記副弁による開閉が可能な副流路とが備えられ、
吐水状態における前記ボタンの操作位置においては前記主弁及び前記副弁が開放状態とされ、止水状態における前記ボタンの操作位置においては前記主弁及び前記副弁が閉止状態とされるとともに、
前記主弁及び前記副弁が閉止状態となる前記ボタンの操作位置と近接した操作位置において、前記主弁が前記主流路を閉止するとともに、前記副弁が前記副流路を開放可能な位置に、前記主弁、前記主流路、前記副弁及び前記副流路が配設されたことを特徴とする給水栓の弁装置である(請求項1)。
【0007】
このような位置に主弁、主流路、副弁及び副流路が配設されることにより、完全に止水状態となるボタンの操作位置の直前に、主弁を閉止しつつ副弁は開放する状態とすることができる。通常の止水状態には主弁及び前記副弁は閉止されており、一方、通常の吐水状態には主弁及び副弁共に開放されているが、吐水位置から止水位置にボタンを操作する際に、まずは主弁のみが閉止されてからその後に副弁も閉止されるように、主弁及び副弁が段階的に閉止されるようにすることができる。よって、主弁により流量を減少させた後に副弁を閉止させることにより止水することができ、一段階で完全に閉止された場合のように一次側の給水圧が急激に高まることはなく、一次側の急激な給水圧の高まりを減少させることができる。また、「前記主弁及び前記副弁が閉止状態となる前記ボタンの操作位置と近接した操作位置」とは、止水操作時において通常の止水操作位置となる直前において、前述のように主弁が主流路を閉止するとともに副弁が副流路を開放するような位置を意味しており、具体的な位置関係は限定されないが、一定範囲において止水位置にできる限り近接した位置が望ましく、「前記主弁及び前記副弁が閉止状態となる前記ボタンの操作位置と近接した操作位置」は、給水栓の操作性からみて、少なくともボタンのスライド量のうち止水状態の操作位置寄りに設けることが望ましい。例えば、ボタンのスライド量のうち止水状態のボタンの操作位置から約7分の1スライドされた位置とすることが好ましい。
【0008】
ここで、「スライド自在なボタン」は、ボタン自体がスライド自在であるものを指し、ボタンの両端をスライド方向に対して押動操作してスライドさせるプッシュボタンなどや、ボタンのスライド方向に平行して操作可能なつまみなどを備えて、このつまみなどをスライド方向と同じ方向に操作してボタン自体をスライドさせるスライドボタンなどを含む。主弁、副弁、主流路及び副流路の位置は、前述のように各弁の開閉が可能な位置であれば特に限定はされないが、例えば、主弁が主流路を閉止したボタンの操作位置において、副弁は副流路から若干ずれた位置に位置すると共に、さらに止水位置にボタンが移動すれば副弁が副流路を閉止可能となるように配設するものを例示できる。また、前記主弁を前記ボタンの一次側に配設し、前記副弁を前記ボタンの二次側に配設することとしても良い(請求項2)。
【0009】
また、前述した給水栓の弁装置において、前記副流路の開口面積を、前記主流路の開口面積よりも小さく設けることとすると(請求項3)、ボタン操作により主流路が閉止された後に、さらに副流路が閉止されて弁装置が完全に閉止される際に、副流路の閉止による一次側の給水圧の急激な高まりを防止することができ好適である。なお、副流路の開口面積が大きいと主流路が閉止された後に副流路が閉止される際に大きなWHが生ずるおそれがあるので、主流路の開口面積に対する副流路の開口面積を比較的小さくすることが望ましいが一方であまりに小さくすると主流路のみが閉止された際のWHが大きくなるおそれがある。よって例えば、主流路と副流路の開口面積の比率は、5対1から20対1に設けることが好ましく、さらに好ましくは10対1から20対1に設けることが良い。
【0010】
また、本弁装置を用いる吐水具や水栓部品等に対して着脱自在に設けること(請求項4)としても良い。このように設けることにより、必要な場合にのみ本弁装置を水栓部品等に用いることにより、水栓部品等の全体のコストを低減させることができる。
【0011】
また、本弁装置をシャワーヘッドに適用しても良い(請求項5)。シャワーヘッドは、使用者が直接把持し、WHの衝撃を直接使用者が受けるため、本弁装置によりWHを低減させることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の弁装置は、前述のように主弁、主流路、副弁及び副流路が配設され、一次側の急激な給水圧の高まりを減少させることができるので、止水操作時のWHを低減させることができ、不快な衝撃や弁装置等の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の弁装置を用いたシャワーヘッドの平面視横断面図である。
【図2】図1のシャワーヘッドの側面視縦断面図である。
【図3】主弁が閉状態、副弁が閉状態の弁装置の拡大横断面図である。
【図4】主弁が全開状態、副弁が開状態の弁装置の拡大横断面図である。
【図5】主弁が開状態、副弁が開状態の弁装置の拡大横断面図である。
【図6】主弁が微開状態、副弁が開状態の弁装置の拡大横断面図である。
【図7】主弁が閉状態、副弁が開状態の弁装置の拡大横断面図である。
【図8】ボタンの要部拡大斜視図である。
【図9】主弁の一部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[シャワーヘッド1の全体構成]
次に、本発明の弁装置の実施の形態を図を参考にして詳細に説明する。図1及び図2に示すように、本発明の弁装置20は、給水栓本体(図示省略)にシャワーホース(図示省略)を介して接続されるシャワーヘッド1の内部に組み付けられるものである。シャワーヘッド1は、給水栓本体に設けられたハンドル操作により、その内部の通水路12への給水の開始・停止が行われることになるが、ハンドル操作により給水が開始された状態において、シャワーヘッド1のボタン2の操作を行うことにより弁装置20を開閉し、シャワーヘッド1を保持する使用者が手元で吐止水の操作を行うことができるものである。
【0015】
シャワーヘッド1の内部には、シャワーホースから供給された湯水をシャワーヘッド1先端の散水板3へ供給する通水路12が形成されている。通水路12は、細長の全体形状のシャワーヘッド1の長手方向に沿って形成されている。また、シャワーヘッド1は、使用者が把持する基端側のシャワーグリップ部材1aと、先端側に設けられて散水板3を有するヘッド部材1bとから構成されており、シャワーグリップ部材1aの先端に設けられた雌ねじ部にヘッド部材1bの基端側が螺合されて脱着自在に取り付けられている。ヘッド部材1bの基端部外周面にはOリング13が取り付けられ、シャワーグリップ部材1a内周面との水密が図られている。
【0016】
通水路12のうちのシャワーヘッド1基端側の部位の一次側通水路4と、シャワーヘッド1先端側の部位の二次側通水路5との間には、弁装置20が組み付けられる収容室6が形成されている。収容室6は、主弁30及びボタン2を収容する一次側収容室6aと、副弁60を収容する二次側収容室6bとから構成されている。そして、一次側収容室6aは前述したシャワーグリップ部材1aの先端側開口部内に、一次側通水路4の二次側に連通するようにして形成されている。また、二次側収容室6bは前述したヘッド部材1bの基端側開口部内に、二次側通水路5の一次側に連通するようにして形成されている。
【0017】
また、図1に示すように、シャワーグリップ部材1aの一次側収容室6aの先端側には、一次側収容室6a及びシャワーグリップ部材1aを貫通するようにして、シャワーグリップ部材1aの外表面に開口するように形成されたボタン収容孔7a、7bが形成されている。細長の円筒状のボタン2は、このボタン収容孔7a,7bにその軸心方向において摺動自在に取り付けられている。そして、このボタン2を、シャワーヘッド1本体の右側面(図1の下方側)から押し込むことにより散水板3からの散水が行われ、一方、シャワーヘッド1本体の左側面(図1の上方側)から押し込むことにより散水板3からの散水が停止されるように設けられている。そしてまた、このボタン収容孔7a,7bに装着されたボタン2を挟んで、一次側収容室6a内に主弁30が、二次側収容室6b内に副弁60が、対向するようにして配設されている。
【0018】
収容室6の一次側寄りの一次側収容室6aには、一次側通水路4との境の段部8と主弁30との間にコイルばね9が装着されている。コイルばね9の一端側は段部8に当接し、他端側は主弁30の基端側端部に当接されている。また、主弁30の先端側端部はボタン2に当接されている。このようにして、主弁30は、一次側収容室6aの段部8とボタン2との間において、コイルばね9によりボタン2側に向けて付勢されて装着されている。
【0019】
収容室6の二次側寄りの二次側収容室6bには、二次側通水路5との境の段部10とボタン2との間に副弁60が装着されている。副弁60の第1ガイド61内にはコイルばね62が装着されており、第1ガイド61内の弁座63をボタン2側に向けて付勢している。
【0020】
[弁装置20の詳細構成]
次いで、弁装置20について詳細に説明する。弁装置20は、前述の通りシャワーヘッド1内の収容室6内に収容装着されている。図3に示すように、弁装置20を構成する主弁30は、一次側収容室6a内に収容されている。一次側収容室6aは、一次側通水路4の開口部4aの内径よりも大径に形成されており、一次側通水路4との連設部位に段部8が形成されている。コイルばね9の一端側は、一次側通水路4の開口部4aよりも大きな径に形成されており、段部8に係止されるようにして一次側収容室6a内に装着されている。そして、コイルばね9の他端側は、主弁30に係止されている。
【0021】
主弁30は略円筒形状に形成されており、基端側の端部がコイルばね9に当接され、先端側の端部がボタン2に当接されて一次側収容室6a内に装着されている。主弁30には、コイルばね9が係止装着される樹脂製の第1ガイド34と、この第1ガイド34の先端側に取り付けられる樹脂製の第2ガイド42と、第1ガイド34と第2ガイド42との間に挟持されるパッキン50とが備えられている。
【0022】
第1ガイド34には、主体部36と、この主体部36の先端側に連設され、外周に雄ねじが刻設された雄ねじ部41が備えられている。主体部36の内部には、コイルばね9の外径よりもやや大きな内径のばね収容室37が設けられており、ばね収容室37奥端には、コイルばね9の他端が当接可能な段部38が形成されている。コイルばね9は、一次側収容室6aの段部8とばね収容室37の段部38との間に装着されて、主弁30全体をボタン2方向に付勢している。また、主体部36の外周面には一次側収容室6aとの間の水密を図るOリング39が装着されている。また、雄ねじ部41の先端には雄ねじ部41の外径よりも僅かに小径に形成されるとともにパッキン50が装着される小径部41aが形成されている。
【0023】
第2ガイド42はその外径を第1ガイド34の外径とほぼ同一に設けた有底円筒状に形成されている。第2ガイド42の先端側の底部には、後述するパッキン50のシール部54が挿通される先端側開口部43が開設されている。また、第2ガイド42の基端側開口部44内には雌ねじ部46が形成されており、前述した第1ガイド34の雄ねじ部41に螺着されて、第1ガイド34と第2ガイド42とが固定されている。
【0024】
第2ガイド42の外周面には二つの位置決め突起48a,48bが突設されている。これらの位置決め突起48a,48bは第2ガイド42外周面のうち、第2ガイド42の軸心を挟んで対向する位置に形成されている。前述した一次側収容室6aの内周面には、一次側収容室6aの軸心を挟んで対向する位置に、軸心に沿って位置決め用溝11a,11bが形成されており、位置決め突起48a,48bがこれらの位置決め用溝11a,11b内に係止されることにより、一次側収容室6a内の周方向における第2ガイド42の位置決めがなされるように構成されている。
【0025】
図9にも示すように、第2ガイド42の先端面の外周付近には、第2ガイド42の先端方向に突設された突起状の干渉部49a,49bが設けられている。干渉部49a,49bは、第2ガイド42の軸心を挟んで対向する位置に設けられている。また、これらの干渉部49a,49bと位置決め突起48a,48bとは、それぞれ90度ずらした位置に配設されている。
【0026】
パッキン50は薄い円筒状に形成されている。パッキン50には主体部52と、主体部52の先端側に連設されたシール部54が備えられている。主体部52の基端側開口部55はその内径が第1ガイド34先端の小径部41aの外径とほぼ同一に形成されるとともに、基端側開口部55の奥側寄りはこれよりも小径の内径に形成されており、段部56が形成されている。第1ガイド34先端の小径部41aは、この段部56に係止されて主体部52の基端側開口部55内に挿嵌されている。
【0027】
一方、シール部54は主体部52よりも小さな外径に形成されている。シール部54の外径は第2ガイド42の先端側開口部43とほぼ同径に形成されており、パッキン50は第2ガイド42の先端側開口部43からシール部54のみを挿通可能に形成されている。
【0028】
そして、パッキン50は、第1ガイド34の先端と第2ガイド42の先端側開口部43の内側周縁部との間に挟持固定されて、両ガイド34,42の間に固定されている。また、パッキン50がこのように固定された状態で、シール部54の先端面は、第2ガイド42の先端面よりもわずかに突出するように設けられており、後述するようにボタン2に対して第2ガイド42の先端面は当接することなくシール部54のみが当接可能に設けられている。
【0029】
図3に示すように、副弁60は略円筒形状に形成されており、ヘッド部材1bの二次側通水路5内に装着されている。副弁60には、有底円筒状の第1ガイド61と、コイルばね62の他端が係止装着される略円筒状の第2ガイド64と、コイルばね62により付勢されるとともに第1ガイド61と第2ガイド64との間に介装される弁座63とが備えられている。
【0030】
第1ガイド61は第1開口部67を底部68に開設した有底円筒形状に設けられている。また、底部68と反対側の第2開口部69内には、弁座63を支持する円筒状の支持部70が形成されている。
【0031】
第1ガイド61の奥端には第2ガイド64が取り付けられている。第2ガイド64は底部68の第1開口部67よりも大径に形成されており、第1開口部67の周縁部に当接して第1ガイド61内に取り付けられている。第2ガイド64の軸心付近には、コイルばね62の他端が係止される係止部72が設けられている。
【0032】
弁座63は全体が有底長円筒状に形成されており、その先端には半球状のパッキン74が取り付けられている。弁座63の基端側にはコイルばね62が装着される開口部76が設けられている。開口部76の奥端には底部77が形成されており、係止部72に他端が係止されるコイルばね62の一端は、この底部77に係止される。
【0033】
弁座63の開口部76の外周には、外側径方向に向けて突設されたフランジ部80が周設されている。フランジ部80の外周縁は支持部70よりも大径に形成されており、フランジ部80が支持部70端部に当接することにより、コイルばね62により付勢された弁座63が所定位置で止まるように構成されている。
【0034】
このようにして、主弁30と副弁60とは、その軸心をほぼ一直線状に揃えて、ボタン2を介して向き合うように対向して配設されている。また、主弁30と副弁60とは、ボタン2の軸心に対して、ほぼ直交する方向に対向して配設されている。
【0035】
図3及び図8に示すように、ボタン2は前述したように略円筒状に形成されている。ボタン2は、その中央付近の外側面の一端側に主弁30が、その他端側に副弁60が位置するように主弁30と副弁60に挟まれるようにしてボタン収容孔7a,7bに取り付けられている。
【0036】
ボタン2の長手方向における中央付近には、その一端側に、ほぼ平滑な一次側底面83を有する一次側凹部84が形成されている。副流路86及び主流路88の双方を閉止して完全に止水された状態においては、主弁30のパッキン50のシール部54は一次側底面83に密着するように配設されている。一次側凹部84の奥行きはボタン2の外径の約5分の2に設けられている。
【0037】
また、一次側底面83と反対側の他端側の中央付近には、一次側底面83と平行に、ほぼ平滑な二次側底面95を有する二次側凹部94が形成されている。二次側凹部94の奥行きはボタン2の外径の約7分の1に設けられている。なお、本例では二次側凹部94を設けることとしたが図3に示すように、一次側凹部84の端部が主弁30外側面に係止可能に構成され、ボタン2の操作の際の移動規制が可能であるので、二次側凹部94については省略することもでき、二次側凹部94を備えた構成に限定されない。また、別途、ボタン2の操作の際の移動規制が可能な部材等を取り付けるのであれば、一次側凹部84についても省略することもでき、一次側凹部84を備えた構成に限定されない。
【0038】
図8に示すように、ボタン2の長手方向のほぼ中心付近、また、一次側凹部84の中心付近には、一次側凹部84から二次側凹部94にかけてボタン2の径方向に貫通するように、断面円形状の副流路86が開口されている。副流路86の内径は、副弁60のパッキン74の先端部分が嵌入・圧着できる程度に、半球状のパッキン74の外径の約3分の1程度に設けられている。
【0039】
一次側凹部84の一端側端部には、一次側凹部84から二次側凹部94にかけてボタン2の径方向に貫通するように、主流路88が開口されている。主流路88は断面がほぼ正方形状に形成されている。主流路88の一次側凹部84側の第1開口部90は、その一辺が、主弁30のパッキン50のシール部54の開口部内径よりも大きく形成されている。一方、主流路88の二次側凹部94側の第2開口部92は、ボタン2の径方向の二辺が第1開口部90の各辺と同じ長さに設けられ、一方、ボタン2の軸心方向の二辺がシール部54の開口部内径とほぼ同径に設けられた長方形状に設けられている。そして、図3に示すように、これらの第1開口部90及び第2開口部92間には、第1開口部90から第2開口部92側に向けて徐々に開口面積が小さくなるように傾斜内壁面91が備えられて連設されている。
【0040】
一次側底面83のうち、ボタン2の軸心方向に沿う両側部には、前述した主弁30の干渉部49a,49bが当接しながら移動する誘導部96a,96bが形成されている。誘導部96a,96bは、主流路88の両側に位置して一次側底面83に平行な面を備えた突条状の被干渉部97a,97bと、主流路88の第1開口部90の副流路86寄り端部付近から副流路86の軸心にかけて徐々に一次側凹部84側に後退する傾斜誘導部98a,98bとを備えている。また、本例では、この傾斜誘導部98a,98bの被干渉部97a,97bと反対側の端部から、さらに、一次側底面83に平行な面を備えた誘導溝99a,99bが備えられている。
【0041】
被干渉部97a,97bの一次側底面83に対する高さと干渉部49a,49bの高さは、主弁30のパッキン50のシール部54が、被干渉部97a,97b間の一次側底面83に干渉しないように設けられており、これにより、主弁30が開放状態の際にボタン2を操作する際には、シール部54が一次側底面83に干渉されないように設けることができる。一方、誘導溝99a,99bの一次側底面83に対する高さと干渉部49a,49bの高さは、シール部54が副流路86の周囲の一次側底面83に密着するように設けられており、これにより、主弁30が閉止状態の際にはシール部54が一次側底面83に確実に密着するように設けられている。
【0042】
以上のように構成された弁装置20の作用について、図3から図7を参照して説明する。図3に示すように、ボタン2を図の上方側から最下部まで押し込んだ止水時には、主流路88及び副流路86のそれぞれが主弁30又は副弁60によって閉止される。具体的には、主弁30のパッキン50のシール部54が副流路86周りの一次側底面83に密着し、また、副弁60が副流路86周りの二次側底面95に密着することにより、副流路86が閉止されるとともに主流路88も閉止される。
【0043】
一方、図4に示すように、ボタン2を図の下方側から最上部まで押し込んだ吐水時には、主流路88及び副流路86のそれぞれが完全に開放される。具体的には、主弁30及び副弁60に対して、主流路88及び副流路86が止水時よりも上方に向けて位置し、主弁30のパッキン50の開口部からの湯水が主流路88又は副流路86を経て、副弁60の開口部内へ流入する。
【0044】
次いで、図4に示す吐水状態から図3に示す止水状態とするようにボタン2を操作する際の弁装置20の作用について、その遷移状態を順に説明する。図4に示す吐水状態からボタン2を止水位置に押し込んでいくと、まず図5に示すように、吐水状態からボタン2を止水側に押し込み、ボタン2が僅かに止水側(図の下方側)に押し込まれた状態では、主弁30及び副弁60それぞれに対して副流路86が近づくように移動することになるが、主流路88及び副流路86共に開状態である。この状態では、主弁30と主流路88とは全開に近い状態に位置とされていると共に、副弁60のパッキン74は副流路86の開口部にまで至っていない。
【0045】
さらにボタン2を止水側に押し込んだ状態では、図6に示すように、主弁30及び副弁60それぞれに対して副流路86がさらに近づくように移動することになる。この状態では、副弁60のパッキン74は副流路86の開口部にまで至っていない。一方、主弁30のパッキン50は主流路88に対してほぼ閉止状態となっているが、主弁30の干渉部49a,49bが傾斜誘導部98a,98bの途中に位置しているので、パッキン50は一次側底面83に当接しておらず、パッキン50と一次側底面83との間には僅かに隙間が生じており、主流路88も完全には閉止されておらず微開状態とされている。
【0046】
そしてさらに、ボタン2を止水側に押し込んだ状態では、図7に示すように、主弁30及び副弁60それぞれに対して副流路86がさらに近づくように移動することになる。この状態では、主流路88に対して主弁30は完全に閉止状態とされる。しかしながら、副弁60のパッキン74は副流路86の開口部にまで至るものの、副流路86を閉止するまでには至っていない。よって、主弁30内の湯水は主流路88が閉止された状態であっても、副流路86から副弁60内に流入可能とされている。また、副流路86の開口面積が主流路88の開口面積よりも小さく設けられているので、副流路86のみが開口された状態において、副弁60内に流入する湯水の量は大きく減少されている。よって、副流路86も閉止される完全止水の状態に移行する直前において、湯水の吐水量を少量に抑えているので、使用者に対して、吐水から止水へ操作した際の吐水量の減少が不自然に感じられることがない。なお、本例では、副流路86の開口面積は主流路88の開口面積の約20分の1に設けられているが、弁装置20が用いられる状況・製品の態様等に応じて他の比率の開口面積としても良い。
【0047】
そしてさらにボタン2を止水側に押し込んで、止水位置にまで至ると、図3に示すように、主弁30及び副弁60が副流路86の開口部周りに完全に密着して副流路86も完全に閉止される。よって、弁装置20は完全に止水状態となる。ここで、主弁30、副弁60、主流路88及び副流路86について、主弁30が主流路88を閉止するとともに副弁60が副流路86を開放するような位置(図7に示す位置)と、完全な止水位置(図3に示す位置)とは近接した位置とされ、止水操作の際に完全な止水状態となる直前に副流路86のみが開放されるように設けられているが、「近接した位置」の位置関係は具体的に特に限定されず、弁装置20の設置される状況などに応じて一定範囲で変更しても良い。しかしながら、シャワーヘッド1の吐止水操作の操作性の観点からみて、主弁30が主流路88を閉止するとともに副弁60が副流路86を開放するような位置(図7に示す位置)と、完全な止水位置(図3に示す位置)とは、できる限り近接した位置が望ましく、本例では、ボタン2のスライド量のうち止水状態のボタン2の操作位置から7分の1の位置に主弁30が閉止されるとともに副弁60が開放される位置となるように設けられている。
【0048】
本発明の弁装置20では前述のように、完全に止水状態となる前に、主流路88が閉止された状態で副流路86が開放された状態とすることができるので、主流路88が閉止されついで副流路86も閉止され段階的に流量を調節でき、急激な完全止水によるWHを低減することができる。
【0049】
なお、本発明は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本例では主弁30をボタン2の一次側、副弁60をボタン2の二次側に配設したが、これらの弁30,60の位置を入れ替えて副弁60をボタン2の一次側、主弁30をボタン2の二次側に配設することとしても良い。この態様においてはボタン2の一次側凹部84等の位置も入れ替える必要がある。なお、前述の例では、副弁60を二次側に配設して、弁座63を一次側の副流路86に対してコイルばね62により付勢して着座させる構成を採用することにより、止水時にボタン2より一次側の給水圧が異常等により高まった場合には、コイルばね62の付勢力に抗して弁座63が後退することにより逆止弁の役割を果たし、シャワーヘッド1や弁装置20等の損傷を防止することができる。このように前述の弁装置20の例では、主弁30とともにこのように構成された副弁60を併用することにより、止水操作時のWHの低減とともに、止水状態における一次側の給水圧の異常な高まりを防止することもできる。
【0050】
また、前述の例では副流路86をボタン2の中央寄りに、主流路88を副流路86よりもボタン2の端部寄りに配設したが、主流路88をボタン2の中央寄りに、副流路86を主流路88よりもボタン2の端部寄りに配設しても良い。
【0051】
また、主弁30及び副弁60をボタン2の一次側又は二次側のいずれかに並設することも可能である。しかしながら、シャワーヘッド1の幅を小さくして使用者が把持しやすいようにするためには、前述例のように、主弁30及び副弁60をボタン2の一次側と二次側にそれぞれ配設するようにすることが望ましい。また、主弁30及び副弁60以外の弁体を備える水栓部品に適用することもできる。
【0052】
また、前述の例では、弁装置20の各部材を直接シャワーヘッド1に組み込んだが、主弁30や副弁60等の弁装置20を構成する各部材を一つのユニットとしてまとめて構成し、シャワーヘッド1に脱着自在に構成しても良い。このように構成することにより、シャワーヘッド1に対して必要に応じてWH低減のための本弁装置20を用い、必要のない場合には他の弁装置を用いるなど、本弁装置20の使用を選択することができる。よって、本弁装置20を組み込む水栓部品等全体のコストを低減させることができる。また、本弁装置20はシャワーヘッド以外の他の吐水具や給水栓等の水栓部品に広く用いることもできる。
【0053】
また、以下のようにボタン2を構成して、ボタン2の周方向の位置決めをより確実にし、両弁体30,60との密着度合いをより確実なものとしても良い。前述のボタン2の径方向の断面形状はほぼ真円に設けられているが、楕円形状に形成するとともに、ボタン2がその軸心方向に摺動自在に取り付けられるシャワーグリップ部材1aのボタン収容孔7a,7bもほぼ同径の楕円形状の断面形状に形成することとしても良い。このようにボタン2及びボタン収容孔7a,7bが形成されて、ボタン収容孔7a,7bに対してボタン2がその周方向において嵌合することにより、シャワーグリップ部材1aに対するボタン2の周方向の位置決めをより確実にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は吐水具等の給水栓の水栓部品に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1;シャワーヘッド、1a;シャワーグリップ部材、1b;ヘッド部材、2;ボタン、3;散水板、4;一次側通水路、4a;開口部、5;二次側通水路、6;収容室、6a;一次側収容室、6b;二次側収容室、7a,7b;ボタン収容孔、8;段部、9;コイルばね、10;段部、11a,11b;位置決め用溝、12;通水路、13;Oリング、20;弁装置、30;主弁、34;第1ガイド、36;主体部、37;ばね収容室、38;段部、39;Oリング、41;雄ねじ部、41a;小径部、42;第2ガイド、43;先端側開口部、44;基端側開口部、46;雌ねじ部、48a,48b;位置決め突起、49a,49b;干渉部、50;パッキン、52;主体部、54;シール部、55;基端側開口部、56;段部、60;副弁、61;第1ガイド、62;コイルばね、63;弁座、64;第2ガイド、67;第1開口部、68;底部、69;第2開口部、70;支持部、72;係止部、74;パッキン、76;開口部、77;底部、80;フランジ部、83;一次側底面、84;一次側凹部、86;副流路、88;主流路、90;第1開口部、91;傾斜内壁面、92;第2開口部、94;二次側凹部、95;二次側底面、96a,96b;誘導部、97a,97b;被干渉部、98a,98b;傾斜誘導部、99a,99b;誘導溝。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド操作により吐水及び止水を選択可能なスライド自在なボタンと、主弁と副弁とを備えた給水栓の弁装置であって、
前記ボタンには、前記ボタンのスライド操作により前記主弁による開閉が可能な主流路及び前記副弁による開閉が可能な副流路とが備えられ、
吐水状態における前記ボタンの操作位置においては前記主弁及び前記副弁が開放状態とされ、止水状態における前記ボタンの操作位置においては前記主弁及び前記副弁が閉止状態とされるとともに、
前記主弁及び前記副弁が閉止状態となる前記ボタンの操作位置と近接した操作位置において、前記主弁が前記主流路を閉止するとともに、前記副弁が前記副流路を開放可能な位置に、前記主弁、前記主流路、前記副弁及び前記副流路が配設されたことを特徴とする給水栓の弁装置。
【請求項2】
前記主弁を前記ボタンの一次側に配設し、前記副弁を前記ボタンの二次側に配設したことを特徴とする請求項1に記載の給水栓の弁装置。
【請求項3】
前記副流路の開口面積を、前記主流路の開口面積よりも小さく設けたことを特徴とする請求項1また請求項2に記載の給水栓の弁装置。
【請求項4】
前記弁装置を用いる吐水具や水栓部品等に対して着脱自在に設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の給水栓の弁装置。
【請求項5】
前記弁装置がシャワーヘッドに用いられたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の給水栓の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−281162(P2010−281162A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136925(P2009−136925)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【出願人】(501483061)株式会社 フクシマ化学 (3)
【Fターム(参考)】