説明

給電装置

【課題】ケース内のワイヤハーネスの有害な屈曲や弛みを防止し、且つケースを長手方向にコンパクト化する。
【解決手段】ケース2の一側方で長手方向中間部にワイヤハーネス6の固定側の部分3,51を配置し、ケースの他側方に沿ってワイヤハーネスの可動側の部分5,52を移動自在に配置し、固定側の部分から導出された一端側のワイヤハーネス部分43をケース長手方向に向け、可動側の部分から導出された他端側のワイヤハーネス部分44をケース短手方向に向けた給電装置1,1’を採用する。ワイヤハーネス6の外周にコルゲートチューブ15を装着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内にワイヤハーネスを屈曲させて収容し、ケースに沿ってワイヤハーネスの可動側の部分を移動させつつワイヤハーネスを伸縮させる給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6(a)(b)は従来の給電装置の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この給電装置71は、合成樹脂製の横長のケース72内にフラットワイヤハーネス73を略U字ないしJ字状に屈曲させて収容し、フラットワイヤハーネス73の一端側のコネクタ74をケース72の一端側の壁部に固定し、フラットワイヤハーネス73の他端側のコネクタ75をスライダ76に上向きに固定し、スライダ76をケース72のレール部に長手方向スライド自在に係合させたものである。
【0004】
この給電装置71は例えば自動車のスライドシートに適用され、ケース72が車体のフロアに配置され、固定側のコネクタ74が電源側のワイヤハーネスに接続され、可動側のコネクタ75がシート側のワイヤハーネスに接続される。シート側のワイヤハーネスは例えば自動スライドモータやリクライニングモータや着座センサ等の補機に接続される。
【0005】
そして、シートを例えば前進させた際に、図6(a)のように可動側のコネクタ75がシートと一体に前進しつつ、フラットワイヤハーネス73が左右に大きくラップして短縮され、シートを後退させた際に、図6(b)のように可動側のコネクタ75がシートと一体に後退しつつ、フラットワイヤハーネス73が左右に小さくラップして伸長される。上記給電装置71はシートに限らず、自動車のスライドドア等にも適用可能なものである。
【特許文献1】特開平10−112922号公報(第4頁,図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の給電装置にあっては、特にフラットワイヤハーネス73に代えて通常の丸形電線でなるワイヤハーネスを用いた場合に、電線自体の弾性(復元性)が弱いために、ケース内でワイヤハーネスが不規則に屈曲したり弛んだりして、ワイヤハーネスの伸縮がスムーズに行われなくなったり、ワイヤハーネスが極めて小径に屈曲して傷みやすくなったり、ワイヤハーネスの弛み部分がケースと干渉して異音等を生じやすくなるという懸念があった。ここでワイヤハーネスとは、複数本の電線をテープ等で結束した状態のものや、複数本の電線を合成樹脂製の保護チューブ内に収容した状態のもの等を言う。
【0007】
また、図7に略図化した形態を示すように、固定側のコネクタ82を支点としてワイヤハーネス77が実線の如く最伸長した際に、ワイヤハーネス77の折り返し部78が可動側のコネクタ79よりもケース長手方向に湾曲状に突出するために、コネクタ79のスライドストローク量Lにハーネス折り返し部78のなす余剰寸法L1を加味した長さにケース80の全長を設定する必要が生じ、給電装置81が長手方向に肥大化するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記した点に鑑み、ワイヤハーネスをケース内で不規則に(有害に)屈曲させたり弛ませたりすることがなく、それによってワイヤハーネスの傷みや異音等を防止することができ、しかもケースを長手方向にコンパクト化することができる給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る給電装置は、ケースの一側方で長手方向中間部にワイヤハーネスの固定側の部分が配置され、該ケースの他側方に沿って該ワイヤハーネスの可動側の部分が移動自在に配置され、該固定側の部分から該ケース内に導入された一端側のワイヤハーネス部分がケース長手方向を向き、該可動側の部分から該ケース内に導入された他端側のワイヤハーネス部分がケース短手方向を向いて配置されたことを特徴とする。
【0010】
上記構成により、ワイヤハーネスの可動側の部分の移動に伴って、固定側の部分を支点としてケース内でワイヤハーネスが揺動しつつ、可動側の部分に続く他端側のワイヤハーネス部分がケース短手方向を向いた状態でケース長手方向にほぼ平行移動する。他端側のワイヤハーネス部分とは可動側の部分の近傍のワイヤハーネス部分である。他端側のワイヤハーネス部分がほぼ一定の方向(ケース短手方向)を向いたまま、他端側のワイヤハーネス部分に続く残りのワイヤハーネス部分はケース内で略J字状から略U字状を経て滑らかな略L字状に屈曲しつつ伸縮する。ワイヤハーネスは略U字状の形態で縮み、略J字状と略L字状の形態で伸びた状態となる。可動側の部分の移動に伴って他端側のワイヤハーネス部分の導出方向(ケース短手方向)が変わらないから、可動側の部分の近傍で他端側のワイヤハーネス部分が有害な(小径に折れ曲がるような)屈曲をすることがないと共に、他端側のワイヤハーネス部分に続く略J字状の形態部分が強い復元力を発揮して、略U字状から略L字状にワイヤハーネス形状を弾性的に復元させて、弛みの発生を防止する。この復元力は、固定側の部分から導入された一端側のワイヤハーネス部分がケース長手方向を向いていることによっても助長される。また、固定側の部分がケースの長手方向中間部に配置され、一端側のワイヤハーネス部分がケース長手方向を向いていることで、ワイヤハーネスが略J字状に屈曲した際に、一端側のワイヤハーネス部分に続く屈曲部(折り返し部)がケースの外側ではなく内側を向くから、ケース内のスペースが有効活用される。可動側の部分としては、可動側のコネクタや、ワイヤハーネス部分(電線束や保護チューブ)の外周に固定されたスライダや、ワイヤハーネス部分自体が挙げられる。固定側の部分としては、固定側のコネクタや、ワイヤハーネス部分を固定する固定部材等が挙げられる。
【0011】
請求項2に係る給電装置は、請求項1記載の給電装置において、前記可動側の部分の始端位置で、前記他端側のワイヤハーネス部分が小径な屈曲部に続き、該屈曲部が真直部と逆向きの屈曲部とを経て前記一端側のワイヤハーネス部分に続き、該可動側の部分の終端位置で、該他端側のワイヤハーネス部分が該小径な屈曲部とは逆向きな大径な屈曲部を経て該一端側のワイヤハーネス部分に続くことを特徴とする。
【0012】
上記構成により、可動側の部分の始端から終端への移動に伴って、ワイヤハーネスが小径な屈曲部と逆向きの屈曲部とで強い復元力を発揮し、略J字状から滑らかな略L字状に確実に復元する。また、可動側の部分の終端から始端への移動に伴って、ワイヤハーネスが略L字状から略J字状に屈曲した際に、ワイヤハーネスが強い弾性力(復元力)を存してピンと張った状態になるから、ワイヤハーネスの有害な弛みや有害な小径の屈曲が防止される。
【0013】
請求項3に係る給電装置は、請求項1又は2記載の給電装置において、前記ワイヤハーネスが外周にコルゲートチューブを有したことを特徴とする。
【0014】
上記構成により、合成樹脂製のコルゲートチューブがワイヤハーネスに屈曲性と共に強い弾性力(復元力)を付与し、ワイヤハーネスの略J字状の形態における弛みや折れ曲がるような小径の屈曲や、略L字状の形態における弛みを確実に阻止する。コルゲートチューブは周方向の凹溝と凸条とをチューブ長手方向に交互に配列した既存のものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、ワイヤハーネスの固定側の部分を可動側の部分の可動範囲に対して中間部に配置し、固定側の部分と可動側の部分とに続く各ワイヤハーネス部分をケース内で直交する方向に導出させたことで、ケース内でワイヤハーネスに強い復元力が付与され、それによってワイヤハーネスの弛みが防止され、弛みに起因する振動や異音や摩耗等が防止されると共に、ワイヤハーネスの折れ曲がるような有害な屈曲が防止され、折れ曲がりに起因するワイヤハーネスの傷みや屈曲耐久性の低下が防止されて、給電の信頼性が向上し、しかも、ケース内でワイヤハーネスの折り返し部が従来のように外側に向かずに内側に向くことで、ケースが長手方向にコンパクト化され、給電装置を搭載する車両等の搭載スペースが削減される。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、可動側の部分の進退移動に伴ってワイヤハーネスが強い弾性力を有した状態で屈曲するから、ワイヤハーネスの弛みや折れ曲がりが防止され、それらに起因する振動や異音や摩耗や屈曲耐久性の低下が確実に防止される。また、ワイヤハーネスの逆向きの屈曲部がケースの外側ではなく内側を向くから、ケースの長手方向のコンパクト化が確実に達成される。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、コルゲートチューブがワイヤハーネスに強い弾性力(復元力)を付与することで、ワイヤハーネスの弛みや折れ曲がるような屈曲が一層確実に防止され、ワイヤハーネスの傷み・異音等の防止や屈曲耐久性の向上等が促進され、給電の信頼性が一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜図3は、本発明に係る給電装置の一実施形態を示すものである。
【0019】
図1(概要図)の如く、この給電装置1は、合成樹脂製のケース2の一側方の長手方向中間部にワイヤハーネス6の固定側のコネクタ3(固定側の部分)、ケース2の他側方の長辺部23に沿ってワイヤハーネス6の可動側のコネクタ5(可動側の部分)をそれぞれ有し、可動側のコネクタ5がケース2の長手方向の一端と他端との間をスライド移動して、固定側のコネクタを支点としてケース内でワイヤハーネス6を屈曲させつつ揺動させるものである。
【0020】
固定側のコネクタ3は可動側のコネクタ5のスライド領域の中間部においてケース2の長手方向を向き、固定側のコネクタ5はケース2の短手方向(幅方向)を向き、ケース内で固定側のコネクタ5から導出されたワイヤハーネス部分43がケース2の長手方向を向き、可動側のコネクタ5から導出されたワイヤハーネス部分44がケース2の短手方向を向いている。
【0021】
図2において、符号12は上ケース、13は下ケース、6はワイヤハーネスをそれぞれ示している。上下のケース12,13は合成樹脂材で形成され、接合した状態で係止突起と係止枠片等の係止手段(図示せず)や接着や溶着等の手段で相互に固定されて一つのケース(プロテクタ)2(図3)を構成する。ワイヤハーネス6は、複数本の丸形被覆電線を合成樹脂製の保護チューブであるコルゲートチューブ15で覆い、電線14の両端末にそれぞれコネクタ3,5を配設して構成されている。
【0022】
各コネクタ3,5は、合成樹脂製のコネクタハウジング(符号3,5で代用)と、コネクタハウジングに収容された端子(図示せず)とで構成され、端子は電線14に圧着等の手段で接続されている。本例で各コネクタ3,5は雌端子を収容する端子収容室とそれに続く相手端子挿入口16を有している。固定側のコネクタ3と可動側のコネクタ5とはそれぞれ接続面17が直交する方向を向いている。両コネクタ3,5あるいは何れか一方のコネクタに雄端子を収容し、相手コネクタに対するコネクタ嵌合室を有するものとすることも可能である。
【0023】
コルゲートチューブ15は周方向の環状の凹溝20と凸条21とをチューブ長手方向に交互に配設して、屈曲性と弾性(復元性)とを付加した既存のものであり、本例のコルゲートチューブ15はケースの長手及び短手方向の屈曲性を高めるべく断面平型ないし長円形に形成されている。コルゲートチューブ15の一端部が可動側のコネクタ5又は可動側のコネクタ5からの導出電線部分に嵌合やテープ巻きやバンド結束等の手段で固定されていることが好ましい。これはコルゲートチューブ15の他端部と固定側のコネクタ3とについても同様である。
【0024】
なお、断面長円形のコルゲートチューブ15に代えて断面円形のコルゲートチューブ(図示せず)を用いることも可能である。また、保護チューブとして、コルゲートチューブ15に代えてウレタン等の柔軟なチューブやビニルチューブや編組チューブ等(図示せず)を用いることも可能である。
【0025】
上下のケース12,13の長辺側の垂直な壁部23に開口部24が設けられ、開口部24の全周には鍔部28が形成されており、図3の如く鍔部28に可動側のコネクタ5の外周の溝部29がスライド自在に係合する。鍔部28はレール部の作用をし、溝部29はガイド部の作用をする。
【0026】
図2の如く下ケース13は上ケース12よりも深く(上下方向の寸法が大きく)形成されており、下ケース内にワイヤハーネス6を組み付けた後、上ケース12を被せるようになっている。上下のケース12,13は長手方向の一方の幅狭部30と他方の幅広部31とで成り、幅狭部30の開口部24に対向する壁部32に直交して幅広部31の壁部33にコネクタ固定用の開口34が設けられ、開口34の周囲の鍔部35に固定側のコネクタ3の外周の溝部36が係合する。図3の組立状態で、固定側のコネクタ3の接続面17はケース2の長手方向を向き、可動側のコネクタ5の接続面17はケース2の短手方向を向き、両コネクタ3,5は直交する方向を向いている。
【0027】
なお、明細書中における「上下」等の方向性はあくまでも給電装置1を水平に横置きした場合のものであり、例えば給電装置1を垂直に縦置きした場合には、「上下」は「左右」又は「前後」となる。
【0028】
図2において、ワイヤハーネス6を下ケース内に組み付ける際に、可動側のコネクタ5は開口部24の鍔部28にスライド自在に係合してコネクタ前半部が開口部24から外部に突出し、固定側のコネクタ3は他方の開口34に固定される。この状態で上ケース12が被着されて、上下のケース内にワイヤハーネス6が屈曲した状態で収容され、且つ両コネクタ3,5の溝部29,36が上ケース12の鍔部28,35にそれぞれ係合する。
【0029】
図1の如く、ケース2内で可動側のコネクタ5から導出されたワイヤハーネス部分44は、ケース2の左端側の幅狭部30内に位置し、幅狭部30とその延長上をケース長手方向にほぼ真直な形態のままで(ケース1の短手方向にほぼ真直に導出された形態で)移動する。可動コネクタ側のワイヤハーネス部分44に続くワイヤハーネス部分39,38,(42)はケースの幅狭部30内でケース長手方向に真直に位置したり、幅広部内で円弧状や湾曲状に屈曲して位置する。
【0030】
図3の如く、給電装置1の組立状態で、可動側のコネクタ5はケース2の長形の開口部24に沿って直線的にスライド自在であり、可動側のコネクタ5のスライド動作に伴って、図1の如くケース内でワイヤハーネス6が実線のように略J字状から鎖線のように滑らかな略L字状に屈曲しつつ伸縮する。
【0031】
略J字状とは、ケース2の幅広部31内で固定側のコネクタ3から略半円状に折り返された部分38と、折り返し部(屈曲部)38に続いてケース2の幅狭部30内でケース長手方向にほぼ平行に延びた真直部39と、幅狭部30内で真直部39から可動側のコネクタ5に向けて90゜方向に円弧状に屈曲した屈曲部11とで構成され、二つの屈曲部11,38が互いに逆向きに屈曲した形態である。1/4円弧状の屈曲部11は可動側のコネクタ5の近傍のワイヤハーネス部分44を含んでいる。
【0032】
また、略L字状とは、ケース2の幅広部31内で固定側のコネクタ3からケース2の垂直な壁部40(図2)に沿って平行に延びる真直部41と、真直部41から可動側のコネクタ5に向けて90゜方向に円弧状に屈曲した大径の屈曲部42とで構成され、屈曲部42が一つのみの形態である。屈曲部42は可動側のコネクタ5の近傍のワイヤハーネス部分44を含んでいる。
【0033】
図3の如く可動側のコネクタ5はケース2の開口部24の鍔部28に沿ってスライド自在に係合し、図1の如く,可動側のコネクタ5に続くワイヤハーネス部分44が全てのスライド領域においてケース2の開口部24側の空間をケース短手方向に横断し、ワイヤハーネス部分44に続く大半のワイヤハーネス部分(符号39,38又は42,41の部分)がスライド領域に応じて略J字ないしU字状ないしL字状に折り返されて固定側のコネクタ3に続いている。ワイヤハーネス6の略J字状の屈曲は可動側のコネクタ5の左端(始端)位置におけるもので、略U字状の屈曲はコネクタ5の中間位置におけるもので、略L字状の屈曲はコネクタ5の右端(終端)位置におけるものである。「始端」等は説明の便宜上のものであり、特に可動コネクタ5の初期位置を示すものではない。
【0034】
図1の実線のように略J字状に屈曲した際に、ワイヤハーネス6の真直部39がケース2の幅狭部30の壁部32(図2)に沿ってほぼ真直に位置し、真直部39に続く屈曲部11が比較的大きな半径で屈曲し、屈曲部11におけるワイヤハーネス6の各電線の傷みが防止される。この作用効果は、ワイヤハーネス6の外周にコルゲートチューブ15(図2)を装着することで特に顕著に発揮される。すなわち、ワイヤハーネス6が高い復元性を有することで、ワイヤハーネス6の真直部39が弛みなく真直に位置し、真直部39に続く屈曲部11が比較的大きな半径で屈曲する。
【0035】
また、可動側のコネクタ5の移動に伴って可動コネクタ側のワイヤハーネス部分44の導出方向(ケース短手方向)が変わらないから、可動側のコネクタ5の近傍でワイヤハーネス部分44が有害な(小径に折れ曲がるような)屈曲をすることがないと共に、ワイヤハーネス部分44に続く略J字状の形態部分11,39,38が強い復元力を発揮して、略U字状から略L字状にワイヤハーネス形状を弾性的に復元させて、弛みの発生を防止する。
【0036】
また、可動側のコネクタ5の移動に伴ってワイヤハーネス6が略J字状から鎖線の如く略L字状に屈曲する際に、ワイヤハーネス6に矢印A方向の(ケース2の幅広部31において開口部24とは反対側の壁部40に向かう)復元力が作用し、ワイヤハーネス6が有害な弛みなく略L字状に屈曲する。この作用は、固定側のコネクタ3に続くワイヤハーネス部分43をケース長手方向に導出させたことに起因するものである。この作用効果は、ワイヤハーネス6の外周にコルゲートチューブ15(図2)を装着することで特に顕著に発揮される。
【0037】
例えば、図4(a)に示す如く、ケース45の長手方向中間部において固定側のコネクタ46をケース長手方向ではなくケース短手方向に向けて配置した場合には、可動側のコネクタ47のスライド動作に伴って固定側のコネクタ46を支点にワイヤハーネス48が揺動し、図4(b)の如く可動側のコネクタ47が固定側のコネクタ46の対向位置にきた時に、ワイヤハーネス48の長手方向中間部49がケース内で小径に折れ曲がるように屈曲し、且つ両コネクタ46,47の近傍で導出されたワイヤハーネス部分50が小径に屈曲するために、ワイヤハーネス48の屈曲耐久性が低下すると共に、ワイヤハーネス48のスムーズな伸縮動作が行われずに、可動側コネクタ47のスライド操作性が低下するという問題を生じる。
【0038】
これに対して、図1のように固定側のコネクタ3をケース長手方向に向けて配置することで、これらの問題が解消され、ワイヤハーネス6が大きな半径でスムーズに屈曲し、ワイヤハーネス6の屈曲耐久性が向上し、ワイヤハーネス6の伸縮動作や可動側のコネクタ5のスライド操作がスムーズに行われる。
【0039】
また、可動側のコネクタ5が従来例(図6)のようにケース2の長手方向を向かずに、ケース2の短手方向を向いているから、相手側ワイヤハーネス(図示せず)のコネクタを可動側コネクタ5のスライド方向とは直交する方向から、何ら相手側ワイヤハーネスを屈曲させることなく、直接的に可動側のコネクタ5にスムーズに接続することができ、スライド動作における相手側ワイヤハーネスの屈曲疲労等が防止される。
【0040】
可動側のコネクタ5をケース2の短手方向に向けた給電装置1は、例えば自動車のスライドシートやスライドドア等といったスライド構造体(図示せず)への給電に好適である。給電装置1をスライドシートに適用する場合、例えばケース2が開口部24を上向きにして車両ボディのフロアに配置され、シート側のワイヤハーネスが上方からほぼ真直に可動側のコネクタ5にコネクタ接続されるから、シート側のワイヤハーネスがコネクタ5の近傍で小径に屈曲される心配がない。固定側のコネクタ3には車両ボディ(電源)側のワイヤハーネス(図示せず)がコネクタ接続される。
【0041】
また、給電装置1をスライドドアに適用する場合、例えばケース2が開口部24を横向きにして(スライドドアに向けて)車両ボディに水平に配置され、スライドドア側のワイヤハーネスが側方からほぼ真直に可動側のコネクタ5にスムーズにコネクタ接続されるから、スライドドア側のワイヤハーネスがコネクタ5の近傍で小径に屈曲する心配がない。固定側のコネクタ3には車両ボディ(電源)側のワイヤハーネスがコネクタ接続される。
【0042】
給電装置1をスライドドアに垂直に配置する場合は、図3で可動側のコネクタ5の接続面17の位置を上ケース12の側に形成し、可動側のコネクタ内の端子(図示せず)をL字状に屈曲させ、ケース2の開口部24を下向きに配置して、車両ボディ(電源)側のワイヤハーネスを側方からほぼ真直に可動側のコネクタ5にコネクタ接続させることができる。この場合、固定側のコネクタ3にスライドドア側のワイヤハーネスがコネクタ接続される。給電装置1の適用箇所はこれらに以外にも各種のスライド機構において適用可能である。
【0043】
これら給電装置1の適用例において、コルゲートチューブ15を有する復元性の高いワイヤハーネス6を用いることで、可動側のコネクタ5に続くワイヤハーネス部分11,39,41,42が弛んだり、小径に屈曲したりすることがなく、弛みに起因するワイヤハーネス部分39,41,42の振動や異音や摩耗等の発生が防止され、且つワイヤハーネス部分11にかかる曲げ応力が小さく抑えられ、ワイヤハーネス6の経時的な傷みが防止されると共に、ケース内でワイヤハーネス6が引っ掛かり等なくスムーズに伸縮して、スライド操作性が向上する。
【0044】
また、従来例(図6)に較べて、ワイヤハーネス6の半円状の折り返し部38がケース2の外側を向かずに内側を向いているから、ケース2内の空間37が有効活用され、折り返し部38の屈曲半径に起因するケース2の長手方向の肥大化が防止され、ケース2が長手方向にコンパクト化される。
【0045】
なお、上記実施形態においては、固定側のコネクタ3の先端の接続面16をケース長手方向に向け、可動側のコネクタ5の先端の接続面17をケース短手方向に向けたが、例えば両コネクタ内に略L字状に屈曲した端子(図示せず)を設け、L字状の端子の基部側に電線を接続し、同端子の先端部側に相手コネクタの端子を接続させるようにし、各コネクタ3,5の接続面17を上記接続面17とは直交する方向に配置することも可能である。要は、コネクタ3,5から導出されたワイヤハーネス部分43,44の方向が、固定側のコネクタ3ではケース長手方向を向き、可動側のコネクタ5ではケース短手方向を向いていることが必要であり、コネクタ3,5の接続面17の方向は必ずしもワイヤハーネス部分43,44の導出方向と一致していないてもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、可動側のコネクタ5をケース2の開口部24に直接スライド自在に係合させたが、例えば図5の実施形態の給電装置1’のように、ワイヤハーネス6の可動側の部分である合成樹脂製のスライダ52をケース2の開口部24にスライド自在に係合させ、スライダ52からケース2の外側にワイヤハーネス部分54を導出させ、このワイヤハーネス部分54の先端に可動側のコネクタ5を配設したり、あるいはスライダ52に可動側のコネクタ5を一体ないし別体に設けたりすることも可能である。
【0047】
図5の実施形態において、スライダ52はワイヤハーネス6のコルゲートチューブ15(図2)の外周に固定されている。一例として、スライダ52は分割式に形成され、スライダ52の内周面には円弧状のリブが設けられ、リブがコルゲートチューブ15の凹溝に係合し、スライダ52の矩形状の外周面に溝部が設けられ、溝部がケース2の長形の開口部24(図2)の上下の鍔壁28(図2)にスライド自在に係合している。コルゲートチューブ15を用いない場合、スライダ52は例えば電線束の外周面や網状チューブ等といった等の保護チューブの外周面を挟持して固定される。スライダ52の形状は矩形筒状に限られるものではなく必要に応じて適宜設定される。これは前記実施形態の可動側のコネクタ5についても同様である。
【0048】
スライダ52を用いない場合は、例えばコルゲートチューブ15(図2)の凹溝を開口部24(図2)の鍔壁28にスライド自在に係合させたり、あるいは、ケース内のワイヤハーネス6が開口部24から外部に飛び出さないようにワイヤハーネス6の外周面に鍔状の部材(図示しないスライダ)を設け、鍔状の部材を開口部24の鍔壁28の内面に当接(摺接)させたりすることが好ましい。可動側のコネクタ5と開口部24との間の距離が短く、可動側のコネクタ5がスライドドアやスライドシート等における相手接続側のコネクタ(図示せず)と共に開口部24に沿って平行に移動する場合には、スライダ52を設けなくともワイヤハーネス6が開口部24から飛び出す心配はない。この場合は開口部内のワイヤハーネス自体が可動側の部分となる。
【0049】
図5の実施形態において、ワイヤハーネス6の固定側の部分として固定側のコネクタ3ではなく固定側のワイヤハーネス部分(固定側の部分)51がバンドやテープ巻きやクランプ等の固定手段でケース2の狭い開口部34(図2)に固定される。開口部34から固定側のコネクタ3までのワイヤハーネス部分53は車両ボディ等の相手接続側のコネクタ(図示せず)の位置に応じて適宜屈曲自在である。
【0050】
図5において固定側の部分51と可動側の部分52を除く他の部分は図1の実施形態と同様であるので、同じ構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。図5において固定側の部分として固定側のコネクタ3、可動側の部分としてスライダ52を用いたり、あるいは固定側の部分としてワイヤハーネス部分51,可動側の部分として可動側のコネクタ5を用いたりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る給電装置の一実施形態を示す概要図である。
【図2】同じく給電装置を示す分解斜視図である。
【図3】同じく給電装置の組立状態を示す斜視図である。
【図4】給電装置の固定側のコネクタの向きを変えた場合の問題点を示し、(a)はワイヤハーネスの伸び時、(b)はワイヤハーネスの縮み時の説明図である。
【図5】本発明に係る給電装置の他の実施形態を示す概要図である。
【図6】従来の給電装置の一形態を示し、(a)はワイヤハーネスの縮み時、(b)はワイヤハーネスの伸び時における平面視説明図である。
【図7】従来の給電装置の他の形態を示す概要図である。
【符号の説明】
【0052】
1,1’ 給電装置
2 ケース
3 固定側のコネクタ(固定側の部分)
5 可動側のコネクタ(可動側の部分)
6 ワイヤハーネス
11,38,42 屈曲部
15 コルゲートチューブ
39 真直部
43,44 ワイヤハーネス部分
51 固定側のワイヤハーネス部分(固定側の部分)
52 スライダ(可動側の部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの一側方で長手方向中間部にワイヤハーネスの固定側の部分が配置され、該ケースの他側方に沿って該ワイヤハーネスの可動側の部分が移動自在に配置され、該固定側の部分から該ケース内に導入された一端側のワイヤハーネス部分がケース長手方向を向き、該可動側の部分から該ケース内に導入された他端側のワイヤハーネス部分がケース短手方向を向いて配置されたことを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記可動側の部分の始端位置で、前記他端側のワイヤハーネス部分が小径な屈曲部に続き、該屈曲部が真直部と逆向きの屈曲部とを経て前記一端側のワイヤハーネス部分に続き、該可動側の部分の終端位置で、該他端側のワイヤハーネス部分が該小径な屈曲部とは逆向きな大径な屈曲部を経て該一端側のワイヤハーネス部分に続くことを特徴とする請求項1記載の給電装置。
【請求項3】
前記ワイヤハーネスが外周にコルゲートチューブを有したことを特徴とする請求項1又は2記載の給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−311767(P2006−311767A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134067(P2005−134067)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】