説明

給紙装置

【課題】用紙を安定して供給することが可能な給紙装置を提供すること。
【解決手段】給紙装置30は、糊部4aを有する複数の付箋紙4Pが重ねられた付箋紙束4を載置して収容するためのトレイ5と、付箋紙束4の糊部4aを押さえる糊部側位置決め部32aと、付箋紙4Pの自由端部の側に配置され付箋紙4Pを糊部側位置決め部32aの方向へ送って撓ませ、付箋紙束4から分離させるピックアップローラ35と、を備え、底板52は、それぞれ高さ方向の位置が異なっている、付箋紙4Pの糊部4aの側を受ける水平面部52aと、自由端部の側を受ける斜面部52bと、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアップローラによって用紙を一枚ずつ供給する方式の給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚重ねられている用紙を供給するために、ピックアップローラによって1枚ずつ分離して給紙する給紙装置が知られている。また、ピックアップローラによる用紙の分離をより確実に行えるように、用紙を収容するトレイの底板に凸状部を設ける構成が開示されている。トレイの底板には、凸状部が設けられ、底板上に用紙束が山なりの形をなして載置されている。ピックアップローラは、凸状部より用紙束の端部側の位置を、ローラ圧で底板へ押さえるように配置されている。ピックアップローラが最上位の用紙に回転接触すると、用紙は、用紙束から山なりに持ち上げられて、1枚だけ分離される。底板に凸状部を設けることにより、ピックアップローラが用紙を山なりに持ち上げ易くなり、より確実な分離が可能である(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−175674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、用紙束が、凸状部において山なりをなすために、3つの曲部を有しており、用紙束を構成する用紙の材種や枚数によっては、用紙の剛性のため用紙が曲部を形成できなくなる。そのため、用紙束の端部が底板に当設せず底板から浮き上がってしまう、という課題があった。この場合、ピックアップローラで用紙束を底板方向へ押し下げられず、用紙の分離が不安定になる。また、ピックアップローラのローラ圧を強くすると、用紙束を底板へ当設させられるが、強いローラ圧のために、複数枚の用紙を同時に持ち上げてしまう場合がある。
【0005】
さらに、用紙束を略水平方向から挿入してトレイの底板へセットする際に、凸状部に用紙束の端部が当たってしまい、用紙束の挿入がスムーズにできない、という課題もあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、用紙を安定して供給することが可能な給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の給紙装置は、複数の用紙が重ねられた用紙束を載置して収容するためのトレイと、用紙束の最上位の用紙を押さえる規制部と、用紙を用紙束から分離させるためのローラと、を備え、トレイは用紙を受ける第1載置面と第2載置面とを有していることを特徴とする。
【0008】
この給紙装置によれば、ローラが用紙束の最上位にある用紙を変形させることにより、当該最上位の用紙だけを用紙束から分離する構成である。この時、ローラは、用紙を用紙束から離反するように変形させている。そして、給紙装置は、用紙束を載置するトレイが第1載置面と第2載置面とを有している。このような2つの載置面を有するトレイに載置された用紙束は、第1載置面および第2載置面に沿った形状となって収容されており、この用紙束の形状において、第1載置面と第2載置面との境界位置が変曲点となっている。この状態の用紙束は、ローラが用紙束から用紙を分離するために、用紙を変形させ始める初期の状態に近似しており、ローラが最上位の用紙を分離し始めると、最上位の用紙は、用紙束が一平面からなる載置面に載置されている場合に比べて、用紙束から分離するための変形をより容易に、且つ確実に起こし始める。また、多数の用紙を有する用紙束や剛性の強い用紙束であっても、用紙束の抵抗に抗して、スムーズに変形させることが可能である。さらに、用紙束は、凸状の障害物等のない第1載置面および第2載置部に沿うように滑らせて、トレイへスムーズに載置される。このように、給紙装置は、用紙をトレイへスムーズに挿入できると共に、用紙束から用紙を一枚ずつ分離して、安定した給紙をすることが可能である。
【0009】
本発明の給紙装置は、一端に糊部を有する複数の付箋紙が重ねられた付箋紙束を載置して収容するためのトレイと、付箋紙束の最上位に位置する付箋紙の糊部を押さえる規制部と、付箋紙の自由端部側を捲り上げて付箋紙束から付箋紙を分離させるためのローラと、を備え、トレイは付箋紙の糊部の側を受ける第1載置面と自由端部の側を受ける第2載置面とを有していることを特徴とする。
【0010】
この給紙装置によれば、載置される付箋紙束は、糊部と糊に拘束されない自由端部とを有し、ローラが付箋紙束の最上位にある付箋紙の自由端部を変形させることにより、当該最上位の付箋紙だけを付箋紙束から分離する構成である。この時、ローラは、付箋紙を付箋紙束から離反するように変形させている。そして、給紙装置は、付箋紙束を載置するトレイが第1載置面と第2載置面とを有している。このような2つの載置面を有するトレイに載置された付箋紙束は、第1載置面および第2載置面に沿った形状になって収容されており、この用紙束の形状において、第1載置面と第2載置面との境界位置が変曲点となっている。この状態の付箋紙束は、ローラが付箋紙束から付箋紙を分離するために、付箋紙を変形させ始める初期の状態に近似しており、ローラが最上位の付箋紙を捲り上げ始めると、最上位の付箋紙は、付箋紙束が一平面からなる載置面に載置されている場合に比べて、付箋紙束から分離するための変形をより容易に、且つ確実に起こし始める。また、多数の付箋紙を有する付箋紙束や剛性の強い付箋紙束であっても、付箋紙束の抵抗に抗して、スムーズに変形させることが可能である。さらに、付箋紙束は、凸状の障害物等のない第1載置面および第2載置部に沿うように滑らせて、トレイへスムーズに載置される。このように、供給装置は、付箋紙をトレイへスムーズに挿入できると共に、付箋紙束から付箋紙を一枚ずつ分離して、安定した給紙をすることが可能である。
【0011】
この場合、トレイの第1載置面と第2載置面とは、第1載置面の側から第2載置面の側に傾斜していることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第2載置面は、第1載置面に対して傾きをなす斜面であり、トレイに載置された付箋紙束は、第1載置面および第2載置面に沿ってローラの側に斜面を有するように折れ曲がった状態である。従って、付箋紙が残り少なくなった付箋紙束や剛性の弱い付箋紙束であっても、第1載置面および第2載置面に沿って載置されて、常に、一定の折れ曲がり状態を維持でき、すべての付箋紙を同じ条件下で、ローラによって、スムーズに付箋紙束から分離させることが可能である。
【0013】
または、この場合、トレイの第1載置面と第2載置面とは、階段状に形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、トレイは、互いに階段状をなす第1載置面および第2載置面を有しており、このような段で構成された第1載置面および第2載置面は、製造上の加工が斜面より容易であり、精度良く仕上げることが可能である。トレイに載置された付箋紙束は、低い段側の載置面との間に隙間を有した状態で、折れ曲がって載置されている。従って、この隙間を利用すれば、ローラまたは規制部による押さえを調整して折れ曲がりの程度を加減することができ、剛性の強い付箋紙束等に対しては、押さえ圧を強めて、適正な折れ曲がりを確保することが可能である。このように、段をなす第1載置面および第2載置面を有する給紙装置は、付箋紙束の材種・剛性等に応じて、付箋紙束から分離するための付箋紙の撓みをより起き易くさせる操作が行える。
【0015】
また、付箋紙束は、第2載置面側に付箋紙の自由端部が臨むようにトレイに載置されることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、斜面または階段状の面である第2載置面の側に付箋紙束の自由端部を載置するようにして、付箋紙束を常に一定の折り曲げ形状にする。これにより、付箋紙は、ロールによって、付箋紙束から安定して捲り上げられて分離される。また、第2載置面には、付箋紙束の挿入を阻害するような突起物等がなく、付箋紙束は、第2載置面に沿って容易に挿入できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の給紙装置の実施形態について図面に従って説明する。実施形態では、付箋紙プリンタに備えられた給紙装置を具体例にして説明する。付箋紙プリンタは、パーソナルコンピュータと接続して、パーソナルコンピュータで作成して選択した文字、図形、電子メールなどの各種データを、糊部を有する付箋紙(用紙)に印刷するものである。この付箋紙プリンタに備えられた給紙装置は、付箋紙が重ねられた付箋紙束(用紙束)をトレイに収容し、付箋紙束から付箋紙を一枚ずつ捲り上げて、糊付部から引き剥がしながら印刷機構へ送るためのものである。そして、印刷機構の印刷部では、サーマルヘッドによってインクリボンのインクを付箋紙へ転写して各種データを印刷する。
(実施形態1)
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る給紙装置を備えた付箋紙プリンタの外観を示す斜視図である。付箋紙プリンタ1は、外郭を形成するケース2を備え、ケース2は、ケース本体2aと、ケース本体2aの上面部の一部を構成する開閉蓋2bと、を有している。ケース本体2aは、ケース本体2aの下部に設けられ付箋紙束4を収容するトレイ5と、付箋紙束4をトレイ5へ載置するためにトレイ5をケース本体2aから挿抜するための開口部6と、ケース本体2aと開閉蓋2bとの間にスリット状をなして位置し付箋紙束4から引き剥がされて印刷された付箋紙4Pをケース2の外部に送り出すための排出口7と、を有している。そして、開閉蓋2bは、上下方向に開閉するように、ヒンジによって、ケース本体2aに取り付けられており、開閉蓋2bを開けることにより印刷機構等のメンテナンスや、インクリボンカートリッジの交換などを行うことができる。
【0019】
次に、付箋紙プリンタ1の内部の構成について説明する。図2は、実施形態1に係る給紙装置を搭載した付箋紙プリンタの内部を示す斜視図である。また、図3は、インクリボンカートリッジを外してトレイを引き出した状態の付箋紙プリンタの内部を示す斜視図である。図2に示すように、付箋紙プリンタ1は、上下方向に延在する平板状のメインフレーム10と、メインフレーム10の下部にメインフレーム10と直角の水平方向に取り付けられたサブフレーム11と、を有している。
【0020】
サブフレーム11は、上部方向へ開口した箱状であり、この箱状部に付箋紙束4を収容するトレイ5が挿抜自在に格納されている。さらに、サブフレーム11には、トレイ5に収容されている付箋紙束4から付箋紙4P(図1)を捲り上げて、一枚ずつピックアップするためのピックアップユニット31が、トレイ5と共に給紙装置30として設けられている。また、メインフレーム10には、ピックアップユニット31の上方に位置し付箋紙4Pに印刷を行う印刷機構20と、給紙装置30および印刷機構20を駆動するモータ41を含む伝達機構40と、が設けられている。
【0021】
以下に各機構の構成について説明する。給紙装置30は、トレイ5と、ピックアップユニット31と、付箋紙束4の上方向の高さ位置を規制する位置決め部32と、を有している。このうち、トレイ5は、ケース2からトレイ5を引き出すためにケース2の開口部6の側に設けられた引手部51と、付箋紙束4を載置するための底板52とを有し、さらに、底板52は、引手部51の側に略水平に位置して配置された水平面部(第1載置面)52aと、水平面部52aより低くなるように傾いた斜面である斜面部(第2載置面)52bと、の2面を有している。このような底板52に載置された付箋紙束4は、山なりに緩く折れ曲がっている状態である。
【0022】
また、底板52は、上下方向へ移動することができ、載置した付箋紙束4を上方へ押し上げている。位置決め部32は、サブフレーム11に固定されトレイ5の上方に配置されていて、上方へ押し上げられた付箋紙束4が当接する。これにより、付箋紙束4の最上位の付箋紙4Pは、常に、既定された一定の高さ位置に配置されている。なお、底板52の可動については、図4を参照して後述する。
【0023】
また、トレイ5の挿抜方向の内幅は、既定長の付箋紙束4を収容するように、既定の長さに設定されており、種々の幅の付箋紙束4を収容できるように、最大幅の付箋紙束4に合わせて設定されている。ここで、トレイ5のメインフレーム10側の内壁面が、付箋紙4Pの積層面の幅方向の基準面となり、付箋紙束4は、この内壁面を幅方向のガイドにしてトレイ5に収容されている。図2および図3では、最少幅の付箋紙束4が、内壁面に当接してトレイ5に収容されている場合を示している。
【0024】
この場合、最小幅の付箋紙束4をより安定して載置するために、内壁面に当接する積層面と反対側の積層面をガイドするガイド板(不図示)を設けてある。ガイド板は、ブックエンド形式のものや、水平面部52aまたは斜面部52bに埋め込むように寝かせてある複数のガイド板のうち、付箋紙束4の幅に合致したガイド板を起こす形式のものなどが考えられる。このように、いずれの幅の付箋紙束4であっても、トレイ5は、付箋紙束4を規制した状態で、付箋紙束4を適切に且つ安定して載置することが可能である。なお、図3に示すように、操作者がトレイ5の引手部51を引いて、トレイ5をサブフレーム11から一部引き出すことにより、トレイ5へ付箋紙束4を新規載置、補充または交換することなどができる。
【0025】
ピックアップユニット31は、図2に示すように、付箋紙束4の幅方向に延在する連結アーム34と、連結アーム34とU字をなすように連結アーム34の両端部を支持する支持アーム33(メインフレーム10の側の支持アームは不図示)と、サブフレーム11に設けられ支持アーム33を回転自在に支持するアーム軸支部12と、付箋紙束4を上側から臨む位置に連結アーム34と平行に設けられたピックアップローラ(ローラ)35と、ピックアップローラ35を連結アーム34に支持しピックアップローラ35と一体回転するローラ軸35aと、を有している。
【0026】
このような構成において、支持アーム33は、伝達機構40のカム機構により、連結アーム34を上下動させ、ピックアップローラ35を付箋紙束4へ当接または離反させる。また、ローラ軸35aは、伝達機構40からギアを介して回転動力が伝達されピックアップローラ35を回転させる。ピックアップローラ35は、最少幅の付箋紙4Pの長さでローラ軸35aのメインフレーム10の側に寄せて配設されており、ローラ軸35aに装着した樹脂性のコア部およびコア部の外周面に巻装したゴムロール部とで構成されている。ゴムロール部には、シリコンゴムなどの耐熱性を有する高摩擦材料が用いられている。ピックアップユニット31による付箋紙4Pの分離についての詳細は、図5を参照して後述する。
【0027】
次に、印刷機構20について説明する。印刷機構20は、図2に示すように、メインフレーム10に固定された印刷機構フレーム21と、印刷機構フレーム21に着脱自在に取り付けられたインクリボンカートリッジ22と、を有している。また、印刷機構フレーム21には、図3に示すように、印刷機構フレーム21に片持支持され装着されたインクリボンカートリッジ22(図2)と共にリボン巻取機構25を構成するリボン巻取軸26と、ピックアップローラ35とを当接して従動回転するガイドローラ27と、印刷機構フレーム21に片持支持されガイドローラ27を軸支するガイド軸27aと、が設けられている。
【0028】
さらに、印刷機構フレーム21には、ガイドローラ27に近接して印刷部29が片持支持されて、ガイドローラ27と平行に取り付けられている。この印刷部29は、付箋紙束4に対向し付箋紙束4の幅方向と平行に発熱素子が列設されたサーマルヘッド28を有している。
【0029】
次に、付箋紙束4を収容する給紙装置30の構成についてさらに詳細に説明する。図4(a)は、給紙装置の構成を示す断面図、図4(b)は、トレイへの付箋紙のセットを示す断面図である。給紙装置30の構成説明の前に、付箋紙束4について説明しておく。図4(a)に示すように、付箋紙束4は、多数枚の同形状の付箋紙4Pを積層したものであり、それぞれの付箋紙4Pは、裏面の端部側の一部分が糊付けされている。付箋紙束4は、糊付けされていない台紙上に、付箋紙4Pの糊付け側を台紙の一端側に揃えて糊部4aとして積層しており、付箋紙4Pの自由端部の表面を捲ることにより、付箋紙4Pを糊部4aから一枚ずつ剥離するように構成されている。従って、付箋紙4Pは、付箋紙束4から剥離された後に、糊付け部分を介して、紙などの被着体に対し再度の貼着が可能である。
【0030】
給紙装置30を構成するトレイ5は、図4(a)に示すように、引手部51およびトレイ5内面の底部側に設けられた底板52と、底板52を上方へ付勢する付勢部53と、を有している。底板52への付箋紙束4の載置は、付箋紙束4の糊部4aが底板52の水平面部52aに配置され、自由端部が斜面部52bに配置されている。トレイ5は、サブフレーム11の内部へセットされると、底板52が付勢部53によって上方へ付勢され、付箋紙束4が載置されていれば、付箋紙束4を位置決め部32へ押し付ける。なお、水平面部52aには、付箋紙束4の糊部4aを水平面部52aに載置する旨の注意書き(不図示)と、付箋紙束4の幅方向をメインフレーム10の側へ寄せて載置することを示す矢印(不図示)が設けられている。
【0031】
位置決め部32は、断面が略L字状をなし、付箋紙束4の糊部4aに対応して位置する糊部側位置決め部(規制部)32aと、自由端部の長手方向の端部近傍に位置する自由端部側位置決め部32bと、を有している。付箋紙束4は、この位置決め部32の略L字状の一端部に押し付けられている。そして、ピックアップローラ35は、自由端部側位置決め部32bより付箋紙束4の糊部4aの方向に位置している。これが給紙待機の状態であり、いつでも印刷のために給紙を開始することができるように構成されている。
【0032】
付勢部53は、底板52とトレイ5内面の底部との間に設けられたばねであって、一方の端部が底板52の下面部に係止され、他方の端部がトレイ5内面の底部に係止されている。付勢部53のばねは、底板52をバランスよく上方へ付勢するように配置されており、これらばねによって、底板52へ載置された付箋紙束4は、位置決め部32へ均等な強さで押し付けられる。よって、付箋紙束4は、付箋紙4Pが一枚ずつ分離されて目減りしても、その最上位に位置する付箋紙4Pの高さレベルが、常に、定位置に維持されている。
【0033】
さらに、付勢部53は、トレイ5のサブフレーム11からの挿抜に連動して伸縮するための機構(不図示)を有している。即ち、図4(a)に示すように、トレイ5がサブフレーム11へ挿入された状態では、底板52を上方へ付勢し、図4(b)に示すように、トレイ5がサブフレーム11から引き出される時には、トレイ5の底部側へ下がって退避している。底部側が退避することにより、トレイ5へ付箋紙束4を補充したり、交換したりする場合において、底板52および付箋紙束4が位置決め部32によって規制されていない状態となるため、付箋紙束4を底板52の水平面部52aおよび斜面部52bに沿って滑らせ、容易に載置することが可能である。付箋紙束4を底板52へ載置後、トレイ5をサブフレーム11へ挿入すれば、図4(a)に示す給紙待機の状態となる。
【0034】
次に、ピックアップローラ35による給紙の一連の動作について説明する。図5および図6は、給紙装置による付箋紙供給の一連の流れを順に示す断面図である。図5(a)は、ピックアップローラが付箋紙束を押さえた状態を示す断面図であって、給紙待機の状態を示している。この給紙待機において、ピックアップローラ35は、トレイ5の底板52に載置された付箋紙束4を押圧しつつ、付箋紙束4の最上位の付箋紙4Pの表面に当接している。この場合、付箋紙束4は、山なりに緩く折れ曲がり斜面部52bに傾斜して載置されている自由端部にピックアップローラ35が当接している。
【0035】
モータ41の回転を伝達機構40により伝達されたピックアップローラ35は、付箋紙束4の最上位の付箋紙4Pを糊部4aの方向へ捲り上げ、撓ませ始める。図5(b)は、ピックアップローラが付箋紙を撓ませた状態を示す断面図である。図5(b)に示すように、ピックアップローラ35の回転に伴い、付箋紙4Pの自由端部が自由端部側位置決め部32bから引き出され、次第に上方へと湾曲するように撓んでゆく。このとき、ピックアップローラ35が、斜面部52bに傾斜して載置されている付箋紙4Pの自由端部を捲り上げるため、付箋紙4Pを容易に上方へ撓ませることができる。
【0036】
図5(c)は、付箋紙がピックアップローラに乗り上げた状態を示す断面図である。図5(c)に示すように、捲り上げられ撓んでゆく付箋紙4Pの自由端部が、ピックアップローラ35の下側を通過すると、ピックアップローラ35との摩擦によりピックアップローラ35の回転方向に沿って上方に撥ね上げられ、ピックアップローラ35に乗り上げる。つまり、付箋紙4Pは、一旦撓んでから自由端部が撥ね上げられ、その自由端部がピックアップローラ35の上側に回り込むようにして、ピックアップローラ35に載ることとなる。
【0037】
付箋紙4Pを載せたピックアップローラ35は、続いて印刷位置に移動する。図6(d)は、付箋紙に印刷を開始した状態を示す断面図である。図6(d)に示すように、ピックアップローラ35は、印刷部29のサーマルヘッド28およびガイドローラ27との間に付箋紙4Pを挟持して、これらと当接する。なお、図示していないが、サーマルヘッド28と付箋紙4Pとの間には、インクリボンが挟持されている。この時、ガイドローラ27は、ピックアップローラ35の回転に伴い回転し、ピックアップローラ35と共に付箋紙4Pを糊部4aから引き剥がしながら送る。それと共に、印刷機構20のサーマルヘッド28により、インクリボンを介して付箋紙4Pへ印刷を行う。
【0038】
付箋紙4Pは、印刷の進行と共に順次印刷部29へ送られ、糊部4aから引き剥がされてゆく。図6(e)は、付箋紙が糊部から引き剥がされる状態を示す断面図であり、この図のように、付箋紙4Pは、印刷途中で、糊部側位置決め部32aから引き出され、また、糊部4aからも引き剥がされて、完全に付箋紙束4から分離した状態となる。
【0039】
図6(f)は、付箋紙への印刷が終了した状態を示す断面図である。図6(f)に示すように、印刷された付箋紙4Pは、ピックアップローラ35およびガイドローラ27によって順次送られ、さらに、図1に示すケース2の排出口7から外部に送り出される。付箋紙4Pが排出口7から外部に送り出された後、ピックアップローラ35は、図5(a)に示す状態へ移動する。
【0040】
以上、実施形態1の給紙装置30の主な効果を記載する。
【0041】
(1)給紙装置30によれば、付箋紙束4が、トレイ5の水平面部52aと斜面部52bとに沿って、ピックアップローラ35の側に斜面をなすように折れ曲がった状態で載置されている。従って、付箋紙4Pが残り少なくなった付箋紙束4や剛性の弱い付箋紙束4であっても、底板52に支持されて均一な折れ曲がり状態を維持でき、ピックアップローラ35によって、すべての付箋紙4Pを同じ条件下でスムーズに付箋紙束4から分離させることができる。
【0042】
(2)トレイ5の底板52は付勢部53によって上方へ付勢されており、付箋紙束4の最上位の付箋紙4Pは、常に、位置決め部32で規制された既定の高さ位置にあり、ピックアップローラ35と対峙している。従って、付箋紙4Pの付箋紙束4からの分離は、付箋紙束4に残る付箋紙4Pの数などに影響されず、ピックアップローラ35によって安定して給紙される。
【0043】
(3)底板52は、付箋紙束4の挿入を阻害する突起物等がなく、底板52に沿って水平面部52aから斜面部52bの方向へ、付箋紙束4を挿入することが容易である。底板52に沿って略平行に付箋紙束4を挿入するため、トレイ5のピックアップローラ35の上方側に挿入スペースを確保する必要がなく、省スペース化が図れる。また、サブフレーム11からトレイ5を全部引き出すことなく、付箋紙束4をトレイ5に載置することができる。
【0044】
(4)そして、底板52は、付箋紙束4の挿入時にはトレイ5の底部側に下がっているため、位置決め部32やピックアップローラ35によって、付箋紙束4の挿入が阻害されることがない。
(実施形態2)
【0045】
次に、本発明の給紙装置30に係る他の具体例である実施形態2について説明する。図7は、実施形態2に係る供給装置を示す断面図である。
【0046】
図7に示すように、給紙装置30を構成するトレイ5は、実施形態1におけるトレイ5と主構成が同様であって、引手部51と、トレイ5内面の底部側に設けられた底板60と、底板60を上方へ付勢する付勢部53と、を有している。底板60は、実施形態1の水平面部52aと同様に付箋紙束4を水平に載置する水平面部60aと、実施形態1の斜面部52bに替えて設けられ水平面部60aに対し付勢部53の方向へ段をなした階段状の段差部60bと、を有している。
【0047】
この底板60への付箋紙束4の載置は、付箋紙束4の糊部4aが底板60の水平面部60aに配置され、自由端部が段差部60bに配置されている。このように底板60に載置された付箋紙束4は、山なりに緩く折れ曲がり斜面がピックアップローラ35の側を向いている状態である。従って、段差部60bに載置されている付箋紙束4の自由端部は、傾斜しており、実施形態1と同様、ピックアップローラ35が、付箋紙4Pの自由端部を捲り上げて、付箋紙4Pを上方へ撓ませることができる。
【0048】
また、底板60は、実施形態1の底板52のように上下方向へ移動することができ、付勢部53の付勢により、載置した付箋紙束4を上方へ押し上げている。上方へ押し上げられた付箋紙束4は、サブフレーム11に固定されトレイ5の上方を跨ぐように配置されている位置決め部32a,32bへ当接し、これにより、付箋紙束4の最上位の付箋紙4Pは、常に、既定された一定の高さ位置に配置されている。
【0049】
以上、説明した実施形態2の給紙装置30の効果としては、底板60が水平面部60aと段差部60bとの構成であり、水平面部52aと斜面部52bとの構成に比べて、加工が容易で精度良く仕上げられる。また、段差部60bと付箋紙束4との間に隙間を有しており、この隙間を利用して、ピックアップローラ35の押圧を調整し付箋紙束4の折れ曲がりの程度を加減することが可能である。従って、剛性の強い付箋紙束4等に対して、ピックアップローラ35の押圧を強めて、適正な折れ曲がりを確保する。
【0050】
また、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げるような形態であっても、上記の各実施形態と同様な効果が得られる。
【0051】
(変形例1)実施形態1における底板52の水平面部52aと斜面部52bとは、糊部側位置決め部32aの側に水平面部52aが位置する構成に限定されず、糊部側位置決め部32aの側に斜面部52bが位置し、ピックアップローラ35の側に水平面部52aが位置する構成であっても良い。さらに、水平面部52aおよび斜面部52bは、ピックアップローラ35の側へ凸状となった曲面であっても良い。いずれの構成であっても、実施形態1とほぼ同様に、ピックアップローラ35によって付箋紙4Pを付箋紙束4から分離させることができる。
【0052】
(変形例2)また、底板52の斜面部52bは、一つの面構成ではなく、断面視が階段状になっていても良い。この場合、階段状の凸部頂点を順に結ぶ線が、斜面部52bの傾きと一致している。この階段状の形状によれば、斜面より加工が容易であり、斜面部52bと同様に、付箋紙束4を所定の傾きに載置することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
給紙装置30は、各実施形態に示すように、付箋紙プリンタ1に備えられた場合、糊部4aを有する付箋紙束4から1枚ずつ付箋紙4Pを分離して、印刷部29へ供給する役目を果たしている。このように、底板52(60)に水平面部52a(60a)および斜面部52b(段差部60b)を有する給紙装置30は、付箋紙4Pの給紙と同様に、多数枚の用紙が重ねられた用紙束から1枚ずつ用紙を分離供給することができ、コピー機、プリンタ、ファクシミリなどに搭載されて、確実な給紙を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る給紙装置を備えた付箋紙プリンタの外観を示す斜視図。
【図2】実施形態1に係る給紙装置を搭載した付箋紙プリンタの内部を示す斜視図。
【図3】インクリボンカートリッジを外しトレイを引き出した状態の付箋紙プリンタの内部を示す斜視図。
【図4】(a)給紙装置の構成を示す断面図、(b)トレイへの付箋紙のセットを示す断面図。
【図5】給紙装置による付箋紙供給の一連の流れを順に示す断面図、(a)ピックアップローラが付箋紙束を押さえた状態を示す断面図、(b)ピックアップローラが付箋紙を撓ませた状態を示す断面図、(c)付箋紙がピックアップローラに乗り上げた状態を示す断面図。
【図6】(d)付箋紙に印刷を開始した状態を示す断面図、(e)付箋紙が糊部から引き剥がされる状態を示す断面図、(f)付箋紙への印刷が終了した状態を示す断面図。
【図7】実施形態2に係る供給装置を示す断面図。
【符号の説明】
【0055】
1…付箋紙プリンタ、2…ケース、4…用紙束としての付箋紙束、4a…糊部、4P…用紙としての付箋紙、5…トレイ、20…印刷機構、22…インクリボンカートリッジ、25…リボン巻取機構、28…サーマルヘッド、29…印刷部、30…給紙装置、31…ピックアップユニット、32a…規制部としての糊部側位置決め部、32b…自由端部側位置決め部、35…ローラとしてのピックアップローラ、40…伝達機構、52…底板、52a…第1載置部としての水平面部、52b…第2載置部としての斜面部、53…付勢部、60…底板、60b…第2載置部としての段差部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の用紙が重ねられた用紙束を載置して収容するためのトレイと、
前記用紙束の最上位の前記用紙を押さえる規制部と、
前記用紙を前記用紙束から分離させるためのローラと、を備え、
前記トレイは前記用紙を受ける第1載置面と第2載置面とを有していることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
一端に糊部を有する複数の付箋紙が重ねられた付箋紙束を載置して収容するためのトレイと、
前記付箋紙束の最上位に位置する前記付箋紙の糊部を押さえる規制部と、
前記付箋紙の自由端部側を捲り上げて前記付箋紙束から前記付箋紙を分離させるためのローラと、を備え、
前記トレイは前記付箋紙の前記糊部の側を受ける第1載置面と前記自由端部の側を受ける第2載置面とを有していることを特徴とする給紙装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給紙装置において、
前記トレイの前記第1載置面と前記第2載置面とは、前記第1載置面の側から前記第2載置面の側に傾斜していることを特徴とする給紙装置。
【請求項4】
請求項2に記載の給紙装置において、
前記トレイの前記第1載置面と前記第2載置面とは、階段状に形成されていることを特徴とする給紙装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の給紙装置において、
前記付箋紙束は、前記第2載置面側に前記付箋紙の自由端部が臨むように前記トレイに載置されることを特徴とする給紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−280162(P2008−280162A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127652(P2007−127652)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】