説明

絶縁監視装置の搬送波伝送方式

【課題】 本発明は、自家用受電設備に設置する低圧電路を搬送波の情報伝達経路とし、搬送波として非正弦波交流を低圧電路に重畳して、ノイズの影響を受けないようにする絶縁監視装置の搬送波伝達方式に関する。
【解決手段】 自家用側の低圧電路のB種接地線5に、検出用CT6と搬送波重畳用CT7とを配置して、搬送波として低圧電路に重畳される交流電圧信号には、非正弦波交流電圧信号を重畳する方式を用いる。また、通報器20の搬送波受信部では、搬送波より低圧電路に発生する基本波および、各高調波の周波数成分を選択して受信する機能を持たせ、受信中の一つの周波数が受信不能となったときには、順次受信周波数を選択できるようにして、前記低圧電路のノイズに対する耐性を高め得るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自家用受電設備に設置する絶縁監視装置が、既設の低圧電路を搬送波の情報伝達路として用いる搬送波方式において、搬送波として非正弦波交流を低圧電路に重畳して、非正弦波交流により低圧電路に生じた基本波および各高調波成分を搬送波周波数成分として利用し、低圧電路のノイズが搬送波への影響を低減することを可能とした絶縁監視装置の搬送波伝達方式に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、供給変電所(配電用変電所)からの高圧配電線路に自家用受電設備を配置し、前記自家用受電設備の各需要部に対して、変圧器により低圧電流に変換して給電するような給電経路を設けている。一般の工業団地等においては、例えば、特開平7−27799号公報等に開示されているような、絶縁状態の常時監視手段を用いている。
前記従来例においては、自家用電気設備の低圧電路のB種接地線に設けた搬送波注入用変成器(CT)により、検出器は低圧電路に正弦波交流を搬送波として重畳し、通報器に向けて電路の絶縁状態の情報を伝達する方式を用いている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−27799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来例の漏電検知装置においては、図9に説明するように、低圧電路3に接続して設けるB種接地線5に、検出用CT6と搬送波重畳用CT7とを配置している。そして、それ等の2種類のCTを検出器10aの発振回路と入力回路に接続し、検出用CT6から入力された信号に基づいて、その検出された電路の絶縁レベルを、「正常」、「注意」及び「警戒」の信号であらわし、検出器10aの搬送波重畳用CT7から、正弦波交流の連続搬送波を低圧電路に重畳して、その情報を伝達するようにしている。そして、その送信情報に応じて周波数を変化させて送信することで、受信する通報器20aにおいては、その重畳された周波数の情報から、送信された情報の内容を判断するような方式(以下「多周波方式」という)が用いられている。
例えば、前記搬送波の周波数は、絶縁正常の場合には1477Hz、絶縁注意の場合には1336Hz、絶縁警戒の場合には1209Hzがそれぞれ選択されて、各周波数の信号として用いられている。
【0004】
ところが、前述したような絶縁監視方式を用いる場合に、近年では、給電線に接続される電気機器としては、インバータ等の半導体応用機器が増加していることから、電路には多くの種類のノイズが入り込むことが多くなっている。そして、前記ノイズが増加することが多くなっていることにより、電路の情報を検知する機器の性能には、次のような障害が発生していた。
【0005】
例えば、前記従来の検知手段を用いた場合に発生する障害としては、次に例示するようなことが認識されている。
a: 搬送波異常の発生:搬送波周波数に接近した周波数帯域で、電路ノイズの増大により、搬送波の伝達が不可能(以下「搬送波異常」と呼ぶ)となり、装置が機能喪失するという不都合な事態が発生する。
b: 誤報の発生:検知装置が周波数成分から伝達情報を判断する方式を用いているために、搬送波帯域内に混入するノイズにより誤報を発生し、保安要員に不必要な出動が要求される頻度が高くなる。
c: 多情報伝達が困難:保安管理上重要な重地絡、検出器操作等の伝達情報を付加する場合、送受信周波数を増加する必要がある。しかし、送受信周波数を増加すると電路ノイズの影響を受けやすくなるため、多情報の伝達は困難である。
【0006】
そこで、前述したような不都合な状態を回避しながら、搬送波を送信情報に応じて変調し伝送するために、種々な方法があるが、次に、その解決手段として用いられる振幅変調方式(以下「ASK方式」という)を例にして説明する。
前記変調方式を用いて、伝送する信号が乱れることを避けて、検知情報を搬送波を送信情報に応じて変調し伝送するために、次の図10のように、パターン化した断続波として発信する方式を用いることができる。この図10に示している断続した搬送波の場合に、各信号の継続時間は、
D信号(区切り信号):0,75秒、
S信号(短信号): 0,25秒、
L信号(長信号): 0,5秒、
O信号(無信号): 0,25秒、と設定しておき、各信号を前記各信号を所定のパターンにしたがって、図11に説明するように、ON、OFFを繰り返して発振するような信号伝達手段を用いている。
そして、送信する情報に応じて、前記図11に示すようなパターンで、情報フィールド内の断続情報を変えて送信し、受信側では情報フィールドの断続パターンから、送信情報を判断する方式を用いることがある。
【0007】
ところが、そのような搬送波を送信情報に応じて変調し、伝送する方式を用いる場合に、次のような、解決を要する問題が出る。
つまり、前記変調方式を用いる場合の問題点としては、搬送周波数に接近した周波数帯域で、電路ノイズが増大することにより、そのノイズにより搬送波の伝達が不可能となることがあり、装置の機能を良好に発揮できないという事例が増加している。
【0008】
本発明は、自家用受電設備に設置する絶縁監視装置が、既設の低圧電路を搬送波の情報伝達経路として用いる搬送波方式において、搬送波として非正弦波交流を低圧電路に重畳し、非正弦波交流により低圧電路に生じた基本波および各高調波成分を搬送波周波数成分として利用し、低圧電路のノイズか搬送波への影響を低減することを可能とした装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、自家用受電設備の低圧電路のB種接地線に、検出用CTと搬送波重畳用CTとを配置して、前記検出用CTにより検知された、前記低圧電路の絶縁の状態の情報を、搬送波重畳用CTから前記低圧電路に重畳した交流電圧信号を、低圧電路の絶縁状態に応じて変調した搬送波として、前記低圧電路を介して送信する機能を持たせた検出器と、
前記低圧電路に重畳された前記搬送波を受信して、警報を出力する機能を有する通報器と組み合わせて構成する絶縁監視装置に関する。
請求項1の発明は、前記検出器から前記搬送波として低圧電路に重畳される交流電圧信号には、非正弦波交流電圧信号を重畳する方式を用い、
前記通報器の搬送波受信部では、搬送波より低圧電路に発生する基本波および、各高調波の周波数成分を選択して受信する機能を持たせ、
何等かの理由により、受信中の一つの周波数が受信不能となったときには、順次受信周波数を選択して搬送波を受信し、前記低圧電路のノイズに対する耐性を高めることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、連続した非正弦波交流電圧を搬送波として用い、電路の絶縁状態に応じて前記搬送波の周波数を変化させて、情報を伝達する方式を用いる前記絶縁監視装置においては、
前記搬送波として用いる非正弦波交流電圧により、電路に発生する基本波および各高調波の周波数成分の中から選択し、前記通報器の搬送波受信部が2つ以上の周波数成分を受信した場合にのみ、搬送波による信号と判断することにより、受信した情報の正確性を確保可能としたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1に記載の前記通報器の搬送波受信部において、前記低圧電路から搬送波検出用コンデンサを通じて大地に流れる電流を、搬送波信号として検出することを特徴とする。
【0012】
本発明においては、従来の絶縁監視装置における搬送波を、正弦波交流搬送波により、低圧電路に発生した単一周波数成分のみを利用する従来方式とは異なり、搬送波により電路に生じる多数の周波数成分を利用する方式を用いている。したがって、1つの周波数の受信状態が悪化した場合、他の周波数を選択的に利用できるため、搬送波が正常に伝達できない状態は、飛躍的に減少する。
【0013】
また、従来方式においては、特に連続波方式において、誤報による余分な情報の処理が大きな問題となっていたが、電路に発生する搬送波の基本波成分、高調波成分の中から複数の周波数成分を受信できた場合のみを、搬送波による信号と判断する方式のため、誤報は飛躍的に減少する。
そして、本方式は従来方式と比較しても、受信回路規模の増加はほとんどなく、回路が複雑化しないという特徴を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図示する例にしたがって、本発明の装置の構成を説明する。図1に説明する回路図において、漏電を検知し、その情報を送信するための検出器10と通報器20は、自家用受電設備の低圧電路3に対して、信号搬送波を低圧電路に重畳するための搬送波重畳用CT7および、低圧電路の絶縁状態を検知するための検出用CT6を配置する。前記低圧電路3は、高圧電路1に対して変圧器2を介して設けられているもので、前記低圧電路3から需要側の各機器に対して、低圧の電力を給電することは、従来の一般的な給電設備と同様に構成される。
【0015】
前記低圧電路3に対しては、第2種接地線(B種接地線)5を接地極5aに接続しており、そのB種接地線5には、検出器10の検出用CT6と搬送波重畳用CT7とを各々配置し、検出器10の各回路に接続している。そして、前記検出用CT6から得られる低圧電路の絶縁に関する情報を検出器10で処理し、検知された低圧電路の絶縁に関する情報を、搬送波重畳用CT7を介して搬送波として低圧電路3に重畳し、低圧電路3に接続された通報器20に伝達する。前記通報器20において、その伝達された信号を処理して、ディスプレイ装置等に表示することや、出力回路から電話回線等を通して、遠隔地の情報収集センターに伝達させる等の、情報の処理を行う。
【0016】
前記検出器10においては、検出用CT6から得られた情報を基に、低圧電路絶縁検出回路11により低圧電路の絶縁状態を検知し、検知した結果をCPU12に伝達し、前記CPU12においては、あらかじめ設定されている情報処理プログラムにしたがって処理する。そして、その処理した結果の情報を、外部入出力回路15から外部入出力端子16を介して、外部に接続する任意の情報を受信する装置に向けて、その情報を送信する。
また、前記CPU12により処理された情報は、発振回路13を通して増幅器14に伝達し、搬送波重畳用CT7からB種接地線5を介して低圧電路3に向けて送信する。
【0017】
前記通報器20に設ける搬送波検出回路21には、前記低圧電路3を介して検出器10から伝達される搬送波が入力され、搬送波受信回路22で処理された情報は、CPU23により処理されて、ディスプレイ24に表示する情報として出力される。また、前記CPU23で処理された情報は、データ送受信回路25を通して、接続端子26から電話線等を経由して外部の受信設備に向けて、情報を伝達する。
【0018】
前記図1のブロック図に説明される各処理回路と、その回路を設けた装置による情報処理の特徴を説明するに、前記検出器10の低圧電路絶縁検出回路11では、検出用CT6で検出した信号に基づいて、低圧電路の絶縁状態を検出する動作を行い、CPU12にその情報を伝達する。前記CPU12においては、低圧電路3の絶縁状態に応じて、搬送波の発信周波数または、断続パターンの制御と、検出器全体の制御を行う。そして、必要に応じて、外部入出力回路15を介して、外部での温度や、電気設備に影響を及ぼす恐れのある情報、警報等を入力し、それ等の情報を総合して、CPU12を介して発振回路13に制御信号を伝達する。
【0019】
前記CPU12で処理された情報は、発振回路13を介して、増幅器14に向けての情報としての処理を行う。前記発振回路13においては、2種類の信号出力の方式を用いることができる。そして、前記CPU12で処理した情報は、増幅器14からB種接地線5を通して、低圧電路3から通報器20に向けて発信する。
前記発振回路13においては処理した情報を、多周波方式と、変調方式(ASK方式)との2種類の信号のいずれかを用いて、出力することができる。
【0020】
例えば、次のような信号処理方式を、適宜採用することが可能である。
a:多周波方式:送出する情報の種類に応じ、CPUが発振周波数をコントロールする。b:変調方式(ASK方式):送出する情報の種類に応じ、CPUが搬送波の断続パターンをコントロールする。
以上の例に示す信号処理方式を選択し、絶縁監視装置に適用する。そして、前記情報が伝達される増幅器においては、発振回路から出力された信号を、電力増幅して搬送波重畳用CT7へ送出する作用を行う。
【0021】
前記低圧電路3を通して伝達される検出器10からの搬送波は、通報器20において、搬送波検出回路21に入力され、搬送波受信回路22で処理された情報が、CPU23に伝達される。
前記CPU23においては、搬送波受信状態の監視、受信情報の判別、受信周波数のコントロール、警報種別の判定および通報器全体を制御し、その処理した情報を、必要に応じて、ディスプレイ24に伝達する。そして、CPUから出力される信号に基づいて、装置の動作状態の判断や、解析された信号によって、表示灯の点灯等の処理を行って、オペレータに知らせる等の情報の処理等の動作を行う。また、データ送受信回路25に向けて、CPU23からの信号により、電話回路26を通じて、外部へ情報を送出することができる。
【0022】
前記通報器20における各回路の役割と、情報の処理の動作をさらに説明するに、
*搬送波検出回路21において、搬送波がコンデンサCを通して大地に流れる電流を、電流トランス等により検知する。
*電路に検出器10から印加される搬送波を受信し、多周波方式の場合に、その構成に基づいた信号処理を行うことにより、誤報等を防ぐ働きをする。
【0023】
搬送波の検出方法(多周波方式、変調方式共通)の説明:
従来方式においては、通報器が搬送波を検出する方法は、次の図2に示す例のように、搬送波により電路に生じた対地電圧、A点〜B点間の電圧を検出していた。
本方式では、前述したように、搬送波により生じる電圧は、高調波次数が高まるにつれて減少する性質があり、高調波次数が高まるにつれて受信信号が小さくなり、受信しにくくなるため、図2のように、搬送波検出用コンデンサを通じて大地に流れる搬送波信号電流を、電路に設けた地点Aから通報器20の搬送波検出部21により検出する。
この方式により、高調波次数が高まるにつれて、減少する電圧の影響を最小限に抑えることができる。
【0024】
次に、本装置における受信回路の他の構成の例を説明する。
* 受信回路の構成例:
(多周波方式の回路構成)
次の図3には、通過周波数可変型バンドパスフィルタ(以下「可変fo型BPF」という)を用いた、受信回路の構成を説明している。この回路図において、搬送波検出部から出力された搬送波を、ハイパスフィルタ(以下「HPF」という)31および、ローパスフィルタを(以下「LPF」という)32用い、不要な周波数帯域のノイズを減少させ、搬送波は可変Fo型BPF33に入力される。
前記可変Fo型BPF33により分離された搬送波は、A/D変換器34によりデジタル信号に変換され、CPU35に送ることにより、受信周波数を判別する。
この回路において、受信性能をより向上させたい場合には、前記可変Fo型BPF33に代えて、周波数判別能力の高いロックインアンプ等を使用する。
【0025】
次に、前記図3に示した回路の動作を説明する。
前記CPUは、あらかじめ定めている搬送波の周波数に応じて、搬送波の基本波および高調波の受信周波数を順次可変するように、前記可変Fo型BPFを制御する。例えば、基本波と第五高調波を受信した場合のように、2つ以上の周波数成分を受信した情報を、送信側からの搬送波信号であると、CPUが判断するように制御する。
そして、受信中の周波数が(何等かの理由により)受信不能となった場合には、順次受信周波数を変えて、受信できる周波数をサーチし、2つ以上の周波数成分が受信できるような動作を行う。
【0026】
*複数の可変Fo型BPF回路を用いた装置の構成例:
前記本発明の説明は、可変Fo型BPF回路を、1個用いた装置での動作について説明したが、常に複数の周波数を受信する装置として構成することにより、より性能の高い受信回路を構成することができる。
【0027】
変調方式の別の例の回路構成:
図4には、可変Fo型BPF回路を用いた受信回路の構成を説明している。この回路の例では、搬送波検出部から出力された搬送波を、HPFおよびLPFを通して、不要な周波数帯域のノイズを減少させ、搬送波は可変Fo型BPF33に入力される。
前記可変Fo型BPF33により分離された搬送波は、整流・平滑回路36により、搬送波周波数成分が除去されたパターン化された断続信号となり、さらに、断続信号をA/D変換器によりデジタル信号に変換され、CPU35に送ることにより、断続パターンを判別し、送信情報の種別を判断する。
【0028】
*前記図4の回路での信号処理の動作を説明すると、
CPUは、現在使用中の周波数で、受信不能となった場合に、可変Fo型BPF33に指令を与えて通過周波数を順次変化させ、正常に搬送波を受信できる周波数を選択する動作を行う。
例えば、基本波を正常受信しているうちに、電路ノイズにより基本波の受信が不能となった場合に、正常に断続パターンを受信できる第三高調波成分の周波数を、選択して使用する等の動作を行う。
【0029】
*搬送波周波数の選択機能:
断続信号による信号伝達は、狭い占有帯域での伝送が可能であるという、特徴を発揮する技術手段である。そこで、この特性を利用して、搬送波周波数を切り替える機能を持たせることにより、問題解決ができることとなる。
【0030】
*複数の可変Fo型BPF回路を用いた構成例:
前記本発明の説明は、可変Fo型BPF回路を、1個用いた装置での動作について説明したが、常に複数の周波数を受信する装置として構成することにより、より性能の高い受信回路を構成することができる。
【0031】
*従来方式の問題点を解決するための手段:従来の搬送波方式の問題点を解決するために、以下の手段を講ずることが良い。
:電路に重畳する搬送波の形態:電路に重畳する搬送波は、従来方式では正弦波交流電圧であったが、本方式では非正弦波交流を重畳する。
【0032】
*非正弦波交流を重畳した際に、電路に発生する電圧を説明するに、まず、
搬送波の基本波の各周波数をω、波高値をEの方形波とすると、電路に発生する電圧波形に含まれる高調波成分は、次の式で表されるように奇数高調波成分が発生し、高調波次数が高まるにつれて減少する。
V=4E/π(sinωt+sin3ωt/3+sin5ωt/5…+
………+sinNωt/N)
【0033】
*前記重畳電圧により、電路に発生する電圧の周波数分布:
前の式により、電路に発生する電圧の周波数分布は、基本波の実効値をE1、基本波の各周波数をωとすると、次の図5に示すようになり、搬送波の基本波である角周波数ωおよび角周波数3ω、5ω等の奇数次高調波成分の電圧が発生する。
【0034】
*多周波方式を用いた場合の情報伝達は、以下のような方法を用い得る。 例えば、
a: 搬送波として、非正弦波交流を重畳する。
b: 従来方式と同様に、送信情報に応じて、周波数を変化させる。
c: 受信側では、電路に発生した非正弦波交流による基本波および高調波成分の電圧を、図6のグラフに示すようにして検出する。
例えば、基本波と第五高調波を受信した場合のように、2つ以上の周波数を受信した場合に、送信側からの搬送波による信号と判断する。
以上のような、方式を用いることが可能と考えられる。
そして、受信中の周波数が(何等かの理由により)受信不能となった場合には、順次受信周波数を変えて、受信できる周波数をサーチし、2つ以上の周波数成分が受信できるように調節する。
また、例えば、基本波の周波数成分しか受信できない場合には、ノイズと判断する。
【0035】
前記情報伝達に際して、送信情報が変化した場合の対応策:
送信情報が変化(例えば、絶縁正常から警戒へ変化)し、
図7のように、搬送波の基本波の周波数がωからω1 に変わった場合も、同様に2つ以上の周波数成分を受信した場合に、送信側からの搬送波による信号と判断する。
【0036】
本発明に用いる変調方式による情報伝達の例を、ASK方式を例に説明すると、
a: 搬送波として、非正弦波交流を重畳する。
b: 従来方式と同様に、搬送波を断続させて情報を送信する。
c: 受信は、ASK方式による搬送波の基本波から、各高調波の断続パターン波と同様であるため、どの周波数成分を受信しても、断続パターンに変化はないという性質がある。そこで、この性質を利用して、必要に応じて受信周波数を選択して使用する。
以上のような態様が可能である。
そして、例えば、基本波を正常受信しているうちに、電路ノイズにより基本波の受信が不能となった場合に、図8に示すように、正常に断続パターンを受信できる第3高調波成分の周波数を選択して使用する。
【0037】
次に、前記各構成に加えて、本方式の応用例をさらに説明すると、次のような方式を採用できる。
(1) 大地帰線式電力線搬送方式:
本方式は、本例に述べたように、低圧電路の絶縁監視装置等の、電力線と大地間に重畳した搬送波電圧を利用した搬送波方式に利用できる。
(2) 電力線搬送波方式:
大地帰線式電力線搬送方式の他に、電力線の線間に搬送波を重畳し、情報を伝達する方式にも利用できる。
【0038】
本発明において、電路に注入する搬送波波形は、方形波、台形波、三角波、正弦波のピーククリップ波等の、種々な波形の信号波を用いることができる。
【0039】
次に、本方式の有効性とその構成による特徴を説明するに、
(1)搬送波異常の減少:
本方式は、単一周波数帯域のみを使用する従来方式とは異なり、搬送波により電路に生じた多数の周波数成分を利用する方式であり、1つの周波数の受信状態が悪化した場合、他の周波数を選択的に利用できるため、搬送波が正常に伝達できない状態(以下「搬送波異常」という)は、飛躍的に減少する。
(2)誤報の減少:
従来方式においては、特に多周波方式を用いる場合において、誤報による保安職員の不必要出動が大きな問題となっていたが、複数の搬送波が受信できた場合のみを、搬送波による信号と判断する方式のため、誤報は飛躍的に減少する。
また、変調方式においては、誤り制御を行うことにより、誤報はほぼ皆無とすることができる。
(3)単純な構成:
本方式は従来方式と比較しても、受信回路規模の増加はほとんどなく、回路が複雑化しない。
以上のような、特徴を発揮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の装置に設ける処理回路の構成を示すブロック図である。
【図2】搬送波伝達手段の回路の説明図である。
【図3】多周波方式の受信回路の説明図である。
【図4】ASK方式の受信回路の説明図である。
【図5】搬送波により電路に生じた基本波および高調波電圧の説明図である。
【図6】多周波方式の搬送波受信帯域の説明図である。
【図7】多周波方式の搬送波周波数が変化したときの搬送波受信帯域の説明図である。
【図8】ASK方式の搬送波受信方法の説明図である。
【図9】搬送波伝達手段の回路の説明図である。
【図10】ASK方式の断続した搬送波の説明図である。
【図11】ASK方式の警報の種類と搬送波の断続パターンの説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 高圧電路、 2 変圧器、 3 低圧電路、
5 B種接地線、 6 検出用CT、 7 搬送波重畳用CT、
10 検出器、 11 低圧電路絶縁検出回路、 12 CPU、
13 発振回路、 14 増幅器、 15 外部入出力回路。
20 通報器、 21 搬送波検出回路、 22 搬送波受信回路、
23 CPU、 24 ディスプレイ、 25 データ送受信回路、
31 HPF、 32 LPF、 33 可変fo型BPF、
34 A/D変換回路、 35 CPU、 36 整流・平滑回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自家用受電設備の低圧電路のB種接地線に、検出用CTと搬送波重畳用CTとを配置して、
前記検出用CTにより検知された、前記低圧電路の絶縁の状態の情報を、搬送波重畳用CTから前記低圧電路に重畳した交流電圧信号を、低圧電路の絶縁状態に応じて変調した搬送波として、前記低圧電路を介して送信する機能を持たせた検出器と、
前記低圧電路に重畳された前記搬送波を受信して、警報を出力する機能を有する通報器と組み合わせて構成する絶縁監視装置において、
前記検出器から前記搬送波として低圧電路に重畳される交流電圧信号には、非正弦波交流電圧信号を重畳する方式を用い、
前記通報器の搬送波受信部では、搬送波より低圧電路に発生する基本波および、各高調波の周波数成分を選択して受信する機能を持たせ、
何等かの理由により、受信中の一つの周波数が受信不能となったときには、順次受信周波数を選択して搬送波を受信し、前記低圧電路のノイズに対する耐性を高めることを特徴とする絶縁監視装置の搬送波方式。
【請求項2】
連続した非正弦波交流電圧を搬送波として用い、電路の絶縁状態に応じて前記搬送波の周波数を変化させて、情報を伝達する方式を用いる前記絶縁監視装置においては、
前記搬送波として用いる非正弦波交流電圧により、電路に発生する基本波および各高調波の周波数成分の中から選択し、
前記通報器の搬送波受信部が2つ以上の周波数成分を受信した場合にのみ、搬送波による信号と判断することにより、
受信した情報の正確性を確保可能としたことを特徴とする請求項1に記載の絶縁監視装置の搬送波方式。
【請求項3】
前記通報器の搬送波受信部において、前記低圧電路から搬送波検出用コンデンサを通じて大地に流れる電流を、搬送波信号として検出することを特徴とする請求項1に記載の絶縁監視装置の搬送波方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−198046(P2008−198046A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34333(P2007−34333)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(592184278)財団法人東北電気保安協会 (10)
【Fターム(参考)】