説明

給油装置

【課題】 瞬間流量が少ない場合及び多い場合にも給油量が正確に補正でき、補正係数の変更を簡単にできないようにして不正給油が防止できる給油装置を提供する。
【解決手段】 給油管に流量計(5)を介装し、給油管を給油ホースを介して給油ノズルに接続し、流量計(5)から流量信号を受けて給油量を演算する制御装置(10)と、制御装置(10)で演算された給油量を表示する表示器(11)を設けた給油装置において、制御装置(10)には、暗証番号を記憶する暗証番号記憶手段(35)と、流量計(5)による測定量と計量升による測定量との比である補正係数を記憶する補正係数記憶手段(27)と、入力手段(36)から入力された暗証番号と暗証番号記憶手段(35)に記憶されている暗証番号との一致を判断する比較手段(37)が設けられ、比較手段(37)の判断に基づいて入力手段(36)から入力された補正係数が補正係数記憶手段(27)に記憶される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油装置に関するものであり、例えば自動車へ燃料油を給油する給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給油所で自動車へ燃料油を給油する給油装置には流量計が設けられ、給油量が予め決められた器差範囲内で正確に表示器に表示されるようになっている。この流量計には、シリンダ内に設けたピストンの移動量を回転運動に変えてシリンダ内の油量を計測するピストン式流量計を用いている。このピストン式流量計の場合に、表示量と実液量との器差を調整するには、シリンダ端部に設けたピンでピストンの移動量を調整して行っている。
【0003】
ところで近年、ピストン式流量計に替わって、ヘリカルロータを互いに噛み合わせた回転式流量計が給油装置に搭載されるようになってきている。この回転式流量計の器差補正は、複数の補正係数の内の一つをディップスイッチで選択して設定し、選択された補正係数で補正された給油量を表示器に表示するようにしている。
このように、一つの補正係数で全ての瞬間流量域を補正しているために、瞬間流量が少ない場合や、逆に瞬間流量が多い場合には、給油量を正確に補正できない不都合がある。
【0004】
また、補正係数をディップスイッチで選択しているために、比較的簡単に補正係数が変更でき、補正係数を変更して不正給油が行われる虞がある。
【0005】
なお、給油に際して補正を行うものは種々知られているが、いずれも充分でない。(特許文献1、2参照)
【特許文献1】特開昭61−75219号公報
【特許文献2】特開平10−329896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、瞬間流量が少ない場合及び多い場合にも給油量が正確に補正でき、補正係数の変更を簡単にできないようにして不正給油が防止できる給油装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の給油装置は、給油管(3)に流量計(5)を介装し、給油管(3)を給油ホース(6)を介して給油ノズル(7)に接続し、流量計(5)から流量信号を受けて給油量を演算する制御装置(10)と、制御装置(10)で演算された給油量を表示する表示器(11)を設けた給油装置において、前記制御装置(10)には、暗証番号を記憶する暗証番号記憶手段(35)と、流量計(5)による測定値と計量升に給油された量から演算した補正係数を記憶する補正係数記憶手段(27)と、入力手段(36)から入力された暗証番号と暗証番号記憶手段(35)に記憶されている暗証番号との一致を判断する比較手段(37)とが設けられ、比較手段(37)の判断に基づいて入力手段(36)から入力された補正係数が補正係数記憶手段(27)に記憶される。
【0008】
このように、補正係数を変更するには暗証番号が必要なので、暗証番号を知っている責任者だけが補正係数を変更でき、不正給油を防止することができる。
【0009】
そして、前記流量計(5)は、1対の回転体(19)を互いに噛み合わせた回転式流量計であることが好ましい。
【0010】
回転式流量計を用いると、流量に脈動が少なくなり、正確な瞬間流量が得られる。
【0011】
さらに、前記入力手段(36)は、キーパッド(13)又は可搬式コンピュータであることが、入力の簡便さの点で好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の給油装置の効果を、以下に列挙する。
(1) 補正係数を変更するには暗証番号が必要なので、暗証番号を知っている責任者だけが補正係数を変更でき、不正給油を防止することができる。
(2) 補正係数記憶手段には各瞬間流量域毎に補正係数が記憶され、瞬間流量測定手段で測定された瞬間流量に対応した補正係数で補正されるので、瞬間流量が少ない場合及び多い場合でも給油量が正確に補正できる。
(3) 1対の回転体を互いに噛み合わせた回転式流量計を使用することにより、流量に脈動が少なくなり、正確な瞬間流量に基づいて正確な補正係数が求まり、正確に補正された給油量が得られるようになる。
(4) キーパッド又は可搬式コンピュータを入力手段とすることにより、入力が簡便となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、給油装置1のハウジング2内に配設された給油管3にはポンプ4及び流量計5が介装され、給油管3に接続された給油ホース6の先端には給油ノズル7が取り付けられている。そして、給油ノズル7はハウジング2に設けられたノズル掛け8に掛脱され、給油ノズル7の掛脱を検知してオンーオフ信号を出力するノズルスイッチ9が設けられている。
【0014】
制御装置10は、ノズルスイッチ9からオン信号を受けて表示器11を帰零し、ポンプ4を駆動するモータ12を起動し、流量計5から流量信号を受けて給油量を演算し、演算した給油量を表示器11に表示し、ノズルスイッチ9からオフ信号を受けて、モータ12を停止する。なお、図中の符号13は、各種のデータを入力するキーパッドである。
【0015】
図2に示すように、流量計5は、流入口15及び流出口16を設けたケース17と、ケース17内に設けられた一対の軸18に嵌入した一対の回転体19と、パルス発信器20で構成されている。一対の軸18は図示しない歯車により連動され、回転体19がスムーズに回転するようになっている。
また、パルス発信器20は密閉ケース内に設けられ、回転体19とパルス発信器20とは図示しない磁気継手を介して接続され、液漏れが生じない構造となっている。
【0016】
なお、図中符号21はケース17の溝17aに入れられるシール用のOリングで、符号22はパルス発信器20をケース17に取り付けるボルトである。
【0017】
図3に示すように、制御装置10は、ノズルスイッチ9からオン信号を受けてモータ12を起動し、ノズルスイッチ9からオフ信号を受けてモータ12を停止するモータ駆動手段25と、流量計5のパルス発信器20から流量信号を受けて瞬間流量を測定する瞬間流量測定手段26と、補正計数を記憶した補正計数記憶手段27と、瞬間流量測定手段26から瞬間流量値を受けて補正係数記憶手段27から補正係数を選択する補正係数選択手段28と、パルス発信器20から流量信号及び補正係数選択手段28から補正係数を受けて1パルス当りの給油量を演算し、整数値及び端数値を出力する給油量演算手段29と、給油量演算手段29から受けた端数値を積算し、整数値を出力する端数記憶手段30と、給油量演算手段29及び端数記憶手段30から受けた整数値を積算する第一の計数手段31と、パルス発信器20の流量信号を積算する第二の計数手段32と、瞬間流量測定手段26、第一の計数手段31、及び第二の計数手段32から受けた数値を選択的に表示器11に表示する表示器駆動手段33とを具備している。
【0018】
そして、ノズルスイッチ9からオン信号を受けて、端数記憶手段30、第一の計数手段31、及び第二の計数手段32の数値は帰零されるように構成されている。
【0019】
さらに、制御装置10は、暗唱番号を記憶した暗唱番号記憶手段35と、入力手段36から入力した暗唱番号と暗唱番号記憶手段35に記憶されている暗唱番号との一致を判断する比較手段37と、比較手段37から一致信号を受けて開かれるゲート38とを具備している。そして、ゲート38が開くことにより、入力手段36から入力される補正係数データが補正係数記憶手段27に記憶されるようになっている。
【0020】
なお、入力手段36としては、給油装置1に設けられているキーパッド13、または図示しない可搬式コンピュータが使用され、可搬式コンピュータの場合は有線または無線で補正係数データが入力される。
【0021】
次に、図4、5に基づいて、補正係数記憶手段27に補正係数を記憶する態様を説明する。図5に示すように、補正係数40a、40b・・・は、各瞬間流量域41a、41b・・・毎に補正係数記憶手段27に記憶されている。また、補正係数40a、40b・・・は複数回実測し、その平均値を記憶するようにしている。
【0022】
補正係数を実測するには、キーパット13から表示器駆動手段33に表示切替信号を入力し、瞬間流量測定手段26の瞬間流量値を表示器11へ表示するようにする(ST1)。そして、給油ノズル7をノズル掛け8から外してノズルスイッチ9が閉じると、ノズルスイッチ9からオン信号が制御装置10に入力し、モータ駆動手段25はモータ12を起動する。
【0023】
次に、給油ノズル7の弁開レバーを引くと、貯油タンクからの油はポンプ4、流量計5を介して給油ノズル7から吐出される。そして、流量計5のパルス発信器20から流量信号が制御装置10に入力すると、瞬間流量測定手段26で測定された瞬間流量値が表示器駆動手段33を介して表示器11に表示される。この瞬間流量値が流量域41aの中央値(3L/分)になるように、治具等を用いて給油ノズル7の弁開レバーを固定する(ST2)。
【0024】
ノズルスイッチ9を開いてオフ信号を制御装置10に入力すると、モータ駆動手段25はモータ12を停止する。そして、キーパッド13から表示器駆動手段33に表示切替信号を入力し、第二の計数手段32の給油量を表示器11へ表示するようにする(ST3)。
【0025】
給油ノズル7を計量升、例えば20Lの計量升に挿入し、ノズルスイッチ9を閉じてオン信号を制御装置10に入力すると、モータ駆動手段25はモータ12を起動し、第二の計数手段32の前回の数値が帰零され、給油ノズル7から計量升に油が吐出される。そして、流量計5のパルス発信器20から流量信号が制御装置10に入力し、第二の計数手段32の給油量が表示器駆動手段33を介して表示器11に表示される。
【0026】
表示器11の表示値が20L前後になったらノズルスイッチ9を開いてオフ信号を制御装置10に入力すると、モータ駆動手段25はモータ12を停止する(ST4)。そして、表示器11の表示値及び計量升に給油された量から補正係数を演算し、その数値を記録する(ST5)。
【0027】
この補正係数の演算は各瞬間流量域41a、41b・・・毎に複数回実行され、全瞬間流量域の計量が終ったならば(ST6)、制御装置10を保守モードにする(ST7)。制御装置10を保守モードにするには、入力手段36から暗唱番号を比較手段37へ入力し、暗唱番号が暗唱番号記憶手段35の記憶値と一致しているとゲート38が開いて保守モードとなる。
【0028】
そして、計量した流量計番号及び演算した補正係数等のデータを入力手段36から入力すると、データは補正係数記憶手段27に記憶される(ST8)。
【0029】
以上のように、補正係数記憶手段27に補正係数を記憶し、キーパッド13を操作して制御装置10を給油モードにして給油が行われる。制御装置10を給油モードにすると、第一の計数手段31の給油量が表示器駆動手段33を介して表示器11に表示されるようなる。
【0030】
次に、給油の態様、及び図6、7に基づいて流量補正の態様を説明する。給油ノズル7をノズル掛け8から外すと、ノズルスイッチ9からオン信号が制御装置10に入力し、モータ駆動手段25はモータ12を起動し、端数記憶手段30及び第一の計数手段31の前回の数値が帰零される。給油ノズル7を自動車の給油口へ挿入して弁開レバーを引くと、貯油タンクからの油はポンプ4及び流量計5を介して給油ノズル7から吐出される。
【0031】
流量計5のパルス発信器20から流量信号が制御装置10に入力すると(ST10)、瞬間流量測定手段26は瞬間流量の測定を開始する(ST11)。瞬間流量の測定は、所定数、例えば流量信号が8個入力する毎に(ST12)、瞬間流量を演算する(ST13)。
【0032】
そして、補正係数選択手段28は演算された瞬間流量域に該当した補正係数を補正係数記憶手段27から選択し、選択した補正係数を給油量演算手段29へ出力する。例えば、演算された瞬間流量が23Lの場合は、瞬間流量域41eの補正係数1.0170を選択して給油量演算手段29へ出力する。
【0033】
一方、給油量演算手段29は、流量計5のパルス発信器20から流量信号が入力する毎に(ST15)、1パルスを第一の計数手段31へ出力し、補正係数の端数部分0.0170を端数記憶手段30へ出力する(ST16)。
【0034】
そして、端数記憶手段30は端数を加算して整数部分が生じる毎に(ST17)、1パルスを第一の計数手段31へ出力する(ST18)。第一の計数手段31は、給油量演算手段29及び端数記憶手段30からのパルスを積算し、表示器駆動手段33を介して表示器11に表示する。
【0035】
このようにして、瞬間流量が変わる毎に、その瞬間流量域の補正係数が選択され、瞬間流量域に見合った補正係数で補正された給油量が表示器11に表示されるので、計量精度が高い給油装置となる。
【0036】
給油が終わり、給油ノズル7をノズル掛け8に掛けると、ノズルスイッチ9からオフ信号が制御装置10に入力し、モータ駆動手段25はモータ12を停止して、給油作業が終わる。
【0037】
次に、図8に基づいて補正係数に整数部がない場合の態様を説明する。この場合には、給油量演算手段29は、流量計5のパルス発信器20から流量信号が入力する毎に(ST20)、補正係数を端数記憶手段30へ出力する(ST21)。
【0038】
そして、端数記憶手段30は端数を積算して整数部分が生じる毎に(ST22)、1パルスを第一の計数手段31へ出力する(ST23)。第一の計数手段31は端数記憶手段30からのパルスを積算し、表示器駆動手段33を介して表示器11に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の給油装置の正面図。
【図2】流量計を分解した状態の斜視図。
【図3】制御装置のブロック図。
【図4】補正係数記憶手段に補正係数を記憶する動作を示すフロー図。
【図5】補正係数記憶手段に記憶される補正係数の図。
【図6】瞬間流量を測定する動作を示すフロー図。
【図7】給油量を補正する動作を示すフロー図。
【図8】他の実施の形態の給油量を補正する動作を示すフロー図。
【符号の説明】
【0040】
1・・・給油装置
2・・・ハウジング
3・・・給油管
4・・・ポンプ
5・・・流量計
6・・・給油ホース
7・・・給油ノズル
8・・・ノズル掛け
9・・・ノズルスイッチ
10・・・制御装置
11・・・表示器
12・・・モータ
13・・・キーパッド
15・・・流入口
16・・・流出口
17・・・ケース
18・・・軸
19・・・回転体
20・・・パルス発信器
21・・・Oリング
22・・・ボルト
25・・・モータ駆動手段
26・・・瞬間流量測定手段
27・・・補正係数記憶手段
28・・・補正係数選択手段
29・・・給油量演算手段
30・・・端数記憶手段
31・・・第一の計数手段
32・・・第二の計数手段
33・・・表示器駆動手段
35・・・暗証番号記憶手段
36・・・入力手段
37・・・比較手段
38・・・ゲート
40・・・補正係数
41・・・瞬間流量域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油管に流量計を介装し、給油管を給油ホースを介して給油ノズルに接続し、流量計から流量信号を受けて給油量を演算する制御装置と、制御装置で演算された給油量を表示する表示器を設けた給油装置において、前記制御装置には、暗証番号を記憶する暗証番号記憶手段と、流量計(5)による測定値と計量升に給油された量から演算した補正係数を記憶する補正係数記憶手段と、入力手段から入力された暗証番号と暗証番号記憶手段に記憶されている暗証番号との一致を判断する比較手段とが設けられ、比較手段の判断に基づいて入力手段から入力された補正係数が補正係数記憶手段に記憶されることを特徴とした給油装置。
【請求項2】
前記流量計は、1対の回転体を互いに噛み合わせた回転式流量計である請求項1に記載の給油装置。
【請求項3】
前記入力手段は、キーパッド又は可搬式コンピュータである請求項1又は2に記載の給油装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−1664(P2007−1664A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266406(P2006−266406)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【分割の表示】特願2000−204982(P2000−204982)の分割
【原出願日】平成12年7月6日(2000.7.6)
【出願人】(000151346)株式会社タツノ・メカトロニクス (167)
【Fターム(参考)】