説明

給湯システム

【課題】 混合ユニットをフィードバック制御する際に、給湯温度を速やかに所望の温度に安定させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】 本発明は給湯システムとして具現化される。その給湯システムは、貯湯槽と、貯湯槽に給水する給水経路と、貯湯槽から給湯する給湯経路と、給湯経路の湯に給水経路の水を混合して調温する混合ユニットであって、給水経路から分岐して貯湯槽をバイパスして給湯経路に合流するバイパス経路と、バイパス経路に設けられた混合弁を備える混合ユニットと、混合弁の開度を調整するコントローラを備えている。その給湯システムでは、そのコントローラが、混合ユニットにおける目標混合比率と現状混合比率だけでなく、給湯流量にも基づいて、混合弁の開度の増減量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式の給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式の給湯システムは、加熱された湯を貯湯槽に貯湯しておき、貯湯槽に貯湯しておいた湯を必要に応じて給湯する。このような給湯システムは、例えば発電によって生じる発電熱を給湯の熱源として利用するコージェネレーションシステム等において採用されている。貯湯式の給湯システムでは、貯湯されている湯の温度が給湯したい湯の温度よりも高い場合に、混合ユニットを用いて湯と水を混合して、所望の温度にまで調温してから給湯する。
【0003】
貯湯式の給湯システムにおいて、混合ユニットは、貯湯槽の下部へ水道水を供給する給水経路から分岐して、貯湯槽の上部から湯を供給する給湯経路に合流するバイパス経路と、給水経路とバイパス経路の分岐部、または給湯経路とバイパス経路の合流部に設けられた混合弁を備えている。以下では給水経路から貯湯槽を経て給湯経路に至る経路を湯側経路とよび、給水経路からバイパス経路を経て給湯経路に至る経路を水側経路とよぶ。混合弁はその開度が調整可能であって、開度を変化させることにより、湯と水の混合比率を調節する。このような給湯システムでは、給水経路や給湯経路の各所に設けられたサーミスタの検出値に基づいて、給湯温度が所望の温度となるように、混合弁の開度を調整する。
【0004】
安定した温度での給湯を速やかに行うためには、混合弁の開度の調整における制御遅れを少なくして、混合ユニットにおける調温を速やかに行う必要がある。特許文献1には、フィードフォワード制御とフィードバック制御を組み合わせて、混合ユニットにおける調温を速やかに行って、安定した温度での給湯を速やかに行う技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−190483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
混合ユニットにおける湯と水の混合比率は、混合弁が所定の開度に維持されていても、湯と水を混合した後の給湯流量の大きさに応じて変動する。これは、水側経路がバイパス経路を経由するのに対して、湯側経路が貯湯槽を経由しているために、水側経路と湯側経路で圧力損失特性が大きく異なることに起因する。混合弁が所定の開度に維持されていても、給湯流量が減少すると、水側経路の水は流れるものの、湯側経路の湯があまり流れなくなり、湯に対する水の混合比率は増加する。逆に給湯流量が増加すると、水側経路の水だけでなく、湯側経路の湯も流れるようになり、結果として湯に対する水の混合比率は減少する。混合ユニットでは、湯に対する水の混合比率を直接的に制御することはできず、混合弁の開度を調整することで湯に対する水の混合比率を間接的に制御している。従って、湯に対する水の混合比率に対して給湯流量が及ぼす影響を考慮に入れないと、所望の温度で給湯を行うことができない。
【0007】
湯に対する水の混合比率に対して給湯流量が及ぼす影響は、混合弁の開度を給湯温度に基づいてフィードバック制御する際の安定性にも影響を及ぼす。給湯流量が小さい場合には、混合弁の開度をわずかに変化させることで、湯に対する水の混合比率は大きく変化する。逆に、給湯流量が大きい場合には、混合弁の開度を多少変化させても、湯に対する水の混合比率はそれほど変化しない。混合弁の開度を現実に検出される給湯温度に基づいてフィードバック制御する場合、混合弁の開度の増減量を適切に設定しておかないと、ハンチングを起こして給湯温度が不安定になったり、所望の温度に安定するまでに長時間を必要とすることになってしまう。
【0008】
湯に対する水の混合比率に対して給湯流量が及ぼす影響を排除する方式として、水側経路に付加的な管路抵抗を設けて、水側経路と湯側経路で圧力損失特性を一致させる方式が考えられる。この方式によれば、給湯流量が変動しても、湯側経路からの湯の流量と水側経路からの水の流量が同じように増減するから、湯に対する水の混合比率は一定に保たれる。湯に対する水の混合比率に対して給湯流量が及ぼす影響を排除することができる。
しかしながら、この方式を採用すると、給湯システム全体としての圧力損失が増大してしまうという難点がある。給湯システム全体としての圧力損失が大きいと、水道の給水圧力が低い地域では、給湯流量が極端に少なくなってしまい、利用者の利便性を損ねてしまう。給湯システム全体としての圧力損失を増大することなく、混合ユニットにおける水と湯の混合比率を適切に調整して、所望の温度で安定して速やかに給湯可能な技術が待望されている。
【0009】
本発明は上記課題を解決する。本発明では、混合ユニットをフィードバック制御する際に、給湯温度を速やかに所望の温度に安定させることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は給湯システムとして具現化される。その給湯システムは、貯湯槽と、貯湯槽に給水する給水経路と、貯湯槽から給湯する給湯経路と、給湯経路の湯に給水経路の水を混合して調温する混合ユニットであって、給水経路から分岐して貯湯槽をバイパスして給湯経路に合流するバイパス経路と、バイパス経路に設けられており、開度を変化させることにより湯と水の混合比率を調節する混合弁を備える混合ユニットと、給湯設定温度を取得する設定温度取得手段と、バイパス経路を流れる水の温度を低温水温度として検出する低温水温度検出手段と、バイパス経路が合流するより上流側の給湯経路を流れる湯の温度を高温水温度として検出する高温水温度検出手段と、バイパス経路が合流するより下流側の給湯経路を流れる湯の温度を給湯温度として検出する給湯温度検出手段と、バイパス経路が合流するより下流側の給湯経路を流れる湯の流量を給湯流量として検出する給湯流量検出手段と、混合弁の開度を調整するコントローラを備えている。その給湯システムでは、そのコントローラが、給湯設定温度と低温水温度と高温水温度に基づいて、混合ユニットにおける目標混合比率を計算し、給湯温度と低温水温度と高温水温度に基づいて、混合ユニットにおける現状混合比率を計算し、目標混合比率と現状混合比率と給湯流量に基づいて、混合弁の開度の増減量を決定する。
【0011】
上記の給湯システムでは、混合ユニットが給湯経路の湯に給水経路の水を混合することで、給湯設定温度に調温された湯を給湯する。コントローラは、給湯設定温度から計算される目標混合比率と、現実の給湯温度から計算される現状混合比率を用いて、フィードバック制御によって混合弁の開度を増減調整する。
【0012】
混合弁の開度を増減させた場合の混合比率の変動は、給湯流量の大きさによって異なる。給湯流量が小さい場合には、混合弁の開度をわずかに増減させるだけで、混合比率は大きく変動する。逆に、給湯流量が大きい場合には、混合弁の開度を多少増減させたとしても、混合比率はそれほど変動しない。フィードバック制御を行う際に、混合弁の開度の増減量が大き過ぎると、ハンチングを起こして、給湯温度が安定しなくなってしまう。逆に、混合弁の開度の増減量が小さ過ぎると、給湯温度を給湯設定温度に安定させるまでに長期間を必要としてしまう。
上記の給湯システムでは、給湯設定温度から計算される目標混合比率と、現実の給湯温度から計算される現状混合比率だけでなく、給湯流量も考慮に入れて、混合弁の開度の増減量が決定される。このような構成を採用することによって、給湯温度を給湯設定温度に速やかに安定させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の給湯システムによれば、混合ユニットをフィードバック制御する際に、給湯温度を速やかに所望の温度に安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
(形態1) 貯湯槽には、発電ユニットが発電することによって生じる発電熱で加熱された湯が貯湯される。
【実施例】
【0015】
本発明の給湯システムを具現化した一実施例を図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施例の給湯システム100は、発電ユニット102、暖房端末機160、風呂の浴槽170および給湯栓124に接続されている。給湯システム100は、貯湯槽110、熱源機140、混合ユニット134、リモコン182およびコントローラ180等を備えている。
【0016】
発電ユニット102は、固体高分子型の燃料電池を用いた発電装置である。発電ユニット102は電力需要に応じて発電を行う。発電を行う際に、発電ユニット102は排熱回収ポンプ104を駆動する。排熱回収ポンプ104が駆動されると、貯湯槽110の底部から水が吸い出される。吸い出された水は、排熱回収熱交換器106で発電熱によって加熱されて、貯湯槽110の頂部に戻される。発電ユニット102から貯湯槽110の頂部に戻される湯の温度は、排熱回収サーミスタ108によって測定されて、コントローラ180へ出力される。
【0017】
貯湯槽110は、発電ユニット102の発電熱によって加熱された湯を貯える。貯湯槽110に貯えられた湯は、給湯や暖房、風呂の追い焚き等に利用される。貯湯槽110の内部には温度成層が形成されており、貯湯槽110の上部には下部に比べて高温の湯が貯えられる。従って、貯湯槽110の蓄熱量が少ないときでも、貯湯槽110の上部から出湯することによって、高温の湯を利用することができる。貯湯槽110の上部には、湯温を検出する貯湯槽サーミスタ112が設けられており、検出された温度はコントローラ180へ出力される。
【0018】
貯湯槽110の底部は、貯湯槽給水経路136、混合ユニット134および給水経路132を経由して、図示されない水道管に接続されている。給水経路132には減圧弁126が設けられており、水道管からの給水圧力が調整されている。貯湯槽110の頂部は、貯湯槽給湯経路114、混合ユニット134、給湯経路122を経由して、給湯栓124に接続されている。給湯栓124が開かれると、給水圧力によって貯湯槽110の内部の湯水が底部から頂部に向けて押し上げられ、貯湯槽110の上部から貯湯槽給湯経路114へ出湯する。貯湯槽110から出湯した湯は、混合ユニット134で水道水と混合されて、所望の温度に調温された後に給湯栓124へ供給される。
【0019】
混合ユニット134は、貯湯槽110の上部から出湯される高温の湯に水道水を混合して、所望の温度に調温する。混合ユニット134は、給水経路132から貯湯槽給水経路136へ流れる水道水の一部を混合バイパス経路133に分岐させて、貯湯槽給湯経路114から給湯経路122へ流れる湯に混合する。給水経路132、貯湯槽給水経路136および混合バイパス経路133の接続部分には混合サーボ弁135が設けられている。混合サーボ弁135はステッピングモータを内蔵しており、これが駆動されることによって、貯湯槽給水経路136の開度と混合バイパス経路133の開度が調整されて、貯湯槽給水経路136へ流れる水道水の流量と混合バイパス経路133へ流れる水道水の流量の比率が調整される。混合サーボ弁135はコントローラ180によって制御されており、コントローラ180から指示されるステップ数に応じてステッピングモータを駆動する。混合ユニット134から貯湯槽110の底部へ給水される水道水の流量と、貯湯槽110の上部から混合ユニット134へ出湯される湯の流量は等しい。従って、混合サーボ弁135によって貯湯槽給水経路136へ分岐する水道水の流量と混合バイパス経路133へ分岐する水道水の流量の比率を調節することによって、貯湯槽給湯経路114からの湯と混合バイパス経路133からの水道水の混合比率を調節することができる。
【0020】
貯湯槽給湯経路114には、貯湯槽給湯電磁弁116と貯湯槽給湯サーミスタ118が設けられている。貯湯槽給湯電磁弁116はコントローラ180によって制御されており、内蔵しているソレノイドが駆動されることによって開閉する。貯湯槽給湯電磁弁116が閉じられている状態では、給湯栓124を開いても貯湯槽110からは出湯せず、給湯栓124には給水経路132および混合バイパス経路133を経由して水道水が供給される。貯湯槽給湯サーミスタ118は貯湯槽給湯経路114を流れる湯の温度(高温水温度)を検出して、コントローラ180へ出力する。
【0021】
給水経路132には、給水サーミスタ128と給水流量センサ130が設けられている。給水サーミスタ128は給水経路132を流れる水道水の温度を検出して、コントローラ180へ出力する。給水経路132を流れる水道水の温度は、混合バイパス経路を流れる水の温度に等しいから、給水サーミスタ128で検出される温度は、混合バイパス経路を流れる水の温度(低温水温度)に等しい。給水流量センサ130は給水経路132を流れる水道水の流量を検出して、コントローラ180へ出力する。給水経路132から混合ユニット134へ流れる水道水の流量と、混合ユニット134から給湯経路122へ流れる湯の流量は等しいから、給水流量センサ130で検出される流量は、混合ユニット134から給湯される湯の流量(給湯流量)に等しい。
【0022】
給湯経路122には給湯サーミスタ120が設けられている。給湯サーミスタ120は給湯経路122を流れる湯の温度(給湯温度)を検出して、コントローラ180へ出力する。
【0023】
熱源機140は、必要に応じて貯湯槽110の湯水を加熱する。コントローラ180によって循環ポンプ138が駆動されると、貯湯槽110の中間部から湯水が吸いだされ、熱源機140で加熱された後、貯湯槽110の頂部に戻される。熱源機140の出口近傍には熱源機出口サーミスタ141が設けられている。熱源機出口サーミスタ141は、熱源機140で加熱された湯の温度を検出して、コントローラ180へ出力する。
【0024】
本実施例の給湯システム100では、熱源機140で加熱された湯を直接的に混合ユニット134や給湯栓124に送ることなく、一旦貯湯槽110の頂部に戻し、貯湯槽110の頂部から給湯を行う構成としている。このような構成とすることによって、熱源機140の出口における湯温が急変した場合であっても、貯湯槽110の上部がバッファタンクとしての役割を果たし、給湯温度の急変が抑制される。給湯栓124に安定した湯温で給湯することができる。
【0025】
熱源機140から貯湯槽110へ戻る経路は、暖房熱交換経路142と、暖房バイパス経路150に分岐している。暖房熱交換経路142には第1制御弁148が設けられており、暖房バイパス経路150には第2制御弁152が設けられている。第1制御弁148と第2制御弁152は、いずれもソレノイドを内蔵した電磁弁であって、何れか一方が開かれ、他方が閉じられるように、コントローラ180によって制御される。暖房端末機160における暖房あるいは風呂の浴槽170の追い焚きが行われる場合には、第1制御弁148が開かれ、行われていない場合には、第2制御弁152が開かれる。
【0026】
暖房熱交換経路142には、暖房熱交換器144が設けられている。暖房熱交換器144では、熱源機140で加熱されて貯湯槽110へ戻る湯と、暖房端末機160の熱源として利用される熱媒(本実施例では水)との間で熱交換が行われる。暖房熱交換経路142の暖房熱交換器144の下流側には、暖房戻りサーミスタ146が設けられている。暖房戻りサーミスタ146は検出された温度をコントローラ180へ出力する。
【0027】
暖房端末機160は、エアコンや床暖房機といった、高温の湯を熱源として利用する暖房器具である。暖房端末機160の熱媒として利用される水は、シスターン154に貯えられており、暖房ポンプ156の駆動によって暖房循環経路158を流れて、暖房熱交換器144、暖房端末機160、シスターン154の順に循環する。
【0028】
暖房循環経路158の暖房熱交換器144と暖房端末機160の間から、追い焚き経路162が分岐している。追い焚き経路162は、暖房熱交換器144で加熱された熱媒としての湯が、追い焚き熱交換器164を経由してシスターン154へ戻る流路を形成する。追い焚き経路162には追い焚き熱動弁166が設けられている。追い焚き熱動弁166の開閉は、コントローラ180によって制御される。
【0029】
風呂の浴槽170には風呂循環経路168が接続されている。風呂循環経路168には風呂循環ポンプ172が設けられている。コントローラ180によって風呂循環ポンプ172が駆動されると、浴槽170から風呂循環経路168に湯が吸い出される。浴槽170から吸い出された湯は、追い焚き熱交換器164で加熱されて、浴槽170に戻される。
【0030】
風呂循環経路168は、注湯電磁弁174を介して給湯経路122に連通しており、注湯電磁弁174を開くことで、浴槽170への湯張りが行われる。注湯電磁弁174はコントローラ180によって制御される。
【0031】
リモコン182は、表示板と操作スイッチを備えている。利用者はリモコン182を操作して、給湯システム100の運転のON/OFFや、各種の運転モードの開始/終了や、給湯設定温度、暖房設定温度および風呂設定温度等を入力することができる。リモコン182はコントローラ180と通信可能であって、利用者の操作内容をコントローラ180へ送信する。
【0032】
コントローラ180は、制御プログラムを記憶している。コントローラ180には、リモコン182の操作信号と、給水流量センサ130の検出信号と各種サーミスタの検出信号等が入力される。コントローラ180は、入力された信号を制御プログラムで処理し、各種ポンプ、各種弁、バーナ等を制御する。
【0033】
以下では給湯システム100が給湯運転を行う際にコントローラ180が行う処理について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0034】
ステップS202では、給湯が開始されるまで待機する。本実施例では、給水流量センサ130で検出される給湯流量が2.7リットル/分以上となった時点で、給湯が開始されたと判断する。給湯が開始されると(ステップS202でYESとなると)、ステップS204に進む。
【0035】
ステップS204では、貯湯槽給湯電磁弁116を開く。これによって、貯湯槽110内の上部に貯められていた温水が貯湯槽給湯経路114に送り出される。
【0036】
ステップS206では、熱源機140による湯の加熱が必要か否かを判断するために、貯湯槽サーミスタ112の検出温度をしきい値と比較する。本実施例では、貯湯槽サーミスタ112の検出温度が60℃以上であれば(ステップS206でYESであれば)、貯湯槽110内の温水を加熱することなく給湯に利用することが可能とみなされる。このような場合、ステップS210に進み、非燃焼給湯運転が行われる。非燃焼給湯運転では、熱源機140のバーナを燃焼させず、循環ポンプ138も駆動されない。なお、給湯運転と並行して暖房運転や風呂の追い焚き運転が行われている場合には、熱源機140と循環ポンプ138はすでに駆動されている。このような場合には、非燃焼給湯運転であっても、熱源機140と循環ポンプ138をあえて停止させることはなく、そのまま駆動させる。
【0037】
貯湯槽サーミスタ112の検出温度が60℃未満であれば(ステップS206でNOであれば)、貯湯槽110内の温水を加熱することなく給湯に利用することが不可能とみなされる。このような場合、ステップS208に進み、燃焼給湯運転が行われる。燃焼給湯運転では、循環ポンプ138を駆動し、熱源機140のバーナを点火する。第1制御弁148と第2制御弁152の両者が閉じられていたら、第2制御弁152を開く。これによって、貯湯槽110の中間部から湯水が吸い出されて、熱源機140で加熱される。熱源機140のバーナの燃焼量は、熱源機出口サーミスタ141の検出温度が65℃となるように制御される。熱源機140で加熱された湯は、貯湯槽110の頂部に戻される。
【0038】
ステップS210では、貯湯槽給湯サーミスタ118で検出される高温水温度と、給水サーミスタ128で検出される低温水温度と、リモコン182に入力された給湯設定温度に基づいて、混合ユニット134における目標混合比率を計算する。目標混合比率は次式で計算される。
目標混合比率=(高温水温度−給湯設定温度)/(給湯設定温度−低温水温度)
【0039】
ステップS212では、ステップS210で計算された目標混合比率と、給湯水量センサ130で検出される給湯流量に基づいて、混合サーボ弁135に指示するステップ数を計算する。
【0040】
図3は混合ユニット134における混合サーボ弁135の開度と混合比率との関係を示している。混合サーボ弁135の開度はコントローラ180から混合サーボ弁135へ指示するステップ数によって定まるため、図3では混合サーボ弁135の開度を混合サーボ弁135へ指示するステップ数で表現している。図3に示すように、混合サーボ弁135へ指示するステップ数が同じ場合であっても、給湯流量の大小に応じて混合比率は変化する。給湯流量が大きい場合、同じ混合比率を実現しようとしても、混合サーボ弁135の開度を大きくしなければならない。逆に、給湯流量が小さい場合、同じ混合比率を実現しようとしても、混合サーボ弁135の開度を小さくしなければならない。これは、混合ユニット134の水側経路が混合バイパス経路133を経由しているのに対し、混合ユニット134の湯側経路が貯湯槽給水経路136、貯湯槽110および貯湯槽給湯経路114を経由しているため、水側経路と湯側経路で圧力損失特性が異なることに起因している。
【0041】
コントローラ180は、製品出荷の段階から、代表的な給湯流量の水準として、3リットル/分、6リットル/分、9リットル/分、12リットル/分のそれぞれの場合について、混合サーボ弁135へ指示するステップ数と混合ユニット134で実現される混合比率の対応関係を記憶している。コントローラ180は、給湯水量センサ130で検出される給湯流量と、ステップS210で計算された目標混合比率に基づいて、混合サーボ弁135へ指示するステップ数を計算する。
【0042】
例えば、給湯水量センサ130で検出される給湯流量が4リットル/分の場合には、給湯流量が3リットル/分の場合のステップ数と混合比率の対応関係と、給湯流量が6リットル/分の場合のステップ数と混合比率の対応関係を用いて、内挿法によって給湯流量が4リットル/分の場合のステップ数と混合比率の対応関係を取得する。そして、給湯流量が4リットル/分の場合の対応関係を用いて、目標混合比率に対応するステップ数を計算する。
なお本実施例では、検出された給湯流量が3リットル/分よりも小さい場合には、3リットル/分の場合の対応関係をそのまま用いる。検出された給湯流量が12リットル/分より大きい場合には、12リットル/分の場合の対応関係をそのまま用いる。
【0043】
ステップS214では、ステップS212で計算された目標混合比率に対応するステップ数を混合サーボ弁135へ指示し、実際に混合サーボ弁135を駆動する。これによって、混合サーボ弁135の開度が調整される。
【0044】
ステップS210からステップS214までの処理によって、給湯設定温度での給湯が行われる目標混合比率を実現するように、混合サーボ弁135の開度が調整される。ステップS210からステップS214までの処理は、給湯サーミスタ120で検出される給湯温度に関わらず、フィードフォワード制御によって行われる。フィードバック制御によって混合サーボ弁135の開度を調整する場合に比べて、速やかに目標混合比率を実現するような開度への調整が行われる。
【0045】
ステップS216では、給湯が終了したか否かを判断する。本実施例では、給水流量センサ130の検出流量が2.0リットル/分以下となった時点で、給湯が終了したと判断する。給湯が終了していない場合(ステップS216でNOの場合)、ステップS218へ進む。給湯が終了したと判断されると(ステップS216でYESとなると)、ステップS226へ進む。
【0046】
ステップS218の処理を行う時点では、ステップS210からステップS214までのフィードフォワード制御によって、混合サーボ弁135の開度はすでに調整されている。しかしながら、個々のセンサの検出誤差や、混合サーボ弁135の特性のばらつきに起因して、給湯サーミスタ120で検出される実際の給湯温度が給湯設定温度と一致していない場合がある。そこで、ステップS218以降の処理では、給湯サーミスタ120で検出される給湯温度に基づくフィードバック制御によって、混合サーボ弁135の開度を調整する。
【0047】
ステップS218では、貯湯槽給湯サーミスタ118で検出される高温水温度と、給水サーミスタ128で検出される低温水温度と、リモコン182に入力された給湯設定温度に基づいて、混合ユニット134における目標混合比率を計算する。目標混合比率は次式で計算される。
目標混合比率=(高温水温度−給湯設定温度)/(給湯設定温度−低温水温度)
【0048】
ステップS220では、貯湯槽給湯サーミスタ118で検出される高温水温度と、給水サーミスタ128で検出される低温水温度と、給湯サーミスタ120で検出される給湯温度に基づいて、混合ユニット134における現状の混合比率を計算する。現状混合比率は次式で計算される。
現状混合比率=(高温水温度−給湯温度)/(給湯温度−低温水温度)
【0049】
ステップS222では、ステップS218で計算された目標混合比率と、ステップS220で計算された現状混合比率と、給湯水量センサ130で検出される給湯流量に基づいて、混合サーボ弁135へのステップ数指示値に付与するフィードバック量を計算する。
【0050】
ステップS212に関して詳述したように、コントローラ180は、代表的な給湯流量の水準として、3リットル/分の場合、6リットル/分の場合、9リットル/分の場合、12リットル/分の場合のそれぞれの場合について、混合サーボ弁135へ指示するステップ数と混合ユニット134で実現される混合比率の対応関係を記憶している。
【0051】
ステップS222では、まずコントローラ180は、給湯水量センサ130で検出される給湯流量と、ステップS218で計算された目標混合比率に基づいて、目標混合比率に対応するステップ数を計算する。次いでコントローラ180は、給湯水量センサ130で検出される給湯流量と、ステップS220で計算された現状混合比率に基づいて、現状混合比率に対応するステップ数を計算する。そしてコントローラ180は、目標混合比率に対応するステップ数と、現状混合比率に対応するステップ数の差を算出して、その差に応じたステップ数増減量を設定する。
【0052】
ステップS224では、ステップS222で設定されたステップ数増減量に基づいて、混合サーボ弁135へステップ数の増減を指示して、混合サーボ弁135の開度を調整する。混合サーボ弁135の開度が調整された後、処理はステップS216へ戻る。
【0053】
ステップS216で給湯が終了したと判断されるまでの間、ステップS216からステップS224までの処理が繰り返される。給湯サーミスタ120で検出される給湯温度に基づいたフィードバック制御が行われ、給湯温度が給湯設定温度に安定していく。
【0054】
ステップS216で給湯が終了したと判断されると(YESとなると)、ステップS226へ進み、給湯を終了するための処理を行う。ステップS226では、燃焼給湯運転を行っていたか否かが判断される。燃焼給湯運転を行っていた場合(ステップS226でYESの場合)には、ステップS228へ進む。燃焼給湯運転を行っていなかった場合(ステップS226でNOの場合)には、ステップS230へ進む。
【0055】
ステップS228では、熱源機140のバーナを消火し、循環ポンプ138を停止して、ステップS230へ進む。なお、給湯運転と並行して暖房運転や風呂の追い焚き運転が行われている場合には、熱源機140のバーナを消火せず、循環ポンプ138も停止せずに、ステップS230へ進む。
【0056】
ステップS230では、給湯終了後の再給湯を待機し、所定時間経過しても再給湯が行われなければ、ステップS232で貯湯槽給湯電磁弁116を閉じて、ステップS202へ戻る。
【0057】
本実施例の給湯システム100では、ステップS210からステップS214までの処理において、混合ユニット134における目標混合比率だけでなく、給湯水量センサ130で検出される給湯流量も考慮して、混合サーボ弁135へ指示するステップ数を計算して、フィードフォワード制御によって混合サーボ弁135の開度を制御する。これによって、給湯流量の大小に関わりなく、速やかに給湯設定温度で給湯を行うことが可能となる。
【0058】
本実施例の給湯システム100では、ステップS216からステップS224までの繰り返し処理において、混合ユニット134における目標混合比率と現状混合比率だけでなく、給湯水量センサ130で検出される給湯流量も考慮して、混合サーボ弁135へ指示するステップ数増減量を計算して、フィードバック制御によって混合サーボ弁135の開度を制御する。これによって、給湯流量の大小に関わりなく、ハンチングを起こさずに、給湯温度を給湯設定温度まで短時間で安定させることができる。
【0059】
なお本実施例の給湯システム100では、コントローラ180が代表的な給湯流量の水準ごとの混合比率とステップ数の関係を、製品出荷の段階から記憶している例について説明したが、これらのデータは実際の給湯運転を行っている間に収集してもよい。すなわち、実際に家庭に設置されて給湯運転を行っている間に、貯湯槽給湯サーミスタ118で検出される高温水温度と、給水サーミスタ128で検出される低温水温度と、給湯サーミスタ120で検出される給湯温度に基づいて、混合ユニット134の現状混合比率を計算する。そして、計算された現状混合比率を、給湯水量センサ130で検出される給湯水量と、混合サーボ弁135に指示しているステップ数と関連付けて記憶する。このような構成とすることによって、実際に家庭に設置された状態での混合ユニット134での混合比率と混合サーボ弁135へ指令するステップ数との対応関係を取得することができる。より適切な制御を行うことが可能となる。
【0060】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は実施例の給湯システム100の系統図である。
【図2】図2は給湯システム100における給湯処理を説明するフローチャートである。
【図3】図3は混合ユニット134における混合比率と混合サーボ弁135に指示するステップ数の対応関係を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
100:給湯システム
102:発電ユニット
104:排熱回収ポンプ
106:排熱回収熱交換器
108:排熱回収サーミスタ
110:貯湯槽
112:貯湯槽サーミスタ
114:貯湯槽給湯経路
116:貯湯槽給湯電磁弁
118:貯湯槽給湯サーミスタ
120:給湯サーミスタ
122:給湯経路
124:給湯栓
126:減圧弁
128:給水サーミスタ
130:給水流量センサ
132:給水経路
133:混合バイパス経路
134:混合ユニット
135:混合サーボ弁
136:貯湯槽給水経路
138:循環ポンプ
140:熱源機
141:熱源機出口サーミスタ
142:暖房熱交換経路
144:暖房熱交換器
146:暖房戻りサーミスタ
148:第1制御弁
150:暖房バイパス経路
152:第2制御弁
154:シスターン
156:暖房ポンプ
158:暖房循環経路
160:暖房端末機
162:追い焚き経路
164:追い焚き熱交換器
166:追い焚き熱動弁
168:風呂循環経路
170:浴槽
172:風呂循環ポンプ
174:注湯電磁弁
180:コントローラ
182:リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯システムであって、
貯湯槽と、
貯湯槽に給水する給水経路と、
貯湯槽から給湯する給湯経路と、
給湯経路の湯に給水経路の水を混合して調温する混合ユニットであって、給水経路から分岐して貯湯槽をバイパスして給湯経路に合流するバイパス経路と、バイパス経路に設けられており、開度を変化させることにより湯と水の混合比率を調節する混合弁を備える混合ユニットと、
給湯設定温度を取得する設定温度取得手段と、
バイパス経路を流れる水の温度を低温水温度として検出する低温水温度検出手段と、
バイパス経路が合流するより上流側の給湯経路を流れる湯の温度を高温水温度として検出する高温水温度検出手段と、
バイパス経路が合流するより下流側の給湯経路を流れる湯の温度を給湯温度として検出する給湯温度検出手段と、
バイパス経路が合流するより下流側の給湯経路を流れる湯の流量を給湯流量として検出する給湯流量検出手段と、
混合弁の開度を調整するコントローラを備えており、
そのコントローラが、
給湯設定温度と低温水温度と高温水温度に基づいて、混合ユニットにおける目標混合比率を計算し、
給湯温度と低温水温度と高温水温度に基づいて、混合ユニットにおける現状混合比率を計算し、
目標混合比率と現状混合比率と給湯流量に基づいて、混合弁の開度の増減量を決定することを特徴とする給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−174787(P2009−174787A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14530(P2008−14530)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【出願人】(000129231)株式会社ガスター (277)
【Fターム(参考)】