説明

絶縁チューブおよび被覆電線の接続方法

【課題】 コアの除去に伴う廃棄物が発生せず、被覆電線の接続部の絶縁被覆作業に優れる絶縁チューブおよびこれを用いた被覆電線の接続方法を提供する。
【解決手段】 絶縁チューブ1は、主に、樹脂管体3、筒状弾性体5等から構成される。樹脂管体3は、絶縁性の筒状部材である。筒状弾性体5は、筒状の弾性部材である。筒状弾性体5は、管体3の両端部近傍の内面に配置される。筒状弾性体5は、自己収縮が可能な弾性部材であり、絶縁性、耐候性、防水性に優れることが望ましい。筒状弾性体5の硬度としては、JIS K 6253に規定されたタイプAで3〜20であることが望ましい。硬度3未満では、使用時における必要な機械的強度や止水性を確保することができず、また、20を超えると、被覆電線の挿通作業が困難となるためである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電力ケーブルの接続部に用いられる絶縁チューブ、およびこれを用いた被覆電線の接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブル等の接続方法の1つとして常温収縮チューブを用いる方式がある。常温収縮チューブはインナーコアの外周に拡径された状態で被せられ、ケーブルをコアに挿通した状態で、当該コアを引き抜くことで、常温収縮チューブの自己収縮によってケーブルに密着する。
【0003】
このような常温収縮チューブとしては、例えば、インナーコアに引き出しフィルムを設けておき、使用時にはこの引き出しフィルムによってインナーコアを引き抜き、外周の常温収縮チューブの自己収縮によって被覆電線の接続部に密着させる常温収縮チューブがある(特許文献1)。
【0004】
また、特許文献1における従来方法として、スパイラル状の切れ目を有するインナーコアを用い、常温収縮チューブを被覆電線に被せた後、このスパイラル状の切れ目の端部の引き出し部を外方に引き出すことで、インナーコア自体がスパイラル状に解体され、常温収縮チューブの自己収縮により被覆電線に密着させることができる旨が記載されている。
【0005】
また、同様の方法として、補強筒の両端部に切れ目を設け、補強筒の外周に拡径された状態で設けられた常温収縮チューブを被覆電線に被せた後、端部の切れ目を外方に引っ張ることで、切れ目部が紐状に除去され、これにより、切れ目部分に位置する常温収縮チューブが被覆電線に密着可能なケーブル接続用収縮チューブがある(非特許文献1)。
【0006】
さらに、インナーコアのない絶縁被覆チューブもある(特許文献2)。これは、ケーブル(または電線など)の接続部を被覆する被覆部材と、被覆部材の端部に環状突起部を備えた被覆チューブである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−218267号公報
【特許文献2】特開平6−140083号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】実開平7−23947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1、非特許文献1いずれの方法でも、被覆電線の接続部に常温収縮チューブを配置した後、何らかの方法でインナーコアを除去する必要がある。このため、作業時に除去後のコアが廃棄物となるという問題がある。また、輸送時や使用前において、誤って引き抜き部が引き抜かれてしまうと、もはや当該常温収縮チューブの使用ができなくなるという問題がある。さらに、引き抜き時に引き抜き部が破断等すると、インナーコアの除去が極めて困難となる。また、インナーコアの引き抜きには大きな力が必要となり、作業性が必ずしも良いものではないという問題がある。
【0010】
また、常温収縮チューブは、特に低温時において収縮性能が低下し、所望の収縮ができない場合がある。さらに、常温収縮チューブは、片側のコアの引き抜き時に位置が動く恐れがあり、接続部を覆いきれず、絶縁収縮チューブの位置決め不良となる恐れがある。
【0011】
さらに、特許文献2のようなチューブは1本のチューブ状成形体であるため、実際の施工時には、まず片方のケーブル(または電線)にチューブを通しておき、ケーブルの接続後にその接続部を被覆するようにチューブの位置を戻すという作業が必要である。しかし、通常、ケーブルには巻き癖がある。ケーブルをチューブに挿入する際、巻き癖がきれいに直っていないと、入り口側は比較的容易に通せても、出口側ではケーブルが環状突起部にぶつかり通線がうまくいかないという問題がある。そして、環状突起部は、被覆部の水密性を保つために内径が電線の径より小さく設計されているため、通線作業には時間がかかり、作業性が良くなかった。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、コアの除去に伴う廃棄物が発生せず、被覆電線の接続部の絶縁被覆作業に優れる絶縁チューブおよびこれを用いた被覆電線の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達するために第1の発明は、絶縁体である樹脂管体と、前記樹脂管体の両端部近傍の内面に設けられる筒状弾性体と、を具備するケーブル接続用の絶縁チューブであって、前記筒状弾性体の硬度が、JIS K 6253に規定されるタイプAで3〜20であることを特徴とする絶縁チューブである。
【0014】
前記絶縁チューブの両端部の前記筒状弾性体の間において、前記樹脂管体が分割および接続可能な接続部を有してもよい。この場合、前記樹脂管体の接続部には、互いに接続可能な接続構造が設けられることが望ましい。
【0015】
前記樹脂管体の接続部にはシール部材が設けられ、前記接続部で前記樹脂管体同士を接続した状態で、前記接続部の止水性を確保可能であってもよい。前記絶縁チューブの長手方向に対する前記筒状弾性体の縁部が、長手方向の断面においてテーパ形状となり、前記絶縁チューブにケーブルを挿通する際のガイドとして機能させてもよい。
【0016】
前記樹脂管体と前記筒状弾性体とが一体で成形されてもよい。記筒状弾性体は、シリコーンゴム、エチレンープロピレンージエンゴム、熱可塑性エラストマーのいずれかであってもよい。
【0017】
第1の発明によれば、樹脂管体の両端部の内面にJIS K 6253に規定されるタイプAで3〜20の硬度の筒状弾性体が設けられるため、被覆電線への挿通性にも優れる。また、当該筒状弾性体が内部に挿通される被覆電線に対して密着するため、防水性を確保することができる。
【0018】
特に、絶縁チューブが分割および接続可能に二分割されていれば、接続対象となる被覆電線のそれぞれの端部に分割された絶縁チューブ(樹脂管体)をそれぞれ挿通すればよく、作業性に優れる。この際、被覆電線を片側ずつ通すため、あらかじめ電線のクセを直して直線形状にしておく必要が無い。また、分割された絶縁チューブが接続構造で接続可能であれば、被覆電線接続後の絶縁被覆作業が容易である。
【0019】
特に接続構造にシール部が設けられることで、確実に被覆電線接続部の絶縁および止水を確保することができる。また、筒状弾性体の縁部が断面でテーパ形状となることで、被覆電線を絶縁チューブに挿通する際のガイドとして機能し、被覆電線の挿通作業性に優れる。
【0020】
被覆電線の接続方法であって、絶縁体である樹脂管体と、前記樹脂管体の両端部近傍の内面に設けられる筒状弾性体とを具備し、前記筒状弾性体の硬度が、JIS K 6253に規定されるタイプAで3〜20であり、前記樹脂管体の中間部において、前記樹脂管体が分割および接続可能である絶縁チューブを用い、接続対象のそれぞれの被覆電線に、分割されたそれぞれの樹脂管体を挿通し、前記被覆電線を接続後、分割されたそれぞれの樹脂管体を前記被覆電線の接続部まで移動し、前記樹脂管体の接続部に対して、止水構造を形成することを特徴とする被覆電線の接続方法である。
【0021】
前記樹脂管体の接続部には、互いに接続可能な接続構造が設けられ、前記接続構造にはシール部材が設けられており、前記接続構造で前記樹脂管体同士を接続した状態で、前記接続構造の止水性を確保することで、前記止水構造を形成してもよい。
【0022】
第2の発明によれば、作業性に優れる被覆電線接続方法を得ることができる。また、被覆電線の接続部における絶縁および止水性を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、コアの除去に伴う廃棄物が発生せず、被覆電線の接続部の絶縁被覆作業に優れる絶縁チューブおよびこれを用いた被覆電線の接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】絶縁チューブ1を示す図で、(a)は正面断面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図。
【図2】テーパ部の他の形態を示す図。
【図3】絶縁チューブ1と被覆電線7の形状を示す図。
【図4】絶縁チューブ1を用いた被覆電線の接続工程を示す図。
【図5】(a)は絶縁チューブ10を示す図、(b)は絶縁チューブ10aを示す図。
【図6】絶縁チューブ10を用いた被覆電線の接続工程を示す図。
【図7】絶縁チューブ20を示す図。
【図8】絶縁チューブ20aを示す図。
【図9】絶縁チューブ30、40を示す図。
【図10】測定装置50を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、絶縁チューブ1を示す図であり、図1(a)は絶縁チューブ1の正面断面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図、図1(c)は図1(a)のB−B線断面図である。絶縁チューブ1は、主に、樹脂管体3、筒状弾性体5等から構成される。
【0026】
樹脂管体3は、絶縁性の筒状部材である。樹脂管体3はある程度の強度を有し、例えばポリエチレン、ポリプロピレンまたは塩化ビニル等で構成されればよいが、ゴムやエラストマーであってもよい。なお、後述する筒状弾性体5との一体成型を行う場合に、耐熱性を考慮すると、ポリプロピレンが望ましい。
【0027】
筒状弾性体5は、筒状の弾性部材である。筒状弾性体5は、管体3の両端部近傍の内面に配置される。筒状弾性体5は、自己収縮が可能な弾性部材であり、絶縁性、耐候性、防水性に優れることが望ましい。筒状弾性体5は、ベースポリマーとして、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、熱可塑性エラストマーのいずれかであることが望ましい。
【0028】
また、耐候性を考慮して、ベースポリマーに対して例えばカーボンブラックを0.5重量%〜3.0重量%の範囲で添加してもよい。加える量が0.5%未満であると十分な効果が得られず、3.0%を超えると効果が飽和する。従って、カーボンブラックの添加量は上記範囲が好ましい。
【0029】
また、筒状弾性体5の硬度としては、JIS K 6253に規定されたタイプAで3〜20であることが望ましい。硬度3未満では、使用時における必要な機械的強度や止水性を確保することができず、また、硬度20を超えると、被覆電線の挿通作業が困難となるためである。より好適な強度、作業性等を得るために、さらに望ましくは、上記硬度が5〜10の範囲である。
【0030】
筒状弾性体5の縁部(絶縁チューブ1の長手方向におけるそれぞれの内縁部)には、筒状弾性体5の内径が端部に行くにつれて拡径されるようにテーパ部5aが形成される。なお、図1では、テーパ部5aのテーパが線形である例を示すが、図2に示すように、テーパ部5aを曲線としても良い。以下図示するテーパ部については、線形である例を示す。
【0031】
また、筒状弾性体5は、止水性・防水性の観点から樹脂管体3に一体成型されることが望ましい。すなわち、筒状弾性体5と樹脂管体3とは融着することが望ましい。また、図示したように、筒状弾性体5が設けられる範囲のみ、樹脂管体の内径を拡径してもよい。
【0032】
図3は、筒状弾性体5と被覆電線7の形状(径)の関係を示す図である。図3(a)に示すように、筒状弾性体5の内径をC、テーパ部5aの最外径をBとし、当該絶縁チューブ1に適用される被覆電線7の被覆部における外径をAとする。本発明では、被覆電線7の外径Aが、テーパ部5aの最外径Bよりも小さく、筒状弾性体5の内径Cよりも大きい。
【0033】
したがって、絶縁チューブ1に被覆電線7を挿通使用とすると、図3(b)に示すように、被覆電線7の被覆部の縁部がテーパ部5aと接触する。したがって、テーパ部5aに押し当てられた被覆電線7は、テーパ形状によって筒状弾性体5の筒内にガイドされて挿通される。なお、筒状弾性体5は、被覆電線7の挿通に伴い変形し、筒状弾性体5の内径が押し広げられながら被覆電線7が挿通される。
【0034】
次に、絶縁チューブ1を用いた、被覆電線の接続方法を説明する。図4は、被覆電線7a、7bを接続する工程を示す図である。まず、図4(a)に示すように、絶縁チューブ1内に被覆電線7aを挿通する(図中矢印D方向)。この際、前述の通り、筒状弾性体5は被覆電線7aにより押し広げられ、筒状弾性体5の内面と被覆電線7aの外面とが接触しながら、被覆電線7aが絶縁チューブ1に挿通される。なお、絶縁チューブ1の一方の端部から導出された被覆電線7aの端部は、あらかじめ所定範囲の被覆部が剥離され、内部の導体を露出しておく。
【0035】
次に、図4(b)に示すように、被覆電線7aの端部を被覆電線7bと接続する。被覆電線7bも被覆電線7aと同様に、あらかじめ所定範囲の被覆部が剥離され、導体部が露出されている。被覆電線7a、7bの導体部同士を突き合わせ(図中矢印E)、金属性の接続部材9等を用いて電気的に被覆電線7a、7bが接続される。
【0036】
次に、図4(c)に示すように、絶縁チューブ1を被覆電線7b方向に移動させ(図中矢印F方向)、被覆電線7a、7bの接続部(接続部材9)近傍が、絶縁チューブ1の略中央となるように配置する。以上により、被覆電線7a、7bの接続が完了する。なお、この絶縁チューブ1を用いた方法は被覆電線7aに巻き癖がない場合に適用できる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の絶縁チューブ1によれば、被覆電線の接続作業において、従来の常温収縮チューブのように、インナーコアを除去する必要がない。このため、不要な廃棄物が発生することがない。また、コアを引き抜く必要がないため作業性が良い。また、コア引き抜き時の位置決め不良等の恐れもない。
【0038】
また、絶縁チューブ1へ被覆電線を挿通する際に、筒状弾性体5にテーパ部5aが形成されるため、被覆電線の挿通性が良い。また、筒状弾性体5の硬度が最適化されるため、被覆電線の挿通時に過剰な力を要せず、また、挿通後は被覆電線の外面と密着して止水性を確保することができる。また、筒状弾性体5は、樹脂管体の両端部にのみ形成されるため、絶縁チューブ1を被覆電線に対して移動させる際にも、過剰な摩擦が発生せず作業性に優れる。
【0039】
次に、第2の実施の形態にかかる絶縁チューブ10について説明する。図5(a)は、絶縁チューブ10を示す正面断面図である。なお、以下の実施形態において、図1に示す絶縁チューブ1と同様の機能を奏する構成については、図1と同様の符号を付し、重複した説明を省略する。絶縁チューブ10は、絶縁チューブ1と略同様の構成であるが、樹脂管体が分割および接続可能な接続部4を有する点で異なる。
【0040】
図5(a)に示すように、接続部4で二つに分割された状態の樹脂管体3a、3bのそれぞれの端部近傍の内面には、筒状弾性体5が形成される。すなわち、図5(a)に示す絶縁チューブ10は、絶縁チューブ1の両端部近傍の筒状弾性体5同士の間(筒状弾性体5の無い部分)である接続部4で二つに分割された態様である。なお、筒状弾性体5の形状等は、絶縁チューブ1と同様である。
また、図5(b)に示すように、接続部4にシール部材12が設けられた絶縁チューブ10aを用いてもよい。止水構造であるシール部材12としては、例えば接続部4の端面に形成された溝に、Oリングを設ければよい。また、樹脂管体3a、3bの少なくとも一方の端面に、筒状弾性体5と同材質のシール部材を一体化して形成してもよい。
【0041】
次に、絶縁チューブ10を用いた、被覆電線の接続方法を説明する。図6は、被覆電線7a、7bを接続する工程を示す図である。まず、図6(a)に示すように、接続されるそれぞれの被覆電線7a、7bを、絶縁チューブ10のそれぞれの樹脂管体3a、3bに挿通する。この際、それぞれの樹脂管体3a、3bの対向方向(接続部方向)とは逆側に筒状弾性体5が位置するように被覆電線7a、7bが挿通される。すなわち、接続部4が対向するように配置される。
【0042】
この際、筒状弾性体5は被覆電線7a、7bにより押し広げられ、筒状弾性体5の内面と被覆電線7a、7bの外面とが接触しながら、被覆電線7a、7bがそれぞれ樹脂管体3a、3bに挿通される。なお、被覆電線7a、7bの接続部側の端部は、あらかじめ所定範囲の被覆部が剥離され、内部の導体を露出しておく。この状態で、被覆電線7aと被覆電線7bとを接続部材9で接続する。
【0043】
次に、図6(b)に示すように、樹脂管体3a、3bを、被覆電線7a、7bの接続部方向に移動させる(図中矢印G方向)。樹脂管体3a、3bの接続部4同士を突き合わせることで、被覆電線7a、7bの接続部が樹脂管体3a、3b(絶縁チューブ10)によって被覆される。なお、絶縁チューブ10aを用いれば、樹脂管体3a、3bを突き合わせると、シール部材12によって接続部の止水性を確保することができる。
【0044】
さらに、図6(c)に示すように、樹脂管体3a、3bの突き当て部(接続部4)を覆うように、絶縁テープまたは絶縁シートなどの絶縁防水部材11を巻き付けて、樹脂管体3a、3bの接続部の隙間を埋め、止水構造を形成してもよい。以上により、被覆電線7a、7bの接続が完了する。
【0045】
第2の実施形態の絶縁チューブ10によれば、絶縁チューブ1と同様の効果を得ることができる。また、樹脂管体3a、3bが接続部4で分割可能であるため、被覆電線7a、7bに対する樹脂管体3a、3bの移動距離を短くすることができる。また、被覆電線7a、7bがそれぞれ樹脂管体3a、3b片側ずつ挿通されるため、あらかじめ被覆電線7a、7bのクセを直して直線形状にしておく必要が無い。
【0046】
次に、第3の実施の形態にかかる絶縁チューブ20について説明する。図7は、絶縁チューブ20を示す正面断面図であり、図7(a)が分離状態、図7(b)は接続状態を示す図である。絶縁チューブ20は、絶縁チューブ10と略同様の構成であるが、樹脂管体の接続部に接続構造が設けられる点で異なる。
【0047】
樹脂管体21aの筒状弾性体5とは逆側の端部近傍の内面には、一部が拡径される周方向に対する溝状の嵌合部23aが設けられる。一方、樹脂管体21bの筒状弾性体5とは逆側の端部近傍の外面には周方向に突起状の嵌合部23bが設けられる。接続構造である嵌合部23a、23bは互いに嵌合可能である。
【0048】
図7(b)に示すように、樹脂管体21bの端部(嵌合部23b側)を樹脂管体3aの端部(嵌合部23a側)に挿入することで、嵌合部23a、23bが嵌合し、樹脂管体21a、21bが接続される。すなわち、図6(b)のように、樹脂管体同士を突き合わせた際に、樹脂管体21a、21b同士が接続されるため、隙間が生じたりずれが生じたりすることがない。
【0049】
なお、図8に示す絶縁チューブ20aのように、互いの接続構造(嵌合部23a、23b)の少なくとも一方に、止水構造であるOリング等のシール部材25を設けてもよい。図8(b)に示すように、絶縁チューブ20aの樹脂管体21a、21bを接続すると、シール部材25によって接続部の止水性を確保することができる。なお、シール部材25としては、筒状弾性体5と同一の材料とし、筒状弾性体5と同様に樹脂管体に一体で成形してもよい。
【0050】
第3の実施形態の絶縁チューブ20(20a)によれば、絶縁チューブ1と同様の効果を得ることができる。また、分割された樹脂管体21a、21bが接続構造で接続されるため、接続作業後等において、樹脂管体の位置がずれることがない。また、シール部材25を形成しておけば、外周にシール部材を巻きつける必要もない。
【0051】
なお、分割された樹脂管体同士の接続構造は、図7、図8に示した例に限られない。例えば、図9(a)に示すように、内面に段差が形成されないように嵌合部33a、33bが形成される絶縁チューブ30を用いることもできる。前述した絶縁チューブ20では、接続部の外径が一定となるように嵌合部23a、23bが形成されるため、内部に段差が形成されたが、絶縁チューブ30のように、嵌合部33aの外径を拡径し、拡径部の内面に溝(嵌合部33a)を形成してもよい。
【0052】
また、樹脂管体の内外面に嵌合構造を形成するのではなく、図9(b)に示すように、樹脂管体同士の突き合わせ面に嵌合部43a、43bを形成した絶縁チューブ40を用いることもできる。すなわち、樹脂管体を二分割し、これらの接続部を形成することができれば、接続部の構造はいずれの構造であってもよい。また、図9に示す絶縁チューブ30、40に対しても、図8(b)に示すようなシール部材を設けてもよい。さらに、防水・止水の信頼性を確保するため、分割された樹脂管体同士のそれぞれの接続構造の外周に、絶縁防水部材11等を巻き付けても良い。
【実施例】
【0053】
本発明の絶縁チューブの防水性について確認を行った。図10は、防水性の確認を行うための測定装置50を示す図である。測定装置50は、水が溜められた水槽51内に、供試体53を配置可能である。供試体53は被覆電線57a、57bを図6に示す工程により絶縁チューブで接続したものであり、一方の側の被覆電線57aの端部(水中に位置する部位)には端末防水処理55が施される。他方の被覆電線57bの端部は水上に設けられた電源と接続される。さらに電源には、被覆電線で供試体53の外周面と接続され、被覆電線57bと供試体53表面との間に6kVの電圧を1分間付与し、絶縁破壊がないことを確認した。
【0054】
供試体としては、以下の供試体を用いた。
供試体1は、内径20mm、厚さ3mm、長さ75mmの二本のポリプロピレン製の樹脂管体に対し、それぞれ長さ30mm、肉厚7mmの筒状弾性体を端近傍に設けたものである。なお、筒状弾性体は、JIS K 6253に規定されたタイプAの硬度が10のスチレン系エラストマー製であり、長手方向の両縁部を正面断面視で3×3mmの二等辺三角形状に切欠いてテーパ部を形成した。また、筒状弾性体と樹脂管体とは射出成型により一体成型した。また、被覆電線としては、外径10mmの架橋ポリエチレン製の被覆電性を用いた。被覆電線を図6で示した方法で接続した。接続部の外周には絶縁テープで防水処理を施した。
【0055】
また、供試体2は、供試体1と略同様の構成であるが、筒状弾性体のJIS K 6253に規定されたタイプAの硬度が3のものを用いた。
【0056】
また、供試体3は、供試体1と略同様の構成であるが、筒状弾性体のJIS K 6253に規定されたタイプAの硬度が20のものを用いた。
【0057】
また、供試体4は、供試体1と略同様の構成であるが、筒状弾性体のJIS K 6253に規定されたタイプAの硬度が3であるエチレンプロピレンゴム製のものを用いた。
【0058】
また、供試体5は、供試体1と略同様の構成であるが、図8に示すように、シール部材(Φ1のゴム製Oリング)が設けられ、接続構造である嵌合部を有するものである。
【0059】
また、供試体6は、供試体1と略同様の構成であるが、筒状弾性体にテーパ部が形成されないものである。
【0060】
また、供試体7は、供試体1と同様の構成であるが、筒状弾性体のJIS K 6253に規定されたタイプAの硬度が30のものを用いた。
【0061】
また、供試体8は、供試体1と同様の構成であるが、筒状弾性体のJIS K 6253に規定されたタイプAの硬度が1のものを用いた。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
弾性体硬度は、JIS K 6253に規定されたタイプAの硬度を示した。電線挿入作業性は、極めて容易であったものを「◎」、容易であったものを「○」、多少困難であるが、挿入作業が行えたものを「△」とし、電線を挿入できなかったものを「×」とした。また、防水性は、前述の測定装置によって絶縁破壊が生じなかったものを合格とした。
【0064】
結果より、本発明にかかる供試体1は、電線挿通作業性に優れ、防水性にも問題がなかった。供試体2は、筒状弾性体の硬度が低いため、挿入作業性がさらに向上し、防水性は合格であった。供試体3は、筒状弾性体の硬度が高いため、やや挿入作業性に劣るが、挿入作業を行うことはでき、防水性も問題がなかった。供試体4は、筒状弾性体の材質を変えたが、硬度が同程度の供試体2と同様の結果であった。供試体5は、嵌合タイプであるが、挿入作業性、防水性とも供試体1と同様であった。供試体6は、テーパ部がないため、電線の挿入作業性は劣るが、挿入作業を行うことはでき、防水性も問題がなかった。
【0065】
これに対し、供試体7は、筒状弾性体の硬度が高すぎるため、電線を挿入することができなかった。このため、防水性試験を行うことができなかった。また、供試体8は、筒状弾性体の硬度が小さすぎるため、挿入作業性は優れるものの、防水性を確保することができなかった。
【0066】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと解される。
【符号の説明】
【0067】
1、10、10a、20、20a、30、40………絶縁チューブ
3、3a、3b、21a、21b、31a、31b、41a、41b………樹脂管体
4………接続部
5………筒状弾性体
5a………テーパ部
7、7a、7b………被覆電線
9………接続部材
11………絶縁防水部材
23a、23b、33a、33b、43a、43b………嵌合部
25………シール部材
50………測定装置
51………水槽
53………供試体
55………端末防水処理
57a、57b………被覆電線
59………電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体である樹脂管体と、
前記樹脂管体の両端部近傍の内面に設けられる筒状弾性体と、を具備するケーブル接続用の絶縁チューブであって、
前記筒状弾性体の硬度が、JIS K 6253に規定されるタイプAで3〜20であることを特徴とする絶縁チューブ。
【請求項2】
前記絶縁チューブの両端部の前記筒状弾性体の間において、前記樹脂管体が分割および接続可能な接続部を有することを特徴とする請求項1記載の絶縁チューブ。
【請求項3】
前記樹脂管体の接続部には、互いに接続可能な接続構造が設けられることを特徴とする請求項2記載の絶縁チューブ。
【請求項4】
前記樹脂管体の接続部にはシール部材が設けられ、前記接続部で前記樹脂管体同士を接続した状態で、前記接続部の止水性を確保可能であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の絶縁チューブ。
【請求項5】
前記絶縁チューブの長手方向に対する前記筒状弾性体の縁部が、長手方向の断面においてテーパ形状となることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の絶縁チューブ。
【請求項6】
前記樹脂管体と前記筒状弾性体とが一体で成形されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の絶縁チューブ。
【請求項7】
前記筒状弾性体は、シリコーンゴム、エチレンープロピレンージエンゴム、熱可塑性エラストマーのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の絶縁チューブ。
【請求項8】
被覆電線の接続方法であって、
絶縁体である樹脂管体と、前記樹脂管体の両端部近傍の内面に設けられる筒状弾性体とを具備し、前記筒状弾性体の硬度が、JIS K 6253に規定されるタイプAで3〜20であり、前記樹脂管体の中間部において、前記樹脂管体が分割および接続可能である絶縁チューブを用い、
接続対象のそれぞれの被覆電線に、分割されたそれぞれの樹脂管体を挿通し、
前記被覆電線を接続後、分割されたそれぞれの樹脂管体を前記被覆電線の接続部まで移動し、前記樹脂管体の接続部に対して、止水構造を形成することを特徴とする被覆電線の接続方法。
【請求項9】
前記樹脂管体の接続部には、互いに接続可能な接続構造が設けられ、前記接続構造にはシール部材が設けられており、前記接続構造で前記樹脂管体同士を接続した状態で、前記接続構造の止水性を確保することで、前記止水構造を形成することを特徴とする請求項8記載の被覆電線の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−210071(P2012−210071A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73910(P2011−73910)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】