給油口キャップ
【課題】特にこじれた場合にも必要十分な液密性及び気密性を発揮できる給油口キャップを提供する。
【解決手段】給油口に挿入するキャップ胴部223にシールリング1を装着した構成で、給油口キャップを給油口に締着した際、シールリング1をキャップシール面と給油口シール面とに圧接させ、液密性及び気密性を実現する給油口キャップにおいて、シールリング1はリング本体11と垂直片12とからなり、リング本体11はキャップ胴部223の外径Dcとリング本体11の内径DinとがDc<Dinの寸法関係にあり、垂直片12はリング本体11の内周側に設け、半径方向内向きに(Din−Dc)/2以上の突出量dで突出させて、キャップ胴部223に当接させた垂直片12を介してリング本体11を支持し、シールリング1をキャップ胴部223に装着した給油口キャップである。
【解決手段】給油口に挿入するキャップ胴部223にシールリング1を装着した構成で、給油口キャップを給油口に締着した際、シールリング1をキャップシール面と給油口シール面とに圧接させ、液密性及び気密性を実現する給油口キャップにおいて、シールリング1はリング本体11と垂直片12とからなり、リング本体11はキャップ胴部223の外径Dcとリング本体11の内径DinとがDc<Dinの寸法関係にあり、垂直片12はリング本体11の内周側に設け、半径方向内向きに(Din−Dc)/2以上の突出量dで突出させて、キャップ胴部223に当接させた垂直片12を介してリング本体11を支持し、シールリング1をキャップ胴部223に装着した給油口キャップである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクから延びる給油管の給油口を閉蓋する給油口キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
給油口キャップは、例えば特許文献1に見られるように、給油口に挿入するキャップ胴部にシールリングを装着した構成で、給油口キャップを給油口に締着した際、シールリングをキャップシール面(例えばキャップ胴部の上フランジ下面)と給油口シール面(例えば給油口の上縁又は内面)とに圧接させ、液密性及び気密性を実現する。この液密性及び気密性は、キャップ胴部の中心軸とシールリングの中心とが正しく一致していることで有効に発揮される。このため、キャップ胴部の外径Dcとリング本体の内径DinとをDc≦Dinの寸法関係にし、キャップ胴部にシールリングを緊密に装着して、シールリングがキャップ胴部の半径方向に位置ずれすることを防止している。
【0003】
【特許文献1】特開2005-009661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シールリングは、ニトリルゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムを材料としているため、液体燃料又は燃料蒸気を吸収して膨潤する。すなわち、膨潤後のリング本体の内径Dinは膨潤前より大きくなる。このため、シールリングは、キャップ胴部の外径Dcとリング本体の内径Dinとが、膨潤後にDc≧Dinの寸法関係となるように設計される。これは、装着時のリング本体の内径Dinがキャップ胴部の外径Dcよりかなり小さいことを意味する。ところが、キャップ胴部の中心軸方向のシールリングの位置ずれを防止するため、キャップ胴部はキャップシール面となる上フランジに対となる下フランジを設けているので、下フランジを乗り越えるシールリングの装着作業は手間と労力とを要していた。
【0005】
また、膨潤後のシールリングが半径方向の位置ずれを防止する適度なDc≧Dinの寸法関係となっても、この位置ずれの防止はキャップ胴部に対するシールリングの締め付けによるものである。そして、このシールリングのキャップ胴部に対する締め付けが、給油管内の内圧Pの変化や、給油口キャップの姿勢が崩れた場合に、液密性及び気密性を阻害する要因になっていた。
【0006】
シールリングは、燃料蒸気の発生に伴う給油管内の内圧Pの上昇を受けて半径方向外向きに拡径しようとする。この場合、シールリングによる液密性及び気密性が高まることが望ましいため、特に給油口シール面はシールリングが拡径する半径方向でシールリングに接するように設計され、半径方向外向きに拡径したシールリングがより強く給油口シール面に圧接して、内圧Pに比例した液密性及び気密性が発揮されるようにする。しかし、上述したシールリングの締め付けがあるため、内圧Pによるシールリングの拡径が妨げられ、内圧Pの上昇に応じて液密性及び気密性を高めにくい問題があった。
【0007】
また、外力が給油口キャップに加わってこじれた場合、給油口キャップは給油口に対して斜めに持ち上げられてキャップシール面及び給油口シール面が離隔し、持ち上げられた側(以下、こじあけ側)のシールリングがキャップシール面又は給油口シール面から離れて、液密性及び気密性が低下する虞がある。この場合、上述した内圧Pにより、シールリングが拡径したり、キャップ胴部の半径方向に動いて、こじあけ側のシールリングがキャップシール面又は給油口シール面から離れないことが望ましい。しかし、キャップ胴部に対する締め付けによりシールリングの位置ずれを防いでいた従来の給油口キャップは、こじれに際して、シールリングは拡径も半径方向の移動もできず、液密性及び気密性を必要十分に維持できない問題があった。
【0008】
特許文献1に見られるシールリングは、給油口キャップの締着過程においても、シールリングの上面、内周側及び下面に形成したシール部が順次給油口シール面又はキャップシール面に圧接して、液密性及び気密性を実現する。しかし、この特許文献1のシールリングでも、上述した装着作業の問題や、給油口キャップがこじれると液密性及び気密性が低下する問題は解決されていない。そこで、前記各問題を解決するため、シールリングについて検討し、特にこじれた場合にも必要十分な液密性及び気密性を発揮できる給油口キャップの開発を目指した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果開発したものが、給油口に挿入するキャップ胴部にシールリングを装着した構成で、給油口キャップを給油口に締着した際、シールリングをキャップシール面と給油口シール面とに圧接させ、液密性及び気密性を実現する給油口キャップにおいて、シールリングはリング本体と弾性支持部とからなり、リング本体はキャップ胴部の外径Dcとリング本体の内径DinとがDc<Dinの寸法関係にあり、弾性支持部はリング本体の内周側に設け、半径方向内向きに(Dc−Din)/2以上の突出量dで突出させて、キャップ胴部に当接させた弾性支持部を介してリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着した給油口キャップである。ここで、キャップ胴部の外径Dcとリング本体の内径Dinとの寸法関係や、弾性支持部が半径方向内向きに突出する突出量dは、膨潤後のシールリングにおける設計値である。
【0010】
本発明の給油口キャップは、キャップ胴部の中心軸とシールリングの中心との一致(キャップ胴部に対するシールリングの位置決め)を、キャップ胴部の外面に当接させる弾性支持部に担わせて、シールリングのリング本体をキャップ胴部に遊嵌させ、弾性支持部が形成する隙間ΔD(キャップ胴部の外面とリング本体の内周側との隙間ΔD)に加わる内圧Pによるリング本体の拡径を可能にしている。また、こじれに際し、隙間ΔDから内圧をリング本体の内周側に加え、こじあけ側の反対側(以下、支点側)に位置する弾性支持部を弾性変形させ、リング本体をキャップ胴部の半径方向に移動可能にしている。このほか、弾性支持部は、シールリングをキャップ胴部に装着する際に、リング本体の捩れを抑制する働きがある。
【0011】
具体的な弾性支持部は、周方向に並ぶ複数の弾性凸部を挙げることができる。この場合、先端部をキャップ胴部に当接させた前記弾性凸部を介してリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着する。弾性凸部は、周方向に断続して並ぶ各弾性凸部の先端部をキャップ胴部の外面に当接させて、リング本体をキャップ胴部に遊嵌させる。ここで、弾性凸部による隙間ΔDの設定が(Dc−Din)/2より大きければ、リング本体は弾性凸部を角部とする略多角形状に変形した状態でキャップ胴部に装着される。また、こじれに際し、支点側に位置する弾性フランジを弾性変形させ、リング本体をキャップ胴部の半径方向に移動可能にしている。
【0012】
弾性凸部の大きさ、形状及び個数は自由だが、特に形状は弾性変形の難易に関係することから、弾性変形が容易な片形状にするとよい。具体的な弾性凸部は、周直交方向に延びる垂直片や周方向に延びる水平片を挙げることができる。垂直片又は水平片はリング本体と一体に成形してもよいし、別体の垂直片又は水平片をリング本体に固着してもよい。
【0013】
リング本体の支持を安定させるには、弾性凸部の弾性を抑制すればよいので、周方向及び周直交方向に張り出す十字片により弾性凸部を構成するとよい。この十字片は、上記垂直片及び水平片を組み合わせた形状である。逆に、弾性変形を容易にするには、弾性凸部を周方向に架け渡した片持ち支持片や、周方向に架け渡した両持ち支持片を用いるとよい。これら十字片、片持ち支持片又は両持ち支持片はリング本体と一体に成形してもよいし、別体の十字片、片持ち支持片又は両持ち支持片はリング本体をリング本体に固着してもよい。これらの弾性凸部は、形状の異なる弾性凸部を組み合わせて用いてもよいが、安定かつ正確なキャップ胴部に対するシールリングの位置決めを図るには、同種の弾性凸部を周方向均等間隔でリング本体の内周側に設けることが望ましい。
【0014】
また、上記弾性凸部である水平片が連続した態様として、リング本体の周方向に延在する弾性フランジを弾性支持部とすることもできる。この弾性フランジは、内周縁をキャップ胴部に当接させてリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着する。また、こじれに際し、支点側に位置する弾性フランジの部分を弾性変形させ、シールリングをキャップ胴部の半径方向に移動可能にしている。弾性フランジはリング本体と一体に成形してもよいし、別体の弾性フランジをリング本体に固着してもよい。
【0015】
ここで、弾性フランジ自体の捩れを防止するため、弾性フランジの内周縁にこの弾性フランジの厚みtより大きな補助リングを設けてもよい。補助リングを設けた弾性フランジを弾性支持部とするシールリングは、リング本体及び補助リングが同軸で、リング本体及び補助リングを弾性フランジが結ぶ構成となる。この場合、弾性フランジ自体は、上記補助リングを設けない場合に比べて厚みtを薄くすることができる。弾性フランジ及び補助リングはリング本体と一体に成形してもよいし、別体の補助リングを弾性フランジに固着し、この弾性フランジをリング本体に固着してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の給油口キャップは、キャップ胴部に遊嵌しながら正しく位置決めでき、給油管内の内圧Pにより拡径可能なシールリングを装着しているので、シールリングの装着作業は容易となり、またこじれに際して液密性及び気密性を低下させずに済む効果を有する。また、本発明は、シールリングの構成を変えただけで、その他の給油口キャップの部材構成に変わりはないから、既存の給油口キャップに対してもシールリングの交換だけで前記効果を享受させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1はリング本体11の内周側に弾性凸部として垂直片12を設けたシールリング1の平面図、図2は本例のシールリング1の断面図、図3は本例のシールリング1の図2中A矢視部拡大断面図、図4は本例のシールリング1を装着した給油口キャップ2を給油口3に締着した状態を表す断面図であり、図5は本例のシールリング1を装着した給油口キャップ2をこじった状態を表す断面図である。
【0018】
本例の給油口キャップ2は、図4に見られるように、アウターキャップ21及びインナーキャップ22からなる一般的な構成で、アウターキャップ21を装着する上フランジ221と、この上フランジ221と対になる下フランジ222との間のキャップ胴部223にシールリング1を装着する。給油口キャップ2は、前記上フランジの下面をキャップシール面23と、給油口3の傾斜した内面を給油口シール面31とに、シールリング1を挟持して圧潰し、液密性及び気密性を発揮する。
【0019】
シールリング1は、図1〜図3に見られるように、外周側の楔状周溝111を挟んで上下にリップ部112,113を構成した断面略C字状のリング本体11と、このリング本体11の内周側に設けた複数の弾性凸部である垂直片12とを一体成形した合成ゴム製である。リング本体11は、図4に見られるように、給油口キャップ2を給油口3に締着した状態で、上下のリップ部112をキャップシール面23に、下のリップ部113を給油口シール面31に圧接して、液密性及び気密性を発揮する。垂直片12は、基部(外縁)121をリング本体11の内周側に添わせた円弧状に、先端部(内縁)122をキャップ胴部223の外面に添わせた直線状にした略長方形状である。
【0020】
リング本体11は、膨潤後の設計値において、キャップ胴部223の外径Dcに対してリング本体11の内径Dinを、Dc<Dinの寸法関係にしている。また、垂直片12は、同じく膨潤後の設計値において、半径方向内向きに(Dc−Din)/2の突出量dで突出させている。前記垂直片の突出量dは、0.5〜1.5mm程度、好ましくは1mm前後が適当である。これにより、図1に明らかなように、シールリング1は垂直片12の先端部122をキャップ胴部223の外面に当接させ、この垂直片12を介してリング本体11を支持した状態で、給油口キャップ2に装着される。すなわち、リング本体11はキャップ胴部223に遊嵌状態にあり、キャップ胴部223の外面とリング本体11の内周側との間に隙間ΔDが形成される。
【0021】
本例の垂直片12は、周方向に均等間隔で8個設けている。各垂直片12は同じ形状及び大きさであるから、全垂直片12の先端部122を等しくキャップ胴部223の外面に当接させると、キャップ胴部223の中心軸にシールリング1の中心を一致させることができる。ここで、垂直片12の数に制限はないが、前記キャップ胴部223に対するシールリング1の位置決めを正確かつ安定にするには、3個〜12個程度の垂直片12を周方向に均等間隔で設けることが望ましい。この垂直片12についての数及び間隔の設定は、後述する他の弾性凸部も同様である。また、リング本体11はキャップ胴部223に遊嵌することから、キャップ胴部223へのシールリング1の装着が、リング本体11をキャップ胴部223に締め付けて装着する従来のシールリングに比べ、容易であることが理解できる。
【0022】
各垂直片12間に形成される隙間ΔDは、膨潤によりリング本体11がキャップ胴部223に締め付けられることを防止すると共に、上昇する給油管内の内圧Pをリング本体11の内周側に加え、前記内圧Pに応じてリング本体11を半径方向外側に拡径させる働きを有する。これにより、前記拡径に応じて上下のリップ部112,113をキャップシール面23及び給油口シール面31により強く圧接させることができ、内圧Pに応じて液密性及び気密性を高めることができる。
【0023】
隙間ΔDから内圧Pを内周側に加えてリング本体11を拡径する働きは、特に給油口キャップ2のこじれに際しても必要十分な液密性又は気密性を確保できる利点に繋がる。図5に見られるように、給油口キャップ2がこじれると、こじあけ側でキャップシール面23と給油口シール面31とが離隔する。しかし、本発明のシールリング1は、隙間ΔDから内圧Pを内周側に加えてこじあけ側のリング本体11を拡径し、上下のリップ部112,113をなおキャップシール面23及び給油口シール面31それぞれに圧接させて、給油口キャップ2のこじれに際しても必要十分な液密性又は気密性を確保させる。
【0024】
逆に、支点側ではキャップシール面23と給油口シール面31とが接近し、リング本体11がより圧潰されて、上下のリップ部112,113がそれぞれキャップシール面23及び給油口シール面31に圧接し、液密性及び気密性が高められる。しかし、隙間ΔDから内圧Pが内周側に加わっても、支点側のリング本体11はほとんど拡径しない。むしろ、内圧Pが高まると、支点側に位置する垂直片12を弾性変形させ、シールリング1を半径方向のこじあけ側に移動させ、こじあけ側の上下のリップ部112,113を、キャップシール面23及び給油口シール面31により強く圧接させ、内圧Pに応じた液密性及び気密性を確保する。これから、垂直片12の厚みtは、垂直片12の弾性変形が可能なように、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1の場合なら、0.5mm〜1.5mmの範囲で設定するとよい。
【0025】
本発明の給油口キャップに装着するシールリングは、リング本体11の内周側に弾性支持部を設けて、キャップ胴部に対するシールリングの位置決めを図り、弾性支持部が形成する隙間ΔDに加わる内圧Pによりリング本体を拡径容易にできればよい。これから、上記例示の垂直片に代わる形状の弾性凸部や、弾性フランジを弾性支持部として用いることができる。次に示す弾性支持部も用いることができる。
【0026】
図6及び図7は弾性凸部として水平片13を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図、図8及び図9は弾性凸部として十字片14を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図、図10及び図11は弾性凸部として片持ち支持片15を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図、図12及び図13は弾性凸部として両持ち支持片16を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図、図14及び図15は弾性支持部として弾性フランジ17を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図であり、図16及び図17は弾性支持部として補助リング181を有する弾性フランジ18を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【0027】
図6及び図7に見られるシールリング1は、上述した垂直片を90度傾けた水平片13を弾性凸部として周方向に均等間隔で設けている。例示の水平片13は、平面視二等辺三角形状で、この二等辺三角形状の頂点を先端部131として、キャップ胴部223の外面に当接させる。水平片13の場合、広幅の先端部はキャップ胴部223の外面に倣う円弧状に成形しなければならず、キャップ胴部223に対するシールリング1の位置決めを図るには前記先端部に高い成形精度が要求されることから、本例のように二等辺三角形状の頂点を先端部131とすることが望ましい。水平片13の突出量dは(Dc−Din)/2以上で、水平片13の厚みtは、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1の場合なら、1.0mm〜1.5mmの範囲で設定するとよい。
【0028】
垂直片及び水平片は組み合わせて用いることができる。この場合、垂直片及び水平片を互い違いに並べて用いるほか、図8及び図9に見られるシールリング1のように、両者を垂直部及び水平部として組み合わせた十字片14を弾性凸部としてもよい。この十字片14の垂直部141は略長方形状で、水平部142は二等辺三角形状で、両者が交差する頂点を含む垂直部141の内縁を先端部143として、キャップ胴部223の外面に当接させる。この十字片14は弾性凸部としての弾性変形を抑制する構造であり、十字片14の突出量dは(Dc−Din)/2以上とし、垂直部141及び水平部142の厚みtは、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリングの場合なら、0.5mm〜1.5mmの範囲で、同じ厚みt又は異なる厚みtで設定するとよい。
【0029】
図10及び図11に見られるシールリング1は、弾性変形が容易な片持ち支持片15を弾性凸部としている。この片持ち支持片15は、リング本体11の内周側を平面視略方形に切り欠いて凹部114を形成し、折れ曲がった弾性片部151の一端に設けた基部152を前記凹部114の一端側に固着して構成している。片持ち支持片15は、弾性片部151の屈曲部位を先端部153としてキャップ胴部223の外面に当接させ、キャップ胴部223に対してリング本体11を弾支する。片持ち支持片15の突出量dは(Dc−Din)/2以上で、片持ち支持片15の長さL及び厚みtは要求される弾性力により加減されるが、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1の場合なら、前記厚みtは2.0mm〜4.0mmの範囲で設定するとよい。
【0030】
より強い弾性力を持ってリング本体を弾支する弾性凸部として、図12及び図13に見られるシールリング1のように、弾性凸部として両持ち支持片16を用いてもよい。この両持ち支持片16は、リング本体11の内周側を平面視略方形に切り欠いて凹部114を形成し、屈曲した弾性片部161の両端に設けた基部162,162を前記凹部114の両端にそれぞれ固着し、凹部114に弾性片部161を架橋した構成である。両持ち支持片16は、弾性片部161の屈曲部位を先端部163としてキャップ胴部223の外面に当接させ、キャップ胴部223に対してリング本体11を弾支する。本例では、前記先端部163における強度補強のため、先端部163の内側に補強リブ164を形成している。両持ち支持片16の突出量dは(Dc−Din)/2以上で、両持ち支持片の長さL及び厚みtは要求される弾性力により加減されるが、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1の場合なら、前記厚みtは1.0mm〜4.0mmの範囲で設定するとよい。
【0031】
また、周方向に断続した弾性凸部に代えて、図14及び図15に見られるように、周方向に連続した弾性フランジ17を弾性支持部として用いることができる。この弾性フランジ17は、弾性のほか、可撓性を有する。また、弾性凸部と異なり、弾性フランジ17は内周縁171が全周にわたって連続しているため、特にキャップ胴部223に対するシールリング1の位置決めが正確になる。しかし、この弾性フランジ17は、こじれに際して弾性変形させなければならないから、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1とした場合、突出量d=0.8mmかつ厚みt=0.5mm〜突出量d=1.5mmかつ厚みt=1.0mmの範囲で設定するとよい。
【0032】
弾性フランジの可撓性による捩れを防止するには、図16及び図17に見られるシールリング1のように、弾性フランジ18の内周縁182にこの弾性フランジ18の厚みtより大きな補助リング181を設けるとよい。これにより、補助リング181が弾性フランジ18の可撓性を抑制し、弾性フランジ18の捩れを防止する。この結果、弾性フランジ18の厚みtを薄くすることができる。具体的には、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1とした場合、補助リング181を含めた弾性フランジ18は突出量d=0.8mmかつ厚みt=0.3mm〜突出量d=1.5mmかつ厚みt=0.8mmの範囲で設定するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】リング本体の内周側に弾性凸部として垂直片を設けたシールリングの平面図である。
【図2】本例のシールリングの断面図である。
【図3】本例のシールリングの図2中A矢視部拡大断面図である。
【図4】本例のシールリングを装着した給油口キャップを給油口に締着した状態を表す断面図である。
【図5】本例のシールリングを装着した給油口キャップをこじった状態を表す断面図である。
【図6】弾性凸部として水平片を設けたシールリングの部分平面図である。
【図7】弾性凸部として水平片を設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【図8】弾性凸部として十字片を設けたシールリングの部分平面図である。
【図9】弾性凸部として十字片を設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【図10】弾性凸部として片持ち支持片を設けたシールリングの部分平面図である。
【図11】弾性凸部として片持ち支持片を設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【図12】弾性凸部として両持ち支持片を設けたシールリングの部分平面図である。
【図13】弾性凸部として両持ち支持片を設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【図14】弾性支持部として弾性フランジを設けたシールリングの部分平面図である。
【図15】弾性支持部として弾性フランジを設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【図16】弾性支持部として補助リングを有する弾性フランジを設けたシールリングの部分平面図である。
【図17】弾性支持部として補助リングを有する弾性フランジを設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 シールリング
11 リング本体
12 垂直片
13 水平片
14 十字片
15 片持ち支持片
16 両持ち支持片
17 弾性フランジ
18 補助リングを設けた弾性フランジ
2 給油口キャップ
22 インナーキャップ
223 キャップ胴部
23 キャップシール面
3 給油口
31 給油口シール面
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクから延びる給油管の給油口を閉蓋する給油口キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
給油口キャップは、例えば特許文献1に見られるように、給油口に挿入するキャップ胴部にシールリングを装着した構成で、給油口キャップを給油口に締着した際、シールリングをキャップシール面(例えばキャップ胴部の上フランジ下面)と給油口シール面(例えば給油口の上縁又は内面)とに圧接させ、液密性及び気密性を実現する。この液密性及び気密性は、キャップ胴部の中心軸とシールリングの中心とが正しく一致していることで有効に発揮される。このため、キャップ胴部の外径Dcとリング本体の内径DinとをDc≦Dinの寸法関係にし、キャップ胴部にシールリングを緊密に装着して、シールリングがキャップ胴部の半径方向に位置ずれすることを防止している。
【0003】
【特許文献1】特開2005-009661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シールリングは、ニトリルゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムを材料としているため、液体燃料又は燃料蒸気を吸収して膨潤する。すなわち、膨潤後のリング本体の内径Dinは膨潤前より大きくなる。このため、シールリングは、キャップ胴部の外径Dcとリング本体の内径Dinとが、膨潤後にDc≧Dinの寸法関係となるように設計される。これは、装着時のリング本体の内径Dinがキャップ胴部の外径Dcよりかなり小さいことを意味する。ところが、キャップ胴部の中心軸方向のシールリングの位置ずれを防止するため、キャップ胴部はキャップシール面となる上フランジに対となる下フランジを設けているので、下フランジを乗り越えるシールリングの装着作業は手間と労力とを要していた。
【0005】
また、膨潤後のシールリングが半径方向の位置ずれを防止する適度なDc≧Dinの寸法関係となっても、この位置ずれの防止はキャップ胴部に対するシールリングの締め付けによるものである。そして、このシールリングのキャップ胴部に対する締め付けが、給油管内の内圧Pの変化や、給油口キャップの姿勢が崩れた場合に、液密性及び気密性を阻害する要因になっていた。
【0006】
シールリングは、燃料蒸気の発生に伴う給油管内の内圧Pの上昇を受けて半径方向外向きに拡径しようとする。この場合、シールリングによる液密性及び気密性が高まることが望ましいため、特に給油口シール面はシールリングが拡径する半径方向でシールリングに接するように設計され、半径方向外向きに拡径したシールリングがより強く給油口シール面に圧接して、内圧Pに比例した液密性及び気密性が発揮されるようにする。しかし、上述したシールリングの締め付けがあるため、内圧Pによるシールリングの拡径が妨げられ、内圧Pの上昇に応じて液密性及び気密性を高めにくい問題があった。
【0007】
また、外力が給油口キャップに加わってこじれた場合、給油口キャップは給油口に対して斜めに持ち上げられてキャップシール面及び給油口シール面が離隔し、持ち上げられた側(以下、こじあけ側)のシールリングがキャップシール面又は給油口シール面から離れて、液密性及び気密性が低下する虞がある。この場合、上述した内圧Pにより、シールリングが拡径したり、キャップ胴部の半径方向に動いて、こじあけ側のシールリングがキャップシール面又は給油口シール面から離れないことが望ましい。しかし、キャップ胴部に対する締め付けによりシールリングの位置ずれを防いでいた従来の給油口キャップは、こじれに際して、シールリングは拡径も半径方向の移動もできず、液密性及び気密性を必要十分に維持できない問題があった。
【0008】
特許文献1に見られるシールリングは、給油口キャップの締着過程においても、シールリングの上面、内周側及び下面に形成したシール部が順次給油口シール面又はキャップシール面に圧接して、液密性及び気密性を実現する。しかし、この特許文献1のシールリングでも、上述した装着作業の問題や、給油口キャップがこじれると液密性及び気密性が低下する問題は解決されていない。そこで、前記各問題を解決するため、シールリングについて検討し、特にこじれた場合にも必要十分な液密性及び気密性を発揮できる給油口キャップの開発を目指した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果開発したものが、給油口に挿入するキャップ胴部にシールリングを装着した構成で、給油口キャップを給油口に締着した際、シールリングをキャップシール面と給油口シール面とに圧接させ、液密性及び気密性を実現する給油口キャップにおいて、シールリングはリング本体と弾性支持部とからなり、リング本体はキャップ胴部の外径Dcとリング本体の内径DinとがDc<Dinの寸法関係にあり、弾性支持部はリング本体の内周側に設け、半径方向内向きに(Dc−Din)/2以上の突出量dで突出させて、キャップ胴部に当接させた弾性支持部を介してリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着した給油口キャップである。ここで、キャップ胴部の外径Dcとリング本体の内径Dinとの寸法関係や、弾性支持部が半径方向内向きに突出する突出量dは、膨潤後のシールリングにおける設計値である。
【0010】
本発明の給油口キャップは、キャップ胴部の中心軸とシールリングの中心との一致(キャップ胴部に対するシールリングの位置決め)を、キャップ胴部の外面に当接させる弾性支持部に担わせて、シールリングのリング本体をキャップ胴部に遊嵌させ、弾性支持部が形成する隙間ΔD(キャップ胴部の外面とリング本体の内周側との隙間ΔD)に加わる内圧Pによるリング本体の拡径を可能にしている。また、こじれに際し、隙間ΔDから内圧をリング本体の内周側に加え、こじあけ側の反対側(以下、支点側)に位置する弾性支持部を弾性変形させ、リング本体をキャップ胴部の半径方向に移動可能にしている。このほか、弾性支持部は、シールリングをキャップ胴部に装着する際に、リング本体の捩れを抑制する働きがある。
【0011】
具体的な弾性支持部は、周方向に並ぶ複数の弾性凸部を挙げることができる。この場合、先端部をキャップ胴部に当接させた前記弾性凸部を介してリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着する。弾性凸部は、周方向に断続して並ぶ各弾性凸部の先端部をキャップ胴部の外面に当接させて、リング本体をキャップ胴部に遊嵌させる。ここで、弾性凸部による隙間ΔDの設定が(Dc−Din)/2より大きければ、リング本体は弾性凸部を角部とする略多角形状に変形した状態でキャップ胴部に装着される。また、こじれに際し、支点側に位置する弾性フランジを弾性変形させ、リング本体をキャップ胴部の半径方向に移動可能にしている。
【0012】
弾性凸部の大きさ、形状及び個数は自由だが、特に形状は弾性変形の難易に関係することから、弾性変形が容易な片形状にするとよい。具体的な弾性凸部は、周直交方向に延びる垂直片や周方向に延びる水平片を挙げることができる。垂直片又は水平片はリング本体と一体に成形してもよいし、別体の垂直片又は水平片をリング本体に固着してもよい。
【0013】
リング本体の支持を安定させるには、弾性凸部の弾性を抑制すればよいので、周方向及び周直交方向に張り出す十字片により弾性凸部を構成するとよい。この十字片は、上記垂直片及び水平片を組み合わせた形状である。逆に、弾性変形を容易にするには、弾性凸部を周方向に架け渡した片持ち支持片や、周方向に架け渡した両持ち支持片を用いるとよい。これら十字片、片持ち支持片又は両持ち支持片はリング本体と一体に成形してもよいし、別体の十字片、片持ち支持片又は両持ち支持片はリング本体をリング本体に固着してもよい。これらの弾性凸部は、形状の異なる弾性凸部を組み合わせて用いてもよいが、安定かつ正確なキャップ胴部に対するシールリングの位置決めを図るには、同種の弾性凸部を周方向均等間隔でリング本体の内周側に設けることが望ましい。
【0014】
また、上記弾性凸部である水平片が連続した態様として、リング本体の周方向に延在する弾性フランジを弾性支持部とすることもできる。この弾性フランジは、内周縁をキャップ胴部に当接させてリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着する。また、こじれに際し、支点側に位置する弾性フランジの部分を弾性変形させ、シールリングをキャップ胴部の半径方向に移動可能にしている。弾性フランジはリング本体と一体に成形してもよいし、別体の弾性フランジをリング本体に固着してもよい。
【0015】
ここで、弾性フランジ自体の捩れを防止するため、弾性フランジの内周縁にこの弾性フランジの厚みtより大きな補助リングを設けてもよい。補助リングを設けた弾性フランジを弾性支持部とするシールリングは、リング本体及び補助リングが同軸で、リング本体及び補助リングを弾性フランジが結ぶ構成となる。この場合、弾性フランジ自体は、上記補助リングを設けない場合に比べて厚みtを薄くすることができる。弾性フランジ及び補助リングはリング本体と一体に成形してもよいし、別体の補助リングを弾性フランジに固着し、この弾性フランジをリング本体に固着してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の給油口キャップは、キャップ胴部に遊嵌しながら正しく位置決めでき、給油管内の内圧Pにより拡径可能なシールリングを装着しているので、シールリングの装着作業は容易となり、またこじれに際して液密性及び気密性を低下させずに済む効果を有する。また、本発明は、シールリングの構成を変えただけで、その他の給油口キャップの部材構成に変わりはないから、既存の給油口キャップに対してもシールリングの交換だけで前記効果を享受させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1はリング本体11の内周側に弾性凸部として垂直片12を設けたシールリング1の平面図、図2は本例のシールリング1の断面図、図3は本例のシールリング1の図2中A矢視部拡大断面図、図4は本例のシールリング1を装着した給油口キャップ2を給油口3に締着した状態を表す断面図であり、図5は本例のシールリング1を装着した給油口キャップ2をこじった状態を表す断面図である。
【0018】
本例の給油口キャップ2は、図4に見られるように、アウターキャップ21及びインナーキャップ22からなる一般的な構成で、アウターキャップ21を装着する上フランジ221と、この上フランジ221と対になる下フランジ222との間のキャップ胴部223にシールリング1を装着する。給油口キャップ2は、前記上フランジの下面をキャップシール面23と、給油口3の傾斜した内面を給油口シール面31とに、シールリング1を挟持して圧潰し、液密性及び気密性を発揮する。
【0019】
シールリング1は、図1〜図3に見られるように、外周側の楔状周溝111を挟んで上下にリップ部112,113を構成した断面略C字状のリング本体11と、このリング本体11の内周側に設けた複数の弾性凸部である垂直片12とを一体成形した合成ゴム製である。リング本体11は、図4に見られるように、給油口キャップ2を給油口3に締着した状態で、上下のリップ部112をキャップシール面23に、下のリップ部113を給油口シール面31に圧接して、液密性及び気密性を発揮する。垂直片12は、基部(外縁)121をリング本体11の内周側に添わせた円弧状に、先端部(内縁)122をキャップ胴部223の外面に添わせた直線状にした略長方形状である。
【0020】
リング本体11は、膨潤後の設計値において、キャップ胴部223の外径Dcに対してリング本体11の内径Dinを、Dc<Dinの寸法関係にしている。また、垂直片12は、同じく膨潤後の設計値において、半径方向内向きに(Dc−Din)/2の突出量dで突出させている。前記垂直片の突出量dは、0.5〜1.5mm程度、好ましくは1mm前後が適当である。これにより、図1に明らかなように、シールリング1は垂直片12の先端部122をキャップ胴部223の外面に当接させ、この垂直片12を介してリング本体11を支持した状態で、給油口キャップ2に装着される。すなわち、リング本体11はキャップ胴部223に遊嵌状態にあり、キャップ胴部223の外面とリング本体11の内周側との間に隙間ΔDが形成される。
【0021】
本例の垂直片12は、周方向に均等間隔で8個設けている。各垂直片12は同じ形状及び大きさであるから、全垂直片12の先端部122を等しくキャップ胴部223の外面に当接させると、キャップ胴部223の中心軸にシールリング1の中心を一致させることができる。ここで、垂直片12の数に制限はないが、前記キャップ胴部223に対するシールリング1の位置決めを正確かつ安定にするには、3個〜12個程度の垂直片12を周方向に均等間隔で設けることが望ましい。この垂直片12についての数及び間隔の設定は、後述する他の弾性凸部も同様である。また、リング本体11はキャップ胴部223に遊嵌することから、キャップ胴部223へのシールリング1の装着が、リング本体11をキャップ胴部223に締め付けて装着する従来のシールリングに比べ、容易であることが理解できる。
【0022】
各垂直片12間に形成される隙間ΔDは、膨潤によりリング本体11がキャップ胴部223に締め付けられることを防止すると共に、上昇する給油管内の内圧Pをリング本体11の内周側に加え、前記内圧Pに応じてリング本体11を半径方向外側に拡径させる働きを有する。これにより、前記拡径に応じて上下のリップ部112,113をキャップシール面23及び給油口シール面31により強く圧接させることができ、内圧Pに応じて液密性及び気密性を高めることができる。
【0023】
隙間ΔDから内圧Pを内周側に加えてリング本体11を拡径する働きは、特に給油口キャップ2のこじれに際しても必要十分な液密性又は気密性を確保できる利点に繋がる。図5に見られるように、給油口キャップ2がこじれると、こじあけ側でキャップシール面23と給油口シール面31とが離隔する。しかし、本発明のシールリング1は、隙間ΔDから内圧Pを内周側に加えてこじあけ側のリング本体11を拡径し、上下のリップ部112,113をなおキャップシール面23及び給油口シール面31それぞれに圧接させて、給油口キャップ2のこじれに際しても必要十分な液密性又は気密性を確保させる。
【0024】
逆に、支点側ではキャップシール面23と給油口シール面31とが接近し、リング本体11がより圧潰されて、上下のリップ部112,113がそれぞれキャップシール面23及び給油口シール面31に圧接し、液密性及び気密性が高められる。しかし、隙間ΔDから内圧Pが内周側に加わっても、支点側のリング本体11はほとんど拡径しない。むしろ、内圧Pが高まると、支点側に位置する垂直片12を弾性変形させ、シールリング1を半径方向のこじあけ側に移動させ、こじあけ側の上下のリップ部112,113を、キャップシール面23及び給油口シール面31により強く圧接させ、内圧Pに応じた液密性及び気密性を確保する。これから、垂直片12の厚みtは、垂直片12の弾性変形が可能なように、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1の場合なら、0.5mm〜1.5mmの範囲で設定するとよい。
【0025】
本発明の給油口キャップに装着するシールリングは、リング本体11の内周側に弾性支持部を設けて、キャップ胴部に対するシールリングの位置決めを図り、弾性支持部が形成する隙間ΔDに加わる内圧Pによりリング本体を拡径容易にできればよい。これから、上記例示の垂直片に代わる形状の弾性凸部や、弾性フランジを弾性支持部として用いることができる。次に示す弾性支持部も用いることができる。
【0026】
図6及び図7は弾性凸部として水平片13を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図、図8及び図9は弾性凸部として十字片14を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図、図10及び図11は弾性凸部として片持ち支持片15を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図、図12及び図13は弾性凸部として両持ち支持片16を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図、図14及び図15は弾性支持部として弾性フランジ17を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図であり、図16及び図17は弾性支持部として補助リング181を有する弾性フランジ18を設けたシールリング1の部分平面図及び図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【0027】
図6及び図7に見られるシールリング1は、上述した垂直片を90度傾けた水平片13を弾性凸部として周方向に均等間隔で設けている。例示の水平片13は、平面視二等辺三角形状で、この二等辺三角形状の頂点を先端部131として、キャップ胴部223の外面に当接させる。水平片13の場合、広幅の先端部はキャップ胴部223の外面に倣う円弧状に成形しなければならず、キャップ胴部223に対するシールリング1の位置決めを図るには前記先端部に高い成形精度が要求されることから、本例のように二等辺三角形状の頂点を先端部131とすることが望ましい。水平片13の突出量dは(Dc−Din)/2以上で、水平片13の厚みtは、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1の場合なら、1.0mm〜1.5mmの範囲で設定するとよい。
【0028】
垂直片及び水平片は組み合わせて用いることができる。この場合、垂直片及び水平片を互い違いに並べて用いるほか、図8及び図9に見られるシールリング1のように、両者を垂直部及び水平部として組み合わせた十字片14を弾性凸部としてもよい。この十字片14の垂直部141は略長方形状で、水平部142は二等辺三角形状で、両者が交差する頂点を含む垂直部141の内縁を先端部143として、キャップ胴部223の外面に当接させる。この十字片14は弾性凸部としての弾性変形を抑制する構造であり、十字片14の突出量dは(Dc−Din)/2以上とし、垂直部141及び水平部142の厚みtは、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリングの場合なら、0.5mm〜1.5mmの範囲で、同じ厚みt又は異なる厚みtで設定するとよい。
【0029】
図10及び図11に見られるシールリング1は、弾性変形が容易な片持ち支持片15を弾性凸部としている。この片持ち支持片15は、リング本体11の内周側を平面視略方形に切り欠いて凹部114を形成し、折れ曲がった弾性片部151の一端に設けた基部152を前記凹部114の一端側に固着して構成している。片持ち支持片15は、弾性片部151の屈曲部位を先端部153としてキャップ胴部223の外面に当接させ、キャップ胴部223に対してリング本体11を弾支する。片持ち支持片15の突出量dは(Dc−Din)/2以上で、片持ち支持片15の長さL及び厚みtは要求される弾性力により加減されるが、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1の場合なら、前記厚みtは2.0mm〜4.0mmの範囲で設定するとよい。
【0030】
より強い弾性力を持ってリング本体を弾支する弾性凸部として、図12及び図13に見られるシールリング1のように、弾性凸部として両持ち支持片16を用いてもよい。この両持ち支持片16は、リング本体11の内周側を平面視略方形に切り欠いて凹部114を形成し、屈曲した弾性片部161の両端に設けた基部162,162を前記凹部114の両端にそれぞれ固着し、凹部114に弾性片部161を架橋した構成である。両持ち支持片16は、弾性片部161の屈曲部位を先端部163としてキャップ胴部223の外面に当接させ、キャップ胴部223に対してリング本体11を弾支する。本例では、前記先端部163における強度補強のため、先端部163の内側に補強リブ164を形成している。両持ち支持片16の突出量dは(Dc−Din)/2以上で、両持ち支持片の長さL及び厚みtは要求される弾性力により加減されるが、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1の場合なら、前記厚みtは1.0mm〜4.0mmの範囲で設定するとよい。
【0031】
また、周方向に断続した弾性凸部に代えて、図14及び図15に見られるように、周方向に連続した弾性フランジ17を弾性支持部として用いることができる。この弾性フランジ17は、弾性のほか、可撓性を有する。また、弾性凸部と異なり、弾性フランジ17は内周縁171が全周にわたって連続しているため、特にキャップ胴部223に対するシールリング1の位置決めが正確になる。しかし、この弾性フランジ17は、こじれに際して弾性変形させなければならないから、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1とした場合、突出量d=0.8mmかつ厚みt=0.5mm〜突出量d=1.5mmかつ厚みt=1.0mmの範囲で設定するとよい。
【0032】
弾性フランジの可撓性による捩れを防止するには、図16及び図17に見られるシールリング1のように、弾性フランジ18の内周縁182にこの弾性フランジ18の厚みtより大きな補助リング181を設けるとよい。これにより、補助リング181が弾性フランジ18の可撓性を抑制し、弾性フランジ18の捩れを防止する。この結果、弾性フランジ18の厚みtを薄くすることができる。具体的には、例えばスプリング硬度50のニトリルゴム製のシールリング1とした場合、補助リング181を含めた弾性フランジ18は突出量d=0.8mmかつ厚みt=0.3mm〜突出量d=1.5mmかつ厚みt=0.8mmの範囲で設定するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】リング本体の内周側に弾性凸部として垂直片を設けたシールリングの平面図である。
【図2】本例のシールリングの断面図である。
【図3】本例のシールリングの図2中A矢視部拡大断面図である。
【図4】本例のシールリングを装着した給油口キャップを給油口に締着した状態を表す断面図である。
【図5】本例のシールリングを装着した給油口キャップをこじった状態を表す断面図である。
【図6】弾性凸部として水平片を設けたシールリングの部分平面図である。
【図7】弾性凸部として水平片を設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【図8】弾性凸部として十字片を設けたシールリングの部分平面図である。
【図9】弾性凸部として十字片を設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【図10】弾性凸部として片持ち支持片を設けたシールリングの部分平面図である。
【図11】弾性凸部として片持ち支持片を設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【図12】弾性凸部として両持ち支持片を設けたシールリングの部分平面図である。
【図13】弾性凸部として両持ち支持片を設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【図14】弾性支持部として弾性フランジを設けたシールリングの部分平面図である。
【図15】弾性支持部として弾性フランジを設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【図16】弾性支持部として補助リングを有する弾性フランジを設けたシールリングの部分平面図である。
【図17】弾性支持部として補助リングを有する弾性フランジを設けたシールリングの図2中A矢視部相当拡大断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 シールリング
11 リング本体
12 垂直片
13 水平片
14 十字片
15 片持ち支持片
16 両持ち支持片
17 弾性フランジ
18 補助リングを設けた弾性フランジ
2 給油口キャップ
22 インナーキャップ
223 キャップ胴部
23 キャップシール面
3 給油口
31 給油口シール面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油口に挿入するキャップ胴部にシールリングを装着した構成で、給油口キャップを給油口に締着した際、シールリングをキャップシール面と給油口シール面とに圧接させ、液密性及び気密性を実現する給油口キャップにおいて、シールリングはリング本体と弾性支持部とからなり、リング本体はキャップ胴部の外径Dcとリング本体の内径DinとがDc<Dinの寸法関係にあり、弾性支持部はリング本体の内周側に設け、半径方向内向きに(Dc−Din)/2以上の突出量dで突出させてなり、キャップ胴部に当接させた弾性支持部を介してリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着したことを特徴とする給油口キャップ。
【請求項2】
弾性支持部は、周方向に並ぶ複数の弾性凸部であり、先端部をキャップ胴部に当接させた前記弾性凸部を介してリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着した請求項1記載の給油口キャップ。
【請求項3】
弾性凸部は、周直交方向に延びる垂直片である請求項2記載の給油口キャップ。
【請求項4】
弾性凸部は、周方向に延びる水平片である請求項2記載の給油口キャップ。
【請求項5】
弾性凸部は、周方向及び周直交方向に張り出す十字片である請求項2記載の給油口キャップ。
【請求項6】
弾性凸部は、周方向に架け渡した片持ち支持片である請求項2記載の給油口キャップ。
【請求項7】
弾性凸部は、周方向に架け渡した両持ち支持片である請求項2記載の給油口キャップ。
【請求項8】
弾性支持部は、リング本体の周方向に延在する弾性フランジであり、内周縁をキャップ胴部に当接させた前記弾性フランジを介してリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着した請求項1記載の給油口キャップ。
【請求項1】
給油口に挿入するキャップ胴部にシールリングを装着した構成で、給油口キャップを給油口に締着した際、シールリングをキャップシール面と給油口シール面とに圧接させ、液密性及び気密性を実現する給油口キャップにおいて、シールリングはリング本体と弾性支持部とからなり、リング本体はキャップ胴部の外径Dcとリング本体の内径DinとがDc<Dinの寸法関係にあり、弾性支持部はリング本体の内周側に設け、半径方向内向きに(Dc−Din)/2以上の突出量dで突出させてなり、キャップ胴部に当接させた弾性支持部を介してリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着したことを特徴とする給油口キャップ。
【請求項2】
弾性支持部は、周方向に並ぶ複数の弾性凸部であり、先端部をキャップ胴部に当接させた前記弾性凸部を介してリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着した請求項1記載の給油口キャップ。
【請求項3】
弾性凸部は、周直交方向に延びる垂直片である請求項2記載の給油口キャップ。
【請求項4】
弾性凸部は、周方向に延びる水平片である請求項2記載の給油口キャップ。
【請求項5】
弾性凸部は、周方向及び周直交方向に張り出す十字片である請求項2記載の給油口キャップ。
【請求項6】
弾性凸部は、周方向に架け渡した片持ち支持片である請求項2記載の給油口キャップ。
【請求項7】
弾性凸部は、周方向に架け渡した両持ち支持片である請求項2記載の給油口キャップ。
【請求項8】
弾性支持部は、リング本体の周方向に延在する弾性フランジであり、内周縁をキャップ胴部に当接させた前記弾性フランジを介してリング本体を支持し、シールリングをキャップ胴部に装着した請求項1記載の給油口キャップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−298242(P2006−298242A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125054(P2005−125054)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(503399920)株式会社アステア (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(503399920)株式会社アステア (31)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]