絶対舵角検出装置
【課題】ステアリングホイールの1回転で1周期の絶対舵角を検出して分解能及びリニアリティを保ちながら速やかに絶対舵角を検出する。
【解決手段】車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置であって、前記操舵装置の回転に連動して回転するセンサホイール18cと、GMR素子で構成されるブリッジ回路を有する磁気検出器18gと、該磁気検出器18gの回りに配設された着磁部18d,18eと、前記磁気検出器18gから出力される検出信号に基づいて絶対舵角を演算する舵角演算部26とを備え、前記センサホイール18cに前記磁気検出器18g及び着磁部18d,18eの何れか一方を装着すると共に、他方を固定部に装着し、前記磁気検出器18gは前記操舵装置の1回転を1周期とする検出信号を出力するように構成されている。
【解決手段】車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置であって、前記操舵装置の回転に連動して回転するセンサホイール18cと、GMR素子で構成されるブリッジ回路を有する磁気検出器18gと、該磁気検出器18gの回りに配設された着磁部18d,18eと、前記磁気検出器18gから出力される検出信号に基づいて絶対舵角を演算する舵角演算部26とを備え、前記センサホイール18cに前記磁気検出器18g及び着磁部18d,18eの何れか一方を装着すると共に、他方を固定部に装着し、前記磁気検出器18gは前記操舵装置の1回転を1周期とする検出信号を出力するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の絶対舵角検出装置として、例えば本出願人が先に提案した特許文献1に記載された装置が知られている。
この特許文献1に記載された従来例は、電動モータの駆動によって減速機構を介して操舵補助が行われるステアリング系の回転角を検出することによって、ステアリングホイールの舵角を演算するようにした舵角センサであって、ステアリングシャフトの回転に連動して作動するセンサホイールと、該センサホイールからの舵角信号に基づいて絶対舵角を演算する絶対角演算手段とを備えると共に、センサホイールに、GMR素子と、該GMR素子の回りに配された着磁部とを備え、着磁部の回転に伴って磁場方向を変化させることによって得られるGMR素子の抵抗値の変化に基づいて、ステアリングシャフトの2回転を1周期として回転角を検出するようにしている。
【特許文献1】特開2005−91137号公報(第1頁、第4頁、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、ステアリングホイールの2回転で1周期の舵角信号を得ることができ、ステアリングホイールの全回転角が±600°であるものとすると、720°で1周期の舵角信号を得ることができるので、1周期の中間位置を中立点舵角とすると、1周期は左右回転で±360°となり、左右残りの240°分が中立点舵角を含む1周期と値が重なることになるが、+120°〜−120°の範囲では絶対舵角を一意に決定することができる。したがって、絶対舵角の検出速さを速めることができるが、1回転当りの舵角がステアリングホイールの1回転で1周期の舵角を得るようにした1回転舵角検出装置の2倍となっているので、分解能とリニアリティが倍に悪化してしまうという未解決の課題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、ステアリングホイールの1回転で1周期の絶対舵角を検出して分解能及びリニアリティを保ちながら速やかに絶対角度を検出することができる絶対舵角検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る絶対舵角検出装置は、車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置であって、前記操舵装置の回転に連動して回転するセンサホイールと、GMR素子で構成されるブリッジ回路を有する磁気検出器と、該磁気検出器の回りに配設された着磁部と、前記磁気検出器から出力される検出信号に基づいて絶対舵角を演算する舵角演算部とを備え、前記センサホイールに前記磁気検出器及び着磁部の何れか一方を装着すると共に、他方を固定部に装着し、前記磁気検出器は前記操舵装置の1回転を1周期とする検出信号を出力するように構成されていることを特徴としている。
【0006】
また、請求項2に係る絶対舵角検出装置は、請求項1に係る発明において、前記センサホイールは前記操舵装置と該操舵装置に対して操舵補助力を発生する電動モータとの間に介挿された減速機構に設けられていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る絶対舵角検出装置は、車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置であって、前記操舵装置の1回転を1周期として舵角を検出する舵角検出部と、舵角中立点での前記舵角検出部で検出した中立点位置を記憶する中立点記憶部と、全舵角範囲を前記中立点記憶部に記憶された中立点位置を含む1周期分の中立舵角範囲と、該中立舵角範囲の両側に形成した複数の左右舵角範囲とに分割し、現在の舵角が中立舵角範囲及び左右舵角範囲の何れの舵角範囲に属するかを推定する舵角範囲推定部と、該舵角範囲推定部で推定した舵角範囲と前記舵角検出部で検出した舵角と前記中立点記憶部に記憶された中立点位置とに基づいて絶対舵角を演算する絶対舵角演算部とを備えたことを特徴としている。
【0007】
さらにまた、請求項4に係る絶対舵角検出装置は、請求項3に係る発明において、前記中立点記憶部は不揮発性メモリで構成されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項5に係る絶対舵角検出装置は、請求項3又は4に係る発明において、前記舵角範囲推定部は、前記舵角検出部で検出した舵角の変化量が所定閾値以上であるときに舵角範囲を変更する舵角範囲移行制御部を備えていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項6に係る絶対舵角検出装置は、請求項3又は4に係る発明において、前記舵角範囲推定部は、前記舵角検出部の出力変化量を算出し、その変化量が所定閾値以上であるときに舵角範囲を変更する舵角範囲移行制御部を備えていることを特徴としている。
さらに、請求項7に係る絶対舵角検出装置は、3乃至6の何れか1つに係る発明において、車両の車輪速を検出する車輪速検出部を有し、前記舵角範囲推定部は、前記車輪速検出部で検出した車輪速に基づいて精度の粗い絶対舵角を推定する舵角推定部を有し、該舵角推定部で推定した舵角に基づいて現在属する舵角範囲を推定するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
さらにまた、請求項8に係る絶対舵角検出装置は、請求項7に係る発明において、前記舵角推定部は、従動輪側の左右車輪速に基づいて第1の推定舵角を算出する第1の舵角推定部と、駆動輪側の左右車輪速に基づいて第2の推定舵角を算出する第2の舵角推定部と、前記第1の舵角推定部及び前記第2の舵角推定部で算出した推定舵角の偏差が所定値未満であるときに前記第1の舵角推定部で算出した第1の推定舵角を推定舵角として決定する推定舵角決定部とを備えていることを特徴としている。
【0010】
なおさらに、請求項9に係る絶対舵角検出装置は、請求項7に係る発明において、前記舵角推定部は、車両の車速を検出する車速検出部と、車両のセルフアライニングトルクを検出するセルフアライニングトルク推定部とを有し、前記車速検出部で検出した車速と前記セルフアライニングトルク推定部で検出したセルフアライニングトルクとに基づいて推定舵角を推定するように構成されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項10に係る絶対舵角検出装置は、請求項9に係る発明において、前記舵角推定部は、セルフアライニングトルクをもとに、車速をパラメータとしてセルフアライニングトルクから推定舵角を算出する推定舵角算出マップを参照して推定舵角を算出するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項11に係る絶対舵角検出装置は、請求項7乃至10の何れか1つに係る発明において、前記舵角範囲推定部は、前回走行時の最終絶対舵角を記憶する前回最終舵角記憶部と、該前回最終舵角記憶部に記憶された最終絶対舵角に基づいて舵角範囲を算出する舵角範囲算出部と、該舵角範囲算出部で算出した舵角範囲、前記舵角検出部で検出した舵角及び前記中立点記憶部に記憶された中立点位置に基づいて絶対舵角を推定する絶対舵角推定部とを備え、前記絶対舵角推定部で推定した絶対舵角と前記舵角推定部で推定した絶対舵角との偏差が所定値以内であるときに前記舵角範囲算出部で算出した舵角範囲を確定するように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操舵装置の例えば電動モータで発生する操舵補助力を伝達する減速機構に配設されて、操舵装置の回転に連動して回転するセンサホイールに磁気検出器及び着磁部の何れか一方を装着すると共に、他方を固定部に固定し、磁気検出器で操舵装置の1回転を1周期とする検出信号を出力し、この検出信号に基づいて舵角演算部で絶対舵角を演算するので、分解能とリニアリティを保ったまま、速やかに絶対舵角を検出することができるという効果が得られる。
【0013】
また、前記操舵装置の1回転を1周期として舵角を検出する舵角検出部と、舵角中立点での前記舵角検出部で検出した中立点位置を記憶する中立点記憶部と、全舵角範囲を前記中立点記憶部に記憶された中立点位置を含む1周期分の中立舵角範囲と、該中立舵角範囲の両側に形成した複数の左右舵角範囲とに分割し、現在の舵角が中立舵角範囲及び左右舵角範囲の何れの舵角範囲に属するかを推定する舵角範囲推定部とを備えることにより、中立点舵角範囲とその左右に隣接する左右舵角範囲との何れに属するかを容易確実に推定することができ、絶対舵角を速やかに検出することができるという効果が得られる。
【0014】
さらに、前回最終舵角記憶部に前回走行時の最終絶対舵角を記憶しておき、この記憶された最終絶対舵角に基づいて舵角範囲を算出し、算出した舵角範囲、舵角検出部で検出した舵角及び中立点記憶部に記憶されている中立点位置に基づいて算出した絶対舵角と、絶対舵角推定部で推定した精度の粗い絶対舵角との偏差が所定値以内であるときに舵角範囲算出部で算出した舵角範囲を確定することにより、舵角範囲の確定を速やかに行うことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は操舵装置であり、この操舵装置1はステアリングホイール2が装着されたステアリングシャフト3と、このステアリングシャフト3のステアリングホイール2とは反対側に連結されたラックピニオン機構4と、このラックピニオン機構4にタイロッド等の連結機構5を介して連結された左右の転舵輪6とを備えている。
【0016】
そして、ステアリングシャフト3には、例えばウォームギヤで構成される減速機構7を介して電動モータ8が連結されている。ここで、減速機構7は、図2に示すように、ギヤハウジング7a内に、例えば電動モータ8の出力軸に連結されたウォーム7bと、このウォーム7bに噛合しステアリングシャフト3に配設されたウォームホイール7cとで構成されている。
【0017】
また、電動モータ8は、電動パワーステアリング装置の操舵補助力を発生する操舵補助力発生用モータとして動作する。そして、電動モータ8は車両に搭載されたバッテリ11から出力されるバッテリ電圧Vbがイグニッションスイッチ12及びヒューズ13を介して供給される制御装置14によって駆動制御される。
この制御装置14には、ステアリングシャフト3に配設された操舵トルクセンサ16で検出されたステアリングホイール2に入力される操舵トルクTが入力されていると共に、車速検出部としての車速センサ17で検出した車速検出値Vsが入力され、さらに減速機構7に組込まれた舵角検出部としての舵角センサ18で検出された舵角センサ出力値θd(n)が入力されている。
【0018】
ここで、操舵トルクセンサ16は、ステアリングホイール2に付与されてステアリングシャフト3に伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを図示しない入力軸及び出力軸間に介挿したトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を磁気信号で検出し、それを電気信号に変換するように構成されている。
また、舵角センサ18は、図2に示すように、減速機構7を構成するステアリングシャフト3に連結されたウォームホイール7cと並列に配設された所定歯数の平歯車18aと、この平歯車18aに噛合する同一歯数の歯部18bを外周面に形成したセンサホイール18cと、このセンサホイール18cの一方の側面に形成された半円弧状に形成されたN極及びS極に着磁された一対の着磁部18d及び18eと、ギヤハウジング7aに配設された支持片18fの先端に保持されて着磁部18d及び18eの中心点位置に対向する位置に配置された磁気検出器18gと、この磁気検出器18gから出力される検出信号に基づいて舵角検出信号を演算する舵角演算部18hとで構成されている。
【0019】
ここで、磁気検出器18gは、着磁部18d及び18eからの磁界変化を検出する一対の第1及び第2のGMR素子(磁気抵抗素子)を有するGMRブリッジ回路20A,20Bを備え、これら第1及び第2のGMRブリッジ回路20A及び20Bからセンサホイール18cの角度に応じて図3に示す90°位相がずれる正弦波状の磁気検出信号S1及びS2を舵角演算部18hに出力する。
【0020】
舵角演算部18hは、磁気検出器18gの第1及び第2のGMRブリッジ回路20A及び20Bから出力される磁気検出信号S1及びS2に基づいて下記(1)式の演算を行うことにより、図4に示す舵角センサ出力値θd(n)を算出し、この舵角センサ出力値θd(n)を制御装置14に出力する。
θd(n)=arctan(S1/S2) …………(1)
制御装置14は、例えばマイクロコンピュータで構成され、その構成は機能ブロック図で表すと図5に示すようになる。すなわち、制御装置14は、操舵トルクセンサ16で検出した操舵トルクT及び車速センサ17で検出した車速Vsが入力されこれらに基づいて電動モータ8に対する電流指令値Irefを演算する電流指令値演算部21と、この電流指令値演算部21で算出された電流指令値Irefとモータ電流検出部19で検出されたモータ電流Imとに基づいて電流フィードバック処理を行って電圧指令値を算出する電流フィードバック制御部22と、この電流フィードバック制御部22で算出された電圧指令値Vrefが入力されて電動モータ8を駆動制御するモータ駆動回路23と備えている。
【0021】
また、制御装置14は、ステアリングホイール2を中立位置即ち直進走行時の舵角としたときに舵角センサ18から出力される中立点検出値θd0を記憶する中立点記憶部としての不揮発性メモリ24と、この不揮発性メモリ24に記憶された中立点検出値θd0、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)及び例えば後輪駆動車両の4輪の車輪速を検出する車輪速センサ25FL〜25RRから入力される車輪速VFL〜VRRに基づいて絶対舵角θを演算する絶対舵角演算部26と、この絶対舵角演算部26で演算した絶対舵角θを微分して絶対舵角速度ωを算出する微分回路27と、絶対舵角演算部26で演算した絶対舵角θ、微分回路27で演算した絶対舵角速度ω及び車速検出値Vsに基づいて転舵状態でステアリングホイール2への操舵力を緩めたときにステアリングホイール2を中立点位置に戻す所謂ハンドル戻し制御を行うハンドル戻し制御部28と、このハンドル戻し制御部28で算出したハンドル戻し制御信号HRと電流指令値演算部21から出力される電流指令値Irefとを加算して電流フィードバック制御部22に供給する加算器29とを備えている。
【0022】
ここで、不揮発性メモリ24には、工場出荷時における操舵装置1の最終調整時にステアリングホイール2を直進状態となる中立位置としたときに舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θdを中立点検出値θd0として記憶されている。
また、絶対舵角演算部26には、この絶対舵角演算部26で実行する初期ターン数確定処理、絶対舵角演算処理等の各種プログラムを格納するROM26aと、絶対舵角演算部26で実行する各処理の処理過程で必要とする値等を記憶するRAM26bとが接続されている。
【0023】
そして、絶対舵角演算部26は、不揮発性メモリ24から読出した中立点検出値θd0、舵角センサ18から入力される舵角センサ出力値θd(n)及び車輪速センサ25FL〜25RRから入力される車輪速VFL〜VRRに基づいて図6の初期絶対舵角演算処理及び図7の絶対舵角演算処理を行って絶対舵角θを算出する。
この図6の初期絶対舵角演算処理は、先ず、ステップS0で、車輪速センサ24FL〜24RRから車輪速VFL〜VRRを読込み、次いでステップS1に移行して、車輪速VFL〜VRRの全てが“0”近傍の所定値以上となって車両が走行状態となったか否かを判定し、車両が停止状態であるときにはステップS0に戻って走行状態となるまで待機し、走行状態となったときにはステップS2に移行する。
【0024】
このステップS2では、車輪速VFL〜VRRに基づいて下記(2)式及び(3)式の演算を行うことにより、前輪車輪速に基づく第1の推定舵角θestF及び後輪車輪速に基づく第2の推定舵角θestRを算出する。
sin(2θestF)=kF(VFL−VFR)/(VFL+VFR) ……(2)
tanθestR=kR(VRL−VRR)/(VRL+VRR) ……………(3)
ここで、VFLは前左車輪速、VFRは前右車輪速、VRLは後左車輪速、VRRは後右車輪速、kF及びkRは定数である。
【0025】
次いで、ステップS3に移行して、算出した第1の推定舵角θestFから第2の推定舵角θestRを減算して両者の舵角偏差Δθest(=|θestF−θestR|)を算出する。
次いで、ステップS4に移行して、算出した舵角偏差Δθestが予め設定した設定値ΔθS以下であるか否かを判定し、Δθest>ΔθSであるときには舵角偏差Δθestが大きく従動輪となる前輪に基づく第1の推定舵角θestFの信頼性が低いものと判断して前記ステップS0に戻り、Δθest≦ΔθSであるときには舵角偏差Δθestが小さく従動輪となる前輪に基づく第1の推定舵角θestFの信頼性が高いものと判断してステップS5に移行する。
【0026】
このステップS5では、舵角センサ18から入力される舵角センサ出力値θd(n)及び不揮発性メモリ24に記憶されている中立点検出値θd0を読出し、次いでステップS6に移行して、後述するカウント値Cntが“0”にリセットされているか否かを判定し、Cnt=0であるときにはステップS7に移行する。
このステップS7では、前輪車輪速に基づく第1の推定舵角θestFと舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)から実際の舵角が存在する舵角存在領域Anを決定するターン数nの初期値を推定してから後述するステップS13に移行する。すなわち、舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)は、図4に示した場合に、中立点検出値θd0=0°を含む−180°〜180°の範囲を中立舵角範囲A(0)として設定し、この中立舵角範囲A(0)からステアリングホイール2を右切りした舵角範囲180°〜540°の範囲を右舵角範囲A(1)とし、さらに右切りした540°を超える範囲を右舵角範囲A(2)とし、中立舵角範囲A(0)からステアリングホイール2を左切りした舵角範囲−180〜−540°の範囲を左舵角範囲A(−1)とし、さらに左切りした−540°を超える範囲を左舵角範囲A(−2)としたときに、何れかの舵角範囲Anに存在することになる。したがって、第1の推定舵角θestFと舵角センサ出力値θd(n)とにより舵角範囲A(−2)〜A(2)の何れに属するかを判定することにより、ターン数nの初期値を推定することができる。
【0027】
また、ステップS6の判定結果が、Cnt>0であるときには、ステップS8に移行して、今回の舵角センサ出力値θd(n)から前回の舵角センサ出力値θd(n-1)を減算して出力変化量Δθdを算出してからステップS9に移行する。
このステップS9では、出力変化量Δθdがターン数移行判定閾値−aより小さいか否かを判定し、Δθd<−aであるときにはターン数nが増加したものと判断してステップS10に移行し、現在のターン数nに“1”を加算した値を新たなターン数nとして設定してからステップS13に移行する。
【0028】
また、ステップS9の判定結果が、Δθd≧−aであるときにはステップS11に移行して、前記出力変化量Δθdがターン数移行判定閾値+aより大きいか否かを判定し、Δθd>+aであるときにはターン数nが減少したものと判断してステップS12に移行し、現在のターン数nに“1”を減算した値を新たなターン数nとして設定してからステップS13に移行し、ステップS12の判定結果がΔθd≦+aであるときにはターン数nに変化がないものと判断して直接ステップS13に移行する。
【0029】
ステップS13では、舵角センサ出力値θd(n)、中立点検出値θd0及びターン数nに基づいて下記(4)式の演算を行って絶対舵角θを算出する。
θ=θd(n)−θd0+n×360 …………(4)
次いで、ステップS14に移行して、上記ステップS13で算出した絶対舵角θから第1の推定舵角θestFを減算した値の絶対値で表される第1の舵角偏差ΔθF(=|θ−θestF|)及び絶対舵角θから第2の推定舵角θestRを減算した値の絶対値で表される第2の舵角偏差ΔθR(=|θ−θesrR|)を算出してからステップS15に移行する。
【0030】
このステップS15では、第1の舵角偏差ΔθFが許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満であり、且つ第2の舵角偏差ΔθRが同様に許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満であるか否かを判定し、ΔθF≧ΔθerrorであるかΔθR≧ΔθerrorであるかΔθF≧Δθerror及びΔθR≧Δθerrorであるときには、誤差が大きく絶対舵角θの信頼性が低いものと判断してステップS16に移行し、後述するカウント値Cntを“0”にリセットしてから前記ステップS0に戻る。
【0031】
一方、ステップS15の判定結果が、第1の舵角偏差ΔθF及び第2の舵角偏差ΔθRの何れもが設定値Δθerror未満であるときには、絶対舵角θの信頼性が高いものと判断してステップS17に移行し、現在のカウント値Cntに“1”を加算した新たなカウント値Cntを算出してからステップS18に移行する。
このステップS18では、カウント値Cntが予め設定した設定値Kを超えたか否かを判定し、Cnt≦Kであるときにはターン数nが不安定である可能性があると判断して前記ステップS5に戻り、Cnt>Kであるときにはターン数nが安定しているものと判断してステップS19に移行して、ターン数nを初期ターン数nintとして確定してから初期絶対舵角演算処理を終了する。
【0032】
この図6の処理で、ステップS0〜S2の処理が舵角推定部に対応し、ステップS7の処理が舵角範囲推定部に対応し、ステップS8〜S12の処理が舵角範囲移行制御部に対応している。
また、図7の絶対舵角演算処理は、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS21で、イグニッションスイッチ12がオン状態となって第一回目の絶対舵角演算処理であるか否かを判定し、第一回目の舵角演算処理ではないときには後述するステップS24にジャンプし、第一回目の舵角演算処理であるときにはステップS22に移行して、前述した初期絶対舵角演算処理で初期ターン数nintが確定したか否かを判定し、初期ターン数nintが確定していないときにはこれが確定するまで待機し、初期ターン数nintが確定したときにはステップS23に移行して、初期ターン数nintを読込んでからステップS24に移行する。
【0033】
このステップS24では、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ24に記憶された中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS25〜S30に移行して、前述した図6の初期ターン数確定処理におけるステップS8〜ステップS14と同様の処理を行って絶対舵角θを算出してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。ここで、ステップS30では、絶対舵角θを算出したときに、算出した絶対舵角θをRAM26bに形成した絶対舵角記憶領域に更新記憶する。
【0034】
さらに、ハンドル戻し制御部28では、図9に示すように、絶対舵角θに基づいて所定関数でハンドル戻し基本電流値Irを出力するハンドル戻し基本電流回路30と、車速Vsを入力して所定関数により車速Vsに応じたゲインGvを出力するゲイン回路31と、ハンドル戻し基本電流回路30からのハンドル戻し基本電流値Irとゲイン回路31からのゲインGvとを乗算する乗算器32と、乗算器32からの出力Ir・Gvを接点a又はbに切換えて出力するスイッチ33と、スイッチ33が接点b側に切換えられたときの出力を0とする零出力回路34と、絶対舵角θ及び絶対舵角速度ωを入力し、両者の符号の一致又は不一致を判定する符号判定回路35とで構成されている。
【0035】
符号判定回路35は、判定信号としてスイッチ信号SWを出力してスイッチ33の接点を切換えるが、絶対舵角θ及び舵角速度ωの符号が一致のときにスイッチ信号SWで接点bに切換える。また、スイッチ33の接点a,bは、舵角速度ωが零となったことを検出する回路(図示せず)からも切換えられるように構成されている。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
【0036】
今、車両が停止していて、イグニッションスイッチ12がオフ状態であるものとすると、この状態では、制御装置14にバッテリ11からのバッテリ電圧Vbが供給されないので、制御装置14は停止状態にあり、図3に示す操舵トルクT及び車速Vsに基づいて実行する操舵補助制御処理は実行停止状態にあり、電動モータ8が停止してステアリングシャフト3への操舵補助力の伝達は行われない。
【0037】
この車両停止状態から、イグニッションスイッチ12をオン状態とすると、制御装置14にバッテリ電圧Vbが供給されることにより、制御装置14が作動状態となって、図5のモータ電流検出部19、電流指令値演算部21、電流フィードバック制御部22、モータ駆動回路23、ハンドル戻し制御部28及び加算器29による操舵補助制御処理、図6に示す初期絶対舵角演算処理及び図7に示す絶対舵角演算処理が実行開始される。
【0038】
この状態では、車両が停止しているので、各車輪速センサ25FL〜25RRで検出される車輪速VFL〜VRRは“0”であり、図6の初期絶対舵角演算処理におけるステップS1で車両停止状態であると判断されるので、待機状態を継続し、初期ターン数nintは確定されない状態を継続する。
このため、図7の絶対舵角演算処理で、初期ターン数nintが確定されないので、絶対舵角θを算出することなくタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0039】
このため、ハンドル戻し制御部28では、絶対舵角演算部26から絶対舵角θが入力されないことにより、ハンドル戻し制御信号HRは“0”に設定され、これが加算器29に供給されるので、この加算器29では電流指令値演算部21で算出された操舵トルクT及び車速検出値Vsに基づく電流指令値Irefがそのまま電流フィードバック制御部22に出力される。
【0040】
このとき、運転者がステアリングホイール2を操舵していない状態では、操舵トルクセンサ16で検出される操舵トルクTが“0”であることから電流指令値演算部21で算出される電流指令値Irefが“0”となり、モータ電流検出部19で検出されるモータ電流Imも“0”であるので、電流フィードバック制御部22から出力される電圧指令値Vrefも“0”となるので、モータ駆動回路23から出力されるモータ電流Imも“0”となって電動モータ8は停止状態を継続する。
【0041】
この状態から、運転者がステアリングホイール2を操舵して所謂据え切り状態とすると、これに応じて操舵トルクセンサ16から比較的大きな操舵トルクTが出力されることにより、電流指令値演算部21から操舵トルクT及び車速Vsに応じた比較的大きな電流指令値Irefが出力される。
このとき、電動モータ8は停止状態であるので、モータ電流検出部19で検出されるモータ電流Imは“0”を維持しているので、電流フィードバック制御部22から比較的大きな値の電圧指令値Vrefがモータ駆動回路23に出力され、このモータ駆動回路23から比較的大きな値のモータ駆動電流Imが電動モータ8に出力される。
【0042】
このため、電動モータ8が回転駆動されて、比較的大きな操舵補助力を発生し、この操舵補助力が減速機構7を介してステアリングシャフト3に伝達されるので、ステアリングホイール2を軽く操舵することができる。
この状態では、車両が停止状態を維持しているので、舵角センサ18からステアリングホイール2の操舵角に応じた舵角センサ出力値θd(n)が出力されるが、車輪速センサ25FL〜25RRから出力される車輪速VFL〜VRRが“0”を維持するので、ステップS0で待機状態を継続する。
【0043】
この状態で、車両を発進させると、車輪速センサ25FL〜25RRから車輪速VFL〜VRRが出力される。このため、図6の処理におけるステップS0で車輪速VFL〜VRRを読込み、車輪速VFL〜VRRの全てが“0”を超えるので、車両走行中と判断されてステップS1からステップS2に移行し、車輪速VFL〜VRRに基づいて第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRを算出する。
【0044】
このとき、車両が例えば直進走行を開始した場合には、前輪側の左右の車輪速VFL及びVFRと後輪側の左右の車輪速VRL及びVRRとが等しい車輪速となるので、前述した(2)式及び(3)式における右辺は略“0”となり、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRが共に略“0”となる。
このため、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRが略等しい値となるので、両者の推定舵角偏差Δθestも略“0”となり、設定値ΔθS未満となるので、ステップS4からステップS5に移行し、舵角センサ18から舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ24から中立点検出値θd0を読込む。
【0045】
次いで、ステップS6に移行して、カウント値Cntが“0”であるか否かを判定し、初期状態であり、カウント値Cntが“0”に初期化されているので、ステップS7に移行し、第1の推定舵角θestFと舵角センサ出力値θd(n)とに基づいて初期ターン数nを推定する。このとき、車両が直進走行状態であり、第1の推定舵角θestFも略“0”となるので、初期ターン数nは“0”に設定される。
【0046】
そして、ステップS13に移行し、前述した(4)式に従って絶対舵角θを算出する。このとき、ターン数nが“0”であり、舵角センサ出力値θdが中立点検出値θd0と略等しい値となっているので、算出される絶対舵角θも略“0”となる。
このため、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRと絶対舵角θとの偏差ΔθF及びΔθRも略“0”となり、共に許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満となるので、ステップS15からステップS17に移行して、カウント値Cntに“1”を加算してCnt=1とする。
【0047】
この状態では、カウント値Cntが所定値Kに達していないので、前記ステップS5に戻って、再度舵角センサ出力値θd(n)及び中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS6に移行するが、カウント値Cntが“1”であるので、ステップS7に移行することなくステップS8にジャンプする。
このため、新たなターン数nの推定は行われず、車両が直進走行状態を継続している場合には、舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)が前回の舵角センサ出力値θd(n-1)と略等しく両者の出力変化量Δθdが略“0”となるため、Δθd≧−Aとなり、且つΔθd≦+Aとなるので、ステップS9からステップS11を経てステップS13に移行し、絶対舵角θを算出する。この場合に推定舵角偏差ΔθF及びΔθRも略“0”を継続するので、ステップS15からステップS17に移行してカウント値Cntが“1”だけインクリメントされる。
【0048】
この状態を繰り返して、カウント値Cntが所定値Kに達すると、ステップS18からステップS19に移行して、そのときのターン数n即ちn=0が初期ターン数nintとして確定される。
このように、初期ターン数nintが確定されると、図7の絶対舵角演算処理で、ステップS22からステップS23に移行して、初期ターン数nintを読込み、次いでステップS24に移行して、舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ24から中立点検出値θd0を読込んでから前述した初期ターン数推定処理におけるステップS8〜S13と同様の処理を行って絶対舵角θを算出する。この場合には、車両が直進走行状態を継続しているので、絶対舵角θも略“0”となる。
【0049】
その後は、図7の絶対舵角演算処理で、ステップS21から直接ステップS24に移行し、舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ24に記憶されている中立点検出値θd0を読込んで、今回の舵角センサ出力値θd(n)と前回の舵角センサ出力値θd(n-1)とに基づいてターン数nの増減を判定する。
すなわち、例えばステアリングホイール2を右切り(又は左切り)して右操舵状態(又は左操舵状態)とし、これによって舵角センサ18で検出される舵角センサ出力値θd(n)が中立点検出値θd0と略等しい状態から増加(又は減少)して舵角センサ出力値θd(n)が180°(又は−180°)を超える状態となると、図8(a)に示すように舵角センサ出力値θd(n)が最大値θdMAXから最小値θdMINに(又は図8(b)に示すように最小値θdMINから最大値θMAXに)変化する。
【0050】
このため、前述したステップS26からステップS27に移行してターン数nが“1”だけインクリメントされ(又はステップS26からステップS28を経てステップS29に移行してターン数nが“1”だけデクリメントされ)新たなターン数nが設定される。
このため、ステップS30で絶対舵角θを演算することにより、絶対舵角θが180°から例えば181°に(又は−180°から例えば−181°に)連続して増加(又は減少)され、正確な絶対舵角θを高分解能でリニアリティ良く算出することができる。
【0051】
このように絶対舵角θを算出可能な状態となると、ハンドル戻し制御部28が作動状態となるが、直進走行状態では、絶対舵角θが0°で保舵されており、その微分値である絶対角速度ωが “0”となるので、非操舵状態と判断してスイッチ33をb接点側に切換え、ハンドル戻し制御信号HRを零とする。この結果、電流指令値演算部21で演算された電流指令値Irefがそのまま電流フィードバック制御部22に供給される。
【0052】
この直進走行状態から、ステアリングホイール2を例えば左切り(又は右切り)すると、絶対舵角θが負(又は正)方向に増加し、絶対舵角速度ωも負(又は正)方向となるので、切り増し方向と判断されて符号判定回路35からスイッチ信号SWが出力されることにより、スイッチ33がb接点側に切換えられた状態を維持する。
その後、ステアリングホイール2を右切り(又は左切り)して中立位置に戻すと、絶対舵角θは負(又は正)であり、絶対舵角速度ωが正(又は負)となるので、両者の符号が異なることにより、ハンドル戻し状態であると判断されて、ハンドル戻し制御部28のスイッチ33がa接点側に切換えられ、これにより、絶対舵角θに基づいてハンドル戻し基本電流回路30で算出されるハンドル戻し基本電流値Irにゲイン回路31から出力される車速感応ゲインGvとを乗算器32で乗算した値Ir・Gvがハンドル戻し制御信号HRとして加算器29に出力される。このため、ハンドル戻し時にのみ良好なハンドル戻し制御を行うことができる。
【0053】
以上が直進発進状態の動作であるが、車両を道路と交差する車庫から道路に出る場合のように、ステアリングホイール2を左切り(又は右切り)状態で発進する場合には、車両が発進したときの旋回内輪側の車輪速VFL及びVRL(又はVFR及びVRR)に対して旋回外輪側の車輪速VFR及びVRR(又はVFL及びVRL)が速くなるので、前述した(2)式及び(3)式で演算される第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRが共に負値(又は正値)となり、ステアリングホイール2の舵角に応じた値となる。
【0054】
このため、図6の初期ターン数確定処理で、車両が発進して走行状態となったときにステップS1からステップS2移行に移行し、さらにステップS3〜S5を経てステップS6に移行すると、カウント値Cntが“0”にリセットされていることにより、第1の推定舵角θestFに基づいて初期ターン数nが推定され、このターン数n、舵角センサ出力値θd(n)及び中立点検出値θd0に基づいて前述した(4)式の演算を行って絶対舵角θが算出される。
【0055】
このとき、第1の推定舵角θestFは精度の粗い舵角で正確な値ではないので、例えば、右切り状態で例えば保舵しながら発進して、第1の推定舵角θestFが例えば160°であって、初期ターン数n=0であるが、実際の舵角(例えばターン数n=1の右舵角範囲A(1)の181°付近)により舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)が最小値θdMINに近い値である場合には、図6のステップS13で算出される絶対舵角θは左切り状態を表す−180°に近い値となる。
【0056】
このため、ステップS14で算出される絶対舵角θから第1の推定舵角θestFを減算した値の絶対値でなる偏差ΔθF及び絶対舵角θから第2の推定舵角θestRを減算した値の絶対値でなる偏差ΔθRが共に大きな値となるので、ステップS15で信頼性がないものと判断されてからステップS16に移行して、カウント値Cntを“0”にリセットしてからステップS0に戻ることになり、初期ターン数確定処理をやり直す。
【0057】
その後、第1の推定舵角θestFに基づいて推定される初期ターン数nが実際のターン数と一致する状態となって信頼性が高い状態となったとき即ち算出される絶対舵角θと第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRとの偏差ΔθF及びΔθRが共に許容誤差範囲を表す設定値Δθerrorより小さくなった状態をカウント値Cntが設定値Kに達するまで継続したときに初期ターン数nintが確定される。
【0058】
さらに、雪路、凍結路、降雨路等の路面摩擦係数が小さい路面で車両を発進させる場合や車両を急発進させる場合には、駆動輪となる後輪側の左右輪で車輪スリップが発生することになり、従動輪となる前輪の車輪速VFL及びVFRに基づいて算出する第1の推定舵角θestFはステアリングホイール2に追従した舵角となるが、後輪の車輪速VRL及びVRRに基づいて算出する第2の推定舵角θestRは実際の舵角とは異なる値になる。このため、図6の処理におけるステップS3で第1の推定舵角θestFから第2の推定舵角θestRを減算した値の絶対値でなる推定舵角偏差Δθestが大きな値となり、ステップS4でΔθest>ΔθSとなるので、そのままステップS0に戻り、ターン数nの確定は行われない。
【0059】
さらにまた、車両が発進時に左右で摩擦係数が異なる所謂スプリットμ路を直進走行する場合にも、ステアリングホイール2は中立位置に維持されて舵角センサ18では中立点検出値θd0に近い値となるが、摩擦係数の低い側の車輪がスリップすることにより、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRは旋回状態を表す舵角となり、これに基づいて推定されるターン数nが実際のターン数nとは異なる値になるが、この場合も前述した旋回発進状態での第1の推定舵角θestFに基づいて推定したターン数nと実際のターン数nとが異なる場合と同様にステップS15からステップS16に移行してカウント値Cntを“0”にリセットしてからステップS0に戻ることにより、初期ターン数nintの確定は行われない。
【0060】
このように、上記実施形態によれば、絶対舵角θを検出できない初期操舵状態で、車両の車輪速に基づいて少なくとも推定舵角θestFを算出し、算出した推定舵角θestFに基づいてターン数nを推定し、推定したターン数n、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)及び中立点検出値θd0に基づいて前記(4)式に従って絶対舵角θを算出し、算出した絶対舵角θと推定舵角θestFとを比較することにより、推定舵角θestFの信頼性を判断するので、初期ターン数nintを正確に確定することができ、確定された初期ターン数nintに基づいて絶対舵角θを演算することにより、高分解能でリニアリティの良い正確な絶対舵角θを求めることができる。
【0061】
しかも、初期ターン数nintを確定する際に、前後輪即ち従動輪と駆動輪とに基づいて推定する第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRを算出してから両者の偏差Δθestを算出し、この偏差Δθestが設定値ΔθSより大きいときには信頼性が低いと判断するようにしているので、不確かな推定角度に基づくターン数nの推定を確実に防止して、正確な初期ターン数nintを確定することができる。
【0062】
また、ターン数確定処理で、算出した絶対舵角θと第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRとの偏差ΔθF及びΔθRを算出し、これら偏差ΔθF及びΔθRが共に許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満であるときに信頼性が高いものと判断するので、より正確な初期ターン数nintを確定することができる。
なお、上記第1の実施形態においては、本発明を後輪駆動車に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前輪駆動車に適用して、従動輪となる後輪の車輪速に基づいて第1の推定舵角を算出し、駆動輪となる前輪の車輪速に基づいて第2の推定舵角を算出するようにすればよい。
【0063】
次に、本発明の第2の実施形態を図10〜図14について説明する。
この第2の実施形態では、前述した第1の実施形態のように車輪速に基づいて初期絶対舵角を推定する場合に代えて、セルフアライニングトルクSAT及び車速Vsに基づいて初期舵角を推定するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、制御装置14に車両に作用するセルフアライニングトルクSATを検出するセルフアライニングトルク推定部40が設けられ、このセルフアライニングトルク推定部40で検出したセルフアライニングトルクSAT及び車速センサ17で検出した車速Vsを絶対舵角演算部26に供給するように構成されていることを除いては図5と同様の構成を有し、図5との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0064】
ここで、セルフアライニングトルク推定部40は、操舵トルクセンサ16から出力される操舵トルクT、電動モータ8の出力軸に連結されたエンコーダ41から出力される回転角信号に基づいてモータ角速度ωmを検出するモータ角速度検出部42から出力されるモータ角速度ωm、このモータ角速度ωmを微分回路43で微分したモータ角加速度α及び電流指令値演算部21で算出した電流指令値Irefが入力され、これらに基づいてセルフアライニングトルクSATを推定演算する。
【0065】
このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図11に示して説明する。すなわち、運転者がステアリングホイール2を操舵することによって操舵トルクTが発生し、その操舵トルクTに従って電動モータ8がアシストトルクTmを発生する。その結果、車輪Wが転舵され、反力としてセルフアライニングトルクSATが発生する。また、その際、電動モータ8の慣性J及び摩擦(静摩擦)Frによってステアリングホイール2の操舵の抵抗となるトルクが生じる。これらの力の釣り合いを考えると、下記(5)式のような運動方程式が得られる。
【0066】
J・α+ Fr・sign(ωm) + SAT = Tm + T …(5)
ここで、上記(5)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(6)式が得られる。
SAT(s) = Tm(s) ++ T(s) − J・α(s) − Fr・sign(ωm(s)) …(6)
上記(6)式から分かるように、電動モータ8の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ωm、モータ角加速度α、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを推定することができる。
【0067】
ここで、アシストトルクTmは電流指令値Irefに比例するので、アシストトルクTmに代えて電流指令値Irefを適用する。
また、絶対舵角演算部26は、図12に示すように、セルフアライニングトルクSAT、車速Vs、舵角センサ出力値θd(n)及び中立点検出値θd0が入力されたターン数推定部45と、舵角センサ出力値θd(n)に基づいてターン数移行を判定するターン数移行判定部46と、ターン数推定部45で推定された初期ターン数nintと、ターン数移行判定部46で判定されたターン数nと、舵角センサ出力値θd(n)と、中立点検出値θd0とに基づいて絶対舵角θを演算する舵角演算部47とを備えており、舵角演算部47から絶対舵角θが出力される。
【0068】
ここで、ターン数推定部45では、図13に示す初期ターン数確定処理を実行する。この初期ターン数確定処理では、先ず、ステップS31で、車速Vs及びセルフアライニングトルクSATを読込み、次いでステップS33に移行して、車速Vs及びセルフアライニングトルクSATをもとに図14に示す舵角算出マップを参照して推定舵角θestを算出する。
【0069】
ここで、図14の舵角算出マップは、横軸にセルフアライニングトルクSATをとり、縦軸に推定舵角θestをとり、さらに車速Vsをパラメータとした特性線図で構成され、車速Vsが増加するに応じて順次傾きが小さくなる所要数の特性線が設定されている。
次いで、ステップS34に移行して、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ24に記憶されている中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS35に移行して、カウント値Cntが“0”にリセットされているか否かを判定し、Cnt>0であるときにはそのままステップS37にジャンプし、Cnt=“0”であるときにはステップS36に移行する。Cnt>0である時に、前述した図6のステップS8〜S12と同様の処理をするステップS37〜S41を経て、ターン数を設定し、ステップS42に移行する。また、Cnt=0である時に、前述した図6のステップS7と同様の処理を行って推定舵角θestに基づいて初期ターン数nを推定してから、ステップS42に移行する。このステップS42では、前述した第1の実施形態における図6の初期ターン数確定処理におけるステップS13と同様の処理を実行して絶対舵角θを算出し、次いで、ステップS43に移行して、算出した絶対舵角θから推定舵角θestを減算した値の絶対値でなる舵角偏差Δθを算出してからステップS44に移行する。
【0070】
このステップS44では、舵角偏差Δθが予め設定した許容誤差範囲となる設定値Δθerror未満であるか否かを判定し、Δθ≧ΔθerrorであるときにはステップS45に移行して、カウント値Cntを“0”にリセットしてから前記ステップS31に戻り、Δθ<ΔθerrorであるときにはステップS46に移行して、前述した図6の処理におけるステップS16と同様にカウント値Cntのインクリメントを行ってからステップS47に移行して、カウント値Cntが設定値Kに達したか否かを判定し、Cnt≦Kであるときに前記ステップS34に戻り、Cnt>KであるときにはステップS48に移行して、ターン数nを初期ターン数nintとして確定してから初期ターン数確定処理を終了する。
【0071】
この図13の初期ターン数確定処理において、ステップS37〜S41の処理がターン数移行判定部46に対応し、ステップS31〜ステップS36の処理及びステップS42〜S48の処理がターン数推定部45に対応している。
次に、上記第2の実施形態の動作を説明する。
今、車両が停止状態から発進状態となると、直進走行状態であるときにはセルフアライニングトルク推定部40で検出されるセルフアライニングトルクSATが略“0”となり、これに応じてターン数推定部45で実行される初期ターン数確定処理におけるステップS33で算出される推定舵角θestも略“0”となり、ステップS36で算出されるターン数nも“0”となる。
【0072】
次いで、ステップS42に移行し、舵角センサ18で検出される舵角センサ出力値θd(n)が中立点検出値θd0と略等しくなるので、前述した(4)式で算出される絶対舵角θも略“0”となる。
そして、絶対舵角θと推定舵角θestとが略一致するので、舵角偏差Δθが略“0”となり、ステップS44からステップS46に移行して、カウント値Cntがインクリメントされる。
【0073】
その後、直進走行状態を継続して舵角センサ出力値θd(n)が前回の舵角センサ出力値θd(n-1)に対して変化しないので、ステップS37からステップS38〜S42を経て絶対舵角θを算出する。この処理を繰り返して、カウント値Cntが設定値Kに達すると、ステップS47からステップS48に移行して、初期ターン数nintが確定されて、舵角演算部47で実行される図7の絶対舵角演算処理で、前述した第1の実施形態と同様に絶対舵角θが算出され、この絶対舵角θに基づいてハンドル戻し制御部28でハンドル戻し制御が行われる。
【0074】
一方、旋回走行状態で、発進する場合には、そのときのステアリングホイール2の舵角が大きくなるにつれてセルフアライニングトルク推定部40で検出されるセルフアライニングトルクSATも大きくなると共に、車速Vsが増加するに応じてセルフアライニングトルクSATが大きくなるので、その旋回走行時のステアリングホイール2の舵角及び車速Vsに応じたセルフアライニングトルクSATがセルフアライニングトルク推定部40で検出される。
【0075】
このため、図13の初期ターン数確定処理で、ステップS33でセルフアライニングトルクSAT及び車速Vsに応じた推定舵角θestが算出されることにより、この推定舵角θestに基づいてターン数nが推定され、前述した第1の実施形態と同様に絶対舵角θから推定舵角θestを減算した値の絶対値でなる舵角偏差Δθが許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満である状態を継続したときに初期ターン数nintが確定される。これに応じて絶対舵角演算処理で絶対舵角θの算出が行われ、ハンドル戻し制御部28でのハンドル戻し制御が開始される。
【0076】
なお、上記第2の実施形態においては、セルフアライメントトルクSATを推定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、セルフアライニングトルクSATを実測したり、インタミディエイトシャフトのトルクを検出するようにしたりしてもよい。
次に、本発明の第3の実施形態を図15〜図17について説明する。
【0077】
この第3の実施形態は、前述した第1の実施形態において、初期ターン数確定処理で、前回走行終了時の最終絶対舵角を使用することにより、初期ターン数の確定をより早く行うようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、図15に示すように、前述した第1の実施形態において、不揮発性メモリ24に前回走行終了時の最終絶対舵角θeを記憶するように構成され、絶対舵角演算部26でイグニッションスイッチをオン状態としたときに、最終絶対舵角θeを読込んで、初期ターン数確定処理を行うことを除いては前述した図5と同様の構成を有する。
【0078】
そして、絶対舵角演算部26で図16に示す絶対舵角記憶処理が実行される。
この絶対舵角記憶処理は、所定時間(例えば20msec)毎のタイマ割込処理として実行され、図16に示すように、先ず、ステップS51で、イグニッションスイッチ12のスイッチ信号を読込み、次いでステップS52に移行して、イグニッションスイッチ12がオン状態からオフ状態に状態変化したか否かを判定し、イグニッションスイッチ12がオン状態を継続している場合には、そのままタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰し、イグニッションスイッチ12がオン状態からオフ状態に状態変化したときには、ステップS53に移行して、前述したRAM26bに記憶されている絶対舵角θを読込み、この絶対角度θを最終絶対舵角θeとして不揮発性メモリ24に形成された最終絶対舵角記憶領域に更新記憶してからタイマ割込処理を終了する。
【0079】
また、絶対舵角演算部26で実行する初期ターン数確定処理が図17に示すように変更されている。
この初期ターン数確定処理では、図17に示すように、先ず、ステップS61で、不揮発性メモリ24に記憶されている前回走行時の最終絶対舵角θe及び中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS62に移行して、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θdを読込み、次いでステップS63に移行して、下記(7)式の条件を満たすターン数nを算出し、次いでステップS64に移行して、カウント数Cntを“1”に設定してから前記ステップS0に移行すると共に、ステップS5の処理が舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θdのみを読込むように変更され、さらにステップS15の処理における設定値Δθerrorの値が前述した第1及び第2の実施形態に比較して大きな値に設定されていることを除いては前述した第1の実施形態における図6と同様の処理を行ない、図6との対応処理には同一ステップ番号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0080】
θe−(θd−θd0)+n×360<180 …………(7)
この第3の実施形態によると、車両のイグニッションスイッチ12をオン状態としている状態では、図16の絶対舵角記憶処理で、イグニッションスイッチ12のスイッチ信号を読取るだけで、タイマ割込処理を終了するが、車両を停止させてイグニッションスイッチ12をオン状態からオフ状態とすると、図16の絶対舵角記憶処理で、ステップS52からステップS53に移行して、絶対舵角演算部26に設けられたRAM26bに形成された絶対舵角記憶領域に記憶されている絶対舵角θを読込み、読込んだ絶対角度θを最終絶対舵角θeとして不揮発性メモリ24に形成された最終絶対舵角記憶領域に更新記憶する。
【0081】
このため、その後に車両を使用するために、イグニッションスイッチ12をオン状態とすると、図17に示す初期ターン数確定処理が実行開始される。
この初期ターン数確定処理では、先ず、不揮発性メモリ24の最終絶対舵角記憶領域に記憶されている前回走行終了時の最終絶対舵角θeと中立点検出値θd0を読込み(ステップS61)、次いで、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)を読込み(ステップS62)、読込んだ最終絶対舵角θe、中立点検出値θd0及び舵角センサ出力値θd(n)とに基づいて前述した(7)式の条件を満たすターン数nを算出し、次いでカウント値Cntを“1”に設定する。
【0082】
このため、例えば車両を路肩に駐車してから再度走行を開始する場合のように、前回の車両の停止時における最終絶対舵角θeが例えば中立位置となるθ=θd0で、今回イグニッションスイッチ12をオン状態としたときの舵角センサ18で検出される舵角センサ出力値θd(n)もθd0であって、この間にステアリングホイールが操舵されていないときには、θe=θd(n)=θd0であることから、これらを前記(7)に代入することにより、360×n<180となり、ターン数nとして“0”が算出される。
【0083】
この状態で、ステアリングホイール2を中立位置に保持したまま、車両を発進させると、車両の前後における左右輪の車輪速VFL,VRL及びVFR,VRRが略同じ値となることから、前輪車輪速に基づく第1の推定舵角θestF及び後輪車輪速に基づく第2の推定舵角θestRとが共に略0°となる。
このため、ステップS0〜S4を経てステップS5に移行して、舵角センサ出力値θd(n)を読込み、前述したステップS54でカウント値Cntが“1”に設定されているので、ステップS6からステップS8に移行し出力変化量Δθdが略“0”であり、ステップS9及びステップS11を経てステップS13に移行して、前記(4)式に従って絶対舵角θが算出される。このとき、舵角センサ出力値θd(n)が中立点検出値θd0に等しく、ターン数nが“0”であるので、絶対舵角θはθd0となり、前述した第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRと略等しいので、第1の舵角偏差ΔθF及び第2の舵角偏差ΔθRも略“0”となる。
【0084】
このため、ステップS15で、ΔθF<θerror且つΔθR<θerrorとなるので、ステップS17に移行して、カウント値Cntがインクリメントされる。その後直進走行状態を継続してカウント値Cntが所定値Kに達すると、ステップS19に移行して、ターン数n=0が初期ターン数nintとして確定される。
このため、カウント値Cntが“0”にリセットされることはないので、初期ターン数nintが即座に確定される。
【0085】
同様に、車両がステアリングホイール2を中立状態として停車している状態からステアリングホイール2を180°以内で操舵して発進した場合も、上記と同様にターン数nが“0”に確定される。
一方、車両を右切り状態で車庫入れを行ない、左切り状態で発進する場合には、通常車庫入れ完了時にはステアリングホイール2が中立状態となって停車しており、この停車状態でイグニッションスイッチ12をオフ状態とすると、最終絶対舵角θeとして中立位置を表すθd0が記憶される。
【0086】
その後、イグニッションスイッチ12をオン状態としてから−180°以上左切りの据え切りを行ってから車両を発進させると、最終絶対舵角θeがθd0であるが、車両発進時の舵角センサ出力値θd(n)が例えば−210°である場合には、これらを前記(7)式に代入すると、θd0−(−210−θd0)+n×360<180となり、210+n×360<180を満足するターン数nは−1となる。
【0087】
このとき、車両が発進して左切り走行状態となることから、左側の車輪速VFL,VRLに対して右側の車輪速VRL,VRRが大きくなり、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRも左切り状態を表す例えば−200°となったものとすると、舵角偏差ΔθF及びΔθRが比較的大きな値となるが、最終絶対舵角θeの信頼性が高くステップS15の処理における設定値Δθerrorが大きな値に設定されていることから前述したと同様に初期ターン数nを即座に確定することができる。
【0088】
このように最終絶対舵角θeが中立点検出値θd0の近傍の値であるときには、ステアリングホイール2を左又は右に据え切りした後に発進するか又は左又は右に操舵しながら発進しても初期ターン数nintを即座に確定することができる。
同様に、例えば右切り(又は左切り)状態の最終絶対舵角θeで停車して、イグニッションスイッチ12をオフ状態としてから(180−θe)以上左切り(又は右切り)した状態で発進した場合にも、最終絶対舵角θeに基づいて算出されるターン数nが実際のターン数nと異なる値となることになるが、この場合もステップS15の判定結果が少なくもとΔθF及びΔθRの何れかが設定値Δθerror以上となることになり、カウント値Cntが“0”にリセットされることから次回から第1の推定舵角θestFに基づいて初期ターン数nが推定されて、正確なターン数推定を行うことができる。
【0089】
このように、上記第3の実施形態によれば、比較的信頼性の高い前回走行終了時の最終絶対舵角θeを使用して初期ターン数nを設定するので、前述した第1の実施形態のように車輪速による推定値から初期ターン数nを設定する場合に比較して低車速域で且つ早く絶対舵角θを算出することができる。
また、正確な絶対舵角推定を行うためにイグニッションスイッチ12がオフ状態となっても絶対舵角の演算処理を継続する必要がなく、この分の待機電力を余計に消費することがない上、最終的に算出する絶対舵角と車輪速に基づく第1の推定舵角とを比較してからターン数nを確定するので、イグニッションスイッチ12がオフ状態であるときにステアリングホイール2が180度以上回転されて、前回の最終絶対舵角から算出されるターン数が実際のターン数と異なる場合でも、これが誤って使用されることを確実に回避することができ、正確な絶対舵角の算出を行うことができる。
【0090】
次に、本発明の第4の実施形態を図18及び図19に基づいて説明する。
この第4の実施形態では、前述した第2の実施形態において、初期ターン数確定処理で、前回走行終了時の最終絶対舵角を使用することにより、初期ターン数の確定をより早く行うようにしてものである。
すなわち、第4の実施形態では、図18に示すように、前述した第2の実施形態において、不揮発性メモリ24に前回走行終了時の最終絶対舵角θeを記憶するように構成され、絶対舵角演算部26でイグニッションスイッチをオン状態としたときに、最終絶対舵角θeを読込んで、初期ターン数確定処理を行うことを除いては前述した図10と同様の構成を有する。
【0091】
そして、絶対舵角演算部26で前述した第3の実施形態における図16に示す絶対舵角記憶処理が実行されると共に、初期ターン数確定処理が図19に示すように、変更されている。
この初期ターン数確定処理では、図19に示すように、先ず、ステップS61で、不揮発性メモリ24に記憶されている前回走行時の最終絶対舵角θe及び中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS62に移行して、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θdを読込み、次いでステップS63に移行して、前記(7)式の条件を満たすにターン数nを算出し、次いでステップS64に移行して、カウント数Cntを“1”に設定してから前記ステップS31に移行すると共に、ステップS34の処理が舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θdのみを読込むように変更され、さらにステップS44の処理における設定値Δθerrorの値が前述した第1及び第2の実施形態に比較して大きな値に設定されていることを除いては前述した第1の実施形態における図13と同様の処理を行ない、図13との対応処理には同一ステップ番号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0092】
この第4の実施形態においても、前述した第3の実施形態と同様に、前回走行時の最終絶対舵角θeを不揮発性メモリ24に記憶しておき、イグニッションスイッチ12がオフ状態からオン状態に反転したときに、不揮発性メモリ24から最終絶対舵角θe及び中立点検出値θd0を読込むと共に、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)を読込むことにより、これら最終絶対舵角θe、中立点検出値θd0及び舵角センサ出力値θd(n)に基づいて前記(8)式の条件を満足するターン数nを算出するので、前述した第2の実施形態に対して前述した第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0093】
また、上記第1〜第3の実施形態においては、舵角センサ18が図2に示すようにセンサホイール18cに設けた着磁部18d及び18eと固定部に設けたGMR素子を有する磁気検出器18g及び舵角演算部18hとで構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、着磁部18d及び18eを固定部に配設し、磁気検出器18gをセンサホイール18cに配設するようにしてもよい。
【0094】
また、ステアリングシャフト3に配設した平歯車18a及びセンサホイール18cの歯部18bに代えて傘歯車形式、ハスバ歯車形式等の任意の歯車形式を適用することができる他、歯付きプーリと無端チェーンとで構成することもでき、要はステアリングシャフト3の回転を1対1でセンサホイール18cに伝達することができればよいものである。
さらに、舵角センサ18としては、図20に示すように、ウォームホイール7cと並列に配設した外周面に分解能に応じて設定される所定歯数の歯部18iが形成されたセンサホイール18jと、このセンサホイール18jの歯部18iに対向してギヤハウジング7aに固定された磁気検出器18kとで構成し、磁気検出器18kをセンサホイール18jの歯部18iが到来する毎に90度位相がずれた2つのパルス信号P1及びP2を出力するように構成し、これらパルス信号P1及びP2をパルス弁別回路18mに供給されて回転方向信号DRとパルス信号Pとを形成し、これら回転方向信号DR及びパルス信号Pをプリセットアップダウンカウンタ18nにアップ/ダウン信号及びカウント信号として供給することにより、このアップダウンカウンタ18nから図4に示すステアリングホイール2の1回転で0°から360°の1周期を表す舵角センサ出力値θd(n)を出力するようにしてもよく、舵角センサとしては任意の構成のセンサを適用することができる。
【0095】
さらに、上記第1〜第3の実施形態においては、絶対舵角演算部26で検出した絶対舵角θをハンドル戻し制御部28で使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の絶対舵角θを必要とする制御装置にCAN等のネットワークを使用して送信するようにしてもよい。
さらにまた、上記第1〜第3の実施形態においては、図8に示すように舵角センサ出力値θd(n)の変化量が大きいときにターン数nを移行させるようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、舵角センサ出力値θd(n)を微分して得られる舵角速度が所定閾値より大きいときに舵角範囲即ちターン数nを変更するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す全体構成図である。
【図2】減速機及び舵角センサを示す断面図である。
【図3】磁気検出器の出力信号を示す波形図である。
【図4】舵角センサから出力される舵角センサ出力値を示す特性線図である。
【図5】第1の実施形態における制御装置の具体的構成を示すブロック図である。
【図6】絶対舵角演算部で実行する初期ターン数確定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】絶対舵角演算部で実行する絶対舵角演算処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】ターン数の移行状態の説明に供する説明図である。
【図9】ハンドル戻し制御部の具体的構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態を示す制御装置のブロック図である。
【図11】セルフアライメントトルクの説明に供する模式図である。
【図12】絶対舵角演算部の具体的構成を示すブロック図である。
【図13】絶対舵角演算部で実行する初期ターン数確定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】推定舵角算出マップを示す特性線図である。
【図15】本発明の第3の実施形態を示すブロック図である。
【図16】第3の実施形態における絶対舵角記憶処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図17】第3の実施形態における初期ターン数確定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第4の実施形態を示すブロック図である。
【図19】第4の実施形態の初期ターン数確定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図20】舵角センサの他の例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0097】
1…操舵装置、2…ステアリングホイール、3…ステアリングシャフト、7…減速機構、8…電動モータ、14…制御装置、16…操舵トルクセンサ、17…車速センサ、18…舵角センサ、18a…平歯車、18c…センサホイール、18d,18e…着磁部、18g…磁気検出器、18h…舵角演算部、19…モータ電流検出回路、20A,20B…GMRブリッジ回路、21…電流指令値演算部、22…電流フィードバック制御部、23…モータ駆動回路、24…不揮発性メモリ、25FL〜25RR…車輪速センサ、26…絶対舵角演算部、27…微分回路、28…ハンドル戻し制御部、29…加算器、40…セルフアライニングトルク推定部、41…エンコーダ、42…モータ角速度検出部、43…微分回路、45…ターン数推定部、46…ターン数移行判定部、47…舵角演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の絶対舵角検出装置として、例えば本出願人が先に提案した特許文献1に記載された装置が知られている。
この特許文献1に記載された従来例は、電動モータの駆動によって減速機構を介して操舵補助が行われるステアリング系の回転角を検出することによって、ステアリングホイールの舵角を演算するようにした舵角センサであって、ステアリングシャフトの回転に連動して作動するセンサホイールと、該センサホイールからの舵角信号に基づいて絶対舵角を演算する絶対角演算手段とを備えると共に、センサホイールに、GMR素子と、該GMR素子の回りに配された着磁部とを備え、着磁部の回転に伴って磁場方向を変化させることによって得られるGMR素子の抵抗値の変化に基づいて、ステアリングシャフトの2回転を1周期として回転角を検出するようにしている。
【特許文献1】特開2005−91137号公報(第1頁、第4頁、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、ステアリングホイールの2回転で1周期の舵角信号を得ることができ、ステアリングホイールの全回転角が±600°であるものとすると、720°で1周期の舵角信号を得ることができるので、1周期の中間位置を中立点舵角とすると、1周期は左右回転で±360°となり、左右残りの240°分が中立点舵角を含む1周期と値が重なることになるが、+120°〜−120°の範囲では絶対舵角を一意に決定することができる。したがって、絶対舵角の検出速さを速めることができるが、1回転当りの舵角がステアリングホイールの1回転で1周期の舵角を得るようにした1回転舵角検出装置の2倍となっているので、分解能とリニアリティが倍に悪化してしまうという未解決の課題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、ステアリングホイールの1回転で1周期の絶対舵角を検出して分解能及びリニアリティを保ちながら速やかに絶対角度を検出することができる絶対舵角検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る絶対舵角検出装置は、車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置であって、前記操舵装置の回転に連動して回転するセンサホイールと、GMR素子で構成されるブリッジ回路を有する磁気検出器と、該磁気検出器の回りに配設された着磁部と、前記磁気検出器から出力される検出信号に基づいて絶対舵角を演算する舵角演算部とを備え、前記センサホイールに前記磁気検出器及び着磁部の何れか一方を装着すると共に、他方を固定部に装着し、前記磁気検出器は前記操舵装置の1回転を1周期とする検出信号を出力するように構成されていることを特徴としている。
【0006】
また、請求項2に係る絶対舵角検出装置は、請求項1に係る発明において、前記センサホイールは前記操舵装置と該操舵装置に対して操舵補助力を発生する電動モータとの間に介挿された減速機構に設けられていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る絶対舵角検出装置は、車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置であって、前記操舵装置の1回転を1周期として舵角を検出する舵角検出部と、舵角中立点での前記舵角検出部で検出した中立点位置を記憶する中立点記憶部と、全舵角範囲を前記中立点記憶部に記憶された中立点位置を含む1周期分の中立舵角範囲と、該中立舵角範囲の両側に形成した複数の左右舵角範囲とに分割し、現在の舵角が中立舵角範囲及び左右舵角範囲の何れの舵角範囲に属するかを推定する舵角範囲推定部と、該舵角範囲推定部で推定した舵角範囲と前記舵角検出部で検出した舵角と前記中立点記憶部に記憶された中立点位置とに基づいて絶対舵角を演算する絶対舵角演算部とを備えたことを特徴としている。
【0007】
さらにまた、請求項4に係る絶対舵角検出装置は、請求項3に係る発明において、前記中立点記憶部は不揮発性メモリで構成されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項5に係る絶対舵角検出装置は、請求項3又は4に係る発明において、前記舵角範囲推定部は、前記舵角検出部で検出した舵角の変化量が所定閾値以上であるときに舵角範囲を変更する舵角範囲移行制御部を備えていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項6に係る絶対舵角検出装置は、請求項3又は4に係る発明において、前記舵角範囲推定部は、前記舵角検出部の出力変化量を算出し、その変化量が所定閾値以上であるときに舵角範囲を変更する舵角範囲移行制御部を備えていることを特徴としている。
さらに、請求項7に係る絶対舵角検出装置は、3乃至6の何れか1つに係る発明において、車両の車輪速を検出する車輪速検出部を有し、前記舵角範囲推定部は、前記車輪速検出部で検出した車輪速に基づいて精度の粗い絶対舵角を推定する舵角推定部を有し、該舵角推定部で推定した舵角に基づいて現在属する舵角範囲を推定するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
さらにまた、請求項8に係る絶対舵角検出装置は、請求項7に係る発明において、前記舵角推定部は、従動輪側の左右車輪速に基づいて第1の推定舵角を算出する第1の舵角推定部と、駆動輪側の左右車輪速に基づいて第2の推定舵角を算出する第2の舵角推定部と、前記第1の舵角推定部及び前記第2の舵角推定部で算出した推定舵角の偏差が所定値未満であるときに前記第1の舵角推定部で算出した第1の推定舵角を推定舵角として決定する推定舵角決定部とを備えていることを特徴としている。
【0010】
なおさらに、請求項9に係る絶対舵角検出装置は、請求項7に係る発明において、前記舵角推定部は、車両の車速を検出する車速検出部と、車両のセルフアライニングトルクを検出するセルフアライニングトルク推定部とを有し、前記車速検出部で検出した車速と前記セルフアライニングトルク推定部で検出したセルフアライニングトルクとに基づいて推定舵角を推定するように構成されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項10に係る絶対舵角検出装置は、請求項9に係る発明において、前記舵角推定部は、セルフアライニングトルクをもとに、車速をパラメータとしてセルフアライニングトルクから推定舵角を算出する推定舵角算出マップを参照して推定舵角を算出するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項11に係る絶対舵角検出装置は、請求項7乃至10の何れか1つに係る発明において、前記舵角範囲推定部は、前回走行時の最終絶対舵角を記憶する前回最終舵角記憶部と、該前回最終舵角記憶部に記憶された最終絶対舵角に基づいて舵角範囲を算出する舵角範囲算出部と、該舵角範囲算出部で算出した舵角範囲、前記舵角検出部で検出した舵角及び前記中立点記憶部に記憶された中立点位置に基づいて絶対舵角を推定する絶対舵角推定部とを備え、前記絶対舵角推定部で推定した絶対舵角と前記舵角推定部で推定した絶対舵角との偏差が所定値以内であるときに前記舵角範囲算出部で算出した舵角範囲を確定するように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操舵装置の例えば電動モータで発生する操舵補助力を伝達する減速機構に配設されて、操舵装置の回転に連動して回転するセンサホイールに磁気検出器及び着磁部の何れか一方を装着すると共に、他方を固定部に固定し、磁気検出器で操舵装置の1回転を1周期とする検出信号を出力し、この検出信号に基づいて舵角演算部で絶対舵角を演算するので、分解能とリニアリティを保ったまま、速やかに絶対舵角を検出することができるという効果が得られる。
【0013】
また、前記操舵装置の1回転を1周期として舵角を検出する舵角検出部と、舵角中立点での前記舵角検出部で検出した中立点位置を記憶する中立点記憶部と、全舵角範囲を前記中立点記憶部に記憶された中立点位置を含む1周期分の中立舵角範囲と、該中立舵角範囲の両側に形成した複数の左右舵角範囲とに分割し、現在の舵角が中立舵角範囲及び左右舵角範囲の何れの舵角範囲に属するかを推定する舵角範囲推定部とを備えることにより、中立点舵角範囲とその左右に隣接する左右舵角範囲との何れに属するかを容易確実に推定することができ、絶対舵角を速やかに検出することができるという効果が得られる。
【0014】
さらに、前回最終舵角記憶部に前回走行時の最終絶対舵角を記憶しておき、この記憶された最終絶対舵角に基づいて舵角範囲を算出し、算出した舵角範囲、舵角検出部で検出した舵角及び中立点記憶部に記憶されている中立点位置に基づいて算出した絶対舵角と、絶対舵角推定部で推定した精度の粗い絶対舵角との偏差が所定値以内であるときに舵角範囲算出部で算出した舵角範囲を確定することにより、舵角範囲の確定を速やかに行うことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は操舵装置であり、この操舵装置1はステアリングホイール2が装着されたステアリングシャフト3と、このステアリングシャフト3のステアリングホイール2とは反対側に連結されたラックピニオン機構4と、このラックピニオン機構4にタイロッド等の連結機構5を介して連結された左右の転舵輪6とを備えている。
【0016】
そして、ステアリングシャフト3には、例えばウォームギヤで構成される減速機構7を介して電動モータ8が連結されている。ここで、減速機構7は、図2に示すように、ギヤハウジング7a内に、例えば電動モータ8の出力軸に連結されたウォーム7bと、このウォーム7bに噛合しステアリングシャフト3に配設されたウォームホイール7cとで構成されている。
【0017】
また、電動モータ8は、電動パワーステアリング装置の操舵補助力を発生する操舵補助力発生用モータとして動作する。そして、電動モータ8は車両に搭載されたバッテリ11から出力されるバッテリ電圧Vbがイグニッションスイッチ12及びヒューズ13を介して供給される制御装置14によって駆動制御される。
この制御装置14には、ステアリングシャフト3に配設された操舵トルクセンサ16で検出されたステアリングホイール2に入力される操舵トルクTが入力されていると共に、車速検出部としての車速センサ17で検出した車速検出値Vsが入力され、さらに減速機構7に組込まれた舵角検出部としての舵角センサ18で検出された舵角センサ出力値θd(n)が入力されている。
【0018】
ここで、操舵トルクセンサ16は、ステアリングホイール2に付与されてステアリングシャフト3に伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを図示しない入力軸及び出力軸間に介挿したトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を磁気信号で検出し、それを電気信号に変換するように構成されている。
また、舵角センサ18は、図2に示すように、減速機構7を構成するステアリングシャフト3に連結されたウォームホイール7cと並列に配設された所定歯数の平歯車18aと、この平歯車18aに噛合する同一歯数の歯部18bを外周面に形成したセンサホイール18cと、このセンサホイール18cの一方の側面に形成された半円弧状に形成されたN極及びS極に着磁された一対の着磁部18d及び18eと、ギヤハウジング7aに配設された支持片18fの先端に保持されて着磁部18d及び18eの中心点位置に対向する位置に配置された磁気検出器18gと、この磁気検出器18gから出力される検出信号に基づいて舵角検出信号を演算する舵角演算部18hとで構成されている。
【0019】
ここで、磁気検出器18gは、着磁部18d及び18eからの磁界変化を検出する一対の第1及び第2のGMR素子(磁気抵抗素子)を有するGMRブリッジ回路20A,20Bを備え、これら第1及び第2のGMRブリッジ回路20A及び20Bからセンサホイール18cの角度に応じて図3に示す90°位相がずれる正弦波状の磁気検出信号S1及びS2を舵角演算部18hに出力する。
【0020】
舵角演算部18hは、磁気検出器18gの第1及び第2のGMRブリッジ回路20A及び20Bから出力される磁気検出信号S1及びS2に基づいて下記(1)式の演算を行うことにより、図4に示す舵角センサ出力値θd(n)を算出し、この舵角センサ出力値θd(n)を制御装置14に出力する。
θd(n)=arctan(S1/S2) …………(1)
制御装置14は、例えばマイクロコンピュータで構成され、その構成は機能ブロック図で表すと図5に示すようになる。すなわち、制御装置14は、操舵トルクセンサ16で検出した操舵トルクT及び車速センサ17で検出した車速Vsが入力されこれらに基づいて電動モータ8に対する電流指令値Irefを演算する電流指令値演算部21と、この電流指令値演算部21で算出された電流指令値Irefとモータ電流検出部19で検出されたモータ電流Imとに基づいて電流フィードバック処理を行って電圧指令値を算出する電流フィードバック制御部22と、この電流フィードバック制御部22で算出された電圧指令値Vrefが入力されて電動モータ8を駆動制御するモータ駆動回路23と備えている。
【0021】
また、制御装置14は、ステアリングホイール2を中立位置即ち直進走行時の舵角としたときに舵角センサ18から出力される中立点検出値θd0を記憶する中立点記憶部としての不揮発性メモリ24と、この不揮発性メモリ24に記憶された中立点検出値θd0、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)及び例えば後輪駆動車両の4輪の車輪速を検出する車輪速センサ25FL〜25RRから入力される車輪速VFL〜VRRに基づいて絶対舵角θを演算する絶対舵角演算部26と、この絶対舵角演算部26で演算した絶対舵角θを微分して絶対舵角速度ωを算出する微分回路27と、絶対舵角演算部26で演算した絶対舵角θ、微分回路27で演算した絶対舵角速度ω及び車速検出値Vsに基づいて転舵状態でステアリングホイール2への操舵力を緩めたときにステアリングホイール2を中立点位置に戻す所謂ハンドル戻し制御を行うハンドル戻し制御部28と、このハンドル戻し制御部28で算出したハンドル戻し制御信号HRと電流指令値演算部21から出力される電流指令値Irefとを加算して電流フィードバック制御部22に供給する加算器29とを備えている。
【0022】
ここで、不揮発性メモリ24には、工場出荷時における操舵装置1の最終調整時にステアリングホイール2を直進状態となる中立位置としたときに舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θdを中立点検出値θd0として記憶されている。
また、絶対舵角演算部26には、この絶対舵角演算部26で実行する初期ターン数確定処理、絶対舵角演算処理等の各種プログラムを格納するROM26aと、絶対舵角演算部26で実行する各処理の処理過程で必要とする値等を記憶するRAM26bとが接続されている。
【0023】
そして、絶対舵角演算部26は、不揮発性メモリ24から読出した中立点検出値θd0、舵角センサ18から入力される舵角センサ出力値θd(n)及び車輪速センサ25FL〜25RRから入力される車輪速VFL〜VRRに基づいて図6の初期絶対舵角演算処理及び図7の絶対舵角演算処理を行って絶対舵角θを算出する。
この図6の初期絶対舵角演算処理は、先ず、ステップS0で、車輪速センサ24FL〜24RRから車輪速VFL〜VRRを読込み、次いでステップS1に移行して、車輪速VFL〜VRRの全てが“0”近傍の所定値以上となって車両が走行状態となったか否かを判定し、車両が停止状態であるときにはステップS0に戻って走行状態となるまで待機し、走行状態となったときにはステップS2に移行する。
【0024】
このステップS2では、車輪速VFL〜VRRに基づいて下記(2)式及び(3)式の演算を行うことにより、前輪車輪速に基づく第1の推定舵角θestF及び後輪車輪速に基づく第2の推定舵角θestRを算出する。
sin(2θestF)=kF(VFL−VFR)/(VFL+VFR) ……(2)
tanθestR=kR(VRL−VRR)/(VRL+VRR) ……………(3)
ここで、VFLは前左車輪速、VFRは前右車輪速、VRLは後左車輪速、VRRは後右車輪速、kF及びkRは定数である。
【0025】
次いで、ステップS3に移行して、算出した第1の推定舵角θestFから第2の推定舵角θestRを減算して両者の舵角偏差Δθest(=|θestF−θestR|)を算出する。
次いで、ステップS4に移行して、算出した舵角偏差Δθestが予め設定した設定値ΔθS以下であるか否かを判定し、Δθest>ΔθSであるときには舵角偏差Δθestが大きく従動輪となる前輪に基づく第1の推定舵角θestFの信頼性が低いものと判断して前記ステップS0に戻り、Δθest≦ΔθSであるときには舵角偏差Δθestが小さく従動輪となる前輪に基づく第1の推定舵角θestFの信頼性が高いものと判断してステップS5に移行する。
【0026】
このステップS5では、舵角センサ18から入力される舵角センサ出力値θd(n)及び不揮発性メモリ24に記憶されている中立点検出値θd0を読出し、次いでステップS6に移行して、後述するカウント値Cntが“0”にリセットされているか否かを判定し、Cnt=0であるときにはステップS7に移行する。
このステップS7では、前輪車輪速に基づく第1の推定舵角θestFと舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)から実際の舵角が存在する舵角存在領域Anを決定するターン数nの初期値を推定してから後述するステップS13に移行する。すなわち、舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)は、図4に示した場合に、中立点検出値θd0=0°を含む−180°〜180°の範囲を中立舵角範囲A(0)として設定し、この中立舵角範囲A(0)からステアリングホイール2を右切りした舵角範囲180°〜540°の範囲を右舵角範囲A(1)とし、さらに右切りした540°を超える範囲を右舵角範囲A(2)とし、中立舵角範囲A(0)からステアリングホイール2を左切りした舵角範囲−180〜−540°の範囲を左舵角範囲A(−1)とし、さらに左切りした−540°を超える範囲を左舵角範囲A(−2)としたときに、何れかの舵角範囲Anに存在することになる。したがって、第1の推定舵角θestFと舵角センサ出力値θd(n)とにより舵角範囲A(−2)〜A(2)の何れに属するかを判定することにより、ターン数nの初期値を推定することができる。
【0027】
また、ステップS6の判定結果が、Cnt>0であるときには、ステップS8に移行して、今回の舵角センサ出力値θd(n)から前回の舵角センサ出力値θd(n-1)を減算して出力変化量Δθdを算出してからステップS9に移行する。
このステップS9では、出力変化量Δθdがターン数移行判定閾値−aより小さいか否かを判定し、Δθd<−aであるときにはターン数nが増加したものと判断してステップS10に移行し、現在のターン数nに“1”を加算した値を新たなターン数nとして設定してからステップS13に移行する。
【0028】
また、ステップS9の判定結果が、Δθd≧−aであるときにはステップS11に移行して、前記出力変化量Δθdがターン数移行判定閾値+aより大きいか否かを判定し、Δθd>+aであるときにはターン数nが減少したものと判断してステップS12に移行し、現在のターン数nに“1”を減算した値を新たなターン数nとして設定してからステップS13に移行し、ステップS12の判定結果がΔθd≦+aであるときにはターン数nに変化がないものと判断して直接ステップS13に移行する。
【0029】
ステップS13では、舵角センサ出力値θd(n)、中立点検出値θd0及びターン数nに基づいて下記(4)式の演算を行って絶対舵角θを算出する。
θ=θd(n)−θd0+n×360 …………(4)
次いで、ステップS14に移行して、上記ステップS13で算出した絶対舵角θから第1の推定舵角θestFを減算した値の絶対値で表される第1の舵角偏差ΔθF(=|θ−θestF|)及び絶対舵角θから第2の推定舵角θestRを減算した値の絶対値で表される第2の舵角偏差ΔθR(=|θ−θesrR|)を算出してからステップS15に移行する。
【0030】
このステップS15では、第1の舵角偏差ΔθFが許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満であり、且つ第2の舵角偏差ΔθRが同様に許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満であるか否かを判定し、ΔθF≧ΔθerrorであるかΔθR≧ΔθerrorであるかΔθF≧Δθerror及びΔθR≧Δθerrorであるときには、誤差が大きく絶対舵角θの信頼性が低いものと判断してステップS16に移行し、後述するカウント値Cntを“0”にリセットしてから前記ステップS0に戻る。
【0031】
一方、ステップS15の判定結果が、第1の舵角偏差ΔθF及び第2の舵角偏差ΔθRの何れもが設定値Δθerror未満であるときには、絶対舵角θの信頼性が高いものと判断してステップS17に移行し、現在のカウント値Cntに“1”を加算した新たなカウント値Cntを算出してからステップS18に移行する。
このステップS18では、カウント値Cntが予め設定した設定値Kを超えたか否かを判定し、Cnt≦Kであるときにはターン数nが不安定である可能性があると判断して前記ステップS5に戻り、Cnt>Kであるときにはターン数nが安定しているものと判断してステップS19に移行して、ターン数nを初期ターン数nintとして確定してから初期絶対舵角演算処理を終了する。
【0032】
この図6の処理で、ステップS0〜S2の処理が舵角推定部に対応し、ステップS7の処理が舵角範囲推定部に対応し、ステップS8〜S12の処理が舵角範囲移行制御部に対応している。
また、図7の絶対舵角演算処理は、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS21で、イグニッションスイッチ12がオン状態となって第一回目の絶対舵角演算処理であるか否かを判定し、第一回目の舵角演算処理ではないときには後述するステップS24にジャンプし、第一回目の舵角演算処理であるときにはステップS22に移行して、前述した初期絶対舵角演算処理で初期ターン数nintが確定したか否かを判定し、初期ターン数nintが確定していないときにはこれが確定するまで待機し、初期ターン数nintが確定したときにはステップS23に移行して、初期ターン数nintを読込んでからステップS24に移行する。
【0033】
このステップS24では、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ24に記憶された中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS25〜S30に移行して、前述した図6の初期ターン数確定処理におけるステップS8〜ステップS14と同様の処理を行って絶対舵角θを算出してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。ここで、ステップS30では、絶対舵角θを算出したときに、算出した絶対舵角θをRAM26bに形成した絶対舵角記憶領域に更新記憶する。
【0034】
さらに、ハンドル戻し制御部28では、図9に示すように、絶対舵角θに基づいて所定関数でハンドル戻し基本電流値Irを出力するハンドル戻し基本電流回路30と、車速Vsを入力して所定関数により車速Vsに応じたゲインGvを出力するゲイン回路31と、ハンドル戻し基本電流回路30からのハンドル戻し基本電流値Irとゲイン回路31からのゲインGvとを乗算する乗算器32と、乗算器32からの出力Ir・Gvを接点a又はbに切換えて出力するスイッチ33と、スイッチ33が接点b側に切換えられたときの出力を0とする零出力回路34と、絶対舵角θ及び絶対舵角速度ωを入力し、両者の符号の一致又は不一致を判定する符号判定回路35とで構成されている。
【0035】
符号判定回路35は、判定信号としてスイッチ信号SWを出力してスイッチ33の接点を切換えるが、絶対舵角θ及び舵角速度ωの符号が一致のときにスイッチ信号SWで接点bに切換える。また、スイッチ33の接点a,bは、舵角速度ωが零となったことを検出する回路(図示せず)からも切換えられるように構成されている。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
【0036】
今、車両が停止していて、イグニッションスイッチ12がオフ状態であるものとすると、この状態では、制御装置14にバッテリ11からのバッテリ電圧Vbが供給されないので、制御装置14は停止状態にあり、図3に示す操舵トルクT及び車速Vsに基づいて実行する操舵補助制御処理は実行停止状態にあり、電動モータ8が停止してステアリングシャフト3への操舵補助力の伝達は行われない。
【0037】
この車両停止状態から、イグニッションスイッチ12をオン状態とすると、制御装置14にバッテリ電圧Vbが供給されることにより、制御装置14が作動状態となって、図5のモータ電流検出部19、電流指令値演算部21、電流フィードバック制御部22、モータ駆動回路23、ハンドル戻し制御部28及び加算器29による操舵補助制御処理、図6に示す初期絶対舵角演算処理及び図7に示す絶対舵角演算処理が実行開始される。
【0038】
この状態では、車両が停止しているので、各車輪速センサ25FL〜25RRで検出される車輪速VFL〜VRRは“0”であり、図6の初期絶対舵角演算処理におけるステップS1で車両停止状態であると判断されるので、待機状態を継続し、初期ターン数nintは確定されない状態を継続する。
このため、図7の絶対舵角演算処理で、初期ターン数nintが確定されないので、絶対舵角θを算出することなくタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0039】
このため、ハンドル戻し制御部28では、絶対舵角演算部26から絶対舵角θが入力されないことにより、ハンドル戻し制御信号HRは“0”に設定され、これが加算器29に供給されるので、この加算器29では電流指令値演算部21で算出された操舵トルクT及び車速検出値Vsに基づく電流指令値Irefがそのまま電流フィードバック制御部22に出力される。
【0040】
このとき、運転者がステアリングホイール2を操舵していない状態では、操舵トルクセンサ16で検出される操舵トルクTが“0”であることから電流指令値演算部21で算出される電流指令値Irefが“0”となり、モータ電流検出部19で検出されるモータ電流Imも“0”であるので、電流フィードバック制御部22から出力される電圧指令値Vrefも“0”となるので、モータ駆動回路23から出力されるモータ電流Imも“0”となって電動モータ8は停止状態を継続する。
【0041】
この状態から、運転者がステアリングホイール2を操舵して所謂据え切り状態とすると、これに応じて操舵トルクセンサ16から比較的大きな操舵トルクTが出力されることにより、電流指令値演算部21から操舵トルクT及び車速Vsに応じた比較的大きな電流指令値Irefが出力される。
このとき、電動モータ8は停止状態であるので、モータ電流検出部19で検出されるモータ電流Imは“0”を維持しているので、電流フィードバック制御部22から比較的大きな値の電圧指令値Vrefがモータ駆動回路23に出力され、このモータ駆動回路23から比較的大きな値のモータ駆動電流Imが電動モータ8に出力される。
【0042】
このため、電動モータ8が回転駆動されて、比較的大きな操舵補助力を発生し、この操舵補助力が減速機構7を介してステアリングシャフト3に伝達されるので、ステアリングホイール2を軽く操舵することができる。
この状態では、車両が停止状態を維持しているので、舵角センサ18からステアリングホイール2の操舵角に応じた舵角センサ出力値θd(n)が出力されるが、車輪速センサ25FL〜25RRから出力される車輪速VFL〜VRRが“0”を維持するので、ステップS0で待機状態を継続する。
【0043】
この状態で、車両を発進させると、車輪速センサ25FL〜25RRから車輪速VFL〜VRRが出力される。このため、図6の処理におけるステップS0で車輪速VFL〜VRRを読込み、車輪速VFL〜VRRの全てが“0”を超えるので、車両走行中と判断されてステップS1からステップS2に移行し、車輪速VFL〜VRRに基づいて第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRを算出する。
【0044】
このとき、車両が例えば直進走行を開始した場合には、前輪側の左右の車輪速VFL及びVFRと後輪側の左右の車輪速VRL及びVRRとが等しい車輪速となるので、前述した(2)式及び(3)式における右辺は略“0”となり、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRが共に略“0”となる。
このため、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRが略等しい値となるので、両者の推定舵角偏差Δθestも略“0”となり、設定値ΔθS未満となるので、ステップS4からステップS5に移行し、舵角センサ18から舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ24から中立点検出値θd0を読込む。
【0045】
次いで、ステップS6に移行して、カウント値Cntが“0”であるか否かを判定し、初期状態であり、カウント値Cntが“0”に初期化されているので、ステップS7に移行し、第1の推定舵角θestFと舵角センサ出力値θd(n)とに基づいて初期ターン数nを推定する。このとき、車両が直進走行状態であり、第1の推定舵角θestFも略“0”となるので、初期ターン数nは“0”に設定される。
【0046】
そして、ステップS13に移行し、前述した(4)式に従って絶対舵角θを算出する。このとき、ターン数nが“0”であり、舵角センサ出力値θdが中立点検出値θd0と略等しい値となっているので、算出される絶対舵角θも略“0”となる。
このため、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRと絶対舵角θとの偏差ΔθF及びΔθRも略“0”となり、共に許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満となるので、ステップS15からステップS17に移行して、カウント値Cntに“1”を加算してCnt=1とする。
【0047】
この状態では、カウント値Cntが所定値Kに達していないので、前記ステップS5に戻って、再度舵角センサ出力値θd(n)及び中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS6に移行するが、カウント値Cntが“1”であるので、ステップS7に移行することなくステップS8にジャンプする。
このため、新たなターン数nの推定は行われず、車両が直進走行状態を継続している場合には、舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)が前回の舵角センサ出力値θd(n-1)と略等しく両者の出力変化量Δθdが略“0”となるため、Δθd≧−Aとなり、且つΔθd≦+Aとなるので、ステップS9からステップS11を経てステップS13に移行し、絶対舵角θを算出する。この場合に推定舵角偏差ΔθF及びΔθRも略“0”を継続するので、ステップS15からステップS17に移行してカウント値Cntが“1”だけインクリメントされる。
【0048】
この状態を繰り返して、カウント値Cntが所定値Kに達すると、ステップS18からステップS19に移行して、そのときのターン数n即ちn=0が初期ターン数nintとして確定される。
このように、初期ターン数nintが確定されると、図7の絶対舵角演算処理で、ステップS22からステップS23に移行して、初期ターン数nintを読込み、次いでステップS24に移行して、舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ24から中立点検出値θd0を読込んでから前述した初期ターン数推定処理におけるステップS8〜S13と同様の処理を行って絶対舵角θを算出する。この場合には、車両が直進走行状態を継続しているので、絶対舵角θも略“0”となる。
【0049】
その後は、図7の絶対舵角演算処理で、ステップS21から直接ステップS24に移行し、舵角センサ18から出力される舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ24に記憶されている中立点検出値θd0を読込んで、今回の舵角センサ出力値θd(n)と前回の舵角センサ出力値θd(n-1)とに基づいてターン数nの増減を判定する。
すなわち、例えばステアリングホイール2を右切り(又は左切り)して右操舵状態(又は左操舵状態)とし、これによって舵角センサ18で検出される舵角センサ出力値θd(n)が中立点検出値θd0と略等しい状態から増加(又は減少)して舵角センサ出力値θd(n)が180°(又は−180°)を超える状態となると、図8(a)に示すように舵角センサ出力値θd(n)が最大値θdMAXから最小値θdMINに(又は図8(b)に示すように最小値θdMINから最大値θMAXに)変化する。
【0050】
このため、前述したステップS26からステップS27に移行してターン数nが“1”だけインクリメントされ(又はステップS26からステップS28を経てステップS29に移行してターン数nが“1”だけデクリメントされ)新たなターン数nが設定される。
このため、ステップS30で絶対舵角θを演算することにより、絶対舵角θが180°から例えば181°に(又は−180°から例えば−181°に)連続して増加(又は減少)され、正確な絶対舵角θを高分解能でリニアリティ良く算出することができる。
【0051】
このように絶対舵角θを算出可能な状態となると、ハンドル戻し制御部28が作動状態となるが、直進走行状態では、絶対舵角θが0°で保舵されており、その微分値である絶対角速度ωが “0”となるので、非操舵状態と判断してスイッチ33をb接点側に切換え、ハンドル戻し制御信号HRを零とする。この結果、電流指令値演算部21で演算された電流指令値Irefがそのまま電流フィードバック制御部22に供給される。
【0052】
この直進走行状態から、ステアリングホイール2を例えば左切り(又は右切り)すると、絶対舵角θが負(又は正)方向に増加し、絶対舵角速度ωも負(又は正)方向となるので、切り増し方向と判断されて符号判定回路35からスイッチ信号SWが出力されることにより、スイッチ33がb接点側に切換えられた状態を維持する。
その後、ステアリングホイール2を右切り(又は左切り)して中立位置に戻すと、絶対舵角θは負(又は正)であり、絶対舵角速度ωが正(又は負)となるので、両者の符号が異なることにより、ハンドル戻し状態であると判断されて、ハンドル戻し制御部28のスイッチ33がa接点側に切換えられ、これにより、絶対舵角θに基づいてハンドル戻し基本電流回路30で算出されるハンドル戻し基本電流値Irにゲイン回路31から出力される車速感応ゲインGvとを乗算器32で乗算した値Ir・Gvがハンドル戻し制御信号HRとして加算器29に出力される。このため、ハンドル戻し時にのみ良好なハンドル戻し制御を行うことができる。
【0053】
以上が直進発進状態の動作であるが、車両を道路と交差する車庫から道路に出る場合のように、ステアリングホイール2を左切り(又は右切り)状態で発進する場合には、車両が発進したときの旋回内輪側の車輪速VFL及びVRL(又はVFR及びVRR)に対して旋回外輪側の車輪速VFR及びVRR(又はVFL及びVRL)が速くなるので、前述した(2)式及び(3)式で演算される第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRが共に負値(又は正値)となり、ステアリングホイール2の舵角に応じた値となる。
【0054】
このため、図6の初期ターン数確定処理で、車両が発進して走行状態となったときにステップS1からステップS2移行に移行し、さらにステップS3〜S5を経てステップS6に移行すると、カウント値Cntが“0”にリセットされていることにより、第1の推定舵角θestFに基づいて初期ターン数nが推定され、このターン数n、舵角センサ出力値θd(n)及び中立点検出値θd0に基づいて前述した(4)式の演算を行って絶対舵角θが算出される。
【0055】
このとき、第1の推定舵角θestFは精度の粗い舵角で正確な値ではないので、例えば、右切り状態で例えば保舵しながら発進して、第1の推定舵角θestFが例えば160°であって、初期ターン数n=0であるが、実際の舵角(例えばターン数n=1の右舵角範囲A(1)の181°付近)により舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)が最小値θdMINに近い値である場合には、図6のステップS13で算出される絶対舵角θは左切り状態を表す−180°に近い値となる。
【0056】
このため、ステップS14で算出される絶対舵角θから第1の推定舵角θestFを減算した値の絶対値でなる偏差ΔθF及び絶対舵角θから第2の推定舵角θestRを減算した値の絶対値でなる偏差ΔθRが共に大きな値となるので、ステップS15で信頼性がないものと判断されてからステップS16に移行して、カウント値Cntを“0”にリセットしてからステップS0に戻ることになり、初期ターン数確定処理をやり直す。
【0057】
その後、第1の推定舵角θestFに基づいて推定される初期ターン数nが実際のターン数と一致する状態となって信頼性が高い状態となったとき即ち算出される絶対舵角θと第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRとの偏差ΔθF及びΔθRが共に許容誤差範囲を表す設定値Δθerrorより小さくなった状態をカウント値Cntが設定値Kに達するまで継続したときに初期ターン数nintが確定される。
【0058】
さらに、雪路、凍結路、降雨路等の路面摩擦係数が小さい路面で車両を発進させる場合や車両を急発進させる場合には、駆動輪となる後輪側の左右輪で車輪スリップが発生することになり、従動輪となる前輪の車輪速VFL及びVFRに基づいて算出する第1の推定舵角θestFはステアリングホイール2に追従した舵角となるが、後輪の車輪速VRL及びVRRに基づいて算出する第2の推定舵角θestRは実際の舵角とは異なる値になる。このため、図6の処理におけるステップS3で第1の推定舵角θestFから第2の推定舵角θestRを減算した値の絶対値でなる推定舵角偏差Δθestが大きな値となり、ステップS4でΔθest>ΔθSとなるので、そのままステップS0に戻り、ターン数nの確定は行われない。
【0059】
さらにまた、車両が発進時に左右で摩擦係数が異なる所謂スプリットμ路を直進走行する場合にも、ステアリングホイール2は中立位置に維持されて舵角センサ18では中立点検出値θd0に近い値となるが、摩擦係数の低い側の車輪がスリップすることにより、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRは旋回状態を表す舵角となり、これに基づいて推定されるターン数nが実際のターン数nとは異なる値になるが、この場合も前述した旋回発進状態での第1の推定舵角θestFに基づいて推定したターン数nと実際のターン数nとが異なる場合と同様にステップS15からステップS16に移行してカウント値Cntを“0”にリセットしてからステップS0に戻ることにより、初期ターン数nintの確定は行われない。
【0060】
このように、上記実施形態によれば、絶対舵角θを検出できない初期操舵状態で、車両の車輪速に基づいて少なくとも推定舵角θestFを算出し、算出した推定舵角θestFに基づいてターン数nを推定し、推定したターン数n、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)及び中立点検出値θd0に基づいて前記(4)式に従って絶対舵角θを算出し、算出した絶対舵角θと推定舵角θestFとを比較することにより、推定舵角θestFの信頼性を判断するので、初期ターン数nintを正確に確定することができ、確定された初期ターン数nintに基づいて絶対舵角θを演算することにより、高分解能でリニアリティの良い正確な絶対舵角θを求めることができる。
【0061】
しかも、初期ターン数nintを確定する際に、前後輪即ち従動輪と駆動輪とに基づいて推定する第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRを算出してから両者の偏差Δθestを算出し、この偏差Δθestが設定値ΔθSより大きいときには信頼性が低いと判断するようにしているので、不確かな推定角度に基づくターン数nの推定を確実に防止して、正確な初期ターン数nintを確定することができる。
【0062】
また、ターン数確定処理で、算出した絶対舵角θと第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRとの偏差ΔθF及びΔθRを算出し、これら偏差ΔθF及びΔθRが共に許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満であるときに信頼性が高いものと判断するので、より正確な初期ターン数nintを確定することができる。
なお、上記第1の実施形態においては、本発明を後輪駆動車に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前輪駆動車に適用して、従動輪となる後輪の車輪速に基づいて第1の推定舵角を算出し、駆動輪となる前輪の車輪速に基づいて第2の推定舵角を算出するようにすればよい。
【0063】
次に、本発明の第2の実施形態を図10〜図14について説明する。
この第2の実施形態では、前述した第1の実施形態のように車輪速に基づいて初期絶対舵角を推定する場合に代えて、セルフアライニングトルクSAT及び車速Vsに基づいて初期舵角を推定するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、制御装置14に車両に作用するセルフアライニングトルクSATを検出するセルフアライニングトルク推定部40が設けられ、このセルフアライニングトルク推定部40で検出したセルフアライニングトルクSAT及び車速センサ17で検出した車速Vsを絶対舵角演算部26に供給するように構成されていることを除いては図5と同様の構成を有し、図5との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0064】
ここで、セルフアライニングトルク推定部40は、操舵トルクセンサ16から出力される操舵トルクT、電動モータ8の出力軸に連結されたエンコーダ41から出力される回転角信号に基づいてモータ角速度ωmを検出するモータ角速度検出部42から出力されるモータ角速度ωm、このモータ角速度ωmを微分回路43で微分したモータ角加速度α及び電流指令値演算部21で算出した電流指令値Irefが入力され、これらに基づいてセルフアライニングトルクSATを推定演算する。
【0065】
このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図11に示して説明する。すなわち、運転者がステアリングホイール2を操舵することによって操舵トルクTが発生し、その操舵トルクTに従って電動モータ8がアシストトルクTmを発生する。その結果、車輪Wが転舵され、反力としてセルフアライニングトルクSATが発生する。また、その際、電動モータ8の慣性J及び摩擦(静摩擦)Frによってステアリングホイール2の操舵の抵抗となるトルクが生じる。これらの力の釣り合いを考えると、下記(5)式のような運動方程式が得られる。
【0066】
J・α+ Fr・sign(ωm) + SAT = Tm + T …(5)
ここで、上記(5)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(6)式が得られる。
SAT(s) = Tm(s) ++ T(s) − J・α(s) − Fr・sign(ωm(s)) …(6)
上記(6)式から分かるように、電動モータ8の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ωm、モータ角加速度α、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを推定することができる。
【0067】
ここで、アシストトルクTmは電流指令値Irefに比例するので、アシストトルクTmに代えて電流指令値Irefを適用する。
また、絶対舵角演算部26は、図12に示すように、セルフアライニングトルクSAT、車速Vs、舵角センサ出力値θd(n)及び中立点検出値θd0が入力されたターン数推定部45と、舵角センサ出力値θd(n)に基づいてターン数移行を判定するターン数移行判定部46と、ターン数推定部45で推定された初期ターン数nintと、ターン数移行判定部46で判定されたターン数nと、舵角センサ出力値θd(n)と、中立点検出値θd0とに基づいて絶対舵角θを演算する舵角演算部47とを備えており、舵角演算部47から絶対舵角θが出力される。
【0068】
ここで、ターン数推定部45では、図13に示す初期ターン数確定処理を実行する。この初期ターン数確定処理では、先ず、ステップS31で、車速Vs及びセルフアライニングトルクSATを読込み、次いでステップS33に移行して、車速Vs及びセルフアライニングトルクSATをもとに図14に示す舵角算出マップを参照して推定舵角θestを算出する。
【0069】
ここで、図14の舵角算出マップは、横軸にセルフアライニングトルクSATをとり、縦軸に推定舵角θestをとり、さらに車速Vsをパラメータとした特性線図で構成され、車速Vsが増加するに応じて順次傾きが小さくなる所要数の特性線が設定されている。
次いで、ステップS34に移行して、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)を読込むと共に、不揮発性メモリ24に記憶されている中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS35に移行して、カウント値Cntが“0”にリセットされているか否かを判定し、Cnt>0であるときにはそのままステップS37にジャンプし、Cnt=“0”であるときにはステップS36に移行する。Cnt>0である時に、前述した図6のステップS8〜S12と同様の処理をするステップS37〜S41を経て、ターン数を設定し、ステップS42に移行する。また、Cnt=0である時に、前述した図6のステップS7と同様の処理を行って推定舵角θestに基づいて初期ターン数nを推定してから、ステップS42に移行する。このステップS42では、前述した第1の実施形態における図6の初期ターン数確定処理におけるステップS13と同様の処理を実行して絶対舵角θを算出し、次いで、ステップS43に移行して、算出した絶対舵角θから推定舵角θestを減算した値の絶対値でなる舵角偏差Δθを算出してからステップS44に移行する。
【0070】
このステップS44では、舵角偏差Δθが予め設定した許容誤差範囲となる設定値Δθerror未満であるか否かを判定し、Δθ≧ΔθerrorであるときにはステップS45に移行して、カウント値Cntを“0”にリセットしてから前記ステップS31に戻り、Δθ<ΔθerrorであるときにはステップS46に移行して、前述した図6の処理におけるステップS16と同様にカウント値Cntのインクリメントを行ってからステップS47に移行して、カウント値Cntが設定値Kに達したか否かを判定し、Cnt≦Kであるときに前記ステップS34に戻り、Cnt>KであるときにはステップS48に移行して、ターン数nを初期ターン数nintとして確定してから初期ターン数確定処理を終了する。
【0071】
この図13の初期ターン数確定処理において、ステップS37〜S41の処理がターン数移行判定部46に対応し、ステップS31〜ステップS36の処理及びステップS42〜S48の処理がターン数推定部45に対応している。
次に、上記第2の実施形態の動作を説明する。
今、車両が停止状態から発進状態となると、直進走行状態であるときにはセルフアライニングトルク推定部40で検出されるセルフアライニングトルクSATが略“0”となり、これに応じてターン数推定部45で実行される初期ターン数確定処理におけるステップS33で算出される推定舵角θestも略“0”となり、ステップS36で算出されるターン数nも“0”となる。
【0072】
次いで、ステップS42に移行し、舵角センサ18で検出される舵角センサ出力値θd(n)が中立点検出値θd0と略等しくなるので、前述した(4)式で算出される絶対舵角θも略“0”となる。
そして、絶対舵角θと推定舵角θestとが略一致するので、舵角偏差Δθが略“0”となり、ステップS44からステップS46に移行して、カウント値Cntがインクリメントされる。
【0073】
その後、直進走行状態を継続して舵角センサ出力値θd(n)が前回の舵角センサ出力値θd(n-1)に対して変化しないので、ステップS37からステップS38〜S42を経て絶対舵角θを算出する。この処理を繰り返して、カウント値Cntが設定値Kに達すると、ステップS47からステップS48に移行して、初期ターン数nintが確定されて、舵角演算部47で実行される図7の絶対舵角演算処理で、前述した第1の実施形態と同様に絶対舵角θが算出され、この絶対舵角θに基づいてハンドル戻し制御部28でハンドル戻し制御が行われる。
【0074】
一方、旋回走行状態で、発進する場合には、そのときのステアリングホイール2の舵角が大きくなるにつれてセルフアライニングトルク推定部40で検出されるセルフアライニングトルクSATも大きくなると共に、車速Vsが増加するに応じてセルフアライニングトルクSATが大きくなるので、その旋回走行時のステアリングホイール2の舵角及び車速Vsに応じたセルフアライニングトルクSATがセルフアライニングトルク推定部40で検出される。
【0075】
このため、図13の初期ターン数確定処理で、ステップS33でセルフアライニングトルクSAT及び車速Vsに応じた推定舵角θestが算出されることにより、この推定舵角θestに基づいてターン数nが推定され、前述した第1の実施形態と同様に絶対舵角θから推定舵角θestを減算した値の絶対値でなる舵角偏差Δθが許容誤差範囲を表す設定値Δθerror未満である状態を継続したときに初期ターン数nintが確定される。これに応じて絶対舵角演算処理で絶対舵角θの算出が行われ、ハンドル戻し制御部28でのハンドル戻し制御が開始される。
【0076】
なお、上記第2の実施形態においては、セルフアライメントトルクSATを推定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、セルフアライニングトルクSATを実測したり、インタミディエイトシャフトのトルクを検出するようにしたりしてもよい。
次に、本発明の第3の実施形態を図15〜図17について説明する。
【0077】
この第3の実施形態は、前述した第1の実施形態において、初期ターン数確定処理で、前回走行終了時の最終絶対舵角を使用することにより、初期ターン数の確定をより早く行うようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、図15に示すように、前述した第1の実施形態において、不揮発性メモリ24に前回走行終了時の最終絶対舵角θeを記憶するように構成され、絶対舵角演算部26でイグニッションスイッチをオン状態としたときに、最終絶対舵角θeを読込んで、初期ターン数確定処理を行うことを除いては前述した図5と同様の構成を有する。
【0078】
そして、絶対舵角演算部26で図16に示す絶対舵角記憶処理が実行される。
この絶対舵角記憶処理は、所定時間(例えば20msec)毎のタイマ割込処理として実行され、図16に示すように、先ず、ステップS51で、イグニッションスイッチ12のスイッチ信号を読込み、次いでステップS52に移行して、イグニッションスイッチ12がオン状態からオフ状態に状態変化したか否かを判定し、イグニッションスイッチ12がオン状態を継続している場合には、そのままタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰し、イグニッションスイッチ12がオン状態からオフ状態に状態変化したときには、ステップS53に移行して、前述したRAM26bに記憶されている絶対舵角θを読込み、この絶対角度θを最終絶対舵角θeとして不揮発性メモリ24に形成された最終絶対舵角記憶領域に更新記憶してからタイマ割込処理を終了する。
【0079】
また、絶対舵角演算部26で実行する初期ターン数確定処理が図17に示すように変更されている。
この初期ターン数確定処理では、図17に示すように、先ず、ステップS61で、不揮発性メモリ24に記憶されている前回走行時の最終絶対舵角θe及び中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS62に移行して、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θdを読込み、次いでステップS63に移行して、下記(7)式の条件を満たすターン数nを算出し、次いでステップS64に移行して、カウント数Cntを“1”に設定してから前記ステップS0に移行すると共に、ステップS5の処理が舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θdのみを読込むように変更され、さらにステップS15の処理における設定値Δθerrorの値が前述した第1及び第2の実施形態に比較して大きな値に設定されていることを除いては前述した第1の実施形態における図6と同様の処理を行ない、図6との対応処理には同一ステップ番号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0080】
θe−(θd−θd0)+n×360<180 …………(7)
この第3の実施形態によると、車両のイグニッションスイッチ12をオン状態としている状態では、図16の絶対舵角記憶処理で、イグニッションスイッチ12のスイッチ信号を読取るだけで、タイマ割込処理を終了するが、車両を停止させてイグニッションスイッチ12をオン状態からオフ状態とすると、図16の絶対舵角記憶処理で、ステップS52からステップS53に移行して、絶対舵角演算部26に設けられたRAM26bに形成された絶対舵角記憶領域に記憶されている絶対舵角θを読込み、読込んだ絶対角度θを最終絶対舵角θeとして不揮発性メモリ24に形成された最終絶対舵角記憶領域に更新記憶する。
【0081】
このため、その後に車両を使用するために、イグニッションスイッチ12をオン状態とすると、図17に示す初期ターン数確定処理が実行開始される。
この初期ターン数確定処理では、先ず、不揮発性メモリ24の最終絶対舵角記憶領域に記憶されている前回走行終了時の最終絶対舵角θeと中立点検出値θd0を読込み(ステップS61)、次いで、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)を読込み(ステップS62)、読込んだ最終絶対舵角θe、中立点検出値θd0及び舵角センサ出力値θd(n)とに基づいて前述した(7)式の条件を満たすターン数nを算出し、次いでカウント値Cntを“1”に設定する。
【0082】
このため、例えば車両を路肩に駐車してから再度走行を開始する場合のように、前回の車両の停止時における最終絶対舵角θeが例えば中立位置となるθ=θd0で、今回イグニッションスイッチ12をオン状態としたときの舵角センサ18で検出される舵角センサ出力値θd(n)もθd0であって、この間にステアリングホイールが操舵されていないときには、θe=θd(n)=θd0であることから、これらを前記(7)に代入することにより、360×n<180となり、ターン数nとして“0”が算出される。
【0083】
この状態で、ステアリングホイール2を中立位置に保持したまま、車両を発進させると、車両の前後における左右輪の車輪速VFL,VRL及びVFR,VRRが略同じ値となることから、前輪車輪速に基づく第1の推定舵角θestF及び後輪車輪速に基づく第2の推定舵角θestRとが共に略0°となる。
このため、ステップS0〜S4を経てステップS5に移行して、舵角センサ出力値θd(n)を読込み、前述したステップS54でカウント値Cntが“1”に設定されているので、ステップS6からステップS8に移行し出力変化量Δθdが略“0”であり、ステップS9及びステップS11を経てステップS13に移行して、前記(4)式に従って絶対舵角θが算出される。このとき、舵角センサ出力値θd(n)が中立点検出値θd0に等しく、ターン数nが“0”であるので、絶対舵角θはθd0となり、前述した第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRと略等しいので、第1の舵角偏差ΔθF及び第2の舵角偏差ΔθRも略“0”となる。
【0084】
このため、ステップS15で、ΔθF<θerror且つΔθR<θerrorとなるので、ステップS17に移行して、カウント値Cntがインクリメントされる。その後直進走行状態を継続してカウント値Cntが所定値Kに達すると、ステップS19に移行して、ターン数n=0が初期ターン数nintとして確定される。
このため、カウント値Cntが“0”にリセットされることはないので、初期ターン数nintが即座に確定される。
【0085】
同様に、車両がステアリングホイール2を中立状態として停車している状態からステアリングホイール2を180°以内で操舵して発進した場合も、上記と同様にターン数nが“0”に確定される。
一方、車両を右切り状態で車庫入れを行ない、左切り状態で発進する場合には、通常車庫入れ完了時にはステアリングホイール2が中立状態となって停車しており、この停車状態でイグニッションスイッチ12をオフ状態とすると、最終絶対舵角θeとして中立位置を表すθd0が記憶される。
【0086】
その後、イグニッションスイッチ12をオン状態としてから−180°以上左切りの据え切りを行ってから車両を発進させると、最終絶対舵角θeがθd0であるが、車両発進時の舵角センサ出力値θd(n)が例えば−210°である場合には、これらを前記(7)式に代入すると、θd0−(−210−θd0)+n×360<180となり、210+n×360<180を満足するターン数nは−1となる。
【0087】
このとき、車両が発進して左切り走行状態となることから、左側の車輪速VFL,VRLに対して右側の車輪速VRL,VRRが大きくなり、第1の推定舵角θestF及び第2の推定舵角θestRも左切り状態を表す例えば−200°となったものとすると、舵角偏差ΔθF及びΔθRが比較的大きな値となるが、最終絶対舵角θeの信頼性が高くステップS15の処理における設定値Δθerrorが大きな値に設定されていることから前述したと同様に初期ターン数nを即座に確定することができる。
【0088】
このように最終絶対舵角θeが中立点検出値θd0の近傍の値であるときには、ステアリングホイール2を左又は右に据え切りした後に発進するか又は左又は右に操舵しながら発進しても初期ターン数nintを即座に確定することができる。
同様に、例えば右切り(又は左切り)状態の最終絶対舵角θeで停車して、イグニッションスイッチ12をオフ状態としてから(180−θe)以上左切り(又は右切り)した状態で発進した場合にも、最終絶対舵角θeに基づいて算出されるターン数nが実際のターン数nと異なる値となることになるが、この場合もステップS15の判定結果が少なくもとΔθF及びΔθRの何れかが設定値Δθerror以上となることになり、カウント値Cntが“0”にリセットされることから次回から第1の推定舵角θestFに基づいて初期ターン数nが推定されて、正確なターン数推定を行うことができる。
【0089】
このように、上記第3の実施形態によれば、比較的信頼性の高い前回走行終了時の最終絶対舵角θeを使用して初期ターン数nを設定するので、前述した第1の実施形態のように車輪速による推定値から初期ターン数nを設定する場合に比較して低車速域で且つ早く絶対舵角θを算出することができる。
また、正確な絶対舵角推定を行うためにイグニッションスイッチ12がオフ状態となっても絶対舵角の演算処理を継続する必要がなく、この分の待機電力を余計に消費することがない上、最終的に算出する絶対舵角と車輪速に基づく第1の推定舵角とを比較してからターン数nを確定するので、イグニッションスイッチ12がオフ状態であるときにステアリングホイール2が180度以上回転されて、前回の最終絶対舵角から算出されるターン数が実際のターン数と異なる場合でも、これが誤って使用されることを確実に回避することができ、正確な絶対舵角の算出を行うことができる。
【0090】
次に、本発明の第4の実施形態を図18及び図19に基づいて説明する。
この第4の実施形態では、前述した第2の実施形態において、初期ターン数確定処理で、前回走行終了時の最終絶対舵角を使用することにより、初期ターン数の確定をより早く行うようにしてものである。
すなわち、第4の実施形態では、図18に示すように、前述した第2の実施形態において、不揮発性メモリ24に前回走行終了時の最終絶対舵角θeを記憶するように構成され、絶対舵角演算部26でイグニッションスイッチをオン状態としたときに、最終絶対舵角θeを読込んで、初期ターン数確定処理を行うことを除いては前述した図10と同様の構成を有する。
【0091】
そして、絶対舵角演算部26で前述した第3の実施形態における図16に示す絶対舵角記憶処理が実行されると共に、初期ターン数確定処理が図19に示すように、変更されている。
この初期ターン数確定処理では、図19に示すように、先ず、ステップS61で、不揮発性メモリ24に記憶されている前回走行時の最終絶対舵角θe及び中立点検出値θd0を読込み、次いでステップS62に移行して、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θdを読込み、次いでステップS63に移行して、前記(7)式の条件を満たすにターン数nを算出し、次いでステップS64に移行して、カウント数Cntを“1”に設定してから前記ステップS31に移行すると共に、ステップS34の処理が舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θdのみを読込むように変更され、さらにステップS44の処理における設定値Δθerrorの値が前述した第1及び第2の実施形態に比較して大きな値に設定されていることを除いては前述した第1の実施形態における図13と同様の処理を行ない、図13との対応処理には同一ステップ番号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0092】
この第4の実施形態においても、前述した第3の実施形態と同様に、前回走行時の最終絶対舵角θeを不揮発性メモリ24に記憶しておき、イグニッションスイッチ12がオフ状態からオン状態に反転したときに、不揮発性メモリ24から最終絶対舵角θe及び中立点検出値θd0を読込むと共に、舵角センサ18で検出した舵角センサ出力値θd(n)を読込むことにより、これら最終絶対舵角θe、中立点検出値θd0及び舵角センサ出力値θd(n)に基づいて前記(8)式の条件を満足するターン数nを算出するので、前述した第2の実施形態に対して前述した第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0093】
また、上記第1〜第3の実施形態においては、舵角センサ18が図2に示すようにセンサホイール18cに設けた着磁部18d及び18eと固定部に設けたGMR素子を有する磁気検出器18g及び舵角演算部18hとで構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、着磁部18d及び18eを固定部に配設し、磁気検出器18gをセンサホイール18cに配設するようにしてもよい。
【0094】
また、ステアリングシャフト3に配設した平歯車18a及びセンサホイール18cの歯部18bに代えて傘歯車形式、ハスバ歯車形式等の任意の歯車形式を適用することができる他、歯付きプーリと無端チェーンとで構成することもでき、要はステアリングシャフト3の回転を1対1でセンサホイール18cに伝達することができればよいものである。
さらに、舵角センサ18としては、図20に示すように、ウォームホイール7cと並列に配設した外周面に分解能に応じて設定される所定歯数の歯部18iが形成されたセンサホイール18jと、このセンサホイール18jの歯部18iに対向してギヤハウジング7aに固定された磁気検出器18kとで構成し、磁気検出器18kをセンサホイール18jの歯部18iが到来する毎に90度位相がずれた2つのパルス信号P1及びP2を出力するように構成し、これらパルス信号P1及びP2をパルス弁別回路18mに供給されて回転方向信号DRとパルス信号Pとを形成し、これら回転方向信号DR及びパルス信号Pをプリセットアップダウンカウンタ18nにアップ/ダウン信号及びカウント信号として供給することにより、このアップダウンカウンタ18nから図4に示すステアリングホイール2の1回転で0°から360°の1周期を表す舵角センサ出力値θd(n)を出力するようにしてもよく、舵角センサとしては任意の構成のセンサを適用することができる。
【0095】
さらに、上記第1〜第3の実施形態においては、絶対舵角演算部26で検出した絶対舵角θをハンドル戻し制御部28で使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の絶対舵角θを必要とする制御装置にCAN等のネットワークを使用して送信するようにしてもよい。
さらにまた、上記第1〜第3の実施形態においては、図8に示すように舵角センサ出力値θd(n)の変化量が大きいときにターン数nを移行させるようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、舵角センサ出力値θd(n)を微分して得られる舵角速度が所定閾値より大きいときに舵角範囲即ちターン数nを変更するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す全体構成図である。
【図2】減速機及び舵角センサを示す断面図である。
【図3】磁気検出器の出力信号を示す波形図である。
【図4】舵角センサから出力される舵角センサ出力値を示す特性線図である。
【図5】第1の実施形態における制御装置の具体的構成を示すブロック図である。
【図6】絶対舵角演算部で実行する初期ターン数確定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】絶対舵角演算部で実行する絶対舵角演算処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】ターン数の移行状態の説明に供する説明図である。
【図9】ハンドル戻し制御部の具体的構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態を示す制御装置のブロック図である。
【図11】セルフアライメントトルクの説明に供する模式図である。
【図12】絶対舵角演算部の具体的構成を示すブロック図である。
【図13】絶対舵角演算部で実行する初期ターン数確定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】推定舵角算出マップを示す特性線図である。
【図15】本発明の第3の実施形態を示すブロック図である。
【図16】第3の実施形態における絶対舵角記憶処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図17】第3の実施形態における初期ターン数確定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第4の実施形態を示すブロック図である。
【図19】第4の実施形態の初期ターン数確定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図20】舵角センサの他の例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0097】
1…操舵装置、2…ステアリングホイール、3…ステアリングシャフト、7…減速機構、8…電動モータ、14…制御装置、16…操舵トルクセンサ、17…車速センサ、18…舵角センサ、18a…平歯車、18c…センサホイール、18d,18e…着磁部、18g…磁気検出器、18h…舵角演算部、19…モータ電流検出回路、20A,20B…GMRブリッジ回路、21…電流指令値演算部、22…電流フィードバック制御部、23…モータ駆動回路、24…不揮発性メモリ、25FL〜25RR…車輪速センサ、26…絶対舵角演算部、27…微分回路、28…ハンドル戻し制御部、29…加算器、40…セルフアライニングトルク推定部、41…エンコーダ、42…モータ角速度検出部、43…微分回路、45…ターン数推定部、46…ターン数移行判定部、47…舵角演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置であって、
前記操舵装置の回転に連動して回転するセンサホイールと、GMR素子で構成されるブリッジ回路を有する磁気検出器と、該磁気検出器の回りに配設された着磁部と、前記磁気検出器から出力される検出信号に基づいて絶対舵角を演算する舵角演算部とを備え、前記センサホイールに前記磁気検出器及び着磁部の何れか一方を装着すると共に、他方を固定部に装着し、前記磁気検出器は前記操舵装置の1回転を1周期とする検出信号を出力するように構成されていることを特徴とする絶対舵角検出装置。
【請求項2】
前記センサホイールは前記操舵装置と該操舵装置に対して操舵補助力を発生する電動モータとの間に介挿された減速機構に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項3】
車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置であって、
前記操舵装置の1回転を1周期として舵角を検出する舵角検出部と、舵角中立点での前記舵角検出部で検出した中立点位置を記憶する中立点記憶部と、全舵角範囲を前記中立点記憶部に記憶された中立点位置を含む1周期分の中立舵角範囲と、該中立舵角範囲の両側に形成した複数の左右舵角範囲とに分割し、現在の舵角が中立舵角範囲及び左右舵角範囲の何れの舵角範囲に属するかを推定する舵角範囲推定部と、該舵角範囲推定部で推定した舵角範囲と前記舵角検出部で検出した舵角と前記中立点記憶部に記憶された中立点位置とに基づいて絶対舵角を演算する絶対舵角演算部とを備えたことを特徴とする絶対舵角検出装置。
【請求項4】
前記中立点記憶部は不揮発性メモリで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項5】
前記舵角範囲推定部は、前記舵角検出部で検出した舵角の変化量が所定閾値以上であるときに舵角範囲を変更する舵角範囲移行制御部を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項6】
前記舵角範囲推定部は、前記舵角検出部の出力変化量を算出し、その変化量が所定閾値以上であるときに舵角範囲を変更する舵角範囲移行制御部を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項7】
車両の車輪速を検出する車輪速検出部を有し、前記舵角範囲推定部は、前記車輪速検出部で検出した車輪速に基づいて精度の粗い絶対舵角を推定する舵角推定部を有し、該舵角推定部で推定した舵角に基づいて現在属する舵角範囲を推定するように構成されていることを特徴とする請求項3乃至6の何れか1項に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項8】
前記舵角推定部は、従動輪側の左右車輪速に基づいて第1の推定舵角を算出する第1の舵角推定部と、駆動輪側の左右車輪速に基づいて第2の推定舵角を算出する第2の舵角推定部と、前記第1の舵角推定部及び前記第2の舵角推定部で算出した推定舵角の偏差が所定値未満であるときに前記第1の舵角推定部で算出した第1の推定舵角を推定舵角として決定する推定舵角決定部とを備えていることを特徴とする請求項7に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項9】
前記舵角推定部は、車両の車速を検出する車速検出部と、車両のセルフアライニングトルクを検出するセルフアライニングトルク推定部とを有し、前記車速検出部で検出した車速と前記セルフアライニングトルク推定部で検出したセルフアライニングトルクとに基づいて推定舵角を推定するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項10】
前記舵角推定部は、セルフアライニングトルクをもとに、車速をパラメータとしてセルフアライニングトルクから推定舵角を算出する推定舵角算出マップを参照して推定舵角を算出するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項11】
前記舵角範囲推定部は、前回走行時の最終絶対舵角を記憶する前回最終舵角記憶部と、該前回最終舵角記憶部に記憶された最終絶対舵角に基づいて舵角範囲を算出する舵角範囲算出部と、該舵角範囲算出部で算出した舵角範囲、前記舵角検出部で検出した舵角及び前記中立点記憶部に記憶された中立点位置に基づいて絶対舵角を推定する絶対舵角推定部とを備え、前記絶対舵角推定部で推定した絶対舵角と前記舵角推定部で推定した絶対舵角との偏差が所定値以内であるときに前記舵角範囲算出部で算出した舵角範囲を確定するように構成されていることを特徴とする請求項7乃至10の何れか1つに記載の絶対舵角検出装置。
【請求項1】
車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置であって、
前記操舵装置の回転に連動して回転するセンサホイールと、GMR素子で構成されるブリッジ回路を有する磁気検出器と、該磁気検出器の回りに配設された着磁部と、前記磁気検出器から出力される検出信号に基づいて絶対舵角を演算する舵角演算部とを備え、前記センサホイールに前記磁気検出器及び着磁部の何れか一方を装着すると共に、他方を固定部に装着し、前記磁気検出器は前記操舵装置の1回転を1周期とする検出信号を出力するように構成されていることを特徴とする絶対舵角検出装置。
【請求項2】
前記センサホイールは前記操舵装置と該操舵装置に対して操舵補助力を発生する電動モータとの間に介挿された減速機構に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項3】
車両の操舵装置の絶対舵角を検出する絶対舵角検出装置であって、
前記操舵装置の1回転を1周期として舵角を検出する舵角検出部と、舵角中立点での前記舵角検出部で検出した中立点位置を記憶する中立点記憶部と、全舵角範囲を前記中立点記憶部に記憶された中立点位置を含む1周期分の中立舵角範囲と、該中立舵角範囲の両側に形成した複数の左右舵角範囲とに分割し、現在の舵角が中立舵角範囲及び左右舵角範囲の何れの舵角範囲に属するかを推定する舵角範囲推定部と、該舵角範囲推定部で推定した舵角範囲と前記舵角検出部で検出した舵角と前記中立点記憶部に記憶された中立点位置とに基づいて絶対舵角を演算する絶対舵角演算部とを備えたことを特徴とする絶対舵角検出装置。
【請求項4】
前記中立点記憶部は不揮発性メモリで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項5】
前記舵角範囲推定部は、前記舵角検出部で検出した舵角の変化量が所定閾値以上であるときに舵角範囲を変更する舵角範囲移行制御部を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項6】
前記舵角範囲推定部は、前記舵角検出部の出力変化量を算出し、その変化量が所定閾値以上であるときに舵角範囲を変更する舵角範囲移行制御部を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項7】
車両の車輪速を検出する車輪速検出部を有し、前記舵角範囲推定部は、前記車輪速検出部で検出した車輪速に基づいて精度の粗い絶対舵角を推定する舵角推定部を有し、該舵角推定部で推定した舵角に基づいて現在属する舵角範囲を推定するように構成されていることを特徴とする請求項3乃至6の何れか1項に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項8】
前記舵角推定部は、従動輪側の左右車輪速に基づいて第1の推定舵角を算出する第1の舵角推定部と、駆動輪側の左右車輪速に基づいて第2の推定舵角を算出する第2の舵角推定部と、前記第1の舵角推定部及び前記第2の舵角推定部で算出した推定舵角の偏差が所定値未満であるときに前記第1の舵角推定部で算出した第1の推定舵角を推定舵角として決定する推定舵角決定部とを備えていることを特徴とする請求項7に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項9】
前記舵角推定部は、車両の車速を検出する車速検出部と、車両のセルフアライニングトルクを検出するセルフアライニングトルク推定部とを有し、前記車速検出部で検出した車速と前記セルフアライニングトルク推定部で検出したセルフアライニングトルクとに基づいて推定舵角を推定するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項10】
前記舵角推定部は、セルフアライニングトルクをもとに、車速をパラメータとしてセルフアライニングトルクから推定舵角を算出する推定舵角算出マップを参照して推定舵角を算出するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の絶対舵角検出装置。
【請求項11】
前記舵角範囲推定部は、前回走行時の最終絶対舵角を記憶する前回最終舵角記憶部と、該前回最終舵角記憶部に記憶された最終絶対舵角に基づいて舵角範囲を算出する舵角範囲算出部と、該舵角範囲算出部で算出した舵角範囲、前記舵角検出部で検出した舵角及び前記中立点記憶部に記憶された中立点位置に基づいて絶対舵角を推定する絶対舵角推定部とを備え、前記絶対舵角推定部で推定した絶対舵角と前記舵角推定部で推定した絶対舵角との偏差が所定値以内であるときに前記舵角範囲算出部で算出した舵角範囲を確定するように構成されていることを特徴とする請求項7乃至10の何れか1つに記載の絶対舵角検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−151762(P2008−151762A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103443(P2007−103443)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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